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◆◆◆ -- 2007年11月のお話 -- ◆◆◆
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■■ 怒りのいる人 ■■ |
『まぁ、またいずれ会うだろう。 |
待ってるよ。私は何処にでもいるからね。』 |
〜もっけ ・第八話・謎の老婆の言葉より〜 |
不安。 |
不安がある。 |
色んな事を、想像する。 |
そしていくつでも、それが想像では終わらないことを予感する。 |
実感のある不安。 |
でも、それを怖れる訳にはいかない。 |
怖れていたら、なにも出来ないから。 |
そして。 |
怖れてはいけないと感じているから。 |
頑張ろう、頑張らなくちゃ。 |
それなのに。 |
それなのに・・・どうして・・・ |
あのとき怒ったのは、どうしてなのか、わからないではいられなかった。 |
そして・・・ |
怒らずにはいられなかった、その自分が、そのとき、そしてこれからも此処にいることを感じたんだ。 |
その事にだけは不安を感じなかったことが・・・・・ |
底抜けに、怖かった。 |
◆ |
瑞生達は修学旅行ということで、小田原・箱根にやってきます。 |
瑞生にとっては、お祖父ちゃんと静流から離れて過ごす初めての二日間。 |
既に行きのバスに乗っている段階で、瑞生はコチコチに緊張しています。 |
初めての修学旅行、長いバスに乗るのも初めての瑞生。 |
なにかに取り憑かれても誰にも助けては貰えない状況下に於いては、それら当たり前の小学生の |
緊張感もその輪郭を失い、ただただ正体の知れない不安感として、その誰にも助けては貰えないという |
巨大な不安感にプラスされるものでしかない。 |
いつまで経っても、その初めての修学旅行の緊張感がウキウキ気分に変わらない瑞生。 |
まさに瑞生的には厳戒態勢。 |
そんな緊張状態では落ち着ける訳などまるで無く、早速バス酔いしてしまいます。 |
けれどそんな瑞生も、写真係だった事を思い出し、頑張ってみんなの写真を撮らなくてはいけないとい |
う事を思い出し、奮い立ちます。 |
もはや修学旅行を楽しむとか楽しめないとかそういう次元では無くなっている瑞生ですが、そのみんなの |
写真を撮っているという事自体で、みんなの役に立っているという感覚を得られる事が嬉しく、また |
その嬉しさを頼りにして、瑞生はなんとか踏ん張ることが出来るのでした。 |
『ほんと、みんなと旅行に来れただけで嬉しいし。』 |
簡素といえば簡素過ぎる瑞生の感想ですけれど、しかしいっぱいいっぱいの瑞生にとっては、それだけ |
でも言えた自分に満足することは出来ていたのでした。 |
それでいいのか小学生、という問いを与える余裕すら今の瑞生にはないゆえに、逆に知らぬが仏的に、 |
今のこの小さな楽しさだけで満足できるのでした。 |
とはいえ、それで瑞生の不安が払拭される訳では無く、また忘れることが出来るのでも無く、早々に |
瑞生的には超危険地帯(?)の神社の鳥居をくぐる頃には、もうビクビクドキドキが復活していて、もは |
や楽しさの欠片も無く、あっさりとなんとかしなくちゃという現実対処に瑞生を引き戻してしまいます。 |
キツツキが木を突く音にゾクっとし、風がそよげば先生に飛びつき、散々そのビクビクを晒すことで、まだ |
取り憑かれてもいないのにこれだけみんなに変な目を向けられ始めてるのに、これでもっと奥にいって |
ほんとに取り憑かれちゃった日には・・・いやいや取り憑かれ無くても、どんどん増していく不安感でまた |
とんでもない挙動不審っぷりを示しちゃったら、もっと変に思われる・・・ |
しかし、瑞生に出来るのは、ただその不安感を押さえ込み、じっと我慢して変に取り乱したりしない事 |
だけ。 |
そしてなんとかして、絶対なにか居る奥の方にはいかない方法を考えること。 |
勿論、自分が取り憑かれやすい体質だから奥にはいけない、だなんて事は言えないのです。 |
そしてそこに登場したのが、深田麻美。 |
ちょっと自分勝手で、ちょっと我が儘なところのある瑞生のクラスメイトです。 |
本人に悪気がある訳では無いけれど、しぜんその自分勝手で我が儘なところを発揮してしまうことで、 |
周囲に嫌な印象を与えてしまう子。 |
瑞生の友人の優も久佐子も、そして瑞生もあまり良い印象は持っています。 |
その麻美が写真係の瑞生に、もっと奥で私達の写真を撮ってよ!と言ってきます。 |
当然、奥に進むことはなんとしても避けたい瑞生ですが、しかし写真係としては撮らない訳にはいかない。 |
しかしここで、瑞生はこういう事をしてしまうのです。 |
あの子、ちょっと我が儘なんだよね、もうあの子結構撮ってあげているのに、まだ撮れだなんて・・・ |
『だってもうフィルムが・・・』、瑞生はそう言ってやんわりと断ろうとするのです。 |
奥に進むのが嫌なのが、本当の理由であるのに、です。 |
そしてこれは、瑞生が自分の不安を解消するために行った、ひとつの手法でもあるのです。 |
奥に進んだら絶対なんかある、でも写真係だからいかなくちゃいけない、このふたつの不安が瑞生を |
襲い、しかし瑞生はそれを麻美に対する批判めいた拒否で以て塗り替えてしまうのです。 |
つまり、麻美に対する怒りと、その不安をすり替えてしまったのですね。 |
確かに麻美は少し我が儘かもしれず、そしてクラスの子を平等に撮らなくてはいけないのは事実。 |
実際、隣に居た優が『しかたないじゃん、全員の撮るんだからさぁ。』という言葉は正しいですし、瑞生 |
もそれに頷くことは出来ます。 |
だから麻美を撮らない、というのは間違ってはいない。 |
しかしそれは、奥に進まないで良い理由にはならないのです。 |
それなのに瑞生は、奥に進まないで良い理由を、その麻美の我が儘さに求めたのです。 |
麻美ちゃんが悪いんだからね・・・ |
そして瑞生は、既に感じ始めているのです。 |
麻美の悪さと、自分の感じているその悪さは違うものだということを・・ |
瑞生は不思議な老婆と出会います。 |
神社から戻って一息ついたまもなく、瑞生は憑かれてしまいます。 |
しかしそれをその老婆が祓ってくれたのです。 |
瑞生に憑いてやろうとして近づいた際に、瑞生のクラスメイトの高津と風間にぶつかられ倒れる老婆。 |
滅茶苦茶激怒します、このお婆さん。鬼のように(笑) |
最近の餓鬼はごめんなさいもまともにいえんのかと憤ります。 |
しかしその怒りの元は無論教育的指導などでは無く、自らが受けた痛みの「報復」にあるのです。 |
当然といえば、当然。 |
というより、本来「叱る」というのはそういうものであったのでしょう。 |
自分がやったことが相手にどれだけのものを与えたのか、それを相手の「怒り」の表現で強く感じる。 |
その「怒り」を怖れるゆえに、だから人は謝るという「落とし前」をつけるのですね。 |
逆に怒らなければ、それらはすべて無かったことになり、ただ老婆は自分の痛みを受け入れ我慢する |
しか無い。 |
老婆自身にとって、その怒りを示すということは、そうした自らが負ったものを取り戻すことが出来る余地、 |
すなわち他の者と平等にして繋がりを持てる事が出来る感覚があるということを示すものでもあります。 |
それはとても正常なことで、人との繋がりを重んじ、みなが相互交渉によって、その関係の中で平等で |
あろうとするために必要なことなのです。 |
むしろその怒りを否定するということは、その平等を否定するということに繋がるのです。 |
そして、きっちりと謝る瑞生。 |
このとき瑞生はなにかを感じたことでしょう。 |
先ほどの麻美とのやりとり、自分はあれで本当に良かったのかと、うっすらと瑞生はこのとき考えたのかも |
しれません。 |
その後、泊まる旅館の部屋に霊が居ない事を確認して、すっかりと羽目を外す瑞生。 |
ようやっと、普通の小学生らしく、元気いっぱいに修学旅行を楽しむことが出来ました。 |
しかし、その夜。 |
いつの時代も変わらぬ、修学旅行先の夜のトイレのその恐ろしさよ。(笑) |
優と久佐子と連れ立っていくも、既にどうしようも無く憑かれる予感MAXの瑞生。 |
そして、その不安感もMAX。 |
しかしこれまた先ほどの神社と同じく行かない訳にはいかず、そして今度こそ言い訳など通じなくかつ |
通じて困るのも瑞生自身なゆえに、勇を鼓舞してトイレに踏み込みます。 |
時間、経過。 |
あまりの遅さに声をかける優と久佐子。 |
そしてトイレの扉が開くと、青い顔をした瑞生が出てきて、そのまま、ばたん。 |
気づけば布団の上の瑞生。 |
どうやら、憑かれたのでは無い様子。 |
つまりは、憑かれるかもしれない、という不安そのものが瑞生に負担を強い、そして気を失わせたのです。 |
言うなれば、「不安」という「妖怪」が憑いたとも。 |
しかし、このとき瑞生は憑いていないみたい、とはっきりと言っています。 |
ですから、実は「不安」という「妖怪」は存在しないのです。 |
つまり、いない。 |
瑞生は、その「不安」に取り憑かれてはいない、つまり不安は不安だけであって、瑞生自身がその不安 |
に囚われ、その不安自身になるという意味でそこに存在させる事は無かったのです。 |
瑞生にとっては不安は重大なものでは無く、それは既に瑞生の支配可能なモノとして認知されている |
のですね。 |
これはただ我慢して乗り越える事が大事なモノだと、そうして我慢する事は良く無くちゃんと周りに向けて |
叫ばなくちゃいけないという事とそれを比較し、この場合はやっぱり叫ぶべきじゃなくて自分できっちり |
支配するモノだと、そう自覚を以て収めているということ。 |
そしてその事に関しては、なんの不安も感じてはいないのです。 |
ゆえにその不安は、「妖怪」になり得なかったのです。 |
瑞生は、友人達に優しく介抱されたことで、今ならみんなと繋がれる、今ここで全部自分の体質のこと |
喋っちゃおうと思い、『実はね私・・・憑かれやすい体質なんだ。』と告白してしまいます。 |
けれど、優と久佐子は「憑かれやすい」を「疲れやすい」と誤変換して受け取ってしまい(笑)、この瑞 |
生の告白劇は見事大失敗に終わったのでした。 |
しかしこれで逆に、瑞生は見事、自分の体質についてのことはすべて自分の胸のうちに収め、そして |
全部自分が解決するという覚悟を決めることが出来たのです。 |
やるっきゃないよ。 |
『あと一日・・・無事に乗り切れるかな・・・』 |
さて、ここからが本番。 |
一夜明けて、大湧谷へと駒を進める瑞生達。 |
そこで再びあの老婆と出会います。 |
会って早々、瑞生は寄せる(憑かれる)体質であることを言い当てられ、どきっとします。 |
瞬間、昨夜の覚悟が軋みます。 |
昨日祓ってくれたお礼を言いに行かなくちゃ・・ |
それ以上のものを求めている瑞生であることを、その追いかけていく背が示しています。 |
そしてその前に、瑞生は麻美にカメラを貸してくれとせがまれます。 |
老婆が気になり、そして早く追いかけたいあまりに、ただ『気を付けて使ってよ。』の一言だけで、あっさ |
り貸してしまうのです。 |
麻美が自分勝手我が儘気味な子ゆえ、軽率にカメラを扱いかねない事はわかっているのに、です。 |
でも一応気を付けて使ってねって言ってあるから・・・ |
それだけじゃ全然足りないことを自覚しつつ、しかし瑞生は老婆を追うことを選択してしまうのです。 |
追いつき、老婆と話す瑞生。 |
老婆もまた憑かれやすい体質であり、そして今ではもう付き合い方を覚え、それほどそれに困ること |
も無いとのこと。 |
しかし若い頃は、その自分の体質を『なんで私だけが。』と呪ってもいたと言います。 |
『どうしたら、憑かれなくなるんですか?』と問う瑞生に、老婆はこう答えます。 |
『人を、喰っちまうんだよ。』、と。 |
私らは感じやすい。 |
だから、それに対して怒るんだよ。 |
図々しくね、自分の権利を主張するんだよ。 |
私らはね、相手のことばっかり気になりすぎて、ついつい自分のことがおろそかになっちまう。 |
相手の気持ちを斟酌するのは大事だけど、それに囚われちまうって事が、憑かれるってことでもあるのを |
、あんたのそのお祖父さんも教えてくれたんじゃないか? |
で、結構周りの人間てのは私らより相手の気持ちに鈍感だから、ほっときゃそのまま平気でいっちまう。 |
悪意があろうがなかろうが、大体そんなもんだよ。 |
だからね、そういう事に対しても、私らがどうにかしなくちゃなんないんだよ。 |
だってそうだろ? 私らは敏感で、どうしても色んな事がわかっちまう難儀な体質なんだから。 |
だからな、周りのそうじゃない人間達は、そういう私らの敏感さを知らずに、平気で傷をえぐるような事も |
しちまう。 |
だったら、そいつらがそうしてるんだ、って事を教えてやれるのは、私らだけだろ? |
それともなにかい? |
あんた、ずっとずっとひとりで我慢し続けて、し続けて、そして耐えられなくなってあとで大爆発するクチか? |
それこそ、あんたのためにも、周りのためにならないよ。 |
だからな、キツイくらいでも我が儘なくらいでも構わないよ。 |
大事なのは、知らせることさ。 |
自分が周りからどういう仕打ちを受けていて、そして周りが自分にどういう仕打ちをしてるのかをな。 |
よくよく考えりゃ、世の中不平等なのに、平気でそれが平等だと思っている人間は多い。 |
特にこの国にゃ、「みんなと同じ」ことが正しく、そしてみんなと違う奴の事なんか、すーぐに悪者にして |
片づけちまうモノが多いしな。 |
たとえそうしなくても、そのみんなと違う奴を救うとしても、「みんなと同じ」モノを与えて、それだけで済ます |
し、逆にそれに合わなきゃそんときこそほんとにそれに合わない奴を悪者にして、徹底的に叩くのさ。 |
こっちが救おうとしてるのにそれを受け取らないなんて、自分勝手で我が儘だ、とね。 |
あんたにも、覚えがあるんじゃないのか? |
そう言われたことも・・・・・ |
そう誰かに言ったこともな。 |
そして、気を付けな。 |
『私はそうしてきたよ。 自分でやり方を見つけたんだ。 |
もしかしたらあんたは、別のやり方を見つけるかもしれないけどね。』 |
いいかい? |
なにが『妖怪』なのか、それがわかるのは、あんた自身だけなんだよ。 |
◆ |
老婆と別れるとすぐに、瑞生は衝撃的な出来事に遭遇します。 |
麻美が、瑞生が貸したカメラを壊してしまったのです。 |
カメラは直るけれど、撮った写真は全部・・・ |
どくん |
瑞生の顔が変わります。 |
どういう・・こと? |
私は、こう感じました。 |
まず真っ先に瑞生が頭の中に響かせた言葉は、「やっぱり。」という言葉だったと。 |
それは確信というよりは、逃れられない事実を突きつけられたような、恐怖。 |
瑞生にとって衝撃だったのは、実はフィルムが駄目になった事よりも、瑞生の努力が水の泡になった事 |
よりも、その原因の麻美にそうさせたのは自分だった、という事なのです。 |
悪いのは私・・・あんなに頑張ったけど・・・でも悪いのは・・・私・・・・・ |
でも・・・・・・私頑張ったのに・・・・苦しい想いしてもう駄目だって思ったのに写真係だから私は・・・ |
頑張ったのに・・・でも私が・・・わかってたのに麻美ちゃんにしっかり伝えなかったから・・・ |
そのカメラの大事さを・・・・それを知っているのは私しか居ないんだから・・・それを教えなかった私が・・・ |
でも、ちゃんと伝えたよね? |
気を付けてね、って。 |
それが、瑞生の報われない努力、そして「失われた」努力を取り返すための「怒り」を後押しします。 |
気を付けてねの一言じゃ充分じゃ無いし、少なくとも麻美の性格を知っている瑞生だったならば、その |
麻美を御すに必要な事はもっと他にあったことを知っていたはず。 |
だのに、瑞生はそれで麻美を断罪しようとしたのです。 |
麻美を、気を付けてねの一言で簡単に通じる他の多くの「みんなと一緒」にして、その文脈で語り、 |
そして彼女を断罪しようとしたのです。 |
だって私、ちゃんと気を付けてねって言ったじゃん! |
そう言ったんだから、それを無視した麻美ちゃんが悪いんじゃん! |
どんだけ大事なカメラか、そんなの馬鹿だってわかるでしょっ。 |
みんなの大切な思い出がつまってるんだよ、いい加減に扱っていいわけ無いじゃん! |
それを・・・うっかり滑っちゃったって・・・・・・うっかりって何よ、うっかりって!!! |
ううん、そうじゃ無い。 |
『言ったよね・・・? 気を付けてって・・言ったよね・・?』 |
ごめんって言ったじゃない・・・? |
『なによそれ! 謝りゃいいってもんじゃないのよ!!!』 |
謝って取り返せるようなものでは無いのは、周知のこと。 |
だからそもそも軽率に扱おうが厳重に扱おうが、壊してしまったんなら同じこと。 |
しかしその覚悟があったなら、絶対に絶対に軽率になんか出来るはずが無い。 |
それなのに、麻美から漏れる言葉は、彼女の行動が軽率だったことしか示さない。 |
謝罪は言い訳がましく、ただ瑞生の怒りを怖れ、自分を赦して欲しいだけなのが見え見えの麻美。 |
全然、全然わかってないじゃん!! |
なにが失われ、そして誰がなにを奪ったのか、わかってないじゃん!! |
それをわかってないのに謝るって、ただ自分が嫌な想いしたく無いってだけじゃん!!! |
そして、失われたみんなの思い出は戻ってこない。 |
そして・・・ |
『せっかく・・・撮ったのに・・・・ここまで・・・頑張ったのに・・・』 |
写真係の苦労だけでは無く、憑かれやしないかとビクビクしつつ、写真係を頑張ろうと思うことで必死に |
頑張れた。 |
お祖父ちゃんに無理いって修学旅行に来たのに・・・・一杯一杯覚悟してきたのに・・・・・ |
そして。 |
魔が訪れます。 |
老婆が瑞生の前に顕れます。 |
いえ。 |
『私の居るところに、あんたがいるんだ。 |
あんたの方が近づいてる。』 |
老婆はこう言います。 |
でも、あんたは楽しかったこともあったろ? |
それを忘れちゃいけないよ。 |
それを忘れて、修学旅行を台無しにするのは、実はあんた自身さ。 |
あんたが嫌な想いをしたのと、あんたの修学旅行が駄目になるのは、別のことだろ? |
思い出しな、友達と楽しく遊んで、色んなところ回って。 |
そしてあんた、随分頑張ったろ? |
そしてその頑張りは全部、そういう楽しいことをあんたにちゃんと届けてくれた。 |
嫌なことの影に隠れてても、ちゃあんと、その楽しいことはあんたの胸の中にあるのさ。 |
嫌なことのせいで、修学旅行を台無しにする気かい? あんたは。 |
いいや、あんたはその嫌なことのせいで、修学旅行を台無しにされることを認めるんかい? |
怒りな。 |
叫びな。 |
私はすっごい楽しかったって。 |
『あんたは来て良かったんだ。』 |
全くその通り。 |
私もそれが正しいと思いました。 |
瑞生もまた、そうなのでしょう。 |
しかし、これじゃ少し足りない。 |
だから・・・ |
あんたがその怒りを示すなら、ちゃんと相手を見据えなくちゃいけないよ? |
『来なくて良かったのはあの子だ。』 |
あんた、もしかして、自分は楽しかったってことだけ見て、今度は嫌な事を見なかった事にする気かい? |
それじゃああんた、報われないよ。 |
いいかい? |
怒りは、怒りだよ。 |
純粋な感情だよ。 |
そうじゃ無いのは、全部ほんとはまがいものだよ。 |
あんたは確かに、中途半端なことをした。 |
あの深田って子は確かにいい加減な子だが、それを知ってて野放しにしたあんたにも責任はあるさ。 |
だから深田って子に対して叫ぶ前に、自分がまずその自分の責任に向き合うのは大事な事だ。 |
そりゃ正しい。 |
でもそこまで出来たんだったら、わかるだろ、じゃあ、ちゃんと深田って子にも償って貰わなきゃな。 |
昨日も言ったけど、自分だけが我慢して納得して反省したって、周りは変わらんし、それこそ独り善がり |
だよ。 |
あんたは確かに悪いことしたが、しかしあの子も悪いことをしたのも事実。 |
あの子が軽率なのはあの子に悪意があってのことじゃ無いのは重々承知、でもだからこそその軽率さが |
あんた達からすれば辛い事なんだって事を、ちゃんと伝えなくちゃいけないのさ。 |
だからね、私はあんとき見てたけど、あんたがうすうす自分の罪に気づいていながらも、あの子に対して |
ちゃんと「感情的」に怒ったのは、まぁ偉いとは言わないけれど、やるべき事はやってるねとは思ったね。 |
そんなら・・ |
『湖にでも突き落としてやろうか。』 |
『確かに気持ちは収まらない・・』 |
瑞生に、すっと「なにか」が取り憑きます。 |
私は、こう思います。 |
このセリフを言うまでの瑞生は、全く正しかったと。 |
しかし、そのセリフの後から、瑞生は道を踏み外しかけるのです。 |
なぜならば。 |
なんのために、報復するのかを見失ってしまったからです。 |
報復するのが、自分の気持ちを晴らすことが目的では無いのに、前述した老婆の理屈(それ自体は |
正しいと思う)にそのまま無防備で乗っているうちに、その理屈に「憑かれて」しまったのです。 |
その理屈は瑞生が支配して、上手く主体的に使いこなしてこそ意味があり、またその文脈に於いての |
「報復」には純然たる価値がありました。 |
しかし、瑞生はその理屈に支配されてしまったのです。 |
いえ、その理屈に瑞生が支配されると都合の良い、「感情」そのものに主体性を奪われてしまったので |
す。 |
なんのために怒りを示すのか。 |
それはその相手とより良い平等関係を築くためゆえにです。 |
それを越えて示す怒りは、そもそもその平等感覚を念頭に置いていないものなのです。 |
老婆は麻美の悪いところをつらつらとあげつらい、瑞生はそれに頷く「だけ」になってしまったのです。 |
その老婆が挙げた麻美の悪口に頷くだけで、その怒りを発露してしまえば、それは本来麻美と瑞生の |
両方が悪く、かつ自分の非を贖った上で相手の罪を詰る、という行為から逸脱してしまっているのです。 |
そして、その事を自覚出来なくなる。 |
それが、「ヤマウバ」。 |
ヤマウバに憑かれるということ。 |
瑞生が麻美に対して激しく怒った事。 |
あれは、ふたつの側面を持っているのです。 |
それは全く正しい「報復」の表現であり。 |
そして同時に、それだけで終わればそれが目的になってしまう「ヤマウバ」の一端でもある。 |
麻美には反省を求めると同時に、瑞生やみんなが失ったものと同じものを奪われる必要があります。 |
けれど、瑞生自身にとっては、決して麻美に反省を求め麻美からなにかを奪う事が目的にはならない |
のです。 |
それはただの、復讐。 |
自らの失われたなにかと心中する行為。 |
それは、老婆が言った「人を喰う」ということの対極にあることなのです。 |
自分を諦めちゃってるだろ、それ。 |
あんた、人を喰うつもりでいながら、あんた自身がその「人を喰うということ」に喰われちゃってんだよ。 |
なんのために人を喰うんだい? |
自分の気持ちをすっきりさせるためだけにかい? |
違うだろ。 |
もう全然、違うだろ? |
気持ちがすっきりしないことと、それを晴らすことが目的になるかどうかは、全然別のことだ。 |
瑞生は、麻美に謝罪されます。 |
しおらしく、おどおどして、でもまだどことなく腰がひけている麻美。 |
そこらへんで買ってきた使い捨てカメラをお詫びにして持ってきたって、そんなものがお詫びになる訳も |
無いことは、麻美自身も含め、みんながみんなわかること。 |
瑞生だって、自分の怒りの「理屈」に問い合わせれば、あっさりと駄目出し出来るのがわかってしまう。 |
そんなもので済まそうなんて、麻美ちゃんまだ全然わかってない。 |
しかし。 |
瑞生は気づくのです。 |
自分が、そうして懸命に謝っている麻美自身の顔を、全く見ていないということを。 |
自分が、怒りの「理屈」に問い合わせて、その答えを元にしてひたすら麻美を断罪しようとしていることを。 |
なんにも気にしてないそぶりで、なにも無かったようにして許すっていうのは、やっぱりおかしい。 |
理屈的に麻美ちゃんのその謝罪は、まだまだ全然私達が失ったモノの重みと等しくなんかならない。 |
でも・・・・ |
瑞生は、すーっと、感じたのです。 |
麻美ちゃん・・・・すっごい・・・本気だ |
麻美が手にしているのは使い捨てカメラで、それで今から写真撮ったって、今まで撮った分には全然足り |
無い。 |
絶対的に、足りない。 |
しかし、相対的には、どうか。 |
瑞生の「怒り」は、一体なにを目的として、麻美の前に示されたのか。 |
それは、麻美の誠意を引き出し、そしてそれを元にして傷ついた瑞生とみんなとの繋がりを回復する |
ためにこそ、存在したモノ。 |
すなわち、ヤマウバが其処にいたのです。 |
心を文字通り鬼にして、麻美を激しく怒鳴りつけました。 |
その瑞生の怒りに対して、ただ理屈を付けて言い訳したり、或いは逃げたりと麻美がするのならば、 |
瑞生はそのまま怒りを示し続けることが目的の「ヤマウバ」に変じてしまうしか無い。 |
私だけでは、駄目だったんだ。 |
私が我慢するだけでも、怒るだけでも、駄目だったんだ。 |
「私だけ」っていうこと自体が、真っ直ぐに「ヤマウバ」に繋がっちゃってたんだ。 |
だから、瑞生はしっかりと見たのでしょう。 |
瑞生に差し出した使い捨てカメラを持つ麻美の手が、小刻みに震えているのを。 |
それはもしかしたらやっぱり、自分が瑞生にそれでも怒られることだけを怖れる震えだったのかもしれない。 |
でも、麻美はこう言ったのです。 |
お土産・・家族の分は買ったから・・・・ |
つまり、自分のお土産分資金を、カメラに回したのです。 |
その使い捨てカメラは、確かに瑞生とクラスのみんなが失ったモノよりずっと軽い。 |
でも。 |
麻美がなんとかして、瑞生達の失ったモノを少しでも回復しようと、懸命になっている事だけはガンガン |
伝わってくる。 |
今からじゃ遅いかもしれないけれど、もしよかったらみんなで写真を・・・・・ |
瑞生は、この麻美の言葉に対しても、圧倒的に怒鳴りつけることの出来る自分が、自分の中にまだ |
まだ余裕で息づいているのを感じます。 |
でも・・・これはもう・・・・この麻美ちゃんは・・・・ |
瑞生的「みんなと同じ」感覚からして、まだ少し麻美の態度には不満を感じます。 |
ほんとだったら、誠意をみせるにしても、もうちょっとやりようがあるでしょ。 |
それゆえ瑞生は、いつでも自分の中のヤマウバを発動することが出来るのを感じます。 |
しかし、瑞生はそこで、はっきりとわかってしまったのです。 |
そっか、これが「ヤマウバ」か、と。 |
自分の中の怒りという名のヤマウバを発動するかどうかを決めるのは自分自身であり、そしてそのこと |
自体が自分が思っている以上に、既に選択肢を狭めているモノ。 |
自分が全部背負わなければいけないと思うこと自体で、自分がみんなの思い出を背負っているだか |
らという強い自覚自体が、それらを侵した相手に対して限定した対処を自身に促してしまうモノだと、 |
瑞生は悟るのです。 |
憑かれるかもしれないという不安を、みんなの思い出を預かる写真係としての自覚で乗り切り、しかし |
その自覚に頼るあまりに、その自覚と心中して目の前の人を否定してしまいそうになっていた。 |
瑞喜の脳裏に、そして私の胸のうちに、老婆の言葉が蘇ってきます。 |
『心と体に従うといいよ。』 |
勿論、心と体に従い過ぎれば、人との繋がりを回復するための「怒り」をさっさと諦めて悟り、人との繋が |
りを捨ててしまったり、逆にただ手段としての「感情」が目的になってしまったりします。 |
けれど、心と体をおろそかにすれば、自らが紡いだその人との繋がりを回復するための「怒り」を実行 |
し続ける事の方に主体性を奪われ、そうすることで融通性を失い、方法論に拘りそれに囚われ、「ヤマ |
ウバ」に取り憑かれてもしまうのです。 |
自らの怒りを怖れるあまりに、他人のすべてをそのまま許して受け入れてしまえば、それは人との繋がり |
を放棄することに繋がる。 |
しかし自らの怒りを大事にするあまりに、自らのすべてをそのまま相手に押し付ければ、それもまた人との |
繋がりを失ってしまうことに繋がる。 |
今回のお話は、そしてこの文章はすべてこの一点に収束します。 |
そして。 |
いつでも人は、その「ヤマウバ」と接して生きているということがわかります。 |
「ヤマウバ」の存在を感じられなくなったとき。 |
きっとそのときその人は「ヤマウバ」になってしまうのでしょう。 |
そしてそれゆえに。 |
ヤマウバそのものは、決して悪いモノでは無いということを、私は深く感じました。 |
なぜって。 |
人との繋がりを求めるからこそ、怒りとしてのヤマウバが在るのですから |
それを否定するのならば、もはやこの世に妖怪はいなくなってしまうでしょう。 |
「ヤマウバ」が居るからこそ、どうすればそれを生み出さずに済むかを、そしてまた、なぜそれが生まれ出 |
てきたのかをこそ考えることが出来るのだと思いました。 |
以上、第八話「ヤマウバ」の感想でした。 |
うーん、なかなか奥深いお話でしたねぇ。 |
色んな解釈があるとは思いますけれど、私はこの解釈が気に入っています。 |
というより、むしろもっともっと深めて観て行ければなと思っています。 |
またいずれ観ることもありますでしょうから、そのときが今から楽しみです。 |
とかなんだかもう色々片づいちゃってるみたいなしなびた事を言っていますが(笑)、そんな言葉はどこ |
吹く風という感じで、未だに今回の自分の思考の余韻が途切れません。 |
あと一押し考えられると良いのですが、今の私ではまだまだここまでが限界のようです。 |
もっと思考力を磨かないとですね♪ |
それ以前に文章力が・・ね・・・・・ほら・・・・・・(あさってのほうをむきながら) |
◆ 『』内文章、アニメ「もっけ」より引用 ◆ |
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■■酒とアニメとなんか冬■■ |
こんばんは、紅い瞳です。 |
そろそろ師走が迫って参りました。 |
なんだ、もう今年も終わりなのかと、時間の経つ早さを感じているような、むしろ感じていないからこそ |
あっという間に一年経ってしまっていたと、そういう感じがしなくもありません。 |
前置きをするほどのやる気もありません。 |
ということで、今日のお話。 |
なんだかお酒のお話をします。 |
最近お酒が美味しいです。 |
以上。 |
■純米原酒 お福正宗 生一本 |
・原酒なくせに薄いのなんの。味はちりっとする酸味とは違うなよなよした微妙な酸っぱさがあって、希釈 |
したお酢を飲んでいるような感じ。 |
他の味もあまりしないしこれだけ飲んでたら三口くらいで飽きる。ただお刺身なりおつまみなりを食べな |
がら飲んでくると、その食べてるものにこのお酒の味が薄く染みこんでいるような、つまり料理主体の味 |
わいが口に残ってきたり。美味しいとは言えないけれど、料理に添える一本としてなら○。 |
■加賀ノ鶴 超辛口 |
・日本酒度+15というあり得ない数値を誇ってました。実際かなり辛い。といってもそれは辛みが強い |
というよりは含まれる味の中での辛みの割合が非常に高いという感じ。 |
だからほとんど飲んでも辛さしか口に残らず速攻で飽きてしまい、飲み切るのが少々苦痛でした。 |
料理にも合わなかったし。 |
まぁでも、珍しいっちゃ珍しい感覚だったので面白くはありました。 |
■純米酒 吟望 天青 |
・印象に残らないお酒。 |
薄さもあるけれど、どの味も個性が無い上に強さが全く無く、お酒の味がする水、という感じ。 |
その水の味も美味しいとは言えず、不味いとはいわないけれど、やっぱり印象に残りにくい。 |
さらさらと飲み干したいときには飲みやすくていいでしょうけれど、じっくり味を探して楽しんで飲むには |
全くの不向き。 |
■純米吟醸 上善如水 |
・あんまりフルーティなのは選びたくないのだけれど、美味しかったんだから仕方ない(笑) |
味わい深さは無いし味の種類も変化の度合いも少ないけれど、お酒の味自体そしてなにより水が |
滑らかで舌に優しく馴染む感じで美味しく、なんだか悔しさを感じながら飲んでました(笑) |
上品な感じがあるので、口の中に広がるその雰囲気を楽しむだけでも飲む価値はあります。 |
基本は甘みで、それが水の流れのように綺麗に、そして小さくまとまらずに凛としてる感じがありますね。 |
小さな宝石みたいな感じ(笑) |
■ならぬことはならぬものです 吟醸原酒 |
・すごい名前だけど、久々に大満足の一品。値段の割にはかなりいける。 |
原酒らしく深みがあって、おまけに吟醸らしくつる味もある。 |
味の種類も豊富で、基本辛口だけどそれが強すぎずに、酸味・苦味を生かしつつ、飲むたびに少しず |
つ細く甘さが立ち上ってくる。 |
味を探しながら楽しみながら、ゆっくり味わっていくには非常に適したお酒でした。 |
やっぱり福島のお酒って私に合うのが多いなぁ。濃くて深くて複雑で。 |
■純米酒 男山 復古酒 |
・名前の通り、元禄時代のお酒を今に蘇らせたお酒らしい。 |
一言でいえば、というか正直いえば、蜂蜜。甘い。甘すぎる。 |
私は甘口が好きだけど、これは邪道過ぎ。これはお米の甘さじゃ無いじゃん。 |
お酒以外の飲み物として飲めば甘くて美味しいけれど(蜂蜜ジュース?)、複雑な味の変化を楽しむ |
ものとしてのお酒としては、あまり評価出来ない一本でした。 |
■十ヶ月氷冷熟成酒 朝しぼり出品貯蔵酒 |
・これはなんかランクがひとつ上な感じがしました、全体的に。そんな高く無かったはずなんだけどね。 |
どの味が主体という訳では無く、一口目からもう甘み辛み苦み酸味の全部ががっしり口の中に居座っ |
て、料理を口にするたびにそれぞれが反応しあって、まこと賑やかなお酒でした。 |
アルコール度も20度と原酒並なので、賑やかさにかまけてぐいぐい飲んでたら、あっという間に酔っ払って |
しまいました(笑) |
この一本は私的には急がし(?)過ぎて、ひとつひとつの味を感じている暇が無いほどな感じだったので、 |
またいずれ飲んでみたいと思っています。割とオススメ。 |
どちらかというと、料理おつまみ無しで、お酒だけと真っ正面から付き合って飲むタイプかな、やっぱり。 |
■千曲錦 |
・ラベル情報ほとんど無し。ていうかこれ店舗の方で張り替えたくさい(笑) |
時々行く酒屋のご主人にこれは限定品で味の割には安くてお薦めだよ(ていうか買えw)、と言われた |
ので丁度めぼしいものがみつからずにいたゆえに、ほいほいと買ってしまいました。 |
で、肝心の中身はというと、泡っぽい。ていうか、洗剤かと思った(ぉぃw) |
別に泡立っている訳じゃないんですけど、でも正直普通に洗剤臭がしたので、お猪口とか洗い直して |
みたりしたけど変わらず、こういうお酒なのかと納得しつつも納得し切れず(笑)、結局最後の最後まで |
頭ひねって飲んでました。 |
味もなんだか散漫というか深さも強さも見えなく、むしろその泡っぽさの向こうにどれだけその小さな味 |
を見つけられるか、というなんだか勝負事みたいな感じにして楽しんでました。 |
■純米大吟醸 翔雲 |
・あまりメジャーなとこのお酒で良いおもいをしたことが無く、これがメジャーな白鶴のお酒ということで、 |
ちょっと迷ったのですけれど、化粧箱と瓶のデザインのカッコ良さと、そしてモンドセレクション金賞というの |
を見て踏ん切りがつきました。 |
というか、買うことは前提だったんですよ、安かったから(笑) |
久々の大吟醸なので少し期待してましたけど、一口目で結構な荒っぽい口当たりを感じ、これほんとに |
大吟醸?と思ったのも束の間、山廃をおもわせるしっかりとした辛みと苦みが喉から食道へと広がり、 |
一気に口の中にお酒空間(?w)が出来上がり、思わずその構成力に感心した。構成力て(笑) |
とにかく重みがあるというか存在感があるというか、味がどうこう以前にそのああお酒飲んでるなぁという |
感覚自体が楽しく、そして落ち着いてくれば、なんだちゃんと大吟醸らしく丸みのある上品さもあるじゃん |
と、味わえば味わうほどに色々な発見があって、美味しいというよりは面白くて楽しい逸品になりました。 |
足りないところがあるとすれば、もうすこし甘みが出てきて欲しかったところかな。 |
とまぁ、そんな感じで御座いますよ。 |
あー、結構私ってお酒の味とか覚えてるのな。 |
上に挙げたので一番古いの夏頃飲んだ奴ですよ、あ、一応だいたい飲んだ順に挙げてあります。 |
味とかそういうのを言葉にして記憶してるからかな。 |
ほかのことはさっぱりさっぱりなのにね♪ (♪、じゃねぇw) |
飲む本数も量も多いほどでは御座いませんけれど、かなり好きですね、お酒は。 |
お酒のことは、また思い出したようにだだっと書くこともありましょう。 |
では、お酒のお話はこのあたりにて。 |
◆ |
紅い瞳さんのご趣味は? と問われたら、大いに悩んだ末に「アニメ鑑賞とお酒です。」と答えたいの |
を必死に堪えて、「読書です。」と平然と答えるくらいの心構えは出来ている紅い瞳です、ごきげんよう。 |
つまりは、アニメです。 |
ほんとは今日は今度こそ今期アニメの感想を真面目に書こう書こうと意気込みも顕わにしていたので |
すけれど(そんな自分の顔が映った鏡をげんなりしながら見つめたりもしました)、お酒の話で調子に |
乗りすぎて既に日付変更が行われようとしている時間帯になってしまい、慚愧の念に耐え難くあります |
ものの、涙を飲みつつ今日はそれを取りやめにさせて頂きます。 (嬉しそうな笑顔で) |
ということで、発つ鳥跡を濁しまくった上に後ろ足で砂をかけるのもあんまりなので、代わりにお茶を濁す |
ことにしてみましょう |
つまりは、アニメです。 |
要するに、アニメです。 |
来期のアニメのお話です。 |
今期のアニメのお話もロクにしてない奴が、どうして来期のアニメを語れようか、いや語れる。 |
むしろ今期アニメのお話が出来ないからこそ、その罪滅ぼし的に来期のお話をしなければならないので |
す。 |
これは私の義務なのです。 |
私には来期アニメのお話をする義務がある! |
ま、どうでもいいですね、心の底から、果てしなく。 |
ということで(2回目)、来期アニメのお話をします。 |
注目してるアニメを挙げて、こしょこしょとなんだか呟いてみます。 |
よろしくです。 |
来期アニメを選ぶ際の参考にでもしてくださったら、私は泣いて謝ります。 |
いい加減な事ばっかり書いて、すみません。 |
■シゴフミ |
・まずサイトがカッコいい。 |
内容的には、死んだ人からの手紙が届く、つまり生前に出した手紙が死んでから届くという設定から |
話が始まって、それを元にして生とか死とか存在理由とかを考えていこうというスタンスだと思われる。 |
が、私の直感としては、たぶんひどく単純な感情的な思考とかで小さくまとめて終わる感じがする。 |
それは前向きな意味も後ろ向きな意味も含めてね、たぶんその目の前に起きてる事のせいに色々して |
、結局はそれに囚われちゃってる自分の心地よさに良くも悪くも納得したい、そういう「癒し」としての方 |
向性をうっすらと感じる。 |
そういうものになったら、私は観ない。 |
でも、もしそうじゃなかったら・・・・・非常に興味深い。 |
■ARIA The ORIGINATION |
・第三期。もうそんなにやっていますか。 |
どうせ「癒される」のなら、「癒されている自分」を徹底的に見つめたいものです。 |
癒されるってどういうこと? 自分が癒されてるってどういうこと? |
それをこそ考えてみると、実は色んな素直な発見がある。 |
「癒される」のが目的では無く、「癒されている自分」を見つめるのが目的。 |
そうすれば、癒される事に執着することも、無闇に癒しを否定することからも目が離れて、もっと広い |
次元で色々なことを感じることが出来る気がする。 |
この作品は少なくとも第二期まで、そういった「可能性」のようなものを私に与え続けてくれていました。 |
■みなみけ おかわり |
・現在放送中の「みなみけ」の続編なのか、それとも「みなみけ」の焼き直しをするのか、よくわからない。 |
いやそれ以前に私はまだ「みなみけ」の事をロクに語っていないのだから、「おかわり」について言及する |
ことなど出来ないはずだ。 |
んーん、そんなことないですよ? ペラペラですよ、ペラペラ。ネイティブ! |
つまり、これはもうあれだな、期待するしかないな。 |
「みなみけ」については後日詳しく語る(保証は無い)として、「おかわり」についてはまずは期待。 |
そして、邪推いってみよう! |
「みなみけ」が毒気に充ち満ちた私的には大変オイシイ仕上がりになっていることから、「おかわり」では |
反動でシンプルかつ素直めに、つまり萌えなぞをメインにやっていかれるのではないでせうかと邪推。 |
詳しいことは知らない。知るか、このばかやろう。 |
ちなみに「このばかやろう」というフレーズはこの作品に登場する子の口癖ですので。 |
私が言ったんじゃないよ? あの子が言ってるんだからね? ・・・。 |
■狼と香辛料 |
・アニメ化が決まったときから私によって大変な期待を負わせられている不憫な作品。 |
|
別に原作小説を読んで愛してる訳じゃないんですよ? ていうか読んだこと無いし。・・・。 |
なのになんでこんなに思い入れを持っているのか、時々自分でも不思議に思いますけれど、別に不思 |
議で困ることはなにも無いことに気づいた時点で、私としましてはこの作品に過大なる期待をかけても |
てんとして恥じる事の無いおもいで御座います。 |
内容についての言及は敢えてここでは致しますまい。 |
私は面白いと思う、というか面白いはずとそう思っている、それが今この作品を語るとき自分が自覚して |
いるただ一つのことゆえ。 |
思い入れの深い作品についてほど言及しなくなる私の悪癖全開中で、ご迷惑をおかけしております。 |
と、いいつつ。(前言撤回) |
公式サイト眺めてたらなんだか語りたくなってきたので、ノンストップ。 |
なんてったって剣も魔法も無い商人的視点のファンタジーなんて、期待しない方がおかしいし、それで |
てどこぞの方言だか郭言葉だかわかんないおかしな喋り方する女の子が、ヘタレそうな男の子捕まえて |
なんだか偉そうな事を言ってみたり泣いたり笑ったり考えたり考えなかったりするのですよ? |
そんなことされたら私も全力で偉そうな事言ってみたり泣いたり笑ったり考えたり考えなかったりしたくな |
るでしょ? ならない?そうですかでも私はなるよこれで感想書けたら私は幸せ者です幸せ者。 |
・・・なにも語らなかった方が良かった気がします。 |
あと、萌えはあっても全然構わないけど、お願いですからそれだけに特化しないでね。 |
■破天荒遊戯 |
・全くの未知数。直感オンリーで選びました。万歳。 |
あわよくば、男の子ふたりの丁寧な描写と、その間に挟まれるという事自体の権化としての女の子では |
無く、かつその男の子ふたりが無邪気に追いかける対象としての女の子でも無い、そんな意外で当たり |
前な女の子像と、そして男の子像が描かれんことを。 |
■Mnemosyne -ムネモシュネの娘たち- |
・こちらは確信ありの直感万歳。これは、くるね、絶対。 |
入り口ページのシュールないびつさからして、少なくとも感性的には私のそれにドンピシャ。 |
ハードボイルドだとかエログロだとか、ことアニメに関してそういう売り文句を翳す作品にロクなのは無い |
のですけれど、そういうときに限ってそういった安直な判断を嘲笑うようにして傑作ぶりを示したりする |
ものだったりして、で、これは絶対そういう傑作に違いない!と意気込んで踏み込むと、そうなのは入り |
口だけだったりするとか、そういう騙し騙されの世界ですよ。なんの話をしていますか。 |
ただね、私の直感としてはね、コレ、男性が主人公だったらきっと駄作な匂いがすると思う。 |
でもね、女性が主人公だとね、なんかちょっと違うものが観られそうな気がする。 |
それこそ、直感です。 |
女同士がエロというか官能的友愛(?)で、ただ戯れ合うだけなら駄目な気がしますけれど、そうでは |
無い「本気のなにか」を見せ付けてくれれば、きっとすごいものになる気がしています。 |
うん。 |
でもね。 |
放 送 す る の は A T - X の み か よ ! orz |
あなたには、失望したわ。 (出演する中の人繋がりのセリフで) |
今のところ、目を付けているのは以上の作品です。 |
この他にも制作は決まったけれど、放送開始がいつからかは未定の作品が急遽飛び込んでくる可能 |
性もあり、予断を許さない状況です。 |
予断を許さないとかって、なんかスリルあってどきどきするよね。黙りなさい。はい。 |
ということで、はい、今日は結構書きましたね。 |
書きましたよね? もう充分ですよね? |
じゃあ寝るよ? 私もう寝るよ? 寝ちゃうんだからねっ! |
・・・・。 |
なにか書き足りない気がするのを、一体どうやって収めたらいいのか、最近本気で考えています。 |
おやすみなさい。 (フォロー無し) |
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-- 071123-- |
|
|||||||||||||||
■■戦いのいるお節介■■ |
『私達もなんにも思わなければ、視ることも憑かれることも無いのかもね。』 |
『でも、そりゃ難しいよ。』 |
『そうだねぇ。』 |
〜もっけ ・第七話・静流と瑞生の会話より〜 |
気になる。 |
なにかが気になってしまった事が。 |
それは本当は、気にしなくても良いことなのでは無いかと、思っているから。 |
自分だけが、それを気にしてしまった事が、怖い。 |
そして、なにより、悔しい気もする。 |
なんで私だけ、なんで、なんで。 |
それでも、それを気にして気づいたのは私なのだから、私こそが責任を持ってなんとかしなくちゃと思う。 |
だから、もういいんだと思う。 |
これだけ責任感と正義感で一杯になれたのだから、と。 |
そして。 |
それで一度でも気になったものが解決したことなど無いことを、いつも果てしなく感じていく。 |
なんで、私だけ。 |
本当は、そんな事思ってないのに。 |
本当に、ただ気になってそれを放っておく事が出来ないから、それに関わるだけなのに。 |
どうしてかな。 |
いつも、いつも、最後には必ず、求めちゃう。 |
なにも求めない、ということも、含めて。 |
気にしない、なんて事あり得ないから、だから一生懸命頑張っているのに。 |
気になんて、したくない。 |
そして、どうしてもそうは思えない、自分だけを、知る。 |
そしてそれが、なによりもおかしいと、感じている。 |
◆ |
瑞生の友人の久佐子ちゃんは、幼馴染みの榎本くんから誕生日プレゼントに貰ったマフラーを大切に |
しています。 |
今日も木枯らし吹きすさぶ中を、お気に入りのそのマフラーを首に巻いて、機嫌良く仲良しの瑞生と優 |
ちゃんと一緒に歩いています。 |
そのマフラーが久佐子にとってのお気に入りの理由を知らない瑞生と優に、その温かそうな感じを羨まし |
がられ、久佐子はその笑顔の裏にさらに笑顔を縫いつけて喜びます。 |
あったかいんだぁ、ほんとにあったかいんだぁ。 |
しかし次の日、久佐子はそのマフラーをしてきませんでした。 |
早速それに気づく瑞生ですが、しかし直後に自分の横を通り過ぎていった動物霊に気を取られてしまい |
ます。 |
こいつが向こうから歩いてくるって事は、きっとこの先には新しい動物の死体があるんだ。 |
そんなところに鉢合わせれば、きっとよからぬ霊に取り憑かれるであろうことは、既に経験上学んでいる |
瑞生は、忘れ物をしたと言って、元来た道をひとり引き返し、迂回して学校に向かうことにします。 |
久佐子が沈鬱な表情をしながら、おまけにお気に入りのマフラーをしていない、その意味を言語的に理 |
解する以上に、瑞生は無意識に過敏にそれに反応し、そして瑞生の霊的感度を自動的に上げて |
しまっていたのでしょう。 |
この動物霊と久佐子の事は直接的な結びつきはありませんが、しかしそれを感受する瑞生がそれに |
よって霊的感度を上げた、という事実を通して、それらは繋がってくる。 |
つまり、久佐子の変化を敏感に感じ取った瑞生は、それにより過敏反応を示す状態になり、それ以降 |
の様々な事に反応する際に、無意識のうちにその久佐子の変化を下敷きにして捉えていくのです。 |
いえ、正確に言えば、その瑞生の過敏反応状態こそが、あらゆる霊なり妖怪なりを顕しているのですか |
ら、その久佐子の変化の感受こそが、これから始まる「ジャタイ」という「妖怪」現象の始まりなのだとも |
言えるのです。 |
そして・・ |
取り敢えず動物霊をやり過ごした瑞生は、自らの経験を踏まえた迅速な回避行動を反芻するように |
復習しつつ学校へと向かいますが、ほっと一息つくその横合いから、素早い第二撃を喰らってしまいます。 |
道筋の竹林から飛び出てきたなにか、おそらく霊と思われるものとぶつかる瑞生。 |
しかし取り憑かれた感覚は無かったがゆえに安堵し、今日は多いなぁと溜息つきつつも、そのまま学校 |
へと向かう瑞生。 |
瑞生は、そういった取り憑かれるモノに慣れるためにも、道を変えないようにしていたけれど、自分の経 |
験上明らかにこのまま行ったら取り憑かれるとわかっていたら、そのまま行くことは出来なかった。 |
つまり、見てみぬふりを決め込むことにしたのです。 |
だってこの道さえ行かなきゃ取り憑かれなくて済むんだから、それを見なかったことにして避けるのは、 |
とっても賢いじゃない。 |
そりゃあ昔は興味本位でわざわざ近づいたりしちゃったけどさ、もう充分憑かれたときの辛さは知ってるか |
ら、それはよけた方がよいって思うし、お祖父ちゃんだってそうしろっていうもん。 |
瑞生のこの行動は全く正しく、瑞生の言う通りお祖父ちゃんもそうしろと言うでしょうし、むしろそうしな |
ければ怒られたことでしょう。 |
そして瑞生的には、この自分の対応こそ逆に、この正しい回避行動をすべき、ということから目を背け |
なかった、つまり道を変える面倒臭さを厭うにかまけて、その事をこそ見て見ぬ振りすること、或いは動物 |
霊自体を見なかった事にする、というのを選ばなかったんだから偉いでしょ! という事になるのでしょう。 |
けれど、その時点で既に瑞生は「ジャタイ」に取り憑かれていたのです。 |
その「ジャタイ」とは一体なんなのでしょうか? |
瑞生にとって、妖怪とはなんでしょうか。 |
瑞生は久佐子の変化に気づき、そして気づいた事で既に大いに影響を受けてしまっています。 |
前回の「ケサランパサラン」でお母さんが指摘したように、瑞生は尋常ならざる過敏さを備え持っていま |
す。 |
ですから、いつもしているお気に入りのマフラーをしていない久佐子の、その「異常性」を、瑞生は過敏 |
に受け取り、その事が心の奥底に取り憑いてしまったのです。 |
ひとつの、大きな背景として。 |
瑞生が出会った動物霊に対してどう対処するか、それを決める際のその迅速さと的確さは見事なりと |
本人も認めるところではあったのですけれど、しかし既にその事自体がその大きな背景の上で行われて |
いた。 |
自分の対応を自覚すればするほど、なぜこんなに今自分がやっていることを強く自覚しているのか、その |
事に疑問を感じ始める瑞生。 |
まるで、なにかを隠すかのように・・なんだろ、なんで私こんなに一生懸命に真面目に対処してるんだろ。 |
瑞生のこの動物霊に対する一生懸命さは、実はその裏に聳える久佐子の変化という、巨大な悩みに |
向けて行われているものであり、そしてそれが直接その悩みに向かわないのは、その巨大さを本能的 |
に怖れるがゆえにこそ、その代わりとして手軽な、それでいてそれへの対応に実感の持てるその動物霊 |
への瞬間的な執着ぶりが表に出てきたからなのです。 |
そして瑞生は、その動物霊の件に関して見てみぬふりをしなかった、という事実を強く胸に抱き締め、 |
そしてそれを以て、久佐子の件にも強引に上塗りしようとしていたのです。 |
既に気づいてしまった、見てしまった久佐子の件を、どうしようも無く解決しようとしている自分に対して、 |
瑞生は必死にアピールするのです。 |
私は見てみぬ振りなんてしないよ、してないよ、ほら動物霊の事だってちゃんと対処したじゃん! |
それが、あまりにもしつこいアピールである事をこそ、敏感に察知する瑞生。 |
ぐるぐるぐる。 |
私にはもうこの段階で、瑞生の中に大きなうねりがそのとぐろを巻いているのが見えました。 |
瑞生は勿論、純粋に久佐子の事が気に掛かり、そして本当に純粋にそれをなんとか解決しようとして |
います。 |
ほんとうに見て見ぬ振りをする事なんて出来ないからです。 |
でも。 |
瑞生は、それこそが、怖いのです。 |
学校にて、久佐子の家にて、その時々に先ほど竹藪から出てきたモノの感触を得る瑞生。 |
『なにかに首を押さえられて、動けなかった気がしたんだけど・・』 |
瑞生はその体験を数え上げ分類し、そしてひとつの言葉を導き出します。 |
もしかして・・・これって・・・久佐子ちゃん? |
家に帰り着替えをする際に、腕と首になにかに巻き付かれたアザを見つける瑞生。 |
静流は、真っ先に蛇の霊に取り憑かれているかどうかを疑います。 |
蛇、と聞いておののく瑞生。 |
瑞生の経験に照らし合わせると、蛇に取り憑かれるのは相当キツい。 |
しかし手負いの蛇に出会った事は無く、かつ静流には蛇が見えていないことから蛇では無い事は確か。 |
瑞生は、それでどっと安心してしまいます。 |
そして。 |
瑞生はその安心感を利用して、これは久佐子の無くしたマフラーに関係があるのではないかと読み解く |
のです。 |
久佐子の件は瑞生の深い無意識の領域に深い影響を与えており、しかし瑞生は意識の段階ではそう |
とは感じず(瑞生の言葉からはそう受け取れる)、けれど深い影響を受けているがゆえにこそ、無意識 |
にその深さを「見て見ぬふり」するように自らを仕向けるのです。 |
なんだ、蛇じゃ無いんだ、マフラーなのかぁ・・・蛇じゃなきゃ大丈夫だよね、うん、きっとね。 |
問題を矮小化しようとする瑞生。 |
いえ、言語的意識に於いては、久佐子の件はそもそもこの程度で済む事なのでしょう。 |
しかし、それは見事に背景を無視して起こった事だけに対処しているだけで、結果多くの取りこぼしや |
損を生じさせ、また根本的解決から瑞生を遠ざけてしまう行為。 |
早速瑞生は、その文脈ですべてを読み解こうとします。 |
久佐子といるときにこそ首が痛む、ということを実証するべく瑞生は挑み、そしてその通りの結果を得る |
のです。 |
果たしてそれは、「いつ」からそうなったのでしょうか。 |
瑞生がそういう文脈で読み解き出し、その先入観で持って観測したからこそ、首が痛んだのでしょうか。 |
そうであるのかもしれませんし、またそうでは無いとも私は思います。 |
なぜなら、瑞生が久佐子を意識し出したのは、アザを付けたのがマフラーだと理解した、それよりもずっと |
前、久佐子がマフラーをしていなかったときからずっとそうなのですから。 |
瑞生が久佐子のせいだと思ったからこそ、首になにかが取り憑いたのはそうですけれど、しかし、それを |
瑞生に為さしめたモノは他に居るのだと私は考えます。 |
ジャタイを産みそれを自らに取り憑かせたのは瑞生だけれど、ではなぜ瑞生はそのジャタイを産みだした |
のか。 |
瑞生は、 久佐子の件を「見て見ぬふり」出来ない自分を、敏感に感じていたのです。 |
見て見ぬふりをしたいと願う、その自分を感じながら。 |
静流は、こう言います。 |
『でも、他のモノが蛇みたいになるって話もあるから・・・』 |
再びぞっとする瑞生。 |
『持ち主の心が乗り移ったりするとか。』 |
そしてそれを「ジャタイ」と言うのだと、静流は言うのです。 |
漢字にすれば、「蛇態」もしくは「蛇体」なのでしょう。 |
やっぱり、見て見ぬふりなんて出来ないよ・・ |
そして瑞生はなによりも、自分の呟きが自分に届かないことを感じます。 |
どうしようも無く、既に久佐子の件に関わっている自分を圧倒的に感じ、そして既に自らに取り憑いてい |
るものすべてを、その「久佐子の件」という文脈で読み解こうとすることをやめられないのです。 |
見なけりゃ、気づかなければ、なんにも無いのに。 |
なんにも見えなければ、気づけなければ、良いのに。 |
そして、その願いもまたすべてその根本から自らによって押さえつけられているのを、瑞生は感じているの |
です。 |
見ちゃったんだから、気づいちゃったんだから、もうしょうがない。 |
でも。 |
瑞生は自分がなにを見て、なにに気づいたのかを、わかってはいないのでした。 |
いよいよ、自分のアザと久佐子に関連があるのを確信していく瑞生。 |
事実久佐子は、榎本から貰った大切なマフラーを無くしていた。 |
だったら、そのマフラーを探し出して、久佐子ちゃんに渡してあげなくっちゃ。 |
勿論、自分のアザを消すためにこそ、マフラーを探すという考えは毛頭ありません。 |
その辺り瑞生はわかっているのです。 |
なぜなら、意識せずとも、瑞生は自分のそのアザそのものが、なにか別の治さなくてはいけないものが |
あることを示している、というのを無意識に感じているのですから。 |
『やっぱり、マフラー見つけないと、これ(アザ)取れないのかな・・』 |
『なんか・・・行かなくちゃいけない気がする!』 |
アザを取るためには、マフラーを探しに行かなくちゃいけない、という意味ではありません。 |
アザを取らないことを選択する事は、必ず「見て見ぬふり」をする事に繋がると感じていて、そして一体 |
「なにを」見て見ぬふりするのかはわからないまでも、その見て見ぬふりする事自体が、結局そのなにかを |
無視する事になってしまう、だから、なんとしても探しに行かなくちゃ、という意味なのです。 |
けれど、それは同時に、その「なにか」がなんであるかを直接見極める行為、それ自体を素通りして、 |
その「なにか」を取り敢えずは消さずに置いておくこと、という意味でのそのマフラー探索を瑞生にさせて |
しまう事に繋がってしまうのです。 |
つまり瑞生は、マフラーを見つけ出すことですべてが解決出来、そしてそれが可能ということはつまり、 |
すべての原因は久佐子とダイレクトに繋がっているという事を無視しても構わない、という事に気づき、 |
またそうしようとしているという事なのです。 |
そして、それでいて、瑞生はその無意識下に於いて、しっかりとマフラーを見つける事自体はなにも解決 |
したりしない、マフラーは決して背景では無く起こった事にしか過ぎない、という事をなによりも深く認識 |
していたりするのです。 |
久佐子にマフラーを無くしたの?と聞き、その反応からしてやっぱりマズイ事訊いちゃったなと思いつつ、 |
しかしそのマフラーを見つけさえすれば全部解決出来ると信じ、またそうしたいがために、今度一緒に |
探してあげるよとまで言ってしまう瑞生。 |
問題が、瑞生の思っているその久佐子にとってのマフラーの価値と、実際久佐子が思っている久佐子 |
にとってのそのマフラーの価値に隔たりがあることにある事を既に感じ、さらにその問題は既にそれ以外 |
の「なにか」を含み始めている事さえも敏感に感じ取っているのにも関わらずに、です。 |
不快を込めた声を荒げて、それを拒絶する久佐子。 |
『瑞生には関係無いから。・・・いいから・・・探してくれなくていいから。』 |
『私、自分で探すから! だから放っといて!!』 |
しかし、今度はこれを瑞生は逆利用してしまうのです。 |
だからって、私が探さない訳にはいかないよね。 |
久佐子が探さなくていいって言ったって、それで放っとける訳無いもん。 |
瑞生はそうして、なぜ久佐子がそう言ったのか、という事から全力で目を背けてしまうのです。 |
うすうす、なにかある、と感じながら。 |
目の前に起きている事ばかり見て、その背景にあるモノを見ない。 |
それはやがて、欠落や損を生じさせ、それ自体が妖怪をも産み出していく。 |
瑞生は、気づいているのです。 |
マフラーそのものが、自分の首や腕に巻き付いてアザを付けているのでは無いということを。 |
それは静流の言うように、久佐子が発するあらゆる想い、そしてそれに感応し、それに「巻き付かれてい |
る」という瑞生自身の敏感な感受性が、そのマフラーの背景に広がって、それが自分にアザを付けて |
いる、ということを瑞喜は感じているのです。 |
けれど。 |
それらはあくまで、「マフラー」なのです。 |
「蛇」では無い。 |
そして。 |
「蛇では無いと思う」からこそ、瑞生は取り憑かれてしまったのです。 |
そう、「ジャタイ」に。 |
「ジャタイ」とは、なんでしょう。 |
榎本を伴い、マフラーを探しに向かう瑞生。 |
そして、先ほどなにかとぶつかった感触を得た竹藪の中の道を進んでいきます。 |
身構える、瑞生。 |
大丈夫。 |
憑かれたりしない。 |
いや、憑かれても、耐えてみせる。 |
いやいや、大丈夫。 |
『蛇じゃ無いんだ。』 |
『マフラーなんだ。』 |
すぐにその自分の言い聞かせに疑問を感じ、不安を抱く瑞生。 |
そして、それでも前に進む理屈を組み上げながら進む瑞生。 |
そして、瑞生は「やっぱり」蛇に取り憑かれてしまうのです。 |
つまり、こういうことです。 |
瑞生は、久佐子の異変に気づき、そしてその気づいてしまった事をなんとか解決したいと思い、見て見 |
ぬふりをすることは出来ないと決心しつつも、そうして自分が気づいてしまったことにとてつもない不安感を |
得てしまった。 |
けれどその不安をすっぽりと無視する形で、瑞生はただ目先に起きてる単純な事象を積み上げて、 |
そしてまず単純に、久佐子の異変の原因になっていそうなマフラーを探せば「なにか」が解決すると、 |
その「なにか」がわからないままに強引にそれを遂行し、そしてその「なにか」がわかっていない、という事 |
すら隠した上に、さらにマフラーを見つけただけじゃなにも解決しないという事を感じつつそれも隠して |
しまい、そして最終的には、自分が今やってる事はなにも解決しないのでは無いか、いやそうじゃない、 |
という二頂対立的争いに終始してしまい、そしてその争いが、その一番初めに瑞生がひた隠した、その |
「見て見ぬふり」出来ずに気がついてしまったことを怖れる感覚が、どばっと「蛇」の形を成して顕れて |
きたのです。 |
この構造自体を指して、「ジャタイ」に取り憑かれると言うのです。 |
瑞生にとっては、自分の怖れているものは、マフラーでも無く蛇でも無く、またマフラーか蛇かと争う事 |
でも無い。 |
こういった様々なモノに「気づいてしまった事」、それ自体を怖れたのです。 |
そして、その瑞生自身の怖れが「ジャタイ」では無いのです。 |
その怖れから抜け出せなくなってしまっていた事、それ自体に取り憑かれてしまっている状態そのもの、 |
それこそが「ジャタイ」なのだとも言えます。 |
まさに蛇に睨まれた蛙状態の瑞生。 |
眼前には、圧倒的な恐怖が聳え立っています。 |
私が解決しなくちゃ・・私が・・・私が・・・ |
見たくない・・・・みたくない・・・ |
でも目が閉じられない |
『お姉ちゃんっ・・・・・お祖父ちゃん・・・・・っっ』 |
そう、瑞生は、目を開けていたのです。 |
最初から、最後まで。 |
巨大な蛇に睨み付けられた瑞生の瞳には蛇の瞳が映り。 |
そして、瑞生はその蛇の瞳の中に自分が映っている事を感じる手前で。 |
その蛇を睨み付けている、その自分を深く感じたのでした。 |
『駄目・・! 行くんだっっ!!!』 |
瑞生は、絶叫しながらその竹藪を突っ切ります。 |
そして、その先にあったのは、久佐子のマフラーでした。 |
私は、こう思います。 |
瑞生がマフラーを見つけて、それで解決するものがある訳じゃない。 |
瑞生は馬鹿みたいに久佐子の気持ちなんてなんも考えずに、ただ真っ直ぐ単純に、それこそ一番ラク |
な解決法をでっち上げ、マフラー見つければ万事解決と勝手に決めつけ、全然それではなにも解決 |
なんてしやしないとしっかりわかってる自分と戦い続け、結局勝つも負けるも無く、漁夫の利的に蛇に |
巻き付かれてしまった。 |
そして、瑞生は、はたとその構造に気づいたのじゃないでしょうか。 |
というより、そんな事してどんなに自分が苦しんだって、それで久佐子ちゃんが笑顔になる訳じゃ無い事 |
は分かり切ってたことで、だからどんなにそれが自分を追い詰めるモノであれ、その「見て見ぬふり」できな |
い自分と、それを自分に強制する「なにか」自体が悪い訳じゃない。 |
むしろ、そうやって気づけないはずのモノに気づくことが出来るからこそ、久佐子ちゃんを助けてあげる |
事が出来るんだ、それがどんな重荷だって関係ない、ううん、重いからこそ担ぎ甲斐があるんじゃないか、 |
だからそして。 |
自分がその「なにか」たる「ジャタイ」に取り憑かれている事を知り。 |
だからこそ、その目の前のジャタイという「取り敢えずぶっ倒せる敵」を倒して駆け抜ける事、それ自体が |
立派にその「なにか」の大元にあった「見て見ぬふりが出来ないことの恐怖」に立ち向かう自分に繋がる |
事が出来たのじゃないかなぁ、と私は思ったのでした。 |
「ジャタイ」は瑞生が創り出し、そしてそれを瑞生に為さしめたモノでありかつゆえにそれをぶっ倒す事の |
出来るジャタイは、確かに其処にいる。 |
つまり、たとえどんな単純で的はずれな問題解決法でも、その中身がどうこうよりも、それを実践する |
気概こそが、いつまでもその問題に立ち向かっていこうとする自分に自分を導いていってくれるという |
事であり、それがこそ、その問題に立ち向かうという事自体を怖れる自分を正してくれるということ。 |
そして、そういう簡単な問題解決方法は誰にでも簡単に作れる、つまり、いつでも倒せる敵は其処に |
いるのですね。 |
瑞生が手に入れたその久佐子のマフラーは、少なくとも最初から最後まで目を閉じずに諦めなかった |
自分が此処にいることを、瑞生に保障し続けてくれるのでした。 |
意気揚々と、しかしその実大きな不安を抱えながら、瑞生はマフラーを久佐子の元に届けます。 |
瑞生にとっては、久佐子に喜ばれる確率よりも怒鳴られる確率の方が高い事は、既にわかっている事。 |
それでもその久佐子の「マフラー」をもたらした瑞生としては、なんとしても意気揚々とし、そしてその |
立場からなんとかして、今回の件の核心にそれでも迫りたいと考えるのです。 |
怒鳴られるかもしれない、憎まれるかもしれない。 |
でも私は・・・・知りたい・・・・なんで・・・そうなっちゃうのか・・・ |
久佐子ちゃんは・・・なんでそんなにマフラーに・・・・ |
ううん・・・それもそうだけど・・・・なんで私はあんなに邪険にされたのか・・・・知りたい・・ |
久佐子ちゃん・・マフラー受け取って・・・泣いてた・・・ |
ありがとうって・・・言ってくれた |
ちょっと、意外だった。 |
でも、そう言われただけで、もう全然、いいや。 |
私も、嬉しい。 |
ていうか、私は最初から嬉しかったもん、マフラー見つけた時点で。 |
そっか・・・あのマフラー・・・榎本君から貰ったんだ・・・ |
『あのね、久佐子ちゃん・・ふふ・・・・ひょっとして、榎本のこと・・・・・』 |
・・・・・・・やっぱりね、うん、やっぱりね。あはは。 |
・・・・・。 |
そっか・・・私が榎本と親しく話してたから・・・だから私なんかにマフラー探して欲しくなかったのか・・・ |
瑞生は、やっぱり、という言葉を必死に飲み下します。 |
お節介しちゃってごめんね、と瑞生はいいます。 |
久佐子ちゃんが私と榎本の仲を邪推した事とお節介でおあいこだね、と瑞生はいいます。 |
おあいこです、確かに。 |
でも、瑞生にとっては、それはどうでも良いことなのでした。 |
『久佐子ちゃんのせいじゃないかって、疑っちゃったから。 |
きまり悪いんだよね、ありがとうとかごめんねとか言われると。』 |
だからほんとはおあいこなんかじゃないんだ。 |
久佐子ちゃんの想いが私の首に巻き付いたんじゃないかって考えて、そればっかり気になっちゃって・・・ |
いつの間にか、その私に向けられてるモノを解消するために動いてたりして。 |
ほんとは、ただ、久佐子ちゃんの悲しそうな顔みて、助けてあげたいなって思っただけなのに。 |
ううん、助けてあげなくちゃって、自分でそう思ったのに、だよ。 |
『もしかしたら、あの蛇は私が呼んじゃったのかもなぁ・・・』 |
静流が、こんな話をしました。 |
ある村で子供達が蛇を殺して遊んでいた。 |
それを通りがかった村長さんが見て、すごく恐ろしく思った。 |
そしてのちに蛇に祟られたのは村長さんだった。 |
久佐子ちゃんが大切なマフラーを無くして、悲しい想いをした。 |
それを見た敏感な瑞生は見て見ぬふりは出来ずに、なんとかしようと思った。 |
そして色々と辛いおもい(あまつさえ久佐子にも辛く当たられたり)をしたのは瑞生だった。 |
『見てみないふり、知ってても知らないふり、それが出来ればラクかもしれないけど・・・』 |
『でも、私には、出来ないと思う。』 |
人は必ず「ジャタイ」に憑かれると思います。 |
だって、自分の中の優しい想いや気遣い、そして感受性を否定したいだなんて思わないから。 |
そうだからこそ、人のためを思ってやってるのにそれで辛い思いしたら割に合わない、やってられない、 |
それなのに自分の中の優しさは消えないああ苦しい、という「ジャタイ」に苦しめられてしまう。 |
そしてそれでもそれを無視して、割に合わないからもう全部見て見ぬふりしてやると決め込むことと、 |
それでも頭を振りながらなんとかその優しさを見つめていこうというのは、ある意味で同じ。 |
「ジャタイ」を無視した見てみぬふりも優しさも、それは全部「ジャタイ」に喰われてしまっている状態だと |
思います。 |
「ジャタイ」を見据え、そしてそれに取り憑かれている自分を感じ、その目の前に打ち倒すべきジャタイを |
置く事で、初めてその「ジャタイ」から抜け出すことが出来る。 |
大事なのは、なんなのか。 |
辛い目に合おうがどうなろうが、それと自分の中の優しさや気遣いはそもそも関係無い。 |
勿論、「見てみぬふり」が出来ないのは、まったくの自分のせい。 |
それをその辛さや人のせいにして否定するのは、たんにそれら自分の範疇のモノに自信と自覚が無い |
だけ。 |
でも。 |
だからといって、目の前のそのなんとかしてあげたい人のもたらすあらゆる反応を無視して、ひとりで勝手 |
にその自信と自覚のある優しさや気遣いに没頭しているだけならば、それこそたんに自分のその「見てみ |
ぬふり」が出来ないからこそだから仕方なくやってるんだ、というその文字の通りの意味と価値しかそこに |
は残らなくなる |
相手のためにやってるって事は、自分のためにやってるって事でもある。 |
だから当然、相手が理不尽な事をしてきたらそれに憤ったり疑念を抱いたりしたってよい。 |
だって、おあいこだもの。 |
だから、相手がどんなに嫌なことしてきたってそんなの関係ない、私はただ自分の優しい気持ちに従った |
まで、というのはなんだかちょっと違う訳。 |
一見良いように見えるけれど、それは結局は人との繋がりを断った独り善がり。 |
相手がなにに反応しどう反応し、そしてそれがどういうものかは、必ずその反応に対してしっかり反応しな |
いことには始まらない。だって、なんにもわかんないもん。 |
自分のためではあるけれど、自分のためだけでは、決して無い。 |
優しさや気遣いというのは、もしかしてこれって自分のためだけにやってるのかな?という、常にそういった |
自己批判を兼ね備えたモノ。 |
そしてその自己批判こそが、「ジャタイ」の真髄なんだと私は思います。 |
扱いを誤れば怖いことになるけれど、上手く扱えればそれは無限の力を与えてくれるモノ。 |
自己批判に囚われ過ぎれば、目の前の相手が見えなくなります。 |
そして自己批判に囚われなければ、やっぱり目の前の相手を失ってしまいます。 |
静流は最後にこんな事を言います。 |
『だってさぁ、私だって瑞生の事気になってたからさぁ、今日の小テストあんまり出来なかったんだから。』 |
そして瑞生は、あっさりとこう返します。 |
『ん〜〜、それは実力でしょう。』 |
『あはは、やっぱり? すみません♪』 |
ね? |
でも瑞生が心配かけたことや、お祖父ちゃんが居ないときにアブナイ目に会ったのはほんとでしょ? |
そうだなぁ〜あ〜やだなぁ・・・・ |
うん、ということで、お祖父ちゃんに今日のことはしっかり話すのよ♪ |
・・・は〜い |
そこで頷けるからこそ、瑞生はこれからも見てみぬふりの出来ない「ジャタイ」と戦っていけるのでしょう。 |
なんにも思わなくなるくらいなら、色んなモノが視えたり色んなモノに憑かれる方がいいよ。 |
だって、誰かに其処にいて欲しいんだもん。 |
そう思ってる、私が此処にいる。 |
以上。 |
第七話「ジャタイ」の感想でした。 |
いつにも増してまとまりが無くてすみませんでした。(汗) |
もうちょっとしっかり書きたかったというのが本音ですけれど、それはここだけの秘密ということで。(笑) |
それでは、また。 |
◆ 『』内文章、アニメ「もっけ」より引用 ◆ |
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-- 071119-- |
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■■冬将軍の攻撃力■■ |
寒っ。 やめて。(挨拶) |
改めまして、ごきげんよう、劇的に書くことの無い紅い瞳です、こんばんは。 |
しかし先週は無い無いと言いつつ、のらりくらりと書き連ねてしまった有意義な前科がありますので、 |
まずはその辺り、どこの辺りが有意義だったのかを考えつつ、やっぱり無駄なことしたなぁと予定調和 |
的に溜息をつきつつ、今日もまたつらつらとやらせて頂きたく存じます。 |
そろそろ、本の季節です。 (遅れてきました) |
先日友人に勧めて渡しておいた本が、ノータッチで返ってきたことにプチはらわた煮えくりかえりを覚え、 |
あまりに悔しいような寂しいような、たんに私が本のチョイスを間違っただけのような、いや単純に友人 |
に読む時間が無かっただけのような、もしかしたら私嫌われてるんじゃないかのような、いやそれだったら |
勧められた本を受け取ったりはしないでしょうのような、でも結果的に受け取ったけどノータッチで返して |
そうされた当人はこんだけヘコんでるんだからいやがらせ的には成功のような、そろそろナーバスになって |
きたのでやめようのような、そういう感じでした。でしたって。 |
そして、ちょこんと私の手元に戻ってきた本達が不憫でならず、つい寝る前に布団の上で寝転がりなが |
ら読んでいたら、きたのです。 |
きたきたきた、本が面白く感じる周期がやって参りました。 |
最後に本をまともに読んだのはいつでしたっけ? |
覚えていないし過去ログ調べるのも面倒なのでどうでも良いのですけれど、結構前。結構ね。 |
ということで、まだ火付きは完璧とは申せませんけれど、少なくとも手元にある本だけはがしがしと読んで |
いこうと思っています。 |
ちなみに、手元にある本は以下の通り。 |
・岩井志麻子 「ぼっけぇ、きょうてぇ」 |
・浅田次郎 「壬生義士伝」 |
・小野不由美 「月の影 影の海 (十二国記)」 |
まぁ、こんな感じです。 |
ていうか、いずれも一度以上は読んだ本ばかりです。再読万歳。 |
◆ |
ちょっと、メモ。 |
変えたいものがある。 |
変えられないものがある。 |
そのときにどうするか。 |
それを変えなくても良い理由を作り、それに納得出来るために自分が変わるのか。 |
それとも、あくまで目の前のものを変えるのか。 |
答えはいつも自分の中にある。 |
あるがゆえに、自分を頼ってしまう。 |
おそらく、答えは常にふたつある。 |
自分の体に真摯になり、丁寧になぞるようにしてなにかを深く感じれば、おのずとどんなのものにも反応 |
出来、そしてどんな事でも耐える事無しにそれを受け入れる事が出来る、ゆえに変えるのは自分。 |
そして、それが出来るからこそ、それがどういう事なのかがはっきりとわかり、わかるゆえにそれをさえ利用 |
して、目の前のものを変えていこうとする。 |
そしてたぶん、このふたつの答えのどちらかのままに生きる自分は、居ない。 |
両方だ。 |
悟り切った澄まし顔で、ひたすら自らの体感を追い求める事に沈むあまりに、すべての目の前のものを |
失う事を、愚と捉えている。 |
それと同時に、その事を言下に否定し、ただその変化出来る自身を無視して、目の前のものに執心 |
するのもまた、愚と捉えている。 |
だから、両方。 |
両方ゆえに、どちらでも無い。 |
自分がどんなものでも愉しめるように変化出来る力は重要だが、しかしその変化を可能にする主体 |
たる自らの体が失われたらどうするのか。 |
しかし、その体の喪失を想定し、その体に頼らずに目前のものに突撃するだけでは、結局同じ事。 |
使えるものは全部使って事を成す、それだけがきっと、本質。 |
すべてを諦めるという受け身に囚われる事も、ただ悲愴的に対象の変化を叫ぶ事も、それら自体は |
決して本質では無いし、そしてそれらを本質としてしまっているものを見抜く事だけが、本質へと導いて |
くれる。 |
もし、始めからなにも感じることが出来なかったとしたら。 |
もし、後になにかを感じることが出来るようになったとしたら。 |
それで、それ自体が、果たしてなにかを変えるのだろうか? |
いや、その変化を、果たして望んでいる自分はいるのだろうか? |
そのときいったい、自分はなにを望んでいると、気づくのだろうか? |
それとも。 |
本当に、自分はなにかを望んでなどいたのだろうか? |
少なくとも、その瞬間に自分がそう問うではあろうし、しかしまた、その答えを出すことに意味が無いこと |
だけは、既にその問いを発する事が出来た時点で、もしかしたらわかってしまっているのかもしれない。 |
そのとき見上げた夜空には、果たしてなにが映っているのかなぁ・・・・ |
え、特に意味は無いですよ。 |
これだけでは、ね。うん。 |
◆ |
最近は、サイト的には「もっけ」の感想で悩んでいます。 |
や、ほんとはBBSいつ復活させんのよとか、メアドまだかよとか、あと他、とか色々あるのですけれど、 |
その辺りはねじ伏せて次いきましょう次。 |
「もっけ」です。感想です。 |
上手く書けてるような、書けてないような。 |
書き手の気持ち的には、割とすっきり楽しく書けてはいます。 |
怪物王女のときの産みの苦しみというか苦しみを今産んでるんじゃないのか私、みたいなどうにもなら |
ない感は全くのゼロで、ほとんどすらすらと淀みなく、からっと晴れた秋空のような、そんな感じ。 |
でもね、なんか、なんかが決定的に足りないなぁ、とは浮ついてすっきり感だけで満足出来ちゃう私で |
すら、ぽちっと思う。 |
別に産みの苦しみが無いからとか、そんな事はあり得なく、ていうか怪物王女のはだから良かったかと |
いえばてんで駄目駄目でしたし、たぶんそういう苦しみとか関係無いの。 |
純粋に、ほんとに自分が書きたいことが書けてる? |
という自分の問いに、なんでかな、上手く答えられないのです。 |
書きたいことが書けているかというと、それは勿論100%では無いですけれど、結構これから伸びていく |
事が出来そうな感触は得ていて、そういう意味では書きたいことを書くためにやるべきことは出来ている |
のですけれど、では、その書きたいことが本当に私が書きたいことであるのか、というのが実は今回あん |
まりしっくりきてないような気がするのですね。 |
なんていうかね、ひねりが無い。 |
一応作品の各回のあらすじを中心に、それを解説的解釈的に変換していくという、今までは私が |
他の作品に対してやってき基本的なやり方をしているのですけれど、どうも、自分が書きたいこと言いた |
い事までがあらすじ化してしまっているような気がするのです。 |
言葉が足りないというより、同じことばかり書いて、それを文法的に繋げているだけの感触。 |
だから、書きたいことの中心にあるものは書き込んではいるのですけれど、それを「書く」という行為自体 |
が為す思考で以て、発展変化させてはいない、ということです。 |
つまりね、私はこの作品はこういう風にして捉えたよ、という基本的項目だけを盛り込んで、じゃあその |
項目を使ってさらに考えていこう、という段になると、なぜか素通りしてそのまま終わっちゃっている。 |
今自分はあらすじを書きつつ、その基本項目を明示している、それが終わったらさあ本番だ、という意 |
識はあるのですけれど、いつのまにかそれが消えて、ほんと、あらすじだけになってしまっている。 |
それがどうにも、気になって気になって。 |
そしてなによりも、そうであるのにも関わらず、なんですっきりした気分で終われるの? 私。 |
そっちのが、気になる。 |
というか、どうしよう。 |
ということで、現在色々試行錯誤中。 |
予定では、というか結局はそうなるだろうという意味で、いずれはいつもみたく一人称的文章になって |
いくことで、おのずと解決されるのだろうなぁ、といういい加減な思いではいます。 |
が、今回はそれよりも今のこの形式に拘って、むしろこの形式でこそもっけを書き出してみたいなぁという |
欲求が結構強いので、今後どうなるかは自分でもわかりません、ってわかれよそれくらい自分。 |
うーん、どうしようか。 |
実際問題として、一人称で書くと、私が感じて考えた事をカバー出来る範囲が狭い上に、「もっけ」は |
久しぶりにそういった面の容量が多い作品なので、一人称ではこの作品の良さを扱いきれないかも |
しれないという予感がありますので、しばらくはこのままの形態を深めていうとは思います。 |
が。 |
それだと、なんか受け身な気が。 |
なんかもうちょっと、アグレッシブにいきたい。 |
うん、最近なんか妙に攻撃的意識が上がってきてるんですよね、私。 |
ガンガンいこう、みたいな。 |
さぁて、今回は一体なにから現実逃避したいのかな! (フォロー無し) |
アンニュイな紅い瞳でお送り致しました。 |
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■■優しさのいる幸せ■■ |
『これもケサランパサランのお陰かな・・・? 』 |
〜もっけ ・第六話・瑞生の言葉より〜 |
どうして、優しくなれないのだろう。 |
そう問うと、必ず答えは返ってくる。 |
優しくすれば、その優しさに相手が依存してしまうと思えるから。 |
与えた優しさが、相手のためにならないと知ったとき、その優しさは一体どんなものと言えるのだろう。 |
わからないようで、しかし、わかっている。 |
その優しさの意味が、もうわからなくなっていることが。 |
相手を、信じられない。 |
自分を、信じられない。 |
だから、ただひたすらに、その幸せの理屈に縋ってしまう。 |
これが、これこそが幸せの形だと信じて、ただそれに盲目的に従ってしまう。 |
依存しているのは、私。 |
もう、どうにも止まらない。 |
いいえ。 |
止まるということがどういうことか、もう、わからないのよ、お父さん。 |
幸せって、なに? |
私がもしここで立ち止まる事が出来れば、なにか解決するの? |
信じられない。 |
これだけ、あの子達が弱いということを知りながら、そんなことあり得る訳無い。 |
現実を見ていないのは・・・・・どっちよ・・・ |
◆ |
日原家に、とある老紳士が訪ねてきました。 |
『そのおじいさんは、ある日の午後、不思議なモノを持ってやってきた。』 |
ケサランパサラン。 |
その老紳士が持ってきた小箱の中には、白い綿毛のようなものが入っていました。 |
そしてそれは生きていて、それを飼っている者に幸運をもたらすと言い慣わされているものなのでした。 |
その里親となる人を見つけて欲しいと依頼され、そしてお祖父ちゃんは瑞生にそれを手渡したのです。 |
大事に大事に育てる瑞生。 |
大切に育ててくれる人になら誰でも、と言い残していった老紳士の言葉通りに、瑞生は本当にそれを |
大切に育てるのでした。 |
そこには、幸運をもたらしてくれるがゆえに大切にする、という意識は影を潜め、ただ可愛くて仕方が無 |
いゆえにそれを可愛がり、そしてそれこそが既にひとつの幸せを瑞生に与えている、という事実がありま |
した。 |
飼い猫の三毛さんがケサランパラサンにちょっかいを出すのを、『大事にしないと幸運が逃げちゃうんだ |
から!』と叱る瑞生にとっては、その言葉通りの意味は、既にそれがケサランパサランを慈しむ目的では |
無く、そうして既に大切にケサランパサラン可愛がっている自分のその愛情を正当化する、その道具的 |
理由としての意味を、それを越えて既に含んでいる。 |
つまり、幸せを得るための道具としてケサランパサランを大事にするのでは無く、ケサランパサランが大好 |
きだからこそ、その愛するケサランパサランを褒め称えるための言葉のひとつとして、その幸運をもたらす |
という要素が瑞生には捉えられているのです。 |
この子ほんとに可愛いし、おまけに幸運まで運んできてくれるんだよ♪ もう最高だよ! |
そして。 |
『・・ほんとに幸運あるのかな?』 |
そこはやっぱり普通の子供の瑞生ちゃん。 |
そんな可愛さとはやっぱりなんの関係も無しに、純粋に色々と期待してしまいます。 |
やっぱり、気になるよね? |
そしてそれを見越してか、お祖母ちゃんが、週末に瑞生達の母親がこっちに来られるようになったという |
朗報を伝えます。 |
大喜びする瑞生と静流。 |
そして彼女達の視線は、しぜん目の前のケサランパサランにいくのです。 |
『ほらぁ、いいことあった。』 『ほんとだぁ!』 |
孫達の笑い声に、頬を綻ばせるお祖父ちゃん。 |
瑞生達がどんなに邪念(笑)を抱いてケサランパサランを大事にしようと、それでもたらされた幸せに |
微笑むことが出来るのなら、それが一番大切なこと。 |
そしてなにより、そのケサランパサランは、ただ其処に居るだけ、ということ。 |
果たして、瑞生達に幸運をもたらしたのは、本当にケサランパサランなのでしょうか? |
例えば、ケサランパサランという文字に「神様」という文字を代入してみてください。 |
神様が、この幸運を一生懸命お祈りした瑞生に授けてくれたのでしょうか? |
いえそれ以前に、瑞生が一生懸命に祈ったからこそ、幸せが訪れたのでしょうか? |
当たり前ですが、そんな事はあり得ません。 |
そもそも、神様など実在しませんもの。 |
そしてそれと同様に、瑞生達の目の前のケサランパサランも、ただの毛玉にしか過ぎません。 |
幸運が続いたのは、どんなに偶然とは思えなくても、それはどこまでいっても偶然であり、神様やケサラ |
ンパサランとの因果関係がある訳はありません。 |
けれど、ケサランパサランは、目の前に「いる」のです。 |
偶然続いた幸運は、それはすべて起こるべくして起こったもの。 |
ただ当たり前のように起きて、瑞生達とはなんの関係も無く進んでいく時間の中の現象のうちのいくつ |
かにしか過ぎません。 |
しかし、そうした幸運が、なにかによってもたらされたと、後付で意味を持たせて受け取られることの、 |
その効力には大きな価値があります。 |
ケサランパサランを可愛がって、大切にしたから、ケサランパサランが恩返ししてくれたんだ! |
ありがとう! ケサランパサラン! |
嬉しいですよね。 |
自分の愛情が、真っ直ぐに返ってくる実感というのは。 |
自分が捧げた祈りが通じて、それが世界を動かしたと感じられるのは、すごい快感ですよね。 |
それは、驕り以前に、その愛情や祈りそのものの価値が、この世界の中にいる自分達にとってこそ、 |
とてもとても大切なものだというのを伝えてくれるのです。 |
努力すれば報われる、でもその努力は、その目的を得るための努力であると同時に、それが後付で |
もいいから、その努力がなにかを動かしたかもしれないという実感そのもの、その獲得自体に意味が |
あるもの。 |
祈って、祈って、それだけではなにも変わらないのは当たり前で、けれどその当たり前をちゃんと弁えて |
いるからこそ、もしかしたらその祈りも無駄じゃなかったんだと、そういう「余裕」を持つことにも繋がる事 |
が出来る。 |
次々と幸運に恵まれていく瑞生。 |
遅刻したにも関わらず先生が遅刻してきて遅刻を免れたり、給食で余ったプリン争奪戦のジャンケン |
で勝利したり、そういったささやかながらの幸運が瑞生を優しく包んでいきます。 |
嬉しくて堪らない瑞生。 |
幸せ一杯の瑞生。 |
よーし、みんなにも幸せになって欲しいな! |
ケサランパサランが幸運をもたらしているという根拠はどこにもありませんし、瑞生もそう思っています。 |
でも、幸せな気分で一杯の瑞生にとっては、それがケサランパサランがもたらしてくれたということさえ、 |
信じることが出来るのです。 |
そしてたぶんもう、『今の私には、いいことがどーんどん起きるんだぁ!』という台詞からもわかる通りに、 |
瑞生もそのケサランパサランの効力を信じた自分を信じることが出来ている。 |
そこに、ケサランパサランという「妖怪」が顕れるのです。 |
ケサランパサランが、そこにいる。 |
言ってみれば、ケサランパサランは、お守りのようなものです。 |
私はお守りにすべてを賭けて、なにもしなくなる人を知りません。 |
それと同じく、瑞生にはもう、ケサランパサラン自体が幸運をもたらしているのでは無く、そのケサランパサ |
ランを信じて笑顔一杯でいる事ができるからこそ、いいことが続いていくのだ、ということがわかっているの |
です。 |
普段なら見過ごしてしまうようなものにも気がついて、自分がどれほど小さな幸せを見逃してきたのかを |
知る瑞生。 |
世界って、こーんなに幸せで一杯だったんだ! |
笑う門には福来たる。 |
そして。 |
瑞生はなによりも、なによりも深く感じたのですね。 |
その瑞生の笑顔を運んできたのは、紛れも無く、目の前にいるこのケサランパサランだということを。 |
ケサランパサランに感謝すればするほど、幸せを感じていく瑞生。 |
ありがとうって言えば言うほど、どんどん嬉しい気持ちになってくんだよ! |
微妙なことでも、解釈のしようでは良いことのように取れるかもしれないものと出会ったときに、それを |
良いことのように解釈すること、そこにケサランパサランは顕れてきます。 |
ケサランパサランが振りまいている幸運をみつけるのは自分の仕事、瑞生には無意識にそういった意識 |
が既に生じていたのかもしれませんし、またその微妙なことを良いことと解釈することが出来た時点で、 |
それは真っ直ぐに幸せに繋がっていくことが出来るのを、すべてケサランパサランの存在の後押しによって |
瑞生は可能にしているのです。 |
そして勿論、はっきりと嫌なことに対してさえ、瑞生は、やがて向き合い、そして。 |
幸せに変えていくことも出来るのかもしれない。 |
ケサランパサランとはつまり、幸運を運ぶものでは無く、瑞生自身の幸運を生産させる力を育てるに一 |
役買うもの、とも言えるのかもしれませんね。ちょっと単純ですけれど。(笑) |
その幸せの生産は、瑞生ひとりでは大変なもの。 |
すべてが自分の気持ち次第、すべては自分の受け取り方で幸せにも不幸せにもなる、という言葉はそ |
の逞しさと共に絶え間の無い残酷を運んでもくるのですから。 |
けれど、もし、目の前に、「誰か」がいてくれたとしたら・・・・ |
すべてが、瑞生の自己完結で終わらずに済むとしたならば・・・・ |
◆ |
瑞生のお母さんは、妖怪が嫌いです。 |
娘達にそういうモノが視えたり憑かれたりする体質があることで散々悩まされ、そして導き出した答えが |
徹底してそういったモノから娘達を遠ざける、ということでした。 |
まずお母さんが行ったのは、その妖怪の存在を全否定することでした。 |
そんな非科学的なモノ、いる訳無いじゃない。 |
お母さんはなかなか聡明な人で、勿論妖怪という概念がある事は否定していませんし、そこまで幼稚 |
ではありません。 |
けれど、その概念で娘達が置かれ接している状況を説明する事を、断固として拒否するのです。 |
妖怪なんていう古めかしい理論で、あの子達を非現実的な生き方に巻き込まないでよ! |
妖怪というモノが有用なのはわかるわ。 |
でもそれは昔の話でしょ。 |
今はそんなモノで語れるほど甘い時代じゃないし、そんな事をあの子達が口にすれば、それだけでこの |
今の社会で生きていくのに大きな不利益を被ることになるのよ。 |
それに頼らなくちゃいけないほどに追い詰められてる人達にだけ、妖怪なんてモノはあればいいんだわ。 |
『あの子らは、お父さんのお客さんとは訳が違う!』 |
あの子らは、今のこの時代に生きて、普通の女の子らしく生きられる、その可能性がまだあるのよ! |
『私はあの子達に、現実的に対処できるようになって貰いたいの。』 |
『そう思うの、間違い?』 |
そんなお母さんの必死の言葉に、お祖父ちゃんはそっけ無く応えるのです。 |
『千歳。お前はもっと余裕を持った方がいいな。』 |
お母さんが、ブチっとくるのはようくわかります。 |
この場にいる誰もが、娘達の普通で当たり前の生活を守ろうとはしない、ということだけしか見えないの |
ですから。 |
お母さんが奮起するのは、それは当然といえるでしょう。 |
しばらく会っていなかった娘達へのお土産に、櫛を買ってきたお母さん。 |
娘達に、当たり前の普通の女の子らしい生活を用意する義務があると、お母さんは考えているのです。 |
自分の父親、つまり瑞生達のお祖父ちゃんに娘達を預けたのはなぜでしょう。 |
お母さんにとって、娘達はただ過敏なだけで幻覚が見えたり発作を起こしやすくなっている、あくまで |
普通な女の子の範疇に留まっているのですし、また留めなければならないと、親として娘達にまともな |
社会生活を営ませる義務感を感じています。 |
ですから、お祖父ちゃんの元に瑞生達を預けたのは、あくまで刺激の多い都会から娘達を遠ざけるた |
めなのです。 |
至極、当然なことのように私には思えます。 |
お母さんの言っている事は、実に理に適っていますし、そしてなによりも、お母さんの言う「当たり前で普 |
通の女の子」の生活を娘達に与えるには、それしか無いのですから。 |
それをあろうことか、その娘達をその「当たり前で普通の女の子」の生活から遠ざけようと、自分の父親 |
がするだなんて。 |
いいえ、それは充分わかっていたことだわ。 |
お父さんがそういう事の造詣深く、そしてそこから孫達を導いていく事なんて、火を見るより明らか。 |
私は、それを覚悟していた。 |
そうよ・・娘達を田舎に避難させても、その避難場所には鬼がいるのを・・・そこで育ってきた私がなによ |
りも知っていたわ・・・ |
だから私が、お父さんから娘達を守らなくちゃいけないのよ。 |
お母さんは完全にお父さん派、夫はなんの役に立たないし、だったら私しか、居ないわ! |
あの子達を社会から外れさせるなんて事、あの子達を不幸せにすることなんて、絶対に許さないわ! |
おそらく、お母さんはそのお母さんが想定するその当たり前の社会とやらに、娘達を閉じ込めるつもりは |
全く無いのでしょう。 |
私はこのお母さんはそういう頑迷な人とは見ませんでしたし、とても広い視野を持っている人だと感じま |
した。 |
お母さんがしようとしていることは、ただひとつ。 |
娘達から、当たり前の社会を奪わないこと。 |
その当たり前の社会から娘達がやがて自らの意志で抜けようとするのなら、きっとこのお母さんは感情 |
的には不安でしょうけれども、そこに閉じ込めようとはしないでしょう。 |
お母さんはただ、娘達が負った不運な体質、つまり妖怪(のようなモノ)が視え憑かれてしまう、そのもの |
自体と真っ向切って対決しているだけなのです。 |
言ってみれば、それらの体質は病気のようなもので、そして病気であるのならばそれは治せ、そして治せ |
るという事ならば、治りさせすれば、娘達はごくごく当たり前の、なんの異常も無い普通の人生を送る |
事が出来る、という事。 |
ですから、お母さんが娘達のアレをただ過敏なだけと「病気」として位置づけたのは、ごく普通の事なの |
だと思います。 |
病気を治そうとすることの、なにがおかしいっていうのよ。 |
病人は、一生病人として暮らさなくちゃいけないの? |
そっちの方がおかしいわ! |
あの子らは、まだ治るのよ!! それを放っておいてなにがあの子達のためっていうのよ!!! |
そして、ここがひとつの分かれ道。 |
お母さんは娘達の体質は治るとみて、そしてお祖父ちゃんは治らないとみたのです。 |
ですからお母さんの上記の批判は、実はお祖父ちゃんには当てはまらないのですし、そして、お母さん |
も充分そのことは理解しているのです。 |
けれど、この図式だけは鮮明なのです。 |
娘達の病気を治して普通の女の子に戻すか、妖怪まみれの非常識で異常な人間にするのか。 |
治らないなんて事、絶対に絶対に無いわ!!! |
治る事が大前提で、治らない事など論外。 |
だからお母さんにとってはお祖父ちゃんがどんな立場であろうとも関係無く、すべて治る事を前提とした |
論法で以てお祖父ちゃんと斬り結ぶのです。 |
この大問題に対して、この作品はしっかりと踏み止まるのです。 |
お母さんの論法を、決して無下には扱わないのです。 |
私も、お母さんの論法を、ただヒステリックなものとして片づけるようでは、この作品の価値は無いと思っ |
ています。 |
むしろ、このお母さんの論法をもしっかりと満たしてこそ、価値があると思います。 |
まぁ、そういう片づけ方は、あのお母さんの夫、つまり瑞生達の父親の姿が全部負っているのでしょうね。 |
絵に描いたような無責任男で、なんか観ていて凄いって思いました。 |
で、お祖父ちゃんもその辺りしっかり見抜いてるから、結構怖かった。(笑) |
あのお父さんは、妖怪とか娘の普通の生活とかも、ただの博物学的言葉だけの存在としてしか捉えて |
無いんだろうなぁ・・きっと。 |
まぁ、瑞生達の避難場所としては機能してそうですけれどね。(笑) |
そしてさらにお母さんは、その立場から言葉を重ねます。 |
瑞生がケサランパサランなどという得体の知れないモノを、ただ得体の知れないモノとして捉え、そして |
そのままそれを無批判に受け入れ、それが与えてくれるものに頼り切ってしまうのは許せない、と。 |
こんなもの、小動物のカケラにしか見えないわ。 |
それが幸運を与える訳が無いことはどうでもいいとして、それよりもそういう事に頼ってしまうことで、瑞生 |
が現実的な生き方を出来なくなる事を危惧しているのよ。 |
少しずつ、お母さんが「憑かれている」モノが視えてきました。 |
お祖父ちゃんは、こういう事を語ります。 |
あの子達は、なにかを感じている。 |
それはなにか得体のしれない、なにかそのものだ。 |
色々な事が裏で起きているが、お前達はそれに気づかない。 |
が、あの子らは感づいている。 |
なぜあの子達にああいったモノが視えたり憑いたりするのか、お前は考えたことがあるか? |
『物事の背景はなかなか見れん。普通は起こったことにだけ目がいく。 |
背景抜きで無理に判ずれば欠落や損を生じるだろう。』 |
瑞生達は、お前の言うとおりに確かに過敏なのだろう。 |
だがな、千歳。 |
お前はあの子達の過敏さがもたらした、様々な嫌な出来事にばかり目を奪われ、ではあの子達がそれ |
ほどまでにして反応しているものがなんであるのかを、見ようとも感じようともしていない。 |
あの子らの示した異常な反応だけを、無理矢理切り取って治したところで、そんなものはいわば対症療 |
法にしか過ぎないのだ。 |
むしろあの子達が示す、その異常な「妖怪」こそ、そういったあの子達が感じている背景があることを |
如実に示しているのだ。 |
そしておそらく・・・そうやってお前が、お前こそが過敏に上辺の出来事だけに囚われ、あの子らが面して |
いるモノ自体への理解を拒絶している、その事もまたあの子らに取り憑いている「妖怪」として顕れて |
きてもいる。 |
『わしが教えているのは、そういう背景込みでなにかを理解し対処する知識と方法だ。』 |
正直、妖怪などという概念なぞいらん。 |
それに拘るつもりも無い。 |
重要なのはな、あの子達の現実に合うやり方で、そしてあの子達が納得出来る形であの子達を導き、 |
そして自分達で生きていけるように育てることだ。 |
いいか、千歳。 |
わしもお前の望むものを否定はしないし、今の若いもんの当たり前の暮らしを知らぬわしでは、あの子 |
達にそれを与えてやることは出来ないだろう。 |
だがおそらく、お前の今のやり方では、お前の望むものは手に入れられないだろう。 |
お前は、お前こそが、あの子ら自身が向き合っているものと向き合わずに断固それを拒否しているから |
だ。 |
お前の望み自体は否定しないし、それはそれでいいだろう。 |
だが、ならばお前こそもう少し「現実的」になったらどうだ。 |
お前が思っているより、あの子達は遙かに遠い位置にいる。 |
お前がお前の望みを真に叶えるつもりがあるのならば、最低限、自分の娘達が今どこにいるかを見つ |
めたらどうだ? |
お前は既にわかっているのだろ? |
あの子達のアレを、ただ過敏なだけの一言で片づけることなど出来ないということを。 |
妖怪妖怪とお前は嫌うが、それに一番拘っているのはお前だ。 |
拘るべきは、そこでは無いはずだ。 |
起こった事では無く、その背景にまず拘れ。 |
そのために有用な理論があれば、ただ純粋に利用すればよい。 |
「妖怪」なぞ、方便で結構だ。 |
お前は、娘達を治す事に拘るのか? それとも、娘達の治し方に拘るのか? |
治し方に拘る理由も、わかる。 |
確かに胡散臭いやり方で治す事自体、なにかと目立つし世間体も悪かろう。 |
世間は頑迷以前に冷酷だ。 |
その冷酷な世間に対してのそのお前の「現実的な」対処、というのは間違ってはいないだろうし、 |
おそらくわしやあの子らの父親には、それは出来ないものだろう。 |
それと、それでも妖怪が娘達の治療に有効である事のどちらを選ぶか、などという選択を迫りはせんよ。 |
両方選べ。 |
逆に、どっちを損じても、あの子らは幸せにはなれんだろう。 |
わかるな? 千歳。 |
お前にとって真に重要なのは、あの子らの幸せそのものだ。 |
余裕を持て。 |
もっと大きく構えろ。 |
お前には、自分がなにに拘っているのかが見えているはずだ。 |
お前がしなければならんのは、あの子らにとって有用な治療法を理解し実践し、そしてそれによるあらゆ |
る副作用を全力で解決していくことだろう。 |
千歳。 |
妖怪を使う治療法に専念するあまり、お前まで妖怪かぶれになる必要は無いのだ。 |
言ったろう? 妖怪なんぞ方便で結構だと。 |
むしろお前のその「当たり前で普通の」感覚は大切なものだし、娘達が妖怪まみれの治療を安心して |
行えるように、お前はいつでもその「当たり前で普通の」生活に娘達を迎え入れる準備を怠らぬことこそ |
肝要なのだ。 |
それは大層難しく困難なことかもしれん。 |
だが。 |
それを厭うお前では、無いだろ? |
お前のその優しさが、あの子らの幸せには要るのだからな。 |
そして、それは無論瑞生と静流にも言えることなのです。 |
瑞生達は、妖怪と接しつつも、決してあちら側にいくことはありません。 |
なぜならば、そのためにこそその方法をお祖父ちゃんに教わっているのですから。 |
目の前に広がる圧倒的な「なにか」。 |
それを感じつつ、そしてそれを理解しそれとの付き合い方を覚えていくということは、つまりそれはそうする |
事自体が目的では無く、そうしてそれら「なにか」とそれとの付き合い方を含めた巨大な「妖怪」、 |
そのもの自体と向き合っている自分自身を生きることが目的であることを、なによりも深く実感するため |
の「方便」としてあるのです。 |
目の前にいるその「妖怪」は、あくまで自分のためにいる。 |
けれど。 |
その「妖怪」を生み出したのは、自分の目の前にある「なにか」と接している自分であり。 |
そして。 |
その「なにか」が厳然として自分とは無関係にして其処にいるからこそ、自分は「妖怪」を生み出した。 |
その「なにか」こそ、其処にいる、妖怪そのもの。 |
大きな苦悩があり、それを解決する過程で「妖怪」が生み出され、そしてそういった自らによる「妖怪」 |
の生成を行わせたのは、その目の前にある妖怪たる苦悩を引き起こすものそれ自体なのです。 |
だから、妖怪は、いる。 |
ケサランパサランも、また然り。 |
瑞生は自分がケサランパサランを持っていたことでお祖父ちゃんとお母さんが喧嘩になったのを感じ、 |
ケサランパサランを手放すことにします。 |
瑞生の目をじっと見つめるお祖父ちゃん。 |
瑞生は、ケサランパサランを返す、と言います。 |
お祖父ちゃんは、『別の処し方がいい。』と言います。 |
瑞生を連れ、丘の上にある神社から、空に向けてケサランパサランを放たせます。 |
瑞生。 |
『そいつを飼っている間、楽しかったか?』 |
瑞生は、頷きます。 |
お前にとって、それがなにより大事なことだ。 |
楽しくなけりゃ、なんにもならん。 |
だが、楽しければ、あとはどうにでもなる。 |
お前、その楽しさを、誰かに分けてやりたいと思ったろ? |
楽しいことを独り占めするって意味で、ケサランパサランを誰にも見せずに大切にした訳では無いのだろ? |
ただ純粋に、あまり見せるな見せると幸せが減るという言いつけを守っただけだろ? |
それは、幸せを独り占めするためでは無く、その幸せ自体の喪失を防ぐための瑞生の行為。 |
だって、幸せが無くなっちゃったら、誰にもそれを分けてあげられないじゃん。 |
自分がこんなに楽しいから、幸せだから、だから、それを人に分けられる。 |
いいえ、分けたいと思えるのです。 |
だったら、そうすりゃいい。 |
『これからは、また別の者にその幸運を与えにいって貰うことにしよう。』 |
お前が楽しめて、それを誰かに分けたいと思えた時点で、お前は幸せになれたのだ。 |
瑞生は、こう独白します。 |
『ごめん・・・本当は・・もっと遊びたかったんだけど・・・・』 |
それで、充分だろう。 |
お前がケサランパサランとまだ遊びたかったと思えるほどに、あれとの時間が楽しかったといえるのだから。 |
だが、そのケサランパサラン自体への、そのお前の優しい謝罪の心は大切にしまっておけ。 |
それはやがて・・・ |
『瑞生。さっきお母さんから電話があったよ。』 |
『今度の週末もこっちに来られそうだって。』 |
『良かったね。』 |
『・・・・・うん!』 |
『ありがとう・・・・ケサランパサラン!』 |
瑞生の謝罪が感謝の言葉を生み出し。 |
そして。 |
その感謝の言葉が舞い上がる空には、それを受け取るべきケサランパサランが、確かに、いる。 |
だからまた、きっと、会える。 |
会え続ける。 |
其処にいる、優しい「なにか」達と。 |
幸せのままに。 |
いいえ。 |
優しさの居る幸せだけが、ずっと在るのです。 |
以上、第六話「ケサランパサラン」の感想でした。 |
最高。 |
もう、なにも書けません。 |
疲れたーっ。 (机に突っ伏して) |
◆ 『』内文章、アニメ「もっけ」より引用 ◆ |
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-- 071112-- |
|
|||||||||||||||
■■あんまり見ないで■■ |
ごきげんよう、紅い瞳です。 |
すっかり秋になりまして、そろそろ冬の足音も錯覚では無しに聞こえてきそうな今日この頃、 |
皆様如何お過ごしでしょうか。 |
私は・・・ |
よくわかりません。 |
はい。 |
ということです。 |
終わり。 |
冗談です。 |
でも書くことありません。 |
洒落にならないとかいうのじゃなく、洒落すらありません。 |
あっれ? 今までどういうこと書いてたんでしたっけ? |
アニメの感想以外でなにかを書こうとすると、頭の中のものが全部消えます。 |
消失です。消えます。 |
で、諦めてパソコンの電源を落とすと同時に、ぴんぽんと良い音を鳴らして復活してきます。 |
復活です。復活します。 |
なにこれ。 |
ええと、なにかなこれは。 |
どういうこと? |
なんだか体が全力で文章を書くことを拒否している感じです。 |
頭では書こう書かなきゃと思っていて、それなのに気づくとお体様のいいなりになってるんです。 |
・・・。 |
ある意味私らしいですけど。 |
そしてアニメ感想だけは書くんです。 |
どんだけですか。 |
あ、普通は「どんだけ〜」という使い方をするらしいですね。私は使ったことありませんけれど。 |
いや、どんだけだよ、とか、そういう風な使い方ばっかりして微妙に軸をズラしてますよ。 |
というか、リアルで「どんだけ〜」と言っている人にまだ会ったこと無いのですが。 |
これ、ほんとに流行ってたの? |
それ以前に、どうして私はこの表現を流行っていると認識したのでしょうか? |
そもそも「どんだけ〜」という正しい使い方を私がしないあたりに、なにか裏がありそうです。 |
是非、あって欲しい。 |
ネタになりませんね、洒落どころか。 |
「どんだけ〜」なんてどうでもいいです。 |
どうでもいいことをどうでもよくないものに変えてこそなのですけれど、変えてませんし、もう駄目です。 |
なにをしたいのでしょうか、この人は。 |
自分でもよくわかりません。 |
暇じゃありません。 |
割と忙しいです。 |
でも、忙しいときこそサボり精神を発揮して、色々とくだらないことをやったり考えたりして色々と駄目に |
していくのが私クオリティなのに、なんですかこのザマは。 |
サボってないです。てか、サボろうとしません。 |
黙々と黙々と、やることだけやっています。 |
そのうち夢の中でもずっと同じ事やっていそうです。 |
そもそも夜だろうと昼だろうと最近夢を見ていない気がするのですけれど、それよりも自分が夢を見て |
いたかどうかをきっちり思い出すことさえしません。 |
なにもかも、面倒くさい。今やってること以外。 |
まずい、ような気がします。 |
・・・。 |
ここまで書いてきて、ずっと考えているのですが、この文章のオチが思い浮かびません。 |
というか、オチを考えること以外なにもやっていませんでした、今。 |
落ちろー落ちろー。 |
やっぱり落ちませんでした。 |
どうしてくれますか。 |
◆ |
上の文章で私がなにをしたかったのかわかる人は、私に教えてくれたらきっと良いことがあります。 |
たとえば、明日の朝ちゃんと目覚ましが鳴るとか、そんな感じで。 |
はい。 |
ということで、現在はまぁ、色々やってるようなやってないような、そんな感じです。 |
なんか色々買ったりしたけど、買ったものを楽しんでる余裕も無いような気がします。 |
服とか、なんか今まで持ってるのをそのまま当たり前のように着てる感じです。 |
買ったばかりなのに、気分は長年着古した古着感覚。(買ったのは勿論古着ではありません) |
新鮮味を感じてません。病んでますか私。 |
むー。 |
まぁそんな感じ。 |
あー、なんかほんと書くことないな。 |
やる気あるかどうかに関係なく、なんか、自分の生活に実感というか感じるものがあんまり無いような、 |
さっぱりし過ぎて味気無いみたいなそんな感じですね。 |
まずい、そのうち味とかしなくなるよ。 |
じゃ、アニメでも観て、また号泣とかしてみますか。 |
なんかね、最近アニメをいい加減に観てるというか、流れ作業的に観てるときあるんだよね。 |
消化してるというか、なにか他のことを並行してやりながら観てたりとか、そういう感じだからなのかな。 |
うーん、昔から時間の使い方はヘタな自信はあったのですけれど、どーもそのヘタレさに最近は磨きが |
かかってきてしまっているようで、それでもなんとかなっていたものがどうにもならなくなってたりして、それで |
慌ててフォローする事に躍起になってたりして、そしてまた時間が無くなり、という悪循環展開中。 |
・・・・。 |
要するに、サボりのテクが落ちた、ということなのかな? |
別に死ぬほど忙しいって訳じゃ無いし、もっと忙しいときはいくらでもあったのに、なんかこのところ上手く |
それと付き合えていない気がするのね。 |
で、結局アニメ観てるときも、それが気になってついそれを持ち込んできちゃってて、リフレッシュもなにも |
無いというか、うーん、なんか、悪循環。(語彙無し) |
私はサボるっていう「能力」というか才能(ぉぃ)だけは昔からデフォであったから、逆にそれを育てたり |
管理したりすることが無くて、それこそ頼り切ってたから、それが機能しないときには、まずお手上げ。 |
なんていうの、全部自動的だったていうかさ、あーそうね、私は元々「リフレッシュ」とか「癒し」とか、 |
そういう言葉ってわざとらしさがあって好きじゃなかった。 |
んー、そういうのをわざわざ言って実行する事自体が、なんか病的な感じがするというか、私はこんなに |
疲れてるの傷ついてるの、だから癒しま〜す、って、そういう感じも嫌だし、そしてそれならそれできっちり |
やればいいのになんか安易さというかただ色々なものを記号化してそのまま簡単に解決、みたいな |
ノリがあって、つまりどんな方位からみてもそういう言葉は好きじゃなかったんだよね。 |
でもなんかこう、この頃はがくっときてるね、その言葉に。 |
んー、なんていうのかな、その言葉に拘り過ぎてる自分しか私には無くて、だから逆にその癒しとかの対 |
象としてあった自分がどうなってるのかとか、そういうのを見てなかったんじゃないかなぁ、って気づいて。 |
や、だからって「癒し」なんてワードを肯定する訳じゃなくて、ただその言葉を敢えて使うことで、自分を |
「対象化」すること自体は、やっぱり必要だったのかなぁって、こういう今の当たり前の事が当たり前に |
出来なくなってるときに、ふと感じたのです。 |
そのワードに拘る事が大事なのか、それとも自分を対象化して自分の「能力」を自分で使いこなせる |
ようになることが大事なのか。 |
ま、よく考えれば、当たり前のことですよね、こんなこと。 |
いや、考えるまでもないことですね。 |
うーん、簡単だなぁ。 |
そうですよ。 |
紅い瞳なんて、ごちゃごちゃ言わずにアニメでも観てろってんです。 |
理屈で動けるような奴では無いのは先刻承知、だったらさっさと走れ走れ。 |
んー。 |
なんか、馬鹿っぽい。 |
いや違う。 |
馬鹿って言ってんの。 |
はい、馬鹿です。 |
・・・。 |
えー・・。 |
なんで私は自分を罵倒してるんでしょ? |
ん? |
あ、そうそう、アニメね、アニメのお話ね、鳥頭ですねほんと、や、こっちの話。うん。 |
さて。 |
◆ |
アニメかぁ・・・。 |
そうね・・アニメね・・・。 |
「もっけ」いいなぁ・・・・。 |
また「みなみけ」良くなってきたなぁ・・・・。 |
でも「ブルードロップ」はもう駄目っぽいなぁ・・・・。 |
「もやしもん」はなんだか楽しいなぁ。日本酒の話をやられるとなんでこんなに嬉しいのかなぁ・・・・ |
「ガンダム00」も頑張ってるなぁ。コーラサワーとか・・・・。 |
「バンブーブレード」はお気楽極楽上級生組がいいなぁ・・・・。 |
「スケッチブック」は限界だなぁ・・・・。 |
「しおんの王」はもうちょっとゆっくりじっくりやれば宜しいのになぁ・・・・。 |
「げんしけん2」はどういう顔したらいいのかわからないなぁ・・・・。 |
あと「ひぐらし解」はそろそろ名作になってきたなぁ・・・・。 |
まぁ、こんなところですよ、今の私。 |
ロクなことは言えそうも無いですし、言いそうも無いですけれど、いつもこんなもんじゃんと言われると、 |
その通りですねと言えそうで、ちょっぴり嬉しいなぁ・・・・。 |
うーん。 |
しばらくは、こんな感じで。 |
あーあと。 |
アニメ検定とか、ついにきたか。 (気づくの遅) |
んー、ひとことでいうと、アニメが「文化」としてのまとまりを得そうで、なんか怖い。 |
というかさ、ひとりひとりが直接アニメと向き合う、という原始的かつ原初的な次元が封鎖されて、 |
その上にひとつの「文化」という先入観というか形式というか、或いは「アニメ道」みたいなのを作って、 |
それを通してアニメというのを「捉えて」いこう、っていうさ、そういうのがすごく怖い。 |
んー。 |
ほら、絵とか音楽とかなんでもそうだけど、あ、私なんかの場合最近だとお酒もそんなとこあるかな、 |
既存のやり方とか楽しみ方とかそういうものがあって、それを習ってからやってこうみたいなのがあって、 |
それを経ていないものは評価されないというかさ、そういうのあるでしょ? 沢山。 |
別に、その既存というか権威あるやり方なり楽しみ方なりには、敬意を払っているし、そこから得るべきも |
のはありますけれど、それはそれであり、またそれはそれにしか過ぎないんだよね。 |
その「形式」を通して楽しむなにかと、そのなにかは、全く別物。 |
というか、その「形式」をオリジナルなものを使って、そしてそれを通していくこと、それ自体は否定出来な |
いということだけれども。 |
んー。 |
で、アニメもたぶん、そういうの、出来ちゃうんだろうな。 |
で、私、そうなり始めている今この時代に丁度生きて居る。 |
絵でも音楽でも、その勃興期に居合わせた人達は、一体そうやってひとりひとりがダイレクトに繋がって |
いたものとの繋がりを薄められていくのを、どう感じていたんだろうね。 |
たぶん、アニメオタクとそういう「文化」化は非常に相性が良いと思うから、歯止めをかけるのはかなり |
難しい気がするな。 |
まぁ、このアニメ検定に関してはネタ扱いで無視されるとは思うけれど、でもアニメ界(?)に於ける「世 |
論」のようなものに対してはなによりも敏感だろうし、いずれそういうまとまりを指向するのだろうね。 |
んー。 |
こういうときこそ、私は私の言っている通りのままに、純粋に私の見方と感じ方による、そのオリジナルな |
アニメとの繋がり方を培っていれば良いのかな。 |
それだけで、いいのかな。 |
大体さ、絵でも音楽でもお酒の飲み方でもそうだけどさ、そういうのの風格というか味わいとか、そういう |
のって、長い時間かけてずっとずっと培われてきて、その時間の長さ自体がなんらかの味わいを出してき |
ている。 |
でもアニメはさ、今、じゃん。 |
今さ、これがアニメというもので、アニメとはこういう風にして楽しむもので、こういうアニメこそ評価に値す |
るものだと言われて、ほぅ、じゃどんなものかねそれは、という風にして見せて貰うと、大笑い。 |
こんなくだらない見方と感じ方(失礼)でアニメをまとめて、それを後世に残すだなんてちゃんちゃら可笑し |
いわ! と、まぁ笑い半分怒り半分ってところですよ。あまりにくだらない。 |
で、そう考えるとだよ、絵や音楽やお酒の飲み方だって、それに味わいがあると感じるのは、ただそれが |
今の私の趣味にある程度合うからであって、それが絵や音楽やお酒の飲み方として成立してある、 |
ということとは、全然関係の無いことだっていうのが、自然とわかってくると思うんだ。 |
或いは、その「正しいやり方楽しみ方ということ、それ自体の味が美味しいだけで、やっぱりそれをひとつ |
の「味」として捉え、それが美味しいか美味しくないかは、やっぱり自分の趣味に厳然と基づく、 |
ただそれだけなんだと思います。 |
だから、その「正しい」やり方楽しみ方を押し付けるのは、ただ自分の好きなやり方楽しみ方を押し付け |
てるのと、それは全く同じことなんです。 |
私なんかは結構ブランド志向というか権威的なものには魅力を感じますけれど、それはやっぱり私の趣 |
味でしか無い訳で、常々それは自覚してます。 |
だから当然そのブランド的権威的なものを、それを「正当」なものとして捉え、またその「正当さ」で以て |
対象を捉えることもしません。 |
まぁもっとも、正当さはともかく、ブランド的権威的なものそれ自体が培ってきた、歴史なり味わいなりを |
感じながら捉えることは普通にありますけれどね。趣味的に。 |
んで、さっきこのアニメ検定はネタ扱いされて無視されるって言ったけど。 |
一応上辺だけは見てきたのだけれど(ぉぃ)、なんていうのかな、級の設け方というか、それが気になった。 |
つまり、いわゆる「感想」的な、それこそ「萌え」でもいいけど、そういう一個のアニメ作品と向き合って、 |
それとの対話なり付き合いを通しながら、様々な次元で様々なものを感じていく、という、そういう最も |
中心にあるべきものが、なんか、低く扱われてる。 |
その、アニメの作り手側の知識とか、あとアニメ史?、その言葉嫌いなんですけど、とにかくそういうなん |
ていうのかな、アニメとの直接的繋がりとはなんの関係も無い外的なものばかりが上位にあげられて、 |
それをマスターしてその観点からアニメ論を展開出来れば1級を差し上げます、っていう、なんか違うな |
、って、それだけでもうがくっときた。 |
一応サブタイ(?)に全国総合アニメ文化知識検定試験と銘打ってはいるから、間違いでは無いの |
だけれども、でもメインにあるのはアニメ検定、つまりこの「全国総合アニメ文化知識検定試験」こそが |
アニメの指標なのだよ、と言いたいってことなのだから、もうマズイっしょ。 |
・・・。 |
下手すれば、アニメオタクすら置いてけぼりな場所で、つまりオタクを排除した場所で新しくアニメという |
「場」が出来て、そっちこそがホンモノだということになるかもしれない。 |
へっ、アニヲタ差し置いてアニメが成り立つかよ、って言っても、今度はそういう風に言って空気読まない |
奴、としてそのアニヲタは蔑視の対象としてアウトサイド(?)に追いやられるかもしれない。 |
まぁ、最初からそういうアングラ的愉しみでやってる人にはどうでもよいのかもしれないけれどね。 |
私自身は、全くオタク的取り組みでアニメとは向き合いませんけれど(反論OKw)、でもオタク的な在り |
方というのが、ひとつ私が接している、この広大なアニメという「場」に対して大きなものを持っているのを |
感じていますし、またそれは時々やれやれと思うことはあれど、概ねそのオタクの存在をも包括できるから |
こそ、このアニメの巨大さがあるんだと思っています。 |
それに、「萌え」って結構、大事だと思うんだけどね、私も。 |
だからぶっちゃけ、そういうオタクを受け入れられないような、そんなアニメの文化が成立するのだとしたら、 |
私はオタクでは無いけれど(反論OKww)、オタクと共同戦線張って一緒に戦ってもいいなって思います。 |
とまぁ、そんな感じのことを考えながら、今日も今日とてアニメ観て泣き入ってますですよ。 |
|
さて、明日も頑張りましょか! (爽やか過ぎて気持ちの悪い笑顔で) |
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|||||||||||||||
■■自信のいる世界 ■■ |
『馬っ鹿ねぇ。ここぞってときに晴らすのが、晴れ女なの。』 |
〜もっけ ・第五話・芙美の言葉より〜 |
願いの、無力さを知っている。 |
知っているからこそ、願いなど捨ててしまう。 |
願うことの、価値を知らない。 |
知らないからこそ、願うことをやめてしまう。 |
どうだって、いいじゃないか。 |
そう嘯く自分だけは頼りにならないことを知りながら、頼るべき自分を知らずにいる。 |
そもそも、なにかに頼りたい訳じゃ無い。 |
もう既に、なにかに頼っている自分しか、ここにはいないのだから。 |
そして。 |
いつも。 |
いつも。 |
自分が一体なにに頼っているのかを、全く、知らない。 |
だから教えてくれ。 |
なにに、頼ればいい? |
その問いに与えられた答えを理解し利用できる自分はまだ、ここにはいなかった。 |
そのことだけは、無性に、知っている。 |
◆ |
静流のクラスメイトにして友人の松永芙美は、元気が良ければ気っ風も良く、その上相手の気持ちを |
考える前にこっちの気持ちを全面に押し出して乗り切るタイプ。 |
同じくクラスメイトの男の子、野球部のピッチャーを務める高梨君が、次の日曜日の試合は雨で潰れな |
いかなと友達に愚痴っているのを耳敏く聞きつけ、日曜は楽しみにしているお祭りなんだから、雨が降っ |
ちゃ困るのよ!と、単純明快にして正々堂々と芙美は因縁をつけます。 |
勿論高梨的には「はぁ?」という感じで、お前の都合など知るかよという顔で受け流します。 |
高梨は、この前の試合でボコボコに打たれてしまい、次の試合のマウンドに立つ自信をすっかり失った |
上で、『このままずーっと雨でいいよ・・』と呟いていたのです。 |
友人が絶好のリベンジのチャンスだろと言っても、いいよ雨で、と言い切る高梨。 |
そこに、アレです。 |
あんたの事情はどうでもいいの。私がお祭り楽しめればそれでいいの。だから、晴れ。決定。 |
松永芙美の空気を読む気がさらさら無いこの猛烈発言です。 |
高梨的にはまともに受け答えする気さえ起きません。 |
でも高梨は、ある程度は芙美の言葉に答えるのです。 |
なぜなら。 |
目の前の、一応空気を読んで高梨の事情に沿った上で批判している友人をかわすために、です。 |
馬鹿みたいに無関係な事(というか個人的理由)で雨は駄目で晴れが良し、と言ってくる芙美と向き |
合っている方が、大いに自分に関係のあるピッチャーとしての意識に対しての話をする友人よりは付き |
合い易いから。 |
高梨は、逃げました。 |
芙美のどうでもいいお巫山戯とも取れる、その晴れか雨か発言と張り合う形で、その上で日曜が雨に |
なることを祈れば、次こそ勝たなくてはいけないピッチャーのくせに逃げ腰で試合中止を願う意味での雨 |
を祈っている、という罪的な意識から逃げることが出来る。 |
高梨にとっては、雨が降り続いて欲しいという願いは、もはや愚痴のレベルを超えている。 |
愚痴ならば、友人と向き合って、その正論に対してねちねちと絡むことで気分を晴らすはずですし、そう |
いう方向性としては、晴れを望んでいるけど望むにはちょっと力が足りない、だから愚痴のひとつも言わ |
せてくれと、そういうことなはず。 |
しかし高梨は、その真っ当に意見してくれる友人にさえ背を向けるのです。 |
本当に、雨にならないかな、日曜。 |
いや。 |
なれよ、雨に。 |
愚痴ることさえ出来なくなっている高梨が、其処に。 |
芙美は、最初からなにひとつ巫山戯てはいません。 |
ただお祭りが日曜にあって、だからそれを楽しむためには絶対に晴れてくれなくては困る訳で、それなら |
ばと厳かに構えまして、取り出したるは晴天祈願のお札と、てるてる坊主。 |
無邪気というか本気というか、真顔で日曜は私が晴れにしてみますと言い放ち、静流達を呆然もとい |
呆気にとられさせた、気持ちいいほどの芙美さん。 |
非科学的とか、そういうこと、考えました? |
さぁ、芙美からすれば、きっとそういうこと考えて晴れを祈らない方が馬鹿に見えるのでしょう。 |
なに言ってんの? |
科学とか非科学とか関係無いじゃない。 |
祈るか祈らないか、そんだけでしょ。 |
そしてそんな芙美さんからすれば、高梨にどういう事情があろうと、んなことは全然関係無いのです。 |
たとえ、高梨が必死にそれでも練習して、それでも勝てなきゃチームに迷惑かけることになるのは変わり |
無いと思っていようと、です。 |
高梨が去ったあと、高梨の友人が芙美に忠告します。 |
『あんま強く言うなよ。』 |
高梨だって頑張ってんだ。だけどどうにもならないんだよ。察しろよ。 |
はぁ? |
だから、なんなのよ? |
それと、私が楽しみにしてるお祭りがおじゃんになることとどう関係があるわけ? |
高梨にどういう事情があろうと、それと同じに私だって事情あんのよ。 |
『ということで、高梨には悪いけど、日曜は晴れになりま〜す♪』 |
そんなに雨になって欲しいんだったら、この晴れ女様に勝ってご覧なさいな。 |
そして芙美は負けた方が勝った方の言うことをひとつきく、という約束までしてしまいます。 |
芙美さん、ノリノリです。超ノリノリ。 |
そして高梨は、ひとこと。 |
『天気予報、見てないのかよ。おあいにく様、しばらくは雨だよ。』 |
それに対して、芙美さんは。 |
『予報は予報。どうする?』 |
高梨はもはや雨になることを願わずに、それが当然と思っています。 |
そして。 |
芙美は傲然と、自分が絶対に晴れにしてやると意気込んで、願い続けています。 |
さて、晴らすべきはなにかが、見えてきたでしょうか? |
◆ |
芙美は一応、高梨の抱える事情を理解しています。 |
ボコボコに負けて、プライドもずたずたで、そして責任感からも、一生懸命に練習せずにはいられなかっ |
た高梨君。 |
悔しくて、悔しくて、でも悔しがっているだけでは勝てないことも、そして責任を果たすことも出来ないと |
いうことも知っている。 |
だから、練習する。 |
死ぬほど練習して、練習して、絶対に次の試合に勝てるように。 |
しかし。 |
練習すればするほど、高梨は自分の実力を知っていきます。 |
自分の力が今どの辺りにあって、相手の力はそれからどれくらい離れているのかも、はっきりとその位置 |
的感覚を捉えているのです。 |
このまま練習して、果たして本当に勝てるのだろうか? |
特別な練習方法がある訳じゃ無し、今のこの方法をやり続け、そしてそれをあとどれくらい続けられるか |
という試合までの残り時間と掛け合わせて、次の日曜の試合当日の自分の姿を想像する高梨。 |
無理だ。 |
絶対、無理だ。 |
勝てる訳が無い。また、負ける。 |
だったら・・・雨・・・・・ほんとに・・降らないかな・・ |
芙美は、それを鼻で笑います。 |
だから、なに? |
『はっ、それだけ? 呆 れ る 。』 |
それがどんだけの重圧かなんて、私にわっかる訳無いじゃなーい。 |
当たり前でしょ? そんなこと。 |
それともなに? それを理解して欲しい訳? 理解した上で励まして欲しい訳? |
だから呆れてんのよ。 |
高梨にどういう事情があるかどうかなんて、わたしにゃ関係無い。 |
そんで、高梨自身にとっても、その事情って奴がもたらす重圧と、試合に勝ちたいって気持ちは関係 |
無いじゃん。 |
そういうの全部いっしょくたにして、ほんと、馬鹿みたい。 |
というか、甘えてんじゃないよ。 |
どんなに練習しようが、苦しもうが、それで勝ちたいって気持ちが消えないんなら、やることはひとつじゃ |
ない。 |
それなのに、愚痴にもならないことつらつらと、まったく、みっともない。 |
はい。 |
この芙美の言葉に対して一番トサカに来ているのが高梨であることは、あえて言うまでも無いことでしょ |
う。 |
なぜなら、そんなこと芙美に言われなくたってわかっているからです。 |
それで勝てるんなら、誰も悩んだりしないんだよ! |
はい。 |
高梨は、芙美が「なにを」鼻で笑ったのかを、全然、全然、わかっていないのです。 |
そうやって悩んでる自分を鼻で笑ってるあんたを、あんたはよく知ってるんでしょ? 高梨。 |
日曜日に向けて、てるてる坊主軍団の生成に余念の無い芙美。 |
『てるてる坊主軍団、完了♪』 |
『これで、日曜はぜーったい晴れだからね。』 |
そして次の日。 |
雨の中、渡り廊下の下で黙々とひとり自主トレを続ける高梨を、芙美は目撃します。 |
なんだ、ほんとに頑張ってんじゃん。 |
そのとき芙美の頭の中には、高梨の友人の言葉がよぎります。 |
重責を負いながら、それでも頑張り続け、それなのに試合当日に雨が降ることを願ってしまうんだよ。 |
『うーん。』 |
芙美は、考えます。 |
むー。 |
わからないなぁ。 |
確かに苦しんでそうだし、悩んでそうだし、なんか希望が見えない頑張りっぷりだったし、まぁあんな |
悲愴的な感じだったら雨を願っちゃうのもわからないではないかなぁ。 |
でも・・・『あーあ、わかんない。』 |
じゃあなんでそれでも練習続けてんのよ? |
練習したってどうせ勝てないんだったら、さっさと練習やめればいいじゃない。 |
それなのに、あいつ、全然練習に手抜いて無いじゃん? |
どうみたって、あの目は本気よ、本気。超本気。 |
あいつもしかして、自分のこと、わかって無いだけじゃないの? |
『あれだけピッチングの練習してんだから、晴れの舞台でどかーっんと披露すればいいのよ。』 |
なぜ高梨は練習しているのか。 |
それは勿論絶対に次こそは勝たなければいけないからであり、チームのためにも自分のためにも、リベン |
ジを果たさなければならないからです。 |
しかし、高梨はそこでひとつズレを作ってしまうのです。 |
その勝たなければならない理由を、一歩自分から離したところに置いてしまうのです。 |
勝たなければいけないと考えているのは自分なのに、いつしか「なにもの」かによって押し付けられている |
モノとして、その勝たなければならないという意識を捉え直してしまっているのです。 |
ぶっちゃけ、自分がこれだけ頑張り苦しまなければいけない事を、「誰か」のせいにしているのです。 |
ちげぇよ。そんな訳あるか。 |
だったら、なんであんた、雨になれなんて願ってんのよっ!! |
あー、わかってないのは私も同じだったね。 |
なんか、ちょっとでも同情しかけた(してないけど)私が馬鹿だったってこと、よくわかったよ。 |
ああもう、イライラする。 |
『ほんとは日曜日、あんたも晴れて欲しいんでしょ?』 |
違う? |
巫山戯んじゃないわよ。 |
『あーんなに、練習したのに?』 |
願えばなんでも叶う訳じゃ無い? |
・・・・。 |
『馬っ鹿ねぇ・・・』 |
『叶うわよ。強く望めば叶うわよ!』 |
なに言ってんの、そんなの当たり前じゃん。 |
当たり前でしょ? |
試合でピッチャーやるのは誰よ? |
絶対勝たなきゃいけないのは誰よ? |
誰が、そういう事に向き合っている自分の存在を信じて、それを解決出来る自分の姿を望むのよ? |
そしてそれを叶えるのは、他ならぬ高梨自身。 |
高梨以外に誰がそれをやれるというのか。 |
試合に勝てるかどうかというのは、根本的にそのこととはなんの関係も無い。 |
試合の日に雨が降るのを望むのは、その自分自身を否定しているだけの事。 |
あんた、ほんとに全部自分のせいだって思えてんの? |
自分が頑張って練習してきたことの意味を、もっとちゃんと考えなさいよ。 |
全く、馬鹿みたいに理屈ぶっちゃってさ、それで試合当日にさえ臨めなくなるなんて、ほんと馬鹿。 |
自分がなにやってなにをやってきたのかを、まずちゃんと受け止めなさいよ。 |
どんなに練習したって勝てる見込みは無いって、それが練習をやめる理由にはならないことを一番知って |
るのはあんた自身じゃない。 |
高梨は、必死に練習している自分の姿を、なによりも強く認識していたと思います。 |
俺・・なにやってんだろ・・・ |
どうして・・・勝つための練習・・してないんだろ・・・ |
高梨は、いつのまにか色々なものを忘れるために、ただ一心不乱に体を動かしていることに気づきます。 |
すっかりと、主体性を以て勝つことだけを純真無二に想像しながらの練習をしていなかったのです。 |
迷いとか苦しみとか、そういうものを払拭するために練習してただけか、俺は。 |
俺は、逃げ回るためだけに、投げてたのか。 |
もはや、違う、とはいえない惨状を呈した、その愚かなる自分の姿が「其処」にある。 |
でも。 |
いえ、だからこそ。 |
絶対違う! と叫んで、その愚かな自分をぶち破ろうとする、類い希な怒りが体の中から沸き上がって |
くる、その力強い自分が「此処」にいるのを高梨は圧倒的に感じたのです。 |
くそっ! くそっ! くそっっ!! |
勝てるかどうかなんて関係ない。 |
いや! |
そんなもんももう全部関係ない! |
勝つ! 勝つ! 勝ってやる! |
その瞬間から、高梨はもはや勝つことをイメージすることだけに没頭します。 |
絶対勝つという願いを、絶対に叶えるのは俺だ。 |
だったら・・・ |
日曜は、晴れて、当然だ。 |
そしてきっと、高梨の「なにか」も、晴れて当たり前なのでしょう。 |
どんな結果だろうと、高梨が此処にいることは当たり前なのですから。 |
馬鹿と見下した高梨ひとりも前向きにさせられない事への、そういった無力な自分に対してのイライラを |
募らせる芙美。 |
そして。 |
あー・・・ |
『さすがにさぁ・・ここまで雨が続くと、晴れ女の自信が、ちょーっぴりだけどぐらつくよ。』 |
だってあいつ、わかってるくせに強情なんだもん。 |
きっと、追い詰められてる自分に酔ってるのよ。 |
追い詰めてるのは自分のくせにさ、巫山戯んじゃないわよ、って話よ。 |
そういった正当でありながら悪意の籠もった想いにひっそりと駆られ、そんな自分をこそぼーっと眺める |
芙美。 |
まったくさぁ、私なんかてるてる坊主よ? てるてる坊主。 |
あんたなんか、自分のその腕で勝利を引き寄せられるんじゃないの。 |
それでいくらでも言い訳できたり逃げたり出来るんだもん、よく考えりゃ私の方が破壊的に辛いわよ。 |
自分の力じゃどーにも出来ないから、てるてる坊主なんて非科学的なモノに頼るしか無いんだから。 |
間抜けな首つり人形にむにゃむにゃと祈ってる自分を、馬鹿みたい以外のどんな言葉で言い表せば |
よいっていうのよ。 |
あんたなんか、あんたが頑張った分だけ、その分だけの実感だけは勝ち負けに関係無く得られるじゃん。 |
私なんて、祈った実感だけよ? そんなの意味ある? 無い無い、ある訳無ーい。 |
・・・・。 |
はぁ・・・・・なに高梨と同じことやってんだろ、私。 |
そして、静流が助け船を出してくれます。 |
てるてる坊主を逆さに吊ってみたらどう? |
てるてる坊主の歌には実は三番まであって、一番二番では色々あげたりしてご機嫌を取るのだけれど、 |
三番では虐めてせかして無理矢理天気にさせるものであり、事実昔は逆さに吊っていた人もいたとか。 |
芙美さん、ぴーんと、きます。 |
『虐めて急かすか! まさに、私好みっ!!』 |
どういう意味か、わかります? |
煽てて駄目なら脅してみろ。アメとムチ。 |
はい。 |
わかった! |
あいつと同じことやってたら、わかっちゃったよん♪ |
自分のやってることの無意味さ無価値さをあげつらって、願っても叶う訳じゃ無いって言ってすべてを |
放り出して逃げる、まったく、なんて見事な自分に対するおだて上げなんだろ。 |
アメよ、雨。 |
雨降らして、ぜーんぶ無かったことにしたいだけっしょ、それが一番ラクだもんね。 |
苦しいのに頑張ってるのにそれを選ばなくてはならない苦衷? |
はっ、馬っ鹿じゃないの? それのどこが苦衷な訳? |
それよりも深い苦しみと哀しみから逃げるための隠れ蓑に使ってるだけじゃないの! |
甘え以外のなにものでも無い、いーや、そうやって散々自分を甘やかせばいいのよ。 |
そう、厳しい顔してカッコつけながらね。 |
でも。 |
それで晴れればいいわよ。 |
でも。 |
絶対に、晴れないわよ、それ。 |
だって、そんなことしたら絶対そいつ調子に乗って、おかわりを要求し続けるだけだもんね。 |
だったら、今度は脅せば良かったのよ! |
そういう事してるだけの自分の姿を、なによりも自分に見せ付けてやるのよ! |
どう? |
いい感じにむかついてきたでしょ? |
そうよ、私ももうなんだかイラついてる自分にこそ腹が立ってきたわ。 |
あーもう! なんもかも全部わかってんじゃん! |
『私、最後まで絶対に諦めないわっ』 |
『ネバーよ。ネバー!』 |
芙美にとっては、てるてる坊主の科学的根拠などどうでも良い。 |
しかし、それを吊るしそれに晴れを願うことは、そうしてきっぱりと晴れを願う自分をこそを強く持ち上げ、 |
そしてその自分の邪魔をするあらゆるモノ達を「晴らす」には、とても有効なものであることを知っている |
のです。 |
信じるか信じないか、ただそれだけよ。 |
そうしてなにかを信じ頼ることが出来た自分だけが、自分がなにかを成し遂げている実感を得られるの |
です。 |
試合当日、見事なまでの快晴を晒す青空。 |
自分で散々てるてる坊主に祈って(逆さに吊してまで)おきながら、広がる晴れ間に呆然とする芙美。 |
『嘘・・・・私って、ほんとに晴れ女?』 |
そして。 |
次に芙美がみせたのは、その無限の笑顔。きゃっほーい! |
芙美さん、最高。(笑) |
そしてそんな芙美さんの無神経かつ挑発的勝ち誇った笑顔(笑)に、激しいむかつきを覚える高梨。 |
『本当・・・晴れ女だよ・・・』 |
というか、ああいうのを能天気って言うんだろうな。 |
誰が認めるものか、あんな奴。 |
願えばなんでも叶う訳じゃ無いんだ。 |
なんもわかってない奴が、ただ気分だけでなんでも叶う叶うと平気でいいやがって・・ |
嘗めるな。 |
野球を嘗めるな! |
そんなもので勝てるほど甘くねぇんだ。 |
だから・・・ |
『強く願えばなんでも叶う』ってぬかすあいつの言葉に、一番腹が立つんだ! |
俺が晴らしたいのは、松永、お前のその能天気さだ!!! |
そしてその怒り任せに投じた一球は、見事バッターの空振りを誘ったのでした。 |
今のストライクを取ったのは、俺だ!! |
俺だ! |
俺だ!! |
その吐いた鼻息の力強さは、最終回までその途切れを失った。 |
そして。 |
見事に、高梨はその胸に巣喰った「なにか」を晴らすことが出来たのでした。 |
勝利と、共に。 |
◆ |
はい。 |
ということで、今回の「ヒヨリモウシ」はこんな感じでした。 |
もうちょっと論理的に書きたかったのですけれど、なんだか途中からすっかり芙美ちゃんに同調してしまい、 |
自分の中ではきっかりわかってしまってそれ以上書くことが面倒くさくなってしまいました。(笑) |
まぁ、書きたかったことは、大体の雰囲気でわかって頂ければと。 |
ていうか、芙美ちゃんすげー。 |
こういう人、尊敬します。 |
とかいいつつ、実際居たら私だって絶対喧嘩になると思いますけれど(ぉぃ)、でも絶対それでも今日書 |
いたようなことを私だったら考えながら喧嘩するだろうなぁ・・・って喧嘩はするのねやっぱり。(笑) |
んー、でもそんなもんじゃないかな? |
相手がすごいってわかってたって、それにはついていけない自分ってのは絶対あるんだしね、真面目で |
あろうとすれば、その自分から目をそらしたくは無いしねぇ。 |
私は本質的には高梨君よりは芙美ちゃんタイプ寄りだけれど、でも芙美ちゃんよりは高梨君に近いから、 |
ついカッコ付け的その実弱音を吐いちゃったりしますけれど、でもだからって、その芙美ちゃん自体の凄さ |
から目を離すことだけはぜーったいにしないもんね。 |
だってさ、芙美ちゃんの凄さがわかるってことは、自分のそのカッコ付けてるだけの弱音っていうのをなに |
よりも実感してるって事だし、逆に実感してるからこそ芙美ちゃん的凄さから目を離す訳にはいかない |
んだよね。 |
そして、それでも、でも現実は違うんだそんな理想論だけじゃなんのにも出来ないんだと叫ぶし、でも、 |
そうしてその叫びをその理想論にぶつけ続けてぶつけ続けて、そうした一心不乱さそのものが、そういった |
現実とか理想とかあっさりと越えて色々と解決出来ちゃってる自分を、此処に連れてきてくれるんだよ |
ね。 |
『だってぇ〜、高津と風間、本気で投げてくんだもん。こっちだって本気出しちゃうよ。』 |
瑞生のこの台詞が、たぶん色々表してますよね、今回のお話。 |
要は、主体を失わないことを考えてりゃ、主体的であるためにはどうしたらいいのかを、徹底していつでも |
どこでも考えていれば、なんとかなる、っていうか、その主体が絶対に自分の中にいると信じて、それを |
頼る勇気さえあれば、たぶん、どんな事だって出来ると思うな。 |
まぁ、どれくらいの時間と労力がかかるかはわからないけど。 |
そこは、現実的にね。(ひどw) |
そしてね。 |
そういう芙美ちゃんとか高梨君とかが、なにを願おうが祈ろうが、それとは関係無く雨は降るし晴れたり |
する。 |
そういう、当ったり前のこと、よもや忘れてはいないですよね? (笑) |
今回のお話でも、勿論それは当たり前で、逆に私的にはそういう自然は自然のままに変化し続ける |
事の中で、それに合わせて色々と屁理屈をこねて生きている芙美ちゃん達が見えたなぁ。 |
だから試合当日晴れたのだって、また同じこと言いますけど、それは 当 た り 前 の事ですからね? |
まさか芙美の祈りが天に通じたからだとか、そんな非科学的なこと思ってませんよね? |
芙美の願い通りに晴れたのをご都合主義とか、そんなこと考えてませんよね? |
芙美ちゃん達は色々考えて、色々願って、そして天気を変えたと思えた。 |
それでも、この世界はひとりで勝手に廻ってる。 |
晴れたのは、ただそれが当然だったから。自然法則的に。 |
『奴らは居んのが当たり前。』 |
時折雷鳴らして、芙美達をびくっとさせてたのは、アホな芙美達に自然の存在を示してるみたいな。 |
でも、それに囚われちゃったら、意味無い無い。 |
世界は世界で勝手に廻ってるからこそ、私らも勝手に世界を操ってる気になりゃいーのよ。 |
それが、「私達の」世界ってもんでしょー? |
芙美ちゃんなら、そう言うだろね。 |
まー、世界、なんて無意味な言葉は使わないだろーけれども。 |
という辺りで、今回はこの辺りで静かに筆を置くことと致しましょう。 |
なんか、すっごくすっきりした。 (晴れ晴れとした笑顔で) |
◆ 『』内文章、アニメ「もっけ」より引用 ◆ |
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-- 071105-- |
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■■ もっけのすゝめ 壱 ■■ |
秋めきまして、ごきげんよう。 |
早晩がしっかりと寒くなってきて、よしよし、これでこそ秋というものだよワト○ン君、などとひとりしたり顔で |
頷いている人を見かけたらそれは私です。 |
今宵も最後まで馬鹿をやり切ります。 |
ということで、本日はアニメ「もっけ」について、それはもうつらつらと書かせて頂きます。 |
もうね、勧めてるんだか貶してるんだか、本人もなに言ってるのかわかってないような事を平然と書いて |
いきますよ。 |
みなさん準備はいいですか? |
私は、まだです。 |
(間) |
そうですね、「もっけ」、もっけですか。 |
なんといえばいいんでしょうかね。 |
「蟲師」ってアニメに、似てますね。 |
「蟲師」は、私が最高だって思ってるアニメです。 |
なんていうか、奥深いっていうか、生命感溢れてるっていうか、ただただたんに考えさせられるとか哲学的 |
とか、そんなんじゃあなくて、もうですね、画面の中に色んなそういうものが全部生きているのが、堪らな |
く感じられてくる、そう、だから生命感ね、そういうのがあるのですよ。 |
うん、「もっけ」もさ、やっぱりそうでね。 |
すごく隠喩的なものを見込めて、それをこそこそと解釈して読み解いていく愉しみはあるのですけれど、 |
それをやっているうちに、なんだかもう、全然それだけじゃ収まりつかなくなってきてる自分にどうしようも |
無く気づけてしまうんですよね。 |
だってさ、「もっけ」っていうのはその、「妖怪」って奴を描いてる作品なのだけれど、その「妖怪」っていう |
のを、それってどういう「意味」があってどういう事の「隠喩」なんだろかって考えて、勿論それに対して |
無数の答えを生み出すに足る器の大きさがこの作品にはあるのだけれど、でも、その作業自体には |
あんまり意味が無いように感じるんだもん。 |
だってさ、その画面の中に妖怪は既に「いる」んだから。 |
それがいるっていう事自体、それがもう、巨大な意味と価値を、与えてくれるんだからね。 |
「もっけ」で描かれる風景は、「蟲師」の場合が登場人物の心情や言葉を色濃く表した「情景」を主 |
としているのに対して、あまりにもそのままに野放図に存在している「風景」が中心にあります。 |
そう、登場人物がなにを感じようがなにを言おうが、それとは関係無く雨は降ってるし太陽は輝いていた |
りしてるんですね。 |
でも、通底しているのはさ、それって全部、「そこにある」ものを表してるんだよね。 |
その圧倒的な筆致でさ。 |
んー、上手く言えないけどさ、「もっけ」の登場キャラ達の考え方とか言葉とか、すごくしんみりきて、 |
「蟲師」と比べるとかなり人間的な感じがするの。 |
その人間的感じ、というのは、苦しみというのはあるけれど、でもそれがあるとわかってるからこそ、今それ |
でも此処にいる私達は頑張ってこう、頑張ってくにはどうしたらいいだろうって、そういうところがあるから |
なのね。 |
で、「蟲師」はさ、ちょっと違う。 |
苦しみっていうのがあって、だから人間ていうのは苦しいんだよっていって、決して頑張ろうとか、そういう |
事は言わないんだよね。 |
でも、だから、なによりも頑張ってる自分の、その内面こそが滲み出て、「情景」になってきてるんだよね。 |
だからさ、私は「蟲師」と「もっけ」は、表現の仕方は違うけれど、どっちも同じことやってるんだなって、 |
思う。 |
「もっけ」で描かれる世界は、人間がどうしようがそれとしてがくんとくるくらいにそのままあり続けてて、 |
だからこそ、その中で頑張りを叫ぶ人間達の姿が鮮明に出てきて、「蟲師」の世界は、人間が既に |
どうしようも無いくらいにその苦しみにがくんとしたままあり続けてて、だからこそ、その中から外たる世界 |
に向けて頑張りを無言で浸み広げているその人間の姿が鮮やかに描かれてる。 |
だから、似てる。 |
「もっけ」がおすすめか、って訊かれたら、まず間違いなくおすすめします。 |
ある意味、「蟲師」よりもとっつきやすいし、言葉もわかりやすい、いえ、わかりやすく伝えるということに |
暖かみを感じられるものなので、とにかくゆっくりと、それでも確実に考えて感じていきたいって思える |
人になら、是非是非おすすめなのですよ。 |
わかりやすく、かつ説明的に堕する事も無く、説教的でありながら、なによりも自分自身で考えたくなる |
ような、そういう、なんていうのかな、温かい励ましの想いが詰まってます。 |
その点、「蟲師」はもっと雄大というか、自然の大きさに比べたら人間なんてちっぽけなものさ、とかいって |
気づいたら人が二・三人死んじゃってても気にしない、とか普通に言いそうな、冷酷というよりは的が大き |
い感じがしますから、ついていけないって気後れしちゃうとこはありますでしょうね。 |
でもだからこそ、うわ、うわ、なんかもう、絶対追いつきたい!って、思わせてくれるところはあります。 |
うん、なんか上手く書けない。 |
あっれ、どういう風に書くとか、プラン立ててなかったっけ? 立ててませんでした。はい。 |
う、うーん、どうしてこう、評価とか宣伝の文章が上手く書けないんでしょ私。 |
え? 萌え? |
そんなのは無ぇ! |
・・・・。 |
あー、いわゆる萌え絵じゃないですけど、まぁ萌えられる人は萌えられるのでしょうけどね、あ、あくまで |
萌えが必要だったらならば、むしろ原作漫画の方がうっすらそんな感じはありますネ。 |
萌え絵では無いですけどね、なんかこう、ぴっとくるものはあります。 |
あ、原作か。 |
「もっけ」の原作は、私の中では漫画の五指に入りますね。 |
アニメの方はまだ評価が定まってないですけれど、現時点でももう既にかなりの高評価です。 |
漫画版とアニメ版だと、なんていうかこう、ちょっと的の大きさに差がありますね。 |
アニメの方は、こう、結構的を絞っているというか、割と描くべきことをはっきりと表して、それについてを |
きっち極めることで、それ以上の深まりを描いていくって感じで、漫画の方はもっと雑多で、それゆえ色 |
々なものに手をかけてる感じで、で、だからその的の大きな感じ自体が既に奥行きと深みを無条件に |
与えてる、つまり作品の背景が既にゆったりと奥深い中で色々とやっている、という感じですね。 |
アニメでそれをやるとかえってただ雑多なだけでまとまりを欠いてしまうだろうから、あの手法でアニメ化し |
たのは正解だと思います。 |
そういえば、「蟲師」の方は逆に、漫画の方がほっそりと的を絞ってる感じで、アニメの方がむしろ大きさ |
を感じられましたね。 |
結構「蟲師」は原作漫画を忠実に再現しているけれど、あのアニメの巨大な奥深さは、「もっけ」とは |
違い、原作のそのほっそりとしたまとまりがゆえにある広がりを、凌駕していました。 |
さて、雑然としてまとまりを欠いたみみっちい文章を垂れ流し、失礼しました。 |
うーん、ほんと、書けないな。 |
ということで、今回の「もっけのすゝめ 壱」は、失敗致しました。 |
壱、とか言ってるからきっと弐とか参とかも書くのだろうなと思ったそこのあなた。 |
私に、まだこれ以上なにか書けと? (なにがなにやら) |
という、訳のわからない難癖をつけたり剥がしたりやっぱり残したままだったりしつつ、本日はこれにて筆を |
置きたく存じます。 |
どっと、疲れました。 (机に突っ伏して) |
というか、ごめんなさい。 (こんなんばっかりで) |
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■■ 笑いのいる人生 ■■ |
『笑いにも色々あるってお姉ちゃんは言うけど、笑いたいときは、やっぱ笑っちゃうもんなぁ。』 |
〜もっけ ・第四話・瑞生の言葉より〜 |
笑うことで、誤魔化せるものがある。 |
笑うと、楽しい。 |
だからきっと、目の前の苦しみをそれで踏み潰せる。 |
苦しみを消すためにこそ、笑いを生み出していく。 |
でもそれだけでは無い。 |
それはやがて、笑えなければ、苦しむ自分のままでいることを肯定してしまうのではないか、という疑問 |
を生み出し、その疑いの眼差しを向けて顧みればみるほどに、その疑惑は深まっていく。 |
ひとつ、笑う。 |
それで消えた苦しみのあとに出来るのは、次の笑いの黒い背中。 |
笑わないではいられないという訳では無いが、笑うことでその苦しみを消すことにしか、想いが向けられ |
なくなる。 |
なんか、楽しくない。 |
楽しくないのに、笑ってる。 |
楽しくなれ、楽しくなれ、なんでこんなに笑ってるのに楽しくないの。 |
いつの間にか、苦しみは笑っても消えなくなっていた。 |
なぜならば、楽しく無いから。 |
全部、ズレている。 |
楽しいから笑えるのに、目の前の苦しみを消すために笑って、それで楽しくないから苦しみは消せないと |
感じてしまう。 |
そして、笑い方を忘れた自分が、此処に。 |
そして。 |
目の前の其処に浮かんで居る、黒い笑い声達だけが、盛大に嗤い続けていく。 |
◆ |
瑞生は元気一杯の、笑いの絶えない良い子です。 |
近所のおばちゃんのウケもゆえに良く、瑞生ちゃんの笑顔を見るだけで元気になれるという形で、瑞生は |
本人の自覚は無いけれど、しかし褒められた事自体がまたやっぱり嬉しくて、さらに笑ってしまいます。 |
それを気持ちよさそうに見つめるおばさん。 |
清々しい田舎町の朝を彩るその平和な光景。 |
そして瑞生はその笑顔のままに突っ走り続け、掃除当番をついうっかりサボって他の子達に迷惑をかけ |
てしまった事を笑顔で謝ります。 |
その子達にとって、瑞生は困ったクラスメイトではありますけれど、でもその悪気の無い笑顔を見れば、 |
自分も笑って赦してやろうと、そういう意識を喚起してくれる、実に気持ちの良い存在でもあります。 |
一応謝ってるし、悪意がある訳じゃ無し、次からは気を付けるって言ってるし、まぁ、いいか。 |
それは双方いい加減なだけとも言えますけれど、しかしそれ以上に、その事で双方が双方の存在を認 |
める事の出来る、そう、度量というと語弊があるので、責めるべき相手をどうしたら責めた上でも、それ |
以上にそいつと上手く付き合っていけるかを探る能力と言いましょう、その能力を培い合っている姿だと、 |
これはそう言えもするでしょう。 |
瑞生もまた、お気楽極楽なまま好き放題にサボりまくるのはいけないことだし、それで誰かに迷惑かけて |
るなら気を付けなくちゃいけないと、ちゃんと心掛けているのです。 |
ですから、このときの瑞生の笑顔は、この「みんなが仲良くやる」ために実に有効なものとなっているので |
す。 |
ま、しゃーねーな。お前のその笑顔で今回だけは赦してやんよ。 |
で、今日はなにして遊ぶんだよ、あ、サッカーやろうぜサッカー! |
でも、それで済む相手だからこその、その笑顔の意味と価値であって。 |
同じくクラスメイトに、飯田という女の子がいます。 |
その子は、その瑞生の笑顔を見て、『日原さん(瑞生の名字)って、いつもワラゴマしてるよね。』、と言い |
ます。 |
ワラゴマ、つまり笑って誤魔化してるよね、と言うのです。 |
一瞬で、和やかな空気が凍り付く瞬間。 |
今ならきっと、空気が読めない奴として片づけられてしまうことでしょう。 (笑) |
事実、瑞生の親友(的ポジション)の子は飯田が去ったあとにその後ろ姿を一瞥した後、気にすること |
無いよと瑞生に言うのです。 |
確かに和やか雰囲気を消し去ったのはそうですし、また、せっかく成立した瑞生とクラスの子達との和平 |
に水を差しているのですから、それに良い顔をしないのはわかります。 |
けれど。 |
飯田が言っている事は、事実です。 |
事実、瑞生のあの笑顔は、実に色々なものを誤魔化しているのですから。 |
勿論、他のクラスの子達はその誤魔化しを理解した上で、それでもそれを上手に利用して、或いは利 |
用しあっていることで、それで済んではいるのです。 |
ですから、瑞生にとってはこの笑顔は誤魔化しでは無い、というのははっきりと嘘になります。 |
それは、本人が誤魔化しを意識していようがどうかに関係無くに、です。 |
他のクラスの子達との「馴れ合い」が良い感じに組み合わさっているからこその、誤魔化し。 |
瑞生の笑顔は、少なくとも結果としてはそれに寄与しているのですから。 |
そして、飯田はその「馴れ合い」に与することを選ばなかっただけ。 |
無論、それが良いか悪いかなどというのは論外。悪いけどそういうくだらない議論は興味無い。 |
そして、瑞生の笑顔は結果的にその馴れ合いという名の誤魔化しに寄与しているだけでは無く、 |
実は瑞生自身の意識としても、充分に誤魔化しを含んでいるものなのです。 |
なんで、飯田さんはあんな事言ったのかな? |
その問いが、瑞生の頭の中をよぎったのは、一瞬だけ。 |
そしてそれをこそ指して、飯田はワラゴマと言ったのです。 |
日原さんにとって、それってそれだけのことなんでしょ? |
真剣さとか、誠実さとか、全然無いよね? |
ていうか、周り見て無いよね? |
飯田のきっと睨み付けるような蔑むような視線の意味を、瑞生も他の子達も理解はしていなく、 |
またそれは、それ自体、つまりそれ以上突っ込んで理解しようと飯田に近づかない事自体が、既になん |
らかの誤魔化しを含んでいるのです。 |
瑞生やクラスの子達が合意した、その瑞生の笑顔の下に成り立つ「馴れ合い」そのものが、その合意の |
外に居る人達に、一体どれほどの影響を与えているのか、それを全く考えてはいない。 |
それが、その合意の外に居る飯田にとっての、「誤魔化し」としての瑞生の笑顔であり、それゆえその |
瑞生の笑顔には確かにその誤魔化しとしての意味と価値が備えられていくのです。 |
笑いは、常に外と繋がっている。 |
飯田が瑞生に突っかかる気持ちは、私にもわかります。 |
だって、あれじゃなんにも解決してないじゃないの。 |
日原さんはまた、次も同じ事繰り返して、そのたびに笑って誤魔化すのよね。 |
飯田にとっては、そういった構造自体が許せないのです。 |
だから私は、日原さんだけには負けたくないの。 |
そして瑞生は無神経に(飯田以外の子からみたら普通に)笑顔を振りまいて、マラソン一緒に頑張ろう |
ねと飯田に言い、そして当然飯田はそれを突っぱねるのです。 |
当たり前といえば、当たり前。 |
それを指して、もっと大人になれよ飯田、なんていうのは虚しいことで、それは既にその飯田さん理解を |
拒絶し、本当は理解しなければいけない事を誤魔化した上での言い方であり、また瑞生の笑顔もまた |
その誤魔化しのひとつとして飯田に受け取られて当然なのです。 |
勿論、飯田もまた、その瑞生の笑顔が持っている「誤魔化し」としての笑顔が、飯田が思っている以上 |
のものであること(有効利用出来るということ)をうすうす感じつつ、それを「誤魔化す」ためにこそ、若干 |
無理矢理とも言えるあの瑞生へのアタック(笑)を繰り返していたのですけれどもね。 |
ただここで重要なのは、その飯田の視線というか、その鋭い「感性」を、それを「無視」するという形で |
笑って誤魔化すということが、実はそれで飯田的感性で自分を見つめ直さずにいる、その自分を正当 |
化することにダイレクトに繋がっているのが問題、ということなのです。 |
和を以て尊しと成す、という言葉がありますけれど、これは確かに平和状態そのものを断然求めるという |
ことではありますけれど、しかしだからといって、その平和自体を求めることで、その平和の内実を無視 |
し、逆に平和のためならばなにをしてもいい、という弊害を生み出しやすい言葉でもあります。 |
飯田の感性は、そういう意味で平和を作るのはひとりひとりの人間で、その人間ひとりひとりが真っ直ぐに |
向き合って、自身とお互いの闇を見つめ見つめ合い、それとの付き合いそのものからこそ平和を作ること |
が出来るという精神の発露とも言えます。 |
逆に、空気を読んで和むのを第一とする瑞生達にとっては、既に出来ている「平和的空気」を維持す |
る事が重要で、それを乱す者を異端としてしか見れないという、闇を排除する平和でもあるのです。 |
と、いうことを踏まえて。 |
◆ |
通りすがりの女性から、瑞生はとある妖怪を(風邪を貰うのと同じ感じで)貰ってしまいます。 |
本編では名無しの妖怪でしたけれど、タイトルと内容を鑑みて、ここでは「ワライヤミ」と呼称します。 |
それは、始終瑞生の周りにまとわりつき、ことあるごとに瑞生を嘲笑うモノ。 |
瑞生は元々、本人の代わりに厄災を受けてくれるお札のお陰で、色々なモノから身を守られていました |
。 |
しかしそのお札は厄災を受け取るたびに疲労が蓄積し、そして今回のワライヤミを受け取った事でつい |
に破れてしまい、瑞生への取り憑きを許してしまいました。 |
まず、このワライヤミという妖怪はなんであるのかを、この事からもひとつ考えてみました。 |
ワラゴマのツケがきたこと、それ自体がワライヤミの正体のひとつなのではないか。 |
笑って色々な事を誤魔化してきて、それで色々と上手くいっていて、でもそれはそういう風にして上手く |
いくことの出来た状況や環境そのもののお陰であり、しかし必ずその状況や環境の外側にはそれと接し |
ている、その馴れ合いの通じる状況や環境を拒否する者達の世界がある。 |
瑞生が笑ってなにかを誤魔化して、その笑顔が許される世界が廻れば廻るほど、その外にある世界と |
の摩擦で、それは少しずつ破滅をため込んでいく。 |
つまり、お札はその瑞生が色々と誤魔化してきてそれでも上手くいく状況や環境そのものを表している |
、ということです。 |
そしてそのお札は、常に破れる運命を背負っていて、その運命を与えているのは、他ならぬ瑞生自身。 |
瑞生が自分のその「笑顔」の意味を自覚しなければ、それで起きる様々な影響(良いものも悪いもの |
も含む)はまっすぐにそのお札めがけてぶつかってくる。 |
そうなってくると、今度はこのワライヤミに「取り憑かれる」ということがどういうことであるのかが見えてきま |
す。 |
ワライヤミ、という外的な存在が、まず目の前の其処に居ます。 |
それは瑞生のワラゴマを抽象化した存在として捉えながら、しかしそれ自体が「実体」を持って、ただの |
概念としてでは無く其処に存在している、というのが、このもっけという作品に登場する「モノ」に通底し |
て言えることですし、それがこの作品の基本精神です。 |
そして、その実体として瑞生から離れているモノとしてそれが其処にあるからこそ、それは瑞生に「取り憑 |
く」ことが出来るのです。 |
勿論、だからこそ静流がそれを「みる」事も出来る。 |
そして、私はその目の前に居るものが取り憑いているその状態こそが、「妖怪」として再解釈して受け取 |
ることが出来るのだと思います。 |
だから、瑞生の目の前に浮かぶワライヤミに瑞生が取り憑かれている状態そのものこそ、「ワライヤミ」と |
いう「妖怪」なのだとも言える。 |
或いは、既にそこにワライヤミが浮かんで「いる」事自体が、既にもう瑞生に取り憑いているのと同じ |
ことなのかもしれませんね。 |
此処にいる瑞生が、其処にいるワライヤミとどう接しているのか、逆に言えば、ワライヤミが消えるまでの |
瑞生の言動思考感情の、その主体の在り方すべて自体が「ワライヤミ」とも言えます。 |
いうなれば、ワライヤミは其処にいて、「ワライヤミ」は此処にいる。 |
そしてたぶん、此処にいるワライヤミに取り憑かれた瑞生にとっては、此処も其処も無いのです。 |
瑞生は、飯田の辛辣な言葉を受けて、自らのその笑顔を認識します。 |
自分がいつも笑っているという事を認識し、そしてそれがただ受け入れられるだけのものでは無い事を |
知るのです。 |
そして瑞生は、その事を笑って誤魔化すことは出来ないことを、感じるのです。 |
なぜならば、それを笑って誤魔化している自分が、「其処」に見えて、そして「居る」のですから。 |
つまり、飯田の事についてさえも笑って誤魔化してしまおうとするそういう自分が、目の前にワライヤミと |
して存在しているのです。 |
そしてそのワライヤミに自分が笑われることで、瑞生は飯田の事を笑って誤魔化す事の罪に気づき、 |
そしてそれは瑞生を飯田の立場に置くことにも、瑞生の内面では繋がってくるのでした。 |
私・・もしかして飯田さんの事も笑って誤魔化そうとしてる・・・? |
その疑問は瞬く間に瑞生の中に広がり、そしてその疑問がワライヤミとなって瑞生の外に出、そして外か |
ら瑞生を笑うことによって、瑞生は笑って誤魔化される立場を体感する。 |
そっか・・私、飯田さんにひどいこと・・・ |
その罪悪感が瑞生の中に広がり、そしてそれはやがて、その罪悪感をこそ笑って誤魔化したいと、そして |
それが出来ないという「憂い」に囚われる事こそが、「ワライヤミ」を呼び込むことに繋がっていくのです。 |
そして、瑞生は極めつけの一言を静流から貰うのです。 |
『人を笑うことでしか存在出来ないんだとしたら、可哀想だね。』、と。 |
笑っているのは瑞生で、そして実は、そういう事でしか生きられない瑞生を嗤っているのも瑞生。 |
瑞生は既に、うすうすそういう自分の姿に気づいているのです。 |
しかし、問題の本質がどこにあるのかをわかっていない。 |
だったら笑わなければいいのかな? |
そして瑞生は、笑わなくてもなにも解決しないという、当たり前の事に気づきます。 |
重要なのは問題を解決することであって、笑っていようがいまいかは関係が無く、問題を解決できる |
のであるのならば、豪快に笑っていてもいいのです。 |
では、その問題とはなにか。 |
いえ、それ以前に、瑞生はなにを笑うことでしか生きていられないと考えていたのでしょうか。 |
そして瑞生は、笑えなくなってしまいます。 |
ワライヤミに笑い続けられ、その面白く無い感じが笑顔を殺してしまうのです。 |
笑っても駄目、笑わなくても駄目、だったらどうしようもないじゃん。 |
そして。 |
瑞生は、そうしてなにもしないでいる自分こそを、豪快に嗤い飛ばしたくてうずうずしてる自分に気づくの |
です。 |
『ああもう! うるさーーい!!』 |
お祖父ちゃんは言います。 |
ワライヤミってのは、憂いの積み重なったもんだ。 |
憂い、つまり瑞生にとってはこの場合、飯田の事についてでしょう。 |
そして、お祖父ちゃんはこういうことを言うのです。 |
笑いを、嗤い飛ばせ、と。 |
昔話によると、そのワライヤミを祓うには酒を飲んで酔っ払えば良いとのこと。 |
つまり、笑うことで問題を誤魔化すのでも無く、その事の罪深さを「憂えて」笑わずにいるのでも無く、 |
そうして結局なにもしないでいる自分をこそ叱りつけ、そしてそれを解決する「愉しみ」こそを味わい、 |
その勢いで笑えと、そういうことを言っているのです。 |
私もお酒は好きですので、それはよくわかります。 |
なにか嫌なことがあって、それを紛らわすために飲もう、酔おうと思って飲むと、かえって全然酔えないば |
かりか、全く美味しく無い上に愚痴ばかり募っていくだけになってしまったりします。 |
でも、そうでは無く、初めからお酒をこそ美味しくのみたいと考え、そしてその美味しさのまま、しっかりと |
その愉しい時間で笑っていれば、なにかこう吹っ切れたような、それこそただ純粋に問題と向き合えた上 |
で、さらにそうしているだけでは無い自分を感じることが出来るのです。 |
色んな憂いはあるけれど、それを笑うことで前向きになったって仕方無い。 |
そんなのは、ただのアンチとしての「笑い」でしか無いし、それもまたワライヤミの正体のひとつなのでしょう。 |
必死に歯を食いしばって、無理矢理笑顔で強く生きたって、それはそうとすることでしか存在できない。 |
それは、とっても可哀想なことなのです。 |
憂いを笑うことでしか存在出来ないんだとしたら、可哀想だね。 |
マラソン大会当日、瑞生を取り巻くワライヤミは未だ激しく笑っています。 |
大会が始まり、そして飯田とトップ争いをしているときに、その笑いは最高潮を迎えます。 |
瑞生への対抗心むき出しで、ガチガチと圧力をかけてくる飯田を、そしてそれを笑って誤魔化そうとして |
ももうそれすらも出来なくなっている自分自身を、それをこそ嗤いたい衝動にこそ駆られるのです。 |
それが、本当の「ワライヤミ」。 |
そして、それは、見事に闇を孕んだ笑い。 |
ゆえに、その衝動が完全に真っ直ぐに開放されたとき。 |
そのときの、陶酔は、酩酊は、そしてそれがもたらす「笑い」は、あらゆる苦悩と憂いと。 |
そして、すべての「誤魔化し」としての笑いを嗤い飛ばしていく。 |
つまり、その本当の「ワライヤミ」に憑かれている事自体、瑞生がその力強い「笑い」に至る道筋を初め |
から備えていたことを示し、またそれに瑞生を導くために必要なモノだったのです。 |
だから、お祖父ちゃんは徹底して今回の件について一切瑞生に手を貸さなかったのだと思います。 |
てめえが生きてることの中心にあるのがなんなのか、それくらい自分ひとりで見つけろ、と。 |
笑って誤魔化すのでは無く、笑わずにいるだけでしたり顔をするでも無く、ただ自分がどこに居てなにを |
したいのかなにをするべきなのか、ただただそれだけだろ、と。 |
そして瑞生は、実に「真っ当」で「健全」なやり方で、その事に気づくのです。 |
憂いを忘れるために頑張って走るのでも無く、憂いに囚われて走るのをやめるのでも無く、ただただ、 |
ただただ、気持ちよく走りきったのです。 |
そして、その走りの第一歩を刻んだのは、紛れもなく、「ワライヤミ」。 |
『負けるもんか! 負けるもんか! 負けるもんかぁ!』 |
いつのまにか、自分に対して陰湿に(笑)食い付いてくる飯田に対してむかつきを覚えていて、そのむかつ |
きに囚われることで、またひとつワライヤミの姿を増やしていた瑞生。 |
でも瑞生は、だからこそ、そのむかつきのままにそれでも突っ走って、そしてもうなんだか、とにかくその飯田 |
に対する負けるもんかの精神で一杯になって、それを突き詰めまくって、そうしたら、ね。 |
瑞生はもうなんだか、あらゆるすべてのモノに対して、負けたくない気持ちで一杯になったのです。 |
ネチネチと食い下がる飯田への不快感に囚われて、元々あったはずの自分がしてきたワラゴマに関する |
問題を忘れ果て、そっくり飯田と醜い(笑)争いを演じかけていた瑞生。 |
しかし、その争いに対して、瑞生が全霊を注いだとき、いつのまにかそのワラゴマに関する問題に対して |
まで、その「負けたくない」のエネルギーが向けられ始めたのです。 |
もうなんか、全部に負けたくない! |
それがお祖父ちゃんのいうところの、陶酔・酩酊であり、またそれは同時に全能感でもあります。 |
お酒に限らず(船酔いなどは別 笑)酔った事のある人はわかると思いますけれど、そういう状態のときに |
はなにものにも負ける気はしませんし、たとえ理屈上勝てないという言葉が導き出せても、それこそそん |
なの関係無いと、断然言い切れたりします。 |
それをただの酔いの勢いだといって切り捨ててしまうのは大間違い。 |
本当は、その勢いこそが、私達の生の中心にあるものだとは、思いませんか? |
本当に、心の底から楽しいと思えて、なんの迷いも無くすっかり笑えることほど、嬉しいことは無いでしょう。 |
それはきっと、苦しみに耐えるための笑顔なんかよりも何万倍も力強く、そしてその小さな笑顔が尽きて |
しまっても、否、尽きてしまったときにこそ、その巨大な笑顔が私達には必ず常にあることを教えてくれる |
のだと、私はそう思います。 |
酔い、というのは、その奥深い私達の胸底に流れる笑顔への扉を開いてくれるモノ。 |
そして、そのなによりも嬉しいモノがあるからこそ。 |
その笑顔に辿り着ける「私」が此処にいるからこそ。 |
圧倒的に、すべての問題に向き合える。 |
走り終わった後、飯田はなおも瑞生に食い下がります。 |
そして、瑞生は息を切らしながら、マラソンの余韻の中から、こう言うのです。 |
『え・・・・なに・・・・?』 |
『なに? 飯田さん。』 |
その姿に一切の誤魔化しを感じることの出来なかった飯田は、そうして相手の誤魔化しを感じ取ること |
「ばかり」していた自分に、ぽいっといとも簡単に気づいてしまうのです。 |
静流はこう言います。 |
『笑いも色々あるし、その意味を考え過ぎるのはどうかなってことを言いたいんだけど・・』 |
もし。 |
もし、「笑いの意味を考えすぎるのはどうかな?」とだけ言われたのだとしたら、飯田はきっと頷けなかった |
に違いありません。 |
でも、「笑いも色々ある」という、その笑いの意味をちゃんと考える事自体を認められているのなら、 |
飯田は快く頷けるのでしょう。 |
瑞生のあの走りきったすえの屈託の無い、そしてなによりも「今ならなんでも受け止めてやるぜ」という |
笑顔は、まさにその静流の言葉を体現しているものでした。 |
それを見て飯田は『日原さんて・・・・変。』と、ある意味感極まった調子で言い、それに対して瑞生は |
例の「誤魔化し」の笑顔で以て『え? そう?』と応えるのですけれど。 |
もうそれに噛み付くことで満足出来る自分は、飯田さんの中には居なくなっていたのでした。 |
家に帰ってきてすべての顛末を話す瑞生と、それを聞く静流。 |
そのふたりが交わす「笑い論議」が、既に素直な笑いをふたりにもたらしているのでした。 |
楽しそうに、笑い合うふたり。 |
そのふたりの孫の笑い声を背中一杯で受けて、ゆっくりと微笑むお祖父ちゃん。 |
あ、幸せだなこういうのってと、そっとひとつ、私は感じました。 |
こっちまで、自然に笑みがこぼれてくるよ。 |
そしてきっと、また今度ワライヤミと出会っても、瑞生はもう、そおワライヤミとさえ一緒に笑い合える気が |
します。 |
ええ。 |
もう瑞生はワライヤミに憑かれる事は無い、だなんて全然思いません。 |
これからもたぶん、いくらでも取り憑かれることでしょう。 |
だってそれが。 |
ワライヤミが其処に「いる」ってことなのですから。 |
『奴らは居んのが当たり前。』 |
でも。 |
瑞生はそれとの付き合い方を、もう充分覚えたのですよね。 |
自分が笑ってるって事がどういうことか、もうわかったよね? 瑞生。 |
ということで、今回はこの辺りで幕とさせて頂きましょう。 |
今回のお話もまた、傑作といえましょう。 |
もっけ、すごいなぁ・・・ほんとうにすごいなぁ・・・ |
演出的にも、あの瑞生が吹っ切れて走り出した辺りの爽快さ、そしてワライヤミが離れていくあの感覚 |
はただお見事としか言いようが無く、また秀逸だったのは、瑞生が通りすがりの女性からワライヤミを |
貰ってしまったときのシーン。 |
あの「ぃぃぃっ!?」っと言わんばかりの顔に加え、あのポンポンポンポンという鼓と太鼓のリズムをここで |
持ってくる意外性そしてそれが実に良く合うこと合うこと、私は原作を読んであの雰囲気が好きでしたけ |
れど、このアニメはその雰囲気を忠実に再現するよりは、如何に映像にしたときに効果的に見えるかと |
いうことを入念に考えてやっていて、とても期待が持てる感じでなによりでした。 |
実際、あのシーンとリズムの組み合わせはありえないはずなのに、ばっちり合ってましたしねぇ。 |
原作みたく淡々とやり続けていたら、かえって間延びしていたかもしれませんし、インパクトも無かった |
でしょうしね。 |
それでは、次週にも大いに期待しつつ、これにて。 |
◆ 『』内文章、アニメ「もっけ」より引用 ◆ |