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◆◆◆ -- 2006年10月のお話 -- ◆◆◆

 

-- 061029--                    

 

         

                                   ■■ 御無礼仕る ■■

     
 
 
 
 
 はい、ごきげんよう、紅い瞳です。
 今日もだらだらといきましょう。
 
 さてはい。
 昨夜行われたお話会はいつもよりも人が集まり、多少なりとも賑やかになることができまして、管理人と
 しては嬉しい限りでした。
 まぁいつもの如くネタ無しやる気無し余裕無しな紅い瞳がひとりでだらだらとはっちゃけてただけで、なんだ
 かなぁというかしらける一歩手前でよくぞ踏みとどまってくれました、というていたらくでは御座いましたけれ
 ども、それでもお付き合いしてくださいました方々のお陰様で、無事執り行うことができましたこと、ここに
 御礼申し上げます。
 一応、中身はいつもと同じでも、こうして月イチでイベントみたいな形にしてやれば、どことなく違った感じ
 にはなれましょうし、また普段なかなか足が及ばない方も、せっかくのイベントだから、というノリで入りやす
 いかなという管理人のささやかな下心、もとい配慮を実現するための小道具として、これからもこの毎月
 恒例のチャット会は行っていこうと思います。
 
 うん、まぁ割とチャットなんかで、最近ノリの精度と充実度が落ちてる紅い瞳だったりするんで。
 昔はネットにアクセスしてチャットに入ったときに、ハイになるスイッチみたいなものがオートで入ったりしてた
 んですけど、最近はあまりそういう感じになることも無く、ネタ携帯率もネタ発展生成力も低下ぎみでし
 て、普通にリアルのノリのまま入っちゃったりしてます。
 テンション割と低めに設定中。
 まぁ元々わたしゃ自分がネタ持ってきてどうだってタイプじゃなくて、基本的にはツッコミとしてのボケというか
 、なんていうかネタなりボケなり振ってくれればいかようにもボケてみせて返すタイプというか、そういう受け身
 型としての創造性にエネルギーを感じるというか、なんだ、なにいってんだ。
 ええと、適当な単語が見つからないので訳わからないこと言ってますけど、要はボケもツッコミもいけるけど
 、基本的には自分からボケたりツッコミ入れたりするタイプじゃないんだよ、ってことですね。
 だから場が盛り上がれば、自然に反応して私も燃え上がるんですけど、まったりしちゃうとそのまままったり
 みたいな。
 まさに、最近のチャットの構図ですね。誰もネタ振りしないから必然的にまったりに。管理人も「じゃー私
 も寝る!」みたいな開き直りも大概にしとけみたいなだらしのなさ全開みたいな。
 
 でもね。
 うん、いっとき、それを憂えたときもあって、なんとかせにゃならんなぁとも思ったんですけどね。
 大事なのは、なにかって思って。
 大事なのは、このチャットが存続することじゃないのって、思って。
 んー、具体的にいえば、まったりやネタ無し状態も、それだって受け身な私に提示されたひとつの「ネタ」
 じゃんって感じで、じゃあそこからどうボケるのか、それが一番要なことなんだろうなって。
 ネタが無いなら誰かネタ出しして頂戴、くれないなら寝る! とか平然と言う管理人がいるというどうしよ
 うも無さを、まぁ楽しんでとは口が裂けても言えないけど、まぁその辺りぬるく付きあってみると、なにかそこ
 から次のネタに繋がるものを得られたりすのじゃないかな、って思っています。
 大体、私が毎回ネタ持参して、今日はこれについて話をします、みたいなの、想像しただけでも逃げ出
 したくなりません? え、ならない? むしろ望むところ? ・・・・いいから逃げ出せ!(強引)
 ていうか、そもそもかつてそんな事をこの私がしていた時期などあったでしょうか、いやない。
 いや別に、私が一度もネタ出ししたこと無いとは言いませんけど、少なくともここのチャットにおいて、
 紅い瞳がネタ出しして話を展開することが暗黙のうちにでも義務化されたことは御座いません。
 むしろありえない。
 そんな伝統は、ありません。たかだかここ何十年の間に創られた伝統を、さも古来からの伝統のように
 見せかけているだけです。陰謀です! (違)
 ていうか、そもそもネタなんて無くてもよくない? ぶっちゃけそう思う。正直なとこ、そう思う。
 
 あーはいはい、今日はぶっちゃけますよ、言っちゃいますよ。ごめんなさい。
 いや、ネタ無いとかネタ出ししてとか、まったり全開中のチャットにて言うのは、それ自体が確かに面白い
 ネタになって、だからネタ?そんなもの無いねとかじゃあちょっと恥ずかしいけど私の過去語りますとか、
 そういう開き直りボケというかって後者は違うし、そういうのができるわけで有意義ではあるのだけど、それ
 が本質っていうかだから良くないんじゃない?って考えるのは、ちょっと違うんじゃないかなって私思う。
 ネタとかなくたって、話すことは一杯あるっていうか、むしろちょこっとした言葉の端々を捉えて、そこから話
 を展開してみたりとか、なんなら揚げ足取りだっていいわけだし、そうやってその場その場で「会話」をつくっ
 ていく感じが、すごく生き生きした感じをチャットにもたらしてくれるのだと思うし、昔はそんな感じで訳わか
 んないくらいに熱くなれたんだと思う。
 うん、わかるよ、リアルと違ってチャットは相手から得られる情報がめちゃ少ないから、そういうのって結構
 難しいっていうのはね。
 でも、出来ないことでは無いし、げんに以前はよくそんな感じに当たり前のようになって盛り上がれていた
 し。
 なんていうか、ひとりひとりがチャットを盛り上げよう、いや、そこまでは考えなくてもいいけど、少なくとも
 会話を繋げていこうっていう意志があれば、それはできることなんだ。
 それはね、色々なやり方があると思う。
 なんなら放置プレイだったり傍観モードとかだったり、そういうのでも、それら自体が会話に与える影響とい
 うのを意識している限り、それは必然的に場にある会話の雰囲気に回収され、そして繋がっていけるも
 のなのだと思うんです。
 簡単に言えば、そういうプレイやモードにツッコミを入れて、そしてそれに反応する形、或いはボケとしての
 了解が場全体から受けられ、そしてそれが場にいるみんなが共有できたとき、それはひとつの「ネタ」と
 して創造されるのだとも思う。
 だから、なんていうか、ネタが初めにあるんじゃなくて、ネタは会話の結果としてできるものなのかな、って
 いうか。
 んで、そうしてその場からできあがった、それこそ場にいる全員が共有できる「ネタ」として、次の会話の
 礎になっていけるんじゃないかな。
 だから強いて言えば、最初にあるネタとしての存在資格があるのは、そのみんなによって創造されたネタ
 だけ、っていうかね。
 
 だから自虐ネタとか、そういうのを管理人の紅い瞳が率先してやってて、それならば色々ツッコミ入れたり
 とかイジメたりとか出来て、場の盛り上げに寄与することができたりしてたんだけど。
 でもそれは諸刃の刃でもあって、それが過ぎると場の品位が下がったり(下がりっぱなしはよくない)、また
 事情を知らない人が見たらなんだと思うし、それにそればかりに頼ってしまって他に繋がらないということも
 あるもの。
 ある程度の限度というか、そういうバランス感覚がしっかりと洗練されてる会話こそが、それ以上の広がり
 を持てるものって思うんですよね、わかっていながらそのバランスを大いに崩した体験を踏まえてね。
 バランスっていうか、もうちょっと言えば節度であり品位っていうか。
 ボケの中にもツッコミを、みたいな。ちょっと違うか。
 
 で、なにが言いたいのかと言いますとね、つまり、ええと、まぁ、ゆっくりといきましょう、ってことです。
 やりたいことやればいいですし、言いたいこと言えばいいですし、まったりを望むならそれも望むところです。
 私はそういう意味で、管理人としては当たり前かもしれませんけれど、星降ル海之宴というチャットで、
 楽しめなかったことは一度たりともありません。
 あ、嘘、ごめん、アニメ見逃したときとか、駄目でした。精神年齢低い低い。
 ここで言いたかったこと、というかこうして書いたことは、つまり今回のお話会でみなさまのお顔を拝して、
 そして改めて、あーありがたいなぁ、と思ったゆえのものなのです。
 紅い瞳的には、上記したようにチャットに対しての持論はありまくりですけど、でもそれを管理人として
 貫徹させることはあり得ませんので、だからそうなると、必然的に現状のようにまったりゆったりの感じに
 身を任せていくだけなのです。
 それで、いい。
 失礼。
 それが、いい。
 あくまでも、星降ル海之宴は、限りなく参加者が創っていくチャットです。
 紅い瞳として、私はその中で色々と足掻いてみせますけれど、それを含めた場の雰囲気があるだけなの
 です。
 つまり、まったりが嫌ならネタ持ってこいや、それが駄目なら話盛り上げろ、とか、そんなことは、ねぇ?
 管理人としては言いませんよ。
 管理人としては。
 うふふ。
 
 紅い瞳は、星降ル海之宴のまったり感を生暖かく応援しています。
 
 
 ◆
 
 なんだか訳のわからないことを書いてしまいました。
 明日になって読み返せば、きっと頭の中は「?」一色です。
 もう知らない。
 
 さて、先々週の日記にてお話した、修理に出してたMDコンポが帰ってきました。
 3週間が2週間に、修理費2万が1万にと、お得な感じで帰って参りました。
 よしよし、いい子いい子。やっぱりおウチがいいわよねぇ。
 これも先々週書いたNANAのCDを早速挿入して、ばっちり直ってるのも確認。よしよし。
 しかもかなり綺麗になってて、出す前に割りと綺麗に掃除したつもりだったのが恥ずかしいくらいでした。
 むー、どこに出しても恥ずかしくないカッコさせて出したのにー。
 という感じで、またぬくぬくと良質なミュージックライフを堪能することができそうです。
 ていうか、ハード良くなってもソフト無ければ意味ないにゃー。
 またなにか買いますか。アニソンを。
 
 
 ◆
 
 はい、次、アニメ。
 時間おしてるんで、もう滅茶苦茶いい加減に書きます。いつものもいい加減だけど今日は3割り増しで。
 Go !
 
 僕等がいた:
 あーこれやっぱすごいわ傑作だよ。今後夜祭でやのとななみが寄りを戻す話だけど、やのの真面目な
 傲慢さとななみの逃避一歩手前な優しさの、そのそれぞれがそれぞれをぶつけ合うことで、一歩踏み
 留まったり一歩踏み出したりするところが滅茶苦茶すごい。やのの傲慢さに憤れば瞬間ななみの気持ち
 としてそれを真面目に受け取ることができるんだよね。あのやのの傲慢さを傲慢という言葉で無くす事が
 ななみ的には最重要なことで、やの的にも同じくななみの優しさを逃避という言葉以外のなにかに変えて
 抱き締めるのが一番大事ってことが、ばばんと伝わってくるの。すごい。いいなぁ、こういうの描ける人って。
 
 ブララグ2:
 暴力シスターとその腐れ縁なお友達、そしてシェンホワと愉快な仲間達、で、Go !
 
 パンプキンシザース:
 見るの忘れてました。あんまり後悔してません。次はあるか。
 
 デスノート:
 いいですね。淡々とゲームな感じに話が進んでいって。この冷徹なやり合いがデスノの醍醐味で、そして
 それをどういった形で終わらせるか、てのが最大の焦点。デスノの示す真のイデオロギーってなんだろね。
 
 少年陰陽師:
 そろそろ切ります。
 
 レッドガーデン:
 ほんとうにもう、この作品にはスタート前から揺さぶられっぱなしです。結局現時点的最終的には非常に
 興味深いものへとなりました。もうほんと印象変わりすぎ。頭の中大変です。落ち着け自分。死が始まり
 としてある生、そして生とは生きるという能動的創造的行為によってしか綴られ得ないもの、ゆえに常に
 人の生は死という無の上に立っている。生きることとは戦うことと言ったローゼンメイデン的な感触に通底
 するものがあって、またそれをこの作品の独自なものとして捉えていくと、これはやっぱり面白いことになれ
 ると思う。感想書けば良かった。前は感想書きたいって言ったのに。そのあと無理とか。印象変わり過ぎ。
 ちなみに今週分(もう先週)は録画されてなくて見逃したけれど、挫けません。意地でも最終話まで見
 てやる。
 
 ネギま!?
 どうもこの時間帯のものを録画予約するという概念が私の頭の中に無いらしいです。縁があればまた。
 
 武装練金:
 レドガに続いて録画されてないのを放送予定時刻30分後に気付いて、あー野球延長とかかとか思い
 ながらもPC立ち上げて時間確認するのも面倒だからいいやとか言って、そして夜というより朝に近い時
 間にふとテレビつけたら奇跡のようにやっていたので、眠気覚ましもかねて観てしまいました。
 そしてパピヨンでした変態でした。弱いのに怖い。怖いのに弱い。カズキの感じた戦慄を私は共有する!
 なんか、朝日を見たくない気分になりました。
 
 あさっての方向:
 これもなんかふと遅い時間にテレビ回してたら出会った奇跡。全然ノーマークな作品だから何話かスルー
 しちゃってたけど、これをスルーする決めたときの私はセンスが無いと思う。雰囲気としてかしましみたいな、
 そういう淡いけどしっかり情景で描いていこうみたいな感じがあって、設定も子供が大人に、大人が子供
 になっちゃった、ってやつだし。ただこっちは非常に淡々としてそれでもすべてを描き出してるような、そういう
 情感が爽やかに底に流れてる感じがより強い。ひとつひとつの動作や声の抑揚や間や、そういったものを
 すべて使って語りかけてくるような、今期には珍しいタイプの作品でした。これは良いアニメです。これから
 も見ます。
 
 すもももももも:
 お色気方向で固めてくのかと思いきや、むしろギャグの下地に使ってるみたいな、なんかあのツンデレな
 子が電柱も家も全部突き抜けて逃げ出したとこが、なぜか妙に面白かったです。実にいい逃げっぷり。
 これからも頑張ってください。色んな意味で安心して見てます。
 
 地獄少女2:
 ああやって、いわゆる普通では無いことをそれになって考えられるものって、すごく大切なものだと、
 最近思う。
 
 乙女はお姉様に恋してる:
 お姉様と書いてボクと読む略しておとボクな作品。タイトル(の読み)を見た時点でスルーを確定する
 ような(私の中での)前評判の低さでしたけど、思ったよりは楽しめたというか愉しみ方を見つけたというか
 。まーお上品さとかそこらへんな雰囲気はあんましマジメに描いてないんだけど、ただ逆にその「手軽な
 お上品さ」みたいな矛盾ちっくな感じが面白くてね。あと転校間もない主人公をいきなりエルダー(説明
 めんどい)として選んだ全校生徒に、学園の知性と品位を問いかけた生徒会長と、それをしっかり踏まえ
 てそれを越える生徒の自主性を説いた前エルダーの演説にぴくっときた。生徒会長さんのお話ももっとも
 ですから、確かにそうだとは思ったけれど、けど前エルダーさんのそれでもそれを選んだ生徒達自身が、
 その選択の責を負うという自由がこそ、その学園の知性と品位というものの根本にあるのじゃないですか、
 というような話の方に、ああそうかって深く頷きました。その通りです。
 でもほんとは生徒会長さんが言った知性やら品位を踏まえた上で全校生徒が投票してるはずはなく、
 生徒会長さんの言よろしく人気投票であるのは明白ですから、これは前エルダーさんの巧妙な詭弁で
 あったりするんだけど綺麗に押し切りましたね。こういうひと大好きです。ま、その人気投票っていう選択
 をしたこと自体も自分達で背負え、って意味で確かにその通りでもあるんですけどね。私はそれを採用
 してますはい。ふふふ。
 
 働きマン:
 なんかこれ見てるとどっと疲れてしまうのは、私だけなんでしょうか。
 
 NANA:
 特に語ることは無し。というか語り尽くせないうちに泡とか吹きそうだから、やめとくって感じ。最高。
 
 
 
 あー、ここに来てまた見てるアニメが増えちゃいましたね。あさってとおとボクの2つ。キツイ。
 だけど、結構見れたり見られなかったりするのがあるから、なんか今期は壮絶な様相を呈してきた。
 なんか、カオス。
 なんか作品として意識するより、一話一話のエピソードで捉えちゃいそうだから、いつのまにか別の作品
 のお話同士でくっついて脳内再構成されちゃったりした日には、ほんと、永眠したい。 (既に)
 えっと、デスノの主人公ってフリーダムに乗ってるんでしたよね? (全然駄目)
 
 という辺りで、いい加減、寝ます。
 せっかく早寝が板についてきてたのに、またここ最近不可抗力分除いても夜更かしが過ぎるし。
 ってな感じで、バイバイ! (懐かしのすごラジ風に)
 
 
 

 

-- 061027--                    

 

         

                                   ■■ 唯愛地獄 ■■

     
 
 
 
 
 『もう窓を叩いても、けいちゃんは居ないんだね・・・・・・けいちゃん・・・・・・・・・・けいちゃん・・・・』
 

                         〜地獄少女 二籠 ・第三話・多恵の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 朝靄の向こうに浮かぶ朝日の影。
 手探りで掴む朝の吐息を感じるままに、朝の訪れを感じていく。
 限りない朝の手前のその靄の中で、盲目に滑らかに愛しいひとときを抱き締めて。
 刻々と迫る日の出までの瞬間を、ただただ貪り尽くしていく。
 来るべき朝のために、その朝を滅ぼし食い尽くすために。
 その後に残る永遠の黄昏の姿を、知るものは居ない。
 焦り、焦り、その果てに静寂を、得て。
 
 『せめてけいちゃんを守ってあげたい。・・愛しいけいちゃんを・・・・・。』
 
 燃え始める朝日の影を、ただただ愛しながら。
 見果てぬ朝に、怨みを込めて。
 
 
 ◆
 
 怨む?
 なんで?
 私、別になにも怨んでないよ?
 あの女のことを私が? なんで? 
 だって、あの女はけいちゃんの彼女になってくれたんだよ?
 私の大事なけいちゃんの彼女になってくれて、けいちゃんを幸せにしてくれる人なんだから、むしろ大切に
 しなくちゃいけないんだよ?
 けいちゃんがあの女に振られないように、もっとけいちゃんに女の色んなこと教えてあげて、色々教えて
 あげて、でもそれでも私みたいなダサ女じゃ限界あるし、だからそれじゃ足りないけど、私にできる精一杯
 のことをして、けいちゃんを助けてあの女の立派な彼氏にしてあげたいの。
 え? でもあの女、とか言ってるじゃんて?
 そりゃあね、個人的にあの女のことは嫌いだから、そういう表現になっちゃうんだけど、それとこれとは話が
 別でしょ?
 だってあの女は、けいちゃんの大事な彼女なんだから。
 私がけいちゃんの大事なモノを悪く言ったりしたら駄目でしょう?
 それよりもっと、私の方があの女を逃がさないようにけいちゃんにくっつけとかなきゃいけないんだから、
 そんなことは全然言ってらんないのよ。
 けいちゃんを、彼女もできないようなダメ男にするわけにはいかないんだから!
 私はけいちゃんを守るって、けいちゃんを立派な男にするって決めたんだからね。
 
 『けいちゃんの妹ならよかった。
 ううん、いっそお母さんなら一生けいちゃんのそばにいられるのに。』
 
 けいちゃんとの関係がどうなろうとも、この距離は変わらない。
 私はけいちゃんのためを思いけいちゃんのためになる、それだけで、幸せ。
 『今日も幸せ? ブイっ!』
 『ストーカーでいいもん。私はけいちゃんを守ってるんだもん。』
 恋人になんてなれなくてもいいの。
 窓を隔てて行き来できる、幼なじみの私とけいちゃん、この関係がずっと続けば、それでいいの。
 いいのよ、けいちゃんが結婚して奥さんができて子供ができて、もう簡単に私と会うことができなくなっても
 、それでも私はなんらかの形でけいちゃんに近づき、けいちゃんを思い、けいちゃんのためになることをし、
 そのためにならけいちゃんの奥さんのためになることも、子供の幸せを祈ることをしたっていいの。
 それでストーカーって言われたっていいの。私はいいの。
 たぶんけいちゃんだけはわかってくれるし、そしてもしけいちゃんも私の事をそう思うなら、やっぱり同じように
 けいちゃんのために私は身をひくの。
 だって、男の子はいつか家を出ていくものでしょ?
 いつまでも私に甘えてちゃ、けいちゃんも大きな人間になれないものね。
 自分だけの家庭を持って、一人前の男になって、そうして立派になってくれるなら、それが私の一番の
 願い。
 けいちゃんがそうなってくれるように、私は今まで頑張ってきたんだから、それが最高なのよ。
 『私は、私が発明した新しい愛の形で、けいちゃんを愛してるの!』
 
 え? おねえさん、わかんないの? ふっる〜い。
 
 恋人になるだけが、幸せじゃないよ?
 愛なんて、形を求めた瞬間に崩れちゃうよ?
 私はけいちゃんの、あのはにかむような笑顔が好き。
 私に幼なじみの、本当に気安く本音だけを魅せてくれるけいちゃんが大好き。
 けいちゃんも、私のことを、そういうのを魅せる相手として求めてくれているの。
 両想い、といえばまさしくこれだって両想いでしょ?
 必要として必要とされて、それ以上を求めずそれ以上を求められず。
 けいちゃんのことを考えて、けいちゃんのことを想って、そのために行動するんだよ。
 すっごく、いいよね、こういうの。
 ふふ、みんなは私のことストーカーだなんて言うけど、ほんと馬鹿よね。
 世間一般のストーカーのイメージを安易にかぶせて、それで私たちの愛を片づけようとしてるだけなんだ
 から。
 知りもせず知ろうともせず、ただ適当にストーカーだからキモいだなんてね、笑っちゃうわ。
 そうやって自分達の知る世界以外のものをひたすら排除することしか知らない馬鹿には、うんざりよね。
 わからないなら、わからないっていえばいいだけなのにね、ほんと。
 ふふふ、お姉さん、どう思う?
 
 『あそこで今、大好きなけいちゃんが、私の大嫌いな女と会っているの。』
 
 私が用意したふたつの枕が並ぶベッドのある私の部屋で、ね。
 私がけいちゃんたちに貸してあげたんだよ♪
 宇宙で一番大好きなけいちゃんのためにね♪
 あ、やっぱりお姉さんもそう思う?
 そういうこと普通はさらっと言わないし、やらないよね。
 ていうか嫉妬とかするはずだよね。
 でーもねー、お姉さん、それじゃダメなんだよ。
 『そりゃーたまには嫉妬することもあるよ。苦しくて、気付いたら奥歯を噛み締めてたり・・・・』
 
 
 『でも、そんなことは大したことじゃない。
 
  けいちゃんを失うことに比べたらね。』
 
 
 愛しのけいちゃんに女ができた?
 それ、嬉しい事よね? 冗談抜きで。
 どんなに変に見えようと、そうなんだよ。
 そしてどう見えようと、私にはそんなことどうでもいいの。
 けいちゃんが幸せになってくれれば。
 『どうか今夜こそ、けいちゃんがあの女と上手くいきますように!』
 私があの女を怨むとしたら、それはあの女がけいちゃんを裏切ったときだけだよ。
 私のけいちゃんを裏切るなんて、許さないんだから。
 でも、けいちゃんにはけいちゃんとしてしっかりして欲しいから、私はできるだけ干渉しない。
 あの女にも余計なことはしないし、だから私はけいちゃんのサポートに徹するの。
 頑張って、けいちゃん! 今日こそはっだぞ!
 
 
 
 
 
 『なにが、望みなの?』
 
 
 
 
 
 
 『けいちゃんを・・守ってあげたいの・・・・・・ずっと・・幸せで欲しいから・・・』
 
 
 
 
 
 彼女になれなくてもいいの。
 ううん、むしろ彼女になんてなったら、いつか終わってしまうかもしれないじゃない。
 私はけいちゃんのすべてになんてなりたくないし、けいちゃんを私のすべてになんてしたくない。
 私とけいちゃんのふたりだけの世界なんて、そんなの存在自体が滅んでるよ。
 けいちゃんがけいちゃんの大きな世界の中で生きているのを観るのが、私は大好き。
 だから私は、けいちゃんがそこでちゃんと生きていけるように、手助けしてあげたいの。
 私はそのけいちゃんをずっとずっと観ていたい・・・・・けいちゃんとずっと居たい・・・・・
 私がけいちゃんを守り続けていれば、私はけいちゃんを守り続ける人としてずっとけいちゃんのそばに居ら
 れるの。
 だから私は、けいちゃんの一番じゃなくてもいいし、けいちゃんに女ができたって、けいちゃんを失うことには
 ならないの。
 一番愛されてるってことは、一番真っ先に嫌われる可能性があるってことなんだからね。
 嫌われるだけならまだしも、それは絶対に嫌悪を含む別離になるはずだから。
 だから私は、これでいいの。
 これで、いいの。
 
 
 
 
 『それで、いいの?』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 よくない。
 全然。
 
 でもたぶん、お姉さんの思ってることとは、違うけど。
 
 
 
 ◆◆
 
 けいちゃんとあの女は、また上手くいかなかった。
 初めてはハワイでがいいとか、言ったみたい。
 けいちゃん、バイトするって。
 これは、チャンスよね。
 
 ふたつの、意味で。
 
 けいちゃんにキャッシュカードを貸してあげて。
 いっておいで、けいちゃん。
 私、応援してるから。
 そして私は、あの女の元に走った。
 やっぱり。
 あの女、二股かけてた。
 のらりくらりとけいちゃんを振り回して、最後にはきっとけいちゃんを捨てるんだわ。
 許せない。
 あの女、私の顔みて、バカって言った。私がけいちゃんに絶対言わないってわかってて、嗤った。
 さすがね。
 さすが、私が大嫌いになった女。
 それでこそよ。
 ちょっと、嬉しかった。
 だから、微笑んだ。
 それでこそ、あんたをけいちゃんにくっつける甲斐があるってものよ。
 けいちゃんにこのことをバラすなんてあり得ない、だから私がけいちゃんを守ってあげなくちゃいけない。
 涼しい顔して、なお一層あの女をけいちゃんの彼女にでいるように画策しなくちゃ。
 私がけいちゃんを守る!
 けいちゃんのプライドとあの女への想いを全部、全部!
 『どうか、けいちゃんがフラれて、悲しい想いをしませんように。』
 あの女のことを、私が怨むわけないじゃないですか。
 あの女に不幸があれば、けいちゃんは悲しむに決まってるんですから。
 あの女が幸せになれば、けいちゃんは喜ぶに決まってるのと同じように。
 だからあの女が二股かけてるってこと、絶対秘密。
 許す許さないの話でなら、この事がバレる自体をこそ、私は許さない。
 なんなら、あの女に協力してあげたっていいわ。
 あの女なら、あの最低な女なら、けいちゃんを弄ぶために、私をしっかり利用してくれるだろうし。
 
 でも、あの女は、もう一枚、上手だった。
 ううん、私が、甘かっただけ。
 
 けいちゃんが、あの女が二股かけてることを知ってしまった。
 たぶん、あの女、わざとけいちゃんにバレるようにしたんだ。
 絶対、直接なんて言ってないよ、あれは。
 けいちゃんが一番悲しむことを、あの女はやってきた。
 それが、私を一番苦しめることになるのを、ちゃんと見抜いてた。
 やっぱり・・・馬鹿だわ・・・・私・・・・・
 
 
 
 
 
 +++ もうひとつの、意味
 
 
 
 ◆◆
 
 もし。
 もしあの女が私も好きになれるような女性だったら。
 本当にけいちゃんを愛してけいちゃんを真に幸せにできるようなヒトだったら。
 私は、一体どうしてただろう。
 私はもしかしたら、けいちゃんと一緒にはいられなくなってたかもしれない。
 その女性を、真っ先に殺していただろうから。
 なんで?
 わかんない?
 
 そいつを、怨むことができないからじゃない。
 
 そんなこともわかんないの? お姉さん。駄目だなぁ〜。
 いい?
 あの女みたいな性悪の最低女がけいちゃんの彼女だったから、私はけいちゃんを守ることができたの。
 あの女の悪い部分と、そしてけいちゃんから「彼女」を奪おうとするあの女からね。
 あの女に良い彼女を演じさせ続けることができれば、けいちゃんは悲しい想いをすることも無く、また
 彼女を失うことも無く済む。
 そしてね、お姉さん。
 だから、私はああいう女だからこそ、あの女を怨むことができた。
 ううん。
 ほんとはね。
 あの女を怨むことが目的なんかじゃないの。
 
 
 私ね。
 けいちゃんの妹やお母さんになれない、こんな自分が・・・憎くて・・・堪らなかったの・・・・・
 
 
 ただただ永遠の別離を含む恋人になる可能性しか持てない、ただのけいちゃんにとっての赤の他人である
 ことが。
 いつもいつも・・・・呪ってた・・・・
 そしてその燃えさかる地獄の炎が、熱くて熱くて・・・堪らなかったの・・・・・・
 私は・・・・
 私は・・・・・・・・・・・
 
 
 
 
 私なんて、いらない!
 
 
 
 
 ただただけいちゃんを想うだけで。
 ただただけいちゃんの悪い恋人を怨むだけで。
 そのけいちゃんと悪い恋人の離れていくことが必然付けられてる仲を、ただただ近づけ続けることだけで。
 そのことだけに、没頭していたの。
 怨んでいたわ、なによりも私を。
 憎んでいたわ、誰よりも自分を。
 けいちゃんがあの女にフラれて、そして窓の向こうのけいちゃんを私に迎え入れて、抱き締めて抱き締め
 られて。
 あのときの恍惚感が、あのときの焦燥感が。あのときの虚無感が。
 『でも、一番になったら落ちるしか無いんだろ。』
 けいちゃんのその言葉で火がついた私の心は、そのまま真っ直ぐに燃えさかり、そして耐えられないほどに
 、私の姿を創り始めていた。
 感じるよ、けいちゃんのぬくもりを、息遣いを、みんな・・・みんな・・・・私の肌が・・・・全部・・・・・・・
 
 ぞっと、した。
 
 『駄目! 来ないで!』
 あなたが見つめる先にはなにも無いよ! 誰も居ないよ!
 見ちゃ駄目! その優しい瞳に映った人の姿は幻だよ!
 駄目! 駄目! 抱き締めちゃ、駄目!
 私を愛しちゃ、駄目!!!
 そんなコトしたら、私もう、誰かを愛して幸せになるけいちゃんの姿を見れないじゃない。
 けいちゃん・・・けいちゃん! 手を放して!
 私を突き飛ばす前に、私を放して!!
 
 
 
 そしたら、けいちゃん、窓から落ちて、死んじゃった。
 
 
 
 ◆◆◆
 
 公然とけいちゃんを侮辱するようなことを言い始めたあの女を、憎しみで殺した。
 怨み殺してやったわ。
 すごく、すごく、自然だった。
 自分が怨みで動いているのが、克明にわかるようなほどに、それを止めることも無い滑らかな憎悪だけが
 、ただ私を動かしてくれたのよ、おねえさん。
 あの女を私が怨むことに、一分の無駄も矛盾も無く、それは本当に私のすべてを包んでくれた。
 あんな女、どうでもいいのにね。
 二股かけたくらいで地獄に送られるんじゃ、割に合わないわよね。
 可哀想に。
 終始、こんな感じで、私は怨みに燃えていたの。
 変かな? 変かもね。
 私には、激しい怨みに囚われる動機も感情も充分で、そしてその通りに綺麗に怨みに染まっているのに。
 それなのに私、そんなこと普通に思ってるんだもんね。
 でもね、おねえさん。
 私、わかってるんだよ。
 だって、私が怨んだのは・・・・それは・・・・あの女じゃないんだもん・・・・・
 ううん・・・・さっきも言ったけど、正確に言えばあの女を怨むことで、他のなにかを激しく怨んでいたんだ。
 そのなにかを直接怨むことは、堪らなく恐ろしいことだったから・・・・
 私はあの女を怨みながら、なぜかどんどんと癒されていく自分を感じてた。
 普通なら、どんどん疲弊していくだけなのに。
 
 そして・・・・
 
 本当はその癒されていく自分をこそ、破壊したかったのに・・・・・
 
 でもそうすることは恐ろしくて、どうしてもできなくて・・・・・・
 だから・・・すり替えたの・・・・他の誰かと・・・・・私が怨んで当然な人間と・・私を・・・・・・・
 でもその身代わりの人間を怨んでも、ただただそれに満足していくだけの私があったの。
 私は・・・・・怨む事自体が・・・・・目的に・・・・・
 私は、私をこそ、壊したかったのに。
 けいちゃんの妹にもお母さんにもなれない、私を怨み殺したかったのに。
 私なんて、いらない。
 私はただ・・けいちゃんのそばに・・・ずっと・・・・
 けいちゃんを・・・ただ・・・・・・
 ただただ・・・・・愛するためだけに・・・・・・・・・・
 
 
 
 
 
 『地獄に堕ちても構わない・・・・・・けいちゃんのためなら・・・・』
 
 
 
 
 ◆◆◆◆
 
 『わかったよ・・俺が一番大事なのは多恵ぽんだって。』
 
 私を求めて私が閉めた窓を開けようとこちらに身を乗り出してきたけいちゃんを、私が窓を開けて殺し
 ちゃった。
 あーあ。
 絶叫しながら、私はすっぽりとなんだか知れない必然さと虚しさを感じてたんだよ。
 おねえさん、そんな経験ある?
 あそこで私が窓を絶対開けるであろうことも、そしてそうすればけいちゃんが消えてしまうであろうことも、
 私はちゃんと知ってたんだよ、おねえさん。
 私、けいちゃんを殺したかったのかな?
 私、なんで窓を閉めたんだろうね?
 私が、窓の内側で、ひとり死んでしまえば良かったはずのに。
 けいちゃんが、私のこと一番大事だって。
 その言葉だけは、聞きたくなかったのに。
 その言葉だけが、ただ唯一の真実だと知っている醜い私が居たから。
 なんだか、けいちゃんに追いつかれちゃったみたいな感じ。
 今まで私の掌の上で幼く踊っていたけいちゃんが、いつのまにか私の目線に立っていたみたいな。
 あー、お姉さん、そうじゃないや。
 
 私が、ずっと、そこで止まってただけなんだよ。
 
 けいちゃんに追いつかれ、追い越され、そしてけいちゃんの背中を見つけることもできないくらい置いてい
 かれて。
 ほらね・・・そうでしょ、やっぱり。
 私の・・・・思っていた通り・・・・・・・その通りに、なっただけ・・・・・
 けいちゃんの妹にもお母さんにもなれない、ただの赤の他人の私が、ただただ辿るしか無い道の通りに。
 あのとき感じた必然さと虚しさは、それだったんだ。
 ごめんね・・けいちゃん・・・・
 私・・・・けいちゃんと一緒に・・・行けないよ・・・・
 けいちゃんが望んでくれても、ほんとに望んでいてくれてても、私には最初からそれを断るしかないことは
 わかってたの・・・・
 それでも・・・・頑張ったんだよ・・・私なりに・・・
 でも・・・駄目だったね・・・・・・
 だから・・・・・
 
 ごめんなさい。
 今まで、ストーカーみたいなこと、して。
 
 
 
 

 +  +

 

 『あの子の涙は、愛する人を失った悲しみの涙なのか、孤独に震える涙のか』

 
 
 
 
 そして明けた朝霧の向こうに上がる朝日の元に残る一抹の影。
 日の中を歩けども、その影は決して、消えない。
 なぜならば。
 その空に朝日と、そしてその地に、私が在るから。
 
 
 
 
 
 
 『こんばんは。 引っ越してきたの?』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 『・・・・・・・・・・・・・・・・・けいちゃん・・』
 
 
 
 
 
 

++  『あなたの怨み、晴らします。』  ++

 
 
 
 
 
                                ◆ 『』内文章、アニメ「地獄少女」より引用 ◆
 
 

 

-- 061025--                    

 

         

                               ■■シスター×シスター■■

     
 
 
 
 
 ヨランダ様がみてる。 (挨拶)
 
 はい、ブララグ2第4話見ましたよ。
 うん、これはまたノリがいいのがきましたね。
 さすがに双子の話にさらにどん底に突き落とすような話を後続させてくるとは思ってませんでしたけれど、
 まさかこうもカラっとノリを変えてくるとは正直思ってませんでした。でも全然いいですけど。問題ない。
 マフィアに雇われた偽札製造オタクが偽札の納品期日をまるで無視して、ひたすら最高の偽札を作って
 たのにマフィアがついにキレて、そしたらオタクもキレて脱走して、そして街外れの教会に逃げ込む。
 そして、その教会に居たのは・・・・
 レヴィさんとエダさん。
 マフィア教会のドアに弾丸ぶち込んでオタクを要求→ 教 会 か ら 弾 丸 の 三 百 倍 返 し
 はい。
 これはそういお話。
 というか、エダさんとレヴィさんがちっとも人(マフィア)のお話を聞かないというお話。
 『教会にブリット打ち込んで、五体満足で帰ろうなんざ虫が良すぎるんだよ』とか、シスターが平気で。
 どんな教会だよ!
 マフィア的にはさっさとオタク回収して悶着無しで帰りたかったのだろうけれど、あいにくその教会のシスター
 とその友人(腐れ縁)は好戦に超が付くほどの不信心者。
 いやそれ以前に、逃げ込んできた迷い人に対して、『厄介事を持ち込むな、このアマ。』て。
 ていうか、『神は留守だよ。休暇とってベガスに行ってる』て。
 『っ て 信 じ ら れ な い !  あ な た そ れ で も シ ス タ ー ! ? ! ? 』
 ええ、彼女れっきとしたシスターですよ。この街はこういう街です。ええ。
 辿り着いた場所が悪かった。
 そしてマフィアも追いついた場所が悪かった。しかもよりによって銃を抜くなんて。あー。
 彼らの中に(撃ったらどうなるかの)事情を知ってるのがひとりいて、必死に無抵抗を部下に命令して、
 そしてひとり立ち上がり、手違いなんだ事故なんだ話を聞いてくれとか言います。
 俺たちは攻める気は無いんだ。
 一瞬の間。
 
 『ふざけんじゃねぇぞ! 事故もへったくれもあるかぁ!』
 
 駄目でした。
 もう撃ちまくり。
 『ああ神様! やっぱり駄目だぁーっ!』
 教会の前で吐く台詞じゃありません。なんてシュールな。
 おまけに礼拝堂でお酒やったエダさんをひとことで叱りつけ黙らせた大ボスヨランダが、話のわかるところを
 みせてくれるかと思えば、加勢するし。駄目だこの教会はもう駄目だー。
 はい。
 最初の15分で、この第4話の基本はできました。
 というか、なんかそれで充分でした。
 あの教会の本質が良く見えて、非常に有意義な時間を過ごさせて頂きました。アホだ。
 
 で、残りの15分は前半が延々オタクのオタク話で、後半はエダさんがオタクを餌に一儲けを企む話。
 私的にレヴィさんと同様エダさんの策略が見えてこないんですけど、んー、なにやろうとしてるのかな。
 オタクを居場所確認できるホテルにわざと逃がして、その情報をマフィアに高く売ったってとこまではわかる
 けど、そのあとなにを狙ってるのか。
 しかもマフィア側はなんでオタク娘ひとり捕まえるのに、あんなに殺し屋さん大集合させたんだろ。
 んー、なんか見逃してたかな? まぁいいか次回わかることだし。
 とりあえず、エダさんは非道、ということで。
 まぁ予想されるのは、次回レヴィさんエダさんコンビと殺し屋さん集団との血湧き肉躍り、
 血飛沫上がり肉弾け飛ぶ一大バトル合戦が行われて、オタクがギャーギャー逃げ回って、ついでに
 ロックも逃げ回って、そしてエダさんがオタクをゲットして逃げて、最後にマフィア達に高く売りつけたりする
 非道劇が展開、とかそんなとこでしょうか。
 なんつーかもう、ブララグのこのコメディにして凄惨な、凄惨でいて笑えるってところがやっぱ醍醐味なので
 、もう次回は滅茶苦茶にはっちゃけて、他のなんかもはっちゃけぶっちゃけブチ撒けてくれたりすると、
 これはもうほんと、いいです。
 
 
 はい。
 いや、今回はそんな書くことないですね。
 前半のアホらしいほど豪快なノリがあれば、それで片づきます。
 あと随所に面白い演出というか時間の進め方とか色々ありましたけどね。
 小ネタ的にも初登場のエダさんを姐さんと呼ぶ(エダさんには姐さんて呼ぶなといわれてるけど)神父
 見習いのリカルドくんとか、レヴィさんに神父見習いですと言いながらマシンガンに弾を充填してるとか、
 どんな神父見習いだよ、みたいな。
 それ以前に鬼の形相で銃撃ちまくってるのに、姐さんて呼ぶなシスターと言えってエダさん、説得力無し。
 あとはマフィアのボスからこの件の解決を任されたカウボーイ気取りのおっちゃんが、集めた殺し屋さん達
 にまったりと小者扱いされてく様子とか、なんか、いい。
 それと、これは悪いとこだけど、今回は珍しく作画の乱れが一カ所。
 ブチ切れて教会のドアから飛び出して、最初の一発をエダさんと並んでぶっ放したときのレヴィさんの表情
 が、なんか、ひどかった。
 鬼の形相の失敗作みたいな、そんな、中途半端な。
 うん、それくらいかな、ほんとうに今回は。
 あーあと。
 『信じられるか? 教会の尼までが銃をぶっ放してくるんだぞ!?』 byマフィアのボス
 お気持ちお察し申し上げます。
 そして最後に。
 掃除屋さん、怖すぎ。チェーンソー。
 でもほんとに怖いのは、それを見たとき普通に今までのノリで笑いながら見てた私の心境です。
 麻痺ってる麻痺ってる。
 
 
 やっぱり、ブララグって、楽しいね。
 
 
 
 
 
 
 P・S:
 こっそりブララグ原作立ち読みって来ました。2巻のみで、しかも双子編の手前まで。
 だって時間無かったんだもの。他意は無いですそのはずです。
 で、結構面白かったです。もっと絵とか雑かと思ってたけど、シメるとこシメた味のある感じで、割とドキっと 
 きたヨ。これはなかなかいける。やや抑揚に欠けるところはあるけれど、その分ひとつひとつのコマに充実
 感を得られて、こじんまりとしていながら迫力がある感じになってて、よし。
 あとロックとレヴィがナチ党の件で喧嘩して、そのあとのお使い道中のラストで言ったロックの台詞に、
 改めてぐぐっときた。
 「俺は、俺が立っているところにいる。それ以外のどこでもない」 byロック
 こちらでも無くあちらでも無く、此処。こちらだろうがあちらだろうが、ただ此処。
 ヘンゼルとグレーテルを観たあとにこの言葉を読むと、やっぱりそうだよねって思った。
 ロックとレヴィの立っている場所、そのどちらに自分が属そうとも、その属した場所に従属することも、
 また反抗することもなく、ただただこの場所から見上げた青空だけに意味があり、またそれを見上げる
 自分だけがその属した自分の場所で生きていけるんだよね。うん、改めて、しっくりきた。
 あと。
 巻末の短編漫画読むの忘れました。
 銀光さんにお勧め頂いたのに。
 すっかり忘れてました。はい。
 あ、涙が。
 
 
 
 
 
                           ◆ 『』内文章、アニメ「BLACK LAGOON」より引用 ◆
 
 
 

 

-- 061023--                    

 

         

                                     ■■ 秋流し ■■

     
 
 
 
 
 満点。(挨拶)
 
 はい、ごきげんよう、紅い瞳です。
 さて、今日はなにを書こうかな。
 あ、なんか最近更新頻度高くなってきて、いい感じじゃないですか?
 やっぱり私的に週3回更新っていうのが性に合ってるよねぇ、前も言ったけど。
 2回だと空き過ぎちゃって、逆にリズムに乗り遅れて余計にやる気無いみたいなとこあるしね。
 ただまぁ3回だと調子に乗り過ぎて4回とか書いちゃったりして、色々疲れちゃったりするんだけど。
 今回もそうでした。結構無理がありました。今の生活状態だと死ぬる。
 
 さて、どうでもいいことはおいといて、まずはこれからお話しましょう。
 はい、ブララグ2。勿論第3話。ヘンゼルとグレーテルに幸あれ。
 うーん。今だにしびれてます。あー駄目だこりゃ、当分駄目だね。
 最高。万歳。このふたつの単語で頭一杯です。
 つーか自分の書いた感想読み返したり、またアニメ観直したりですよ。
 まだまだいける。ていうかまだまだ足りない。
 もっとこう、なんていうのかな、深く深くじっくりとっくりと色々々と書きたいですし考えたいですし、書きたい。
 ほっと一息ついて、自分の書いたの読み返してみると、やっぱりはっとすることがあって、書いたことと書け
 なかったことが渾然一体となってどばーっとくるっていうか、なんだ、なにいってんだ。
 要するにまぁ、またむらむらと創作意欲というか妄想意欲というか、いやそれ以上にさらにあのお話のなか
 から沢山のものを見つけたいというか、そう、探求心? そんな感じでもうすっかり旅支度というかそういう
 の出来ちゃってる状態です。いつでもいけます隊長!
 たぶんこのまま紅い瞳が素直でいられれば、これ以降に書くブララグの感想にそれを反映させて、
 ことあるごとに双子はああでこうでとか書いて色々対比させたりとかするのだと思うし、またこれから出会っ
 ていく体験なり経験なり、それらから考えられることもそこに還元して考えることで、新しく得られるものも
 あるでしょうし、ぶっちゃけいわゆる私にとっての今までの羊のうた的な扱いみたいな、そんな感じになる
 かもわからんね。なるかもわからんね、って面白い表現ですよね。
 まー紅い瞳が素直だったら、世界はもう一回地球中心で周り始めてもいいくらいなコペルニクス的転回
 があっても不思議じゃありませんので、まぁそのあたりは神すらも知らぬ未来のお話ということで。
 ほんと、なに言ってんだ。
 ていうか、準備体操。
 
 ということで、そろそろエンジンかかってきました、いや最近ほんと書き出しのノリ悪くてね、こんな感じなん。
 はい、次は地獄少女2について。
 あー、これはやっぱなんか凄いですね。
 大して1のときと変わってないとか言った私にビンタ一発進呈致します。痛ー。
 なんていうかお話の中身のレベルがあがってますよ。
 これはもう、ほんと感想の書き甲斐があって私的には嬉しいところですよ。
 このままの勢いで、どんどん本気でいってくれたら、私の中の地獄少女のランクがひとつあがります。
 ていうか今のわたくし、感度高くなっております。超反応中。
 
 ごめん、なんか今日の私、おかしい。
 今日だけじゃないだろ、とかいう声がまるで聞こえません。
 
 
 ◆
 
 さてはて。
 とりあえず書くことちゃっちゃと書いてしまいましょう。
 ええと本とか。
 せっかくの読書の秋も深まりつつあるというのに、読書欲は減衰の一途を辿っております。
 うあー、読む気しないー。
 前回借りて来たのでも、何冊か読まずに返しちゃったしねー。
 中村隆資の「出雲願開舟縁起」とかすっごく面白かったんだけどねぇ、感想とかも是非書きたいんだけ
 ど、書く気起きなくてねー、あーほんとこの中村隆資って人の文章は意外性がありながら、しっかりと
 新しいものと古いものをひとつにしてその先のものを提示してくれるよねー、とか。
 ん、違うか、古いものを新しくしてくれるとか、そんな感じか。
 ま、どうでもいいけど。やる気無。
 という感じで、以上本のお話でしたー。
 超投げやり。
 
 
 ◆
 
 次、アニメ。
 えーと、はやくも視聴が追いつきません。武装練金なんて早速ひとつ見逃しちゃったよ。
 今のとこしっかりペース保って見てるのは、ブララグ2と地獄少女(このふたつは感想書いてるから)、
 それからNANAと僕等がいたくらい。あとはもうなんか、後回しに次ぐ後回し。
 まずい、もう一週間経っちゃう、とかもう無駄に焦りながらも見れない日々が続いていたりします。
 一応録画してありますけど、さっさと見てかないとほんと見る気が失せてしまうんで大変です。
 あ、そういえばまとめてなかったですね。
 今期(前期から引き続きも含めて)私が見てるアニメは、こんな感じです。
 取りあえず、見逃したらきっと残念なことになるでしょう、と思われる作品を上から順に列挙。
 
 ・ブララグ2
 ・NANA
 ・地獄少女2
 ・ギャグマンガ日和2
 ・僕等がいた
 ・デスノート
 ・武装練金
 ・レッドガーデン
 ・すもももももも
 ・ネギま!?
 ・パンプキンシザーズ
 ・少年陰陽師
 ・働きマン
 
 今期は最初はそこそこの豊作かと思っていましたけれど、回を重ねるにつれ、不作な様相を呈して
 きました。
 んー、小粒が多いね。生命力も弱い。これは長くはもたんぞ。
 前期からの居残りというか生え抜き組なNANAと僕等がいた(なにげにギャグ漫画日和も)が上位に
 あるのを見ればわかるような感じです。
 いや、なんていうのかな、技巧的な部分というか、そういう部分部分の集合体としてのものなら、
 そこそこ面白いのは揃ってるので、そういった観点でちょくちょく勉強させて貰うことはあるんだけれど、
 こうぐぐーっと引き込まれるような、あるいはそうじゃなくても、よしこいつを読み解いてやろう、私が感想
 書いてやろうじゃないか、と思わせるような(例えば前者は蟲師やブララグ、後者はローゼンや地獄少女
 みたいな)作品が少ないんですね。
 全体的に、一時期のゲーム系原作の萌え中心アニメ量産化状態は下火になってきたものの、
 たんに手堅く形にしてまとめることに終始しちゃってる感のアニメが多く、ま、つまりは印象としては小作り
 な感じ、あるいは手応えの無い作品ということになってるかな。
 変にまとめられて自己完結されちゃうと、逆に手が出しにくいんですよね、小作りだろうがなんだろうが、
 重要なのは読み手の受け取り方次第で、それだけならいくらでも深く読めるものにはなるのだけれど。
 確かに年々いわゆる「考えて見るアニメ」(決してあの”大人が楽しめるアニメ”とかいうのじゃ無いよ?w)
 というのは稀になってきているけれど、ま、それ自体は別にどうでもいいんだけさ、いや上でも言った通り、
 それならそれで自分の方から作品にぶつかっていってなにか考えればいいだけなんからさ、考えるって事
 は突き詰めると能動的なことだから、ただ「考えるに足る」なにかを向こうから与えてくれるのを待っていた
 んじゃあ、なにも始まらないよね。
 でも、例えば今期のアニメなんかは、なんていうかな、そうやってこっちががつーんと行こうと飛びかかろうと
 すると、さっと向こうから避けちゃって、そのまま向こうで勝手に終わっちゃうみたいなところがあるんだよね。
 印象万歳。
 ま、そんなとこです。
 アニメの制作現場的に、アニメのこれからの流れとかは勿論私なぞ知るよしも御座いませんので、その
 辺りを都合良く捉えて、まぁ来期辺りにはまた違った方向に変わっていくだろうさ、と期待なぞ寄せてみた
 りしております。
 良くも悪くも、いろーんな方向にいってくれると、アニメはますます豊かになりますでしょ。
 んー、なんかほんと、なにが言いたかったのか、今日の私は計り知れない。 (やる気無さ度高すぎて)
 
 あと、一応挙げたアニメの中からももういくつか視聴打ち切り候補がちらほらと。
 ていうか、下から6作品は全部もう、いつ切られてもおかしくない状況です。
 というか、既にちらほら見て無い回とか混ざってきてるし。
 
 
 はい、そんな感じです。
 駄目駄目です。
 誰だよ、最近調子いいみたいなこと言った奴は。
 今日の日記でマシなのは、タイトルだけよタイトルだけ。
 秋流し。
 なんかどっかで似た言葉を聞いた気がするよ、オ○シロ様。
 はい。
 お終い。
 
 
 
 P・S:
 えっとアニメの感想がブララグと地獄少女ふたつの揃い踏みということで、すっかり感想の文章が荒んだ
 感じになってたりグロかったり暗かったりアレだったりして、筆者の精神衛生が気遣われるところでは御座い
 ますけれど、そんなものは当人のやる気(の無さ)次第でどうとでもなることで御座いますれば、皆々様に
 おかれましては、優雅で慎ましやかな、乙女の園に咲く一輪の花のような安らかなお心持ちであらせら
 れますよう、謹んでお望み申し上げております。
 いやべつにわざわざいうことじゃないんですけどね、ほら、あれ? 気分とか? 
 間違ってもマリみてOVA発売が近付いてるのを意識してたりとか、してませんから。
 べ、べつに当てつけでブララグとか見てるわけじゃないんだからね!
 わ、わた、わたしだって普通にお上品にできるんだから!!
 なんかもう、自分がなにをやりたいのか素でわかりません。
 ごきげんよう、みなさん。
 私はもう、駄目です。 (大の字でひっくり返りながら)
 
 P・S2:
 えー、来る10月28日土曜日午後11時30分より、恒例のチャット会を執り行います。
 秋の夜長のお話会ということで、まぁ、ほんとうに、ほんとうにもう適当にしていらしてくださいな。
 なんかもうほんと適当です。まったりです。夜は長ければ長いほど、いい。
 とかいいつつ最近私のやる気度に反比例して睡魔のやる気がUpしておりますので、気付いたらなに言っ
 てんのかわかんないくらいすっかりアレになってたりするかもしれませんが、そのときはひとこと、「帰れ。」と
 、優しく諭すように仰ってくだされば、管理人冥利に尽きます。 (素晴らしい管理人です)
 では、お待ちしています。
 
 
 

 

-- 061021--                    

 

         

                                    ■■ 救済地獄 ■■

     
 
 
 
 
 『あれは、決して水面に浮き上がることの無い、うたかたの影。』
 

                         〜地獄少女 二籠 ・第二話・弥生の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 まどろむ息遣いが聞こえる。
 聞こえた寝息の中に溺れている。
 手を伸ばした先で無を掴み、無の中でさらに手を伸ばす。
 ゆるやかに水温に靡いていく体温に見切りを付けて、助けて助けてと絶叫する。
 走り出した先にまで響くその助けを求める声を、ただ聞いている。
 なぜ、その声が聞こえるの。
 どこまでも広がっていく虚しい叫び。
 そしてそれは必ず私の元へ。
 抜けていく力をあらん限りの力で拾い集めて響かせる声が涙でかすれていく。
 その涙が触れる限りしか、無い。
 闇に溶ける濡れ髪を辿る希望に賭けても、その先にあるのはいつも変わらぬ闇ばかり。
 体の上を這いずり回っても、絶対にそこからは抜け出せない。
 夢ならば、はやく醒めて。
 そして、その叫びによって、再び夢の中に目覚めていく。
 誰か、助けて。
 
 
 
 ++ うたかたの湧きし息吹の源は
 
 
 ◆
 
 あのとき私の目は、死んでいたと思う。
 たぶんきっと、自分が今なにをしているのかも、わかっていなかっただろうし、勿論自分の目が死んでいる
 ように見えていることも知らなかっただろう。
 なにをやっているのだろう、という疑問さえ無かった。
 ただただ、やるべきことをやって、体を動かし、話し、そしてそのまま疲れていっただけだった。
 そうしている自分を、なぜ感じることができないのだろうと、ただそればかりをその代わりに考えながら、
 ひっそりと誰からも孤立し、閉じていっていた。
 なにも見えない、なにも聞こえない。
 目の前に広がる人波の流れも、話しかけてくる人の声も視線も、みんな頭の中の映像を裏返しただけ
 のような、ひどく現実感を欠いたものでしかなかった。
 声をかけられたときなんと答えたのか、その一言一句まで思い出せるのに、その言葉のひとつひとつが
 誰が言ったものなのかが、わからない。
 ただどこかから聞こえてくるその声を、ただ聞いて、そして覚えていただけだった。
 そう。
 言ったことを覚えているんじゃない。聞いたことを覚えているんだ。
 そんなことを考えながら、ふと気付いたら、まだ私はこうしていた。
 もう随分と時間が過ぎて、なにもかも終わっていると思ったのに。
 まだ私は、ただただ無意味に立っていた。
 
 父と母が、落ちぶれた活気を響かせて動いていた。
 行方不明になった、妹。
 それを探すために、今こうして家族揃って街頭でビラを撒いている。
 父と母は、必死だ。
 ほんとうにそのまま死んでしまいそうに、ただ力を浪費していくだけのその姿が、どんどんかすれていく。
 こんなビラを撒いたって・・・
 受け取ってくれる人すら稀だというのに・・・・
 こんなの・・・意味無いじゃない・・・・
 ただビラを撒いて必死になってる、その事自体にしか意味はないじゃない・・・
 父も母も、なにかをせずにはいられなかった、ただそれだけの理由からこうしてビラを配っている。
 ほんとうはもう、父も母も、妹を見つけようとなんてしてない。
 あのふたりはもう、妹を探すという行為自体に囚われてしまっている。
 逃げてる・・・よね・・・・お父さん・・お母さん・・・
 絶対に見つからない方法だとわかっているのに、それなのにそれを続けるのは、それ以上の事をしたく
 無い、これ以上自分達の生活を壊したくないと、そう思っているからに他ならない。
 ビラを配って、そして全身に染み渡る疲労と絶望を持ち帰って、そして家の中でゆっくりと悲しみに抱かれ
 て安らぎを得たいだけなんだ。
 わかってる・・・わかってるよ・・・・・
 誰も・・・・誰もお父さんとお母さんを助けてはくれなかったから・・・・なんだよね・・・・
 ビラを配ったって、受け取ってくれるのは今日みたいな配っている私に興味のあるような人達ばかり。
 そして時々、ビラの内容に興味を持ってくれる人が居ても、実際その人達ができることなんて、ほとんど
 あり得ない妹との邂逅を知らせるか、或いは励ましの言葉を与えるか、くらいだけ。
 あとは全部、ビラを配る私たち3人がやらなければいけない。
 どう考えたって、無意味。
 雑踏に踏み千切られる無数のビラ達の聞こえない叫びが、地響きを立てて這い上がってくる。
 
 だから、逃げた。私も。
 
 振り返るとそこにはいつも疲弊した父と母の顔があった。
 それを見つめればいとも簡単にその逃走の資源を貯めることはできた。
 『私も、頑張らなくちゃ。』
 這い上がってくるビラ達の断末魔を受け入れ抱き締めて、そしてそれを活力にしてきっと立ち上がる。
 もう、慣れた。
 もう何度も何度もしてきた、簡単なこと。
 そうして、踏み千切って貰うためのビラを撒く道を延々と歩き始める一歩を踏み出した。
 まだまだ、行けるわ。
 行ける・・・・はず・・・・・
 
 
 みしり
 
 
 なにかが、破れた。なにかが漏れて沸き上がってきた。
 
 
 『なに?』
 
 
 皮膚の内に初めからあるなにかが、ごぼりと音を立てて、聞こえた。
 
 
 
 ◆◆
 
 沸き上がるうたかた。
 その影にあったものは、その影自身だったのかもしれない。
 妹のすみれの部屋から、それは聞こえた。
 私は、なにも知らない。
 すみれが消えたということしか、知らない。
 それなのに、その部屋にあったそれは、すべてを教えてくれた。
 おまえは全部、知っている、と。
 いつのまにか湧いて出ていたうたかたの影から、それはひっそりとすべてを語り出す。
 妹は、もう死んじゃってるんだよ・・・・
 その声を聞いている私がいる。
 その声は、誰の声?
 それを知らない私は、居ない。
 すみれは、殺されてる。そして、殺した相手を恨んでる。
 だから私を地獄通信に導いた。地獄少女を教えてくれた。
 
 鮮明に、なによりも激しく、私は私を感じた。
 
 すみれの声が聞こえるよ。
 すみれが・・・すみれが・・・・・恨みを晴らしたいと・・・・!
 ぐったりと沈んでいく体から抜け出していく力を見送りながら、なによりも熱く魂だけを感じていた。
 これは、光明。
 絶対に見てはいけない灯。
 その明かりを灯せば、そこにできる影はどうしようも無く巨大なものになってしまうのだから。
 あの子はもう殺されてる、だからビラなんて撒いたって無意味、必要なのは恨みを晴らすこと、それだけ
 が、それだけが、私たち家族が唯一前に進むことのできる方法なんだ!
 なんという、恐ろしい誘惑。
 そして、なんという暖かい抱擁。
 私たちが今一番直面している問題は、すみれが居なくなったことでどうしようもなく壊れてしまった私たち
 家族のことよ。
 お父さんとお母さんは、必死に妹を捜すことで、後ろ向きで先行きの無い連帯感を得て、そしてそれと
 心中することですべてを諦めようとしてるだけなのよ。
 そんなの、おかしいじゃない!
 私たち、まだ生きてるんだよ!
 すみれが居なくなったって、私たちは私たちじゃん!
 私たちまでこの社会から、世界から消えてしまうことの、なんの意味があるっていうの!
 私は・・・私はもっと・・・・もっとちゃんと生きたいよ。
 すみれを探すにしても、もっとちゃんと考えて、計画立てて、現実的具体的にしっかりやってこうよ。
 なんでこんな刹那的にならなくちゃいけないのよ! どうしてお父さんもお母さんもそんなに疲弊しちゃっ
 てるのよ!
 なんにもしてないのに、ただただ疲れることに酔ってるだけじゃない!!
 
 
 
 このままじゃ・・・・私・・・・・・・・すみれのこと・・・・・・・・・・・・怨んじゃうよ・・・・・・・っっ
 
 
 
 お父さん、お母さん。
 もう、自分達は生きてるって事を言うためだけに生きるのはやめようよ。
 ちゃんとしっかり、生きようよ! そんなこと言ってる暇も無いくらいに生きようよ!
 そうじゃないと、私もう・・・・ほんとうに・・・・・
 駄目・・・そんなこと・・・・
 そう・・私が頑張らないと・・・
 私だけでも、頑張らないと・・・・・
 だから、私にできる最良のことを。
 家族のため、私のため、そして・・・・すみれのために・・・・・・
 だから。
 私は、こう思うよ。
 
 
 
 『すみれ・・探しても無駄かも。』
 『みんな遠慮して言わないだけよ! ほんとはみんなそう思ってるわ!』
 
 
 
 沸き上がるうたかたの元に沈む、冷たくて暗い、閉じられた私の中で、叫んだ。
 
 
 
 
 ◆◆◆
 
 『どうして繋がらないのよ!! すみれの怨み晴らしてよっ!!!』
 
 
 私があのときすみれを置いて帰らなければ、こんな事にならなかったのに。
 悪いのは全部私。
 その思いが沸き上がらせる無数のうたかたの影が、激しく私を沈めていく。
 私が・・・・私が・・・・・私がっ
 すべてを私に収束し、すべてが私を十字架に打ち付け、そして沸き上がるうたかたで貫かれ、
 零れた黒い血で綴った私の罪状を読み上げることで、すべては解決する。
 絶好の、チャンス。
 『私のせいで、私のせいで、すみれは。』
 ぞくぞくと膨れあがる罪悪感の肌触りだけは、見てはいけないもの。
 それを見てしまえば、すべては一巻の終わり。
 ただただその罪悪感に身を委ねることこそ肝要。
 悪いのは私。だからそれを私は正すことができる。
 いや、正さなければいけない。
 これが、私の手にすることの出来る最良の武器。
 すみれの怨みを晴らす、それこそがこの状況を打開できる最適な手段。
 そして再び地獄通信にアクセスしようとした。
 だが、アクセスは、叶わなかった。
 父と母は言った。
 『すみれはきっと生きてるさ。私たち家族が信じられなくて、一体誰に信じてくれって言うんだ。
  だから諦めるな。諦めたら負けだ。』
 『そうね。弥生、頑張りましょう。』
 嘘ばっかり。
 いや、父と母はそう信じてるんだから、嘘じゃないのかもしれない。
 けれど、父と母の生きていると言ったそのすみれは、父と母だけの中で生きているすみれ。
 そのすみれを追いかけ続けてることだけに、逃げ込んでいるだけ。
 本当のすみれがどうなのかなんて、関係無いんだ。
 なんでお父さんとお母さんはこんなに・・・・・・こんなに・・・・・・・・・・・馬鹿なの
 もう・・・疲れた・・・
 疲れたよ・・・
 
 なんのために地獄通信にアクセスしようとしてるのか、わからなくなっていた。
 なんのために私は、すみれの怨みを晴らそうとしてるんだろう。
 どんなに私が家族のことを思ったって、お父さんとお母さんは全然わかってくれないんだ。
 私のことだって・・・・ほんとは・・・・・・もう・・・見てないんだ・・・・・
 ぐにゃりと歪に膨張した水泡の群が、すっかり私を覆っていた。
 なにも見えない・・なにも聞こえない・・・
 
 『ここから、出して・・』
 
 
 いいよ、お父さん、お母さん、わかったよ。
 
 『ごめん、私、どうかしてた。』
 
 頑張って、ビラを撒き続けるよ。
 一緒に逃げよう、お父さん、お母さん。
 
 
 ・
 ・
 ・
 ・
 
 
 『ごめんねすみれ。なんとかしてあげたいけど、なにもしてあげられない・・・』
 
 『ごめんね・・・・・』
 
 
 あなたの怨み・・・・晴らせません
 
 
 
 
 
 『怨みを晴らすのが幸せなのか、忘れるのが幸せなのか、あの子にとっちゃあどっちなんだろうなぁ。』
 
 
 
 
 
 
 +++ そして、水面へ
 
 
 
 
 ◆◆◆◆
 
 『どうして私にだけ? どうしてお父さんお母さんじゃなく私なの?! どうして私にだけ!!』
 
 
 滾々と湧き続ける残酷な泉のように。
 燦々と降り注ぎ続ける冷酷な日差しのように。
 
 駄目。駄目。無理よ。
 怨みを晴らしたくても、ここから出たくても、お父さんとお母さんは逃げ続けてしまうんだから。
 どんなに追いかけたって、どんなに頑張ったって、絶対私を、家族のことを考えてくれない。
 でも。
 でも。
 でもね、すみれ。
 私、それでも諦められなかったの。
 だって私が、私がしなかったら、ほんとうにこの家族は終わってしまうもの。
 もう本当に、お父さんとお母さんはすり減って死んでしまうだけなんだもの。
 なんとかしなくちゃ、なんとかしなくちゃ、なんとかしなくちゃ!
 そのためになら、私、どんな犠牲を払ったっていい。
 ちゃんと、ごく普通の家族のように、少なくとも今までのように生活できる毎日を得るためならば、
 私はどこまでもいつまでも頑張れる。
 でも・・お父さんと・・お母さんは・・・・・・
 だから、
 
 もう、疲れることにも、疲れてしまったのよ・・・・・私・・・・・・
 
 ぷくり。
 うたかたがひとつ湧いた。
 その影は、一体どこに。
 私には、その影の中から聞こえてくる声しかわからない。
 すみれ・・・・・・すみれ・・・・・・・
 なんで・・・私だけ残して・・・・・消えちゃったのよ・・・・・
 あなたが居れば・・・・もしくは・・・・・・・・・・・・・・・あなたが死んでいるのが明白ならば・・・・・
 そうすれば・・・お父さんとお母さんだって・・・いやでも家族のことを・・・目の前のことを・・・・・・
 だから・・・・
 だから・・・・・・
 私は・・・私は・・・・・・・・・
 
 もう死んでしまっているあなたのその姿を、あなたの失われた存在を、感じたい。
 
 わかったわ・・・すみれ・・
 
 
 
 
 
 
 『だから、私なのね・・・すみれ。』
 
 
 
 
 
 
 ++++ 『冷たい・・』
 
 ++++ 『暗い・・』
 
 
 
 
 まっさらにひとりの空を見上げたとき、感じていた閉塞感から解き放たれていた。
 すべての中のひとりから、ひとりがすべてのひとりへと。
 そう・・・そこに居たのは・・・やっぱり私だったのね・・
 感じているのは私・・・・・・全部・・・全部・・・私・・・・
 だから・・・感じる・・・・
 すみれを・・・・・・死んでいくすみれを・・・・・・死んでいるすみれを・・・・・・
 すみれの悲しみを・・・・すみれの苦しみを・・・・・・・すみれの絶望を・・・・・・・
 すごい・・・・・・・・・すごいわ・・・・・・・・
 みんな・・・・・全部・・・・・・・私だ・・・・・・・・それは全部・・・・・私なんだ・・・・・・
 
 『冷たい・・』
 
 消えゆくうたかたの影。
 影そのものでは無く、影の中に潜むものばかり見ていた。
 だから、怨めなかった。
 ただただ、辛かっただけ。
 主体では、無かった。
 でも今は、わかる。
 影は、私。
 私を、みつけた。
 お父さんが、お母さんが。
 なんで、なんで。
 閉塞感。
 絶望。
 冷たくて、暗い。
 そこから抜け出すには。
 すみれ・・・・すみれ・・・・・
 私は・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 『人を呪わば、穴ふたつ。』
 
 私を・・・・・・・・連れて行きたかったのね・・・・・
 私を・・・・・・・・連れて行ってくれるのね・・・・・
 なら、怨んであげる。
 消えてしまったあなたを。
 消えてしまったすべてを。
 
 沸き上がり続ける愛に、憎悪を、込めて。
 
 
 
 『怨み、聞き届けたり。』
 
 
 
 
 
 
 
 残酷な泉より湧き出づるうたかたを照らす、冷酷な日差しが作りし影が、ただただそこで息づいていた。
 
 すみれ。
 すみれ!
 
 あなたの死を知りつつ探すあなたの生の可能性を、すべて、私の生の活力に使わせて貰うわ!
 
 
 ありがとう。
 そして。
 地獄で、逢いましょう。
 
 
 
 
 
                                ◆ 『』内文章、アニメ「地獄少女」より引用 ◆
 
 

 

-- 061019--                    

 

         

                                     ■■ 空×海 ■■

     
 
 
 
 
 ブララグ2第3話、観ました。
 
 ・・・・・。
 うん、なんか、今までほんとぼけっとしてた。
 ていうか昨日観て、それまでずっとなにがなんだかわからないような、そんな感じ。
 あ、もう一日経っちゃったんだ、みたいな。
 うん、もうね、すごいよ。すごすぎる。
 この回を以て、私の中でのブララグの価値が、1ランクアップしました。
 ていうか、このお話があるのとないのとでは、全然違う。
 第3話だけだったら、たぶん私が観たアニメの中のベストエピソードのひとつになると思う。
 ごめんね、ベストとか言いながら複数あって。でもひとつに絞れないの。ごめん。
 あ、そだね、ぼちぼちちゃんとお話を始めましょうか。
 うん、なんか、ほんと気が抜けちゃっててね、はふーって感じなの。
 あー、なんか、今、ここに居る気がしないよ。
 なんかもう、あっちの世界にすっかり連れていかれちゃったみたい。
 今こうして文字を打ってるのはもうなんか、残骸。もうどうにでも、して。
 
 さて。切り替え。
 切り替え、とか言って切り替えられるようなものなら最初からこんなに焦ったりしてませんけど。
 でもなんとかそうしてかないと、ほんと呆気に取られたまま流れていってしまうような気がするので、ここは
 精一杯全霊を込めて切り替えていこうと思う。思います。ます。
 あ、まずは、昨日書いた「青い空の下の血の海の上で」ってものがあるってこと、知っておいてください。
 もしご興味おありの方は、まずそちらから読んで頂くと、そこそこなにかあるかもしれませんし、全くの
 無駄かも知れません、いやでも私のなんか必死な感じは伝わってくると思います。
 割と念を込めたからね。 (怨念
 で、はい。
 しびれました。
 涙が出ないほどにしびれました。
 なんですか、あれ。
 形容しようという気も、溜息つこうとする気も、まるでどこか知らない世界のものの如くにあり得なかった。
 ただただ、観て、感じて、止まった。
 そう、止まっちゃったんです、私の全部が。
 そしてその瞬間の連続が、30分みっちりと続いて、そして今でもその残滓が私を覆ってる。
 って、形容しとるがな。おいおい。
 
 ごめんなさい。
 すっかり、なんて書いていいのかわからなくなってます。
 ヘンゼルとグレーテルのこと、書きたくて書きたくて、たまらないです。
 そしてそれ以上に、あのふたりに、感じました。もう駄目です、あり得ないあり得ない。死ぬ。
 必要なことは、全部昨日書きました。
 だから今日はそれで書かなかったことを書きたいと思い、昨日のを改めて書くことはしません。
 えっと、だから、どう書けばいいのやら。なにを書けばいいのやら。
 ほんとうに、切り替えます。
 
 
 ◆
 
 
 
 
 ああ、駄目だ。駄目です。
 今3分くらい、沈黙して一生懸命に頭の中に理屈を並べ立て構成して秩序立てて感情を一本すっと
 通してテーマと解答を用意して最後に溜息のひとつでもくれてやろう、とかごにょごにょやったんですけど。
 全然駄目でした。無理無理。
 もう、頭真っ白です。やっちゃった。
 頭の中に一文字刻むたびに一文字ずつ消えていくみたいな、そんな絶望的なあれです。
 ということで、華麗に無様にしっかり路線変更。
 今日もきょうとてまったりとぶっちゃけて好き放題にのんべんだらりと書き殴り大会にします。いぇー!
 ああもう、あの笑顔が、いい。
 あの笑顔で、全部、完全。
 ヘンゼルかグレーテルかどっちでもいいけど(最終的に昨日の書いた感想ではそんな感じで書いた)、
 あのにかーっと口が裂けるくらいに笑う、あの瞬間、私の時間が果てしなく止まった。
 気持ちいんだよね、きっと。なにもかも。
 私には勿論あの子達と同一では無いのだから、あの子達のその快感自体は決してわからないけれど、
 ただそういった、絶望的なまでに無作為な快感というのがあるのはよくわかる。
 そう、絶望的な、ね。
 あの子らは笑いたくて笑ってるわけじゃなくて、気付いたら笑ってるし、人は誰しもみんなそう。
 なぜ笑っているんだろう、という疑問は既に快感に支配されているんだよね。
 笑うことには意味も動機も無く、ただ笑うべくして笑っている。
 人を殺す快感、それはその快感を得たくて人を殺すのでは無く、人を殺したから快感だった、というだけ
 の話。
 人を殺したくて殺すのじゃなく、気付いていたら人を殺していただけ。
 それを、殺したくて殺していたと言うのは簡単、けれど必ずあの子達は、そして誰しもがそのことを知って
 いる。
 なぜ、僕は人を殺したいと思うのだろう。
 それは、そうすることで、此処に生きていることができるから。
 必ず、それが嘘だということを、そしてそう言わなければ自ら生き場所を失ってしまうことを知っているから、
 あの子達は、そして誰しもが、必死にその動機をそのどうしようも無い欲望に求めていく。
 殺したいから殺した、それだけなんだ、と。
 そして、そうやってぐるぐると足掻いている自分がただ生きているのを、感じていく。
 
 なんでヘンゼルは、自分が死ぬときに泣いたんだろうね。
 それほど簡単な問いは、無いよね。
 悲しかったから。悔しかったから。
 ほんとうに、それなんだよね。それ以外のなにがあるというのか。
 百万言を要して、私たちはそのことについて語ろうとし、そしてその語った言葉は、すべてそのことに収束
 していく。
 ヘンゼルの悲しみとは、悔しさとは、なにか。
 あのヘンゼルの流した涙と、そして倒れ伏す地面のぬくもりと、そして溶けていく冷たい血の感情が、
 それがあの画面の中にすべてを賭けて詰まっていた。
 あー・・・、これは・・・・・これは・・・・・
 一体あれを観た人達は、なにを感じることができたのかな。
 一体あれを、どういう風にして語ろうとするのかな。
 もう、もう、堪らない、なんであんなに、ヘンゼルのあの涙は・・・・すごいの・・・・・
 第二話のグレーテルの泣きじゃくるシーンと、そして第三話のヘンゼルの涙は、あるところで同じもの。
 悲しくて、悔しくて、その感情は彼ら以外の者のそれとなにも変わらない。
 けれど。
 けれど。
 
 だから、悲しくて、悔しくて、画面の中のヘンゼルという子供は泣いていたんだと思う。
 
 あー。
 なんかもうほんと、これだけでわかって欲しい。
 それ以上説明したくて堪らないし、誰にも通じないことを憂えて言葉を書き加えたいけれど、ほんとうに
 もう、これだけで、私は我慢しなければいけないと思う。
 これ以上、書いては駄目。
 わかって欲しい。
 その感情は、その切実な想いが、強く、強くあの倒れたヘンゼルの冷たい背中に溶けていくから。
 あの画面の中の瞬間が、あらゆるものに繋がっていると思うから。
 
 そしてグレーテルの最後に見た空は、綺麗な青空だったんだよね。
 泣くことなんて、全然無いよ。
 だって、こんなに世界は美しいのだもの。
 グレーテルはほんとうにそうだった。
 ヘンゼルもまたそうだった。
 泣いて笑って、笑って泣いて、それは全部同じこと。
 悲しくて悔しくて、でもその泣き腫れた瞳が見つめた世界は、堪らなく青く綺麗で。
 抱き締めて、欲しかったんだよね。
 どんなに虐待されようと、どんなに迫害されようと、どんなに生き場所を奪われようと。
 それでも、それを怨み憎み殺してやると思いそうしても、それでも、抱き締めて欲しかったんだよね。
 そして、グレーテルは、気付く。
 そうよ、私たちは最初っから、この青空に抱かれていたわ、と。
 ヘンゼルもまた、気付いていた。 
 ヘンゼルとグレーテルは、同じひとつのもの。
 愛も憎しみも、同じひとつのもの。
 憎悪は究極の求愛。
 そして。
 ふたりはそれぞれ、全力でそれらが別のものであろうと、強く願っていた。
 愛は愛、憎悪は憎悪。
 どうしてただただ愛してくれなかったの?
 どうしてただただ憎悪を以て殺し尽くすことができなかったの?
 ヘンゼルとグレーテルは、血と闇の中で蠢いている。
 それをその他の人たちは、ただ冷酷に見つめている。
 けれど、その両者は共に、青く綺麗な空を見上げている。
 その青空だけは、その綺麗な空だけは、両者が共有しているもの。
 それが、すべてなんだ。
 
 
 ああもう、なんだか全然うまく語れないや。
 もういいです、詳しくは昨日の日記参照。丸投げします!
 昨日の文章の方がわかりやすいし、正しいし。
 っていうかほんと私って後書きって駄目だねー。本文を台無しにするしか使い道無いのばっかり書くよ。
 ってことで、さらに加速度的にざっくばらんに華を咲かせていきますかまったりの華を。
 ええと、まぁ、うん、とにかく今回のお話は双子に尽きます。
 あらゆるレベルでじっくりと観察してみて、そしてどうしようも無いくらいに感じて、そしてもりもりと考えて
 みたりすると、もうほんと大変なことになります。
 カニバリズムだネクロフィリアだいう穏健で無い言葉の中身を、如何に充実させるかってことでもう勝負は
 始まってて、そしてその行き着く先にあるのは、それらを含みまたそれらによって構成された、その「言葉」
 の領域を遙かに越えた境地に辿り着けると思う。
 そしてそこに辿り着いたときに、初めてそれらの言葉が魂を以て自分の中に入ってくると思う。
 そっか、カニバリズムってそういうことか、ネクロフィリアってそういうことかって。
 そうなれば、そんな言葉どうでも良くなるし。
 そしてその魂だけになった言葉をひっさげて、一生懸命に全力疾走で、あの双子達の表情に追いつかな
 くちゃいけないんです。
 言葉を理解したというのは、彼らの表情を見つめることができるようになった、というだけのこと。
 見つめて、それでどうなるのか、というのが一番大事なコト。
 やっばいよ、あの子達。ほんと、すっごいよ。もう大変だよ。涙も出ない。
 涙が出ないのは、あの子達と私との隔絶の凄まじさとそれを作ってしまった自分達への絶望と憎悪と、
 それとなによりもそれを越えてそれでも青い空に向かって生きようとするたゆまない自分の精神力のせい。
 あの子達を見れば見るほどに、私は私を知っていく。
 絶望の元、絶望に絶望するときがやがて訪れる。
 その先に顕れるのは、希望を見続けている自分そのものの姿。
 それでも私は、生きている。
 青い空を見つめ続けることが、それを見つめ続けている者が居る場所よりも、遙かに大切なことと知る。
 違うね。
 大切とかそういうことじゃないんだね。
 グレーテルの、あの最後の笑顔、それが、それそのものが、そうなんだよね。
 グレーテルが、笑ってる、ヘンゼルが笑ってる。
 それがどれほど凄惨ですごいことなのだとしても、それは必ず、当たり前のことなんだ。
 当たり前以外の、なにものでも無かったことなんだよ。
 ただ普通にグレーテルはヘンゼルはそれでも笑っている。
 ほんとうに笑顔で、心底嬉しくて。
 私が泣けなかった本当の理由は、それ。
 いえ、違うよね。
 泣けなかった、のじゃなく、泣かなかったんだ、私。
 だって。
 ヘンゼルとグレーテルは、ただ幸せそうに、笑っていただけなんだもの。
 だから私も、笑ったよ。
 一生懸命に、青い空を見上げながら。
 まだまだ私は、あの子達の境地には達せられないみたいです。
 一生懸命て、全然普通じゃないし。心底じゃないし。まだまだまだだよ。
 
 だから、諦めない。
 
 それが、たぶん、あの子達を見つめる人達のすべてに託されたものなんじゃないかと、私は思う。
 もしかしたら、あれを見た人の中には、ベニーと同じく、あの子達がああなってしまったことを仕方が無い
 こととして見た人もいるかもしれない。
 それはその通りだし、間違ってはいない。
 けど、だからなんなの? 私は敢えて言う、それがヘンゼルとグレーテルを産み出すことに繋がるのじゃ
 無いか、と。
 それはただ、どうしようも無い現実というものの存在を野放しにして、すべてをそれのせいにして自分は
 だから仕方が無い、仕方が無いから自分だけ護って生きればいいんだ、という自己弁護にしか過ぎな
 いんじゃないのかな。
 ヘンゼルとグレーテルという画面の中の「子供」が、私たちに魅せてくれたものは、私たちが今いる場所の
 中で自分を護り抜くことじゃなく、その場所から見上げたものを綺麗と真に言えるようにならなければ
 いけない、ということとして、私は受け取ったよ。
 あの子達の地獄を知れば知るほどに、あの子達を見ていることしかできないロックの苦痛を知れば知る
 ほどに、そしておそらく同様になにもできないかもしれないそれを見ている自分の想いを知れば知るほど
 に、それは鮮やかに私の中に息づいていく。
 どうすれば、あの子達を幸せな、みんなと同じ場所に生きさせてあげることができるか。
 そのことを真摯に、そしてなによりも現実的に考え行動することのみに、あの第三話のすべての価値が
 あると、改めて、敢えて私は言いたいです。しつこいけど。しつこいですよね。執念です。よろしくです。
 そういった思考や行動を魂に持つ理想を掲げることの覚悟、それが持てないならさっさと諦めてベニーの
 ように安らかに生きろ、ああそうさせて貰うよ、って違うよそれは。
 そんな覚悟そうそう持てるもんじゃないでしょ、でもだからそれは持たなくてもいいものというのは、たんなる
 自己正当化じゃん、今持てないんなら持てるように頑張る、それでも駄目でもでも頑張る、死ぬまで
 頑張る。
 それだけでしょ。覚悟なんて言葉、むしろいらない。
 ていうか。
 ヘンゼルとグレーテルは、最後の最後まで、諦めなかったでしょ。
 諦められないもののひとつやふたつ、無ければ最初から、人なんて生きて無い。
 だからたぶん、生きてる人はもう、それだけでそういった覚悟はできてるんだよね。
 だから今更、覚悟なんて言葉、無くてもいい。
 覚悟って言葉に、逃げてる暇は無いよ。
 これはそういう、お話。
 そして、これが、このお話に贈る、私の涙。
 
 
 
 はい。
 なんか後半は読み飛ばして貰っても一向に構わないことばっかり書いてしまいましたけど、満足です。
 すまん・・私の我が儘に付き合わせてしまったな。 byバラライカの姉御
 ということであとはもう姐さんとかレヴィさんとかエダさんとかで叫んでしまうことにします。
 さて、今回のMVPはやっぱり暴力シスターのエダさん。またかよ。
 いつのまにかエダさんはレヴィさんの友達って感じで、どつき合いながらもレヴィさんも満更でも無いようで、
 姐さんの介入で賞金も賞金首も賞金首の持参金もすべてパァになって、すっかり御機嫌斜めで、
 子供並の罵声並べ立ててふたりで罵り合っても、お腹が空いたのでやめました、みたいなノリであーあ、
 と。
 そして怠惰で平和的お流れ的に解散、ということになった途端にエダさんをひとりドンパチの中に置いて
 帰ってしまうレヴィさんの投げやりな感じに乾杯。エダさんカンカン。あはは。
 そしてひとりになったエダさんはグレーテルに銃突きつけられてバンザイ。なんちゃー隙だらけなお人や。
 でもグレーテルに逃がし屋を紹介しろと言われて、しっかりレヴィさんとこのラグーン商会を紹介しちゃう
 お茶目っぷり。
 うわーひでー。
 レヴィさん達が姐さんにつけ狙われることを充分想定したであろう上での、このエダさんの嫌がらせっぷり。
 うーん、地味に最高。ていうか最低だよエダさん嫌すぎです。
 あとは、バラライカの姐さんの「跪け!」とか色々ありますけどね、なんかもう、
 年かなぁ・・・・・少し・・・少し、疲れた・・ byバラライカの姉御
 、な感じですので、もういいですか? いいですよね?
 
 あと、ヘンゼルが姐さんにおばさんって言ったときは、もう駄目だと思いました。
 あれでヘンゼルの運命は決まったと言っても過言ではありますまい。 (過言)
 
 
 というところです。
 私がこのお話に感じたものの重みはわかって頂けたでしょうか?
 とそんなことを訊いている時点で、もう駄目な気もしますけれど、それでこの第三話自体の魂が汚され
 るワケでは無いので、そんなね、私程度が下手を打ったって、作品そのものは万事安泰ですよ、
 そう作品はね、作品の方はね・・・・・・・     orz
 なんかもう、なにを言ってももう駄目な気がしてきました。
 だが、諦めない。
 言うのはタダだしねー。 (言い逃げ)
 
 
 
 

 

-- 061018--                    

 

         

                         ■■青い空の下の血の海の上で■■

     
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 涙さえ、出なかった
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ◆ ◆ ◆ ◆ --
 
 
 
 --------
 ------
 ----
 
 
 
 
 
 
 
 
 運命って、なにかな -
 
 
 
 
 
 
 それはね、きっと生きるって意味さ。
 あら、それじゃあ私たちそのものが運命なのかしら。
 違うよ、僕たちが自分たちは生きているってことを感じることが、運命ってことなんだよ。
 それは、面白いかもしれないわね。
 どんなに笑おうとしても、笑えないとき。
 どんなに憎もうとしても、憎めないとき。
 気付いたら、そうだったよね、ねえさま。
 そうね、いつのまにか、そうだったわね、にいさま。
 
 ほら、あんなに人々が笑顔で歩いてる。
 あの人たちは、なにがそんなに嬉しいのかしら。
 よく言うよ、ねえさま、僕たちだっていつも笑っているじゃないか。
 楽しいときも、悲しいときも、死にたいときも、それでも生きたいときも、ね。
 ごらん、ねえさま、みんな誰も僕たちのことは見てないんだ。
 みんなそれぞれ、一生懸命に笑うために生きているんだ。
 それは違うわ、にいさま、あの人たちは笑っているから生きているって言えるのよ。
 あの笑顔が消えれば、あの人たちは死ぬわ。
 だから、みんな笑っているんだね。
 だから、みんな笑わなければいけないのよ。
 『どうして?』
 『どうしてですって?』
 
 『そうしたいからよ。』
 『他にはなんにもないの。そうしたいから、そうするの。』
 
 私たちが生まれ落ちたときには、既にすべてはそうだった、というだけ。
 誰もがみんな勝手に生まれて、勝手に生きていく。
 どうしてそうしたいか、だって?
 面白いね、ねえさま。
 ええ、にいさま、面白いわ。
 その質問は繰り返せば繰り返すほど、答えに牙を突き立てて自らそれに食らい付いて引き裂いてしまう
 だけ、ということが、全然わかっていないんだよね。
 答えはあっても、私たちにはなんの意味も無いものなのよね。
 だって、どうせ死んでしまうのだから。
 だって、どうせ生きているしかないのだもの。
 苦痛も快楽も、希望も絶望も、そして生と死も、おんなじ。
 僕たちは、幸いにも殺すことしか学んでこなかったけど、でもそれしか無いという意味でなにも変わらない。
 他の人たちは、不幸にも生きることしか学んでこなかったけど、でもそれしか無いという意味でなにも変わ
 らない。
 殺しても殺さなくても、ほんとは同じなの、私たち。
 だから、殺すんだよね、僕たちは。
 だから、殺されるんだよね、私たちは。
 違うわ、にいさま。
 違うよね、ねえさま。
 僕たちは、生きていてはいけないから、人を殺すんだ。
 私たちは、生きたいから、人を殺さなくてはいけないの。
 
 
 
 
 
 
 
 だから、お話してあげるわ。
 私たちは、人を殺すのが楽しいの。
 だって、みんな生きたいでしょ?
 だから、殺すの。
 私たちは、生きたいから、生きるのが楽しいから、殺すの。
 生きていることの愉悦が、弾け飛ぶ肉片と吹き上がる血潮のぬくもりによって呼び覚まされてくるわ。
 必死に生きようと色々と考えたり戦ったりあがいたり、そうしてる人たちの笑顔を真っ赤に染めるのは、
 なによりも絶頂に近い行為だわ。
 考えただけで、死んでしまいそうよ。
 想っただけで、泣いてしまいそうよ。
 あの人たちの消えた笑い声が、地響きを立てて、私たちを貫いてくれるの。
 断末魔の御機嫌を伺うように、私たちはそのたびにいやらしい笑顔を魅せてあげる。
 あなた達のその暖かい血と肉と骨を、美味しく頂いたわ。
 うふふ
 まだまだ、足りないわ。
 食べて、貰って、奪って、吸って、貫いて、貫かれて、笑って、笑って。
 あなた達の命を奪った分だけ、私たちは生きることができるのよ。
 あなた達を殺した分だけ、私たちは生きなければならないのよ。
 そうよね?
 そうでなくちゃ、いけないわよね?
 だから、誰も、私たちを止めることはできない。
 私たちを、咎めることもできないわ。
 だから、話してあげましょうか? ねぇ、おばさん。
 私たちが『殺したあの男の話とか。』
 あの男は、随分頑張って生きようとしていたわ。
 懸命に叫んで、生き延びようと、諦めずに、必死に、笑おうとして。
 ふふ
 
 
 『僕は死なない、死なないんだ、だってこんなにも人を殺してきたんだ。』
 『いっぱい、いっぱい。』
 『いっぱい、いっぱい。』
 『殺してきてる。』
 『僕らはそれだけ生きることが。』
 『できるのよ。』
 『命を、命を増やせるの。』
 『私たちは never die、そう。』
 『永遠なのよ。』
 
 
 命が途切れる瞬間に見えるきらめき。
 生が終わる瞬間に聞こえるどよめき。
 目の前の暖かい血がやがて氷よりも冷たく目の前の体を凍らせていくのを感じるとき。
 ああ、いいわね、にいさま。
 この瞬間は、永遠に、決して終わらないわ。
 永遠に。
 永遠に。
 そう
 えいえんに
 
 終わっては、駄目。
 終わったら、死んでしまうもの。
 死にたくないわ。
 生きたくないわ。
 もうなにも、なにも私たちの前から消えないで頂戴。
 もうそれ以上、それ以上私たちの目の前の世界が一杯にならないで頂戴。
 私たちの場所が。
 私たちの命が。
 無いの。
 どこにも、無いの。
 だから、創ろうとした。
 創るために、殺した。
 奪って、生きようとした。その場所を創ろうと、した。
 
 ああ・・・・
 もう・・・・生きる場所が無いのを・・・証明し続けるのは・・・・・嫌
 
 ・・・
 ・・・・・
 こんなに・・・泣いてるのに・・・
 こんなに泣いて・・・泣いて・・・・いっしょうけんめい・・・・ないているのに・・・
 どうして・・・もう・・・動けないの・・・
 わたし・・・まだ・・・・殺せるわ・・・・・
 ほら・・・・見て頂戴・・・・・私の体には・・もうこんなに命が・・・・奪った命が沢山あるのよ・・・・
 ね・・・お願いよ・・・・・見てよ・・・・私はこんなに殺せるの・・・・こんなに殺したの・・・・・
 ・・・・・
 ・・・
 
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まだ・・・生きられ・るの・・・・・に・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 水のように流れる青く白い空が、どこまでもどこまでも続いていた。
 体中に風を巡らして、潤う喉で光を奏でている。
 永久なるままに、原初が終焉であるように、どこまでも、いつまでも、遠く、果てしない、今、此処で。
 この青い空の下の血の海の上で、僕は謳い、踊る。
 一体、僕はなにを謳っているのかな。
 この空の美しさを? この血の海の残酷さを?
 それとも、僕の魂の愛しさを?
 ナンセンスだよね、そんな問いは。
 僕は謳う。ただそれだけなんだよね。
 僕がなにを謳っているのか、それは周りの人たちが決めること。
 僕はその人たちの語る言葉の中で、ただ謳いながら踊るだけなんだ。
 天使の歌を悪魔が歌うのか、悪魔の微笑を天使が真似るのか、それは僕には関係ないことだ。
 でも。
 僕はいつもその中にいて、この青い空の下にいて、血の海の上にいる。
 だから僕はいつも、そこで踊らされ、謳わされている。
 僕が天使か悪魔なのか、それは周りの人が決め、そしてその人たちのその選択は、僕の歌と踊りが決め
 ている。
 僕はただ踊っている。
 ただ、それだけなのに。
 それだけなのに、なにもかも、僕が、決めているんだ。
 そしてその僕の決定は、一体誰が僕にさせたことなんだろう。
 僕はただ、謳いたかっただけなのに。
 
 おにいさんは、いい人だね。
 だからおにいさんに、僕の歌と踊りを聞いて観て欲しいんだ。
 おにいさんが、全部決めてみてよ。
 僕は天使なの? 悪魔なの?
 教えてよ、おにいさん。
 僕は天使か悪魔かの、どちらかなの?
 僕はきっと、神様の玩具。
 天使も悪魔も、等しく人の視る神様の下僕。
 『どうして神様は、私たちにこんなにも冷たく当たるんだろう。』
 おにいさん。
 僕、知ってるよ。
 
 
 『他の子が、私たちの前に連れてこられて、泣いているその子を、バットで繰り返し叩いたそのときにね、
  大人たち、笑ってた。
  私もにいさまも笑った。』
 
 
 これは、輪廻。
 殺し、殺され、血と肉にバラされて、それを食べ、またバラされて。
 すべてはひとつ、ひとつはすべて。
 僕はねえさまで、ねえさまは僕。
 にいさまはわたしで、わたしはにいさま。
 僕で無いものなんてほんとは無く、わたしで有るものもまた無い。
 僕の肉片をねえさまが食べ、ねえさまの血潮を僕が啜る。
 そうすれば僕の肉片はねえさまになり、ねえさまは僕になる。
 そうすればわたしの血潮はにいさまになり、にいさまはわたしになる。
 だから僕は、ねえさまを殺す。
 だから私は、にいさまを殺す。
 ねえさまの肉片が僕になり、にいさまの血潮がわたしになる。
 冗談だよ、おにいさん。
 僕はねえさまを殺したりしないよ。
 だって。
 僕はもう、ねえさまなんだから。
 僕はもう、ほんとは世界そのものなんだから。
 そう、ほんとは、ね。
 だから、僕は人を殺し続けることしかできない僕を、心の底から憎んでるんだ。
 なんで僕は、殺さなければいけないの?
 僕はもう、こうして此処に生きているのに。
 僕はねえさまだけど、僕は世界じゃない。
 
 『そう、誰かを殺すことで、世界が廻り続けているのなら、私たちがここにいる理由も、またそれだけなの。』
 
 だから、わたしは死なないわ。
 だから、僕は死なないよ。
 
 殺すために生き、生きているから殺し、生きるために殺し、ただ、それだけ。 
 
 『僕はちゃんとここにいる。いつだってねえさまと一緒にいるんだ。
  だって僕らは永遠に死なない。
  ずっと続くリングの上で僕らはずっと殺し、これからも殺すために世界があり、みんながいて、僕らがいる。
  だから、僕らもう悲しくないんだよ。
  血の臭いも、悲鳴も臓物の暖かさも、今は大好きでいられる。』
 
 それが、生きるってことなんだから。
 あなた達の地獄は、僕達の天国。
 僕達の天国が、あなた達の地獄。
 僕たちは、それ以外の天国と地獄を知らない此処にいる。
 僕が殺せば、それだけ僕は生きられる。
 実に簡単で、そして幸せなことだよね。
 奪った命がすべて僕になり、だから僕は永遠に生きられる。
 生きることの快楽のすべてが、此処にあるんだよ。
 カニバリズムの根本。
 そして目の前に咲く笑顔を奪われた人の体は、最高に愛おしい。
 ネクロフィリアの極致。
 そこにある死はすなわち僕の生、ここにある僕の生はすなわちそこにある死。
 僕はだから、死の天使。
 僕たちの殺戮が産み成す神が、その醜い天使を生かしてくれる。
 知ってた?
 神様がいるから祈るんじゃないよ。
 僕たちが祈るから、神はいるんだ。
 そして僕たちが生け贄を殺して差し出すから、神様は嗤いながら顕れてきてくれるんだ。
 それが、僕たちの宗教なんだよ、おにいさん。
 そして。
 じゃあ、僕たちは。
 僕は。
 
 なぜ、祈ろうって、思ったんだろうね。
 
 
 
 『違う! 違うよ、世界はほんとは君を幸せにするためにあるんだよ。
  いいかい、血と闇なんか世界のほんの欠片でしか無いんだ。すべてなんかじゃないんだ!』
  
 
 
 そんな顔、しないでよ、おにいさん。
 泣かないで。
 僕は嬉しいよ。
 私は嬉しいわ。
 僕はこうしておにいさんみたいな人に抱き締められたくて、祈ったんだね。
 私はこうしておにいさんみたいな人に抱き締められたくて、殺してきたのね。
 ねえさま以外の人に抱き締められたの、初めてだよね。
 にいさま以外の人に抱き締められたの、初めてよね。
 なんて言ったらいいのかな。
 なんて言ったらいいのかしら。
 僕たちは、こうされることを目的として生きてきたのかな?
 私たちは、こうされることを目的として生き延びてきたのかな?
 そのために、みんなを殺した?
 そのために、みんなに受け入れられようとしたの?
 世界って、なに?
 命って、なに?
 気持ちいいね、ねえさま。
 気持ちいいわね、にいさま。
 この瞬間を、僕たちは食べることができるんだね。
 この永遠を、私達は生き続けることができるんだね。
 『だから、御礼。』
 僕を、私を、あげる。
 
 
 ほら、やっぱり殴られたね、ねえさま。
 ええ、やっぱり変わらないのね、にいさま。
 血とドブの腐敗した匂いが懐かしい。
 暖かい大人の胸の優しい匂いと、同じくらいに。
 ただ淡々と、過ぎていく。
 残念、だったのかな? ねえさま。
 残念、だったのかしらね? にいさま。
 あのおにいさんを殺してしまおうか?
 やめたほうがいいわ、そんなことをすれば私たちがあの女に殺されるだけよ。
 じゃあやめようか。
 そうねやめましょう。
 まだ、生きたいしね。
 まだ、生きたいものね。
 だって。
 だって。
 
 
 青い空だけが、見えた。
 僕は真っ赤に染まった体のまま、その下に飛び出した。
 ああ、風が気持ちいい。
 僕たちは、ただこの空だけを求めて走っていたような気がする。
 でも、それ以上に、僕はその僕を決して認めることができない自分がいたのを知っている。
 血と闇で出来た僕の命だけが、ずっと在ったのを知っていたから。
 おにいさん、僕たちは人食い虎じゃないよ。
 僕たちはただ、人を食わなければ生きられない人であっただけ。
 僕は自分が人であることを知っていて、そして自分が人食いであることも知っていた。
 でも、そこまでだったんだよ。
 僕は、僕たちは、ただそのまま生きていくしかなかったんだ。
 それが悲しいことなのか辛いことなのか、そんなことはわからないよ。
 だって普通の赤ん坊だって、きっと世の中に出てきたときは苦しいことばかりで泣いてばかりだったろうから。
 僕たちはただ泣きながら世界を知り、そして知るうちに泣かなくても済むようになっていっただけ。
 僕たちは、ただゆっくりと大人となっていく、それだけなんだよね、おにいさん。
 おにいさんたちと、なにも変わらないんだ。
 ふふ
 嬉しいよね、ねえさま。
 おんなじ、おんなじなんだ。
 もう、ほんとうに、言葉にすることができないくらいに、おんなじだったんだ。
 
 そして。
 すべてが終わっても、僕たちはおにいさん達と、ひとつにはなれないんだ。
 
 
 
 改めて、わかったよ。
 
 
 
 
 
 
 『おにいさん。
  またいつか、またいつか会いましょうね!
  今度は、ふたりでランチバスケットを持って。』
 
 届かぬと知って、なお伸ばすその手にすべてを賭けて。
 奪った命をすべてこの指先に込めて。
 それでもなお、届かぬことを知り続けるだけの真の地獄が垣間見えたとしても。
 
 
 見上げる場所が此処にある限り、僕は。
 僕は、ずっと、生きるよ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 『綺麗だわぁ・・空。』
 
 
 
 
 
 
 満天の青空に響く一発の終焉が、なによりもなによりも熱く、僕をあの空に運んでいった。
 ようやく・・・辿り着いたね・・・・・・・にいさま
 
 
 
 
 
 
 + + + +
 
 
 ふふふ
 ふふふ
 ヘンゼル。
 グレーテル。
 ふふふ。
 ふふふ。
 ねえさま。
 にいさま。
 
 ふふふ
 
 生きるのって、楽しいわね、にいさま。
 殺すのって、楽しいよね、ねえさま。
 綺麗な青空が、私は好きよ。
 僕も大好きだよ。
 ただそれを、見つめたかっただけなのにね。
 でも僕たちは、いや誰もが自らの存在そのものによって、それを叶わぬ夢にしてしまっている。
 私たちは生きている限り、生きなければいけないのね。
 それなら、なぜ私たちは生きているのかしら。
 さっさと、死ねばいいのに。
 簡単だよ、ねえさま。
 なぜ? にいさま。
 だって、僕たちは綺麗な青空を観たいって思っているからさ。
 生きているから、それを観ているだけはできないのに?
 そうだよ、僕たちは殺し殺され、そして僕が僕で無くなるまで、ねえさまがねえさまで無くなるまで生き続
 け、それは全部あの空を見上げるためのことなんだよ。
 そうね、私たちはあの青空をいつまでも見上げているわ。
 たとえその足下が血の海だとしても、他のみんなは清く正しき優しい地の上を歩いているのだとしても、
 私はあの青空を見上げることだけは、絶対に諦めないわ。
 そうだね、ねえさま、わかっているよね。
 ええ、そして私はもう、そんなことを言わなくても、最初から、そうずっとずっと最初からあの空を見つめ、
 そして求めていたのね。
 なによりも愛しくて。
 なによりも求めて。
 自らの魂を血に染める愉悦にゆがむ笑顔と同じ微笑みを、青い空を見上げる顔に貼り付けて。
 おんなじ、なのよね。
 おんなじ、なんだよね。
 私は、にいさまなのかしら? 
 僕は、ねえさまなの?
 私はにいさまで、そして、にいさまでもある私。
 僕はねえさまで、そして、ねえさまでもある僕。
 そうなのよね。
 そうなんだよね。
 だから。
 だから。
 私は、私。
 僕は、僕。
 私はおにいさんとふたりきりで、会いたい。
 僕はおにいさんとふたりきりで、会いたい。
 
 生きることと殺すことは同じ。
 でももし、それを、それを生きるために殺すとして思うことが出来続ける日が来たならば。
 もしそうなれば、僕ならきっと、自分が生きるために他のことを出来るようになっていることに気づけると
 思うな。
 殺すこと以上の愉しみが、欲しいわ、にいさま。
 奪った命以上に、僕たちを生きさせてくれるものが、欲しいよ、ねえさま。
 生きたいわ。
 生きたいよ。
 
 
 ヘンゼルとグレーテルの名のもとに。
 
 そして。
 
 その名が私たちにあることの運命のもとで、生きたい。
 
 
 
 
 ただただ無性に、涙と、笑顔が、魂に染みていくのを感じていた。
 
 
 
 
                           ◆ 『』内文章、アニメ「BLACK LAGOON」より引用 ◆
 
 

 

-- 061015--                    

 

         

                                 ■■明後日の方向■■

     
 
 
 
 
 蟻の行列を3時間眺め続ける会。 (挨拶)
 
 はいはい、ごきげんよう、紅い瞳です。すっかりできあがってます。
 という感じで、いい感じにお酒入ってる状況であははっと笑いながら書き始めてみたりしました。
 いや別に笑い上戸というほどでは無いんですけど、まぁ気分はノリノリノリです。そのうち空も飛べます。
 はい。
 で、気持ち良いのと気持ち悪くなるのの境目ぐらいだったりするギリギリな今夜のわたくしですけれど、
 まぁなんかこのままキーボの上にヤバイものを吐いちゃってもいいかなってくらいに上機嫌でもう駄目駄目
 なので、なんかもう止まりません。あはは。
 いや、酔ってないにょ。
 でもきっと明日今日書いた文章を読み返したら、真っ青になって別のなにかを吐いてしまいそうな気も
 しますけれど、えっと吐く吐く言ってるとほんとヤバイ気がしてきましたので、やめます。
 今日は、お酒の話をします。・・・・・・。
 すご、ここまで書くのに約1分だよ、すごい早いな君、はいありがとう御座います、頑張ります。
 で、なんの話でしたか。
 そうそう、吐き気のお話でしたね。違う、お酒のお話。
 うん、まぁ、そろそろお話したいなとは思っていたところだったんですよ、とかそんな勿体つける話では無い
 っていうかそんな大した話じゃないんで逆に恐縮なんですけど、いいですか。
 まぁ、はい、そうですね、順を追ってまったりとお話しますか。今日は全部吐くよ。(意味は違います)
 そうですねぇ、ええ、私はまぁ、昔はあんまりお酒って好きってほどじゃあなかったんですよ。
 せいぜいビールをちろっとお付き合い程度で飲むだけっていうか、そもそもあんまりビールの味を美味しい
 と思ったこと無かったんですよ。お子ちゃまなのです。
 一応そこそこ飲めるクチではあったから、幸いにもお付きあいに困るということはありませんでしたけれど、
 じゃあそれでお酒に興味があるかといえば無いという感じでして。
 それがまぁ、はぁ、1年ほど前でしょうか、なぜかこう、急に日本酒が美味しくなりましてね。
 や、実は日本酒はむしろそれ以前はビールと違って積極的に嫌ってたんですよ。
 飲まず嫌いっていうか、ほんと飲まなくて、私の中ではあのお正月に飲むお屠蘇ってあるじゃないですか、
 あれが子供のときから大嫌いで、あれと日本酒を混同して合わせて嫌って全然飲んでなかったんです
 よ。
 一応お付きあいで何度か飲んだことはあるのですけれど、そのときは頭の中お屠蘇のイメージで一杯で
 もうただただ我慢の時間だったんですよ。
 それが、なんていうか、いきなり、美味しくなった。
 切っ掛けがなんだったのか早くも忘れてしまっていてアレなのですけれども、まぁその辺りはどうでもいい
 感じで、とにかく好きになったという結果を受け入れてください。ていうか好きになったんです。大好き。
 
 で、以下はだらだらと日本酒の魅力について書きます。
 とはいえ、日本酒に目覚めてたかだか1年少々のひよっ子ですので、まぁそのへんはご勘定に入れてく
 ださい。
 で、そうですね、なんていうか私は甘口派っていうか濃醇な感じが好きなんですよね。
 現在は辛口全盛みたいで、どこ行っても辛口淡麗ばっかり売ってるんですけど、私は断然濃醇派。
 あ、甘口辛口っていう区分けはあんま意識してないんですよ、ただ甘口の方が味に奥行きと広がりが
 あるので、必然的に濃醇って感じがするんです。
 辛口のあのカキンとくる爽快さも好きなんですけど、口に含んで喉を通り飲み下し胃の腑に到達する
 までに全霊をかけて感じるに値する複雑豊満な味にはどうしても欠けてしまうんですよね。
 なんていうか、一滴のお酒にどれだけのものを感じ取れるか、みたいな感じの愉しみ方に耐えられるのは
 、やはり濃醇タイプ。
 よく書いてある「喉越し爽やか」とか「口当たり爽やか」とか、むしろ私的には褒め言葉じゃなくてマイナス
 点になるんですよね。
 フルーティな飲みやすさ、とか論外。チューハイ飲んでろって感じです。(暴言)
 で、原酒系とかは結構濃かったりして満足できたりするんですけど、やや旨味に欠けるところがあるので、
 基本的には清酒系。
 本醸造とか吟醸とか純米大吟醸とか、結構その辺りのランク付けはしっかりしてるというので、試飲でき
 ないデパ地下などで買うときはそれを基準にして買ってますけど、まぁやっぱりそういうときに楽しいのは
 ラベルに張ってある煽り分。
 割と情報少ないので判断の余地は無いですけれど、逆のその少ない情報の中で、自分としてこれが
 いいと思えるような境地にまでその思いこみを発展させることのできる一本を選ぶ愉しみは結構快感。
 私がいつも通ってる酒店のご主人なんかは(めちゃくちゃ酒オタクで素人置いてけぼりな話ばっかりして
 くる人w)、そんなのは邪道、酒は味が一番、能書きは無用、と延々と説いてきますけど(私一応客
 なのにww)、それは確かにその通りだし、そのお店で買うときはいつも試飲させて貰ってから買ってます
 けど、試飲できないお店で買うときは、やっぱりそういう不利な条件そのものを含めて愉しむのも、それは
 それで面白いと思うんですよねぇ。
 いや、なにげにお酒飲む際の雰囲気作りって、大切だと思うのよ?
 味そのものにこだわるのは勿論だけど、その酒と自分との出会い、またその際にお金を払う快感(大した
 額じゃないけどw)、そして買ってきたお酒をゆっくりと眺めて、そして料理を並べて心許せる仲間を呼んで
 、できれば呑む場所の雰囲気も整えて、たとえば夜空に月が煌々と照っていたりして、その中で、自分の
 選んだ美味しくて愛しくて堪らないお酒を開封し、杯にそそぐ瞬間。
 いいじゃん。
 いいじゃん、これ。書いてるだけで酔ってきたよ。
 味は味、雰囲気は雰囲気、ならば合わせて一本、これ最強。
 ということを例のご主人に言ったならば、まぁ人それぞれだしね、と冷たくスルーされたりして、あれーって感
 じだったりとか、まぁ人それぞれですよね、うん。
 で、なんか話が滅茶苦茶に繋がってるような繋がっていないような感じですけれど、現在困っていること
 がひとつ。
 以前、そのご主人のお店で買った、そのご主人が自ら買い付け店内にある貯蔵タンクにて保存してある
 純米大吟醸(銘柄とかだから無い)が、その、もうこの世のものとも言えないくらいに美味しくて、こうなん
 いうか甘くせつないように喉にしがみついてきて、絶対に枯れないような濃さがありながら流麗に喉と胃の
 腑に染み渡り全身に広がるような、なんていうか宝石を飲んだような、えっと詩的過ぎて訳わかりません
 ね、ええと、尋常でない美味しさがありまして、その、それを飲んで以来、他の安酒をいくら飲んでも
 それほど美味しいとは思えなくなってしまったんです。
 ぶっちゃけそのお酒に恋してしまったんです。ぽっ。
 えっと、もうなんか黙れって感じですけど、これってお酒飲みさん的にはどんな感じなんでしょうね。ヤバイ
 ですよね。
 単純に、ならその美味しかったお酒だけ買って飲んでりゃいいじゃんってことですけど、あれ高いし、それ
 にそれだけじゃなくて他の味も知りたいし、そんなちっこい葛藤があるわけですので、それは却下。
 そんな感じなんです。
 そろそろ普通に酔いも醒めてきました。
 あー、なんか、暇なこと書いてるな。
 終わり。 (おい)
 
 
 ◆
 
 酔っ払いのことは放っておいて、次いきます次。
 この間、久しぶりにCDを買ってきました。しかもアニソン。
 アニメ「NANA」のOP・ED「Wish/Starless Night」です。
 これアニメの放送のときに聞いて、これもめっちゃくちゃ久しぶりに涙が出た曲。
 特にEDのStarless Night。気付いたら頬を熱いモノが伝っていました。
 いい。なんかいい。NANAの本編を見終わったあとに聞くこの曲はめっちゃ感動的。NANA万歳。
 で、本題。
 そんでね、それを発売して間もないうちに喜び勇んで買いにいってね、無事買って家に帰ってきて、
 そしてね、MDコンポに入れてスイッチオンしたらね、音が出ないの。
 MDコンポ、ドンピシャで壊れまして候。
 OK、Ok。
 1ヶ月くらい前から調子が悪かったの、わかってた。
 でもね、なにも久しぶりにCDを買ってきたこの日に息をお引き取りになること無いじゃない。
 もう少し、生きろ! (かける言葉としてどうかと)
 もうそこそこ長く使ってるんですけどね、そうもうほんと愛機ですよ愛機、ONKYOのコンポ、ほんとこれ
 大事に慈しみながら傷ひとつつけないように箱入り娘的に育てたのにさ。(さすがに箱からは出してるけど)
 それで仕方ないので、修理に持っていって見積もりして貰ったら、「まぁ大体2万前後にはなりますかね、
 あと3週間くらいはみておいてください」とか、言われました。
 2万て。3週間て。高いよ長いよ。
 値段的にはいくら高くても1万は超えないだろうと思ってたのに、これじゃ安いのなら新品で買えちゃうよ、
 みたいな、まぁコンポ修理費の相場知らない私が悪いんだけどさ、あーあ。あーあ。
 いずれにせよ直すものは直さなければいけないので、しょんぼりですけれど致し方ありません。
 うーん、なんか、なんだろう、なんでこんな事、書いてるんだろ。
 ということで、買ってきたCDは未だ開封されることも無く、ただただ箱入り娘が帰ってくるのを待つばかりな
 のでした。
 なんか、ドラマチック。
 
 
 ◆
 
 アニメーアニメー、アニメっ子はいねぇがー。
 ということで、アニメのお話。
 まずは、地獄少女二籠。
 はい、面白かったです。
 割と前期よりパワーアップしているように感じられたのは、私が前期をしっかり感得できていたからなのか
 な、とかそんなことを思いながら見ていました。
 まぁ、うん、良かったですよ、最初からきっちり飛ばしてくれましたし、ていうか、なんか、いいや、もう。
 あんまし語ることは無いです。
 前期で培ったなにかをすべて感想にぶつけるのみです。押忍。
 まぁ、あれです、地獄少女のカッコが一部やや鮮やかに派手になった、くらいで、特に前期との差別化
 は必要無いかなってのが正直なところ。
 ま、せいぜい頑張るがいいさ。私はそれを受けてたとう。
 なんか、微妙な空気が流れた気がします。
 
 さて、次。
 またまた今期アニメの短い感想をもそもそとー。
 いくつか新しいアニメもこっそり見てみましたので、よろしく。
 
 ゴーストハント:
 ・切りました。
 
 少年陰陽師:
 ・打ち込むときに「いんようし」と打ってるために、すっかりそう読んでしまうようになってしまって大変でした。
  正しくは「おんみょうじ」と読みます間違えないでくださいね。えっと、特に感想はありません。
  藤原彰子がちょこっと可愛かった、くらいしか。残念。期待してたけど、残念。
 
 レッドガーデン:
 ・作品としては悪くない。かなり色々なことに挑戦しているようだし、それもある程度のレベルで達成でき
  ているとは思う。けどどうしても全体的なパワー不足はやはり否めない。どうにもあの作品を成立させる
  ことで力を使い果たしてしまっている感じがする。この状態では、ただロジックとしての淡泊な言葉の
  羅列か、それともただキャーキャーと喚きながら恐怖から逃げ回り血眼になって立ち向かっていくだけの
  感情の、ただの置き場所にしかなれないかもしれない。もう少し、ひとりひとりの人間の位置から見る
  ことのできるものにしないと、やはりそれはただ先行していく世界を追いかけていく人間を、ただ虚しく
  消し去ってしまうだけだと思う。先走っていく世界を追いかける人間を、その魂を存在を、もっと激しく
  描ければ、まだいけるかもしれないけれども。
 
 武装練金:
 ・このこみ上げてくるくすぐったい笑いの感情はなんなんでしょう。すっごく真面目に少年漫画してるのに、
  どうあっても考えすぎで不自然になりまくりであり得ないくらいにダサカッコ良くなってしまってるよ。
  やばいこれ笑うのを寸止めされてるような、でも気付いたら笑ってたというか、もう、なにあれ。
  狙ってるワケじゃないんだろうけど、結局狙い澄ましてハズレにドンピシャ、みたいな、くぅ、お腹痛い。
  これで例の至高の変態さんの登場が常態化したら、一体どうなってしまうのでしょう。(私が)
  たのしくて、しかたがありません。
 
 働きマン:
 ・面白い。たぶんこれからも見ると思う。それで充分じゃないか。
 
 パンプキンシザース:
 ・録画してたのを見るの忘れてた。一応1話だけ見た。印象は良くない。
  ただ物語を消化してるだけというか、設定をすべて有効にすることだけ考えているというか、なんというか
  なにかを伝えていこうという外的な発信力や、それを創り出す内的な自省みたいなものの匂いが全然
  しないというか。それでいてただはっちゃけるパワーがあるかというとそうでも無く、逆に妙に説教臭いと
  いうかなにかを押しつけようというか、そんな匂いががくんとする。
  ただそれはあくまで最初の1話だけを見た印象だけで、最初っからそんな濃いことをするのを求めるのも
  酷ではあるのかなぁ、とは思うけれども、ただ今までの経験からすると、たぶんそのスタンスは2話以降
  も続くと思う。
  そしてさらなる私の経験に基づけば、そうして自分の経験によって良くない印象を受けて、見るのをや
  めてのち、しばらくして見たときに見なかったことを大後悔する可能性大なり、という感じです。
  いつもの、ことですわ。(微笑)
 
 すもももももも:
 ・もの数合ってますよね?合ってることにします。なにげに1話から見てます。
  どうやら今期のギャグ分としていけそうです。割と淡泊な感じがあるし、それほど作り込んでる感じも
  無いし、また独自な感覚も無いし、おまけにそんなに笑えるというワケでも無いし、えっと、でも、なんだ
  か見てて面白い不思議な作品です。
  ヒロイン(なんですよね?あれ)の動きとかなんていうかコミカルっていうか、ていうか伝統武術の奥義の
  名前にカタカナ入れまくりで絶叫するってのが凄いし、いやもも子逆上リミットブレイクってなによ、
  で、主人公は主人公でなんかイマイチ造形に見合った存在感が出せてないんだけど、ところどころで
  ずる賢さを体を張って体現してたりして、なんていうかあのふたりがこの作品を作っていくみたいな感じ
  がしてなんか面白い。あと委員長がいい。なんかね、最近平野綾声に割りと反応してる私が居るよ。
  
 ネギま!?:
 ・噂のネギま!?を見てみた。ふーん、結構面白いじゃない。噂通り月詠+ぱにぽにな感じはあったし、
  逆にそれが第三な存在って感じを醸し出させてくれたようななに言ってんの。落ち着け。
  そうですね、まぁなんか演出に懲りすぎて全体としてはかなーりアンバランスというか一本筋が通ってい
  ない感じもしましたけど、例えば原作を読んで改めてこのアニメを見れば、その辺りは逆に新鮮に感じ
  られるかもしれない。原作にアニメの演出をトッピングして見るというか、そういう小道具が詰まった箱
  みたいな感じがしたね。どうやって数々のシーンをアニメ的に表現するか利用するか遊び尽くすか、
  というところにひとつ、この作品の愉しみ方を見つけました。でも私は原作読んで無いので、単純に
  演出を単品で取り出して遊んで見ることに致します。全体を語るのはそれからだ。
 
 
 
 とまぁ、今日はこんなところでしょうか。
 んじゃ、また。
 ごきげんよう。
 
 
 
 
 

 

-- 061013--                    

 

         

                                 ■■地獄の先の闇■■

     
 
 
 
 
 『憎む相手が、わからないんだねぇ。』
 

                         〜地獄少女 二籠 ・第一話・骨女の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 響く。
 轟く。
 泣け。
 喚け。
 
 言葉は要らない。
 ただ歩く。
 残骸の、そのまた先を踏みしめて。
 踏み締めて、踏み潰せ。
 阿鼻叫喚の地獄の中をただただ歩け。
 地獄の業火よりも熱いこの巨大な炎は、ただただこの身を歩ませる。
 歩け、歩け。
 前へ、前へ。
 崩れ落ちる体の先に、きっと迎えてくれる真っ黒な地獄がある。
 ぼんやりと、薄れて、なにもかも、あやふやに、朦朧と。
 どろりと瞳から溶け出た血涙が、全身の体液を連れていく。
 ぼう、ぼう。
 炎が燃える。体が燃える。
 みんな、燃えてる。
 
 私が、燃やした。
 私が、燃えてる。
 
 落ちぶれた涙に沈み往く中で、それは語りかけてきた。
 『おまえは己の怨みを解き放ち、新たな怨みを生み出した。』
 『その罪は、重い。』
 
 『おまえが地獄に下ることは許されない。』
 
 
 なにを言っているのよ。
 悪いのはあいつらなのに。
 私を殺したから、殺してあげただけじゃない。
 みんな、みんな、消えてしまえ。
 
 村ごと、みんな、みんな、みんな。
 
 
 だって、みんな殺さなくちゃ・・・私の怨みは・・・私は殺されて・・・・・
 誰が・・・・・誰を・・・・・・どうして・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 ++++
 
 ゆっくりと目を開けると、そこにはいつも同じ景色が広がっていた。
 その景色をこれ以前にいつみたのかを、私はいつも覚えていない。
 たぶん、私に以前なんてものも、過去というものも無いのだから。
 私はきっと、ほんとうは開けるために目を閉じたことは無くて、最初からずっとこの目は開きっぱなし。
 だから、ずっとその景色は見ていた。
 同じ景色を、何度も何度も見たんじゃない。
 ずっと変わらない景色を、ただただ見つめ続けていた。
 なにも、変わらない。変わらないんだよ。
 『もう慣れた。』
 ささやかな日常の苦痛と、穏やかな絶望と共にある毎日。
 おぞましくもなんともない、ただただ怠惰な我慢の日々。
 落書きだらけの上履きを履いて、ボロボロに破れたノートを机の上に広げて、今日も普通な一日が
 始まる。
 と、思ったら、羽織ろうとしたカーディガンの袖口がホッチキスでガチガチに止められてた。
 そう、それでもいいよ。
 この一瞬を通過すれば、これもまた変わらぬ毎日に収束される出来事のひとつになるのだから。
 ただただ、過ごす。
 時間が過ぎれば過去は消え、そしてそれはすべて今に収束してくれる。
 なんにも無い。なんにも変わらない。
 憎い?
 そうかもね。
 たぶんそう思ったから、毎晩ちゃんとパソコンの前に座って、地獄通信にアクセスしてる。
 地獄通信って知ってる?
 怨む相手の名前を書き込むと、そいつを地獄に連れて行ってくれるってページ。
 真偽なんてどうでもいい、ただ私は毎晩そこにクラスメートの名前を書き込んでいた。
 もうクラス全員の名前、何回書いたのかな。
 でも、名前を書き込んでもすぐに削除して、また書いて、また消しての繰り返し。
 そうだね。
 憎いのか、憎くないのか、わかってないんだよね、私。
 というより、こうやって地獄通信にアクセスし続けるのが、私の変わらない日常のひとつってだけの話。
 毎晩毎晩、憎しみを込めてクラスメイトの名前を書き込んでは消す、無意味で虚しい毎日。
 どうでもいいよ。
 うん、私に危害を加えているのが誰なのか特定できなくても、構わないよ。
 憎いのは、私をこの変わらぬ日常に閉じこめてる者すべて。
 直接手を下してはいなくとも嗤って見ている奴も、ただ見ているだけの奴も、見ていない奴も。
 だから、どうでもいい。
 私はそんなもの、ほんとは憎んでなんていないんだもん。
 ただ、憎むということをしているだけ。
 意味なんて無い、だってどうでもいいんだもん。
 どうせ、誰も助けてはくれないんだから。
 
 そう・・・・そうなんだね・・・・・・・
 
 わかってた・・・・わかってるよ・・・
 私はただ・・・誰かに助けて貰いたかっただけ。
 私の筆箱に毛虫を沢山入れた犯人が誰だろうと、そんなのはどうでもいいんだよ。
 私はただ、嫌だっただけ。
 もうなにも起きなければ、犯人は誰でもいいし、逆に犯人なんてわからない方がいい。
 私は、地獄通信に、地獄少女に助けて貰いたかっただけ。
 だから、それはこういうこと。
 誰も怨んではいないけど、誰かが消えてくれることで私が助かるのなら、憎んでもいいと。
 馬鹿みたい。
 私を虐めてる張本人を怨んで地獄に送るだけという名分が成り立つ限り、それはいつでも実行可能で、
 そしていつまで経っても、できないこと。
 順番が逆なんだもん、怨んでいるから名前を書き込めるのに、名前を書き込むために怨むなんて、
 できないよ。
 私は怨みたいんじゃない、ただただ、助かりたいの!
 みんなに、みんなにもっと、ちゃんと、普通に接して欲しいの!
 私なにかした? 私みんなに悪いことした? 私なにもしてないよ! なのになんで、なんでなの!!
 
 やっぱり、いいや、どうでも。
 
 助けてくれる人なんて、最初からいないんだよ。
 わかってる、わかってるよ。
 だからもう、いいんだ。
 私が適当に選んだクラスの誰かの名前を書き込んではいお終い、と言えるまで続く永遠に変わらない
 日常を生きていればいいだけなんだから。
 それだけ。うん、簡単なことだよね。
 
 『先生には、関係ありません。』
 
 
 だからもう、構わないでください。
 
 
 私は無いものを、もう欲しがったりはしませんから。
 
 『連絡したら、助けに来てくれるんですか?』
 
 『出来ないこと、言わないでください。』
 
 
 
 もし、なんて話、聞きたくない。
 ・・・・。
 まだ言ってるよ、私。
 もうなにも、言わなくていいじゃない。
 
 
 
 ベッドの中でまどろみながら、地獄通信に先生の名前を書いて、消した。
 
 
 ◆
 
 いくつかの瞬間を跨いで、携帯の着信音が鳴っているのに気付いた。
 犯人を知ってるというメール。
 教えてあげるから、昼休みに更衣室に来て、と。
 一言一句、既に諳んじることができてしまうほど、何回も読んでいた。
 そしてそれを口ずさみながら、更衣室までの廊下を歩いていた。
 馬鹿だ。
 思いっきり、馬鹿だ。
 これ自身が悪戯かどうかは関係無くて、犯人を知りたいと思っている私が馬鹿だ。
 違う、私はただこうして私になにかを教えてくれる私のことを思ってくれる人が居るかもしれないと思っただけ
 だ、と必死に言い訳してる自分が馬鹿らしい。
 なんで・・・・なんで私・・・・・・・ほんっっ・・・っっっとに・・・・馬鹿っっ・・・・・
 いつまで、助けてくれる人は居ないってことを、わざわざ確認し続ける悪あがきをしているつもりなの?
 もう充分わかってるんだから、もうそんなことする必要無いのに、いつまでもそれにしがみついて・・・・
 助けてくれる人は居ないって、そう口ずさみながら助けてくれる人を捜してるんじゃん・・・・
 もう・・・・・・もう・・・・・・・
 私・・・・・・・・・
 
 
 もう・・・・・・・・・いやだよ・・・・・・・・・・
 
 
 
 伸ばした手が・・・・・・・・もう・・・・・これ以上・・・・・・・・消えていくのは・・・・
 
 
 
 
 
 ---- そして光の断たれたその瞳が閉じられていくとき--
 
 
 
 
 
 
 気が付いたとき、私は目を閉じていた。
 初めて見た、瞼の裏。
 真っ暗な、闇。
 ああ、そっか、私、闇を見てるんだ。
 不思議な、気分。
 生まれて初めての、気分。
 だって、だって。
 私、その闇の中に、居ないんだもん。
 私、闇を見ている、それを見ていられる此処に居るんだもん。
 そして、うっすらと、なによりも、なによりも力強く、世界は開けていった。
 瞼を押し開く力のぬくもりを抱き締めて、私は闇の向こうに広がる光にしがみついた。
 ここは、どこ? 天国? それとも地獄?
 目の前に、先生がいた。
 先生、ここは、いいえ、此処は、どこですか?
 先生は、ただ、私を、見ていた。
 うん。
 先生。
 なんだか、全部、わかっちゃったよ。
 私もう、全部・・・・・・・
 私はずっと、真っ白な光を瞼で遮ってできた闇の中にいた。
 ずっとずっと、どこかにある光を見つめながら、私は闇の中にいた。
 先生・・・・
 先生・・・・・先生、先生・・・・・・・
 先生が・・・・私の髪を撫でてくれなかったら・・・先生が話しかけてくれなかったら・・・・
 先生が・・私を見てくれなかったら・・・・私・・・・・
 私ずっと、闇の中にいました。
 自分は光を見つめているのに、自分だけが光の中に居ないことだけを体感し続けてました。
 苦しかった・・・・・悲しくて・・・・・・・悔しかったです・・・・・・
 でももう・・・・・・なんだか・・・・・自分が完全に闇自身になってしまったと感じた瞬間に・・・・・
 その・・瞬間に・・・・・それが違うってことが・・・わかったんです・・・・
 闇になることで・・・・私は闇じゃないってことが・・・・不思議とわかったんです・・・・わかっちゃったんです・・
 もう駄目だ、ということを言い続けて・・・それすらも言えなくなったときに・・・・・私は・・・・・
 うん・・・・・だから・・・・気が付いたとき・・・・嬉しかった・・・・・瞼の裏がみえたとき・・・ほんとうに・・・・・
 これは・・・・・・この闇は・・・・・・開くことが・・・・できるんだって・・・・・・
 真っ暗に閉ざされた闇の中で、私はそのことだけを、ただただ愛おしく感じたの。
 ああ・・・・・嬉しい・・・・・・・・・
 生きてて・・・・・・・ほんとうに・・・・・・・・・よかった・・・・・・・
 
 先生。先生。
 ありがとう、先生。先生先生先生!
 
 
 『ちゃんと見ていてくれる人がいるから、だから、頑張れる。』
 
 
 
 助けてくれて・・・・・ありがとう・・・・・・・・先生
 
 
 
 
 ◆◆
 
 初めての次の日の体感の中で、初めて自分が虐められていることを感じて。
 上履きに入っていた画鋲の群をこんなにも恐ろしいと思ったことは無いよ。
 本当の一番初め、始業式の頃にもこれと同じことを感じていたんだよね。
 初めての、瞬間。
 怖くて、情けなくて、恥ずかしくて、世界がどっと覆い被さってくるような、この感触。
 なぜ私が、なぜ私だけが、なぜ私なの、私はみんなと同じでしょ。
 普通の世界から、当たり前の世界から、弾き落とされた、この感覚。
 その押し寄せる感覚に押し潰されて、しまいにはその感覚そのものになっていて、それを見失った。
 変わらない、苦痛の日常の展開。
 それが当たり前の、普通の世界で在り続ける時間の連続。
 どうして私を、どうして私だけを、どうして私なの、どうして私はみんなと同じじゃないの。
 考えているようでなにも考えられない、ただただ思考の輪廻をぐるぐると廻るだけ。
 その回転だけが目的の、答えや出口の無い無限回廊。
 今は、違う。
 自分が、そうしてるのが、見えるから。
 それを見ることができる、此処に居るから。
 怖くて、情けなくて、恥ずかしくて、そして。
 そして、だから、負けない。それに負けたから、もう、負けない。もう絶対に、負けない!
 先生が私を見てくれたんだ、先生が私を助けてくれたんだ、私はもうひとりじゃないんだ!!
 自然と体に力が入る。
 嬉しいほど自動的に、心が熱くなってくる。
 じわじわと燃えるように感覚が冴えてくる。
 目の前に広がる忌まわしい苦痛が、もの凄い勢いで、私に飛び込んでくる。
 そして、その先に、確かに私が、居た。
 それを、虐めを受けてる私が居た!
 私はなにも悪いことはしてない。
 悪いのは、上履きに画鋲を入れる方だ。
 だから、私は悪くない。なにも、怖がることも恥ずかしく思うことも無い。
 怒り。
 それだけで、充分。
 理不尽なことに対する怒り、それさえあれば怨みや憎しみなんて、いらない。
 そして、その怒りをしっかりと飲み込んで、それで、お終い。
 私は、負けない。
 それが、答え。うん、今日も頑張ろう!
 だから犯人が誰かなんて、ほんとにもう、どうでもいいんだよ。
 私はもう助けて貰ったんだから、あとは私が頑張ればいいんだから。
 地獄通信も、それにクラスメイトの名前を書き続けることも、助けを求めることも、必要無い。
 全部、先生のお陰です。
 先生、私、頑張ります!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 そして。
 犯人は、先生だった。
 私を今まで苦しめていた張本人は、私を助けてくれた先生だった。
 
 
 
 ◆◆◆
 
 目の前が真っ白になった。
 如何なる言葉も感情も浮かんではこなかった。
 なにも、わからなかった。
 どういう、こと?
 すべてがわかっていることなのに、私はその真っ白な世界に向けて問い続けていた。
 先生が、犯人。
 先生が、私を虐め続けていた。
 
 どくん
 
 その心臓のひとうちが、すべてを決めた。
 わかったことのすべてが、私にどっと覆い被さってきた。
 絶叫したかった。
 泣き喚きたかった。
 でも、しなかった。
 なぜなら、私はわかったことのうちに、再び過去を失っていたから。
 先生が、そんな信じられない、という思いは、一瞬で今この現状に収束されてしまった。
 これが、現実。
 その圧倒的な現実だけが、ただただ私の中の動揺を殺していった。
 先生に助けられた過去は、すべて先生がすべての元凶という事実に食べられてしまった。
 
 
 ゆるせない
 
 
 許せない許せないゆるせないゆるせないっっっっっっ!!!!
 わ、わたしを・・・裏切ったのね・・・せんせい・・・・
 ち・・・ちがうわ・・・・せんせいは裏切ったんじゃない・・・・さいしょから・・・そのつもりで・・・・
 わたしは・・・な・・・・なんにも知らないで・・・・・・せんせいのおもちゃに・・・され・・・・
 
 むらむらと、理性が湧いてきた。
 私にとって今一番大切なことはなに?
 自分で言ってたじゃない、犯人が誰かなんてもうどうでもいい、私はもう助けられて、そして真っ直ぐ
 頑張って生きられるようになったんだから、だからそうして生きるのが大事じゃない。
 先生が犯人だって同じことでしょ、誰が犯人だろうと重要なのは私がこれからどう生きるかって事なんだ
 から、先生のことはどうでもいいでしょ、逆にそれに関わればまた元に戻ってしまうだけ。
 だから私は先生のことを許すことはできなくても、先生に貰ったこの世界の中に生きて、そして、
 
 
 
 せんせいを、ころす
 
 
 
 嗤いが、止まらなかった。
 涙なんて、欠片も出なかった。
 先生を地獄に堕とす。
 絶対に、絶対に許さない。
 怨んで怨んで、憎悪で殺し尽くしてやる!!!
 私の、わたしの今までの苦しみを全部全部返してあげるよ、先生。
 ゆるさないゆるさないゆるさない!
 先生に貰った世界で生きる? 馬鹿じゃないの?
 その世界を作るために、先生は私のそれまでの世界を奪ったんだよ。
 全部、全部、これまでのこと、ほんとうの本当に全部、先生がやったんだよ。
 私が信じた神様を、平然と悪魔と入れ替えたんだよ。
 ゆるせない。
 返してよ、私の神様と、私の信仰を。
 虐めだけならまだしも、私のその想いを、希望を、すべて踏み潰したんだよ、先生は。
 先生が犯人だなんて知らなければ良かった、と最初は思った。
 知りさえしなければ、私は悪魔を神様と信じていられたのに。
 そうすれば、ただしっかりと強く幸せに生きて行けたのに。
 だから先生の正体をばらした中瀬さんを怨んだ。
 でも、そう思った瞬間、その思考は実感を得ること無く、真っ白な世界の先に消えた。
 それはもう、過去のこと。
 今、私が直面しているのは、悪魔の先生の存在、ただひとつ。
 中瀬さんを怨むのは筋違いな上に怨みも無くて、ただただ怨むべき先生が怨めしく、憎い。
 
 そして、理解した。
 そうか、先生の名前を書き込んで地獄に落とせば、それで私は助かるんだ、と。
 
 ひとつ手間がかかっただけ。
 或いは、ひとつ段階を経ただけ。
 最初から、なにも変わってなんかいなかったんだ。
 私は虐められてどうすることもできなくて、そしてなにも変わらない日常の中に居る。
 そして虐めの犯人を特定できずに名前を書き込むことができなくて、そのまま在り続ける怠惰な毎日を
 過ごしていた、
 そして、今、その書き込める名前を見つけた。
 何の躊躇も躊躇いもなく、その先に希望を、救いをみつことのできる、書き込むべき名前を。
 だから。
 真っ直ぐに家に帰り、真っ直ぐ時間を過ごし、そして真っ直ぐに地獄通信に先生の名前を書き込んだ。
 これで、また、まともな生活に・・・・・・私は・・・・もう・・・・・
 
 
 
 そして。
 紅い瞳の少女が、ゆっくりと体の中に入ってきた。
 
 
 
 ◆◆◆◆
 
 人を呪わば穴ふたつ。
 契約を交わしたら、私の魂も地獄に堕ちる。
 『どうして私も地獄にいかなくちゃならないの? 悪いのは向こうなのに! だからお願いしてるのに!』
 一瞬で、怨みが消えた。
 まるで正体を言い当てられて消えるお化けのように、綺麗に消えた。
 そんなに私、地獄に堕ちたくないのかな。
 でも考えてみれば、そうだった。
 なんで私があんな奴のために地獄に堕ちなくちゃならないの。
 私はあくまで裁定者で、あいつはただそれに従う無力な罪人でなければいけないのだから。
 馬鹿馬鹿しい。
 私はあっさりと、地獄少女を見限った。
 誰がそんな不公平な契約結ぶもんか。
 
 
 そして、辿り着く。
 逃げ場の無い光の中に。
 
 
 
 ++++ 復讐者としての被害者の叫びを以て仇を討つ罪人の結末は
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 下駄箱を開けたら毛虫が溢れた。
 そしてその向こうに、先生が立っていた。
 犯人と救済者の合一。
 逃げ場は、無かった。
 靴箱に毛虫を入れたのは、それを見て倒れ込んだ私を助け起こしてくれるはずの先生。
 私に差し伸べてくれるその手で、一体どれだけのものを私から奪ったというの。
 あなたの・・・・その目は・・・・・・一体あのとき・・・・・なにを・・・・誰を・・・見てくれていたんですか・・・・
 
 『信じてたのに・・』
 
 すっかり正体を現した先生は、あまりにも外道だった。
 想像を絶する力で私に覆い被さってきた。
 私を、押し潰すのも辞さない、その凶悪な力。
 私を虐めたのはそれが愉しいから、自分がやられて嫌なことをする気分は最高だから、と言った。
 面白い実験だったわ、と、先生は言った。
 そして、次は一緒に手を組んで、中瀬さん辺りを虐めて愉しもうと。
 あなたがされて嫌だったことを、あの子にしてあげましょうよ、と。
 有無を言わさぬ勢いで、私の顔に塩酸のビンを傾けてきた。
 怖かった。
 怖くて怖くて、どうにもならないほどに怖くて、塩酸が、顔が、溶けちゃう、やめて、やめて、やめて・・・っっ
 そして、その恐怖が限界を超えて。
 怨みも無く、憎しみも無い時間が訪れて。
 そして。
 
 
 
 私の真っ白な殺意が、先生を地獄に連れていってくれました。
 
 
 
 
 
 

 『さよなら、先生。』

 
 
 
 
 
 
 +
 
 先生の消えた世界の先に私は居た。
 そこにはただ当たり前の、ごくごく普通の世界だけがあった。
 
 その世界の先に行くことだけしかできない、止まらない世界が。
 
 
 
 
 私・・・・・
 
 
 ほんとうは・・・・・なにを・・・・・・・誰を・・・・・・・
 
 
 
 
 ・・・・・怨みたいなんて・・・・憎みたいなんて・・・・・・殺したいなんて・・・・・・・・・・
 
 ・・・・・・・誰も・・・・・誰も・・・・・・・・
 
 
 
 
 
                                ◆ 『』内文章、アニメ「地獄少女」より引用 ◆
 
 

 

-- 061011--                    

 

         

                                   ■■ 煙×侵攻 ■■

     
 
 
 
 
 はい、ブララグ2第2話観ました。
 あー。
 いいね。
 いいですね。
 溜息出たね。
 ほーって感じで。
 良く考えて作ってるなぁ、ってなぜかまず感じて、でもそれと同時に、あーすごいはこれはって感じで、
 ただもう目を見開いて考えながら観てた。
 すげー。
 一見すると、というか一聞するとただカッコつけてる台詞ばっかりで、正義や道徳なんてクソだって事を
 吹いてるだけなんだけど、でも、重要なのは、それを作品を通して言うことには無くて、ただそういう言葉を
 吐く人間が生きている世界自体が、どばーって彼らの向こうからやってくる凄まじさがある。
 感覚的にいえば、重い。
 そう、言葉の意味が重いとかそういう意味じゃなくて、その言葉自体が重量を持ってる。
 なぜ、彼らはその台詞を言わねばならないのか。
 ラフな言い方をすれば、彼らのあの台詞が彼らの口から出てくる必然性が、あの画面の中にはあったと
 いうか。
 なんでバラライカは、あんなに好戦的なの?
 なんでチャン(張)は、あんなに殺伐とした平和好きなの?
 まずその問いが無いと、というか、その問いがどどんとあるから、どうしてもまずはその好戦的さと殺伐と
 した平和観を心底愉しみたいという気にさせてくれる。
 バラライカの憎しみがむちゃくちゃ伝わってくるよ、その来歴と実感と共に。
 チャンのスカした態度の向こうに控える冷酷な生存本能が、ガリガリと爪を立てて襲いかかってくるよ。
 怖い怖い、ぞくぞくするよ。
 
 ラグーン商会の冷めっぷりと、彼ら当事者の熱烈っぷりとの差も面白い。
 たぶんいつもはっちゃけてるラグーン商会の裏で、バラライカたちはやっぱり冷めてるんだよね。
 当事者だけが、熱く、熱く、生きまくってる。
 雨の中でふたり密会するバラライカとチャンの中には、この街を支配する巨大な力が犇めいていると
 同時に、それ自体を自らの生存のための活力としてすっかり食べてしまっている。
 淡々と、戦略のお話を重ねているふたりが、噎せ返るほどの熱気を放っている。
 空から落ちてくる雨を体で弾き霧散させ、そして立ち上る水蒸気がまっすぐと空にのぼっていく。
 すごいって、思った。
 なんであんたら、生きてんの?
 って、思わず、そう、問いかけたくなる。
 知るか、って答えてくれることだけを、期待しながら。
 もしくは、無視されることのみを以て、なにか大切なことを知った気にさせてくれる。
 レヴィやロックにとって関心があるのは、バラライカがどうなるかじゃない。
 バラライカがなにかすることで、自分たちにどういう影響が出るのか、ということに関心があるだけ。
 バラライカもチャンも、正義や道徳は糞食らえという。なぜか。
 それは、彼らにとって正義や道徳は、自分たちになんの影響も及ぼさないから。
 関係無いなら、関係無い。
 ロックにとっては、それらは大いに関係があることで、だからしつこく正論をかます。
 けれどロックにとっては、その正論の中身自体に価値があるのでは無く、ただ正論を吐くことのみに価値
 がある。
 だから、周りはロックを嗤う。
 しかし、時折ロックはその正論の中身と合一して、言葉を吐く。
 そのとき周りは、ロックを嗤うことしかできなくなる。嗤うしか、無い。
 まぁロックはいいや、今回は。
 つまり、なにが言いたいかというと、バラライカやチャンが、街の調和を乱すモノを排除するために、
 共闘を約し街に一時の争乱を起こすのも、虐待と言うには失礼なくらいな地獄の拷問のみを喰らい
 生き延びてきた双子を殺すのも、それが彼らの生存に則しまた必要だから、ということだし、またその
 必要性の有無を論ずることにも満たない無意味な正義や道徳は、はなからお呼びでは無い。
 その代わりに、彼らが必要とするは「利益と信頼」。
 言い換えれば、彼らの仲で通用するオリジナルの仁義。
 お互いがお互いの利益となるように、行動し考え、共存共栄を指針に生きること、それを信用できる
 状態こそを求めている。
 彼らにとって、「共存共栄」という旗には興味は無く、ただ共存共栄しているという現状態のみが重要。
 だからロックが吐く正論に意味があるのはただひとつ。
 あんた達の敵にはまわらないよ、ということのみ。
 彼らの仲でちゃんと実用されている「正義や道徳」のみが、彼らにとって必要なものであり、また実用化
 されてるからこそ、その正義や道徳は命をもつ。
 だからたとえば、とあるひとつのキリスト教やなんかの教会があって、そこの神父だかシスターだかが、
 神の愛を解いて争いをやめましょうと説いて、それに従ってあらゆる武力闘争を停止することも可能。
 もし、彼らがすべてその説教には問答無用で従う、という共通の認識と黙約が成立しているのならば、
 それは充分生きている正論になりえる。
 まーブララグに出てくる教会は暴力教会でシスターも大層違った方に肝の据わった人だけど。あーあ。
 
 で、なんかものすごい勢いで話が逸れたような気がする。
 いやまぁ、後で話すけど、一応あの双子の話もそれに繋がってはいくんだけど。
 で、まぁ、そうですね、なにを話ましょうか、今回のお話でカッコよかったのは、まぁあれでしょう。
 バラライカとチャンの雨の下での秘密会合のあたりとか、自分が持ってるもの背負ってるもの全部丸々
 使って生きてるその姿は超カッコよかったね。
 つか、チャンとの共闘が決まって別れたときのバラライカの目といったらもう。あーこりゃ終わった。
 してやったり、というかあらかじめわかっていたというか、というより既にそういうことはどうでもいいくらいに
 次のことが満面に滲みだしてきて。
 あの姐さんの顔に浮かんでたのは、ヴェロッキオと双子をギタギタにした後の表情だよね。
 そして、よーい、どん。
 導火線に火がついちまったか。 byラグーン商会ボス
 レヴィさんスタート。暴力教会の用心棒付きで。 
 このふたりもまた、賞金稼ぎとして当事者に。
 ふたりの会話も俄然戦略性を帯びてきて、一直線に双子狩りに。
 このふたりが共闘するとは思わなかったけど、逆にそれが当たり前な雰囲気がつまりこういう関係なのね、
 と改めて教えてくる。
 戦略のお話中にもさりげに喧嘩してるけど、しっかりお話するところはお話してるし、彼らの最高レベル
 で動いてる。
 金、金、金!獲物は誰にもわたさねぇ!
 うん、共闘してるけど、絶対どっちかがトチったらその隙に獲物独り占めする気満々だよね。
 でもたぶん彼らは割と素直に分配するんじゃないかな。だって後腐れあったら後付き合いにくいでしょ。
 取りあえずマジギレ喧嘩で済むくらいの諍いはあるだろうけど。下手したら死ぬけど。駄目じゃん。
 取りあえずその覚悟に必要性を感じなければ、そこまではいかないだろうけど。
 けどバラライカの姐さんはその覚悟がおありのようで、後腐れ共々邪魔する者は全部潰す気配。
 んー、渋い。いいね、いい感じ。うわ姐さんがくるよ。
 そして、今回のMVPは暴力教会用心棒のエダさん。ていうか暴力シスター。
 追い詰めた双子に、賞金の8万ドルを上回る15万ドルの見逃し代提示されて、すっかり狼狽えました。
 ど、どうするよレヴィ〜。
 そこで狼狽えるあなたが大好きです。子供に負けてる負けてる。
 で。
 レヴィさんの一喝。
 パニクってんじゃねぇよエダ。
 8万も15万もそいつらの命も、あたいらが全部頂きだ!
 この人には誰も勝てない気がしてきました。
 姐さんとメイド以外。
 
 
 
 さて、本日のメインディッシュ。
 双子について。
 まず前回のお話について。
 前回第一話で見逃してたシーンがあった。
 雇い主にお払い箱宣言されて、ふたり残った部屋でのシーン。
 あのとき、ふたりは、視線を下に移してぼうとしてた。
 これ、どう考えようか。
 あれ、なにかがひとつ終わった表情だよね。
 ただ楽しく人を殺してバラして、そうしてただ無邪気に「お仕事」をしてただけなのに、それなのに雇い主に
 怒られて。
 考えられるのはふたつ。
 ただ怒られてしゅんとしてるだけで、そしてこれからの行く末を憂う沈黙か。
 それとも、自分たちがどんなに頑張ろうとも、それは絶対に受け入れられないことなのだという、絶望。
 私は後者だと思う。
 こうなることはわかってたことなのに、でもそれをわからされるたびにどうしても暗く深く俯いてしまう。
 誰かに雇われる、というある意味で彼らにとっては今目の前にある誰か達が築いた世界に入ろうとして
 、それに必死に従順になろうとしたのに、その世界はその努力を認めないどころから自分達を排除しよ
 うとする。
 彼らは、それをもう何度も何度も続けているんじゃないのかなぁって、あの表情を観て思った。
 私が思っていたのとはまた違う、彼らなりの哀しみというは、どこかでやはり私たちのそれと繋がっている
 ような気もした。
 排除されても排除されても、それでも何度も何度も、みんなの中に入れて貰おうと。
 そしてそのたびに、彼らは自分達のできることしかできなくて、自分達ではどうすることもできないことを
 どうすることもできなくて。
 彼らは人殺しや死体いじりを心底愉しいと感じているのは事実なのだけれど、しかしそれは決して
 許されない愉しみだというのを強く自覚してる。
 けれどその愉しさに耽る欲求は彼らのその自覚を遙かに超越(第二話で語られた彼らの凄まじい来歴
 がそれを圧倒的に作り上げた)したもので、彼らにとっては本当にどうしようも無いこと。
 彼らにとっては、その欲求が無ければ生きられない世界を生きてきたのだから、それは当然なこと。
 けれどその世界から抜け出した今は、それが逆に枷になってしまっている。
 彼らはしかし、それが枷になっていることはわかっていれど、その枷が自分にあることを哀しんでいる訳
 じゃない。
 彼らは、そうして自らの枷で行動した結果、その結果だけを取り出し、その結果が受け入れられない、
 ということ自身をこそ、ただただ哀しんでいる。
 彼らはありのままの自分をただ受け入れて欲しかっただけ。
 そのありのままの自分というのは、殺人鬼で吸血鬼な自分。
 彼らはその殺人鬼で吸血鬼な自分を責めることは無く、ただその自分が認められないことを哀しんでる。
 どうして・・・ぼくたちは・・・言われた通りに・・・やってるだけなのに・・・・
 一生懸命・・・・・わたしたちは・・・・・・・生きてただけなのに・・・・
 自分達の目の前にある世界を愛すれば愛するほどに、嫌われ憎まれて。
 それでも無力な子供は、ただ無邪気に必死に愛し求めすがるしかなくて。
 そして・・・
 愛し愛し愛し尽くし、なにを愛していたのかもわからなくなって・・・・
 愛と憎しみは同じことなんだよね。
 ヘンゼルとグレーテルは、世界を愛し続けるたびに、やがて憎まねばならなくなった。
 愛し愛し愛しても、それでも拒絶されることを怨み憎んで、憎んで憎んで憎んで、いつまでも自分達を
 愛してくれないことを憎み、愛してくれることを望み続けていく。
 憎悪は究極の求愛。
 そして前回のラストで、ふたごは雇い主を殺すということにいきつく。 
 僕達を愛してくれないのなら、殺す。
 殺してあげるから、私たちを愛して頂戴。
 けれど、彼らは知っている。
 それでも、誰も愛してはくれないと。
 そしてみんな、自分達の前から居なくなってしまうと。
 なぜ、殺すの?
 怒られたりぶたれるのが嫌だから。
 ふふふ。
 ふふふ。
 彼らは、それでも生きている。
 
 そして、第二話。
 正直、震えた。
 スナッフなビデオに映っていた、グレーテルらしき子の姿に。
 その泣いている姿に。
 それまでの展開から考えて、ヤバイ映像出るのかなぁとかプチ戦々恐々してた気分も一瞬で消滅。
 あー・・・これ・・・・これは・・・・・いやだ・・・・・・
 一瞬で自分の中のすべてのものが消えて無くなった気分。
 たぶん、たったそれだけのシーンが、ただただ、私を無にした。
 いやだ。これはいやだ。
 ただ泣いているだけ、そうただ泣いているだけ。
 でも、あの文脈、あの流れの中で、あのビデオの中で、ただ泣いている、そのことが、そのことが・・・・・
 百万言を用いるよりも実際にヤバすぎる映像を見るよりも、ただこの泣き顔だけで・・・もう・・・・
 泣き叫ぶ姿よりも無表情な姿よりも、ただ泣いているその姿がすべてでした。
 ただ本当に子供らしく泣いていたグレーテルのその姿。
 それは、この世に絶対に在ってはならないものでした。
 これを存在することを許した世界が、憎い。
 そして誰もが、自らがその世界の担い手のひとつであることを、知る。
 なんの言い訳も、逃げ道も無いほどに、はっきりと。
 あの子らはそこから始まり、そしてそこに居続けている。
 それでもまだ生きている。
 けれど、そうして生き延びている彼らを受け入れてくれる者達はいない。
 というところで、まずひとつ、彼らの側に立つ場所を得られた。
 周りは全部、愛する敵ばかり。
 ヘンゼルとグレーテルが生きるということは、周りの人達を殺すということであり、世界を浸食するということ
 。
 彼らが生きた分だけ世界は壊れ、それを治すために世界は双子を駆除せんとして襲いかかってくる。
 いや、世界では無く敢えて社会と言おうか。
 彼らの目の前にあるひとつの社会は、彼らを受け入れてはくれない。
 だからそれ以外の社会がこの世界の中には無いだろうかと、普通は考える。
 あの子達は、その他の社会を探す術を持ち得なかった、それゆえにそれ以外の社会はありえず、
 ゆえにその社会と世界は等しいものとなる。
 逃げ場と生き場は無い。
 だから、作るしかない。いや、作るということが生きるということなのか。
 ならば、侵すのみ。攻めて攻めて、憎んで憎んで、生きていると叫び続けるために。
 違うかな。
 生きてるから、気付いたら侵攻してたんだね。
 それを無自覚にするか、自覚してするか、それだけの選択肢しか、あの子達には与えられなかった。
 そっか、ぼくたち最初からあの人たちのこと、壊してたんだ・・・・
 だったら・・・・わたしたちが受け入れられるわけ・・・無いわよね・・・・
 うん。
 あの子達は、やっぱり本質的なところで、求めてる。
 自分を受け入れてくれる世界を、社会を、人を。
 だから、壊す。自分が壊していることに、世界を憎んでいることに、底知れない快楽を感じてる。
 そして。
 だから、その快楽が、激しくその世界を愛し求めていることの中に、あの子達は生きさせているといえる。
 違うね。
 愛し求めているから、快感なんだよね、世界を壊し憎むことが。
 そして、ヘンゼルとグレーテルは、人を殺し続け、それがまた彼らを世界から遠ざけていく。
 あの子達は、そしてその世界と隔たっていく感触を、ただただ愛おしく抱き締めている。
 だって、生きているのだもの。
 だって、愛しているのだもの
 
 
 さて、第三話が、本当に、愉しみになってきたところで、おしまいということで。
 いやもう、なんか言いたいことの要は言えたしね。
 今回はあの双子そのものの感触はあまり掴めなかったから、悪趣味ちっくなことは書けなくてね。
 うん、まぁそういうこと。
 今回はバラライカの姉御とチャンの旦那とレヴィさんとエダさんでOKと。
 んで、あのグレーテルの泣き顔で、終了、と。
 あとは・・・・・・うーん、細かいとこで、前回もあったけど、音声が消されてるとこあったよね。
 前回はバラライカがヴェロッキオに罵倒を返したくだりの一部の声が消えてたし、今回は、レヴィとエダとの
 会話中にエダが双子に言及したあたり(たぶん殺すかなんかのスラングだと思う)が消えてた。
 んー、既に放送コードにバリバリ引っかかってると思われる台詞連発なのに、それでも消されるということ
 は相当スゴいんでしょうね・・・・・一体なに言ったんだか。
 あとはそうですねぇ、冒頭のシーンが謎だったんですけど、あの双子の着替え。あれどういうこと?
 グレーテルがおもむろにあの長い髪(カツラ)を外して、ヘンゼルがそれを被ってカッコとしてはふたりが
 入れ替わってたんだけど、実際エダ達と対峙したときは、少なくともふたりの声から判断するに、入れ替わ
 ってはいないように思われたんですけど。
 いや明らかにエダにお金見せつけてたグレーテルのかっこした方は、グレーテルの声してたし。
 まさか制作上のミスな訳は無いだろうから意味はあるのだろうけど、そもそもそうなるには双子がエダに
 会う前にもう一度着替えるか、もしくは声真似をしてるだけか、もしくはほんとに中身が入れ替わったとか、
 ええと、どうなってんの?なにいってんの? (錯乱)
 
 取りあえずその辺りの解決も含めて、三話に期待しています。
 解決されなかったら、見なかったことにしておきます。ふふふ。
 
 
 

 

-- 061009--                    

 

         

                           ■■アニメを評価するということ■■

     
 
 
 
 
 秋の速度がゆっくりと上昇していくのを体感できる今日この頃、皆様如何お過ごしでしょうか。
 朝晩の冷え込みも爽やかに、夕暮れと共に訪れる虫の音も涼やかに、そして夜の静寂に煌々と
 浮かび上がる月光も穏やかに、ますます心地良い季節となって参りました。
 この緩やかな時の中でこうしてなにかを書ける場があることに喜びを感じながら、今夜もまたのんびりと
 書かせて頂きましょう。
 改めまして、ごきげんよう。
 紅い瞳です。
 今夜もひとつ、よろしくお願いします。
 
 さて。
 すっかり御機嫌な書き出しに酔っているうちが華で御座いますので、脈絡無く淡々と当たり前のように
 本題に入らせて頂きましょう。
 ぶっちゃけ、アニメのお話です。
 アニメを評価するということ、という題の通りで御座います。
 アニメって、それを観ることができるのと同時にそれは評価することもできる代物ですよね。
 観るということが評価するということでもあり、評価するということが観るということでもあります。
 たとえば観て、それを面白いと感じたこと、それは既にそれを評価した結果でもありますし、またそれと
 同様に特に面白いとも面白くないとも思わなくとも、それが視聴した結果としての評価というものにも
 なります。
 そういった簡単な自分の感情というものを評価基準としてアニメを見ることはできるし、そしてまたそうでは
 無く、他の基準を設けて評価することもまたできる訳です。
 たとえば作画のレベルやら音楽のレベルやら、そういったひとつの作業の結晶としてできているものを分解
 して、ひとつひとつ完成度としてはかるやり方もある。
 純粋にいえば、そもそもその作画のレベルやら音楽のレベルやらというのも、どういった基準ではかって
 いるのかは人それぞれだったりするのですけれど、しかしそこにアニメの「作り手」の視点というものを
 持ち込むことによって、その辺りの基準が統一されたりすることもあります。
 作り手として、あれを作るには相当手間暇や労力や資金がかかったとか、そういった観点でその不確か
 な「レベル」というものに肉付けをして顕現させ、それを基準にしてアニメを視聴し評価していくことが
 できるのです。
 アニメとは見るものであり、また作るものでもある、という意識がアニメを評価するという際には、
 ひとつ重要なものとして存在しています。
 それは作り手側だけの意識では無く、現在において特にコアなアニメ視聴者もその意識を持ち、また
 それを作り手側と共有しているという出発点から、様々なものを「読み手」としての視聴者は生み出して
 いきます。
 いわゆる同人的な創作活動や、それに根ざしたアニメに対する評価観は、すべてそこに端を発しまたそ
 れに辿り着くことを目的としているのです。
 如何に素晴らしいアニメを「作る」ことができるか、その意識によって読み下されたアニメを観てそれを
 評価する方法は、先日行われた文化庁メディア芸術祭における、いわゆる制作側の専門家達や、
 、多くのオタクなアニメファンが「萌え」の意識と並んで採用している評価方法でしょう。
 
 また、こういう評価方法もあります。
 アニメをひとつのアニメ史として体系的に捉え直し、その位置づけを以てアニメを評価するという方法。
 アニメで語られるテーマや表現技法を抜き出して、それを元にして体系に組み込んでいく。
 多くの場合、この評価技法の中での位置づけでどれだけ根本的位置を占められるか、ということ
 がそのアニメの評価の要にあります。
 この評価をする場合には、それこそ多くのアニメを観なければなりませんし、またどれだけ観たかによって
 その組み上げられた体系の価値が決まってきます。
 一部のアニメ評論家と呼ばれている方々の中では、その体系は共有化され、また彼らはその体系に
 どんどんと作品を組み込むことによって、アニメをすべて評価していく基準を作っていきます。
 
 
 さて、なんだかもう既に書いていてうんざりしてきましたけど。
 ていうか書き疲れましたけど。はやいなおい。
 つまりね、なにが言いたいかというとね。
 さきほども書きましたけれど、先日文化庁メディア芸術祭なるものが行われ、まぁ色々とそういった
 アニメの表彰とか体系化みたいなものが行われたのですよ。
 でまぁ、私がおそらく現時点で最高級だと評している「蟲師」というアニメが意外な高成績を収めまして
 ね、私としてはもう雪降って庭駆け回る座敷犬みたくきゃんきゃん歓喜の声をあげてるんですけどね、
 でも、複雑。ちょっと、複雑。
 なんていうか、んー、あんまこういう賞みたいの、好きじゃないんだよね、私。
 いや、評価された、ってこと自体は嬉しいけど、それは後からくる喜びみたいな感じでね、褒められれば
 嬉しいけれど、褒めて貰うのが目的では無いっていうか。
 なんていうかね、雰囲気として、こういうのが目的になっちゃうと、アニメとして厳しいかなって。
 そりゃ今すぐそういうのが目的として、アニメ全体がそういう方向にいくとは思わないけれども、流れとして
 そういう方向にいきそうな雰囲気があって、ちょっと心配なの。
 んー、うまく言えないんだけどさ。
 なんていうか、アニメを評価するってことが、ほんとにどういうことかわかってんのかなぁ、みたいな。
 もっとこう、自分達が観てるそのアニメは、そうして観てる自分がもう既に評価してるってこと、わかってる
 のかなって。
 そして評価するってことで、もうそのアニメに関わってるってこと、わかってるのかな、って。
 そこらへんの意識、まえからずっとしてて。
 いま、私たち、っていうかアニメ観てる人たちにとって、この今のアニメ環境ってすっごい貴重だと思うの。
 フランクな言い方すれば、極限的に自由っていうか、もうほんと、どう観ても結構どう創ってもOKみたい
 なさ、そりゃ商業的な縛りはあるだろうけど、それでもそれを越えていこうというエネルギーはあるし、
 また観る側、つまり一般的な視聴者やファンからしても、たんに面白いとか可愛いとか、ちょっとコアに
 萌えとかいうだけとかも、カッコつけてなんか私的に論じてみたりだとか、それ利用してなんか書いてみたりだ
 とか、なんかの学問やらそういうのに結びつけてみたりだとか、そういう非常に多彩な受け取り方という
 「評価」方法が満ちあふれててね、すっごい豊かだなぁって思うんですよ。
 うん、私も昔哲学の教授だかなんだかが書いたもののけ姫やら千と千尋やらについての文章読んで、
 うわこりゃすげーわ、こんなことして貰えるアニメってほんと幸せものだよな、みたく思ったもの。マジで。
 ていうかそういうアニメと接することができる私達は大変幸せだなぁって。
 
 そう、だからね。
 アニメっていうのは、前述したように、作り手としての意識からの評価や、体系化されたアニメ史として
 まとめて受け取る評価だけをしていると、いつしかほんとうにそのアニメの可能性を閉ざしてしまうことに
 繋がってしまうと思うんですよ。
 勿論、そういった評価もそれはそれで良いのだろうし、私だってそういう語り口でアニメのお話をさせて
 貰うことはありますよ、だって結構愉しいものね、っていうかチャットではおまえそればっかり話てるしな、
 まぁいいじゃん、みたいな、で、そう、そういうこと。
 それだけじゃ、ね、ということなのです。
 アニメだけ、というわけじゃないですけれど、少なくともアニメというのは、それはひどく個人的な体験で
 あり、またその体験を共有したいといういわゆる宗教みたいなノリで他の人達と熱狂できてしまうことは
 あっても、やはりその大元にあるのは自分とアニメとの生の対話なんですよね。
 上述の哲学的観点から書かれたアニメ評にしろ、それはアニメを「評価する」という目的を以て書かれた
 ものでは無く、そのアニメを観てこういうことを私は考えたし、またそのアニメはこういうことを導き出して
 くれるのじゃないか、ということによって成り立っているものなんです。
 作画的に崩れてようと、伏線が回収されてなかろうと、滅茶苦茶だろうと、そんなことよりも、あんたは
 一体そのアニメの中になにを観たんじゃい、ってことが、そのアニメを観てそれを評価することの上で一番
 重要なことなんだと思うのよ。
 ていうか、だからアニメに順位なんかつけられる訳無いんだけど。
 で、結局そうやって観ることで自然そのアニメを評価してることになるのだと思うし、やっぱりその中で
 自分的にはごく素直に順位付けされてるとは思うんだよね。
 勿論点数なんかつけられないけどさ。
 けどその順位付けを目的にすることは無いし、また逆にそれを目的としてアニメを観ようとすると、それは
 広い意味で自分の箔付けのために観ることにしかなれないと思う。
 自分のアニメ評価方法を高めることが目的で、またその評価方法の確かさを誇るだけていうか。
 なんかそれは違うよねって、思うよね、やっぱり。それ、アニメかんけーねぇじゃん、みたいな。
 あんたはアニメを評価するのが目的なんか、それともアニメを観るのが目的なんか。
 つまり、そういうこと。
 
 うん、だから色んな見方や評価の仕方があってこそのアニメの豊かさだと思う。
 ぶっちゃけだから私的にはアニメに賞なんていらないし、むしろアニメ史なんて馬鹿馬鹿しくて泣けてくる
 くらいなんですよ。
 そりゃー話のネタとしては、こういった試みは面白いですし、また他の人達とそういった話題で盛り上がれる
 のは楽しいですよ。
 順位付けで喧々囂々してみたり、訳わかんないアニメ史捏造してみたり、そういう愉しみはありますよ。
 わかるわかる、おおいにわかる。ていうか、愉しい。
 でもね、それを本質的なところにマジで持って来ちゃうのはどうかと。
 その観点でアニメってこういうものだって括っちゃったら、私はもう、そういう愉しみすら無くしてしまう。
 アニメファンて、孤独だよ。 (アニメファンだけじゃないけど)
 その孤独を理解した上で、他の人たちと盛り上がることはできるけれど。
 そしてね、私は思うんだけど。
 そうした一個のアニメファン達の純粋な想いがそれぞれ独立したまま生きていけることができている限り、
 アニメは永遠だと思うし、逆にその孤独で自由なアニメファンの内心を束縛した時点でアニメは死ぬと
 思う。
 或いは、ただアニメという「無意味」な被造物だけが残るだけなのかも。
 ま、それはつまり、私たちアニメを観てるひとりひとりの人達が、それをしっかり「観る」という「評価」をその
 アニメの存在理由として与えてやんなきゃいけないっつーことですね。
 どれだけ、そのアニメを豊かに読み解くか。
 別にそれはひとりだけでやることでも無いし、ひとりだけでできることでも無いと思う。
 ていうか、もう沢山過ぎて死にたくなるくらい膨大な数の人たちが、それぞれちょっとずつ真摯な感想を
 そのアニメに寄せることができれば、その集積の上に豊かなその「アニメ」が華開くのだと思うよ。
 うん、そうだね。
 だからさっきは思わず否定しちゃったけどさ、アニメを評価する賞みたいのあっていいよ。
 あってもいいけど、やっぱりそれは本質的にはアニメを創った人達へのご褒美程度か、或いは悪く言えば、
 作り手側の自己満足(少なくとも私は作り手の意識に本質的なところでは一切荷担しないから)的
 自画自賛にしかならないものとしてだけ、その存在は許されるものだと思う。
 ていうか、あくまで(制作側世界の)内輪的な感じでお祝いすればいいと思う。
 無論、私もそのお祝いには参加させて貰いますし、たぶんきっと私も嬉しいと思う。
 だって蟲師が2000年代で第一位になったんですよ、これを祝わなくてなにを祝うというのか!(落ち着け)
 でも、そこまで。
 そうして表彰されたことで変わるのは、蟲師というアニメの側にはなにも無い。
 私的にも、これで蟲師がもっと他人様の目に触れる機会が増えてラッキー、くらい。
 だから、お願いです。
 まだ大丈夫なのかもしれないけれど。
 こういった賞を貰うことを目的にしてアニメを創ったりは、決してしないでください。
 そして。
 こういった賞なり体系化なりに惑わされて、あなたの観ているものを見失わないでください。
 紅い瞳からの、余計なお世話的お願いです。
 あなた観ているそのアニメは、あなたが観ているゆえにあなたが評価するものであり、またそのアニメとの
 対話の時間はまさにあなただけの神秘体験なのです。恥ずかしい台詞禁止。
 ていうか、なんだかんだいっても、みなさんそこらへんはちゃんとわかってらっしゃるのかもですけどね。
 わかっちゃいるけどついつい流されてごめんなさい、みたいなこともまた、あることですし。
 私は大丈夫ですけどね。 (目を泳がせながら)
 
 
 そんなところでしょうか。
 
 
 ◆
 
 と、秋の夜長に退屈なことを書き殴ってみたわけですけれど如何でしたでしょうか退屈ですかそうですか。
 ごめんなさい。
 で、今期のアニメのお話を致しましょう。 (逃げるように)
 んー、まぁ、ほぼ一巡した感じでまぁまぁ、ってところでしょうか私的には。
 そうですねぇ、ブララグ2がひとりだけもうゴールしちゃったくらいに飛び抜けてる感触ですか。
 あとはなかなか、横並び一線と評するにはちょっと抵抗があるくらい、程度な感じで適当に並んでます。
 こー、なんていうのかな、それぞれ違う面白さはあるんだけど、みんな同じくらいな重量感で、その、
 どれも抜けてこないっていうか。
 印象評価万歳。
 で、レッドガーデンが色彩的にはかなり違うので、連続感想に挑戦したい気概はあるのですけれど、
 ただこう自分のなかにぐっとくる強さみたいなのがないので、もし書くとしたら相当な難行になりそうなんで
 すよね。
 うん、却下。
 たぶん2話見ても力湧いて来なかったら、感想は諦める。
 で、一応、ブララグの連続感想書くかもです。かなりいい加減なやつを。
 毎回印象的なことをたらたらと垂れ流して、レヴィさん万歳とか姐さん怖いとか言って〆るだけかも。
 まぁ、あとは適当にその回のお話見て考えたこととかを無秩序に書き並べるくらいで、って、よく考えたら
 それってすっごく感想っぽいよね、むしろ普通な感じがするよ、よし、それ採用。決まり。
 なんか流れ的に勝手に決まっちゃいましたけどw、まぁせいぜい頑張ってちょっぴり本気とかも出して
 やってみますね。
 たぶん悪趣味万歳な方向にちょっと本気になるだけかもしれないのは、ここだけの秘密。
 期待はしても無駄です。 そんなものは犬にでも喰わせろ  by 張の旦那
 
 で、あとまだ期待してるので見てないのは、地獄少女2。2は2です。
 あと働きマンもあったっけ。でもいいや。
 んで、地獄少女はアニマックスとキッズステーションのふたつで見れるのでどうしようかなって思ってて、
 一応1のときはキッズのを録画したから2もそうしようかなって思うんですけど、アニマックスの方が放送日
 早い上に、キッズは今期当たり日の火曜で大変なので、どうしようかなって。
 ていうかほんと火曜日多すぎ。 (ブララグ2、デスノ、レドガ、ゴーハン)
 ということで、土曜日放送のアニマックス版を観て録画しようと思っていたら、その日はちょうど出ずっぱり
 で家に帰ってくる頃にはすっかり録画予約なんて忘れて(ていうか時間過ぎてたし)てもう駄目なんで、
 大人しくキッズにしますです、はい。
 うん、少年陰陽師も録画し損ねたしね、もういいよ土曜は。
 てな感じで、今期もよろしくお願い致します。
 あ、一応感想の更新日はまだ未定ということで。ぼちぼちやってきます。
 
 
 
 というあたりで、今夜は筆を置くことと致しましょう。
 あー疲れた。あーすっきりした。
 
 それでは、ごきげんよう。
 
 
 
 

 

-- 061005--                    

 

         

                                  ■■ 雨×匂い ■■

     
 
 
 
 
 
 
 
 --------
 ------
 ----
 
 夜露よりも黒い血の臭い -
 涙よりも紅い雨の匂い -
 跳ね飛ぶ滴のリズムに乗って -
 謳い散る音の流れに染まって -
 さぁふたりで語りましょう -
 ねぇ姉様  --
 ねぇ兄様  --
 
 
 
 
 
 
 ああもう、駄目だ。駄目じゃんか! (挨拶)
 
 改めまして、ごきげんよう。
 ってブララグ2があまりにも面白い上に楽しくて凄くて堪らないので、これはもう一気に燃え上がってカッコ
 イイものを書いちゃいましょう、というスタンスで練りに練って頭の中を掻き回していたら、全部壊れて
 しまったという成れの果てで御座います。
 ああもう、無理無理、わたしゃにゃ書けんさ、ああ書けないさ!
 ていうか、カッコ良く書こうとすればするほど言葉が縮こまっちゃって、結局魂の抜けた抜け殻しか残せ
 無いっていうのはあまりにも悲しいですね、ほんと、失望した! 自分に絶望した!
 OK。
 いいよ、いいさ、それはそれで。オーライ、わかったよわかったさ。
 とにかく、書こうとした心意気を買うよ。自腹切ってあげるよ。ほれとっとけ。
 うん、少しは頑張った形跡が見られたのは、進歩として受け取るよ。
 よし、ならば、そこからだ。
 それができたならば、まだこれからだ、その頑張りを礎に次ぎを書けばいい。
 それだけだ。それだけさ。
 よし。
 
 
 (画面と睨み合い中)
 
 
 はい。
 
 
 
 
 無
 
 
 
 理
 
 
 
  。
 
 
 
 
 駄目でした、駄目ですね、駄目でしょうこれは。
 やっぱりブララグは書けませんよ、一期のときも結局書けませんでしたからね。
 あのカッコよさ、という言葉でしか表せないアレを書くのはどうも私には無理みたい。
 ていうかカッコイイという言葉でしか処理できない私がアレなんですけども。
 スラングなリズム感にそっと乗ってそのまま爽快な気分にドライブかまして、そうして見つめた水平線の
 彼方になにかを見てるあの気分を、一体どう書けばいいのか、わかんないのよ。
 明らかにスタイリッシュ(ちょっと濃いけど)な形にまとめて、それで素晴らしいスピードでどこまでも行こう
 という絶望的な爽快感があって、ついついそれにお供させて貰ってるうちになにも書けなくなってる。
 それ自体は別にいいのだし、それがブララグの一番楽しい愉しみ方だと思うよ。
 すべてを了解済みのものとして乗りこなして、それはなんだか凄く大人な気分を感じられるからね。
 でも、当然そういった作品側のスタイルが、それだけでこのブララグというもの自体は成り立つことはでき
 ないということを教えてくれるんだよね。
 わたしら、誰ひとりとして、あの画面の中の人物のこと、知ってる人はいないんだよね。
 わたしらに出来てるのは、ただただ画面の中の人物達に乗り移り的便乗をさせて貰って、その境地から
 刺激的な時間を味わうことができるだけ。
 だから私たちにはレヴィのこともロックのことも、あの双子達のことも、ただそれを見ることで感じる興奮でし
 か理解することはできないし、またその興奮を得るための材料としての理解しか、そこには無い。
 ま、さっきも言ったけど、このブララグにおいて、それが最高に愉しいんだけどさ。
 あんな凄まじいのを、ただ「凄まじいこと」とコード化して丸飲み的に味わえば、それですっきり爽快だもの。
 でも。
 だからこそ、ブララグはそういった強靱な「愉しい」という障壁があるからこそ、それを越えてある、もっともっと
 もっと根本的に凄まじいなにかを感じ取りそれを解することが出来たら、それこそもうなにもいらないってい
 えてしまうんじゃないのか、とブララグ観てるときはいつも思うのよ。
 だってさ、あの双子、どうやって理解する?
 いや、理解ていうか、実感とか、或いはあれをどう言葉にしてあなたなら表せる?
 一望して、一考して、自分の頭の中にひどく単純な分類上の言葉しか、そういうときに浮かんでこない
 のが、とっても悲しい。
 ごめん、ほんとブララグの人物達は、容赦無いんだもの。
 ブララグを観てると、ほんと、本気にさせられる。
 そしてその本気を以てしても書けないことが、容易に知れてしまう。
 ああもう、ああもう、ほんと自分に自信が無くなるよ。
 ただただ最高級のジェットコースター的愉しみに興じるしかできないなんて。
 愉しくて愉しくて、だから、困ってしまう。
 というか、愉しめば愉しむほど、ブララグから逃げてるような気がしちゃう。
 
 ということにはっとして、慌てて取るものも取りあえず特攻かけると、今日の冒頭みたいな感じでアウト。
 気持ちいいくらいに門前払いでした。ああそうだよ鼻で笑われたさ!
 ていうか今日のアレだって、「愉しみ」の方向性で書こうとしたものなのに、それすら却下だもんね。
 あーくそ、私がカッコつけようったってそうは問屋が卸さないってことですか!
 てな感じで、なんかもうやるせなくて虚しくてくけーって感じで奇声まじりで御座いますです。
 まぁ、ぶっちゃけ既に八割方頭の中でブララグが暴れ回ってるから、その勢いでガンガン叫びたいんだけ
 ど。
 バラライカの姐さん怖かったですもんねぇ、とか。
 ほら、あの人って淡々と引き金引く人じゃないですか、でもあの人って別にそういうのがマヒってるっていう
 かしっかりちゃんとこっち側の人でただすべてを覚悟完了した上での淡々さだから、ちゃんと「人殺し」して
 るんだけどさ、でそういう人が滅茶苦茶怒ってるんですよね。
 大概そういう人の描写って、地獄の鬼も裸足で逃げ出すような激烈な表情とスラングを画面が
 真っ赤になるまで投げつけるか、或いは一瞬で表情が無になって一切の感情が消えたように見えて、
 ただその殺害という行為を黙々と淡々とこなしていくかの二通り。
 ところが大尉殿は、まず最初に普通な感じにイライラした感じを見せて、まぁ不機嫌だなぁという感じは
 受け取れて、次に非常に厳しい顔をして、やっぱり怒ってるなぁという感じも受け取れて、そうして普通に
 怒っている様子が続いてその調子で事後処理なりこれからの対策なり軍曹殿への訓示なりをして、
 つまりまぁ怒ってはいるけどそれなり程度の怒りかなぁ、という感じで収まるかと思いきや、最後に一言。
 
 『憎悪を込めて、殺してやる。』
 
 怖。
 ていうか、死んだな。
 いやもう、それ以上なにも言えない怖さだよね。私が標的だったら既にお祈りタイムに入ってるね。
 姐さんは上述の通り、別にアレな人じゃないので、だから淡々と怒りを確実に込めて行動する。
 暴発はしないしただ仕事の一貫としても捉えない。
 膨大な怒りをそっくり込めた上で仕事を確実にこなす、それがバラライカ姐さんの凄み。
 仕事を復讐の手段としても使えちゃう、おっそろしいお方。
 鬼の表情よりも無表情よりも、それが一番怖い。
 
 ま、今回はレヴィさんとロックはただ解説役にまわってただけなんでどうと言うことは無いですけど、
 あでも暴力教会のエダさんとの絡みではそれなりに激しくやってくれましたけど。
 相変わらず沸点低いなぁレヴィさんは、と思いました。
 で、肝心の双子っ子。
 うーん、銀光さんが萌え狂う面白いって言うのわかるなぁ。
 こーれはすごいわ、この完全な私たちとの方向性の違いが。
 思わず(作中の人物も言ってたけど)ビョウキだって言葉を投げつけて逃げ出したいくらいだもん。
 でもその怖さよりもあのふたりが心底自分たちの行為と置かれている状況を愉しんでいるのが伝わって
 きて、だから確かにそれはすっかりビョウキの一言で書き捨てにできるのだけど、それと同時にだから私
 たちは彼らを通して彼ら自身のその「愉しみ」を味わうこともできちゃうんです。無論、歪曲してだけど。
 血の臭いに命が終わる瞬間に愉悦を感じること、それ自体の巨大な愉しみというかなんというか。
 あーあ、悪趣味だなぁ、あはは。
 でも、甘美だよね、気持ち悪くて吐血しそうなくらいに。
 そしてその血を掬って色々やってみたい、みたいなことを書くともう全然駄目な方向にアレなので却下。
 ええと、話を進めます。
 
 で。
 すごく面白いのはここからで。
 私の場合、普通ならそこで、そういった愉しみを越えたところにあるべきはずの彼らの哀しみというもの
 を見出し、その観点から考えていきたいと思うんだけど。
 彼らの目、「普通」だったよね。
 演出として、一部激怖に描かれてたけど、ほんとのとこ、彼らはあれが当たり前なんだよね、掛け値なし
 に。
 不覚にも、先ほどの愉しみの観点から見ても、それはある意味で一致できてしまうほどに、彼ら自身、
 本当の本当にそれを愉しんでるんだよね。
 彼らは狂ってない。正常なんです。
 ただ私たちとは向いてる方角がまるっきり逆なだけで。
 つまり、哀しんでなんて端からいないんですね、だから狂うわけも無い。
 だから私の思惑に沿って書くことは、実はできない。
 本当の意味で、あの子達のことを書くということは、ごくごく平凡な私たちの生活を綴るのと同じことに
 しかならない。
 たんにそこに書き込まれる単語の種類がちょっと違うだけなんですね。
 正直、それゆえに、あんまりあの双子のことを書くということは、そのことに本気になればなるほど無意味な
 ことになるんですね、私がこの日記であまり日記的なことを書かないのと同じ理由で。
 もし書くことがあるとしたら、彼らを見つめる他の人物達のことなのかな。ロックとか。レヴィも面白そう。
 と、思ったとき。ふとこう思った。
 ほんとに、そうなのかな?
 や、それは確かにわたしらの観点から見た哀しみという言葉で彼らを読み解くことに意味は無いかもだ
 し、実際それを強引に行ってみれば、こっちの気が狂っちゃうだけていうかただ正論的感覚ぶつけてすっ
 かりスルーされちゃうだけになるのは目に見えてるし。
 それでもあの子達はほんとは哀しいんでるんだ!それを自分たちではわかってないだけなんだ!
 と、ロック的に叫んでもうふふと笑みを返されるだけだろうし、たぶん私も微笑んで返すと思う。
 だから、そういうことでは無いのだと思う。
 そうじゃなくて、私が思ったのは、ではあの子達自身の、あの子達固有の「哀しみ」というのは無いの
 だろうか、ということ。
 例えばすぐに思い付くのは、人をうまく殺せなかったときだったりするのだろうけれど、ならそういった哀しみ
 ってどういうことに繋がるんだろうって考えたくなるんだよね。
 なんていうか、そういう哀しみの中にも、対人に関係するものもあるのだろうし、そこではきっと自分達が
 他の人達からは異常と見られているということの意識はあるはずだと思うんです。
 勿論それが私らの哀しみの感覚に直結することは無いのでしょうけれど、では逆にその辺りをあの子達
 はどう考えているのかということ自身に興味はありますし、またそれは充分私でも理解できることなのだと
 思います。
 だからはやく、あの子達の言葉を聞きたい。もっと聞きたい。
 あの子達の姿が愉しませてくれて、あの子達の言葉がさらにその向こうを見せてくれる。
 ていうか、そうなったら、いいなぁ。
 いや、なんか、そんなことさっぱりで豪快爽快に画面を真っ赤に染めてくれるだけな気がするけど。
 だってブララグ、難しいもん。
 
 
 ◆
 
 さて、すっかり話に夢中になって自分が日記書いてること忘れてました。
 ええと、今日はなんかブララグの魅力について書いたり、なんだったら次回もまたなにか書くぜみたいな
 ことを書くだけのつもりだったんですけど、こんなことに。
 すっごいノリノリで横道に逸れたよね。なんか他のものからも大いに逸れちゃった気もするけど
 で、あとはちょっと見た新アニメのちょいとした感想みたいな感じで。第一印象万歳です。
 
 
 
 ブララグ2:
 脳天直撃で大変です。一期の噂を頼って二期に飛び込んできた人の6割くらいは素で引いたかもって
 くらいにブララグ史上最高のぶっ飛びを魅せてくれました。エグいエグすぎるよ!ていうかその視聴者への
 色々な配慮を試行錯誤の上にご丁寧にホームランにしてくれたようなやる気満々さが凄すぎてもう
 吐き気がしてきたくらい。すごい、これはもう完全にノンストップでしょう、このレベルで最後まで走りきる
 気満々ですよね。既に今期最高傑作の称号を送りますこと大決定で御座います。最高。
 
 デスノ:
 映像の破れかぶれさと安定への揺り戻し志向の葛藤がちょっぴりそのスタイリッシュさに貢献してた。
 決してカッコ良くは無いんだけどナマな感じがしてほんと向こうから息づかいが聞こえてくるような感じがあっ
 て、これはこの演出をうまく使いこなせばアニメなりの時間を作れるんじゃないかと思ったね。
 ただやっぱりロジックはできる限り分量落とさずに盛り込んだ方が良いとは思う。映像で魅せようと思った
 瞬間に、すべては瓦解しちゃうと思うから。あの生々しいスタイルの中でどれだけ空々しいあの原作の
 ロジックを盛り込んでいけるかってとこが勝負ところだと思う。ま、原作とは違うストーリーにすれば話は
 別な感じだけど。
 
 ごーすとはんと:
 駄目。いや駄目。デスノと対照的にカッコつけようという意識はあるけどそれを以てしても隠し切れずに
 滲み出てくる中身のダサさが痛々しくて泣ける。これはキツい。登場人物の肩書きを含む設定とかその
 辺り自体の凡庸さというか底の浅さというか、そういうのをちゃんとマジめに反芻して作品の中で生き物と
 して咲かせれば問題無いのに、その設定さながらにそれにすっかり喰われた駄目駄目なキャラばかりで。
 あの設定と心中する覚悟が無ければそれまでなんだもん、いくらなんでも楽しめなかったよ。
 もうちょっとアニメ化の時点で再構成再生産すれば、生きられたかもしれないなぁ。逆に原作はちゃんと
 してたりしたらどうしようと今更w
 
 レッドガーデン:
 やばいの来た。これは問題作が来ましたよ。うまく表現できません。たぶん今まで見たことないタイプ。
 その独特な絵柄でひっぱる訳でも無く、キャラ設定で動かす訳でもなく、もう既になにかがどんとそこに
 置いてあって、それを一生懸命に絵もキャラも追いかけているっていう切実感があるんですね。
 すごくハラハラするの。次はなにがあるんだろというより、次にくるなにかに対してどうしたらいいのかという
 戸惑いと焦燥が満ちあふれてて、そのもう、どうしよ。感想書きたくて仕方ないんですけど。どうしよ。
 
 武装練金:
 これはいいものだ。ヒーローモノというか少年漫画的ノリというのをよ〜く咀嚼してそれをひとつの理念に
 練り上げてその理念を元にして改めて作品にしたというか。少年漫画という概念そのものがそこにあると
 いうか。なにいってんだ。とにかくなんだかそっと含み笑いできてしまうような、そういう可愛いところがある
 の。つまり少年漫画好きのための少年漫画好きによる漫画なんですね。だからたぶん純粋な意味では
 少年漫画じゃないっていうか。どうでもいいですねはい。それよりまひろに萌えたとかまひろちゃんって渋く
 て可愛いねとかていうか渋いってどういう表現だよとか、そういうことが語りたいんですねそうですね?
 ごめん、私はまひろちゃん派。ごめん、聞かなかったことにして。
 
 
 
 
 はい、おしまい。
 
 えっと、いま何時?
 
 
 
 
 

 

-- 061003--                    

 

         

                              ■■ホリックという生き方■■

     
 
 
 
 
 はい、ごきげんよう、紅い瞳です。
 ホリックのアニメが終わってしまい、すっかりと気が抜けています。
 そして次に控える新しいアニメに対する気構えの必要性に駆られて、ゆっくりとホリックを想うことのできな
 いことに人生の儚さを感じています。
 要は、やる気がでないだけです。
 
 はい。
 とはいえ、ホリックについてのことはしっかりと書いておかなければいけませんよね。
 先日2〜3年前の日記のログを読んでて、その頃は随分とアニメに対する思い遣りというか愛というか、
 そういうなにか一体感のようなものがあって、清々しく読めてしまったのですけれど、それはつまり今は
 そうでは無いということを導いてくるあたりで溜息がほろりと出てしまいました。
 そう、愛だよ、愛。愛が無くちゃだめだよ!
 どうもね、そういうのを「萌え」と一言で片づけてしまってはい終わり、って感じでさらさらっと流しているのが
 最近の私の中の流行でして、それってよく考えると、「萌え」ということで自分になにかそういう感情がある
 ぞという意思表示はしていれど、それで満足してそれ以上を言葉にしなくても良い大義名分を得てしま
 っているだけなのでは無いかと思いました。萌えっていってそれでいいのか!
 なんていうか、アニメよりも感想を重視しているんですよね。
 アニメ自体に言及するということが、一段低く扱われているところ、ありますね。
 まぁそれはそれでも良いのですけれどね、無我夢中に自分の作っているものに打ち込むということ自体
 は。
 ただやっぱり、それだと最近の感想は特にそうですけれど、読み手に解釈や理解を求めるものばかり書い
 ていて、ただどーんと読むだけで私の感動が伝わるような、そういう文章を書いていないのですよね。
 あと、ちょっと話違うけど、私の文体の変化っていうのも結構関係ある。
 文体の細かい変化はそれこそ毎回あるのだけれど、全体の傾向として、文語から口語への移行が
 しっかり行われてるのですよね。
 それは一応意図的にやってきたことで、できる限り自分の思っていることを書き表そうとすると、口語で
 全体をぐしゃっと鷲掴みにして提出することが最善だと思ったからなのです。
 文語というのは、これこれこうだ、という瞬間瞬間に断定されたことを基準にして、その後の文章をそれに
 従属させて書くものですから、どうしても時間的に遅れてしまうんです。
 なぜって、私達は文章を書いている間にも物を考えていますから。
 そうして、できるだけ正確に、そして大量のことを書いていきたいと思うと、自然口語になるんですね。
 でね、でもそれは確かにそうなのだけれど、最近はそれと同時に、そうして時間的に固定された文語が
 持っている可能性というものに、新しいものを見つけまして。
 ま、当たり前と言えば当たり前なのですけれど、或いはそうでは無いかもしれないけれど、文語の方が
 わかりやすい、ということに気付いたんです。
 口語って、自分の中のものを可能な限り正確に表そうとする作業によって出てくるものですから、自然
 その人の中身の法則やら原則やらを理解してないと、それらは読み解くのが難しいこともある。
 けれど文語は、明らかに自分の中のものをルールとしての言葉に合わせてねじ込んだものですから、
 基本的な語学知識や感覚があれば、誰にでもわかるものなのです。
 無論、その分正確性という点では大いに文語の方が劣ってしまう訳ですけれど、しかしそこで気が付いた
 のは、じゃあその正確性という物差しで測った自分の中のものって、ほんとにそれだけでしか私にとって
 測れないものなのか、ということ。
 つまり、自分が書いたもの、言葉の羅列、そこから逆に自分が読み込んだものを、自分の中のものに
 していくということもできるのじゃないか、ということです。
 自分の中のものを表現することだけでは無くて、自分の中のものを自分が知る、ということもやっぱり
 面白いんじゃないのか、と。
 こうこうこうだ、と断定されたことによって切り捨てられてしまったものを憂うだけでは無く、その断定されて
 残ったものにも視線を向けてみよう、とそういう気持ちになったのです。
 はい、ここでようやくホリックのお話に戻ります。お疲れさまでした。長くなったので一行あけます。
 
 ホリックが終わりました。
 正直、私にとってホリックというのは他に類をみない作品となりました。
 いわゆる一般的なアニメ評、或いは現在巷間に流布しているアニメの評価の仕方をもってすれば、
 おそらくホリックというアニメは、かなりの低評価になるとは思います。
 私もそういった他のアニメと比較して、諸々の評価点を加点していく方式でホリックを評価するとすれば
 、やはりそれなりに低い扱いをすると思います。
 けれど、この日記における私の数々の言動を知る方々におかれましては、私がその評価方法をすると
 しても、それでホリックを語りそれで終わらせてしまうことは無い、ということは重々おわかり頂けていること
 かと存じます。
 また、単純に好きか嫌いか、ということで同じくこの作品を語ることがあったとしても、それもまたそれだけで
 終わらせることは無いということも、周知のことでしょう。
 ホリックは少なくとも、そういった観点で語れば、5分とかからずに語り終えてしまうことのできるものです。
 けれど。
 私にとって、ホリックはとてつも無く大きなものでした。
 ホリックって、いったいなんだったの?
 ホリックって、そもそも私たちになにを伝えようとしていたの?
 そして、それを考えたとき、一体私たちはなにを想えば良かったの?
 すべてはその問いに集約していくものでした。
 ホリックを見始めた頃、私はまず始めに侑子さんの箴言的言葉に耳を傾けていました。
 勿論、その解釈だけでホリックをまとめようとは思っていませんでしたから、その言葉と描かれていく映像
 の世界と、そしてそれらに関わっていくキャラ達の表情を良く観ようとしていました。
 とにもかくにも、このお話は一体どういうことになるのだろうと、ただそればかりを考えていました。
 示された言葉の中身をそれとして受け取るのでは無く、その言葉が示された場としての世界に一体
 なにが起きて、そしてそのなにかが起きた世界の中で見つめたその言葉は、一体それを見つめたものに
 対してなにをもたらすのか。
 その問いの先にあったのは、「私」でした。
 紅い瞳という「私」、ワタヌキという「私」。
 そしてなぜか侑子さんだけが「私」では無い、ただ漂う言葉そのものであることが、その作品に流れる
 怪しくも艶やかな雰囲気によってそれを観る者にもたらされていたのです。
 侑子さんだけが、そこに居て、そこに居ない。
 それはまるで、私やワタヌキの描き出す言葉そのもののようでした。
 そして、その侑子さんの向こう側には、私たちがどうすることもできないものが在る。
 ホリックは、虚無的厭世的な雰囲気で満たされた世界なのです。
 侑子さんは、ただただその世界に絶対的に在るものを示していくだけ。
 そして私達やワタヌキは、その侑子さんという「言葉」を通してそれらを知っていく。
 でも。
 ホリックは、そこからが重要なのです。
 その、虚無的厭世的世界の中に、「居る」のは誰なのか、とホリックは最初から最後まで問い続けて
 いるのです。
 自分達の「存在」という自分達ではどうしようも無いことの中にしか私達は生きられない、ということを
 知っていることと関係無しに、ただ此処に生きて此処に「居る」私たちをあなたは知っているのか。
 ワタヌキや他のキャラ達が、どうしようも無いことに翻弄され、そして自滅を選ぶ方に向きかけるたびに、
 必ず侑子さんは言葉を発します。
 その言葉は、冷たくて、そして本当にどうしようも無い言葉ばかり。
 けれど、その言葉を耳にすることが出来る自分が居る、ということを、その侑子さんの言葉はその存在を
 以て必ず教えてくれます。
 そしてその言葉と対峙している自分が吐き出した言葉として、侑子さんは再び「顕れ」ます。
 でもね、その世界の中にどう生きるのかは、あなた次第なのよ、と言う私やワタヌキ自身の言葉として。
 
 私は、ホリックという作品で、侑子さんが言っていることは凄くためになることだと思っています。
 例えば、迷信の話などが一番わかりやすいですけれど、侑子さんはすべて必ず、合理的疑いを越えた
 ところにあるものの存在を受け入れて、そこから始めなければなにも始まらないと言います。
 迷信をなぜ信じるのか、それを考えることが最も重要なことなのだと言うのです。
 自分達の外に広がるなにか圧倒的なものを畏敬し崇めるのを、ただ無知蒙昧な所行として掃き捨てる
 だけなのならば、その畏敬や尊崇をして得られることと、それをしなかったことで失うものを見極めることが
 できないままに、ただただ「在る」だけになってしまうのです。
 ただ一生懸命に勉強して、働いて、努力して、それに見合う対価を求めて、けれどそういった仕組みの
 中でうまく動けている間は良いけれど、しかしそのことに疲れてしまうということは誰しも必ず体験する
 ことです。
 それは、その仕組みの外にあるものを知らずにはいられない絶対的不安によるものです。
 このままでいいのだろうか、本当にこれでいいのだろうかと、人は必ず思ってしまう。
 そうしたときに、今までやってきたことをただ信じ続けることに没頭してまた同じ道を行くこともできるの
 かもしれませんけれど、それができないとき、人はたやすく自滅してしまいます。
 侑子さんが、嗤っています。
 人が人の創った言葉の中だけで、生きられるとでも思っているのかしら? と。
 人は自分達が創りだした社会の中で生きていると同時に、それを含む世界としての宇宙の中に確かに
 実存している。
 あなたは、自分が自分だけで生きている訳じゃない、ということを本当の意味でわかっているのかしら?
 人は、そうして自分達の外側に広がる、どうしようも無い絶対的な存在、それ自体に支えられることが
 できて、始めてその自分たちの内側の世界に安心して生きていけることができる。
 なぜ、人は神様仏様を信じるのか。
 安心できるからです。人が許容できない膨大な不安を神様仏様に肩代わりして貰えるのですから。
 自分達の外に広がる他者達は、自分達にどうしようも無い知れない恐怖と虚無を与えると同時に、
 その存在そのものを受け入れることで、しっかりとした安心を与えてくれるものでもあるのです。
 迷信は忌まわしくも愚かしい響きを以て、今の私達には届くものかもしれないけれど、その真の存在価
 値は、それを信じまた決して破らぬことで、絶対に自分では得ることのできなかった安らぎを与えてくれる
 のです。
 そして、侑子さんが教えてくれたのは。
 そうして居る自分が此処に在ることを、じっくりと見つめて生きていくことが最も大切なことだ、ということで
 した。
 迷信俗信を「信じる」ことに私達が居るのではなく、ただそれらを信じて居る私達が在るのです。
 あのぼんやりと浮かぶ妖艶な侑子さんのミセが魅せる雰囲気、そしてホリックが頻々と醸しだし続けて
 いたアヤカシに満ちた世界が、そのことを私になによりも強く激しく与えてくれたのでした。
 
 
 つまり、此処まで読んでくれたみんなはもうわかったと思うけど、侑子さん万歳です。
 まぁ侑子さんの魅力は筆舌に尽くしがたいのでこの際暗黙の了解ということにしておいて、やはり私として
 はワタヌキくんも外せないところでしょう。
 彼はかなーり奥ゆかしい子ですよね。
 なんか、褒め方が古い気がしてきましたが、気にしません。
 ワタヌキ万歳。
 結局それかい。
 
 
 ということで、エネルギー切れです。
 ああもう、完全不完全燃焼です、ホリックは。
 第二期希望!
 そして第二期もこんな感じでぐだぐだとくだを巻き損ねたような感想しか書けないで涙する、みたいな。
 えっと、今まで感想読んでくださった方々(居るのか今回こそ疑問)、そしてホリックのスタッフの皆々様、
 そしてそしてホリックという原型を産み出してくれたCLAMPに、感謝を捧げます。
 これ原作漫画も読んでみたいなって思ったもの。
 
 
 ◆
 
 エネルギーと残り時間が切れかかっているので、やむをえず手短にやります。
 ほんとはもっとガリガリと書きたいことなのですけれおd、致し方あるまい。
 ううう・・・・ほんとうに・・・・・致し方・・・・・・・・(大粒の涙を流して)
 
 文化メディア芸術祭10周年企画アンケート日本のメディア芸術100選で、
  
アニメ「蟲師」が2000年代作品で堂々1位を獲得
 *ちなみにトップページはこちら 
 
 
 これ知ったのはチャットしてるときだったんですけど、思わず画面のこっち側でガッツポーズしたものね。
 うっしゃーっっ!!(深夜につき声は出してません)
 はい。
 と、以下延々とじっくりと無茶苦茶に色々書きたいことがあったのですけれど、時間と根気が続きません。
 本当は今日の日記は「アニメを評価すること」という題で、ひぐらし最終回と合わせて書きたかったのです。
 いやひぐらし最終回意外に面白かったですよ?
 なんていうか、ようやっとひぐらしの観るべきところがわかったというか。うん。
 でももう時間ですから。
 ていうか気力が。
 
 ということで、今日はこんな辺りで終わりです。
 あーなにこれなにこのノリ。
 また今度、改めて書こうかな、うん、そうしよう、どうしよう。
 
 
 
 ごめんなさい。 (土下座)
 
 
 
 
 
 
 
 追記: 
 現在3日25時45分を少し回ったところ。
 その前まで入っていたチャットで、ときみつさんに「ブララグ2のOPは、1のときと曲は同じみたい。映像は
 違うみたい。」と言われて、お、あのOPがまた聴けるとは嬉しいねぇあれはアニメのOPで一、二を争う
 感じで大好きだからねぇ、でもどうせなら映像も同じならもっと良かったのにねぇ、まぁでも二期ということ
 でその辺りは新しいものを愉しむ精神でいきましょうよ、懐かしのあの曲を聴きながら初めて出会う風景
 との時間を愉しもうぜ、みたいなノリでいざテレビをつけてブララグ2の開始に飛び込んでみたら、
 
 
 同    じ    だ    ー   (曲も映像も)
 
 
 そしてやっぱり嬉しくてこっそり身悶えしている、長い夜の一幕でした。
 
 
 

 

-- 061001--                    

 

         

                            ■■イノチを思い出すたびに■■

     
 
 
 
 
 『君と友達になって本当に嬉しかった。』
 
   『違う・・・・ずっと、友達だろ!』
 
     『・・・・うん』
 
 
                    〜XXXHOLiC・ 外伝(最終話)・男の子と四月一日の会話より〜
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 みんなが居て、みんな居ない。
 
 鳥が鳴いている。
 その声が僕だけに聞こえないんだ。
 どうして、そのことが僕にはわかるのか、不思議。
 みんなが聞こえると言っているのに、僕にはなにも聞こえないからそうとわかったのかな。
 たぶん、違うと思うんだ。
 鳥が居て、そこに居るのはわかってるのに、その鳥はひとこえも鳴かなかったのを見ていたからだと思う。
 鳴かない鳥なんて居ないはず。
 みんながその鳥を指してそれが鳴いていると言っていても、それはあまり関係が無い。
 僕は、ちゃんと鳥が鳴いていないということを知っているのだから。
 だから鳥の声が聞こえないのではなくて、その鳥は最初から鳴いてないんだ。
 ただ嘴をパクパクと動かしているだけ。
 ただ、それだけなんだ。
 鳥は決して、鳴いたり、しない。
 だから。
 僕だけに、鳥の声は、聞こえない。
 
 僕に見えたのは、鳴かない鳥の群だけだったんだ。
 
 
 ◆
 
 僕だけに見えるもの。
 僕だけを呼ぶもの。
 手招きして、向こうからやってくる。
 逃げて、逃げて、逃げるしか。
 いつか逃げ切ることができなくなったらどうしよう。
 いつか逃げる気力が尽きてしまったらどうしよう。
 そのとき僕は一体どうなるの。
 そのときまで僕は一体どうするの。
 それでも僕は必死に逃げ続ける。
 逃げて、逃げて、逃げるしか。
 諦めちゃいけないから。
 挫けたらいけないから。
 僕は生きなくちゃいけないから。
 無我夢中で走りながら、僕は必死にその呪文を唱えていた。
 その呪文が目一杯僕を走らせてくれる。
 両親を失った僕を気遣って育ててくれた管理人さんのために、僕を産んでくれた両親のために。
 
 僕はその祈りを捧げる相手を、知らない。
 
 
 そして、出会う。
 
 
 
 ◆◆
 
 僕と一緒に逃げてくれる人と出会えて。
 僕と一緒に戦ってくれる人と出会えて。
 僕は、嬉しくて仕方が無かった。
 こんなに嬉しかったことは、無いよ。
 こんなに涙が出そうになったことは、無いよ。
 僕はキミの目の前で、危うく泣き崩れてしまうところだったんだ。
 でも僕は歯を食いしばって、その嬉しくて堪らないことを絶対に逃がさないように、しっかりと立った。
 その足は震えている。
 この瞬間が永遠に続いてしまったらと思うと、怖くて堪らなかった。
 もしここで世界が消滅してしまったら、どうしよう。
 もしここで僕が死んでしまったら、どうしよう。
 気が気では無かった。
 僕は弾け飛んでいく笑顔を必死に掻き集めて、脇目も振らずに立ち上がった。
 いこう、一緒に。
 はやく、はやく、僕と一緒に。
 この出会いから、はやくはやく、どうかはやく先にいけますように。
 僕とキミとの出会いを、一刻もはやく僕のものにするために。
 僕とキミは、一緒だよね。
 一緒になったんだよね。
 だからもう、僕達の出会いは過去のできごと。
 僕達はもう、昔からずっと、そしてこれから先ずっと、一緒なんだよね。
 
 僕の大切なキミ。
 僕たち、友達なのかな。
 キミが僕のことを友達だと言ってくれたとき、嬉しかった。
 キミはもう僕のことを友達と言ってくれる、僕の大事な友達なんだね。
 良かった・・・・・・・ほんとうに良かった・・・・・
 
 僕とキミは他人同士。
 だから僕はキミを無理矢理僕のものにすることはできないから、ゆっくりとキミに近付くことしかできない。
 でもそれでも僕はしっかりとキミに近付くことを諦めない。
 僕は、キミと仲良くなりたい。
 友達になりたいんだ。
 だから僕は、僕のできることを一生懸命考えてやってみる。
 そして気付いたら、僕にはできないはずのこともできていた。
 キミが、そこに居るから。
 キミと、出会えたから。
 僕は、キミを求める新しい僕になれたのかな。
 なれた気も、なれる気も、するよ。
 僕にしか見えないものから逃げることしかできなくても、キミと一緒ならどこまでもいつまでも逃げることが
 できるような気がする。
 たとえ逃げることができなくなって、僕がどこかに連れ去られてしまったとしても、やっぱりキミと一緒なら
 それでもどこへでもいけると思えるんだ。
 僕はボロボロになっても、やっぱり、キミを求めて、生きていけると思うんだ。
 一緒に逃げられるのなら。
 一緒に戦えるのなら。
 一緒に逃げてくれると思えるのなら。
 一緒に戦ってくれると思えるのなら。
 それを祈ることができる友達が居ると思えるのなら。
 僕は。
 僕は、絶対に、どんなことがあっても、生きていけるよ。
 
 だから僕、キミのために、頑張るよ。
 
 
 
 
 
 
 
 
          〜 それが、あなたの答え。
                             そしてそれが、あなたの始まり。 〜 
 
 
 
 
 
 
 
 なによりも素早く、なによりも確かに時間が流れていく。
 僕の世界は着々と豊かになっていった。
 今までは、世界のど真ん中に居て、大勢の人に囲まれて、そして僕にはなにも見えなかった。
 でも今は、キミと一緒になってからは、僕の周りに広がっていく世界が、沢山の人たちが僕達と繋がって
 楽しそうに生きてるのが、はっきりと見えているよ。
 僕とキミだけさえ在ればそれで充分だと思った瞬間に、世界は今までの何百倍も豊かになったんだ。
 僕は、今、確かに世界のひとつだった。
 僕や、キミや、そしてひとりひとりの人や、様々な生き物たちや、そして存在するすべてのものたちが、
 それだけで在るということを知った瞬間に、それらは全部はっきりと繋がったんだ。
 ぐわーっと、それはもうまるで花火みたいに、広がっていったんだ。
 僕達は、繋がっているから在るんじゃなくて、在るから繋がることができたんだ。
 
 
 

 

 
 
 俺、わかったんです、侑子さん。
 
 俺達は、存在するついでに、他のものたちと繋がっているんだって。
 
 
 そしてそれが・・・・・そのことが・・・・・・・
 
 
 
 ◆◆◆
 
 俺、あの子のこと、たぶんずっと忘れてました。
 いや、記憶としてはありましたけど、実感としてどういうことだったのかとかはわからなくなってました。
 というより、思い出そうだなんて、思わなかった。
 たぶんそれは、それがどういうことなのかをわかってなかったからなんです。
 俺にとってその記憶がどういうものであるのか、それがわからなかったんです。
 でも俺、思い出したんです。
 この桜並木を、今、この瞬間に、これまでの人生の頂点に在るこの今の瞬間に、思い出したんです。
 ああ・・そっか・・・・・そういうことだったんだ・・・って
 あの出会い自体が与えてくれたものは、『すり減って、もうずっと前に無くなっちゃったけど』、でもそれに
 よって今日まで生きることができた俺が今ここに居るんです。
 すごい・・・・んですよね・・・・・・・これって・・・
 あの子とはもう二度と会えないはずなのに、それなのに、俺はもうあの子が居なくても、あの子のことを
 思わなくても生きていけてたんですから。
 嬉しいです・・・俺・・・・・
 この桜に・・・・あの子を看取り連れて行ってくれた桜に・・・・・ありがとうって言いたいです
 あの子が消えた、その喪失こそが、俺を今まで生かしてくれて、そして今のこの俺を此処に存在させて
 くれたのですから。
 俺は、あの子から得たものを失ったのでは無く、しっかり使うことができたんです。
 
 
 俺・・・・・あの子と出会えて・・・・・・ほんとうによかった・・・・
 
 
 
 
 
 ++ そして、今、此処に、居るのは、誰?
 
 
 
 
 
 俺に見えてるものが、他の人には見えなくて。
 そしてその俺にだけ見えるものは、俺だけに襲いかかってきて。
 誰にも見えないんだから、だから誰にも俺を助けることはできなかったし、そして俺も誰かが助けてくれる
 とは思わなかった。
 俺は俺がただひとりでいるしか無いことを思い知らされて、ただただ行き先の無い孤軍奮闘を、そして
 援軍のあての無い圧倒的不利な戦いを続けていた。
 いつか俺はアヤカシたちに喰われてしまうだろう。
 それは実感として得るには当然過ぎて、またただの理屈として済ますにはあまりにも残酷過ぎた。
 そして俺が消えても、この世界は何事も無かったようにそれでも今まで通り動いていくのだろうと。
 俺はその事実を、ただ呆然と見つめていた。
 悲しくて、そして悔しくて。
 どんなにひとりで頑張っても、どんなに必死に生きようとしても、俺はただ人知れず消えていくだけなの
 じゃないかと。
 俺にあったのは、ただただそのことから押し寄せる圧倒的な実感だけだった。
 俺が、俺がただ消えてしまうだけ、ということが、なによりも、なによりも、悲しくて悔しかった。
 俺が居なくても存在している世界が在ることが、ただただ怨めしくて、堪らなかった。
 そしてその実感に取り憑かれるたびに、俺は必死になって逃げ回った。
 絶対に、絶対におまえらに喰われたりはしないからな!
 アヤカシは、その実感そのものだったんだ。
 いや、違うな。
 そうしてアヤカシと冷酷な顔を突き合わせて死闘を演じ続ける事、それ自体が俺に見えるアヤカシ
 だったんだ。
 
 〜 あなたは、あなた自身の存在を見失っていたのかしら 〜
 
 なんで、アヤカシを嫌悪する、ということしかできなかったんだろう。
 どうして、アヤカシというものに、俺のすべてを握らせてしまったんだろう。
 俺は目の前の見えない俺と戦い続けることしか、してなかった。
 そんなこと、ほんとはすごくちっぽけな事だったのに。
 
 〜 あなたは、その事に気付くこと自体に意味は無いことを知っていたのかしら 〜
 
 俺は、今、こうして生きてます。
 ごく、普通に。
 そして、わかったんです。
 というか、そのわかったという事の連続自体が、今、なんだと思います。
 俺。
 俺は。
 
 
 既に存在してるから、俺は生きてるんですね。
 
 
 そして。
 
 
 俺は。
 俺は。
 
 
 
 
 みんなと同じものを見ながら、そして俺を生きたかったんです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

〜 『あなたの願い、叶えましょう。』 〜

 
 
 
 
 
 
 
 ◆◆◆◆
 
 
 生きている、存在している、息をしている、なにかいる。
 幸福、不幸、始まり、終わり。
 発生源、世界、悪魔、在ること、理由、あめ、対価、運命、灯り、アイ、影、羽、殺して、生きて、
 出会い、自由、希望、罪、迷信、存在、時間。
 自らの外に自らを感じ、自らの内に世界を観て自らの外に世界を観る。
 そのなにかを感じている存在だけがただ在ることを、人はいつも、知らない。
 ただ在ることに終始し、その中に蠢く言葉と共に自らを綴っていくだけ。
 世界に、意味なんて無いわ。
 ただ、あなたが在るだけよ。
 けれどね、ワタヌキ。
 そうして今ここに在るあなたは、意味のある世界を求めている。
 そしてその願いがやがて、意味そのものが世界であるということを、あなたに教えてくれる。
 あなたが紡いだ言葉が世界を描き、描かれなければそこに世界は存在しない。
 あなたにとって真に重要なことは、あなたが消えたあとに世界が在るか無いかということでは無く、
 あなたが消えたあとには世界は存在しない、という願いを言葉に込めることなのよ。
 つまりね、ワタヌキ。
 意味の無い世界なんて、無いわ。
 世界はただ在るがままにあることに於いてその意味と言うものは無いし、あなたの存在が願う言葉で
 読み込まれた世界には意味があるわ。
 
 そしてね。
 あなたが願うことで、そこには厳然とした他者が存在するの。
 というより、他者が存在しているという意味が、その世界を創っているのね。
 ひとりひとりの人間に、それぞれの意味が込められ、そうすることであなたはそれらの人々のイノチを知って
 いく。
 そう、あなたの目の前に「居る」人々は、あなたと同じく確かに「自分」として生きているのね。
 あなたがそうであると願えば、あるいはそう願えるような世界をあなたが求めれば、そこには必ずそれに
 見合った人々が顕れる。
 そして、その顕れた人々の姿を見て、あなたはきっとこう思うでしょう。
 ああ、この人達、生きてるんだ、と。
 それは必然的に、あなたが消えたあとにもその人達は生きて在るということにあなたを導くけれども、
 けれどそのときあなたはもう、それでも良いと、そう思えるはずよ。
 あなたが願うことで人々は存在すると思えても、それとはなんの関係も無く、そう、なによりも確かに、
 そしてなによりも圧倒的な力によって、その人たちは既に存在しているということを感じることの方が、
 あなたにとって何百倍も嬉しいことなのよね。
 あなたは、世界をすべて自分の内に収めながら、その世界を内包した自分が在る、ということ自体から
 必ずその存在が在る場所としての世界の存在を、必ず知っているのね。
 ええ、そうよ、ワタヌキ。
 世界は、あなたなんか居なくたってそれでも動いているし、そしてあなたの周りには常にあなた以外の
 存在が犇めいているわ。
 あなたにはどうしようも無いことで満ち満ちた、恐ろしいただ在るだけの絶対の世界がね。
 
 そして。
 あなたはそこに、存在している。
 いいえ。
 
 
 あなたの存在そのものが、その世界そのもの。
 
 
 あなたこそ、ただ在るだけの絶対の存在。
 あなたがなにかを願い、それを叶えようとすること、それ自体が絶対の存在。
 既に在るということは、こういうことよ。
 そして、生きるということは、そうしてひたすら意味を以て世界を繋げていく事よ。
 
 
     ・  ・  ・  ・  ・
 
          あら、いい桜吹雪ねぇ・・
 
                      ・  ・  ・  ・  ・
 
 
 そう。
 四月一日と書いてワタヌキと読むワタヌキくんの生まれた日には、それなりの意味があるのよ。
 四月一日に生まれた四月一日くんが、その誕生日に一体どんな意味を読み込むのか、それはすべて、
 あなた次第なのよ。
 それはこじつけでもいいし、駄洒落でもいいし、迷信や風習に頼ってもいいし、そしてまたそれと同じくくら
 いに、無意味という意味を込めても良いわ。
 大事なのは、あなたがその意味であなたを感じることができるかどうかということだけ。
 誕生日ということを祝うことの意味を、一から全部自分で創ってそのお手製な感じを愉しむのもよし、
 また誰かの小話を引用して、そこにその縁起を求めて悦に入るも良し。
 簡単なことよ。
 私たちはそうやって、自分の力で、或いは自分の外に広がる人達の力を借りて生きているのよ。
 その人達と、そしてそのあなたを顕在させることができるのは、あなただけ。
 世界はただ在るがままに、されど願えばそれは容易に姿を変えて顕れる。
 ふと立ち止まって見上げた空に、それは確かに、居るわ。
 あなたなら、もうわかるでしょ。
 このとき。
 このばしょで。
 このひとたちと。
 こうしていることが。
 
 
 
 それが、あなたが求めた、あなたの存在、そして、あなたの世界。
 
 ねぇ?
 それは、初めから、此処と其処に、在ったでしょ?
 
 
 
 
 ・・・・◆◆◆◆
 
 
 あーもう、誕生日祝ってくれるって言われて、俺のためにこんなって感じですっごく嬉しくて感動だったの
 に、なんだかんだ言って結局俺が全部支度して仕切ることになるんだよなぁもう。
 ていうか侑子さん的には飲み食い騒いで愉しむのが目的だし、百目鬼は百目鬼のくせに注文ばっかり
 しやがって、ひまわりちゃんは・・・もうほんと来てくれてありがと〜あ〜もう俺は君が祝ってくれるだけで他
 にはなにもいらないよ〜・・・・って、こら!そこのモコナと侑子さん!肉の取り合いしないでください! 
 ていうかこれもう俺の誕生日じゃないし・・・・とほほ
 『はぁ〜、どーせこんな事だとは思いました。
  いつエイプリルフールだって言い出すか、むしろ待ってたくらいですから。』
 ほら・・侑子さんはついでにワタヌキの誕生日も出来て、とか言ってるし。
 ついでですか・・・・・・ははは
 
 ちょっと、寂しいな
 
 でも。
 
 
 この感じ・・・・・・・
 いつも、いつも、感じてる・・・・・この・・・・気持ちは・・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ワタヌキ。
 
 
 
 『一緒にご飯を食べられる人たちがそばに居るって、いいもんでしょ。』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 『はい!』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 忙しくも穏やかな春の青空が、ゆっくりと俺を待っていてくれたのを、今、感じています。
 
 
 
 
 
 
 XXXHOLiC     -- Fin
 
 
 
 
 
 
 

** 紅い瞳より一言
この作品と出会えたことを、運命に感謝します。

 
 
 
 
                              ◆ 『』内文章、アニメ「XXXHOLiC」より引用 ◆
 
 

 

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