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◆◆◆ -- 2007年4月のお話 -- ◆◆◆

 

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                        ■■私の夢になってよと言えないとき■■

     
 
 
 
 
 皆様、ごきげんよう。
 
 遅くなってしまいましたけれど、半年ほど続いた地獄少女二籠の感想を、先日すべて書き終えました。
 書きたかったことがすべて書けたかと問われれば、よくわからないと真摯に首を捻って答える事が出来て
 しまうほどに、この作品の感想の執筆に関しては、自分自身の位置を思い切り見失った上にそれが成り
 立っているものだと言えます。
 当初は単純に「怨み」とはなんだろう、そしてその導き出したおそらく正すべき対象としてのその「怨み」と
 いうものを、どうやって解消していけば良いのだろうと、ただそれだけを考えまたそれを書けることを願いつつ
 感想を作り続けていました。
 けれどそれを進めていくうちに、この作品自体が二籠になってから、その「怨み」というものをあらゆる位置
 に配置して話を展開する作法にどんどんと変わっていき、私もまたそれを感じながらも、それとはまた別の
 意味で私自身の位置を変えて感想を書き綴っていくようになったのです。
 より私を意識して、けれど決して私を描くのでは無く、ただ作品を見てなにかを深く感じた私のまま、まさに
 正直に頭の中にあったものを吐き出していく、というように変わっていったのです。
 そういったものでしたから、実は私は自分がなにを書いていたのか、ほとんど理解していません。
 あとから読み返せば、同じことの繰り返しだったり、ただ言葉の繋がるままに書いているように見えるもの
 ばかりであったり、ひとつの文章として読んだ場合に大したものは得ることができないものの方が多く、読
 み返してみても反省する以前になんだかよくわからないと思うしか無い。
 でも、そうして読み返すべきものとしての日記としては出来の悪い文章ではあっても、でもこういったもの
 を残せたというその事実自体が、おそらくのちに私が思い返しすことに意味があるものになるのでは無いか
 と、そうも思っているのです。
 なにも作り出せなくてでも、なにもできなくても、ただなにかを書き続けていたこと、それがきっと私にとって
 意味があるものであったと、改めて地獄少女という作品が魅せてくれた「怨み」というものを前にした私は
 思うのでした。
 ただ淡々と怨みに身を任せ、怨みを疑い、怨みを呪い、怨みを語り、怨みを責め、怨みを捨て。
 きっと今まで書いた感想の中で、「怨み」とはなにか、という問い以上のものを得ることが出来たと思いつ
 つ、改めまして地獄少女二籠に感謝を捧げます。
 ありがとう御座いました。
 
 
 ◆
 
 まずは連絡事項。
 このたびエルカザドの単独感想日記(タイトルに「永遠」の文字が入っている回)の執筆を断念
 し、代わりに怪物王女の単独感想日記の執筆を開始致しました。
 タイトルには「姫」の一文字を入れてその他のものと区別します。
 言い訳はしません。ただの気まぐれです。ごめんなさい。(土下座)
 とはいえ、エルカザドの感想は、今日のようなプチ感想として他のアニメの感想と共にちょこちょこと書き続
 けますので、全く全部フイになる訳でも無く、ええと、ごめんなさい。(再び土下座)
 では、そんな感じでこんどこそ決定ですので、今期はこれでよろしくお願い致します。では本題。
 
 
 4月に入ってから、もう早くも5月を間近に控える日々に至り(ていうかもう明日)、気分としてはゴールデン
 ウィークを喜び浮かれるよりは、もうゴールデンウィークなのかと、焦りよりは呆然としてしまうほどに、様々
 な局面で色々な形で遅れをとり続けている今日この頃。
 サイトの方も色々と支障が出ていると自覚している状態なのですけれど、一向に収まりがつかない状態
 で、なかなか手を焼いています。
 日記では今はもうとにかくアニメの感想で手一杯であり、それ以外のことをほとんど書いていない有様で
 、名実共にこれじゃアニメ一本槍になってしまうなぁと、少しばかり他人事のように戦々恐々としていたり
 しますけれど、私は元気です。まだ割と。
 
 さて、少なくともこの魔術師の工房というサイトを「言葉」で作りまた維持している私としましては、とにも
 かくにもこの日記上でなにかを語ることでしかそれは成せないことなのですから、どれほどまとまりが無くと
 もこうして書き続けることで歴史を作ってその中でこの場所を広げていこうと思っています。
 つまり、書くしか無い、という口実の元にただダラダラとなんとかなるまでひたすら書き続けるという、そして
 それがまたさらに収集つかない散らかりを呼び込む悪循環になったりなど、なかなか面白い展開が見込め
 ると思えますゆえに、なんとか頑張っていこうと思います。
 書かなくちゃなにも進まないし、なにも変わりませんもの。書いても変わりませんけどね。あはは。・・・・。
 
 
 では改めまして。
 今期はアニメが盛り沢山です。
 そのお陰ですっかり自分のペースを崩してしまい、なんだか訳がわからないカオスな状態になっています。
 どのアニメを見るかはまぁ全部見るというアホな解決法で終わりなのですけれど、どのアニメの感想を書く
 かとなると、これは既に私の手に余るほどの良好な作品の多さによって、従来の私のその選択基準で
 測れるその余裕さが壊されてしまっているので、そこから再考せねばならなくなっています。
 つまり、いろんなものをいちどきに頬張りすぎて、どれがどの味なのか訳分かんなくなってて、適当なこと
 しか言えなくなってるということです。頭悪いのは今に始まったことではありません。ツッコミはいりません。
 ようやっと、このたび怪物王女の感想を軸に、エル・カザドとひとひらとポリフォニカのプチ感想を書くという
 体制を確立するに至ったのですけれど、これはもうむしろこの体制を確立することが目的になってしまって
 いるくらいの余裕の無さであって、既に安心して集中して感想執筆に取り組める状況では無いのです。
 紅い瞳のロースペックぶりが遺憾なく発揮されている今日この頃です。ありがとうございます。
 それはつまり、ひとつひとつの作品に対してじっくりと向き合える事ができなく、そのせいで結局のところ
 アニメに適当に簡単に評価付けとしての「感想」を書き付ける程度のことしかできない状況をもたらして
 しまっていることです。
 ほんともう、正直に申し上げまして、私は今期は怪物王女とエル・カザドをすごいすごいって言えるってこと
 が嬉しいだけみたいな、もっと言えば怪物王女とエル・カザドに付けた私の評価と心中してそのまま逃げ
 きってしまおうという、なんとも浅ましい限りで悲しいくらいなのです。
 ですから、本質的には各アニメのまともな評価すらも出来てはいない状況なのです。
 豊作貧乏、とはまさにこのこと。感性が貧しくなりました。被害甚大。(私が弱すぎるだけ)
 
 自分の感性くらい 自分で守れ ばかものよ  ← 茨木のり子「自分の感性くらい」より
 
 ということで、なんとかそれでも足掻き続けたお陰で、体制だけでも整ったので、なにはどうあれその体制
 に則って書き進めていくのは当然なのですけれど、その前に、改めて今期アニメの評価を下して見たいと
 思います。
 今やっても、やっぱり余裕ある評価付けはできないとは思いますし、そしてそのせいで非常に多くの取りこ
 ぼしをしてしまうのでしょうけれど、とにかく書けるだけのことは書いてみます。
 今は我慢のときと心得ていますので。 
 と、いうことにしました。 (無理矢理)
 
 
 +
 
 取り敢えずわかりやすくするために、今期視聴決定したアニメを放送曜日ごとに記しておきましょう。
 
 月曜: エル・カザド
 火曜: CLAYMORE神曲奏界ポリフォニカ
 水曜: 桃華月憚ひとひら
 木曜: 怪物王女
 金曜: Daker than BLACKロミオ×ジュリエット
 土曜: 英國戀物語エマ第二幕
 日曜: ハヤテのごとくウエルベールの物語瀬戸の花嫁
                                       全:12作品
 
 数字にすれば言うほど多くは無さそうだけれど、体感的にはいっぱいいっぱい。
 青文字はたぶん最後まで観ると予想されるもの、黄文字はもうすこし様子見がてらそこそこ観そうなもの
 、赤文字はこのまま行ったらたぶん切ると思われるもの、を表しています。
 この表に無いものはもう切りましたなんの予告も無くごめん観なかったことにしましたもういいでしょう。
 そして今現在、さらに月曜の枠に「らき☆すた」を入れようかと思案中だったりします。
 いい加減にしろ。
 
 
 はい。
 
 まずは最初にこの作品を挙げなければいけません。
 Daker than BLACK
 冷静に視聴した結果、今のところ今期最高の作品はこれです。
 感想ではほとんど触れていないじゃないかと思われることでしょうけれど、それはたんに私の執筆能力が
 及ばないゆえというだけです。
 生きてここにある人間が、その背景とする現実世界を空間的時間的に捉え、そしてそれの認識の元に
 生きているひとりの「自分」を生きていくということの描写、それが為されているかどうかという評価法は確
 かにあるし、またそれは充分に必要なことだと思うしそれをアニメでやっていこうとするのは、非常に有意義
 な事だとは思います。
 けれど、それはそうした歴史的な幅を以てそこに居る「自分」達の集合体であるこの世界に対する、その
 自分の立ち位置をどうするか、という事であるだけでもあり、逆にそういったことをすべて放り出してでも、
 たとえそれらからすべて断絶してでも在る、「今此処に在る」をこそを描くというのは、もっと大事なことだと
 思っています。
 「Daker than BLACK」では、色濃く肉感的な空間と時間が描かれ、その中で確かに息づいている人
 間達がぽつぽつと描かれ、それらがすべて繋がってあるのが見えてきています。
 その意味ではある意味で政治的な世界がある訳だけれども、しかし一目見れば、決してこの作品の中
 の視点が、そのキャラ達がその世界の中の「自分」をどう生かしていくかというものにあるのでは無く、
 ただその世界の空気を吸っている、それらとはもともと隔絶してある真っ新な自己の存在があり、その存在
 する「私」がそうして吸った世界の色に染まっているのを、その「私」の視点から描き出していっているのが
 わかります。
 この世界の中でなにをするのかでは無く、ただ「私」がなにを想いなにを考えているのか。
 それは絶え間の無い、そして容赦の無い人間洞察の積み重ねであり、またそれをどこまでもストイックに
 突き詰めていっていることに、私がこの作品を今期で一番と評する根拠があります。
 くだらない「心理描写」などでは無く、無論浅ましい「現実肯定」でも無く、そしてそれらを蹴散らしてある
 べき「力強い生存の意志」を謳うでも無く、ただ淡々と、淡々と。
 その威力が、今、私を強く捉えています。
 
 そしてその「現実肯定」と「力強い生存の意志」を全面に出すでも無く、どうあってもそれが滲み出てき
 ているのをわからないではいられない、そういった素晴らしく逞しい作品が、エル・カザド
 今期2番目に評価している作品です。
 真っ赤に焼き付いた太陽が大地に沈んでいく世界を背景に、その斜陽の虚しさの中にその太陽の赤々
 しさを見つけそれをひしと抱き締めて、そして銃を空に打ち鳴らしながら大股で笑いながら陽気に生きて
 いく。
 人生とは虚しいものだ、というただの言葉でしか無かったうすっぺらい厭世観を笑顔で歌いながら、言葉
 に出来ないほどの絶望の中を陽気に生きていく。
 とにもかくにも、この感覚の中で出会っていく人間達の笑顔の逞しさと、その笑い方と笑う様がなによりも
 身に染みてくる、そういう作品です。
 あのコメディのやり方も実に作品に溶け込んでいて良いですし、単なる小道具として「笑い」を使わないで
 、ちゃんと笑っている生そのものが描かれていて面白い。
 またこの作品と「Daker than BLACK」を合わせた位置にあるのが、怪物王女
 アニメーションとしての出来はどうかと思うレベルではあるのですけれど、しかしそれらを全部放り出しても
 良いくらいに、その制作者の張り詰めた感性がぴんと一本通っていて、それを評価基準にしていきたい
 と思わせてくれる作品です。
 「Daker than BLACK」的なヒロインと「エル・カザド」的な作品の方向性を持ち、それゆえに上記2つの
 作品よりも先が見えない作品でもありますし、またそれが私にとっての今期最も感想執筆対象に相応し
 い位置にある作品でもあります。
 評価する、という意味ではこの作品はあまり評価すべき点はありませんし、むしろ色々となにかを見つける
 意欲と意志を持って臨まないと素通りで終わってしまうものなので、少なくともアニメに興味を持ったばかり
 の人にはひとりの「アニメ評価者」としてはお勧めできません。
 けれどひとりの「アニメ感想書き」としてはお勧めできます。
 むしろ一緒に観ましょう、というお誘いですけれど。 (笑)
 
 そういった意味で、今期に於いて「Daker than BLACK」と「エル・カザド」と並び、タイプは違いますけれ
 どお勧め出来る作品が、ひとひらOver Driveです。
 王道的な、という形容詞で語られそうな作品ですけれど、それはそれとしてひとつの着眼点としては、
 このふたつの作品の主人公のふたりともが、ただ普通で地味な目立たないというだけで無く、ちょっと変わ
 った、むしろ悪い方に変わった性質を持っているところにあります。
 ひとひらの主人公は極度のあがり症ですぐに自分だけの世界に入り込んでしまう(対人態度もいびつ)う
 えにすぐに逃げることを考え、OverDriveの主人公はもう少しまともだけれど自分だけの感性で動いて周
 りが見えていない事が多かったりと、それほど極端なものである訳では無いけれど、気になるといえば気に
 なるタイプ。
 だから単純に普通で大人しくて真面目な子が、努力して栄光を掴んでいくという、ただそれだけのサクセ
 スストーリーでは無く、そういったあきらかに周囲とズレている者達がどうやってその周りとの関係の中で
 その成功を得ていくのか、という側面が、私が思うに大きくその作品の理解、及びさらにそれから得られる
 感動に強さを与えてくれるのでは無いかと。
 それはただ単に周囲に合わせていくだけでは無く、周囲の中でどれだけそれでも変わった自分を認めさせ
 ることができるかという、そういった変革が映像的に無自覚に流れていくという意味でです。
 
 そういった意味では人間と精霊の共存する世界を描く神曲奏界ポリフォニカも作品形式は同じな
 のですけれど、しかしこれはどの人物にも視点が存在しなく、ゆえに漫然としている印象があります。
 物語世界の設定の上でただキャラクターを動かしているだけで、真摯にそのひとりの存在としての人物を
 、その世界の中の関係性の中で描き出していこうというそぶりも無く、評価するのであればこの作品は
 あまり良い作品とはいえません。
 ただ、ときおり人間と精霊という「異種」が出会う際に生じる問題についての描写があるので、その点につ
 いての思考はある程度できますが、しかし現時点ではそれが持続的に行えるかどうか、甚だ疑問である
 ところです。
 また逆にCLAYMOREは、人間と妖魔の間に出来た存在が、その人間と妖魔の間にありながら、し
 かしその関係性を描くよりも、さっさと駆け足でその存在自体を描いていこうとしています。
 バトルシーンなどなかなか映像的に迫力はありますけれど、派手さは無く、また綿密な心理描写や論理
 の展開などがある訳でも無く、まさにひとり戦うその背中ですべてを魅せていくという感じです。
 といっても積極的になにかを語ろうという意志は感じられなく、見終わったあとには、なかなか受けた印象
 をまとめにくい、そういった感覚的な感想を主に感じられるつくりになっています。
 まるで自分がその場に居て、自分が妖魔と戦い、そして激しい動悸と疲労感でEDを迎えているような、
 それはそういった主体的な感覚であり、逆にその感覚がこの作品の特徴ではないかと思います。
 
 そういったひとりの存在としての人を描くことを中心に据えた作品では無く、他者との関係性の中にある
 ものを描き出そうとしているタイプのものが、ウエルベールの物語英國戀物語エマ 第二幕
 そしてロミオ×ジュリエットです。
 この3つの中では「ロミオ×ジュリエット」が頭ひとつ抜けています。
 ロミオとジュリエット、それぞれが離れてあるお互いのそれぞれの場所で、他の人達との関係の中にあり、
 そしてその中でロミオはジュリエットを、ジュリエットはロミオを想う、その構造の中で描かれているふたりの
 情感は、それほど肉感的なものを感じる演出では無いにも関わらず、とても細やかでそしてなによりもど
 こまでも突き抜けていくような広がりがあるものになっています。
 ふたりが触れ合うことがほとんど無くても、むしろそのふたりが出会っている必要が無いほどに、それ以上
 にロミオとジュリエットがそれぞれがそれぞれの場所で互いを求め合っている、その言語的な愛の姿そのも
 の描写が、今のところ素晴らしいレベルで展開されているのです。
 ジュリエットが自分の部屋の中で憂鬱な溜息を漏らしたとき、その目の前には風が吹き抜けそしてその
 風の辿り着く先には天をかけるロミオの笑顔があり、社交界で沈鬱な社交辞令を重ねるロミオの抱く想
 いは、一刻も早く夜空の見える場所に出てその星々を線で結んでジュリエットの微笑を描き出したい
 というものであるという、そういったふたりが醸し出す情念が息苦しいほどに広がっているのです。
 その意味では、「英國戀物語エマ第二幕」も離ればなれの恋人同士のふたりが、それぞれの場所で
 それぞれへの想いの中に生きている描写があり、それはなかなかの味わいがあるのですけれど、「ロミオ×
 ジュリエット」におけるそのふたりの想いが、その世界すべてを既に圧倒的に支配している事からすると、
 やはりその雄大さという点に於いては、またその人物と世界の融合としての雄大さこそを評価点に定めた
 私の観点に於いては、やはり「ロミオ×ジュリエット」に軍配を上げたいところです。
 というより、私がお勧めしたいのはどちらか、と言われた場合にどちらを選ぶかというようなものですけれど。
 「ウエルベールの物語」に関しては、上ふたつの作品に比べるとやや見劣りがします。
 ふたりの恋物語では無く、逃亡中の王女様が色々な人と出会いながら色々な事を想っていくというタイ
 プですので、そもそも情感的な思い入れを受け取れるものでは無く、また実際物語の最後に羅列され
 る、その回のテーマと結論のような説明文の提示が、否応なく基本的な教訓モノとして視聴者をひき
 ずっていっています。
 色々なことを思い知らされるたびに王女は深く感じ入り、しかしその姫の感じたものを視聴者が果たして
 受け取ることができるか、というと、おそらくその姫が今そこに居るひとりの存在としては全く描かれていない
 ために、ある程度の努力をしないとそうはできないと思います。
 そしてならば逆にいえば、そうして王女の姿を自分なりに再構成して捉えれば、これは充分楽しむことの
 できる作品になれる可能性がある、ということでもあります。
 
 さて、上記のいずれの作品とも系統を異にしているものとして、私が受け取っている作品があります。
 桃華月憚
 なにやらストーリーが全然わからないと思ったら、話によると終わりから始まりに向かって話数が進んでい
 る、つまり第1話がすべての終わりで最終話がすべての始まりになっている、というではないですか。
 録画したものを保存していないので確かめようが無い上に、記憶の方も前回のストーリーすらも覚えて
 はいない有様ですので、私的にはもはやストーリーのある一貫した作品と捉えることは放棄しました。
 といって、だから別にこの作品の形態を指して非難するだとか、私の記憶力を蔑むとか(笑)、そういった
 ことで終わらせるつもりは毛頭無く、少なくともところどころにおける人物達の感性そのものについて、色々
 と感じ取っていこうと思っていました。
 永遠、という事に対する特に主人公の真っ直ぐで繊細な感覚と言葉は、時々私の心に深く刺さることも
 あり、私自身考え込んでしまうこともあります。
 そういったものの積み重ねとして、この作品を捉えていけば、これはかなり有意義なことではあると思いま
 すし、また是非そうした見方をして頂きたいですけれど、正直私の今の状況としてはかなりそれはしんどい
 事なので、今のところ視聴を打ちきる方向に向かっています。
 もっとアニメの本数が少なかったならば、もっともっとちゃんと扱えたはずなのに。
 今期は基本的に、このようにエース級が集まったゆえにエースになれなかった悲しみ、というようなものが
 私の周りには蔓延しているのです。他のチームでなら絶対エースになれたのに・・・・(涙)
 ちなみに、かなりきわどい描写がありますので、苦手な人はお気を付けて。お好きな人はほどほどに。
 
 さて、最後の項目。
 ギャグ・コメディ系の作品は今期はあまり期待できないと思っていたのですけれど、ふたを開けてみれば
 なんたること、なかなかいけるではないですか。
 特に、というかこれは近年久々のヒットなのですけれど、瀬戸の花嫁
 ギャグはとりわけオリジナリティがある訳でも無く、またシュールである訳でも無く、むしろ基本中の基本で
 かえって笑えるのが不思議なくらいなのに、普通に大爆笑。
 せ、せんせい、お、お腹がすごく痛いので(笑い過ぎで)、早退していいですか?
 帰りますよ、ええ、全力でおうちに。帰って、笑う。死ぬときは畳の上で。(笑い死に)
 基本過ぎるのになぜ笑えるかというと、それは実はとても丁寧に笑いの下地を作ってるからなのですよね。
 些細な笑いでも、別の要素を情報として提出しておいて、それを付け加えた観点からも同時に笑える
 ので、ギャグの形式そのものは大したことは無いけれど、それには必ずいくつかの意味(たとえばその人物
 がそう言うから特に面白いとか)がちゃんと事前に了解事項としてその場に織り込んであるゆえに、どうし
 ても笑ってしまうのです。
 駄目、もう、死ぬ。ていうか今観ながら書いてるんですけど、書くか笑うかどっちかにしろ。
 あははははははは (笑いを取りました しばらくお待ちください)
 でね、ツッコミ役の主人公の男の子が実に的確で、漏らさずこぼさず全部しっかり以上にツッコミ入れて
 くれるから、うっかり見逃した(ぉぃ)ボケにもすぐに気付かていうか笑ってしまってすぐにわかってしまう訳で、
 ええと、なんかもうさっきから腹筋の痙攣が止まらないので、この作品の話はもういいですね?いいです。
 で、ハヤテのごとくはですけれど、こちらはかなりネタ中心にはしっているので、ある程度はそのネタを
 知ってた方が良いようですね。特にガンダム系のネタとか。私はさっぱりわかりませんがなにか?
 それはそれとして、基本的な造作としてはかなり荒い。
 ツッコミもボケもちぐはぐで、特にツッコミ役が的確とは言えないので、なかなかリズム良く笑うことができな
 く、ところどころの単品で時々くすっと笑える、という程度に収まっています。
 キャラ自体は逆に結構ちゃんと描かれていて、なかなかキャラも立っているのですけれど、肝心の笑いの
 部分がうまくそれらとひとつになっていなく、結果総合的に見てちぐはぐな印象を受けてしまうのです。
 もっとも、この作品をギャグコメディモノとしてあくまで笑いを求めた場合はですので、或いはこういったちぐ
 はぐさをそういったキャラが笑いを対象化して距離を置いて描かれているものと捉えれば、それはそれで
 全体的な印象がなかなか面白いものになるのかもしれませんね。
 無論私も、そういうのは嫌いではありません。てかあの先生楽し過ぎ。
 
 
 これで一通り全部語ったと思います。
 これ全部書くのに5日かかりました。そう、ちょこちょこ書いて、貯めて、くっつけて、できあがり。
 とまぁこんな感じな訳ですよ。
 要はなにが言いたいかというと、私はなにが書きたかったんだろってことです。
 ええと。
 と、とにかく、今期は豊作で良作揃いですっ、って叫びたいお年頃なのですよ。
 いやだから、豊作て。
 ・・・・。
 
 今期アニメをまとめて一言: 豊作。
 
 
 オチてませんよね?
 
 
 
 
 
 ◆
 
 エル・カザド:
 第4話。
 今回は私的には特に語るようなことも無く、その辺りは余所様にお任せすることにして、ざっくばらんに
 だらだらとお話をば。
 やー、お話っていうか、エリスさんとナディさんの可愛さっぷりにばっかり目が行っちゃってて、まぁそのぶっちゃ
 け可愛かったです、はい。
 冒頭から修道院に立て籠もってオカマ二人組とのドンパチでも、あのヘタレな音楽と、すっげぇ嫌々な顔
 して応戦するナディさんとか、普通に居眠りしてるエリスさんとか、取り敢えず全部神様のせいにしとく修道
 女さん達とか、普通にボケてるエリスさんとか、あーあ。
 あの辺りの掛け合いの妙がすっごい好きなので、これからもああいうのを頻繁に入れて頂けますと、こちら
 としても嬉しい限りでして。
 あ、ミスヘイワードとローゼンバークの掛け合いには興味は御座いませんので、ええ、趣味の問題で御座
 います。
 あと神様語る言葉で全部片づけられちゃう修道女さんに辟易してたエディさんも、なんか結局まぁそれは
 それでみたいな感じで、まぁ散々あーはいはいとか適当にツッコミ入れ続けてからですけどね、あ、そうか、
 つまりこれはあれなのですね、エリスへの対応の仕方と同じというか、うーん、改めてナディさん惚れ直し
 です、いいよねーこの感じ、って別に誰に同意求めてる訳じゃないですよそうですよ。
 ていうか結局ナディさんたら、寝てるか素でボケるかしてないエリスさんと、神様の名の元に調理道具を武
 器で本気で飛び道具とやり合おうとする修道女さん達背負って、オカマふたりと競り合ったんですものね
 ぇ、すごい剛胆というかどうでも良さげなだけみたいな雰囲気がぷんぷんとか、そんな感じだけど、そういう
 ときは困ったときのエリスさんのマジカルパワーでまるっと解決って感じで、ありゃ、今回も普通に解決しちゃ
 いましたね。
 ワンパターンといえばワンパターンだけど、お話の形としての変化球なんかいらないほどに、その直球ど真
 中のパターンが面白くて充分充分でした。
 やー、なんかほんと普通に感想ですね、ていうか感嘆? あはは。
 うん、今回は主にミスヘイワードを通じて、物語の骨格がきちんと整理されて語られていたから、そうやって
 のんびり楽しむことだけに集中できました。
 あー、楽しかった。ごちそうさま。
 
 
 神曲奏界ポリフォニカ:
 第4話、ですけれどこれまら前回に続いて見所無し。
 でもなんだかそろそろ物語の下準備も終わって、本格的に動き出しそうな気配もしているので、感想書け
 るようになるまでしっかりモニターチェックしていきます!
 つまり今回も感想はありません。アーメン。
 
 
 ひとひら:
 第4話。
 正直、ちょっと心配になった。
 今回のお話はこの作品のマズイところが倍加されて一気に出てました。
 のの先輩が怖い根拠というかそういうのが無理矢理過ぎてパワーバランスがいい加減過ぎて、なんだか
 一連のどたばたが彼らのヤラセにしか見えないところとか、そういう作品の設定をちゃんとうまく表現出来て
 いないところがどばっと出てて、まぁ気にならないときはむしろそれすら微笑ましいという感触で乗りこなす
 ことができるのだけれど、こうも閑話休題的な話のときにまとめてやられてしまうと、かえって今後そういった
 シーンに出くわしたときにどんな顔すれば良いのかがわからなくなってしまう。
 まぁほんとに些細な問題ではあるのですけれどね、むしろ個人的な問題レベル。
 なんていうか不自然というか・・・オリナルってあだ名の付け方からして・・あれはまだ古いで済ませられる
 話なんですけど・・・うーん・・・
 ののさんと演劇部部長の争い方もなんか本質的なそれからあきらかにズレてる争い方ですし、ていうか
 そもそもののさん麦に触りすぎっていうかまぁそれはどんどんやっていいですけど(ぉぃ)、うんまぁ、なんて
 いうか、あの空気イスのシーンもなんであんな普通にののさんの言うことに従ってるのとか、ああもうきり無
 いですね。
 というか、今回はほんとそういうツッコミ入れるくらいで充分なお話だったので。
 あ、ただあの麦が麦ちゃんって頑張ってるよねって言われて、あ私頑張ってるんだ、って言ってとっても喜ん
 でるあの感じは、なんか無性にじーんときたりしたけどね。
 努力してるって実感自分には無いくせに、人に認められてようやっとほんとは実感してないだけで絶対必
 ず努力してる自分を認めるっていう感覚、うんすごくいい。グッジョブ麦。
 てな感じで、今回はここまで。
 
 
 
 ってな感じで、バイバイ! (某すごラジ風にていうか最近またカレイド熱がどかどかともう凄いことに)
 
 

 

-- 070428--                    

 

         

                           ■■戦いの中に在る姫の瞳は■■

     
 
 
 
 
 『これが戦士の宿命だ。せいぜい私が死なぬように祈っているがいい。』
 

                            〜怪物王女 ・第二話・姫の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 怪物王女:
 
 第2話。
 
 姫がなんで戦っているのかと問われたら、それは王族(?)間の生存競争だから、という一言で片づけ
 れば良い話で、それ以上の言葉は一切不要で、ただただ戦うのみ。
 生存競争を勝ち抜くためでも無く、勿論戦うためにでも無く、ただ訪れる襲撃者と戦い続けるだけ。
 なぜ戦わねばならないのかと問われたら、死にたくないから生きたいからと答えるでも無く、ただそれが当た
 り前だからという顔をしている。
 けれどそれは、与えられた現実を享受している訳でもなく、永劫続く戦いの運命を前に諦めている訳で
 も無く、ただ今この瞬間の中にある自分がなにをするべきでなにをしたいのかを感じ取り、それだけを切り
 取り、その断片としての世界の中にただ猛然と姫は生きているだけ。
 思うところ考えるところのものは、とてもとてもたくさんあろうのだろうけれど、それは束の間の休息の、そう
 お茶の時間に片手で読み進める文庫本の中の言葉の羅列なようなもので、だから姫はその思うところ
 考えるところのものの体感を以て戦っている訳では無い。
 お茶を飲み終わり、文庫本をぱたりと閉じれば、それでそれはおしまい。
 ヒロのことに対しても、姫はその程度の認識しか無い。
 館に敵方の透明人間が侵入したのを感じるや否や、チェーンソーを片手に斬りかかり、それこそ作戦も
 へったくれも無く、しかし別に猪突猛進という訳でも無く、そのたびに考え考え、その考えが戦いの一環
 として姫の中で一体化している感じであり、とにかく侵入者を倒すために体と知恵と時間と館のすべてを
 使って戦う姫が在る。
 
 だが姫は、その想いを賭けて、その感情のままに一心不乱に戦っている訳では無い。
 むしろ逆に姫は、冷徹にして冷静。
 そしてなによりも、戦っている自分の姿を冷酷に見つめているだけなのだ。
 
 最初私は、姿の見えない透明人間に滅茶苦茶に斬りかかって館を壊しまくる姫を見て、なんだか笑って
 しまえるくらいのその無謀さに違和感を覚えたのであるが、しかしその違和感は戦い以外のことと共に
 生きている者の感慨であって、上述した戦いという瞬間瞬間を生きている者にとっては、逆にああでなけ
 ればその「リアリティ」を失うと感じ直したのだった。
 姫は、主のために総合的な戦略の元に戦う「軍師」でも、ただ一瞬の己の快楽の連続のために戦う「戦
 士」でも無く、ただ戦い続ける意味の中に生きている「姫」なのだ。
 意味のために戦っているのでは無く、戦い生きていることがただ意味を垂れ流しにしているだけ。
 その「姫」が脱ぎ捨てていったものを、ただそれを見つめる者達が得ていくだけ。
 だから姫の戦いに「意味」があるのは、姫にでは無く、姫を見つめるそれ以外の者達に、なのだ。
 姫は何者のためにも(無論自分のためにも)戦いはしない。
 ただ、戦う。
 なぜ戦うのか。
 その問いは、なぜ生きているのか、という問いに等しい。
 と、言う言葉が、姫の前には在る。
 つまり、その言葉の前には、姫が居る。
 その言葉を唱えながら居る姫は、なにを想うのか。
 自らのこの存在の不毛さを、想う。
 燃え上がる館の前の、兄妹が殺し合い仇討ちをし合う運命の下の、此処で。
 今夜もまた、姫はその不毛な自分を言葉に換えていく。
 
 しかし姫は、その不毛な言葉を紡ぎ続ける自分の存在には、なにも感じていない。
 それはまるで、生きている事自体の喜びをまるで感じていないかのよう。
 姫は戦いを、決して愉しんではいない。
 戦い続けること自体を虚しいとは思わないのと同じくに。
 
 
 姫はヒロを殺すことをなんとも思ってはいないし、無論ヒロの人格など認めてはいない。
 けれどヒロを家来として上手く使うために、その観点からヒロの性質を把握しようとする素振りは見せて
 いる。
 あくまで自らが使う武器の性能を理解するが如くに、姫はヒロを扱うのです。
 姫が役立たずなヒロと契約したのは、なぜか。
 それは姫が「慈悲深かった」から。
 姫はその内面が自身にとってどうであろうと、その言葉でそれを説明し切ってしまっている。
 だから、ヒロが家来として全力を尽くして姫に仕えなければならない理由を、実に論理的に説明してみせ
 る。
 ヒロが戦う理由は、ヒロに命を与えた姫が死ねばヒロの命の炎も尽きる、そのような仕組みで今、ヒロは
 此処に存在しているから、だからヒロは姫を守り戦わなくてはならない、と。
 いとも、簡単に、姫はそう言う。
 そして姫は、そうして動かしたヒロをまるであてにはせずに、さらっと自分はヒロのように半不死身では無い
 と言ってのける。
 それは逆に半不死身のヒロは安全ではあるが、姫自身は決して安全では無く、そのことで一瞬ヒロに
 それでも襲撃され続けている姫への同情を喚起させ、ヒロに姫の守護者としての自覚を与えつつ、そこに
 姫のひとりの存在としての弱さを感じさせても、しかしそれも束の間、そのことに全くひるんではいなく、まし
 てやヒロを頼るそぶりなど微塵も無い姫のその姿が、そこに膨大に広がっているのを感じずにはいられな
 い。
 そして、ヒロにとっては、それは同時に再び半不死身とはいえ、命を姫に与え続けて貰えなければ、今す
 ぐにも自分は死んでしまうということを、いやでも思い知らされる、その姫の後ろ姿なのだった。
 姫が主でヒロが従。
 ヒロがどんなに理屈と妄想を重ねても、そこに絶対的に広がる姫の姿からは逃げられない。
 ヒロが獲得する如何なる優位性も、それが決して「姫」に対するものにはなり得ないことを知る。
 
 月光の中に屹立する姫の姿は、姫自身の言葉にすらも屈しはしない。
 
 姫とヒロのこの命で結ばれた関係がふたりに主従関係を結ばせ、ヒロはそれを超えて、そのひとりの存在
 として、或いはひとりの男の子として姫を守ろうと決意したとき、そこにはやはり、「ふふん。」と不敵に笑う
 姫しか無いことを、強く強く感じてしまう。
 守る守られるというその関係性自体が、既に姫の目の前に無様に転がっている。
 姫は、ただ戦う。
 ヒロがなにをしようがなにを想おうが、それとは一切関係が生じ得ない。
 だから、本質的には、ヒロは姫の従であっても、姫はヒロの主では無い。
 姫は、ただ戦う。
 
 姫は、王では無く、姫であるゆえに。
 
 家来であるヒロのその姫に対する献身に対して、姫はなにもして返さない。
 姫にとっては、家来はすべて姫が戦うために必要な武器でしか無い。
 武器を得るための対価やその武器を維持するための維持費は出せど、それ以上は無い。
 姫は、ただ戦う。
 そのために必要な、家来が居る。
 家来になにかを与えるためにそれを勝ち取るために戦う訳でも、家来を守るためでも無い。
 家来が居るから戦うのでは、だから無い。
 そしてその姫が、戦いの役には立ちそうも無いヒロを家来にした。
 その姫の心中を、「慈悲深いからだ。」の一言で一蹴した、その姫が、その役立たずな家来を使って
 戦っている不思議。
 おそらくこれの解明がこそ、私がこの「怪物王女」という作品の感想を書く決意をした、その動機の目指
 先にあるものなのだと思う。
 そして、その中で、なぜヒロは戦うのか、ヒロはどうやって戦う意志を固めるのかのその姿を、その姫の眼
 差しに照らされない、孤独な家来としてのヒロの中に見つけていきたいと思う。
 
 『そして、僕に、彼女に関わらないという選択肢など、無いんだって、こと。』 byヒロ
 
 
 
 うーん、美しいね。
 戦いっていう言語を視たおもいですね、まさに。
 で、その美しさを感じてる私らを無情に踏みつけて、一体これから姫がなにをやるのかと、非常に好奇心
 に駆られています。
 という風にまとめたかったんですけど、やっぱりやめにしたのですよ、うん、こうして改めて加筆修正して見て
 ね。
 一応怪物王女の感想は連続して一本の感想として書いていく事にして、その各回のタイトルには、
 「戦」の一文字を入れて他の日記と区別しようかなって思ってたんですけど、やめた。
 確かに「戦」でも良いのだけれど、「戦」っていう行為そのものに焦点を当ててしまうと、なんか非常に限定
 的というか、「戦」という言葉に逆に色々な意味を込めても良いのですけれど、ならばその色々含んだ
 「戦」ということをも含んだものを描きたいって思って、そしてじゃあそれより上位にある言葉って言ったら何
 だろうって考えたら、それはもう「姫」しか無いと思って。一番収まりも良いですし(笑)
 って、ことで、今の私のレベルじゃ姫を姫の一人称的に書き出すことはできないですけれど、そのうち話数
 が進むうちに、そのようにまさに「姫」としてなにかを書けるようになってみたいと思っています。
 
 『本番は、これからだ。』 by姫
 
 
 あ、あと姫がヒロに与えた命の炎みたいな奴ですけど、あれ最初はやっぱり血とかの方がなんか文学的
 な広がりが持てて良くないかな?とか思ったけど、逆にそうなると冬目景の「羊のうた」みたく、肉感的
 情感的な関係としてヒロとの繋がりが出てきちゃう可能性があるから、かえってあの無機質な光みたいな
 方が、姫とヒロの絶対的な隔絶を描くには良いのかもって思い直したり。
 あとヒロの転校初日の挨拶は痛すぎて言葉も無いです。学校は、あれで終わりな。(ぉぃ)
 
 では、そういうことで、姫万歳。
 ちょーカッコイイ。
 ふふん、紅い瞳の趣味が良く見える思いだな。
 
 
 
 まったくです。(溜息をつきながら)
 
 
 
 
 
 *この文章は、4月22日の日記「乱調バット」所収の文章を、一本の感想日記として成立させるため
  に加筆修正し、改めてUpしたものです。ご承知おきください。
  
 
 
 
 
                                ◆ 『』内文章、アニメ「怪物王女」より引用 ◆
 
 

 

-- 070427--                    

 

         

                           ■■誇り高き姫と誇り無き家来■■

     
 
 
 
 
 『よく聞け。私の名は、姫。 
  そうだ。怪物と呼ばれるすべての異形の者共の上に君臨する、王の娘だ。』
 

                            〜怪物王女 ・第一話・姫の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 怪物王女:第1話
 
 
 ああああああああああ・・・・・・・・・・(息を大きく吸って)・・ああああああああああ
 
 
 
 
 ふぅ。
 
 あーすっきりした。
 
 良し。
 
 
 改めまして。
 
 
 怪物王女:
 完全敗北。
 まさかここまでアレだとは、正直思わなんだ。
 まさかね、2期連続で本命(前期はVVV)を空振りするとはね、私もヤキが回ったもんさねと、ぐだぐだと
 くだを巻きながら晩酌でも重ねようかと思い、そして戸棚から一升瓶を引き出そうとしてしゃがんだ途端に
 、ふっと膝頭を濡らす熱い水滴が・・・・・・・・・・ショックで立ち直れない・・・・みたいな・・・
 そんな感じでもう心頭滅却すればこの世のすべては道連れよ、みたいな、ってどんな言葉やねんそれ、
 みたいな、もうね、あなたを殺して私も死ぬみたいな情念と怨念をたっぷり込めて全部どかんだ!みたい
 な危険思想を体現して憚ること無い感じで、もうもうもう!
 
 紅い瞳は一度死にました。
 
 もう知らない。
 なにもかももう知らない。
 限界超えた、頭にのぼった血が噴いた。キレた。
 うん。
 なんていうのかな、完全に吹っ切れちゃいましたね。
 うん。
 だからね、もう日頃の紅い瞳の言動を知る方々のご想像に違わぬ展開にまっすぐGoしてしまいました。
 つまり立ち直ったというか、泣き崩れてぐだぐだになってるのを無理矢理引きずっていかれたみたいな。
 
 ・・・・・。
 うん。
 まさかね、本命がね、大穴だったとはね。コレ、私的前代未聞の大穴ですよ。
 思いっきり殴り倒されてひっくり返って、その状態で逆様に見た世界は意外にすごくて。
 大穴ヒットですよ、コレ。と思わざるを得なくなってる、というよりなんかもう普通にヒットしてきた。
 期待しまくってて、それが完膚無きまでに気持ちいいくらいまでに裏切られ(勝手にこっちが期待してただ
 け)て、そして真っ白になった私の前に広がったコレは、もうあり得ないくらいにヒットしてて。
 うん、あり得ない、こんな面白さ、こんなタイプの良く考えたら今まで全然無かったよ。
 だからコレ私的には大穴、あり得ないゆえに当たれば大きい大穴です。大発見です。
 
 ということで、きました。
 新境地ですね、うん、きたよこれ、なんだこれ、良く見たらすごいじゃんコレ。
 まるで6時台のお子ちゃま向けアニメの造作でありながら、表現方法を変えさえすれば、ものすごく深く
 重いものががっしりとあるのが見てとれ、そしてそのお軽い身なりを纏ってその本質を隠し、そしてときどき
 そのまんまの剥き出しの足をそろりと出して魅せてくる。
 うわ、なにこの艶っぽさ。 ドロドロはしてないんだけど、きっぱりとしてるというか。凛とは違くて。
 滅茶苦茶固いんだけどギクシャクはしてなくて、硬質でかちっとしてるけど決してフォーマルという訳でも
 無く、荘厳だけれどエレガントでは無く、なんかもうそういう仕掛けに満ち満ちててさ。
 ぶっちゃけ姫は非常に嫌な女だけど、でもその私情(?)に囚われながらも、すっとこう地べたに這い蹲っ
 た立場から見上げるやらしいMな感覚から見れば魅力的で(笑)、でもそういったただの「女王様」として
 の姫の姿の枠に収まることができると同時に、その枠で整えられた額縁の中の絵の中にはさらに他の姫
 の姿があってその姫にもまた魅入ってしまうという、その際限の無い姫の姿の広がりがあるんです。
 そしてそうした姫を見る側の欲望の対象として捉えた途端に、姫は下賤(笑)な「キャラ」としての肉感を
 以て、それを見る個人個人の元に舞い降りては来るけれど、でもその姫の降臨をさせずに目の前の画
 面の中に姫を在らせたままにしていると、かっちりとその画面の中の「怪物王女」という仕掛けの中に填り
 込むひとつの因子として、その機械的な威力を発揮し出すんですね。
 
 隠喩がある訳でも無く、これみよがしなトリックがある訳でも無く、ただ平々凡々なストーリーラインとよく
 あるキャラ造形で、なにも目新しいものは無いはずなのに、あの姫の非人間性或いは人外としての存在
 感そのものを中心にして読み解いていくと、すべてが怪しい羅列を描き出しながら回転していくのです。
 そしてその「人外」とカテゴライズ出来てしまう安易な捉え方の枠の中に、ぽっぽっとその姫が持つその存
 在自体の意味が浮かび上がってもくる。
 姫のキャラとしての造形はもとより、姫の言動そのものがあの画面の中に在ること自体が、一体それを見
 るものにどのような思索的余地を与えるのか。
 映像的に見て、あの「フガ?」とかアホみたいなセリフしか吐かないチビメイドがひく、山のように積んだ荷
 台の上に座す、その姫の姿は紛れも無くあの街の光景から浮く以前に滑稽ですらあり、また同時に平凡
 さをその造りに見つけることができるけれど、しかしもしあの場面にそれぞれがそれぞれに相応しい演出の
 仕方を以て姫のその姿を見ていけば、おそらくあのシーンはもの凄く面白くなるのじゃないかな。
 全編通して平坦な絵面が並んでいても、怪奇的なイメージをその無機的とも言えるシーンの中に見初め
 ていけば、これはある意味で断片的なホラーの集合体として、この作品を捉え直すこともできるのです。
 だから私としては、もっともっとこの作品にはその演出的な部分には、まだ未練たらしく期待してしまうの
 ですけれど、今はいっそのこと、このあっけらかんとしたのっぺりさと、そしてそれでいて因子だけは際限無く
 その組み合わせの妙を感じることができる可能性を備えている事に、私の意欲を向けてみたいって感じ
 ています。
 
 あとあの姉の天然さも弟への無関心さという形でぞっとするものを与える場合もあるし、あのチビメイドも
 フガしか言わないのに姫とは意志疎通しているというのもまた怖いし、全体的に姫の周囲の閑散とした
 ある意味で「人間らしい」孤独ぶりもかえって怖いし、そして。
 第一話の最大の見所は、姫が本来なら爵位を持ち最低でも武勲を持つ者の命しか救わないはずな
 のに、それでも何故あの主人公の命を助けたのかと自問するシーン。
 理を提示し、そしてその理に従えば絶対にあのような小僧を助けたりはしないし、ましてや主従の契りを
 結ぶなどあり得ないと、そう結論し、そしてにも関わらず助け契約したという事実を前に、姫は傲然とこう
 言い放つのです。
 「ではなぜか。」
 
 「ふふん。」
 
 「私は慈悲深いのだ。」
 
 ナイスツンデレと言った人はもう駄目です。お終いです。
 いやそれはそれで確かにいいし、そういう愉しみがあるのは良いけれど、たぶんそんな事頭に思い浮かべ
 た途端に姫の剣があなたの首をはねてると思う。
 自分の中に打ち立てた理の沿っていない行動を取ったのは事実だし、だからその事に違和感を覚えたの
 も姫の中でも事実。
 だからそれゆえにそれは慈悲深いからだという、新理論を構築しその観点から自分の行動の理的な正
 当化を図っているし、でもね。
 たぶん、そう指摘した瞬間に、一切の戸惑いも感情も無く、剣を振り下ろす姫の姿しか私には見えない
 のですよね。
 姫的にはその自己正当化はそもそもほとんど価値が無く、そして自分の気持ちのゆらぎそのものをさえ、
 ただ無慈悲に眺めている、そういう場所に姫は圧倒的に君臨しているような気がする。
 だからツンデレよりは厳正なサドですね。・・・・・そう言った瞬間になんか違うって思うけど(笑)
 まぁだから、敢えて姫に「萌える」とするのなら、姫を見るこっち側が姫の僅かな反応に、姫の中のその
 強固な精神のゆらぎを妄想して見て取り、そしてそれが妄想では無い証しを姫の姿の中に見つけていき
 、それでも全然変わらない姫の姿にぞくっとするという、もうな、書いてて疲れたね、なに書いてんの私。
 
 でも私はこれでいくよ、この怪物王女は。
 
 だって面白いもの。
 見方次第によって、色々な愉しみ(どんなだかはもう言わない 笑)を得られるしね。
 もっともっと考えて見つけて感じたいな、この作品。
 姫ちょーカッコイイし。
 その姫が、あの(ある意味で)底知れない映像の中でどうやって広がっていくのか、非常に楽しみです。
 あと、ED最高。
 なにあの極悪ぶり。
 曲のタイトルはこの際見なかったことにしてもいいけど、もういいですね、あのアリプロのリズムと映像の
 振り回し方がぴちっと合ってて、ぐるぐるまわったりひきずったり座ったり足伸ばしたり舐めたりフォークとナイフ
 持ってテーブルどんどんとか、あー、なんかそういう意味で最後の如何にもなカットも活きてくるんだよね、
 うん、いいね、この反転ぶりは。
 
 
 と、ここまでで終わらせても良かったのだけれど、付け足し。
 ここからはちょっと第3話まで見ての感想だから、第1話の厳密な感想とは言えないのだけれども。
 この「怪物王女」という作品では、姫のその戦いぶりそのものをどう見ていくか、というのが私にとっての主
 眼になりそうではあるのだけれど、もうひとつのヒロが姫にその生存権を握られて、一生仕えていくことにな
 る、ということから、なにをどう見ていくかという立場も、忘れずに付随・融合させていきたいと思っています
 し、別の言い方をすれば、それらを含めた総合的な見方で勿論この作品を見つめていくつもりです。
 この作品の面白いところのひとつは、主人公たるヒロの視点が極端に弱いことで、そのヒロの立場という
 ものが全面に出てこず、かえってその分それを見る私達がそれを織り込んで見ていかなかくてはいけない
 ところにもあります。
 そのキャラとして、というよりもひとつの感情と思索のある存在としてのヒロの脆弱さを背景にすると、姫の
 数々の言動が、単色ながらも煌びやかに躍動しているように見えてきて、たいした演出は無いのに、姫
 のちょっとした仕草や表情が意味ありげに(その意味を考えるのは私たち)見えてきて、その分だけこの作
 品に広がりが出てきているのです。
 むしろその辺りの感覚を感じ取らないと、ものすごく単線的なものにしか見えないと思いますし、またそれ
 でこの作品を単調と評するのは早計だとも思います。
 
 またワイルドマンとの戦いで見せた、その戦う者へ向ける言葉が、単純な理だけで綴られていながらも、
 必ずその裏にそれが言葉でしか無い事実を縫い付けている様が、これもまたひとつの主眼となり得ます。
 誇りやらプライドやらが肉を得てそこにあるのをわかっていながら、敢えて論駁対象としてのみそれを皮肉
 りそれを貶し否定し、そして怒ったワイルドマンを打ち倒し、そしてその死の上に再びその誇りに受肉させ
 る。
 言い換えれば、誇りやらプライドやら言うものが、ただの言葉でしか無い側面を知りながらも、しかしそれ
 を超えて、確かに自分の存在そのものから出てくるものとして、その言葉としての誇りやらプライドが自分
 にあることを、強く感じているのです。
 
 
 ・・・・。
 なにを言いたいのか、多くの人はわからなかったに違いないですけれど、私はわかったのでもういいです。
 この私の怪物王女体験に祝福を。
 うん。
 ちょっと、いってきます。 (あちらの世界へ)
 ということで、毎週この場を借りて壊れさせて頂きます。
 あー姫書きてー。
 ・・・。
 でも私如きに書けてしまったら、それはもう姫じゃない! って普通に気付けたりするあたり、私もなにげに
 家来の素質があったりするのかもって、はは、なに言ってんだこいつ。
 ほんと、なに言ってんだ、こいつ・・・ (鏡の中の顔を見つめながら)
 
 あ、最後にひとこと。
 怪物王女。
 それは、ただひとりの王女が剣を片手に戦い続ける姿がひっそりと描かれる、ただそれだけのお話です。
 だから、怖い。
 それだけのその姫の姿が、なによりも。
 
 
 
 
 
 
 
 
 素直に姫に萌えたと言えない紅い瞳でお送り致しました。
 
 
 
 
 
 
 
 *この文章は、4月14日の日記「集中編成 春の陣」所収の文章を、一本の感想日記として成立させ
  るために加筆修正し、改めてUpしたものです。ご承知おきください。
  
 
 
 
 
                                ◆ 『』内文章、アニメ「怪物王女」より引用 ◆
 
 

 

-- 070424--                    

 

         

                             ■■ 私は地獄になりたい ■■

     
 
 
 
 
 『あれが、あいの「選んだ」答えだったんだね。・・・・・・・・・・・・お疲れさま。』
 

                      〜地獄少女 二籠 ・最終話・きくりの言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 透き通ると、向こうが見えるようになる。
 でもそのうち、向こうを見ようと思っていた気持ちすら、透明になり消えていく。
 よく見つめれば見つめるほどにそれは透けていき、良く見えれば見えるほど、なぜ見ているのかがわから
 なくなる。
 
 -- 雪よりも白く無惨に転がる夜の冷酷な時間の堆積
 
 両手を広げ天を包み、逆巻く血潮が漲る肌の下を感じながらすべてを想い、夜の果てよりも遠い無限
 の可能性を心に秘め、その愛しきぬくもりの中に在り続けた日々。
 幸せという言葉がすべてを吹き飛ばしてしまほどの、儚くて些細なその優しい歴史。
 続々と消えていく時間の流れの端を指が白くなるほどに握りしめ、そのままどこまでも連れて行かれるはず
 だった、幸せな生活。
 
 渺
 
 嫋々と空の上に仕舞われていく夜の息吹が、絶望よりも逞しく希望よりも脆弱な月光を投げ落として
 くる。
 私は、此処に居る。
 その言葉が口の周りを漂う限り、私の存在はあの月よりも遠い月の裏側まで飛んでいく。
 月が透けて、その裏側に私が居るのが見えた。
 そして。
 そこから見下ろした、醜い大地の上には。
 私は居なかった。
 
 
 決断を必要としない行為。
 言葉を不要とする行動。
 なにが悪いのかと問われれば、それは全部私だと、なんの想いも自覚も込めずに囁ける。
 なにが悪かろうと誰が悪かろうと、此処に私が居ることは止められず、そしてこの月夜があることも止めら
 れはしない。
 連綿と続いてきた、そしてこれからも永劫続いていく存在達の鎖の連なりが醸し出す、その絶え間無い
 死臭だけが、どこまでもいつまでも善と悪の空々しい戦いを蔑んでいく。
 その蔑みの視線を漂わせ、その視線の先にあるもののすべてが、それと全く同じ熱度を以て私を、そして
 それらすべて自身をただその瞳の中に映しているのが、なによりもはっきりと見えた。
 凝視、していた。
 死にたかった訳じゃ無い。
 殺したかった訳じゃ無い。
 怨み?
 悲しみ?
 そんなものがあるのかどうかすらわからないと、そう言う事にも、なにも感触が持てなかった。
 ではその感触を持つ意志があったのかと問われると、無いと、こればかりは自分でも驚くほどにやけに鮮
 明に答えることができた。
 体から、空気が抜けていく音がした。
 力は籠もったまま、ただ真っ直ぐに力を込めて、その場にしゃがみ込んだ。
 アスファルトに感じるこの冷たさは、果たして夜のか私の血のものであるのか。
 
 
 拓真くんを殺して、私も死ぬ。
 
 ごめんなさい。
 
 
 終わらせる?
 怨みの連鎖を止める?
 終わらせて、どうするの?
 連鎖を止めて、どうするの?
 それらは目的であって、目的では無い。
 拓真くんを殺して自分も地獄に堕ちることを、地獄少女の前で宣言したけれど、ではなぜそうしたのか。
 簡単よ。
 そうするしか、ないから。
 あはははは。
 悪いことなのかしらね。
 拓真くんさえ居なくなれば、誰ももう傷付かないのは事実なのだから、むしろ正しいとは思わない?
 どうでも、いいわよね、そんなこと。心の底から。
 もっとも、その心の底は抜けてるけどね。
 なんで私、隣で『やめてお姉ちゃん!』という拓真くんにぴくりとも反応しなかったのかしら。
 なんで私、あんなに地獄少女を罵ったくせに地獄少女に依頼なんて平気でしてるのかしら。
 どうでも、いい。
 わかったわ、随分強情なのね、私。
 尋ね方を変えるわ。
 それなら、どうして、どうでもいいの?
 ・・・・。
 
 どうでもいい、という言葉にすら、もはや実感を感じられなくなっていた、から。
 
 昔はね、そう、そんなに昔じゃ無いけれど。
 どうでもいいとかわかんないとか、ふて腐れて良く言ったことはあったけど、それって言葉通りのどうでも良い
 ってことじゃなくて、どうでも良くないのにどうでも良いような選択肢しか残されていないこと、それに対して
 精一杯抗議しての「どうでもいい」だったのよ、今考えればね。
 って、なにしてるのよ地獄少女、さっさと藁人形を頂戴よ。
 でね。
 今はもう、そんなんじゃ無くて、ただもう、どうでもいいと。
 特に言うべき言葉も無かったから、ただどうでもいいと、口を動かしただけ。
 嘘っぽいよね、こうして説明すると。だって、嘘だもの、たぶん。
 ううん、嘘というか、たぶん正確に言い表す言葉がこの世に存在して無いだけ。
 ねぇ、はやくしてよ、閻魔あい!
 そう、良くわからないのよ。
 というか、わかりたいとか特に思わないのよ、もう。
 わからなければいけないって? なんで?
 
 私はもう、此処には居ないのよ?
 
 私はただの殺人鬼候補生。
 そしてこの藁人形の紅い糸を解けば、すぐに殺人鬼に昇格できる。
 感情? 消えたわ、そんなもの。
 正義? あったわね、そんなものも。
 私は私のやっていることを、たぶんすべて正確に理解している。
 だからほんとは、感情なんて消えるものじゃ無いし、私の中の正義が無くなる訳じゃ無いということも知って
 いる。
 ええ、よく、ほんとうによく、わかっているわ。涙を、込めて。
 生まれながらの悪人など居るはずが無く、生まれてからただの一度も優しい想いで生きたいと思わなかっ
 た人など存在しない。
 私は生まれたときから優しい想いに染まるのが大好きで、誰かを愛せる自分が大好きで、そうして自分も
 誰かから愛されれば、それでもうこの世界全部を私が背負って幸福なものにしていかなくちゃいけないと、
 そういうなによりも愛しい使命感に染まることさえできた、そんな善良というのも気恥ずかしいくらいの人間
 だった。
 だから私は・・・なによりも、悪意に敏感だった。
 なぜ悪意を抱かねばならなかったのか、そしてなぜ人は正義を振り翳すのかと、いつもぼんやりとそれを
 問いながら、様々な事を考えて生きてきた。
 怨みを抱くのは、誰かを殺そうと思うのは、そしてそれを非難するのは、それを責めるのは何者なのかと。
 私は、私が幸せになる努力をしているからこそ、それ以上に他の人たちにも幸せになって欲しかった。
 私が努力して血が滲む努力をして、そしてなにかを勝ち取っていくことそのものは、確かに誇りと共に私の
 血肉となり息づいていたけれど、でもそうして私が全力で生きることで必ず誰かが傷付くことがあるという
 こともまたわかっていた。
 私は自分が頑張りなにかを得ていくたびに、その私と同じようにして強く幸せに生きている人達が、そうで
 は無い人達を蔑み、或いはその人達を踏み台にして良い正当性を、その自分達の力強い誇りの名に
 かけて得ていることを、なによりも強く憂えていた。
 なにが弱肉強食よ・・・強いからこそ弱いもののために生きるんじゃないの・・
 あなた達のその誇りはそうすることで、ただの驕りへと堕ちていることがわからないの・・・?
 それは私の心の底に澱のように堪っていく想いだった。
 
 そして私は、いつも必ず、そういったときに必ず弱い者の側に立とうと決めていた。
 無論、懸命に努力して誰よりも強く幸せになろうとする事を否定する訳では無いし、むしろ逆に私は今
 まで以上に努力を重ね、そして、本当に私たちがしなければならない事はなにかという事に気付くことが
 できた。
 どんなに頑張っても報われない弱い人達が、それでも、そうして頑張ろうと幸せになろうとし続けることが
 できるような、そういった手伝いをしなくてはいけないのだと、私は生きているうちに気付いていった。 
 私のお兄ちゃんはさ、刑事だったから・・そりゃあもう沢山の罪を犯した人達と向き合ってきて、勿論そんな
 具体的な話は聞けないけど、それでも実に多くのことをお兄ちゃんを通して私は知ってきた。
 私達の幸せな生活、そうそれ自体が既に自分の努力や頑張りが100%に近い形で実を結ぶ世界で
 あるという事を、私は段々と、そして深く深く知っていったのよ。
 その世界で生きることができなかった、いいえ、許されなかった人達が、どれほど沢山居るのかということを
 、私は何処か遠いアフリカの貧しい孤児達の生活をテレビ画面の中に見ているときよりも、圧倒的に強
 い実感を以て受け取っていった。
 そして・・・そしてね・・・
 
 如何に私達のこの幸せな世界に居る人達が、その外の世界に居る人達を無視しているのかを、知った。
 
 物を盗んではいけない、人を殺してはいけない。そう、当たり前のことよね。
 それをしたら、それらはそれに見合う罰を受けても当然よね。
 でも・・・
 そうせざるを得なかった人達・・・・ううん・・それだけじゃないわ・・・
 もはや・・・それら当たり前の罪の意識を持つことすらまともにできなくなってしまうほどの、そうした地獄の
 世界の中に居る人達にとって、それは・・・あまりにも・・・・
 そしてね。
 その人達は、絶対に完全にはその罪の意識を失ったりはしないのよ。
 たとえ実感は無くなったとしても、知識としてしてはいけないものとして、それは確かに心のどこかにあるは
 ずなのよ。
 それでも、罪を犯した。
 生活苦で物を盗み、ううん・・・それだけじゃ・・・無い・・・
 ただ・・・人を殺してしまう人も・・居る・・・殺さなくてもお金を奪えば良いだけなのに・・・
 なぜ、そうなってしまったのか。
 なぜ、そうしなければいけなかったのか。
 そうすれば、自ずと見えてくる。
 怨みが、あることを。
 どんなに努力して頑張っても、どんなに真面目に敬虔に倫理的なことに染まっても、神を誰よりも信じて
 いても、それでも、どうにもならないまま生きていくしかない世界があって、そしてその隣では、当たり前の
 ように幸せに生きている人達の世界があって・・
 その幸せな世界の住人より努力すれば、100倍も200倍も努力すれば、その世界の中に入ることができ
 るのか・・・
 そしてもし仮に入れたとしても、その今まで居た地獄の世界に取り残された家族や仲間達はどうすれば
 良いのか・・・
 
 だから、絶望して、世界の構造そのものを、それを創り出している人の命を、壊す人達が居る。
 
 罪を犯すことがそれで許される訳じゃ無い。
 罪は、罪。その破壊したものに対する罰はそれでも与えられるべき。
 でも。
 その罰することが目的なのならば、それは意味が無いどころか、その罰を与える者達の悪意をすら感じて
 しまうのよ。
 なぜ彼らは罪を・・・犯さねばならなかったのか・・・
 
 
 
 
 そう・・
 
 
 
 
 なぜ・・・地獄少女は・・・・・
 
 
 
 
 『その子の、せいなの?』
 
 
 
 
 そうよ。
 拓真くんがいるから・・・・
 拓真くんさえ・・・・・
 
 「悪魔の子」さえ居なければ、誰も苦しまなくて済んだのに!
 
 
 地獄少女の紅い眼差しが、私の背中を貫き、なによりも深く拓真くんを見つけているのを感じて、
 私はそうして、どこまでも高く透き通っていった。
 
 
 
 わかって、いるわ。
 私には。
 私の力じゃ。
 
 「悪魔の子」を、拓真くんごと葬るしか無かったってだけのことを。
 
 そして、私は。
 その小さな嘘を抱えて、降り積もる白い雪の堆積の中で、消えた。
 
 
 
 

 ++ 透明な存在が透明な嘘へと堕ちていく ++

 
 
 
 
 
 ◆・・・・・・
 
 『可哀想にね。なーんにもしてないのに。 ・・・・こういうの、あったよね? なーんにもしてないのに。』
 
 死にたくない。
 僕はまだ、死にたくない。
 お姉ちゃん・・・なんで・・・・
 でも・・・僕のせいで・・・お兄さんを・・・・・・
 泣くしかなかった。
 涙が止まらなくて、体が全部そのまま一緒に溶けて流れていきそうで。
 ・・・ごめんなさい・・お姉ちゃん・・・・僕・・・謝ることしかできないよ・・・・
 僕がもっと早く死んでれば・・・・僕が・・・・
 僕が・・生きるのを諦めてれば・・お姉ちゃんは・・・
 ごめん・・・なさい・・・・・お姉ちゃん・・・・・ごめんなさい・・ごめんなさいごめんなさい・・・・・・・っ
 それでも・・・死にたくなかった・・・
 僕・・ここまで・・頑張ってきたのに・・・お父さんのためにも・・生きていなくちゃいけなかったのに・・・
 でも僕・・・・・悪魔の子だから・・・・
 なんにもしてないけど・・・・悪魔の子って呼ばれてるから・・・
 ごめんなさい・・・僕のせいで・・・・・
 
 
 そんな僕を、地獄少女は助けてくれた。
 
 
 この世に戻ってきたとき訳がわからなかった。
 もう自分の頭の中がぐちゃぐちゃになるほど駄目になっていたのに、それなのに急にぱっとなにもかもが綺麗
 に消えて。
 そして気付いたら、目の前に閻魔あいが倒れてた。
 なんだかとても苦しそうで、たぶん僕を助けたせいでそうなったのかもしれなけれど、その閻魔あいは、なに
 か指さして早くそっちに行けっていうから、僕はもうただその言葉に従って、そしたら。
 お姉ちゃんのノートパソコンが・・・・湖の岸辺に・・・・・
 
 
 
 『お姉ちゃん・・・・お姉ちゃん・・・・・お姉ちゃん・・お姉ちゃん・・・お姉ちゃん!』
 
 
 
 なんでお姉ちゃんまで・・・そんな・・・そんなっ!
 お姉ちゃん! 死んじゃ嫌だよ! お姉ちゃんお姉ちゃん!
 お姉ちゃん・・・・死んじゃ・・・・・・・・駄目・・・だ・・・
 僕のせいだ・・
 僕は懸命に水を掻き分けてお姉ちゃんの元へ向かった。
 どうして・・・・・どうして・・・・・
 絶望なんかできなかった。
 悲しむこともできなかった。
 お姉ちゃん、お姉ちゃん!
 お姉ちゃんの体は冷たかった。湖の水よりも雪よりも夜よりも、そして僕の心よりも。
 泣いた。
 僕は、泣いた。
 
 そして
 
 
 
 『ずっと我慢してきたんだ、人を怨んじゃいけないから。お父さんがいつもそう言ってたから。
  でも、もう我慢しない。』
 
 
 
 お父さんの言葉が間違っていたとも、悪いとも思わない。
 悪いのは、僕だ。
 僕が、怨まなかったから。
 僕が、守れなかったから。
 僕は・・僕は・・・・
 うん・・・わからないよ・・・もう・・・
 なにもかもわからないよ・・
 だから僕は僕の感情のままに行動する。
 なんにもわからないから、教えてよ、僕の中の怨み達。
 僕は僕を赦せない。
 だから。
 
 僕は僕を、地獄に堕とす。
 
 あいつらの家を全部燃やしてやる!
 「悪魔の子」を創り出すものを、僕も含めて全部燃やしてやる!
 僕は、悪魔の子。
 『みんなそうじゃないか! みんな自分のために・・・・みんな悪魔だ!』
 だから、燃やしてやる。
 僕はもう許さない。みんなみんな許さない!
 
 そして、燃えた。
 真っ赤に真っ赤に、燃えていった。
 そして僕は。
 それを呆然と見上げていた。
 怖かった。怖くて怖くて仕方なかった。
 僕が、燃えていく。
 僕が燃やして僕が・・・
 
 
 誰か 助けて
 
 
 
 
 
 
 
 

『やめて!』

 
 
 
 

『この子を・・・・殺してはいけない・・・』

 
 

『目を・・覚ましなさい・・・っ』

 
 
 
 
 
 
 
 
 そして僕は、閻魔あいに、従った。
 
 僕は・・・
 
 
 
 
 
 
 

◆・・・・・・◆

 
 

『行きましょう。』

 
 
 
 
 
 
 
 なぜ私が受肉したか。
 それを知る術を求める事で前に進む意志に駆られていた。
 未来永劫抱くと決めた怨みの権化としてのその怨みの代行に生き続ける。
 それが賢か愚かを問うことで得られるものになんの価値も感じることができないままに。
 
 だから、なに?
 
 
 罪の無い者など居ないし、ゆえに罪無き者が殺される事自体あり得ない。
 けれど、罪の意識がある者と、その意識を持たずに済むほど真っ直ぐに生きている者は居る。
 私はなにも悪いことはしていないのに殺された。
 天地神明に誓って、私は悪いことはなにもしていない。
 私の潔白は、私が今までどれだけ清く生きることに心掛けてきたかを知るゆえに、なによりも私自身が最
 も正確に知っている。
 けれど、人はその存在自体が常に罪を為している。
 どんなに私自身が清廉であり他者を気遣い他者のために生きようとも、私が生きていること自体が既に
 甚大な被害をその者達に与えているということもまた、私は知らずには居られなかった。
 そして私は、最後の最後で、崩れた。
 お前達が私を殺すのなら、私も永劫お前達を殺し続けてやる、と。
 そして私は怨み続けた。
 そして私は、今。
 
 拓真を、みた。
 
 立ちなさい。
 そして来なさい、私と共に。
 あなたが燃えることも、そしてあなたが燃やすことも、無い。
 殺しては、駄目。殺されては、駄目。
 なによりも、あなたの、ために。
 私は拓真に私を視た訳では無い。
 私はただ拓真に言わせたかった。
 駄目だ、と。
 『どうしてこんなひどいことを』、と。
 私は答えなど求めてはいない。
 私はただ今此処で、在るがままに振る舞っただけ。
 拓真を、救う。
 怨みの連鎖を、止める。
 それでなにが変わる訳では無いことは、わかっている。
 奪われたものは戻っては来なく、そしてまた新しく得るものも無い。
 だが。
 
 失っていくはずのものを、ひとつ、抱き締めて守ることはできるから。
 
 殺しては、駄目。
 怨んでは、駄目。
 絶対に、絶対に。
 そして、殺しては駄目と怨んでは駄目という言葉を出さずに済む世界へ、行くのよ。
 あなたの、信じる世界へ。
 最後の一線を越える勇気があなたにはあった。
 その覚悟があることで、そうしなければならないという想いの虜となれた。
 そして、だからわかったはず。
 あなたに、それでも人の心があるということを。
 燃え上がる家を見て、それに恐怖を覚えたのでしょう?
 
 
 燃え上がる家を見て、それに恐怖を覚えているあなたは此処に確かに居たのでしょう?
 
 
 たとえなにも感じなかったとしても、拓真、あなたは此処に居る自分を知らずには居られない。
 心とはなにか。
 それは、自分が此処に居るという意識、或いは此処に居るという事実を知る知識。
 あなたは、悪いことをした。
 家を、燃やした。
 罪を犯した。
 その罪を償うのか、それともその罪悪感が無い事で一線を踏み越えた自覚を得、それに震えるだけなの
 か。
 どうするの、拓真。
 あなたはもうわかっている。
 罪を背負って生きているあなたは、罪を犯したくないと思っているということを。
 
 
 
 
 
 『これで・・・・・・・・・終わりね・・・・・・これで・・』
 
 
 
 
 
 
 拓真。
 いきなさい。
 
 
 
 
 
 あなたは既に、生きて、居る。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ちりん     ちりん
 
 
 
 
 
 
 
 『終わったよ』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ありがとう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 ◆・・・・・・
 
 閻魔あいは、地獄少女は消えて桜の花びらになった。
 高く聳える夜空を照らして、その闇をどこまでもどこまでも凝縮していった。
 透明なものなんて、存在しないんだ。
 あいは僕に、それを教えてくれた。
 真っ黒な怨念の渦を巻いて、それでもその人はそうして此処に居る。
 どんなに社会から見捨てられ、どんなに努力しても報われない世界があっても、僕が僕として此処に居る
 限り、いつでもその世界は変わっていく。
 その変化はほんのちょっとだったり、僕には全然わからないものなのかもしれない。
 でも、いいんだ。
 僕が求めてるのは、変化じゃ無いから。
 僕はただ・・・・
 
 
 生きたいんだ。
 ずっと、ずっと、いつまでも、どこまでも。
 
 
 だから僕は、その永遠の人生を賭けて、ずっとずっと色々なものを変えていきたいって思う。
 閻魔あいは、きっとあのとき変われたんだと思う。
 ずっとずっと怨み続けて、それでもそうして居続けたから、閻魔あいは最後にああなれた自分と出会えた
 んだ。
 僕はもう、誰も怨まないなんて言わない。
 僕はもう、誰も殺さないなんて言わない。
 怨んで怨んで、殺してやる殺してやると思い続けて、そして。
 そうして生き続けて、僕は。
 絶対に誰も怨んだり殺したりしない僕を生きていることに、無限に気付いていく。
 僕が欲しいのは、怨みに凝り固まった僕でも、殺人鬼の僕でも無い。
 僕が欲しいのは。
 
 
 
 
 ただただ、幸せで。
 そして。
 
 正しい、僕だけ。
 
 
 
 不幸の連続で、間違いだらけで罪作りな僕の存在の中で、そうして僕は笑顔で生きていく。
 お父さんと、一緒に。
 そして。
 僕を殺そうとして、僕のせいで死にかけた、お姉ちゃんと、一緒に。
 
 
 
 『早く良くなってね。』
 
 
 
 
 そしてみんなで。
 
 誰もが幸せに暮らしていける世界を、少しずつ作っていこうね。
 
 
 
 
 
 
 
 

 +

 
           + 『じゃ、行くぜ。』
 
                                 『あたしも。浮き世巡りと洒落込むか。』 +
 
 
 

+ 『それを言うなら、地獄巡りさ。』 +

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 だから。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 あい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 待ってるよ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 また会える、その日まで。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 〜 地獄少女 二籠  了 〜
 
 
 
 
 
 
 
                                ◆ 『』内文章、アニメ「地獄少女」より引用 ◆
 
 
 

 

-- 070422--                    

 

         

                                  ■■ 乱調バット■■

     
 
 
 
 
 ウイニャイマルカ!(挨拶)
 
 
 ランチョンマットと乱調バットって似てると思った紅い瞳ですごきげんよう。
 さて、春もじっくり煮詰まってきて、そろそろ寒さも完全にその姿を消し始めてきた今日この頃、
 皆様如何お過ごしですか?
 私はもう駄目です。
 
 (しばらくお待ちください)
 
 ここのところはもうアニメが忙しくて大変です。
 お陰様ですっかりテンパってすっかりリズムを乱してしまっている有様。
 なかなかサイトに対するスタンスを安定化&一定化させる事が出来なく、焦慮しております。
 なんていうかパソ立ち上げたらもう、ああアニメ早く見て感想書かなくちゃとか、そればっかり考えちゃって
 肝心の感想がまともにUp出来ないという、そういう悪循環ていうか馬鹿過ぎな展開はもうほんと、駄目。
 いっそのこと感想全部やめちゃえっとか自暴自棄というか、全力疾走で逃走に及びかねない勢いである
 のを必死に押しとどめて、でも押さえながらも「なんで私こんなことしてるんだろ」っていう感じで、本格的
 にどうでも良くなってきたりとか、もうね、駄目。
 うん、駄目ですね、私。
 ていうかサイト一体何年やってんだ!って話なのですよ。馬鹿ですかって話なのですよ。馬鹿ですよ?
 うん、まぁ、そんな感じです。ほどほどにしとけって話です。
 でもそれでやめられるのなら、とっくにアニメなんて見てません。
 いやていうか、アニメ見ること自体が悪い訳じゃないやん、てかおまえが馬鹿なだけじゃん、うん。
 うーん。
 どうしよう。 (なるようになれ)
 
 
 さて、はい。
 そんなこんなで更新ペースと更新内容が乱れまくりでごめんなさいすら言えない状況の中で、それでも
 なんとか必死に感想を書こうとしている健気さを買ってください、と既に死相が浮き始めてる笑顔で言って
 も洒落になりませんので、ただもうなんも考えずに感想書いてたら、案の定更新ペースと更新内容が
 さらに乱れまくってどうしようも無くなってしまったという、ほんと言葉も無いな。うん。
 と、あまりにも頭が悪い私を見かねて、仕方がないので少しは客観的に冷静に計画を立てやっていこうと
 思いますので、ええと、まぁ、テコ入れが必要ですね、やっぱり。
 まず、アニメの本数減らそう。涙を飲んで切りましょう。まさにリストラ。ごめんなさい。
 そろそろその候補も見えてきましたので、次回辺りを以て切ることに致しましょう。
 あとは、肝心の感想な。
 うーん、これは難題です。
 まず、プチ感想の方のエルカザドの感想を無くして、エルカザド単独日記のみにし、またプチ感想の方も
 、完全に怪物王女・ひとひら・ポリフォニカの3つだけに絞る方向でやってみようかと。
 とにかく焦点をエルカザドに絞ってこれをなんとかしないと、いっこうになにも片づきませんし。
 ただ・・別ケースも想定しているんですよね・・・
 むしろ、エルカザド単独日記を無くして、プチ感想にエルカザドを戻し、そして今度は怪物王女の単独
 日記を書く、というパターンをちょっとね・・・
 でもそのどっちにするかをなかなか決められなくて・・・・・・・
 
 なるようになれ、でいいですか? (結局)
 
 
 *ちなみに次回更新(火曜あたりを予定)は、遅れに遅れていた地獄少女の感想を書きます。
 
 
 
 
 ◆
 
 はい、ちょっと頭の中散らかり放題で、なんかもうどうでも良くなってきたので、適当に仕切ります。
 えーはい、じゃ、まずはまだ感想書いて無かった作品の感想を書きますね。
 たぶんこれでもう、全部書いたことになると思いますけど・・・ていうかもうこれ以上新しいアニメ見つけて
 きたらヤバイ・・・いやていうかもう既に充分ヤバんですけど紅い瞳さん・・・・(汗)
 ええい、では、どうぞ。
 
 
 
 ウエルベールの物語:
 第1話は見逃してしまったので、第2話から。
 思っていたのよりずっとクオリティが高く、お得というよりは少々焦ってしまいました。
 絵が綺麗で物語の流れもスムーズで、キャラの動きも繊細で、全体的に落ち着いて観ていられる感が
 あり、ほっとする感じです。
 ただ、第1話を見逃してしまったので肝心の主人公達の旅がどういうものであるのかが、イマイチ感じられ
 なくて、それが前述の全体的なほっとする感で誤魔化されそうになって、それで少し焦ってしまいました。
 平和のために政略結婚に身を投じる覚悟を決めて、そしたら相手の王子がお忍びでやってきて、そした
 らあんなこと言われてされて、そりゃー逆上というか絶望してざっくりやってしまうというのはわかりますけども
 、でもその足で旅に出たのは、王族として主体性ある政略結婚を行おうとした覚悟がありながら、それ
 でも王子を含むすべての構造の理不尽さに対する、その抗議的逃亡としての再生なのか、それとも
 あくまで王族の姫としての意識からなにかを求めているからなのかどうか、がわからないなぁ。
 や、なんか目的地があるみたいな感じでしたし、どうなのかなぁって。
 もしやあのときあの王子がなにか世界征服みたいな陰謀持ってて、おまけに姫の国も滅ぼすつもりだった
 のを知ったとか、そういう話が第1話にあったりとかしてたりして。でもそれじゃベタだなぁ(汗)
 私はあの姫様は、一体自国のために結婚しようとした意識を、相手の王子を殺してしまった今、どう捉え
 ているのかが気になっていますし、逆にそのあたりのことを放り出したまま、ただひたすらファンタジーをやって
 しまったら、ちょっと勿体ない気もします。ま、すべてはこれからなのですけれどね。
 
 
 瀬戸の花嫁:
 S・Fさんにお勧め頂いた作品です。何話なのかわからないですけれど、観てみました。
 そして、吹いた。吹きました。あははははは。
 最初は主人公とヒロインのほのぼのまったりストーリーって感じかなぁという先入観があって、そして始まる
 と今度はヒロインのサービスシーン全開で終わりかなぁと溜息混じりに最後まで観ようとしていたら、その、
 つまり、あの、あはは。 あ は は は は は  。  ・・・・ひーひー、お腹痛いっ(床を叩きながら)
 主人公と巻き貝のデスマッチがもう笑えすぎて大変でした。私のツボを貫通してくれました。死んでまう。
 特にあの巻き貝の巻ちゃんの二面的腹黒さとそれを大胆にやりきるふてぶてしさがもう最高。
 大好きなお嬢をヘンな虫(笑)に取られて、だからその虫を駆逐しようとするもお嬢の手前大人しく装い、
 そしてお嬢が居ないところで猛然と虫に襲いかかり、けどそれをお嬢に見つかってしまって、それでもお嬢
 は自分を想ってのことだと言ってくれて、それで巻ちゃん感涙に咽んでごめんなさいごめんなさいと謝って、
 主人公にも、   「ごめんフナ虫。」    て。
 大 爆 笑 。
 あんたほんといい根性してるわ。(笑)
 これでいきますこの瀬戸の花嫁は。
 当魔術師の工房並びにわたくし紅い瞳は巻き貝の巻ちゃんを応援しています。
 
 
 英國戀物語エマ第二幕:
 第1話です。
 基本的な感じは第一幕となにが変わる訳では無いのですけれど、これまた基本的に第一幕の最後から
 続く物語の始まりとしてあるので、最初からウィリアムとエマの濃く深い関係の影が底に広がっている感じ
 がし、ウィリアムの儚げで物憂げな雰囲気と、エマの沈黙としての愛が滲み出ている感触が、ふたりが
 離れている分、その間の空間で展開されていく物語に、見事に濃く深く広がっていました。
 ひとつ事件が起きて、その始まりから顛末までを、その濃く広がっているふたりの雰囲気と感触の視点か
 ら見つめていくことが出来、非常に味のあるお話になっていました。
 ウィリアムはエマを、エマはウィリアムを背負って、そしてその境地から決して抜け出すこと無く、ただ目の前
 の現実の中に立っているのみ。
 この物語が、エマとウィリアムがそれぞれ今の境遇の中で今を生きていく、その成長物語として展開して
 いく可能性を有していると感じるたびに、それを超えて、決してお互いがお互いの存在を失ってしまったの
 では無いことをその強い愛という名の自覚によって意識し続け、その果てにまた再び出会っていく物語と
 して綺麗に終息していくものと、私は感じています。
 
 
 
 ◆
 
 はい次は連続して感想書く予定の作品の感想をぽちっとな。
 あー、そうだ。
 DakerthanBLACKとかOverDriveとかクレイモアとか桃華月憚とか、その辺りの作品でもちょこちょこ
 書きたいことあるんですけどね、ちょっと余裕無いので無理でした。
 いやほんと特にOverDriveとかもう思いっきり書きたかったんだけどさ、時間です。
 あ。
 で、たぶん来週あたりに、今期開始のアニメの総評というか各評の集合というか、そんなものを書きます。
 その中でまぁこれらの作品についてもちょろっと語れたらな、と思っています。
 それと、今現在の私の感想執筆者としての駄目っぷりに対する反省というか叱責というかむしろお仕置き
 というか、そんなこともクドクドと書いてみたいなぁ、とかたぶん絶対来週も余裕無いとか言って書かなそう
 ですよね、マジで私。
 あーあ。 (大の字に寝っ転がって)
 
 
 
 エル・カザド:
 第3話。
 うーん、いい。いいですね。
 エリスの天然ボケにツッコミ入れつつそれはそれとして受け止めていくナディさんの大きさとか。
 あとエリスの素直さとか「いえっさ。」とか演技がかってるんだけどその演技の中身通りに素直にナディに
 従っていて、そこからエリスのナディへの信頼ぶりが感じられて好感が持てるっていうか。
 でもたぶんその信頼があるから安心してボケていられるのかというと、たぶんそれとは全然別に普通にボケ
 っぱなしなエリスが在る訳で、それ見てるうちにナディさんもゆっくり呼吸するみたくに、肌でそれを受け止め
 ていくというか、だからナディさんは気張って大きくみせてる訳じゃなくて、ただ自然に在るがままにエリスさん
 と素直に接していこうっていう態度で、やっぱりこれも好感触。見てるこっちが気持ちいい。
 ナディさんのおねーさん振りはだから本質的なところでは、そのエリスの庇護者としてのおねーさんじゃ無い
 と思うし、たぶん全く対等な位置に立っているからこそ、その目の前のエリスに対して最も必要なことをして
 、そしてだからそうすればすっとエリスの姿が見えてくるからこそ、ナディさんも同じくすっと心底素直に自分
 のままに振る舞うこともできるのじゃないかな。
 エリスとナディというふたりがそこに存在しているから、自然そのふたりの関係がお互いの姿を決めていく。
 お互いが自分にできることをふたりのためにして、だからふたりともその中で自由になれる。
 その安定的な感覚が、ふたりのそばでそれを見ている第三者としてのトカゲの存在を通して伝わってくる。
 ふたりで夕食の支度をしてるシーンなんかも、そういったふたりの存在に基づく役割分担が自然に行われ
 ていたりして、なんだかそこに生活の根元みたいなのが見えて、それで不思議な力持っててもエリスは人
 間じゃんと当たり前のように言うナディさんと、それを聞いて頷くエリスの間に、その人間らしさの本質がある
 ように見えたりとか。うん、抽象的。
 あとエリスがナディの銃に勝手に触ってナディに注意されたシーンとか、なにげに興味深かったですね。
 ナディさんがすっと表情を改めて、元に戻しなさいといって、そこにきらっとした生活に根ざす倫理というか、
 ふたりの間に芽生えるルールの発生みたいなそういうのが見えて、エリスさんは見てるだけと言い募るも
 ナディさんの雰囲気に感じて素直にうんと言って銃を元に戻して、そこまではなんだかとても美しくてそれだ
 けでもうナディとエリスの関係の(お話としての)完成を見た想いだったけど、でもね。
 そのあとエリスさん、「怒った?」って訊くんだよね、しかも笑いながら。
 うわーって思った。なにこのエリスさんの余裕ぶりはって。
 エリスさんはナディさんに素直に頷いて見せて、その事自体が大事だと思っていて銃を触ること自体が悪
 いとは思っていなくて、だから一本通ったと思った規律のようなものは、実はこのエリスさんの笑顔の支配下
 にあるものなのだなぁって。なに言ってんだ。
 ナディとエリスのふたりの生活があって、そのふたりの生活から生まれてきた実感のあるルールなら、それは
 たぶんそのまま了承されるだけだったけど、でも銃に触ってはいけない、というのはそもそもナディさんが背
 景とする殺人道具に容易に触れてはいけないという「既成」のルールであって、だから本来的に銃なんて
 鉄の玩具にしか過ぎないエリスさんにとってはそれは関係の無いものなのであって。
 でも、確かに頑なにというかきりっとした顔で本気に一途に感じられる倫理観でそう言ったナディさんを前
 にして、エリスさんはその姿に敬意を表しって言ったらちょっと違うけど、その姿自体に感じるものがあって、
 ただ素直にうんと言ったのだよねぇ。
 で、そして「怒った?」と笑いながらエリスさんは尋ねるんですよね。ちょっとヤな子ですね(笑)
 でもそうやって笑えるからこそ、その余裕のある距離感があるからこそ、エリスさんはそのナディさんの真面
 目さを信頼できるし、そしてだからこそそれに頼り切ってナディさん化することも無く、エリスさん自身の感
 覚のままにでも動くことができるし、そのエリスさんを見てナディさんもまたその生真面目な既成の倫理に
 対する態度の中に新しいものを獲得していくことができるのじゃないかなぁって思う。
 私見ですけど、ふたりの生活の営みで語っていくノワールとそれが無かったマドラックス、そしてその生活の
 中からさらにそういった生な倫理的な感覚を語り出していくのがエルカザド、って思います。
 やっぱりノワールとの最も大きな違いは、既に殺人者であった霧香と「純真無垢」なエリス、そして暗い過
 去への回帰の中に生きていたミレイユとそうではないナディ、というところにあるのじゃないかなって。
 あくまで単純化した場合のお話ですけれど。
 あーあと、変態が居るかどうかって違いもありますね。
 LA・・・・・恐ろしい子。
 
 
 ひとひら:
 第3話。
 うん・・・
 正直・・・・どうしよ・・・どうしよ・・・もう・・駄目by麦 な状態。
 うーん、これは視聴開始する前に言った通り、感想を書けるタイプのものじゃ無いかもしれない。
 だってなんていうか、言葉にするまえに、全部ずどんとわかっちゃうというか、ダイレクト過ぎっていうか、
 なんかもう体がかーっと熱くなって、頭にわーっと血が昇って、そしてゆっくりと冷めるというか醒めるというか、
 最終的には覚めていくというか、もうなんかそのあの、なんて言ったらいいのか・・・・(悩)
 う・・ん・・1個の感想として文章としてきちっとまとめることはできないけど、断片的な言葉の羅列なら
 なんとか・・・・・
 あー・・・まぁいいや、なんとかやってみる。
 うん、今回はそのなんていうか、感動とかはしなかったです。
 なんていうか、当たり前なことを、すごくすごく実感たっぷりに魅せてくれたというか、論理的に解題したい
 モノなんてひとつも無く、ただうんうんと頷けるその自分の首の振りが気持ちいいというか。
 ののさんの話はなんか悲劇的なものでありながら、その悲壮さを感じつつも、やっぱりどうしてもどっしりと
 此処に居座っているののさんの意志が見えてきて、だからその意志そのものに悲壮さは感じられても、
 その悲壮な意志を持って生きているののさん自身は、なぜかすごく安定して落ち着いて居るように見える
 のですよね。
 どこか他人事というか、むしろあまりにも自分の事だからこそ、それをその強い意志という「言葉」によって
 対象化して、それを冷静に見つめているののさんの穏やかな姿が見えてくる。
 ののさんがしずしずと語れば語るほど、それでののさんの姿がどんどんど消えていくのを感じられても、
 それでも、ものすごい勢いで、ののさんの存在という「記憶」のようなものが強靱に確立されているのが
 見えてくるのですよね。
 で、勿論その鮮烈なののさんの空虚で力強い姿が見所のひとつではあるのだけれど、でもそれは主人
 公という光の奥に控える影のようなもので、その美しい影というか闇があるからこそ光は強く輝くのだけれ
 ど、でもきっとそれは、やがてその光に照らし出されて、自身が影であること闇であることを、強く強く実感
 し、そしてだからこそその照らされ輝いているという事自体を本質として、その影であり闇である自分を、そ
 のまま暗く黒く消えていくだけのものにせずに、その鮮やかな今をそれでも生きる生命感に満ちた影や闇
 の「光」を魅せようとしはじめるんじゃないかな。
 ののさんはただ綺麗に退場していくだけの美しさに囚われる前に、きっと目の前の麦を見ているうちに、
 きっとその力強い悲壮感を脱ぎ捨てて、その自身の終わりのためにでは無く、あくまでこれからを見据えて
 の逞しい姿を見せるのじゃないかな。
 まさにカレイドスターのカレイドステージ最終日におけるレイラさんの言葉のような感じに。
 最後を綺麗に飾るなんて意味が無い。ただ未来があると信じてひたすら懸命に生きるのみ。
 ののさんはそう言いながらも、まだそう言っている以上の自分にはなれていませんから。
 ってことで、ののさん視点、じゃなくて、むしろ麦さんを見つめる私達の視点からののさんを見つめていく
 面白さもあるなぁって、この第3話を見て感じました。
 そしてだから、そうして初めてののさん視点に立って、ののさんが見てるのと同じように麦さんを見つめていく
 こともできるのかなぁって、うん、よくわかりました。
 って、やればできるじゃん私。 (まとまりはありませんが)
 
 
 神曲奏界ポリフォニカ:
 第3話。
 これはまたちょっとキツい。
 なにを主題に持ってくればいいのかと、ちょっと困る。
 論を展開しやすいのは、人質を取られたときに無視して先制攻撃したところや、兄弟の本質的な諍い
 を前にしてただ仲の良かった頃の兄弟の写真を見せて満足する父親の顔などについてなのだろうけれど、
 どう考えてみても興味が持てなかったので、この際やめにしました。
 ということで、今回は感想は無しということで、次回に期待致します。あーやめやめ。
 
 
 怪物王女:
 第2話。
 姫がなんで戦っているのかと問われたら、それは王族(?)間の生存競争だから、という一言で片づけ
 れば良い話で、それ以上の言葉は一切不要で、ただただ戦うのみ。
 生存競争を勝ち抜くためでも無く、勿論戦うためにでも無く、ただ訪れる襲撃者と戦い続けるだけ。
 なぜ戦わねばならないのかと問われたら、死にたくないから生きたいからと答えるでも無く、ただそれが当た
 り前だからという顔をしている。
 けれどそれは、与えられた現実を享受している訳でもなく、永劫続く戦いの運命を前に諦めている訳で
 も無く、ただ今この瞬間の中にある自分がなにをするべきでなにをしたいのかを感じ取り、それだけを切り
 取り、その断片としての世界の中にただ猛然と姫は生きているだけ。
 思うところ考えるところのものは、とてもとてもたくさんあろうのだろうけれど、それは束の間の休息の、そう
 お茶の時間に片手で読み進める文庫本の中の言葉の羅列なようなもので、だから姫はその思うところ
 考えるところのものの体感を以て戦っている訳では無い。
 お茶を飲み終わり、文庫本をぱたりと閉じれば、それでそれはおしまい。
 ヒロのことに対しても、姫はその程度の認識しか無い。
 館に敵方の透明人間が侵入したのを感じるや否や、チェーンソーを片手に斬りかかり、それこそ作戦も
 へったくれも無く、しかし別に猪突猛進という訳でも無く、そのたびに考え考え、その考えが戦いの一環
 として姫の中で一体化している感じであり、とにかく侵入者を倒すために体と知恵と時間と館のすべてを
 使って戦う姫が在る。
 最初私は、姿の見えない透明人間に滅茶苦茶に斬りかかって館を壊しまくる姫を見て、なんだか笑って
 しまえるくらいのその無謀さに違和感を覚えたのですけれど、しかしその違和感は戦い以外のことと共に
 生きている者の感慨であって、上述した戦いという瞬間瞬間を生きている者にとっては、逆にああでなけ
 ればその「リアリティ」を失うと感じ直したのでした。
 姫は、主のために総合的な戦略の元に戦う「軍師」でも、ただ一瞬の己の快楽の連続のために戦う「戦
 士」でも無く、ただ戦い続ける意味の中に生きている「姫」なのです。
 意味のために戦っているのでは無く、戦い生きていることがただ意味を垂れ流しにしているだけ。
 その「姫」が脱ぎ捨てていったものを、ただそれを見つめる者達が得ていくだけ。
 だから姫の戦いに「意味」があるのは、姫にでは無く、姫を見つめるそれ以外の者達に、なのです。
 姫は何者のためにも(無論自分のためにも)戦いはしない。
 ただ、戦う。
 なぜ戦うのか。
 その問いは、なぜ生きているのか、という問いに等しい。
 と、言う言葉が、姫の前には在る。
 つまり、その言葉の前には、姫が居る。
 その言葉を唱えながら居る姫は、なにを想うのか。
 自らのこの存在の不毛さを、想う。
 燃え上がる館の前の、兄妹が殺し合い仇討ちをし合う運命の下の、此処で。
 今夜もまた、姫はその不毛な自分を言葉に換えていく。
 うーん、美しいネ。
 戦いっていう言語を視たおもいですね、まさに。
 で、その美しさを感じてる私らを踏みつけて、一体これから姫がなにをやるのかと、非常に好奇心に駆ら
 れています。
 あ、あと姫がヒロに与えた命の光みたいな奴ですけど、あれ最初はやっぱり血とかの方がなんか文学的
 な広がりが持てて良くないかな?とか思ったけど、逆にそうなると冬目景の「羊のうた」みたく、肉感的
 情感的な関係としてヒロとの繋がりが出てきちゃう可能性があるから、かえってあの無機質な光みたいな
 方が、姫とヒロの絶対的な隔絶を描くには良いのかもって思い直したり。
 あとヒロの転校初日の挨拶は痛すぎて言葉も無いです。学校は、あれで終わりな。(ぉぃ)
 
 という感じなのですけれど。
 怪物王女はああもう、むずむずしてくる。
 ちゃんとした感想書きたいとか書きたくないとかその辺でウロウロウロ。優柔不断はお家芸。
 えっと、オチは無いです。考えてませんでした。終わり。
 だから、終わり。
 
 
 
 

 

-- 070418-                    

 

         

                                  ■■ 永遠の孤独 ■■

     
 
 
 
 
 
 
 
 
 砂漠の中を進み前進の中の砂漠を進む。
 エリスとナディの南を目指す旅は続行中。
 しかし早々にジープが故障で立ち往生。
 広い広い砂漠の中、右にも左にも誰も居ない孤独の世界で停止中。
 真っ青にどこまでも広がる大空の爽快さが、やがて重く背中に垂れ落ちてきそうなその時間。
 どーしよ、車止まっちゃったね。
 腕組みしながらなにも考えずに車を蹴飛ばして、そしてあーあと空を仰いで大きな溜息一つ。
 ナディさんの憂鬱を余所にしてか、それともそれに寄り添うようにしてか、エリスさんは無邪気なような諦め
 のような、そんなシャボン玉の泡を空に向けて放っています。
 『なんとかしようと思わないの?』
 ナディさんこそエリスさんへの頼りに対する諦観で寂しそうに笑いますが、しかしそれでも自分がすることは
 しなくちゃとばかりに、干涸らびたくなければなんとかするしか無いわよと、エリスさんに言い聞かせるように
 して溜息を大きく吸い、そしてナディさんはエリスさんにそっぽを向いて、また孤独の世界へと帰っていく。
 エリスがなにかしようがなにもしまいが、ここは砂漠のど真ん中。なーんにも無い無い。
 足に取り憑いたサソリと戯れながらも、しかしそれでも隣でウロウロとするエリスさんの仕草にも同様に耳
 を傾け、そして頷き動いていきます。
 砂漠の中での孤独な人間同士、やることやっときますか。
 ごそごそと車の中から双眼鏡を発掘してきたエリスさんにナイスと頷き、レンズの先を覗き込んで無い無い
 と歌いながらも、その中で見つけたダイナーの姿に目がとまり、よしいこうと前へと一歩踏み出すお気軽さ。
 ダイナー見つけたのはエリスさんで、ナディさんはエリスさんの教えてくれた場所にダイナーを見つけただけ。
 ナディさんはエリスさんと双眼鏡の力が無ければ前には進めなかったのに、エリスはなんにも無しでダイナー
 見つけてちょこんとナディにそれを伝えただけ。
 ナディ:『あんた、目いくつ?』
 エリス:『ふたつ?』
 そんな、感じです。
 
 
 
 〜エル・カザド第2話の話〜
 
 
 
 砂漠の中に辿り着いた一軒のダイナー。
 其処の女主人フリーダとの時間が始まります。
 賞金稼ぎのナディを邪険に扱い、可愛い普通の女の子のエリスを可愛がるフリーダのその態度に合わせ
 るかの如くに、自身のプライドと甘えを繋げていくナディさん。
 食べ物を求めてなにが嫌いかと聞かれて、酔っ払いと普通に答えるエリスさんはいつもの通りです。
 孤独の砂漠の中に見つけた、その女主人の顔をまじまじと見つけたそのナディさんの最初の表情の意味
 は一体なんであるのかを考えながらも、その後のナディさんの反抗と甘えの姿にそれを感じていきながら、
 まずは今回のお話の始まりを見ていくことに致しましょう。
 
 『何・・・・あんたには関係ないでしょう。』
 
 生きてきて、それでも生きてきて、賞金稼ぎという道を選ぶに至り、それを外から見て非難されることに
 対して、その本質的なところでは無反応を示すほどの孤独の中に生きていながらも、しかしその孤独の
 中に生きる者達の関係の中で生きているという実感があるゆえに、ナディさんは笑いもするし怒りもする。
 人との関係がある以上、それなりの反応と意志を示さねばならず、それゆえにナディさんはフリーダの理不
 尽な扱いに異議を唱え、私がなんだろうとあんたには関係無いでしょうと、その本質的なところでそう啖呵
 を切る必要が無い程に既に孤独の中にありながらも、前述のそれでもある人との関係があり、その中で
 生きていこうとしているナディさんにとっては、そうして啖呵を切る事自体が既にその人との関係を築く行為
 そのものになっている。
 失ってしまったものがあるからこそ、なおその過去への回帰としての現在の構築を夢中で続けていく。
 ナディさんはおそらく相当な過去を経験してきて、多くのものを失い、それゆえに死を選ぶか或いは生き
 残った社会に関わる事の無い無の世界に堕ちる可能性もあったことでしょう。
  けれどナディさんはそれを選ばず、それでもこの世界の中に生きていこうとした。
 そんなナディさんの視線の先に座るフリーダの姿は、ナディさんにとっては不快である以前に、ただその存在
 を以てナディさんに関わってくるものでした。
 喧嘩売ってくるのなら、買ってやろうじゃない。
 そんな冗談に身を任せて、ナディさんはフリーダと笑いながらの喧嘩を重ねていくのです。
 エリスだけがフリーダに可愛がられるのなら、私も可愛がられてやろうじゃないの、私だけ除け者にしようっ
 たってそうはいかないよ、っていうかなんで私だけ〜私にもチョコ頂戴よ〜。
 自らが阻害されている感触を、ツッコミ入れることで今自分がそうして軽やかに立っていられる足場に換え
 、フリーダの理不尽を正すことに真摯になる手前で、ナディはたっぷりとフリーダとの関係を愉しんでいく。
 『フリーダのババア、あとで3回殺してやる!』
 そうブチブチと怒りながら、その怒りの対象としてあるフリーダの存在こそを、今この瞬間に確かにナディは
 求めているのです。
 フリーダがどういう人間であろうとも、フリーダと過ごすこの時間の中で感じるもののすべてが、ただナディさ
 んを動かしていく。
 年上の女としての母親としての、その薄い幻影をすらフリーダの姿に纏わせて、しかしそのフリーダとの喧嘩
 まみれの交歓が、それが交歓にしか過ぎ無い事を自覚して立っているナディさんだけが此処に居る。
 しかしその悲哀にまみれる前に、ナディさんはその場所で愉しく笑うのです。
 賞金稼ぎになったのは気楽だからとフリーダに言ったナディさんを、それが本気なら馬鹿だねと虚仮にした
 フリーダを捕まえて、ナディさんはあんた私を怒らせたい訳?と、言いますが、しかしそのナディさんはどんな
 ことをフリーダに言われても本気で怒る事は無く、ただ「怒ってみせる」ことができるだけであり、その境地
 からナディさんはそうフリーダに尋ねたのです。
 ナディさんは、賞金稼ぎであること自体に誇りは無く、ただ賞金稼ぎだろうとなんだろうと、そうしてなんとか
 生きていこうとすることに、誇りを「感じてみせ」ようとしているだけなのですから。
 生きるために誇りが必要だと思うがゆえに、誇りを幸せごと失った過去と、そして今目の前に広がる他の
 人達の中に、それを見つけそして体得していこうと、ただナディさんはそうして命無き誇りを演じ続けていく
 のです。
 
 
 賞金稼ぎのナディさんが連れているのは、賞金首のエリスさん。
 店に来たロペスじいちゃんにも可愛がられるエリスさんですが、なぜ賞金稼ぎなんぞと一緒に居ると問われ
 ると、『エリスは賞金首だから。』と言って、なんの遠慮も無くじいちゃんの心臓にパンチします。
 『エリスは博士を殺したの。 うにゃいまるか。』
 お年寄りには少々刺激が強すぎる電波の全開も心地よく、エリスさんはそうして賞金首という自分
 の立場と罪を語る事で、他の人達の中に居場所を築いていきます。実際はじいちゃんのこの世での居場
 所を奪いかけましたけど。
 そしてそのロペスじいちゃんから、フリーダは元腕利きの賞金稼ぎで、娘に人殺しと罵られ逃げられて、
 その事で足を洗い店を開き以降10年、ずっと娘を待っているのだとナディさんは聞きます。
 
 『離ればなれは、辛いね。』
 
 過去に幸せを失い、その今までの自分の世界から離れて生きるしか無かったナディ。
 離れてしまったもの失ったもの、それそのものと離れそれそのものを失ったとしても、それらが在りまたそれら
 を取り戻す形で新しいこれからを生きていかなくてはいけない、という意識は決して自分から離れることも
 失われる事も無く、そして自身も離れさせたいとも失いたいとも思ってはいない。
 離れ失ったことは、もの凄く悲しいことだが、しかしそれを超えてそれを再び手にするために懸命に生き
 なくてはならない。
 だからどんなことであろうと、そのために必要な事をひたすら重ね、ゆえに笑えなければ笑えるようになり、
 悲しむことさえできなければ悲しむようにならなければいけないのだった。
 そして、その永遠の努力の連続の中に生きていると、常に、その離れ失って「いること」という、現在の
 のその自身の体感との戦いを勝ち抜いていかなければいけない、その苦しみがあり続ける。
 なによりも深い絶望しか無かったから、なによりも強い希望を抱かねばならなかったナディ。
 しかし、ナディは、賞金稼ぎという名の、人殺し。
 過去の誇りと幸せを取り戻すための戦いそのものがそれらを殺してもいる、どうしようも無い矛盾がナデ
 ィの胸の中には滾々と広がっています。
 しかし大概の場合、その哀しみが表に出てくることは無く、それはすべて今現在自分がその誇りや幸せと
 離れているという状態のみで示される感覚だけで済んでいるのです。
 だからナディは、そのフリーダとその娘のお話を、ただ我が身に重ねるということだけの悲しみに、優しく囚わ
 れることができたのです。
 
 
 そして変わらずフリーダにこき使われつつも、その時間を重ねていくことを拒否しないナディさんは、夜の
 闇の向こうに何者かの気配を感じます。
 そしてフリーダはくんと鼻を鳴らし、それはコヨーテだと断定して鼻の良さをナディに自慢します。
 そしてその闇の中にはコヨーテの姿が確かにありましたけれど、それは生きてはいませんでした。
 その傍らに立つひとつの影。
 どうやら最初にナディさんが感じた気配はこの影の持ち主である、前回無視したエリスさんのストーカー少
 年だったようです。
 そして気付かれたときに備えて、コヨーテの死体を持ってきたようです。
 『役に・・立ったね。』
 もの凄く的の狭い準備だったと思うのですが、確かに当たってなによりです。
 そして場面は変わり、前回登場の変態ことローゼンバーグ氏が部下が持ってきたエリスに関する資料の
 整理の仕方にケチをつけています。
 そして話の途中でかかってきたセレブからの電話に出てそれっきりなその背中に一礼して退室した部下に
 、『あのエロオヤジ』と呟かれるほどの実のある信望の無さをさっそく魅せてくれます。
 そのエロオヤジが部屋を出るなり、これも前回登場のミスヘイワードとの鉢合わせがあり、彼女は早速
 彼に先日の話を聞いて貰おうとしますが、これまた早速前回と同じように押し負けして逃げられてしまい
 ます。
 しかし彼が去ったあとに、ふっと眼鏡を曇らせて、『せいぜい今のうちに羽を伸ばしておきなさい』と、
 負け惜しみ以外になにか適当な言葉があるのかと思うくらいのことを言ってくれます。あーあ。
 
 そんな彼女は実はブルーアイズという別名を持ち、ナディと繋がっていたりするというシーンが続きますが、
 その辺りは省略させて頂いて、リリ男も省略させて頂きましょう。
 街に買い出しに出て偶然フリーダの娘マリアを見つけたナディさんは、そのままマリアを店に連れ帰ります。
 そしてナディさんの居ない間に、店には前回ほっぽらかしにされた賞金稼ぎのひとりが迫ります。
 じいちゃんのバイクに火を付け、そしてその隙にエリスを攫う魂胆です。
 炎上するバイクを見て、なぜか急に興奮し出したエリスさんは呼吸も荒く、おまけに最後には恍惚の表情
 まで見せ始めます。
 ロペスじいちゃんが見てなくて、本当に良かった。
 そして裏口から進入した賞金稼ぎに気絶させられ(そのときの表情もムカツクほど気持ちよさそうな顔)、
 間抜けを通り越り越して唖然とするほどに、エリスさんはあっさりと攫われてしまいます。
 そして例のストーカー少年はなにげにエリスさんに同調して、ひとり屋根の上でエリスさんと同じように興奮
 していた変態でしたが、自分の(ストーカー対象としての)得物を横取りされたことに腹を立て、その賞金
 稼ぎの車に細工して、足止めしてしまいます。
 そして、そこに現れたのがフリーダ。
 エリスを助けるために賞金稼ぎに銃を向けて対峙します。
 娘に人殺しと罵られた母親が、果たして銃を撃てるのか。
 フリーダは、撃ちました。娘の言葉を思い浮かべながらも、撃ちました。
 エリスを、守るために。
 賞金稼ぎなんて業な仕事を選ばなくても生きていける事を知ったがゆえに、今の店を開いたフリーダは
 、しかし今のこの生活を、そしてエリスを守るために再び人を撃った。
 撃たねば全部が消えてしまうと、その理屈を必死に自分に言い聞かせて、そして自分が撃たねばならな
 かった理由を必死に抱き締めながらも、そして訪れる「人殺し」というものがもたらす「終わり」への恐怖
 に身を震わせていった。
 マリアのためにもう人を殺さないと誓ったのに、私は・・・
 しかしエリスの無事な姿を見て、その安堵を今は抱き締めて・・・
 そして突きつけられる、逃れられない終わり。
 マリアが、フリーダの前に。嗚呼。
 ナディさんがそれを察し、自分が撃ったことにしようとして、その娘の眼差しを逸らしてはくれても、フリーダ
 が撃ったことを知っているのは、なによりもフリーダ自身。
 でも。
 しかし。
 
 『いいの。あんたがエリスを守ってくれた。だから今度は私が守る番。』
 
 この言葉に甘えるのが良いのか悪いのか。
 その答えを出すものが誰なのか、その問いこそが重要であると、夜の砂漠に佇むフリーダは思うのです。
 今此処に、ひとりの女が居る。
 暗い暗い砂漠の中に、その孤独を感じながらも、果てしなく続くその砂漠の中の道の途上に立っている、
 その自分自身の存在を今、感じている。
 そして、真に重要なことは、その孤独な存在が感じているものが。
 その隣に居る、もうひとりの人間の存在であることだった。
 私の、娘。いいえ、私とむすめの、そのそれぞれふたりが此処に居る。
 ロペスを加えれば三人か。
 だから私は、孤独を感じながら孤独では無いと言えるこの幸福の中に生きている。
 娘と、生きなくちゃ。だから、娘と生きたいって思いたい。
 だから、娘と、生きたい。
 そう。
 既に此処と其処に、私と娘が、居るから。
 生きて、在るから。
 その心掛けとしての欲望こそが、この暗闇の砂漠の中に、燦々と輝く灯火を広げていくことができる。
 すべてを失っても、すべてが離れてしまっていても。
 それは、変わらない。
 だから、ナディは泣いた。
 嬉しくて、悲しくて、辛くて。
 フリーダにはマリアがあることを、マリアにはフリーダがあることを、そして、自分には何者も無いことを感じ、
 そして、それを超えて、ナディはフリーダにはマリアがマリアにはフリーダがあることを知り、ナディには何者も
 無いことを知るのです。
 何者かを求めるために、自らの無の姿を知るのです。
 良かったねマリア・・・良かったね・・・フリーダ・・・・
 その歓びが悲しみに変わるとき。
 その悲しみの深淵がナディを捕らえたとき。
 ナディは、泣く。
 その孤独を、涙に換えて。
 涙で、押し流して。
 ナディは、往く。
 エリスと、共に。
 
 
 
 「え? なんで?」とか普通にエリスさんに言われそうだけど、負けない。
 泣かない。
 ナディさんの(ツッコミ)道中は続きます。
 
 
 
 
 
 
 
 
                                ◆ 『』内文章、アニメ「エル・カザド」より引用 ◆
 
 
 

 

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                                ■■集中編成 春の陣■■

     
 
 
 
 
 む・・・無理です。(挨拶)
 
 
 
 
 うん、地獄少女な、最近すごいな、うん、もう最終回だけどな、うん。
 なにかこう、な、すごいな、私もひきずられてな、すごいな、すごい馬鹿だけどな私は、すごいな。
 うん、まぁ、その、あれな、あれ、すごい。
 もっとこう、言葉が欲しいな、あのすごさに少しでも近づきたいな。
 私として、な。
 頑張らな、あかんな。な。
 まだまだだな。まだまだな。
 もう最終回だけどな。な。
 あと1回しかないな。な。
 うん。
 よし。(気合い)
 
 
 
 改めまして、ごきげんよう、紅い瞳です、早くも幸せです。あ、こっちのお話。
 前置きをしている時間が無いほどに、もうアニメで一杯ですので、早々に本日の日記を展開させて
 頂きます。
 や、そんなねアニメばっかりな人生を送ってるつもりは無いし、アニメは好きだけどまぁそれなりにな、みた
 いなラインの上を歩いてはいました(つもりです)けど、こう一気にどばーっと来られちゃうと、こう、ほんとその
 中で溺れないでいることに精一杯というか、なんかもう足掻きまくってます今。
 ああもうああもう、アニメの馬鹿ーっ。 (笑顔)
 ・・・・。
 今回の日記は普通にいつもの2回分の分量がありますので、取り扱いにご注意くださいませ。
 私へのツッコミはいりません。ほっといてね。
 
 
 さて、すっかり見たいアニメが盛り沢山で、豊作というよりは大豊作の様相を呈し始めたヨ、といういちアニ
 メファンとしてのひとことを、まずは最初に提示させて頂きましょう。
 ねぇ、アニメってこんなに面白いのばっかりだったっけ?
 こんなにアニメ見るのに忙しかったことなんてあったっけ?
 と、そんな具合で疑問を抱きながらも大急ぎでアニメを視聴している今日この頃です。幸せです。
 
 それで、感想のお話ですけれど。ええ、真面目なお話です。
 既にUpしましたけれど、今期はエル・カザドを中心に世界を回していくことにしました。
 形態としては、まず視聴直後に印象のみで綴った短文(or中文?)を他の作品の小感想と共にUpし、
 しばらく間を置いたのちに前々回に更新したようなエル・カザド単独で編成する感想日記をUpする予定
 でいます。
 ひとつの作品にふたつの感想を書くのは、工房始まって以来の快挙もしくは愚挙で御座います。
 そしてその単独編成の感想ですけれど、正直申し上げて、方向性を模索中です。
 大概のアニメの感想のときもそうではあるのですけれど、今回はその比では無いほどに模索してます。
 というより、実は既に指向として2つの方向性があるのですけれど、それを如何にひとつのものとして融合
 させるか、という大元の方向性は決まっていて、しかしそうであるからこそその融合の仕方がまるで皆目
 見当も付かないという有様なのです。
 読んでくださった方はおわかりかもしれませんけれど、アレです、無理矢理感が凄すぎて自分でも書いた
 ものにびっくりしているくらいです。あれはな、ちゃうねん。
 形として、色々と解釈的なことの積み重ねのうちにエル・カザドの中に思想を創っていき、そしてしんみり
 となったり熱くなったりするその真面目面のまま、ツッコミを主体とした笑いの花を織り込み咲かせていきた
 いと思っています。
 哀しみの中に笑いがあり、哀しみがあるからこそなおその笑いは輝いていく。
 涙と笑顔と共に、というこっ恥ずかしくて既に今書いた文を消したい衝動に駆られているのですけれど、
 そういった感想書きとしての理想を、このたび追い求めてみようと思っています。暖かく見守ってくだしゃい。
 とかいいつつ、「変態」と「空気読まない」のふたつしかツッコミ手法が無い今のとこのわたくしですが。涙。
 ちゃ、ちゃうねん、マドラックスの感想のときだって、最初はツッコミ入れて無かったし、それはやっぱりもう
 ちょっと話が進んでキャラが掴めてきてからでも遅くないねん、うん、そうに違いない。うん。
 
 あとそれと、エル・カザドの感想のタイトルについてですけれど、なかなか決められずにいて困っていて、
 前回書いた感想では保留という形にしていましたけれど、そろそろ決めていかないと、という方向性で、
 取り敢えず決めてみました。ええ、取り敢えず。気に入らなければ人知れず全取っ替えします。
 「永遠の○○」。 例:「永遠の場所」。
 つまり毎回のタイトルに永遠という文字を入れてみます。たぶん変えます。わかりません。 (優柔不断)
 
 ええ、ああまぁ、はい、んじゃ、早速今日の本題を始めましょうか。
 まずはこれ、毎回感想を書くアニメの感想についてから。
 
 
 
 ◆
 
 エル・カザド:
 第2話。
 なんだ電波電波言うからどんなものかと思ったら、こんなものか、けっ。 (ぉぃ)
 確かにあの電波少年wはなかなかだったけどさ、エリスさんはただ空気を読む気の無い普通の女の子って
 感じで、いや実際電波飛ばしてバイク燃え広がらせたのは彼女なんですけどね、しぃーっ(口に指当て)
 そうですねぇ、まぁまずはエリスとナディのコスプレwに萌えというのはデフォとして、それ以外にはまぁ第1話
 に比べると取り立てて際立った物は無かったですね、正直。
 でも、それがかえって落ち着かせてくれたというか、1話見てすっかり舞い上がっちゃった私をほどよく現実
 に引きずり戻してくれたような感じで、ごめんなさいもう落ち着きましたはい冷静です、いけます。
 そんな感じで改めての仕切直しという感じで、とっくりと向き合うことが出来ました、お陰様で。
 お話の構造に今回はちょっと意識を持ってきたというか、特にラストのフリーダと賞金稼ぎのシーンがどう
 なるかという分岐はちょっとハラハラ的推理を色々とさせてくれました。
 つまり、お互い撃ち合う瞬間に娘がそのシーンに出くわしてそれを見たフリーダが躊躇し、そしてそれで撃た
 れて娘に看取られるのか、或いはフリーダが賞金稼ぎを撃ったシーンを娘に見られてそのままバッドエンド
 になるのかとか、大体大まかに分けるとその2つの構造の選択を敢えて迫るような作りだったというか。
 それでその対立項で成る選択の構造を思い切り良くぶち壊す結末を与えてはい終わり。
 うーん、思いっきりそういう物語の形にこだわる視点を否定しようとしているのが見えて、正直私なんかは
 すかっとしたけど、逆にそれにこだわってるのが見えてるから、かえって大人げないというか小さいというか、
 だからどちらかというと今回のお話は、これからの話で自由勝手にやるための準備としての構造の破壊、
 っていう感じでもあったんだなぁって思ったね。
 で、だからこそ、私としてはその破壊としての構造を超えて、この第2話の中になにかを見つけたいなって
 思ったし、やっぱりそれこそ真に制作側が提示したものなのじゃないかなぁって。
 形式にこだわっちゃなにも見えんよ、っていうか、そういうこだわりの不毛さを敢えて創ってみせたことで伝え
 たかったと、そう受け取ることが、たぶん私がこの第2話になにかを見つけていく、その重要なエネルギーに
 なれるんじゃないかなぁと。
 ちなみに今回のお話はほぼ完全にツッコミ視点で見てたので、あんましそういうのは考えてませんでした
 けどね、あはは。
 えーと、なんとかします。
 
 
 神曲奏界ポリフォニカ:
 第2話。
 なんか随分ゴタゴタしてますねぇ。
 もうちょっとこうしっかりとまとめても良いような気もします。色んなことに手を伸ばし過ぎな感じ。
 個人的にはさっさとあの人物達の観点から話を進めて行って欲しいのですけれどね。
 じゃないと私あのフォロンとかいう男の子を好きになれそうにないです〜ああいう本質的な事無かれ主
 義って嫌いだし、いやまぁそれはいいからそれをちらつかせてるだけじゃなくて、さっさとその主義からなにを
 魅せてくれるのかを見せて欲しい訳。
 あ、とつい本音がちらりと。はい、次、次、話を進めます。
 で今回は精霊が覗きをしたとかなんとか、とにかく精霊なんて訳わかんないからどうでもいいから退治して
 よ、みたいな女性の依頼を精霊とそれを遣う神曲楽士が受けるという話。
 うん、まぁオーソドックスな回答が描かれていましたか。
 本質的にあの所長さん以外は誰も真剣にこの女性と精霊の仲に立とうとはして無く(フォロンは客だから
 仕方ないという感じ)、結局この第2話では人間と精霊が分かり合う、とうよりは一方的に人間が精霊の
 ことを理解するという形でしか進んでいかなかったような気がします。
 あの女性の反応はある意味で普通だと思うんだけどな、精霊を知らない人間としては。
 フォロンの契約精霊コーティも、女性の精霊に対する偏見に憤慨しながらも、覗きの疑いがある精霊を
 「精霊の面汚し」だなんて思いっきり人間の視点に隷属してる言葉を吐くし、それはある意味で既に
 人間と上手くやっている自分の立場を誇示するという形で、そうでは無い精霊を見下してるいやらしさと
 愚かさがあるように見えました。
 いや人間と上手くやってるあんたこそが、ちゃんと再び精霊の立場に立って考えなきゃいけないんじゃん。
 まるで外国に出て外国の文化にかぶれてその立場から自分の国の遅れてる様を非難してるのと、それは
 同じことですよね。
 非難するエネルギーがあるなら、その覗き容疑の精霊を理解し、そしてその精霊の立場を人間に理解
 させることに奔走しろっての、というお話。
 倫理ってさ、そういうもんじゃないのかなぁ。
 精霊には精霊の倫理があるっていうけど、それは精霊という集団としての倫理は無く、ただ個の倫理だけ
 があるはずなのに、いつの間にかそれを忘れ、現在人間と上手く協定を結んでいる精霊のみが共有す
 る倫理が、その他のすべての精霊にも当てはまるものだというのは、とても傲慢なこと。
 「精霊の風上にも置けない奴」とあの真の覗き犯である変態精霊wを罵る言葉は、その覗きの犯人が
 個として有する倫理と、人間達が有する倫理を個別に付き合わせ、そしてそのお互いが了解の元に
 結んだ協定こそが、初めて「その精霊」と「その人間」との間で共有される倫理と言える、ということを認
 めず無視しての悪罵だと思うなぁ。
 だからコーティらが人間と結んだ協定としての倫理は、他の精霊と人間との間にある倫理とは姿を異にし
 て当然だと思う。
 だからあの変態(ぉぃw)を非難するのなら、まずはその精霊と協定を結ぼうという試みをし、それが断ら
 れるか或いは共有した倫理を精霊が破ってからにすべきなのじゃないかな。
 もっとも、断わったら断った理由があるのだろうし、その断りに怒る前にはまずその理由を理解してから、
 なのだろうけれどね。
 そして、ラストで魅せてくれた、あの女性と最初に覗きの疑いをかけられた精霊との共存の姿が、その個
 と個の付き合いとしての倫理の結実の姿を示していました。
 そしてその結実した関係の集合体そのものが、精霊と人間が共に在る社会っていうんだよって、なんか
 もうそれが言いたいがために途中からずっとこのアニメを見てた気がします。あはは。
 ちなみにコーティの考え方には同意できないけど、コーティ自体は好きです。いや萌えとか違くて。
 つまりなんていうのかな、コーティみたいなのも、みんな一緒に仲良くなって欲しい、みたいな?
 ・・・・なんでそこで断言しないんだよ私・・ (ぉーぃ)
 うーん、なんかポリフォニカなにげに感想素材的に優れてるなぁやっぱり。
 音楽もこう、ぽぉーっと深く広く広がっていくような、荘厳さみたいな、こう、こうな、うん。
 ・・・なんだろ? (だからしっかりしろって)
 
 
 
 
 はい。大体分量的にはここまでが1回分の更新量に相応しい地点ですね。
 ということで、既にお疲れな方、おやすみなさいませ。
 そして、まだいけるという心配な方、もうちょいよろしくお願い致します。
 以下は、見たけれどまだ感想を書いていなかった今期発のアニメの感想です。長いです。
 
 
 
 
 ◆
 
 
 
 
 ウエルベールの物語:
 見逃した。
 録画も忘れた。
 全部忘れた。
 痛恨なり。
 痛恨・・・・な・・・り・・・ (顔を覆って)
 
 
 
 
 Daker than BLACK:
 渋い。ていうか渋い。
 硬派っていうか、割とかさかさしてるというか水気が無いというか、むしろあれか、さばさばしてるというか、
 少なくともここ最近に於いては無かった久しぶりな作品のタイプだから、それだけでちょっと見てみる価値は
 ある。
 そしてひとつ特徴としてあげると、非常に静的で、まるで電灯に照らされる路地の一角のような情景が
 広がっていて、その場所をずっとじっと見つめているもの凄い停止した感じがあり、でもよくみるとそこかしこ
 に息づいている命はあって、たとえばなにげに蟻の行列が歩いてたり、電信柱の影には黒猫が隠れてたり
 とか、そういう画面の中心からは外れている動的なものを含む静的な映像世界が広がってるんだね。
 だからたぶん、一個の映像物語として面白いかと問われたら面白いとは言えないけど、でもそういう静的
 な場所をじっと眺めその精神のままに世界を見渡していく感覚の観点からすれば、これはなかなか面白
 い作品だなって思う。
  あとあの逃げてる女性がその逃げるたびに、主人公の留学生の男性と出会う様が非常にいいですね。
 非日常で異質でひとりぼっちな世界で逃げるしか無かった女性が、その中で日常で同質でひとりでは
 無いという感触をその存在に感じることができる、その男性の姿を見つめるほっとした眼差しが、あ、なん
 かいいなぁ、みたいな、萌え? ・・・・それって萌えっていうのかなぁ・・(首をひねりながら)
 
 
 魔法少女リリカルなのはStrikerS:
 カッコイイ。うん、燃えって言葉が一番似合いますね。
 とにかく魔法の使い方がシステマチックというかウェポンな感じで、見ている方に魔法の「不思議さ」という
 距離感を抱かせること無く、その「威力」としての魔法と、そしてそれをどう使うかという兵士としてのキャラ
 クターを魅せてくれるというか。ていうかカッコイイ。
 純粋にその戦闘シーンのカッコ良さだけで充分だし、またその他の背景とかストーリーラインやセリフなど
 もそれに準じてきっちり計算された造りになってるから(無論無理な萌えも無い)、ほんともう初めての楽
 器をスラスラと奏でることができちゃったときのような感激がありますね。
 だからカッコ良さにまず引き込まれたら、あとはひたすらそのスマートさに連れて行って貰える感じですね。
 つまり私みたいなタイプには飽きられたら終わりなので、今のうちに目一杯可能な限り楽しませて。(ぉぃ)
 
 
 ロミオ×ジュリエット:
 良い。が、物足りぬ。もっとこう、なにか、こう、な?
 絵は綺麗だしキャラは適度にカッコかわいく、それなりに世界も廻ってるみたいだけれど、ただいずれももう
 一押しが欲しいところ。
 決して先を急いでいる訳では無いけれど、どうにも味が染みる前にお皿に盛りつけて出してしまっている
 ような感じがあり、ロミオにしろジュリエットにしろ、その内面の深まりから始まる前に、進んでいく物語の中
 でひたすら「ロミオ」と「ジュリエット」という配役を演じていくだけで終わってしまいそうな、そういった不安がし
 ています。
 恋ってなんだろ、というその問いに答えるという形で進んでいってしまっては、そこに恋するロミオとジュリエッ
 トというふたりの人間の姿は見えてこないかもしれないなぁ。
 ただまぁ、まだまだこれからですけれどね、ほんとどうやって進んでいくのかはわからないですから。
 冒険的実験的な感じにはならなさそうで、主にストーリーの妙で造形していく感じなので、まずはそれを
 純粋に楽しんでいこうと思います。
 期待していた形では無かったけれど、それはそれ。これはこれ。
 ちなみに私は「ロミオとジュリエット」は一番有名なシーンしか知りません。原作未読なり。
 
 
 Over Drive:
 視聴予定には入ってなかったんだけど、たまたまテレビつけたらやってたのを見たらすっかりハマった。
 私ね、自転車いじれる人、っていうか自転車いじってる光景見るの好きなんだー。
 スポーク持って、くるっとタイヤ回転させて、カシャカシャとギアをチェンジさせて、それでたんと自転車置いて
 、さぁどうぞ、っていう光景がね、好き。
 自転車屋さんに修理して貰うとき、いつもだから楽しく観てた。
 最初のあの女の子の自転車のかっちりしたその扱い方に惹かれそこから入ってた。
 そしてあの男の子の不器用というかそれでも純真というか、それでも頑張るよえへへ、みたいなそういう
 必死さも悲壮さも無い、ただ目の前のものと一対一で対面してる様にぐっときて。
 そしてあの普通の男の子が感じるっぽい、その当たり前な充実感と体から溢れてくるエネルギー感というか
 生命感に、あの男の子がそれに溺れる手前でしっかりとそれに全部賭けてどこまでも突っ走る、っていう
 想いを世界一の自転車乗りになるという生身の夢としてそれを受け止めてく様がね、すごく良かった。
 それであの女の子もこうどこかぐっと一線引いてて、その子の様子見て熱くなってるんだけど、その熱さに
 捕まる前に、その熱さをアクセントにして自分の生活の中に屹立しているというか、なんていうか、カッコ良
 さがあの女の子にはあって、だからこれからあの男の子に「乗り越えられるべき師匠」という属性に降る
 ただのひとりの「女の子」に従属する予感を微塵も感じずに、ただなんかあの女の子もまたひとつの物語
 の主人公になっていきそうな気がしてね、ああ、いいなぁ、って。語彙無いなぁ相変わらず。
 あの男の子視点によるその女の子の「カッコ良さ」と、あの女の子視点による男の子の「熱さ」に、私は
 思いっきりハマってしまいました。どうなってくんだろーなーこの作品。楽しみ楽しみ。
 
 
 ひとひら:
 ゆっくりとして、まるで止まっているかのような微速。
 軽やかさの欠片も無く、それでいて鈍重とした固まりの閉塞感も無く。
 なにもかも決して諦めている訳では無く、それでいてはっきりと前進を見つめている訳でも無い。
 ただあるがままでありながらもそれに焦燥を覚えていて、それでも確かに今の状態の中に居続ける。
 ゆるゆると回転する、宙を舞う花のひとひらの如くに。
 周囲とズレていることを良く知っていながらもどこかその感覚からもズレていて、自分はこのままでもいいや
 と思い続けることの中に居て、その平穏無事を覚ます如何なる事に対しても、ただくるくると無造作に弄
 ばれ回転して、けれどそうして回転し続けている自身の中心点は変わること無く、その毎日を過ごしてい
 る。
 半分無自覚で半分意識的なその空回り加減、それは自分の駄目さ加減を意識してそれでそれを改善
 しようと努力はするものの、いつもその努力が目をつぶって行う的はずれなものであり続け、そうしてその
 回転の勢いの終息と共に、またいつもと変わらぬ穏やかな日常に回帰する、もはやそれこそが生きるとい
 うことであり続けていた主人公麦。
 つまりね、頑張ってるんだけど全然主体的になれないっていうか、自分がなにをどう頑張ってるのかという
 実感が無くて、だからくるくる回ってるだけで、ほんとはもうその努力に見合うものを手に入れても良い資
 格を得ているのに、それに足りないまがい物なものばかり与えられてて、そうとも知らずまたは知らぬが仏
 の如くにそれを嬉々として受け入れ、そしてやがてその虚しさを自然に悟りそのまままた元に生活に戻って
 しまう。
 うん、そしてね、そういう子がどんなに頑張っても、それはある意味でサクセスストーリーというものは得られ
 無く、もし得られるとしたらそれは、そうして回転している自分の自覚を少しずつそしてはっきりと自覚して
 いく、そういう世界を知っていく、そして世界が豊かになっていくことを感じる物語を得られるんじゃないかな
 。
 第2話見たけど、わたしゃ感動したよ。
 色々自分が損してることをこれから知っていくのかもしれないけど、でも麦の本質的なところにあるものは
 、きっとそれよりもそうして色々なことを手に入れていける、そうした自分と世界の体感そのものだから、
 麦はあがり症の自分に振り回されながらも、けれどたぶんそれを改善すべき対象と捉えながらもその本質
 的なところで振り回されつつ、それでもこの世界を彼女なりに楽しんでいくことができるのだと思う。
 彼女は変わらない、変わらないまま彼女のままこの世界を豊かにしていくことを覚えていく。
 あー・・すごく、いいよ。
 みんながみんな、それぞれの特性やら個性やらいうもののままに、生きられる世界なんてね。
 そしてそういう世界の中に在るからこそ、麦はやっぱり変わりたいと、ほんとの自覚を以て変わっていけるの
 じゃないかなぁ。
 ひと漕ぎで到達できないのなら、ふた漕ぎみ漕ぎして回る。
 そうして人の2倍3倍努力するしなければならない事を損だと考えるよりも、その2倍3倍努力する事の
 自分への負担が、他の人の努力と同じ負担度にしか過ぎないように自分を変えればいい。
 2倍3倍努力してる方が、すっきりするんだ、そしてほとんど空回りに近いその努力の連続の中に、きっと
 そのうち新たな回転方法が見つかるようになるのじゃないかな。
 人よりも少ない努力で、人よりもずっとずっと遠いところまで行けるような方法を。
 麦は、とてもとても良く透る声を持っている。
 その声を活かすためにも、その声に頼らないで徹底的に空回りの中に生き続けてみたら、きっと麦は素晴
 らしい感触をその世界の中に広げていけるようになるんじゃないかな。
 素晴らしい、素晴らしいです、ひとひら。
 繊細で、柔らかく優しいぬくもりに満ちていて、丁寧さを超えて一生懸命さがひしひしと伝わってきて、それ
 でいて物語の方の時間もきっちりと動いていて、うん、すごい。いいよ。
 作品的にも素晴らしい出来です。完璧です。合格。大好き。よしいけ。
 私はこのひとひらやOver Driveみたいな、駄目人間がそれでもその自分の感覚のままに世界を豊かに
 しようと努力し続ける、っていうか努力するのを諦めない人って大好きで応援したくなります。
 頑張れ。
 よーし、私もまなストときみたいな感じで感想書きますことに、大決定。
 
 
 
 
 
 ◆
 
 
 怪物王女:
 
 
 ああああああああああ・・・・・・・・・・(息を大きく吸って)・・ああああああああああ
 
 
 
 
 ふぅ。
 
 あーすっきりした。
 
 良し。
 
 
 改めまして。
 
 
 怪物王女:
 完全敗北。
 まさかここまでアレだとは、正直思わなんだ。
 まさかね、2期連続で本命(前期はVVV)を空振りするとはね、私もヤキが回ったもんさねと、ぐだぐだと
 くだを巻きながら晩酌でも重ねようかと思い、そして戸棚から一升瓶を引き出そうとしてしゃがんだ途端に
 、ふっと膝頭を濡らす熱い水滴が・・・・・・・・・・ショックで立ち直れない・・・・みたいな・・・
 そんな感じでもう心頭滅却すればこの世のすべては道連れよ、みたいな、ってどんな言葉やねんそれ、
 みたいな、もうね、あなたを殺して私も死ぬみたいな情念と怨念をたっぷり込めて全部どかんだ!みたい
 な危険思想を体現して憚ること無い感じで、もうもうもう!
 
 紅い瞳は一度死にました。
 
 もう知らない。
 なにもかももう知らない。
 限界超えた、頭にのぼった血が噴いた。キレた。
 うん。
 なんていうのかな、完全に吹っ切れちゃいましたね。
 うん。
 だからね、もう日頃の紅い瞳の言動を知る方々のご想像に違わぬ展開にまっすぐGoしてしまいました。
 つまり立ち直ったというか、泣き崩れてぐだぐだになってるのを無理矢理引きずっていかれたみたいな。
 ・・・・・。
 うん。
 まさかね、本命がね、大穴だったとはね。コレ、私的前代未聞の大穴ですよ。
 大穴ヒットですよ、コレ。と思わざるを得なくなってる、というよりなんかもう普通にヒットしてきた。
 期待しまくってて、それが完膚無きまでに気持ちいいくらいまでに裏切られ(勝手にこっちが期待してただ
 け)て、そして真っ白になった私の前に広がったコレは、もうあり得ないくらいにヒットしてて。
 うん、あり得ない、こんな面白さ、こんなタイプの良く考えたら今まで全然無かったよ。
 だからコレ私的には大穴、あり得ないゆえに当たれば大きい大穴です。
 ということで、きました。
 新境地ですね、うん、きたよこれ、なんだこれ、良く見たらすごいじゃんコレ。
 まるで6時台のお子ちゃま向けアニメの造作でありながら、表現方法を変えさえすれば、ものすごく深く
 重いものががっしりとあるのが見てとれ、そしてそのお軽い身なりを纏ってその本質を隠し、そしてときどき
 そのまんまの剥き出しの足をそろりと出して魅せてくる。
 うわ、なにこの艶っぽさ。
 滅茶苦茶固いんだけどギクシャクはしてなくて、硬質でかちっとしてるけど決してフォーマルという訳でも
 無く、荘厳だけれどエレガントでは無く、なんかもうそういう仕掛けに満ち満ちててさ。
 ぶっちゃけ姫は非常に嫌な女だけど、でもその私情(?)に囚われながらも、すっとこう地べたに這い蹲っ
 た立場から見上げるやらしいMな感覚から見れば魅力的でw、でもそういったただの「女王様」としての
 姫の姿の枠に収まることができると同時に、その枠で整えられた額縁の中の絵の中にはさらに他の姫の
 姿があってその姫にもまた魅入ってしまうという、その際限の無い姫の姿の広がりがあるんです。
 そしてそうした姫を見る側の欲望の対象として捉えた途端に、姫は下賤wな「キャラ」としての肉感を以て
 、それを見る個人個人の元に舞い降りては来るけれど、でもその姫の降臨をさせずに目の前の画面の
 中に姫を在らせたままにしていると、かっちりとその画面の中の「怪物王女」という仕掛けの中に填り込む
 ひとつの因子として、その機械的な威力を発揮し出すんですね。
 隠喩がある訳でも無く、これみよがしなトリックがある訳でも無く、ただ平々凡々なストーリーラインとよく
 あるキャラ造形で、なにも目新しいものは無いはずなのに、あの姫の非人間性或いは人外としての存在
 感そのものを中心にして読み解いていくと、すべてが怪しい羅列を描き出しながら回転していくのです。
 映像的に見て、あの「フガ?」とかアホみたいなセリフしか吐かないチビメイドがひく、山のように積んだ荷
 台の上に座す、その姫の姿は紛れも無くあの街の光景から浮く以前に滑稽ですらあり、また同時に平凡
 さをその造りに見つけることができるけれど、しかしもしあの場面にそれぞれがそれぞれに相応しい演出の
 仕方を以て姫のその姿を見ていけば、おそらくあのシーンはもの凄く面白くなるのじゃないかな。
 全編通して平坦な絵面が並んでいても、怪奇的なイメージをその無機的とも言えるシーンの中に見初め
 ていけば、これはある意味で断片的なホラーの集合体として、この作品を捉え直すこともできるのです。
 だから私としては、もっともっとこの作品にはその演出的な部分には、まだ未練たらしく期待してしまうの
 ですけれど、今はいっそのこと、このあっけらかんとしたのっぺりさと、そしてそれでいて因子だけは際限無く
 その組み合わせの妙を感じることができる可能性を備えている事に、私の意欲を向けてみたいって感じ
 ています。
 あとあの姉の天然さも弟への無関心さという形でぞっとするものを与える場合もあるし、あのチビメイドも
 フガしか言わないのに姫とは意志疎通しているというのもまた怖いし、全体的に姫の周囲の閑散とした
 ある意味で「人間らしい」孤独ぶりもかえって怖いし、そして。
 第一話の最大の見所は、姫が本来なら爵位を持ち最低でも武勲を持つ者の命しか救わないはずな
 のに、それでも何故あの主人公の命を助けたのかと自問するシーン。
 理を提示し、そしてその理に従えば絶対にあのような小僧を助けたりはしないし、ましてや主従の契りを
 結ぶなどあり得ないと、そう結論し、そしてにも関わらず助け契約したという事実を前に、姫は傲然とこう
 言い放つのです。
 「ではなぜか。」
 
 「ふふん。」
 
 「私は慈悲深いのだ。」
 
 ナイスツンデレと言った人はもう駄目です。お終いです。
 いやそれはそれで確かにいいし、そういう愉しみがあるのは良いけれど、たぶんそんな事頭に思い浮かべ
 た途端に姫の剣があなたの首をはねてると思う。
 自分の中に打ち立てた理の沿っていない行動を取ったのは事実だし、だからその事に違和感を覚えたの
 も姫の中でも事実。
 だからそれゆえにそれは慈悲深いからだという、新理論を構築しその観点から自分の行動の理的な正
 当化を図っているし、でもね。
 たぶん、そう指摘した瞬間に、一切の戸惑いも感情も無く、剣を振り下ろす姫の姿しか私には見えない
 のですよね。
 姫的にはその自己正当化はそもそもほとんど価値が無く、そして自分の気持ちのゆらぎそのものをさえ、
 ただ無慈悲に眺めている、そういう場所に姫は圧倒的に君臨しているような気がする。
 だからツンデレよりは厳正なサドですね。・・・・・そう言った瞬間になんか違うって思うけどw
 まぁだから、敢えて姫に「萌える」とするのなら、姫を見るこっち側が姫の僅かな反応に、姫の中のその
 強固な精神のゆらぎを妄想して見て取り、そしてそれが妄想では無い証しを姫の姿の中に見つけていき
 、それでも全然変わらない姫の姿にぞくっとするという、もうな、書いてて疲れたね、なに書いてんの私。
 
 でも私はこれでいくよ、この怪物王女は。
 
 だって面白いもの。
 見方次第によって、色々な愉しみ(どんなだかはもう言わないw)を得られるしね。
 もっともっと考えて見つけて感じたいな、この作品。
 姫ちょーカッコイイし。
 その姫が、あの(ある意味で)底知れない映像の中でどうやって広がっていくのか、非常に楽しみです。
 あと、ED最高。
 なにあの極悪ぶり。
 曲のタイトルはこの際見なかったことにしてもいいけど、もういいですね、あのアリプロのリズムと映像の
 振り回し方がぴちっと合ってて、ぐるぐるまわったりひきずったり座ったり足伸ばしたり舐めたりフォークとナイフ
 持ってテーブルどんどんとか、あー、なんかそういう意味で最後の如何にもなカットも活きてくるんだよね、
 うん、いいね、この反転ぶりは。
 
 
 ・・・・。
 なにを言いたいのか、多くの人はわからなかったに違いないですけれど、私はわかったのでもういいです。
 この私の怪物王女体験に祝福を。
 うん。
 ちょっと、いってきます。 (あちらの世界へ)
 ということで、毎週この場を借りて壊れさせて頂きます。
 さすがに1個の独立した日記は時間的にも無理なので諦めますけれど。
 諦めますけれど、心情的には後ろ髪をひかれる想いなので御座います。 
 あー姫書きてー。
 ・・・。
 でも私如きに書けてしまったら、それはもう姫じゃない! って普通に気付けたりするあたり、私もなにげに
 家来の素質があったりするのかもって、はは、なに言ってんだこいつ。
 ほんと、なに言ってんだ、こいつ・・・ (鏡の中の顔を見つめながら)
 
 あ、最後にひとこと。
 怪物王女。
 それは、ただひとりの王女が剣を片手に戦い続ける姿がひっそりと描かれる、ただそれだけのお話です。
 だから、怖い。
 それだけのその姫の姿が、なによりも。
 
 
 
 
 
 
 
 
 素直に姫に萌えたと言えない紅い瞳でお送り致しました。
 
 
 
 
 
 

 

-- 070411-                    

 

         

                           ■■地獄が人にしか無い理由■■

     
 
 
 
 
 『どうして僕を助けてくれるの?』

 『悪いのは君じゃ無い。閻魔あいだもの!
  地獄通信なんてものがあるから、みんなおかしくなっちゃったのよ。』
 

                      〜地獄少女 二籠 ・第二十五話・拓真と蛍の会話より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

- 『冷えてきたね・・・・・・もっとこっちにおいで』 -

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 黒々と聳える薄暗い山の麓を巡る湖の畔にて、湖面に映る月明かりの中のその山の影の黒さが、どこ
 までも延びていく夜の闇とどちらが深く重いのかと、そう考えている頭の上には、煌々といつまでも高く昇
 り続けていく白い月だけが、ただ在った。
 その月を見上げている中で、その月の白さとその明るさと、或いはその真っ直ぐな円味とを同時に噛み
 締めながらも、鬱々と滾る血の律動に根差す自覚の消え往く様を感じる事の無いままに、瞳の中に白
 い円の姿を填め込むままに、ただ高い高い空に釣り上げられていく感触に身を委ねていた。
 どこまでもいつまでも、浮上する感覚の無きままに、遙か下に聳え根付き、そして静かに息まいている漆
 黒の山にまつわるすべての闇の大地を、ただずっと、見下ろしていた。
 まるで、舞い落ちる無力な雪のひとひらの如くに。
 
 暗闇の中で月光を感じる私の中に、その想いと自覚だけがじわじわと広がっていった。
 
 
 
 
 
 ◆
 
 + +
 
 
 お兄ちゃん
 
 
 初めてそう呼んだときは、なんだかとても気恥ずかしかったような気がする。
 でも、その記憶はきっと、今の私の恥じらいの感覚を元にして塗り替えられた、そんな綺麗な言い訳なの
 じゃないかと、この頃は思う。
 兄さん? 兄貴? それとも呼び捨てにする?
 どれもそれぞれに実感をそれなりに持てるものだし、たぶん今もし一からやり直せるとしたら、私はたぶん
 そのどれかを選ぶと思う。
 少なくとも、お兄ちゃん、なんて言葉はほぼ絶対に選ばない。
 そんな、甘ったれたような呼び方、する方もされるほうも嫌なのじゃないか、いや、かえって兄はそうやって
 甘えられるのは嬉しいかもしれないけれど、それだって毎度毎度当たり前の事としてだったら、それもま
 たその意味を失ってしまうような気もするし。
 でも、私は今も昔も、兄のことはお兄ちゃんと呼んでいる。
 そしてそれは、決してそう言い習わしてきたから今更変える方がなにかと面倒だと、そういう意味からでは
 無く、それは紛れも無く甘えとそして愛情を込めて呼ぶ、私が兄に対して最もその存在を噛み締める事
 の出来る呼び方なのだった。
 どんなに私が兄への甘えを否定し我を張っても、初めにお兄ちゃんと呼んだ時は恥ずかしかったのだという
 大嘘を付いて取り繕っても、どうあっても、今この瞬間に、お兄ちゃん、と力強くも思いを込めて兄をそう
 呼べることは紛れも無い事実だった。
 私は当然そんな自分に腹が立ったし、そしてそれゆえにいつも、その呼び方を変えようと、そう今この瞬間
 にも兄さんとか兄貴とか言えばそれで済む話なのだと、そうして何度も助走を始め、けれどそのまま高く
 ジャンプしたまま、私はいつも必ずその着地点を見失ったまま、ただそのまままっすぐと空を飛びながら、
 そしてなによりも暖かい安堵感を以て、お兄ちゃん、と、なぞるようにしてその言葉を抱き締めてしまうの
 だった。
 
 私、お兄ちゃんが大好き。
 
 私にとっては、兄に甘えて独り立ちできない事と兄に対する愛情とは、常に鍔迫り合いを繰り返していな
 がらも、お互いその対戦者同士としての存在意義をすっかりと獲得しているのだった。
 このふたつは本質的なところで滅ぼし合う事では無く、その戦い続けるという事それ自体にその意味を有
 し、またそのようにしているのは、紛れも無い私の感情と、そしてその感情に身を任せることを許す私の意
 志によるものだった。
 私はお兄ちゃんがいなくってもちゃんとひとりでやれるんだから、と勇んで飛び出し頑張ることができるのと
 同時に、いつも必ず兄を頼りとし、そしてその兄への頼りをこそ、最も強く愛することが出来ているのだった
 。
 自分ではどうにもならなくなったときは、きっとお兄ちゃんが助けにきてくれる。
 
 だから、どんなことがあってもなくっても、私は絶対に諦めるということが無かった。
 
 その私にとってお兄ちゃんはもはや神のような存在でもあり、しかしその神は決して厳格な神々しさで私
 と距離を置くものでは無く、私の兄という実体を持ってどんなときでも私にその存在とぬくもりを想起させて
 くれるものだった。
 兄を頼りとすること、兄へのその依存を嫌悪することは無限に出来、そしてその嫌悪のうちに飛び出す事
 はあれど、私はそしてその愚を必ず嫌というほどに私の途切れない感情の中に見つけ、その感情の命ず
 るままに私はなによりも速く強く高く、兄の元へと帰るのだ。
 兄への依存があろうとも、それを突破するために兄への想いを壊すことこそ愚かしい。
 そしてだからこそ、その兄への想いを守るという名の下に、いつまでも居てはいけないという私の意志が、
 最も深く私を動かしてくれるのだ。
 兄への愛があるからこそ、兄を頼りとすることができるからこそ、私はひとりでも生きることができる。
 だから私はずっと、お兄ちゃんと呼ぶことをやめないし、そもそもやめようという考えはその実体を得る前に、
 そんな事しても無駄だという考えとの戦いに引きずり込まれてしまうのだ。
 だから私は、自由で居られた。
 心底私は、自由に兄を愛することが出来、そして楽しくて幸せな生活を重ねることができた。
 兄への依存と戯れ、兄への反抗と兄からの独立で遊び、そして兄と共に営んできたこの今の生活を、
 ずっとずっとこの体の深いところから感じていた。
 私は既に、それに充足していた。
 それゆえに、深刻な兄との諍いも、そして真摯という名の暴力的衝動に満ちた兄への憎しみによって動
 く、その兄への反抗もまた経験することは無かった。
 凄まじい兄妹喧嘩の末に、完全に離縁するに至った兄妹を私は何組も知っている。
 時折私は、本当にこんな平穏な生活だけで私達は良いのかと思う。
 喧嘩しないのは、お互い求めるものが無いからなのだと、お互い真剣に分かり合おうとする気が無いから
 なのだと、そうして言葉を重ねるうちに、私は兄と私への疑念を育てたりしたこともあった。
 けれど、それらはすべて、一瞬に目の前をちらつく白昼夢にしか過ぎなかった。
 その疑いは、一体私にとってなんの意味があるというの?
 その問いに対する答えは、すべて私の中にあるということを、私はその問いを発している途中で既に気付
 いてしまっていたのだった。
 
 お兄ちゃん・・・お兄ちゃん
 
 喧嘩した事には意味があるが、喧嘩しなくてはいけないという事にはまるで意味が無い。
 辛い経験をしたことはきっとその人のためになるものを与えてはくれるけれど、その辛い経験を求める事に
 意味は無い。
 戦争体験がその人に深みを与えているとしたら、戦争をまた起こすの?
 すべては結果でしか無く、苦労を買うことの虚しさと愚かさと、そしてその「今この瞬間」を生きている自分
 に対する侮辱に気付いた瞬間に、私はただゆっくりとお兄ちゃんの顔を眺めて微笑んでいた。
 変える必要があるから変えるだけ。
 私は、このままがいい。
 そして、だから。
 そこまでわかったからこそ、既にもうこうしたお兄ちゃんとの平穏な生活そのものが、私たちに無限の変化を
 与え続けていることを、うっすらと火照り上気した私の頬を這う兄の手に感じるのだった。
 無論、その兄の煩わしい手ははね除けたけどね。もうお兄ちゃん! 調子に乗らないでよっ。
 私と兄には、そして私には、この変化の在り方が一番いいのだと、そうして大きく笑った兄の顔を見ながら
 思ったのだった。
 
 
 
 
 
 +++ それは綺麗に咲く夕闇のように、それは醜く熟れる宵闇のように、そしてそれは・・
 

 

 

 
 
 
 
 ◆
 
 いつまでも乾かない海があると思えば、一瞬で枯れる涙もある。
 なにもかもを、理屈で考えた。
 こうあらねばならない、という言葉を元にして描いた、達成すべきものとしての理想論にただ酔っていた。
 そしてその酔いに任せて、しっかりと生きることが私は確かに出来ていた。
 お兄ちゃんが居てくれるから、お兄ちゃんを信じていられるから、私は一生懸命になって私のすべきことを、
 正しいことはなにかを考えて、それを実行し続けることに命を賭けることが出来ていた。
 どんなに上手くいかなくても、絶対に私は諦めなかった。
 私は私の考えが甘い事を思い知らされるたびに、必死になってそれを反省材料として、より確実に達成
 可能な理想を描いていった。
 みんなただ感情だけで目一杯好き勝手やって、それで弱い人達は虐げられて、そんなの絶対許せない
 って、そう思ったから、そう思った私が居たから、私はその私の感情を忠実に実行する意志を以て、私に
 できることをやり続けていた。
 きっとその失敗の果てに成功が待っていると信じていたから。
 きっとその成功の先には新たな失敗が待って居てくれると信じていたから。
 改善すべき対象と、改善しようと思う主体が在る限り、私はただまっすぐに生きていられたのだった。
 
 拓真くんという子が居る。
 町の人達から悪魔の子だと言われ、そのうちあり得ないことに本当に悪魔の子としてその命を狙われる
 ような事態になっていて。
 私は既にこの件に一枚噛んでいたから、見過ごす訳にはいかず、そしてその義務感を越えてやってくる、
 その目の前で涙を堪えている男の子を見ての激しい情熱が、私をなによりもはっきりと動かしていった。
 私が描いたお綺麗な理想の絵を片手に、私はこうして今目の前に居る拓真くんを守るために走っていく。
 この子は私が守る!
 町の人達の理不尽に憤り、地獄少女への非難で目が眩み、けれどそれらはすべてすっきりとまとめられた
 私の頭の中のレポートに綴り収められ、そしてそれは私の頭の中の片隅にきっちりと整頓され仕舞われ
 ている。
 そのレポートをまるで息継ぎのようにして読みながら、そして私はただ全力疾走しているのだった。
 走れ、走れ! 拓真くんを守らなくちゃ!
 口より先に、言葉よりも先に、理想を語るよりも先に、その口先で、その言葉で、その理想で動く自分を
 使って、目の前で頑張って生きようとしている拓真くんを助けるんだ!
 頼りとするお兄ちゃんの居場所は知れなかった。
 でも今、確かに目の前に居る拓真くんを見て私がすることは、これしかない。
 断然、私が拓真くんを守り切る。
 拓真くんの冷え切った手を取り、そして一緒に駆け出していくうちの鼓動の激しさに目眩を感じながらも、
 それでもすんなりと全力で回る私の足を頼りに、私はまっすぐに拓真くんを助けていった。
 拓真くんは悪くないのよ。拓真くんは悪くない。
 いいこと? ただ逃げるんじゃないのよ。これは戦い。戦いなのよ。
 悪いのが誰か、悪くないのは誰か、それをはっきりさせて、その図式をしっかりと抱き締めて全部の力と
 想いを込めて戦うのよ!
 拓真くん、まずは逃げるのよ。
 そして、町の人たちの魔の手の届かないところから反撃を始めるの。
 うん、そうよ、拓真くんは悪魔の子なんかじゃないってことを、証明してやるのよ。
 どうやってやればいいのかわからない。今は、わからない。
 だから、今は逃げる。全力で、逃げるのよ!
 そして逃げ切ったら、今度は目一杯考えるのよ。
 どうしたら、あの町をまた元の姿に戻せるのかを。
 走って! 走るのよ!
 
 
 
 そして、私はかっかと燃える心臓のステップに乗って、一気にそうやってのけた。
 私の力で男の子を守ってあげていることの陶酔と、町ひとつすべてを敵にまわしている爽快と、そして
 想いのままに高ぶる感情のままに動き切っている自分の実感が、果てしなく私を冷静にさせていった。
 お兄ちゃんは、町の人達につれていかれた。
 そう拓真くんから聞いたとき、私は凍った。
 一瞬よりも短い時間の中に満ちる殺意の中に、私はそっくり飲み込まれていた。
 標的不明のその殺意。
 兄に暴行し連れ去った町の奴ら。
 拓真くんとの仲を疑われて連れて行かれたお兄ちゃん。
 お兄ちゃんはね、拓真くん。
 地獄通信の事色々調べてたみたいね。
 そう、あなたの、ために・・・・・
 
 
 どくん どくん
 
 
 立ち止まった私に再び火を付けたのは、この胸の高鳴りだった。
 私ひとりで拓真くんを守らなくてはいけない事の不安と、この町の中で私が孤立していくことの絶望と、
 そしてただひたすら感情のままに突っ走ることへの疑問が、すべてひとつになって襲いくる中で、私はそれ
 に立ち向かうべき私自身がそれらの不安や絶望や疑問を有し行う主体である事を感じ、そして、それで
 も。
 私は、諦めなかった。一瞬で、立ち直った。
 私が、決めるんだ!
 私の中に響く鼓動が、あらゆるものを動かす原動力になるという事を踏み締めて、そして私はその中から
 私が意志するところのものだけにその力を、リズムを使うと必死に思い懸けていった。
 拓真くん・・・拓真くん、いくよ!
 
 
 お兄ちゃんを、取り返すんだ!
 
 
 希望を、私達の胸に。
 
 
 
 
 ◆
 
 屋根の上からも飛び降りた。
 普段ならちょっと勇気を出して自分を励まさなくちゃ飛べないような高さだった。
 けれど今は、その私に対する想いを高らかに胸に灯し、その発火の勢いとぬくもりのままに、ただ後から
 飛び降りる拓真くんのために、まっすぐにしっかりと着地しているその実感のみが堪らなく愛しかった。
 拓真くんを励まし、拓真くんを飛び降りさせ、そして拓真くんを受け止める。
 両手を広げて待っている間、じんじんと響く足の痛みに活力を得ながら、私はひたすら拓真くんを見つめ
 ていった。
 『大丈夫だから! はやく!』
 『よくやったね。』
 よく頑張ったね、拓真くん!
 さ、いくよ、走って。このまま真っ直ぐいくよ!
 
 そして私が昔良く使っていた隠れ家に、拓真くんとふたりひっそりと立て籠もった。
 夜の蒼い闇が戸板の隙間から差し込んでくる中で、私と拓真くんはその静寂に身を委ねていった。
 静かに熱く息づいている薄闇の中にひたすら閉じていく空間的な感触を愉しみつつ、隣でゆっくりと震え
 始めた拓真くんの肩を抱いていた。
 この子・・・・冷たい・・・
 まるでこの場に私しか居ないような、そんな心許無く儚いそのぬくもりこそが、なによりも強く私に拓真くん
 の存在を魅せていった。
 この子は・・私が抱き締めようとしなければ・・・私が守らなくちゃと思わなきゃ・・・きっと・・・・
 拓真くんの肌の暖かさに依存したい心に必死に抵抗し、そして再び訪れた不安や絶望や疑問を懸命に
 押さえ込み、そして今度はそれらすべてに私はいとも簡単に破れていった。
 この真っ青な静寂の中で、私はひたすら蹂躙されていった。
 なにも、なくなった。
 なにも、感じなくなった。
 
 
 ぽっ  ぽっ 
 
 
 夜空よりも低く、夜の闇よりも狭い、この小さな小さな闇の中に灯る白い吐息。
 そして。
 その横で、息を止めんばかりになにもかも我慢している男の子がひとり、居た。
 冷たい冷たい、その小さな肩が、こつこつと、私の中に広がる血管を脈打たせながらぶつかってくる。
 泣いてるの・・・・・・この子・・・・・・
 拓真くん・・・・
 
 
 
 ----
 
 私はね・・・独りってことを怖いって思ったことが無いの。
 ほんとはね、お兄ちゃんが居なくても、それどころか誰もこの世に居なくても平気なの。
 小さい頃、みんなとかくれんぼして、そして私だけ見つからなくて、そしてね、この小さなお堂の中でいつま
 でもひっそりと蹲っているとね、この目の前に広がる小さな闇達とね、ずっと一緒に暮らしていくことさえでき
 たような気がしてたんだよ。
 寂しいとか思っても、それでもなんだかじっとしてると、ただそのままどこまでも溶けていけるって感覚の方
 が、もうずっとずっと比べものにならないくらいに強くて。
 うん、あとね、例えば映画見る約束してた友達をひとりで待ってたときも、そうだなぁ、あのときは結局1時
 間以上待たされてね、それでもう散々文句言ってやろうとかもう絶交だとか、そんな事滅茶苦茶一杯
 考えてたけど、それは全部そうしてひとり待っていることをじっくり愉しむことのひとつにしか過ぎなかったりし
 て。
 理屈でも言葉でも、ただそういうものを私はよく考えるけど、それはただこうして独りで在る私自身を愉し
 ませる、その孤独のうちのひとつだったんだ。
 だから孤独に耐えられなくて理屈で頭を一杯にしてる訳でも、そしてね、寂しいからこんなにお兄ちゃんを
 愛してる訳でも、だから無かったんだ。
 私は、独り。
 でも。
 だからね・・・拓真くん。
 私は、私っていうひとりが好きだったんだ。
 蛍という名前が付いている存在としても、お兄ちゃんの妹という関係性の中にある存在としても、あらゆる
 世界の中に存在している者のひとつとしても、私はね、それらを感じている主体としての私がね、大好き
 だったの。
 
 だからね・・・拓真くん。
 私ね・・・拓真くんのこと・・・拓真くんの感じる怖さは・・・本質的なところではきっとわからないの。
 なんでみんな、そんな自分の感情に溺れて感情のせいに出来るんだろ、なんでみんなそんな理屈を
 純粋に磨いてその中でだけに生きてたりできるんだろって、私はたぶんそういうのがわかんないんだと思う。
 あは、ごめんね、私子供は好きなんだけど、その子供の立場に立って考えるのってちょっと苦手なんだ。
 だから、ね。
 私はね、ううん、蛍お姉ちゃんはね、ほんと教科書みたいなことしか言えないんだ。
 でも、ね。
 だから、私が、うん、拓真くんの前に居るこのお姉ちゃんがね、君にそれを教えていかなくちゃいけないんだ
 って、思うのよ。
 拓真くん。
 感情に溺れては駄目よ。理屈に囚われては駄目よ。
 私には拓真くんの事はわからない。
 でも、感情に溺れない方法と、理屈に囚われない方法を、私なりに教えてあげることはできるわ。
 そしてね、拓真くん。
 君はね、私が守ったげる。
 
 
 
 『君を、独りぼっちになんてしない。』
 
 
 
 どんな馬鹿な私でも、私が此処に居ることは確か。
 私がどんなに駄目な人間でも、私が此処に居ると感じることが消える訳じゃ無い。
 私は確かに、君の隣に居るよ、拓真くん。
 こっち来て。抱き締めてあげる。
 拓真くん。
 君は、拓真くんだよ。
 そして君は、確かに悪魔の子と呼ばれている。
 そして、そう、君の言う通り、君がどう思おうと、君に関わった人たちはみんな不幸になっている。
 うん、そうね・・・・ほんとのほんとに・・・悲しいことだわ・・・・・・・
 そう・・・・・・
 
 
 拓真くん・・・・・・あなたが・・・・・一番悲しいのよね・・・・・
 
 
 私は、あなたがただどうすることもできずに、あなたの周りの人達を失ってしまった事こそを悲しく思う。
 あなたこそが、君こそが、一番一番、涙を流していたのよ。
 あなたは、悪く無い。悪いわけ、無い!
 君が自分は悪魔の子だと思ってしまうのも、そう思わずにはいられないのも無理は無いし、そしてだからこ
 そそう思うしか無いあなたこそを、私は助けてあげたいって思う。
 いい? 拓真くん。
 君は、悪魔の子じゃ無い。
 悪魔の子っていうのは、悪魔という言葉にしか過ぎ無いのよ。
 そしてね、その言葉を遣い、そしてその言葉に溺れたとき、それは初めて現実の世界にその肉体を顕す
 ことになるのよ。
 悪魔なんて居ないけど、悪魔を存在させようとするものは居る。
 そういう者達にとっては、紛れも無く拓真くん、君はもう既に悪魔の子なの。
 でもね、それは同時に、君自身にとっては君は悪魔の子では無いという、その事実が在ることを約束し
 てくれるものなのよ。
 君は地獄通信を使って地獄に人を流したりしてないし、誰も殺してなんていない、その事を一番知ってる
 のは、誰よりも強く深く知っているのは、他ならない君でしょう?
 そして、私ももう、信じてる。
 地獄通信が在るということを認めて、その上で拓真くんはそれを絶対に使って無いって事を、ね。
 君が自分は悪魔じゃ無いと言うからこそ、そしてその言葉を言うに足りる自信とその自覚が君にあるから
 こそ、君は絶対に悪魔の子にならないで済むんだよ。
 そして私のお兄ちゃんも拓真くんの事信じてる。
 だからきっとお兄ちゃんは、私達を助けにきてくれる。
 『必ず助けに来てくれる!』
 お兄ちゃんは強いんだよ? すんごくね。
 たとえやられても、なんとかそこから立ち上がって助けに向かう人だもん。
 私はお兄ちゃんの事信じてるもん。
 
 大丈夫だよ。
 
 信じるに足りる理論を私は私の中に構築してるし、そしてその理論に耐えられるだけの証拠が私とお兄ち
 ゃんの間にはあるんだもの。
 お兄ちゃんは絶対に来る。
 それは盲信じゃなくて、確信。
 だから私はそのお兄ちゃんの救援に備えてやれることを目一杯して、そしてね、拓真くん。
 たとえそのお兄ちゃんの助けが無くっても、私達だけでもやれるってことを証すためにも、今この瞬間に
 私たちは私たちの限界を超えていくんだよ。
 私たちが今私達にできることをやっても、それはそれ以上のことはできないけれど、でもそれを繰り返して
 いくその時間の経過、つまり「今この瞬間」を無数に重ねていくことのうちに、きっと今この瞬間ではできな
 い自分に至ることができるんだ。
 だから、今私達に出来ることを、そしてだから今できることを精一杯やってるという自己満足に囚われない
 ように、常にこの瞬間瞬間に新しい発見ができる希望を諦めないのよ。
 だから私達はもっと色んなことを知らなくちゃいけない。
 私のこと、拓真くんのこと、町の人たちのこと、そして。
 地獄少女のことを。
 
 
 哀しみは、尽きない。
 
 だから。
 
 
 
 
 『君は私が守ってあげる。絶対に』
 
 
 
 
 
 
 ◆
 
 私のこと、拓真くんのこと、町の人たちのこと、そして。
 地獄少女のことを、私達は、知った。
 そして。
 知った分だけ、それを越えていかなくちゃいけないのよ。
 哀しければ、哀しいほどに。
 『でも、あってはならないのよ、地獄通信なんて。』
 その言葉だけが、私達を強くしてくれる。
 そしてだから、希望を信じて、諦めないでいられるんだ。
 
 そして・・・・
 
 
 
 +++ 無力な雪の漂う中に、落ち行く先に着く前に
 
 
 
 +
 
 『大丈夫・・・だいじょうぶよ・・』
 
 諦めない、諦めない、諦めない。
 虚勢を張って時間稼ぎをして、そして最後の最後まで諦めないで。
 遂に町の奴らに捕まった私たちは、沈む舟の中に投げ込まれた。
 まさか、殺そうとするなんて。
 私の想像を遙かに超える惨劇の幕が、切って落とされようとしていた。
 目を覚ませ、目を覚ませ蛍!
 両手を縛られて頬をつねることすらもできない。
 震えてるのは、私。
 怖さも悲しみも絶望も不安も疑問も、そのどれにも該当しない動きが私の体を無造作に揺さぶっていっ
 た。
 がくがくと膝が嗤う。
 みしみしと不自然な形で体が揺れる。
 助 け て 
 かすれた吐息が無情な響きを私の耳元に届けていく。
 諦めない、諦めない、諦めない。
 その呪文を唱える合間に、ただ助けてと相手の無い懇願を重ねていく。
 拓真くんを守らなくちゃ。
 その言葉の重みと助けてという言葉の重みが、全く等しい目盛りを刻んでいる。
 諦めない、諦めない、諦めない。
 助けが来ると信じるのを諦めない。
 お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!
 た、拓真くんは、わ、わ、わた、しが守・・・る・・・
 
 +
 
 
 愚かとも、浅ましいとも思わない。
 これが、私の現実なのだから。
 そしてだからこそ。
 私はそこから必死に立ち上がろうとすることができる。
 愚かであると浅ましいと言って切って捨てることも、愚かであると浅ましいと言ってすべて受け入れてしまう
 ことも、私は絶対に選びはしない。
 大丈夫、大丈夫よ。
 私はそう、力無く呟いた。
 たとえそのときの私のその言葉の重みがすっかり無くなっていたのだとしても、その言葉が重みを含ませる
 べきものだという、その知識としての意志は決して無くなったりはしない。
 今は駄目でも、きっときっと、諦めずにその言葉を言い続ければ、それは愛しい重みを取り戻せると、
 それだけを信じることは、どんなときにでもできるのだから。
 私は、震えた。
 震えている自分を信じることができないくらいに、ただただ震えていた。
 どうしようも、なくなった。
 私では、どうすることもできなくなった。
 ただただ、諦めない諦めないと、呪文のように唱えることしかできなくなった。
 助けて、助けて、助けて!
 誰か、助けて!
 誰か、誰か!
 
 
 そして、その「誰か」が、確かに「お兄ちゃん」になったとき。
 
 私は・・・・・・
 
 
 
 しんと静まりかえりながら、私は叫び続けた。
 お兄ちゃん、助けて。
 すべてを失い、すべてが行き詰まり、そしてすべてが終わりに望んだその瞬間。
 このままでは、もうどうにもならないと、その瞬間の実感にどうしようも無く包まれたとき。
 私は、お兄ちゃんの名だけをこの胸に灯していた。
 絶対に、諦めない。
 絶対に、絶対に、お兄ちゃんは助けに来てくれるって信じてた!
 私・・・・私・・・・
 あのとき・・・拓真くんのこと・・・・・見えなかった・・・・
 もう・・・全然・・・・全然・・・・・駄目だったのよ・・わたし・・・・
 私ね・・お兄ちゃん・・・・
 自分でもね・・・気付かない内にね・・・・自分で・・・限界を決めちゃってたんだ・・・・
 お兄ちゃん・・・
 この言葉は、魔法だよ。
 この言葉だけを叫んだとき、私は私の周りに限界を創り出してしまってたのよ。
 私は・・どんなことがあっても拓真くんを守らなくちゃいけなかったのに。
 私に限界なんて・・・終わりなんてあってはいけないのに・・・
 
 兄の存在は私にとっては、逃げ場のようなものだった。
 兄を求めることで、私は等身大の自分を超えた部分を切り捨て兄に任せてしまう事の名分を得ていた。
 兄に助けを求めることを諦めない、その事を念頭に置き逆にすぐにその「終わり」を中心に据えていた
 からこそ、私はただ強くなれていただけ。
 まるで昔の侍が、いつでも死ぬ覚悟というただの逃げ場としての「終わり」があったからこそ強かったのと
 同じようなものだったのだ。
 いつでも「終わり」を持ち出し、そして一番の踏ん張りどころでそれに逃げ込むなんて・・・
 馬鹿だわ・・・・わたし・・・
 お兄ちゃんの名前を・・・そういう風にしか使えなかったなんて・・・
 お兄ちゃんに真っ先に抱きつき、そして拓真くんをほったらかしにした上、その拓真くんは湖に落ちてしまい
 、結局その拓真くんを助けたのはお兄ちゃんだった。
 それでもまだ、私は拓真くんを見ていなかった。
 ただただ、お兄ちゃんお兄ちゃんと叫んで泣きじゃくった。
 うん・・・・うん・・・・
 帰りの車の中で、私はやっと過ぎたものとして恐怖を感じることができた。
 もの凄く、恥ずかしかった。もうなんだか、あらゆる感情で押し潰されそうになった。
 
 拓真くん・・・ごめんね
 私、あんな偉そうなこと言って、君をほったらかしにして、自分だけ助かることばっかり考えて。
 うん・・・でも・・・なんでだろうな・・・こんなに恥ずかしいのに・・こんなに情けないのに・・・
 ていうかそもそももう、君に合わせる顔なんか無いはずなのに・・・・それなのにね・・・私・・・・
 君を・・・・抱き締めてあげたいのよ・・・
 良かったね・・・・・良かった・・・・・本当に・・・・・・・良かった・・・・・・
 よく頑張ったわ・・私なんかもう全然駄目だったのに・・・拓真くんはそれでも諦めずに・・良く・・・
 ありがとう・・・拓真くん・・・・・ありがとう・・・・・・・うう・・・・・涙出てきちゃった・・・
 うん。
 私、反省しなくちゃだね。
 すごい大失敗で、拓真くんの命を危険晒した大失態だけど、私はだからそこから学ばなくちゃいけない。
 もう絶対、あんなことにはならないと。そのためにはどうすればいいのかと考えなくちゃ。
 私はお兄ちゃんとこれからも呼ぶ。
 私はこれからもお兄ちゃんに助けを求める。
 だって私はお兄ちゃんが好きなんだもん。
 だからお兄ちゃんにはこれからも一杯助けて貰って、それで私もまたお兄ちゃんのことを大好きで居続け
 る。
 うん、そしてね。
 だからもう、諦めない、なんて言わないんだ。
 私ね、諦めちゃう。
 それでね。
 諦めたらどうなるか、私が拓真くんの目の前で諦めたらなにが起きるのかを、この肌で感じていくよ。
 そうしたらもう、絶対に、諦めない、なんて言ってお兄ちゃんに助けを求めてる暇なんて無くなるんだから。
 私が、やるしか無い。
 そして、私が、拓真くんを守るの。
 私こそが、拓真くんを助けるの。
 お兄ちゃん、わたしね
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 おにいちゃんが居なかったら、駄目なの、ほんとうに。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 『かつてひとりの不遇な少女が居た。
  少女は謂われの無い事で迫害を受け、同じ村に暮らす人々は、村の生活を守るという正義を建前
  に少女を追い詰めていった』
 
 
 
 
 『独りぼっちだったんだ、地獄少女も』
 
 
 
 
 ・・・・・・・・そうね。
 
 
 
 
 
 + + 
 
 私はなぜ頑張らなくちゃいけないの?
 私はただ独りでいれば良かっただけなのに。
 私はでもその独りでも満足できるからこそそこから始めることができたのに。
 だから私はお兄ちゃんを大好きになれてそれでお兄ちゃんと暮らすことができたのに。
 私はなぜ頑張らなくちゃいけないの?
 私は満足してたからお兄ちゃんを求めることができたのに。
 お兄ちゃんを求めることができたから私はさらに深い満足を得られることができたのに。
 その構造に気付いた段階で私はもうそれ以上のことを求める必要は無くなっていたはずなのに。
 私にはもうお兄ちゃんが居るんだから。
 私はもう独りじゃないんだから。
 お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん。
 わたしはひとり。
 私はお兄ちゃんの妹でお兄ちゃんは私のお兄ちゃん。
 どうしてどうしてこんなに苦しまなくちゃいけないの?
 どうして他人のために死ぬ想いまでしなくちゃいけないの?
 どうして正しいことをしなくちゃいけないの?
 どうして正しいことをしなくちゃいけないと思いたいと思わなくちゃいけないの?
 
 そんなの、言葉にしか過ぎないのに。
 
 わたしはひとり。
 ずっとずっとあの小さな闇に満ち満ちた豊饒なお堂の中のぬくもりの中にいる。
 黒く聳え立つ山が穿つ天壌の隙間を覗き込みながら、いずれその天地に押し潰されていく終局を感じ
 ている。
 誰が悪いって? そんなのどうでもいいわ。
 私? 私はなんにも感じて無いよ?
 私なんてどうでもいい。
 わたしは、わたしのすべきことを。
 ただ、すべきことを。
 ただ。
 ただ。
 
 
 お兄ちゃん?
 
 
 真っ暗闇に光り輝く拓真くんの背に従って。
 真っ直ぐに引きずられるように、私の中に残った力は前進のために使われていった。
 動いて、動いて、その動きそのものに縄引かれて。
 なにも頭に浮かばない時間が、ただその瞬間を無限に重ねながら、やがてそのまま空の彼方へと消え去
 っていった。
 なにも、ない。
 すべての重荷から解放され、その重圧によってひたすら活力を得ていた私は、ことりと静かに停止した。
 
 
 『ごめんね、拓真くん。』
 
 
 目の前に広がっていた白い吐息と黒い空に浮かぶ白い雲がひとつになったとき。
 私の瞳は大きく開かれていった。
 晴れやかなる気分には似ても似つかない、この真っ白に透けていく感覚。
 ごめんね。
 私、疲れることに疲れちゃった。
 ごめんね。
 
 『でももう、どうしようもないの。』
 
 どうして?
 どうでもいいよ。
 ただ、私は。
 もう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 『あなたに、消えて貰うしか。』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 だって、なんにも無いんだもの。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 拓真くん・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 『・・・・ごめんなさい』
 
 
 
 
 
 
 
 この言葉にどんな感情があったのかも、君の瞳を見つめている今の私には、もうわからないのよ。
 
 
 
 
 
 
 
 
                                ◆ 『』内文章、アニメ「地獄少女」より引用 ◆
 
 

 

-- 070408-                    

 

         

                                 ■■ 永遠の場所 ■■

     
 
 
 
 
 夜を歩く者は陽光を知らず、朝を往く者は月光を知らない。
 けれど月の消える先にあるものと、陽光の降り立つ場所にあるものを知らぬ者は無い。
 歩き往く乾いた大地を潤す雨が、等しく夜の闇と朝の煌めきで彩る空よりやってくることを皆知っている。
 燦々と輝く太陽を背にして為す影と、煌々と照る月を感じて視る闇の、そのいずれもがやがて等しくその
 終わりを全うしていくことを、生きとし生けるものすべてが知っている。
 そしてその終わりの永遠が木霊するこの場所で、皆生きている。
 今、この瞬間に。
 
 
 
 
 
 
 
 〜 エル・カザド  開幕 〜
 
 
 
 
 
 ◆
 
 
 冒頭より艶やかな湖畔の朝焼けとも夕焼けとも知れぬ絵が広がり、夜露とも涙とも知れない水滴に
 満ちた時間が進んでいく。
 小刻みにその瞬間瞬間の接続の姿を滑らかに均して接合し、そしてそこに永遠から抜け出した断続する
 幻の世界が顕れた。
 涙を浮かべ立ち竦む少女と、血を流し倒れている男。
 その背景よりも遠い場所から響く、そのふたりの存在に如何なる影響も与えないはずのそのナレーション
 は、ただ淡々とそのふたりの姿を無関係な言葉で包んでいった。
 要するに、エントロピー。
 難しい話は私にはわかりませんというお話。
 
 そして、真っ昼間からテーブルの上に突っ伏す女一匹。
 その名をナディという。
 寝不足なのか二日酔いなのか知らねども、ウェイターが持ってきた受話器を見ずに手をぶんぶんと伸ばし
 てそれの手渡しを要求するほどの駄目な女
 それが、我らがナディさん。この物語の主人公のひとりで御座います。
 初っぱなからいい感じに駄目っぷりを醸し出していますけれど、受話器を耳に当てた途端がばと跳ね起
 き、一足飛びに行動を開始する辺り、なかなか機敏な御方ではあるようです。
 借金取りにでも見つかったのでしょうか。
 しかし事実はそうで無く、彼女は賞金稼ぎで賞金首を追いかける身であり、そして今このときにおそらく
 賞金首の居場所を逆に掴んで歓び勇んで飛び起きたのでした。
 そしてその浮き足だった勢いのままにヒッチハイクと洒落込むも、そのヒット率の低さは堂に入ったもので、
 無情な車の背を見送りながら、こみ上げる想いのままに地面を蹴りつけ憤慨。
 登場後僅か数分で彼女のキャラが知れた気分です。
 だらだら〜っとしながらも、捕まえたチャンスは逃さない女と勇んで見ても、その勢いを駆って立てた親指 
 は、無情にもロマンの欠片も無い砂塵と排気ガスにへし折られ、ぐぅの音を出す手前で笑えるほどに腹が
 立ってくる。
 荒野にひたすら伸びるアスファルトの道は熱くて、そして果てしなく長く愛おしい。
 そうこうなくっちゃ、と笑顔混じりの溜息をひとつ軽快に吸って、ナディさんはとぼとぼとその道を自らの足で
 進むのでした。
 
 時は進み風はそよぎ、いつしか目的の町の中に居るナディさんの姿を発見。
 なにやら通りを往く金髪少女をこっそりと尾けて、にっこりしています。
 まるで猫のようにしなやかに軽快に、そして幼いピエロのようにこそこそと陽気にその少女を尾けるナディさ
 んの短いその尾行劇が微笑ましい。
 そしてその少女こそ、ナディさんお求めの賞金首のエリス。
 明らかに普通の女の子ですが、気にしません。(私もナディさんも)
 そしてそのエリスは占いの看板を掲げる家に入り、それを追い窓から家の中を覗き込むナディさんの顔は
 、まるで家の中のエリスとおばあちゃんのまったり団欒に興味を示す、お伽噺の妖精さんのよう。
 最初私はなぜか妖精さんでは無く日本の昔話によく出てくる狸さんを思い浮かべましたけれど、あまりに
 あまりなので、それは止しておきます。妖精さんでよろしくお願い致します。頭の中の狸さん、消えて。
 
 さて、場面はさっと変わり、酒場に入場する父娘ふたりの御登場。
 渋く荒れた男の溜まり場にそぐわない子連れ狼の闖入に、ああん?とチンピラ臭をあまさずだだ漏れさす
 方々を背に、父娘はマスターにビールとミルクを注文。ミルクときたか、ミルクと。はは。
 あ  あ  ん ? by片目眼帯のシブいマスター
 しかし素知らぬ顔で料理の注文を続ける父に果てしない空気の読め無さを感じたのか、すっかり覚悟を
 決めたとばかりに素直にビールとミルクをさっとカウンターに転がします。
 ああ、男の聖域が・・・俺の酒場が・・・
 最近の客ときたらチンピラ風情ばかりで、そんなときにちょっとは気合いの入った野郎が来たかと思えばあ
 ろうことか餓鬼なんぞつれて、そしてビールとミルクを並べて注文ときた日にゃ、もう俺も潮時かとふと思っ
 たのさ。
 心無しかマスターの背にそんな寂しい叫びが広がったように見えましたけれど、本編には関係ありません
 ので割愛させて頂きます。
 そんなマスターの哀愁もチンピラのちょっかいにも動じない父娘に乾杯。
 ちなみに父が娘のことをリリオと呼んだときに、私の耳にはなぜか「リリ男」というニュアンスで入ってきたの
 ですけれど、まさに空耳アワー。以降リリ男と自動変換させて頂きます。(飽きるまで)
 
 そして場面はまた戻り、とある大道芸のショータイム。
 シャッシャッシャと音も軽やかにシャッフルを加え、そして開いて見せたカードはずばり。
 ・・・・たぶん、ちゃんとマジックはやってそれも成功したんだと思うんだけど。
 「こんな無愛想な大道芸初めてみた。ある意味新しいや。」 byナディ
 観衆の鳴らした拍手よりも大きな音を立てて、エリスの用意した投げ銭受けに落ちた、そのナディさんの
 投げ銭たった2枚の存在がすべてを物語っています。
 エリスさん、それ大道芸違うから。
 淡々と、というレベルを遙か超越し、まるでカードを切ってマジックの本に書いていたとおりにカードを並べ
 れば投げ銭受けにコインが入る仕組みになっている、という法則で動いていると言わんばかりの、その無
 機的というにはどこかもの悲しく、それゆえにその哀しい思い込みの中に完全埋没仕切り、コインが少な
 いのはきっと天気が悪かったからだと、その真っ青な大空を見上げてさらっと言える、そんな楽しい息吹が
 エリスの周りには漂っていました。別の言い方をすれば、超楽天家。楽天を・・・・・越えてる。
 そしてその超楽天主義者のエリス様の通るところまるで荒野の如しで、ちゃりんといい音を立てて投げ銭
 受けに入れられたそのナディさんのコインは、「これだけ? パンも買えない。」という素晴らしい言葉で
 見事にそのありがたみを失い、ただの鉄屑の固まりになってしまいました。
 エリスさんにとっては、自分はただするべき事をしたのだから、報酬を受け取るのは当然であり、お情けを
 受ける謂われも無くまたそれを求めてもいず、だから超然とただ当たり前のように商品価値の欠片も無い
 自分の(ある意味斬新な)芸の代価を、その「代価」を払う意志を見せたナディさんに要求しただけ。
 エリスにとっては、コインを投げなかった観衆にはそもそも存在価値は無く、ただそのパンすら買えないはし
 た金を寄越したナディを捕まえて、その自分の代価の交換ステージに引っ張り上げたのですね。
 つまりエリスさん的には当然なことをしただけで、だからナディさんがお情け的挨拶代わりに寄越したコイン
 に上乗せを要求し、それに素直に応えて追加2つのコインを払ったナディさんを無視して、ナディさんの
 財布にずっしり詰まった分を要求したりする、その「図々しさ」はナディさん側の理屈であり、ナディさん側か
 らすれば追加を払ってあげたことにお礼も言われないことにおいおいって苦笑な訳で、おまけにナディさん
 がまぁいいかと軽くいなす前にエリスさんの方がまぁいいかとごく普通に言ってナディさんをぽかんとさせたり
 する、そういう逆転的な位置と価値の変遷が面白いところで、ええと、面倒なので、まぁいいか。
 
 そんなこんなですっかり空気が読めないどころか、空気を読む気の無い女としての立ち位置を獲得し
 たエリス様ですが、なにげに適当に笑って受け流す駄目な女としての立ち位置を物語開始僅か数分で
 獲得したナディさんはなかなか諦めません。
 あなたエリスね?と言って平然と違うよと言い切られても、一度自分の足で歩くと決めたナディさん
 はそんなことではへこたれません。
 こーなりゃエリス様の素のボケを徹底的に否定(ツッコミ)してやるわ、と言わんばかりに、エリスの幼き頃
 とおぼしき写真を突きつけ、どうだ!とすごんでみせます。
 が。
 「綺麗な女の子だね。 誰?」 byエリス様
 こ  の  女 、 本  気  に  つ  き 。
 問答無用。色々な意味で問答無用。
 ナディさんも瞬時に先ほどの酒場のマスターと同じく覚悟を決め、実力行使。
 私と来なさいていうか来い。
 
 しかし運が良いのか悪いのか邪魔が入ることに。
 ナディさんと同じ賞金稼ぎがエリスを横取りしようとナディさん達を包囲。
 しかしナディさんもさるもの、ふっと笑ったかと思ったらおもむろに正面の男に砂を蹴りかけ、その隙を縫って
 後方と上方の男の拳銃を撃ち落とし、すかさず正面の男の拳銃も蹴り落とし、ふらっと軽妙に「命までは
 取らない」っと〆て終了。
 少なくとも大道芸師エリス様へ贈られるものより多い拍手が聞こえてきそうな軽快さ。うん、グッジョブ。
 嫌味さも無く、かつ相手の命を預かる傲慢さも、また自らの命を再度狙われるという可能性に汲々と
 抵抗する必死さも無く、ただわたしは殺すの趣味じゃないからねーみたいにして、ただその軽いノリで重い
 命を読み解くその奥深さを以て、すべてはこの世界次第そして私もあんたもその世界のひとつだから今
 この瞬間の私とあんたのやりとりだけが今この瞬間の世界の中の私とあんたのすべてを決めるのよね、と、
 ナディさんは当たり前な事として、深く考える必要すら無いほどに自覚しているのです。
 「解散。」 byナディさん
 そしてそのナディさんと賞金稼ぎ達が刻んだこの瞬間の次の瞬間には、さらなる瞬間が訪れます。
 その賞金稼ぎ達を、新たな賞金稼ぎ達が撃ち殺してしまいます。
 なーんてことするの、と言うナディさんの言葉にはあっけらかんとした寂しさが漂っています。
 せっかく丸く収まるところだったのにぃ〜、命はなにより大切だって誰かに習わなかった?
 そしてすかさず空気を読んでエリス様が敵前逃亡。
 ナディさんが殿軍を務めてなんとか逃げおおせることができましたが、なんであのタイミングで逃げんのよ
 となじるナディさんを尻目に、「撃ってきた(から逃げた)」と、明らかにエリスが逃げたから撃ってきたことを
 完全に無視する発言を敢行。ナディさんのツッコミ意欲を無限に削いでしまいます。やってらんなーい。
 仕方が無いので、エリスは既にデッドorアライブ、つまり生死は問わない形として賞金首にされていると
 ナディさんは伝えますが、すかさず空気を読んでエリス様また逃亡。
 きっと次は「追ってきた(から逃げた)」と、逃げたから追いかけたナディさんに言い訳することでしょう。
 ちなみに、エリス様は逃亡の際に素晴らしいジャンプ力を魅せてくれました。超ジャンプ力。
 そしてエリス様はやればできる子だというのが証明されたのでした。ジャンプとか空気読むとか。
 
 そして場面は流れに流れ、とあるオフィスビルの一部屋に鳴り響く電話、そしてそれを受ける謎の男。
 壁になぜか掛かっているエリス(幼女バージョン)の写真にダーツを投げつけ、それが微妙に顔に当たって
 いないことにほくそ笑む、怪しいを通り越して変態と断言しても良い加減抜群のその男性は、電話相手
 を忙しいと今まで幼女の写真にダーツ投げて遊んでいた口でぬけぬけと言い抜けてしまいます。
 普通に嫌な男です。そして変態です。むしろ変態です。いずれ変態にしてみせます。(悪意)
 
 その男の電話口の向こうでその被害を受けた女性ミス・ヘイワード。
 確かにあの男も強引ですけれど、このミス・ヘイワードも押しが少々弱い模様。
 おまけにその件を上司とおぼしき女性に告げると、その女性は途端に怒髪天を衝きかねない剣幕で、
 散々その男性の悪口を(ミス・ヘイワードに)言い、そしてその男性を1時間以内に必ず連れてこいと
 (ミス・ヘイワードに)言い、そしてあついでにこれ片づけといてと計算書の山を(ミス・ヘイワードの)机に
 置き、そして(ミス・ヘイワードは)おろおろとそれを全部引き受けることとなります。
 この人、押しも弱いけれど、押しにも弱いという二重苦に喘いでいる模様。
 けれどほっと一息付きがてら、胸元を緩め紅いペンダントをさすりながら、ふと鳴った携帯の音に対して、
 「・・接触したか。」 by目つきの変わったミス・ヘタレ
 裏とか黒とか、そういう他の人格登場なのでしょうか?
 押しも弱ければ、押しにも弱く、おまけに黒人格持ち?
 三重苦。
 
 
 
 
 (CM)
 
 
 
 
 結局超人的身体能力を持ちその上本気でボケてる、ごく普通の金髪少女エリス様に逃げ切られてし
 まったナディさんは、エリスの住む占いの看板を掲げる家に潜入します。
 そしてごく普通にその占い師でありエリスの現保護者であるおばあちゃんに占って貰ってます。・・・・・。
 その上占いの結果が出る前に「お金持ちになれる?」と早速遠慮会釈無しに尋ねる強欲ナディさんの
 素敵さが目一杯部屋の中に広がります。むしろ背景にお金の花がぱぁーっとさ、こう、ぱぁーっと。
 ・・・なにしに来たんでしょうね、この駄目賞金稼ぎの人は。
 すーっ。
 両の掌に乗せたトウモロコシの殻を線を描くように広げると、その広がり方などでその人の運勢がわかる。
 おばあちゃんはナディさんの過酷な過去を想い、そしてそれが今後加速することを予言します。
 おばあちゃんの向かいにどっかとあぐらを大きくかいてちゃっかり座り込むナディの、その素直な幼さと正直な
 大人さは、優しい落ち着きをおばあちゃんに与えて示します。
 数奇な人生を送るよとおばあちゃんが言えば、ふっと差すその影と共にそれよりもそれを作る陽光に満ちた
 笑顔でもう充分送ってるよと応えて魅せ、これからもっと色々なことが起こるとおばあちゃんが言えば、
 えーいやだよ〜それ〜と子供のように大人の哀しみを笑って魅せ、要はお前さん次第じゃとおばあちゃん
 がいえば、魔法みたいにぱぁーっとさ、こう、ぱぁーっと幸せにしてよと泣きながらその涙を糧に笑って魅せ
 るナディ。
 おばあちゃんはそんなナディをじっと見ながらそれを笑い、そしてエリスの優しさというものを語り出し、
 そしてその描写を以てナディがこれから辿り着く未来のひとつであるエリスの存在を、よりそのナディの笑顔
 に近しい存在にしようとするのです。
 優しいのはあんただけじゃない、そしてな、だから強くて弱いのもあんただけじゃないってことさ。
 だから、あんたはエリスのことをよく見てご覧。見続けてご覧。
 そうすれば、あんたはあんたを見失わなくて済むからね。そして、あんたが行く道もな。
 そして、おばあちゃんは白状します。
 優しい優しいエリスは、目的地があったのに老いぼれをひとり置いて出ていくことができなかったと。
 優しさを捨てればそれはもはやエリスたりはしない、エリスはエリスゆえにおばあちゃんと一緒に居た。
 けれどエリスは自分の優しさを自分の中にしか見つけることができなかったからこそ、おばあちゃんに示す
 優しさをひとつしか得ることができなかった。
 だからな、あんた。
 エリスを守ってやっておくれよ。
 おばあちゃんは、エリスと一緒に行っておくれとナディさんに頼んだのです。
 エリスにナディさんの中にある、エリスさんの優しさを魅せてやってくれと。
 そしてナディさんは案の定深く考えもせずにそれを安請け合いし、そしてやっと捕まえたエリスさんと行
 動を共にします。
 
 そして賞金稼ぎに撃たれたときに追ったかすり傷をエリスさんに見つけられ、大丈夫かすり傷だからと言った
 そばからエリスさんは無造作にその傷口にタッチ。
 う ぇ い て て て て 。 byヒロインのひとり
 かつて真下作品のキャラでこんな顔をしたキャラが居ただろうか、いや居ない。
 「嘘吐き。」と半笑いで言うエリスさんに「あんたが押すから開いたのよっ。」と、ようやくナディさんのツッコミ
 がエリスさんのボケと噛み合い始めてきたことよりも、あの顔が印象にばっちり残ってしまって大変です。
 そしてエリスさんはおばあちゃんを心配しますが、けれど賞金首に自分が狙われている今、自分が戻らな
 い限りはおばあちゃんには危害は及ばないということに気付きます。
 これは、ある意味でいやらしい僥倖。
 エリスさんがおばあちゃんへの優しさを保ちつつ、おばあちゃんの元から抜け出せる口実になるのです。
 そして面白いことに、エリスさんはこの文脈における自己批判能力を全く発揮すること無く、かつ凄い事に
 その口実としてのこの事態にでは無く、純粋に自分が直面したこの局面としての事態にのみ囚われる事
 を能動的に選択するのです。
 おばあちゃんもきっとそれを望んでいるはずだから。
 だから、その期待を裏切るような真似をしないと誓う意図的なその盲目さを批判する事よりも、そのおば
 あちゃんの期待を裏切る裏切らないというそれらの事柄の存在に依拠する事自体で、結局全部おばあ
 ちゃんのせいにしてなにもかも決めようとしている自分の姿に気付くことの方が重要だと、このときエリスさ
 んは思うのです。
 「みんな私を狙ってるんだ・・・・・・人殺しだから。」
 このセリフだけ聞くと、真下美少女ガンアクション三部作の主人公達の系譜をひく事を証す、その無謀
 ともいえる謎言語の展開としか思えませんけれど、まぁそれは置いといて。名残惜しいですけど。
 このセリフが、既にエリスさんがそのおばあちゃんとの関係という名の「呪縛」から解き放たれて踏み締めた
 、その最初の一歩の中にあることを、エリスさんに体感させていくのです。
 悪いのはおばあちゃんじゃ無い、おばあちゃんから離れられない私でも無い。
 ただただ、私が純粋に悪いから、私というものが無条件に悪い存在だから。
 そしてその悪としての自意識があるからこそ。
 その悪を改善するという形で、自身の変革を通しての前進の連続を踏み締めることができるのです。
 そして改めて名乗りをするナディさんはエリスさんに握手を求めます。
 一緒に、行こう。
 エリスさんはなんで私も名乗らなくちゃいけないの?という顔をしてぽかんとナディさんの顔を見つめていま
 す。
 もう、いいよ。
 ナディさん、頑張れ。
 
 しかし気まずくなる瞬間の手前で、都合良くおばあちゃん家の方での爆音をキャッチ。
 空気を読んだかそれともほんとにナディなんてどうでも良かったのかはわかりませんが、
 エリスさんは速攻で超人ジャンプを交えておばあちゃん家に急行します。ちょ待。(ナディさん心の中)
 しかし駆けつけるも束の間、速攻で背後を取られてしまうエリスさん。
 しかしそれも束の間、今度はエリスさんの背後を取った男の背後をナディさんが取ります。
 名付けて囮作戦友情作戦。
 キメゼリフもエリスさんに銃を突きつけた男の口調を真似ての「銃を降ろせー。死にたくなかったならなー」
 とグッジョブ、な感じで最高点。
 あの棒読みな嫌味っぷり、最高でした、ナディさん。
 そして実にカッコ良くキメた賞金稼ぎナディさんのステージを滅茶苦茶にする賞金首のエリスさん。
 早く逃げてと銃を片手に構えて余裕なナディさんですが、エリスさんは全く無視。
 まるで逃げそうも無いエリスさんの姿にすっかり余裕を無くし、内心ではあんたいつも逃げるくせになんで
 こういうときは逃げないのよ私になんか怨みでもあるわけ!?って感じでむしろ既にエリスさんに銃口
 向けていて、そしてそんな事は限り無くどうでも良いに決まっているエリスさん、いきます。
 超能力、発動。
 エリスが気合いを入れて賞金稼ぎの銃を睨み付けていると、その銃身が加熱、そして暴発しその破片で
 賞金稼ぎは負傷。
 要するに、エントロピー。
 難しい(を越えた)話は私には(さらに)わかりませんというお話。
 そしてもう、なにもかも限り無くどうでも良くなってきたナディさん。
 「エリス・・・あんた一体・・・・・・・・・・・(もうどうでもいいや)・・医者呼んでー。」
 ちなみにこのとき現場近くの屋根の煙突の影に、この様子を録画していたストーカーらしき人物の影が
 ありましたけれど、ほんとどうでもいいので、割愛します。どうでもいい。
 
 そして爆破された家の中には、あわれ瀕死となったおばあちゃんが。可哀想に・・。
 またエリスと会えたことを神様に感謝するおばあちゃん。
 そして、おばあちゃん、最後の言葉を遺し始めます。
 こんな事になったのは全部私が悪いからというエリス。
 そしておばあちゃんは、最後の力で、すべて今までのエリスとの生活で作り上げた言葉に火をつけます。
 「違うよエリス。お前はなにも悪くない。悪いわけが無い。」
  by かつて魔女と呼ばれた偉大なるおばあちゃん
 悪が本質ゆえにその悪に「囚われること」自体は決して本質では無い。
 悪いからこそそれを正すことができ、ゆえに自分が悪いと言う事に意味は無く、ただ意味があるはそれを
 正していき正していこうとする言動のみ。
 だから、「エリス」は悪くない。悪いわけが無い。
 エリスは悪いゆえに、エリスが悪くないわけが無いゆえに、それは必ずそれに囚われていてはいけない
 エリスの中にある属性のうちのひとつとしての「本質」でしか無いのです。
 そうすれば、自分がどうしなければいけないのかがわかってくる。
 自らを悪いと言っている暇など無いことを、そのときエリスは真に気付くのです。
 おばあちゃんはエリスに綺麗な石を託し、目的地である南を目指せと言い、そして。
 「ウイニャイマルカ。」
 永遠の場所、という意味。
 その言葉ほど、今この瞬間の積み重ねを続けたその頂点のこの今に居るエリスに染みいるものは無い
 でしょう。
 そして、エリスは。
 「 は  ぁ ? 」 byおばあちゃんの最後の言葉に対するエリスの態度
 
 
 
 
 
 
 「素晴らしい。」
 
  byとあるオフィスビルで拍手する怪しい男性 & 今日の感想を書き終えての私
 
 
 
 
 
 
 
 
 ちなみにオカマさんの最後の「ゴラァ。」はあまりにも刺激が強いので、聞かなかったことにします。
 まだ死にたくはありませんから。 (笑い過ぎで)
 それとEDへの言及を忘れていましたけれど、あれは反則というか致死モノ過ぎてもうね、なにあれ、なに
 あの仮面、普通に変態じゃんていうかどんなEDやねんて秒単位でツッコミ入れてて笑ってる暇も無かった
 ていうか曲とか映像的にはOPの方が良いけど、ネタ的にはもうEDは史上最高のひとつですよ、まぁそれ
 はつまり史上最低という意味でもあるのですけれど、あはは、なんか、今頃あは、笑いがあははh
 
 
 
 
 
 

 

-- 070406-                    

 

         

                                  ■■ 卒業&始業 ■■

     
 
 
 
 
 皆様、ごきげんよう、紅い瞳です。
 
 月日の経つのは早いもので、早くも4月を迎えることとなりました。
 いよいよ草木も芽吹き風は暖かく染まる春の訪れです。
 そして私も、ようやく本格的な始動を自分の中にも感じている、今日この頃です。
 新年で助走を始め、そして4月で一気にジャンプ、という生活リズムで長年やってきましたので、たとえ
 一日一日のリズムが変則的だったり妙に正常続きだったりしても、大局的に見ればその一年を通しての
 基本リズムに自然に回帰出来ていることを感じられて、ほどよく安心できます。
 なにがあってもなくっても、私らしく。
 良い感じです。
 そしてその感覚を元にして、この一年も頑張って基本リズムへの忠実たるを目指し、そして結局普通に
 乱れていくのを堂々と受け止め、それでも来年の今頃にまたごくごく当たり前のようにこの「始まり」を
 感じられると、そう信じる事ができるからこそ、今年一年もまた頑張っていけそうです。
 頑張っても頑張らなくっても、春はまたやってくる。
 だから、頑張る。
 終わり良ければすべて良し、ならば、始まり良ければ始まりもまた良し。
 今年一年もまた、魔術師の工房と、そして紅い瞳を宜しくお願いします。
 
 
 ◆
 
 丁度アニメの番組改編期に当たり、また一年周期の番組も始まることから、4月は一年で最もスタート
 するアニメの本数が多い時期で、まさにアニメの一年の始まりに相応しいときです。
 無論私もその通りに4月を出発点として、ひとつその奮起のままに気合いを入れて新しく始まったアニメを
 見始めています。
 しかし、その前に。
 そうして既に始まっている新しいアニメ達との新生活を営んでいく、その大元にあるものは、常にそれより
 前に見ていたアニメとの生活で培いまた得てきたもののすべてにあります。
 去年一年、そしてこれまで見てきたアニメの集積の頂点にあった、先月まで見ていたアニメと接する私の
 中にあったものを足場にして、故に私はこの4月からのアニメを見て行きたいと思っています。
 
 さて、前期のアニメといえば、私にとってはまなびストレート!と京四郎と永遠の空に尽きますし、またあの
 作品達について書いた一連の感想作業は、かなり大きなものを私に与えてくれました。
 今まではひとつの時期にひとつかふたつのアニメを選び、それに対しての感想のみでまとめたものをきっちり
 と(細部に於いてはその限りでは無い)仕上げることに、ひとつの私の感想制作のスタイル、或いは本義
 がありました。
 書く以上は全力で、今できることから到底今までは出来ないと思っていたものを創り出す事に集中する。
 ですから、かなり目的意識ははっきりしていましたし、はっきりとした「自分」を以てアニメを解読して、それを
 自分という下地に織り込んでいく感触を中心にして、感想は造ってきていました。
 けれど、まなストと京空、そしてひだまりの感想は、ほぼアニメ作品側にすべてを委ね、そしてただそれに
 翻弄される生身の「私」の叫びを、そのまま赤裸々に綴ったものにしていました。
 その本質的なところで口語的であり、また自由自在という名のその瞬間に思い付いたものを、そのはし
 から書き付けていく手法を取り、ある意味で書いている私以外の人たちにも臨場感は感じて頂けたとの
 ではと、少しだけ思っています。
 ですからひとつの文章としての体裁を完全に放棄し、ただもうアニメを見ながらぐだぐだと喋り続け、そして
 その喋りながらアニメを見てと、実際あの感想を書いているときはアニメを付けっぱなしで、最後までいく
 とまた巻き戻して最初から流してと、そうして常にリアルなアニメとの接触の中で生まれてきた、それこそ
 生まれたての私の「感想」をそのまま産地直送でラッピングも無しのままお送りした形なのです。
 そういったものですから、当然そんままな感情表現もちらほら、というよりそれが主成分みたいなものに
 なりましたし(笑)、ひとつの文章としてはまともには読めないものであり、ゆえに従来のアニメ感想の書き
 手としての私は、かなりハラハラというか緊張しながら書いていました。
 もともと今まで書いていたアニメの感想も、かなり熟成期間は短かったものではあったのですけれど、しか
 し熟成期間そのものは短いながらも確かに存在し、そして私はその短期的瞬間的な熟成を如何に「自
 分」の中で深め広げ、またその短期的瞬間的だからこそできる、その生に近い重みを書いたものに感じ
 ることが出来たならばと思っていました。
 
 しかしまなストなどの感想では、そういったものとは一線を画し、ただもうなにも考えずに書いて、書いたら
 書いたでまた書いて、その連続なのでした。
 とにかく、書きたかった。
 正直、まなストや京空などで、一本きっちりとした「感想」を仕上げる自信はありませんでした。
 ゆえに、以前もARIAなどのときに書いた、フランクな感じの文章を気分が乗った回のみに書くという方向
 でやっていこうと思っていました。
 けれど、ただ最初からそういった方向ではまた途中で書くのをやめてしまうだろうというのも予見できていて
 、それゆえにとにかく無理はしないけれど取り敢えず続けていくことに努力する、というスタンスでいくことに
 したのです。
 そして、その努力を維持し続けた結果、最終回を以てなんとはなしにすっきりと今までのお話に一本を
 筋を通してまとめることができたという感触を得ることができ、我ながらちょっと驚いていたりもします。
 まさに瓢箪から駒なのですけれど、これはまたひとつの新しい私の「感想」のスタイルとしての確立を続け
 ていって見てもよいのではないかと、そう思えてしまいました。
 アニメ感想を書く際に当たり、私はいつもそのアニメの感想を書くに最も相応しいスタイルを選んでいます
 。
 それはたんにそのアニメに相応しいかどうかでは無く、そのアニメを見ての感想を書く自分こそが、一体
 どのスタイルでなら思い切り良くそれを書き続けることができるか、という観点からも選べるものであると、
 このたび私は学んだのです。
 だから、私にとっての「感想」の本義というものはあるにはあれど、それはいくつかの意味という選択肢の
 うちのひとつにしか過ぎなく、あくまでスタンダードとしての意味しか無いと、今はその執筆形態にまつわる
 事柄がすっきりと自分の中で収められています。
 
 
 さて、では各作品について改めて触れてみます。
 京四郎の空、略して京空ですけれど、あの作品は当初は感想を書けるとはまるで思っていませんでした
 。
 その上、面白いか面白く無いかで言えば、やや面白くないという方に傾いていたのです。
 けれど、話数を重ねるに連れ、この作品を評価しようという私の中の素の中の感覚は薄れていき、逆に
 その評価するという外からの圧力とその力への作品側の反発力を以て感想を綴っていくことの儚さを想
 うようになってき、それでもなんとかそれなりに形ある私の「感想」の本義に忠実なやり方を通そうとして、
 ただ無闇にキャラ達の言葉に隠喩と飛躍とそれらの再構成を以て感想を綴ろうとし、そしてその果てには
 っきりと感想断念の未来が見え始めてきたところで、ようやくすっぱりとその行為のすべてを止すことに至っ
 たのです。
 よし、やめた。そして、ならば、全力です。
 隠喩でも飛躍でもその再構成でもいい、けれどそれで強引に文章を収束することに拘ること無く、ただ
 それをそのときに感じた瞬間的なもののうちのひとつとして数え、またそれをひとつの要素として、その他に
 既に感じていた沢山の感情をそれと並列させて書き綴っていけばよい、と。
 もし私にこのときの転換が無ければ、この作品の感想を書き続けることはできなかったでしょうし、また
 まなストの感想もまた、書けることは無かったかもしれません。
 さらに話数を重ねていくに連れ、言葉と感情がない交ぜになればなるほど、それはよりその定型への指
 行性を失い、さらにさらに様々な要素へと手を伸ばしてはその手を引っ込め、或いはそのまま掴み取り、
 そしてその不規則な連続のままに捉えていく、この「京四郎と永遠の空」の中に、私は果てしなく没入
 していくことができたのです。
 あれほど雑多でまとまりが無く感じられたのは、そもそもそれをその外側から覗き、そしてそこからしか見よ
 うとはしなかったからです。
 けれど一度すっぽりと中へ入ってしまえば、実はこの作品は無限に深い感動の予兆を私に与えてくれた
 のでした。
 すべては、最終回に向かって。
 私が延々と試行錯誤し、考え感じ引っかき回し、あーでもないこーでもないと、たぶんそのすべてが私に
 とっては真であり、そしてその積み重ねの果てにその堆積した様々なものを大崩壊させる瞬間。
 それが、最終回。
 すべては私の思い込みと妄想と、そしてそういうものとしての「感想」でしか無く、ただただ私はこの作品を
 見るというそれ自体が既にその対象の外からのアプローチでしか無いことを、その瞬間に激しく思い知り、
 けれど、そうであるからこそ、その外からの近接を以て此処に居る「私」こそが、今この目の前に在る
 「京四郎と永遠の空」という作品と果てしなく出会い続けているというこの実感こそに、本当の本当に
 飛び込むことが出来る、それこそが紛れも無い感想であり、またそれゆえに感想で無い感想などないと
 いう豊かで力強い言葉を以て、すべての私の中の堆積物をぱっとこの空の上に広げ咲かせることができ
 るのです。
 そして、最終回。
 それでも私の目の前には、私の外にそれとして確として存在してくれている、すべては私の思い込みで
 あるとその存在を以て証し続けてくれる、そしてそれゆえに私を無限に新たな思考と感情をもたらし続け
 てくれる、その絶対的な他者としての「京四郎と永遠の空」は広がってくれたのでした。
 それが、私にとっての「京四郎と永遠の空」という体験なのでした。
 
 次は、まなびストレート!、略してまなストについて。
 この作品に対しては、語り尽くしてなお舌の根が乾くことの無い、そのノンストップさを感じずにはいられな
 い、そのような私自身の体感による震えが未だに収まらないままに、ただただその素晴らしさを再確認
 し続けています。
 あの作品は当初、それこそただの萌えアニメとして、最終的にはあーはいはいと言って人知れずに視聴を
 打ちきるという、そういう幻影を見た瞬間に私に抱かせた根性のある作品でした。(笑)
 けれど、それと同時に既に意識が遠のき始めた私を、その同じ第一話の終盤で、もうお空の上まで投げ
 飛ばして目を覚まさせてもくれた、私のアニメ視聴史上稀有な凄まじさを魅せつけてくれた作品でもあっ
 たのでした。
 あんなにやられた〜という感じに徹底的に囚われた作品を、私は未だ経験していません。
 一個のアニメ作品としての造りの巧さや旨さや上手さ(笑)、ひいては完成度の高さについての論はよそ
 様の感想などにお任せするとして、私としましては、ただもうあのまっすぐGoさに惚れ惚れとするのみなの
 です。
 そしてそのすっかりやられてしまった感の惚れ惚れぶりの中で、私はひたすらこの作品に対する愛を綴り
 続けていたのです。
 確かに分析的なことも書きましたし、屁理屈も理屈も合わせましたし、けれどそれらはすべてそのまっすぐ
 Goというひとことに収束する属性を備えたものなのでした。
 つまりは、まっすぐGo!
 すべては、まっすぐGo!
 要するに、まっすぐGo!
 私が書き続けてきた感想は、すべてまっすぐGoを別の表現を以て示し続けていたようなものでもあり、ま
 た360度あらゆる入り口が頂上を目指して必死に登っていく様でもあり、そしてまたそうすることでどんどん
 とそのまっすぐGoという言葉の中身を埋めていくことでもあり、そしてそして既にそれは既存のまっすぐGoと
 いう言葉の意味を越えて突っ走るその「まっすぐGo!」そのままの私の行動そのものになっていたりもした
 のです。
 すべてをまっすぐGoので済ませられると思うからこそ、敢えてまっすぐGoを言わなくても良い。
 そして。
 言わなくても良いからこそ、なにげなくまっすぐGoと、そうその言葉自体に囚われない言葉を自然に口から
 出すことが出来るようになる。
 それだけでもう、私は嬉しくて楽しくて、もはや感想を書き続けるという指向も、そして感想を書いている
 という自意識すらも綺麗に失って、そしてさらにはその目の前に広がるまなストという作品の中に没入して
 いるという自覚も必要としないほどの、ただそのまっさらの、それでいて目一杯きらきらわくわくな今此処に
 存在して居る私のまんまで笑うことができていたのです。
 私の座右の銘は、「まっすぐGo!」。
 私は、その座右の銘に縋り付くことも、そしてその縋り付く対象を設定するという事への羞恥のあまりにそ
 の言葉を否定することも無く、ただただ掛け軸に「まっすぐGo!」と盛大に書き殴って、そしてそのまま
 やりたいことのままにまっすぐGo!するだけなのでした。
 「まっすぐGo!」と大書することは、そのやりたいこと、まっすぐGo!する内のことのひとつにしか過ぎないの
 だから。
 まっすぐGo!
 さ、みんな楽しくいきましょう♪
 
 っってあー、なんだ、その、なんか笑いながら真面目くさった話ばっかりでまなストをまとめちゃったけどさ、
 まーそれはそれで充分いいんだけど、やっぱりここまできたら私としては、ギャグアニメとしのてまなストもし
 っかりちゃっかり書きたいなーって思うんだよねー。やー、だってあれギャグとかなにげに秀逸じゃん?
 ギャグネタそのものはそんなオリジナリティというか重みとか深みは無いんだけど、やっぱりテンポというか
 リズムというか、そういうのがもう絶妙で、ほんと心得ているのなぁとふむふむと頷いて、そしてなんか真面目
 な話にもうむうむと頷いてるうちに、なんかすっとあははって上手に笑わせて貰ってるような、なんか全然
 それが嫌味じゃないっていうか、笑え笑えよっていう押しつけさも不自然さも無く、さらにはふっと笑っちゃっ
 たことにちょっと悔しいとか、だってせっかく真面目なノリなのにさ、とか、そういうのもう全然無くってさ、
 うん、笑いと完全に融合してる、っていうとなんか違うけど、なんていうか、もう真面目なお話さんが吐いて
 いるのが笑いというか、なんかまなスト自身そのものがしてる呼吸みたいな、そういう感じなんだよね。
 まなストが真面目っていうか、真面目で笑えて、ていうか真面目とか不真面目とかなんだよそれ、みたい
 なそういう感じになれて、あーいいなぁ、って、あーいいなぁ。(溜息)
 生きてる笑いって、大好き。
 だから。
 まっすぐGo! (オチてません)
 
 最後にこれは書かなくてはいけませんね。
 ひだまりスケッチ:
 最終回。
 第1話を踏み台にして、第2話でえいやっと飛んで初速で最高点に達し、以降徐々に高度を下げて、
 そして最終回で綺麗に着地、という案配。
 ちなみに、作品の面白さのお話です。
 がばっと広げたものをそのまま発展無しで畳んでしまったよおいおい、みたいな。
 どんどんつまらなくなっていった、という事もできます。
 でも、それを言うよりは私はそのストンと綺麗に着地した様を評価したい。
 元々冒険発展飛躍実験創造という感覚が大好きな私としては、こうした感じのひだまりスケッチはそれ
 だけで魂込めて見る対象では無いのです。
 でも、だからといって、このひだまりのマンネリ感が嫌いという訳では無いのです。
 好きか嫌いで言ったら、間違い無く好きです。
 だから私の基本の評価基準でいえば、ひだまりは10点くらい(100点満点)ですけれど、しかし純粋に
 あのえもいわれぬ薄いまったりぶりをゆっくりとっくり味わうことができるという点に於いては、私は90点くらい
 は差し上げたいと思います。
 キャラの造形を深めることもせず、ある段階できっちり止めてしまって、その既存の登場人物のみを使って
 延々と物語というにも寂しい30分の時間の流れを創り出したこと、これはある意味でここ最近のアニメの
 中でもなかなか珍しい事だったのじゃないかなとも思っています。
 んー、そうね。
 私的にはだから、あつーく語ることはできないけれど、素直にうんいいんじゃない?みたいな感じで頷く事
 は出来た作品でした。
 是非、続編を。(ぉ)
 
 
 
 
 ◆
 
 はっはっは、まだ続きます。
 ていうかこれから今期のアニメについての言及が始まるので、正直以下の文章は後日に改めて読んだ
 方がいいかもしれないですよ、特に時間の無い方はね。
 いやだって、かったるいよ、読むの。
 という注意書きはしましたので。
 誰も(本文を)読んで無くてもな。
 ふふふ。
 ということで、思い切り暴れさせて頂きます。
 いくよ。
 
 えーあーまー、はい、今期ね、アニメね始まったね。
 いいよ、いい、想像以上ですよ、なにげに豊作ですよ、なんだこれ。
 うん、なんか逆に困っちゃいますよね、目移りしちゃうっていうか、見る時間足りないよどうしよ。
 だってさぁ、視聴断念できる作品が少ないんだもの、だって普通に第一話面白いのばっかりっていうか、
 ほんともう贅沢な悩みです、あーこんな豊作なのって何年ぶり? って話ですよ。
 前置きはいい。書け。
 はい。
 
 んじゃ、見た順番で。
 今のとこ放送済みで前にリストした作品の中では、ひとひら以外は全部もう見ました。
 
 
 
 + +
 
 
 ハヤテの如く:
 「ネロやパトラッシュだってきっと天国で言ってます。仇を討てと。」とで笑った。
 あの頭の中での天使と悪魔がどっちが天使で悪魔なのかわからなくなる感じに笑った。
 結構面白い、それが正直な感想。
 ツンデレな狙いが明白で、その方面を中心に展開して小ネタを展開していくのだろうし、その点に関して
 はどうでもいいけど、ただ随所に魅せるギャグはその連携にギクシャクはしているもののピンとしてはなかな
 かいいセンスだったので、視聴継続予定中。予定?
 
 
 エル・カザド:
 拍  手 。
 いい、いいよ、最高だ、こんな面白かった第1話は久しぶりよ、ありがとう、ありがとう御座います(土下座)
 あ、ごめんなさい素で取り乱してしまったりして、いやまぁ、うん、こほん。
 ウイニャイマルカ!
 えー。
 うん、面白いですよね?(微笑)
 ていうか、好き、大好き、こーいうの大好き、なんていうの、ノリというかキャラというか言動というかノリとい
 うか、まさにピンポイント、ストライク、ど真ん中、萌え、ええいもうなんでもいいや、大好きです、コレ。
 あのOPからしてもう駄目で、軽っぽいダサダサがありながらしっかりきっかりキラキラと光ってて、映像的な
 OPによくあるカットを交えながら思いっきり軽いノリが伝わってきてでも全然安っぽさは無いどころか隠され
 た深みさえ感じられて、エリスがのほほんと逃げながらぽんと銃を手にしたりとか、あーなんかコレは感覚で
 すね上手くいえない、あ、歌自体もなんかそんな軽キラ(?)みたいな感じで、あーもう駄目。
 でまぁ本編ですけど、正直に言います、エリスも好きですけど、ナディはもっと好きです、大好き。
 ああいう軽さの中に瞬間よりも短く薄い哀愁みたいなのがそれでも滲み出てるのが好きっていうか、それ
 だとカテゴライズに染まりすぎてるから違くて、そういうんじゃなくて、このナディが大好きです。
 マリみての聖様とかLOVELESSの倭とか好きですけど、それはそれとしてナディが大好き。
 たぶんリアルさとか生々しさとか関係無く、一個の人間が其処に存在している肉感としての哀しみは必要
 無く、ただただ寓話的な笑いがそこには広がってて、ナディもまたその担い手にしか過ぎなくて。
 だからナディという存在そのものがどうこうよりも、ナディの存在が魅せるその言動そのものが笑えて楽しい
 し、そして確かにそこにナディという存在もあるからこそ、その一個の人間としての哀しみも存在し、けれど
 彼女にとってはその哀しみが本質ゆえにその哀しみに囚われること自体は本質では無く、ゆえにあの彼女
 の、ナディのカラっとした陽気な笑いっぷりはなによりも太陽みたいにカッコよくてさ。うん、大好き。(笑顔)
 それはあの作品の全体にも通底しているもので、あのエスニックというかメキシカン的な諦観がありながら
 もその中で燦々と陽気に輝いていく永遠さみたいな、そういうのがどどーんと広がってて。
 そしてあの雑然と暗闇を横たえながらどこか芯のところで爽快に晴れ渡っている世界の中で、あのエリスの
 ピンボケっていうか無礼さというか、そういうのが一瞬で相対化されてそれを許す許されないという事柄か
 ら解き放っていて。
 「こんな無愛想な大道芸はじめてみた。ある意味新しいや。」と正々堂々と近付いてきたナディに、
 むしろせっかくひとりだけくれた投げ銭に対して「これだけ? パンも買えない。」とガチでがっかりする空気
 を読まない女エリスの、この一連の言動はもう笑えて笑えて、泣けてくる。
 そう、その涙がなにによる涙なのか。
 たぶんそれが、この作品の最大の魅力。少なくとも私はそんな感じ。
 笑えて哀しくて、哀しくて笑えて、だから楽しい哀しさが此処にある。
 そして全部が豊かに受け入れられ、そしてその受け入れた境地からしっかりナディとエリスは出会っていく。
 話の造形というかタイプとしては、ほんとによくある形なのだけれど、この第一話は既にその形骸を脱ぎ去
 り、ただまっすぐにその生の中を迷走している物語。
 ナディの表情を見てくださいな。
 エリスの仕草を見てくださいな。
 かなり、手が込んでる作りになってますよ、というか意味を込めまくって、その意味がしっかり寓話的に生き
 て動いてナディとエリスと名乗って、そしてその名を口にするふたりの人間の存在感が滲み出てくる様が
 ね、もうね、いいですよ。
 声の演技もいいですよね〜、ナディもエリスもほんといいですよ、うんうん。
 あと物語の方もね、なんか行き当たりばったり感がすごくて、なんだかものすごくあの大地の上ではその
 感じが似合ってて、ナディなんかほんとそれに溶け込んでて、自由自在っていうか、まぁなんとかなるよね、
 とか、たぶんどんなに切実な言葉を吐いても全部その感覚に収束されるというか、おばあちゃんと話てる
 ときの、数奇な運命送るよって言われてもう充分送ってるって言ったときのナディの表情とかおって感じで、
 でもそれよりもその後のえーいやだよー感じのアホっぽい軽い嫌がり方とか、それは冗談で言ってるんだけ
 ど、でも本人の笑い事じゃなくてって台詞のときの顔がそれを裏から否定してて、でもその裏からの否定
 のエネルギーそのものがその表にある笑顔をその土台からしっかり支えてて、だからナディは幸せにしてよ〜
 〜とか本気で冗談を言ってるんですよね。本気の冗談、うんうん。
 ぱぁーっとさ、こう、ぱぁーっと。 byナディさん
 あーうん、なんか書き終わる気配無いね、ていうかエルカザドの感想どうしよって、なんか一個の独立した
 感想として書くとしても、普通のかツッコミのかにするのとか、いやいやそれ以前に前期のまなストみたいな
 感想にするべきかもとか、あーあーあー、頭大混乱です、あーあーあー。
 おーおー、いい格好ー。 byナディさん
 
 
 キスダム:
 無い。
 
 
 CLAYMORE:
 グロっ。ていうかグロっ。放送コードとかそろそろ本格的にそのラインを知りたくなってきた今日この頃。
 首は飛ぶわ腕は飛ぶわお腹貫通するわ死体はどばーってなってるわ死ぬわ殺すわ血がどばーって。
 うーん、いいね。(危険)
 まぁ冗談は半分置いといて、見た感じはまんま女ベルセルクで設定的には女ヴァンパイアハンターD。
 特に目新しいものは無いけど、スプラッタなシーンがちょっと黒くて紅くて結構怖いので、なんだか無性に
 臨場感がすごい。いや臨場感てあんた。
 妖魔と人間の半人半妖のあのクレアの、その作品内で語られている怖さというのは全然わかんないん
 だけど(ていうかあの村長さんがビビった理由がわからない)、でもたぶんあれってきっと見れば見るほど
 怖くなってくるかもしれない。
 や、見た感じに異様に強くてちょっと妖魔っぽく変化することがあるだけで、その怖さを強調されてもたぶん
 駄目で、だからあのただ目を見ただけで震えがった村長さんが感じたあの恐怖自体にこそ、たぶんほんとに
 得る価値のある怖さがあるっていうか、要するに、怖いのは残虐な行為そのもので無く、それを行っている
 者の魅せるその存在自体の怖さというか、たぶんそれは見れば見るほど私の中で深まるかもしれないって
 、というかそういう方向で期待はしています。
 このまま普通に物語をやられても、それはたぶん普通に普通な感想しか持てないだろうし。
 だってあれ、ほんとよくある感じなだけだもんね。
 
 
 神曲奏界ポリフォニカ:
 これは・・・・・想像以上だ・・・・(ぉ)
 いやいい意味でですよ、勿論。
 もーちょっとこう、萌えぎっしりで終わりというか、あ、実際萌えに満ちてるんですけど、それで感じる頭痛
 なんか割と素で乗り越えられるみたいな、要するに、面白いなって。
 面白いと感じた点は2つ。
 ひとつはファンタジーとして面白いなって。
 作者が同じのすてプリもファンタジーだったけど、それはファンタジーとしての面白さでは無く、ただその中で
 語られ描かれている事柄に興味があったりで、おそらく純粋にファンタジーとしての面白さを感じてみたく
 なったのは、この作品が初めてなんです。
 言い方ヘンですけれど、設定が地に足が着いてるというか、設定が先走ってる感が無く、またただその
 設定を必死に創り上げていこうという別方向なエネルギー臭さも無く、なんていうかもう、既に当たり前な
 ものとしてずらっと並列しているというか、すごく自然というか、だからなんていうか、お、っていうか、まぁ、
 その辺りは感覚です、感覚。(説明放棄)
 そしてもうひとつは、言葉。
 うん、あの契約のときの台詞とか、なんか思想的に面白いし、それになにより、失われたものがあってでも
 それでもそれを取り戻せると思えるのなら取り戻したらいいじゃない、みたいなのがこうね、ぐっときた。
 亡くなったおばあちゃんの記憶が薄れ始めてることを悲しい事だけれど、それでもおばあちゃんの事を覚え
 ていたいと、そしてそのために頑張ってみることは決しておかしい事じゃない、って、うん、ほーって。
 ちょっと目から鱗が落ちました。なーるほど、なるほど、それはいいな。
 過去の記憶や思い出に囚われることへの罪悪感よりも、その記憶や思い出の中に懸命に生きること自
 体はすごく大事なことだし、逆にいえばそうして生きている事を自覚できるという主体性がある事に比べ
 れば、ただ頭を振って歯を食いしばって過去を忘れ過去から抜け出そうと逃げだそうとする事は、たぶん
 あんまり意味があることじゃ無いよね。
 本気で過去に囚われて、そして薄れていく記憶を懸命に補修して、そうして活き活きとしている自分を
 感じれば、やがてきっとそうした記憶の海の暖かさそのものが、その外に広がる真っ青な空へも飛んでい
 きたいって思わせてくれるのじゃないかな。
 おばあちゃんの思い出が大事だからこそ、おばあちゃんが今でも大好きだからこそ、その気持ちを元にして
 、今を楽しく生きていくことができるのじゃないかな。
 思い出の品を大事にすることはだから大切な事だと思うし、だからむしろその品を壊すことで前に進む事が
 できるのも、結局胸にその品を抱いてその愛で前へ進める事と、それはその品に対する想いを頼りとして
 いる点では見事に同じ。
 うーん、こういう作品こそ感想を書いてみたいなー。
 この作品の考え方を中心にしてどう読み解きそして新しいものを作り出せるのか、みたいにしてね。
 ・・・・・が、その一歩を踏み出す勇気が・・・・・・え・・・だって萌え強いしとか・・・・・(囚われてる)
 
 
 桃華月憚:
 ・・・・・・えと・・・・・・・・わかんにゃい・・・(素)
 なんかエロいとかは別にいいんだけど、わかんにゃい。
 なんか絵とか綺麗だし演出とかも凝ってるけど、わかんにゃい。
 なにがって、ストーリーが。あああ、私の頭の悪さをまずなんとかしてください。
 あと誰が誰で名前がどうとか、ああもう、知るかそんなこと!(まぁ落ち着け)
 たぶんもしこれが本だったら投げ捨ててるね、そしてすごすごと拾いに言って埃払ったりしてあげてるね。
 ぶっちゃけ面白そうな要素は散見してるんだけど、それを全然自分の中で統一できないっていうか、
 どうやったら楽しめるかっていうか、美味しい料理を前にしてどうやってそれを食べればいいのかとか、んな
 の手づかみで丸かじりしちゃえって思えば思うほど、なんかそれってはしたないじゃない? みたいな、こう、
 なんか大事にいきたいなみたいなね、そんなことばっかりやってるから30分終わっちゃったじゃないかー!
 ・・・・どーしよ。(切実)
 ていうか私の頭の悪さどーしよ。(言葉も無い)
 
 
 鋼鉄三国志:
 ちょw
 
 
 
 
 
 
 以上です。
 お疲れさまでした。
 あー、感想どーしよ。
 今のとこ確実に一本の感想としてきっちりまとめる従来のタイプのものは無いんですけど、ただエル・カザド
 は書いたとおりマドラックスのときみたくなツッコミ感想ではいけそう。
 うーん。
 あとポリフォニカは確実に前期のまなストのような感じで書くと思います。
 エル・カザドもそういう感じにしよーかなー無難な線で。
 うーん。
 あとまだ見てない作品の中では、ひとひらと怪物王女とロミオ×ジュリエットが有力候補ですけど、これば
 っかりは見てからじゃないと、いやだって今期の豊作ぶりを目の当たりにしたら、簡単には言えませんし。
 そんなとこでしょうか。
 終わり。
 
 またね。
 
 
 

 

-- 070403-                    

 

         

                                 ■■人の輪の地獄■■

     
 
 
 
 
 『あのねぇ! あなたの地獄通信のせいで、疑われ傷つく人がいるのよ。すぐにやめなさい!』
 
 『・・・・・それは・・・私が決めることじゃない・・』
 

                      〜地獄少女 二籠 ・第二十四話・蛍と閻魔あいの会話より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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 どうしようも、ないよ。
 僕はなにもやってないのに、ただ僕はなにもやってないというしかないんだから。
 どうして僕、そう言うことしかできないのかな。
 どうしてみんな、僕にそうとしか言わせないのかな。
 みんな、僕の事嫌いなんだ。
 ううん、嫌いとか嫌いじゃないとかそういう事じゃなくて、この社会は、この国は、人間ってそういうものなん
 だよ。
 みんな、辛いことや嫌なことがあったら、すぐに目の前の一番楽な事によく考えもせずに浸かっちゃうんだ。
 僕が悪魔の子だって?
 なにを馬鹿なことを、いい年した大人達までなに言ってるんだって、そう思っていたけど、ほんとはそんな事
 は関係無かったんだ。
 悪魔の子なんて信じてようが信じていまいが関係ない。
 だって、目の前に苦しいことや辛いことや、そして恨めしいことは確かにあるんだから。
 みんな悪魔の子なんて今時子供だって言わないような馬鹿なことを、それをそうとわかった上で利用して
 るだけなんだ。
 みんな、馬鹿なことを大真面目にいえば、それで何でも済まされる状況になってる事に気づいているから
 、だからみんなは悪魔の子だって僕を指差ししながら、思う存分自分の欲望に忠実になってることができ
 るんだ。
 うん、だからね、結構な数の人がもう、実際に悪魔の存在を信じ始めてるんだろうね。
 欲望に忠実になればなるほど、どうすればよりそれに忠実になれるかを考えれば、おのずと悪魔の子の
 存在に、悪魔の子という言葉に実感を覚えていくんだよ。
 悪魔の子は、ほんとにいるんだよ、目の前に。
 それをなによりも、自分の中の苦しみや怨みが証してくれる。
 
 だから、悪魔の子なんてただの道具でしか無かったのに、いつしかそれが魂になっちゃってるんだよね。
 
 僕の事を悪魔の子と罵ることで、みんなはみんなで居られるんだ。
 僕の事を悪魔の子と指指すことで、みんなは安心して居られるんだ。
 みんなみんな、僕が悪い、から。
 そして。
 みんな、自分達がしたくてもしてはいけないと思っていた事を、それをしても良い口実を僕の姿に見つけ
 るんだ。
 僕が、悪魔の子だから。
 悪いことをやったのは、全部悪魔なんだ。
 みんなみんな、僕のせいにしてしまえ。
 だから、自分だけのことを考えられる。
 だから、自分だけのことしか考えない自分を許せてしまうし、それが当然だと言うこともできてしまう。
 他人を蹴落として、自分だけが生き残り、そうして踏み潰してきた人達へ贈る言葉は、そうしてほかの
 人達を踏み潰してきた自分へ贈る言葉と同じなんだ。
 私は、俺は、悪くない。悪いのは悪魔なんだ。
 悪いのは、悪魔しかいないこの世界なんだ。
 馬鹿だよね。
 いい年した大人が、こんなことばっかり平気で言ってるんだもん。
 馬鹿だよね。
 誰なんだろうね、最初に悪魔の子なんて言葉を使ったのは。
 誰なんだろうね、それをいつまでも平気で使ってるのは。
 そして・・
 
 誰なんだろうね、その言葉にいつまでも無抵抗なまま甘んじているのは。
 
 僕は耳を塞いで蹲りながら、僅かに開けたその指の間から響く言葉に震えていた。
 僕は、悪魔の子なんかじゃない。
 そう、呟き続けていた。
 でも。
 それ以外の言葉を、僕が述べたことは無かった。
 僕はただずっと、悪魔の子と言う言葉にかじり付いていただけだったんだ。
 その言葉が僕に向けられていれば、僕はその言葉に反発することができそして、反発さえしていてば良
 かったのだから。
 僕は、悪魔の子なんかじゃない。
 
 じゃあ、僕は、なんなの?
 
 僕は、その問いに答えようと必死になっていた。
 僕は誰なんだろう。
 うん。
 馬鹿だよね。
 その問い自体も、既に悪魔の子という言葉によって無理矢理引き出した僕の言葉にしか過ぎ無いのに。
 僕は僕だ。
 だから初めから、その問いに答える必要なんか無かった。
 僕は僕を言い表す必要なんか無かった。
 僕は僕だ。
 そして、だから。
 その僕は僕だというのも、無限にただその言葉としての意味しか無く、そしてその言葉を口にしている限り
 、僕は僕ですら無くなってしまうんだ。
 だから僕は、なにも言わない。
 僕はただ、自分の思う通りに生きるだけだった。
 僕は、なにを思う?
 僕は、どう生きたい?
 その問いだけに、意味があった。
 そして。
 
 その答えは、あまりにも明白だったんだ、僕にとっては。
 
 僕は、死にたくない。
 僕は、生きたい。
 でも。
 死なないために、生きるために、悪魔の子になることは絶対にしない。
 そして、だから。
 僕は。
 悪魔の子、という言葉を、町の人達から消し去りたい。
 無理? 無理かもね。
 でも、少しでも、少しずつでも、僕はその言葉を僕に投げつけなくても済むような、そういう平和な生活を
 、この町の中に取り戻したいんだ。
 今すぐになんて、無理だよ。
 そして、僕が生きているうちにですら無理かもしれない。
 でも。
  僕はその不可能という「言葉」を理由にして、自分から悪魔の子を名乗ることは絶対にしない。
 僕は絶対に悪魔の子にはならない。
 世界中の人たちが僕のことを悪魔の子と言おうと、僕は絶対にそれに屈して悪魔の子になることは無い。
 絶対だよ。
 僕は僕なりに、今この町で起きていることを見極めたいって思う。
 そして、僕にできる限りを以て、この町の生活を元に戻していきたいって思う。
 僕は、負けない。
 悪魔の子、という言葉に、絶対に、絶対に。
 僕は、絶対に、もう、地獄通信にアクセスしたりなんか、しないよ。
 それなら、今の僕にもできることだと思うから。
 そして、だから。
 それだけで終わってしまったら同じだって事を、なによりも大事なこととして、僕は僕として生きていく。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 どんなに、辛いことが・・・・・あっても・・・・・・・・・・・・・なくっても
 
 
 
 
 
 
 
 
                                ◆ 『』内文章、アニメ「地獄少女」より引用 ◆
 
 

 

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