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◆◆◆ -- 2005年5月のお話 -- ◆◆◆

 

-- 050531--                    

 

         

                            ■■釈然としないまま、安穏■■

     
 
 
 
 
 
 気もそぞろとはこのことで。
 
 はい、ごきげんよう、紅い瞳です。
 最近は如何ですか。元気ですかみなさん。
 私はというと元気なような気がしているだけで笑顔一杯どこまでも行けるゼ、みたいな。
 そんなね、もうね、不自然にノリノリで御座いますね、実際。
 むしろ気が多いというかなんといいますか、箸が転んでも笑えるというか笑い転げているというか。
 ああ、勿論笑われてるのは私の方かもしれませんけれども、それはまぁ置いといて。
 色々な事に中途半端に首をつっこんでは、あれもいいこれもいいとウンウン頷きながらのしたり顔。
 それでいて頭の中は綺麗さっぱりの空っぽで埋まっていて、もう楽しいやら可笑しいやら。
 いやあの、別にそんな大層な事じゃないんよ。
 今、京極夏彦の「豆腐小僧双六道中」という本を読んでいるのだけれども、
 もうなんか毎日ちょこっとずつ(10〜20ページくらい)しか読んでいないものだから全然進まなくて、
 なのにむしろあーもっとゆっくり読んで終わりまでの時間を引き延ばしたいなぁ、そんな感じでね。
 だってこれ、面白いもん。
 本を読んでてひさしぶりに笑ったものねー。
 こいつはいいぜーおやっさん。
 妖怪ってものがどんなのかをわかりやすくかつ面白可笑しく語っていくそのゆるやかなスタイル、
 そしてなんだかずーんと間延びしていかないきゅっと引き締まった理解への感動みたいなのがさ、もう。
 くそ真面目なことを巫山戯ながら、いい加減なことを妙に格式ばってみたり。
 うあー、まだまだこの時間を過ごしたいー。
 ということで、てんで読み終わらせる気が無いこの読書体験をば、楽しんでおりまする。
 楽しんでるっていうか、いやでも楽しいわな、実際。
 
 愛染隊長ー。
 ということでブリーチ。アニメでやっていましたね。
 うーん、どうだろ、好きだね、なんか。
 萌え? ううーん、そうかもね。
 女性キャラはなんかそんな感じかもね。織姫とか雛森とか。
 ああいうぽやっと系が妙に可愛らしく感じられる今日この頃。
 織姫はともかく雛森なんて副隊長っていう責任ある立場なのにあんなんでいいのかー、
 なんて思った思考の舌の根の乾かぬうちにああいうのがひとりくらいいてもいいかなー、みたいな。あーあ。
 いやさ、だって周りの人は思わず見守りたくなっちゃうでしょがー。
 男性陣は守りたいーみたいな、女性陣はしょーがないねーみたいな感じでなんだか自分が頑張れちゃう、
 そういう兄貴姉貴な風をつい吹かしたくなっちゃうような、ええと、ええっと、たぶん、そう。
 で男性キャラはっつーと、どうだろ。
 一護くらいしかめぼしいのはおらんね。恋次は微妙。いやびみょー。
 ていうかまぁ一護はカッコイイとかそういうよりはなんか、これもまた違った意味で見守りたくなっちゃうような。
 なんか守護霊かなにかですか私は。
 うん、でもなんだかちっこい子供がギャーギャー喧嘩してるのをぼーっと眺めてるような、
 あるいはむしろ全然違う言い方をすれば、あの強引を絵に描いたような姿に微笑ましさを感じるのか。
 それはさぁ、でも別に青臭いとかそういうぬるい見方をしてるわけじゃなくて、
 ただなんか彼のような行動様式を持つ人間を観るとなんだかドキドキしてしまうような、そういう感じで。
 それは自分も彼のように強くならなければ、と彼の「強さ」の部分だけを取り込んだ結果でもあり、
 また、それは同時に自分は彼の強さを含む「すべて」を得ることはできない、
 つまり私は彼にはなれないという意味で、
 私にとっての他者としての「彼」の存在を渇望した結果でもあり。
 まーもっとわかりやすくいえば、兄貴一生お供しやす!ってこと。うわ、なにそれ。
 それはともかく、うん、そういう感じで御座います。
 ブリーチはなかなかストーリーも飽きさせることなく愉快でありますれば、
 これもまだまだ見続けていくことになるでせう。
 楽しければなんでもええ。
 
 よつばと!の第3巻を読んでいてなんの躊躇いも無く涙を流しながら笑っていたのは私です。
 あずまきよひこのブログがいつのまにやら竣工していましたので、ちょいとお邪魔。
 なにやら彼にしては意外に冷静な文面が綴られているなぁと読み進めていったら、やっぱり彼でした。
 私は「へーちょ」で出すに一票。 >5/15の文面
 ちなみに第4巻発売は8月終わりだそーで、私の中では既に夏は終わりましたゆえ、もう売って頂戴。
 
 私の中でたぶん一番好きなことになっているマリみてサイトといえば、きのこなべ
 いわゆるステキサイト様です。
 管理人様は両腕を懸命に振って否定なされるかもしれませんけれど、
 そんな事は私の知ったことではありません。良いったら良いの。
 そして今は面白い盛り。なんだか新たなる境地へと向かっている様がひしひしと感じられます。
 特にあの三択は脅威です。 >5/31の(以下略)
 吉とでるか凶とでるかいやむしろ蓉子様がどう出るかが気になります。
 で、今日の時点での投票所内の趨勢はというと、
 素直な自分に乾杯と言わんばかりなほどに(2)。なんかもう(2)以外は許されない雰囲気。
 なにかこう、見ていて楽しい。
 
 最近、というか随分前からなのですけれども、私はなんだかんだで自分の書いた日記を読み直してます。
 一応推敲はしないであくまで読み直しているだけですので、
 日頃示唆している私の怠惰ぶりを裏切っていないとは思われます。
 それで割と自分で書いたものって面白いものですよねぇ。
 勿論名文とは言いませんけれども、でも逆に自分がどれほどの事ができるのか、ということがわかって、
 そうすると今度はああ私にはこんなことが書けたんだなぁ、
 とそういう自己発見による感動を呼び覚まされたりもします。
 それは自分が目標とする文章のカタチと現在の自分の文章のカタチとを引き比べて、
 それで大仰に暗い顔して嘆息していることとは、たぶんてんでかけ離れていて。
 いやーこれは、私はこれだけのことが今できるっていうのはそれはとっても不思議なことで、
 それでかつ驚きでもあるんだよなぁ、って、そうやって今の自分を愛することができる自然状態なのです。
 別の言い方をすれば、自己が存在することへの驚き、そして愛ですね。
 そしてそうであるからこそ、その状態にいるからこそまだまだ上にいける、そう思えるのですよね。
 たぶんそれって、きっと永遠に続くことだと思います。
 上には上が、だからこそ私は常に上を見据えている「今」に居るわけで、
 そしてその「今」はいつも嬉しいほどに愛しいものであって。
 今で無い時間なんて、私達には心配する必要が無いくらいに、絶対に有り得ないですし。
 私達は過去の私も未来の私も想うことはできても実感はできませんものね。
 あーこれって結構幸せだよね、
 と、その想いを片手に今日も過去と未来を想いながらのらりくらりと生きていけるのでした。
 勿論、大空を見上げながら。
 
 
 
 
 「ローゼンメイデントロイメント」、TBS地上波にて今秋放送決定!
 
 想定の範囲内です。(小躍りしながら)
 
 
 

 

-- 050527--                    

 

         

                           ■■信じられる嘘としての言葉■■

     
 
 
 
 
 
 『相手を傷つけるために嘘を付くこともあれば、好きだから嘘を付くこともある。
  大事なのは、その人が自分にとってどういう友達かって事ね。』
 

                           〜第八話・勝子先生の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 『絶対、嘘じゃない。』
 
 なんで嘘を付くのか、だって?
 そんな事俺に訊かれてもね。
 大体、俺は嘘なんて付いていないよ。
 いつも本当のことを言っているつもりなんだけどな。
 まずそれを信じて貰えるかどうかで、俺の言葉の位置が決まると思うよ。
 俺が嘘を付いているのか、いないのか。
 それを俺に決めさせるって、それは無理があるよ。
 だって俺は最初から嘘を付いて無いって言ってるでしょ?
 でもそれを信じられないから、なんで嘘を付いてるのかって訊いてくる訳なのだし。
 だからそれは自分で考えなくちゃ。
 俺はその事に関しては、全く手助けできない。
 俺はただ真面目なのか巫山戯てるのかわからないような、そんな目で立夏を見つめるしか無いよ。
 立夏からすればそれは、きっと真面目な目にも巫山戯てる目にも見えるだろうけれども。
 そしてそれはたぶん、そのどちらかひとつなのかどうかすらもわからないとは思う。
 それも全部、立夏が決めてよ。
 俺の事、信じてよ。
 俺は立夏に信じて貰えるに値しない奴だ、なんて言わないからさ。
 俺はだから最初から言ってるの。
 俺の事、信じてよ。
 
 俺がほんとうに立夏のことを好きかどうか、だって?
 そんな事俺に訊かれてもね。
 大体、そんな事訊かれること自体心外だね。
 俺は初めから立夏の事好きって言っていたはずなんだけどな。
 え? そんなの言葉だけじゃんか、だって?
 でも少なくとも言葉ではそうとしか言い表せないじゃない。
 好きって言葉、シンプルで好きなんだけどな。
 それじゃ不満?
 その言葉が嘘だと思う?
 それじゃ俺はどうしたらいいのかな、立夏。
 俺が真剣だってこと、どうやったら信じて貰えるかな?
 好きという言葉が嘘かどうかなんて、そんなの俺には証明できないと思うけど。
 そういう俺の態度が気に入らない、というのなら治すよ。
 こういう俺の態度も気に入らないのなら、それも治すよ。
 あはは、キリが無いよね。
 ごめん。
 別に巫山戯てはいないよ。
 でも俺が真剣かどうか、それは立夏に信じて貰うしかないな。
 
 
 俺は本当の事しか言わないよ、立夏。
 
 
 
 ・・・・・・
 
 草灯はいつもこうなんだ。
 ほんとか嘘か全然わかんなくて、
 たぶん嘘なんじゃないかって俺が思い始めると、どうしてもほんとにしか思えなくなったりして。
 俺を混乱させるなよ、草灯。
 ほんとのことしか言わないなんて、嬉しくなるような大嘘を平気で付くなよ!
 
 俺はほんとの草灯が知りたいだけなのに。
 俺に見栄張ってどうなるんだよ。
 俺の事ほんとに好きなら、嘘なんてつけるはずないだろ。
 俺は弱い草灯とか、情けない草灯とか、そんなのにこだわんないよ。
 草灯は草灯でいいじゃないか。
 俺にとって草灯は・・・・・。
 
 
 
 ◆◆◆
 
 紅い空の上へと千切れた雲の残骸が戻っていく。
 汚くも綺麗でも無い間の抜けた川の流れが街の喧噪を片づけていく。
 訪れた束の間の終息に囚われて、図らずもこの体で感じてしまった。
 風が、止まっていた。
 その流れの中に居たはずなのに、いつのまにか其処から投げ出され、此処に居る。
 青々と勇ましく咲き誇る川辺の緑の隣で、されるがままに狼狽えていく。
 これで、良かったのかな。
 この体を前面に押し立てて、限りなく惜しげもなく顕れる眩しい光に包まれて、
 それでボロボロになるまでスペルを唱え続けて、少しづつこの体の中にその光を取り込んで。
 それは。
 もしかしたら情けないこの体の方こそ、その光の中に溶け出していっているのじゃないか、
 そう思い始めた頃にはもう、目の前は真っ白で。
 そして気付いたら、此処でこうしてぼーっとしていた。
 呆然としていた訳じゃない。
 今でも頭の中では狂おしいほどに言葉が螺旋を描きながらくねり続けている。
 俺のこの体が止まっても、この俺の言葉は決して止まらない。
 まるで壊れたラジオのように、ただただ穴だらけのこの体から言葉だけが漏れ出ていって。
 『勝てと言われても、誰も俺に戦えとは命令していない。』
 TRUSTLESS。
 信無き信。
 命令されなくちゃ、やる気無くなっちゃうよね、ほんと。
 
 
 『ごめん。』
 
 
 立夏に見せられない俺の姿が俺の目の前に舞い降りてくる。
 それをなぜ見せられないのかという問いの上で、見せてたまるかという俺が嗤っている。
 そんなこと、問うこと自体、浅ましい。
 俺が嘘を付くのは俺が本当の事を言えないから。
 俺が本当の事を言うのはそれが本当である事を証明できないから。
 嘘を付く際に願い懸ける事は、ただひとつ。
 どうか、この嘘が見破られますように。
 俺は立夏に嘘の言葉を魅せる罪悪感に酔いしれもせずに、
 ただただ素面のまま懺悔の言葉を紡いでいた。
 ごめん、立夏。
 本当の事が言えなくて、ごめん。
 嘘を付いて、ごめん。
 
 
 嘘を付いている俺を魅せたくて、ごめん、立夏。
 
 
 立夏のために嘘を付いているとか、そんなことを言うつもりは無いよ。
 俺は立夏のせいになんかしないから。
 でもね、その代わり。
 俺は立夏に命令して欲しい。
 清明が俺に立夏のことを好きになれ、と命令したように、
 立夏も俺に立夏のことを好きでいろ、と命令して。
 それで、おあいこ。
 これって、平等だよね。
 俺は立夏のために嘘を付く俺の姿を立夏に魅せつける権利と引き替えに、
 立夏にはほんとうのことをちゃんと報告する義務を負う。
 でもね、これはね、立夏。
 ある意味で俺達ふたりの勝負なんだよ。
 俺は立夏のための見栄を張るために頑張るから。
 立夏はこのままだと、だから俺に負けちゃうよ。
 うん。
 それだけだと、立夏は俺に命令する奴隷、ってことになっちゃう。
 だから立夏はそれに対抗するために、俺にほんとうの事を言わせるように努力する。
 俺がどうにもならないくらいに追い詰めて問い詰めて、俺に真実を吐かせるように懸命に。
 このいやらしい儀式が今、俺達の前にあることを立夏は気付いているのかな。
 というより、俺がそう気付かせないために支払っている努力は有効になっているのかな。
 
 
 
 立夏の目の前の俺は、今どうなっているのかな。
 
 
 
 
 
 
 ・・・・・・
 
 『立夏くんと誰よりも仲良くなりたいのに・・・・・・』
 
 私だったら・・! 私だったら・・・・!
 立夏くんの言葉なら! 立夏くんが私に言ったことなら!
 それが嘘でもほんとでも、ぜんぶぜーんっっぶ信じられるっっ!
 ほんとなんだから!
 私は立夏くんが好き! 絶対絶対好きなんだから!!
 私は立夏くんを信じるよ。
 だって! だって! だって!
 
 
 
 私は立夏くんが好きなんだもん!!!
 
 
 
 
 立夏くんが私を見てくれる。
 
 立夏くんが私の言葉を聞いてくれる。
 
 そして立夏くんが私に嘘を付いてくれる。
 
 
 
 
 『どうやったら立夏くんに近づけるのっ? 教えてっっ!』
 
 ねぇ教えてよ、草灯さん!
 
 
 
                            ◆ 『』内文章、アニメ「LOVELESS」より引用 ◆
 
 

 

-- 050525--                    

 

         

                               ■■批評という名の醸成■■

     
 
 
 
 
 
 冬目景「ハツカネズミの時間 1」(講談社)を読んだ。
 
 
 ◆◆◆◆
 
 冬目景という作家はほんとうに存在するのだろうか。
 そのような疑問をふと感じてしまうような絵の連続が、そこにはあった。
 それを見て私が思うのは、そこにあるのは冬目景という現象だ、ということであった。
 ありきたりの借り物のようなストーリー、及びそのライン、
 そしてどこかで見たような人物の造形の連続。
 それらが無造作に繋げられているだけのはずのそこにあるものには、
 なぜだか知らないが、とても奇怪な仕掛けが施されていた。
 そしてそのカラクリが作動すると、その連続した絵達があろうことか勝手に動き出す。
 まるで、誰も知らない暗黒の中を描いたかのように。
 それは別に奥が深いとか、なにか哲学めいたものがあるという意味で無く、
 ただただ暗がりの中からなにか得体の知れないものが滲み出てくるのを目の当たりにしたような。
 ごく普通の世界。いや、それはごく普通の作品世界なのだと、敢えて言ってみよう。
 しかしその中に詰め込まれている物は、その表面を覆うものとはだいぶ違っている。
 なぜなのだろうか。
 当たり前の風景を描かれれば描かれるほど、
 どこかで必ず一度は見たような風な場面を描かれれば描かれるほど、
 それはそれを良く知っているはずの私の思惑とはだんだんにズレていき、
 はたと気付いたときには、もう目の前には真っ黒に塗り潰された画用紙が張り出されていて。
 そう、それでもその黒い画用紙の中の世界は動いているのだ。
 確かにありきたりで普通で安っぽい、誰にでも描ける振り付けで踊っている世界が。
 踊るほどに、自分達が真っ黒に塗り潰されていくのをその世界は無機質に感じながら。
 この仕掛けを施したのが冬目景だというのならわかる。
 だが、この画用紙を黒一色に染めていくのは、それは決して冬目景の仕業では、無い。
 
 ひとりの人間がそこに居る、とする。
 ハツカネズミの時間は、そこから出発する。
 蒼峻学園、という閉ざされた世界がある、とする。
 ハツカネズミの時間が流れているのは、常にその設定の範囲内だけだ。
 ひとりひとりの登場人物がそこに居るだけで、そこに流れる時間は大幅に変化していく。
 槙がただそこに居るだけで、次々と時間の方からそこに集まってき、
 メイ(竹冠に名)の薄い体がその色あいと共に溶け崩れて消滅に瀕し続け、
 そして桐子の動作と共にあるその存在が、そこに世界が今あることを示している。
 桐子の存在がすべてを掻き回していく様相を、この作品は克明に捉え続けている。
 この物語に意味など無く、意味があったとしても、それはまたただのひとつの入れ物にしか過ぎない。
 その入れ物の中に、びっちりと桐子の黒い髪が犇めいているような、この感覚。
 この作品で冬目景が言いたい事など無く、あったとしても、それはただの道具のひとつにしか過ぎない。
 その言葉を語るメイの姿がドロドロに真っ白に溶けて無くなっていくような、この確信。
 ハツカネズミの時間は、世界を描いてなどいない。
 ハツカネズミの時間は、人間を描いていない。
 そこにあるのは、どろっとどこまでも重く広がっていく黒いなにかだ。
 あの絵の連続の中にあるものすべての本質は、すべてこの黒いもの、
 そしてすべてはそれが形と色を変える際に為した現象でしかない。
 
 これは相当、ぞくぞくする。
 
 姑息な言い方をするのならば、「ハツカネズミの時間」という作品は、
 冬目景が描いたモノでは無くて、冬目景自身である。
 冬目景が体験してきた数々の事象(当然私達も経験したであろうことも大いに含む)、
 それを自らの内で統合し、そして吐き出して描いたものである。
 冬目景の中にあるものをそのまま見ているような。
 きっとそれは、冬目景が見ているもの、とは決定的に違う。
 冬目景が見ているものは、描き出された後のこの連続した絵なのである。
 つまり私達読者と冬目景は全くの対等であるとも言えようか。
 今ここにあるのは、この描き出された絵を見ている冬目景と私達だけである。
 私達にはこの真っ黒に塗り潰された絵がなにを意味するのかわからないように、
 冬目景にもまた、なぜこんな絵になったのかわかりはしないだろう。
 
 その不可解さが、よりこの作品の不可解さを増している。
 
 LUNO、そして幻影博覧会を読んだときに感じた「陳腐さ」が、
 ここに来て飛躍的にその洗練さを増してきている。
 あまりにあっけらかんと頼りないほどにありきたりなイメージを提示されているのに、
 読む側は圧倒的にそこに引き込まれてしまう。
 ありきたりなのに。陳腐なのに。ベタなのに。
 作者も、そして読者たる私達もなによりもそれをわかっているからこそ、
 そのよくある姿形が醸し出す可能性を開拓していこうと駆り立てられるのだ。
 そしてその私達(きっと作者自身も)が駆り立てられた先には。
 誰も知らなかった、最初からそこにあった暗黒が待っているのだ。
 私達がどう思おうと、既にその真っ黒な世界は動き出している。
 如何ともしがたい、圧倒的な時間が、其処には平然と流れている。
 
 
 ハツカネズミの時間は、誰にも止められない。
 
 
 
 
 
 
 冬目景「ハツカネズミの時間 1 」(講談社)を、紅い瞳はお勧め致します。
 
 あ、この最後の一行だけ読んでくだされば結構ですから。
 ていうかハツカネズミの時間をみんなで読もう!そして萌えよう!
 
 
 
 
 

 

-- 050522--                    

 

         

                                  ■■日々の時間■■

     
 
 
 
 
 
 日本vsペルーを見忘れた。家に居たのに・・・・・家に居たのに・・・っっ!!(挨拶)
 
 さて、さて、さて。
 ごきげんよう、紅い瞳です。
 特に書くべきことも見あたりませぬし話題を創り上げる気もしませぬゆえに本を少々借りてきました。
 なんか久しぶりだなぁ。
  
 
 ・堺屋太一「豊臣秀長 -ある補佐役の生涯 上下-」(文春文庫)
  :今読んでいる途中。読み始めると止まれないほどにシャキシャキとしている面白さ有りマス。
   やっぱり歴史小説はこういう娯楽性が真髄だよなって思えます。政略者としてのスタイルを楽しめて、
   それに付随する心地良い知性に酔えれば、それで。
 
 ・京極夏彦「-本朝妖怪盛衰録- 豆腐小僧双六道中」(講談社)
  :お気に入りの人。ていうか2003年に出てたんですか。結構前じゃないですか。
   これまで一切このタイトルを知らなかったですよ。涙。しかし相変わらず分厚いですネ、この人の本。
 
 ・岩井志麻子「悦びの流刑地」(集英社)
  :なんか図書館に行くたびにこの人の新しい本が入ってるような。どんだけ書いてんですかこの人。
   とはいえこの本はそんな新しい部類の作品じゃ無くて私がまだ読んでいないだけのこと。
   だってこの人の本読むの疲れるんだもん。読後感は最悪だし。
   でもその最悪さを求めることをやめようとも思わないほどにすごい物ばっかり書いてるわけで、
   これはもう相当長くお付き合いすることになるでしょうし、既にお世話になっています。
   てか、この本前に借りてきて読み始める前に返したような気が・・・・。
 
 ・太宰治「斜陽 -他一篇-」(岩波文庫)
  :そういえば斜陽はまだ読んでなかったとはたと気付きまして候。
   太宰治は読むときは読んでばかりなのだけど、読まないときは全然なので再度挑戦。
   借りてきても読む前に返す率ナンバー1の座を降りられるか、乞うご期待(誰が)
 
 ・大江健三郎「二百年の子供」(中央公論社)
  :私が接する中で難しくて手が出ない人の1、2を争う人。
   正直わけわかんない事書く奴なんてどっか飛んでってまえーとか叫びたくなるけれど、
   そんな事言ってたら全然私が成長できないし楽しくも無いしむしろ情けないし、
   だからあなたはあなたで難しいままでそこで待ってて頂戴、
   となぜか敵に塩を送るようなことを宣いながらまた懲りずに借りてきてしまいました。てへっ。
   いつか読めることができますように。ということで放置決定(ぉぃ)
 
 
 
 
 以上、終わり。
 
 
 

 

-- 050520--                    

 

         

                               ■■涙が証す嘘の言葉■■

     
 
 
 
 
 
 『優しい人は凄く敏感なセンサーを持ってて、理由が無くても察知する。』
 『ごめん唯子、お前のこと馬鹿だと思ってた。だけどちっとも馬鹿じゃ無いよな。』
 

                           〜第七話(第八話予告)・立夏の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 戸惑うように舞降る紅い雪が唇の先を通過していく。
 体を覆う枯れた虹色の皮膚がその積もり往くであろう雪達の重みを推し量る。
 一枚、二枚、三枚。
 青冷めた唇を紅く染めていく雪の欠片を数えながら目の前に顕われる淡い光の姿を夢見ている。
 この荒れ狂う吹雪の中でそんな事ができるはずも無いというのに。
 
 先生。
 起きてください。
 
 
 『もう暗いから、早く帰った方がいいですよ。』
 
 
 
 
 
 

 ◆ ◆

 

 TEARLESS

--涙無き涙--

--それは在るがままの涙によって壊される--

 

+

 
 
 遠くで誰かが叫んでいる。
 それが誰の叫びなのかは関係無く、ただ俺はその声に従っていた。
 そしてその叫びの中の言葉に支配される事も無く、
 ただただ俺はその絶叫に耳を澄ませることに没頭していた。
 その自分の姿に満足してた訳じゃない。
 でも不満を感じていた訳でも無い。
 俺はただ耳を澄ましている自分の存在しか感じていなかった。
 それは、そういう自分の姿を見つけてからでもなお変わることは、無かった。
 だから俺は。
 その叫び声を発している人を見つけたいと思った。
 その声の中の言葉に支配されたいと思った。
 そう考える俺の姿を見つめる暇は俺には無くて、そしてその必要も無かった。
 俺は俺を考える必要など、無かった。
 すべては、ただひとりのその人のために。
 すべては、その言葉のままに。
 それで充分だ。
 
 『メール調教か。やるな、立夏。』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ・・・・・・
 
 『なんでそんな言い方するんですか。いつもいつも嫌な言い方をして・・・。
  助けてくれたのは本当なのに。あまのじゃく!
  そんなんじゃ・・・そんなんじゃ・・・いつか友達居なくなるんだから!!』
 

 
 
 降り終えた雪の籠もる吐息の色がどうなるのかわからない。
 それなのにその吐きかけた息が色付ける指先には興味があった。
 この指がどんな風に変わっていくのか見届けたかった。
 それはたぶん。
 その指が俺の体であることも、そしてその先に指されている者が居ることも知らない傍観。
 俺は痛みを感じていながら、その痛みが何処に及ぼされそして何処から及ばされているのか、
 それを全く知ろうともしなかったんだ。
 それは果たして、ほんとうに痛みと言えるものだったのだろうか。
 俺が流していたものは、それはただの紅い水だったのだろうか。
 絶対零度のただ中で凍り付いていたのは、それは果たして俺以外だけだっただろうか。
 この体が感じた冷たい痛みを他者と共有していながら、それを知らない俺が居る。
 痛みを共に感じている、という事は俺になにも及ばさない。
 ただただ単独の激痛だけが、俺を此処に居させていた。
 俺にはだから。
 なんであんたが泣くのかわからない。
 東雲先生。
 先生が泣くのはなぜですか。
 訊いておかないと立夏に後で怒られますから。
 嫌な気分にさせていたのなら、ごめんなさい。
 これからは気を付けます。
 別に先生に悪意なんて持ってませんから。
 自惚れないでください。
 
 
 たった独りで受けた、たったひとつの痛み。
 俺の中に空いた傷が広がっていくのを、俺はただみていた。
 痛みが俺を創っていく。
 俺はそれを実感するたびに、憎悪していく。
 嘘だ。これは嘘だ。
 痛みが俺を創ってるんじゃない。
 この痛みが創っているのは痛みで出来た俺なんだ。
 俺は俺でしか無いはずなのに、いつのまにか俺の中に出来た傷跡は俺をすべて覆っていた。
 俺を包む虹色の痛みがそれが俺と俺以外を区別し、そしてゆえにそれが俺を象っていた。
 なんて醜い・・・・ただ醜いだけの醜さのなんて醜いことか・・・・・。
 『触らないで。』
 立夏、こんな醜い俺に触っちゃ駄目だ。
 
 『立夏が汚れる。』
 
 この紅く薄汚れた俺に立夏を感じさせないで。
 たぶんきっと、今の俺は立夏を感じることができないから。
 この痛みを立夏と共有できなかった俺が流す血なんて、ただ立夏を溺れさせてしまうだけの汚水だ。
 立夏は俺のサクリファイス。
 俺と痛みを共に受けて共に在る立夏を経ずして受け取る痛みなどなんの意味も無い。
 それなのに、なぜ俺は・・・・。
 
 
 
 ◆◆◆◆
 
 『ちょっと、頑張り過ぎたかな。』
 
 醜い俺の傷で立夏を汚さないことに徹するなんて、今考えれば馬鹿だったかな。
 たぶんまた立夏に怒られちゃうな。
 勝手に独りだけで受け取ってしまった独り善がりな痛みを、それをそのままにしておいて、
 それでいてその事を嘆いてばかりいたんじゃ、それは怒るよね。
 ふたり別々にして受け取ったそれぞれの痛みを、それを敢えて共有してこその愛だよね。
 俺達が繋がっていないのは、その愛を為すためでもあるのじゃないかな。
 最初からふたり仲良く揃って受け取った痛みがふたりを繋ぐのなんて、当たり前。
 だから俺達は孤独な痛みの中で足掻きながら、ふたり繋がろうと藻掻いていくんだよね。
 
 あの先生、面白いよね、立夏。
 
 東雲先生。
 あの人が見せた涙って、すごく子供っぽくて、当たり前で、だから。
 だから凍り付いていた俺の虹色の肌をそれは照らしてくれる。
 そして溶け落ちない俺の涙を砕いて、俺の中から湧き出させてくれる。
 まるであの先生の涙が、俺の中で凍り固まり続けている涙を嘲笑っているかのようで。
 俺はね、立夏。
 今ほど俺が馬鹿だってこと、思い知ったことは無いよ。
 俺は自分の中に涙があることを証明したかった。 
 泣いたことないんでしょと言われたことに、ちょっと腹が立った。
 俺にだって涙くらいある。
 ただそれを流せない理由があるからこそ、その涙は存在価値がある。
 だから涙を思う存分人に見せつける先生が子供にしか見えなくて。
 それで、うん。そういうこと。
 俺にとって俺の中だけにあるものなんて、意味無いんだよね。
 俺が涙を隠すことで得られる自己満足なんて、
 涙を魅せる事で感じる自己嫌悪に比べたら、まるで低レベル。
 そして俺がその感じた自己嫌悪によって涙を隠そうとする事なんて、
 それでも自分の中から湧き出してくる涙に翻弄され続ける事に比べたら、まるで子供。
 なんだ子供なのは俺の方かって、そう思ったよ、、立夏。
 うん、読んだよ、立夏のメール。
 
 
 『命令。これからはオレに絶対ウソはつかないこと。
  本当の事を言わないのもウソに含める。』
  
  
 嘘を付くのって簡単だよね。
 誰かのためを想って嘘の言葉で創り上げた自分を見せるのって。
 涙を我慢するのって簡単だよね。
 誰かを傷つけないために自分の傷の流した涙を凍結させるのって。
 あの人、東雲先生。
 あの人って、きっとあの人自身に完全支配されてる。
 そして、あの人以外の者が発する叫びの中の言葉にも絶対的に支配されている。
 それって、凄い事だよね、立夏。
 言葉なんていくらでも言い換えが可能で、それで代替可能なものであるはずなのに、
 あの先生は言い方ひとつから受け取る魂を固定化させていて。
 というか、あの人はすべての言葉に魂を感じているんだよ。
 だからたぶん、俺の言葉が空っぽなのを知っているし、
 だからこそ俺がどんな言葉を紡ごうともそれが嘘なのを知っている。
 そして。
 あの人はその嘘の言葉が創り出す俺に惑わされることは決して無く、
 そして俺の言葉を造り替えようとしてくる。
 あの先生はだから、スペルによる攻撃に負かされることは無く、
 ただそのスペルが間違っている事を示して泣き叫ぶ。
 あなたは嘘を付いている、と。
 あの人は俺の言葉に完璧に支配されるがゆえに、その言葉のもたらす痛みをものにできてしまうんだ。
 
 
 『戦いには、美学が必要だ。痛みを知るものが、それを知らない者に負けることはありえない。』
 
 
 俺は言葉による痛みを知らない。
 言葉の及ぼす痛みを知らない。
 言葉が創る痛みの共有を、俺はできない。
 あの先生が魅せる涙が、その俺の姿を照らす。
 俺がたった独りで言葉遊びをしているその姿を。
 俺はゼロと同じ。
 俺は俺の言葉が俺以外の者だけで無く、俺自身をも凍らせていたことに気付かなかった。
 そしてあの先生の素直な涙のように、俺の涙も真っ直ぐに流れ落ちて往きたかった事も。
 先生と俺の涙の幻が、戸惑いながら俺達の目の前で踊っている。
 
 
 
 『わかってるよ・・・・・・清明。』
 
 
 
 TEARLESS。
 それが嘘付きな俺が最後まで在り続ける姿なのだと。
 俺はそれを永遠に誰かの涙で壊しながら、この痛みを証していきたいと思っている。
 
 
 
 
                            ◆ 『』内文章、アニメ「LOVELESS」より引用 ◆
 
 

 

-- 050516--                    

 

         

                                    ■■共犯意識■■

     
 
 
 
 
 
 綺麗な青空が広がり気温の方も涼しく良好で大変過ごしやすい今日この頃。
 皆様如何お過ごしでしょうか。
 さて、紅い瞳です、こんばんわ。
 先日はLOVELESSの感想を初めて二部構成で書くことができました。
 内容的にも今までとは一線を画したものを書くことができ、なんとかほっと胸を撫で下ろしています。
 ようやく今までの実験を重ねた成果を得られたもの、と前向きに考えています。
 
 で、まぁ。
 以前の日記でうまく書けないのはそれは魂が抜けてるからじゃ、涙ながらにまずはアニメを観ろ、
 とかなかなか気合いを入れて自分に言い聞かせていたような気がしますけれど、
 ええと、うん、結果オーライ。
 涙の一粒も流さなくてもなんとかなりました。
 LOVELESS以前のアニメの感想は、大体チャットなどで話題に上ってたりして、
 それでいつのまにかその話題を誰かと共有しているという意識が、なんかさモチベーション高めてた。
 マリみてのときなんて、他のサイト様でもガンガン燃え上がってたし、
 ローゼンのときは銀光さんとふたりでなんかローゼン観を磨きあってたし(たぶん)、
 そういうのって自分で思っている以上に私に影響与えてるんだよねぇ。
 それはたぶんそのお互いが共有しているもの自体は関係無くて、
 誰かとなにかを共有している、そういう意識が重要だったりとか。
 で。
 唯一例外があったのをふと思い出した訳で。
 すてプリ。
 これって私が感想書いてたのはケーブルで再放送してたときで、
 私の周りにゃ誰ひとり観てる人は居ないわ当然話題の端にも上らないわで、ある意味絶対孤独。
 あのときは確かに私はだーれのことも意識してなかったし、
 誰かに感想を読んで貰いたいなぁなんて事も上の空でも思った事無かったし。
 むしろいいよ私は私でひとりやるから、みたいな。イジケも入ってたくさい。
 なのにさ、あのときの文章って、一番好きなんだわ。
 ある意味最も上手かったとも思う。
 なぜかって考えると実はもうわかってたりして、ええと、それはね、あのキャラと共有してたのよ。
 いや、キャラっていうかあの世界っていうか作品っていうか、むしろ作者と?
 作者と同じ立場に立ってたって言うか。
 パシフィカとかラクウェルとかシャノンとか色々居たけど、そういうのもう自分の中に出来てちゃって、
 なんかもうそれを書くことでガンガン成長させて物語りを為さしめていたというかなんというか、うん。
 なんつーか、あの世界っていうかあの空間の事がすんなり私の中に入っててさ、
 言ってみればあそこにあったもの全部と相談して、どうやって君達を表現しようかって、
 そうやって共犯関係を築きながら感想を書いてたんだよね。
 いやさ、たぶんそういう事だったんだよ。ていうかそう思ってください。後生だから。
 
 あ、なにが言いたかったかというとですね。
 LOVELESSもなんかそんな感じになれたのでしょうね、きっと。
 や、なんかもうそんなんじゃないような気がしてきたけど、そういうことにしておく。
 今日はなんか、共犯意識って言葉を書いてみたかっただけなんです。
 きっと今週のLOVELESS感想は三振ですね♪ (先週のはビギナーズラック)
 
 
 やる気無。 (いつものことです)
 
 
 
 ◆◆
 
 企画:
 思いついた端からアニメの感想をノンストップで垂れ流そう!
 
 実行:
 まーLOVELESSはじっくりことことと焦らずたゆまず大人げ無く詰めていけば良いのでもういいでしょう。
 今一番気になるのはLOVELESSとしても、次点としてはハチミツとクローバーでしょうね。
 これはなんていうかとても勉強になるというかむしろLOVELESSの前に観て良く学んでおこう、みたいな。
 誰かにとってのあなたの役割はあなたしかこなせない、かぁ。改めて言われるとプチ感動。あ、それだ。
 極上生徒会は気になるといえば本当は一番気になるのですが、これはむしろ私的にパブロフの犬状態。
 極上と名の付くアニメだったら内容如何によらずもう全部OK、とにかく笑い転げられます。楽し過ぎ。
 そのうち極上という文字を見ただけで思い出し笑いしそうな過激反応っぷり。条件反射完成!
 とにかくぷっちゃんの謎はまた思い出したように解明していただきたい(そしてまた謎は深まりつ)
 ふたつのスピカってご存じ?今私的に一番の泣きアニメ。最近こういう頑張りっ子に弱いー。
 そして頑張りっ子に感化されて苦しい現実から立ち直ろうとする子とか、もうね。
 応援できるって、凄いことだよねやっぱり。
 ガンダムシードデスティニーは今をときめいているのだけれども、
 私はなんだかんだでアークエンジェル派。今泣いてるカガリの姿をどう見るかでその人の思考がわかる、
 なーんて最近の世の中どんどん単純化が進んでるような気がしてハラハラな今日この頃。
 もうなんか、どんなに暴れてもシンの姿が見えないや。
 トリニティブラッドはねぇOPが酷すぎ(個人的に)というところからしか始めることができなかったので、
 どんなに神父様が頑張ってもあんまりうんうん頷けないっていうかOPは関係ないか。
 でもなんだかあの世界まるまるちぐはぐな感じがして、
 なんでそこでキミタチ生きてるのとか素で聞きたくなっちゃうような殺風景でありあわせっていうかその。
 EDは好きなんですけどね。(唯一のフォロー)。あと能登の人の声が志摩子さんのにしか聞えません。
 スピードグラファーはもう駄目助けて死ぬーていうか無理。そしてごめんなさい。
 バジリスクはカッコイイと思います。まず将軍家の跡継ぎを忍者合戦で決めるっていう馬鹿さ豪快さ!
 人物の動きとかも滑らかで奥ゆかしくてなんか格好良くて(語彙無し)。
 できればこれからどんどん純粋に盛り上がっていって欲しいと思います。個人的に朧とかでも。
 普段強気な人が時々見せる弱気より普段ぽえっとしてる人が時々見せる殺気が好k(以下削除)
 ツバサ・クロニクルは真下監督のやる気度が下降しているのかなと頭をひねってみるとあら不思議、
 目新しさが無くなってきて萎えちゃった私が居るのでした、おわり。ていうかおわるな。
 ということで目下鋭意視聴継続努力中で御座います。頑張れ。気合い。挫けそう。
 エマはなんかもう普通に純愛万歳みたいなそんな・・・・そんな馬鹿な・・(←泥沼系を求めていた人)
 とそういう感じで魂抜けて脱力しながら見てる訳で、その・・・・・・・・・・・・ご馳走様!(まだ残ってます)
 撲殺天使ドクロちゃんはOPのヤケクソさ加減がすべてを完璧に表わしてますよね!
 内容は言わずもがな。 飛  ば  し  す  ぎ  で  す  。
 でも先生、そういうのいいと思うな。
 
 執筆時間:
 約25分
 
 ひと言:
 思っていた以上に無駄な時間を過ごしてしまいました。
 
 
 

 

-- 050514--                    

 

         

                               ■■冷たくて痛い言葉 2 ■■

     
 
 
 
 
 
 
 『もし立夏くんがいきなり消えてしまったら、友達はみんな悲しむわ。それが好きって事じゃないかな。
  先生は立夏くん、好きよ。』
 

                           〜第六話・勝子先生の言葉より〜

 
 
 
 
 

 ◆ ◆

 
 こんにちわ、立夏くん。
 元気そうね。
 ええ。疲れているように見えるから、元気そうに見えるわ。
 ねぇ、立夏くん。
 『先生にはわかるの。あなたは充分にまともで、素敵な子よ。』
 疲れるってことは、疲れるだけのことをしているからなの。
 そういうことをできるほど元気でなければ、疲れることも無い。
 だから先生には、立夏くんが今、とっても元気そうに見える。 
 立夏くんが疲れていれば疲れているほど、元気そうに私には見えるわ。
 そしてね、立夏くん。
 あなたは否定するかもしれないけれど、そうやって悩んで苦しんだりしているのは、
 それは、とてもまともなことで、そして魅力的なことよ。
 あるいはそうしていることができるということは、それは今確かにそうしている立夏くんがいるということなの。
 悩み苦しむのは、それは立夏くんだけじゃない。
 立夏くんの悩みの中身そのものは、それは立夏くんしか持っていないものだけれど、
 でもたぶん立夏くんは他の子の持っている悩みは持っていない、という意味でその子と同じ。
 いい? 立夏くん。
 悩んだり苦しんだりしていること、それ自体がいけないことだってそう思っちゃ駄目よ。
 立夏くんは人生についてよく考えるって言ったわよね。
 その考えた内容云々よりも、そう考えられる立夏くんがいるってことをもっと意識してみたらどうかしら?
 そうすると、立夏くん。
 そうして自分を意識してみると、それってすごく当たり前の事に思えてくるわ。
 だからそう思えたなら、自分はそんなに変じゃない、結構まともなんだってそう思えるようになる。
 そうすると、ほら。
 立夏くんが考えている事、それがどういう事かって事が少しはわかってくると思うわよ。
 
 『ねぇ、今日は私の質問に答えるんじゃなくて、立夏くんから話してみて。
  先生、立夏くんの話、聞きたいな。』
 
 
 ・・・・・・
 
 俺って、何処にいるのかな。
 俺、それが全然わからないんだ。
 それに、どれがほんとうの俺なのかも、わからない。
 みんなそういうの、もうわかってるんじゃないの?
 だからあんなに笑えるんだろうし、それに誰かに好きとか言えるんじゃないのかって、最近思う。
 前はお前らもわかってないくせに、なんで笑ったり好きとか言ったりするんだよ、ふざけんなって思ったけど。
 でも、そうじゃないんじゃないかって思って。
 きっと、俺だけまだわかってないんだよ。
 みんなはもう、自分自身が何処にいるのかも、どれが本当の自分なのかもわかってるんだ。
 唯子だって弥生さんだって、あんなにいい加減なのに、俺よりずっとずっとわかってるんだ。
 そう思わないと、怖くて。
 先生、ほんとはね。
 俺は他の奴らとは違うとは思ってるけど、それは他のやつより劣ってるって意味じゃないんだ。
 本当は俺は、他の奴らよりずっと賢くて、他の奴らは馬鹿ばっかりで、
 そして俺だけしかこういう事考えられない、そう思ってるんだ。
 俺はだから、怖い。ほんとうに一番怖い。
 俺がそんな優越感に浸っていられるどうしようもない馬鹿であるかもしれないことが。
 そして。
 俺だけがこの苦悩に囚われて、誰もその苦悩をわかってくれないかもしれない、ということが。
 怖くて、怖くて、泣きそうになるんだ。
 ・・・・。
 ほんとうの俺がいる。
 それは確かにいるとは言えないけれど、
 それはどちらかというと、いなければいけないと思っている俺がいる以上、確かにいるはずなんだ。
 そして今の俺は、どう頑張ったってその俺にはなれない。
 昔の俺には戻れないんだ。
 それでも俺にとって一番大事なのは、過去の自分なんだ。
 だから・・・・今の俺と、そして未来の俺はただ消えていくだけなんだ。
 
 『なんで人間は生まれてくるの・・・なんで人間は生きなきゃならないの・・・
  どうして・・・・どうして人は、死ぬの・・・・?』
 
 
 
 『もしかして、大人もしらないの?』
 
 
 
 
 
 ◆◆◆◆
 
 立夏くんは、ほんとうの自分というものがいると、そう思っている。
 そしてそれは昔の自分で、だから今の自分はその本当の自分のために消えなくちゃいけない。
 そう考えているから、立夏くんの中にはほんとうの自分、というのがいる。
 そういうことを考えている、今の立夏くんがいる。
 だから立夏くんは必然的に消えなくてはいけない運命を自分に課しているのね。
 そして。
 今の立夏くんがここに居る限り、そのほんとうの自分というのも、その運命も実在する。
 立夏くんにとっては、それは紛れも無い事実で、言葉でどうにかなることでは無い。
 そういうことよね?
 ほんとうの自分になりたいと、そう考える立夏くん無くしては、今の立夏くんもありえない。
 逆に言えばそれは、今の立夏くんが消えてしまえば、そのほんとうの自分も居なくなる。
 それはきっと立夏くんにとっては、とても眩しい光で、そして憧れるイメージなのよね。
 立夏くんの中には、常に自分の死のイメージがあるわ。
 そして死は怖れの対象でありながら、それと同時に求めている対象でもある。
 だから実は、ほんとうの立夏くんに今のあなたが辿り着くことは有り得ないの。
 わかるかしら?
 だって、ほんとうの自分に立夏くんがなるってことは、今の立夏くんが消えるってことだけど、
 でも今の立夏くんが消えるってことは、ほんとうの立夏くんも消えてしまうってことになるのだからね。
 ほんとうの自分が居る、と考えている立夏くんが居なくなってしまったら、全部無くなっちゃう。
 ほんとうの立夏くんも、そしてそのほんとうの自分に与えるはずだったあなたの人生も。
 私、立夏くんを見ていて、わかったことがひとつあるの。
 立夏くんはほんとうの自分と向き合わなくてはならないことが嫌い。
 それが嫌で嫌でたまらなくて、ほんとうは逃げ出したくて堪らない。
 そして、それ以上に。
 立夏くんは、ほんとうの自分を取り戻すために今の自分は消えなきゃいけない、
 そう言うときに、必ずとても悔しそうな顔をする。
 なんで今の俺が消えなきゃいけないんだ、消えたくない、ふざけんなっ、て。
 そしてその立夏くんの怒りの矛先は、
 ほんとうの自分を消すためには今の自分が死ねばいいんだと、そう考える自分にも向けられる。
 それがほんとうの自分を消してしまうから、という想い以上に、
 たぶん今の自分が死にたいって思うことが悔しくて情けなくて悲しいからなんだと思うわ。
 
 私には、立夏くんの見つめている光がふたすじあるのが見える。
 ほんとうの自分をそれでも求めたい、という根強い光と、
 なおそれでも今の自分を生きたい、という必死な光が。
 そして、ね、立夏くん。
 あなたはそれを全部わかっているのだと、先生は思っているの。
 立夏くんは、自分が今此処にいるってことを良くわかっている。
 色々なことを考え悩み、そして他の人達に好きって言われて戸惑う立夏くんが居ることを。
 立夏くんはほんとうの自分が存在することを実感する以上に、
 今の自分も確かに居ることを感じているのよ。
 だから立夏くんの考えてること、たぶんそれは立夏くんは答えを求めての問いでは無いのじゃないかしら。
 なんで生まれてくるのか、なんで生きなくてはならないのか。
 それは生まれても幸せになれないなら生まれない方がまし、
 生きていてもどうせ死ぬのなら生きていてもしょうがない、そういう立夏くんの想いの発露でしかない。
 でもその考えを続けているってことは。 
 それは立夏くん。
 あなたがそれでも生まれてきて良かった、それでも生きていて良かった、そう思いたいからなのよ。
 
 『立夏くん。いつか消えるのはあなただけじゃないのよ。いつかみんな、消える。』
 
 
 
 あなたがなにを考えようと、あなたはあなたで在ることをやめられない。
 そう、本当はね、全然やめられないの。
 それはね、立夏くんがほんとうの自分を求めている以上に強固なものなのよ。
 なぜって。
 だって、簡単なことじゃないの。
 立夏くん。
 あなたはあなたであることをあなたが決めたのかしら?
 あなたがあなたであることは、それはあなた以外のなにかが決めたこと。
 だから安心して、立夏くん。
 どんなにほんとうの立夏くんの姿が重く確かであっても、
 決して今のあなたが消えてなくなってしまうことは無いの。
 あなたは、あなたが想う以前に、既に此処に居たのよ。
 それは運命とか、そういうものでもあると思うの。
 そしてだから。
 だからなおの事、あなたは安心して、改めてほんとうのあなたの姿を求められるのだと、私は思うわ。
 ほんとうの自分を探し求める事自体は、先生は全然悪いことだとは思わないし。
 絶対に変えられないものがあるからこそ、なにかを変えようと思うことができる。
 立夏くん、いいかしら?
 あなたが求めるほんとうの自分、というのは、それはあなたの過去の中には、無いわ。
 過去っていうのはね、立夏くん。
 既に今現在の一部になっているの。
 違う言い方をすれば、沢山の過去の寄せ集めになって出来ているのが、それが今現在なの。
 ちょっと突飛な言い方をすれば、あの頃に戻りたいとそう考えている今の自分が居るだけなのよ。
 『小学生の私は消えてしまった。中学生の私も、高校生の私も、五分前の私ももう戻ってはこない。
  みんな消えてしまったのよ。』
 そしてそれは。
 消えて、私の中に溶けて今の私とひとつになったの。
 だから、昔の私も私。
 或いは、昔も今も、私は私。
 人生とはなにか、って聞かれたら、先生はそれは「私」です、ってそう答えるわね。
 その私の最先端に今の私というのが居るだけね。
 ということはね、つまり。
 
 
 ほんとうの立夏くんは、立夏くんのこれからの未来の中にしかいないのよ。
 
 
 たとえ「2年前までの立夏くん」がほんとうの立夏くんなのだとしても、
 それは「2年前までの立夏くんを獲得する未来の立夏くん」でしか無い。
 だから私は、別に立夏くんが昔の立夏くんを目指して生きることに反対しはしないわ。
 それは、2年前までのあなたしか受け入れてくれないお母さんに受け入れて貰いたい、
 そういう今現在の立夏くんの純粋な願いなのだもの。
 それ自体は先生は良いことだと思うわ。
 お母さんに受け入れてくれることを諦めるよりはね。
 でもだから逆にいえば、それはあくまでスタートでしかないのよ、立夏くん。
 だって今の立夏くんは、お母さんに好きとも嫌いとも言えないでしょ。
 昔の自分と違うことをしはしないかと、それを怖れて好きとも嫌いとも言えないでしょ。
 それって、ほんとうの自分のイメージに縛られているって事なのよ。
  でもだからといって、その自分にまとわりつくほんとうの自分を引き裂いて自由になるのじゃ駄目。
 なんとかそれをうまくほどいていけるようにしていかなくてはね。
 それはとっても難しいことだとは思う。
 でもね、立夏くん。
 だからこそそれは、とてもとても時間をかけてゆっくりとやっていくことが許されていると思うの。
 それこそ、あなたの人生を通して成し遂げることなんだってね。
 それはこういう風にも言えるわね。
 そうやって、ずっとほんとうの自分と向き合っていくのが人生だって。
 お母さんとのことも、そう。
 何処かにこれと言った解決策がある事なんて無い、とは、先生はあんまり言う気はしない。
 先生はむしろ、何処かにその答えがあると思ってそれを求め続けること、それが大事だと思うの。
 
 大人はね、立夏くん。
 子供の知らないことを沢山知っているけれど、知らないことも沢山沢山あるの。
 でもその知らないという自分の姿を良く知っていて、だから知ろうと思える自分と出会えているの。
 別にこれが答えだ、なんてものを持って大人は生きている訳じゃない。
 けれどね、これが答えだ、って言えるようなものを探し続ける自分を否定しない心は持っているのよ。
 
 
 
 
 だから、頑張って・・・・・立夏くん。
 先生、あなたを応援してるわ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 好きって言われることは、確かに落ち着かない。
 その言葉を聞いたとき、ぞっとした冷たさに包まれることがある。
 でもその冷たいものを受けた瞬間に感じる痛みが、自分の体が此処に在ることを教えてくれる。
 立夏くん。
 あなたを好きって言ってくれるお友達を大切にしなさいね。
 その人達があなたを存在させてくれるのよ。
 そして。
 あなたがその人達の好意を受け入れることで、その人達を存在させていることにもなるの。
 あなたが此処に居る事自体が、その人達を其処に居させていることも忘れないで。
 そして。
 お母さんのことは、ゆっくり、そして着実に考えていきましょう。
 先生はその手伝いをしてあげられると思うわ。
 
 きっと私が今日言ったことを、今の立夏くんなら充分に実行できると、先生は思っています。
 
 
 
 
 
 
 『大切なのは生きている今このときで、
  いつか消えるまでの一瞬一瞬を精一杯生きていくのが人生じゃない?』
 
 
 
 
 
 ほんとうの自分をほんとうの世界の中で探しながら、大嘘の「私」を言葉で創って生きていきましょう。
 私はあなたの笑顔、大好きだから。
 
 
 
                              ◆ 『』内文章、アニメ「LOVELESS」より引用 ◆
 

 

-- 050513--                    

 

         

                                ■■冷たくて痛い言葉■■

     
 
 
 
 
 
 
 
 
 『「好き」・・・・・・なんでだろう・・・嬉しいはずなのに、胸が冷えていく。
  草灯に言われると、ただ痛い・・・。』
 

                           〜第六話・立夏の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 小さな小さな光の寄せ集め。
 
 単調に流れ過ぎていく窓辺の風量を測りながら増加していく足下の光を眺めている。
 目の前に落ち着いていく光の背の影の姿を知る事も無くただただ此処に留まって居る。
 影の広がりをみせない光の抱擁。
 その温もりの中から見つめる隣の席の高みには影の無い冷暗が座っていた。
 確かに間違い在らずに、座して微笑んでいた。
 嗚呼・・・・・俺が向うにいる・・・・・。
 暖かいって、気持ち悪いね、草灯。
 
 
 

◆ ◆

 
 
 
 淡々と過ぎていく沢山の足並み達を眺めているこの体もまた歩を進めていて。
 見つめていたそれが自分の足取りであったことに気付いてしまう。
 隣で笑う人々の笑顔に照らされている俺の笑顔が其処に在る。
 そして。
 その彼らの微笑みが俺に向けられている事でどうしても感じてしまう俺の微笑が在る。
 俺、なんで笑っているんだろう。
 『俺に友達なんて、居たのかな・・・。』
 理由無き微笑を漂わせている顔の上辺をひっそりと撫でる不快に耐えながら、
 それでもこの体が歩みを刻むことを止めない俺が居る。
 俺はどうあっても歩いている。
 そしてそれも。
 その歩いている俺も、其処に居る。
 冷たい冷たい、何処か遠い俺の中に。
 それなのに・・・・なんで・・・こんなに痛いんだろう。
 
 
 
 『俺は疲れてる・・・・』
 
 綺麗に散らかっている街並み。
 なにを意識する訳でも無く、風を切りながらそこで真っ直ぐに歩いている。
 この歩みを止めることは誰にもできず、そしてこの歩みが誰かを振り返らせることも無い。
 誰かに呼び止められ、誰かを振り返らせている幻が漂う中、ひっそりと歩いている。
 それは本当に幻なんだろうか。
 俺にはどうしてもそれを幻として掻き消すことができないでいる。
 だってそれを消してしまったら、この整えられた冷たい街すら無くなってしまいそうで。
 そのなにも無い空間の中に記していくものなんて、俺には創れない。
 醜く歪められながらも、清い魂で羅列されていく俺の言葉で世界を描くなんて。
 嫌いなものを嫌いって、俺は言えない。
 好きなものを好きって、俺は簡単には言えない。
 俺の言葉が壊したものを、俺が治して作り変えてやることができないから。
 だからこの目の前に広がっているものがたとえ幻だろうと、俺はそれでもいい。
 ほんとうはそれが嘘の言葉でできていたって、俺は良かったんだ。
 どんなに綺麗で汚点の無い嘘の固まりの世界であっても、それが其処に在ってくれるだけで俺は。
 幻だからという理由で、それを正すつもりなんて、最初から無いんだ。
 俺は始めからそれを正すべきもの、として確かに在らせ続けていたんだ。
 うん、そうだよ。
 在らせ続けていた、ということが俺の本当の想い。
 それは理不尽だから破壊して正す、ということよりもずっとずっと大事な・・・・。
 そして俺は。
 それが大事だって事をわかっていながら、そう思うことが許せなかった。
 いや、怖かったんだ。とても。
 間違っているものをそのままにしておくことが。
 そして。
 醜く汚く、そして本当の俺では無い俺を此処に在らせておくことが。
 ほんとうはそんなものを此処に置いてはいけないのに。
 なのに。それなのに・・・・もう・・・・・。
 
 俺は此処に確かに居るんだ。
 
 触れたくない冷たさに彩られた痛みを感じている、俺が、確かに、此処に。
 
 
 
 ・・・・・・
 
 痛み無き痛み。
 PAINLESS。
 痛み無き世界に痛みをつくりだす創造行為の原型。
 そしてその創り出した痛みによってなにを為すか。
 ゼロ。
 奴らはPAINLESSの名で司る痛みによる破壊を駆使する。
 ゆえに、強い。
 その破壊は言葉によって創り出されたものゆえに、世界を破壊し尽くすことができる。
 なにも無いことを言葉で証明するのでなく、
 なにも無い世界を破壊してなにも無い世界すら無い世界を創る。
 『ゼロには痛覚、痛みは無い。』
 痛みを与えてくれる世界が無いゆえに、その痛みを感じて歪み暴れる自己も持っていない。
 ゼロ。なにも無いゆえに、なにも無い自分を創る。創れる。
 痛み無き自らの体ならば、それは痛みによって変えられていく事が無いことも知っている。
 そしてゆえに奴らは自らの発する痛みの言葉が世界を変える事無く消し去っていくことを知っている。
 ゆえに、強い。
 奴らには自分の存在も世界の存在も無い故に、すべて自由に操れるのだから。
 なにも無いゆえになにもかもが有る。
 『始まりで、終わりだ。』
 『すべてであり、無でもある。』
 すごいね、奴ら。
 
 『いいスペルだ。存在を無にかえすか。・・・いいね、すごく。』
 
 
 
 そう感じるから俺は、戦える。
 
 
 
 ◆◆◆
 
 『痛みには、慣れている。』
 
 痛みを感じないなんて素晴らしいね。
 どんな攻撃を受けても決して揺らぐことの無い心があるなんて羨ましいね。
 憧れるね、そういうの。
 そしてそれに憧れている俺が在るということを、俺は知っている。
 俺には痛みがある。
 操ることも拒否することも無視することもできない痛みを感じる俺が居る。
 どんな攻撃でも必ず激しく揺れ動く心しか持てない俺が居る。
 俺は痛みを感じるんだ。
 そしてその痛みを感じているゆえに、それを感じている俺が在ることを感じられる。
 その痛みから逃れたくて必死に足掻く俺の存在を俺は知っている。。
 厳然として、それは在る。
 痛いのは、嫌い。
 だから痛みなんてなくなればいいと、いつも必ず思っている。
 そしてそう思えば思うほど、俺は此処に存在しなくてはいけなくなるんだ。
 俺が消えてしまいたいと思えば思うほど、そう思う俺の存在は光り輝き、
 俺が痛みに耐えてなんとかそれを乗り越えたいと思えば思うほど、俺の存在は重きを為す。
 『痛みは生きていることの証。』
 痛みが、俺を存在させているんだよ、立夏。
 
 
 
 『名前は運命。運命は決して変えられない。
 
  服従しなさい。支配されなさい。
 
  それが君の運命だ。
 
  サクリファイスを守って戦いなさい。』
 
 
 
 胸の水底から冷たく這い上がってくる痛みへの抵抗を図る俺への憧憬。
 痛みに隷従していく事を求められれば求められるほど、それからの解放を画策する俺が存在し、
 痛みに支配されていく俺の中には、滾々と独立への覇気が涌き出してくる。
 そして変えられない運命があることを認めれば、それだけそれが変えられる事を確信する。
 なぜなら。
 運命が其処に確かに在るということは、それに翻弄される俺も確かに居るということなのだから。
 俺が居るのならば、それは俺にとってはそれがなにかに変えられ、自身もなにかを変える事ができる、
 そういうことであるのだから。
 俺は運命によって与えられる痛みにより刻々と支配され変えられ、
 そして俺に痛みを与える運命もまた、自らがなにかに痛みを与えているということを感じて変わっていく。
 立夏にピアスの穴を開けられた俺の体は、確かに痛みを感じた。
 そして。
 その立夏の心もまた、俺を傷つけた痛みにより戸惑い苦しんだように。
 立夏のその苦痛に歪む瞳に映る俺の姿は、とても醜くて、そして嬉しいほどに確かに在るんだ。
 
 

 ◆ ◆

 
 
 目の前に集合していく光を冷笑を以て受け入れていく。
 それがいやらしいことを承知で受け入れていく自らの無恥ぶりを嘲笑しながら。
 その笑いの中に浮かぶ冷暗の眼差しが此方を見ている事に気付く。
 嗚呼・・・・・みられてる・・・・。
 通過していくだけの窓の向うの景色にとって、俺もまた通り過ぎていくだけのものでしか無くとも、
 その一瞬の邂逅が絞り出す光の残滓がどれだけ大事なのかを俺は知っているよ、立夏。
 降り積もる寄せ集めの小さな光達が奏でる足並みのぬくもり。
 それが気持ち悪ければ気持ち悪いほどに、此処に居る俺の存在は冷たく冴え渡って往く。
 その俺の与り知らない運命に彩られた俺の変化を、俺は受け入れ、そして。
 徹底的にそれに逆らい、耐え、殺し、そして、愛する。
 拒絶するものなどなにも無い事など、無い。
 拒絶するゆえに、それは其処に在る。
 破壊するゆえに、それは其処に在る。
 支配して変えられていくゆえに、痛がりの俺は此処に居る。
 誰かを支配し誰かを変えていく痛がりの俺と共に。
 そして、だから。
 
 
 『痛いの平気なんじゃん?』
 『そんな訳無いだろ。』
 
 
 痛み無き痛み。
 PAINLESS。
 それを言葉が創り出す前に、既に俺は痛みを感じている。
 その痛みに震える俺を照らす冷たい光もまた、始めから、其処に。
 そして。
 痛みが無いゆえに痛みを創れるという「痛み」を受ける我が運命の名の下に。
 俺は。
 
 
 
 『万能であり、不可能は無い。無敵だ。』
 
 
 
 痛みなど感じない?
 涙を流したことが無い?
 本当の俺なんて何処にも居ない?
 
 
 
 
 
 
 
 
 『美しい・・・・・・・・美しいイメージだ。』
 
 
 
 
 
 
 
 
 

『ほんとうの言葉はきっと、ほんとうの世界の何処か、僕らの無口な夜に潜んでる。今もきっと。』

---by EDテーマ『みちゆき』---

 
 
 

                              ・・・以下、第二部に続く

 
 
                              ◆ 『』内文章、アニメ「LOVELESS」より引用 ◆
 

 

-- 050509--                    

 

         

                                 ■■発動力の展開■■

     
 
 
 
 
 聞いてくださいよ、みなさん。
 あ、えっと、紅い瞳ですごきげんよう。
 最近LOVELESSというアニメの感想を書いているんですけど、
 これがどうもなかなか上手く書けないんです。
 どう上手く無いのかというと、その、言葉が続いてでてきていない、というか。
 なんていうんでしょうかね、単語ごとにいちいち考えないと書き進めないというか、
 それでいて別にそうやって考え抜かれた末の言葉の並びも良い感じに仕上がる訳でも無く、
 ただもう私は頑張ったんだぞ、っていう気概を書いた本人が感じるだけで終わっちゃう、
 そういう残念なものにしかなっていないのです。
 ぶっちゃけ、美しくない。
 でまぁ、美しさとかはまだいいんです。まだまだいいんです。
 そんなことよりみなさん聞いてくださいよ。
 書いていて、全然楽しくないって、これ、どういう事かしら?
 読み返してみて顔が真っ赤になるような終わってる文章でも、楽しいものは楽しい。
 なのに、今はそんなの全然有り得ない。有り得ないくらいに有り得ない。有り得ない。
 ていうか読み返していて顔が赤くも青くもならないんです。
 むしろ白系? ふーんってカンジ?
 読んでみて、なにも感じるところが無いんです。
 はぁ、このコはなにがやりたいんだろう、みたいな。
 書いてあることはわかるんです。きっと。
 うんうん、そういうことかって。
 でも、それだけ。
 言ってることはわかったけど、だから何? っていう塩梅にしか落ち着けられないのですね。ほんとにもう。
 つまりさ、言葉だけなんですよ。理屈だけ繋げてみせただけっていうか。しかもそれも変なとこあるし。
 言いたいこと、魅せたいものがあるから書くのじゃなくて、
 なにか書こうということでなにか書き出したものをただひたすらそのまま広げているだけで。
 ぶっちゃけ、魂抜けてる。
 あーあーあー、見てらんない。書いてらんない。やってられるかボケー。
 でもまぁ落ち着きなよ紅い瞳。
 そこはそれ、そろそろ長年感想書きをやってきたと言ってもよいようなお年頃になってきた訳だし、
 もう少し落ち着いてみようよ。ていうか落ち着け。
 そう、それ。
 紅い瞳という人は幸か不幸かほっといても落ち着きが無くて突っ走れる人なのですから、
 敢えて踏ん張って落ち着かせてみればあら不思議、その突っ走ってる自分をまた見つけられるんです。
 魂無いのならば、魂投げ捨ててまえー。
 おー、見つけたよー、魂無くしてオロオロしてる紅い瞳の姿を。居た居た、これだよこれ。
 うん、そういうことで、そこから始めましょう。
 LOVELESS。
 これについて想うことを書くということが私にとってどういうことなのか。
 それはたぶん、今現在はその感想を書くという事が第一、ということになっているのだと思う。
 そしてそれを前提として書いているから、ぱっと見なかなか表現できそうにないものがあると、
 それを上っ面だけを撫でた言葉で装飾して誤魔化しちゃう、そうやって文を繋げていっていると思う。
 そんなものに、愛なんて芽生えない訳で。
 それってLOVELESS自身がどうこうっていう以前の問題なんですよね。
 大体紅い瞳、君はまだLOVELESSを観て泣いてないだろう?
 ボロボロのグチャグチャになって、涙ながらに感想を書いてないだろう?
 正直、感想をどう書こうかって事に囚われて、肝心のLOVELESSの世界から飛び出しちゃってた。
 この世界はこうに違いない、こう文章で表現できるはずだって、
 もうそういう感じで私の頭の中に理論を敷いて待ちかまえてばかりいて。
 言うなれば、感想の展開力だけを磨いて、その展開がなにによって発動されるのか、それすら知らなくて。
 だからそれを知らないから、当然私を感想書きに奔らせる魂、っていうか力なんて無くて。
 駄目駄目。駄目。駄目っつったら駄目だから、そんなの。むしろ駄目。
 いいかい、紅い瞳。
 大事なのは魂だよ。理屈の展開なんて、ほっといたってそれについてくるんだから。
 理屈を考えることに入れ込んでばかりいるから、それだけしか無いものだけ出来ちゃうんだよ。
 魂の発動力の展開を、今。
 まずはLOVELESSを心ゆくまでじっくりと観る、それしかないでしょう。
 感想を書くということをひとまず忘れて、ね。
 むしろ再び涙を流せる魂の置き所を探して。
 理屈を使うのは、むしろその捜索において必要な行為なのだよ、うむうむ。
 
 
 
 要するに、萌えればいいのだと思ふ。 (結論)
 
 だ、れ、に、萌、え、よ、う、か、な♪
 
 
 
 
 ◆◆
 
 基本的にLOVELESSのどのキャラが萌えかというのは無いけど、
 草灯、立夏、唯子の三人を中心にして見れることは確かな事。
 立夏の真面目な優しさと自己中なカッコかわいさはぐっとくるけど、
 しかし彼の姿だけだとなんだか「立夏の物語」になってしまうわけで、
 でもLOVELESSっていうのはそういう感じではまとめられないような気がするわけで、
 そうすると必然的に草灯と唯子についても観なければならなくなるのだけれど、
 唯子はともかく、草灯はまったく以て現時点で謎な人なのでかなり厳しいのは事実。
 謎っていうか、私が草灯っていう人の中にあるものを見つけられていないということなのだけど、
 ていうか草灯がなにをしているのかはわかるけど、草灯がなにをしたいのかはまだわからないという感じ。
 だから彼を中心にして書くのは今はまだ無理なのかもしれないね。
 取り敢えずは立夏中心、その中心を照らすために草灯と唯子を説明していくのがベストなのかな。
 あー、でもやっぱりそれだけじゃーなー。
 唯子の語る立夏っていうのは絶対必須だし、
 むしろその前に「唯子を語る」立夏を描くより、「唯子を語る立夏」を語ることで唯子を語らないとなー。
 つまり唯子中心話をやらないと、ほんとの意味で立夏を語ることもできないしー。
 そうするとあれですよ、やっぱり草灯は絶対不可欠な訳で、
 でも立夏が草灯を語ることは実質不可能(立夏は草灯のしていることは説明できても、なぜ草灯がそう
 するのかわかってないから)なのだから、どうあっても難しい。あーうーあー。
 ということは、逆に草灯のしていることがどういうことなのか、
 という根本的な定義を私がしなくてはいけないのかな。
 うーめんどーい。
 草灯の「感情」に頼れないのがこんなに辛いとはー。
 でもそれはむしろたとえ草灯が「感情」を示しても、それが草灯を示していることにはならない、
 そういう自覚を私に植え付けてくれているのでもあるのだから、耐えなくちゃね。
 だってそれに耐えなかったら。
 
 
 
 唯子萌えで決まっちゃうもの。(あれは反則です)
 
 
 
 

 

 

-- 050506--                    

 

         

                              ■■夢が言葉に与える力■■

     
 
 
 
 
  『俺は金華。私は銀華。でも本当の名はSLEEPLESS。ふたりでひとつの名前。
  異なる名を持つ二匹の獣たちよ。眠れぬ夜の闇を見よ。』
 

                           〜第五話・金華と銀華の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 言葉。
 それは自分の中の想いを見つめ観察し、それに似せて自分の外に表現したるもの。
 そしてその表現された言葉は、それ自身力を持っている。
 その言葉が世界に与える影響力。
 金華と銀華はその影響力を観察し、どういう言葉の綴りでその威力を増すかを研究した。
 どの言葉が効果的なのか、どの言葉をいつ言えば最も世界に介入することができるのか。
 言葉の使い方を極めることによる戦闘力の増加。
 金華と銀華の記述していく想いの残骸は無惨にいびつに並べられ、
 それはまるで標本にされた蝶の如くに煌びやかな光を放っている。
 金華と銀華はその光の元にある自らの瞳を輝かせて、眠れぬ夜の幸せをおもう。
 私達の紡ぐ美しい言葉の戦慄に魅せられなさい。
 この言葉の力に踊らされていく私達の体に魅了されなさい。
 しかし、草灯はその瞳を閉じる。
 曰く。
 
 無効。
 
 そんなもので、俺の瞳の自由を奪えると思うなよ。
 
 
 『お前達の眠れぬ夜など、たかが知れているよ。』
 
 
 




 
 
 
 
 『俺の眠りが壊れてるのは・・あのとき・・・清明が・・兄貴が居なくなったときからか・・・・
  それとも・・・・・あいつと出会ってからか・・・・・。』
 
 
 
 立夏の中には本当の立夏が居る。
 立夏の中には立夏以外の立夏が居る。
 きっとそれは実在するんだね、立夏。
 立夏がどんなに居ないと説明してみても、その姿は消えないんだ。
 それはね、立夏。
 立夏がそういう別の立夏が居ると言うことをやめられないからなんだ。
 ということは立夏はそれをやめられない限り立夏にはなれない。
 そして。
 その間中、その立夏の中の別の立夏は確かに存在するんだ。
 立夏の言葉が創り出した立夏が居る。
 それが言葉の力だよ、立夏。
 そしてそれは、「言葉でできている立夏」じゃないんだ。
 その立夏は、今、現実に立夏の中にいるのだから。
 
 自分に敵対するものとしての自分。
 それと戦う自分を獲得したいという欲求を思い描くこと無く、
 すべからく襲いかかってくる敵対者との死闘より生き延びる事しかできない。
 その目の前に迫り来る恐怖の中で、はっきりともうひとりの立夏を見つめる立夏。
 戦うために見つめるのか、生きるために見つめるのか。
 それを想うたびに、立夏の夢の形は薄れていくんだね。
 中身の無い空っぽの夢。
 でもそれは、決して軽くなんて無いんだよね、立夏。
 立夏の綴る言葉の波には確かに力が漲っているから、それがわかる。
 なんにも信じられないよ、なんにもわからないよと言う立夏の言霊を感じるんだ、立夏。
 立夏は確かに夢を見てる。
 でも立夏はそれを言葉を使って具現化することができていない。
 立夏の夢を立夏の外に再現することは、今の立夏にはできないんだ。
 だからただ、立夏はわからないと叫ぶ。
 立夏の夢はすべて、なにも信じられないという言葉に込められて放たれる。
 すごいね、立夏は。
 
 
 
 俺の言葉には力がある。
 そして俺の言葉には力を創り出す能力もある。
 俺の想いを綺麗に言葉で具現化する事も可能なら、
 俺の想いでないものを言葉で綴り、それを俺の想いと為すこともできる。
 ただ自らの想いを顧みる事無く言葉の中を解剖し改造していくだけの奴らに、俺は負け得ない。
 戦闘力の分布している領域が違う。
 そしてだから、俺はそういう奴には興味は無い。
 言葉で自らを変質させることも言葉で世界を変えられない奴らにも。
 そいつらにできるのは、自らと世界を言葉に換えていくことだけなのだろうし。
 だから立夏には興味を惹かれる。
 こんなに変わり変えていく立夏を見つめたい。
 立夏の中に居る立夏を創ったのは立夏。
 でもそれは立夏の言葉でできている立夏では無い。
 立夏の中にある本当の自分というものを言葉に換えて顕わしたものでは無い。
 立夏は立夏を立夏の言葉で変えた。
 自分の中に本当の自分が居る、という立夏に。
 だから、立夏の中には確かに本当のもうひとりの立夏が居る。
 そのゆえに。
 立夏の中には言葉から成る立夏は存在し得ず、
 そして立夏は本当の自分を言葉で支配することはできない。
 立夏にとって、今のこの立夏の状態は、絶対なんだ。
 どう言い繕うとも、立夏は自分を偽物だと想うことをやめられない。
 なぜなら。
 本当の自分が、確かに目の前に居るのだから。
 
 
 ・・・・・・
 
 立夏くんは、今の自分は夢みたいだって言ったわね。
 夢、ってことはそれはつまり、目が覚めてしまえば終わりってことよね。
 そして場合によっては、起きた後にそれは忘れられてしまうこともあるもの。
 そう。夢を見たことは覚えているんだけど、どんな夢だったかは忘れちゃったって感じ。
 ふーん。
 でもさ、立夏くん。
 夢は一度起きてしまったら、もう眠ることはできないのよ。
 できることといえば、自分は眠っているという真昼の夢に溺れて戯言を吐けるくらいだわ。
 ねぇ、立夏くん。
 
 君は眠っているだけよ。
 
 君は夢じゃなくて、夢を見つめている人間なのよ。
 眠っている間にそれがどんな「夢」だったかわからないのは当然よね。
 だって今の君は夢を見ている夢の中の住人なのだものね。
 だから立夏くんは、夢を見ていることは知っているのに、それを自覚することはできないの。
 自覚できるのは、あなたの見ている夢の中身についてだけ。
 ええ、そうね。
 今の立夏くんは本当の自分と夢の中で出会っているの。
 だから立夏くんはその本当の自分を目の前にしていることを実感できても、
 それが夢であるということを実感することは決してできない事になるわ。
 さぁ、どうする? 立夏くん。
 夢を見ている事を実感できていない人が起きることができると思う?
 決して起きることの無い人に、「夢」なんてあるのかしら?
 
 
 『今の君は現実なのよ、立夏くん。』
 
 
 
 ・・・・・・
 
 みんな、眠そうだ。
 本当は眠くもなんとも無いのに、眠くなりたいってだけで眠そうにする。
 もっとひどい奴は、眠くなりたいとすら思っていないのに目をこすってみたりする。
 俺はそんなのは嫌いだ。
 そしてそれを嫌うのは自分だけはそうでないという風に思い込みたいからだと、
 そういう言葉を自分の中に塗り込める俺が大嫌いだ。
 だって、俺は。
 そんな言葉を綴らなくても、既に眠っているのだから。
 俺が眠りたいと思おうと思わなかろうとも、俺はずっと。
 眠い。眠すぎるよ、清明。
 唯子が隣で豪快に爆睡してる。
 睡眠の意義を語り続けて眠れぬ夜を過ごすくせに昼の下ですら眠れぬ奴らを横にして、
 こんなに眠っていられるなんて。
 なんの疑問も苦しみも無く、ただ夜も昼も眠りたいという欲求を200%達成しているんだ、こいつは。
 なんにも嘘をついていないのに・・・・・・ひどく単純な言葉しか言わないのに・・・・。
 きっと唯子は、目覚めた後に笑顔一杯で自分の見た夢を俺に話すんだ。
 絶対に嘘の無い、いや、嘘をつく必要の無い本当の言葉だけで・・・・。
 眠っている唯子を、俺はそうして見つめている。
 其処には、そうしている今の俺の目の前には、本当の俺の居場所は全然無い。
 
 
 
 
 『俺よりも・・・・草灯の方が痛いの・・・・?』
 
 
 『頑張れ・・・・・・草灯・・・・』
 
 
 
 
 ・・・・・・
 
 ふたりでひとつの名前しか持てぬ弱者よ、諦めるがいい。
 眠れぬ夜の闇を見つめる夜しか過ごせぬ愚者よ、恐れるがいい。
 ふたりの孤独に染まる拘束具?
 
 『解除しない。』
 
 必要無い。
 絶対の力を以てその拘束を受け入れ俺の支配下へと置くだけだ。
 ふたりに分かたれている恐怖に怯えるゆえにひとつになるものに、俺は倒せない。
 自らの苦痛を語ることでしか支配できぬものに、俺の言葉は破れない。
 俺の中に俺など居ない。
 俺は俺だから。
 そして俺は立夏とはひとつにならない。
 立夏は俺の中に入らない。
 立夏は俺の目の前に居る。
 目の前に闇という空白点を刻むことで、
 立夏が其処には居なくて俺の中に居てくれる安堵になど酔いしれたりしない。
 それがどんなに辛かろうと、どんなに苦しかろうと、どんなに痛かろうと。
 俺は孤独を恐れたりしない。
 俺の外で立夏が待っていてくれるから。
 そして。
 俺が眠れぬ夜は、俺が立夏を求めるときだけだ。
 満たされた俺の夜を包む闇は、ゆえに見つめるに値しない。
 
 だから俺に命令して、立夏。
 命令する側と命令される側。
 その両端で向き合いながら、愛を創っていこう、立夏。
 俺と立夏の間が離れているほど、その距離を満たす愛の質量は増していくのだから。
 立夏、命令して。
 
 
 ・・・・・・
 
 『さっさと、寝ろ。ちゅう。』
 
 ・・・・・・
 
 
 『ありがとう、立夏。』
 
 今日もきっと、よく眠れるよ。
 
 
 
 ・・・・・・
 
 夜の闇の中に草灯を見つめて。
 其処にはもう、本当の俺はいない。
 たとえほんとうは居たとしても、もはや今の俺には見えない。
 草灯。
 あいつは嘘を付きながらも、本当の事を言うことを拒否したりしないんだ。
 あいつは苦しみや痛みから逃れるために、苦しみや痛みを賛美したりしないんだ。
 草灯の夢って、きっとすごいんだろうな。
 なによりも激しくて、なによりも冷たくて、そしてなによりも激しく燃え上がっていて。
 でも。
 それでも。
 草灯はきっと、ぐっすりと眠るんだ。
 そっか。そうだよな。
 だから草灯は強いんだ。
 だから草灯の言葉は絶対なんだ。
 草灯の見続ける夢が荒れ果てても、或いは逆に心地良いものになったとしても、
 草灯はそれをすべて言葉に換えて支配できるんだ。
 たとえ夢の中にもうひとりの草灯が居ても、きっとそれは変わらない。
 ただただ草灯自身がどんどん変わって、そのもうひとりの自分になってしまうんだ。
 そして。
 その夢が草灯に与える力がある限り、草灯は俺と向き合える。
 俺はだから・・・。
 俺も自分の夢と向き合わなくてはいけないんだ。
 それがたとえ、夜の闇を見つめるだけのことだとしても。
 それがたとえ、お前とひとつになってしまうことを求めている事だとしても。
 
 
 
 『お前のせいで、今日も眠れそうもない・・。』
 
 
 
 
 
 夢無き夢から絶対の力を得るために。
 
 
 
                             ◆ 『』内文章、アニメ「LOVELESS」より引用 ◆
 
 

 

 

-- 050503--                    

 

         

                               ■■お昼と午後の空■■

     
 
 
 
 
 爽快な気候と天気に心洗われる日々が続く今日この頃、
 皆様如何お過ごしのことで御座いましょうか。
 ごきげんよう、紅い瞳です。
 なんだか日記を書くのは随分と久しぶりの事かと思われてならなかったのですが、
 しかしでもまだこれでも前回の日記から一週間は経っていないのですよね。
 思いのほか時間が経っていないのでほっとするやらなにやらで、まだまだいけそうな私です。
 どうも日記を書かないと、書かないといけないよなぁというプチ道徳心が涌いてきていたたまれなく、
 日記は私が書きたいと思うときに書かなきゃ意味無いんだゾ、という言い訳すら容易に突破され、
 私としては素直にこうして書いてしまった方がすっきりするという、なんだかなぁな状態なのです。
 でもそうやってやれやれと自分に呆れながらもこうしてちゃんと日記を書けるということ、
 それ自体はやはり嬉しく、我ながら頼もしささえ感じてしまいます。
 私ってば、放っておいてもなんとかやっていけるんだなぁ。
 昔はそういう自分に我慢ならず、
 なんとかすべて自分の意志でコントロールしようと踏ん張ったりしていたのですけれど、
 最近はそうやって自分の中で勝手に発生し、
 私の支配下に全然まったく入ってくれない私にも自分を委ねられるようになってきました。
 そういう風にできれば良いな、とは以前から思っていましたけれど、
 今はそれは既に着実に実現してきているような事と思われます。うむ、うむ。
 と言っても、というよりだからこそ、なのかもしれませんけれど、
 そのような自分の意志に反する自分の行動に身を委ねることで、
 今度は私の意志を以てその自分の行動を批判し改善しようという事もできるのです。
 ただ日記を真面目に書けばいいものじゃないゾ、だからこそその日記を書くということがどういうことか、
 そしてその書き手である「私」というものを考えなくちゃいけないゾ、と思えたり。
 そしてその私自身に見つめられた「私」の視点から、その見つめられた私を見ることもできる。
 そうしていくと、日記を書かねばならないと考える自分と、日記は書きたいときに書けばいいよという自分、
 それを並べて見つめていくことができるのです。
 その並べられたふたつの自分が「見つめられるもの」として其処にあるからこそ、
 だからこそそのふたつの自分が私という自分以外のなにものでも無いと確信出来もするのですけれどね。
 目の前にある客観的な自分を見つめれば見つめるほど、
 本当はなによりもそれを主体的な自分として受け入れられるときがある。
 なんだか今日の青空を見ていたら、そんな気持ちになれたのでした。
 
 
 ◆ ◆
 
 この頃はなにかこう、夜になるととても疲れてしまいます。
 それは一日の終わりなのだからそうじゃん、とそう言い終えてしまえるものでは無く、
 それ以上に疲れを感じています。
 身体的にも精神的にも。
 なぜかというと、それはわかりませんと答えるのが一番正確なのですが、
 やっぱり前述した事と関係があるのでは、と調子に乗ってこじつけてみたい欲求はあります。
 やっぱり、青空はラクだよねぇ、うん。
 青空を見つめることで、色んなことを感じて、そしてなんにも感じていない自分を発見できる。
 だから私はそのなにも感じていない自分を受け取って反省して、そして真っ直ぐやり直せばいい。
 夜空の暗黒さを見つめていると、自然その色に染まって黒くなっていく自分の心があり、 
 それはつまり非常にラクな事で、それこそ夜空のせいにしていくらでも自虐的になれる。
 まっさらな昼の空を見ていると、最初からどす黒いものはなにも無い代わりに、
 それは自分で作り出さなくてはいけないという「責任」を負える。
 真っ黒な青空を創れるという充実感。
 そして、それは怠慢。
 初めから其処にある黒を見つける努力を放棄することなかれ。
 夜っていうのは残酷なものです。
 どんどんと勝手に私の中に侵入して、それに対するレジスタンスとしての私のアイデンティティ、
 その存在を容赦無く許可しない「私」を私に植え付けてくれるのですから。
 そして無論、私はその植え付けられる「私」を拒否する自分を培ってきてはいません。
 私はむしろ、それを受け入れる立場を取っています。
 そしてその立脚点に拠り、私は青空から創り出せる「責任」を否定するのです。
 そんなものに満足するな、と。
 強制的に自虐的にさせられながらも、それから逃げるな、と。
 しかしそれを強制的にさせられた、と言うことすら拒否するな、と。
 そして、その自虐に支配「された」自分から私を解放するレジスタンスとしての私に囚われる事無く、
 その自虐を自己肯定へと変換していけ、と。
 勿論、それは自己否定をしっかりと内包した変換であるのです。
 ただ自己肯定だけを産み出すならば、それはほとんどただの自虐と同義。
 自己肯定をひらりと裏返せば、それはすっかり自己否定へと換わる。
 その裏腹さ、そして目の前に満遍なく広がっていくその危険性を充分に獲得して、
 はじめて一段落を付けられる。
 だから、疲れるのですね、夜は。
 そして。
 だからこそそれができない昼の青空の中にこそ、ほんとうの黒があるのです。
 自分で創った安易な黒の中に初めからある黒を見つける。
 ラクなものほど難しい。
 そして難しいゆえに、後回し。
 だから、ほんとうに色々と、疲れてしまう。
 
 そういう事って、すごく多いと思います。
 今のこの世界。
 
 
 ◆ ◆
 
 アニメ話題を少々。
 先日始まった「トリニティブラッド」の第一話を見ました。
 特に面白いと感じるところも無く、面白いと感じたいという欲求も芽生えなかったというか、なんというか。
 ただ、別に全くオリジナリティの無い作品だったから、という評を添える気は全然ありません。 
 私にとってそんな事はどうでも良いことですし。
 げんに色々なものの寄せ集めでできている「極上生徒会」など、私は素晴らしいと思っています。
 それがどういう素材で出来ていようと、その組み合わせ自体にはオリジナリティはある訳ですし、
 また或いはその組み合わせ自体にさえオリジナリティを感じられないというのであっても全然関係なし。
 重要なのはその組み合わせにある訳でなく、その組み合わせがなにを作り出していたのか、ですから。
 今回の極上も理屈というものの「使い方」、というテーマをこれみよがしに組み込み、
 そしてその「組み込み」自体をさりげなく創り上げている美しさがありました。
 勿論、理屈というものは理屈のためにあるのでなく、
 それを使う者の目的のためにある、という解答自体も素敵でしたけれど。
 そういった意味で、私的にはトリニティブラッドは素晴らしいといえるものでは無かったということです。
 とはいえ、第二話以降も見るつもりではいますし、
 そして最後まで見て素晴らしいとなおも思えなかったとしても、
 またいつかの機会に見たときにまで素晴らしいとは思えないと、そう断言するつもりはさらさらありません。
 私はアニメは楽しむために観ていますゆえ。
 
 最後にもうひとつ。
 「キノの旅」を観ています。
 残念ながら第一・二話は見逃してしまったので、再放送を願います。>アニマックス
 それで。
 正直、今現在一番ハマっているアニメです。
 原作である小説版には無い空虚感が、
 それがその中身を見せずにそのまま押し寄せる臨場感がたまりません。
 感情表現を廃し、理屈の展開すら排除し、ただ淡々と私の時間を食い潰していく。
 この瞬間は一体なにを語っているのだろうかと私が頭を捻る時間さえも飲み込んで、
 ただただひたすらにそれはなにかを散らかして、そして去っていく。
 キノとエルメスという旅人が、それ自身なにものにも関与しない風を装いながら、
 しかしそれ以外の世界は、なによりもその甚大な影響を被っている情景。
 彼らが通り過ぎていった国々の上空に立ち昇る無数の咆吼が見えます。
 そして、時折見せるキノのその世界への明確な干渉のそぶりが、それが。
 その世界の息の根を確かに止めている恐怖。
 その恐怖の支配から逃れようと、この「物語」が示すものはなにかと思考を重ねるうちに、
 もう目の前にキノとエルメスの姿は無くなってしまうのです。
 嗚呼、そっか、そういうことか。
 きっとこれは「物語」じゃない。
 これはきっと、キノとエルメスなんだ。
 全く虚ろなキノとエルメスという「存在」は決してみつかりませんし、
 そしてそのゆえにキノとエルメスというものを「語る」ことも本当の意味ではできません。
 いえ、むしろ語ることができないゆえに存在しないのです。
 そういう意味で、この作品は「なにもの」でも無いのだと思います。
 ただ目の前に、「キノ」と「エルメス」が迫ってくる。
 そしてただ、去っていく。
 「キノ」と「エルメス」という言葉はなにも表しません。
 けれどそれは確かに、私に影響を与えてくるのです。
 そしておそらくそれは、「私に影響を与えてくるもの」では無いのです。
 そうだという視線でキノを見つめた瞬間、キノはきっと私の目の前から去っていくのでしょう。
 キノとエルメスはひとつの国に三日間しか留まらない。
 その国の人々がキノという「存在」をつくりはじめる頃、キノ達はその国を後にするのです。
 人々の心に、キノという「記憶」だけを残して。
 私には、その人々の記憶だけしか語る事はできないのだと、キノの居ない世界を観て思ったのでした。
 
 
 で、これを読んでくださった人々は、ようするにあかいひとみはひまなんだなぁ、と思えるのでした。
 あはは。明日どーしよ。
 
 
 
 

 

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