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◆◆◆ -- 2007年5月のお話 -- ◆◆◆

 

-- 070527--                    

 

         

                        ■■去り往く姫の背はただ冷たく熱く■■

     
 
 
 
 
 『僕の・・・主、か。』
 

                            〜怪物王女 ・第七話・ヒロの言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 ◆
 
 一週間楽しみに待っていたのにこれはちょっとという感じでガッカリ。
 もう少しなんとかならなかったのかと文句たらたらです。
 要は姫から与えられた命の炎の効力が切れてヒロは死んでしまい、そして搬送された先の病院が第一
 話でヒロが死んだとき収容されおまけに生き返って脱走したところであり、院長以下そのヒロを研究対象
 にしようとして病院に閉じ込めようとし、それを姫達が救出するお話、なのですよね
 当初、院長らの振る舞いはあまりに常軌を逸している以前にアホ過ぎであり、なにこれとぽかんと見てい
 たところ、実は姫の血を狙う令裡とは別の吸血鬼が操っていたのであって、なーんだと思ったのですけれ
 ど、でも逆にだからなんだという感じでもあって。
 いや操られてるとか操られてないとか、そういう事に関係無く、あの院長達の描写はアホ過ぎるのですよ、
 つまり作品としてあまりにも意味が無さ過ぎるというか。
 そもそもあれをまるまる一話使ってやるような展開でも無いですし、完全にあの吸血鬼の陰謀というより
 も、あの滑稽な院長以下の振る舞いが主になっていて、まさに見るも無惨な有様だったのではと。
 別に普通に狂ってる様、みたいな感じにすれば良いのに、なんか無意味に漫画的にしちゃって、しかも
 なんだか狙ってやってるとしか思えない(狙いそのものの意図はまるでわからない)ほどに、その漫画的仕
 草が無意味であり下世話でもあり、というかぶっちゃけ低レベル過ぎて笑うことすらもできずにただ呆然と、
 ただそういう感じなのでした。
 
 うん、ただね。
 あの院長以下の在り方は無茶苦茶違和感ありまくりだったのですけれど。
 でもなぜか姫以下の他の面々の描写に於いてはその限りで無く、むしろいつも通りの感じであり、だから
 こそ院長以下との組み合わせに違和感を禁じ得ないのですけれど、それゆえに純粋にあの院長以下の
 痴態そのものをカッコで括ってひとまとめにしてしまい、吸血鬼に操られた「結果」としてだけ受け取れば、
 その様がどれだけ作品的に不自然な描写だったとしても、それはそれで収納可能なことだったりもする。
 つまり、怪物王女をひとつのスタイルでのみ受容可能なものにすることを選ばなければ、あれはあれで
 違和感を禁じ得なくても、それをただの「趣味」の問題の範囲に収めてしまうこともできる。
 そういう意味では、あのシーン、として捉えるのでは無く、吸血鬼があの院長達だけで無く、その描写を
 も含むものを支配して魅せた、として捉えることも可能だったりするのですね。
 もっとも、それであっても、一話まるまる使ってやるほどのものでは無かった、という点に於いては、間違い
 無くマイナスの評価をせざるを得ませんけれどもね。
 おまけに、あの新キャラの吸血鬼ツェペルの登場もあまり魅力あるものとしては顕れてきませんでしたし
 (立ち位置が違うので一概には言えないけれど、少なくともリザや令裡と比べて薄すぎる)。
 
 また、今回はヒロが囚われ、姫がそれを救出するという点により、ヒロ視点に於いてその主従の関係が
 画面の中で意識されていくのですけれど、それは確かにある程度成功してはいれど、明らかに不完全
 な形で収束してしまっているがゆえに、逆にそれ以上の発展の可能性を明確に奪ってしまってもいる。
 今回の話では、ヒロが生きていられるのは姫がいるからである、というただその姫の「存在」そのものだけ
 が取り出されて強調され、またそうして無機質に、或いは独りよがり的にその事実をヒロのみが抱き締め
 噛み締めて終了、ということであったため、かえって姫とヒロの内面的関係性は消去され(といってもそも
 そもそんな関係を築く入り口にすら到達していないけど)、どうみても、というよりむしろ笑うところとして、
 その姫にとっては存在を忘れられるほどに希薄な、そのヒロの姫にとっての道具としての「家来」の姿だけ
 が、姫の後ろ姿を通してズンズンと伝わってきていました。
 姫にとっては、メンテナンスの必要な自分の持ち物を回収しにいっただけにしか過ぎず、無論照れ隠しで
 もなんでも無い、その本質的な意味でリザのヒロに対する心配とは異なる、そのあくまで「道具が動かな
 くなってはそれなりに困る」というスタンスからの考慮だけしか、最終的には、というより最初からあの画面
 の中には残っていませんでした。
 リザにヒロの不在を指摘され、『お、それだ。すっかり失念していた。』という姫の口調からは、完全にそれ
 しか見えてこない辺り、それが見所であり魅力であるのは、むしろ言わずもがなのことですけれど。
 
 またその観点から、姫がヒロをそれならなぜ家来にしたのか、という原点を取り出すことができます。
 姫はそれをただ「私は慈悲深いからだ。」と一蹴して自分の中にそれを収めてしまっています。
 姫にとっては、ヒロは立場上自分の身代わりに死んだ命の恩人であるけれど、しかしそんなことを頼んだ
 覚えが無い以上そのヒロの死は姫にとっては関係の無い代物であり、それゆえ無視しても良いもので
 ある姫の中では説明がついていたのにも関わらず、姫はヒロに命の炎を与え家来として生き返らせた。
 姫は無論前者の命の恩人に報いるために生き返らせた、という理屈を一切採用しておらず、またそれは
 おそらく真実姫の内面に於いても発生し得ぬ理屈なのでしょう。
 それなのに、姫はヒロを生き返らせた。
 不思議だ。
 姫はその不可解な自分の行動を冷徹に見つめ、しかしそれと同時に自分の中には、今まで自分が未だ
 意識したことの無い理論があることを感知し、それゆえ不思議だというその存在の否定としての受容を
 行わずに、ただ便宜的に「私は慈悲深いからだ。」という大嘘の言葉を込めて「未分類」の棚にそれを
 堂々と収容してしまうのですね。
 姫はなぜヒロを助け家来にしたのか、それは姫の本質が慈悲でできているから。
 ゆえに意識している理論に当て嵌まらないのに存在している事柄は、すべてその本質たる慈悲の心に
 より引き起こされているのだ、とそういう風に言っているのです。
 当然、自分の本質が慈悲で出来ているなんて毛ほども姫は思っていないからこそなのですけれど。(笑)
 そしてそういった事を、姫はすべてきっちりとその自分の中の棚に収納していて、それゆえにヒロとの間に
 どんなに主従関係を意識させるイベントが発生しても、まるで静かな水面を滑るようにして、さらっとその
 ままいつもと変わらずに通り抜けていってしまうのです。
 確かに姫は不可解な行動を取りヒロを助けたりしたけれど、だからといってそのことに拘ることなど全く無く、
 さっさとその家来として目の前に居るヒロを当たり前のようにして道具的に扱い、いや違うのか、ヒロとのそ
 の不可解な始まりがあって、それに拘るからこそ内面的関係性が発生し、それが培われていくゆえに
 主従関係が出てくるのであって、だから拘らなかった姫にとってはあくまでそのヒロとの主従関係は発生し
 ないのか、そうか。 (書いているうちに思考が進んだw)
 
 それはつまり、姫がその自身の中にある、不可解な理屈を理解しようとしない限り、姫とヒロとの主従関
 係がふたりの間に発生する事は無く、また姫はおそらくその理解を必要としてはいないのでしょう。
 わからないものはわからないままでも良い。それでもそれが在るのならそれはそれとして受け入れよう。
 姫はヒロの考えなど知らなくてもヒロと付き合うことができるし、無論ヒロの考えを知ることもまたできる。
 つまり、ヒロの考えや理屈を理解するということが、そのヒロと付き合う上での絶対条件にはならない、とい
 う姫の融通性を表すものでもあり、だからこそ自由な立場で改めてヒロの考えや理屈も理解していくこと
 ができるのでしょうね。
 もっとも、そうした切実なヒロの理解をヒロとの関係を成すための絶対条件としなければ、いわゆる感情の
 籠もった情熱的なヒロへの接近、つまりそのヒロを理解したいという熱いぬくもりのある行為には、それは
 ならないんですよね。
 それが姫のヒロに対する道具的な扱いに表れているのであり、人間的付き合いが発生してないのです
 よね。
 まぁもっとわかりやすくいえば、ヒロと仲良くなりたいと思うゆえにそのためにもヒロのことを知って理解したい
 と思う訳であり、そもそもヒロと仲良くなりたいなどと毛ほども思っていない姫は、初めからヒロを「使う」ため
 に必要な「知識」としてヒロの考えや理屈を理解していくだけなのですよね。
 そしてそれは、ヒロの自主性を、この上も無く保障していることにもなる。
 というよりも、たとえヒロの考えや理屈を姫が理解していたとしても、ヒロはそれをあてにして姫に縋ることな
 ど出来ずに、ただその自分を良く知っている姫の前で、自分を生きていかなくてはならないのですね。
 今回のラストで、ヒロは姫の後ろ姿に、その自分の主の姿を見、そうしてそれを見ている自分の意識が
 家来の安堵と自覚をもたらしていくのを感じていく。
 その安堵は姫への依存の発露であり、そしてその自覚は「あの」姫の家来であることの厳しさの認識で
 あったりするのでしょう。
 姫の後ろ姿に、なんだかんだと冷たいことを言いつつも、自分を助けにきてくれた優しさを感じ、しかしそ
 れと同時にその姫の後ろ姿には、それらのヒロが抱いた幻想をうち砕く力があることを感じてもしまう。
 仮に優しさがその姫の背中にあったとしても、それが自分を救ってくれるとは限らず、むしろそれは優しさな
 んかじゃなくて、残酷な内的叱咤を想起させるべきものなのではないか、と。
 ヒロは現段階的では、姫をツンデレ的(笑)な優しい人と捉え、それで満足しようとしていますけれど、で
 もそれってすごく情けなくてみっともなくてその上卑怯で、そもそもそれって姫の自主性を無視してるのじゃ
 無いかと、きっとどの段階かでヒロは思うようになるのじゃないかなぁ。
 そうしなくちゃそもそもその姫の後ろ姿の前のヒロの自主性さえ、描かれること無く終わる気がしますね。
 ヒロは姫に甘えることが出来るけど、姫はその存在を以てそれを全力ではねつけるその姿を見せてくれ
 るからこそ、ヒロはその姿の意味にこそ甘え、強く主体的に生きられる。
 自分が気持ちよくなるために姫の「家来」になるのか、それとも家来として生きるために気持ち良さをそれ
 でも姫の後ろ姿に感じていくのか。
 うーん、面白くなってきた。
 
 
 
 
 一週間後に、またお会いしましょう。 (冷静に)
 
 
 
 
 
                                ◆ 『』内文章、アニメ「怪物王女」より引用 ◆
 

 

-- 070525--                    

 

         

                           ■■ほれたはれたもすきのうち■■

     
 
 
 
 
 特になし。 (挨拶)
 
 
 前置きを考えているうちに時間が無くなってしまったので、ちゃっちゃと書かせて頂きます。
 先週に、来週こそは好きなキャラベスト5を選んで書くぞと言って、それを不覚にも忘れるのを忘れてしま
 っていたために、仕方ない、いちいちネタ考えなくて済むし経済的かな、とか思って素直にそれを書くこと
 にしましたことを、此処にご報告申し上げます。
 んじゃ、早速。あんまり深く考えないで。見ないで。
 
 
 ◆
 
 
 第1位: 姫 <怪物王女より>
 文句無しでぶっちぎり。 これ以上無い人選。いや人外。いや姫。ええとなんかお話する気力も沸かない
 ほどに位負けしてますので、その、もういいです。姫万歳。
 
 第2位: 黒(ヘイ) <DakerthanBLACKより>
 冷酷に仕事をこなす謎の契約者・黒、しかしてその正体は素朴に優しい中国人留学生の李さん。
 逆という話もあるけれど気にしないし気にも留めない。
 鎖骨の辺りが美味しそうと舌なめずりされちゃうほどの好青年。ていうか普通に李さん萌え。
 ていうかあのさりげで不思議でそれでも普通な優しさ萌え。
 だがむしろだからこそ黒が良い。演技としての李さん的優しさが、しっかり黒の本質の中のその底流にも
 あるのが別の形で見えたとき、ぞくっとするほど震えちゃう。あの隈が浮かぶほどの疲弊的表情とか最高。
 やばい李さんも黒も両方いいっていうか、ふたつでひとつやね言うまでも無く。
 
 第3位: ナディ <エル・カザドより>
 ま、順当やね。暗そうな過去があっても明るくて楽しくて、っていうかそういう過去があろうがなかろうが明る
 く楽しくが普通にやってそうで、その様は真っ赤に燃え盛る太陽のようで、美しいっていうか重くって、その、
 なんていうか、いいよね。いや重さが、じゃなくてその重さに拘るでも無く、ましてやその重さを否定するた
 めだけに軽さを魅せるだけじゃないってところがね、こう、ずしっとくる自分を感じさせてくれるというか。
 
 第4位: 泉こなた <らき☆すたより>
 あの中途半端さがなにより魅力。徹底的にヲタク的にボケ倒す訳でも無く妙に普通な感じの素を晒して
 たりして、そういう隙がいいんですよねぇ、というとまた違った話になってしまうので違うと思うな。あれ?
 隙っていうか、隙が高じてなんだかだだっぴろい草原の中できゃんきゃん駆け回って疲れて寝てる子犬み
 たいな、抽象的かそれじゃ、つまりちょっと仕草が子供っぽいくせに親爺臭かったりして(抽象内容と違う)
 、あっれ、なんか上手く表現できないんですけど、これは一体どうしたことでしょう、ええと、いいか。
 中途半端でいこう。あとデバフよろが頭に染みついて離れません未だに意味知らないけど。
 
 第5位: 篠崎ミコト <OverDriveより>
 6位の人とどっちにしよか迷ったけど決められなかったので鉛筆サイコロで決めました。ほぼ同じ。
 ああいうぬけてる熱血というか、変な方向に真っ直ぐな人ってそりゃ付き合いづらいけど、でも一度付き合
 い方覚えられたらすごく楽しいし、ていうかそういうのが付き合う前に予見できるからこそ、あ、この人見て
 自分もなんか頑張らなあかんないうか、そうやっていつのまにかライバルになっちゃう関係とか自分と関係
 あっても無くても好きよ。あと必然的にこっちのツッコミスキルがあがるのもありがたい。たぶん。
 
 
 はいこんな感じでどうですか。どうでしょうねいったい。
 ベスト3まではすぐに思い付いたんだけど、あとのふたつはなかなか迷ったりしたりする辺り、なんだかあんま
 りキャラに思い入れないのかなぁ私、とか、いやでも上位3人だけに思い入れが集中しちゃってるだけじゃ
 ないの? 、とかそうやってどうでも良いこと呟いてるうちに、なんか普通に4位以下がぽろっと繋がって、
 あーこうなりますか、という感じで自分で付けた順位をしげしげと眺めたりとかしてました。
 んで、調子に乗ってそれっぽく以下に第10位までも選んでみたりして、まぁそんなところですよ。
 どうでもよいのかそうでないのか、そのあたり微妙な今夜の気分でお送りしております。
 
 
 第6位: 深澤ゆき <OverDriveより>
 第5位の人と順位の置換可能。第5位の人を見て熱くなりそな自分に悶々としてる人。おっもしろい。
 軽いけどどこかきっちりと醒めていて熱くない自分を見つめてて、でもなんかそんな熱さに拘ってる事自体
 は馬鹿馬鹿しいって思ってて、でもそれとこれとは違うだろ、今のままでいいわけないじゃん、みたいな、
 第5位の人とはまた違った形と回転数で変化に臨んでる人なんだよね。好きだねこういう人。
 
 第7位: リザ・ワイルドマン <怪物王女より>
 あの単純に深いところまで潜っていけるほどの熱さが、こう肌の上を滑るように迸っててそれが振りまかれ
 て出来てる、なんとも言えない綺麗な色気空間が堪りません。ただの熱血馬鹿は馬鹿なんだけど、そ
 の馬鹿さが魅力ってわけじゃないところが面白い。
 
 第8位: 満潮永澄 <瀬戸の花嫁より>
 久しぶりの名ツッコミ役。ボケもかなりいける。相方の猿老師と高め合いこれからも頑張ってくださいね。
 アイドルコンビの燦&ルナよりも注目してます。や、永澄を軸にしてだったら、猿くんでも燦ちゃんルナちゃん
 と絡んでも全部全開で楽しいので。いやでも燦ちゃんルナちゃん達が居るからこそ永澄くんの威力が発揮
 されるのかな。私的には瀬戸内組との死闘(笑)が死ぬほど面白かったけど、ルナ編になったらまた別方
 向にぶっ飛んでくれちゃってまぁ、ほんと良いよ君。
 
 第9位: ジュリエット <ロミオ×ジュリエットより>
 あの「できたぁ!」の笑顔に敗北したので。相方のロミオはまだまだこれからの人です。
 
 第10位: 巻き貝の巻 <瀬戸の花嫁より>
 永澄くんとのデスマッチの話では近年稀に見る爆笑を経験させて頂きましたありがと。
 あれ以来大きな活躍の場が無くてのこの順位と相成りましたが、私はいつかきっとまたあなたの活躍の
 場があると信じておりますゆえ、これからも応援させて頂きます。
 
 
 
 ・・・・。
 ・・・・え?
 特に言うことは無いですよ?
 
 
 
 ◆
 
 サッカーチャンピオンズリーグ、観ました。無論リアルタイムで観る根性はありません。
 サッカーの醍醐味、それが前半のあの緊迫した流れの奪い合いに非常に良く現れて出てきていて、
 あーサッカー好きでほんと良かった、などというピンボケな感想を述べつつ、うっとりと眺めていました。
 点数が入るのは、そうやってあらゆる局面での勝利の結果であるのであって、それはあの1点目のフリー
 キックによる得点もまたその例外では無く、あれもまたゲームの随所で鎬を削り合い、その無数の駆け引
 きとぶつかり合いの結果として現れてきたものなのでした。
 たんにピルロのキックとインザーギの飛び出しだけを観るのでなく、そういった全体的な「流れ」というのをも
 含めてみると、サッカーは途端に奥深いものを非常に良く観る者に与えてくれます。
 サッカーのプレーというのは、そのすべてが必ず繋がっていて、それはすべて積み重なっていくもの。
 そしてその積み重なったもの同士がぶつかり合い、その歴史の中に得点が生まれてくる。
 偶然なゴールなどひとつも無い、って感じですね。
 逆にいうと、そういう愉しみ方ができるからこそ、入る点数が少ない競技であるのにも関わらず、これだけ
 多くの人に長い間愉しまれてきたのだとも思っていますし。まそれはこじつけですけどねあはは。
 なんていうのかな、点が入ったから勝負が決まるのじゃなく、勝負が決まったから点が入るんだ、って、
 改めてこの試合を、特に前半戦の一見膠着状態に見える、その凄まじいやり合いを観て感じました。
 あ勿論2点目のインザーギの絶妙の飛び出しとカカのドンピシャなスルーパスも凄かったていうかすげー。
 
 うん、そんな感じで久しぶりにじっくりサッカー観戦に浸りました紅い瞳です、こんばんわ。
 
 
 
 ◆
 
 本。本借りてきました。またかよ。
 いやだってあなた、このところ読むペース滅茶苦茶はやいんだもの、まるでわんこそばだよ、はい次、みた
 いな感じで、そんなに急いでどこいくの、知らんよ、みたいな、なんだ、わっかんね。
 内容理解がどうこうよりも、本を読んでいない時間が恐ろしいのか、なにかもう本が切れたら暴れ出しそ
 うな勢いで、ああこの人きっと凄い勢いで現実逃避してるんだろうなぁ、という具合にこのところほぼ毎週
 のペースで図書館のカウンターに貸し出し限度冊数の本をばんと置いて息巻いてる人みて、受付の人
 とか思ってるんだろうなぁ、でもあそこなにげに受付の人多いからあんまり同じ人に当たってないからいいか
 ぁ、とかそんなことを考えながらいそいそと持ってきたバッグに本を詰めたりして、ほんともう、泣きたい。
 ちょ、いつからそんな紅い瞳は可哀想な、もとい本の子になったの!?
 え? 知りませんよ。
 
 今週借りてきちゃった本:
 ■ 京極夏彦 「邪魅の雫」
 ■ 平野啓一郎 「あなたが、いなかった、あなた」
 ■ 夢枕獏 「沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ一」
 ■ 酒見賢一 「陋巷に在り 儒の巻」
 ■ 小野不由美 「くらのかみ」
 
 「くらのかみ」は早くも読了。ほんと早い。
 構造的に同作者の「屍鬼」と同じタイプでちょっとがっかりして、内容もあまりこれというのも無かったのは
 ちょっと残念。つまらなくはなかったですけれどね。
 そして注目は「邪魅の雫」。京極堂シリーズ最新刊。
 これ出たの知った時点で結構日にち経ってて、慌てて図書館で予約しようとしたら、案の定とても先が
 見えないほどの予約件数に尻尾を巻いて逃げ出したり切り、意図的に存在を忘れようとしていたのに、
 今回ちょいっと棚見たら普通に置いてあんの。
 ・・・。予約件数的に、まだあるはずの無いものが、なぜここに?
 え、これ私取っちゃっていいの? なんか普通に借りちゃっていいの?
 ええ、普通に借りられました。
 あの図書館の管理PC壊れてんじゃないの、ねぇ? いいの? こんなんで。
 と、そんなことは絶対に口が裂けても受付の人には言わない、自分に正直な紅い瞳でした。
 ひゃっほー。 (小躍り)
 
 
 
 
 
 ◆
 
 
 エル・カザド:
 第8話。
 ナディさんのタコ踊りが哀れでした。
 釣りはいらない。
 LAが完全にイっちゃってたり、ローゼンバーグ氏には青空が似合わなかったり、ブルーアイズさんは食後の
 ケーキが腰回りに付いちゃってたりと、そういったネタがあるのは良いのだけれど、あまり噛み合っていないと
 いうか、せっかく考えたんだから入れておこうみたいな、なんかそんな感じで、ちょっとあれ?って思った。
 淡々としみじみなお話なのはいいけれど、それを踏まえてなにかを隠して魅せようという仕掛けの雰囲気
 があれど、思ったより大したものが隠れていなかったのが残念です。と、私は感じました。
 まずいなぁ、怪物王女の見過ぎで力尽きちゃったのかなぁ私。(溜息)
 
 
 ひとひら:
 第8話。
 あー・・・やっぱり・・
 良いところが、絵が綺麗でストーリーがまとまってて目立った欠点が少ない、というところしかない。
 つまり、面白くない。
 積極的な否定意見をぶつける箇所が無いくらいに中身が無い。
 なんというか、「言いたいこと」を昇華とか隠喩化とか、そういうのを適当にやってそのまま出してるだけ。
 ひねりが無い、というのをただその奇抜さとかストーリーラインの無さとか言う意味以上の意味で使ってしま
 いたくなるほどに、平坦かつそのまんま。発展も無し。
 なにも別の言い方に変えたり表現変えたりとか、その場でくるくる回って同じ意味のことを延々と言うという
 ことにこだわれって意味じゃ無くて、そうやって自己提出した「言いたいこと」を元にして、あんたはなにを考
 えたんじゃいなにを感じたんじゃい、っていう、そういう視聴者側の問いにまるでその画面の中で応えようと
 して無いのが問題なの。おまけに視聴者に考えさせよう感じさせようって感じも無いし。
 ま、まぁそれでも良いっていう観点からなら、それなりに楽しめる作品であることは否まないけれどね。
 これとタイプ的には同じ形式の作品にカレイドスターがあるけれど、あれこそ発展とか前進とか、もうそう
 いうもの自身を描く以上に次々とそのことの中に生きてるキャラ達の心情なり意志なりが、どんどんと進め
 深められていったりしてて、勿論それを観てるこっちもどんどんそれをまず理解して、そしてそこから自分な
 りに考え感じていってみようと思わせる、いや、思わずにはいられないパワーがありました。
 で、このひとひらには、そういうのがぜんっぜん無い。信じられないくらいに無い。
 どうして? ってこっちが訊きたいくらい。
 私的には信じられないのです、ほんとに、だって第1話のときはあんなに可能性を感じて、それに足るだけ
 の素質はあると確かに見込むことが出来て、なのにそれをほとんど発展させること無くそのまま進んじゃっ
 てて、いやまだ私これでゴールしちゃっていいなんて言ってないよ? いやまだレース中だから! 走って!
 前に進んで! ねぇお願い! みたいな感じで、呆然とスタートラインに布団布いて寝入っちゃってるこ
 の作品を見てたんです。
 
 うん、他の作品と比較って好きじゃないんだけど、思わずしちゃいました、今日に限っては確信犯違う。
 つまりね、今回のお話でもまた、私的ひとひらの見方を開発することができなかった、というその苦し紛れ
 にくだを巻いてる訳で、うん、あー、いらいらする。いらいらいらいらいr(削除)
 うん、ごめんね、ひとひら好きな人には五月蠅いかもしれないですけど、うん、なかなか難しいよ。
 うーん、なんだか観るたびにどのキャラも薄っぺらで、あ、キャラの造りが甘いというより、ひとりの人間とし
 ての魅力を感じられないというか、いやほんとはそうじゃないのよ? だって第1話みたときはちゃんと面白
 さがあるってわかったんだから、だからそれはあくまであの作中の人間達を描かれた「キャラ」としてちゃんと
 造形出来て無いだけなんだって、つまりそういうこと、本質的に造りが浅い、ということなのだって感じている
 のですよ、私は。だけどついそれでもあん中の人間に憎悪しちゃうっていうか・・・やり過ぎですねはい。
 よく、人間が良く描けてるとか描けてないとか、その人間が良く描けてると言っている人や描けていないと
 言っている人たちがそう言うのを聞くけど、んなもんあるわけない、人間は此処と其処に現実に存在して
 居る以外のものはすべて「キャラ」じゃんって私は思うし。
 だからね、ひとひらもさ、人間を描いたものとしての「キャラ」をちゃんと造って欲しいのよ。
 どんな馬鹿な人間でもどんな単純な人間でもいいよ、麦がどうしようもない子でののさんが思考停止寸
 前の頑固者だっていいよ、でも、それをただそのまま描いてどうするのよ、そのふたりの人間を見つめて、そ
 れをどうやって「キャラ」にして造り上げるか、それが大事なんじゃないの?って、思うんだよね。
 キャラの自省的客観視とかも浅いし、もっとこう考えさせたりすること一杯あるのにさ、って。
 そういう意味で、「キャラが立つ」って言葉があるけど、あれなんかもそれはそれでちゃんとその「キャラ」造
 りの一環の行為の結果だと思うし、その観点から少なくとも私はあの作品の中のキャラには全然萌え無
 いし、またつまり萌えることができるって事は、それなりにしっかりしたキャラ立ちがしてるってことだよね。
 ひとりのキャラを取り出して、それに延々となにかをひとりでに語らせることができるくらいに、色んな背景と
 かそういう思考の「余地」があるだけで、少なくとも作品側が思考しなくても、視聴者側は思考していく
 ことができる。
 つまり、わかりやすくいえば、私には麦やのの先輩を使った感想なりSSなりは書けないよ、ってこと。
 
 うん・・
 これなら一応、感情的に罵倒してるだけ、じゃないように見えるかな?
 ちゃんと冷静に、言葉を尽くして、論理的に(は微妙)、うん、ちゃんと言えたかな?
 さて。
 あとは神社の裏の森で藁人形に釘を打つだけだ、ふふh(削除)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 怪物王女が気になって仕方無いんです。 (告白)
 
 
 
 

 

-- 070521--                    

 

         

                             ■■ 黒の中の白を脱ぐ姫 ■■

     
 
 
 
 
 『 ・・・もしかして、最初から私を倒すつもりは無かったのですか? お姉様ならトリフィドは日が出ている
  間しか生きていられないことは知っていたはずです。』
 
 『ふふん。 勘違いするな。ちょっとした賭けをしていたのだ。』
 

                            〜怪物王女 ・第六話・シャーウッドと姫の会話より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 星辰の瞬きが零す幾筋の時間。
 仄明るい夜の下で撓う薄闇が、その一握のひとときを我が眼前に放っていく。
 胸の内を伝う呼気の中に、その場限りの静寂を偲ばせ座すうちに、夜は深々と更けていく。
 闇に染みる夜風の湿り気が、ただ重くこの時の流れを囲んでいる。
 月を見上げて愉しむ事に興など覚えぬが、しかし蒼白く細い月光が世を包んでいるのは感じている。
 手を翳さずともそれは体の隅々にまで響き渡る光であり、そしてそれゆえに我が手を月に翳す体を為す
 事無く済んでいる。
 私に今少し詩情などもあらば、この月夜になにをか想うこともあるのだろうか。
 くだらんな。
 実にくだらん。
 だがしかし、それはまたそれで良い。
 緩やかに椅子に凭れ、すべての力を解放し晒した我が体が感じていく、この世の広大さに比肩してある
 ほどの我が存在の膨大さと、そして昼間読んだ小説の言葉の如くに、絶大なる我が身の卑小さに涙す
 るを比べるも、また悪くない。
 嘲笑は、不要だ。
 膨大なる我が存在と、卑小なる我が身を引き比べて、ただその比較を夜の共とするのみだ。
 いくらでも言葉は諳んぜよう。
 どこまでもこの時間は埋まりはせぬだろう。
 夜毎なにをするべきかと思案するまでも無く、私の脳漿には無限に沸き出でる事共が犇めき、それが
 星の流れに導かれ夜の下へと広がっていくのだ。
 その悦楽には染まりこそすれ、無下にする必要などはあるまい。
 しかしまた、その悦楽に染まるを嗜むことにもまた、敢えて拘る必要も無かろう。
 あるがままに、しかしその夜の静寂の中に感じるものあらば、如何様にも変わってやればよいのだ。
 無論、あるがままであることを、応変することを求めるのでも無く、またなにかを求めるを否定することで
 も無いだろう。
 目的は、無い。
 ただ、過ごすのみだ。
 そう、言う必要が無いほどに。
 
 深まる夜とやがて来る朝の存在を脱ぎ捨てて。
 すべては夢の内と唱え、その具現の中に在る時間を過ごしていく。
 それで?
 どうしたいというのだ、我が妹よ。
 同盟?
 実にお前らしい発想と言い様だな。
 王の子同士で殺し合い、ひとり生き残った者が王になる戦いの中では、末の娘である私とお前が生き
 残るには手を結ぶしか無い、か。
 建前はまぁまぁ、それを否定する理由も無く、そして無論建前に同意しその建前の名の下に盟を結ぶ
 事など私には有り得無いゆえに、さっさと本音を言うのだな。
 『つまり、安穏と私の庇護下に収まるか、味方を装い寝首を掻きに来たか』、というところなのだろう?
 笑えるな。
 堂々と建前を並べ立てておきながら、そんな建前もなにも無い本音を見透かされるようでは、それは既
 に相手に支配される口実を与える盟にしかなりはしないぞ。
 まだまだだな、シャーウッドよ。
 同盟とは、対等でなければ意味が無いのだ。
 対等でなければ、それは支配と従属の関係にしかなりはしない。
 
 『まぁ、お前の思惑はどうでも良い。答えはノーだ。さっさと立ち去れ。』
 
 清冽な部屋の明かりが醜く歪む夜気の浸食を受けて揺れ動く。
 一向に晴れぬ白い靄が私と妹の間に並び、透けて見える互いの影をなぞるひとときの遊戯に幕を引く。
 お前の負けだ。
 泣き落としは見苦しいぞ、シャーウッド。
 『白々しいぞ、妹よ。』
 お前が言うそれは交渉では無い。
 お前は、私達がその存在からして敵対する者同士であるということを理解しておらぬ。
 私に甘えて庇護下に収まるなどと、私に支配してくれと言っているのと同義であるし、ましてや私の寝首
 を掻こうなどと百年早い、それは私に殺してくれと言っているようなものだ。
 私が兄達のような者であったのなら、お前は既にその存在を失っているのだぞ。
 ふふん、良かったな、お前の目の前の姉は慈悲深くて。
 そして私は悲しいぞ、愚かな妹を持ってな。
 そんな者と盟を結ぶほど、私は落ちぶれた覚えは無い。
 出直して来い、今一度な。
 どうやら、お前のお巫山戯に付き合う時間は無いが、お前と遊ぶ時間はありそうだ。
 
 シャーウッドの紅い瞳を見つめたところで、わかるのはあやつの想いのみ。
 妹の言葉をなぞったとて、わかるのはあやつの考えのみ。
 しかしこの闇の中の白に包囲されたこの時の内側では、それは燦然とその輪郭を統合し、ひとつの存在
 を私に知覚させていく。
 ふふん。
 面白い。
 受け取ったその存在を脱ぎ捨て、そのままこの夜を過ごしてやろう。
 
 
 
 + +
 
 『同盟か・・・』
 
 + +
 
 
 
 夜のページを一枚捲ると、妹の去った誰も居ない夜の一間が顕れる。
 なにを考えるべきかを考える前に、この薄いページを繰った指先がその答えを眼前に描き出す。
 光さえ溺れ落ちてきそうな程の、その夜の狭間に腰掛け、私はうっすらとその時の流れに身を委ねる。
 私と妹は、殺し合いを運命づけられた者同士。
 その「運命」という言葉を否定するに勤しむあまりに、その本質を見誤っているがゆえに、妹は語るに落ち
 た。
 運命とは否定するものでも無く、また嘆くべきものでも無い、ただそれを見つめ理解し、そしてそれを如何
 に自分にとって有益なものに変えていくかと無情に思考すべき、その対象であるものだ。
 兄妹同士が戦うのは、王を望む者が居る以上必然であるし、そしてそれでも戦いを忌避するを真に求
 めその敵対者達と盟を結びたいのならば、その相手の思惑を理解していなければ、それはまるで意味を
 為さないであろう。
 相手が王を望み戦いを欲する者であるのならば、如何様にしてその望みと欲求を叶えつつ、こちらの目
 的を達成するかを考えねばならないであろう。
 ただ自らの思う稚拙な建前的追認的現実論と理想論を唱え、それに相手をも無理矢理填め込もうと
 するのならば、それは必ず失敗するだけなのだ。
 その言葉を一息に紡ぎ繋ぎ合わせ、しばし眺めて後に添削を施す指先を一口舐め、ふと夜を想う。
 夜を想う、とはどういうことであろうか。
 これほど我が存在を意識し実感する事の無きままに、すらすらと眼前の出来事に参与していくをなんと
 取るか。
 シャーウッドなど、どうでも良い。
 無論私など、どうでも良い。
 そんなものは無くとも、必要とせずとも、事を為し事を成すことは充分可能である限り、それらは一向に
 私によりて渇望されし者共にその姿を変えることは無いのだろう。
 ならばなぜ事を為し事を成すのかだと?
 その問いもまた不要だな、フランドル。
 すべてに理由など、意味など要りはせんのだ。
 
 今、私がシャーウッドを想うことの理由と意味は、既にそれを想っている私が此処に居るという、
 ただそれだけで充分なのだ。
 
 黄金に火を付け、その内に含まれる不純物が燃えて立ち上る煙を煮染めたような、その薄い金色の
 髪をちらつかせ、シャーウッドは懸命に平静を装っている。
 言説の中身は稚拙だが、その様だけは我が妹ながらなかなか見事だと言っておこう。
 取る物も取り敢えず、幼くもそれに逼塞すること無く、姑息な強靱さを振り翳し私の元にやってきたことを
 思えば、それは同情してやるに充分なものがあるであろう。
 妹の健気とも言えるこの努力を評してやるのもまた、姉としての責務であろうか。
 つまらないことを言うな、フランドル。
 感情など、関係が無いぞ。
 私はただ、慈悲深いのだ。
 ふふん。
 わかっておろう、それくらい。
 妹の顔になにかを感じた訳でも、無論あの妹との夜のひとときの中で、我が肌が情の雨に濡れ私を引
 きずっていった訳でも無い。
 文学的主体性を以て、私は妹の事を想っている訳では無いのだ。
 下衆の勘繰りも大概にしておくのだな。
 
 だが、それで良い。
 
 我が姿と言葉に晒されて、シャーウッドはなにを思ったろうか。
 あやつのことだ、腹立たしさのあまりに、かえって冷静として痩せ我慢に必要な戦略を着々と練り始めたこ
 となのだろうな。
 ならば、私も考えねばなるまい。
 同盟とは、なにか。
 いやむしろ、シャーウッドと同盟を結ぶとは、一体どういうことになるのであろうか。
 あやつを守る必要性は、確かにあれの言う通りに戦略的見地から言って、ある程度はあるであろう。
 シャーウッドが私にお守りをさせようとも私の寝首を掻くを狙おうとも、それらを許容できる状態で以て
 望めば、現状に於いての戦力は人造人間のフランシスカ一体のみと不安ではあるが、私の戦力と大し
 て変わりはしないゆえに、それを得るのは相対的に見て悪いものでは無く、またひとりの「姫」としてのシャ
 ーウッドの名を手元に置くことができる以上、なんらかの使い道もあると言えよう。
 あの程度の王族一匹くらい扱えないようでは、私の器量にも底が見えようというもの。
 ああ、そうだ、フランドル。
 無論、そんな事は私が導き出した言葉のうちのひとつにしか過ぎない。
 シャーウッドと同盟を結ぶことは、戦略上意義があることではあるが、しかしそもそもその意義を私は特に
 求めている訳では無いのだからな。
 あやつは王族間での生存競争に於いて、それを勝ち抜き王になることが運命と思っていようが、そのよう
 な運命を背負っていると名乗り、ひたすらその名の下に王族同士殺し合いを重ねていくという現状その
 もの、それだけが運命なのだと私は思っている。
 私は王になどならなくても良いし、戦いを無くすために戦うこともまたしはしない。
 もっとも、別に自分にそう言い聞かせている訳では無いのだがな。
 そんなことはどうでも良いのだ。
 すべてに理由を必要とすることが無いのと同じに、すべてに理で鋭く決着を付ける必要もまた無いのだ。
 王になることを目指してはいないが、それは永劫目指さないという意志などでは無いし、また戦いを無く
 すために戦うことをしないのもまた、同上だ。
 そしてまた、戦略上優位なる立場を得るために動くを選ぶのもまた、それを選ばないのと同じくらいに有
 り得ることであり、つまりそれらはすべてどうでもよいことなのだ。
 それらはすべて、私にとっては本質では無い。
 いや・・・フランドル・・本質という言葉でなにかを指す必要は無いのか。
 そうだな、ならば改めて、妹との同盟について考えてみるとしよう。
 
 
 - 慎ましき清新と懐古を彩る麗しき純情の縁を舐め上げ、輝く残酷な拘りへの忠誠を脱ぎ捨てて -
 - 振り回す剣の切っ先に等しく鼓動を重ねる夜の続く内に、ただ緩やかに無様な言葉を成していく -
 
 
 我が妹を試す。
 この戦略を立案してみるのは、どうであろう。
 ふふん。
 ヒロよ、なにをそんなに慌てている。
 私は妹想いの優しい姉なのだ。
 そうだな。
 シャーウッドを、あやつが思い描く運命の罠から解き放っても何も面白くは無いが、ここはひとつあやつに
 王族としての、その実体を持った存在を教えてやろう。
 私をあの程度の建前で籠絡できると思っている浅ましさを踏み破り、絶対的なる敵としての王族の私の
 姿を魅せつけてやらねばなるまい。
 同盟か。
 答えは、イエスだ。
 そこから始めるとしよう。
 そしてそこから始めるために、同盟を結ぶ当事者は、必ず敵対者同士だということを身を以て教え込ま
 ねばならん。
 敵であるからこそ、和を結ぶ必要があり、ゆえに和を為すためにはまず互いが敵同士であることを知らなく
 てはならないのだ。
 
 ゆえに妹にはノーと答えたのだ。
 ふふん。
 私は最初からそのつもりだったのだ、フランドル。
 黙れ。
 そういうことにしておくがよい。
 我が妹を教え導く姫なる姉として、これほど相応しき仕打ちはあるまい。
 シャーウッドを敵として屠ることは簡単だが、そうすることの必然性も運命も私には無い。
 そして同様に、妹を撫育せねばならないという使命感も無い。
 私はただあるがままに振る舞っているだけだ。
 無論愉しいから妹とこうして戯れている訳でも無い。
 夜の狭間にて沈思し、その思考の余波が夜の闇に異なる色合いを添え、その時の流れを過ごしている
 、ただその一環のうちに、我が唱えし理論を片手にしているだけだ。
 そしてその微動だにしない片手に染みる言葉の群は、この夜の色彩と共に出来上がっているものなのだ。
 ならば、始めよう。
 我が妹と、同盟を結ぼうではないか。
 その決断に要した時間が、それに続く理屈の波を奏でていく。
 王族間の生存競争としての運命に囚われ、その境地からひたすら戦略的思考に身を委ねる運命を背
 負うことに私自身抗するために、私は妹を受け入れていく方策に奔ろうと、そういった言葉を片手に私は
 シャーウッドの夜空を見据えて戦うのみだ。
 そうだな、あの浅ましき幼き、そして弱き妹を守ってやるために必要な、その理由や目的を綴る必要が
 ある訳だ。
 感情など、初めから不要だ。
 ましてや妹への愛などその影すらも必要では無い。
 これは私にとっての、些細な試練なのだ。
 妹に敵対者としての自覚を与えるために、同盟にノーと言い、そして私にその敵対者の自覚があるか無
 きかに関わらず、その一個の弱者を守る意志的余裕を培わせるために、同盟にイエスと言うのだ。
 甘いシャーウッドを添削して見捨てるのは容易だが、しかしその妹に対する評価基準のままに動いてやる
 義務など私には無い。
 
 
 『交渉は決裂。つまり、私たちは敵同士。』、とシャーウッドは言い。
 
 『最初からそういう定めだ。』、と私は答えた。
 
 
 その言葉に対する責を果たさねばならない。
 無論、敵同士であるままに妹を討ち滅ぼす責などでは無く、初めから敵同士であるゆえに、私達はそも
 そもその存在からして同盟を結ぶことの出来る可能性を有した存在であり、ゆえにそれに忠実なるまま
 にその存在を抱えて和を為すために考え動いていく責務が、それだ。
 私の存在にとって妹は、既にその自覚するところがどこにあるかに関わらず、その存在自体が敵対者で
 あることは明白なのだ。
 ならば、どうしてくれようか。
 ああ、そうだ、フランドル。
 真の戦いの悦楽とは、このようなところにあるのであろうな。
 
 シャーウッドを目の前に敵対者を持つ王族の姫としての自覚ある者にして、初めてそれは私の受容可能
 な者になる。
 シャーウッドがその自覚を持たない者であっても、それを受け入れていかねばならないのはそうだが、それ
 はただ「自覚を持たない者」を受け入れるという意味では無く、ただの「シャーウッド」という存在そのもの
 を受け入れていくということであり、そのために必要なことはなにかと考える余地が残されていて当然で
 あるものだ。
 なにも無条件に受け入れる必要など無く、それはかえって妹のためにもならないという言葉を使用する
 事が出来る限り、受け入れ拒否する権利を私に与えてもくれるのであるし、そしてまた、その受け入れ
 条件に提示した内容そのものに私が囚われる必要も無く、それは全くの私の宰領に任されて然るべき
 自由な条件の選択行為なのだ。
 シャーウッドを、ただ哀れな幼き妹として、全くの無条件に受けれ入れてやるのもまた、悪くない。
 もっとも、そんな事を言えば、その傲然たる私の姿に憤怒して、あやつは頑として独り立ちするために足
 掻こうとするのだろうがな。
 交渉決裂後、真っ直ぐ敵対者として刃向かってきたシャーウッドに対して、しっかりと目には目をの対応で
 敵対者の存在を魅せてやったときも、愚かなヒロの奴が、憐れんで無条件に助太刀に入っても、それは
 お人好しめという罵りひとつで許容出来るものでしかないのだ。
 妹に相応の仕置きは必要だとは思うが、それを邪魔しようとする者を排除しようとは思わない。
 陳腐な言い草だが、それこそシャーウッドの人徳、は関係無いにしても、無類のお人好したるヒロが居合
 わせた運の巡りの良さというものなのだからな。
 ふふん。
 運命とは、そういうときに感じておくものだぞ、妹よ。
 
 
 よし、終わったな。
 
 
 
 
 
 +
 +
 
 
 
 
 『シャーウッド。私の可愛い妹。』
 
 
 
 お前が私の仕置きから生きて残れるか残れないかを賭けていた。
 率としてはどちらもさほど変わらない値に設定しておいた。
 お前が生存を勝ち取ればよし、それを私の同盟者としての資格と見なし、我が元へ誘ってやろうと思って
 いたのでな。
 そして残念だが、お前は生き残ってしまったようだ。
 ならば仕方が無いというところだ。
 お前は私に愛される資格がある。
 そして・・
 
 
 『賭けはお前の勝ちだ。いいだろう、お前の言う通り同盟を結ぼう。』
 『この戦い、お前では兄達に敵うはずも無い。どこまで生き残れるか知れぬが、やってみよう。』
 
 
 その私の言葉に抱かれたシャーウッドのぬくもりが、穏やかに安堵していくのを感じていた。
 我が幼き妹よ、お前は私が守ってやろう。
 私は嘘は吐かない。
 お前への慈しみとお前への労りの言葉が真であることを、この夜に賭けて誓おう。
 抱き締めてやろう。
 受け入れてやろう。
 賭けに勝ち、私がお前を受け入れる条件を満たしたからには、私も全霊を以て応えよう。
 だから、な、シャーウッド。
 我が妹よ。
 
 
 
 
 『お姉様・・・・優しい・・・』
 
 
 『優しくて・・・莫迦なお姉様。』
 
 
 『先ほどのお言葉、そっくりお返ししますわ。
  お姉様のように甘い御方では兄達には敵いますまい。
  仕方ありませんわ、私が言い出したことですから、同盟を結んで差し上げますわ。』
 
 
 
 私の言葉は嘘では無く、またすべてそれは真情に裏打ちされたものだった。
 現に妹を讃えたときの私の心には一点の曇りも無かったことは、もはや重ねて言うつもりも無い。
 だが、あの私の真摯な言葉と全霊の抱擁を、どのようにして受け取るかは、全くシャーウッド自身の宰領
 に任されているものだ。
 私は本気でああ言ったが、しかしその言葉の内実の意味がどうあれ、その言葉の存在自体が妹に与え
 た影響までを支配することなどできはしないし、またしたくも無い。
 私の言葉は、そして私の真情そのものもまた、侮辱としての意味を妹に与えた。
 要するに、私の条件に見合った者しか私からの愛を得られず、それゆえその与えられた愛そのものが不
 純であり、結局のところ私の抱擁と言葉はシャーウッドを奮い立たせるものになってしまったのだ。
 嬉しいぞ、妹よ。
 我が思惑を超えて、よくぞそこに辿り着いたな。
 お前が確かに私の胸の中でほっと安らかな一瞬を貪ったことを私は知っている。
 お前は確かに私の意味した抱擁と言葉を、それでもその通りに受け取ってもいたのを私は知っている。
 私はそれをただ冷然と見つめていた。
 生存率50%の賭けに、無情にも叩き落とした張本人の胸の中で安堵する妹を感じながら。
 愚かな、とは思わなかった。
 だが、甘いとは思ったぞ。
 私がお前に対してその最初に於いて如何なる温情も下してはいないことに気付かぬとは、とな。
 だが、どうやらそれは違ったようだ。
 お前はこの冷たい我が胸の中に、自らぬくもりを植え付けてもそれに耐え得る「姉」としての存在を嗅ぎ
 付け、それを大いに貪り、そしてそれを糧として再びその「姉」の向こうで傲然と笑う私に立ち向かって来
 たのだな。
 我が妹ながら、賞賛に値する。
 
 
 そして、改めて、同盟を申し出ようぞ。
 
 
 
 どうやら今度は、こちらこそがお前を愛してよい資格を得ていかなければならないようだな。
 
 
 
 
 
 
 そして夜がまたひとつ、動き出した。
 
 
 
 
 
 +
 
 黄昏の頂きで迎える夜を想う。
 胸にした弱き妹のぬくもりを鑑賞する。
 これで、私にも何者かを守る理由とやらが出来たのだな。
 難儀なことだ。
 だが、それで良い。
 いくらでも余俗なものを纏ってやろう。
 いつまでもそれを続けてやろう。
 そしてそれを脱ぎ捨てて在る、その白々しさをすら失った無の時間を過ごしていく。
 闇の中の光、黒の中の白の内に屹立する意識は結構なものだ。
 だからその意識も捨てるのだ。
 そんなものは要らん。
 ただあるがままに。
 私のあるがままとは即ち。
 
 あるがままであることとないことの、その常なる選択とその選択の放棄の中に在るのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ふふん。
 
 
 冗談だ。
 
 
 
 
 
 ◆
 
 美しさを求め美しさを纏うことなどせずとも、既に美を失ったその存在がそれである。
 ゆえに美を求める口実を得れば得るほどに、その得た口実のままに美を纏い、そしてそれを脱いでいく。
 
 あーうん。
 姫はさ、カッココいいっていうか、なんかそれでも純粋にカッコイイとか美しいとか綺麗とか、そういうのでも
 無い気がする。
 なんていうか、美しくとか綺麗とか、そういったものに真摯でなんか全然無くって、だから姫から美とかそう
 いう類の言葉は全然聞こえてこなくって、なんていうか、虎は強いのは虎だから、という感じで姫が綺麗
 でカッコイイのは姫だから、としか言いようが無いというか、むしろそれが要にあることだったりして。
 でも勿論姫がだからといって美しく飾ったりすることを怠けてるとか、そんな訳でも無く、ただそういう事に
 対する心掛け自体に拘っている素振りが無いだけというか、そういう感じ。
 今回書いてて思ったのはそういうことで、なんていうか、姫はもうなんか如何なる作為的少女的ナルシス
 ティックな美への拘りやら追求やらというものがまるで無くて、それは無論あらゆることにも言えることで、
 例えば究極であることや純粋であることを徹底的に目指すという、そういう溜息の出るような熱さが全然
 無いってこと。
 だから姫のことをカッコ良く書こうだなんて思ったが運の尽き、速攻で一度書いたもの全部消却したもの
 ね。あ、コレ実は2作目なのよ。
 姫をカッコいいとか美しいとか、そういう自分の見栄えのために言動させるなんて、それだけで重大な罪を
 犯しているような気までしてきちゃって、そしてそれは当然、ただなにも意識しないであるがままに生きてい
 る姫を見てそれを美しいと感じている私の視点で書くってことも反則に値するって感じで、八方塞がり。
 
 だったら、姫になるしか無いでしょ?
 
 姫は戦う理由とか口にしてるけど、でもそんなもん口だけでてんでそのために戦ってるようには見えないし、
 勿論姫は語ってるけど、そういうのも全部ほんとに建前にしか過ぎない。
 でも別にわかりやすく本音が容易されているかというとそうでは無く、或いは姫の本音ってやつは、そうやっ
 て建前を並べてそれとは関係無く普通に戦っている姫のその姿自体にあるんじゃないかって。
 姫ってさ、言ってること自体は正しいんだけど、全体的に見て一個一個の理屈の繋がりに整合性がある
 とはあまり思えないよね。
 現実に即応して、それに相応しい理論を瞬時に組んで読み上げて、そして次なるシーンに直面したとき
 に、またそれに見合うものを組んで読み上げてって、そしてその際に適当にその前に読み上げた理論との
 整合性をあからさまに嘘っぽく付け(人はそれを後付けという)て、ふふんとかいう。なにこの人。
 でもさ、そもそも姫がやってる事に、その純粋理論的統一なんて必要無い訳だし、その場に適した理論
 を紡ぐのも、その場限りの辻褄合わせ的方便である前に、一期一会的な、その理論付けを含めたその
 時間すべてが姫にとってのすべてである、というだけなのじゃないかなぁ。
 つまりさ、姫は自分を飾るために理論の辻褄合わせをしてる訳じゃ無い、というかそれ以前にそんな事を
 する必要が無いくらいに姫のその存在自体の辻褄は限り無く合ってるんだよね。
 今生きて直面しているこの現実の中で、一体我が存在はなにを企もうとするのか、とか冷然と見つめて、
 それですらすらと出てくる不作法な言葉達に鞭をつけ、そしてひったくって姫主体でしっかり丹念にその理
 論を造成していくっていうか、たぶんそういうのを愉しむとか、そういうことでもそれは無いんだろうなぁ。
 理論を作るとか愉しむとか美しいとか、そういうのが全部等しくその夜を過ごす道具のひとつとしてあるの
 だろうし、ほら、姫って武器の扱い上手いしすっごくカッコ良く使うじゃない? あれと同じような感覚で
 そういうの全部も使用対象にしてるんじゃないかなぁって思うのよ。ていうかあれはそういう隠喩だったり?
 
 うん、わかってると思うけど、姫は人外だから。元々ひとりの人間として見るつもりも書くつもりも無いよ?
 
 姫って、カッコイイ。
 でもあんましそういうこと言う意味は無い。
 姫は、私的解釈によればカッコつけなくてもカッコいいし、かといってカッコつけないからカッコいい訳でもな
 いし、勿論修道女的に悟ってるような枯れてるようなそういう粋がりも全く無いし、ていうか普通に俗だし。
 でもだからそれを真似してカッコ良くなろうとした時点で、なんか違うって、瞬殺で理解できちゃったりする。
 なんていうかな、完全に「姫」っていうのは「キャラ」、或いは漫画的偶像なんですよね。
 だから、その偶像としてのその信仰対象としての姫を見つめて、そこから信仰部分を抜き取って、神学的
 理解を進めていって、なんかそのカッコ良さの内実というか、うまい言葉無いですけど、そういうのがなにか
 こうぽっとわかるんじゃないかなと思う。
 無論、抜き捨てた信仰部分を拾って抱き締めて萌えることが出来るからこそ、その内実を包囲してある
 その総合的「カッコ良さ」を感じていけるのでもあろうのだけれども。
 萌えは大事よ、萌えは。(この際言いたい放題 笑)
 
 ってな感じで、今回は怪物王女体験的に非常に充実した回でした、ていうか疲れたよマジで。
 映像的部分でももうほんと見所満載で、なんかほんと上手いなぁって思ったよ。
 別に技巧的には難しいことはやってないんだけど、なんていうかもの凄く素材の扱い方が上手いというか、
 ああ、第1話のときはむしろ良くなかったのにね、なんだかどんどん上手くなってきてますよね。
 んー、演出的な魅せ方が上手い、というよりは、一個一個の意味としてのポーズの取らせ方が上手いと
 いうか、今回は無論姫とシャーウッドとの交渉シーンはもとより、戦闘シーンでのあの芝刈り機(笑)の
 振り回し方とかも、こうビシっビシっとシーンごとにメリハリ効いてて抜群でしたし。
 これまた無論、今回は台詞の選択も絶妙で、姫とシャーウッドの間で言葉を武器に斬り合う様は絶品。
 うん、話が尽きませんね。
 ていうか、疲れると真っ先に自制心が駄目になっている昨今、むしろ疲れてからが真骨頂、みたいな、
 なんだかもう、愉しくて心配で大変です。
 ということで、今夜は名残惜しけれども、これにて強制終了です。
 
 
 んじゃ、もう一回観ますか。 (素)
 
 
 
 
 
 
 
 
                                ◆ 『』内文章、アニメ「怪物王女」より引用 ◆
 
 
 

 

-- 070518--                    

 

         

                               ■■ どうしようかと迷い ■■

     
 
 
 
 
 よっこいしょういち。(挨拶)
 
 
 改めまして、ごきげんよう、紅い瞳です。
 ・・・・・。
 ええと、早速ですけれど、話題がありません。
 いやあるにはあるんですけれど、来週に回そうかと思って、え? ああ、うん、なんていうか今見てるアニメ
 のキャラの私が好きなベスト5とかキャラ別の洞察を交えて書いてみたいなとか、ええ、そんなことを考えて
 はいるのですけれど、考えているうちが華でして、実際パソを立ち上げて書こうとしましたらね、はぁ、
 お前それでいいのかと、なんかお前最近アニメハマり過ぎじゃんていうかやばいでしょ、とかそういう内なる
 余計なもとい客観心みたいなものが、ちくちくともとい切々と私に訴えてきたりして、いや、今更イメージと
 か外聞など気にして守るようなイメージなぞ無い訳なのですけど、こう、気になる。
 なんていうか、いやなんだかんだいって、まだ最後の一線上くらいには居てまだそこから一歩を踏み出して
 無いでしょとか、そういうささやかな気分があって、はい、そうなんです、だから駄目、とかいう訳ですよ。
 暇ですね。
 
 ・・・。
 
 お気に入り作品ランキング!、みたいなことやると、なんだか根強く感想書きとして死んだみたいな感覚
 があって、それだけはやっちゃいけない(っても今年初めにやっちゃったけど)、でもやりたいアニメ好きな人
 としては心の底からやりたくてしょうがなくなるときが必ずある、みたいなそういうのがあって、もうもうもう!
 妥協した。
 作品が駄目ならキャラにしません?
 OK、それで手を打とう。
 なぜだか素直にまとまりました。要は自分の中のランキングが書ければ良いらしい。
 ま、キャラなら当たり障りも無いでしょ、という幾分か願望を交えた決断をして、それで書こうとしたら、
 なんか全然駄目っていうかお前ほんとそれでいいのかとか、ええはい、私未だにアニ○イトに入るとき緊張
 して心臓バクバクいったりしてます、カマトトぶってんじゃねぇ!、はい、そんな駄目な奴ですので、なんか
 もう思い切り往復ビンタ辺りで目覚めさせて頂きたいくらいなのですけれど、いざその場面になると頭抱え
 て部屋の隅で完全防御態勢に入ったりする奴で、なんかもう、いいですか。
 
 話が本線に戻りません。どうしたら。
 という訳で、戻します。あ、戻すんだ。
 で、そんな書く勇気が持てないヘタレな私でも、今日が駄目なら来週だ、そうだ来週にしようと、そういう
 子供じみた深謀遠慮だけはできるのが自慢ですので、つまりほらこれで話が始めに戻りましたよ、好きな
 キャラランキングは来週に回すことになりまして、そして今日はそのことばっかり考えていたがゆえに話題が
 無いと、このようにすっきりまとまる訳なので御座います。やったね。
 
 
 ・・・・。
 
 
 もういいんです。私なんて。
 アニメ好き好きーって言ってりゃいいんです。
 そんでみみっちい自制心と戯れてりゃいいんです。
 そうやって、ひとりで遊んでるうちに、周りの人はみんなそれぞれのやるべきことしたいことをやって大きく
 なっていくんです。
 そして気づいたら、私だけひとり取り残されて、ほんとに駄目になるしかないんです。
 中途半端なのがいけないんです。
 ということで。
 たぶん理屈はできたと思うので。
 
 夏までは全力で怪物王女にハマります。
 
 ごめん。ちょっとすごい。
 先生ちょっと帰ってこれないかもしれない。
 正直大好きなので、止まりません。
 年季が入ってからの初めての恋というのは、始末に負えないと良く言いますよね。
 いやそこまではいってないですけど、ていうか説得力無いですけど。大好きです。
 そんな感じです。
 しばらく私も怪物です。
 なに言ってんでしょうかね、もうどうでもいいです、なるようになれ、まったりとな、あはは。
 
 
 だ、大丈夫だよね? (赤字が目立ってきた家計簿を見つめるような眼差しで)
 
 
 
 
 
 ◆
 
 
 エル・カザド:
 ずっきゅ〜ん。
 第7話。
 スピード上げた。
 そんな訳で、ナディ&エリスの珍道中引き続き。
 それにリリオがプラスで、穏やかなんだかピンボケなんだかわからないテイストで、味わいがあるとかほっと
 するとか、そういう以前になんだか体の力が抜けていく感触。
 そんなホゲホゲな中で、LAが変態としてのレベルアップを大幅にこなしたりして、動きがあったといえばこれ
 以上の無い進展があったお話でした。やっぱり変態は面白いなぁ。
 お話としてなにがやりたいのか、なんてつい監督さんの頭の中を忖度してみたくなったりするのだけれど、
 あんまりその件に関しては一向本気になることはできなくて、ある意味で良い方向に受け身万歳で愉し
 んでいる今日この頃で御座います。
 ナディさんとかエリスさんの魅力とか、もうわかったから充分だからって言ってるのに延々とそればっかり続い
 てて、そしたら今度はリリオでしょ? もうこれはどこまでそういう感覚的な愉しみが出来ていくのかっていう
 、そういう観点からこの作品は愉しんでいけますかね? っとちょっと色々腕組みしていますです。
 っていうか、リリオわかんないねー。あの笑顔が怖い。
 可愛いといえば可愛いですけれど、なんであんな意味ありげな笑い方すんのみたいな、あの子ここぞとば
 かりに変な笑い方でするでしょ? エリスの方がまだ理屈通ってる(?)笑い方してんのに、あの子はほん
 とどこで笑うかわかんないっていうか、あ、そか、だからあの子の笑いの理屈をべんきょーしなくちゃいけな
 いのか、うんそうだね。
 そこでべんきょーしないと、理解しないままでその不思議さを笑う、というまぁLAに対する変態としての笑い
 方と同じになっちゃうので、ってまぁそれはそれで楽しそうな気もするけれど、うん、それはひとまず置いて
 おこうそういうのはLAで充分だ。充分ていうか、既にはみ出てる。
 そうそう、逆にそういう風にして、距離を置いてまるっとそのまま丸飲みで受け止めてく理解っていうのも、
 たんに真っ直ぐ理屈的に解読していくより深い理解を得られるときもありますからね。
 それはリリオの理解というか、リリオから受ける印象それを含むリリオの存在の理解というか、まぁよくわか
 りません。
 少なくともナディさんエリスさんと意志疎通はしてるけど、絶対たぶん本質的には全然違う意味での、
 はいとかいいえなんだろうなぁって、まぁよくわかりません。
 
 あとLA凄すぎ。キレ過ぎ。怒らない。
 エリスが寝入ってる隙に髪を切り取って藁人形みたいなの作って、それを酒場の隅っこでうふふとなでまわ 
 してそれをからかわれて全員バラバラに虐殺(からかっていない人大いに含む)て、あなた。どうしたの。
 なにかこう、ツッコミ入れる気がここまで失せたのは久しぶりです。言葉も無い。
 主人(雇い主?)のローゼンバーグ氏もそうそうにやる気を無くして、リカルドさんにどうなってもいいから捕
 獲してこいと命じる有様。気分的には、わかります。
 それで完璧変態超人のLAさんと、シブいけど割と普通人レベルなリカルドさんのバトル全開はグッド。
 理屈の通じないというか通じさせる気も失せるような化け物ぶりなLAさんに、割と普通に戦闘してるリカル
 ドさんはカッコイイというか、気分的には熊とかライオンとかを仕留める気分なんだろうなぁとか、リカルドさん
 の戦いの普通ぶりが逆にその遣りきれないリカルドさんの雰囲気を醸し出してました。
 地獄で飲もうぜ、アミーゴ。
 リカルドさん、おつ。
 
 そして最後の「だめ?」「だーめ」、ごち。
 
 
 
 ひとひら:
 第7話。
 うーん、正直、微妙。
 いや、うん、悪くは無いんだけど・・・・え、それだけ?、って感じっていうか、中途半端で勿体無いって
 いうか・・・。
 前回もそうでしたけど、言いたいことはわかるけどそれだけと言うか、うん、むしろその「言いたいこと」をしっ
 かり手堅くかつ普遍的(?)誰にでもすっと理解出来るように調整されているって感に於いてはすごく良
 いのだけれども・・・・。
 それにそっくり感動出来て、でそれで?、っていうか、つまり感動するのは良いけど、なんていうか下地とし
 てのその感動の造形だけで終わっちゃってるから、つまりその、捻りというか変化というか、それってつまり
 どういうことなん? っていう深みというか広がりというか、ぶっちゃけ哲学的或いは文学的問いを発して
 捉え直すためのもので無いというか・・・や、そこまでいかなくても、我が事のようにして考えるというか、
 これまたぶっちゃけて感情移入するにしても、なんだかどうしても芯が細いというか・・・う、うーん。
 あのののの(笑)姿と美麗の姿を使ってやってる事は、まぁそのふたつが出会えばそうなるよねという、当た
 り前と言ったら言い過ぎだけど、その範囲に留まる程度の展開で、なんていうかその、淡々と書き起こし
 ているだけというか、うーん。
 勿体無さ過ぎる。
 なんで、あそこまで良い素材があるのに、それをあの程度で綺麗に閉じてしまうのか、ののにしろ美麗に
 しろ、もっと違う視点から考えさせたりとか、それで無くとも無言の姿で語らせるとかして余地を残すという
 ことをほとんど排していて、徹頭徹尾キャラ達に語らせようとしているんだから、その語りの内容そのものが
 そのまんまなもの過ぎてしまったら、本当に言葉通りの簡易な世界だけで終わってしまっちゃう訳ね。
 
 つまりね、言葉柔らかく言ってるけど、ほんとは怒ってるんです。
 てか美麗にしろののにしろ、問題は、ていうか感じて考えるべきことはあんなもんじゃ済まないでしょ、って
 いうか、なんだか問題を簡単にして済ませてしまっていて、なんだか許せない気持ちのが強いのよ。
 なんていうか本質的なことから逃げてるだけというか、見てるこっちは今か今かとそのどうしようも無いその
 本質的問題に直面してあがくあの子達と共に感じて考えたいと待ち構えているのに、これからっていうと
 ころでふたり手に手を取って笑って済ませてしまうという、んなの詐欺じゃん金返せ、みたいな。
 無論ひとひらっていうのがそういう作品だっていうのはそうかもしれないけど、それはあくまで作り手側とそち
 らよりの見方側の捉え方にしか過ぎないからあまり関係は無く、ひとりの感想の書き手としては大いに
 不満ですね。
 うーん、ひとひらは結局このままな感じで突っ走りそうな感じですし、別にそれはそれで一個の作品として
 の魅力自体を下げる訳じゃ無いけど、つまりまぁわかりやすく感動して楽しむ(悪い意味じゃなくて)作品
 としての見地から評価する愉しみは無くならないでしょうし、まぁそれはそれで良いのだけれど。
 んじゃそれなら、私がここで感想書く必要というか意味が無くなるんじゃないかなぁって思うな。
 キャラの魅力も私的には無いしねぇ・・・
 ただ、まだ本格的に主人公の麦に話が向かっていないのが気掛かりではあるので、今少し期待していこ
 うと思っています。
 まぁもっとも、それ以前に私の感受性とか読み取り能力をもっと磨けって話なのですけれどね。
 もうちょっとこう、この作品に対しては能動度(?)を上げないといけないみたいだし。
 頑張ります。
 
 
 
 
 あ、なんか今日私駄目だ。 (色々と)
 
 
 
 
 
 

 

-- 070516--                    

 

         

                           ■■愛のままに生きるがままに■■

     
 
 
 
 
 
 
 
 
 ロミオ×ジュリエット第5話を見て、ちょっと書いてみたいことがありましたので。
 まずは事実整理。
 15歳のオーディンは女の子でありながら、なぜか16歳になるまでは男の子として生きなければ命が危ない
 と周囲に言われ育てられ、その理由も教えられる事無く生きてきた。
 街を支配する大公モンタギューの圧政に苦しむ街の人達を守るため、オーディンは義賊「赤い旋風」と
 なり日々を過ごしていたが、しかしこっそり女の子として舞踏会に紛れ込んだ際に出会ったロミオへの恋
 の想いに囚われてしまう。
 そして16歳の誕生日、オーディンは彼女を育ててきた人々に突如跪かれ、そしてオーディンは本当の名
 はジュリエットと言い、おまけにジュリエットは現大公のモンタギューに殺された前大公の娘であると告げら
 れ、そしてジュリエットを盟主にしての前大公家の復権及び現大公モンタギューを打倒する計画が進ん
 でいることを告げられる。
 あまりの事に驚くオーディンは、さらにその後ふとしたことからロミオがモンタギューの息子であることを知って
 しまうのだった。
 彼女は、今までオーディンとして生きてきた。
 それはあくまで男の子であるオーディンであり、常にそれでも自分は女の子であることをわかっている彼女
 自身には、その女の子として生きるために必要な「名」は無かったのです。
 オーディンと名乗ればそれはすべて男の子である事を示すしか無く、それが一体どれだけ苦痛でどれだけ
 悔しいことであったかは想像に難くないでしょう。
 周囲の女の子のことをどれだけ羨み、その中で自分だけが男の子として生きなければならなかったことの
 悲しみがどれだけ深かったか、にも関わらず彼女には希望がひとつだけあったからこそ生きていることができ
 たのです。
 16歳になれば、女の子になれると。もう男の子の恰好を捨てて生きて良いのだと。
 15年間生きてきて(正確にいうと前大公が殺されるまでの数年は除く)、彼女はそれなりに男の子として
 の生にも慣れ、ある程度その中で生き甲斐を得ることも覚えたでしょうし、また赤い旋風を名乗り街の
 人達のために戦うことが出来たなど、確かに「オーディン」としての生にも意味はあったのでしょう。
 しかしそれと同時に、その15年間をかけて静かに澱のように堪っていく不満感と、そしてどうあってもその
 男の子という役に同化する事は、16歳になったら女の子になれるという希望があるゆえにも尚更できず、
 そしてそれらとはあまりにも無関係なほどに、彼女は今現在ずっとずっと女の子であるという意識から逃れ
 ることも、また自分が女の子でいることを守れるのは自分だけだという意識によって、絶対に男の子の生
 に満足し、また男の子にならなければいけないという言葉に肯うこともしなかったのです。
 
 そして訪れた16歳の初めての日。
 彼女は、希望の半分を失うこととなります。
 彼女がずっと希い続けた女の子としての「名」は、それを背負う生を限定されてでしか与えられないもの
 だと知ってしまったのです。
 貴女は前大公キャピュレット家の血を引き、そして仇たるモンタギュー家をうち滅ばさねばならないので
 す。
 現大公の圧政を終わらせるためにも、前大公家の再興はたんなる仇討ちの域を超えているのです。
 けれど。
 そのキャピュレット家のジュリエットという名を与えられた彼女にとっては、そんな事は仇討ちを行う大義名
 分にしか聞こえはしないのです。
 確かに善政を敷いた前大公家の息女が旗揚げするのならば、名分も立ちそれにより最も効率良く事を
 進められるであろうことではあります。
 しかし、彼女にすれば、その最善の手を取るためになぜ自らの人生を犠牲にしなければならないのか、
 モンタギューを倒すにしろそれはキャピュレット家の再興を主体にしなければならない必然性は無いじゃな
 い、ということにしかならないのです。
 なぜ、彼女には、そのそうやって勝手に取り決められたジュリエットという名の「女の子の生」しか与えられ
 ないのか。
 彼女にとっては、その与えられたジュリエットの名が、16年間待ち続けた女の子としての自由な生活を、
 その希望を奪ってしまったのと同じことになっているのです。
 あまりに、ひどい。
 16年間待ち続けた結果が、これ?
 周囲は誰ひとりとして、その彼女の想いに諮ることなどせずに、勝手に彼女にジュリエットの名を押しつけ
 ていってしまうのです。
 彼女の庇護者の中心人物で最もキャピュレットに忠実な頑固爺は元より、話のわかる優しい参謀格や
 無口でぶっきらぼうだけれど剣の師でもありわかることはわかっていそうだった剣士も、彼女が子供の頃か
 らずっと一緒に育ってきて女の子である彼女の事もわかっていた姉代わりの女性も、みんなキュピレット家
 と現状の街を憂う自分の心に対する想いと、彼女の身の安全を守ることだけに囚われ、その中の誰ひと
 りとして、彼女の絶望を認識しようとはしなかったのです。
 あまりに、むごい。
 
 そしてムキになった彼女は、必死にジュリエットの名の女の子の生の部分だけを奪い取り、そして自分の
 取り分を自分で確保しようとします。
 けれど、そんな彼女に決定的な絶望の楔が打ち込まれてしまうのです。
 ひとりの女の子として愛したロミオが、「ジュリエット」が倒すべきモンタギュー家の者であることを知ってしま
 うのです。
 そして、街では赤い旋風を捕らえるために、無実の罪の人達が捕らえられ、赤い旋風の代わりに殺され
 ようという事件が勃発。
 すぐさま街の人達を助けに向かおうとして、彼女は彼女を育て守ってきた人達に頑としてそれを止められ
 てしまいます。
 多勢に無勢、今希望の星であるキャピュレットの息女を失うことはいかん、と。
 それでも尚、助けに向かおうとする彼女は拳で持って止められてしまいます。
 『貴族の息子にうつつを抜かしている間は街に見向きもせず、気が向いたら助けにいくのか。』
 『俺たちはそんなお姫様を守ってきたわけじゃない!』
 
 なんて、浅ましい。
 
 なんていうか、本音見えまくりですよね。
 16歳の女の子に、いやいや、その子の今までの16年間とそしてこれからの人生に、一体どれだけ自分勝
 手な想いを押しつけるつもりなのか。
 そもそもキャピュレットの息女として彼女を守ってきたのは完全に彼らの意志というか自分で選んだことで、
 それに応えなければならない義務は、彼女には一切無いはずだし、逆にあるというのなら既にその時点で
 そのなにも知らずに16年間無理矢理男の子として生きてきた彼女の人生を返すべきです。
 あまりに、アンフェアにして、あまりに恥知らず。
 彼女から女の子としての16年間を奪っておきながら、その行為を恩着せがましく守ってきてやったなどと、
 あんたそれでも誇り高い剣士かとちょっとムカっときましたよ。
 そもそも今まで守られて育てられてきたと、それを恩だと感じそして実体ある恩にするのは彼女自身によっ
 てであり、そうして自発的に彼女がその感じた恩のままに行動して、初めて彼女はそのジュリエットという、
 与えられ限定された生をそれでも主体的に生きていくことができるはずなのに、あんな事平然と言われた
 ら、16・7の女の子だったらころっと自分が悪いと思って理不尽にもなにもかも諦めてしまったりしてもおかし
 くはないんです。
 彼女は確かにキャピュレットの血をひく者かもしれないけれど、それ以前にその血をひいて生きているひと
 りの女の子であることを、周囲の誰もが認めずにそれを蹂躙し、そして彼女自身にもその蹂躙が正しい
 と思わせようとしているのです。
 それこそ、彼らの力があれば、彼女をちゃんと女の子として育てるために、あの街から出すことだって可能
 でしたのに、あくまでキャピュレット家の名の下に街を復活させることに目が眩んで、彼女にあの生活を
 強いた。
 或いは彼らは、16歳になったら彼女にすべてうち明けた上に彼女にすべてを選ばせ、そしてその上で卑怯
 にも彼女にジュリエットとしての道を選んでくれることを願うあまりに、敢えてこの街に残しキャピュレット家
 の未来を繋ごうとしたことを謝罪することだってできたし、またそうするべきだったと思います。
 そうすれば彼女の分だって立ちますし、そうしたフェアな態度に感じて周囲の期待に応える努力を、改めて
 ジュリエットの名に於いてなすことだってできたはずなのです。
 そもそも彼女が彼らの敵であるモンタギュー家の子息に恋をしたことを明かせずまた誇ることをできない状
 態自体が、彼女に対する周囲の姿勢を雄弁に語っています。
 彼女にはまずジュリエットの名を継ぐか継がぬかの権利があり、そして継ぐための条件として、ロミオとの恋
 を前提とした上でのモンタギュー家との抗争しか行わない、ということを提示することが許されなければい
 けなかったのです。
 無論、倒した家の者を恋人にするなど戦いを支持してくれた街の人達が認めはしないでしょうから、
 もしこの時点で彼女がロミオとの恋を選ぶのだったら、彼女はジュリエットの名を継承せずに、そしてこの
 街から出てひとりの女の子として、ロミオを想う人生を生きていけば良いのです。
 これまた勿論、ひとりの女の子として、その命を振り捨てるほどにロミオを愛してるのならば、命の危険を
 顧みずに女の子として堂々とこの街の中でロミオと出会っていけば良いのです。
 
 また圧政に喘ぐ街の人達に対してならばどうするかという話ですけれど。
 私だったら、ですけど。
 いや勿論臆病な私ですから、実際その場面になったら絶対出来ないと思いますけれど(笑)、もしできる
 としたらという理想論のお話として。
 私が彼女だったら、まずキャピュレット家の息女としてそれを支える反乱軍(?)の頭目になることを捨て、
 つまりジュリエットの名を継承せず、そして一個の義賊としての赤い旋風であることを選び、そしてその前
 提から考えて行きます。
 ジュリエットの名を捨てた彼女に対しては私怨(笑)はあるでしょうけれど、この際むしろそれを皮肉って
 今は街のことが最優先でしょうだから同盟しましょうと、そうして旧キャピュレット家勢力と赤い旋風のふた
 つに分かれて手を携えての戦線の展開こそが、真にフェアな関係だと思います。
 だからあの多勢に無勢の状況下を見て、それでも突っ込むか突っ込まないかを選ぶのは、あくまで赤い
 旋風としての彼女であって、勿論その判断材料として、今まで自分を育ててくれ、そして勿論今でも親し
 みを感じている旧キャピュレット家勢力のそれぞれ「個人」としてのあの人達への想いもまた含まれても
 良いことなのです。
 だからある意味で、彼女に向けられた、恋を優先して街を守るのはそれのついでか、という非難の言葉
 に対しては断じて  そ   う   だ   よ 、と答えれば良いし(ついでに一発殴り返せば良し)、
 またその権利は彼女にはあるのです。 だって、当たり前じゃないですか。
 なんであの子ひとりが街を守ることのすべての責任を負わねばいけないのですか?
 あの街はあの街に住むひとりひとりの人たちのものであり、またそれを守るのもそのひとりひとりなはずです。
 だから本質的には彼女がどんな義賊だろうと正義の味方だろうと、それは彼女の勝手なのです。
 そして、だからこそ。
 彼女はその前提があるからこそ、それでもみんなを守るために責任ある義賊として戦うことを自発的に選
 ぶことができるようになるのです。
 それは勿論、彼女だけが有する権利では無く、他の誰もが有する権利。
 ひとりがみんなのために人生を台無しにする義務は無いし、その義務は誰にもあってはならないとフェアに
 思うことができるからこそ、改めてその中のひとりとして自分がどう主体的に生きていくかを選ぶことができる
 のじゃないかなぁと思いました。
 彼女は誰の玩具でも無い。
 彼女はひとりの女の子。
 そしてひとりの女の子だからこそ、そのひとりの女の子として、一個の人間として、その境地から、その感受
 性から、その意志から、目の前の人達の想いを感じ取り、その深い自覚を以て応えていくことができる
 のです。
 それはまた、あの旧キャピュレット家勢力の人達も同じことです。
 自分がなにもかも失ったからと言って、そのツケをなにも知らないお姫様に押しつけてそれを当然と思って
 いて良いのか、その悲しみと苦しみの連鎖をなぜ自分で断ち切るという誇りある選択肢を持たないのか。
 あなた達の目の前に居るお姫様を、そうやって自分達の失われたものを償わせるために守り育ててきたの
 か。
 自分達のためだけにお姫様を守り育ててきたのか、ならばその彼女が自分のためだけにあなた達の献身
 を使っても、それは文句を言えたことでは無い でしょう。
 彼女は彼女、自分達は自分達。
 そしてだから、そのふたつの存在が出会うことができるからこそ、そのふたつの存在の出会いの中にそれぞ
 れがそれぞれを想い合いながら生きていくことができるのじゃないかなぁ。
 そうしてお互いが対等の位置を意識し合えるようになれば、それこそいくらでもお互いの実感を以てそれ
 ぞれの言い分を通し合う余裕も持てるし、そうなればきっと彼女も喜んで恋人とそして自分を育ててくれ
 た家の人達を同じ思考の場に置いて考えることができるようになるかもしれないし。
 恋人かそれとも家か、では無く、恋人と家をどう両立するのかと悩む。
 それは当たり前なひとりの女の子としての悩みだと思う。
 そういうジュリエットを、私は見てみたい。
 だってあの、ロミオのために懸命に刺繍したのを掲げて『できたぁ!』とほんとに嬉しそうな顔を魅せてくれた
 あの子の笑顔、また見たいって思うじゃない?
 
 萌えとは言わんよ萌えとは。
 
 
 
 
 
 ◆
 
 おまけ。
 
 
 小野不由美「屍鬼」、読了。
 
 こう、と決められた秩序にはそれなりの意味がある。
 その秩序の形や型、方式を共有し、その中で同じような実感を共にしていくことで、一個の連帯感を
 獲得することができるゆえに、それは逆にその実感を共にしているという証しさえ立てられれば、その内実
 は問われないということでもある。
 型どおりに形式通りに手続きを踏めばそれはその秩序の忠実なる僕である事を証し、またそれゆえにその
 簡易な手続きがその秩序の及ぶ範囲とそれを共有していく者達の数を増やしていくことに貢献している。
 頭の中で唾を吐いていようと、少なくとも表面上習い覚えた秩序の通りに礼儀を欠かさなければ、それだ
 けでその秩序の下に成り立つ共同体の内側に存在し続ける事は可能になる。
 その秩序自体の敬虔なる信奉者は、ただの形骸と化し内実を伴わない行為を染まること無く、ただ自ら
 の内心に深く降り立ち、そしてその秩序の内実を真に理解し、そしてそれを肌で感じながらのその自身の
 その秩序に対する誠意を、まさに内実を込めた自分なりの形にして表そうとするが、しかしそれは内実が
 あるゆえに現行の秩序の形や型、方式から逸脱しているものであり、それを見た他の者達は、それを差
 してその敬虔なる信奉者を不心得者、秩序の敵としてその秩序の下の共同体から排除しようとする。
 多くの者の場合、その秩序の内実を理解し、それを徹底的に見極め自らの血肉とし、まさにその秩序
 の体現者として生きようとするのでは無く、ただ形ある目に見える「秩序」を他の者と共有しているかどう
 か、ただその意識にのみ染まろうとする。
 秩序の内実に不誠実である者ほどゆえに秩序に愛され、誠実である者ほど秩序から排されていく。
 つまらない話にも皆が笑っているのなら笑わなくてはならないし、偶像崇拝甚だしき礼拝も周囲の者が
 やっているのならそれと同じことをせねばならない。
 それらをしないのは、それらを共有することで安心感を得ている人達を脅かすことである、という点に於い
 て、それらは確かにその秩序の中の異端であり、また敵であるともいえよう。
 秩序とは純粋に一個の人間がそれと見つめ合うものである以上に、手つかずのまま高々と放置しその下
 で皆同じくそれを見上げている感触を共有するための、極めて現実的道具的なものだった。
 内なる誠心、そしてひたすら極めようとする倫理は、それに自分以外の誰もが付いて来れなくなった時点
 で、それはひとつの秩序の体現としての倫理の力を失ってしまう。
 
 だが無論、他者との共有する秩序としての倫理だけが存在する訳では無い。
 真面目であることが真摯であることが悪いことであるのでは無い。
 ただそれは自らの孤立を伴う苦しみしか自らにもたらしはしない、というだけのこと。
 どんなに他者の事を真摯に考えても、どんなに懸命にフェアな倫理を考えても、それに対して正当な評
 価が下されるとは限らないし、むしろその思考と倫理が先鋭であればあるほどに、多くの場合理解される
 以前に感情的(安心感を損なわれるゆえの)拒否を受け、排斥される憂き目に会ってしまう。
 多くの人がただ一番楽に受け入れることができる、一番耳に心地良い言葉だけが、一番まともな扱いを
 される。
 その他者の蒙昧さに悲憤し、しかしそれでもその他者との世界から飛び出すことが出来ないほどに、その
 他者と共にある秩序を愛しているのならば、その悲憤を噛み砕き、そして自らの先鋭化異端化した倫理
 を、一体どうしたら他の人達の耳に優しい響きをもたらすことができるのだろうかと考える、そういう真摯な
 態度こそが、その秩序に対する愛より深い場所にある、そうして秩序を愛する自身に対する愛に最も適
 う倫理的態度である。
 自らが産み出した自分らしい倫理を、それを他者にも通じる型に磨いていく作業は、決してその内なる
 倫理に背くことでは無いはずだと思う。
 
 それでも他者は受け入れてくれない事を続け、異端であり続け、でもそれは本質的に当たり前なことで
 あると誰もが必ず気付いていく。
 人は生まれながらにして罪を負っている。
 なぜならば、自身が存在している事自体が、無限に他者に対してなんらかの影響を与え続けない訳に
 はいかないからだ。
 良い影響だけでなく悪い影響も与え続け、極力悪い影響を与えないように心掛けても、それでも絶対
 に抑え得ないものはいくらでもあるはず。
 どんなに他者のためを考え、身を削るほどに自分を押さえ込んでも、たったひとつでも抑え切れなかった
 ものがあれば、それを元手にして排斥されてしまうのは、ある意味で他者の視点からすれば当たり前の
 こと。
 そっちがどれだけ努力しようと、こっちだってその一個だけ漏れてきたやつに甚大な被害を受けてるんだか
 らな。
 では、それで、そうであるからこそ、もはやすべての努力を放棄し、それを理由にして他者に対する影響
 を無制限に解放しようとすることが、果たして自分にとって意味があるといえるのだろうか。
 他者を愛している自身を愛している自分にとって、その他者を殺す事はそれを愛している自分そのものを
 殺すに等しいのではないか。
 他者を殺すことは自分を殺すことに等しく、またそれを恐れ自分を殺すことはまた、他者を殺すに等しい。
 
 それは、孤独。
 この「屍鬼」では、神(秩序)に見放された感覚の中に生きている、と表現されている。
 人は「存在している」という罪を負い、神から与えられた秩序という「罰」の中に生かされている。
 その与えられた秩序をそのまま忠実になぞり生きていっても、それは懸命に贖罪しているだけにしか過ぎず
 、またその秩序を愛し愛するゆえにその秩序の内実を考えた果てに、人はその秩序という罰に囚われた
 自らを感じてしまう。
 そしてその事に気付いた時点で、その者はその罪を得た罪人の群から逸脱し、そして独りの異端者と
 なってしまう。
 それでも、その者は生きている。
 既に存在してしまっている以上、たとえそんな罪など倫理などなにもかも分からなくなったとしても、或いは
 それらを充分理解した上で一個の異端者としての自覚のままに強く生きるとしても、或いはそれでもその
 異端者であることを自覚しながらもそれでもずっとその罪の意識を抱え永劫倫理的思索を繰り返すと
 しても、それでもその者が生きていることには変わりがない。
 秩序から逸脱し異端化し、その事を恐れ秩序に戻ることを願い、そのためにその罪なる自分を責めるた
 めに倫理観を研ぎ澄まし、そして清廉に磨いた自分を魅せたとしても、既にその秩序から外れた者は、
 その秩序内で実行される罰による贖罪のシステムからも離れているゆえに、全く報われることは無い。
 だから秩序からはみ出したその秩序を愛する異端者は、その追い出された先、つまり秩序の外でその
 秩序への愛のままに綴ったその秩序に似たる倫理を以て、あくまで自身を裁き律していこうとする。
 しかしその作られた秩序は自分を追い出した秩序と同じものであるがゆえに、徹底的にそれを創り出した
 異端者を、その大元の秩序と同じく排斥しようとし続ける。
 異端者は、自らの作った愛する偽秩序に、我が身を切り刻まれていく。
 その秩序には最初から、その者は含まれることが無いゆえに。
 
 しかし、生きている。
 その秩序に牙を突き立てられていても、生きている。
 それゆえに、その生きることを主体的にするためにも。
 新しい倫理が要る。
 他者のための倫理では無く、自分のための倫理が。
 そしてその倫理を作り続ける孤独があるからこそ、その境地から他者と自分の「ふたり」のための倫理を、
 それでも作っていこうと思うことができる。
 その中できっと、本当は既にその他者と共有できているものがあることに、気付くことができる。
 そしてたとえそれができなくとも、生きていることには変わりがないのだ。
 生きるための口実としての倫理は必要で無く、ただ生きているからこそ倫理を欲していく。
 
 
 
 
 
 
 あー、面白かった。 (頭をポリポリとかきながら)
 
 
 
 
 
 

 

-- 070514--                    

 

         

                         ■■引き分け姫と幼稚な吸血鬼■■

     
 
 
 
 
 『なるほど。想定内の最悪の結果という訳か。』
 

                            〜怪物王女 ・第五話・姫の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 姫は臨戦態勢を整える。
 油断無きように徹底的に備える事に執心するでも無く、眠気に誘われるがままに眠るが如くに戦いに望
 んでいく。
 今か今かと敵を待ち構えているかのように見えながら、その実なんの事は無くそれは姫の日常の一幕に
 しか過ぎ無かった。
 魔物訪れし夜を迎えるを拒否することを可能とし、現にその作法通りに魔物の訪いを拒む準備に勤し
 みながら、気付けばその備えはその万全を誇る前にその当たり前さを晒していった。
 姫が戦いに備えるのは非常の事でも無く、しかしわざわざ当たり前の事だと嘯く事でも無い。
 なぜ戦いに備えるのか。
 勝利するためか、敗北せぬためか。
 それとも敵の魂を貪り、敵の屍体の山を築くためにか。
 怪物の姫は、滔々と魔物に抗するための術策を諳んじながら、しかしその中身はすべて敵の弱点を示
 すだけのものでありそれ以上のものでは無かった。
 姫は毅然と構えながら、嫣然として微笑う。
 来るなら来い。だが来なければそれで良い。
 魔物に関する知識を敷き広げ、それに由来する三日月の味わいを肴に過ごすも一興と微笑み、しかし
 ながらその片手には抜かれるべき剣が収められている。
 それは決して剣に凭れて楽しむ束の間の安息では無い。
 陣取る部屋の中心にて嗜む紅い茶に映るは、ただそれと等しきぬくもりに輝く瞳のみ。
 油断無くぬかりなく、しかしその警戒に従し凭れる事の無い、剣呑である前に穏やかなその一服。
 否。
 それは戦いの前の休みのひとときでは無く、ただ休みと共にある戦いを映す時間にしか過ぎ無い。
 姫はまだ、ゆっくりと嗜むように敵に抗する術を語っている。
 まるで、その敵たる魔物と共にこの月夜のひとときを相愉しむかの如くに。
 
 敵に籠絡された下僕を一撃で打ち倒し、なお主に刃を向けようとするその者に一喝を浴びせる姫。
 『ヒロ! 主人に牙を剥ける気か!』
 主人らしく振る舞った事も無ければ、家来らしさを求めた事も無いのに、その言葉には自他を圧する力
 があることを自覚しながらも、その言葉に囚われて酔うことも誇ることも如何なる感情も抱かずに、ただ
 冷然とその主従の関係の型に捕らえた、その愚かなる弱き下僕よりその敵方の勢力を一蹴する。
 まずは、先勝。
 しかしそのままその虜囚を利用し戦闘を終えることを、姫は敢えて疎かにする。
 今回の姫の敵たる魔物吸血鬼は、その家の者に招待されなければその家に入ることはできないという
 性質を持ち、ゆえに戦いたくなければ家の中に居て吸血鬼を呼ばねば良いだけ。
 戦いを求めている訳では無い姫にとって、ならば家に引き籠もり、吸血鬼に誘惑され虜になったヒロを
 閉じ込めておけば、この敵との戦いは生じ得なかった。
 しかれども、姫はしばしヒロを放置した。
 緒戦に於けるヒロの拿捕により、既に戦闘は終結しているに等しいのに、姫はそれを第二戦を生む先勝
 として形にし、そしてヒロに家を開かせ吸血鬼を戦いの場へと招じ入れた。
 さぁ、本戦開始だ。
 姫の瞳が紅く光る。
 姫は戦いを求める者に非ずして、姫は戦いを忌避するを求める者にも非ず。
 姫は、如何なる形であろうとも、その和を求める者なり。
 戦わずに済むものならそうしよう、だが戦って済むものならばそうもしよう。
 戦うか戦わざるか、それともそのどちらをも備えたやり口にすべきか、そのすべての決をすべて戦いの場に
 て相対した敵の瞳の色の中で行う。
 取引が可能か否か、刃を交えればそんな事はすぐにでもわかる。
 ただ一度の対峙で双方の利益を計れる妙案を共有できるならば良し。
 できねば対峙を重ねるのみ。
 その対峙としての戦いのみが、その和を為す妙案であるのならば、その戦いに打ち興じるもまた良し。
 敵を討ち滅ぼすを悦とする自らの獄に堕ちること、それを敵にも等しく認める殺戮で成る世界を生きる
 事になんら魅力を感じることの無き姫は、戦士に非ず。否、欲望に忠実なる戦士もまたそうでは無い。
 
 姫は我が身を守るために家来達を守るためにこの家を守るために、戦ったりなどしない。
 姫は我が身という家来達というこの家という内を作り守るために、外を撃滅し戦ったりなどしない。
 戦わねばこちらが滅びてしまうという幻想が、一体どこまでが幻想であるか知るために、姫は戦う。
 敵をただ無惨に屠りその屍の頂きに君臨する悪魔の王者となる罪なる苦しみが胸にあるからこそ、
 その徹底する自身に対する問いかけとそれに応ずる主体たる自身がどこに居るかを常に感じている。
 戦いの場に臨む姫が、無限の内省を原動力にし、その永遠なるゆらぎが常に情勢を的確に判断しな
 がらも、その中で主体たる自身がしなやかに現実としての幻想たる機に臨み、それの中で姫自身が意志
 としてどう応じ変わっていくのか。
 姫は吸血鬼に負ければ死ぬ。
 だから勝つ。
 だから戦わない。
 姫は吸血鬼と戦わなければ吸血鬼と和のための交渉を持つ機会を得られない。
 だから戦う。
 だから負けない。
 なぜなら和する意志を持つのが姫だけしか無いゆえに。
 
 あらゆる他者の利便を図り、あらゆる他者にそのための強制を行い、あらゆる他者にその恩恵と辛苦を
 等しくもたらす王に、姫は限り無く近しい存在。
 姫はいずれ王となる。
 だが、姫は今、全き姫である。
 すべての者に幸福を無条件に与えることなど不可能。
 なぜならばすべての者が同時に互いにすべての者を認識し理解し合い、お互いが実感を持って譲るべき
 ところは譲りその見返りとして同等の価値のものを他者から譲り受けるという、そういった交渉の場に会す
 る事などできないゆえに。
 その不条理の世界のうちに、姫はひとりの姫としている。
 ならば姫はその可能性としての相互の交流を捨て、ただひたすら他を圧倒しその上に君臨する虐殺王と
 なるのか。
 姫は、姫である。
 最高位の勝者としての虐殺王でも、相互扶助の管理運営者としての王でも無い。
 姫は、ひとりの姫である。
 相互扶助を否定する者は、すべて虐殺王位継承権を持つ王の子にしか過ぎない。
 姫は、王位継承権を持ちながらも、王になる可能性を持ちながらも、只今姫である事を徹底する。
 すべての敵を殺し切る最高の勝者としての殺戮者である事を否定せず、しかし必ず姫はその事実の
 ままに生きることを選びはしない。
 ゆえに姫は、敵との和を望む。
 否。
 敵との和を望むゆえに、姫はただひとりの姫であると言えるのみ。
 
 吸血鬼の力を増大させる三日月の下で、姫は剣を一閃する。
 習い覚え鍛え尽くし、肉よりも厚く血よりも熱く身に纏いし剣術の粋の中で、姫は姫を一閃する。
 敵を打ち倒すことが本義では無くとも、敵を打ち倒す。
 だが敵を打ち倒すことが目的では無く、ただ戦っている自分に染まるのが目的。
 一心不乱に力を込めて力を抜いて、振り回し振り翳す剣閃の中に煌めく自身の感触に導かれ、姫は
 ひたすら目の前の敵に近付いていく。
 高揚していく自らの存在に映える月光が彼我の距離を照らし、高揚と同時に醒めていく精神がその距
 離の先にある敵に至り、その境地からその目の前の魔物にかかる幻影をすらすらと解いていく。
 捨てるべきは捨て、与えるべきは与える。
 畏くも姫は勝利し、その勝者の自覚と敗者の自覚がこの戦いの場に在る者に存する事を理解しながら
 も、相対する敗者がその自覚に徹し服従か非服従かの選択に身を委ねる者では無いと感じ取った瞬
 間、すぐさま勝者の自覚を捨て勝者の権利を行使して、姫は戦いを終息した。
 吸血鬼は敗北しても従属しない種族であり、姫もそれを理解し、ゆえにただ無条件に吸血鬼を解放す
 るも、お前には利用価値があるとあっさりと述べ、その吸血鬼の幻影の中に在る「嘉村令裡」にその
 言葉によって敗者の責務を堂々と要求する。
 吸血鬼は負けても服従しない、だからなにも求めない、だがひとりの令裡ならばどうか。
 戦いに負けた令裡ならば、敗者としての矜持を以て、利用価値があると令裡を求めた姫に寄与するの
 ではないか、いや令裡よお前はそうしなくて良いのかと、姫は不敵に突き付ける。
 姫は無論そこまで言葉にはしない。
 『私は気紛れなのだ。』
 令裡をあくまで服わぬ吸血鬼として扱うがゆえに、その月光の下の戦場に立つ令裡はどうしようも無く
 ひとりの令裡としての意識に生きなくてはならなくなる。
 そして姫の真の狙いはここにある。
 これにより令裡を支配していく屈辱感があればあるほど、令裡はがむしゃらに吸血鬼の矜持に縋ろうとし
 、しかしそうすればそうするほどにそうして縋り付いている令裡自身の姿を、なによりも強く令裡の精神に
 焼き付かせていく。
 あくまで吸血鬼の論理に立つ姫が目の前に居るゆえに、令裡はその姫と同じ場所に収納された吸血鬼
 の論理に縋り付くことに嫌悪を抱きながらのそれへの接近を繰り返さなければならず、そしてそれは同時
 に絶対的な令裡の自己認識を強め、それでも最終的には縋る対象としての吸血鬼とそれと同格の姫
 を受け入れていくことになる。
 令裡は吸血鬼であり「吸血鬼」では無い。
 令裡は姫との戦いの敗者であり「姫との戦いの敗者」では無い。
 そしてそれはやがて。
 姫は令裡の上に君臨する王者では無く、ひとりの令裡との和を営むひとりの王位継承権を持つ姫であ
 る、という理解を、この戦いの場に臨んだすべての者達に共有させることになる。
 
 姫は令裡と戦わない道を選ぶことも出来たかもしれない。
 姫は令裡を殺す道を選ぶことも出来たかもしれない。
 姫は令裡と会談の場を持ち、令裡が姫の高貴なる血を欲しているだけならばそれを与え、その見返りと
 して姫陣営への協力を求めることも出来たかもしれない。(吸血されて吸血鬼化してしまうのなら無し)
 姫は汚くも賢く令裡に他の高貴なる血を有する未成年の王族達の情報を流して血を吸わせることも
 出来たかもしれない。
 姫は令裡との一戦にすべてを賭け、これまでのそしてこれからも続く虚しき同族争いに終止符を打つべ
 く、令裡に殺されるのを選ぶことも出来たかもしれない。
 姫は令裡との戦いを純粋に愉しみ、令裡を弄び捨てることも出来たかもしれない。
 姫は我が身を守るに汲々とし、ただ内と外とを分ける戦闘で令裡を排除することも出来たかもしれない。
 姫は正論を説き理想論をぶち上げ、ひたすら令裡の非を責めることも出来たかもしれない。
 姫はなにも選ばないことも出来たかもしれない。
 姫は他の王族との抗争を見越し、令裡との戦闘をそれに利用するために改造し、どうすればこの戦いを
 王族との戦いに有利な形にして自らに収めていくのか考えていくことも出来たかもしれない。
 そして、姫は。
 そのいずれをも選びはしなかった。
 それらは選ばなくとも既に姫の中に歴然としてある要素であり、またそれらのうちのいくつかは姫の本質で
 あるものであり、そしてそれらは姫のうちの要素と本質のうちのひとつでしかない。
 姫は戦いを求めない。
 それゆえに戦いを忌避するをも求めず、戦いを計画せず、そしてまた戦いを支配もしない。
 姫は戦士でも無く王でも無い、ひとりの姫であるゆえに。
 
 『ふふん。』
 『私は気紛れでね。』
 
 姫と令裡。
 戦場でまみえたそのふたりが、その戦いのうちに互いを認め、互いのためでは無く「ふたり」のために生きる
 ことを、ただその戦いの刹那にのみ感じるを求めていく。
 その感触の希求の中に、姫は居て、そして。
 それでも姫は、その自分の姿をじっと見つめている。
 なぜ、戦わねばならないのか。
 その問いに答えが出続けるたびに、姫はその答えの価値を失い、戦い自体の価値を投げ捨てていく。
 その答えとやらに本当に充足できることが無いことを、無限の問いかけを続けている姫自身の最も深い
 欲望が知っているゆえに。
 徹底的に自分の欲望のために生きる、そのずば抜けた倫理感覚が姫を動かし、またその自身の姿を
 見つめる紅い瞳があるゆえに、姫は常にこだわりを捨て臨機応変にその場の感触に染まることができる。
 絶対的な答えなど、絶対的な自分など、絶対的な理想など、絶対的な王など、無いと確信している
 ことは、そうでありながらもそれらを求めていることとは、何も矛盾などしていない。
 なぜならば。
 絶対的なものを無いと確信しながらそれを求めている姫の姿を見つめている姫が此処に居るのだから。
 そしてその姫の瞳は、どこまでも紅く輝いている。
 その紅い瞳に映るのは、ただ目の前の愛すべき敵という名の他者だけなのだった。
 
 
 
 
 
 ◆ ◆
 
 
 嘉村令裡はインパクトこそはそこそこありましたけれど、私にとっては少々物足りない。
 OPやEDの有様を見ていて、てっきりもっと上手の怖い魔性の女かと思って愉しみにしておりましたのに、
 本編に登場してみれば、なんのことは無い見せかけだけの未熟な突っ張りっ子程度で、私はこの残念な
 想いを隠すことができません。
 見た目と振る舞いで下級生の目を集め、それでいい気になってその中を泳いでいるだけなのですもの、
 まるで小者です。
 やることなすことすべてはったりであって、そのはったり自体が楽しくて仕方が無いという、影も無ければ奥
 行きも無い上に欲深いとすらもその程度では言えず、あんなものでは到底この私を満足させることなど
 できません。
 もっとこう姫と対等に張り合えるような、姫の内面を見透かしそれを嫣然と嗤い上げるような、それでいて
 姫と真っ向勝負する気はさらさら無く、あくまで姫をこそばゆくからかい、けれどそのからかいが目的な訳
 では無いことが明白であるほどに、見えない姫への愛憎の温度をひたすら透けさせていくような、そのよう
 な張り合いのある吸血鬼を望んでいたのですけれど。
 あれじゃただの乳臭いガキんちょです。
 自分が描く「格好良い自分」を演じて、それに拍手してくれる可愛い子達の上で安眠を貪り、それでも
 し拍手してくれなかったら、眦を吊り上げて怒り出すか、動揺を必死に押さえて引きつった微笑を見せる
 ことしかできないようでは、まだまだです。
 もっともっと欲深く、もっともっと真剣な不真面目さを、もっともっといやらしく、もっともっと狡猾にもっともっと
 罪深く、そしてもっともっと色っぽく。
 それらがすべて演技では無いのが見えるようになるまで、嘉村令裡はおあずけなのです。
 今の令裡を、私は全然欲しくありません。
 
 うん。欲しいとか欲しく無いとか言っちゃってますけれども。
 それでも令裡はああいうキャラだという設定を揺るがせにせずに、あれをあれとして認めてみてから、改め
 てそれを愉しむこともできるのは、これは言うまでも無いことです。
 つまり、姫が絶対なのです。
 なにをいきなり言うのかと思えば、というあたりかもしれないですけれど、おそらく令裡は姫を超える存在で
 あってはならないキャラなのでしょうし、また見せかけ上に於いて姫に余裕の表情を魅せるけれど、それは
 明らかに姫に位負けしている自身をひたすら糊塗している、いいえ少なくとも姫と戦う直前までの令裡は
 、自分が負けていることすらわからないほどの幼い自信家であるという、そういう面白さがあると思うから
 なのです。
 現に令裡はラストに於いて、ヒロの姿を見るなり姫との戦いを思い出し嫌悪の表情を浮かべ、そしてしっく
 りと惨めに顔を微笑で歪ませて、懲りずにヒロにちょっかいを出します。
 これは同じく姫と戦ったリザとは極めて対照的な反応と言えますよね。
 リザより格段に幼く、いえ別に幼いのがいけないというつもりは無く、逆にいえばそうしてムキになっている
 可愛げこそが令裡の魅力とも言えますし、またそれは令裡に極悪無上の魔性の女(ってほんとこの言葉
 って怖いわぁw)ぶりを期待して裏切られた今の私にとっては、その裏切り(勝手に信じてただけw)に憤慨
 してアンチ令裡に走るよりも、その可愛げに魅力を感じてみたいとも思っているのです。
 それは、実はラストのラストで、そうしてヒロにちょっかいを出して溜飲を下げても、しかしそれでもそうしてい
 る幼い自分の姿が見えてしまって、ふっと僅かに眉をひそめた令裡と同じように、今自分が感じているベス
 トを尽くして事に当たりたいという欲求なのです。
 令裡は今まで通り自分を褒めて愛してくれる可愛い子達の中で生きて、その外にある姫達とのことを
 思い切り無視することもできるのですけれども、しかしもう今はそれで良いのかという問いを紡ぎ出す
 最新の自分を得てしまっているのですね。
 私も自分の想像してた令裡と違ってがっかりしましたけれども、今回のお話を見て、そうした他の愉しみ
 方もできるという事を知ってしまったがゆえに、私はそれを考慮してみたいと思っています。
 むしろ欲望者(?)として未熟で幼い令裡を見守ってあげたいとか、あ、勿論そうすることで私自身の自
 我を保つとかいう意味じゃなく、真摯に令裡の感覚に染まってその未熟で幼いがゆえに蒼く透き通るよう
 な切実な感触を得ていってみたいなぁと、まぁそういうことです。
 それが只今の私のベストな欲求なのです。
 
 というより、聞いてくださいな、みなさん。
 今回は令裡など知ったことでは無いのです。 (ぉぃ)
 姫がいいですよねぇ・・・なんていうか・・・不思議・・・
 んー、不思議というか、不思議なものがわかりやすさを与えられたから逆に不思議さが増した、という感じ
 で、もう答えとして姫はこういうキャラなんだぞと公式に設定されてしまっても、でもそれじゃ明らかに足りな
 いという意味での間違いは明白で、でも公式見解は為されてしまっている以上、こうなったらひとりで
 姫の正体に迫らなくっちゃ、という、もうそれ自体がそうやってノコノコとひとりでやってきた愚か者を姫が
 ばっさりとやるための罠としか思えないような、ええと、抽象的過ぎて謝る言葉も見つかりません。
 具体的に言うとどうなるのかな・・・
 ヒロから見ると、学校で人気者の先輩に目を掛けられて、それで機嫌が良くなっているけど、それは自分
 だけの秘密で、特に姫なんかには絶対に知られたくない事なのだけど、いざ姫の瞳を見るともうなにもか
 も見透かされているに思われてならず、そしてその象徴として姫の瞳の紅さはヒロ視点でますますその濃
 度を増していっていて、慌てて姫の前から逃げ出してしまう。
 むしろ姫に隠す方が怖いと、ヒロはそこまで感じてしまうのです。
 そうやってあくまでヒロ視点としての、その人外的超越者的風貌で以て、ヒロの前に真っ直ぐに立ち塞がる
 姫が描かれているのですけれど、しかし実際は姫はなにも見抜いてはおらず、勿論姫の瞳が紅いのは
 ヒロの瞳が黒いのと同じ以上の何者でも無く、だから存在としてヒロと姫は対等以外の何者でも無いはず
 なのに、そうやって傲然と圧倒的な姫の姿が思い切り良くヒロ視点で描かれていて、それがもの凄く私は
 気持ちよいくらいに怖かったのですよ、うむうむ。快感。
 姫はごくごく普通の手続きでヒロの挙動を疑っていて、リザとのやりとりでその辺りの姫の日常性がすっぱ
 りと描かれ、でもヒロからすれば姫はなにもかもすべてわかってる化け物のお姫様で(笑)、そのギャップが
 別にコメディとして描かれる訳でも無く、ただ淡々と描かれしかもそのギャップ自体を焦点に描いている
 訳でも無い。
 階段の上から傲然とヒロを見下ろす姫の姿がすべてを語ってくれる。
 
 そしてそんな中で令裡先輩から呼び出しの電話を受け、それで下を向いて頬を紅くして参ったなぁとか姫
 そっちのけで唸ってるヒロが色っぽかったり、でもその直後に階段の上のお姫様にすべてを見透かされ(ヒ
 ロ視点)、それを振り切って家から出ていくくだりなど、なんかもうやられた感に堪えません。うあ。
 この怪物王女って作品は、なんていうか、ところどころにこうしたそれだけで強い印象を与えるシーンがあっ
 て、そしてそれは非常にありきたりというか型どおりのキメポーズだったりするのですけれど、いわゆるお約
 束という意味でのその前後の文脈との兼ね合い上に於いての盛り上がりの発露、としてそれらのカッコイ
 イシーンや艶っぽい仕草がある訳でも無いのですね。
 え、このタイミングでそれを魅せるの?というか、流れとして無理は無いんだけど絶対そこで魅せるべきと
 ころつまりお約束としての場面では無い場で、そういうのをすぱっと魅せてくれていて、これって結構制作
 の段階で意識して作っているのかなぁと、感心しながら見ています。
 リザと令裡の戦闘シーンなんか魅せる気なんかさらさら感じられなく(笑)、しかし令裡と姫の戦闘には
 異様に力が入っていて、確かに後者の戦いの方が盛り上がる場所なのですから不自然では無いのです
 けれど、あまりにも差があり、こうした作品全体における緩急の付け方が異様に極端であり、話数を重ね
 るにつれ、今度は魅せ場の絶対数が上がり始めたことで差が無くなったような気もしますけれど、実際
 見て平坦さを感じることが出来ないほどに演出の統一感が無い。
 でもその統一の無さこそが魅力ですし、だから一体どこに凄い演出をしてくれるのかと、それを愉しむこと
 ができるのです。
 姫が剣を抜きはなって令裡に斬りかかるシーンなんて(その前の指をちょいっとやって令裡を挑発する仕
 草とかその前のフランドルを伴って階段の上から令裡を迎える姿とか)、リアリズムがどうとか以前に非常
 に漫画的動きとして恰好が良くて、おまけに令裡に捕まって両手を捕まれての万歳ポーズを強要された
 かと思ったら、今度は令裡の腰に手を回し、令裡も令裡であら随分と積極的なお姫様ですことという台
 詞までは作為的だったけど、姫の問いになんですかと勝者の余裕よりも強いこの瞬間の愉悦に染まった
 声音を晒したり、ああもう、いいなぁもう!
 
 
 
 あと、タイを直す代わりにチャックを閉めてあげてごきげんようなどと、令裡はなかなか見込みがあるよね。
 (マリみてネタ)
 
 このシーンで笑い過ぎてお腹痛くて、冷静に令裡を分析できなかっただけかもしれないと、今頃。
 
 
 
 
 
 
                                ◆ 『』内文章、アニメ「怪物王女」より引用 ◆
 

 

-- 070511--                    

 

         

                          ■■春のあと夏の前梅雨はまだ■■

     
 
 
 
 
 うにゃいまるか。(挨拶)
 
 ん? 夏ですか? 気が早いですね。
 って感じでさらっと言いながらつつっと袖をまくろうかどうかと悩んだりして、結局そのままだったりしている
 今日この頃の紅い瞳です、ごきげんよう。 みんな元気で生きてますか? (あんまりな挨拶)
 
 さて、この頃はもっぱら本ばっかり読んでます。
 時間が空けば本を開いて、本を閉じれば本の中身を反芻しながら他のことをやりこなし、それが終われ
 ばまた本を開いての繰り返しで御座います。
 でもあれですね、なんだか最近集中力が格段に落ちた気がするんですよね?
 もしかしてアニメ脳? (またそんなことを)
 こう、文章をすらーっと一回読んでも、あれ?これどういう意味?とか、すぐに理解できなかったり情景が
 頭に思い浮かんでこなかったりして、あ、元々情景風景の箇所とかは読み飛ばす人だったんですけどね、
 それはさておきどうにもこう気もそぞろなんですよね。
 つまり、ぐっと集中すればまだ普通に1回でも理解できるのですけれど、逆に集中しようと意識しないと
 ぱっと気が飛び散って理解が進まないのですよね。
 うーん、あれですか、現代文の問題とか解いてみたりしたら、そういった読むことに関する集中力とかあが
 るのでしょうか? あれ体感的にはもの凄い集中して解いてた気がしますし。
 でも今やったら死にたくなるような正解率になっちゃうんでしょうねー、いやたぶん死ぬし、あーやっぱりその
 辺りはクサいものにフタって感覚でやめておきましょう、集中力の回復はこの際犠牲にして。
 ・・・・。
 え? なに言ってんの? (全く無意味な行動)
 
 そんな感じでアレですけれども、もうしばらく本だくさんの生活は続きそうです。
 ちなみに今は並列で読んでます。
 えーと、小野不由美「屍鬼 下巻」と酒見賢一「泣き虫弱虫諸葛孔明」を同時読み中。
 両方ともかなり面白くて、なんだか久しぶりに似非読書家としての幸せを満喫中。
 孔明の方はひたすら笑えますし(無論頭刺激されるとこもいっぱい)、屍鬼はほんともうあの倫理的な諸
 問題と感覚が興味深くて頭ひねりまくり中です。うーん、いい。
 
 
 ◆
 
 んで、アニメのお話。ええ、まだいけますよ。
 まずは、らき☆すたのお話から。
 確かこの作品は3話をちらりと見て、意外に面白かったので次回はちゃんと見ようという話になり、そして
 4話でがっちり捕まって、そして5話に突入という案配だったりします。
 で、感想ですけど、まずは面白いという一言を挙げて、ただそれほどその一言に入れ込むほどでは無い、
 というところ。
 全体的にギャグのレベルは高くは無い、というか基本としてこういうのってあるよね、っていう小ネタの集積
 になってるから全体の統一感は無いので、一概に語ることはできないのだけれども。
 私的にはその小ネタにそれってあるあるって頷く笑い方よりも、むしろあの主人公のこなたって子のまったり
 感が面白くて、それ中心で見ています。
 あの子が居ることで、こう全体的な間延びを防いでいるっていう感じで、っていうかまぁそんなことはどうで
 もいいんですけどね、とにかくあの子が画面の中をところ広しとうんざりして(そんな言葉無い無いw)る
 様がもう面白くてねー、ああいうキャラは好きですし、その上それが作品の中心点で作品を繋ぎ止めて
 るから、なにかこう、重みがあるというか、ええと、うまく表現できませんごめんなさい。
 あ、あとOPは最高ですね。レベル高い高い。
 意外(?)にああいうの好きなんですよねー動きが曲に合わせて無いようで合わせてる感じのって。
 勿論あのキメのフリのシーンも勿論良いんですけど、ハルヒのEDみたいな感じ好きでしたし。
 あ、ちょうどいいや、今期アニメのOP・EDのお話してみましょうか。
 
 まずOPでは、このらき☆すたのOPが一番。
 あとはOverDriveのOPが清々しいエネルギッシュさが良いし、エル・カザドのOPの深みのあり加減も良い
 ですね。
 歌のみでだったら、たぶん今期は神曲奏界ポリフォニカのOPが一番好きかなぁ。
 あの透明感のある広がりは好きだなぁ、この作品のEDも良いですよね。
 EDでは、もう問答無用で怪物王女のEDがナンバーワン。
 ていうかあれを越えるものが今後現れるかどうか、っていうレベルです。やられた。
 あんな趣味真っ盛りなものをあそこまで全力でやられてしまっては、私はもう白旗をブンブンと振り回すし
 かありませんて。あーもう駄目、何回聴いたかもうわかんないくらい聴いて見てますよ怪物王女ED。
 あとはDaker than BLACKのEDですね。
 これは本編見終わっての余韻のうちに見ると、なんかもう涙がじわじわと・・・あれ・・涙が・・・
 
 OP・EDを語るって難しいですね。
 
 
 
 
 ◆
 
 
 エル・カザド:
 第6話。
 ナディさんが昔の男と出会って開口一番殴り飛ばしたお話。
 昔のナディさんが意外にも素朴で初なウエイトレスなんぞやってたのはちょっと驚き。
 今のナディさんと、もっと昔の幼かりし頃のナディさんとの中間にそんな普通なナディさんが居るのが、不自
 然では無いけれど信じられないというか、そんな感じでした。
 でも元カレのミゲルと再会した今回のお話では、妙にその辺りの過去を元にしてなっている現在のナディ
 さんがばちっと出てて、軽くあしらってちょっぴり本気で殴ったりして、そうしてちゃらけた毅然さで一線を引こ
 うとしてるんだけど、やっぱりどうしても放ってはおけないって感覚がぐぐっとあるから、取り敢えずもうちょっと
 まともに会おうという、そういうナディさんの感覚がよーく出てた。
 ミゲルは軽薄で嘘吐きで女喰いモノにする最低野郎だし、そいつを好きになった自分の馬鹿さ加減も
 自身憎むことがあるゆえに、全然普通に突き放しても良いはずなんだけど、それはただの合理的な理屈
 に過ぎず、ほんとのところナディがミゲルを好きになった事自体はそれと関係無いし、ミゲルがどんな最低
 男だろうと、それらの突き放す理由に身を委ねてそのまま突き放したままで居て良いとは、ナディさんばっち
 り思え無いんですよね。
 といっても、駄目男が駄目なままで居ることを、それをちゃんと修正させないでほっといた自分も悪いんだ
 から、放り出したままっていうのは無責任な気がするという口実で、いつまでも駄目男から離れられない
 女でもナディさんは無かったり。
 よりを戻す気は勿論全然無く(そもそもそこまでの関係じゃ無いみたいだけど)、取り敢えず邪険にするだ
 けの理由と根拠は充分あるのだから、その通りにブン殴ったりしてやったけど、でもだからと言ってその怨み
 つらみのままに行動するのでも無く、つまりどんな形であれミゲルとの関係を修復する気はさらさら無いん
 ですよね。
 過去の清算をする気が無いっていうか、まぁ当たり前なことなんですけどね、ただ昔の(訳ありの)知人と
 出会っただけという、ただそれだけで。
 でも。
 会って顔見て話をすればするほど、明らかに騙すの前提のモーションかけてきてるのが明白で、すっかり
 ミゲルに対してのうんざり度が上昇していくも、でもそれはミゲルへの怨みつらみの上昇とかどうしようも無
 さという形にでは無く、ただそうして今は気付いたそのミゲルの手管の正体を冷静に観察して悦に入る事
 のできる自分に少しばかり酔って、ミゲルの上位にいる自分を感じる形になってのものであるんですね。
 そしてミゲルの嘘を見破ることができるという余裕があるゆえに、ナディさんは図らずも自分が騙されていた
 ころの体感をそっくり思い出してしまうんですね。
 昔は私もまだまだで、こんなこと言われたりして貰ったら、ころっと騙されて本気になっちゃってたのよねぇ・・
 今目の前で、ミゲルは全く懲りることなく、昔と同じようにナディを騙そうとしている。
 そして今のナディはその全貌を完全に見破っている立場にある。
 ミゲルが騙そうとしているのをわかってる、わかってるから・・・ちょっとだけなら・・・
 騙されてあげてもいいや、というところまでは行ってないのでしょうけれど、でもここで大まじめな顔して女
 口説こうとしてる奴の顔に一発くれてやるのもなんだか・・・というところにナディさんは来てしまう。
 ま、ナディさん的には少しはミゲルが可愛いく見えてきてますし、そしてそこまで行ったらもう昔と同じくミゲル
 にころっといく気持ちが目の前にきてて、それにハっとしてあいつは駄目男駄目男と気合いを入れ直して
 、そしたらさっそくナディさん残してこっそり店出ててまた騙す気!?と激しくイラっとくるナディさんでした。
 
 それでもミゲルの行方を捜すんですもんね、ナディさんたら。
 もう充分わかったんだから、もうさっさとミゲルなんて無視すればよいのにそうはしない。
 たぶんナディさんはミゲルが賞金首のエリスを拉致ってなくてもミゲルを探したでしょうねぇ。
 とっちめてやる!
 なぜでしょうねぇナディさん。ナディさんどうして?
 ミゲルって、別に悪い訳じゃ無い。
 そりゃあ女騙して金巻き上げて軽薄で反省しないしそもそも悪びれてないしああもうあの最低野郎!、
 と綺麗に憤慨しているそのときから、ナディさんにとってはミゲルはとっちめてやる対象としてふさわしく、また
 なによりもとっちめることで、自分がミゲルに抱いた想いに相応しいミゲルを具現化する礎になるって、
 ナディさんはわかってる。
 でもそれと同時にどんなにとっちめてもミゲルはてんで変わらないってことも充分わかってて、だからミゲルに
 追いついたときのあのナディさんの優しげに勝ち誇ったその顔が、まさにもう仕方無いわねぇというため息と
 いうミゲルの許容の光に縁取られていたんですね。
 ミゲルをとっちめれば、それだけナディさんが受けた屈辱の雪辱とそれでも好きになったミゲルの更正につ
 ながるのだと信じることができ、実際はどんなにとっちめてもミゲルは蛙の面に水状態でありながらも、
 逆にそうしたとっちめる対象としてのミゲルの永遠性が見えてき、だからナディさんはそこに落ち着いた幻影
 を見つけることができるのです。
 『嘘吐きでロクで無しだけど、昔の知り合いなのよねぇ。』
 私にとってミゲルは、邪険にして無視して顔合わせたらまず一発ブン殴ってやる奴なんだ。
 でもそういうミゲルが居ることを、私は否定しないよ。
 そしてミゲルは死んだ。
 そう・・・
 自業自得で今まで騙した女の怨みで地獄に堕ちるのだろうし、でも・・・
 だから私はミゲルのために涙のひとつも流してやらないし悲しんでやりもしない、でも・・・
 でも私は、あいつに付いていった
 『わかっててもね、どうしても憎み切れないこともあるの。』
 憎み切ったら、それでおしまいだから。
 そう・・・
 ミゲル・・・・死んじゃったね・・・あの馬鹿・・・・・・・・・・・・
 ナディは、そして泣いた。
 ミゲルを愛していたからじゃ無い。
 ミゲルが、消えて無くなってしまったから、ナディは、泣いた。
 エリスが泣いたから、ナディは泣いた。
 エリスが愛がなんだと空々しい事を言いながらも、それとは全く関係の無い涙を流していたから。
 関係の無いエリスが関係の無いことを言いながら、そして、ナディを見ながら泣いていたから。
 ナディは、泣いた。
 どうして?
 知るもんか。
 
 そのナディさんを見て泣いた私がどこかに居るといいな。 (ボロボロと涙を流しながら)
 
 
 
 ひとひら:
 第6話。
 うーん、もうちょっとこう、ひねりというか奥行きというか、そういうのが欲しいところ。
 言いたいことはよくわかるのだけど、逆にその「言いたいこと」以上のものが無くて、だからはいそうだねと
 頷く以上のものが得られなくて、ちょっと寂しい。
 ひとひらという作品には、かなり期待できるだけの素質があるのだけれど、その素質の塊の表層的な部分
 だけを展開し続けている感じが強く、もう少しなんとかならないかなぁとつい欲張ってしまいます。
 うーん。
 私変われますか?って麦がののに訊いた辺りは、それでもなにげに広がりがあって良しなのですけれどね。
 その前ののの先輩や麦がひとりで思い悩むシーンの内実については、前回の感想で書ききっちゃったので
 同じこと書く訳にもいかないですし、うーん。
 やっぱりその、私変われますかってシーンですかねぇ焦点は。
 『私でも、変われますか? 先輩みたいに。』
 『自分が変われると信じられるなら、できる。』
 一歩一歩自分がギリギリ手が届きそうな範囲からまず手を出す(麦なら脇役から手をつける)というや
 り方は、実はその時点での自分の自覚以上の範囲に飛び出すことはできなく、つまり今現在自分が持
 っている自信の裏打ちで支えられるものしか背負う事ができない。
 一歩一歩踏み締める、その実感にこそろ自信が着々とついていくものだとしても、それはむしろ下手を
 すると変わることでは無く自信を付けることが目的になってしまうこともある。
 言い方を変えると、限り無く「変化」というものの実感を無くしていくことで、そうして変化することの怖さと
 重さを知らずに変化していってしまう、ということでもあるのです。
 必ずどこかで、ジャンプは必要。
 
 ううーん、うまく言えないんですけど、そのなんていうか、そのジャンプのある変化とない変化は、やっぱり
 変化としての価値に差があるんじゃないのかなって。
 その「ジャンプすることができる」という、それが今まで出来なかった自分からの変化、というものはできな
 い訳ですし、また麦の中に最も欠けていたものがそのジャンプするという事だったんじゃないかなとも思って
 いるのですよ。
 で、たぶんジャンプできるようになるには、逆説的ですけれど、ジャンプするしか無い。
 一歩一歩踏み締めながら延々と歩き続けて行って、それで確かに同じ目的地に到達することはできる
 かもしれないですけれど、それでは絶対にジャンプして得られる自信もまた得られない。
 うん、わかりますよー。
 私なんかも、絶対今の私じゃ無理無理って思って、1段階2段階下のレベルをやろうって思っちゃうことは
 しょっちゅうあるけど、でもそこでよいしょっと踏ん張って、明らかに今の自分じゃ無理なレベルに向かって
 ジャンプしてみると、やっぱり駄目なときもあるけど、それと同じくらいにそうしてジャンプした事自体が、そ
 れでも今度こそはきっとうまく出来るという、そういう変化への自信を得ることもできる。
 失敗自体が、次にこそ成功できるという自信を覚えさせてくれ、ジャンプしたからこそ、ジャンプの実感を
 得ることができるんだよね。
 だから麦は主役をやらなくちゃいけないの。
 だからのの先輩は麦に主役をやらせなくちゃいけないの。
 変われる、って思うのって、それ自体がジャンプする勇気だよね。
 変われた自分の姿なんて、絶対変わる前の今の自分には想像つかないのだから、それこそ着地点の
 見えないところにジャンプするようなものなのだものね。
 変われるっていう言葉は、その着地点があると信じてるっていう意味でもあるし、またジャンプする勇気が
 あるっていう意味でもある。
 着地点があろうがなかろうが、あると信じることすらできなくても、それでもそのジャンプすること自体に必
 死になってみる。
 だから麦の先輩みたいに変われますか?ってセリフは、変わることが出来た今の先輩のようになれますか、
 という意味以上に、今の麦と同じようだった昔の先輩のように、変わろうとしてジャンプすることができます
 か?という意味を持っているんだと、私はなんとなく思えました。
 
 
 では、また。
 
 
 
 
 
 

 

-- 070509--                    

 

         

                          ■■戦士と姫のお気の召すままに■■

     
 
 
 
 
 『お前も戦士だ。どうせ戦いの中でしか生きられん。そうだろう?』
 
 『・・・どうかな。私はハーフブリード(人狼)。半分人間だからな。』
 

                            〜怪物王女 ・第四話・姫とリザの会話より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 しん
 
 静寂が鳴った。
 張り詰めた音が響いていく。
 見上げずともそれとわかるほどに、夜の闇空には煌々と月が広がっている。
 夜陰に紛れて息を潜めながら、ただその月の下に屹立した。
 饒舌を憚り寡黙を恐れ、肌を伝う熱い雨滴が黒雲の遙か彼方より舞い降りてきているのを感じている。
 言葉を発しようとすればするほどに、その言葉が体から出ていく価値があるのかと問うてしまう。
 ざわめく夜風に身を震わせ、その震動に導かれるままに魂を絞れば、どこまでも果てしなく言葉はこの
 肌の内より漏れ出ていく。
 話し語り告げる、その意志を持たぬ綺麗にぬくもりに縁取られた言葉達は、この夜の中で凄惨に私を蝕
 ばんでいく。
 するすると、魂だけが抜けていく。
 まるで抜け殻のようにして、私は私の語る私を見つめている。
 呆然と凝然と、して居る。
 
 鼓動が、聞こえる。
 
 そしてやがて、その音しか聞こえなくなるがうちに、すべての音色は褪せていく。
 高く上がる月の下に佇む血溜まりのように、私はただ無為に悩んでいる。
 言うべきか、言わざるべきか。
 その答えは出ない。
 答えしか、無いゆえに。
 
 
 
 --- それはさながら運命に抗う道化の如くに
 
 
 
 ◆
 
 涼しさを体感する。
 爽やかな風を認識する。
 湖の上を滑り、道を疾走し、そしてうっすらと晴れていく私の中の靄は、やがてその喪失を以てその無を
 燦然と輝かせていく。
 気分が晴れるほどに心が重くなってくる。
 煩わしいものが無くなっていくほどに、体は頑として動かなくなる。
 力任せにその心と体を持ち上げブン投げれば、自分をどこかに放り投げていく感触だけしか手に入れる
 ことはできなかった。
 なにかをしきりに考え、無闇やたらと体を動かし、その煩雑さに身を置こうと計画し実行しても、それは
 ただなにかをしきりに考え無闇やたらに体を動かしている以上のことには、ならなかった。
 魂無き煩雑。
 いや、魂は私がどこかにブン投げちまったのさ。
 なにもしなければ、やはりなにもしない分だけ虚ろになる。
 しかしその虚ろさを感じるたびに、熱いものが頭の天辺目指して駆け上がってくる。
 怒り? そうじゃ無い。
 それはこの間消えちまった。
 薄い蒼が滲む夜の向こうを見上げる。
 明日が、見えない。
 それなのに、淡々と毎日は訪れる。
 私はなんだ。なんで此処に居る。
 
 鈴虫のように密やかに、蟋蟀のようにけたたましく。
 なぜそんなにムキになれる。
 なぜそんなに熱くなれる。
 私は私が信じられない。
 図星を突かれて動転して逆切れして、勢いに任せて追いかけて、そして上機嫌でどこまでも突っ走った。
 これは、誰だ?
 私は今なにをしているという問いの答えを、今現在私自身が行動を以て示しているというのに、その答え
 がなんの意味も無いことだけが、ひたすら私の笑顔の温度を抑え尽くしていた。
 絶対零度の上機嫌。
 冷たさをすら感じることができないままに、すらすらと描くように凍り付いている。
 『いや、そうじゃない。ただ話を・・・』
 言わなければならない。
 話さねばならない。
 しかしその強制がどこから発せられているのか私にはわからない。
 むっつりと無表情でふて腐れているのと、笑顔で楽しくやっているのと、どっちがいいか。
 その答えを与えてくれる奴を求めながら、その答えが無意味であることを知りつつ、むしろそれゆえにその
 答えをくれる奴を求めることだけに執着できるんだ。
 答えが欲しいんじゃ無い、答えを求めたいんだよ、私はきっと。
 私が私の想いや気持ち、考えや意志を誰かに伝えようとするのはなぜだ。
 なぜ自分が戦う理由を説明せねばならないんだ。
 別にそうするのが嫌な訳でも間違ってるとも思わない。
 なぜなら、そうするのを望んでいる訳でも正しいとも思ってはいないがゆえに、最初から私は無防備にする
 がままに動いているだけだからだ。
 
 
 そして気付けば夜がくる。
 
 
 ◆
 
 私の中の魔物が疼く。
 外に出せ暴れさせろ戦わせろと、夜の静寂を喰らい尽くす咆吼を上げ盛っている。
 なんだろう、この感触。
 既に臨戦態勢に入り真っ赤に燃え上がっているこの体を解放するのが、真に私の魂だけであると、なぜ
 今この瞬間の私はわかっているのだろうか。
 魂って、なんだ。
 それはどこにある。
 そしてその問いそのものが答えであることを、黒い天を焦がすこの全身の炎の中に、密やかにけたたまし
 い雄叫びを上げながら感じていた。
 魂は私だ。
 想いなど考えなど意志など魂などと無惨に分解するまでも無く、それらは私のうちの分類できる僅かな
 部分に名を冠しただけのものであり、その他の未分類の私の中のものとそれを合わせて、そのすべてが
 私であると、あっさりと呟きながら燃え上がるのが私そのものだ。
 私は魂で魂だけで無いもの。
 
 あの姫様は怖い奴だ。
 私がどうしてるかわかっていやがる。
 でもその怖さに萎縮する暇も無いほどに、ただの恐怖という二文字に換えて、私の中ではそれで済んで
 しまっている。
 しかしその二文字は私の中で営々と生き続けていて、それは常に私に身震いを起こさせている。
 姫様の行動に引きずられるようにして、私は大見栄切って冷たい上機嫌のままに動いていたが、しかし
 触れれば凍り付くその肌の内側は、なによりも熱く燃え滾っていた。
 私はその冷たさと熱さを今、同時に感じている。
 なんだか知らんが、ゾクゾクする。
 その興奮が、いつのまにか私を漆黒の夜の中に目覚めさせていた。
 炯々と闇の中に光る瞳を睨み返したとき、私はすとんとその瞳の中に私を見た。
 魚野郎共に囲まれ捕まって、高々と柱に括り付けられた姫様の姿が、足下から伸び上がる炎の影に照
 らされ、一刻の猶予も無いほどにそれは傲然たる隠喩を以て私の元に降ってきた。
 囚われの、姫。
 にも関わらず、傲然と他を圧倒し見下ろす姫。
 月の下の闇に囚われながら、足下の淫らな炎を虜にして空を焦がし天地すべてに君臨する怪物の姫。
 被支配感など無い。
 だが、燃えた。
 今、その炎上する影に紛れて、私は紅い瞳を爛々と輝かせているのだ。
 私は不敵に嗤った。
 演技よりも凄まじいけれん味を噛み締めながら、私は忽然と笑い起った。
 
 お姫様が随分と高いところからなにか言っている。
 傲慢よりも高邁に卑怯よりも誠実に、あの姫様の野郎は理路整然と魚野郎達を丸めこもうとしていた。
 言い分に筋は通っていて、その本意がどこにあれどその言葉を受けた者はその言葉を発した者の誠実
 に賭けることができる仕組みに、それはなっていたのだ。
 
 
 あの野郎・・・・・そういうことだったのか・・・・・・・・
 
 
 兄貴・・・わかったよ・・・
 私はもう、あんたに語りかけるべきじゃないってね。
 あんたが最後まで忠誠心を向けたあの姫様は、至高の屑野郎であるのと同時に至高の姫様でもあった
 んだな。
 あいつ、結局徹頭徹尾、双方の分が立つように、それで居て正しいことは正しいとすっぱりと織り込んで、
 完璧に魚野郎達との交渉を成立させちまいやがった。
 あのむかつくほどにいやらしく済ました顔で、嫣然と外道なことを言っても、ちゃんとその言葉の内実はある
 んだもんな。
 やられたよ、まったく。
 ああ。
 負けだ。
 私の負けだよ。
 
 あぁ? あいつが立派な裁定下したから、それに感心したかって? 
 なに言ってんだ、そんな事は私にゃかんけーねーよ。
 あれは、ただあの姫様が好きでやったこと。
 あいつは、ひとりの姫として、そのすべてを真っ直ぐに賭けてやるべきことを気持ちよくやりとげただけだろ?
 おまけにあいつ、交渉事の後始末として決闘なんて持ってきやがったんだぜ?
 しかもあいつ、力は人間並なくせに、たかだか武器の扱いに長けているのを恃みに、山よりでかい魚野郎
 と一戦かまそうってんだぜ? しかもめっちゃノリ気だぜ?
 まったく、お姫様の分際で、好き放題やり過ぎなんだよ!
 そこまでやられたら、私は・・
 
 
 
 ああ、たまんねぇ!
 戦士の血が、疼いて疼いて仕方がねぇぜ!!
 
 
 
 どけっ!
 
 呼吸を、ひとつ。
 
 
 
 『私がお前の決闘相手だ。』
 
 
 『私の名はリザ・ワイルドマン。偉大なる戦士ボルグ・ワイルドマンの娘!』
 
 『王女代理の栄誉を受け、お前に決闘を申し込む!』
 
 
 『来やがれ、魚野郎。』
 
 
 
 
 力なんぞ、最初から満ち満ちている。
 解放すべきものなど、初めからありはしない。
 すべてはただ現実のままだった、
 最初から全身全開の塊の私は此処に居た。
 うずうずして仕方が無い、あとはただ戦う場と相手を手にするだけ。
 私はただ、その場と相手に恵まれなかっただけ。
 そして今、私は最高の戦いの場と相手を得た。
 王女代理だぞ? 最高の肩書きだぜ。
 命を賭けて背負うに相応しい言葉だぜ。
 あの姫様、わかってたんだ。
 あの場を作ったのは勿論不可抗力だが、しかしそれを瞬時に戦士たる私の晴れ舞台としても利用可能
 なものにすげ替えたのは、紛れも無く姫だ。
 無論、あの憎たらしい姫様の本心がどこにあったのかは知らないし、知りたくも無い。
 だが、感謝する。
 私はひとりの戦士として、感謝する。
 そしてその感謝を突っ切って、私は最速の右ストレートを叩っ込む。
 全身全霊欲するままに、戦士たる私の欲望のままに、そして、その欲望の炎に欲情する私は爆発だ。
 戦いこそすべて? 違うな。
 すべてがただ、戦いへと向かっていくんだ。
 私が戦士である限り、私が戦士の魂で着飾りそれを貪り血肉と為したこの体が燃やす、この地より沸き
 上がり天をも焦がす紅炎に溺れるよりも深く感じる限り、私は無限に戦いを求める私に収束していく。
 最高の晴れ舞台の幕が落ちるたびに、さらなる舞台を求めて流離っていく。
 なにが不毛なものか。なにが虚しいものか。
 これほどの悦楽と淫楽を、私は知らないぞ。
 王女代理の名誉で飾る、この戦場の一夜に祝福を。
 そう、祝福だ。歓喜に震える魔獣の叫びを響かせてくれ。
 
 姫のために戦う訳じゃ無い。
 無論私のために戦う訳でも無い。
 ただ姫様が好き放題に戦う理由を脱ぎ散らかし、それを私は嬉々として拾い着こなし踊るだけだ。
 王族の姫という名は、最高に重く欲深く、そしてその代理で戦うことの名誉は、なによりもこの世界のすべ
 てを戦いへと収めていってくれる。
 戦いを求めること、それはつまり、姫とふたりで楽しく好き放題に生きていくってことだ。
 あいつはあいつのやりたいように、そして私は私のやりたいように。
 でもそのお互いがやることは、必ず結果的に関わり合っている。
 姫様は私に戦う舞台を与え、そして私は姫様の代わりに戦うんだ。
 
 真っ新な静寂だけが私を包む。
 どこまでも黒く澄み切った月光が、永遠不変に魂に差し込んでくる。
 
 
 『このときを、待っていた。』
 
 
 人狼族の本領発揮。
 どこまでも貪婪に、いつまでも執念深く、徹底的に欲を貪り尽くす。
 私のすべてが、その一片も余さず全力で燃え盛る。
 これだ。これだ。これだ!
 降りしきる水飛沫も鮮やかに、月光に映える肌が紅い輝きを広げていく。
 湿り気を帯びた夜気が存在感を以て、私の拳の肉圧にからみついていく。
 拳を解き、ゆっくりと息を吸い、そして背を甘く醒ましていく月光の下で、その慈愛にも似た快感に思わ
 ず微笑んでしまう。
 至高の、幸せだ。
 そんなら、始めるか。
 レディ、ゴー!
 
 
 ふっ・・・・・・面白いもんなんだな
 
 
 
 
 
 ◆ ◆
 
 『どうしてリザを連れてきたのか。 私は慈悲深いのだ。』
 
 リザはまず言葉を考える。
 自分が戦う理由を、自分が生きる理由を言葉にして姫に伝えようとする。
 けれど、リザにとって真に重要なのは、なにかを姫に伝えることでは無かった。
 リザはどうしても気が進まない言葉の展開をすることに使命感まで植え付け、しかしどうしても姫に伝える
 決断ができないまま、たとえその言葉を伝えられたとしてもなにも得られない事がわかってしまっている。
 ぐちゃぐちゃと縷々と言い訳をすることを是としないその戦士の本質は、既にリザの本質でもあるという事
 を、実はリザがその戦士としての自分が一番幸せになれるにはどうしたら良いのか、という問いの答えと
 して姫になにかをぐちゃぐちゃと伝えようとしている事自身によって気付かされてしまう。
 戦士として幸せになりたければ、御託は無用。
 けれど今は、言葉でなにかを伝える場しか無いという矛盾。
 そのリザの前で、姫は華麗に、そして傲岸不遜に言葉の使い方を示して魅せた。
 半魚人達との交渉をする「姫」の姿が、切っ先も鋭く夜空を貫いているのを見たリザは、その「戦士」と
 しての本質に真っ直ぐに立ち返ることが出来たのである。
 姫の言葉がどんなに剣呑だろうと慇懃無礼だろうと傲岸だろうと、そんな事はリザには関係が無い。
 もし姫が「王」で、そしてリザがそれとフェアな主従関係を結ぼうと言うのなら、姫にはリザに対してその
 関係を正当に維持するために必要な説明責任が生じ、それゆえにリザは同じくその姫に対してフェアで
 正確に意味が通じる単一の意味しか含まない言葉で以て応えねばならないだろう。
 けれど姫はあくまで「姫」であり、そしてリザは姫の臣下では無く、ただ王女代理を名乗れる場が与えら
 れただけであり、それゆえ本来的にリザは言葉に頼る必要も無く、またその関係を結ぶことを中心に執
 心する必要も無くなっていたのだった。
 
 そして姫は、ただ慈悲深くも、「戦う理由」を脱ぎ捨ててリザに与える。
 姫は王族同士で殺し合いをし、決してそれを望んではいないにも関わらず戦い続け、そしてそんな姫は
 兄に姫に刃を向けさせ死に追いやった張本人がその王族の誰かであるゆえにそれを殺すと、そうあっさり
 と言ったリザ、にならば私と共に居れば良いと言い放つ。
 作為などなにひとつ無く、ただふたりの利害関係が自然にもたらすのがただその言葉だけだっただけ。
 姫は別に、自分が戦うのが嫌でリザに戦いを肩代わりさせようというのでも無く、リザが戦いを求めている
 がゆえにそれを与えたのでも無い。
 姫は確かに王族同士で殺し合いをするのは望んでいないけれど、しかしだからと言って戦うことを放棄す
 る訳では無く、やはりリザが居ようと戦い続けるし、そしてまたそれと同時にリザが戦う機会があれば、やは
 り姫は華麗に傲然と言葉を翻してリザに代理をやらせるのだろう。
 姫は、戦うことから逃げている訳でも、戦うことに拘っている訳でも無いのだから。
 姫はただ生きて戦っている。
 だから、姫は無論リザに戦いの場を与えることを目的に戦い続ける訳でも無いし、ゆえにリザとの間に
 正当な主従関係は生じ得ず、またそうだからこそリザに同族兄弟を殺しても良いのかと問われ、それに
 ただ「いいのだ。」と断言して応えることができるのである。
 リザの戦いに姫はなにも求めていないし、また姫自身の戦いにも姫はなにも望んではいないのだ。
 
 姫と戦士は戦いの中に生きている。
 けれど。
 姫と戦士は、「姫」と「戦士」だけで出来ている訳では無い。
 姫の本質を示すものが「姫」であり、戦士の本質を示すのが「戦士」であっても、それはつまりそれ以外
 のものがその姫と戦士の中にもあるということ。
 戦う理由を口にするのはなぜか。
 なぜ、ただただ黙して夜の中に戦いの音色だけを奏でれば良いだけなのに、言葉をそれでも並べるのか。
 姫は「姫」を生きている自分の、戦士は「戦士」を生きている自分の姿を、見ることができるのだから。
 リザは自分が最も深いところで主体的な自覚と生きている喜びを得られるのが、その本質としての「戦士
 」としての自分の魂にある事を知り体感している、リザという巨大で深淵なひとりの存在なのだ。
 そこに戦うだけの自分が居て、それだけで充分だと真摯に感じる事ができてしまう、その事実にすっかり
 充足することが出来た夜の向こうには、必ずそれを照らし出す明日がある。
 リザは、戦いの快楽の重さと同等に、戦うことの虚しさにも重さを感じている。
 それは、勿論。
 姫もまた、同じ。
 姫という「姫」と同じ名がそれを隠そうとすればするほどに、それは燦然とその背の向こうで光り輝くのだ。
 だから。
 姫とリザは、それでも「戦う理由」を言葉にする。
 姫がそれを生産し、リザがそれを享受して返す、その不毛な循環に潤う自分達の存在の卑小さに閉じ
 る事を否定するがゆえに、ふたりは尚その不毛な循環を構築する言葉を綴り続けていく。
 たとえ不毛なことに利用されても、それでもその絶え間無い使用の堆積のうちに、きっとそれを不毛には
 しない利用法を得ることが出来るかもしれないと、信じて。
 
 リザは戦士であるが、戦士だけでは居られない。
 すべてが戦士である事のうちに収束して、絶対的な戦闘の快感に身を委ねることが出来る夜を持つ
 ことができるゆえに、それでも穏やかな朝は必ず訪れる。
 自らの戦士としての本質を、どう捉えどう活かしていくか、そのためにリザは不得手な言葉をそれでも紡
 ぎ続けていく。
 なにも語らなくなれば、それはその戦士としての本質に、リザが喰われてしまうことに他ならない。
 戦士の魂を、なによりも欲深く味わい感じるための、その主体としてのリザが無くなってしまえば元も子も
 無い。
 リザは「戦士」では無い。
 リザは「戦士」を無上に愉しむことの出来る戦士であるだけだ。
 リザは戦いを言葉で飾る。
 戦士は黙して語らずという戦士の美徳を、なによりも味わうために。
 リザの夜は、最高に美しく、最高に愉しいのだ。
 
 
 
 
 
 ◆ ◆ ◆
 
 今回のお話は素晴らし過ぎて言葉もありません。(散々語っといて)
 とにもかくにも演出というか魅せどころがわかっているというか、今までのお話とは打って変わって絶妙な
 映像表現の連続で御座いました。
 まさにうっとりしどうし。リザ姐さん最高、姫様最高!
 リザが姫の屋敷を覗き込んでウロウロしてるシーンや、姫にただ話があるだけとふっとヒロに髪をいじりな
 がら言ってるシーンや、向かってくる車の中の姫が画面から外れる直前にこっちに向き直るシーンや、
 リザにしっしっと手を振る姫のシーンや、リザが湯船にちょこんと座ってるシーンとそのあとの盛大に足組ん
 でソファにふんぞり返ってるシーンのギャップや、ハンマーの構え方から振り回し方からカコンカコンという音
 まで爽快なところや、無論滅茶苦茶高い柱の先に縛り付けられた姫の愛想の無さや、ヒロが吹っ飛ばさ
 れたのを見ての姫の呆れ顔や、リザが縄を切って狼化した両手を前で組んでるのが半魚視点から見下
 ろす角度だったところや、半魚人の隙を突いてのストレートの叩き込みの描写や、勿論マウントポジション
 でほとんど半裸のままに月光を背ににこっと笑うリザさんや、半魚人の長老の横で今にもふふんと鼻を
 鳴らしそうな顔で立ってる姫様や、最後のリザと姫のやりとりにおける視点の移動のタイミングとアップの仕
 方が絶妙なところや、ヒロが引き上げられたシーンなど、もう息もつかせぬほどの素晴らしさで、私は目眩
 すらも覚えてしまったほどです。
 もう快感です。
  
 どことなくというよりは明確に艶っぽく、まさに舌なめずりの音が聞こえてきそうなほどで、にも関わらずまった
 く蠱惑的なところは無く妙にひっそりとしていて、全くリアリティの追求を放棄したひたすら記号的な美であ
 りながらそれだけでは全く済まないほどに情熱的なのです。
 様式美、と言ってしまえばそれまでなのですけれど、しかしそれが徹底された上にどこか突き抜けた感が
 あり、また意図的に崩している部分さえあり、その揺さぶりに豊かさと余裕さをも感じることが出来てしまい
 ます。
 瞬間瞬間ごとのカッコ良さや美しさは、それは決してバラバラなものの寄り合わせでは無いにも関わらず、
 それでいてひとつのトーンで統一しそれのみで描こうという気負いも無い。
 つまりカッコ良くて美しければそれでいいでしょう、というスタンスは微塵も無く、それでいてただ物語のおま
 けとして適当にそういうものを組み込んでいる訳でも無い、という事なのです。
 そしてまたそのちょっとしたシーンの演出が物語的に重要な箇所ばかりかというとそうでも無く、さして重要
 では無いシーンでさらっと小粋にきめていたりもしている。
 リザの半裸モード(笑)はやや適当な組み込みのきらいは感じられますけれど、しかしあれもあの格好と
 共に激しく伝わってくるリザの情熱の感触がとても強く滲み出てきているゆえに、むしろそのような見解で
 無下にするような格好でも無いと思いましたし、またそれは逆にリザの熱さを表すものとしての、その記号
 としての「格好」でも無いのだと思います。
 意味がある、と書くととかく誤解されがちですけれど、その意味とやらそのものに意味がありそれを抽出し
 て読み取るということでは、それはありません。
 リザとリザの格好は切り離して見るものでも無く、またリザの格好そのものに意味があるでも無く、ただそう
 した格好をしているリザが居るのであり、それゆえに意味があるのは格好では無くリザが居ることそのもの
 なのです。
 もっと簡単に言ってしまえば、自分がリザと同じ感触を得れば良いということになるのでしょうか。
 あのリザの姿を見て、そこに隠喩を読み込み読み解くのでは無く、あのリザと共に熱い夜を服が脱げか
 けるほどに愉しみまくる。
 なんだか今、とんでも無いことを書いてしまった気がするのですけれど、私は半分は冗談なのできっと
 大丈夫なのだと思います。信じています。(色々と)
 
 そんな感じで私はすっかり怪物王女に入れ込んでおりますので、平気で色々なことを書いてしまいます
 けれども、なにはともあれどれだけ愉しめるかが勝負どころと思いますので、そしてそんな勝負事などどこ
 吹く風で泰然として欲望にまみれて、これからもこの作品を見つめていこうと思っています。
 私は怪物王女が心の底から大好きです。
 
 素直が一番。
 
 
 
 
                                ◆ 『』内文章、アニメ「怪物王女」より引用 ◆
 

 

-- 070506--                    

 

         

                           ■■今期お勧めアニメと題して■■

     
 
 
 
 
 皆様、ごきげんよう。
 
 GWも終わり、一段落ついた感じです。
 4月始まりのアニメが沢山過ぎてギャーギャー騒いでいたのも、もうだいぶ落ち着いてきました。
 さすがに紅い瞳も落ち着きました。もう大丈夫。
 といった感じですので、この日記もまた今までのように満遍なくだらだらだ感が滲み出てくるような案配に
 なれると良いな、と思っていますので、どうぞ皆様応援よろしくお願いします。
 むしろ呆れてやってください。
 
 さて、さて、さて。
 この頃はチャットなども昔日に比すほどの盛り上がりを垣間見せてくれるほどに、充実というには気恥ずか
 しく、それでもまったり寂れているというには勿体ない、そんなありがたい状態が訪れているようでして、
 私としましては大変心強くまた嬉しい限りです。みんなありがとな。
 ああして私の作った場所が活用されているのを見ると、なんだかそれだけで自信がついてしまいます。
 紅い瞳に真珠や小判が与えられたようなものです。無理無理、嬉しすぎて逆に怠けそう。
 そんな感じで見境と冷静さを失い始める寸前で、くるっと足取りも軽くに、いっちょう頑張りますか、と
 そう奮起なんだか投げやりなんだかわからないような、そういった気合いを入れて、これからもサイトを
 続けていこうと思います。
 なんだかなに言ってんのか素でわかりませんね。ま、ええねん。
 
 
 それではぁ、日記ですか。
 日記っつーか、あれな、アニメの感想な。
 ここんとこ今までの見たくにがーっときてぐわーっといくような感じの乗り切り全開で書けたためしが無いの
 で、っていうか結構前からそうなんだけどねー、なんか乗らないっていうか。
 でもさ、最近ようやっと思うようになったんだけどさ、これってスランプっていうより、新境地なんじゃね?、って
 思うんだよね。
 や、なんかあー前みたいに熱くしゃんとして書きたいなぁあの快感をもう一度、みたいな感じで、無意識
 的にでもなんとかせなあかんて焦って、色々考えたり悩んだり伸びたり寝転んだりして、それで延々とこう
 して今に至るまで感想書き続けてきたけど、なんつーか、もういいんじゃね?ってね。
 なんか今の私がおかしいとか間違ってるとか、それは確かにそうかもしれないし、少なくとも現時点でなん
 か違うと思ってるからそれはそうなんだけど、でもそれと同じくらいに、今のこの状態が全く新しいものなん
 だって認識して、そこから新しいスタートを切ることも考えた方がいいんじゃないかなって。
 似たような事は前にも書いたんだけどさ。
 
 例えば、今まではAという方式でやってて、その方式に則った成長の仕方とか成長率とかあった訳で、
 それから見て今は滅茶苦茶成長率下がってるから、今は全然駄目って感じなのかもしれないけど、
 でもその「駄目」を修正する手前で、その「駄目」を使って新しいBという方式を開発できないかなぁって
 思う。
 だからAはAでええねん、だからそのBの原型であるAとしての「駄目」をあくまで正しいAに修正する作業
 は続けても良いんよ。
 で、それプラスその新しいBの模索も同時にやって、そんでそのAとBを融合させて新しいABとしてのCとい
 う方式を作ればいいんじゃないかなぁ。
 ていうか、Aだって元々そうやっていくつかの方式の合成で出来てるのだろうし、だから考えてみればそれ
 って結構当たり前なことだなぁって今更。
 だから、むしろそのAとBというふたつの方式があることを、これからは意識してやってくと、それは確実に
 形を作っていける対象になれるのじゃないかなって思うんだよね。
 なんていうか、失敗に学ぶってそういう事でもあると思うし、だからまぁ、当面の目的は、今私がなにを見て
 なにを感じてるかっていうか、つまり今の私はAとしてどれだけ「駄目」で、そしてそれをどうやったらBとして
 作っていくことができるか、って事なんだよね。
 うん、そうしてれば、今度はきっとAの方式では作りたくても作れなかったものが、そのBの中に見つかるか
 もしれないし、そしてさっきもいったように、Bに今までの下地だったAを添えればより高い次元のCができる
 かもしれないし、っていってもそのCというのはイコールABなんだけど、それは逆にいうと単独のAと単独の
 Bが結合することで、その「単独さ」ゆえに作ることができていたものが作れなくなる、というマイナス要因も
 同時に持ち合わせてるから、今度はそういったものも視野に入れて考えてみると、たぶんきっとよりそうい
 ったことを考えてる自分を立体的にそして周囲との関係性の中のその存在を感じていけるようになるの
 かもしれないなぁって、それはちょっと飛躍かな、なんかまだピースが足りないかな。
 
 ていうかまぁ、実際文章を書くときに、んな事を考えながら書いてる訳がありませんけれど。うん。
 までも、自分の頭がスムーズに動いてくれないときは、そういった手法に頼り沿ってやってみるのもいいか
 もしれませんけど、けどなぁ私そういうの苦手なんだよなぁ、なんていうかいつでも直感勝負、みたいな
 感じだし、突っ走るままに行ってましたからねぇ、だから気持ちよく書けたんですけど。
 って、なんかすごくくたびれた事書いてますね、なんか人生の曲がり角に直面してるみたいですねこりゃ。
 でも結局は、「今」自分が一番なにがしたいかってことの問いに、一番相応しい答えにしか、その一番の
 快感を感じることはできないってわかりきってますから、自分の中にあるものを主体にするか、それとも
 提出した理論なり言葉なりを主体にするかは、それこそそれを試したみたときの「今」の私にしかわかりま
 せんしね、まーなるようになる、というのが一番正確なまとめの言葉になる訳なのだよワトソン君。
 
 
 はい、そんな感じです。ロクでも無いこと書かせて頂きました。でも反省はしていない。
 で、最近はまた本読み出しました。今年は周期が短いですね。読んだり読まなくなったり。
 ていうかかなりの勢いで読んでるので、そのお陰でまたアニメ視聴に遅れが目立ちって、あーあ。
 日記とかもその前に本読んでて、キリをつけられなくて結局最後まで読んじゃって気付けば日付が変わっ
 て日記は白紙のままだったりとかしてます誰か止めて。
 ま、岩井志麻子とか坂口安吾とかその辺の私のお気に入りのも読んでますし(しかしほんと岩井志麻子
 は気付くたんびに新刊出してるね)、あと司馬遼太郎もちょこちょこ読んでて、それと今は丁度小野不由
 美を読んでますね。
 小野不由美は十二国記も勿論良いんですけど、今読んでる屍鬼などのホラーなミステリーも面白くて
 ですね、っていうか屍鬼に滅茶苦茶ヤバイくらいにハマってるんですけどね、今。半端無いよ。
 あ、私はミステリっていうかホラー好きです、っていうか岩井志麻子も思いっきりホラーですし(広い意味で
 のホラーの著作もある)、まぁ怖いのとか痛いのとかは結構好きです。
 ちなみにリングとからせんとかあんなの全然怖ないです。別に目に見える部分だけがホラーじゃないと思
 いますけど、あれ見えない怖さのとこも普通に怖くないもん。
 っていうか、あれらは見えるはずの単純の怖さをただ見えなくしてるだけの怖さ、って感じで、別に内容そ
 のものは全然怖くないっていうかなんというか、ええと、話が逸れました。
 あ、まぁ、本の話はこれくらいで。
 ちなみに私が通ってる図書館で、屍鬼の下巻を借りてる人ははやく返しなさい。
 
 
 
 ◆
 
 なんか随分書いたね。書くつもりは無かったんですけど、いつのまにか。ふふ。
 んじゃ、そろそろ片づける方向に向かいますか、まだアニメの感想も控えている事ですし。
 で、ええと、なんだっけな。そうそう。
 今日のタイトルにもありますけど、っていうかこのタイトルなら目立つから読まれる可能性高いかなぁとか
 、ほら前にアニメの各評やったときのタイトルはそれとわからない奴だったですからね、今回はいけますよ
 という感じで、はい、始めます。
 今期お勧めのアニメ。紅い瞳がお勧めするアニメです。アニメです。
 チャットとかでそろそろ訊かれることも無くなってくるくらいに、既に話数が進んでいる今になにを今更と
 思われるかもしれませんけれど、アニメのお話は何回してお良いものですので、良いのです。(強引)
 といっても、そんなに言うことは無いですね。
 今期一番お勧めなのは、Daker than BLACKですね、やっぱり。
 これは沢山の人に見て頂きたいですよ、是非。
 年季の入ったアニメファンを満足させるもの以上のものがありますし、そしてアニメ見始めたばかりの人に
 もなんらかの強いインパクトを与えてくれると思いますよ、これは。
 ていうか私もこんな作品からアニメの世界に入れたら良いなって思います。
 あとは、エル・カザドですね。
 これはなんていうか、シリアスとコメディが絶妙な感じで融合してて、なんていうか味わい深い人生そのも
 のって感じを目の当たりにした感じが出来て、決して高尚ぶったり力みかえったりしてない、そのなんとも
 いえない脱力感、ていうとちょっと違うか、たぶん私達の肌と同じぬくもりをすっと感じさせてくれるような、
 そういう感じがすごく好きですし、またこういう作品がぽんとひとつ自分の視聴リストの中あると、それだけ
 でなにかこう心の中に余裕を持てるかもしれません、ああ、勿論ひとりのアニメファンとしての心の余裕で
 すけれどね。(笑)
 それと怪物王女が、単純に私の趣味的には一番のお勧め。
 んー、それ以上は言えないかな(笑)。 好きか嫌いか、まずはそこから始めて頂ければと。
 ラストにひとつ。
 Over Drive
 これはね、お勧めです。熱いです。なんか知らないけど、熱いです。熱くなっちゃいます。
 で、熱くなった自分を見下ろして、ダサっとか言ってる自分が見えて、さらにダサっとか言ってるうちに、なん
 か靴の踵トントンと蹴って鳴らしていってきまーすっていって玄関飛び出してるみたいな、そういうなんてい
 のかな、元気が出る、というより、なんかしんないけど、元気っていうことはすごいことなんだ、っていうのが
 身に染みて広がってわーってなっちゃうっていうか、まぁ、その、たぶんみんな大丈夫。怖くない。(怪)
 見にくいですね。表にします。
 
 ■紅い瞳の今期のお勧めアニメ!
 ・Daker than BLACK
 ・エル・カザド
 ・怪物王女
 ・Over Drive
 
 他にもいいのはありますけど、たぶん結局今見てるアニメ全部語ることになりますので、ほんとにどうしても
 見て欲しいなって思うのだけに絞って見ました。自制心万歳。
 あ、でもむしろ怪物王女なんか誰も見てくれなくっても別にいいや逆に私が独り占め出来てそれならそれ
 で嬉しいかもみたいなそういうアレな方に本気になっちゃったり、ええと、落ち着け。
 あと、瀬戸の花嫁っていうのが良いんですけど、これはギャグアニメですからほんと好きずきっていうか、
 まぁわかる人にはわかりますからそれでOKみたいな感じで、強くはお勧めしません。弱勧。
 
 っと、あとそうだ。
 前の日記で、今期の私の視聴リストを書きましたけど、Over Driveが抜けてたり、あのあと視聴を打ち
 切ったりしたアニメやあと新しく見始めたらき☆すたが入ってなかったりしてますので、改めて決定版(たぶん
 )を記しておきます。
 
 
 月曜: エル・カザド ・らき☆すた
 火曜: CLAYMORE ・ 神曲奏界ポリフォニカ ・ OverDrive
 水曜: ひとひら
 木曜: 怪物王女
 金曜: Daker than BLACK ・ ロミオ×ジュリエット
 土曜: 英國戀物語エマ第二幕
 日曜: ハヤテのごとく ・  瀬戸の花嫁
                                       全:12作品
 
 ふたつ減ってふたつ増えた。結局減らない訳ですかそうですか大変ですね紅い瞳さんも。(はい)
 とまぁ、そんな感じです。
 新しく見始めたらき☆すたについては、また後日。(ネタ温存)
 
 んでは、アニメの感想を。
 
 
 
 
 ◆
 
 
 神曲奏界ポリフォニカ、の感想は中止することに致しました。
 どう考えてもどう粘っても、その労力に見合うだけのものが書けないと判断したがゆえです。
 感想を期待していてくださった方がいるかどうかはわかりませんけれど、ごめんなさい。
 その分の労力を、これから他の文章の制作に使っていきたいと思います。
 エル・カザドの単独日記制作中止に続きまして、紅い瞳がご迷惑をおかけしております。
 
 
 エル・カザド:
 第5話。
 テーマがしっかり掘り下げられてる訳でも無く、綿密な現実描写の積み重ねで味わいを出してる訳でも
 無く、おまけにガンアクションもおまけ程度の出来で、でもそれなのに、なんだろうこの面白さは。
 基本的に陽気に口笛を吹き鳴らして、そして笑いながらずんずんと歩いている、その明るい歩幅の中に
 ちょこちょことそうしたテーマなり味わいなりを盛り込んでいて、だからきっと、これを見ていてただナディや
 エリスたちと一緒に微笑むことができれば、それ自体がもうこの作品の一番面白いところなのじゃないかと
 、この頃思うようになってきました。
 もの凄く構造は簡単で、言ったりやったりしてることも単純明快で、勧善懲悪も笑顔で逃げ出すほどの
 わかりやすさで、ただもう真実がそこにあるだけという、しかしそれが真実であることを誇示することが全く無
 く、ただ淡々と「色々とある」世界の中で、どうやってナディとエリスが生きていくかというのを描いているだ
 け。
 だからその映像そのものに思考性がある訳でも無く、ましてや考えるべき対象としてのテーマが根本にあ
 る訳でも無く、ただ生きてこの世界の中に在れば、そういうテーマのひとつやふたつはあるよねという、つま
 りそのテーマ自体を考えるのがメインでは無く、ただそのテーマ「も」在る世界の中にあのふたりが生きてい
 る事自体が、ひたすらメインで在り続けているのではないかなぁ。
 だからたぶん、あの画面の中にはただただ「答え」だけが広がっているのじゃないかな。
 さっき勧善懲悪って言ったけど、でも別に悪党をばっさりやることが目的では無くて、ただ悪いことは悪い
 よねってことを体現するナディとエリスが居るだけだから、悪党は生き延びてたりあっさり死んじゃってたりして
 そもそもその「悪」党にスポットは当てられてなく、またそれゆえにその悪をばっさりやるナディさん達にも
 同じく焦点は無いのですよね。
 悪いことは悪いけど、それを正すことだけが人生じゃないしねー、あ、勿論悪いことは極力しないけどね、
 みたいな軽くて深くて明るいノリがある。
 でも、これまでのお話からしてナディが暗いなにかを抱えていることはわかる訳で、でも今回の話みたいに、
 ナディは心底カラっと晴れ晴れと明るくしてるし、むしろそこに「健気さ」なんぞ微塵も見せないほどに、ただ
 今をエリスと楽しく生きてるナディさんだけが描かれる。
 過去は過去、今は今。たとえ過去の積み重ねの頂点に今があるゆえに過去は消せなくても、それでも
 今の自分がやることは決まってる。
 つまり、楽しく笑える今を生きるだけって、ね。
 だからあのナディさんの脳天気な笑顔に、ナディさんの苦しみの影が一抹も見えないところが、この作品
 の最も素晴らしい「なにか」の表現技法なんだって、私は思うなー。
 比べられることの多いノワールとマドラックスと共通するところは結構あるエル・カザドですけれど、この点
 はそのふたつには無い、まったくの新しい境地だと思っています。
 絶望があるから希望があるのでは無く、苦しいからこそ笑うのでは無く。
 絶望があってもなくっても、苦しみがあってもなくっても、ナディさんとエリスは希望に満ちた笑顔を私たちに
 魅せてくれるのです。
 つまりナディさん&エリスさんの笑顔に萌え。
 
 
 ひとひら:
 第5話:
 なぜ、頑張らなくっちゃいけないんだろう。
 さぁ、そんな事はわからないねぇ。
 いや、たぶんもう頑張ってるからじゃない? だから逆にここでやめちゃうとなんだかダメージ喰らっちゃうみ
 たいな気がするんじゃない?
 えー、なんでよ、やめたらなんでダメージあんの。っていうかむしろこれ以上努力してた方がダメージ大き
 くない?
 そもそもダメージとか関係無いと思うだけど。なにかやりたいことがあって、そのために頑張りたいって思って
 るからただ頑張るだけで、その頑張りたいって思うことよりもやりたいことなんてほんとは無いってわかって
 るから、だから今ここで欲望に負けて挫折しちゃったら絶対後で後悔するって、あ、ダメージってそういう
 こと?
 そう。
 そうだって。
 じゃ、そのダメージってのが怖いから、努力するのかな?
 や、それは違うね、ダメージの予感はしてるんだけど、それが主因で頑張り続けるなんて事は絶対無いと
 思う。
 うん、よく後で後悔したくないから、とか聞くけど、そんなんそう言ってるだけで実際そのときあとの事なんか
 考えてる訳無いもんね。
 ダメージを予感することで、なんか他のもっと大事にことを感じまくっちゃうっていうか。
 だよね、その努力を続けるか続けないかの選択を迫られてるのは今なんだからね。普通その選択を迫ら
 れたときに、なんも考え無しだったら、きっとほとんどの場合努力をやめたいなんて思ったりはしてない。
 そう、努力をやめなくちゃいけない理由があるってことで、それはつまりそれが無ければ努力し続けるって
 いうか。
 その努力をやめなくちゃいけない理由を叩きつぶす事ができないのは、それもまたつまり、その努力し続け
 たいっていう、その素の気持ちが弱いからって事になるだろうね。
 だからその努力し続ける気持ちをなによりも強く持つことに努力すれば、ええと、その努力をやめなくちゃ
 いけない理由を叩きつぶす力も増大するってことだよね?
 そうだね。
 うん。
 
 やれなくても、やる。やらなくちゃいけない。
 理屈なんてどうでもいい。現実なんてどうでもいい。
 自分の中にある、最も深く最も熱い「気持ち」は、それらのものとは離れてある。
 その「気持ち」だけは、なにものにも従属させてはいけないし、従属させてしまえば、それはそれら理屈や
 現実に自分が従う「口実」になってしまう。
 できない理由はいくつでもある。できるはずの無い現実はどこまでも広がっている。
 その中で、自分ができるものだけを延々と紡ぎ続けていく事に、本当に満足するための努力をすることと
 、絶対に諦めずにその理由を突破し現実の中に強く生きていく事に努力し続けることのどちらに、人は
 本当にその想いのすべてを賭けることができるのだろうか。
 そして、そのなんであろうと、そのなにかを求めている深く熱い「気持ち」は、なにに向かっているのだろうか
 。
 なにもかも諦め、なにもかも今の自分に満足することはできる。
 そして一度出来てしまえば、本当にそれ以上を求める気持ちに惑わされる事も無くなるだろう。
 だが。
 今は、違う。
 麦は、今、そのどちらを選ぶかの、その岐路のど真ん中に居る。
 どちらを選んでも、きっと全力を傾ければ、それに見合ったものを得られるだろう。
 主役を降りて、演劇もやめて、そしてのの先輩に背を向け今までの生活に向け、なにもかもを受け入れ
 修行を真摯に続け、それに気持ちも込め、理論も紡ぎ、或いは誰からに教えを乞うのもいいだろう、き
 っと麦の中には、その今の自分のみで充足できる素質があることに気付き、そしてゆっくりと地に足を付け
 て穏やかに生きていくこともできるだろう。
 変わらない平凡で穏やかで、そして平和で愛しい日々の生活。
 それを心の底から愛することのできる麦は居ただろう。
 それは、声のために演劇をやめることも選べたのの先輩とて同じこと。
 だから、そもそもふたりがどちらを選ぼうと、そのふたつの選択肢に軽重は無い。
 その麦も、ありだろう。
 だが、しかし。
 のの先輩は言う。
 麦はやらなくちゃいけない、と。
 誰のためにのの先輩はそう言ったのか、それは無論麦のために言ったのであり、そしてそれは同時にのの
 自身の事を強く想ったからこそ思った「麦のため」であり、当然そんな事は自覚しているののであり、では
 だから、ののはもう麦にそれ以上は言わないのだろうか?
 次回ののはもうそうやって麦に強制することをやめるのかもしれない。
 ではなぜ、それならばののはのの自身を思ったのか?
 自分のために麦に強制させる事が、そんなにマズいことなのか?
 自分のために言い出したことだからこそ、それだけに囚われずに麦のことをも考えて言えば良いことでは
 ないのか?
 ののが自分の想いを勝手に麦に押しつけてるだけだが、それが「押しつけ」である事に囚われ、肝心の
 その「押しつけ」の「中身」を見誤ってしまっても良いものだろうか?
 ののは確かに最初からなんでもできた訳じゃなく、麦と同じくらい駄目だった自分にそれでも必死に食い
 下がって努力してきたからこその今がある訳で、だからのの先輩と私は違うと言われても、その先に続く
 麦の言葉はすべてそのののの今の姿が努力で出来ている事を否定するものにしか聞こえないだろう。
 だが、麦にとっては、その肝心のののと同等のほどの努力ができなかった訳で、むしろ麦からすればののは
 立派な努力できるという才能の持ち主なのだ。
 だからそんなぽんぽん言われたって、のののような闘争心の無い麦はただ弱く萎れていってしまうだけ。
 頑張りたくても、頑張れない自分が居る。
 だが、しかし。
 『あの子は、この役をやらなくちゃいけないのっっ!』
 麦は、そんな自分の姿を、もう見たはずだ。
 頑張りたくても頑張れない、ののみたくに強くなくて、そりゃのの先輩だって最初は弱かったのかもしれない
 けど、でも今は強いじゃないですか、私は駄目なんです全然、無理です、嫌です・・・辛くて痛くて・・・・
 気持ちが抑えられないよぉ・・・
 そして満天の星空に光る、のの先輩の言葉を麦は見る。
 
 今、ってなんでしょね?
 麦にとっての今って、なんでしょね?
 あれだけ自分を責める言葉を紡ぐ事が出来て、あれだけ自分が頑張れない理由を作ることが出来て、
 そして、自分がそれらの言葉を紡ぎ作っている今此処に居ることを知る。
 自分が、そして自分の「気持ち」が、それらの言葉に囚われ従属しようとしているのが見えてくる。
 麦にとって大事な事は、なんだろう。
 自分が変わりたい気持ちが確かにあって、それでもその気持ちのままに努力することができない理由が
 一杯あって、そしてその理由に従って努力するのをやめ、自分が変わることを諦め日々を安穏と生きて
 いくことだろうか。
 少なくとも、「今」の麦にとって、それは違う。絶対に違う。
 自分が変わりたい気持ちが確かにあって、それでもその気持ちのままに努力することができない理由が
 一杯あって、だからその理由の中身をひとつひとつ分析具体的に問題化し、それをひとつひとつ解決する
 ことにこそ、改めてすべての力を込めて頑張るべきなのじゃないか。
 ののは、確かに厳し過ぎた。
 そしてのの自身、確かに自分のためだけを考えて、そうしてしまったところはある。
 けれど。
 ののの想いはどうあれ、ののの厳しい言葉は、なによりも「今」の麦には響いたのだと私は思う。
 麦は努力できない理由を解決するのでは無く、その理由という名の口実を以て自分が変わることから逃
 げようとしていたのだから。
 麦の最も根本的な願いは目的は、自分が変わること、だからそれがありながらもその辛さから逃げ出して
 しまうことは、その根本的な願いに背くこと。
 だからののは、言った。麦はやらなくちゃいけないのだと。
 だからそれは、なによりも麦のためになる言葉。
 のののためにでもあり、麦のためにでもあり、そして。
 今此処に生きている、努力し続け変わりたいと思い続けているののと麦というふたりのためになる言葉。
 あと甲斐くんグッジョブ。
 理咲さんナイス右。
 桂木先輩は良い役立たずですね。
 
 のが多いー。
 
 
 
 
 
 
 

 

-- 070502--                    

 

         

                   ■■兄の仇を前にした妹の前の傲然たる姫■■

     
 
 
 
 
 『お前が兄貴を殺したのは間違い無いのに・・・・・・なんだか、気が逸れちまった・・・。』
 

                            〜怪物王女 ・第三話・リザの言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 戦うために理由はいらない。
 なにかを求めるために戦っている訳でも、戦うために戦っている訳でも無いのだから。
 ただ戦っている。
 なぜ生きているのかと問われ、それに答えを出すことができても、そうしてその答えを口にしている自身が
 既にそこに存在している事実が、否応無くその答えを無効化してしまう。
 生きている理由を口にしている「私」がただ生きているだけ。
 そして、その生きている私は、それでもその生きている理由を口ずさまねば、とても生きてはいけないと
 思いながら生きているものでもある。
 だから、戦うために理由はいる。
 その理由を口にしなければ、とても戦えないと思う私が此処に居る。
 そして、その前者の理由と後者の理由は、全く違うもの。
 戦いを始める前に唱える口実は必要で無く、ただ戦いの後にそれを語り形にするための方便は必要な
 のだ。
 ただ戦っている私は気づいたら既に戦っているのだから、戦いを始めるための「戦う理由」は不要であり、
 しかしそうして戦い為してきたことに意味をつけることによって、ただそれをなにかに役立てるような形式に
 換えて残すためのその「戦う理由」は、私には必要なのだ。
 
 姫は笑う。
 自らの戦いが不毛であることを自覚するゆえに、その虚しさに囚われる事をこそ愚と思うが故に、さりげな
 く姫の行った戦いに意味がある余地を残していく。
 忠誠心に篤い部下のワイルドマンが、妹のリザの命を握られそれと引き替えに主君である姫を討とうと
 し、血涙を飲みながらも正面から正々堂々と姫に挑み、そしてまっすぐに姫に討ち取られた。
 そして今度はそうとは知らないリザが、兄の仇と罵りながら姫に討ちかかる。
 姫は笑う。
 愚かな、と。
 なにを姫は笑ったのだろうか。
 なにを愚かと姫は笑ったのだろうか。
 姫はリザを返り討ちにする気は無く、またリザを討つ如何なる理由も作る事も無く、ただ自らの存在を賭
 けて正面からリザに相対する。
 姫はリザを嘲笑う。
 『お前の行動が兄の死を冒涜してるとも知らずに。』
 兄の仇を前にした妹の前で、姫は傲然とこう言い放つ。
 激昂するリザの前で、姫はふふんと鼻を鳴らす。
 自分で考えろ、と。
 そして姫は、高く掲げた剣をゆるやかに下げてしまう。
 やめだ。
 姫は戦いを停止する。
 『兄妹揃って同じように手にかけるのも馬鹿馬鹿しい。』
 前出の姫の言葉に対しても、その激昂以外のなにものも示さなかったリザを見て、それを口実にリザを
 討ち取る正当な行為を馬鹿馬鹿しいのひと事で軽やかに片付け、そして姫は己の為した「戦いの理由」
 を口にし、あくまでリザ本人に解決させようとする。
 お前の兄は誇り高い死を選んだ、ただそれだけだ。
 姫はリザに選択を迫ったのだ。
 果たしてお前の兄は、本当に誇り高く死んだのか、それとも無念のうちに私に謀殺されたのかと。
 姫の話からだけでは、兄の死の真相などリザにわかる訳も無い。
 どんなに姫が真摯な対応を示そうと、どれだけ心底虚しそうにため息をついても、すべては姫の演技で
 あるといえば、その疑問を越える説得力はどこにも存在しはしない。
 姫が兄を卑怯にも謀殺し兄が無念のままに死んだ事を否定する、その一切の証拠は無いのだ。
 リザにとって最も実感のもてる兄の死の理由は、主である姫の汚い謀略であるのだから、その観点から
 すれば姫がリザの前でなにを言おうと、証拠が無ければそれはすべて姫の悪あがきでしか無い。
 そして。
 だから、姫はリザに選択を迫ったのだ。
 お前はなにを、信じるのか、と。
 お前は、兄の死にどんな意味を見つけるのか、と。
 
 姫が兄を謀殺したのか、それとも本当に姫の言ったような事情で兄は誇り高く死んだのか、そのいずれに
 も証拠は無く、また姫にもリザにもその証拠を掴む機会は得られていない。
 ただリザ達の前にあるのは、リザの兄ワイルドマンの死という事実だけだった。
 そして、その兄の死に意味を見つけようとしている妹が、此処に居る。
 だからリザは気づいた。
 いつのまにか、気づいた自分以外の自分にはなれなくなっていた。
 馬鹿馬鹿しい。
 兄貴が死んだことに、変わりは無いじゃないか。
 リザは兄が誇り高く強い戦士だったことを知っている。
 知っているからこそ、そんな兄があのような姫に殺されたのが信じられなく、おまけにその当の姫はワイルド
 マンを正々堂々と討ち果たしたなどと言い、姫と戦いその弱さを体感したリザからすれば、すべてが姫の
 姑息な謀略があったという言葉で説明できてしまうだけだ。
 あの強い兄貴が、こんな弱い王族の姫とまともに戦って負ける訳が無い!
 姫がなにか言えば、それらはすべてリザの中の文脈の中で書き換えられてしまうだけ。
 或いは姫に誅殺されたのかもしれないが、そもそも忠誠心の篤い兄が殺される理由などあるはずが無
 い。
 いくらでも、言葉は続く。
 そして。だからこそ。
 姫が語った兄の死の真相が、「誇り高い兄」という言葉を使い読み解くと、実は限りない整合性を持って
 しまうことに、リザはどうしようもなく気づいてしまったのだった。
 誇り高い兄なら、確かに肉親の私のために胸を裂かれる思いで主に刃を向けることもあるだろう、と。
 ならばもはや、リザが姫を討つ理由は無くなり、むしろこれ以上リザが戦えば、それだけ兄の死を冒涜し
 ていくだけという姫の言葉にも納得するしか無い。
 
 だが、兄は死んだ。
 兄貴はお前に殺されたんだっ!
 
 そもそも、姫の言葉に納得するには、確かにその姫の言葉通りの事情があったことが前提となっていなけ
 ればいけないのに、それを裏付ける証拠はなにひとつ無い。
 だから兄が真実誇り高く死ねとならそれで良いが、それが真実で無ければ元も子も無い。
 姫が、ただそう言っているだけなのだ。証拠はなにも無い。
 そして、リザは理解する。
 ならば兄貴がこいつに汚い手で殺されたという証拠も、全く同じ程度に無いと言えると。
 証拠があるのは、現実として此処に在るのは、ただ理由のわからぬ兄の死という事実だけ。
 
 仮に、そう仮にだ。
 兄貴が誇り高く死んだとしたって、こいつが兄貴を殺したのは事実なんだ。
 どんな理由があろうと、兄を殺した罪がこいつにあることは確かなんだ。
 だから私は、それをこそ恨む。
 こいつを絶対に許さない。
 兄貴を殺したこいつを。
 こいつは平然と、兄貴を殺した正当性を述べてるだけで、ただ自分が助かりたいだけなんだ。
 
 姫はただ戦っている。
 そして沢山のものを殺し、ゆえにその分だけ罪を重ねている。
 そして姫に討たれた者の仇を討とうと、リザのような者がやってくる。
 怨みそのものに正当性があるかないかなど無く、それゆえに復讐者としてのリザはただ美しい。
 言葉を不要とし言葉に囚われない、その本質にのみひたすら刃を向けるリザはなによりも美しい。
 けれど。
 姫は、その微笑でリザに問いかける。
 お前は、自身が復讐者になるのが目的か? それとも兄の誇りを守るのが目的か? と。
 姫はワイルドマンの事情もすべて知りながら、まっすぐに殺した。ゆえに申し開きの余地は無い。
 姫は、リザの兄を殺したのは事実なのだから。
 そして。
 そのリザの兄たるワイルドマンを殺した「理由」を、姫は自身の正当性の獲得のためには一切使わなかっ
 たのだ。
 姫はワイルドマンと正々堂々と戦い、そして殺した。ただ、それだけ。
 如何なる理由も目的も無く、ただ姫はワイルドマンと戦って殺しただけ。
 そして姫は、いつでも妹の復讐に応じると言うのだ。
 お前が、兄の死を冒涜しても良いのならな、と言いながら。
 それを、その言葉を盾にして姫が保身を考えているというのか、それともその言葉の意味を自分で考え
 るのか。
 
 リザは気づいている。
 この姫を殺すことなどでは無く、兄の誇りを守ることこそが自分の目的なのだと。
 
 もしこの目の前の卑劣に見える姫が、兄を汚く謀殺したのであるのなら、その兄の傷つけられた誇りを
 回復するために、姫に復讐するリザの姿はあるだろう。
 リザは、怨みに身をゆだねた復讐者。
 それは本質的には、その復讐の目的たる「理由」を持たない、ただただ怨みのままに殺戮を重ねるもの
 である。
 だから本当は兄の誇りを回復するというのは、その目的という名を借りた口実としての「理由」だけにしか
 過ぎず、それを必要としている復讐者のリザは存在しない。
 けれどそのリザは、今こうして怨みに満ちている自分が、こうして復讐を続けていることのうちに、それが為
 してきたことの「理由」を、既に姫の言葉から得ていることに気づいたのだ。
 私は・・・兄貴の誇りを回復するために戦っていると言っているだけで、実際はただ怨みのままに行動して
 ただけで・・・だから・・・・それに気づいたから・・・私は・・・兄貴の誇りを回復するために戦っていたんだと、
 改めていうよ・・・兄貴の誇りを回復するために戦っていたんだと・・・・・いうことにするよ・・・
 だから。
 リザは、そのために必要なことをすることのみに、真実今の自分にとって「意味」があることなのだということ
 に思い至ったのだ。
 そのために、姫に告げられた兄の死の真相が必要だというのなら・・・・私はそれを・・・受け入れよう・・・
 兄は誇り高く死んだ・・・・・・・そうだ・・・・・・・・・・・兄貴は・・・・・死んでしまったんだ・・・・
 
 
 兄を醜く殺したかもしれない姫を殺すことで、兄の誇りを回復するのか。
 兄に誇り高い死を与えた姫を殺さないことで、兄の誇りを獲得するのか。
 
 『あいつは・・兄貴を殺したけど・・・そんな兄貴の気持ちを誰よりも理解してたんだな・・・』
 
 
 その言葉を口にしたのは、私。
 私の、誇り。
 私は、復讐者の誇りなど欲しくは無い。
 私は、姫の言葉に臣従するしか無い腑抜けにもなりたくない。
 私は、戦士。誇り高い戦士ワイルドマンの妹。
 ならば、どうする。
 私は、どうしたらいい。
 
 『自分で考えろ』、か。
 
 今、此処に居る私は、なにを。
 
 私は真相を追求する。し続ける。
 兄がどうやって死んだのか、その証拠を探し続ける。
 私は不器用な女だ。
 その証拠という「理由」が無ければ、ひとり戦うことができないのだ。
 でも、だから。
 その「理由」を口ずさみながら、いつも気づいたら既に戦っている私が居るだけなんだ。
 私は、戦う。戦い続ける。
 兄の死の真相を求めながら、その真相を明らかにするものを求めながら生きていく。
 そのものが、たとえ兄貴を殺し兄貴の最後を看取った姫の中にあろうとも。
 私はそれを求めて、生きていく。
 私は、姫を信じるために生きるんじゃ無い。
 私は。
 姫の言葉が真であるかそうでないかを見極めるために、姫を見続けてやるのだ。
 だから姫よ。
 私を信じさせてみろ。
 お前が真実を、兄の仇を前にした妹の前で、傲然と言い放てる存在であると。
 
 今の私に言えるのは、ただ、それだけだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 ◆
 
 
 やはりひとつのアニメ作品としての造作のレベルはかなり低く、早くも作画の乱れも見えたりと、なかなか
 先が危ぶまれるゆえに楽しくなってきた頃合いでした。
 けれどお話の中に見える小さなテーマを読み解いていく面白さは、むしろ少しずつ上昇してきているような
 気もします。
 もっとも私が「怪物王女」に慣れてきたってだけの話かもしれませんけれどね。それは置いといて。
 あとはやはり、新キャラのリザですか。うーん、いいですねぇ。(直球だな)
 姫とのバトルシーンはアニメーションとしての愉しさはまったく無かったですけど、全体的に姫とリザの立ち
 位置を感じさせるようなものがあって、姫の卑怯な正しさぶりや、リザのまっすぐGoな哀しみなどが、その
 ふたりが渡り合わせた、まさに仇と復讐者の会話と相まって綺麗に出ていました。
 だからリアルな戦闘シーンなんて、そもそもこの作品には必要で無く、無論ただのカッコ良さも及びで無く
 、ただただ前後の言葉の中にその戦闘の中での言動を組み込んで、総合的に立体的にその戦闘の存
 在そのものになにかを感じていければ良いのかなぁと、思います。
 もっとも、さすがに作画だけは崩れない程度にはして欲しかったんですけど・・・
 特にラストの姫のひきつった顔(バトルシーンじゃないけど)なんて、もう・・・・・あれはちょっと無いでしょ。
 
 それと、リザの背にヒロがもたれかかるシーンのリザは、その前後の姫とのやりとりや墓の下の兄への語り
 かけが、その表情にオーバーラップしてきてかなり深いものがありました。表情の作画は駄目だけど、うん。
 あのときのリザはいろいろと読み解けますよねぇ。
 結局ヒロも姫姫なんですもんねぇ・・・『馬鹿野郎』って呟きますよそれは。
 尊敬とそして愛情もあった兄貴が、姫への想いのために苦しんで、そしてその姫の安堵の死を与えられて
 ねぇ・・・おまけにヒロは姫のところまで連れてけって・・・・・ツッコミとしてぶっ飛ばしても・・・・・・
 その握りしめた拳は、すぐにその力を失ってしまいますよね。
 ばかやろう・・・
 
 誰が一番馬鹿なのか、その背中で語っていくリザ姐さんに、私はぞっこん惚れました。 (私が一番馬鹿)
 
 
 
 
 
 
                                ◆ 『』内文章、アニメ「怪物王女」より引用 ◆
 
 

 

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