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◆◆◆ -- 2005年6月のお話 -- ◆◆◆

 

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                                  ■■ 私のほんとう ■■

     
 
 
 
 
 「神無月の巫女」、最終話、見ました。
 以下、半分は涙で出来ている感想です。
 
 
 
 
 
 ◆◆
 
 
 
 
 
 『私は姫子を殺した。殺したのよ。
  そんな私に姫子を愛する、愛される資格なんて無い。許されるはずが無いのよ。』
 
 
 
 
 
 
 未来永劫、殺し合う。
 生まれては殺し合い、生まれ変わってまた出逢えば、また殺し合い。
 それでも断たれないこの輪廻の輪の中を生きていくことに、恨みなんて抱いた事は無い。
 それがどんなに苦しいことでも、それがどんなに悲しいことでも。
 それでもいつまでもあなたが目の前に居てくれることの喜びがあれば、私はずっと。
 ずっと、ずっと、何度でもあなたを殺せる。
 ずっと、ずっと、何度でもあなたに殺される事ができる。
 私があなたを殺したことの罪悪感に囚われる事以上に、
 あなたは私を殺す罪悪感に囚われていると思うから。
 それを思うたびに私は、何度でも甦る。
 何度でも、何度でも、あなたの目の前に。
 あなたが私を殺せないのなら。
 私はあなたの敵としてあなたの前に現われましょう。
 だからお願い。
 もし私があなたを殺せなくなったら、あなたは私の敵となって甦ってきて頂戴。
 この悲しみで張り裂けそうな私の胸を貫く刃を、私に魅せて頂戴。
 私もあなたに、あなたの涙を燃やし尽くす地獄の業火を魅せてあげる。
 だから。
 あなたは、生きて。
 生きて、生きて、そして。
 あなたを殺すために甦ってきた私を見つけて頂戴。
 だって、私はあなたに殺されたのだから。
 私はあなたを殺したから殺されたのだから。
 ずっと、ずっと、殺し合いましょう。
 お互い、自分の中の殺意を燃え上がらせ。
 そして。
 相手の中の殺意を逞しく育てながら。
 
 ほんとうのことを言っていないと、どこまであなたは思っているの?
 
 私があなたと居続けるためにこの輪廻の輪の中で生き続けていること。
 これが嘘では無いというのならば。
 私があなたを憎んでいるということもまた、ほんとうのことになる。
 私はただ、あなたが憎らしかったから。
 私はただ、あなたを殺し続ける罪悪感に囚われているだけだったから。
 全部、全部、ほんとうよ。
 だから。
 私はもう、なにを言ってもほんとうになると、そう思った。
 どんなことでも、それはほんとうのことである資格を得られる、そう思った。
 だから、言うわ。
 私は、あなたが、好き。
 心の底から、あなたを愛している。
 それがどれほど淫らで、それがどれほど罪なことであろうとも、今はそれを言うことが許されている。
 だって、これはたぶん、嘘になるから。
 全部がほんとうと言えるなら、それは嘘が無いという嘘になってしまうのだもの。
 だから、私はあなたに言えた。
 言ってはいけないことを、それをスラスラと、まるで何不自由無く、言ってみせた。
 私はあなたがほんとうに好き。
 嘘じゃないわ。ほんとうよ。
 嘘なんて無いわ。もう、全然無いわ。
 だから・・・・。
 何も知らない、優しい優しいあなたに、私はずる賢くも平然と私のほんとうを忍び込ませた。
 私の胸の中だけにひっそりと隠しておくべきことを。
 あなたの、胸に・・・。
 
 
 
 
 
 
 『これでいいの・・・これでやっと・・・・・・・私のほんとう・・受け取って・・。』
 
 
 
 
 
 
 私は、悲しかった。
 私が愛しているあなたを傷つけてしまうことが。
 私があなたを愛し続ければ、あなたを殺してしまうことが。
 あなたが私を傷つけることで感じてしまうあなたの悲しみよりも、
 あなたが私を愛し続けることで私を殺してしまうことのあなたの絶望よりも、それよりも。
 なによりも私は、あなたを傷つけたくなくて、そしてあなたを殺したく無かった。
 それが一番悲しくて、一番どうしようもなくて、一番ただただ苦しくて。
 その苦しみで身悶えしていくこの体が、私のあなたへの愛を踏み潰していくのが、でもそれでも。
 それでも、どうしても、どうしても、許せなくて。
 私はあなたを愛しているのに、あなたを殺してしまう。
 でもそのことを怖れて、あなたの目の前からこの姿を消すことがどうしても許せなくて。
 どうしてなのだろう・・・・・それは・・・それはもの凄く強い衝動で・・・。
 その衝動が、私をこの輪廻の輪に繋ぎ止めている。
 私はあなたを殺してでも欲しい。
 そして私はあなたに殺されてでもあなたのものにして欲しい。
 ううん、違うわ。
 殺すとか、殺されるとか、そんなの関係無いのよ。
 ただただ、ただただ、どんなことがあっても、私はあなたの目の前に居続けたい、そういう事なのね。
 あなたを殺して得る愛の罪深さを知り尽くしながら、私はそれをいつも飛び越えるのよ。
 たとえあなたの方は、それを飛び越えてはくれないとわかっていたとしても。
 ええ、それはね。
 もし私だけが飛び越えて、あなたが飛び越えてくれなければ。
 私があなたの「敵」としてあなたを蹂躙しに飛んできたって事になれるのよ。
 そうなれば私はまた、あなたの目の前に居続けられる。
 ひたすら私があなたを傷つけていくことであなたの中の憎悪を育て、
 そしてそのあなたの憎悪で私を殺させることが。
 
 
 それがなによりも、私があなたを傷つけているということから、私の目を逸らしてくれるのよ。
 
 
 もし私があなたを傷つけている、ということから目を逸らすことができなければ、
 私はきっともう、あなたの目の前には居られない。
 私はあなたの身を案じ、ひとり輪廻の輪から解脱して無に帰ることを選んでしまうだろう。
 私はあなたを殺さないと、あなたと一緒にいられない。
 私はあなたを傷つけるためにあなたを憎まないと、あなたを愛せない。
 そして。
 私はあなたに憎まれないと、あなたにほんとうのことを、言えない。
 
 
 だから。
 だから。
 だから。
 言うわ。
 あなたは私をまた、殺してくれたから。
 
 
 私はあなたを愛している。
 そして、そしてね。
 私は、ほんとうはほんとうは、あなたに愛されたいの。
 誰よりも、なによりも、強く、強く、私を愛して欲しいの。
 私が感じた罪悪感に囚われているその向う側から、愛しに来て。
 私は自分の罪の中で溺れていながら、それでもしっかりとあなたを見上げているわ。
 私があなたを傷つけてしまうことを、受け入れて。
 私はあなたに傷つけられる事に、未来永劫耐えてみせるわ。
 私はあなたに殺されたっていい。
 だから・・・・・・・だから・・・・・・・・・・・・・・・・・恥を忍んで・・・・・・・・恥を抹殺して・・・言うわ。
 私を、愛して。
 私を殺すほどに、私を愛して。
 私がすべてを壊して伸ばしたこの指先に、あなたのぬくもりを・・・・頂戴。
 私が・・・・私が・・・・・・・・・。
 この命を賭けて叫んだほんとうを、受け入れて!
 
 
 『月は太陽があるから輝くことができるの。誰よりも美しく、輝きたいとそう思える。
  ただあなたに見て欲しかったの。』
 
 
 この言葉だけは嘘じゃ無いということを・・・・あなたは信じてくれると・・そう・・・願っているわ。
 私のこの浅ましい姿を、きっと、きっと抱きしめてくれる・・・・・・・・・よね・・・・・・・姫子・・・・。
 
 ごめん・・・・・ね・・・・・。
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 

 『お日様はお月様があるから輝くんだよ。笑顔になれる、元気になれる。

  お月様が輝き方を教えてくれるから、もっともっと輝きたいって頑張れるの、お月様のために。
  私、ずっとずっと月を照らし続ける。千歌音ちゃんの姫子になりたい。』
 
 
 千歌音ちゃんが、傷だらけ。
 それを見るたびに、私の体も同じくらいにボロボロなのがわかるよ。
 痛い・・・・・・・痛いね・・・・・・千歌音ちゃん・・・。
 私の傷をなぞるたびに、千歌音ちゃんが苦しそうに顔を歪ませる。
 だから千歌音ちゃんはいつも、私の傷の手当てをしてくれて、そして傷付かないように私を守ってくれた。
 だから私、ずっと今まで、その私に付けた傷も、これから付けられようとしていた傷も、
 それが全部千歌音ちゃんのせいだなんて、全然知らなかった。
 だから私・・・・・・千歌音ちゃんが泣きながら愛する私を傷つけている事を全然・・・・知らなかった。
 うん・・・・・・・・・・・・・うん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。
 千歌音ちゃんは、その事を必死に隠して、
 そしてほんとうのほんとうは、そうしていることを全部暴いて欲しかったんだよね。
 千歌音ちゃんの罪を。千歌音ちゃんの浅ましさを。
 そうなれば、いつか私に・・・・・千歌音ちゃんが私を愛してることを気付いて貰えるかもしれないって・・・。
 うん、うん。
 私の憎しみで、その千歌音ちゃんの愛を見つめて欲しかったんだよね。
 憎まれてもいい。憎んで欲しい。
 それでも、私に見つめて貰えるなら・・・・・・って。
 
 
 
 『千歌音ちゃん、私、やっと、わかった。』
 
 
 
 私を愛してくれる千歌音ちゃん。
 その愛が私を傷つけてしまうことに苦しみ続けた千歌音ちゃん。
 私が自分の傷をなぞって苦しんでいるのを見て、千歌音ちゃんは苦しんで。
 千歌音ちゃんの傷だらけの体を、見る人は誰も居なかったの。
 千歌音ちゃん自身にもそれは見つめられることは無かったの。
 千歌音ちゃんの傷は、それを見ることで苦しい想いをする私、
 そのために、最後の最後まで隠されるものでしかなかったのよ。
 私だって、頑張って自分の傷を隠そうとしたよ。
 でも千歌音ちゃんは賢いから、だからいつもそれは見つかっちゃって。
 それでも私、そうやって見つけられた私の傷を、それ以上隠そうとはしなかったよ。
 なんでだか、わかる? 千歌音ちゃん。
 それはね・・・・・それはね・・・・・・千歌音ちゃん・・・・・・・・・千歌音ちゃん!
 あなたの傷も、私に見せて欲しかったからなの!!
 だから私は、千歌音ちゃんに聞き続けた。
 千歌音ちゃん、私どうしたらいいのかな? って。
 千歌音ちゃんのほんとうのことを聞き出すために。
 私は私の傷を、隠そうとしたことはあるよ。
 だって、そうやって自分の傷を隠して凛として立っている千歌音ちゃんに憧れたから。
 だから私も頑張って、なんとか傷を隠しながら、ひとりで立って行こうとしたんだよ。
 だから私、千歌音ちゃんはすごいって、今でも思ってる。
 私がどんなに頑張っても、千歌音ちゃんはまだまだずっと私の先に居るんだもん。
 私は、千歌音ちゃんのこと、だからとってもとっても憧れてるんだから。
 でもね、千歌音ちゃん。
 私はね、そうやって私を頑張らせてくれた千歌音ちゃんを見上げるたびに、何度でも思うの。
 ああ、私、この人のために笑顔でいたい。元気でいたいって、。
 私にできることを、今度は千歌音ちゃんに魅せてあげたいって。
 それはね、千歌音ちゃんが私にはとてもできないことを私に魅せてくれて、
 そして私にもそれをできるように頑張らせてくれたからなんだよ。
 私に、私のできないはずのことをやらせるように、そうやって私の空で輝いていてくれたからなんだよ。
 だから私、夜空に輝くお月様を見上げるたびに、ああいう風になりたいって頑張れて、そして。
 だから私も、そのお月様に私の魅せることのできる輝きを与えたい。
 
 
 
 だから、千歌音ちゃんも、笑って。
 千歌音ちゃんも幸せになって!!
 
 
 
 私は私の笑顔が大好き。
 私は私の幸せが大好き。
 それはその笑顔や幸せを、千歌音ちゃんにも求めて欲しいって思うから、大好きなの。
 でもね、ほんとうはね、それ以上にね。
 私はほんとうに私の笑顔が大好き。
 私はほんとうに私の幸せが大好き。
 だから。
 だからね、千歌音ちゃん。
 千歌音ちゃんも、凛として格好良い千歌音ちゃんのこともほんとうに好きになって。
 千歌音ちゃんの嘘を、千歌音ちゃんのほんとう以上に愛してよ!
 だって! だって! だって!
 ほんとうのほんとうは、千歌音ちゃんは自分のこと、大好きなんだから!
 
 
 
 
 
 もう、我慢しなくて、いいよ。
 
 
 
 
 
 
 私がその格好良い千歌音ちゃんが好きだって言うから、千歌音ちゃんはそれが好きなんじゃないよ。
 そのずっとずっと前から、千歌音ちゃんは自分の事が大好きだって、ちゃんと千歌音ちゃんは知ってた。
 私のために自分のことを好きになったなんて言わなくていいよ。
 ううん。
 そんな悲しいこと、言わないで!
 だから!
 だから初めて、そう私が千歌音ちゃんに言えたから!
 それでも私の事を愛して、って、そうやって千歌音ちゃんに言えるんだよ。
 千歌音ちゃんがほんとうのほんとうに自分の事が好きって言えたら、
 私の事を愛することで起きてしまうすべての苦しみと悲しみと絶望と罪悪感は、もう。
 全部、全部、飛び越えられるんだよ!
 傷つけられる痛み、傷つける痛み、それは絶対無くならないよ。
 でもね、でもね千歌音ちゃん。
 
 
 私達は、ほんとうはそれでもふたり、空の上で輝いていることが嬉しくて堪らないんだから!!
 
 
 その痛みを我慢する必要なんか、もう無いよ、千歌音ちゃん。
 もう私達は、嬉しくて、嬉しくて、それで一杯になれるんだから。
 その痛みは、ほんとうはその痛みが無くてはいけないってそう思うからあるの。
 でも、そう思わないでいられるほどに愛し合えれば、その痛みは、もう。
 私を傷つけることを怖れないで。
 その怖れのあまりに私を憎まなければならない悲しみに逃げないで。
 それ以上に、私を愛せる千歌音ちゃん自身への愛を永遠に抱きしめていってよ、千歌音ちゃん!
 もう私への愛を恥ずかしがらないで!
 
 
 
 
 
 私は千歌音ちゃんが好き。
 私は千歌音ちゃんが好きな私が大好き。
 そして、だから。
 私はほんとうのことを、言うよ。
 
 『愛してるよ・・・・・・千歌音ちゃん。』
 
 
 
 
 
 
 『私・・・・・もう忘れたくない。千歌音ちゃんのこと大好きなこの気持ちを忘れたくない。』
 
 『私もよ、姫子。』
 
 『私忘れない。どんな永遠にだって、運命にだって、神様にだって、負けない。負けっこない!
  だってふたりの気持ちは繋がっているもの。』
 
 『姫子・・・。』
 
 『そうだよね、千歌音ちゃん。』
 
 『そうよ、姫子。私もそう。』
 
 『約束だよ、千歌音ちゃん。』
 
 『ええ。約束よ、姫子。』
 
 
 
 
 『私はまた姫子に会えました。だから今、幸せです。誰よりも。』
 そして姫子に会うために、どんな千歌音として生まれてくるか知れなくても、また生まれてくるわ、姫子。
 
 
 
 
 私はいつまでも、そしてすべての千歌音ちゃんを、探し求め愛し続けるよ、千歌音ちゃん。
 
 『ハッピーバースデー、千歌音ちゃん。』
 
 
 
 
                          ◆ 『』内文章、アニメ「神無月の巫女」より引用 ◆
 
 
 
 
 
 
 P・S: おそらく来週にもう一回だけ神無月の巫女の感想を書くと思います。
 
 

 

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                               ■■そのままから歩く■■

     
 
 
 
 
 だって暑いし。(挨拶)
 
 ごきげんよう、紅い瞳です。
 初夏を通り過ぎて真夏も通り過ぎて、既に残暑並の不快な蒸し暑さが蔓延している今日この頃。
 もう色々とどうでも良くなってきたところで、改めて今日と言う一日を私は生きています。
 わざわざそう言って頑張らないとやってられないほどに暑くてげんなりでさっぱりです。
 
 さて、今夜はいつものようにLOVELESS感想の反省会をしたいと思います。
 と、言いましても、今回第十一話についての感想は、
 私としましてはただスラスラと見たままを書いたような、そんな安易な感じで御座いましたので、
 反省するという事を特に必要とはしていないと思われます。
 一応コンセプトとしては、小学6年生くらいの子が考えそうな言葉で立夏を表現しよう、
 ということでしたけれども、別にそのコンセプトがどうという訳でもありませんし。
 それ以前に、第十一話の感想はなにかを表現したかった、というよりは、
 ただ第十一話を別の言葉を使って書き直しただけのものですし。
 細かい表現等もう少し工夫が施せる箇所は多々ありましたが、
 私が書くべきことの基本は全部書けましたので、その点についても特に言及することはありません。
 ですから、今回は感想についてなにか書くことは無く、
 むしろ第十一話そのものについてなにかを書いていこうと思います。
 
 や、なにか書くって言われても困るんだけどさ。(言ったのは私)
 そだね、まぁ、うん、ええっとさ、LOVELESSってそもそも全何話なん?
 公式サイトのStory には十二話までのあらすじしか載ってないし十二話のタイトルが「ENDLESS」だから、
 たぶん全十二話なのだろうけどね、あ、そか、十二話で終わりか、なんだ、うん、わかった。
 ・・・・。
 ぶっちゃけ、十一話、あれでいいわけ?
 ていうかあと一話で終わっちゃうんだよ?
 ・・・・。
 でも考えてみたら、十二話で終わらせるとしたらこうするしか無い、といえばまさにベストな出来だったけど。
 立夏と草灯の現在の状況を立夏と草灯と視聴者に俯瞰させることで、
 それぞれに改めてスタートを切らせる、それが十一話だったと思う。
 うん、で、最終話でそのスタートの一歩を刻むんでしょーね。
 まーよーするに、立夏と草灯が抱える「問題」なんてのはどんなに頑張ったって決着はつかないぞー、
 ってそういう風に言ってるようなもんだし、だから立夏と草灯がふたり居る限りLOVELESSは永遠でしょね。
 でまぁそれは永遠であるゆえにそもそも解決されるという意味での「問題」が最初から無いって事で、
 だから立夏は今の自分の苦しくて辛い状況を認識すればするほど、楽しそうに笑えるわけ。
 で、その笑顔の根の乾かぬうちに悲しみのどん底に落ちたりしちゃって、で、次の日にはまた笑顔でさ。
 笑ったり、怒ったり、泣いたり、絶望したり、希望を描いたり、ああもう、いいなぁ立夏くんは。
 とちょっぴり勝子先生とシンクロしてみたりしている間に、そうしてるうちにLOVELESSは先へ行っちゃう訳。
 解決されるという意味での「問題」が無いなら、解決するという意味での「問題」を提示しながら、さ。
 あー、なんだかんだと言いながら、この子は前へ進むんだよね、やっぱり。
 「当たり前の日常」を甘受して、そしてそこからさらに前へと先へと歩いていくんだよね。
 その歩き出した先にその「当たり前の日常」があるかどうかは関係なく、ね。
 そうだよー。立夏は別に当たり前のことを「当たり前」な事として受け取ったりなんか全然しないもんね。
 だって立夏くんは当たり前の事に気付くことの喜びに毎日新鮮な驚きを味わっているんだもんね。
 それは当たり前だけど、当たり前じゃない。
 それを「当たり前」の事と認識していた自分と、それが「当たり前」で無かった自分との邂逅。
 立夏くんにはそういうズレがきちんとあったから、だからこれからも頑張って生きていけると思う。
 
 あーもー、なに言ってんだか自分でも全然わかんないや。
 でも、その全然わかってない自分のほかに、それでも全部わかってる自分が居るんですよ。
 た   ぶ   ん  。 (超適当)
 
 
 で、あとは今週のデス種が面白かったとか、傑作じゃんとか、
 そのへんのお話をしたかったのですけど、時間です。
 やる気が無くなったの。 (あくびしながら)
 
 
 
 
 
 
 P.S: 紅い瞳は必死に脱走中のアスラン・ザラを心より応援しています。
 
 
 

 

-- 050624--                    

 

         

                               ■■言葉無き言葉と共に■■

     
 
 
 
 
 『それで。写真は一杯撮ったの?』
 『え? いや、ほとんど撮らなかった。』
 『あら?どうして?』
 『うん・・・それが・・・みんなと一緒にいるのが楽しくて、つい忘れてたんだ。』
 

                           〜第十一話・立夏と勝子先生の会話より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 うん・・・・ほんと・・・・どうしてかな。
 遊びに行く前までは、確かに写真を一杯とろうって、思ってたんだ。
 でもいつの間にか、そんな事考えなくなってて。
 そうしたら、一日が終わってて。
 でも先生。
 俺、別にそれでも、全然残念とか、思って無いんだ。
 うん、ほんとはコレクションに加えるつもりで、結構楽しみにしてたんだけど。
 だけど、家に帰ってきて、今まで撮った写真を見てたら、なんだか・・・・。
 むしろ今まで撮った写真をなんで集めてたのか、わからなくなっちゃったりしたんだ。
 え? ううん、今はもうそんな事思ってないけど。
 写真は写真だし。
 俺の思い出が無くならない限り、やっぱりその写真を見るたびに色々思い出せるし。
 でも、そう・・・・なんて言えばいいのかな・・・・。
 それでも、今日俺が写真撮らなかった事が、今日の俺の思い出を残さなかったって事にはならないって、
 どうしても、そう感じられちゃうんだ。
 なんか、変だよね。
 思い出思い出って、そんなの最初から写真撮っても撮らなくても、無かったことにはならないのにさ。
 写真見たって、思い出せないことはたぶん、一杯あるだろうし。
 けど俺が今日経験したことは、たとえ思い出すことができなくなったって、決して無くなったりはしないんだ。
 うん、先生、俺ね。
 今の俺はそれを、そういう風に信じていられるんだ。
 ほんと、変だよね。なんでだろう。
 でも俺、それでもいいって、ちょっと疑問に思っても、あんまり気にはならないんだ。
 なんかさ、もう、平気でいられちゃうんだ。
 しかも、とてもそれが・・・・・嬉しい。
 先生、俺ね、そういう風になれたんだ。
 
 
 『俺・・・・みんなと遊ぶことがこんなに楽しいだなんて、知らなかった。』
 
 
 俺がどんなに苦しんだって。
 俺がどんなに悲しんだって。
 俺は、こうやってなにかを楽しむことができたんだ。
 どんなにもう駄目だって思っても、それでもこうして・・・・・。
 でも先生。
 俺、あのとき、みんなと遊んでたとき、そんなことは全然考えなかった。
 俺は、ただもう、なんだか楽しくて・・・・・・その楽しさにだけ動かされてた。
 それに動かされている自分っていうのを遠くから見つめて、虚しいって笑う冷静な俺も居なかった。
 ほんとに全然、どこにも居なかったんだよ、先生。
 そういうのは全部、みんなと遊び終わって、独りになったときに、ようやく思い出したんだ。
 あ、そういえば、って感じで。
 けど、そうやって家に帰ってきてから色々考えた事には、あまり迫力っていうか、そういうのなくて。
 あ、うん、自分のことなのに、そういうの変かもしれないけど。
 でもほんと、俺がどんなに必死に虚しさに駆られようと言葉を巡らしても、全然駄目だったんだ。
 そのうち、なんで俺、こんなこと考えてるのかなって、訳わかんなくなっちゃって。
 そして、うん。
 それでも、ベッドに入ってから寝るまでの時間が、ほんとに暖かかった。
 ああ、今日一日楽しかったなぁ、って、素直に思える俺しか、ベッドの中には居なかったんだ。
 うん、先生。
 それは次の日の朝起きても、もう変わらなかった。
 だからこうして今、俺、先生にこんなこと話せてる。
 楽しかったって、そう言うことを拒む俺のことを、もう先生に話さないで、済むんだ。
 俺、嘘を付かないで、素直なことを今、話せるんだ。
 
 
 
 『前は、誰かに好きって言われると、戸惑うだけだった。でも今はみんなのことが・・・。』
 
 
 
 また明日学校に行ったら、楽しいことがあるんだよね。
 また明日みんなに会ったら、嬉しいことがあるんだよね。
 それがどういう事かってことを、俺はいつも考えてたけど、
 そんなの考えたって、それを考えてるときの俺にしか役に立たないことなんだ。
 だって俺、もうなにも考えて無くても、楽しいんだもん。
 ていうか、先生。
 俺って、俺が今まで考えてきたことって、一体なんだったのかな?
 俺が考えてきたことって、それはなんのために使うつもりだったのかな?
 たぶんそれって、俺はなにかを楽しむために使おうとはしてなかったんだと思う。
 俺が色々考えて、苦しんで、悲しんできたのは、それは・・・・・。
 うん、それはきっと、そうしている事しかできなかったからなんだ。
 なにかのために俺は考えてた訳じゃなくって、考えるしか、無かったんだ。
 俺の人生について、なんて考えてたのだって、それは別に人生を楽しくしたいって考えたことは無い。
 ただ人生ってこういうことだって、俺は説明してみたかっただけなんだよ。
 なんで説明したかったのかって言うと、それは俺が・・・・。
 その説明の中に生きていたから・・・・・・・・・。
 俺が説明してみせた世界の中にしか、俺は居なかったんだと思う。
 そう・・・・・・うん・・・・・・だから・・・俺・・・。
 誰かに好きって言われる俺がどこにいるのか、わからなかった。
 誰かを好きって言える俺がどこにいるのかも、わからなかった。
 だってその好きって言われたり好きって言える俺は、その俺の説明した世界の中には居なかったんだから。
 覚えてる? 先生。
 前に俺が言ってた「ほんとうの俺」っていうのは、その世界の中に居る俺のことだよ。
 それで、俺は前に先生に、俺は絶対にその「ほんとうの俺」にはなれないって言った。
 それがどういうことか、自分で言っておいてなんだけど、ようやく今、それの本当の意味がわかったんだ。
 つまり、俺はもう最初からわかってたんだ。
 俺はその世界の中には初めから居ないってことを。
 俺はその世界の外にずっと居たってことを。
 外の俺と「ほんとうの俺」が、だからひとつにはなれないってこと、知ってたんだ。
 だって、外に居る俺は・・・・・・もう・・・・・・どうしようも無いくらいに・・・・・・此処に居るんだから。
 俺はずっと、その内側の「ほんとうの俺」を見つめ続けてそれが俺だと思っている外側の俺。
 その外側の俺は、そして誰かに好きって言われたり、誰かを好きって言ったりしてる。
 俺はずっと自分は内側に居るって思ってたから、それはとても不思議なことだったんだ。
 この、好きって言われたり、好きって平気で言える俺は誰なんだって、ずっとだから、思ってた。
 でも。
 俺はそれでも感じた。
 それが俺だってことを。
 俺が、その説明された世界の内側の「ほんとうの俺」を見つめ続けながら居る外側の俺だってことを。
 うん、ちょっと違うかな。
 それはただの俺の言葉でしかなくって。
 ほんとうは、俺はただ、気付いたらもう、誰かに好きって言われたり言えたりする俺、だったんだよ。
 先生。
 
 
 
 
 『唯子が好き、弥生さんが好き、東雲先生が好き。キヨとかいう草灯の友達も好きだ。勿論草灯も。』
  
 
 
 
 
 俺さ、先生。
 うん、だからね、楽しく生きていけそうな気がするんだ。
 俺、「ほんとうの俺」を見ても見なくても、それになってもなれなくても、此処に居るんだよね。
 そしてだから俺、その「ほんとうの俺」を見ることができて、そしてそれになりたいって思えるんだ。
 俺はだって、その「ほんとうの俺」を見る事ができる俺で、そしてそれになりたいって思う俺だから。
 うん、そういうこと。
 「ほんとうの俺」があってもなくても、俺は無くなったりしないんだもんね。
 写真と同じ、だよね、それって。
 「ほんとうの俺」は「ほんとうの俺」だし。
 それだけでしか、無いよ。
 でも。
 俺は・・・・。
 ううん、だから、かな。
 俺は写真をコレクションすることもやめないし、そして「ほんとうの俺」を見続けることもやめないよ。
 だって俺、写真も「ほんとうの俺」も好きだもん。
 だから俺、これからも色々考えたり、するよ。
 「ほんとうの俺」のこともずっとずっと見続けるよ。
 けどさ、先生。
 
 
 俺はきっと、みんなと生きてるのが楽しくて、それどころじゃ無いんだ。
 
 
 今はそれでいいって、思う。
 うん。
 俺は「今」が一番大事だって、そう思ったから。
 そう、思えた、から。
 俺の人生は、そう思うことを続かせる事にしか、もう、使えないよ。
 俺は・・・・もう・・・・・楽しいことをしたいって、強く、強く、思わずには居られないんだ。
 そして。
 もしそう思わずに居られない、そういう状態になれなくても、俺はもう。
 そう思いたいと、そうやって自分で言うことをやめられないんだ!
 
 
 先生。
 俺、なんで生きてるのか、わかったよ。
 
 
 
 
 
 
 ・・・・・・
 
 
 『そう。良かったわね。』
 
 
 立夏くん、ほんとうに、ほんとうに。
 よかったわね。
 
 
 
 
                           ◆ 『』内文章、アニメ「LOVELESS」より引用 ◆
 
 

 

-- 050621--                    

 

         

                                  ■■ ふたつの嘘 ■■

     
 
 
 
 
 「神無月の巫女」、第10・11話を見ました。
 その感想を、書きます。
 
 
 ◆ ◆
 
 
 
 自分で出来ることを。
 それを積み重ねていけば、きっとあの人の元へ辿り着ける。
 そう信じて戦い続ける者が、それが嘘であることを感じないでいられる事は無い。
 どんなに頑張っても、それが結局のところ自分の力で得られるもの以上のものを与えてはくれないことを、
 そして自分の求めているものは必ず、その自分の力で得られない場所にあるということを。
 いついかなるときもそれを感じずには居られない。
 もし、目の前でその手に入れられるはずの無いものが自分に与えられたとしたら。
 それでもその者はそれが嘘であることを知りつつも、どうしてもそれに手を伸ばさずにはいられない。
 千歌音ちゃん・・・・・帰ってきてくれたんだ・・・・・。
 帰ってくるはずが無いのに、自分がひとりだけで戦ったご褒美が与えられるはずも無いのに。
 きっと悪いのは私。
 姫子はそれを充分にわかっている。
 千歌音に傷付けられた自分を顧みて、それは自分が悪いからだと思っているのに、
 それなのに、いざ千歌音が自分の元に戻ってきたのを見ると千歌音の元に飛び込んでしまう。
 自分が千歌音を得るに値することを、なにも出来ていないという事を知っているくせに。
 悪いままの自分になにも与えられるはずも無いのに。
 ただただ無償の千歌音の帰還を得る資格が無いと自覚していながらなされる、姫子の幸せの受容。
 だが。
 それは。
 
 それが姫子の嘘であることがあまりにも姫子にとって明白な事ゆえに、決して達成できない受容。
 
 千歌音との夢のような日常の続き。
 それが夢であると、嘘であるとわかっているゆえに、それを口にすればあっという間に終わってしまう幸せ、
 それを前にして姫子は必死に耐える。
 自分に嘘を付き続けることを。
 誰も傷つけられない、傷つけられていない世界があるという嘘を。
 その世界を生き続けることに力と想いを尽くし、自らの傷ついた体を涙で隠しながら、
 その傷を暖めてくれる千歌音に抱きしめて貰う姫子。
 そしてその姫子の目の前に居る千歌音にも、傷は無い。
 だって、本当は千歌音ちゃん、傷だらけなんだもん。
 傷だらけゆえに、なによりも千歌音はその傷を隠そうとして努力して生きてくれるから。
 だから姫子もそれに応えて自分の傷をなんでも無いといって隠すことに努めていられる。
 無傷の仮面を貼り付けて笑い合う姫子と千歌音。
 私達は、そうやって生きていけるよね、千歌音ちゃん。
 ほんとうは、それが自分の甘えにしか過ぎないことを知っていながら。
 
 自分が自分のできることだけをしているだけなのならば。
 自分ひとりが自分ひとりでできることだけをしているだけなのならば。
 その目の前で待っている者に、それで出来なかった部分が傷を付けて暴れ回る。
 姫子の目の前に今まで当たり前のようにして与えられていた、千歌音との幸せな日常。
 しかしそれは、あるとき無惨にも奪われてしまった。
 ならば、姫子はどうするのか。
 姫子は戦った。
 どう戦ったのか。
 姫子は、こう戦った。
 もう一度、あの幸せな日常に戻りたい。
 戻りたい。戻りたい。戻りたい。
 そうして、姫子のその戦いがもたらした戦利品が、今、姫子の目の前に転がった。
 あの幸せな日常を夢見ている姫子を包む傷だらけで嗤う千歌音が、其処に。
 もう、姫子の元にあの幸せな日常は、無い。
 けれども。
 でも。
 だからこそ、姫子は嘘を付いた。なんとしても、付いた。
 あの幸せな日常に戻れる、と。
 そうしてその嘘が、あの日常を再び自分が創り出せるという意志を姫子に芽生えさせていった。
 あの日常は戻らない。だってあれは私に与えられたものだもの。
 だけど私は、あの日常を、あの幸せを知っている。
 それと全く同じものをもう見続けることは出来ないけれど・・・・でも。
 でもだから私はその私が知っている幸せな日常を真似して、新しい幸せな日常を創ることができるの。
 私がかつて千歌音ちゃんに貰った幸せを、もう一度今度は私が創らなくちゃ。
 そしてその幸せを、千歌音ちゃんに・・・・・。
 千歌音ちゃん、千歌音ちゃん、千歌音ちゃんっっ!
 
 『ほら、聴こえるでしょ? 触れるでしょ? 感じるでしょ? ね? 私はちゃんと此処に居るわ。』
 
 千歌音ちゃんが居るから。
 私の目の前にちゃんと千歌音ちゃんが居てくれるから、私は嘘を付けるの。
 こんな傷痛く無いよって。
 そして、あの幸せをもう一度って。
 だって私があの幸せを無かったことにしちゃったら、千歌音ちゃんは。
 だから私は絶対に嘘を付くことをやめなかった。
 それが現実とは違う大嘘の千歌音ちゃんの姿でも、
 それでも私は千歌音ちゃんとのあの日々が大好きだから。
 そして、千歌音ちゃんもほんとうはそう想っているはずだから。
 だから私は、ふたりで過ごす当たり前の時間を、それでも受け入れて。
 ただもう嬉しくてそのままその時間に埋もれていたい衝動に必死に耐えながら、
 それでもその衝動に埋もれてもいいって叫んでた。
 その衝動を千歌音ちゃんに、私は与えたかったんだから。
 千歌音ちゃんに、この幸せの日々をもう一度。
 そのために姫子は現実を隠し疑いを止めて真っ直ぐに千歌音の元へと飛び込んだのである。
 
 そして、そうしている間に、千歌音は。
 
 
 
 
 
 
 
 

×

 
 
 
 
 
 『さぁ、続きをしましょう。もっと本当の私を刻み込んであげる。
  だから姫子も私に刻んで。あなたを刻んで頂戴、ね、姫子。
  踊りましょう姫子。命果てるまで。剣のワルツを。』
 

                           〜第 十一話・千歌音の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 さぁ、殺し合いましょう、姫子。
 私は嘘なんて付かないわ。
 愛するほどに殺したいわ、姫子。
 あなたが憎くて堪らないわ。
 私を傷つけていることから目をそむけて、どうでもいい幸せなんて求めてる姫子。
 私が愛の刃で切り刻んだあなたの傷を、必死に隠す姫子。
 嗚呼・・・・・なんて可愛いのかしら・・・・。
 
 愛しい其の体を見せつけられるほどに。
 優しい其の心を示されるたびに。
 千歌音は自分が姫子の目の前に居る限り、それらが等しく傷つけられていくのを知っている。
 自分が姫子を愛するたびに姫子を傷つけていくことを感じてしまう千歌音。
 自分の愛こそ、愛しい姫子を傷つける憎むべき存在。
 狂おしいほどの情熱が千歌音を包む。
 この愛が姫子に刻まれるたびに、姫子がこの千歌音の愛で埋まっていく。
 それは千歌音による姫子の独占の予感。
 傷つけ合うことで、ほんとうの想いをぶつけ合うことで、愛する人を殺し自分のものにする。
 愛し合うことで必ず出会う傷だらけのふたりを見つめながら、ずっと生きてきた千歌音。
 その事実から逃れること無く、ずっとその現実と対峙し続けた千歌音。
 その千歌音は、姫子の目の前で、遂に辿り着いてしまったのだ。
 姫子への愛という名の憎しみの名の元に。
 愛しい人のために生きても生きなくても、どうしてもその人を傷つけ、殺してしまう。
 その現実を完全に受け入れ、そしてその通りに生きていく。
 だから、殺し合いましょう、姫子。
 だから、愛し合いましょう、姫子。
 
 『私達は剣の巫女。求め合えば求め合おうとするほど、触れ合おうとすればするほど傷つけ合う。
  斬り結ぶこと、斬り結ばれること、それが私達、剣の愛し方。』
 
 私の愛を姫子の傷に換えて。
 傷がひとつ増えるたびに私の愛が深まって。
 死にかけの姫子の姿が私への愛で満ちていくのが見える。
 斬って、斬られて、お互い粉々になるまで斬り合って、そしてひとつに混ざり合いましょう。
 私の憎悪が高まれば、それだけ私が姫子を愛していることがわかるわ。
 姫子の私への憎悪が高まれば、それだけ姫子が私を愛していることがわかるわ。
 あなたの死こそ、愛の最高点。
 私の死こそ、愛の極地。
 だから、殺し合いましょう、姫子。
 姫子。
 姫子。
 姫子。
 あなたが好き。
 
 だから、私と殺し合って、頂戴。
 
 そして私は、あなたとの死闘の場を作るために、この邪魔な世界を、壊すわ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 『どうしてそんな嘘を付くのっ!
  千歌音ちゃん、全然楽しそうじゃない。
  笑ってるのに嬉しそうに見えないよ!』
 
 
 
 千歌音が、泣いてゐる。
 千歌音が、嗤ってゐる。
 自分の愛が姫子に傷しか刻めないことを。
 そして自分の愛が姫子を傷つけてしまうことを。
 そのような自分しか居ないことを。
 それしか、許してくれない世界を、ずっと、ずっと、見つめながら。
 姫子の事を憎むしか無かった、この絶対の悲しみ。
 それでも、それでも千歌音は姫子の目の前から消えられなかったのだ。
 だから。
 千歌音は嘘を付かなければならなかった。
 ほんとうの事を言い、すべての現実を姫子に無視させずに突き付けることをしなければならなかった。
 嘘なんて付いていないという嘘。
 本当という名の嘘。
 誰もが傷つき、誰かを傷つけている世界でも、そこに居るために付かねばならなかった嘘。
 自分が居るために、決して壊せない世界がそこに在る。
 だって、だって。
 殺し合わなければ、私は姫子の目の前に居られないのだもの。
 それがどんなに、悲しくても。
 
 
 
 
 そして。
 
 だからこそ。
 
 その嘘をあなたに見破られる訳には、いかないのよ。
 
 
 
 
 姫子の言うとおり、千歌音はこの世界を壊せない。
 千歌音が自分を見つめてくれた多くの人々の事を、どれだけ大事に想っているか、
 それを無視する千歌音では無い。
 千歌音は今でもこの世界をも愛している。
 そして。
 だから。
 壊せないはずのものを、千歌音は壊す。
 それが当然のように。
 それが千歌音の「本当」であるかのように。
 もし本当は千歌音が悲しみながらも、なおそれでもこの世界を愛していることが、姫子に知れたら。
 もし千歌音のこの嘘が嘘であることを見破られてしまったら。
 
 
 私はもう、あなたを憎めなくなってしまうもの。
 
 
 愛しい世界に一矢を放ちて滅ぼすほどに、あなたを愛し続けたい。
 私の涙を私の笑顔に換えて。
 この高笑いに力を込めて、私は私の命と私の大切な世界を賭けて、あなたと斬り結ぶ。
 ほら、あなたの好きな、そしてあなたの大好きな千歌音が愛しているはずの世界は壊したわ。
 ほら、いらっしゃい。あなたのその憎悪に満ちた愛を私に向けて頂戴。
 
 
 『さぁ、続きをしましょう、姫子。』
 
 
 
 
 
 
 私を、もう・・・・・・殺して。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 でも・・・私・・・どうしても・・・・それでも・・・・・・・姫子・・。
 
 
 
 
 
 
 
 その千歌音の絶望の悲鳴が、姫子の憎しみの刃を以て、千歌音の体に終わりを刻ませたのであった。
 
 
 
 
 ◆◆◆◆
 
 千歌音ちゃんは世界を壊して平気なはずが無い、そう言った姫子の言葉を聴いている千歌音の後姿。
 とてもとても、それは残酷な姿で・・・・なによりも、悲しくて。
 そして。
 絶対に、絶対に、それは姫子が振り向かせなければいけない後姿だったと思いました。
 
 
 
 
 
 
                          ◆ 『』内文章、アニメ「神無月の巫女」より引用 ◆
 
 

 

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                               ■■なんとかはっぴーです■■

     
 
 
 
 
 どうも、紅い瞳です。
 いつものように時候の挨拶を考えていたのですけれどさっぱりだったので、このまま始めました。

 未だにさっぱりなときの対処法が思いつきません。

 
 さて、今日は予定通りLOVELESS感想についての反省会です。
 最近紅い瞳の中で予定という単語が「そうなったらいいな」というニュアンスから、
 「大体守る」というニュアンスに変わってきているようです。よしよし。
 それで、はい。今回の感想についてですが。
 ここ最近の感想では主人公組の立夏と草灯を差し置いて、倭・江夜ペアを書いていて、
 すっかりそれにのめり込んでいました。
 そして今回はたぶん倭・江夜についてのシメのお話になりまして、まぁ色々書いてみたわけです。
 で、最初ほんとは倭ひとりの独白て終えるつもりだったのですけれど、
 どーも倭ひとりで最後までいっちゃうと違和感を禁じ得なくて、
 どーしたものかーと頭の中をこねくり回していながらでもそれでいて文字を打つ指は止まらずに、
 気付いたら江夜で最初の感想をまとめていましたのです。
 あ、そっか、江夜でまとめれば良かったんだ、あ、そっかー、
 となんだか訳のわからない納得を自分自身にさせられてしまい、えっとなんだか複雑な気分でした。
 やっぱり紅い瞳は考える前に書いちゃった方が良いみたいです。むぅ。
 それで、ええ、まぁ。
 実際倭って存在を考えていくと、結局倭はそれだけじゃ終わることはできないって感じなんで、
 絶対的に倭以外のなにかが出て来ないとどーにもならないことは確かで、
 だったら江夜が出てくるのは必然かなって今更ながらに思う訳だけども、
 でもそれだけだと逆に、じゃあ江夜は倭をまとめるためだけに其処に居るのかというとそうでも無く、
 だからやっぱり第二部のほうでは、きっちり倭ひとりで終わらせなきゃって思った。
 つまり出てきたのは江夜っていうより、倭の中の江夜な訳で、
 だから最後はその倭の中の江夜をきっちり抱きかかえて、目の前に居る江夜と向き合う倭、
 それを描かなくちゃーいけないんだと、そう思った訳で。
 別の言い方をすると、目の前に居る江夜をただ倭を自己完結させるための道具として使うのでなく、
 その道具として使われる江夜は倭の中の江夜であって、
 倭はだからその倭の中の江夜を使って、その自分の外にいる目の前の江夜と共に生きていくってこと。
 要するに他人の存在を絶対化しろーってことかな。違うか。適当過ぎか。うん。
 ていうか他人なんて絶対化するまでも無く絶対なんだよなー安心、怖いけどだから安心って感じ。
 よくわかりません。
 
 今回は一応反省点があります。
 いえいつもありますけど無視してるので今回は無視しないゆえにあると言えます。なに言ってんだ。
 で、まぁ数あるうち最大の反省点は、わたしゃー小説書いてんじゃないぞコラー、ってことです。
 あ、自分に言ってんですけど。
 私はあくまで「感想」を書いているのであって、別に有り得たかも知れない倭の物語を書くなっての。
 うん、要するに私が今回のLOVELESSを見て感じたことを説明する場としての感想な訳で、
 だからその説明をしないですらすらと言葉だけを繋げてってもしょうがない。
 今回の感想を読み返して、まず私がなにを感じたのかが明白に見えてこないっての感じたし。
 私が書きたいのは「倭の物語」では無くて「倭」なんですから。
 倭の言うことの体裁を整えることを中心に書くのじゃなくて、倭に倭を語らせなくちゃいけない。
 まー、私がやりたいことを突き詰めていけば、自然物語形式にはなっていくのですけど、
 でもそれは結果であって目的では無いのですから。
 んー、なんかわかりにくい説明になっちゃったな。
 よし、こういう言い方をしてみましょう。
 倭が倭の思ってることを書くんじゃないんです。
 倭が他の誰かにどう見られているか、それを倭に説明させるんです。
 その他の誰か、っていうのは私の事ですね。
 時折ヘンテコな比喩表現が羅列されている箇所があると思いますけど、
 基本的にはあれが中心にあるんです。
 第三者的視点でつまり倭ってのはこういう事さ、そういう風にして文章を形作っていく、
 それが私のやりたいことなんです。うん、たぶんそういうことだと思う。きっと。違ったらごめん。
 だからね、ええとさ、もうちょっと直裁な言い方すればね。
 もっとこう体感的なさ、なんていうかな、倭が見てる空気の色とかさ、感じてる温度とかさ、
 そういうのをもっとこう倭の言葉を使ってしっとりと呻くほどにドロドロと描いてみたいなー、なんて。
 だって今回の感想だと、ただ倭がベラベラ喋ってるだけで、その喋ってる内容だけが見えてて、
 その肝心の「喋ってる倭」自身の姿が見えてこないしさぁ。
 ま、倭の口調を軽い感じにして直接表現だけで敢えてそのへんを語ってみよう、とは思ったんだけど、
 語るに落ちた、って感じで惨敗でした、今回は。そういう意味では。失敗失敗。てへっ。
 
 ということはつまり、その他の意味ではお気に入りな出来でもあった訳で、
 たぶんまた読み返したときにデヘヘって感じで自己陶酔に陥って楽しめるのだと思うなー。
 やーだって、倭であれだけ書けりゃわたしゃ満足さ、うん。
 あー一応倭のことある程度はわかってるみたいだな、私って感じでね。
 というかですね、私は中野倭って存在が大好きな訳だから、そうやって満足できるんですね。
 よーするに、今回の感想文は中野倭萌え宣言書としては合格ということでしょうか。あ、逃げないで。
 
 ええっと、いつかまた倭で書きたいなーなんて思ってます。
 今度こそびっちり倭の詰まった文章を書きたいです。
 もうなんか、誰の事書いてんのかわかんないくらいに滅茶苦茶なのを。
 あ、でもその前に立夏と草灯をなんとかしなくちゃ。
 いよいよ、本番です。
 
 
 
 
 ◆ ◆
 
 たまには他のアニメについてもつらつらと。ネタバレ必中なのでご自愛を。
 
 
 ・種運命:
 キラはフリーダム大破でもう駄目かーと思いきやごく自然にアークエンジェルに回収され、直撃コースかと
 思われたアークエンジェルもなんだか割と余裕ある逃亡。やはり名前だけの主人公とは実力(作品内
 の扱い)が違う。けれどそれを知らないですっかりテンパったアスランの運命や如何に?次回タイトルは
 「アスラン脱走」。もう少しオブラートに包んだ表現、例えば「キラの元へ」とか「平和を求めて」とか
 そういう小細工一切無しでこう来ました。アスラン脱走。最高。あはは、あはは、わはは。
 
 ・スピカ:
 最終回。惜しくも最終回。でもいい。これだけ完璧に私を感動させてくれたのならいい。最高点で合格。
 自分がゴールするのに半分だけの力を使って残りの半分は一緒に歩いてくれる人のために使うってそう来
 たか。そして私を生んでくれてありがとうお母さんで終了。言うこと無し。立つ鳥紅い瞳を濁らす(涙で)
 
 ・エマ:
 ・最終回。なんで最終回どうしてさ最終回。とりあえず話数の上限に達したので終わらせてみました、
  そういう感じしかしないけど一応ウィリアムとエマが実らぬ恋を悲しみ合いながらお別れで終了。
  体裁としてはだから一応まとまってはいるけれど、
  エマは終わるべくして終わったようだな(某カレイドステージオーナー風に)。
  はっ!なんだこれはまったく見てられんよなんだなんだハキムが一番カッコイイじゃんか、ふんだ。
  諦めてなにが恋だ愛だ貴族様だ!(ちょい違う)自分がその恋と引き替えに捨てなければならないもの
  の重みのせいにしてたらそれはその重みを捨ててんのと同じだっての!
  自分が捨てるものと向き合って初めて得られる恋が今目の前にあんのに!むきぃ!
  という感じで頭悪そうに怒りながら見届けました。エマ終わり。ご馳走様でした。
 
 ・カレイド:
 ミアが潰れそうなカレイドステージの脚本を頑張って書いて他のみんなも頑張っちゃったお話2つ。
 カレイドステージが終わろうと私の未来まで閉ざすことはできないわって言うレイラさんがMVP。
 さらに、そう思うのは自分がカレイドステージに拘って新しいステップに行くのを怖れているからだと思う
 レイラさんにカレイドステージの終わりを見つけていながらそれでもなおそうだからこそ私頑張らなくちゃと
 言えたそらがバランドール。明日への希望・・・いいね!
 
 ・極上:
 フットサル部員が試合を控えて全員夏風邪で倒れたのでいっちょ生徒会が試合でますというお話。
 取り敢えず奏会長の笑顔で静かに怒りを高まらせていく情感を笑いながら感じればOK。
 それでこそ極上。その他チマチマとそして確実に小技をヒットさせてくる勢いにもうたじたじ。
 あんまり内容覚えてないや。でもそれでよし。許します。いけ。
 
 ・ブリーチ:
 雛森のひどい顔に萌え。今回のお話はただ普通に流していくというか11番隊副隊長のチョコマカぶりで
 お腹一杯。あれはいいものだ。霊圧に当てられて泡拭いてた四番隊の小僧は微妙。なんの話ですか。
 
 ・ばじりすく:
 総集編。特に意味無し興味無し。おまけに朧様の「陣五郎、出てきやっ!」は回想されないし。
 もういいよ、もう。勝負は次回からです。
 
 ・ハチクロ:
 今週はやってませんでした。
 
 ・ツバサ:
 まだ見てません。
 
 ・トリブラ:
 もう見てません。
 
 ・スピグラ:
 なんでしたっけ? それ。
 
 
 
 
 紅い瞳の最も遠いところに座っている言葉は、「初志貫徹」です。
 だって、もう、飽きた。>トリブラ・スピグラ
 
 
 

 

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                        ■■生きるための言葉を知っている 2 ■■

     
 
 
 
 
 
 

 

 
 ◆◆◆◆
 
 
 なんでだか知らないけど、生きている。
 どうして知らないけど、生まれて、来た。
 私にはその辺りのことを知る権利も無ければ、その権利を得たいと思うことも無かった。
 だってさぁ、そんなことで足掻いてる暇があったら、素直に生きてた方が楽しいじゃん?
 全部知りたいとか、全部自分で決めたいとか、
 そうやって必死に考えてないと、生きていられない奴は居るね。
 あの立夏って小学生もそだよね。
 清明みたいにずる賢くも無くて、真面目に考えちゃってさ。
 きっとああいう子や江夜みたいなのにとっては、
 そういう考えた末に出てきた言葉が、生きるために必要なものなんだろうね。
 考えなくちゃ、生きられない。
 或いは、考えてないと、生きていられない。
 江夜を見てると、よーくわかる。
 あの子は、考えていないときに押し寄せてくる、世界のどうしようも無さを知ってる。
 自分にはわからないことが無くて、だから全部自分で決められる、って思うことは、
 そう思わないと、自分が壊れちゃうからなんだろうね。
 だって、あまりにもわからないことが多すぎて、そしてあまりにも自分で決められるものが無いんだから。
 だから江夜や立夏って子も、その世界の怖ろしさを知るゆえに、
 それに逆らうことでしか自分を維持できないって事かな。
 私はさ、ある意味でこの子らとはちょーっと違う。
 たぶん私は吾妻さんに近いのかもしれない。
 そーだねー、わかりやすくいうと、私は世界のどうしようも無さの中でそのまんま生きてるんだよ。
 逆らうことも無く、そのまんま受け入れて、その通りに生きてるっていうか。
 別にぃ、どうしようも無いから諦めた、とか、そんなんじゃーないよ。
 だってそれって、諦めたとか言ってる時点でそうじゃなかったときがあるって事じゃん。
 私はさ、最初からそんなことどうでも良かったんだもん。
 生まれてきたときから、この世界の中でどうやって生きてこーか、ってそればっかり考えてて、
 だから自分が生きやすい世界を創ろーなんて、考えたことも無かった。
 だから運命とか、そういうのがあっても、私は全然そんなの嫌だーなんて思わなくて、
 ただその運命が与えてくれたもんに感謝して、それで速攻それを楽しむことに没頭してて。
 たぶん私はその繰り返しだったし、むしろそうやって与えられていくものにありがとうっていう言葉、
 それが私にとっての生きるために必要な言葉だったんだと思う。
 わたしゃーだから、ありがとうって言うだけで、こんだけ沢山楽しく生きられたんだよ。
 しかもたぶん、それって自分で全部知って全部自分でやってこう、
 そうやって自分ひとりで考えて得られるものの、何億倍もの世界を私に与えてくれたと思う。
 それはさ、ある意味でかなりキツイことではあったけどさ。
 全部自分が、ってー意識で自分と世界との境界線を強化させることが無かったからね。
 つまり私は世界とノーガードで撃ち合ってるみたいな、そんな真っ向勝負をずっとしてた訳だし。
 私にとっての防衛ラインってのは、この薄い私の肌だけみたいなもんだったしね。
 
 でもさ、それってさ。
 考えて生きてたって、結局は同じなんだよね。
 
 江夜がなにかを考えながら生きてるのは知ってるけど、
 でもだからこの世界のどうしようも無さを知らないでいられるとは、全然思わない。
 考えて考えて考え詰めて、それでもジリジリと迫ってくる世界の重圧はしっかり感じているんだ。
 んー? 違うかな?
 そう言うより、どんなに考えても考えて無いのと同じってことしかわからない、って感じかな?
 私ら、結局どんなに言葉を紡いだって、全然この世界の事、変えられないのよね。
 それについでに、私らには理解できない、知り得ないことも沢山沢山在り続けていて。
 こんなちっぽけな私らの体ひとつで、操作できたり理解できたりする世界の広さなんて、たかが知れてる。
 しかもその僅かな操作できたり理解できていると思っていた世界でさえ、
 ほんとは全然そうはなって無いことに気付いちゃうんだ。
 私らの知性とかそういうのって、きっとそのことに気付くことくらいにしか使えない、そんなもんだと思う。
 私らには、なーんも無い。
 全部、貰い物。
 そして貰えなかった世界の残り部分から、圧倒的な圧力を喰らいまくってて、
 そんでもって、貰ったと思ってた部分ですら、私らの内側から激しく突き上げてくる。
 はっ。自分なんて何処にもいねーじゃん。
 そう感じたとき、ほんとうのほんとうにどうしようも無いって事から逃げられなくなったとき、死を想う。
 私は、そんなことを今までずーっとイメージしてた。
 
 
 勿論、そんなイメージは嘘っぱちなのは知ってた。
 
 
 だってさ、私は始めっからどうしようも無い事しか無いってこと、知ってたもん。
 だから私は最初から逃げてなかったし、その事実を隠そうとしてみても、
 それが全然隠せてないことも知ってた。
 私は私。
 私じゃない私でしか、私というものは持ち得ない。
 ずっと、ずっと、それは知っていたことだし、気付いていたことだった。
 それに気付いていた分だけ、私は実はこのお先真っ暗ななんにも無い世界に慣れていた。
 全くのゼロ、つまりなにも無い私という存在の中に、確かに「私」ってものを作り始めていたの。
 貰い物の私、でも其処に私の「名」を描き込んだのなら、それはもう。
 それはもう、「私」のものである私なんだ。
 私が私の所有物になるってことよ。
 勿論、それは私が創ったものじゃ無くて、
 そしてよくその使い方も構造も知らない訳わかんないものだけど、
 でもそれでも、少しづつ使い続けていくうちに、その使い方も構造もわかってくるものなのよ。
 それでもそれは、私が創った私じゃないよ。
 私という存在が私という存在であることは、絶対に変わり得ない。
 でも。
 それでも。
 
 この、「中野倭」と名付けられた私は、紛れも無く私のものなのよ。
 
 私は幸か不幸か、絶対的にこの中野倭以外の私にはなれない。
 というか、それは幸せでもあり、不幸せでもあるっていうところかなー。
 私の名が私に私があることを保証してくれて、そして私の名が私には私しか無いという制約を課す。
 そういうもんじゃん?
 自分の名前にこだわるのって、それってそんな馬鹿なことじゃ無いよ?
 私が私で居られるってことの喜びを、噛みしめられるからね。
 
 
 でもさ。
 私はゼロだから。
 ほんとは中野倭なんて名前、どーでもいいのよ。
 
 
 私は私のことなんてどーでもいいし。
 私なんて江夜のために居るようなもんだし。
 ていうか、江夜のために居る私を求めてる私が居るのかもね。
 そのどっちの私にも、中野倭って言う私専用の名前は不要なんだよね。
 あー、うん。江夜は欲しがるだろうね、きっと。
 中野倭っつーちゃんと世界から自立してる個人としての存在を私に求めてるだろうし。
 でもま、それは求めてるだけで。
 その求めたものが手に入ってもなんの意味も無いことを、江夜は既に知っているから、
 それはたぶん中野倭を求めるってこと自体にしか意味は無いんだと思うなー、私。
 私も正直、坂上江夜って名札下げた江夜は要らないな、うん。
 私と、そして江夜にとって本当に意味があるのは「ゼロ」の名前だけだよね。
 だってさ、私らふたりが私らふたりで居ることを証してくれるのは「ゼロ」だけだからね。
 倭と江夜ってのは、それぞれが別々に1人1人居るってだけの事だし。
 私ら、そんなのあっても意味ねーし。
 その中野倭と坂上江夜ってふたりを、改めて出会わせて、
 そして「ゼロ」に代わる新しい「私らふたり」を示す名前を創る、そういう時にしか意味無いじゃん。
 でもきっと私らにはなにも創ることはできない。
 だから「ゼロ」に代わる名前を新しく創る事なんて、できやしない。
 私らにできるのはね、ただ。
 
 
 ゼロから始める事だけなんだよ。
 
 
 「ゼロ」という名を少しずつ変えていくことでしか、私らはひとつにはなれないんだ。
 私らは、ゼロ。
 そしてゼロの名は伊達じゃないよ。
 なにも無い、どうしようも無い世界の中でずっと生きてこれた、空っぽの私らなんだ。
 ゼロって、ほんとなんにも無い。
 でもそれはつまり。
 ゼロが私ら、ってことなんだよ。
 私ら自体が、なにも無い、どうしようも無い世界そのものなんだ。
 私らが此処にゼロとして居る、無いものが在る、という最高の不自然が其処には広がってるんだ。
 「ゼロ」が在る。
 「なにも無い」が在る。
 これがどういう事かわかる? そこの小学生。
 私達は、どんなことがあったって無かったって、此処に居るってことなんだ。
 私達がなにをどう考えようとも、私達が此処にこうして在るって事は無くならないんだ。
 だってそれは、最初から無いんだから。
 無い、という在る、があるだけなんだから。
 私達ゼロは、いつでも其処から無条件に始められる。
 
 
 
 
 
 だから、変わっていくことができる。
 私達が私達で居ることは、決して変えられないから。
 
 
 
 
 ゼロ、という数字は無を表わしているけれど、
 ゼロという「数字」が其処にあることまでは無にできない。
 そしてだから、そのゼロという数字の上にはずっとずっと数字を重ねていくことはできるんだ。
 なにかを積み重ねていける「私ら」というゼロが在る限り、
 私と江夜はゼロ以上の数に変わっていける。
 なにも無い世界の中に、創ったと思えるなにかを重ねていくことが出来る。
 それが例え私らの言葉で創ったものでしか無くても。
 
 
 
 その言葉が、私らふたりをずっとずっと生きさせてくれる。
 
 
 
 冷たい石畳の上で凍えるこの体がこの夜を暖めるために震えている。
 熱量の恩恵をもたらさない真っ白な月を見上げる瞳が煌々と熱を帯びて空を照らしている。
 世界に変えられても世界を変えられる私が居る。
 世界に変えられるからこそ初めて世界を変えられる私が在る。
 倭のために震えている江夜。
 江夜のために耐えている倭。
 そのふたりが居るときにだけ、初めてそれは意味を為す。
 そして、だから。
 私らふたり、笑って生きていけるんだよ。
 ううん、違う。そうじゃない。
 
 
 ふたり笑って生きていけるから、私らはこの世界の中で震えながら耐えていられるんだ。
 
 
 よーし、楽しんじゃおー、江夜♪
 
 
 
                          ◆ 『』内文章、アニメ「LOVELESS」より引用 ◆
 
 

 

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                         ■■生きるための言葉を知っている■■

     
 
 
 
 
 『名前は大事だよ。同じ名前の二人はちょー特別なんだ。運命の相手なんだよ。
  天が決めたかのように・・・・大切なんだよ・・・・。』
 

                           〜第十話・中野倭の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 にこやかに、軽やかに。
 息を大きく吸って、よしとひとつ小さく気合いを入れて。
 それでトンと爪先を高鳴らせれば、はい、準備完了。
 このまま青い空の下で楽しくやっていけるって。
 追加で鼻歌でも歌えば、さらにこの体は軽く微笑んで前へ進んでくれるって。
 よーし、楽しんじゃおー。
 
 この息がはずむ限り、私はまだまだ生きてける。
 中野倭の名にかけて、私は。
 
 
 『その前にお茶しよー。お姉さんおごってあげる♪』
 
 
 

 
 
 うっすらと張り詰めていく肌がさらさらとまとわりつく空気を見据えて笑っていく。
 吹き付ける痛みを遮断しながら、ジリジリと後退していく私と世界の境界線がある。
 このまま押し切られたら、私はどうなるんだろう。
 どんなに笑っていたって、どんなに我慢してみたって、手詰まりなのは変わらないし、
 未来が無いのもまたわかり切ったことだし。
 それなのにこうして巫山戯ている瞳を急激に収斂させて私自身を見つめてみても、
 それは最初から自分にはなにも無いことを確認するだけの事にしか過ぎない。
 
 
 痛みを・・・・・・感じてる私が居る。
 
 
 私は痛みを感じないはずなのに。
 だから私は痛み無き江夜の痛みを引き受けられたのに。
 戦えば戦うほどに、私は身を引き裂かれるほどの痛みに襲われる。
 それに耐えるのは簡単だ。
 だってそれに耐えられなければ、もう。
 私は江夜のサクリファイスではいられないのだから。
 痛みを感じてしまった今はもう、本当に耐えるしか無いのよ。
 耐えて耐えて、それでも少しずつ私の体はそれに耐えることができなくなっていて。
 いつ、絶叫して江夜の前で崩れ落ちる私を見つけるか、わからないんだ。
 江夜は、私のことなにも知らない。
 私がまだ痛みを感じていない、ゼロとしてまともだって、そう思ってる。
 でも、それでいいのよ、江夜。
 あんたがちゃんと私の事、ゼロとして認めててくれなくちゃ、私は速攻消されちゃうんだから。
 だから私はあんたに絶対に私の痛みを見せないし、
 また痛みを江夜に見せさえしなければ、まだまだ江夜のサクリファイスでいられるのなら、私は嬉しい。
 そしてなにより、あんたにはいかなる痛みも与えたくないし。
 私はあんたが自分の痛みで苦しむ姿も、そして痛みに震える私を見て苦しむ江夜も見たくないから。
 でも、このままでいたら・・・・・きっと・・・・。
 
 
 だから私は、敢えて江夜との別離を言葉にすることを江夜に伝えた。
 
 
 私が江夜の痛みを引き受けることで得られる力は、もう生み出せそうに無いから。
 だから私は、その別離の予感がもたらす力を江夜に与えたの。
 ほんとは、それを与えることで、もう私には江夜の痛みを引き受けることで与えられる力が無い事、
 それを江夜から隠せるから、だから敢えて最も忌むべき別離というスペルを唱えさせたの。
 
 『私はこの絆を断ち切り、かの絆を結ぶ。』
 
 それを江夜に言わせたこと。
 それがどれほど江夜を傷つけたかわからないことなんて、ないよ。
 でも私は。
 その苦しみを江夜に与えてまでも、江夜に私が痛みを感じていることを伝える訳にはいかなかったの。
 私が・・・・私だけが我慢すれば・・・・・・。
 私は私が我慢していることを決して江夜に悟らせないことに細心の注意を払い、
 平然と楽しげに呑気に振る舞い、完璧を貫いた。
 その別離の言葉に最も怖れているのが私である事を隠すために、私は敢えて別離を口にする。
 簡単な嘘の付き方だけど、江夜はこのくらいで簡単に引っ掛かってくれる。
 江夜を騙すのは、簡単。
 そして私が私を騙すのは、もっと簡単。
 でも。
 
 
 
 私達ふたりの名を騙る事は、私には絶対にできなかった。
 
 
 
 痛みを感じてしまうことで、私は江夜のサクリファイスとしての資格を失いつつある。
 ふたりでひとつの名を持つ私と江夜の絆が既に薄れ始めているのを、私にはどうしても止められないのよ。
 私はもう、江夜とひとつでは居られない。
 私はもう、江夜とひとつの名前を名乗れない。
 私がどんなにその名を騙ろうとしても、私の体からは自動的にその「ゼロ」の刻印が消えていった。
 ははは、偽の印籠掲げたって、誰も騙されないってことよ。
 私にはどうしようも無いことがある。
 どんなに飾ろうと、それを取り繕うことはできないんだ。
 だから私はそれを隠すことでしか、此処に居られなかったのよ。
 なんで・・・・私だけ・・・・・。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ◆◆◆
 
 
 
 
 
 
 『こんちわ! 私、中野倭。 ずっと待ってた。』
 
 
 
 
 
 
 江夜・・・・・江夜・・・・・・・・。
 私ね、泣いちゃったよ、遂に。
 あんたの目の前でさぁ、あんなみっともない顔でさ。
 痛くて、辛くて、そして悲しくて。
 そういうことに全部耐えて耐えて、それでも来ちゃった終わりを迎えて。
 私、自分が耐えてきたことが、江夜との別離を止めるためになんの役にも立たないこと、知ってた。
 私がこうしてずっとずっと痛みに耐えていることが、
 そんなの全然江夜のためにならないことくらいわかってた。
 私の我慢が私のただの見栄だってことくらい、そんなの。
 うん、そう。
 私が痛みに耐えられたのは、あんたのためになんとかしなくちゃいけない、
 そういう私の言葉のお陰なんかじゃ、全然無い。
 私は・・・・・私は・・・・。
 ただ耐えることしかできなかったんだ!
 私にはただ耐えることしか、江夜にはしてやれなかったんだ!!
 そんな私が江夜と同じ名を騙ろうとするイカサマをこそ、誰かに暴いて貰いたかった。
 うん、うん、そうだよ、江夜。
 
 
 それを暴いてくれたのは、私達ふたりの名そのものだった。
 
 
 私が先生から貰った江夜と同じ名が、この体から私の意志とは関係無く消えていくこと、
 それがなによりも私が江夜のサクリファイスとして絶対的に役不足なことを証してくれているんだ。
 私には証せないことを、この与えられた名前が証してくれた。
 ありがとう、先生。
 私を江夜のパートナーにしてくれて。
 そしてごめんなさい、先生。
 私が江夜のパートナーで居られなくて。
 江夜・・・。
 江夜・・・・・・。
 
 
 
 
 
 
 
 『私は、生きてる江夜が好きだよ。生きててあったかいのが、泣いたり笑ったりする江夜が・・。』
  
 でも生きられない。
 生きたいのに生きられない。
 江夜と居たいのに、もう居られない。
 私にはどうにもできない事に抱かれて、私はその喜びのうちに死を選びたい。
 だから・・・・・。
 江夜。
 
 一緒に、死んで頂戴。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

・・・ ◆ 坂上江夜の回答 ◆ ・・・

 
 
 
 倭。
 倭。
 倭。
 聞きなよ。
 
 
 
 
 
 
 
 『倭、あんたが私のサクリファイスで、あんたが私の運命で、ほんとに嬉しかった。
  そう、私はこのくだらない私自身よりももっと倭を愛している。』
 
 
 
 私に与えられた倭。
 倭に与えられた私。
 それは決して私達の言葉では創れない私とあんたで、
 だからこそそれは掛け値なしに重くて確実で、そして。
 なによりも強く強く私達を突き動かしてくれるんだ。
 私達が無条件に生み出されてしまったこの見知らぬ世界の中で、
 それでもなにもできないまま手探りで、そして必死になって生きるために。
 私に与えられたあんたとふたりでひとつの名があることが、こんなに嬉しいだなんて。
 私には決してその名前は創れないよ。
 私には、私とあんたをひとつにする名を唱えられなかったよ。
 だって私達、初めから与えられたひとつの名の下にひとつだったんだから。
 この月が照らす夜の下で、私達はずっと生きなければいけない。
 でも。
 私達はそれでもその同じ月を見ながら強く生きていける。
 だから。
 私達は、私達の同じ名「ゼロ」の名にかけて言わなくちゃいけない。
 
 
 『ゼロは、死にました』、と。
 
 
 私達の大切な名「ゼロ」への愛のために。
 私は私の意志で証す。
 ゼロという空洞の名が其処にあることを。
 私達が私達であることはやめられないよ。
 私が私であることも、あんたがあんたであることもやめられないんだよ。
 でも、私達はその事を愛してる。
 私達の運命を私達は愛してる。
 だって、わかるよね、倭。
 運命が、私達を出会わせてくれたんだから。
 私達の力ではとても為し得なかったことを、平然と私達に与えてくれたんだ。
 私達に与えられた名が私達ふたりを繋ぎ、そして。
 そしてそれは今度は私達ふたりを引き裂こうともしている。
 だから。
 私に倭を与えてくれた運命に、私は感謝する。
 倭に江夜を与えてくれた運命に、私は感謝する。
 
 そして私は、倭を、その運命から、奪う。
 
 ありがとう、先生。
 倭を作ってくれて。
 そしてだから、ごめんなさい。
 先生から倭を奪ってしまって。
 倭は私がずっと守っていきます。
 
 
 倭。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 『生まれ変わろう。』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ゼロという名が与えてくれたこの月夜の下で、新しい名前をこの体に刻んでいこう。
 ほんとうは空っぽだったこの時間の中に、私達の絆を描き込んで。
 描いて、描いて、さらに塗り変えるように、この夜空を見上げて、生きて。
 其処に夜しか無いことを恨みながら、其処に空があることを感謝して。
 そして。
 その空の色を塗り変えることが、私達には許されている。
 
 『今夜死んだという事は、今夜生まれたって事になるのかな。』
 
 NAMELESS。
 名無き名。
 ゼロという私達は、いつだってそこから始められたんだ。
 名前に支配されたまま、その名前の通り無に還る。
 でも私達は、その無からまた始められる。
 だって。
 私達には、私達が最初から在るのだから。
 なにも無いことを知って、だからなにも無いことなんか絶対無いことがわかるんだよ、倭。
 必ず其処に、ゼロという始まりがあるのだから。
 その始まりが私達の意志を越えたものから与えられたことに、私は感謝する。
 倭。
 この世界に、支配されようね。
 ふたり、一緒に、其処から始めよう。
 
 
 
 『これからもよろしく。江夜。』
 
 『うん、よろしく、倭。』
 
 
 
 
 死がふたりを分かつまで。
 そして。
 分かたれてのち、またふたりでひとつに生まれ変わることを目指しながら。
 
 
 

                              ・・・以下、第二部に続く

 
 
                          ◆ 『』内文章、アニメ「LOVELESS」より引用 ◆
 
 

 

-- 050615--                    

 

         

                                 ■■それはさておき■■

     
 
 
 
 
 愛も希望も夢も時間も、決して無くなりはしない。
 それが在ると、思い信じ続けられるのならば。
 何時だって何処でだって、私の力では到底無くせないものがある。
 其処にあるのはただ、それが無くなったと思い嘆いている私と、そして。
 私がどう思おうとも、どうしようも無く初めから在るものだけだ。
 私の知り尽くした、その私の全く知らないものが、その姿を変えながら私をずっと待っていてくれる。
 そして。
 其れは自身をさらに変えて貰うために、ずっとずっと私を求めて待っている。
 
 
 それはさておき。
 
 
 ごきげんよう、紅い瞳です。
 特に心わだかまることも荒ぶることもない心底お気楽気分でゆらゆらテレビを見ていましたら、
 なんの前触れも無く右手中指の先がジンジンと痛み出したので、
 あれどうしたの?とまるで子供をあやすかの如く優しい顔して見やると、
 鮮  血  が  少  々 。
 しかも、結構痛い。いやいやいや、ハードに痛い。あ、痛。
 外傷は無いのに、指と爪の間からポタポタと血がそれはもう。
 でも爪が剥がれている感じは無かったのでなにやら勝手にほっとしてしまったのですが、
 すぐに大事なことを思い出しました。
 今、私はただテレビ見てただけ。
 別に手をブンブン振り回して(例えばサッカーの応援とか)どこかにぶつけたわけでも無く、
 ていうかそれ以前に手、動かして無かったよね?
 それに急な痛みで今、気付いたわけだから、その前にケガしたとも思えないし・・。
 と考えながら取り敢えず消毒してバンドエイドで締め上げといて(←止血のつもり)、
 お風呂で見たら血が止まっていたので、もう私はあんま気にならなくなりました。
 血が出てなきゃいいよ、もう。
 
 
 それはさておき。
 
 
 6月というといわゆる梅雨、というか梅雨そのものですが、
 勿論私は梅雨なんて嫌いも嫌い花粉吹き荒ぶ春先と同じくらいに嫌いです。
 基本的に服着てる上から水をかぶる、というのが有り得ないし、
 ていうか髪の毛がただ私に反旗を翻すためだけに生えてんだぜみたいな自己主張をしてきて最悪だし。
 あーあーあー。
 でもね、梅雨にもひとつだけ好きなことがあって。
 紫陽花。
 うん。好き。大好き。
 なんかもう雨に濡れた緑の葉の手触りの異様さは計り知れない。
 そうそう。
 紫陽花って基本的に、青・赤・紫(青紫と赤紫)の三色であと白もたまにあるけど、
 やっぱなんか異様なんだよね、あれが雨の中で咲いてるのって。
 前もなんかの日記で書いたような気がするのだけれど(マリみてだっけ?)、
 私は紫陽花が大好きです。
 やー、だって、今ウチの庭に咲いてるんだもんなー。
 眺めて良し、触って良し。うん。うん。最高。うんうん、デヘヘ。
 ・・・・。
 なにが言いたかったのか基本的にわかってないので、適当に笑って聞いてやってください。
 
 
 それはさておき。
 
 
 最近紅い瞳が神無月の巫女というアニメにうつつを抜かしている有様なのをご存じでしょうか。
 ていうかご存じもなにも日記で感想書いてる訳ですからそんな質問は無しでしょう。どうでもいいですね。
 でまぁ、ほんとは今日あたり続きを更新したかったのですけれど、
 生憎と感想を書く分のアニメを観る時間と感想を書く時間がまとめてとれなかったので、
 たぶんきっと続きは日曜日あたりになると思います。
 えっと、明日(木曜)は元々予定空いてないし、金曜日はLOVELESSの感想だし、
 土曜日はやる気無いし、ということで日曜日に白羽の矢が立ちました。堪忍な日曜はん(そっちかよ)
 でさらに追い打ちをかけるかのように、金曜日のLOVELESS感想についてなにか書くことがあったら、
 たぶんそれは日曜日に書くこととなってしまいますので、
 それと一緒に神無月の感想を書くとなると分量が心許ない気がしますし、
 ええっと回りくどい言い方を散々してきて申し訳ありませんでしたので、最後も回りくどく。
 ま ー 、 気  長  に  待  っ  と  い  て  ね  。
 読んでくれている人が居たらの場合ですけれど。
 居なかったら、それはそれで。
 (一応次回に続きである第10・11話の感想、そして次々回更新時に最終話の感想を書くつもり。
  それでもしそれでもまだ書き足らなかった場合、その後にも1回まとめとしての更新をする予定です。
  予定っていうかするかも、っていうかしないとは言い切れない、というかまぁうんそういうこと。)
 
 
 それはさておき。
 
 
 LOVELESSです。
 先週は特番で放送が中止でしたので、2週間ぶりとのことになります。
 いい加減感想の書き方忘れてきたかと思われますが、それは毎週のことゆえ別に心配はしてません。
 とはいえ、というかむしろ私は個人的に期待しています、自分に。
 願わくば、神無月の巫女を見て得た影響が反映される感想が書けんことを、と。
 それ、期待っていうか願掛けじゃ無くね?とか言われたら、うん、そうだね、祈りますか。
 神頼み万歳。
 
 
 それはさておき。
 
 
 
 
 右手の中指の先が痛いんですが。 (今日はここまで)
 
 
 

 

-- 050612--                    

 

         

                                   ■■ 愛と憎しみ ■■

     
 
 
 
 
 「神無月の巫女」、第8・9話鑑賞終了。
 以下、感想。
 
 
 
 
 ◆◆◆◆
 
 『これでわかったでしょう?
  あなた達の闇、絶望など、月に照らされ消えゆくしかない、薄闇に過ぎないことが。』
 

                           〜第九話・ 千歌音の言葉より〜

 
 
 
 延々と努力を続けている。
 決して諦めること無く戦い続け、たとえ希望の灯が絶えようとも、
 その灯りを再びつけんとあがき続ける。
 その姿を見つめる自分の姿はどこにも無く、ただただ懸命に生き続ける。
 その中に入り込む絶望の魔の手があろうとも、それはいとも簡単に払い除けられ、
 そしてまた薄汚なくて間抜けなその手は自分が前へと進むための糧となっていく。
 前へ、前へ、愛しい人のその元へ。
 まるで陽の光を受けていつまでも闇を切り裂き光り輝き続ける月のように、
 延々と、永遠に、永久に夜の空の上で走り続けている。
 闇など。絶望など。
 そんなものは、月が月で居られるという証しにしかなりえない。
 月に蹴散らされるものとしての存在意義しかない。
 決して闇や絶望は、その陽の光を求めてひた走る月に勝てはしない。
 なぜならば、それらが月に及ぼす苦痛は、
 月が陽の光を求めて永遠に走り続けねばならないという苦痛の比ではないのだから。
 どうして私、ずっと走らなくちゃ、いけないの?
 
 
 自分の愛が、決して愛しい人に届かない苦しみ。
 それは自分が愛する人に愛を届けることを諦める事からは決して得られない。
 それは、たとえ届かなくても届けと願い続けて永遠に足掻き続けなければ得られない苦痛。
 自分がどんなに愛していようとも、どんなに絶望をはね除けて希望をつなごうとも、
 決してその愛が届かないことを知り続けて行かなくてはいけない苦しみがある。
 千歌音は。
 すべてのことをわかっていながらなおも姫子の元へと走り続け、
 どんなに駄目だと思っても決して諦めずに、諦めねばならない理由をすべて叩き潰して、
 全力で自分を前に進ませるために戦っていた人。
 まさにその様は、夢中。
 千歌音を止めることができるものなど既に無く、それは千歌音自身もまたそうだった。
 千歌音を止めることは千歌音にもできない。
 なぜなら、千歌音がそれでも前へ進めと強く強くその意志を自分に示しているからだ。
 その意志の元、もはや千歌音と現実世界は反転していた。
 つまり、千歌音はただただ現実の中で現実によって動かされていったのだ。
 姫子が辛い顔をした。どうしたらいい? 姫子が泣いた。どうしたらいい?
 そうやって目の前に広がる現実の処理を、ただただ純粋にこなし続けていく千歌音。
 主体はその現実の方であって、千歌音という存在は、もはやその現実に即する反応体でしかない。
 千歌音が今まで為してきたことの行き着く先、そして最先端がこの千歌音の姿。
 ただただ、愛しい姫子を求めて。
 そこにはもはや、自分がなぜ姫子を求めるのかという、今まで散々考えてきたことを完全に消化吸収し、
 そしてその思考自体を完璧に千歌音の行動そのものに塗り込ませている千歌音が居るのだ。
 つまり、千歌音の思想と千歌音の肉体が同化したということである。
 千歌音の言動、そしてその存在そのものが千歌音の思想。
 それはイコール、姫子の元へ、ただただ姫子の元へ。
 なによりも愛しく高鳴り続ける自分の鼓動にその身を任せて。
 
 
 そしてそれは、千歌音の地獄の始まりでもあった。
 
 
 走り続けて、走り続けて、そしてまた走り続けて。
 それでもまだ姫子の元に辿り着けないという絶望を感じた上で、また走り出す。
 絶望なんて、承知の上。
 諦めたい人は勝手に諦めなさい。
 死にたい人はどうぞご自由に。
 私はそんなことに付き合う暇があったら、ただただ走り続けるわ。
 走ることで姫子との距離が広がろうとも、走ることで姫子を苦しめようとも、
 それでも、私は、走る。
 
 でも。
 それは、どういうことなのだろうか。
 
 これはもしかしたら、私の姫子への愛というのは、
 姫子の元へ「走る」ということにしかなれないのじゃないか。
 それを確かめるのに。というよりその確信を深めるために。
 千歌音はなんの造作も無く姫子との間の一線を越えてみた。
 結果。
 ああ、やっぱり。
 姫子に一番一番近づいても、決して私は姫子とひとつにはなれないのね。
 そして千歌音は。
 その高笑いとともに、また走り出した。
 今までと、なにも変わることなく、姫子の元へと走り出す。
 もはやこれ以上は無いと思えるほどに姫子に近づいたのに、さらにさらに前へと一歩を踏み出す千歌音。
 その一歩一歩が、姫子へと到達することが決して無いことを感じながら。
 その一歩一歩が、自らのうちに憎悪を呼び覚ますことを感じながら。
 千歌音は、姫子の元へと走り続けていく。
 千歌音の姫子への愛が憎しみと同じであることが見えてくる。
 姫子の元に走り続ける自分に絶望してそれを諦めることができない自分を憎悪する千歌音が見える。
 姫子を愛しく思うたびに、姫子への憎しみは増していき、
 姫子へと踏み出す一歩が、今まで刻んできた足跡を一歩一歩消していくことを感じていく。
 千歌音は、どう足掻こうとも、姫子を愛することをやめられない。
 絶対に到達し得ない事を知りつつ、到達しようと努力し続けることこそ意味がある、
 そう思い懸けながらずっとずっと努力しながら走り続けることを、絶対に絶対にやめられない。
 これは地獄だ、千歌音はそうイメージする。
 そうイメージした瞬間、今まで反転していた千歌音と現実世界はまた反転し、
 千歌音は自分の思想と肉体を再び分離させ、そして「自分」という主体を取り戻す。
 そして千歌音は還る。
 
 姫子を憎む者としての千歌音へ。
 
 自分が今まで姫子を愛するゆえに為してきたことを、姫子への憎しみのゆえとして再構築する。
 そして。
 千歌音は再び自分と現実世界を反転させていく。
 つまり、ただただ、憎い姫子の元へ走り続けるのだ。
 
 
 
 
 
 ◆◆
 
 『姫子。私ね、ずっと欲しかったの。私とあなたの夜が。私があなたを奏でる永遠の夜が。
  まだ終わりにしたくない。
  だからお願い。静かにしてね。』
 

                           〜第 八話・千歌音の言葉より〜

 
 
 私は自分が走り続けるこの地獄の存続を望む。
 そう、私の居場所は、此処。
 この地獄を生きることが、なによりも憎く、そしてなによりも愛しい。
 絶望が深いゆえに世界を壊さずにはいられない?
 笑わせないで。
 壊したくない世界の中で、それを壊さないまま生きていく地獄を生きる私に巫山戯たことを。
 愛しい姫子を想うあまりに、姫子を愛し続けることしかできない私に、一体なにを言うの。
 
 
 千歌音は。
 自らの姫子への愛を姫子への憎しみであると「断定」した。
 自分が今までしてきたことが姫子を傷つけてきた事実、それを千歌音は読み直す。
 それは、きっと私が姫子が憎いからだったのよ。
 だから、憎いから、だから姫子を憎んでいる私だったら、姫子を傷つけるのは当然。
 私のしていることは、ちゃんと当然な事なのよ!
 つまり。
 千歌音は、耐えることができなかったのだ、本当は。
 自分は姫子をただ愛しているだけなのに、それが決して姫子に届かぬこと、
 そしてそれが姫子を傷つけていることが。
 愛し続けることがやめられない、それは傷つけ続けることをやめられない、ということ。
 この愛の破壊行為の連続を絶つことは、千歌音にはやめられなかった。
 なぜなら、千歌音は姫子を愛していたのだから。
 姫子への愛を諦め、自分だけ絶望に囚われて姫子の前から消える怠慢などできなかったのだから。
 その怠慢を許せば、それは同時に千歌音のために生きてくれた姫子の想いを認めないと、 
 そういう事になってしまうことを千歌音は知っていたのだから。
 だから千歌音は、それでも姫子を愛し続けた。
 そして、全くそれに耐えることができないまま、それでもずっとずっと走り続けていたのだ。
 だから。
 遂に千歌音は辿り着く。
 ずっとずっと「走り続けて良い」自分に。
 姫子を憎む自分に。
 姫子を愛するがゆえに、姫子を憎まねばいけないことを、千歌音は理解したのだ。
 姫子を憎んでいるのだから、姫子を私が傷つけるのは当然。
 そして傷つけるのが当然ならば、私が姫子を愛することも当然として認められるのだ、と。
 私は姫子を傷つける絶対の悪。
 私がしていることは、全部悪。
 だから、私がしていることは決して許されないことゆえに。
 千歌音はその許されぬ愛を奪いに行く、という悪としての自分を手に入れることができたのである。
 千歌音は、ゆえに姫子になにも言わせない。
 千歌音は、ゆえに姫子の中の千歌音になにも言わせない。
 だからお願い、静かにしてね。
 どんなに姫子が苦しもうとも、どんなに千歌音が罪悪感を感じようとも、
 それをすべて知った上で無視することで、
 千歌音は姫子と姫子の中の千歌音を自分の中に取りこもうとする。
 私は私、姫子も私。姫子は私のもの。そして私も私のものだけ。
 それが嘘だということを認識した上で、そう口走ることで姫子への憎悪を走らせていく。
 あなたは私もの、でもきっとあなたは私のものじゃない。
 だから私はあなたを奪いにいける。
 あなたがそこにあなたとしてはっきりといるということが、よく、わかるわ。
 だから、だから、だから。
 
 あなたは私の敵よ、姫子。
 
 千歌音の玩具にしか過ぎない姫子を確固とした他者としての「敵」とみなすことで、
 千歌音は永遠に姫子を見失わずに済むことができる。
 そして。
 千歌音は永遠に姫子の元へ走り続けることができる。
 姫子への憎しみが続く限り。
 千歌音が姫子の前から消え去ることを、自らの死を選ばなかったのはそれを得るためだったのだ。
 どんな事になろうとも、千歌音は決して姫子を無くすことを選ばない。
 絶対に、姫子の中の千歌音を自分の中に取り戻すことができないことを知っている。
 そして、必ず姫子も自分と同じことを選び、同じことを知っているのを感じている。
 
 
 千歌音は、姫子の千歌音への想いが変わり得るのを知っている。
 
 
 
 
 
 
 
 どんな地獄に堕ちようとも。
 私がそれでもまだ生きているのを知る限り、姫子はまた立ち直ってくる。
 私がそれでも生きている理由を知るがゆえに、姫子は決して諦めない。
 それを知ることから逃げられないという地獄に堕ちようとも、姫子は必ず帰ってくる。
 
 私の目の前に。
 
 それが愛の風渦巻くところであろうと憎しみの雨が降り注ぐところであろうとも。
 私と姫子の居る世界を、絶対に私達ふたりは無くさない。
 私は姫子を愛しても憎んでも姫子を傷つけてしまう。
 でも。
 姫子は私の玩具じゃない。
 姫子はただ壊れたままでなんていない。
 姫子は散々に私の愛と憎しみによって壊されてしまうかもしれない。
 でも姫子はどんなことをしてでも必ず壊れたままではいない。
 それは決して、元の形に戻る、という修復じゃない。
 必ずそれは以前の形とは違った形に変わるのよ。
 それは私が見たら、壊れているように見える。だって形が変わっているんだから。
 でも。
 姫子は。
 それを、千歌音ちゃんのお陰で私、新しい自分に変われたよって、きっとそう言ってくれるんだ。
 だって、だって、だって。
 なによりも私が、本当は、本当は、本当は!
 姫子の事を想い続けることしかできない地獄をそれでも天国だってそう思わなければいけないのだから。
 姫子への愛が作る私の苦しみで変わっていく私を愛さなくてはいけないんだから。
 姫子はきっと、変わらなければいけないと思い続け、そしてそのまま本当に変わっていく。
 だから私も、変わらなければいけないと思い続けて、そしてそのまま本当に変わっていく。
 それこそが地獄というのならば、それで結構よ。
  『今のあやつの相手は、お前という地獄の方が相応しい。
   お前と戦ったあやつがどうなるか、より遙かな高みへと登るのか、それとも奈落の底へと落ちるのか。』
 馬鹿な事を言わないで。
 何処へ行こうとも、関係ない。
 私と姫子、そのふたりが居るところがすべて、私達の世界よ。
 その世界の色を紅に染めるも紫に染めるも、それは。
 それは私達ふたり次第。
 愛し合うも憎しみ合うも、私達ふたりが。
 
 姫子、もっともっと、話ましょう。
 ふたりで、色々なことを。
 この世界と私達がひとつになるまで、ずっと、ずっと、ふたりで。
 私は、待っているわ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 『私・・私・・千歌音ちゃんに会いたい、千歌音ちゃんと話がしたい・・千歌音ちゃんの気持ちを知りたい!
  ・・・・・千歌音ちゃん・・・っっ!』
 
 
 
 私の中の千歌音ちゃんが、ずっとずっと私にこうして語りかけてくる。
 本当に最初から、ずっとあの初めて私を見つめてくれたその時から、千歌音ちゃんは私に。
 だから私、頑張る。
 私の中の千歌音ちゃんを私が引き受けたことを、千歌音ちゃんに伝えるために。
 私達・・・・もっともっと近づきたい!
 千歌音ちゃんの中の私だけに、千歌音ちゃんを見守らせたりしないから!
 私は此処に居るよ!
 だから。
 だからね、千歌音ちゃん!
 私も一生懸命、私の外で待っている千歌音ちゃんのところに走っていくからね!
 私は・・・・・・・・・・・っ!
 千歌音ちゃんの事、もっともっと好きになりたいから。
 私は千歌音ちゃんのためになりたいから。
 千歌音ちゃんも私のためになりたいと思ってくれるのだから。
 だから、ね、千歌音ちゃん。
 私は千歌音ちゃんに千歌音ちゃんの想う通りにして欲しいの。
 千歌音ちゃんがいつも、私に好きなようにさせてくれたから。
 全部、ほんとうの全部、千歌音ちゃんは千歌音ちゃんの中の私の願いを聞いてくれたから。
 だから今度は。
 千歌音ちゃんの外にいる、目の前の私のお願いをきいて。
 そのために、私は、何度でも千歌音ちゃんに言うよ!
 千歌音ちゃんのほんとうの願いをきくために。
 
 
 
 
 『千歌音ちゃん、私、どうすればいいのかな?』 って。
 
 
 
 
                           ◆ 『』内文章、アニメ「神無月の巫女」より引用 ◆
 
 
 

 

-- 050609--                    

 

         

                          ■■気持ち悪いくらいに生きている■■

     
 
 
 
 
 まず、始めに。
 サッカー日本代表、W杯出場決定おめでとう御座います。
 一日遅れでは御座いますが、一応日記でも言っておこうと思いましたので。
 なにはともあれ、選手の皆様、お疲れ様。
 そしてジーコにありがとう。
 これからはあんまりイジけちゃ駄目だよ。
 
 さて、さて、さて。
 今夜はと言いますと、今週のLOVELESSがW杯の特番で放映中止でしたゆえ、
 その代わりにつらつらとなにかを書いていくつもりで御座います。
 最後に神無月の巫女の感想でも少々、と。
 と、思っていたのですけれど、神無月の巫女以外のことで書くものが見つからなかったので、
 というか今週のブリーチ見て雛森のブチ切れっぷりにドキっと萌えてしまったのだよ諸君、
 とかそんな事書かれても皆様大変困ってしまうと思いますので。困らない人は知りません。近寄らないで。
 ですから潔くなにも考えずに神無月の巫女について書いて終わりにしようと思います。
 なんかね、PC立ち上げてる間に急にモチベーション下がってきちゃったのよ。
 だってまたなんか壊れそう・・・このPC。(じっと見つめながら)
 
 
 
 ◆◆
 
 「神無月の巫女」・第6、7話を見ました。
 本当は8話まで見てから感想を書こうと思っていたのですけれど、
 7話までが区切りが良いように思えてきてしまったので、取り敢えずここまでで感想を書きます。
 8話以降についての感想は、また後ほど。
 では、参ります。
 
 
 ・
 ・
 ・
 
 愛しいあの人が私のために生きてくれるのなら。
 私はその人のために生きたい。
 私がその人のために生きたいということが、たとえその人に拒否されても。
 その拒否する理由が、きっとあなたはあなた自身のために生きて、ということであると思うから。
 そうであるならば、私は尚更その人のために生きたい。
 私はその人のために生きる私のために生きたい。
 私とはなにかと訊かれたら、それは。
 あなたを誰よりも愛する者です、と答える。
 その愛があなたを苦しめることになることで感じる、このどうしようも無い罪悪感。
 それはとても強い力を以て私に追いすがり、そして時として私はその感情の虜となる。
 駄目。これ以上あなたを傷つけられない、と。
 私はその想いで一杯となり、私のすべての行動を終焉に向かわせようとする。
 ただあなたの目の前から私を消すために。
 この私の消滅を図る私がしっかりと私を動かしていく。 
 毅然とした態度を作り上げるために集中し、乾いた瞳を輝かせてあなたの笑顔を願う。
 あなたの笑顔は、あなたのもの。
 あなたはあなたのものよ。
 
 だから私は、あなたに私を刻んだの。
 
 あなたの中に、密かに私の存在を。
 それは未だあなたに知られている事は無いでしょう。
 私が私の居ないあなたの幸福を祈る掌を、血で滲ませていることを知らないでしょう。
 ええ、私はそれをあなたに知らせない事に努力を支払った。
 私にとっては、あなたは決してあなたのものでは無い。
 だって、あなたは決してあなた自身のためには生きないのでしょう?
 だから私は、なによりも強く強くあなたを私のために生きさせたい。
 だって、あんなに懸命にあなたは私のために生きてくれたのですから。
 その想いを無下にはできない、という口実の元に、私はあなたの中に入っていく。
 そのあなたの中の私をあなたにあげたい。
 私はあなたに私を捧げたい。
 私があなたを愛することであなたを傷つけるように、
 あなたが私にあなたを愛させることで私を傷つけることを許します。
 でもその許可がおりたことを、あなたは絶対に知らない。
 私があなたに知らせないようにしているから。
 なぜ知らせないのか。
 それはね。
 
 私がそれをあなたに知らせないことでしか、今はまだ笑えないからなの。
 
 私には、あなたに私の笑顔を魅せる義務がある。
 あなたの幸せを願う私が泣いていては、その幸せは台無しになってしまうのだから。
 私が私の居ないあなたの幸せを笑顔で祈れる、そういう私の幸せをあなたに見せないといけない。
 あなたが今を生きる幸せを笑顔で以て受け取り続けることが出来ているのを見れば見るほど、
 私はさらにこの笑顔を磨かなくてはいけない。
 だから、今はまだ、あなたに私の想いを知らせることを我慢する、ことしかできない。
 いいえ。
 そう、だからこそ。
 それは我慢する事しか出来ていない、という私の怠慢以外のなにものでも無い。
 私のこの愛しい想いは、いずれあなたに伝えなくてはいけない。
 私はあなたが欲しい。
 いいえ、もう既に、あなたは私のもの。
 だって私はすっかりあなたのものなのだから。
 私の中のすべてをあなたが埋め尽くしているこの感覚。
 私は私、でもそれは私はあなたであるという私、でしかない。
 私はあなたのものよ。
 私があなたはあなたのものと思い、それであなたの中の私を私に引き戻そうと懸命になるたびに、
 私はそのあなたの中の私の帰る場所を無くすために、私の中のあなたを広げていく。
 私の中に、私の居場所なんて、無いわ。
 
 
 私を戒める「私」という呪縛に囚われている私が居る。
 私が私、あなたがあなたであることを変えることなどできない。
 永遠に私は私でいながらあなたを想い続けることに変わりは無い。
 だってそれは、私が決められることでは無いのだから。
 私は最後の最後まで、どうしようも無いまま恋い焦がれているだけよ。
 私はきっとあなたに私の想いを伝えないまま笑っている怠慢を甘んじて為し続けなければいけないのね。
  『さぁ、懺悔なさい。神はすべてお許しになる。
   きっと報われることの無いあなたの願いを聞き届けてくれるわ。』
 なにもかも諦めて、そしてすべてをかなぐり捨ててあなたを想う。
 あなたの幸せも、私の幸せも忘れて。
 しょうがない、しょうがないのよ。
 だから私は私の中のあなたを殺して、そしてあなたの中の私を殺すわ。
 あなたはあなた、私は私。
 だから私はその呪縛に囚われる悲しみを肯定し、それに酔いしれてあなたを奪いに行くわ。
 目の前にはほら、ただの私の・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 『笑わせないで。こんなの姫子じゃない。・・・私の姫子じゃない!!』
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 私を覆う呪縛を見据えて、なによりも強く強く生きている私が居る。
 あなたのものである、私が、居る。
 でもそれよりも遙か昔から、そして、圧倒的な存在感を以て。
 私のものである、私が、居る。
 
 
 私は私、それで、いい。
 そしてだから、私は。
 私はあなたである、とその呪縛に向けて叫ぶことができるのよ。
 縛りたければ縛るがいい。
 私の愛しい想いがあなたを傷つけることがわかってしまう罪悪感よ、荒れ狂うがいい。
 私の目の前に、私で無い絶対のあなたの姿を広げて魅せるがいい。
 私はそれを感じれば感じるほど、悶えるほどに気持ち悪いほどに私の中のあなたを感じるの。
 あなたが私の目の前にいることが。
 そのなによりもはっきりと私の外に居るあなたを見ることが、それが。
 それが私に戻ってこようとするあなたの中の私を、あなたに押し戻していく力となっていく。
 あなたは絶対に私のために生きたいと思ってくれるから。
 私は絶対にあなたのために生きたいと思っているから。
 そうでないあなたも、そうでない私も絶対に絶対に有り得ないから。
 その私にはどうしようも無いあなたと私の姿を感じられるからこそ。
  
 私は絶対に諦めない。
 誰も許しはしないこの私の愛をあなたに伝えることを。
 この愛を、私にくれたあなたの、ために。
 
 
 
 
 だから姫子。
 泣かないで。
 あなただけが自分の幸せを求めている訳では無いのだから。
 あなたが泣いていたら・・・・・・私は・・・・。
 
 
 それでも・・・・私は・・・・。
 
 
 
 ・
 ・
 ・
 
 自分が生きていることの自覚すら感じられなくなるほどに無条件に生きてしまう事。
 それを実感していながら、さらにそれすらも自覚できないほどに自分以外のものに支配される事。
 そしてその激しい眩暈に囚われながらも、決してそれを拒否せずその中を生きていく人。
 すごいね、千歌音って。
 
 
 
 
                           ◆ 『』内文章、アニメ「神無月の巫女」より引用 ◆
 
 
 

 

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                                 ■■眼差しの順番■■

     
 
 
 
 
 丁寧に日付をなぞるかのようにして漂う雨滴が日々を染め上げている今日この頃で御座いますが、
 それでいて不快さを残さず押し流してしまう水色の涼風がそよぐたびに、
 なんていい加減でそれでいて律儀な雨だなー、などと思ってしまう紅い瞳です、ごきげんよう。
 本日は、ここ何日かの間に書きためた日記をまとめて処分させて頂きます。
 
 
 さて、さて、さて。
 毎週恒例のLOVELESS感想反省会を致しましょう。
 しなかった週はご愛敬、ということでひとつ、よしなに。(適当)
 それで。
 今回書いた当初こそ、んー微妙、という心持ちで御座いましたのですけれど、
 読み返すたびにどんどんと私の目が開いていくのが感じられてしまうような、そんな感じで御座いました。
 うわ、いいじゃん、今回の感想。
 今回の感想の主人公はノリが良いくせにしっかりテンション低めでありながら熱い女子高生、中野倭。
 ああいう感じの人を描くのは割とお得意(というかマリみての聖様に近いし)なので、
 割としっくりきっかりハマりながら、
 それでいて彼女の巫山戯た面と真面目な面との乖離を丸めてひとつにして、
 さらにそれを表として、裏にある彼女の熱い執念をしっかりと書き留めることができた、と思っています。
 そして読む側はその表と裏を丸めてひとつにして、
 初めて完全体の中野倭を理解できるようになっています。
 ええ、勿論私はそういう風なイメージを無自覚のうちにでも抱いて描いてみただけですので、
 読んだ人すべてがそう理解できるとは、これは思っていませんけれどもね。それはお約束で御座います。
 それと、蛇足かも知れませんが。
 前回のタイトルの「私と貴方の間にある言葉」。
 その言葉とはなにかということですけれど、当初私はそれを第9話のタイトル名「SKINLESS」より、
 つまり肌を通して感じられる実感より取得される「世界」にするつもりでしたが、
 そのまま書き進めていたらまた違う次元に進んでしまい予定変更と相成りました。
 変更後、導き出されたる言葉は、すなわち、「愛」と「憎しみ」。
 随分違うところまで飛んでちゃったなぁとは思うものの、
 しかしその一方でちゃんと冷静にその変更前と後とが繋がっていることを実感できている私がいることを、
 それを「私と貴方の間にある言葉」を読んで得ることができた私に満足できているのでした。
 
 うわぁ、反省する余地が無いよ。(作れよ)
 
 
 ◆◆
 
 京極夏彦「豆腐小僧双六道中」、読了。
 読み終わるのを避けたいくらいに面白かったです。ていうか読み終わっちゃったよぅ(涙)
 文字通り豆腐小僧というヘタレを絵に描いたような妖怪が色んな妖怪に出会う旅をする訳ですが、
 それと同時に妖怪という「現象」の説明が刻々とされていく、そんな呑気なお話です。
 全編ノリツッコミ、と言ってよいのかわかりませんが、意外なほどに楽しく豆腐小僧と旅が出来て、
 飽きるなんて事態はとんとお空の上で御座いまして、ほんにようございました。
 肝心の内容についてはどうでしょうか、とてもひとことでは説明できませんね。
 非常にわかりやすかった、という褒め言葉くらいしか思い浮かばないかもしれませんね。
 たぶん理解した肝心の内容を忘れてしまっても良いくらいな、そんな鮮やかさで御座いました。
 ていうか忘れてるよな、私。(本をつっつきながら)
 
 ま、まぁ、忘れたとて基本は押さえてありますのでどうとでもなりましょう。
 え? じゃあその基本を話せと仰る?
 そうですねぇ、よいでしょう。ではひとつ。
 妖怪を楽しみましょう。
 私が言いたいことはそれだけだ。(いつもそんなだよな)
 ・・・でもわかる人にはわかると思うんだけどなぁ・・・・・そうだったらいいなぁ・・・・・・・駄目か。
 
 P:S:
 現象が存在に変わることもあるという事をわずかでも意識しておくと無意識にそうしてなにかを意識して
 いる自分を失ってただただ目の前に広がる別のなにかが在ることが嫌でも視えてきます。なに言ってんだ。
 
 
 次は太宰治の「斜陽」を読み始めました。
 最初の30ページを読んでわかりました。
 あーあ、また見つけちゃったよ、当たり前なのを。
 ゾクっとなんて決してしない、でもその代わりに素直にすべてを完璧に理解できる確信。
 これは私にはわからないということは無いでしょう。
 だからたぶん、きっと難しい。
 私がわかること以上のなにかを此処から見つけだせるのかは。
 私にとっての太宰治はいつもそんな調子で私を挑発してきて、
 そして私はすぐかっとなって挑発に乗っちゃうのです。うーわー頭悪そー。
 果たして私は「なにもわかっていない」ということをわかることができるのでしょうか。
 乞う、ご期待。(どーせ感想書きませんが)
 
 
 ◆◆
 
 yukiさんに勧められた「神無月の巫女」・第1〜5話を見ました。
 取り敢えず5話までは最低限見て、ということでしたので、見てみました。
 見て、キて、書いた。
 
 
 
 自分の目の前に好きな人が居て。
 その人が自分のために色々気遣ってくれて、
 でもその人はその気遣いが徹底できないことを許せなくて、
 そしてごめんなさいと泣きながら自分の胸に飛び込んできてくれる。
 その人が自分への気遣いを徹底できないことを充分予想していながらそれをやめさせることなく、
 そして当たり前のようにその人の涙を抱きしめてしまう。
  『私は心の何処かでこうなることを望んでいた。私の胸に飛び込んできてくれることを。
   姫子があんなに悲しんで泣いているのに。私は心の何処かでほっとしていた。』
 そのように順調に自らの行動のいやらしさを自覚していく中で、
 それでいて、この人は。
   『ねぇ姫子。私、あなたのなんなんだろうね。
   同級生?同居人?友達?月の巫女?それとも・・・』
 なぜこの流れを生成できるのだろうかと、私は小さな驚きと共にそれを聞いていました。
 この人は、自分のしていることを客観的にここまで見ていながら、
 それでいて全く愛しいその人へと伸ばす指先を引っ込めようとはしていないのです。
 それは決して執念では無く。
 それは悪いと思っていながらその罪悪感による酔いに任せた開き直りでも無く。
 それは、あまりにも意志的で、そして確固とした想いに抱かれた行動であって。
 まるで「悪いこと」というのがこの人の行動を阻止するどころか促進させるものであるかのように、
 この人は自分がしていることが与える愛しい人への影響を全く怖れてはいないのです。
 いえ、たぶん、怖れてはいるのでしょう。
 むしろ、とてもとても、自分が愛しい人にしていることを怖れているのでしょう。
 愛しい人を愛しているもう一人の人に対する批判。
 絶対守るといっておきながら、なぜちゃんと守れなかったのかとそのもう一人の人をなじるこの人。
 その批判は、同じく無力な自分に対する批判。
 そして。
 無力な自分を決して許さぬ絶対の決意の表明。
 この人は、自分にはこのもう一人の人を責める資格など無い、と思っていながら、
 それでいて絶対責める義務を放棄していないのだと、私には思えてなりませんでした。
 だって、なにもできなかったもう一人のその人を責めないと言うことは、
 同じく無力な自分を許す、ということになってしまうのですから。
 この人はたぶんそれを最初からわかっていたと思います。
 そしてゆえに、だからあそこまで批判しきれたのだと思うのです。
 自分もできないのだから、同じくできなかった人を批判することをやめる、そう言葉に出した瞬間、
 きっとあの人の中にはもうその言葉の意味するものはその言葉と共に外に出てしまっていて無いに等しく、
 ただただこの人の中には愛しいあの人への想いが渦巻いていたことでしょう。 
 なにもできない自分に、なにができるのかを懸命に考えながら。
 決して、なにもできなかったもうひとりの人を批判しなくてよい、同じく無力な自分に安住しないために。
 絶対に絶対に、愛しい人になにもしないことを怖れるがゆえに。
 言い換えれば、愛しい人になにもできない自分を許す事、を怖れるが故に、批判する。
 だからこの人が愛しい人に贈るいくつかの策略の成就がもたらす恐怖は、
 なにもしないでいることの恐怖にいとも簡単に乗り越えられてしまうのです。
 自分がしている罪作りなことを充分に感得していながら、
 それでさえ愛しい人になんらかの影響を与えるという絶対の正当性に従わせてしまうのです。
 この人に迷いが無い訳で無く。
 この人に罪悪感が無い訳で無く。
 ただただそれらすべてすら、愛しい人に近づくための下僕に昇華してしまっているのです。
 
 でも。
 
 この人は、そこまでしても愛しい人に決して到達し得ないことを知っています。
 知っているがゆえに、なお到達しなければならないと考えているのでしょう。
 到達できないから、どうせ無力な自分にはなにもできないから、
 そういう言い訳をしている横で、愛しい人が泣いているのですから。
 たとえ自分がその人の元に辿り着けなくても、その人が幸せになってくれるのなら。
 
 でも。
 
 この人はそれでも、それすらも知っていながら。わかっていながら。
 それでもなお、愛しい人に伸ばすその指先を引っ込めることを選ばないのです。
 なぜなら。
 その人の目の前から、その人を愛する自分の姿を消し去りたくは無いから。
 その人の事が、大好きだから。
 たとえ嫌われたって、愛しているから。
 たとえ自分が恋人の位置に居ることが有り得なくても、それでもずっと愛し続ける。
 そして。
 それでいて、自分が恋人の位置への飛翔を為す翼を伸ばすことを拒みもしない。
 自分では無い、もうひとりの人の元へ飛び立とうとする、その愛しい人の姿と出会うたびに。
 
 この人も決して負けずにその愛しい人の元へと飛び立っていく。
 
 
 「人の振り見て我が振り直せ」って、こういう風な意味で使うべきだと思うなぁ、私は。
 あとなんかね千歌音って、「真月譚月姫」の秋葉に似てるって思ったのだけど、どうだろう?>yukiさん
 
 
 ていうかね、なんかノってきた。(ぉ)
 
 
 
 

 

 

-- 050602--                    

 

         

                            ■■私と貴方の間にある言葉■■

     
 
 
 
 
 
 『恥だよ。
  つがいなのに繋がって無いなんて。お前と草灯は唯一無二のふたりじゃないんだ!』
 

                           〜第九話・瑶二の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 燦々と降り籠める雨の情熱をすべてかわすことなどできない。
 かと言ってこのまま濡れそぼるままにしておく訳にもいかない。
 あの空から落ちてくる涙が肌の上に到達するたびにこの体は消えていくのだから。
 それはその冷たい雫の群れがその肌の代わりにこの体にまとわりつくからなのか、
 それともその雨を防ぐためにこの醜い皮膚が分厚く成り果ててしまうからなのか。
 どちらにしたって、この冷たい夜を変える事など、できない。
 
 余所見をしてまるで此方を照らさない月夜の下で適当に生きていく。
 所詮その月が居ない昼の中でだって簡単に生きていけるのだから。
 
 
 何時だって何処でだって、光り輝くのは唯、私ひとりだけ。
 そして光自体に影はできない。
 ほんとうに、私が光に照らされる者で無ければ、私に影は・・・・。
 
 
 
 SKINLESS。
 実感無き実感。
 この肌の向うに聳える空が、私の上で泣きながら嗤っている。
 
 
 
 
 

 ◆  ◆

 
 

 『先生、大丈夫ですよぉ。江夜の足手まといになるくらいなら、私死んじゃいますー。』

 
 
 
 ふぅ、やーれやれ。今日も一日疲れたねー。
 まったくもー、しけた顔しちゃってさー。
 それはねぇ、疲れたっていうのはわかるけどさ。
 そんなの一晩寝ればそこそこ回復するんだしー。
 なにもそんな深刻になることなんか無いじゃん。
 だってどうせこういう毎日が続くのはずっとこれから変わんない訳だし。
 私らそんなかてきとーに行きてくしかないじゃん?
 夜寝れば少しは回復するんだからさー、要はその回復した分だけ生きればいいわけよ。
 だからー、江夜ってば。違うって。
 
 自分の事なんて、そんなもんじゃん、結局は。
 
 別に卑下してる訳でもなくって、そんなもんなんだってだけで。
 つーかさぁ、私はそもそもぜーんぜん自分に興味が無いって感じ?
 自分なんて考えてる暇があったら、遊んでたほうが面白いじゃん。
 真面目面晒してたって、なにがどうなる訳でも無いんだよ、江夜。
 んな付け耳取っちゃいないよ、江夜。
 まーいっか、それでも。
 そのカッコが、江夜のスタイルなんだもんね。
 それは私がいい加減やってるのと同じ、飾りだよね。
 そーそ、本音も建て前も無い、ぜーんぶ飾り。
 それで江夜が落ち着くならそれでいいか。
 私は別にカッコなんかにこだわんないから、どーでもいいわ。
 ま、でもこだわんなくても、結局そういうカッコになっちゃうんだけどね。
 逆に言やー、それがわかってるからこだわんなくて済むのかもね。
 だからそれがわかんない奴ほど、案外カッコにこだわるのかもねー。
 あー、ダサダサ。みてらんなーい。
 バッカじゃないの、って感じ。あはは。
 なるようになれーって、それは別に投げやりとかじゃないのにさー。
 結局なるようにしかならないから、いちいち足掻かないってだけで。
 うわ、そういう考え方からしたら、むしろ私ってば悟ってるって奴?
 なんかシブいねー。でもダサいか、それも。
 それじゃーあれだ。こう言おう。
 私は私以外の力を信じてるから、それに自分の事を任せられるっていうか。
 や、だから私はサクリファイスなんてやってられんのよ。
 戦闘機の江夜は痛みをサクリファイスである私に任せてる苦痛があるのかもしれないけど、
 私もただ江夜の痛みだけしか引き受けられない苦痛ってものがあんのよ。
 それはある意味で気楽なんだよー。
 私はその江夜の痛みを引き受ける者、としての自覚を得られるからねー。
 いわゆるアイデンティティーって奴? みっともない言葉だけどさ。
 といってもね、その気楽さほど嫌なものはないんだけどね。
 だってさ、それって結局私は江夜の痛みだけ引き受ければいいんだーってやつじゃん。
 なんかおかしくない? それって。
 なんだかそれで目覚めた気んなって、自分のできる事だけやって満足しちゃうのってさ。
 そうやって落ち着いちゃってる私の横で、江夜はあんなに苦しんでるのにさー。
 
 
 私があんたの事、なにも知らないとでも思ってたの? 江夜。
 
 
 私がいくらあんたを信じてたって、私がだからあんたの痛み以外の事をあんたに全部任せてたって、
 それであんたが全部ちゃんとできるだなんて最初っから思ってないし、
 そして私がそれでいいだなんて事も、ぜーんぜん思ってないのよ。
 つーか、そんなこと考えてみたことも無い江夜は可愛いんだけどさー。
 うーん、私のことばっかり見てて真面目な癖に熱く燃えたぎっちゃうこの子、最高じゃん?
 はいはい、よーしよし、ありがとうね、江夜。いい子いい子。
 でもだからっていつまでも泣いてちゃ駄目だって。
 ほらほら、明日はまたあんだからさ。
 だからほら、立って歩けっつーの。
 んー? 話?
 いーじゃんそんなの。
 明日よ、明日。
 
 『私のことそんなに好きなら・・・・・ドーナツおごって。』
 
 
 
 
 ◆◆◆◆
 
 私とあんたがこうしてふたりでいることは、それは偶然のようでありながら必然だ。
 だって渚先生が倭と江夜というふたつでひとつのゼロを作ったから、この関係がある。
 だから先生の考え次第で私達が引き裂かれるのは、そんなのははじめっからわかってた。
 勿論、先生がそうと言うまで実感なんて湧くわけないっしょ。
 だから私がわかってたのは、そういうことがあるってことを頭の中だけでわかってた事だけ。
 私のこの肌は未だなにも感知してはいないの。
 運命なんて、それを知る前に見えなくなっちゃうものさ。
 偶然を感じるその直前まで、私達は永遠に必然に支配されている。
 だから運命とか偶然とか、そういうのはたぶんあったとしても私達を包んではくれないのよ、江夜。
 だから私達はただあるがままで居ながら、それでいてどうしようも無く不自然に生きている。
 なにも感じていないようでなにもかも感じていて、
 そしてすべてがどうでもいいようでいて絶対にこうでなければいけないと思い続けている。
 私は、自分なんてものに興味が無いくせに、ただただ自分でしかない。
 どうせどんなに足掻いたってなにも変わらないということを知っていたって、
 私の体は全然その認識に捕えられる事無く、徹底的に足掻きまくってる。
 だからね、江夜。
 私だって、あんたと離ればなれになるかもしれないという恐怖に本当に囚われたのは、ついさっきなんだよ。
 そういう恐怖があるということを知っていたのは、ずっと前からだけどね。
 でもさ、江夜。
 それは知っていた分だけ、やっぱりちょっと違うんだよね。
 例えば、私はある意味、全然動揺してないんだ。
 むしろ私の中は今までの中で一番静かに澄んでるんだ。
 ま、確かに今までとは大幅に変化したって意味では、確かに動揺してはいるんだろうけれどもね。
 けどねぇ、江夜。
 だから、なんだよ。
 私にとってはこの私の変化すら、当たり前のことなんだよ。
 あー変わってる変わってる、ってまるで他人事のように自分を見つめてるんだよね、私。
 それは変わらないいつもを生きてきた自分を見つめているときと、なにも変わってはいない。
 そう、全部必然なのよ、実際。
 でもそれが嫌だとかどうだとか言う前に。
 それ以上に、それを全く信じられないこの私の体があることを私は知っている。
 私は実際、怖いという感情を越えているところに居る。
 そうなんだよ、江夜。
 あんたが、あんたが私の目の前に居るってことが・・・・・。
 それが私のこの熱く燃えさかっていく肌の存在を、私にその恐怖を越えて一番に実感させるんだよ。
 
 
 
 
 
 
 嗚呼・・・・・私が世界と分かれてる。
 
 
 
 
 
 
 薄暗い夜の底から沸き上がってくる創り物の光に包まれて。
 ゆっくりとのぼせていくこの私の体が浮き上がっていく。
 嗚呼・・・・私の背を見つめてくれる江夜が欲しい・・。
 可愛いくらいに真面目にひとり閉じ籠もっていく江夜に憎らしさを抱えて、
 私のこの明確な殺意が江夜と世界を分けていく。
 あんたは私のものよ、江夜。
 誰のものでも、あんたのものでも無い。
 私が世界に囚われていることを感じるたびに実感するこの私と世界との境界線を、
 それを引き延ばしてあんたにまで描いてみたい。
 別離の恐怖の上で私はあんたを見つめてずっと軽やかに踊ってる。
 きっとたぶん、この足下に広がってる嫌で嫌で堪らないものが、私の体をなによりも熱くさせている。
 私が私で居られなくなればなるほど、私がなにもできなければできないほどに、
 私は私であろうとし、すべて私がやりたいと思う。
 
 
 
 『江夜・・・・・・・強く・・強く・・・・・強く思うだけで・・全部・・私のものになればいいのに・・・
  私のものになればいい!』
 
 
 
 この穏やかなまま私を殺していこうとする夜の雨が降りしきるほどに。
 私は江夜の肌の代わりに、この雨から江夜を守ってあげられる。
 そのために私の体が溶けて消えようとも、それで全然構わない。
 私はただ、私の大切なものを守りたいだけなのだから。
 
 
 
 
 
 
 
 

◆ ◆

 
 

 『なーんか、嫌な単語聞えたぞー。』

 
 
 
 大切なものを守りたい「だけ」、だってぇ?
 なに馬鹿なこと言ってんのよ。
 そんだけでいいわけねーじゃん。
 まったく、また江夜泣かせやがって。
 私の命削ったって江夜の涙流したら意味無いってーのに。
 私は確かにサクリファイスとしての本分って奴を全うしてるのかもしんないけどね。
 それと私が私のしたいことを我慢せずに素直にやってるのかもしんないけどね。
 それで江夜が抱えなきゃなんない苦しみ増やしてたら、んなの馬鹿みたいじゃん。
 でも結局、私なんてのは自分勝手なもん。てか馬鹿。
 だから。
 そうと割り切って、のらくらやってくのも、ま、いいじゃん?
 私が江夜泣かせる馬鹿さ加減も、まー要は言いようって感じ?
 
 
 だって私ら、そういう関係だもん。
 
 
 その関係に固執するつもりはないけど。
 こだわらなければ得られないこともあるんだよね。
 私らには、私らができないはずの事をして初めて出せる力がある。
 強い、強い、力が。
 私らのこの肌が裂けるギリギリまで伸ばして掴める、力が。
 逆にいえば、それってさ。
 私らのうちに別離の恐怖を取り込んじゃうってことなのかもね。
 このふたりの絆さえ、私らの力のために捧げんのよ。
 倭と江夜っつーふたりを分かつって無理の中にこそ、ほんとはとんでもない力があること、私は知ってる。
 いつでもどこでも危機に晒されてる絆ってのは、けっこーハードで、それで強いものなの。
 気持ち悪くなるほどに守りたくなるものって、ある?
 それが壊れそうなものほど、そして壊したくなるくらい憎いものほど、
 それは圧倒的な力を以て私に愛されていくのよ。
 私の愛は、怖いくらいに、強いよ。
 
 
 『ふたりはいつも一緒なんだ!』
 そうだよね、江夜。
 
 
 でも。
 
 
 『倭が死んだら私も死ぬって? ちょっとそれも聞き飽きたなー。』
 だって、あんたが死んじゃうんだったら、私、全然死ねないじゃーん。
 本当に、江夜は可愛いんだから!
 まー、あんたが死なないって言っても、死ねないけど。
 あんただけ残して死ねないっつーか、なんかムカツクし♪
 あはは、笑える。
 『まーまー、死ななくてもいーから、ドーナツ行こー。』
 
 
 
 私はあんたを好きになるたびにあんたを憎むよ、江夜。
 その憎しみが、さらに私とあんたの絆を深めることを私は平然とした顔のまま知っているのだから。
 当然、私にはあんたしか無いからこそあんたが憎いんだけどね♪
 
 
 
 
 
                           ◆ 『』内文章、アニメ「LOVELESS」より引用 ◆
 
 

 

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