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◆◆◆ -- 2005年4月のお話 -- ◆◆◆

 

-- 050428--                    

 

         

                         ■■死ねないという愛しい言葉■■

     
 
 
 
 
 
 
 『死ぬなんて言っちゃ駄目よ。
  生きていればこそ、好きな人にも会える。好きだと思うこともできる。
  死んでしまったら、なにもかもお終いなのよ。もっと命の大切さを考えて。
  ・・・・わかるわね?』

                           ~第四話・東雲先生の言葉より~

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 透き通るようにぼやけていく黄金色の天蓋を見下ろしている太陽。
 その傍らから浸み落ちて往く青い空の残党を、この鈍い黒色の体が刈り取っていく。
 ただ頭を垂れて言葉を目の前で紡ぎ合わせているだけで、この体は世界を変えていく。
 きっと、その何億倍もの確率で、俺の体も変わっている。
 目を閉じればもう、其処にあるのは俺の言葉しか無い。
 隣で俺をじっと見つめる草灯の眼差しさえ、其処には無い。
 
 俺が目を開いたときには、きっと其処にはすべて在る。
 たぶん、俺が生きているから。
 
 
 『清明は今、何処に居るの?』
 
 
 ・
 ・
 ・
 ・
 
 
 
 『母さんは、死んだら終わり、死んだらすべてがお終いだと言う。』
 
 俺の変わらぬはずの体の中に、清明は確かに居る。
 でもそれは、決してその外側に姿を顕わすことは無い。
 俺の中に決して変わり得ぬ清明が、居る。
 そして清明は、俺の目の前には、居ない。
 俺の体の外に無いものは、変わらぬ代わりに溶けて消えていく。
 いつかきっと、清明は俺になる。
 勝手に俺の目の前から消えて、無理矢理俺の中に入ってきて、そして・・・・・・。
 嗚呼・・・・・清明・・・・俺はもうお前と出会うことはできないのか。
 俺が目を開いて振り返った先には、今は草灯しか居ない。
 そしてその草灯は、言うんだ。
 
 俺のためになら、死ねる、と。
 
 
 薄暗く閉じている俺の体を押し開き、清明の命の跡に語りかける。
 其処をいくら見つめても、もう其処には清明の痕跡しか無く、そして清明の存在はすべて無い。
 母さんは知ってたんだ。
 死んだら終わりだって。
 そいつの命を貰っちゃ駄目だって。
 きっと貰ってしまったら、なにもかもが壊れてしまうのを知っていたんだ、母さんは。
 ほら、母さんが怒ってるよ、清明。
 母さんの目の前から消えた清明と2年前の自分の命を消してしまった俺のことを。
 母さんにはもう、清明と俺はいない。清明と俺のすべては終わってしまっているんだ。
 それなのに、俺が此処に居るんだもんね。母さんの目の前に。
 母さんが狂うのも無理は無いよ。
 
 
 
 俺のために死ねるなんて言うなよ、草灯。
 
 
 
 
 
 ◆◆
 
 母さんの事が好き。
 母さんの事を傷つけるくらいなら、俺は死んだ方がまし。
 違う。そうじゃない。
 俺は母さんのためなら死ねるんだ。
 母さんの願いを叶えてあげたい。
 俺は母さんが大好きなゆえに、俺の命を捧げたっていい。
 母さんのために。心から母さんを愛しているから。
 それがわかるから、だから俺は。
 草灯の命なんて貰えない。
 
 --- 痛い。
 --- 心が、痛い。
 --- やめろ!
 --- 大きすぎるんだ。
 --- 無理だよ、俺の中に入ってくるなよ!
 
 草灯が自分の命を俺にくれるほど俺を好きだって言うのがわかる。
 ああ、この言葉自体はきっと草灯としては嘘なんだと思う。
 でも、俺の言葉は今、それを本当の事だとしてその中に組み込んだ。
 俺のために死ねると言う人が居る。
 俺はその愚行をなんとしても止めなくてはいけない。
 絶対それは、許しちゃいけない事なんだ。
 俺のために死ぬなんて、そんな事許さない。
 俺の目の前から・・・・消えるなんて!
 俺が母さんのために死ぬということが、母さんから俺を消し去るという事をなによりも知っているがゆえに。
 だから俺は許さない。
 草灯が死ぬことも、そして俺が死ぬことも。
 
 --- 怖い。
 
 そして、だから。
 きっとたぶん、俺は死ねないって言えるんだ。
 俺は死にたくないって、言えるんだ。
 
 生きたい。
 俺は生きたいよ、清明。
 俺の目の前に居る人達と出会うために。楽しく笑い合うために。
 だから俺はその人達に死んで欲しくない。
 俺の事を想ってくれるなら、尚更死ねるなんて言わないでくれよ。
 そして俺も、その人達を決して死なせたりはしない。
 俺がその人達を失いたくないがゆえに。
 そして、だから。
 その人達から俺を奪う事もしないと、言える。
 俺はその人達のためにも死ねないという嘘を使役して、俺は生きたいと精一杯叫びたいんだ。
 俺は母さんのために死ねると思うたびに、俺は絶対に死ねないと思う。
 
 --- 命を燃やして迫る他人の愛が怖い。
 --- 嫌だ。お前は其処に居てくれ! 此処に来るなよ!
 
 だから俺は草灯が俺のために死ねると言うたびに、全力でそれを否定する。
 死なせないぞ、草灯!
 勝手に俺の中に入ってくるなよ、草灯!
 お前は俺の外でちゃんと生きてろ!!
 
 俺を殺さないでくれ、草灯!
 
 
 
 ◆◆◆
 
 俺は誰も傷つけたくない。
 傷つける事でなにかが変わってしまうのが怖い。
 俺にはその変化を司る勇気も覚悟も無いんだ。
 草灯の命なんて欲しくない。
 母さんの愛なんていらない。
 草灯に好きなんて言われたって、俺はどうしたらいいのかわからない。
 ましてや俺のために死んでもいいだなんて言われたら・・・俺、ほんとうにどうしたらいいか・・・。
 母さんも草灯も、いつも俺の心をぐちゃぐちゃにしていく。
 そしてきっと俺も他の誰かの心をぐちゃぐちゃにしているんだ。
 清明・・・・俺・・・・・死にたいよ・・・。
 
 --- だから、生きたいって思わなくてはいけないんだ。
 
 
 だから俺、死ねないよ、絶対。
 
 
 
 
 
 重ね積もる金色の空が、暖かく律動する青い大地を包んでいく。
 軽やかに変化の遍歴を重ねる世界が、暗く閉じた体に語りかけてくる。
 言葉を、頂戴。
 そしてその体は応答する。
 いいよ。一緒に変わろう。
 その言葉の落ち着く先に、必ず微笑みかけてくる世界が居る。
 目を閉じたまま、それが目の前に広がって待っていてくれている事を確信する。
 
 --- 嬉しいんだ。だから生きていられる。
 
 生きているから、嬉しいんだ。
 
 
 
 ◆◆◆◆
 
 自分の外に誰かが居て。
 自分の中に誰かの言葉が在って。
 その誰かの言葉はやがて自分の体に溶け込んで、その体とひとつになる。
 それは堪らない快感だよね、立夏。
 立夏に俺の命を打ち込めたら最高だよね。
 それは立夏とひとつになるということだからね。
 そう。
 だから立夏は俺を捕まえられない。
 だって、俺は立夏になってしまうんだから。
 簡単に捕まるような奴は嫌いだから。
 立夏には俺を捕まえられない。
 そして、俺には立夏を捕まえる必要は、無い。
 なぜなら俺は、もう立夏を捕まえているからさ。
 立夏と一緒になっているのは、俺の言葉。
 俺は立夏のためなら死ねるという言葉を立夏にめり込ませているだけ。
 だから俺は捕まらないよ。
 俺は立夏のためなら死ねるからね。
 わかるよね? 立夏。
 
 だから好きだよ、立夏。
 
 死ねないという立夏が好きだよ、立夏。
 俺の命に絡め取られない立夏が好きだよ。
 うん、良し。ちゃんと其処に居るね、立夏。
 俺の言いなりにならない立夏は良いよ。
 俺に奪い尽されない立夏は綺麗だよ。
 俺に徹底的に刃向かう立夏は凄いよ。
 俺の命を受け取らずに俺を生かしてくれる立夏は素晴らしいよ。
 俺の命を賭けた愛を拒否する立夏は可愛いよ。
 俺の言葉を疑わない立夏を愛してる。
 
 そして俺を信じない立夏が俺は好き。
 
 
 立夏は立夏のままで、そして自分の意志で理想の立夏に変わっていってよ。
 俺はその邪魔をするから。
 俺はそのままの立夏を愛するがゆえに、俺好みの立夏へと立夏を調教していくよ。
 さぁ、立夏。おいで。
 俺の愛を見抜けない立夏は、俺の言葉と戦うしかないよ。
 そして。
 俺の言葉を打ち破って俺の元に来て、立夏。
 好きだよ、立夏。
 立夏は立夏。俺は俺。清明は清明。
 立夏の中に俺は生きられず、清明もまた生きられない。
 俺は目の前に居るよ、立夏。
 言葉でできた俺と言葉でできた清明を立夏の中に溶け込ませてひとつにすれば、よくわかるはずだよ。
 
 
 すべてのものは、はじめから其処に在るのだと。
 立夏が目を開く、そのずっと前から。
 
 
 
 
 
 『俺の命は立夏のものだ。立夏のためなら、いつでも死ねる。』
 
 『死ぬなんて、簡単に言うな。』
 
 『でも、ほんとうだから。』
 
 
 
 
 俺と立夏が今、生きているのだから。
 
 
 
 
 
                              ◆ 『』内文章、アニメ「LOVELESS」より引用 ◆
 

 

 

-- 050426--                    

 

         

                                       ■■だべる■■

     
 
 
 
 
 ごきげんよう。気付いたらしばらく日記、書いてませんでしたね。
 別に忘れていた訳でなく、毎日変わらぬこのページを眺めてどうしたものかと悩ましげにしていた訳です。
 ええ。嘘ではないと思います。たぶん。
 個人的にLOVELESS感想だけ書けばもういいじゃん、みたいなノリになってきてしまっているので、
 あんまりどうにかしようとか真剣に考えているなんてことも無いので、たぶんそんな感じです。
 いや、良くない。良くないと思ったゆえにこうしてなんか書いている訳です。
 なんか書いている、と言っている時点でもうどうでもいい気満々なんですよね。
 なんだか日本語がギクシャクした感じで繋がってしまいました。
 読み返すと今なに書いてるのかわかりませんということがわかりました。
 つまりそのなんでもいいのじゃないか。
 面白いとか面白くないとかじゃなくて、まずはなにか文章を。
 そうするとこう欲も出てきてね。
 なにか意味のあることを書こうと思うのです。
 まぁそこまでなのですけれどね。思うだけ。寸止めが効いてるところが魅力だと思ってください。無理か。
 無理が通れば道理引っ込む。
 そんなら道理を引っ張りだせば無理なことは無くなるんですよ。
 ごめん、無理。ネタ無いのになんか先に言っちゃった。言ってみただけ。
 あ、うん、なんかね、事故とかあったよね、脱線とかさ、うん。
 あ、それは別にいいんだけどさ。あ、いけないか。いけないよね、ごめんなさい。
 ちょっと世の中のことに口出してみたかっただけです。口は災いの元ですね、ほんと。
 
 いやもういいでしょう、この際。
 日記っていうのはそもそも書きたいこと書くものな訳で、そんなね。
 いちいち世間様の出来事に言及しようと努めたって仕方無い訳で。
 どうでもいい訳じゃないけど、日記的にはどうでもいい訳で。
 ていうかこの文章自体どうでもいいじゃんか、なんて言われても、それは、その、ええと、黙れ。
 ついでに私も黙らせてください。
 うん、それ、それだよ。
 大人しく黙ってりゃかわいいんですよ。黙れ小僧、みたいな。何言ってんだ。
 すみません、少しちゃんと書きます。
 ええとですね、先程も既に書きましたけどね、
 今は基本的に日記はLOVELESS感想だけで充分みたいな感じで満足しているので、
 特に敢えて他の日にもなにか書こうとかは思わない訳です。
 それはでも別にLOVELESS感想だけしか書きたいことが無いかと言う訳じゃないんですよ。
 極上とか他のアニメについても色々書いてみたい気は割とあるんですよ。
 いやほら最近極上とか面白いじゃないですか。
 よくもまぁあそこまで盛り上げられるなぁって感心してるですよ。
 すっげーすっげー!って毎回拍手喝采してるんですよ。
 じゃーなんで書かないのだよ、というと、あれ? なんでだろ?
 うん、そうだ、こう言おう。
 
 
 書  く  の  め  ん  ど  い  か  ら  。
 
 
 
 
 まー、基本だよね、それ。
 
 
 
 
 
 
 
 おまけでもおひとつ:
 今日は新しい眼科行ってきました。通っていたところが閉院してしまったので。
 で。
 コンタクトの検診をやっていただきました。
 なにからなにまで前眼科での処置を否定されました。
 ありえないとか言われました。
 おいおいこれはどうかと、なんてオーバーアクションで言われました。
 なんかコンタクトの度数もだいぶ下げられました。
 ていうかなんで私が怒られるのかよくわかりませんでした。
 えと、すみません。
 でもわからないなりにも、
 きっと前のところから頂いてきた紹介状に怪しからぬ事など書いてあったのではないか、
 などと想像を逞しくさせてはみました。
 
 
 ほんとうは、視力検査を真面目に受けなかったのが最大の原因だとは思いますが、
 それは思い出さない方が人生を楽しく生きていけると考えています。
 だって、眠かったし。
 
 
 

 

 

-- 050421--                    

 

         

                           ■■痛いと云う言葉を逃がすな■■

     
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 母さんは、駄目だった。
 
 俺はきっと、母さんを愛してはいないと思う。
 なぜならば、母さんは今の俺を愛してはいないから。
 「違うよ、立夏。母さんは立夏を愛することができないだけなんだよ。」
 だったら、俺はどうしたらいい?
 俺は母さんが俺のことを愛してくれなくても、母さんを愛せるんだ。
 俺が母さんにできることをして、そして母さんを守って・・・・そして・・・・・。
 「でもその立夏のいかなる行為も、母さんは受け入れてはくれないんだよね。」
 そうなんだ。
 だから今の俺は、母さんを愛せないんだ。
 俺は母さんが俺の事を愛してくれないから母さんを愛せないんだ。
 「それは罪なことだよね、立夏。」
 俺がどんなに母さんを思っても、母さんは俺のことを見てくれない。
 ほんとはそんなこと関係なく、俺は母さんの事を愛しているのに。
 罪なのはむしろ、この一方通行な愛を俺が母さんに押し付けている事のほうにあるのかもしれない。
 「それは違うな。それは立夏が母さんを愛さないで良い言い訳でしかない。」
 でも、でもさ。
 俺が今の俺の愛を母さんに見せれば見せるほど、母さんは狂ってしまうじゃないか。
 俺がこんな俺でいるから、母さんはあんなに苦しむんだ。
 だったら俺が母さんの愛を得られない事を理由に、母さんを愛さなくたっていいじゃないか。
 大体母さんだって、今の俺の愛なんて欲しく無いんだから。
 「愛は求めるものじゃないよ、立夏。」
 でも、俺のせいで母さんが傷ついていくのは事実じゃないか!
 
 
 
 
 
 

 ~ 私は貴方を愛するがゆえに、貴方に血を流させる ~

 
 

 
 
 
 『馬鹿だなぁ、立夏。母さんがああなったときは・・・逃げろって言ったでしょ。』
 

                           ~第三話・清明の言葉より~

 
 
 
 逃げ場なんて、どこにも。
 最初から、そんなものは無かったんだ。
 あったとしても、それはただの気休めでしかなかったんだ。
 なぜなら。
 
 俺は逃げるということを知らなかったから。
 
 いい加減な事は嫌い。
 巫山戯た奴は嫌いだった。
 真面目ぶってそれに酔っている馬鹿も、
 それを褒められて仏頂面を磨いている恥知らずも、大嫌いだった。
 結局俺は、俺も俺以外の奴もみんな、嫌いだった。
 だけどそれでも、俺は母さんも清明も大好きだった。
 ほんとは嫌いな奴も、嫌いな事も無かった。
 ただ、許せなかった。
 俺の目の前から消えた清明も、今の俺を見てくれない母さんも、ただただ許せなかった。
 好きとか嫌いとか、そんなのはそのなにも許せないという事を隠すための嘘でしかない。
 俺は母さんが・・・許せない・・・。
 愛しているからこそ・・・・・・許せない・・・。
 でもそう思えば思うほど、俺は母さんを許さなくちゃいけないと、そう思わずにはいられないんだ。
 俺は・・・その母さんを許せない俺を一番許せなかったから・・・・・・。
 母さんは母さんだ。
 俺がどんなに想おうと、それは俺の片思いでしか無いんだ。
 俺の想いを言葉で示せば示すほど、母さんは壊れていく。
 俺のこの愛が、母さんを傷つけていく・・・・。
 母さん・・・・・。
 
 
 『逢いたい・・・・逢いたくない・・・・・・・逢うのが・・痛い・・・・・。』
 
 
 
 
 本当のことばかり言っていた清明。
 嘘ばかり言う草灯。
 痛みから逃げろと言っていた清明。
 痛みを与えてくれと言う草灯。
 痛い、ってどういう事だよ、草灯。
 嘘でもいいから教えてくれよ。
 嘘でも・・・・・。
 
 
 
 
 
 『立夏。貫通させて。』
 
 
 
 
 
 
 ---- では、平然と嘘を付かせて貰うよ、立夏。
 
 
 

 『   調   教   開   始   だ   。   』

 
 
 好きだよ、立夏。
 だから痛みを与えて欲しい。
 この痛みが俺と立夏を繋ぐからね。
 なんで立夏にそれをやらせるかって?
 そんなの決まってるじゃないか。
 俺を傷つける立夏の心が痛みに震えているからだよ。
 その痛みが、俺に立夏の愛を与えるんだ。
 だから、それでいいんだ。それが、いいんだ。
 人を傷つける事から逃げるということは、その人から逃げるという事でもある。
 愛するその人を殺して初めて得られるその人の愛があることを知るんだ、立夏。
 俺を殺してくれてもいいんだよ、立夏。
 俺は逃げないよ。
 いつでもどこでも、立夏を見てる。
 どんな立夏でも、俺は受け入れるよ。
 好きだよ、立夏。
 俺に痛みを与えて。
 俺に痛いと言わせてよ。
 俺を傷つけて。
 俺を殺してよ、立夏。
 
 
 さぁ、立夏。おいで。
 
 
 本当のことを、此処から言い始めようか。
 それすらも嘘かもしれないという疑念を越えて。
 でもそれは越えられても、決してそこからは逃げられないけれど。
 
 痛いのは、辛い。
 でも、その辛さが好き。
 そして。
 その痛みの辛さを好きと、立夏に言わせたい。
 その痛みが何処から来るのか、立夏は知ってるよね。
 知っているからこそ苦しくて、だからそれが、愛おしいんだ。
 立夏。
 痛いのは、辛い。
 でも、だからって黙ってちゃ駄目だよ。
 痛いって、言わなくちゃ、駄目。
 だって言わないと、誰とも繋がれないだろう?
 そしてね、立夏。
 その誰かにも痛いと言わせることを恐れては駄目。
 そうしないと、その誰かは立夏の元から消えてしまうよ。
 それでもいいって、立夏は言うけど。
 じゃあ、なんで。
 じゃあなんで、誰かを愛したいってそれでも想わずにはいられないの? 立夏。
 立夏のその手は求めてる。
 愛を求めて、ずっとずっと伸ばしてる。
 でも愛は求めたって得られるものじゃない。
 愛は其処に創らなくては。
 その愛の創造意欲を、立夏は確かに持ち続けている。
 誰かのことを、ずっとずっと思い続けてる。
 俺のこともずっとずっと考え続けてくれてるんだね、立夏。
 
 
 『そっか。創るか。思い出。』
 
 
 
 ----『立夏を好きになるなとも、言われてない。』
 
 俺の側に母さんが居る。
 俺と母さんがそこに居る限り、俺達はお互いをすり減らし合いながら生きていくのかもしれない。
 俺が傷つくことなんて、どうでもいい。
 でも母さんが俺のせいで傷つくのは・・・・・・。
 でも、そうか、草灯。
 俺は俺のその痛みを感じなければいけないんだよな。
 俺が母さんに傷つけられてるってことは、俺が母さんと繋がってるってことの証なんだよな。
 俺は母さんに傷つけられるのは、だからこそ、それだからこそ嬉しいことなんだって想いたい。
 そして、俺が母さんに与える痛みは。
 それは、俺がずっとずっと母さんのそばに居るということを、母さんに伝えている証になるんだ。
 俺は母さんから離れない。
 俺は母さんとそれでも生きていきたい。
 ふたりの生を創りたい。
 母さんがどんなに苦しんでも、俺はやっぱり母さんと一緒に生きていく。
 その苦しみを和らげてあげるために。
 だから、絶対に、その母さんの痛みは消えることは、無いんだ。
 だから。
 
 
 俺と母さんは、この傷だらけの姿で此処に居る。
 
 
 
 
 
 
 俺の痛みと母さんの痛みが、俺と母さんが一緒に生きていることを浮かび上がらせる。
 そう。ほんとは最初からそうだったんだ。
 俺達は最初から其処に居る。
 でもそれは、きっとそのままじゃ知らないまま消えてしまっていた事なんだ。
 この痛みが、愛が、それが在ることを教えてくれた。
 そしてだから、それは俺が創ったものなんだよね、草灯。
 俺が母さんの痛みを逃がさなかったから。
 そして俺が、痛いという言葉を言うことが出来たから・・・・だから・・・・俺達は・・・・。
 
 
 
 
 
 
 『また、ふたりで写真撮りたいな。』
 
 『いいよ。いっぱい撮ろう。・・・・・ふたりの思い出を。』
 
 
 
 
 
 
 
 『優しさより深い場所で触れ合うのは、痛みだけ・・・・・・』
---by EDテーマ『みちゆき』---

                           

 
 
 
 
                              ◆ 『』内文章、アニメ「LOVELESS」より引用 ◆
 
 

 

 

-- 050417--                    

 

         

                             ■■準備完了、そして前へ■■

     
 
 
 
 

 ごきげんよう。

 魔術師の工房管理人の紅い瞳です。
 昨日、遂にLOVELESSというアニメについての感想を書き出す事に成功致しました。
 今期はこのアニメを中心として日記を更新していきたいと考えています。
 今後ともよろしくお願い致します。
 
 さて、LOVELESSですね。
 ようやく今期のアニメの中で感想を書けるぞと確信できる作品と出会えました。
 でもほんとはビクビクドキドキ。
 今でも実は感想書き続けられる自信なんて全く無くて、
 それこそ次のお話を書くときは大いに悩み苦しむのだろうなぁという想像に難くなく、
 という状況なのです。
 でもね、やっぱり書こうっという意識を頑張って持ち上げてみた訳ですよ。
 とにもかくにも書いてみようよ。やってみようよ、って。
 今まで自分が書いてきたもの、その事と比較してあー駄目だ、なんて考えちゃうから駄目な訳で、
 そうであるならば、いっそこの際新しい事始めてみようか、とか思ったのです。
 でもそうすると今度は、でも新しい事を始めるためのものがちゃんと作れるだろうか、
 っていう不安もあって、果たしてそれがLOVELESSを使ってでもいいのだろうかって感じで疑問たらたらで、
 そう考えると今までと同じような形式を踏襲しようとしまいとそれに関係なくやる気が無くなってきて。
 だから、最終的に。
 じゃあもうこれは、実験ということにしよう、と、思った訳なのです。
 もうなんでもありで、失敗すらも成功の範疇で、とにかく色んなことをやってみようと。
 失敗を恐れずに、というよりは失敗もそれも立派なひとつのカタチでOK、みたいな。
 毎回書く文章を礎にして、次の感想に活かす。
 そしてそれ自体もまた次の次の感想のための失敗を内包していて。
 そういう感じで、もう滅茶苦茶やってみましょうと、そういう事にした訳なのです。
 
 ただ、別にだからといって、LOVELESS以外のものでもよかったかというと、そういう訳でも無く。
 私は今期アニメの中で、一番LOVELESSがスゴイと思ったゆえのこの選択であった訳で。
 ですからこの作品に対する私の意気込みのほどは私自身が保証致しますし、また宣言致します。
 紅い瞳、LOVELESSで語っちゃうよ。
 現時点で語るためのいくつかの手法を用意していますが、それが増えていく可能性も充分あり、
 また過去の作品で用いた技法を改めて使う事もありで、
 できれば多角的に語っていければいいと思っています。
 いろいろやってみます。
 ただし。
 これは別に色々な手法を試すことを目的としている訳ではありません。
 あくまでひとつの形式での表現が行き詰まってしまうことでの感想制作意欲の低下を防ぐために、
 それ以外の形式で書くことを肯定するということにしか過ぎません。
 中心にあるのは、私の創作意欲の維持であり、また私が表現したいことそのものの保持にあります。
 つまり表現技法にはこだわらない、というだけの事です。
 肝心なのはLOVELESSを語る事ですからねぇ。
 
 ということで、これからしばらくの間LOVELESSの感想を毎週書いていこうと思っています。
 残念ながら第一話は見逃してしまったので感想は書けませんけれども。
 ということでスタートは第二話からということになりました。
 次週は第三話の感想です。お楽しみに。
 ちなみに、LOVELESS感想の回の日記のタイトルには、
 「言葉」という文字を入れる事でそれ以外と区別できるようにします。
 
 
 ◆ ◆
 
 さてはて。
 今期のアニメは、私的にはかなり良作揃いです。
 というよりも、紅い瞳好みの作品が並んでいるというところでしょうか。
 私が今期視聴開始し、視聴継続を決定したアニメは以下の通りです。
 
 英國戀物語エマ
 ・極上生徒会
 ・LOVELESS
 ・スピードグラファー
 ・ツバサ・クロニクル
 ・ハチミツとクローバー
 
 以下は見所を宣伝(笑)
 
 1:英國戀物語エマ
 とにかくまず雰囲気が良いというのが最大のポイント。観ていてのんびりと時が流れていくのを感じられま
 す。その上イギリスの上流階級の雰囲気と知識をも観ることが出来て、なかなか豊かな感慨に耽る事が
 できるでしょう。この感じの上で寝そべる事ができる人にとってはなかなかの嗜好品となれるでしょうね。
 ただそれ以外のものを求めるとなると、やや努力が必要になると思われます。今のところ観ているこちら側
 が口を差し挟める状況下には無いと思われるゆえに。今はまだ萌えてれば良し(笑)
 
 2:極上生徒会
 久しぶりのギャグコメディ作品としてなかなか面白いものを備え持っていると思われます。やっていることは
 ほとんど他の作品がやっているものばかりなのですが、その集め方くっつけ方で類を見ないほどの個性を
 見せつけてくれています。というよりこれはもうこのくっつき方を笑えるか笑えないかしか無いのですが。
 ちなみに女子校モノという事でマリみての主人公祐巳はどこにでもいる普通の女の子、つまり平均点の
 固まりのようなキャラですが極上の主人公りのはテストは0点徒競走はビリ、なのに食事スピードは一番、
 というそれだけで笑えるキャラ。しかも腹話術人形のぶっちゃんを持ち歩く無茶を平気でオプションで備え
 つつしっかりそれが無ければキャラとして成り立てない貧弱さの面白さと言ったらもう。
 逆にいうとそれだけぶっちゃんが偉大な訳でそれを張り倒す生徒やカッコイイという生徒も居る訳で、
 あーもーなんか極上最高。(説明放棄)
 つまり説明されないとわからない人にはお勧めできません、いやほんとに。やめとけ。
 
 3:LOVELESS
 言葉、というものがどういうものであるかを徹底して描こうとしている作品、として私は見込んでいます。
 言葉というものが創り出すもの、そしてそれがこの私達の世界にあるということで、それがどういう影響を
 私達に与えているのか、そういうものを無意識のうちに主人公の立夏は考えているのです。
 母への想い、草灯との葛藤、唯子との関係の結び方、そして自分との対面、そういったものをすべて言語
 化することで自分の外側に配置してそれを対象物としていじる事の罪悪感、そして自らの存在の実感の
 無さを言葉で説明する事でしか克服することができない(実際は克服できていない)悲しみ、そういうもの
 が描かれ、そしてならばどうすればいいのだろうという問いと解答の模索、そしてそれを実践していく過程を
 主人公とともに観ているものも行っていく事ができるのです。非常に操作性の高い作品です。
 でもBL作品ですから。苦手な人はお気を付けて。覚悟を決めるなり逃げるなり。
 わたしゃどーでもいーですが。
 
 4:スピードグラファー
 公式サイトで大人の視聴を喚起する作品、大人の童話と紹介されてましたけどまたそんな馬鹿な事を。
 要するにエログロ表現と適度な現実説明をしてみせるだけでくたびれた人々に安堵感を与えるだけ、
 そういう意味にしかならないのなぁ、その紹介って。ってだから童話なのかなぁ。
 現時点ではまさにその紹介通りなのだから仕方無いのかもしれないけど。
 面白いかと問われると全然面白くないですと生真面目に答えられそうでなんだか悔しい。
 しかしだからといって観ないかと言われると逆に全然そんな事有り得ませんと生真面目に答えられる。
 面白いか面白いかが問題なので無く、私はこの作品からなにかを学べそうな気がするのです。
 それはただの反面教師として観るだけのものになるかそれ以外のものになるかはわからないけれど、
 むしろそのわからなさこそが次回も観てみたいと想わせる動機になるのですよね。
 なんかほんと次回が気になります。
 ・・・・・ほんと公式サイトの紹介通りになった・・・すごーい(ぉ)
 
 5:ツバサ・クロニクル
 とにもかくにも演出です。でもこれが真下監督だよへへんなどと虎の威を借る狐の如く有頂天になってたら
 色々見落とすと思います。真下がなんぼのもんじゃい!ってな具合で気合い入れて観てみるとあら不思
 議。改めて真下監督のファンになれます(爆)絵にしろその動きにしろすべてがきちんと律せられた風景が
 続きその「完成度」の高さの臭いが充満するなかでなにかを探そうとしているうちに、やっぱりふと気付くと
 その風景のほうに目が釘付けになるのです。演出ですべてが語られているのです。キャラ達が言いたい事
 も、そして作品が語りたいこともすべて。穴のあくほど画面を見ているうちになんだかもういっぺんに色々な
 事がわかってきてしまいますので、私達はきっとそれを整理するのに忙殺されているうちにこの作品をすべ
 て見終えてしまうでしょう。ゆえに下手すると見終わったあとに「で、結局なんだったの?」って事にもなって
 しまいますのでご注意を(笑)答えはすべて映像の中に、です。
 
 6:ハチミツとクローバー
 ていうか森田さんがイイ! わたしゃなんかこの人でお腹いっぱーいデス。楽しすぎ、この人。
 変人奇人暴虐ぶりに花を咲かせてまわるノンストップメンは最高。
 絶対私の応援対象ていうかもっとやれ。といいつつ大体そういう私が第一の被害者になって泣かされそう
 ですが構いやしない。はぐにでっかい葉っぱ持たせてコロボックル!なんて言って写真撮るだなんて、
 そんなことされた日にゃ笑いが止まりませんですよ。すごいすごいや森田さんグッジョブです!
 取り敢えず私のハチクロは森田さんを中心にして回りますので、そこんところよろしく。
 別によろしくしなくても良いんですけど。むしろ誰か止めて。
 
 
 
 
 なんかすっごい疲れました。(そりゃそーだ)
 
 
 
 P・S :
 来る4月23日午後11時30分より、星降ル海之宴にて御花見会を開催致します。
 別に桜なんてもう咲いて無くてもへっちゃらです。花よりチャットです。
 お時間お有りの方は是非お越しくださいませ。

 

 

-- 050416--                    

 

         

                               ■■好きと言う言葉■■

     
 
 
 
 

 ++LOVELESS++

これよりの戦いに失敗は、無い。

MISSLESS。

ゆえに成功を、創造する。

 
 
 




 
 
 
 『自分でいることが悪いことだとは思っていない。
だけど・・今の俺は母さんにとっての立夏じゃない。
  これは、罰を受けるに値する罪だ。』
--第二話の立夏の言葉--
 

×

 
 『混乱しろ、耳付きの餓鬼共。
愛という言葉の本当の意味はわかるまい。
 俺は、お前達の知らないことを知っている。』
---第二話の草灯の言葉--
 

 
 
 
 
 言葉というものをなぜ使うか知っているだろうか。
 最初からその事を知っている者はなく、そしてまたそれを知りながら言葉を使う者は偽物だ。
 言葉が作り出すものがなんであるか知っているだろうか。
 最初からその事を知っている者はなく、そしてまたそれを知りながら言葉を使う者は本物だ。
 初めはみんな、言葉を知らない。
 しかしそれを使ううちに、それがどういうものであるかを知っていく。
 だからいずれみんな、言葉をなぜ使うのだろうかという疑問に至る。
 そしてそこで答えを得たと思えた瞬間、今まで、そしてこれから使おうとする言葉はすべて嘘になる。
 その言葉からなにものも作り出す事はできず、
 そこにはひたすら空っぽの言葉だけで出来た世界が広がっていくだろう。
 しかしそこで答えを得ようとあがくことなく、その答え無き世界の中であがくのならば、
 やがてみんな、そこに言葉が創り出したあなたの中の世界が広がっていくだろう。
 言葉が世界になるか、それとも言葉で世界を作るか。
 さぁ、勝負だ。
 
 
 1/ 自分を愛している自分を欲しがる事:
 誰かを愛するために自分を愛するという事はそれは誰の欲望なのだろうか。
 私は誰かに愛して欲しいのだろうか。
 私は誰かを愛したいのだろうか。
 それともその誰かが私の事を愛せるようになって欲しいのだろうか。
 その誰かに私がその誰かを愛しているということを魅せてあげたいのだろうか。
 立夏の目の前にはまだ、なにも転がってはいない。
 母親の望みにそぐわない自分の存在を、それをどう受け止めているのか、
 本当は立夏もわかっていない。
 それ以前に、立夏は母という存在の上に乗って言葉を選んでいる。
 母のためになるべきか、それとも自分のためになるべきか。
 その二つの項目が対立するという構造に言葉を組み込もうと必死になっている。
 そこには、立夏も母親も、居ない。
 ただその言葉の操作を行う立夏のカタチがあるだけだ。
 そこに、立夏も母親も居ないから、立夏は苦しむ。
 そこに誰も居ないのに、なぜそこに言葉でできたそれはあるのか。
 これは罪だ。莫大な、罪悪だ。
 そうとわかっていながら、それでいて言葉を撫で回す事しかできない自分を呆然と眺めている立夏。
 言葉なんて、嘘だ、嘘だ、嘘だ!
 心にも無い事を平然と! 自分も母親も居ないに! 誰もなにも願っていないのに!
 本当はなにも無いのに!
 それなのにすべて言葉で済まそうとしている。
 それなのにすべて言葉で済ますことしかできないでいる。
 言葉を示せばいいと思っている。
 心に無くとも言葉を吐けばそれは有ると嘘を付いてもいいと思っている。
 好きでもなんでも無いのに、好きだなんて、言う。
 誰かに言われたからって、そのまま言いなりになるだなんて。
 許さない。許さないよ、そんな事。
 
 けれど立夏の心は、確かに揺れ動く。
 激しく、激しく、どうしようも無いほどに。
 
 
 2/ 正直に嘘しか付け無いことを白状するくらいなら沈黙を選びたい自分を勝たせられない事:
 いつのまにか、するすると言葉を吐いている。
 嘘なんか付きたくないのに、嘘を付くことを決してやめられない。
 嘘を付いてでも言葉を出さなければ、なにも無いこの世界も無くなってしまいそうだったから。
 違う、な。そうじゃないんだ。
 嘘を付いているつもりなんてないんだ。
 それは結局嘘になってしまう事なだけなんだ。
 たぶん私はそれを知っている。
 知っているから、言葉をこの体の中から絞り出してでも示さなければいけないのだと、
 そう思うから、思ってしまうから、あっという間に誰かに示された言葉を受け入れ、そして。
 そして、震えてしまう。
 この体の中で震えているものは、なんだろう。
 この胸の中には、なにも無かったはずなのに。
 なにも無い想いを言葉に換えて見せびらかしていただけだったのに。
 これは一体、なに?
 どんどんと、自覚していってしまう。
 立夏は立夏だということを。
 立夏には立夏が居るということを。
 初めに立夏は其処に確かに居なかった。何処にも居なかった。
 それなのに、もう、立夏は立夏のまま言葉を綴っている。
 あくまでそれは、嘘でしかないのに、それでも、すらすらと言葉を。
 そこにはなぜか罪悪感は無く、ただ羞恥心があるだけだった。
 言いなりで無い、あなた自身の言葉が聞けたから、それに応えようと。
 好きだ、というその言葉が中身の無い嘘であるというのを知っていながら、それを受け入れようと。
 違う、受け入れようとしたんじゃない。
 それはもう、立夏の中に侵入している。
 ただもう、こじ開けられて入ってこられただけなんだ。
 だから立夏は、恥ずかしい。
 その羞恥がなにを意味するのかを問うている暇も余裕もチカラも無い。
 これは好きという言葉との戦い。
 絶対的な侵入者との戦い。
 入ってこられるものなら、入ってきてみろ。
 その宣戦の言葉を示す立夏のうちで、既に草灯の好きだという言葉が暴虐の限りを尽している。
 立夏の空っぽだった体は今、好きなんて言うなという言葉で包みながら、
 その草灯の言葉を受け入れた立夏で構成されている。
 愛なんて、無い!
 その言葉で形作られた体の中に、押し付けられた愛という言葉を埋め込んでいる立夏。
 愛という言葉が在る。
 そして。
 愛という言葉が創った愛は、まだ、無い。
 LOVELESS。
 愛の無い愛を獲得するまで、その頭のてっぺんに生える耳は無くならない。
 
 
 
 3/ 好きだよと言う事:
 草灯は嘘付きだ。
 しかし決して自らを嘘付きであると自覚したりはしない。
 けれど、草灯は自分の吐く言葉が嘘であることを知っている。
 そして。
 その言葉がすべてを創っていくことを知っている。
 愛の無い愛。
 そこに愛が無いゆえに愛を創れる。
 初めからある愛などそれは誰のものでも無い。
 ただその愛が自分の中に有っただけでそれがお前の愛だというのか、立夏。
 その愛が自分の中になければ、お前は誰も愛していないというのか。
 初めからある愛など、世界にくれてしまえ。
 そんなものの領有権を主張してどうなる。
 それが無ければ嘘の愛しか囁けないと嘆いている暇など、無い。
 立夏、好きだよ。
 その気持ちが草灯の中に最初からあるかどうかなんて、関係ない。
 それ以前に、今現在草灯が立夏を愛しているかどうかも関係無い。
 草灯は立夏を愛すると、言った。
 その言葉が創ったものがある世界を知れ、耳付きども。
 既存のものの純粋性に甘えてそれだけで戦っている怠け者共に私が負ける根拠は無い。
 好きだよ、立夏。
 お前の気持ち?
 立夏が草灯の事を好きであろうとなかろうと、そんな事は関係ない。
 嫌いならば好きになるようにするまで。
 好きならばさらに好きにさせてやるまで。
 なんとも思っていないのならば、なんとか思わせるまで。
 自らの内にあるものだけに頼るのなら、お前にそれ以上は無し、そしてそれも無い。
 お前が自らの経験に基づいてのみで広がっていくのなら、お前はその経験でしかない。
 その耳が生えている限り、立夏は立夏にはなれない。
 
 
 だが、立夏はいつも其処に居る。
 
 そして誰もが耳そのものを失う事は無い。
 
 わからない事を素直にわからないと言う立夏は確かに居る。
 なにもかもわかりたくないという立夏は確かに其処に居る。
 今のからっぽの自分を守りたい立夏も居る。
 そしてよろよろと頼りなげに立ち上がりながら、自分の言葉をこねあげて、猫耳のまま自分を開く。
 この耳があるから、あなた達の声が聞える。聞く事ができる。
 誰にも沈黙させないために、立夏は耳を付けている。
 そして私も黙らない、あなたに耳を塞がせないために。
 なにも無いと知った自分の体に、自分は居ると嘘の言葉を語った立夏。
 私に「私」と名乗らせた立夏が居る。
 名前という言葉で自分を象らせなくても、其処に自分は居るんだ。
 それは本当は「私」という「言葉」でしかないのだとしても、それが嘘だとしても、それでも。
 
 
 誰かの言葉に反応する、立夏のてっぺんに生えている耳は確かにすべてに反応する。
 
 
 私は私にならなくてもいい。
 私は最初から私で無くてもいい。
 そして私が私だと名乗る嘘に怯えなくてもいい。
 あなたが私の事を好きだと言っている、それだけで、嬉しい。
 
 
 そしてその言葉に従うだけでは満足できない、最初からの立夏が其処に居る。
 立夏の猫耳。
 それは決して無くなる事は無く、それは草灯の言葉に絶えず抗い続けていく。
 それが、立夏。
 草灯とあなた達の言葉が聴けるこの耳が好き。
 言葉無き言葉を聴くために。
 そして。
 ただ純粋なる言葉を求め続けるために。
 
 
 あなたに好きと言われる私でいようと、思った。
 
 
 
 
                             ◆ 『』内文章、アニメ「LOVELESS」より引用 ◆
 
 
 

 

 

-- 050413--                    

 

         

                               ■■防衛という名の攻撃■■

     
 
 
 
 
 笙野頼子「ドン・キホーテの『論争』」を読んだ。というか読んでいる。
 純文学はもう死んだとかそういう言い草に憤慨し奮起して色々喧嘩を売っている文章。
 今の純文学が駄目だと言っている奴らは過去の文学作品への愛着にばかり囚われていて、
 それが最高だと思っているものだから、それと現在出てきている作品を比較して駄目だ駄目だ、
 そう言ってる馬鹿達のために純文学の居場所が潰されるのは堪らない、だから戦う。
 純文学が死ぬっていうのはむしろそういう馬鹿達が幅を利かせて型どおりだけの作品のみを有り難がって
 、真に純文学を書こうとしている若い人達の芽を摘んでいってしまう状況そのものにある。
 だから戦う。そのような情けない状況を打破するために。純文学をちゃんと生存させるために。
 昔通りのそれをただ模倣する「だけ」の作品のみを賞賛し他を罵倒し続ける文学オタクや、
 売り上げだけみて純文学はもはや大衆文学に追い越されたとか死んだとか間抜けな事言ってる者、
 そういうのを見てみぬふりをしていては、せっかく生きている純文学の書き手の居場所を奪われてしまう。
 だから戦う。
 ただ自らの書くものと向き合っているだけのうちに、いつの間にか純文学が死んだ事になっていたら。
 だから戦う。
 純文学というのは形式では無い。それ以前に「純文学」などというくくりはそもそも無い。
 だが敢えてそのくくりを設ける事により自らがなにとどう向き合っているのかが鮮明に浮かび上がって来る。
 純文学とは自分の世界を描くことだ。
 描き続け模索し続け実験を重ね徹底を極め果てる営為の事だ。
 それは人間がちゃんと居る限り、そもそも死ぬなんて事は有り得ない。
 ただそれを死んだと言って、人間が人間でいる事をサボる者達が居るだけの事だ。
 純文学は、死なない。いや死なせない。
 笙野頼子はそんな事を言っていた。
 
 私は「純文学」に携わる人達、いわゆる文壇、文士の森の事についてはあまり知らないし興味も無い。
 そしてそれを取り囲む現実的な状況についても同じく知識も興味も持っていない。
 ただこのような感じ方についてはわかるし興味もある。
 純文学は死なない。それは純文学以外の事についても言える。
 そこにあるなにかを観てそれが理解できなかったり自分の内の既存のサンプルに照らして合わなければ、
 それは駄目だ馬鹿だ死んだなどというのはそれはつまり思考の放棄だと思うし、
 それは悪い意味でのオタクだとも思う。
  また、例え本当に目の前の作品が死んでいるものだとしても、
 それが死んだと診断するのはあくまで自分なのである。
 自分も目の前の者を生かすために模索し続け実験を重ね徹底を極め果てる者であらねば、
 それは結局のところその目の前の者の死因の一翼を担う事になってしまうだろう。
 目の前の者を、簡単に死なせるべきでは無い。
 また生かすための努力を放棄して為される批判は中傷に等しい。
 少なくとも私がそれを支持する事は、無い。
 
 私の目の前には、いつでも、そしていつまでも生命に溢れた世界が広がっているのだから。
 まだまだまだ、これからですよ、みなさん。
 
 
 
 

 

 

-- 050411--                    

 

         

                                 ■■すべて特に無し■■

     
 
 
 
 
 そろそろ花粉は無視しましょう(挨拶)
 
 えーあーはい。
 紅い瞳です。暇なのかそうでないかの瀬戸際辺りで適当やってます。だるだる~。
 えーでーはい。
 アニメですね困ったときはアニメですよね、うん。そうです。
 そういうことですので、またアニメなどを見ていました。
 スピードグラファー
 むぅ。どうしようかこれは。カッコイイとか言って誤魔化せないぞ。
 ていうか別にカッコ良くないぞ。ダサっ。
 つまりその私の趣味という名の心からの快楽の追求を100%満たしてくれるようなシロモノでは無く、
 むしろ積極的に蓋をしてしまっておこう、みたいなそんな感じそんな感じ。
 うん、つまり萌えとか言ってられない訳。すげーとかも言えないぞ、たぶん。
 だから、真っ向勝負。
 四つにがっぷり組んでお互い力比べ隙の窺い合いの上での騙し合い勝負。
 お互いのその醜さに目を覆ったらそこで負け。勝負アリ。
 うん、そういうこと。
 まったくの0からのスタートになるとです。
 だって第一話観て、全然面白いって思わなかったものね。どーしよーもない。
 そう、それ。どーしよーもない拮抗状態をどう打ち崩していけるか、
 それだけで私はなんかその、やる気出た。
 つーかやっぱあのむさい主人公はつまらなさそうだよなー。
 やっぱヒロインからいこうか、ヒロインから。
 第二話でいけそうだったら、連続して感想書きます。
 あと、EDはすげー。あ、すごいって言った。
 次。
 ツバサ・クロニクル
 カッコイイ。すげー。萌え。なんですかこれは。
 みんなてんでんばらばら自分勝手に飛び回ってやること為すこと全部奔放で、
 それがすべてひとつの水槽の中に押し込められている状態。
 もうっ触らないでよっ痛っ足踏むなってていうかあんた五月蠅いよ!、
 そういうどうしようも無くガヤガヤと喧噪を振りまいている場所が、
 はっと一瞬の時を跨いだあとに真っ直ぐに静寂というひとつの結晶体になってしまって。
 そう、時間とか空間とかそういうのが、なにかひとつの物体になって目の前に転がされたような感じだよ。
 シャオランとサクラの動きとかすっごくメリハリ効いてる上にマンガちっくで、
 そこに人間が居るってことを微塵も感じさせないのに、
 その人間の居ない世界になんの違和感も感じ無い。
 というよりあの動きは風の流れとか日差しとかそういう自然現象のひとつみたいなもので、
 だから別にそこにシャオランとサクラという2つの人格なんか無くっても全然問題無く、
 っていうかむしろその「人格」というものですら、あの世界の風景の中の一部でしか無いのかもしれない。
 黒鋼とかファイとかもう全然各々で存在の仕方が他の物と違うのに、
 それなのにそれが一同に会しても、それはそれで場がまとまってしまうんだよねぇ。
 馴染むとかしっくりハマる、とかそういう訳でも無く、やっぱりそれぞれバラバラなままくっついてるだけで、
 それなのにその表面をなぞると、なぜかするっとした滑らかさでいびつさを感じさせないのだよ。不思議。
 でもね、それは不思議だけど、たぶんね。
 きっと皆それぞれ素材、原材料が同じなんだからじゃないかな。
 きっと同じ素材で作った形の違う楽器みたいなものなんだと思う。
 或いはひとつの木から伐り出して作ったものとか。
 だから音色とか全然違うし演奏形態もバラバラだけど、なぜかそれは全部同じものなのよ。
 そう、その全然違うモノ達がほんとは同じものだって、私らは知ってる。
 それは決してその違うモノ達が同じモノを共有しているとかそう意味で無く、
 それらがひとつの本質がそれぞれ形を変えて顕われ出てきたモノであるということ。
 そのなぜかそれを知っているという状態から、その滅茶苦茶な世界を見つめていける、
 或いはその豊かな束縛の保護の元にその世界の「本質」と響き合っていける、そういう感じかな。
 サクラ萌えとか知世萌えとか、それ以前にこの感じがカッコイイし萌え。
 サクラ萌えとか知世萌えでもあるけれど。
 
 残るはハチミツとクローバートリニティブラッド、ですね。
 楽しみです。ええ楽しみですよ。
 まだいけます。まだまだいけますから!
 
 
 頑張ります。
 
 
 
 
 

 

 

-- 050407--                    

 

         

                                 ■■満塁ホームラン■■

     
 
 
 
 
 ここ数日中、まだ花粉も落ち着いていないというのに夏日到来、
 などという夏到来=花粉消滅という図式が脳内で成立している私からすればプチ絶望モノなこの展開、
 皆様如何お受け止めのことで御座いませうか。
 花粉アリの夏なんてどっか飛んでってまえー!!
 
 そんな些細なことでクヨクヨするなよと鼻をかみながら自分を慰めるために、
 コゼットの肖像のサウンドトラックを買って与えてみました。
 サントラ買うのなんて羊のうた以来ですねぇ、うむうむ。
 で、買いに行った訳なのですよ。
 そしたらね、なんかね、サントラがね、でっかいの。
 なんか初回限定版のおまけでもついてるのかな、とか。
 ・・・・。
 「DVDも一緒に収納できる初回限定特製BOX仕様」。
 D  V  D  も  買  え  と  仰  る  ?
 あいにくとそのお店にはコゼットのサントラはあってもDVDは売ってなかったので、終了。はい残念。
 ・・・・ふぅ、危なかった。
 
 
 さて、そういうことなので御座いますけれども、4月の新アニメのお話をさせて頂く訳です。
 まずなにを見ましたのかと申しますと、エマ。これです。
 これは私としましてはBGA(バックグラウンドアニメ)として至れり尽くせりなモノとして認知されました。
 これはもうチャットなどをまったりとしながらその裏で流していくと、
 そこはかとなく素晴らしいですネ!なんてハイソに瞳をキラキラ輝かせながら生きていけそうな、
 そのような感じで御座いますので、これを以て新しいアニメ時代の到来(紅い瞳内)と致しましょう。
 そして次はこみっくぱーてぃ、は録画し忘れました。
 次は極上生徒会。
 大成功。
 なんだか知りませんけれど、成功です。上出来です。うわ、すごいですこれ。
 最初から最後までお腹の痙攣が止まりませんでした。
 面白すぎで御座いました。お笑い爆発で御座いました。なんなら、ビッグバン。
 出てくる人々の一挙手一投足一言一句徹頭徹尾、
 愉快で楽しくてイヤーであははで、もう、うん、ええ、最高で御座いました。ご馳走様。
 これはもうホームラン級で御座いますよ。ヒットどころの話では御座いません。
 ここでボケか! っと思ったらするりと抜けてそっちかよ!って感じでもうハズしまくりの大作戦。
 それはもう私だってプっちゃんを張り飛ばしますよ。
 なんなら眼鏡眼鏡って探し回りますよ。
 つまりお前だぁっ!
 お父さんだったのっ!?
 ・・・・。
 なんのことやらですけれども、なんのことでしょうね、ほんとうに、もう。
 説明不可。否、説明不要。
 来週もまた、私を破壊してくださいませ。非常に楽しみにして待っています。
 最後にLOVELESS、は録画し忘れました。
 言い訳はしません。ていうか言い訳する材料すら無いほどにさっぱり忘れました。
 
 それとこれは新しいアニメでは御座いませんけれども。
 光と水のダフネ。チャンネルNECOでやっていましたので。
 本放送時も実は見ていたのですけれども、
 あのやる気に満ち溢れ過ぎたキャラの格好に目を回してしまってすぐに見るのをやめてしまっていたのです。
 うん、だからちょっと今度は頑張って見てみようと思った訳なので御座います。
 そして頑張った結果、大して頑張る必要も無くすんなりと受け入れた自分を見つけた訳で御座いまして、
 あー私も成長したんだなぁと感慨もひとしおのあまり少々落ち込んだりもしたけれど、私は元気です。
 大丈夫! まだ麻痺って無いから!(ほっぺたを力の限りつねりながら)
 それで、ダフネ。
 良いも悪いも無く、可も不可も無く、作品の是非を問う事など及びもつかない場所で、
 のんびり高みの見物をさせて頂きました。
 ええ、美味しゅう御座いました。
 主人公マイアのへたれな頑張りっぷりとおじいちゃんの割と浸みてくる悲哀っぷり。
 その辺りを主軸にドロドロと他の登場人物たちとの世界の中に溶け込んでいるだけで、
 それだけでなんだかウキウキドキドキで、そして時折涙がポロリ。
 その感情の揺れ動きをその操作と見込んでつまらなく逼塞する必要も無く、
 ただただほがらかに作品の設定範囲内の世界の中で生きていく事ができるので御座います。
 要は作品に見事踊らされている訳で御座いますけれども、喜んで踊らせて頂いているので万々歳。
 だって良い音楽を奏でられたら、つい踊っちゃうでしょう!
 グロリアのバカっぷりにも慣れたし、レナのエロエロっぷりにも慣れたし、あとなんかあったっけ?
 という感じで数え上げればきりがないようでいて実はなんにもない、
 そう思って、あ、とひと声あげて見るもなんだ夢かぁおやすみなさいむにゃむにゃ、
 とまた作品の中に戻っていける、そういう気楽さがあるのです、ダフネには。
 うん、あってもいいじゃん。ていうか、あれ。(命令形)
 
 
 さぁて、次行ってみようか、次! (声を上擦らせながら)
 
 
 
 

 

 

-- 050403--                    

 

         

                                  ■■コゼット後記■■

     
 
 
 
 
 紅い瞳です、こんばんわ。
 先日はコゼットの肖像というアニメについて、つらつらと書かせて頂きました。
 そして書いた上で思うことは、やはり私はアニメが好きなんだなぁという事です。
 じっくりと1回だけ通してアニメを見て、そしてそれで色々な事を頭の中に具現化させて、
 そしてそれをひっちゃかめっちゃかに掻き回した上でよくこね上げたものを文章化して。
 この一連の作業過程、及びそうして出来上がったものを目の前にしたときの何とも言えない倦怠感。
 そう、そのえも言われぬ倦怠感の中にはっと閃く私の眼差し(視点)、
 それがこれからなにを見ようとしているのか、その想像と予感にどっぷりと浸かっていられる爽快感、
 それこそが私は大好きなのです。
 この爽快感はそして、決してこれで終わりでは無い。
 必ずその後に控えている延々と続く、私の眼差しが映し出したもの、
 それがもう私に次の考えを想起させ文章を書かせるのです。
 コゼットの肖像というアニメは、それだけでは決して終わらないのです。
 
 コゼットの肖像(私が観たのは特別版でしたが)とはどういうものだったのか。
 それは当たり前の事ですけれど、ひと言ではいえません。
 そしてその事を前提とした上で、私は敢えて先日の「ひとつきりの愛と無限の呪い」という文章において、
 コゼットの肖像というものをひと言で語りました。
 つまり、この「ひとつきりの愛と無限の呪い」というタイトルで表わせるものだけを描いたのです。
 或いは、このタイトルに込めたひとつの「視点」により書いた、とあるひとつの物語を綴ったのです。
 ですから、先日の私の文章は僅かにコゼットの肖像の所蔵する内の一欠片にしか過ぎず、
 既に私の目の前には語り尽くすには到底及ばない程の、未踏のコゼットの肖像が広がっています。
 それを充分意識した上での、コゼットの肖像へと捧ぐ感想文であったのです。
 ゆえにコゼットの肖像を私がすべて語り終える事は決して無いでしょう。
 しかしけれど、私がコゼットの肖像についての思考を止める事もまた、無いでしょう。
 終わりが無いゆえに、常にそれと共にある。
 私のコゼットの肖像は、まだまだ終わりません。
 
 コゼットの肖像を、私はお勧め致します。
 映像や演出、そして音楽がすべてそれら固有の魂を持ちつつ、
 綺麗にその個としての固まりを捨ててひとつに融合しているその美しさの波、
 それが物語の根幹にも表面にも外側にもすべてに徹底して流れています。
 一見意志的な在り方をしてその姿をみせている作品内世界は、
 すべて「意志的である」という制約を他から受けて発動している全くの自然状態であり、
 様々な幻想的怪奇的かつオーバーアクションな風景の数々は、
 見事なまでに「世界」を形成しているのです。
 これは結構凄いことです。
 あの世界の中に「ミス」は存在しないのですから。
 ミスですらその作品内世界の中で発生しているごく普通の「自然現象」にしか過ぎないのです。
 人物の顔がどんなに崩れようとも、目が3つついていようとも、空を飛ぼうとも、角が生えようとも、
 それこそなにが起きたって、おかしくは無いのです。
 見ている者はコゼットと永莉の世界を目の当たりにして、そしてそこから脱却することも不可能で、
 或いは脱却するというのはそれはその世界から目をそむけるという事にしかなりえず、
 否が応でも「視聴者」はすべてあの世界を見続ける事になるのです。
 あの映像をすべて永莉の幻覚と捉える事も、永莉の幻覚と世界を分離させて見てもそれは同じ。
 どちらにせよその見方自体にはなんの意味もなく、ただ視聴者はそれを見ている事を自覚するだけ。
 そして、そのじっと見つめ続けている世界の中で紡がれるコゼットと永莉の物語。
 いえ、あれは物語というよりは、ふたりがふたりの世界を語っているのですね。
 コゼットと永莉の物語、では無くて、コゼットと永莉が語る世界が其処にあるのです。
 コゼットも永莉もその存在自体に意味はありません。
 彼らの魅せる感情の展開に意味はありません。
 ただただ、あの彼らによって語られる「世界」にこそ意味はあります。
 彼らがなにを語り、そして語ろうとしてその表情を魅せたのか。
 まずはそういう意識を以て、「コゼットの肖像」という深遠なる世界に飛び込んでみたら如何でしょうか。
 
 そして肝心の彼らの語った事に関してですけれど、
 それこそ本当に人それぞれの解釈の仕方があります。
 私が思うに、コゼットの肖像はかなり難解な部類に入る作品ですので、
 いくつかわかった部分があっても、それを全体への理解と繋げていくのはかなり難しいです。
 私も実際なかなかひとつの見方の元に収束させて理解するのに苦労しました。
 特に前半と後半を繋げて理解するのがきつかったです。
 私の場合、前半部分で築いた視点で後半を解読していく手法をとりました。
 ちなみに前半と後半の差異の発生を作品の質の低さに求めてしまうと意味がありませんので、
 最初から辻褄が合うものという前提で理解を進めていってみましょう。
 
 
 ということで、本日はこの辺りで失礼致します。
 
 
 
 
 
 P・S: コゼット万歳。(ぉ)
 
 
 
 
 

 

-- 050401--                    

 

         

                           ■■ひとつきりの愛と無限の呪い■■

     
 
 
 
 
 
 
 
 
 『愛おしい自分の命を振り捨てるほどに私を愛してくれるのは、誰?』
 

                           ~コゼットの肖像 特別版・コゼットのセリフより~

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 薄く張り付いている首の肌を引き伸ばして、瞳と日差しを繋いで遊ぶ。
 くるくると回る陽の恩恵が、整い溢れた髪の魂を潤わせる。
 光が・・・・零れてゐる。
 浅ましく賢しらに、そしてどこまでもどこまでも・・・無邪気に・・・・。
 まとわりつく暖かい熱風を窘めながら、眠りたくなるまで踊り回る。
 さぁおいで、みんな。私と一緒に歌いましょう。
 柔らかな風を吸い込んで、優しく、楽しく、情けないほどに。
 誰も私達を責めたりはしないわ。
 ゆっくりと淫らに咲き誇る斜陽に階を並べて、それを眺めて眠ってしまうのよ。
 誰も彼処へ登っていく者など、居ないわ。
 其処から降りてくる者も、また、誰も。
 
 
 
 『私はあの男に殺された。』
 
 
 
 奥ゆかしき憂鬱で私を守ってくれた優しい器物達の中で、私は眠っている。
 血の涙の生成を行うべく悪しき呪言を書き綴りながら、彼らは延々と私に願いかける。
 呪え呪え呪い給え。あの男を探し出して取り殺せ。
 この穏やかな楽園の時間を引き裂いたあの男を。
 その魔なる器物達の咆吼は途切れる事無く、私にいばらの楔を打ち込んでいった。
 嗚呼・・・・私の体から熟れた血潮が零れていく・・・・。
 青空の光を蓄え幸せへの切符を紡いでくれたグラスは、
 その血を溢れるほどに飲み込んで青い光を閉じ込める。
 私達が恐れ気も無く刻んだ甘い時間を広げた時計は、
 この紅く染まった体を憎悪で埋め尽くす事に急き立てる。
 あの男を探せ、作れ、甦らせろ。
 そしてあの男を、殺せ。
 それが彼らの血の涙を流さんと願う数多の瞳の魂の願い。
 
 私はその彼らの願いを、叶えたい。
 
 
 『呪われし器物達の魂を救うためには、汚らわしきあの男を甦らせなくてはならなかった。』
 
 
 
 だから、貴方には死んで貰いたい。
 貴方は、私の愛したマルチェロでは無いけれど。
 貴方は私を愛した罪を負って私に殺されなさい。
 永莉。
 
 『私を、失いたくないのなら。』
 
 
 
 さぁ、私の呪われし幸福達の殺戮を受け入れなさい。
 この子達の汚らわしき笑顔を浄化するために。
 『器物の魂よ。もう私のために泣かなくて良いのよ・・・・・永久に・・。』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 『永莉・・・・・・・私を・・・助けて・・・』
 
 
 
 
 
 
 ◆ ◆
 
 私の描いた幸せな時間を聞き出す貴方のリズムに合わせて、
 私はゆるやかな直線を描いて踊り狂った。
 それは厳かでいて、それでいてとても滑稽で。
 貴方の視線を感じるたびに私の頬は熱を帯び、そして舞い上がった金色の髪は冷めていった。
 ほら、私の瞳が閉じてるでしょ。
 私は今度はまぶたを閉じて、わざと大仰にはにかみながら踊ったわ。
 『永莉は絵が上手なのね。』
 私の魂を描かないのが秘訣だって、ちゃんと知ってるのね。
 私の嘘、貴方は見抜ける訳無いわよね。
 こんなに簡単な嘘なのに。
 私だって、見抜けたのに。
 貴方も私と同じように死ねば、この嘘がわかるようになるのかしら。
 幸せの中の地獄が刻む鼓動が、それが私の体を踊らせる。
 くるくると、ずるずると、いやらしく、虚しく、憎悪を込めて。
 
 所狭しと駈け回る憎悪の姿の数を数えながら、それでいてその魂だけは感じない。
 なんて、鈍感。
 でも私は貴方のその鈍感さを憎むだけでは飽き足らないほどに貪欲で。
 なにが、相思相愛よ。
 永莉になにがわかるっていうのよ。
 愚かな永莉の探求心を押し留めることなんてできないのに。
 『永莉はなにも考えないで、ただ苦しいのを我慢すればいいの。』
 それが当たり前な事でしょなんて、私に言わせないでよ。
 私はあなたに、ただこういうだけ。
 大人しく、あの子達に殺されなさい、と。
 私はあの子達の願いを叶えるべく、貴方に引導を渡す。
 私は貴方を呪う。私は貴方を騙す。貴方を愛するがゆえに。貴方に本当の事を言いたいがために。
 だから貴方を、殺す。
 ほらね、私が受け止めてあげられる者達はもういないのよ。
 ほらね、私を受け止めてくれる者達はもういないのよ。
 
 『世界は幸福と希望で出来てなんて、いなかった。』
 
 『純白の砂糖菓子と信じていたものが、腐りきった肉の塊だと知ったときの私の絶望が。』
 
 貴方に、わかるはず無いわ、永莉。
 『だって永莉。貴方は、マルチェロだもの。』
 
 
 
 
 愛している者を殺す。
 愛した者に殺される。
 私を、殺さないで。
 私はただ、貴方に救って欲しかっただけなのに。
 私はただ、私を生きたかっただけなのに。
 私は本当に、貴方を愛していたのよ、マルチェロ。
 私がその事を貴方に伝えなかったのがいけなかったの?
 いつまでも少女のままの私に嫌気がさしたの?
 私、貴方が願うなら、もっと頑張って色んなことをする事だってできるのよ?
 でも・・・でも・・・・・貴方は・・・私を・・・・。
 
 
 
 さぁ、永莉、始めましょう。
 貴方の贖罪を。貴方の死刑の執行を。
 呪われた器物達よ、さぁ、お好きなようにおやりなさい。
 私の憎悪をあなた達の憎悪に換えて。
 私の幸福をあなた達の幸福に換えて。
 そして、貴方の命を私の命に換えて。
 『動いては、駄目。』
 貴方の命乞いの叫びをレクイエムに換えて。
 黙りなさい。黙りなさい、永莉。
 貴方には苦しみに耐える義務があるのよ。
 貴方は私を愛したのだから。
 貴方には罪を償う資格があるの。
 貴方に罪は無いのだから。
 私は貴方が刑に服したいというからこうしているの。
 『貴方に逆らう権利は無いわ。』
 
 だって。
 だってそうしてくれなければ、私は生きられないのだもの。
 
 貴方の愛が欲しい。
 貴方の命を燃やして熱く煮えたぎる愛を、私に。
 そしてその愛で、私を、溶かして。
 孤独の水底でやせ細っていくこのかけがえのない体を抱きしめて、
 私は永莉のその心臓に濡れ衣の刃を突き立てる。
 そして。
 私がその水底から這い上がってきても、もうそこには血の海に沈む貴方の残滓しか、無いの。
 愛した貴方・・・・・大好きな・・・・だいすきなあなた・・・・。
 
 
 十字架にかけられて消える貴方の命は、私に孤独の命を与える。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ごめんなさい・・・・・永莉。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ◆◆◆◆
 
 『茜差す夏の夜明けの丘で、あの人が目覚める。
  其処に私は居ない。居てはいけない。顔も見ず、別れも告げず、愛だけが心に涌いて。
  私は遠く去る。鬼火のような後悔を胸に、闇の彼方へと。
  私は赦されざる罪を犯した。無垢な彼の魂に私がしたことはなに?
  強姦よりも汚らわしく、毒殺よりも陰惨な。
  私は眠る。彼の愛を汚した私に安息は無い。』
 
 永莉の胸に途切れる事の無い出口を穿って。
 私を幸せ者へと盛り立てようと励ましてくれた優しい器物達が、永莉の胸の中を喰い荒らし、
 そしてその噛み千切った肉片を私に塗りつける。
 こんなの・・・いらない・・・・・いらない・・・・。
 私には、抱き上げる永莉の亡骸すら、もう無い。
 私の貪欲さは貴方の姿の原型を留める事無く、無惨に噛み砕いてしまったの。
 嗚呼・・・・・私の愛だけが零れていく・・・・・・・。
 この愛の受け皿である貴方の体は、もう無い。
 私が、壊してしまったの。
 この愛が、憎しみが、貴方を壊すことを250年の間忘れたことすら無いのに、
 それでもその時を越えて私の幸せ達は暴れ回った。
 待って・・・・やめて・・・・・永莉を殺さないで!
 永莉の命なんて、欲しくない。命で作った愛なんて、いらない!
 だから・・・・だから・・・・だから! 私は私の幸せを棄てられないのよ。
 私はだから私の命を捨てられないのよ。
 私と同じ苦しみをマルチェロに、永莉に与えないために。
 だから私は、永莉を、殺す。
 だから、永莉。私を、殺して。
 私は永莉に自らの死を選んで欲しく無いから。
 だから私も自らの死を選ばない。だから私の死は、貴方が与えて。
 
 私を独りにしないで。
 私を、助けて。
 だから私は、恥を忍んで、そして私の命を賭けて貴方に言うわ。
 私のために、死んで頂戴。
 私の側に居て。
 私はその私の願いをすべて受け入れ、此処に居てくれるという貴方の願いを聞き届ける。
 ありがとう、永莉。
 そして、ごめんなさい、永莉。
 私は貴方を殺したく無いゆえに、貴方を殺すわ。
 私はただ、孤独を忌避するために貴方を殺した最悪の人間。
 そして私は、自らのみを悪者として終わらせる最低の存在。
 だから私は、私を決して罰しない。
 私はひたすら、貴方の命を、血潮を、愛を、求めるわ。
 その果てにある絶対の孤独に、私はこの身を沈めるわ。
 私は貴方のために。
 私は貴方のために、孤独を選ぶ。
 貴方は、生きて。
 貴方だけでも、その血を零さないで。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 これが私の肖像よ、永莉。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 あとは本当に貴方次第、と結局最後まで思えなかった愚かな私が居る。
 私の安易な嘘が蒔いた種は平然と私の中に芽吹き、そしてその成長を押し留める事はできなかった。
 永莉。
 貴方はいつまで私のこの嘘を描き続けるの?
 永莉は、マルチェロは、いつまで私の夢を描き続けるの?
 私は。私は。
 この大嘘の枝葉の生い茂るいばらの森の中で、ずっとずっと血にまみれながら眠り続けているの。
 私は淫らに踊り狂う夢を見続け、そして貴方はずっとその私の夢を覗き見している。
 私は其処に居ないのに。
 体中に血を蓄え熟成させ、それで以てこのいばらを育て栄えさせている。
 そしてその棘は私の体を突き刺し、自分勝手に私から紅い血を奪っていく。
 ああ、なんて嫌な子達。
 あなた達は、だから魔物なのよ。
 聖なる肖像画に、天の時を刻む時計に、父なる空の光を蓄えるグラス。
 それを失った私を呪いの淵に繋ぎ止め、私の体から血潮を啜り取って復活する悪魔達。
 
 
 嗚呼・・・・なんて可愛い子達。
 
 
 あなた達だけが消えていく地獄を、私は決して望まない。
 絶望の水底に、其処にまで響く陽気なメロディを奏でてくれるあなた達を、私は見捨てない。
 私は、絶対に生きる事を諦めない。
 私の夢を、希望を、幸福を、絶対に、絶対に。
 私を描いた器物達の輪を打ち破って、私は再び起き上がる。
 私は其処からいつだって、始まる。
 永莉。
 私を愛して。
 愛おしい自分の命を振り捨てるほどに、私を愛して。
 私の作り上げた嘘の世界を見抜いて。
 でも。
 でも私は。
 その嘘で塗り固められた世界の中に居る。
 私はマルチェロの愛のために私は死ぬべきだと考えた。
 でも私は死ねなかった。
 私はマルチェロを呪った。
 私を殺したマルチェロを。
 私はだから美しくない。聖人でも無い。だから私のこの魂だけは綺麗な嘘で作ることはできない。
 でも、この私の魂は嘘を付き続ける事をやめることはできない。
 貴方がもし私の嘘を見抜いてしまったら、きっと。
 私のこの鼓動は、もう。
 
 
 
 
 だからお願い、永莉。
 
 私の嘘の姿と本当の魂を愛して。
 
 助けて・・・・・助けて・・・・永莉・・・!
 
 
 
 私の嘘にまみれたこの姿を燃やし尽くして、血だらけになった私の魂を抱きしめに来て!
 私はその嘘達の灰燼の輪の中で、独り狂おしく踊っているわ。
 そして私の体を切り刻んで、私のその踊りを止めて抱きしめて頂戴。
 私はその貴方の胸の中で独り悲しく泣いているわ。
 そして私の瞳を叩き潰して、その絶望の涙を堰き止めて欲しいの。
 私はその堰き止められた涙の海で溺れているわ。
 
 
 
 
 
 それでも私を愛してくれる死にかけの貴方を、じっと、見つめながら。
 
 
 私は貴方を、殺すわ。
 
 
 
 
 
 

                         ◆ 『』内文章、アニメ「コゼットの肖像」より引用 ◆

 
 
 

 

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