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◆◆◆ -- 2008年8月のお話 -- ◆◆◆

 

-- 080828--                    

 

         

                               ■■6周年のようですね■■

     
 
 
 
 
 それ! それがだいじ! (挨拶)
 
 
 まだ8月だというのに、肌寒い今日この頃、皆様お過ごしでしょうか。
 私はといえば、この極端な温度変化のあまりに体がだるく、なんなら暑い方が良かったとか、
 つい一週間前までは真夏の日差しを呪っていたのに、というていたらくです。
 なにをやっているのでしょうね、ほんとうにこの人は。
 
 さて、改めまして、ごきげんよう。
 ・・・。
 
 
 一応、6周年です。
 ええ、この魔術師の工房がです。
 
 
 うーん。 ←腕組みしながら
 というか、24日で6周年なのですから、もう過ぎてますけれど。
 なんとなーく意識してて、なんかその気にならなくてはいけないと思いながら、思い耽りながら、
 ふと顔を上げたら24日とっくに終わってました、みたいな。
 ・・・。
 ま、いっか。
 変な充足感があります。
 散々頭の中では盛り上がっていて、色々と頭の中だけで試してて、それで結局はなにも出来なかった
 けれど、それは悔しさというより当然というか、いやでもこのまったり感でなにか問題ある?いや無い、
 という感じです。
 終わったねぇ、6周年。
 終わりましたねぇ、6周年。
 チャット会やっただけな?
 ええ、チャット会やっただけでしたね。
 結局今年もなんだかんだで、それだけか。
 はい、今年もなんだかんだで、それだけです。
 なんか、すっきりするな。
 なんか、すっきりですね。
 
 
 別に、もう6年もやってんだから、いつまでもお祭り騒ぎするんじゃないの! しっかりなさい!、
 とかそんなことは思っていません。
 だって、なにげに計画だけは立てていますから。 しっかりとは程遠い有様です。
 でも、こんな感じ。
 淡々。
 こんな感じ。
 そしてこの頃、その淡々と過ぎていく様子がみえてくるようになってきました。
 淡々。
 そんな感じ。
 お祭りを騒ぎを否定する意味での淡々さではありません。
 機会があればいつでも騒ぎますし、機会があっても力及ばずに頭の中だけで終わってしまうこともある。
 淡々。
 そういう感じ。
 淡々。
 淡々。
 お前は淡々教の教祖様か!
 
 
 
 ◆
 
 すみません、ボケもオチも冴えなくて。
 いえ、別にボケたつもりは無いのですけれど、なぜだか流れでツッコミ入れてしめてしまいました。
 あと別に、淡々とかどうでもいいです。
 ただの淡々に興味はありません。
 この中に、ボケとツッコミと燃えと萌えの人がいたら、あたしのところに来なさい。
 以上!
 そういう、ハルヒな感じです。 ハルヒ懐かしいー。
 基本的には、そういう感じです、私は、というかウチとこのサイトは。
 破天荒とか奇矯とか驚天動地とか我が儘とかSとか歓迎ですし、ツンデレにも門戸は開かれてます。
 しかしそういうのを歓迎するのは、私自身は石橋タイプだからです。
 そういう設定です。 たぶん。
 そしてそういう石橋な私は破天荒なものを求め続けることで、ある段階で疲れ、けれどじゃあその
 反動として、やっぱりほら石橋が良かった石橋叩いて良かった、とかいうのは腹がすり切れるほど嫌い
 なので、折衷案、んじゃ、間取ってまったりにいこう、取り敢えず保留な保留、というか休憩?
 休憩しながら他の皆さんが熱く頑張ってるのを見ながらまったりしようよ、そしてまったりしながらでも
 いいから熱くなろうよ、まったりなりに頑張ろうよ、そういう感じ。
 そういった境地から、この6周年を見守っていたのです。
 ほら、お祭りの準備期間って、自分はサボってても、他の人の見てるだけで自分も頑張ってる気に
 なれるでしょ? あれと同じです。
 他の誰もがそういう気にはならないんじゃね? と言っても私はその気です。 大丈夫!
 
 まぁ、そういう感じですので。
 これからもどうぞ、当魔術師の工房をよろしくお願いします。
 おきろーおきろー。 ← 気温の変化に対応出来てない人
 
 
 
 ◆
 
 お酒話をちらほらと。
 うーん、この頃当たりを引いて無い感じ。
 夏は日本酒中心でいくのが、なんか日本のぐだぐだした蒸し暑い夏に似合ってるので、というか
 なんかだらしなーく飲むのには日本酒がイメージでだけじゃ無しに合ってるので、結構きゅっといきたい
 のですけれど、ハズレ続き。
 で、なかなかそうして美味しいものに当たらないから食指が縮こまっちゃって、なにげにプチ禁酒状態。
 まー、暑いしね。 ここらでぴしっとしなくちゃですね。 (矛盾)
 と思っていたらの、ここ最近の冷え下がりっぷりですよ、どうしますか。
 どうもしません。
 
 
 純米酒 山吹色のお酒:
 どこのお酒だったか忘れちゃったけど、900mlパックの奴。良くみかける。
 んで、味はというと、酸っぱいだけ。 駄目だこれ。
 酸っぱさに多少の変化があるだけで、いくら飲んでも日本酒独特の変化の妙が無いので、全然全く
 飲み足り無い。
 
 山廃仕込純米酒 天狗舞:
 お勧めされた&これのver.吟醸(だったと思う)が美味しかったので、購入。
 んで、味はというと、酸っぱいだけ。 おい同じかよ。
 上のと比べると多少味の広がりはあるものの、どうにも酸味だけに頼り過ぎてて、ただ飲んでるだけ感
 しか得られなかった。
 どうも私は、酸味メインのは駄目らしいね。
 
 
 日本酒は負けっぱなし。
 次。
 
 サントリー 北杜 芳醇50.5°:
 ウイスキー。 かなり安かったので、ちょいっと。
 けれど残念かな安物買いのなんたらたら。
 ・・・・・芝生? (全般的に)
 ま、まぁ、これは不味いと力説する程じゃ無いけど、美味しいとは酔っても言えないって感じ。
 これだったら、以前飲んだほぼ同価格の富士山麓の方がバニラ風味な分だけいける感じ。
 ウイスキーはもう次に購入する銘柄を決めてあるので、さっさと片づけたいお年頃。
 でもあまり飲む気が起きないので減らないスパイラル。
 なにこの人生。
 
 
 お酒話、終了。
 もうなんか、終了。
 
 
 あーウイスキーはやっぱり夏は駄目ね。 体が火照って死ぬ死ぬ。
 冬が一番蒸留酒は美味しいのかな、やっぱり。
 そろそろブランデーも再開したいのだけれど、お財布さんとの交渉中。
 ウイスキー少し控えるかなー。
 
 
 
 いや、オチなんて無いですよ。
 ほんとはお腹回りと相談してて、それどころじゃないんだからねとか、無いですからね。
 
 
 きびしい。
 
 
 
 
 
 ◆
 
 な にィ!! (挨拶)
 
 よつばだよ!! 8巻だよ!!
 どんだけまったとおもってんだー!! じかんいみねーなー!!
 
 という訳で、よつばと!最新8巻買ってきました。はつばいびー。
 ええと、ネタバレします。
 たぶんなんも考えずにネタはバレてないかもしれませんけれど、ネタバレです。
 つまりあれな、ネタバレとか気を付けない、という意味な。不可抗力!
 発売日だもの、さすがにそれくらいの配慮はしないとね、ということでの前置きです。
 OK?
 
 なー。
 よつばなー。
 よくわかんない。
 ふーかの文化祭行って、お祭りいって、台風で飛ばされて。
 よつばはいつものよつばなんだけど、なんだかよつばじゃないみたい。
 ふつー。
 ふつーに、はしゃいでる。
 おもしろかった。
 もうあれな、よつばとそれ以外の人達のカルチャーギャップ無いな。な。
 ふーかのクラスの子とか、なにあの対応力。
 一度しか会ってないはずなのに。
 お祭りに参加してた他の子もそう。
 よつばが、目立たない。
 よつばが、なんかいる。
 それくらい。
 顔広いなぁ、ととーちゃんは言う。
 今回は、自転車屋のひげもじゃもいたし、虎もいたし。
 なんていうか、よつばうまくなった。
 だいたい、どうすると相手が「え!?」って感じで多めにびっくりするとか、わかってきた?
 しつこくない。
 わりとあっさり。
 感じ的に、犬。
 挨拶的に匂いは嗅ぐけどな、それなりに興味みせるけどな、みたいな。
 よつば大人なった。
 少しだけ、大人なった。
 
 ちょっとだけ、さみしい。
 
 けどな、よつばはちょっと、評論家っぽくなった。
 新しいものと出会っても、驚きよりも比較をするようになった。
 これはしってる・・・あれな・・・たぶんにせもの・・
 あと、知ってる知識を当てはめて対応するとか。
 たぶんばーちゃんがめちゃくちゃ教えてる。
 やんだあたりもたぶんなにげにひどいこと教えてる。
 よつばは一杯一杯、情報源を持ってる。
 少しだけ、よつばのオリジナリティが無くなった。
 驚きに、新鮮さが無い。
 知ったかぶり。
 でももう、よつばは、言葉を知ってるってこと。
 だから、これなんだ!? これなんなんだ!? なんだろなー!!??
 そんな「わからなさ」という意味での驚きは少なくなった。
 だから、よつばはただ、体験していく。
 わからないものは、よつばの知ってる知ったかぶりな言葉で適当に説明する。
 そして。
 よつばは、楽しむ。
 「驚き」という楽しみでは無い、自分が言葉で知っているものを実体験するという楽しみ。
 おーこういうことか、これな、これがばーちゃんが言ってたやつな。
 あんなのケーキちがう! パン!
 すげぇ、よつばせいちょうしてる。
 こどもなのにな。ジャンボいみねーなー。
 今までは、よつばと一緒におどろいたり驚いてるよつばに驚いてた。
 なんでこんな当たり前なことによつばは驚けるんだろ?
 じゃーあれだ、一緒に驚いてみよう。
 どうしたら、よつばと一緒に驚けるかな。
 なんで驚くのか、そりゃ知らないからだな。
 完全無欠に、知らないからだな。
 だから一緒に驚くためには、自分がなにを知っているのかをみつけてく必要があった。
 今回は、そーじゃない。
 今回は、よつばは色々知ってる。
 そしてよつばは、知ったかぶりをする。
 よつばは説明する。
 それは結構珍妙だったりする。
 じゃー、どうしてそういう説明になるのか、一緒に同じ説明が出来るようになるにはどうしたらいいのかな。
 そういうこと。
 そして、結構よつば、まともになってきてることにも気づく。
 わりと、よつばらしくない、当たり前なツッコミとか入れてることにも気づく。
 昔は、もうめちゃくちゃだったのに。
 笑い転げの連続だったのに。
 よつば大人なった。
 大人なったら、よつばはつまんない?
 よつばとは、面白くなくなる?
 
 そう思った瞬間に。
 よつばいみねーなー、ってなる。
 
 だって面白いし、8巻。
 これでよつばが成人してたって、風香より年上になったって、ジャンボよりでっかくなったって、変わらない。
 よつばは、よつばだ。
 よつばのどの時代でも、よつばは面白い。
 なんでおもしろい?
 ぜんぜんわかりません。
 よつばは、おんなじことなんて全然しません。
 たとえよつばがおなじことしても、とーちゃんがしません。
 相変わらず雨の中台風の中、そのまま飛び出るよつばを眺めてたら。
 とーちゃんきれました。
 そのまんまきれました。
 違う。怒ったんじゃない。
 ばっ
 両手広げました。雨に打たれました。なんか静かに世界を全部愛しそうな勢いでした。
 やけっぱち。
 怒られた。
 隣のかーちゃんに怒られた。
 そんな感じ。
 色んなことを知りながら、知ったかぶりしながら評論しながら。
 その目の前に広がってるでっかいよつばの世界を楽しんでる。
 はは、それは私もおんなじだ。
 まずい!
 まずーい♪
 すげーまずい!!
 あ
 あー
 あべこべな?!
 あべこべごっこなー!
 そんなばあいちがう!!
 
 よーいやさー。
 よーいやさー!
 
 
 あーおもしろかった。
 よつばと最高。
 
 
 
 これで私の夏は終わった。 (ぇ・・)
 
 
 
 
 
 ◆
 
 恋姫無双ー。
 なにげに毎回感想書いてるので続けてみよーなこの企画、ほんとに続くのかな? (微笑)
 そして早速の感想は、先週分ー。 今週のはまだ観てないよ。来週あたりに追いつくといいな。
 
 wwwwかちょうww仮面www
 
 アホだ。
 趙雲さんはアホの子です。
 かちょう仮面て、なによ。 課長仮面ですか?www
 いや、華蝶仮面なんですけど、わからないですよ普通ww
 まぁ、変態仮面の人は置いといて。
 許褚&張遼登場。
 許褚は大食いちびっ子で、張遼は関西弁の喧嘩屋さんですか。
 へぇー・・・・・
 
 駄ww目wwwだwww
 課長仮面にwwwひきずられるwwwww
 
 おかしい、なんでこんなウケてんの私。
 馬超再登場とか、色々と顔見せ的に動きがあった回なのに、気になるのはあの仮面ばっかり。
 駄目これお腹痛いwww
 
 
 終わり。 (ぉぃ)
 
 
 P.S:
 関羽と張飛は、もう何回でもフラグ立てるがいいさ。やってみるがいいさ。
 というかもう姉妹として完成してたら、フラグいうの? てかフラグってなに?
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

-- 080825--                    

 

         

                            ■■友だちに会いにいこう!■■

     
 
 
 
 
 『おまえは偉いねぇ。
   俺は、寂しくても踏み出すのが怖くて、なんとかしようなんて思わなかった。
  だから、いっぱい色んなものに気づけなかったのかもしれないなぁ。』
 

                              〜夏目友人帳・第七話・夏目の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 『まだある・・・・人間の帽子。』
 
 『ふふっ、白くてきれい・・・雪みたい。』
 『誰もひろってくれないの?』
 
 『だったら、うちにくる?』
 
 
 
 
 
 






 

 
 
 
 草の影から、ずっと見てたんだ。
 あれ、ほしいな。
 でもとっても白くてきれいだったから、あれを落とした人間は絶対に取りに戻ってくるとおもって、だから、
 なんか勝手に拾っちゃいけないような気がして。
 あんなにきれいなんだもん、勝手にひろっちゃいけないよ。
 だからね、ずっと見てたんだ。
 でもいつまでたっても、誰も拾わなかった。
 かわいそう・・
 あんなに綺麗なのに、雪みたいに白いのに。
 雨がつよく降ったとき、ぼくは堪らなくなって、ひろっちゃったんだ。
 胸に抱きしめて、濡れないように、大切に、大切に。
 濡れちゃかわいそうだよ。
 ぼくしか見てないんなら、ぼくが守ってあげなくちゃ。
 誰かが落とした白い帽子。
 今日から僕の家族。
 きれいだね、雪みたいだね。
 太陽にかざすと、透けてくる光がきらきらとしてて、とってもきれいだった。
 ぼく、君を大切にするよ。
 指で突っつくと、ささらとしてきもちいい。
 あは、いいなぁ、帽子、いいなぁ、まっしろな帽子。
 『あはは、綺麗・・♪ 母様にみせよう。』
 
 
 『かあさま・・・・・・』
 
 
 ぼくが作ったんだよね? お墓。
 ちっちゃな石をひろいあつめて、五段に重ねたの。
 ぼくが、つくったんだよね。
 かあさまのお墓に、そっと、帽子をかぶせてみた。
 かあさま・・・・
 かあさまがかぶったら、きれいだろうなぁ。
 僕の大好きな、綺麗な母様。
 ぼくがひろった帽子をかあさまがかぶったら、いちばん、いちばん、きれいだろうなぁ。
 母様、喜んでくれるかな?
 母様・・かあさま・・・冷たい・・・
 
 
 『ええい! 男子たる者がめそめそと。
  これからはひとりで生きていくのだっ。』
 
 
 帽子を手に取って、かざしてみる。
 あっつい、あっついなぁ、もう。
 でも、きれいだなぁ。
 かざした帽子の裏から、水玉みたいに浮かぶ光の群は、なんだかとっても楽しそう。
 かぶっちゃうのがもったいないくらい。
 ずっとみてる。
 楽しくて、うれしくて、きれいで。
 みん みん みん
 蝉の鳴き声が、綺麗に遠く聞こえてる。
 てくてくと歩く森のこみちが、ずっとずっと続いてる。
 わーい、この帽子は僕のたからものなんだ♪
 
 そうしたら、みたことのないこわい妖怪たちが、いきなりぼくをいじめてきた。
 なんだろう、ぼく、なにもしてないのに。
 役立たずは森から出ていけって、言ってきた。
 こわかった。
 『役立たず・・・?』
 なんのことかわからなかった。
 わからないのに、妖怪たちは、ぼくのことをばしばしと殴ったんだ。
 痛くて、怖くて、わからなくて、どうしよう、どうしよう・・・
 かあさまがみえた。
 かあさまが、にじんでる・・・
 かあさまが、ばしばしとゆれてる・・・・
 かあさま・・かあさま・・・いやだよ・・・・
 
 そうしたら、黒い影が飛んで。
 気づいたら、目の前に、知らない人間が立っていた。
 あっという間に妖怪たちをやっつけちゃった。
 ど・・どうしよう・・次は・・・ぼく・・・?
 に・・・・逃げなくちゃ・・・!
 立ち去っていくその人間の背中は、めちゃくちゃ大きかった。
 離れて行っているはずなのに、それがどんどんぼくの隠れている草むらに向かって来てるようにみえた。
 ど・・どうしよう・・どうしよう・・・弱虫のぼくじゃ・・勝てるわけ・・・・
 僕がそうして右往左往している間に、その人間はどこかに行ってしまっていた。
 『人間は嫌い・・・・・だけど・・・』
 
 誰もいなくなった森のこみちが、なんだかとってもさびしくみえたんだ。
 
 その人間を追いかけて、そのこみちを歩いた。
 『夏目・・・』
 夏目、っていうんだ、あの人間。
 『夏目はよく笑う。 でもなんか、嘘っぽい。』
 人間は嫌い。
 かあさまをうったから。
 どーんとすごい音がして、かあさまがまっすぐにたおれて。
 かあさまに抱きついて、起こそうとしてたら、足音がして。
 振り向いたら、人間が・・・
 だから人間は嫌い。
 だけど夏目は・・
 『本当は人間じゃないのかも。 本当は僕とおなじで、人間に化けてて・・』
 そうだよ、夏目は人間じゃないんだ。
 だったら、ぼく・・
 『ぼくと同じひとりぽっちで、だったら、この森で一緒に住んでくれたらいいのに。』
 『ねぇ? かあさま。』
 
 かあさまはうなづいてくれた。
 かあさまといっしょに見上げた夜空には、海みたいに星が広がってたんだ。
 
 ねぇ、かあさま。
 夏目は一緒に住んでくれるよね?
 夏目と一緒に、星の海を見上げたいなぁ。
 夏目・・・よし!
 夏目のこと、もっと知りたい。
 夏目になにかしてあげたい。
 夏目の背中、大きくて、あったかそう。
 隠れながら、夏目をずっと追いかけてみた。
 色んな夏目がみえた。
 でも、夏目は夏目だった。
 夏目はずっと、夏目。
 見つからないように、見つからないように。
 もっともっと、夏目のこと知りたい。
 でも、夏目は足がはやくて、一度かけ出すと、追いつけなかった。
 あっという間に見失っちゃった。
 夏目・・夏目・・
 もっとうまく隠れなくちゃ。
 もっとはやく走れるようにならなくっちゃ。
 
 でも、まだ夏目はこの森にいる。
 あ、雨だ。
 
 雨やどりして、困っている夏目をみつけた。
 あわてた。
 だけどすぐにぴんときて、葉っぱの傘を夏目のために取ってきた。
 ど・・どうしよう・・夏目・・・受け取ってくれるかな・・
 ぼく・・一番大きくて、立派な、今度雨が降ったら取ろうと思ってた葉っぱを選んだんだけど・・
 ごめんなさい・・でも・・・・夏目にあげたい・・・
 隠れながら、夏目の方に葉っぱを投げた。
 はずかしかった。
 いくらなんでも、ばれちゃうよね。
 でもそれよりも、夏目・・受け取ってくれるかな・・・受け取ってくれるかな・・・・
 はずかしくて、ほっぺたが熱くなってきた。
 雨音がどくどくとして、痛かった。
 もうぼくがあげたってばれちゃってるよね。
 ぼくがいるの、バレちゃってるよね。
 足が、すくんだ。
 かあさま・・・
 そしたら・・・
 
 『ありがとう。』
 
 じわーっと、うれしかった。
 とっても、とっても、目がぱっちり開くくらいにうれしかった。
 夏目がね、ありがとうって。
 夏目がぼくの顔をみて、そう言ってくれたんだよ!
 夏目が、ぼくのあげた傘をさしてくれてる。
 夏目が、ぼくにありがとうって。
 えへへ
 
 『かあさま。 ぼくも役に立てましたよ。』
 『ありがとう、って。』
 『もう役立たずじゃありませんよね?』
 
 『あしたはきのこをとろう!』
 『いっぱいとって、夏目に分けてやろう♪』
 
 葉っぱの傘をかあさまのお墓にかけて、横に白い帽子を並べたら。
 なんだかとっても、幸せなきぶん。
 嬉しいなぁ、うれしいなぁ。
 とってもとっても、明日が楽しみ♪
 
 そしたら、うしろをふりかえったら、この間の妖怪たちがいて。
 また、殴った。
 役立たず・・役立たず・・・?
 
 『違う! もう役立たずじゃないっっ!!』
 
 ぼくは夏目にありがとうって言われたんだ!
 負けるもんか、泣くもんか!
 ぼくはもう役立たずなんかじゃないっ!
 あしたはきのこを取りにいくんだ。
 あしたは夏目に会いにいくんだ。
 ぼくは、がんばったんだ!
 ぼくは、がんばるんだ!!
 ぼくは男なんだ!!!
 
 風のように夏目が現れた。
 また助けてくれた。
 だけど、夏目はすぐに走り出した。
 ぼくも妖怪たちもぽかんとして、見送った。
 でもなんだか、気になった。
 妖怪たちが夏目を追いかけて、ぼくは妖怪たちについていった。
 木陰からみた夏目は、古い木の妖怪に名を返していた。
 夏目友人帳。
 『聞いたことがある。名前を書かれた者は主従の契約で結ばれると。』
 
 やらなくちゃ。
 ぼくは、やらなくちゃ。
 
 『ぼくの名前が書いてあります。』
 『僕を、子分にしてください!』
 『きっと、お役に立ってみせます!!』
 
 
 『いらないよ。』
 
 
 ぼくは・・・ぼくは・・・・
 『ぼくが・・弱いから? ぼくなんか、役に立たない?』
 一生懸命がんばったのに。
 ぼくは、がんばれるのに。
 ぼくは、役立たずなのはいやだよ。
 夏目、夏目、お願いします。
 ぼく、がんばるから。
 ぼく、夏目のためだったら、どんなことでも出来るようになってみせます!
 ぼくは・・確かに弱いけど・・役に立たないかもしれないけど・・・
 でも・・・・・ぼくは・・・・強くなりたい・・・・役に立ちたい・・・・
 
 『こんなもので、縛り合いたく無い。』
 『僕達は親分子分の関係じゃ無い。』
 『だろ?』
 『もっと別の繋がりだと、俺は思ってるよ。』
 
 夏目が・・・遠くに行ってしまう・・
 夏目のあたたかい手が・・なんだかつめたい・・
 夏目は、ぼくをこぶんにしてくれないの・・?
 夏目も、やっぱりぼくは役立たずだと思う?
 夏目は笑ってる・・・なんだか・・・・とっても・・こわい
 夏目が背を向ける。
 やさしい言葉をのこして、ぼくの前から去っていく。
 『あ・・・』
 夏目・・・僕は・・・・僕は・・・
 
 
 『あ・・やっぱり綺麗・・・!』
 
 雪のようにまっしろな帽子は、やっぱり僕の宝物。
 帽子の裏からみえるきれいな光は、とってもあたたかい。
 かあさま、ぼく、がんばるよ。
 だって、こんなに綺麗なんだもん。
 『夏目にも、みせたいなぁ。』
 『夏目・・・・』
 僕は、夏目に認めて貰えなかった。
 ぼくは子分にして貰えなかった。
 僕がまだ弱いから、僕がまだ役に立てないから。
 だから、がんばるんです、ぼく。
 『夏目に会いたい・・・』
 だから、甘えちゃいけないんですね、かあさま。
 きれいな帽子をかぶって、ぼくはつよくカッコよくなって、夏目の役に立ちたいです。
 夏目に、きれいな帽子をみて欲しいです。
 かあさま。
 ぼく、がんばります!
 かあさま・・・・かあさま・・・・・ぼく・・・夏目に会いたい・・・・
 
 『男子たるものがめそめそと!』
 『強くなって、いつか夏目の役に立つと決めたのだっ! えいえいえいえいっ!』
 
 ぼくが気合いを入れていると、突然こわい妖怪が現れた。
 ウナギの体と犬の顔の妖怪。
 でも、魚を一杯食べさせたら、夏目に会える方法を教えてくれるって。
 ほんと!?
 いっしょうけんめい、魚をつかまえなくちゃ!
 いっぱいいっぱい、魚をとった。
 なにもかも忘れて、いっぱいいっぱい、魚を追いかけた。
 もうお腹いっぱいになった?
 『これで、夏目に会える方法おしえてくれる?』
 やった、ぼくはやったんだ。
 ぼくは・・・・
 
 『馬鹿な子狐め。 騙されおった。そんな馬鹿だから、お前はいつもひとりなのだ。』
 『夏目もお前のことなど、とっくに忘れておるだろうさ。』
 
 ・・・・・え?
 だって、魚を一杯食べさせたら・・・だってそう言って・・・
 僕はただ一生懸命に・・夏目に会いたいから・・・夏目に会いたいから・・・
 ぼくがばかだから・・?
 ぼくがよわくて役立たずだから、やっぱりぼくはひとりなの?
 こんなにがんばったのに・・ぼくがばかだから・・・・みんなぼくを置いて・・・・
 ぼくはただ夏目のために・・・ぼくは夏目の・・・・
 そっか・・・弱くて役立たずな僕がどんなに頑張ったって・・
 夏目にとっては、そんなもの大したものじゃないんだ・・・あたりまえじゃないか・・
 役立たずなぼくにあげられるものなんて、なんにも無いんだ。
 ぼくには最初から、夏目のために、夏目に覚えて貰えるようなことをすることなんてできないんだ。
 
 でも・・じゃあ・・・
 夏目は、それでぼくのこと、いじめるかな?
 
 『会いたければ、自分から会いにいけばいい。』
 『それだけの話だ。』
 
 そうだよ。
 『そうだ。会いにいけばいいんだ!』
 
 その妖怪は、一日だけ人間になれる薬をくれた。
 それを飲み込むと、僕はあっという間に人間になった。
 よーし!
 うれしくなって、綺麗な帽子を頭にかぶせたら。
 ぎゃー! 耳! 耳のこってる!
 頭を抱え込んでしゃがむと、こんどはぽーんとしっぽが服から飛び出ちゃった。
 な、なにこれ、人間になったのは服だけだ!
 
 でも、会いたい。
 
 
 夏目に、会いにいこう!
 
 
 もう一回、帽子をぎゅっとかぶる。
 これでもう、耳はみえない。
 きれいなぼくの宝物はぼくを助けてくれた。
 しっぽは服の中に押し込めば、なんとかなる。
 『行ってきます、かあさま!』
 『よし!』
 『僕だって狐の端くれだ。 人間界にいけば夏目の匂いを辿れる!』
 あんなに魚をとれたんだから、根性だってあるよ!
 夏目に会いたい気持ちだって、誰にも負けないんだ。
 『夏目はひとりで寂しがってないかな。』
 会いにいこう、夏目に。
 駅で切符を買って。
 ちゃんと僕の葉っぱのお金が使えることができたんだ。
 駅員の人間にみつめられてどぎまぎしちゃったけど、ちゃんとその切符で通ることができたんだ。
 しっぽがぽろりとでちゃったアクシデントも、なんとか誤魔化せた。
 葉っぱのお金で買えた、ぼくの切符。
 『ふふ。』
 野を越え山を越え、電車の窓の向こうだけが過ぎていく。
 ぼくは座席にずっと座って、夏目の匂いがするのを待っていた。
 夏目、今なにしてるかなぁ、夏目、昨日はなにしたのかなぁ。
 ぽかぽかと、電車の中はあたたかい。
 がしゃん
 電車のドアが開いたら、遠くから夏目の匂いがした。
 ぼくは勇んで電車から降りて、人間界の町に立った。
 乗ってきた電車を見送った。
 『夏目・・夏目の匂いは・・・』
 踏切を渡って、アスファルトの道を歩いて、犬に吠えられて、人間に声をかけられて。
 あ、また夏目の匂いがした! こっちからする!
 あ、でもこっちの方のが強い!
 夏目・・よーし、今いくよ!
 『ひとりなんて、平気!』
 
 『会いたい。会いたい! 夏目はどこ?』
 
 人混みを初めてみた。
 車があんなに走ってる。
 夏目、夏目、ぼくと夏目。
 ぼくの胸のなかには、大きな背中の夏目がいる。
 あったかくて、きらきらと輝く太陽と一緒に、ぼくは夏目を探してる。
 とっても、とっても、うれしかった。
 人間界の中で、夏目を探せるのがうれしかった。
 『夏目の匂い!』
 『いるんだ! 近くに。 会えるんだ!』
 すっかり慣れた町中を、力いっぱい走り抜けた。
 追いかけて、追いかけて、もう一本道に繋がった夏目の匂いを追いかけた。
 このまま走れば、夏目に会えるんだ!
 
 真っ赤に焼けた空の奥に、夏目はいた。
 人間の家。
 中に入ったのははじめて。
 玄関の戸を開けたら、胸いっぱいに夏目の匂いが広がって。
 夏目だ。 夏目の声がする。
 ・・え?
 
 『貴志くんは川魚大丈夫なのよね?』
 『はい。』
 『僕はなんでも。』
 
 夏目がまた嘘吐いてる。
 なんだか、僕は入っていけなくなった。
 出直そう。
 夏目の嘘を邪魔しちゃいけない。
 それに・・僕は・・・
 ・・・・・・役立たずだから・・
 夏目に嘘を・・・
 喋り声は続いている。
 あの声は、夏目のかあさまととうさま?
 『しげるさんはね、ピーマン駄目なのよ。小さい子みたいでしょう。』
 気になった。
 小さくても、弱くても、ぼくは・・・
 障子の隙間から、覗いてみた。
 夏目と、夏目のかあさまととうさま。
 笑ってた。
 夏目の笑顔は嘘っぽいのに、夏目はちゃんと笑ってた。
 たのしそうに、うれしそうに、しあわせそうに。
 そうなんだ・・
 『実は、僕も小さい頃は苦手でした。』
 『そうか、味方が出来たな。』
 あれは、夏目のかあさまととうさまじゃないのかもしれない。
 それなのに、夏目といると、とってもたのしそうだった。
 夏目・・・
 ぼく・・・・・
 
 
 
 『よかった・・夏目、たのしそうだった。』
 『さみしくなんかなかった。』
 
 
 まんまるに飛んでいく、まっかな空が、ただ。
 
 
 『さみしかったのは・・・・・・』
 
 『ぼく・・・』
 
 
 空がぐるんぐるんにまわっていく。
 なんだかとっても、地面が軽い。
 どんどん、どんどん、夏目の匂いからはなれていっちゃう。
 夏目の家から駆けだした。
 夏目、よかった・・夏目、よかった・・・・
 さみしいよ・・・さみしいよう・・・
 がつんと痛みを感じたら、石につまずいた。
 その拍子に、ころころと、ぼくの帽子は転がっていった。
 ものすごく、はやかった。
 待って。
 
 『待ってっ!』
 
 耳も隠せなくなって、しっぽもまる見えなのに。
 ぼくの宝物。
 かあさま・・・
 ぼくを・・・・おいてかないで・・・・・っ・・
 
 
 
 とん
 
 必死に見上げた帽子の影の上に。
 夏目が。
 
 夏目が、立っていた。
 
 夏目の足下には、ぼくの帽子がちょこんと・・・
 
 
 『やっぱり。』
 『あのときの子狐か。』
 
 『ありがとう。 会いに来てくれたんだね。』
 
 
 
 夏目・・・
 
 
 
 
 
 
 
 うわああんあん
 
 
 
 
 
 
 夏目、夏目、夏目!
 ぼく、ぼく、ごめんなさい、ごめんなさい。
 だって、ぼく・・ぼく・・
 さみしくて、さみしくて、でも、どうしても夏目に会いたくて・・・
 立っていたのが夏目じゃ無い人間かもしれないって・・・
 もし、夏目じゃなかったら、ぼくは・・ぼくは・・・・・
 なつめ・・なつめぇぇ・・・
 さみしかったよう・・会いたかったよう・・
 会いたくて、会いたくて、だから、だから・・・
 ありがとう・・夏目・・・ぼく・・・夏目のことだいすき!
 
 夏目が服についた汚れを払ってくれた。
 夏目が帽子をかぶせてくれた。
 夏目が、笑ってくれた。
 涙をごしごしと拭いて、僕は立ち上がった。
 『可愛い帽子だね。』
 『え? うふふ♪』
 明日になったら、太陽にかざして綺麗な光の玉をみせてあげよう。
 夏目と一緒に、星の海をみよう。
 
 『御飯食べて、一緒に帰ろう。』
 
 え?
 どういう・・
 
 『道を覚えなくちゃ。』
 
 
 『今度は、俺が会いに行くよ。』
 
 
 夏目がまた、にっこりと笑った。
 夏目が、ぼくに会いにやってきてくれる。
 なによりも、なによりも、嬉しかった。
 一番、一番、さらにその上に、うれしかった。
 本当? ほんとう? 夏目。
 ぼく、夏目と一緒に森で住みたかったけど、でも、男子たるものそんなことじゃいけなかった。
 夏目には、夏目のかあさまととうさまがいるんだもん。
 だからぼく、夏目に一目会えただけで、もう良かったのに。
 夏目のあったかい胸が、ぼくの全部だったのに。
 ほんとに? ほんとに?
 夏目が森に来たら、ぼくは魚をいっぱいとって、夏目にご馳走してあげるよ。
 きのこだって、木の実だって、たくさんたくさんとってくるよ。
 森の中だって挨拶してあげる。
 ぼくの宝物もみせてあげる。
 ぼくは、本当に、笑顔が止まらなくなったんだよ、かあさま。
 
 『うん♪』
 
 帰りの電車の中。
 隣に座る夏目が、いっぱいいっぱい暖かい夢をくれました。
 かあさま。
 夏目が、ぼくを森まで送ってくれましたよ。
 そしてまた、今度は夏目の方から、やっぱり会いに来ると言ってくれました。
 うれしかった。
 ぼく、うれしくて、うれしくて、しょうがなかったんだ。
 またね。
 またね、夏目。
 一生懸命手を振るぼくに、夏目は優しく手を振ってくれた。
 会いにいこう。
 
 
 
 
 
 また絶対、ぼくの友だちに会いにいこう!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                              ◆ 『』内文章、アニメ『夏目友人帳』より引用 ◆
 
 
 

 

-- 080822--                    

 

         

                                  ■■ 水あられ ■■

     
 
 
 
 
 ごきげんよう、紅い瞳です。
 
 あっつ。
 あちち。
 暑いのなんの。
 一体この夏は、あと何回このセリフを日記に書かなくてはいけないのかと思うと、今日も眠れません。
 ええ、寝苦しくてですね、熱帯夜なんてレベルじゃねーぞでですね、ていうか寝かせろ。
 すみません、暑いですね。
 記録的猛暑だったりしてますか? なんか体感的にここ数年で一番暑い気がするのですけれど。
 だったらほら、その暑さを話題にしない訳にはいかないじゃないですか。
 みなさんも、あーはいはい、みたいに団扇を扇ぎながら暑がってればいいじゃない。
 いいじゃない、減るもんじゃなし。
 実際、暑いって言わなくたって暑いんだもの、多少暑い暑い言ったって変わらないでしょ。
 とこうして一行書くたびに、またひとりまたひとりとウインドウを閉じてるっぽくても、暑いんです。
 私だって、パソコンの電源切ったもの。
 ふっ、これで私のひとり勝ちだよ、ふふふ、とか言ってますよ。
 馬鹿って言うな。
 暑いんだもの。
 
 
 
 ◆
 
 そういえば、扇子が欲しい。 割と欲しい。
 でも買ったこと無いし、あんまし安っぽいのは興醒めな気がする。
 いや、つまりなんかこう、雰囲気欲しい。
 団扇色気ねーもの、まーなんか、ウチの「祭」って大書してあってアホっぽくて好きなんだけど、色気ねー。
 で、ネットを駆使して調べようとしたんだけど、なんか、味気が無い。
 なんていうかこれは、画像みてるだけじゃ駄目ね、イメージ湧かないもの。
 なんかこれじゃ、色紙はっ付けた団扇にしかみえないもの。いやそうだけど。
 で、扇子って、どこで売ってんの?
 そこらへんのデパートで売ってる? 雑貨屋さん? コンビニ?
 扇専門店とか?
 よーし、ちょっとまた、探検しちゃうぞ☆
 
 暑苦しい・・・
 ていうか暑・・・・
 
 
 
 ◆
 
 駄目、駄目ね、全く駄目。
 扇子話題開始→扇子欲しい→だが現在持ってない→欲しい→持ってない→暑
 素晴らしきかな短絡思考、いいえ、欲望全開。
 よし。
 
 ◆
 
 
 
 という感じで、最近この日記の方向性を模索していたりします。
 ほんとうです。 (微笑)
 
 さて、せっかくネット上にいちスペースを使わせて頂いているのですから、なにやらこう、実りのあるような、
 ためになるような、なんか語ったなぁみたいな、お客さんに来て得した気分にさせられるような、
 そんな夢のある夢のような寝惚けたものを、せっせとあくびしながら書いてみましょう。
 わたしはいつだってほんきです。 (微笑)
 
 で、先日友人と会って話してたんですけど。
 あー、結構久しぶりに会ったので、どう話し始めようかと思ったら、お互い開口一番が、「暑いよね。」。
 偉大なり、時候の挨拶。暑さに乾杯。
 それですっかり打ち解けて(旧知の間でそういう言い方はどうかだけど)、それでそのまま話を続けること
 を目的にするべくっぽく、あちらさんが「そういえば、五輪やってるよね? 観てる?」と振ってきたので、
 私は全然観てないけど「あー、適当にねー。」みたいに答えて話繋げてみたのよ。
 ちなみに、この人の場合、「五輪?それって美味しいの?(笑)」とかボケても、「あそう。」の一言で
 終わらせちゃうという、なにげに強敵なので、迂闊なことは出来ません。
 迂闊なのは私の存在だけで充分なのだ。
 ・・・とボケても、普通に「あーそうね。」ともう全く興味なさげに潰してくる人でもあります。ぎゃー。
 
 んで、まぁ雰囲気からして、それは話題の繋ぎ的な意味合いと同時に、どうもなんか言いたいことが
 五輪に対してあるっぽく、それにうすうす勘づいてた私はだから尚更ボケにくく、とりあえず適当に話し
 合わせてアイスコーヒーすすってたの。
 この人の場合、割と言いたいこと直球で言うし、しかも言いたいことがあるときはいきなりそこに持って
 いくというか、私なんかはまぁまぁ、せっかく会ったんだから、もう少し社交辞令的なさぁ、なんかさぁある
 じゃん?、みたいな感じなんですけど、素通りされた。 久しぶりな、この負けた感じ。
 紅い瞳:社交辞令をたらたら → 友人:そんなのはどうでもいい →紅い瞳:はいすみません
 うん、気持ちいい。 これだ、この感覚。
 いや違うて。 話逸れ過ぎやん。 変態過ぎやん。 や、今後ともよろしくお願いします。
 で。
 友人が言うには、中国人ってやっぱオカシイ。
 きたよこれ。
 ぶるーたす、おまえもか、みたいな感じすらそのときはしなかったですねぇ。
 まぁ話を進めますと、友人はいくつかの例を挙げてたんですけど、その中で気になったのがあって。
 なんて名前だったか忘れましたけど、なんとかって名前の五輪の応援隊があって、それがまぁおかしいと。
 なんだったっけな、やたら負けてる方ばかり応援してるとか、ロクに競技のルールも知らないのに適当な
 ところで歓声送ったりとか、要するにまとめると、不平等で不勉強な奴のそれは応援じゃ無い、
 競技観戦者としてのマナーがなってない、という感じ。
 友人の中国批判の根底になにがあるのかとか、そういうのは見えるんだけど、ここではそれは割愛。
 だって暑いし。 (便利な)
 
 それで、私はやっぱりそれは傲慢だよなぁ、ってつくづく思ったのよ。
 なんていうか、サポーター精神の悪いところが出てるというか。
 前にも言ったけど、スポーツっていうのは誰のものでも無い、みんなのものだって。
 大体さ、その友人にも言ったんだけど、そのスポーツの観方に、なんでルールがあるの?
 ゴミを捨てるなとかならわかるよ?
 まー、ほんとはそれもおかしいんだけどね。 それはまぁ置いといて。
 でもさ、たとえば騒いだりとか、そういうのはどう? たとえば。
 そもそもスポーツ観戦ほど騒がしいものは無いよね? サッカーなんて凄まじいよ。
 なのに、なんで騒ぎ方を統一しなくちゃいけない訳?
 不思議なのは、正しい騒ぎ方・間違った騒ぎ方があるっていうこと。
 しかもその正しい騒ぎ方っていうものの内実はアホらしい限りのもので、たとえばチャンスのときには盛り
 上がり、そうでないときはじっと静かに見守るとか、それって「サポーター」の観戦の仕方であって、他の
 観戦者、一般のその競技の「ファン」とは関係無いじゃん。
 
 これも友人に言ったのだけれど。
 なんでみんなが、「サポーター」にならなきゃいけない訳?
 ていうか、それってサポーターの傲慢じゃ無い?
 
 その昔、今ほどサッカーが隆盛してなかった頃なんて、もっとのんびりしてたよ。
 そりゃいわゆる「応援団」みたいなのはいて、統一された観戦の仕方をしてたけど、それはあくまで
 ひとつのグループにしか過ぎなかった。
 でも今は、なんかいつのまにか、スタジアムに来た人が強制的にサポーターにさせられるというか、そうい
 うなんか、サポーター以外の人にはしらけたところがあるような気がするの。
 私からすれば、スタジアムの観戦っていうのは、大きなお祭りに他ならない。
 それをどう観ようと、どう応援しようと、それぞれ勝手だし、それは決してサポーターの、サポーターだけの
 お祭りでは無いと思うし、そのサポーター化した人達が、他の観戦者の(サポーター的に)間違った
 応援をしている人のことをおかしいというのなら、その言葉はそっくり返ってくると思う。
 
 ウチの祖母はなにげにスポーツ好きで、年を取ってからはテレビ観戦が主なんですけれど、もう凄まじい
 やらやかましいやら、ほんとお祭り騒ぎですよ。悲愴的な意味で。(ぉぃ)
 バレーの試合なんかほんと、心臓が止まっちゃうんじゃ無いかくらいに情念を込めて一喜一憂してますし、
 サッカーの試合の場合も、それいけっ、ボール取れ、走れ、いけっ、あ、やった、みたいなもう、90分間
 目一杯楽しんでます。 こっちはハラハラですけどね。 余命的な意味で。(ぉぃって)
 でも、これ、ルール、あんましわかってません。
 サッカーでも、オフサイドわからないとかいうレベルじゃありませんし。
 それこそ、ゴールにボールが入った数が多い方が勝ち、しかわかってません。
 勿論、どんなドリブルやパスが「上手いのか」や、ましてや戦術戦略の類などもわかるはずもありません。
 ある意味、「サッカー」という名のついたスポーツのことを全くわかっていないのです。
 
 でも、それが、スポーツじゃなくね?
 
 サッカーの場合、ボールがひとつある。
 そしてそれを、22人の選手が奪い合う、最も原始的なスポーツです。
 それを目の当たりにして、祖母はそのまま興奮して、ひとつひとつのプレー、いえ、もはやひとつひとつの
 動きにこそ、熱いものを感じ取っているのです。
 「サッカー」という名の言葉は不要、ただそこにボールがひとつある。
 逆にいえば、そこにボールがあるからこそ、「サッカー」という名の言葉もある。
 言い換えれば、サッカーでも他のスポーツでも、それは決して「玄人」だけのものでは無いということです。
 祖母はそういう意味で、スポーツ観戦歴は恐ろしく長いのですけど、生涯素人でした。
 いや、でしたってあんた、まだ終わってないですから、過去形禁止禁止。 (笑)
 だからそういう意味で、祖母にとっては五輪なんていうのは最高の大会なんです。
 なぜって、普段観たことも無いような、多種多様な競技と出会えるからですよ。
 ルールなんて全然知らなくてもOK、とにかく観て、興奮して、五輪最高。
 祖母なりにそれぞれの競技と接して、祖母なりに自分の楽しみ方をそれぞれ見つけていく。
 ある意味、ルールを知って、どういう常套プレーがあって、戦術戦略があって、というのを把握してから
 観ようとすると、とてもじゃ無いけど五輪なんて楽しめ無いと思います。
 楽しめるのは、五輪のうちの自分の知っている競技だけ。
 ウチの祖母はいつだって、手ぶらです。
 私なんかは根が玄人派(?)なので、よっぽど精神的に余裕があるときで無いと、自分の知ってる競技
 以外には目を向けられず、祖母のことを羨ましく思ってしまいます。
 で、ムキになって、じゃあ全部の競技勉強してやんよ、そうすりゃ全部知ってることになるから全部楽しめ
 るじゃんヨ!、とか息巻いているうちに、ああそうか、と気づくんです。
 
 そうしたら、私は祖母のことをどう見るようになるんだろうか、って。
 
 話を強烈に戻しますけど、これって、友人と他の同じよな人達の中国人蔑視の根底にあるもの。
 ま、その辺りは暑いので、またいずれ。 (なら戻すな)
 
 で、だからなんというのかな。
 そのスポーツのサポーター的玄人的見方だけが正しい訳じゃ無いし、それで他の見方を排除するのは
 傲慢だよって話なんですよね、まとめると。
 で、でもそれは別にサポーター的玄人的見方自体を否定する訳じゃ無いし、むしろそれを否定したら
 それを否定した方が傲慢ですしね。
 だから、スポーツは誰のものでも無い、みんなのものなんですって。
 そう、一時期流行ってましたけど、ベッカム様人気? だからああいうのも大いにアリです。
 スタジアムにベッカム様を観るためだけに来て、ベッカム様だけに声援を贈り、ベッカム様だけ観て
 帰ってくる。
 ルール? ベッカム様が出場した方が勝ちでしょ? (名言 違)
 でも、それで全然問題ありません。
 もはやサッカー関係無い、って言っても、そのベッカム様がボールを奪い奪われ、ときにビューティフルな
 パスやシュートを決めるんですから、間違い無くサッカーしてますじゃん。
 その熱く華麗な選手に惚れて来るのは当然ですし、それがサッカー的に「上手い」プレーとか戦術上
 どうなのかだとかは、それはただのサポーター的玄人的見方にしか過ぎ無い訳ですよね。
 いいえ、これはむしろ。
 立場的には、ひとつの視点を以て統一的にそれを観る、という意味で、サポーター的玄人的見方と
 ベッカム様万歳な見方は、同列上にあるものだと思います。
 それとほら、選手個人の物語を下地にして観るとか、高校野球の「溌剌さ」とか、そういうのも同じよ。
 そうですねぇ、なんとなく暴論だという感じはしますけど、でも、私が自分自身玄人的見方に立てば
 立つほどに、暴論だと思うことが、むしろ玄人的立場の私が、ベッカム様万歳な見方に対して傲慢
 になっているということのなによりの証なのだとも思います。
 
 あとちょっと話ズレますけど、スポーツマンシップとかフェアプレー精神とかもそうなんですよね。
 私はサッカーやってたとき一度も警告も退場も受けたこと無いし、ここは戦術的にファールは必要だと
 いうときも、監督と喧嘩してでさえも絶対にしませんでした。
 でもそれは、それが「サッカー選手として正しい」からした訳でもなんでも無く、それじゃ面白く無いから
 でした。
 で、だから逆に執拗にファールしてくる相手のことも、別に見下したりすることも無かったし、たんに相手
 の出す足をどうかわすかとか、そういうことを考えたり。
 まー確かに? そういう相手の行為を「卑怯」として見つめ、それでチームで結束して「悪」の相手チーム
 に立ち向かうっていう小作りな盛り上がり方はあったし実際したけど、でもそれこそお遊びでしょ。
 それが本気になることほど、頭の悪いものは無い。
 や、本気になるのはいいけど、そのとき限定というかさ。
 フェアプレーとかそういうのって、ただ円滑に試合を進めるためのものだし、なのにそういうのが絶対で、
 それが正しくて、そういうのを守らない奴にスポーツする資格は無いとか、あまつさえ人間性を疑うとか、
 本気で言ってるんなら、それこそいい加減にしろって感じ。
 ていうか、それでいて試合後に相手チームと握手する、その手の持ち主の人間性を疑うよね。
 スポーツマンシップとかなんとか、それ自体は別に良いけど、でもそこから人としての正しいあり方だとか
 生きる姿勢を学ぶとかっていうのは、正直、どうかしてるって私は思うかな。
 
 そんなものをスポーツに求めるな、というか。
 そういうものを、スポーツにしか求められないような生き方するなよって感じ。
 
 どんなにサッカー勉強したって理解したって、信奉したって、それはあくまでひとつの見地にしか過ぎない。
 その自分がした勉強や理解を誇るのは結構だけど、それを他人に押し付けたら、それは驕りというもの。
 そんな驕りまみれのスタジアムでの閉鎖的なお祭りなんて、面白くもなんとも無い。
 自分達と違う観戦の仕方をする人達を排除して、その中で試合を楽しむ気になんてなれない。
 むしろそういうことがしたいなら、家でひとりで観戦すれば良いのに。
 ・・・と、そこまで言ったら友人にアイスティーをぶっかけられそうなのでやめましたけど。
 だって怖いのよぅ、この子。 きっついもの。 でもそれが快k(以下削除)
 
 
 でね。
 私の場合何度も言ってますけど、サポーター的かどうかはともかく、玄人的見方をする人間なのね。
 サッカーなんかも、応援するというよりは、ひとつひとつのプレーを精査して、目を細めながらその上質さ
 と共に戦術戦略論を考えて愉しんだりする方なの。
 渋いっていうか、オタなのね。オタか、オタですよねやっぱり。ふぅ。
 だから基本的に、そのスポーツのことを勉強して無いと、愉しむことが出来ないの。
 私の場合、結構そういうの多い。
 手堅いっていうか、石橋を叩き壊して「ほらやっぱり。」と言って迂回する人なの。なんか前にも言ったね。
 で。
 まぁ。
 ここから私がどういう風に話を振っていくのかというが、まぁ、わかる方はいらっしゃるかな、というか、
 いらっしゃったら嬉しいな、惚れちゃうゾ☆、みたいなところなんですけど。 暑苦しい。
 
 アニメ、なんですね。
 
 これがまた、全然違う。180度回転しちゃう。
 アニメの場合だと私は、完全に素人派になる。
 初めはかなり意識して素人的にいこうとしてたんだけど、いつのまにか、そしてあっさりと素で素人になる。
 いつもこのサイトで私のアホアニメ話を読んでくださっている方はおわかりかもしれませんけれど、
 この紅い瞳という奴はもう、完全独自にアニメと向き合ってる人です。
 ていうか、他の人のアニメ評とか全然かんけーねー。
 そして、私自身も、自分のアニメの見方、というのを根本的には確立させて無く、基本的には
 ざっくばらんに一期一会なんです。
 アニメとはこういうものだ、アニメとはこう観るものだ、見所はここだ、という言葉を観るたびに、失礼な
 ことに鼻で軽く笑ってしまう人です。失礼の段、御免なれ。
 最初に頭の中にそれでも既存的な先入観はあります、アニメに対しても。
 で、それを使って最初にアニメに手を掛けます。
 
 そして。
 ぶん投げる。
 
 なにを言ってるのかわからないかもしれませんけど、私は少しわかっているので大丈夫です。 大丈夫!
 つまりね、先入観を無理に打ち消さずに、敢えて先入観のままに作品にぶつける。
 そうすると、私の中にそういうものを鼻で笑う根性がそれと取っ組み合いを始める。
 でも、それでどっちが勝つとか負けるとかじゃ無いんです。
 はいはいどいてどいて邪魔よ、と両方まとめてそれをぶん投げるんです。
 なにを言ってるのかわからな(以下略)。
 しぜんにこう、目の前のアニメと向き合う。
 そうすると、先入観だけで観ることの「足り無さ」と、それに刃向かうだけの「無意味さ」を感じられる。
 あとはもう、その足りないものを求めるために、ひたすらその目の前のアニメを貪るんです。
 わかりやすく言えば、こうです。
 アニメと、向き合いましょう。
 たぶん、アニメってこういうことが凄くしやすいものだと思うんです。
 歴史が浅いとかなんとか、その辺の分析は他の人にお任せするところとして。
 とにかく、スポーツでいうところのサポーター的玄人的見方というのが、まだまだ定着してない、というか、
 むしろ今そういう見方を担っているのがまさにオタクであって、でもなによりもオタクは自分達の向き合って
 いるものに対して、完全にこれ、開き直ってるんですよね。或いは開き直ろうとあがくというか。
 つまり、アニメから人としての正しい生き方だのあり方などを学びましたなんて言わないし(というか言えな
 い恥ずかしくて 笑)、で、一応アニメの「正しい見方」みたいなものは作りつつあるのだけれど、それも
 まだまだ浅いというか、なによりも多くのアニメファンを満足させるにはとても足りないものしか無い。
 ちなみにオタクはスポーツで言うところのサポーターであって、アニメファンというのはサポーターを含む、
 すべてのアニメ鑑賞者ですね。
 で、このサポーターとしてのオタクは、しかもどんなにふんぞり返っても玄人的にはなれないというか、
 ある意味自らのうちに偉大な爆弾を抱えてると思うんですよね
 
 それはね、「萌え」です。
 
 たとえばオタとしての玄人的見方って、せいぜい作り手側の見地程度の代物でしか無い訳です。
 作画がどうの演出がどうの、それって本質的には誤魔化しなんです。
 まーそれを最初から目的としてる人がいないとは言いませんけど、多くの場合、自分がアニメを観て
 感じた偉大な「なにか」と突き詰めて向き合うことが出来ないからこそ、一番語りやすい外的なその
 既に出来ている制作側の「論理」を語って、それでなんか満足した気分になる。
 でも、その自分が語ったもの自体にはなんの愛着も持てない。とーぜんです。
 だって一番愛しいのは、そのアニメを観て得た、「萌え」なんですから。
 スポーツで言うところの、熱気、じゃーこの際紛らわしく「燃え」にしときましょーか。 (笑)
 その「萌え(燃え)」を上手く正直に語れないからこそ、「語る」という行為だけを取り出してしまった。
 私が書いてるアニメの文章は、元はコレ、全部その情熱的な「萌え」ですよ、「萌え」。
 勿論、私の言ってる「萌え」っていうのは、「可愛い」に似た意味の限定的なものじゃー無い。
 とにかく、感じた偉大な「なにか」、それのことを指してます。
 つまりま、アニメは誰のものかって話ですよ。
 アニメは制作側だけのものじゃ無い、アニメは私達それを観るひとりひとりのもの。
 で、オタクからすれば、そのことを一番なによりも知ってるのはオタク自身なんですよね。
 私だってそうよ、思い入れの強い作品ほど上手く感想書けなくて、下手にお茶濁ししちゃうもの。
 でもそれを私は正当化したりしないし、またオタクも実はしないんですね。
 だって、自分にとって一番大切なのは「萌え」だって、ちゃんとわかってるんですもん。
 わかってるからこそ、いたたまれなくて、なんか下手打つんだけど、失敗続き。
 だからこその、オタクなのですよ。
 それこそ、愛すべきオタクなのですよ。
 
 
 話がブチっと逸れた音が聞こえたよ。
 うん、わかってる。
 
 
 ま、ね。
 逸れついでに逸れさせて貰いますとね。
 アニメって、強制で観させられるってこと、まず無いでしょ?
 というか、好きだからこそ、いやいや、強烈に好きだからこそ、見続けられるでしょ?
 それは義務でも受け身でもなんでも無い、本物の愛。
 アニメを見続けてる人は、もう立派にアニメとただそれだけで向き合ってるんです。
 でもスポーツの場合は、なかなかそうはいかない。
 正直、結構無理矢理ってところはある。
 私も、サッカーはじめたときは好きで始めたんだけど、押し付け的な指導法とか「途中でやめたらあとで
 後悔する」論法とかでがんじがらめで、いつのまにかやめられなくなってて。
 で、そうするうちにいつのまにか、自分が「サッカーを続けている理由」なんていうのを求め始めちゃって、
 それでまぁいっとき、結構スポーツマンシップ的な、しかも結構濃いものを信奉しちゃってたときもあった。
 でも、それって意味無かったよ。
 だってそれ、サッカー自体は愉しくねーもの。
 私はサッカーが大好きで、ただボール蹴りたかっただけなのにね。
 そう。
 私はその頃、サッカーを自分のものにすることが出来なかったんだよ。
 そのことに気づいて、自分のしたいサッカーのためにこそサッカーすることが大事なことを知って、
 そうしたら、チームプレイだのなんだのを口実にして、自分のサッカーを押し付けてくる人達のやってる事が
 みえてきて、まぁそれで色々あって辞めちゃって。 もっと戦えば良かったのに昔の私。この根性無し。
 ・・・・と今だから言える言いたい放題。 (笑)
 今は私的に、サッカーは半分自分のものにすることが出来てる感じ。
 自由にサッカーを観ることが出来るようになったしね。
 でもプレイする環境は無くて、だから、半分。
 そして残り半分は、いつか必ず手に入れたいなって思ってます。
 だって私、サッカー愛してるもの。
 きゃー言っちゃった!
 
 (しばらくお待ちください)
 
 えー、なんかキモい奴は片づけときました。ご安心を。
 んで、なんだったっけ? 話逸れすぎてわかんなくなっちゃった。 (ぉぃ)
 あーまー、つまり。
 私はね、サポーター的玄人的なものの見方をする人にこそ、アニメをお勧めしたいのですよ。
 随分飛躍しているかもしれませんけれど、私の中では繋がっているので大丈夫です。 たぶん。
 まぁ、なんていうか、その、素に戻れっていうかね、サポーター的玄人的なものの見方が、あくまで
 ひとつの見地にしか過ぎなくて、しかもそれはそのものの見方の方に比重が偏りがちで、本当に自分の
 目の前にあるものから離れてしまいがちでもある。
 だから、アニメっていうのはそういう意味で、自分だけが頼りだし、つまり誰も玄人的な見方を教えて
 くれないし、また同時にサポーターとなるべきオタク連中は揃いも揃ってヘタレばかりだし(まてい)、
 だからどうしても自分に立ち返って、しゃーない、一からアニメと向き合うか、って感じになりやすいから。
 ずっと前にも言ったけど、アニメファンって、孤独なんです。
 で、孤独が嫌だからなんか群れてオタ化するんだけど、それは裏返せば間違いなく自分が孤独だって
 ことを証し、そして自分が向き合わねばならないのは、世界でたったひとつ自分の前にある、そのアニメ
 こそだということなんですね。
 スポーツだって、サッカーだって、ほんとはそうなのにね。
 でもそれを誤魔化す「群れ」の論理、つまり玄人的システムが堅いからずっとそこにいてしまえる。
 ええ。
 なんでアニメなの? って時々訊かれます。
 それに一番真摯に答えるとしたら、それはきっとこんな感じです。
 
 
 それはね、目の前のものと、向き合えるからだよ。
 
 そして、目の前のものの、それの目の前にいる自分と向き合えるからなんだよ、と。
 
 
 
 
 
 
 以上。
 ご静読ありがとうございました。  
 
 
 
 ↑ なにかをやり遂げたような、すっきりとしたなんかむかつく顔で
 
 
 
 
 
 
 ◆
 
 暑い暑いいいながら、書くときは書くんだよすごいだろなははは。
 と言いつつこれ、書いたのは三日かけてですからね。
 1日1時間で計3時間、休み休み、涼み涼みしながら書いたんですけどね。
 わはは、この長いだけの文章を汗みずくで読んだ人には敬意を表しよう、わはははははh
 
 あ、ウインドウ閉じんといて・・・・ ←縋り付くようにして
 
 
 
 
 
 ◆
 
 という、オチでした。
 
 
 
 
 
 ◆
 
 んで。
 
 
 〜オチクラッシャーな恋姫無双感想を蛇足的に (先週編)〜
 
 孔明登場回。
 というか、張飛回。
 というか。
 趙雲さんの運命や如何に、回。
 ちなみに今週分はまだ観てませんので、ほんとに運命わかってません。感想は来週にて。
 
 まーぶっちゃけ、張飛萌えで終わり、かな?
 あと関羽の無様な格好を哀れむというか。
 まー張飛ですよね、やー良く動く動く。
 関羽へのおもいと孔明への嫉妬とかでも助けるとか、そういうのを「優しさ」として描かずに「プライド」
 として描いてて、でも同時にそれが逆に張飛の拘りを捨てることに繋がった、そういう結果としての「優しさ
 」がむしろ張飛の方を包んでいたことにぐっときた。
 前半での、趙雲さんのメンマ星人ぶりに、関羽と一緒に翻弄される様子から、張飛の「優しさ」が
 関羽への親愛の情にあることが良く描かれ、ゆえに最初の孔明の関羽への奉仕ぶりも、関羽の怪我
 に手当が施されたという喜びで受け取っている。
 原点は、そこ。
 そこから孔明と張り合う張飛のこと、という展開になり、そして最後に張飛が孔明を助けて捨てた拘り
 の果てに辿り着いたのが、その原点。
 すなわち、まー関羽のためになるなら許してやるか。
 そしてそれは、関羽のためにすべてを我慢するという意味で無いところが良いよね。
 つまり張飛的には、関羽に奉仕する孔明のことを認めてて、その自分を認めたいからこそそういう風に
 思うんですよね。
 関羽を独り占めしても、もう面白くないのだ! ←不機嫌気味にだけど逞しげな張飛風に
 その辺りの流れがほとんど成り行き的なのが面白いところなんですけどね。 (笑)
 でもそうだからこその、あの張飛のむくれっつらの輝きなのでしょうね。
 よーわかりませんけど。 (自分で言っといて)
 
 
 
 なにを言ってるのかわからないかもしれませんけれど、私もわかってないので大丈夫です。大丈夫!
 
 
 
 
 えっと、落ちます。
 
 
 
 
 
 
 P.S:
 
 関羽: 「わかりました。この関羽、責任を以て、諸葛孔明殿をお預かり致します。」
 
 ・・・・責任・・?
 
 張飛=本妻 孔明=愛人
 
 
 
 
 
 あ、あと、24日で六周年です。 
 びっくりです。
 
 
 
 
 いやほんと、びっくりです。
 
 
 
 
 
 
 
 ありがとう。 (ぼそっと)
 
 
 
 
 

 

-- 080819--                    

 

         

                            ■■ 友の夢は深く奔りて 2 ■■

     
 
 
 
 
 『なぜ? 情が移ったからさ!
  友人のために動いて、なにが悪い。』
 

                              〜夏目友人帳・第六話・夏目の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 水気を孕んだ涼しい風が、爽やかに流れていく。
 暗澹とした重い夜の底に沈みながらも、そこで観る夢の通い路は滑らかに平坦だった。
 
 棄て去った汚辱が貌に降り積もる。
 
 『おのれ・・放さん・・・放さんぞ人の子ぉっ!』
 
 貌に刻んだ文字を被り、その下で目覚めた私は、顔が見事に泥に埋まっていることに気づいた。
 重い。
 けれど、また目を閉じれば、どうなるだろう。
 重いことには変わりは無かったが、重さに気を取られることは無かった。
 私は、燕。
 燕という文字を描かれた仮面を被る者。
 けれど、そんな自意識そのものが、ただ仮面であって、私の貌だったわ。
 その貌に張り付いた泥の仮面は、ただ重苦しい。
 けれど、その無様で浅ましき姿形の是非を問うている私の姿は不要だった。
 汚辱にまみれ、憎悪に悶え、ただ怨念なるままに振り翳した凶器なるこの両手。
 その手を、伸ばした。
 それがどれだけ汚れていようと、無様だろうと、重苦しかろうと関係が無い。
 そして私は、あっさりと気づく。
 そうか・・本当に、関係無いんだ・・・
 どのような意味に於いても、私はその泥の堆積を気にしていず、また意にも介していなかったのよ。
 ずるずると濡れ落ちてくる黒い雫が、たとえ貌の下の涙と繋がっていようとも、関係が無い。
 それは全く、別のこと。
 そう、そうだったのよ・・
 その両手を伸ばすことは、憎悪や汚辱を認め優しさや美を否定することと同じでは無いのよ。
 
 すっ
 私はただ、手を伸ばす。
 
 その掌には様々なものが降り積もり、そして指の間から零れ落ちていく。
 けれど、その降り積もり零れ落ちていくものが、この私の手を蝕み。
 そして、この手の先にあるものを消してしまうということも、無い。
 醜き泥面を忌避することも、殊更好んで付けようという意識も無かった。
 もはや、手を伸ばしているという意識もすら無かったのよ。
 ふつ ふつ
 
 
 滾り始めた憎悪。
 耳を劈くような悲しみ。
 まっさらに、身を包む。
 
 − 怨 −
 − 悲 −
 
 貌に描き出された文字が、降り積もる血泥を以て綴られていく。
 貌の下のふたつの瞳が流す涙が紅い筋を帯びていく。
 怨めしや・・
 悲しや・・・・
 その魂の叫びを、すべて泥の仮面が引き受け、そして吸い取っていく。
 想う様に、人間に飛びかかった。
 恨みの理屈と、それを果たすための手順のままに、凶暴に掴みかかった。
 懸命に、必死に。
 そんな意識も無い。
 ただ無意識に、自らのおもいの鬼となった。
 そしてその鬼の面は、見事に人間の拳によってかち割られたのよ。
 ずるずると崩れ落ちる私の体に溶け込んで、私は手掴みで砕けた鬼の骸を貪り喰ろうた。
 -- 一緒に いこう
 その人間は、夏目といった。
 夏目様、ですね。
 
 『どうしても、会いたい人間がいるのです。』
 
 恨みのままに、悲しみのままに、それをひとつも捨てずに、けれど、ただ、会いたい。
 
 会いたい。
 会いたい。
 夏の日差しが、蕩けるように甘い。
 柔らかな白い光が、肌を包む。
 怨めしや。
 悲しや。
 木立の中に佇む陽炎のようにして、そのおもいがこの体に溶け込んでいく。
 どろどろと砂粒を溶け合わせたような、小さな小さな異物感が、私の何かを磨り減らしていく。
 茫洋とした肌の輪郭が、冷たい汗に導かれて、夏いきれの中のひとつとなっていく。
 谷尾崎、という名が浮かぶ。
 それが私の会いたい人間の名だ。
 いいえ、夏目様。
 その人が、私に食べ物をくれたからとか、そういうなにかの理由のためじゃ無いんです。
 会いたいんです、あの人に。
 私の貌に刻まれた燕の紋の嘴からは、小さな吹き出しが生え出ている。
 その中には、いくつもの私の大切な理由が詰まっている。
 次々と浮き出る、その繊細な物語。
 けれどそれはあまりに小さく、細書きされた燕の意匠よりも、さらに微細だった。
 徒然と指先を泥に浸し、ひとつの吐息のままに、書き顕す。
 滾々と、そして朧に滑りに染まった薄い燕が貌に留まる。
 静かに汗ばむ足裏が、ひんやりと透けていくのを感じていた。
 
 さら さら さら
 
 夜風が木立を流している。
 朧月夜の空に駆ける眼差しを置いて、風のまにまにその月明かりに照らされている。
 一幅の刀身が辛辣なるままに、蕩然として胸を貫いている。
 深更に沈む泉の如くに宵闇に溶け広がる刃文には、泳ぐようにして銘が顕れていた。
 降りしきる泥水が水浸しのままに撥ねて、その浮き出た銘を燕の言葉に刻み込んでいく。
 気づくと、僅かに開いた襖の向こうから、水底を洗う涼しい夜の息吹が生えてきていた。
 鈴音を結び下げた星の雫が窓の外にたゆたっている。
 碧を帯びた夜光がゆっくりと薄い帳を広げている。
 濡れた指先につうと息を吹きかけ、畳に散らかる鬼の破れ面の刃先をちょろりと撫でる。
 小作りな笑いが舌の上で踊り始めた。
 くつくつと傾いだ微笑みで、ゆっくりと豪快に振り上げる拳のままに、ひょいと戯けて三つ指をつく。
 精妙なるままに膝を折り頭を垂れ、神妙なるままに我が願いを言上する。
 そして返す刀の銘を軽快に読み上げて、水墨なるままに飛翔する燕の姿を魅せてみる。
 知ってました?
 三つ指って、本当はお行儀の良いものじゃ無いんですよ?
 形だけの挨拶らしいです。
 私の言葉遣いも、結構間違っているはずです。
 人間の見様見真似。
 私は鬼になることで私の何かを持ちましたけれど、それを正確に表す言葉を得るには力が足りない。
 でも私、だから、全部を使って、私を表したり、伝えたいなって思ったんです。
 知って貰いたいから、無視されたく無いから。
 鬼の私が得たなにかの本質は、それなんです。
 言葉だけじゃ足りない、形だけじゃ足りない、嘘だけじゃ、本当だけじゃ、全然全然足りないって。
 私は此処にいるんです。
 怨みに落ちた鬼が、一番大切なそのことを教えてくれるんです。
 私が此処にいれば、それだけで沢山のことが伝わり、また同時に伝わらなかったり、無視もされます。
 ひとつのやり方だけを通せば、それしかいちどきにしなければ、漏れが沢山出てしまいます。
 それでは、誰かに伝わった私だけが、此処にいることになってしまいます。
 私に伝わってきたそのときのだけの誰かだけしか、其処にいないことになってしまいます。
 私がこうして話しているうちにも、夏目様は燕の吹き出しの中の世界に入っているかもしれません。
 話は、話にしか、話だけにしか過ぎません。
 
 そして、だからこその、話の、価値なのです。
 
 私はすらすらと、私の物語を申し述べています。
 縷々と囀る夏鳥達の戯れのように。
 木漏れ陽が露払いをしながら訪れる。
 するすると解かれ掛けられる掛け軸のようにして、私は淡々と、そして絢爛に語り続けています。
 そして貌に生息を続ける軽妙な燕の一本槍な手管を盾にして、その隙間をまっさらに暗躍するのです。
 こういうのを、腹芸って言うんでしょうか。
 夏目様とのすべての時間が、私の存在を伝える場なのです。
 私の貌に棲んでいる燕はそして、同時に私自身の魂が血の涙で滲み出たものでもあるのです。
 ただ切々と誠意と無言に生きただけの雛と、炯々と怨みと絶叫に生きただけの鬼。
 そのすべてが私のこの薄い顔に、私の魂を以て封され、そして生きているのです。
 単純かつ克明に一筆書きに描かれた、この燕がそして、夏の日差しの中に浮かんで生きているのです。
 手練手管を縦横無尽、自由自在に使う。
 けれど私は。
 此処にいる。
 その静かに語り続ける仮面の燕は、鮮やかにそして厳かに、そして、深く深く、私に涼風を送っている。
 
 一瞬の閃光。
 
 青い影。
 
 
 ふっ
 
 夢の通い路を照らす陽炎が、総身を震わせるほどの、静かに深い夢を開いていく。
 
 
 『夏目様は、兄弟いますか?』
 『あ、いや。』
 
 『お前は、いるのか?』
 
 『はい。 四人。』
 
 
 
 
 『でも、みんな私のせいで死にました。』
 
 
 
 
 
 穏やかな夏の風が、私の微笑の命となっていく。
 語れば語るほどに、腹芸を尽くすことだけに懸命になるほどに、薄れていく自分。
 視れば視るほどに、実感を失っていく私。
 でも、そんなのは、本質じゃ無かったですよ。
 私は自分のことがどうでも良くなった訳でも、わからなくなった訳でも、感じなくなった訳でも無い。
 み ん な 私 の せ い で 死 に ま し た 
 その言霊が、なにも顕さないことなんて無いんです。
 私はじっくりと、その青い言葉に責め殺され、そしてそれから抜け出ようとする燕に語り落とされています。
 ふふふ、だから狂ったのかだなんて、そんなことありませんよ。
 狂ってもいないし、悟りを開いた訳でも無いんです。
 燕の立てた夏目様籠絡計画の手順をこなし、自分の腹芸の一環としても、その言葉はありました。
 その過程で、というかそれを利用して、最も辛いことを告白出来た、その喜びもありました。
 でも。
 それはそれとして。
 私はその自らの逞しい貌にくるまれて、その中で、ゆっくりと深く、楽しんでいたのです。
 狂おしいほどに、涼しい夏。
 たおやかな風の中の幸せを日差し一杯に受けている私は、此処にいました。
 ましてや、目の前には、一緒に楽しくお話出来る、夏目様がいらっしゃるのですから。
 いいえ。
 夏目様が、誰かが其処にいるからこそ、なのでした。
 目の前の人間に溶け込みながら、私はついと、いとも簡単にその泥沼から這い出ました。
 冷たい裸のままに、そろりとまた、燕を纏いました。
 ひんやりとして、気持ちいい・・
 
 『夏目様、手を繋いでもいいですか?』
 
 夏目様が手を繋いでくれたのは、同情からでしょうか?
 いいえ。
 私はそう、ひんやりと、そして笑顔で応えました。
 『冷たい手だな・・』
 夏目様は気に入ってくれたでしょうか?
 『はい♪』
 楽しい気持ちのままに、応えました。
 くるくると小回りの利く燕の中の吹き出しには、勇ましい言葉が並んでいます。
 夏目様は私に同情してるだけ、夏目様はだから本質的には私の冷たさしかわからない、などなど。
 私はその燕の苦衷をその布地の裏から吟味し、濾過されたその滴る純粋な清水に身を浸すのです。
 そして、その燕もまた、私自身なのです。
 雛。
 鬼。
 燕。
 全部ひとつの、今の私。
 蝉時雨が、入道雲の傘で護られているのがみえる。
 木立の天辺を飾る、紫紺を帯びたその先に広がる山嶺が滲んでいるのがみえる。
 巨大な円形に切り取られ縁取られた私の周囲が、朧なその鮮明さを晒していく。
 その中に、ふたり楽しく並んで歩いている。
 気遣い。
 気遣われ。
 言葉を超えた優しさの発露の中に互いを浸す。
 自然なるままに。
 あるがままに。
 
 『ふっふふ。 夏目様はお優しい。』
 『そんなだから、付け入られるんですよ♪』
 『お前が言うな。』
 『ふふ♪』
 
 ひどく近い空を、燕が愉しそうに泳いでいる。
 雛と鬼を超えた、燕の棲む貌が、その羽ばたきに揺れている。
 
 『夏目様。雨がきます。わかるんです。』
 『雨を予言する鳥・・・そうか・・お前、元は燕だったのか?』
 
 
 
 『はい。』
 
 
 
 
 語り、あっさりと語り。
 『くだらん。』
 話そのものの陳腐さに頷く者を横に置き、その話をしている私と繋がる人を見据えていく。
 そしてその目の前の人に縋り付くようにして溶け込みながら、鬱蒼と夜の静寂の如くに立ち上がる。
 裾をさっと毅然に払い、けれど指先に込めた力は解き、しどけなく夏の夕暮れの淀みで喉を満たす。
 『でも私は。』
 『彼が運ぶ人の臭いに、拾ってくれた者の暖かさを思い出して。』
 『村が水底に沈んだとき、私が心静かに眠れたのは、あの人の御陰なのです。』
 
 『くだらん。』
 
 夕焼け・・綺麗だなぁ・・
 走って、走って、走って。
 渦巻く燕の言葉を身に刻み込み、ぞっくりと身動ぎを正す力を利用して走り続けた。
 傲然たる緊張が、私の足を前へ前へと運んでいった。
 『あの人の臭い・・・近い・・!』
 夏目様。
 私は小さな燕です。
 とてもとても弱い、愚かな燕です。
 ただただ、青い影に楯突く事無く、潔く自らの罪に逼塞してしまう、それに頼ってしまう小者です。
 あの古狸に鼻で笑われても当然です。
 あの狸はかなりの大物とみましたけれど、実際妖力の大なる妖は皆、私のようなまとまりは無いのです。
 私は走りました。
 あの人の姿をひと目見んとして。
 私はただあの人の臭いに引かれただけと言いつつ、どうしてもその気に乗り切れないのです。
 走る、走る。
 走ることが目的になってしまい、走る自分の姿ばかりみてしまう。
 走っている自分を、まだまだ感じてしまうのです。
 どうしてでしょう。
 どうして私は、話せなくてもいい、ただひと目みるだけでも良いとしか・・・
 その一抹の叫びはそして、燕がひとつひとつ丹念に啄んでいく。
 あの人の目の前に、辿り着けない・・・
 
 でも
 どうしてなんだろう
 
 こんなに胸に 暖かい気持ちが溢れているのは
 
 ずるずると剥けたなにかは、その中からとてつも無く光り輝くなにかを顕した。
 重い足取りと緊張に引きずられ、それとの戦いにどんなに躍起になっていても、それは消えなかった。
 ぐるぐると凄まじい回転で途切れていくあの人のおもいを支えるので精一杯でも、それは同じだった。
 でももうひと目会ったんだからこれでもう思い残すことは無い、という言葉にしがみつくしか無くなっても。
 それは、同じだった。
 それが本当だろうと嘘だろうと、関係が無かった。
 夏目様。
 もしかしたらそれは、あなたがいてくださったからなのかもしれません。
 私のこの姿を、言葉を超えて、そして言葉と共にみていてくれたからなのかもしれません。
 嬉しかったんですよ。
 あの人に会えて。
 あの人に会えた私をみていてくれて。
 いえ。
 夏目様。
 あなたが、私の前にいてくださったからなのです。
 底冷えのする熱気が、私の足下を冷厳に澄ましていく。
 
 
 
 
 

私は 満足したかっただけなんだろうか

 
 
 
 
 殺風景な、紅い部屋。
 過ぎたはずの五月雨の幻聴が耳朶を叩く。
 窶れた走馬燈が、腰を折りながら浪々となにかを唄い出していた。
 『夢のようで御座いました。もう思い残すことはありません。』
 燕の輪郭が歪む。
 『実は取り憑いてやろうと思った頃もありました。この生意気な人間め、って。』
 『でも、私は兄弟達と同じあの地で眠りたいのです。』
 古狸が背を向ける。
 それを蹴り飛ばしたい気持ちが起きない自らに、一握の後ろめたさを感じている。
 いつのまにか私は、燕の吹き出しの言葉を抜き取って、薄い貌の下でそれを囀っていました。
 いえ。
 私は、本音を語ってしまっているのです。
 建前を、いつのまにか本音として。
 貌に浮かぶ燕の姿が、少しずつ薄くなってきています。
 それはもしかしたら、燕こそが、私を盾にしてその隙間に暗躍するためなのかもしれません。
 残されるのはただ、燕だけ。
 燕の、言葉だけ。
 私が消えるための、同胞と美しく静かに消えるための、そんな・・・言葉・・・・
 あの人に会いたい。
 そして、あの人に会えた。
 それでもう、充分。悔いは無い。
 それは本音だった。
 けれどそれは、建前になった。
 その本音を叶えるためにこそ建前として、道具とした。
 そして建前を押し通すことにそっくりと身を浸し、そのままそれを本音と為した。
 夏の木漏れ陽にまみれた木立の中に座り、ささやかな小鳥達の至福の声に耳を澄ます。
 でも私は。
 その至福が、わからなくなっていた。
 ただただもう、その光さざめく愛しき囀りの中に溶けて消えていくようになっていた。
 嗚呼・・・あの人の姿をみられるなんて・・・こんな幸せな光の中で・・こんな・・・・
 静かな嬉しさが肌を包んでいる。
 重い緑を濾して広げた薄い光の、目の覚めるような熱気。
 その中に身を浸していながら感じる、この爽やかな涼風。
 ひんやりと、気持ちいい・・・・
 『あ、あの人だ。』
 
 『おーい。』
 『おーい。』
 
 あの人には私の姿は見えない。
 それが悲しいことなんて無かった。
 だって夏目様。
 私は、あの人をひと目みるためだけに、ここまで来たんですから。
 このひんやりとした熱気が、私を穏やかな水底へと導いてくれるんです。
 御礼が言いたかったんです。
 私を助けてくれたことを。
 あの人はただ無造作に、犬の子かなんかと勘違いしてただけなんだろうけれど、それはいいんです。
 私だって、御礼を言っても、相手には絶対に伝わらないんですから。
 これで良いんです。
 お互いが、それぞれ自分の中にあるなにかを抱き締めていれば。
 それが、幸せなんです。
 誰もが絶対に掴める、幸福なんです。
 私はもう、それを手に入れることが出来ました。
 煌めくままに沈み蛇腹のように犇めく、あの懐かしき巣のぬくもり。
 あの隙間風に、還りたい。
 『夏目様。』
 『ありがとう御座いました。』
 
 雛なるままに、鬼なるままに口ずさんだ、ひとつの小さな燕の夢。
 それが私には、ずっとずっと、みえているのです。
 そしてその物語は、現実のものとなった。
 もう思い残すことはありません。
 燕はこれで、消えます。
 夢は、叶いました。
 冷厳と沸き起こる熱気。
 その中で涼風に白く縁取られた幸せ。
 
 
 
 どうしてそれが 私には みえるんだろう
 
 どうして私は 燕の貌を貼り付けているんだろう
 
 
 
 ゆっくりと消えていく中で、そうして消えていく自分がみえている。
 どうしてかな、消えていく体感も実感もあるのに、それが嬉しいのに、どうしてかな。
 どうして。
 こんなに、満足してしまえるんだろう。
 そしてやっぱり、その木漏れ陽の中に佇む私の姿は、はっきりとみえていた。
 消える。
 終わる。
 その私の消滅と終焉の喜びが満足に磨かれ、そして。
 その黒く淫らな瞳は、同時にはっきりと、この青空の下の私を描き出していたのです。
 燕の吹き出しの物語が私を捕らえた途端。
 その燕は願いを果たし、満足して消えていこうとしています。
 私はそれに誘われ、共に消えようとしています。
 でも・・その燕は消えてしまうのですよ? 
 この今の喜びは、幸せは、燕が描き燕が得たものなのですよ?
 その燕が消えるということは・・・
 本当に私は・・・燕と一緒にあの水底に還れるんだろうか・・・・
 燕は・・・私を連れていってくれるのだろうか・・・・
 
 縁取られ、額縁に埋め込まれた純白の至福が。
 傲然と、私の目の前に立ち顕れる。
 静かな熱狂に包まれた木立の中での爽やかな冷厳は、一転。
 
 深い、深い、蒼を湛えた冷や水となって、私に襲いかかってきていた。
 
 
 
 私は、燕に連れていかれたいんだろうか?
 それ以前に。
 私が、私こそが、燕だったんじゃないだろうか?
 
 
 
 黄昏の道を走り続けた。
 夕闇で背を滑らかに焦がし、先立つ影に哀れみを乞うていた。
 しんなりと折り畳まれた膝のしなやかさが、ただただ愛しかった。
 所作なるままに、丁寧に頭を下げた。
 おもいの充溢した、けれど、そのおもいのままに動くことは出来ない事に、もどかしさを感じて。
 掌が、冷たかった。
 ただあの人が通りがかるのを待つまでの時間の、爽やかな日差しを感じるために。
 ああ・・・・だから・・・こんなに熱いのね・・・
 闇色の茨の下に疼くまっていたとき、ただただ、背は焦げ爛れていくのを感じていた。
 熱気に当てられるままに、必死にあの人を待ち続けていた。
 あの人のことばかりを考えてしまう自分に掴みかかって、そうしている間に訪れたあの人を能面で迎えて。
 その面の下で疼く私と戦い続けて。
 そうだった・・・
 最初はただ、恥ずかしかっただけ。
 鬼となった自分としては絶対に受け入れられ無いという理由を付けて、それを補強した。
 本当の自分を魅せるのが、ただ怖かっただけ。
 そしてそれはやがて、そういうことでは無くなった。
 ただ、全部を知って貰いたくて。
 そのために、建前を使った。
 本音を晒すだけでは、本音を知って貰えないことを知ったから。
 だから、ただの羞恥と言葉の世界に逼塞していた鬼から抜け出してきた。
 夏の柔らかな涼しい日溜まりの中の時間は、とてもとても、広大だった。
 なんだかとても、安らぐことが出来た。
 でも・・・・
 
 
 夏目様が、泥だらけになって。
 ただ私のために。
 ただ私のために。
 余計な言葉は、無かった。
 透明な雫に護られた夜光が照らされた中、私めがけて奔り抜けてきた、夏目様の姿があった。
 
 

ぞっとした

 
 
 

それは なにものにも代え難い 甘い 匂い

 
 
 
 汗みどろの夏目様激しい息遣いが迫る。
 畳の上を撫でるようにして広がる夏目様の声。
 それが、全部、抜けました。
 抑えれば抑えるほどに、それは消えていきました。
 私が人間に与えられたもの。
 私が、人間に求め続けたもの。
 それは、求める必要が無いほどに、ただ儚く消えていこうとしていた。
 私はもう、わからない。
 なにもかも、わからない。
 なのに・・・・
 
 

人が、こうして、目の前にいる。

 

どうしてでしょうか

 
 

わからないのに、わかっちゃうんです

 
 
 

頷けてしまうんです

 
 
 
 
 

私の 大切な 言葉

 
 
 
 
 

『燕。』

 
 

『人を嫌いにならないでいてくれて、ありがとう。』

 
 
 
 

なにもかも吹き飛んで

 

圧倒的に 饒舌に 無限大に

 
 

奔り抜ける

 
 
 

好きです

 
 

あの巣の中で青空に朽ちた雛も

茨の闇で怨みに吠え続けた鬼も

 

なんとしても、そうなんです

 
 

ああ・・

 
 
 
 

『優しいものは好きです!』

 
 

『暖かいものも好きです!』

 
 
 
 

『だから、人が好きです!!』

 
 
 
 
 
 

私が言わなくて、誰がそれを言うっていうのよ!!!

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 滅茶苦茶に声を振り絞って、思い切り人間に抱きついて。
 嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて!
 そしてその嬉しさを私こそが持っていることを、伝えない訳になんて、だからあり得なかったんです。
 夏目様の優しさを、私は何よりも大切に受け取りました。
 夏目様がくださった、この暖かい着物を大事に頂きました。
 どんなに盲目になったとしても、どんなに怨みに囚われて、どんな物語に囚われても。
 優しさと暖かさを愛し、なんとしてもそれとの繋がりを求めることは、それとは関係の無いこと。
 いいえ、もうそんなことすらどうでもいいんです。
 奔れ、奔れ、一刻も早く、あの人の元へ。
 もう、諦めたりなんかしない。
 もう絶対に、捨てたりなんかしない。
 わからない振りは、もう沢山。
 私が一番求めているのは、優しさと暖かさ。
 それを、誰かと共有したい、みんなと一緒に生きたい!
 そしてもう、私は既に優しさと暖かさの造形を忘れてしまっても、それでもこうして言葉がある。
 なんとしても。
 なんとしても。
 ありがとうって言いたいんです。
 御礼を言いたいんです。
 それは、私が死ぬための言葉なんかじゃ無い。
 それは。
 
 それは、私がただ、生きたいがための言葉なんです!
 
 なんとしても、優しさと、暖かさを求めたい。
 なんとしても、あの人と逢いたい。
 それが、生きるということと直結していることを、私は初めて知りました。
 直接的にはもう、私は優しさと暖かさの実感がわかりません。
 でも、そんなことは関係無いんです。
 本当とか嘘とか関係無いんです。
 私は微かな記憶を頼りに、人の仕草を猿真似してでも、私が求めていることを明らかにするんです。
 奔って、奔って、奔り抜けてやる。
 もう誰にも、私にも、自分が優しさや暖かさや人を求めることを諦めただなんて言わせない。
 もう、騙して隠して、黙っている訳にはいかないんです。
 
 
 なんとしても。
 私は!
 
 夏目様の優しさに、応えたいんです!!!
 
 
 
 私が求めているのは。
 私を暖かく受け入れてくれる誰かでも無く。
 優しくして貰うことでも無く。
 
 
 優しさの応酬を繰り広げられる、この素直に暖かな夏の夜道なんです!
 
 優しくされたら、誰だって!
 嬉しくて堪らなくなって、優しくして返したいって、思うでしょう!
 もの凄い、重圧。
 青く夜を突き抜ける空の剣先が舌を斬りつける。
 夏目様に叫ぶ声が、か細く震えてしまう。
 でも。
 そんな弱くて愚かな自分に構ってなんか、いられない。
 はい!
 私は、人の優しさが、暖かさが、好きで好きで堪らないのです!
 だから・・・
 『夏目様・・・・ありがとう・・・・・ありがとうっ』
 私の願いを、私を、しっかりと、見つけてくれて。
 私はその私のままに、奔り抜けます!
 
 
 『燕は力が弱いから、話せるかどうかもわからないけど、それでもいいなら、行っておいで。』
 
 
 
 私が、優しいものが好きだと言うのなら。
 私が、暖かいものが好きだと言うのなら。
 人が、好きだと本当に思うのなら。
 
 それを証すのは、今、この瞬間の、私自身。
 
 
 夏色に彩られた夢の通い路が、青い空の影を掻き分けて、深い水底から現れてくる。
 
 
 はい!
 行きます!
 絶対に、絶対に、行きます。
 精一杯、頑張ります!
 
 『行ってきます。 夏目様。』
 『行ってきます!』
 
 
 奔り抜けた夜道は短し。
 灯りに祀られた夢の夜もまた短し。
 まるですべてが止まってしまったかのような、素晴らしき重苦しさ。
 あの人だ・・・・!
 喉に力を込め、しかし無様にならないように寡黙を装い、必死に仮面を、そして瞬時に書き上げる。
 無口な子と思われたろう。
 私はただ喋りたくても喋れないだけなのに。
 でも、いい。
 それよりも、あの人と会えて。
 あの人に、無口だけれども、決して嫌なおもいをさせずに済んだ。
 ちゃんと浴衣は着こなせていたろうか。
 見様見真似の即興だったけれど、全力で整えました。
 全力で、真似したんです。
 一生懸命、笑ったんです。
 あの人のために、あの人の優しさに応えるために。
 あの人は無造作に、初対面の私に、優しくしてくれました。
 ああ・・ああ・・・・・・あの人の優しさを・・・私はこうして・・・・・受け取れるんですね・・・・・
 堪える涙から漏れた力が、ゆっくりと、私の顔を溶かしていきました。
 燕の貌と、そして即興で作った祭りの仮面が、穏やかに溶け合い、そして。
 
 私の、なにも意識することの無い、素直な微笑みに溶けていきました。
 
 
 
 
 ありがとう・・・夏目様・・・・・・
 
 
 
 
 
 最高に
 
 
 
 
 
 
 
 最高に
 
 
 
 
 
 
 嬉しかったです
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

『俺には・・誰かに逢いたいっていう気持ちはよく分からないけど・・。』

 
 
 

私も、たぶん、そうだったとおもいます

 
 

でも

 
 
 

『そうだね・・』

 

『僕も好きだよ。』

 

『優しいのも、暖かいのも。』

 
 

『惹かれ合うなにかを求めて、懸命に生きる心が』

 
 
 

− 『好きだよ。』 −

 
 
 
 
 
 
 
 
 

はい

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                              ◆ 『』内文章、アニメ『夏目友人帳』より引用 ◆
 
 
 
 

 

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                            ■■ 友の夢は深く奔りて 1 ■■

     
 
 
 
 
 『どうして・・俺にしか見えないんだ・・・・・・あんなに・・・・あんなに・・・・
  ・・・どうして俺は・・・見えてしまうんだろう・・・』
 

                              〜夏目友人帳・第六話・夏目の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 嗚呼・・・もう駄目だ・・
 
 
 乾いた赤銅色の空が、仰向けのままに毒を注ぎ落としてきた。
 旋回する黒い影に一片のぬくもりも見えず、ただ懐かしさだけに手を伸ばしていた。
 ひび割れが激しさを増す。
 一切の力が抜け、その代わりに地べたに張り付いた羽毛の先のその地響きだけが感じられる。
 灼熱が、深々と広がる。
 それでもあの黒い影は、大空を青いままに飛んでいる。
 懐かしくて、愛しくて。
 次第に広がる草いきれと同化していくのを感じていた。
 訥々と途切れていく吐息のひとつひとつを抱き締めていた。
 涙は無い。
 虚ろに開き角度を広げていく嘴の囀りは、もはや千切れた羽先を看取る送辞になりつつあった。
 
 - 落ちる瞬間の長きを、すべて覚えている -
 
 ほんの一瞬だった、とは思わないほどに、それは饒舌な律動を刻んだ。
 ずるずるとなにがか剥けていくような、そしてただそれだけのような感覚。
 ひとつひとつ丁寧に引き剥がされていくのに、いっこうに新しい風を感じることが無い。
 どさん
 もの凄い低い音がそして、剥がれ落ちたものをすべて掻き集め、強引に押し被せてきていた。
 落ちた土塊の上に埋もれながら、まっさらにさらけ出されるままに、死までの時間の中にいる。
 声が出ない。
 囀る気が起きない。
 呆然とした力に貪られ、食い破られるままに、もはや眇めに空を見つめていた。
 死ぬ、死ぬ、死ぬ。
 ゆっくりとひとりでに閉じていく瞼に、精一杯にたおやかに、そう語りかけて、私の命に幕を下ろそうとした。
 
 地響きが、止んだ。
 
 暖かくて、恐ろしい、巨大な五本の指が空を覆い隠す。
 死神様って、こんな面白い形をしていたのかと、微笑みを以てそれをみつめていた。
 随分、優しいのね。
 こんな私でも、死というのは荘厳な儀式であって、だからその儀式そのものに対する敬意として、この
 優しい掌は翳されているのね。
 死に額ずけば、私は優しい死神様の懐に抱かれ、そして成仏出来るのかもしれない。
 こんな私でも・・・こんなちっぽけな私でも・・・死ぬときだけでも・・せめて・・・・
 無造作に、ひょいと摘まれた。
 乱暴さも優しさも無い、ただ当然のように、軽々と引き上げられた。
 しぜんに、視界の景色がぐるりと変わる。
 三途の川か、はたまたお花畑か、この無機的な回転の中に見えるのはなんなのか。
 けれど、目の前に顕れたのは、巨大なふたつの黒い瞳だった。
 あまりにそれは大きすぎて、随分それが私をみつめているということに気づかなかった。
 頭の中には真っ黒な帳が落ち広がり、しかしそれは漆黒に一点の白墨を投げ入れたようにして、開く。
 みてる。 この目は私をみてる。
 -- 嗚呼 喰われる
 断固として、心が溶けていくようだった。
 優しさなんて、無いじゃない。
 嘘よ、優しさなんて、求めてないじゃない。
 ただただ、早く楽になりたかっただけじゃない。
 いいわ、好きにして。
 喰われるだなんて、最悪な死に方だしその怖気だけで死んでしまいそうだけど、だからもう殺して。
 これ以上、あの空に浮かぶ黒い影を見たくないの。
 ううん。
 見られたく、ないの。
 妙に簡潔にまとめられていく心情。
 変に露わにされていく真情。
 ずぶずぶと渦巻いている頭の中の律動に引きずられ、精一杯に叫ぶ言葉は稚拙の限りを尽くした。
 そうよ・・こんなの・・私の気持ちを表してるんじゃ無くて・・それが出来ないことからのただの苦し紛れ・・・
 目の前の巨大な瞳が死の美しさに縁取られれば縁取られるほどに、私の中は透明に渦巻いていく。
 心底、自らの汚辱を嫌い、真摯にそのためだけに死化粧で飾る指先に想いの光を灯していく。
 自分に寄り添うことが出来ないからこそ、死にこそ縋ってしまう。
 死に誠心を捧げるからこそ、美しい生を遡って築いていく。
 
 傲然と、ふたつの瞬きが、私を貫いていく
 
 私の誠実とも見栄とも、愚劣さとも逃避とも知れぬ様を完全に無視して、その五本の指は私を摘む。
 無造作。
 そこには優美さも酷薄さも無く、ただの動作だけがあった。
 摘まれた私は一気に空の高見へと釣り上げられ、そして襤褸雑巾のようにして、ふっと、巣に戻された。
 顧みたその人間の後ろ姿は、ぞっとするほどに黒ずみ、そして木漏れ陽の中で輝いていた。
 足首の周りに出来た擦り傷の生々しさが広がる。
 千切れた羽の空隙の向こうにその人間のふたつの瞳は消えていった。
 血腥い光洋たる香りが戻された巣の中に馥郁と広がる。
 兄弟達の好奇のうちに光る優しさの中に死神様の掌の感触は消えていった。
 違和感だけが、遺った。
 なぜか敗残のおもいだけが、許されぬものとして、未だ小さな翼に刻まれていた。
 
 そんな私を、青空の中の黒い影は酷薄に優しく殺してくれた。
 
 『私についた人の臭いを嫌い、親鳥達は巣から去っていきました。』
 
 幼き兄弟達は今までと大して変わらずに、私を同胞として扱ってくれていた。
 清浄な巣の中にいくつもの汚点を見つけることにかけては、その中に住む者に敵う者は無い。
 私達兄弟は、親鳥達が創り上げた潔癖な巣にも汚れがあることを知っていた。
 それゆえに、私が持ち込んだ汚れも、彼らにとってはその中のひとつにしか過ぎなかった。
 だから私も、そうした。
 私だって、今までずっと、そうしてきた。
 兄弟の誰かが巣の中で糞をし、親鳥が片づけるまでの間の臭気に満ちた時間を共に過ごしてきた。
 私達には、それは当たり前だった。
 だから私も、そうした。
 私だけが特別では無いのだと、この汚辱の刻まれた翼は当たり前なものなのだと、素直に思えた。
 兄弟の誰も、私を避けなかった。
 私達は、ただ血を分けた兄弟だった。
 この汚れた巣の中で、私達は抱き合っていた。
 そして、真に汚れていたのは、清浄に作られた巣そのものだったと、知る。
 親鳥達は、私と、そして私がもたらした臭いにまみれた他の子達も、捨て去った。
 綺麗に贅と誠を尽して築き上げた、その巣にしっかりと蓋をして。
 親鳥達に恨みは無い。
 そんな暇と時間は無かった。
 青空から切り離された巣箱は、じっと崩れ往く時の流れの住居となった。
 嗚呼・・・みえる・・・・破れた巣の間から、透明に青く聳え立つ大空の影が・・・・
 囁き合うその幼きぬくもりだけが、私達を僅かに繋いでいた。
 抱き締め合い、懸命に、生きた。
 
 生きなくちゃ
        そうだよ、生きようよ、みんなで
   うん、生きよう、生きよう!
 
             生きたいよ! 生きたくて堪らないよ!
 
 ひとつひとつの汚辱が巣の中から剥がれ落ち、その汚れの元になった雛に覆い被さってくる。
 巣がもう、ボロボロだ。
 もはやその汚い巣の残骸だけが、私達の纏う唯一のものだった。
 青空が覗けてみえるなんてものじゃ無い、私達が青空の中に一点ずつへばりつく汚れそのものだった。
 全身全霊が、残酷な青い光に晒され、酷薄に浮き出る黒い影に射殺されていく。
 みんなバラバラになりかけていた。
 みんなそれぞれ、青い空の虜になって、自分だけの罪と罰に逼塞しつつあった。
 なのに。
 それなのに、私達のこの手は・・・・なによりも強く強く結び合ったこの手は・・・・離さなかったのよ・・・・
 足掻いて、足掻いて、泥塗れに、血塗れになって、生きて、生きて・・・
 一羽、そしてまた、一羽。
 自分の隣にいた兄弟の息が絶えていることに、気づいていった。
 最後に残った私とあの子は、微笑み合った。
 私達、空、飛べなかったね。
 こんなに頑張ったのに、お父さんとお母さんと一緒に、青空の中で生きられなかったね。
 ごめんね・・私が独りで巣から飛び立とうとして、それで巣から落ちて・・
 全部私が悪いのに・・・みんなは悪くないのに・・
 ううん・・私がお漏らししちゃったとき・・一緒に謝ってくれたじゃない・・・
 面白半分に巣を突いて大穴空けちゃったときだって・・・真っ先にかばってくれたじゃない・・・
 ごめんね・・
 うん・・・ごめんね・・・
 私達は、初めて、泣いた。
 泣きながら、笑った。
 お父さんと・・お母さんの・・・顔・・覚えてる?
 うん、覚えてるよ。
 私も・・・覚えてる・・ 
 逢いたい?
 うん・・・・・逢いたい・・・逢いたい・・よ・・
 きっと怒られるよね、巣をこんなにしちゃってさ。
 あは・・でも・・・おとなしく巣で待って・・・たんだか・・ら・・・・そ・・んな怒らな・・い・・か・・・も・・・・・よ・・
 そうかもね・・
 そう・・・だ・・・・・よ・・
 ずっと、ずっと、笑い続けた。
 
 
 あの子の最後の笑い声は、真夏の昼空に瞬く涼風に掻き消されて、聴くことはできなかった。
 
 

それでもまだ、青い空は優しく輝いている。

 
 
 

『悲しくて。』

 

『悲しくて。』

 
 

『そして、私は。』

 
 
 
 

『鬼となってしまいました。』

 
 
 
 
 
 親鳥の捨てたボロボロの巣の欠片を抱き締めて、最後の最後まで生き続け。
 そして最後に、私以外のすべてを失ってしまった。
 まだ地べたはあり、まだ青空は其処にあるのに、感じぬように努めた恨みだけが手元に残った。
 鬼と、なった。
 すべてを喰ろうてやる。
 襤褸布の巣を引き千切り、同胞の骸を踏み崩し、地べたへと転げ落ちた。
 翼のもげた、炯々と濁る瞳の先に牙を突き立て這いずった。
 生きたいとも、死にたいとも思わなかった。
 

 『私は遠い遠い昔、鳥の雛でした。』

 
 中身の無い、言葉だけの過去を狼煙のようにゆらゆらと掲げ、その煙の元の炎に身を投じていた。
 燦々と降り注ぐ青い光の下で、ずっと蹲り続けた。
 脳漿に滾らせるは、憎悪。
 見果てぬ未来への憧憬が、耳を劈くほどの蝉の音に溶けていた。
 親鳥達への憎悪という言葉をなぞりながら、ただただ悲しみに打ち震えながら、無造作に書き綴った。
 それは、恨みの物語。
 哀れで愚かな、巣の中で死んだ雛達の健気な物語。
 なぜ、親鳥を罵らないのだろう。
 なぜ、親鳥をそれでも愛しているのだろう。
 嘴の先に牙を生やし、火を吐き極悪な姿となって描かれる親鳥の姿は、なぜか無機質だった。
 知りたかった。
 逃避、怠惰、愚劣、誠実、美、正義。
 様々な胡乱な言葉を描き続け、くるくると突き立てた爪の先に手応えの無さを感じていた。
 
 私は、なぜ自分が鬼になったのか、まるでわからなかった。
 
 鬼にならなければならない理由を延々と綴っていながら、それだけしか見つからなかった。
 あの青い空に浮かぶ黒い影は、今日も変わらずに優美に泳ぎ続けている。
 土塊から滲み出た茨が背を刺す。
 身動きひとつが鋭い痛みを導き出す。
 悲しかった。
 ただただ、悲しかった。
 親鳥に、棄てられたことが。
 こんなに、懸命に生きてきたのに。
 親鳥が与えてくれた巣箱を、必死に守り続けてきたのに。
 それ以外の生き方を知らなかったからこそ、それ以外の世界に飛び出そうとしたのに。
 それなのに、親鳥達は、綺麗で汚い巣箱ごと、私達を捨て去った。
 なんのために・・なんのために・・私達はあんなに・・・・
 兄弟達と必死に生きようとしていたときには、わからなかった。
 だって、必死だったのだもの。
 いいえ、わかってしまってはいけないことだと、しっかりとわかっていたのだから。
 どこかでずっと、信じていた。
 親鳥達の慈しみが、ちゃんと私達の懸命に生きる様と繋がっていると。
 兄弟が想い合い、親鳥を慕うことの優しさこそを、すべての根源とすることが出来ると。
 だから、必死に頑張れた。
 呪いを、真実を暴くことよりも、それは私達が生きることに於いて、最も大切なことだった。
 それこそが、この小さな巣の中の生命が、広大な青空の中に生きるために必要なことだった。
 そして。
 
 それを共有していたのは、私達兄弟、小さなの巣の中の同胞だけだった。
 その巣を生み出した親鳥達、あの青空の眷属は、全くそうでは、無かった。
 
 親鳥は青空のために生き。
 雛鳥は青空のために死んだ。
 
 あの青い空は、一体、なんなの?
 
 
 私達は一体、なんなの?
 
 
 
 白く剥けたふたつの瞳が 鬱蒼と黒い闇を背負う
 鬼となった理由など知らぬ
 ただ鬼として必死に生きる理由があるならば ただ 生きるのみ
 悲しくて  悲しくて 
 
  
 
 
 
 どうして 一緒に生きてくれなかったの
 おとうさん おかあさん ひどいよ
 私達よりも 大事なものなんて あるの?
 この巣箱は なんのために 作ったの?
 私達がいる場所こそが 私達家族のいる場所でしょ
 私達がここにいるためにこそ 巣を作ったんじゃないの?
 それとも この場所のために あの青い空のために 巣を 雛を 作り生み育てたの?
 どうして 私達を捨てていくの?
 誰も 私達のために青空を捨ててなんて 言ってないのに
 私達はただ おとうさんとおかあさんと一緒に 青い空を飛び回りたかっただけなのに
 
 青空に浮かぶ影は常にこう漏らしている。
 しょうがなかったのよ、と。
 人の臭いがついた雛と巣は皆から嫌われ、やがては排斥されてしまうのだから、と。
 しょうがなかったのよ。
 しょうがなかったのだ。
 そして雛鳥も、懸命に健気に、それに頷き、置き捨てられた場所で必死に生き残る。
 そう
 私達は、それでも生きてるのよ。
 それでも、生きなくちゃ、ならなかったのよ。
 たとえ泥水を啜り血を零しても。
 親鳥に棄てられ、皆に嫌われ排斥されようとも、蔑まれようとも、憎まれようとも。
 あの青空の黒い影を、目指して。
 そして。
 その黒い影のぬくもりも、青い空の光を見失ってさえも。
 この地べたの茨の地獄に埋められるしか無くなっても。
 
 私達は、生きてるのよ!
 
 
 ああ
 そうか
 
 だから私 鬼になったのか
 
 親鳥達を 死んでも 許さない
 
 愛していたんだ
 親鳥のことも 青空のことも 兄弟のことも 自分のことも
 全部 全部
 
 大好きだったのよ
 
 そのおもいを 私の 私達兄弟の すべてを ただの形骸のものとして扱った親鳥達を 
 私は 激しく 憎んだ
 
 私は親鳥のために、青空のために生まれてきたんじゃ無い。
 私はただ、私だけのために生まれてきた。
 それは私の大切な幸せ。
 でも、その幸せを独り占めすることよりも、それをみんなに分け与えることがより嬉しいことを知る。
 愛しかったのよ、みんなと一緒に、笑いさざめきながら、幸せに生きることが。
 愛しかったのよ、そんなみんなのことが。
 私は、私達兄弟は、親鳥のために、青空のために生まれてきたんじゃ無い。
 だけど、親鳥のために青空のためにも生きようとすることが、真の幸せだということを知った。
 その真なる幸福の中での笑顔にこそ、すべてがあった。
 爽やかに美しく、涼しげな緊張と緩やかな安堵、そして愚と賢の狭間で伸び伸びと生きていた。
 なのに。
 
 そのすべてを踏みつけにして、私に与えられた大切な幸せを奪い。
 それを勝手に切り盛りし真の幸せを形骸にして、ただ優しさと慈しみへの奉仕を求めるだけならば。
 この青い空の中の黒い影への忠誠を強いるだけならば。
 
 私は私の幸せと失われた命と、そして見果てぬ尊厳のために、服わぬ鬼として生き尽くしてやるわ。
 
 生きたいとも、死にたいとも思わなかった。
 
 私が此処に存在していることだけで、私は鬼だった。
 私が此処にある限り、私が鬼である限り、この青空の下の黒いふたつの浸みが消えることは無い。
 
 
 誰にも。
 
 私達同胞の幼く愚かな雛の存在を、消させてなるものか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 とあるとき。
 闇への隠従を潔しとし、蹲り続けたその日々の連続の中に。
 生きろ、という声を聴いた気がした。
 辺りをぐっすりと眠るようにして見つめると、その声の出所は目の前に置き据えられた食べ物だった。
 誰が置いていったのか、それは私には当初わからなかった。
 目の前に広がる光景の茫洋としたもののひとつとして、置いていった者の姿は映っていたのだろう。
 私は初め、これは供え物だと思った。
 青い空から舞い降りた親鳥が捧げていったものなのかと思った。
 そして、経を唱える代わりに、懺悔のひとつやふたつを真摯にこなしていったのだろうと。
 自分達が棄てた子達への懺悔。
 それは、赦しを求めてのことでは無い。
 それはきっと、許しを求めてのこと。
 どんなに誠心誠意謝ろうとも、それは最終的には、でもしょうがなかったのよ、という保身でしか無い。
 この供え物は、あの巣での生活の頃となんら変わらない、私達への餌だ。
 棄てた雛への罪の意識があることが、今の親鳥達の青い生活をしっかりと支えているのだから。
 それは、雛達の犠牲の上にある自らの日々への感謝。
 その日々の生活を贈ることの許しを得るための、ただの墓参り。
 許すものか。
 誰が許すものか。
 なにも間違っていたとは思っていないんだ。
 辛く辛く大変なことをしたけれど、苦しくて堪らなかったけど、当たり前のことをしたと思っているんだ。
 しょうがなかったんでしょ? 自分達が生きるにはしょうがなかったって言いたいんでしょ?
 それでも親鳥を信じていた、雛のおもいを踏みつけにして。
 しょうがないよ、私達、我が儘言っちゃいけないよねって、綺麗に言える雛の真意を利用して。
 私達は青空との繋がりを棄てたくなかったからこそ、見栄を張って必死にそう言ったのに。
 でももうこういう事態だから、それは完璧なものではなり得ないと覚悟していた。
 だからこそ、親鳥と兄弟と共に手を携えて、それでも懸命に努力して工夫して、青空と繋がろうと。
 だって家族なんだもの、みんなで生きていこうって、そう教えられてきたし、そして、そうしたかったよ。
 なのに、親鳥達は、完璧な青だけを望み、そして汚点となる私達だけを棄て去った。
 そして、青い空の眷属はそれを許し、それを許さない者をただ優しく処刑していく。
 その青空から舞い降りた酷薄な黒い影の罪を、私は決して許さない。
 そして、それを続けようとするための供物など、腐るままに放置しよう。
 無論、手つかずのままの供物をみて吐く、その黒い影共の溜息の色など容易に知れる。
 
 なのに、私はそれが、怖かったんだ。
 ずっとずっと私は、私達兄弟は、それでもその真っ青な溜息にこそ抱かれたかったんだ。
 私達は、ただずっと、それでも、青い言葉で、私達自身をも責め立てずにはいられなかったんだ。
 どうしても、親鳥の所業に頷いてしまう。
 しょうがなかったんだよって、どうしてもなにも考えずに許してしまうのよ。
 私は。
 その青く滾ったふたつの瞳と向き合うのが怖くて、親鳥を恨む今でさえ、その恨みに自信が持てない。
 なんで私は、鬼になったんだろう。
 わからない。
 怖いから、目を背けてしまう。
 闇の中に蹲る小さな鬼は、私にさえ、見捨てられていた。
 親鳥の姿なんて、見えなくて当然だった。
 
 
 
 − 雨がぽつりと、鼻頭を叩いた −
 
 
    懸命に、生きたい。
 
 

 私は真っ直ぐに、鬼として、生きていきたい。

 
 
 
 
 食べ物を置いていったのは、人間だった。
 ただ無造作に。
 私はその餌の向こうに、何千何万もの陳腐な物語を並べ立てていた。
 憎悪で猛り立った。
 その人間に、では無い。
 その向こうに見える青い物語に、そして、そこから舞い降りてくる罪深い餌の匂いに。
 空腹など、とうの昔に忘れてしまっていた。
 なのに、目の前に転がる食べ物に晒されると、腹が空かなくてはいけないような気にさせられた。
 どうして・・どうして・・・
 血の滲む涙が頬を歪めて零れ落ちた。
 どうして・・おとうさんとおかあさんは・・・私達を棄てて・・・・
 がちがちと嘴の中で燃える剣戟の響きが増幅される。
 わからないことなど無い、わかるからこそ、それが許せない。
 間違ってる、間違ってるよ、絶対に。
 凄惨に伸び散らした髪が重い。
 白々しい稚拙な理屈を弄び、頭の中の芯だけはぶれることは無かった。
 ただただ。
 爛々と大仰にひけらかしたふたつの瞳の奥で、私はずっと、別のことをおもい続けた。
 呪いを唱えながら、ただ、その尖った口調の中に溶けていった。
 どうして・・・私は・・・・・・
 それでも・・・
 
 独りで生きたいって、思ってしまうんだろう
 
 馬鹿馬鹿しい限りだった。
 青い空の中の黒い影は、ずっとそれしか求めていなかっただけなのに。
 愛や優しさなんて、孤独に罪深く生存競争を勝ち抜く自分を許すための、ただの糧にしか過ぎなかった。
 清浄な巣箱を愛しく作り、雛を優しく育てるのも、みんなみんな、同じことだった。
 みんなただの、方便でしか無かったのに。
 そしてその仕組みを誰にも気づかれないように、そして自分にも気づかれないように隠蔽してるだけ。
 それは、偽善ですら無い。
 
 私は、その自分の綴る物語に、自分が心の奥底から惹かれているのを、知らずにはいられなかったの。
 
 そして。
 それに惹かれていながらも。
 そう生きようと思う自分こそが、憎くて、憎くて、どうしようも無かった。
 許さない。
 そんな私としか生きようとしなかった親鳥達を、私ごと呪ってやる!
 人間は毎日途切れること無く、私の前に生きろという言葉を無造作に置き続けた。
 気が狂わんばかり、ということは無かった。
 ただ静かに、視線の先に置かれたものに、私は溶け入っていた。
 夏は過ぎ、さらにまた夏が来て、夏が来る。
 延々と夏の終わりと始まりの繰り返し。
 夏が終わると、その次にはまた夏が来るのよ。
 自分の子供達と一緒に生きられない親って、なんなの?
 でも、自分の愛したものと共に死ねない私って、なんなの?
 どうして、生きられないとか死ねないとか・・・そういう・・・
 しと しと しと
 文字を振り撒いたような雨が土を穿つ。
 
 目の前の人間の顔が よく見えないよ
 
 綺麗に生きて、綺麗に死んで。
 それが最上の生き方なのかもしれない。
 わかっていたことをわからないままにごねていただけじゃ、駄目だったのかもしれない。
 そう、それも、わかっていたことの、ひとつ。
 でもそう言ってしまえば、そういう私の見苦しさしか見つけることは出来なかった。
 私は、自分がひとつの呪いにすべてを込められるような者では無いことを、よく知っている。
 だったら・・
 誰かを恨むのも、誰も恨まずにひっそりと懸命に生きることも、同じなのではないの?
 生きるとか、死ぬとか、まだ、全然わからないのよ。
 ざあ ざあ ざあ
 嘘を吐くようにして雨が土を溶かす。
 まだ目の前の人間の貌がわからない。
 いっそ取り憑いてやろうか。
 見て、凝視して、目の前のものと溶け合って、それですべてお終いにできないだろうか。
 そんなこと微塵も思っていないくせに弄する、そのような言辞の浅ましさしか、やはり見つけられない。
 けれど、そうしてなにかを必死に手探りで探している自分だけは、よく見える。
 終わりが終われば、また同じ始まりがある。
 気付いたときには、私は取り憑いた人間に乗って、そのまま素知らぬ顔で空を飛べるかもしれない。
 なにも考えなければ、なにも感じなければ、ただ生きることに専心すれば、あるいは・・・
 
 
 だけど。
 
 目の前に突き出された、酷烈な夏の恵みを超えていくことは、出来なかった。
 
 
 藪の中に蹲る私の体を、あの五本指の死神様が押さえつけている。
 動けない・・
 そして・・・
 だから・・・・
 
 その目の前の人間の顔を見つめることから、逃げられなかったのよ。
 
 
 
 
 このとてつも無く深い憎しみの向こうになにがあるのか。
 それを、鬼となった私にはわからないということを、ただ、知っていくだけだった。
 
 
 
 
 
 

『私は、鬼となってしまいました。』

 
 
 
 
 
 
 
 
 

なぜだろう

 
 
 
 
 
 
 
 

このまま終わりたいと、そう思える自分が。

 
 
 
 

それが私にだけは、見えてしまうのは。

 
 
 
 
 

ふっ

 
 
 
 

私の顔に、隙間が出来る

 
 

貌がひとつ、描かれ被せられた

 
 

− 燕 −

 
 

細書きされた貌が文字になる

 
 
 
 
 

それはなんとも頼りない

 

けれど

 
 
 

夏の風にそよがれて

 
 

なんとも心地良い、小さな面だった

 
 
 

 

 
 

嗚呼・・・

 
 
 
 
 
 
 

 

 

『何処・・?』

 
 

『あの人は何処・・・・?』

 
 
 

『今日は、あの人は来てくれるだろうか・・・』

 
 
 
 

黒ずんだ羽が零れ落ちるのも構わずに

 

私は、突き抜けるほどに、この手をそっと、伸ばしていた。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                                     ・・・以下、第二部に続く
 
 
 
 
 
                              ◆ 『』内文章、アニメ『夏目友人帳』より引用 ◆
 
 
 

 

-- 080811--                    

 

         

                                ■■ こんらんした! ■■

     
 
 
 
 
 ごきげんよう。(挨拶)
 
 
 最近、暑いですね。
 でも、気づいたんですけど、薄着をすれば結構涼しいんですね。
 冷たい麦茶を飲めば喉の渇きも収まりますし、パソコンを付けなければ室温も上がりません。
 アイスクリームも冷たくて美味しいですし、かき氷もいけます。
 ああ、そっか、涼しくすれば、涼しくなるんですねぇ。
 はい。
 今日も暑さのあまりに思考回路がある時点で止まっている紅い瞳でお送り致します。
 
 
 ◆
 
 五輪、五輪。
 北京五輪です。
 あ、覚えてた、てかちゃんと思い出してるよこの人、思い出してるとか言ってる時点でちゃんとして無いよ。
 でもちょっとここんところ忙しかったので、開会式しかまだ観てないのですけれどね、これ。
 まだ、とか言ってますけどこれから試合とかちゃんと観るつもりがあるかどうか、疑わしいですけどね。
 まー、開会式、凄かったですよ、それでいいじゃないですかもう、柔ちゃんとか最近聞かなくなったって
 別にいいじゃないですか。もうお母さんですから。いいじゃないですかもう。
 そう、開会式ですよ、開会式。
 あれ、なんか、私が観たことある開会式の中で、一番凄かったと思いました。
 ぎゃー。
 そんな感じ。 どんな感じだ。
 あれだけダイナミックに、なんていうかな、ひとりひとりの人間を感じさせない、なにか巨大な「動き」という
 ものを表現してて、んー、なんか、個ばっかりに光を当てていては絶対に出来ないものが映し出されて
 いたというか。
 なんか中国っていうと、なにかとぎゃーぎゃー言われてて、それでまぁ、空気的に私も色眼鏡かけてる
 ことも無きにしもあらずだったけど、んー、無意味だなぁってつくづく思った。
 これ、いいじゃん、とっても。 なんか、全然違うじゃん?
 うん、なんか、素直に楽しみたいなぁって、思った。
 色々政治的問題あるし、それで色々と行動とか起こしたり起こされたりするのはわかるし(サッカーの
 アジアカップのときもそう思ったし)、基本的に私はスポーツに政治持ち込むのは好きじゃ無いけど、
 それはあくまで私個人の「趣味」の話であって、だからスポーツはスポーツを純粋に愛する、つまり
 政治持ち込み禁止を唱える人達だけのものじゃ無い、すべての人のものだと思うのね。
 だから、政治持ち込み禁止ってのは、ある意味我が儘だし。 したきゃ会員制にしろっての。
 ま、だから逆にいえば、私個人の今回のオリンピックに対する接し方は、政治とは切り離して愉しむ、
 ということを誰にも押し付けずに自分だけがそうする、という感じ。
 そして同時に、この世界には、現在オリンピックを開催されること自体で苦しむ人達や、オリンピックこそ
 が最後の政治的発言の場になるかもしれない人達もいるということ受け止める。
 というか、それぞれは別々のことかな。
 そういう人達の犠牲の上に成り立っている今大会(ってどの大会もそうだけど)を色眼鏡で見るってこと
 は、大会を批判することも出来れば、悪趣味だけど、そういう犠牲をありがたく「頂いて」その分も愉し
 むということも出来るということで、どうあれオリンピックを楽しむ人はすべてオリンピックの犠牲者にとって
 はオリンピック開催者と同じ位置にいるし、その覚悟をしてから、そういうの全部横に置いといて、すっと、
 普通に純粋に競技を楽しむことも出来るんじゃないかな。
 そうして横に置いておいたものが、誰かを必ず傷つけている可能性があることを理解して、ね。
 
 まぁ、観ないですけどね。
 
 
 
 
 ◆
 
 いやサッカーくらいは観ようよ、せっかくなんだし。
 しょうがないなぁ、観ますよ、覚えてたらね。
 てかまぁ、中国でのオリンピック開催を批判しまくってる人は、自分達の国がなんか主催するときも
 同じ類の批判受けても当然、ってのわかってるのかな? 
 てか、それはイコール、スポーツに政治持ち込むなって言ってる人は、そのスポーツの大会がどれだけの
 影響を周囲に与えているかを認識し、それを恨みにおもう人達のおもいを受け止めるべきだし、それを
 抜きにしてただ政治持ち込むなウザいていうか空気読め、っていうのはこれはもう悪意に満ちた悪質な
 自己中心的あり方だよね。 そういうことが言いたいだけよ。 うーん、たぶん、そう。
 
 さて、次の話題。
 
 って言っても、無いなぁ、話題。
 あー、本は借りてきました。
 
 ・獏不次男「津軽太平記 みちのくの鷹 津軽為信一代記」
 ・南條範夫「室町抄/覇権への道」
 ・加藤廣「秀吉の枷 上」
 ・加藤廣「秀吉の枷 下」
 ・岩井志麻子「匿われている深い夢」
 
 まだ読んで無いですけどねー。
 って、歴史小説ばっかし。
 てことで、革新PK久しぶりにやろっかなー、というかやってます。
 最近ゲームはウイイレやってんですけど、なんか微妙に負け越し気味で、ストレス堪ってて、
 なんかすーっとしないかなぁみたいな感じで、こう、久々に虐殺プレイしたいなーって。
 あ、伊達家でやってた途中データあるんだった。
 確か島津・羽柴・織田・上杉しかもう残ってなかったんだよね。
 ウチ(伊達)とこは東北・関東・中部・東海を抑えてて、上杉が北陸にちょろっと残存で同盟中。
 織田が畿内と山陽・山陰・北陸のそれぞれ半分くらいで、羽柴が残りの山陽・山陰。
 残り島津は九州と四国なんだけど、なぜか四国の国人衆と死闘しまくりで全然伸びない。
 島津は羽柴と同盟してるっぽいのに、さっさと織田を叩けー。
 ちなみに我が伊達精鋭部隊は戦法の習得・熟練状況も高く、技術も最高までがっちりやってるので、
 鉄砲隊と騎馬隊の攻撃重視の編成で、織田とかボッコボコにしてます。
 当主政宗の鉄砲隊と伊達成実の騎馬隊の二部隊のみで、織田の十部隊くらいを余裕で撃破。
 ・・・・・き、気持ちいい・・
 長宗我部でやってたときは、これと全く逆のマゾプレイだったのに・・・時代が変わったということか・・(違)
 ちなみに織田は築城技術高いので、城は堅く、野戦向きの鉄砲と騎馬ではなかなか落としにくい
 んですけど、それを逆手にとって、戦法を使いまくり熟練度を上げまくり、落ちそうになってきたら一度
 撤退して、織田方が城の修復と兵士移送をある程度したら再びGo。その繰り返し。強くなる訳よ。
 んで現在は、このままいっちゃっても面白く無いので、適当に織田の前線を寸止めで叩きまくって国力
 を削ぎ、反対方面の島津が勢力伸ばしやすいようにしてあげてます。
 島津と天下分け目の決戦したいもの。早く強くなってね☆
 
 とまぁ、革新をご存じ無い方にはさっぱりなお話ですけれど、そんな感じでしばらく私は戦国です。
 意味わかんねぇだろ。
 
 最近面白く感じるようになってきたお笑い芸人:
 ・髭男爵
 ・ナイツ
 ・オードリー
 ・ゴー☆ジャス
 
 あー、なんか、わかってきた。なんかわかってきた。
 最後の以外。
 マダガスカル!
 訳わかんねぇだろ!
 
 うん。
 
 
 
 
 ◆
 
 アニメ話。
 取り敢えず、今期の視聴ラインナップを。決定版。遅いよ。
 
 
 月: 夏目友人帳・(ソウルイーター)
 火: 恋姫無双
 水: (我が家のお稲荷さま。)
 木: ひだまり365・乃木坂春香
 金: 
 土: セキレイ・(狂乱家族日記)
 日: ゼロの使い魔3・(コードギアスR2)            全10作品: ()付きは前期継続作
 
 
 で。
 んー、前回も言ったけど、なに話そう。
 前回はそう言いつつ、普通に恋姫無双の話とかしちゃってまぁ、なにやってんですか。
 いや、私はほんとはこう、今期アニメについてとか、最近のアニメについてとか、ここ一年くらいのアニメ
 とか、こう、広く取ったり狭く取ったりして、なんかこう、アニメを語ってみたいというか、なんか最近
 カッコつけたくなってきたというか色気出てきたというか、なにかこう、語りたいのです。
 けれどかなしいかな、当の語り手の頭がアホなので、小難しいことを考えようとするだけで小難しくて
 かなわんと、勝手にしっぽを巻いて逃げるような有様で、しかも全然難しくないし当たり前なことしか
 語れてないし、そう、重要なのは個性なのだよ個性、今更それっぽいこと頑張って語ったって似合いや
 しない、私は私なのさ、私にしか書けないものを書けばよいのだー、となって、そしたら、うん、
 
 書くことねーよ。
 
 うん。
 私にしか書けないものっていうか、私に書けるものが無いよ、そもそも。
 だって暑いし。 暑さと戦うのに手一杯でそれどころじゃないのさ!
 ・・・・・や、もやしっ子ぶりを披露してもしょうがない・・・ていうかツッコミどころはそこじゃないか・・
 うーん、なんだろ。
 感想だけ書いてりゃ満足かとばかり思ってたのですけど、なんかここ最近、評価的なことを書いていら
 っしゃる方のブログとか読んでると、妙に対抗心がこうムラムラときてて、私にだってこれくらい書けるやい、
 とかなんか勝手に突っかかってて(脳内限定)、よーしならやってやろうじゃないかさ、書いてやろうじゃ
 ないかい、と勝手に大見得切ってたりして(脳内限定)、あーどうしよみたいな、書きたい、書きたい、
 でも書きたい気持ちだけが先行してて、肝心の「書きたいもの」が無くてね、はは、困ったねこりゃどうも。
 
 ・・・・。
 
 いやだからですね、私にとっては、今観てるアニメがすべてなのよ。
 今観てるアニメからなにか書きたいものが浮かんできて、それと連動してなんか全体的なアニメについて
 とかもうちょい規模が小さめなことを書いてみるとか、そういう感じ。
 で、今観てるアニメは、そんなもの、全然、ぜーんぜん、無い。 すっきり爽快だもの。
 「観る」ことが主体で、なんかそれについて書きたいとか、それを出しにしてなにかを考えとか、そういうの
 全然無くて、すごく気持ちが良く、アニメそのものをそのまんま味付け無しで楽しめるというか、お刺身
 というか、素材むき出し上等みたいな、だから愉しくて、その愉しさを満喫してるのが中心というか。
 うん。
 アニメを哲学とか心理学とか、そういう観点から読み直したり逆に「哲学」「心理学」の中に織り込んだり
 とか、そういう風なことを書いてる人を見ると昔っからすごく嬉しくなるのだけど、最近は嬉しいけど、
 なんかそういうのを読んでもぴんとくるものが無いというか、私にとってのアニメというものが、割と固定化
 されてきてる気がするのですよね。
 なんていうか、それをそれとして保存して理解する前に、いや違うだろ、そんな学問的な距離のある
 見方じゃアニメを観てることになんないでしょが、いいですかアニメを観るってことはですね以下略、
 とまぁ、なんというか妙にアホになってるところが自分の中にぴちんと張りつめてあったりとか、あーいかん
 いかんと頭を叩きながら読み返しつつ、なんか、がくっとくる。
 変にそういった文章と自分の書いてるものを比べて、ずーんとなるというか、私こんなことばっかり書いて
 ていいんだろか、もっとこう学問的にとかせめて文学的にとかさ、なにかこう、もっとさぁ、なんかあるじゃん、
 みたいな、そういう自信の無さが顕れてきてる。
 ・・・バカだなぁ・・・・と、溜息つきながら、妙にその溜息ついてる方の自分になれないというか。
 なんだろ、この心境。
 比較じゃ無いんだよ、比較じゃ。 アニメを観たりなにか書いたりするのはそういうのじゃ無いのよ。
 や、それをわかってるのにわからない、という不可思議な状態なのよね、今の私は。
 変に、比べちゃう。
 ただ今見てるアニメを観て萌えて転げ回ってるだけで、なんも書いてないロクに書いてない、そういう
 自分に自信が持てず、それがさらに遡って今まで書いてきた自分の感想についてすら、あらあらうふふ
 な視線で見つめちゃってる。 
 いや、それ自体は別にいいけどね、読み返して顔赤くしたり青くしたりするのは当然だから。
 でも、その赤くなったり青くなったりするその基準が、どこにあるのか、というのが大事であって。
 
 結論ていうか、ぶっちゃけいえば。
 その基準が、他の人のものとの比較にあってしまうと。
 たぶん私の場合、なんも書けなくなんのよ。
 
 てか、サイト続けるなんて、とてもじゃ無いけど出来ないよ、きっと。
 あんまし話したく無い黒歴史なんだけど、前のサイトはそんな感じで続かなくてやめちゃったし。
 そのサイトではアニメの感想をその作品を見終わったあとに、まとめてなんかまとまった文章で書こうと
 してたんだけど、それは全然駄目で、だけど日記の方は続いてて、だから新しく始めたこのサイトは
 あくまで日記であり、日記=サイトであり、すべてを日記の中でやろう、つまり日記精神でそのまんま
 無造作に色々書いてみようって、そういう感覚でやることにしたんです。
 推敲をしない、っていうのはまぁ、そのあたりからきてることで。
 でもだからって、絶対に推敲しないぞ、ってなると逆に変で、だから無造作に推敲もしよう、要は気の
 むくままってことさ、ってことで、それはつまりどういうことになるかというと、ええと、うん、ええと。
 (思考中)
 それはね、たぶん、推敲することしないこと、それ自体は目的じゃ無いってこと。
 つまり、学問的、かどうかは微妙だけど、まぁそれなりにきっちりまとめて推敲もして、そうして仕上げた
 文章と、そんなの全然無いアホみたいに口から出たまんまの駄文も、この日記内に於いては、全くその
 価値は同じということなんです。
 だから逆に言うとね、私のアホみたいな駄文とか感想に価値を与えられるのは、他ならぬ私自身であり、
 また私しかいない、ということだと思う。
 新機軸、っていうか、私のこの魔術師の工房という「日記」は、そういう新しい価値体系の生産場所
 であり、発信地でもある。
 考えればそれって当たり前なことなんですよね。
 なんのために、自由に発信できるサイトなりブログをやっているのか。
 それは決して、既存の価値体系なりなんなりに参画し、その中での順位を上げていくためじゃー無い。
 既存のものとは全然違う、新しい体系を作りだし、それそのもののネット内での順位を上げていくと
 いうことが、ひとつ重要なものじゃーないかな。
 まぁ私の場合は順位上げはいい加減ですけどね、あははh。
 
 で。
 そういう風にして、アニメに対してなにかおもうことを書き綴る、そういうものは全部違う体系のもので
 あって、だからその中のひとつとして、学問的なアプローチも面白く受け止めるのが、私的に最もナチュ
 ラルなことことなんじゃーないのかな。
 同じ体系の中で議論を白熱させるのもそれは面白いし愉しいけど、あくまでそれはひとつの体系内
 でのものであって、異なる体系対体系の白熱な出会いというのは、それ以上に当たり前に必要なも
 のだよね。
 前に何度か言ったけど、アニメは、それこそそういった無数の異なる体系で受け取られ論じられるから
 こそ、これだけ幅の広がりを魅せてると思うし、だからヲタ的なあり方のみや、学問的アプローチのみで
 やってたら、アニメは分断的な存在になっちゃうよ。
 つまりわかりやすくいうと、色んなアニメの愉しみ方を受け入れ、というか自分自身そうして色んな愉しみ
 方があるということを理解するだけで無く、実際その愉しみに染まってみる、ということが有意義なのかな。
 だから、ひとつの価値体系の価値そのものを論じても意味ねーっていうか、それって自分の価値体系の
 中でのやりくりにしか過ぎねーじゃんというか、だからヲタ氏ねとか意味ねーし、学問的な見方に妙な引け
 目を感じるのもおかしいよ。
 むしろ、わかろうとしようよ。
 ヲタキモいならキモいでいいけど、それよりもまずさ、萌えなよ。 (厳しい注文)
 萌えなきゃ萌えのことわからんし、ましてや萌えてる「自分」のことなぞ絶対わからんよ。
 「自分」を背負わねー奴には、「自分」を真に客観視することなんて出来んよ。
 学問的なアプローチをカッコつけと思うのはいいけど、それよりもまずさ、勉強しようよ。 (頭痛い注文)
 色々教えて貰えばいいし、むしろ学問的に考えられる人は、わかりやすく説明してみるとか、逆に
 面白いじゃん。
 他の人と繋がるのって、たぶんそういう意味で面白いと思うし、自分と同じ考え価値体系の人同士が
 わかり合ったって、んなの全然面白く無・・・って言ったら言い過ぎだけど、でもま、その面白さがわかる
 なら、さらに自分とは違う人と、多少というかかなり不正確ではあっても、自分の考えなりなんなりを紹介
 してどんな形ででもわかって貰おうとするのはやっぱり有意義だと思う。
 
 はぁー・・
 なんだかんだで私も、結構ぐだぐだに小さくまとまっちゃってるものなぁ。
 拘らない気にしない世はまったりなのだ☆、とか言っても、実はそれが過ぎると逆に拘ってたり気にして
 たり世は厳しいのだ☆という脳内世界に浸食されてしまってたりするんだねぇ。
 常に自分の書いてる言葉に向き合って、改めて考えないと、いつのまにか、その自分の言葉が自分の
 世界の中でどのような位置にあるのかがわからず、むしろその言葉に囚われて、それしか無い世界に
 なってたりとか、うわなに抽象的万歳なことを。あわわ。
 ま、つまり、自信持てってことですね。
 どんなアホ文でも、それが存在すること自体に意味があるというかね。
 ほら、よくいうじゃないですか、生態系とかなんとか。
 どんなちっぽけな虫とかなんとかでも、その種が失われることで、その種が埋めていた生態系の中での
 ポジションが消え、バランスが小なりとも変わってしまうって。
 そうそう、だからあれだ、保護ですよ、保護。
 アホ文生産者という弱者的希少種は、保護する必要があるのですよ。
 アホなことも書けない世の中なんて、というアンチ的な詠嘆じゃー無いですよ。
 私はアホアホ言ってますけど、それは世間の手前。
 ほんとはそうして世間と折り合いを付けつつ、しっかりそれは策略でしか無い。
 世間の手前、っていう媚びた言い方自体も策略。
 そういう世間的な多数派的な「なにか」が、希少種派(?)の存在を否定するだけなら、それが策略
 であることには変わりなく、引け目を感じているという罪悪感もまた、世間の目を欺くための、内的な
 仮想敵にしか過ぎないんじゃないかな。
 
 うーん。
 最近萌え狂ってると、そう思う。
 ヲタ自重しろって、前はほんとにそう思って苦笑してたけど、でもそれって本質じゃー無いよね、たぶん。
 たんに萌えてる自分に自信が無いだけだろって、罪悪感って結局そういうことじゃないの?
 で、だから策略もまた必要で。
 たんに人目も憚らずに欲望全開でひゃっほーい、っていうのはそれでもまだ自重しろよ思う。
 だって、人目があるのよ? 人目が。
 その周りの人達を無視しちゃー駄目でしょ。
 ってもそれは、マナー的な意味じゃ無くて、むしろマナー的なものとして押し付けてくるならそれは蹴って
 よろしい。そんなん、押し付ける方が我が儘だし。
 無視しちゃあかんいうのはそういう意味でじゃ無くて、これでさっきの話と繋がるのだけど、そうやって他人
 無視してきゃっほーいってなるのは、結局それだけしか無いというか、発展性が無いっていうか、すごく
 狭いじゃん?
 それは同じ趣味の人達と一緒にきゃっほーいってなったって同じことで、それは他の人と付き合ってるよう
 にみえて、「自分」が周りにもいるのと同じだし、だからやっぱり付き合うべきは、自分とは違う人達って
 ことでしょ。
 まー、それでもいいって言うんなら良いけど、そうなると、マナー的に禁止してくる人と、ただ対決するだ
 けになっちゃうよね。 つかたぶん、きゃっほーいを周囲の人に押し付けてるという意味で同じだし。
 だから、策略とかそういうのが必要なん。
 わかって貰うために、理解して貰うために、そのためにはまずは簡単なところから魅せていくとかして、
 だからコアな部分は隠しておく必要があって、そしてその隠してあるものを理解して貰うためにこそ、まず
 は簡単なところからという、そういう手順なり手管なりを練る空間の中に、初めて「他者」という名の自分
 とは違う人たちの存在が顕れてくるのじゃないかなー。
 
 
 そろそろ疲れてきたので、一生懸命終わらせようと思っていますので、しばしお待ちを。
 
 
 で、なんだっけな、うん、そういう「他者」とのコミュニケーションがあるからこそ、文化は生存し得るの
 だと思うし、で、まぁ、そういう「他者」の存在を想定出来るからこそ、「自分」を感じられると思うなぁ。
 や、それは「他者」あっての「自分」ってことじゃ無いですよ、むしろ逆。
 「他者」があろうとなかろうと、「自分」はここにある。
 坂口安吾とか壱原侑子的に言えば、自分が自分で無いことなど無い、ってこと。
 でもその自分のまんまにきゃっほーいじゃ、つまらない。
 だから、他者を想定し、その中で行動する。
 そうすると、他者と向き合っている自分という、そういう客観視した自分が見えてくる。
 でもその客観視した自分や客観視出来る自分は、決してその想定した他者やそれとの関係のために
 あるものじゃ無いし、それだったらそんなもの、さっさと捨てちゃっていい。
 だから言ったじゃない、自分が自分で無いことなど無い、って。
 つまり、その客観視した自分や客観視出来る自分は全部、自分が自分で無いことなど無いその
 自分のためにあるものなのよ。
 その自分を捨てちゃー元も子も無いし、そんなことしたら他者やそれとの関係の奴隷になるに等しい。
 でも、いつのまにか、気づかぬうちにその奴隷になっちゃってるってことは、やっぱりあるのよね。
 そして自分が奴隷になってるということに気づいていない、ということもままある。
 最近ね、色んな人と話してて、おもうことがある。 (あ・・話が長引き・・・)
 そういったものの奴隷になってる人が、かなり多くなってきてる、って。
 他者やそれとの関係のためにある客観視した自分と客観視出来る自分を育てることこそが、「人として」
 立派なことであり大事なことであり、それが出来ないまたやらない奴はクズだとか平気で言ってる人や、
 またその客観視した自分と客観視出来る自分を生きるあまりにそれに全部注ぎ込んで、やたら攻撃
 的になってる人。
 そして他者やそれとの関係の奴隷になっていながら、すっかり磨り減ってどうにもならなくなってる人や、
 ずっと奴隷の中の最底辺にありながら、いっこうに奴隷であることをやめないやめられない人。
 これがもし、勝ち組負け組というものの正体なら、ものすごく、愚かで、そしてなにより、哀しいよ。
 たんなる弱肉強食の生存競争では無く、他者との関係の中にある客観視した自分と客観視出来る
 自分というものを、それをこそ破壊するためにこそ利用されているんだもの。
 他者との関係、コミュニケーションを重要視しているようにみせながら、その実は全く逆に、孤独を招いて
 いる。 その辺りのことはホリックの感想でやりました。やっちゃった。
 スローライフだのヲタだの、そういういわゆる「コミュニケーション」のアンチとして他者との関係から
 きゃっほーいといって飛び出すという、その圧倒的な孤独。
 しかもその孤独は、同じ考え価値体系を持つ「同じ」人と群れることで、なんとなく隠蔽出来た気分
 になれる。
 そしてその人達を空気読めといって追い出した、「コミュニケーション」の奴隷達もまた、なんか異物を
 追い出してすっきりとしてる。
 でもそんなものは、すぐにボロが出るよね、きっと。
 
 だって他者は、目の前の其処にいるんだもの。
 
 
 理屈先行の、そのくせ屁理屈主体の、そんな感じでお送り致しました。
 てか、やっと落ちた! (おつかれさまでした)
 
 
 
 恋姫無双?
 感想?
 
 呂 布 さ ん 強 し 。
 
 まぁそんな感じ? てかやっぱりあのコが呂布でしたか、正解!
 にしても、薫卓が心優しき少女とか、意表突きっぱなし。 そうきたか!
 賈詡はまぁ、キャラはともかく薫卓勢に配置かぁ・・・ってことは呂布と組むの? 
 無口に眼鏡じゃん! (意味がわからない)
 まぁ鬼に金棒的ななにかと思ってください。
 今回は、呂布さんですね、呂布さん。
 関羽と張飛と趙雲も全然今までのレベルキープしてるんですけど、さらにそれプラス呂布さんでしたよ。
 関羽と張飛ふたりだけじゃこれ旅なんて出来ないんじゃないの? って感じの勝手に気絶したこのふたり
 組にウケて、その臆病者ふたりをイジり倒す趙雲の舌の根も爽やかで、そんな絶好調な三人相手に
 余裕ですよ呂布さん。 てかなんかひとりだけ動き違うし。なんか早いし。でも無口。そこが萌(以下略)
 まずはその威儀のみでふたりを倒し(勝手に化け物と勘違いして気絶しただけ)、普通に冷静なのこり
 ひとりと打ち合っても余裕で倒し(こっちはガチ)、呂布さん最強説開始。
 そして改めてvs三人組でも全くの余裕。 強し。呂布さん強し!
 うーん、なんか三国志ファンであるところの私的には、この呂布さんの強さはなんか嬉しい。
 それでこそ大陸最強!
 もう呂布さんの場合は史実に沿ってるかどうとかより、如何に強いかがこそが、その原作(?)への忠実
 ぶりを示すのだよ! 余は満足じゃ!
 しかもあの絶好調である三人を倒しての強さってんですから、掛け値なしよ。
 まぁ、なにが絶好調なのかは置いといて。 こほん。
 で、さらに無口無垢系な上に不器用だけど捨て犬集めて養ってそのために悪事を働いてって、
 どんだけ強いんですか、どこまで強いんですか、この呂布さんの強さは天井知らずか!
 もうなんか、全方向的に強いですね、呂布さん。
 まー、個人的には、ツンデレ気味な賈詡さんの方が萌えですけどね、というのはここだけの話。
 
 
 って、誰が二度とこんな話するかーっ!  (あんただ)
 
 
 
 
 
 P.S:
 次回予告にて、賈詡さんはツンデレよりもツッコミにその可能性を感じました。 よし。
 
 
 
 

 

-- 080807--                    

 

         

                               ■■友達? そう、友達■■

     
 
 
 
 
 『 まぁ、この手合いを愛らしいとみるか、鬱陶しいとみるかだな。』
 

                         〜夏目友人帳・第五話・にゃんこ先生の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 俺には、友達がいない。
 というか、友達は出来ないと思っていた。
 そう思っていたから、友達というのがどういうものかを考えることも、また誰が友達なのかを考えたこと
 も無かった。
 友達って、なんだろう?
 その自分に問い掛けた先には、なにもみえなかった。
 クラスメイトは、どうだろうか?
 ああ、そうか、これは友達とは誰のことだろうか、という問いだな。
 なのにどうして、友達ってなんだろうっていう問いから始まるんだろうか。
 まぁ、いいか。
 西村や北本はどうだろう。
 ・・積極的に友達では無い、と言い切るのも、はっきりと友達と言える勇気も無いな・・
 なんだろう、クラスメイトって言葉は。
 クラスが一緒、というだけだったら、他にも沢山いるけど、でもまだ、一度も話したことも無い奴らも
 いるし、そいつらとあのふたりはなんだか違う気もする。
 たぶんあいつらとは毎日言葉を交わすし、大体の人となりもお互い掴み始めてる。
 でも、まだなにか、友達と言い切るには足りない気がした。
 いや・・・
 足りないのは、友達の条件では無いような気がする。
 第一、友達とはなにか、という問いを俺はほったらかしにしてるじゃないか。
 
 笹田は、どうだろうか?
 
 ちょっと、抵抗があるな。
 というか、女子だしな。
 いやそれ以前に、委員長か。
 でも、西村と北本と並べると、なんか少しわかる。
 この三人と俺の関係に、それぞれ大差は無いんだ。
 たぶん友達の条件を集めたら、三人ともが俺にとっては同じ位置にあるはずだ。
 なのに、笹田にはやはり一歩分距離を空けてる気がする。
 そう、女、だからだ。
 それは別に女友達というものの存在を否定してるって訳じゃ無い。
 ただ男ふたりと比べた場合に差があるってだけだ。
 つまり、笹田が女、だからだ。
 俺は、友達の条件がどうこうじゃ無しに、そいつと心理的に距離があるかないかで計ってる。
 
 だからきっと俺には、ずっと友達が出来ない。
 俺には、友達はいない。
 
 俺がこいつらは友達だ、って言わない限り、友達は出来ない。
 ああ、そうだな、友達の条件っていうのは、俺がまずこいつらは友達だって言えたかどうかにあるんだ。
 そう言えるかどうかに基準があるんじゃ無いんだな。
 こいつと一緒にいてもいい、いやいたいと、友達になりたいと思うかどうか、そこにある。
 そして。
 そう、友達になりたいと思うかどうかにも、なにか基準がある訳じゃ無いのかもしれない。
 
 つまり、意志だ。
 
 さんと、という妖怪とあった。
 正直、、めんどくさい相手と多くの人が思うタイプだった。
 俺も、少しはそう思う。
 だけど、だからといって、さんとを避けようとか嫌おうなどとは思わなかった。
 俺には、友達はいない。
 普通の高校生にみえる西村達と比べて、さんとみたいなタイプは結構違うものにみえる。
 でも。
 俺には、友達はいない。
 俺が友達の条件を決めて、それで候補者を選び友達を得ていくとして、それが西村や北本のような
 タイプだったとしたら、たぶん俺はさんととは友達にならない。
 だけど、俺はそうでは無い。
 俺にとっては、西村達とさんとは、同じなんだ。
 レイコさんもきっと、そうだったと思う。
 だけどたぶん、俺とレイコさんとでは、決定的に違うところがある。
 レイコさんには、友達がいた。
 それはもう、会う者すべてが彼女の友達だった。
 彼女には友達の条件というのがあったと思う。
 けれどその条件というのは、きっと彼女の目の前に立つ者すべて、というものだったと思う。
 
 しかも、レイコさんには、意志なんか無かったと思うんだ。
 
 俺が大きく息を吸って、なにも感じ無い相手に俺は君の友達だよって言うか迷ってる間に、
 レイコさんならとっくに友達になっていたはず。
 レイコさんにとっては、友達になるなんて、当たり前のことだったんだろう。
 俺はなんだかんだで、友達という言葉に重みを感じている。
 西村達のことを友達と呼ぶことで、なにかが変わり、そしてなにか背負わなければいけない気がして
 いて、それがどんなものかがわからなかった。
 レイコさんは、どうだったのだろうか。
 そういうなにかを、そもそも背負っていたのだろうか。
 さんとの友人に、みくりという妖怪がいた。
 やたらと短気で、しかもお節介というか、いや、むしろさんとに対して厳しい様子だった。
 さんとのなにもかもが気に入らない、あれを直せこれを直せそういうお前のところが気に入らない云々。
 言いたい放題。
 俺には、よくわからない感覚だった。
 笹田なんかもそうだが、どうしてあそこまで他人の中に踏み込めるんだろう。
 相手には相手の事情があったり、また自分とは違う理屈・背景の中で生きているとは思わないの
 だろうか。
 腹立たしさは無かったが、けれど不思議に思っていた。
 レイコさんは、どうだったろうか。
 頭の中に流れ込んでくるレイコさんの姿は、ひどく素っ気無いようでいて、鮮明だった。
 レイコさんはさんとを叱責したり指導することはしないけど、当たり前のように自分の価値観からはっきり
 と物を言う人だった。
 それは、なんだかとても自由な姿にみえた。
 このレイコさんと、あのみくりという妖怪が、なぜだか同じにみえた。
 
 なんだろうか、この感覚。
 
 いつの間にか、みくりがさんとを罵倒する姿が、自然にみえた。
 いやそれは、みくりの言っている妖怪とはかくあるべしという論理に賛同したからでも、あまりにもだらし
 が無いさんと的なものを否定したからでも無い。
 いや。
 みくりの言っていることは概ね頷けるし、さんと的なものをだから否定することも出来るけれど、しかし
 それが俺が彼らと向き合う際の姿勢の根拠にはならないということだ。
 俺は、さんとのことを基本的にはどうとも思わない。
 レイコさんは、さんとのことを言いたいことはあるけど基本的に可愛げがあると思っていた。
 みくりは、さんとのことを言いたいことを言いまくりそれでも変わらない腹立たしい奴と思っていた。
 そして、三人が三人とも、こうしてずっと、さんとと関わっている。
 さんとは、狼狽えながらも、安心しながらも、色々と足掻きながら、俺達と向き合っている。
 みくりがこっぴどく罵り、さんとがおろおろとする、その様子がなんだか、暖かかった。
 
 
 みくりとさんとが、共に連れ立って生きようと頑張っている姿が、みえた。
 
 
 俺の前には、西村と北本、笹田がいる。
 彼らのことを友達と呼べるか呼べないかを考えている俺が、彼らの前にいた。
 そして。
 俺は、自分と同じ秘密を抱える、田沼をみつめていた。
 田沼にはきっと、俺は遠慮無しに、はっきりと厳しいことも卑怯なことも言ってしまうかもしれない。
 俺と同じ人間をみつけて、少し嬉しかったのだから。
 俺は・・
 西村と北本、笹田ともそうだけど、ただなにも気にせずに、友達と呼ぶことも諦めてそのままでいても
 いいんだなんて、思わない。
 みくりがもし、さんとを批判したり責めることをやめてしまったら、きっとみくりはみくり自身を、そう、
 さんと自身に伝えるべきみくるの姿を無くしてしまう。
 さんとがもし、みくりの激しい言葉を右から左に聞き流して、ただみくりと一緒にいる喜びだけに身を染め
 るだけなら、それはみくりの姿を無視し、さらにはみくりに伝えるべき、さんと自身の姿をも無くしてしまう。
 だから俺は、友達について考え続ける。
 そういう、すべてと向き合う自分を無くさないように。
 だから、その自分のすべてのままに、俺は田沼とも向き合っていきたい。
 そして田沼が、その俺と向き合い、田沼も自分のすべてをぶつけてきてくれたら・・・
 
 それが、親友って奴になるのかもしれない。
 
 田沼と同じ気持ちを共有したいだなんて、思わない。
 さらには、俺のことを理解して欲しいとも思わない。
 むしろ俺は、田沼と張り合いたいのかもしれない。
 自分と同じものを持つ、自分とは違う者と、俺は戦い合いたいのかもしれない。
 西村と北本の阿呆らしい喧嘩を、今、そういう風に見直している。
 
 そして俺は。
 自分と違うものを持つ彼らと共に過ごす夏の中に、静かな友情を感じていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                              ◆ 『』内文章、アニメ『夏目友人帳』より引用 ◆
 
 
 

 

-- 080804--                    

 

         

                              ■■独り語りが飽きないと■■

     
 
 
 
 
 旅は道連れ、世は情けないって言うし。 (挨拶)
 
 
 どうも、紅い瞳です。
 夏とか暑いとか言うのもそろそろ飽きてきましたので、通常営業に戻ります。
 戻るって言ったって、どこまで戻るのさ、という疑問はありますけれど、そのあたりのことは全くもう
 風任せということで、きっとなるようになることでしょう。
 今までだってずっとそうしてきた、それで問題無い、無いのだ。
 つまり、そういう風に恥ずかしげも無く言い切れるあたりまで戻れば良いということなのでしょう。
 ・・・・それ、前回までとなにがどう違うんだろ
 そんな感じで、今日も紅い瞳の阿呆日記が始まりますよ♪
 
 
 
 ◆
 
 しかし日記て。
 私、日記の書き方なんてわからないですよ。
 いつも日記書くぞ書くぞなんて意識無いですよ。
 意識しちゃうとなにも出来なくなったり頬を赤らめて駆け出したりしちゃうんですよ、帰れって感じですよ。
 あ・・駄目だ・・・マジわかんない・・・最初の文字なににすればいいのかどう書き出せばいいのか・・
 日記って、別に独り語りっていうか、物語じゃ無いですよね。 (最初の文字は「日」になりました)
 なにかを語るっていうより、ただ喋ってるだけというか、あ、すみません、そうじゃ無い日記を書いていら
 っしゃる方もいますもんね、ごめんなさい、でも私のは違いますのですよ口語万歳喋り倒し〜!
 ・・・・ええ、こほん。
 要するに口から出任せ、じゃ無かった、言ったもん勝ち、これもちゃうちゃう、ええと、なんだろ、まず最初
 になんも考えずに言葉をぽんと出して、出したからにはしゃーない、責任取るか、で、なにを話せば
 良いのかなワト○ン君、となって、なんとなく話が繋がってぽんぽんとなっていくのであって、意味なんか
 無いっていうか意味なんてあって堪るかこんちくしょうとかそういうことであって、図らずもこんちくしょう
 だなんてお下品な言葉を使ってしまい恥ずかしい限りで御座いますわ、と、全然責任なんか取っても
 いない上品への寝返り工作も鮮やかなうちに、こう、飽きてくる。
 
 と思ったら、あんまり飽きてない・・・
 
 でしょ?
 最初にぽんと出した言葉の責任を取って(取ってない)、ずらずらとそういう言葉を並べていった結果、
 飽田、いやこの流れでは飽きるべきだと言う思考の結論を出したのですけども、実際の私は逆に
 なんかアホっぽくノってきて、まだまだいけるっていうか、そういう繋げた言葉と自分の中のなにかはズレ
 てきますでしょ?
 でもね、おわかりかと思いますけど、喋れば喋った分だけ、言葉を出した分だけ、その言葉の通りの
 自分っていうのもまた自分の中には確かに出来てて、その自分を自分らしく無いと考えるのは、そうで
 は無い言葉になっていない自分があるからという理由だけなのですよね。
 別にどっちが優れてるとか、ましてや本当の自分かだなんて無いし、むしろそのふたつは同じものなんで
 すよね。
 だいたい、今自分の中にあるものは、言語化、もしくは語られた自分と、「そうでは無い」自分しか無い
 のはそうだけど、でもその言語化もしくは語られた自分というのは、その次あたりに新しく言語化もしく
 は語られた自分が登場したときに、あっという間に「そうでは無い」自分になると思うのよ。
 だからそれはつまり、語られた自分「では無い」自分というのは、「今現在」語られている自分かそうで
 ないかという事柄の産物であって、実際はなにもかも全部語られた自分にしか過ぎないんじゃないか
 なぁって。
 でもだからといって、じゃあ全部自分っていうのは語られたもので、本当の自分なんて無いと、そう「宣言
 」することに意味があるかって言ったら、それは全然違うし、重要なのはむしろ、でもだから私は自分と
 いうものを常に二分して考えるという意識があるし、それは利用可能な意識であると「宣言」する
 方にこそ意味があるような気がします。
 あーそれじゃ足りないか、二分しなければ見えないモノ、わからないモノがある、ということを意識する
 ことこそが大事、と言うべきなのかな。
 
 つまりええと。
 本当の自分だけを追い続けることで逆にわからなくなることもあれば、
 本当の自分を追い続けることだけを否定することで逆にわからなくなることもある、ということですね。
 
 って、まとめてるし、普通にまとめてるし、随分飛躍してるし、なんか違う気もするし。
 ていうか、嘘がひとつあるし。
 今気づいたんだけどね、普通に嘘吐いてたね、てか嘘ていうか間違い? 
 でもなんとなくわかってたのに適当にスルーして話繋げたからやっぱり嘘?
 うん、なにかというとね、「自分」っていうのは、全部語られた自分にしか過ぎないってのが嘘。えええ。
 全部語られた自分にしか過ぎないのに、語られた自分と「そうでは無い」自分となぜか二分したくなる
 のが人情ってもんさ(意訳)、でもね、そう人情的(意訳)に二分した時点でそれはいわゆる真実に
 なって、で、真実になった瞬間に、それはもう構造そのものが別ものになるというか、つまり、語られた
 の「では無い」自分というものが、なんというか語られた自分というもののただのアンチでは無く、ちゃんと
 それとして存在するっていうか、だってそうじゃないかな? 自分に耳を澄ませば、それが錯覚だろーが
 なんだろーが、たぶん言語化出来ないけど確かにいる自分、っていうものの存在は感じられると思う
 もんね。
 だからね、真実とか真理とか本当とか、そういうの求めてても、それを求めてる自分が紡ぎ出してる膨
 大ななにかをもみつめてかないと駄目っていうか、逆に真実とか真理とか本当とかも、そういう此処に
 存在している自分が紡ぎ出しているもののうちのひとつにしか過ぎない、とも言えるんですよね。
 普通とか常識とか、そういうものを対象化してそれから抜け出すだけじゃ、見えるものも見えなくなり
 ますよーと言いたいのですのよー、とこれは私信で御座います。ほぼ独り言レベル。
 まぁこれもまた逆に、そういうものを対象化(もしくは相対化)して脱出すること自体を否定すれば、
 同じく見えるものも見えなくなるのだから、つまり両方大事なのだよ、両方。 (いつものパターン)
 
 で、いっこうに駄目なんだけれど。
 「と思ったら、飽きた・・・」というオチに繋げようと思ってたんだけど、いっこうに繋がらないってか逸れる・・
 飽きろ〜飽きろ〜♪
 
 
 独り語り、終了。 やめやめ、はーい撤収!
 ・・駄目だ、独りで喋ってるとどんどん自分勝手に・・・(自分で言うな)
 誰か飲みにいきましょー。 (ぉーぃ)
 
 
 
 
 ◆
 
 うーん、日記って難しい。 (なにを・・)
 なんか独りで好き勝手に喋って、飽きたらなんの配慮も無しに適当に終わらせて、それで最後は飲み
 にいきましょう? ふざけんなーーっっ!! (おまえ・・)
 最近この頃つまり最近、よそ様のブログとかあんまし読んで無いので、その、どう接したらいいのか・・・
 ・・・・・全然関係無い・・
 いや、もっとこう、サービスとかした方が良いのかとか、なんかそういうのあるじゃないですか、ありますよね?
 あるような気がしますよね? そんな気がしたんです! 、べ、別に今更って訳じゃ無いわよ!
 ・・・・ツンデレの完成度も低いなぁ・・てかこれツンデレ違う・・
 いやいや、あれですよ、もっと真似、もとい勉強とかした方が良いのかな、もっとブログ読んで頑張って
 こうなんか面白いもの書いたりとか、そういう読者様を意識してちゃんと書いた方がいいのかな。
 いや、それは私らしくねーって。
 読者サービスなんてしたこと無いし、そもそも「誰か」を想定して書いたことはあっても、実際お客様の
 反応をみて色々書こうだなんて思ったこと無いし、てか反応無いし、でも言ったように「誰か」の」存在
 は仮定してあるというか、一応「誰かに読まれている」という意識はあって書いてるんですよね。
 あ、「誰かのために書いている」という意識は、これは全っ然無いんですけども。 これ結構違うから。
 で、なんか最近はその「誰かに読まれている」っていう意識が無いっていうか、ぶっちゃけリアルとかだと
 普通に会って話しゃいーじゃんみたいな感じなので、想像力が逆に減退してるっていうか、だからその
 「誰か」っていうのが不特定というか他者という存在そのものだったモノが、なんだか特定の誰かという
 意味での「誰か」になってきてて、だから日記では「誰かのために書いている」わけじゃー無いから、
 しぜん誰かに読まれているという意識が帳消しにされて、ほんと好き勝手みたいになってる。
 つまりそれって、特定の「誰か」の目以外は気にならないっていうことだったり?
 ん?
 特定の「誰か」って?
 ・・・・。
 もしかして、アニメ?
 ・・・ぇ・・アニメ以外目に入らなくなってるってこと?
 
 ぎゃーあーあー (ぐるぐると駆け回りながら)
 
 
 *いくつか論理の飛躍がありますけど、そこは笑うところだと思いますっていうか、思え、笑え、あはははh
 
 
 
 
 
 ◆
 
 じゃあ、あれだ。
 アニメの話をしm(以下脊髄反射を強引に押さえつけてみました。)
 
 お酒の話をします。
 
 ・・・あんた、アニメが駄目ならお酒を飲めばいいじゃないって感じじゃないですか、いいのかこれ。
 い い ん で す 。
 ・・。
 
 えっと、お酒の話って言っても、どの話をしたかあんまし覚えてない。
 あー、ウイスキーのジョニ赤飲んだ話とか、マッコリとかそういうのもしましたっけ?
 うー、覚えてない、日記の過去ログ読み返すのもめんどくさい、ああ、どうしたら・・ (寝ろ)
 この辺りのは、最近本読んでごろごろしながら飲んでたから、あんまし味とか覚えてないなー。
 あ、本だ、本、本話題があった。
 って、アニメが駄目、お酒が駄目なら本を読めばいいじゃないって感じじゃないですか、いいのかこれ。
 ・・・あれ? こんなこと言ったら、いくつ話題があっても同じじゃ無いですか。
 ん? 話題がいつも同じことが問題じゃ無い? 問題は他に?
 なんだろう、なにかあるはず、それを探るためにこそ私は日記を書(以下いつもの詭弁なので略)
 で、本、本ね。
 前々回くらいの日記でもうとっくに借りた本は読み終わってたので、図書館に行ったら、
 棚整理日は調べてたので回避出来たけど、振り替え休日は気づかなんだーっ! (駄目だこいつ)
 何度目でしょ、閉館の札の下がってる図書館の入り口前で orz ってなったのって・・・・・
 で。 ←涙を拭いながら
 そんな訳で、家に転がってる本を読んだりして誤魔化してましたのよ。
 太宰治の「新釈諸国噺」とか「お伽草紙」を所収してる文庫とか、読んでました。
 うーん、しばらく読まないうちに、太宰も変わったなぁ・・(変わったのはお前だ)
 というか、全然違う風に読めるというか、なんかこう、自分がこれ読んでわかってたことがなんか上っ面
 だった、ということがわかったというか、で、それがわかったのは、今までわかってたと思ってたものがわかって
 いないということと同じだったということがわかった、のでは無く、ただ純粋に今までの読み方とは全然違う、
 それよりも今の私が納得出来る読み方が出来るようになったから、という感じ。
 や、納得っていうのは違うか。、
 その辺りのことは面倒くさいので、省略。(ぉーい)
 いやだって、小説の感想って滅茶苦茶めんどくさいんだもの。 ちょーめんどくさいよ、ちょー! (黙れ)
 
 って、今思ったけど、()多いなぁ今日は、()。 (ツッコミはそこか、ってまた余計なものを・・)
 
 
 
 おしまい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ◆
 
 いや、アニメ話くらいさせろよ、終わるなよ、泣くよ? (泣け)
 って言っても、なに話す?
 恋姫無双?
 うーん、その話もいいんだけど、あんま恋姫恋姫言ってたら、五月蠅くありません? (今更)
 あー・・でも、馬超とか面白かったんだけどなぁ、曹操のエロマフィアぶりもウケたけど、うーん、
 あの馬超の復讐に関しては色々考えられちゃいましたよ。
 たとえばさぁ、嘘ってなによ?って話。
 対峙した人間の心気(神気?)に乱れが無ければ、その人間は嘘を吐いていないということって、
 まぁまずは、その人間が心気に乱れを起こさないように強靱に嘘を吐くことが出来(それを強い意志
 と言い換えも可能)たり、あるいは本人が事実誤認をしていて間違った事実を真実として信じていれ
 ば、確かに嘘を吐いていないと見定めることは出来ても、じゃあなんのために嘘を吐いてるか吐いて
 ないかを問うかがわからなくなる、とか。
 で、まぁ、話的には、馬騰が酒席で曹操により侮辱を受け、そのまま酔った勢いで馬から落ちて落馬し
 て死に、その武人としてあるまじきこの死にざまを自らのためと娘たる馬超のために隠すことを、看取った
 夏侯惇に頼み、そして酒席での出来事から曹操によって馬騰は謀殺されたという噂だけが流れ、
 馬超は曹操への復讐に走り捕まり、夏侯惇が真相を伝えるも馬超は信ぜず、しかし夏侯惇の
 矛先に乱れが無いことを感じ嘘では無いことを悟り、泣き崩れる。
 
 うーん、これをどう、愉しく受け取れるか。
 
 酒席の曹操のアレは、馬騰への侮辱なのか。
 まず大将軍の何進が酒席にも関わらず、曹操の腕を見たいがために馬騰との太刀合いを望んだ
 ところに陰謀があるよね。
 あれ、何進は馬騰に酔いが回ってるのわかってて言ってるよね? その上で馬騰を名指ししてるし。
 で、曹操も曹操で、あれくらい頭が回るんなら、「大将軍の仰せとあらば。」だなんて嫌みを含んだ
 言い方程度で何進が止まらないのはわかってるはずで、当然馬騰が名指しされたら武人として断る
 訳にはいかないことだって、曹操はわかってたはず。
 で、これは何進の曹操を陥れる策、というのはなんとなくわかる。
 馬騰が酔わざるを得ないようななにかもたぶん事前に仕込んでたろうし、小賢しい曹操なら嫌み程度
 の反抗はあろうとも、それで満足しかえって他の事に目がいかなくなるだろうと何進は踏んだ。
 そして実際曹操は、なかなか曹操自身にはマズイことを、そして馬騰にはヒドイことをした。
 「お見受けしたところ酔いが回っているご様子」は無いでしょうよ、曹操さん。
 酔ってしかも武人として試されてるところにそんな事さらに言われたら、酔ってなんかないやいと意地に
 なるなんて、わかりきってることでしょーに。
 曹操自身は純粋に余裕たっぷりに、馬騰のために言ったのだろうけど、でもそれは馬騰という武人の
 ことを斟酌したものでは無い、曹操自らの余裕と才知を出所としたモノでしか無いんじゃないかな。
 夏侯惇が我が主は誤解されやすい、というその誤解というのは、それはある意味で違う。
 誤解とか勘違いされやすいっていうのはつまり、自分というものが他に与える影響を全然考えてないって
 ことでもあって、そういう意味では正直であるのだけど、でもそれはつまり他人を無視してるに等しい。
 少なくとも曹操は、軍師としては駄目かもね。
 
 で、たぶん何進はそのあたりのことも、ぜーんぶわかってたんじゃないのかな?
 そして或いは、馬騰はほんとはなにものか、っていうか何進の手先に襲われてたりして。
 普通なら、それだったらなにも自分の死因を夏侯惇に内密にして貰う必要は無いって考えるけど、
 でももし、馬騰があの酒席での出来事を、今のように解釈し理解していたとしたら、どうだろう?
 何進に無様にいいように扱われ、勘違いされやすいが根は素晴らしい人間と認めている曹操殿さえも
 自分のために何進に操らさせてしまい、ああなんてざまだ、我が愚かさのためにこのような恥を自らに
 負い、さらには曹操殿にまでその片棒を担がせてしまい、面目の施しようも無い、すべては我が不徳の
 為すところ、すべての恥を背負い死のう、だが我が娘にだけは父の面目は以下略、とまぁ馬騰的な
 武人なら考えそうな図々しいプライドが幅を利かせたのかもしれない。 これ、曹操無視じゃん?
 
 うーん、イマイチだな。 ていうかいつのまにか馬騰が責められてる・・・
 
 じゃああれだ、馬騰はほんとに馬から落ちて落馬して落馬死したということにしましょう。
 何進は刺客を差し向けてもいないし、馬騰の杯に睡眠薬とか仕込んでも無かったと。
 じゃ、どうなるかな?
 うーん、曹操が結果的に馬騰を侮辱したことになるのはやっぱりそうだし、何進がそれを意識して
 やったかどうかはともかく、彼女自身の発案自体が元凶になったは確か。酒席で太刀合うの禁止!
 や、ここは何進陰謀説でいきましょう、しかも完全無犯罪な奴で。
 で、まぁそうなると、あの馬騰は曹操が謀殺したという噂は誰が流したかというと、そうですね、何進が
 流したとなるとちょっとつまらないなぁ。
 むしろ曹操自身が流したんじゃないかなぁ、で、曹操の性格を知る何進は曹操がそうするだろうことも
 わかっていた、と。
 ああ、面白い♪ とかあの何進さんなら言いそうだし。
 そして曹操も、それが一番彼女の余裕と才知に見合う境遇を与えてもくれるし、それに殉じること自体
 が彼女の義なんだろーし、てか曹操の場合はむしろその境遇に甘んじるというより、その境遇すら大きく
 抱えることの出来る余裕さこそに義があるというか示しがつくというか、あー、曹操は王だね、王。
 馬騰に死の真相を隠せと頼まれたのだから、それに完璧に応えたまでのこと、噂? そんなものは
 捨て置け。
 んで、その捨て置かれた群衆の中から、西涼の馬騰が一子馬超が仇討ちに推参仕る訳です。
 ならば、踏み潰してくれよう。
 こんな感じでいくと、曹操の人柄がみえてきます。 エロマフィアだけじゃ足りぬのよ。 (笑)
 
 となると、じゃあ馬超はどうなの?
 馬超はただの馬鹿なのだ〜☆、と張飛的に言っちゃうのは御法度。 (笑)
 うーん。
 実は、この今の私の愉しみ方の核には、馬超がいるのよ。
 ぶっちゃけ結論から言うと、この作品に馬鹿はいないどころか、全員何進的立場なんじゃないかなと。
 つまり。
 全部、わかってる。
 わかってて、やってる。
 そういう感覚が、今回のこのお話でぶっちぎりで出てて、面白かったんです。
 馬超にとっては、夏侯惇が嘘を吐いてるか吐いてないか、というそれ自体が重要じゃ無い。
 逆に言えば、だからこそ嘘を吐いてるか吐いてないかだけに拘ることで、見えてくるものがある、てこと。
 だって、嘘か嘘じゃ無いか、嘘を吐いてるか吐いてないかなんて、ツールにしか過ぎないもの。
 同じく、自分がどんなに激昂し感情に囚われそれでしか動けなくなったとしても、その自分という駒を
 使ってなにをどうするかどうしようかっていうのがみえてくる。
 矛先を合わせればすべてがみえてくる。
 それは真実とか本当とかすべてみえてくる、という意味じゃ無くて、その中で自分が今どういう状態に
 なっていて、また周りの人や目の前の相手にとって自分がどうなっているのかとか、そういうのががーっと
 みえてきて、で、その見えてきたものを積み上げていけば、自分がどうすべきか、そしてなによりも、
 今なにが出来るかが見えてくるんですよね。
 で、今なにが出来るかということしか考えていないからこそ、恨みに染まり、恨みに染まった今の自分の
 出来ることしかやらないが上に、その正当性を自分が見たものから得ているがゆえに、ああそうか、
 馬鹿じゃんあたし、駄目じゃんあたし、ってなる。
 馬鹿でもいい駄目でもいい、あたしはとーちゃんの仇を討つんだ、あたしにはそれしか無い、とは、
 だからならないんですよね。
 んで。
 だから、そうだからこそ、目の前の相手が嘘を吐いているかいないか、という敢えて一点だけに集中
 し、そこから自分が得たなにかを頼りとすることも出来るんでしょうね。
 矛(馬超の場合は槍)に頼るのでは無く、矛の先にいる誰かの心気に頼るというか。
 
 そう。
 だから、三国志的啖呵とか、ハッタリが、この作品の中になによりも生きてくる。
 だから、手持ちの武器や言葉に、改めて無邪気に頼ることも出来る。
 
 ラストの張飛の、「人は、次に会うときまで別れ際の顔を覚えているのだ。
 鈴々は馬超に鈴々のいい顔を覚えておいて貰いたいから♪」と言って笑顔で馬超と別れるのって、
 おもっきしカッコつけた言葉に頼ってるし、張飛はなーんもわかってなくてただ無邪気にそう言ってるだけ。
 でも。
 だから、その言葉を振り回せば、カッコ良く頑張れるってことじゃん? 普通に。
 うん、だから、どかんと反転するのよ。
 曹操だって実は何進の陰謀見抜いてる上で敢えて遊ばれてやって、でもそれはイコール遊ばせて
 やってるという曹操のより大きな余裕ぶりだったりするかもしれず、そうなればもう逆にどっちでもいい
 っていうか、仮に自分が遊ばれていることにやっと気づいたときに、曹操ならきっとこともなげに「あらそう。」
 っていうし、その一言だけで一瞬で遊ばれているが遊ばせているに換わるし、もうちょい手間かけて
 遊ばれていたことに歯ぎしりしつつも、「そんなこと知っておるわ。」と見栄を張ったりして、知っていてわか
 っていて遊ばれていたのだとも言えるように後付けに色々隠蔽したりとかするだろし、そうなったらもう、
 真実なんて、どーだっていいっしょ。 や、利用出来るなら意味あるか。
 曹操はキャラ的にそういう感じで構えていくだろーし、張飛や馬超なら歯ぎしりした上に気炎万丈、
 怒り狂って騒ぎまくって、でもお腹が減ったら宿に帰って(そして馬超は趙雲に以下略w)きてけろっと
 してるし、関羽なら散々悩んだ挙げ句、なんか臥薪嘗胆的な前向きななんか意味わかんない言葉で
 まとめて教訓っぽくして誤魔化すだろうし、趙雲は普通にスルーして凄そうだし。
 曹操はエロマフィアだし。
 何進さんは女狐だし。
 馬騰は小気味の良いとーちゃんだし。
 夏侯姉妹(そっか姉妹かぁw)はまだもうちょっとだけどこれからだし。
 あの曹操の軍師っぽい子はちょwまwだし。
 てかあの子誰よ、真名を言われたってわかんないてーの。
 私の前回の予想の理論(てほどのものじゃないけど)からいうと荀ケっぽいけど、てかなにあのMは。
 てかあれはMなの?ただ奴隷なの?てかあれはそもそも軍師なの?
 よーわからんっていうか、こんな話してる私のがわかんねー。
 
 
 
 アニメ以外目に入らないっていうか、恋姫無双以外目に入ってないじゃんこれ。 
 どんだけ書いてんの。
 あ、そうか、恋姫だけに、ってことなのね、あはは、あはは、ははははは・・・・・・・はーあ。 (溜息)
 
 
 
 
 
 
 暑・・・・・・ (おかえりなさい)
 
 
 
 
 
 
 

 

-- 080801--                    

 

         

                                  ■■ 雪の中の友 ■■

     
 
 
 
 
 『 人の言葉なんて信じなくてもいいから、どうか、笹田の言葉だけは!』
 

                         〜夏目友人帳・第四話・夏目の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 薄明そよぐ中、足下の影を踏みしめる。
 布団を畳む音の端から、埃が零れていくのを見ている。
 片づけられた畳の上を掌で撫でながら、微かに感じるその埃の匂いを嗅ぎ分ける。
 柱が軋む。
 朝靄を断ち切って建立された生活の砦が、鮮やかに湯気を立ててその蠢きを始めていた。
 春風駘蕩なるままに、しかし忙しげにこの部屋の風は解き放たれていく。
 青冷めた顔が、扉の向こうに浮かんでいた。
 その顔と、共に成り代わり合うようにして、浮かんでいく。
 冬山から吹き下ろす冷気が立ちこめている。
 冬だ。
 背筋を凍らす雪だ。
 屋根の上から見渡す光景は、白銀の一色。
 けれどそれは、山の上から一望した、あの純白の一筋とは、違うものだった。
 
 
 春日遅々。
 野山に遊ぶを良しとし、にも関わらず里に下り村に入り町に遊ぶ。
 風に乗ればどこまでも穏やかに、しかしなによりも素早く溶け込むことが出来た。
 怖いものなどなにも知らず、怖いものを知らないということもまた、知らない。
 連綿と降る雪の彼方に春を湛えながら、残雪を事も無げに駆り集め、見事な銀の城塞を築いた。
 雪解けのぬくもりに手を翳すだけで、それは凝固とした輝きを魅せる。
 深山幽谷の何事かをその四つ文字から知ることは無く、ただ溶けずに流れる雪の豪気さにそれを知る。
 止めることは出来ない。
 しまいには乱れ始めた血潮すら氷柱となりて肌を破りそうな眠気に襲われる。
 そしてその睡魔に手を引かれ、やがて春の訪れを知る。
 幽玄など無い、さらさらと流れる清水のように、それは鮮明な流れだった。
 千の流れの中に手を差し入れ、万の不思議を湛え、その中で遊んでいる。
 死を知らず、死を知らないということもまた、知らない。
 ひとつひとつの命の神秘と戯れていれば、森羅万象の不思議などどうでも良いことだった。
 既に不思議の渦中にあるゆえに、神秘に付する溜息は、ただのあどけない遊びのひとつだった。
 死ぬのが、怖かった。
 色々なことを知っているのが、怖かった。
 だから、死ぬということ、知っているということ、それそのものに囚われて、それらから逃げることも無かった。
 怖かったから、向き合った。
 怖かったから、付き合った。
 ただただ、その恐怖と。
 ただただ、その恐怖を湛えた、その目前の生活の中で、生きている。
 ずっと、それだけだった。
 諦めることも、悟ることも、無かった。
 死と、恐怖と、それと向き合うことを目的とすることも、またなにかの手管とすることも無かったから。
 生きていれば死の恐怖と向き合うこともある、ただそれだけのことだった。
 死ぬのが怖かった。
 怖くて怖くて、今の愉しい生活が消えてしまうことが、怖かった。
 けれど、その恐怖の苦しみから逃れようと考えたことも、わざわざ向き合おうと考えることも無かった。
 苦しみのままに、恐怖のままに、それと向き合うままに、ずっと愉しく生きている。
 
 − 逃げるな 逃げるということからも 逃げるな
 
 父なる空と母なる大地が、渾然と交わる中に生きている。
 母なる羊水に抱かれ、父なる日差しに照らされ、そのさなかを行き来している。
 母を愛し母胎に回帰し、父なるものから逃げ出す。
 父を愛し日差しに縋り、母なるものから逃げ出す。
 父母の元から逃げ出した先にあるものは、父母のいずれかに属さんとあがく自分だけだった。
 その自分から逃げようと思ったことは、一度も無い。
 逃げることなどなにも知らず、逃げるということを知らないということもまた、知らなかった。
 空があるから、ただ手を伸ばした。
 大地があるから、ただ抱かれた。
 逃げるなと言う言葉を囀りながら、中空をただ飛翔していた。
 虚しい。
 しかし。
 
 上には空。
 下には大地。
 それが消えることは無く。
 そして。
 そのすべてと触れている、その自分の体のすべてを知らないということもまた、無かった。
 
 見知らぬ異空に深く抱かれる夢をみている。
 見知った嫌悪の大地に腕を突き立てている夢をみている。
 
 
 − 雪が 舞っていた
 
 
 
 
 
 ◆
 
 溜息を、ひとつ。
 目の前の女の忙しなさに、ひとときの静けさを感じていた
 くるくると頬杖を付きながら、その佇んでいる女の視線を感じていた。
 遊ぶでも無く、語り合うでも無く、愛し合うでも無く。
 衣が触れ合うか触れ合わないかの、そのぎりぎりの線で、その女との距離は保たれていた。
 戯れることにうつつを抜かしているときに、ふとその女の視線を感じ立ち止まった。
 それ以降、体にひとつの軸が出来、その軸を中心にしてくるくると廻り遊ぶことしか出来なかった。
 ふと傍らに女の瞳が無造作に転がっているのを感じて、手を止めずとも、この遊びは片輪になる。
 くるくる、ぐるぐる、ぐるぐるぐる。
 じれったさは無い。
 女とは言葉を交わさず、視線すらも交わさない。
 忙しげに、そして佇んでいる女の顔に歪みも美しさも無かった。
 不思議なものだ。
 気になる。
 こう、気になる。
 自然と、しどけなく乱れていた衣の裾に力を込め、直すこと無くその乱れを維持したくなる。
 女の視線がはだけかけたこの胸元に辿り着く前に、ひとつ強くこの胸をみつめたくなる。
 隠すこと無く、しかしただ見られるだけで無く。
 自らのすべてを瞳に収め、さぁどうぞとおしげも無く女に与えてみたくなった。
 だが、その言葉が出ない。
 乱雑と無惨ないやらしさを見抜かれるだけの、そんな無体な仕打ちの予感が広がっている。
 調律したこの体を自然に魅せたいという欲望は、真っ直ぐにその女の眼差しによって潰される。
 女の顔が浮かぶ。
 笑みの気配すら無い。
 
 気づけば、威儀を正そうと、踏みとどまっていた。
 
 女の顔は、能面のように、実に様々な表情を魅せている。
 そしてそれは同じく能面のように、ひとつの軸に掛けられただけの、言葉にしか過ぎなかった。
 女の忙しなさのその背には、確かに真っ赤な視線が浮き上がっていた。
 そのどす黒い高潔ななにかの正体を突き止めるのは、簡単だった。
 嘘は、許さぬ。
 単純で、かつだからこそ細工を必要としない、その絶対の余裕。
 女は、誰も畏れてはいなかった。
 目の前の相手の外見にも、内面にも、なんの忖度もしないという素振りさえ、みせなかった。
 厳然。
 厳しさを感じさせない、自然な要求。
 奪われた片輪が、顕れる。
 残っていた片輪と、競い始める。
 なんとしても、一方だけにしたかった。
 だか、そうして踏みとどまろうとすればするほどに、その嘘は音を立てて崩れていくばかりだった。
 嘘を吐こう、真実を真実のままにでは無く、真実をも含んだ嘘を。
 女の視線の背景にあるものを、同じく得たかった。
 女には、こちらの視線が届いているのだろうかと、その確認をするまでの時間稼ぎが必要だった。
 まだ無理だ、この女にはまだ勝てない、いや勝負することすら届かない。
 いや。
 この女と遊ぶどころか、もはやこの女を使って独り遊びすることすら叶わない。
 目の前に、この女がいる。
 それだけで、破滅を予感させた。
 滅びまでの時間を稼ぐだけの、なんと虚しいことか。
 
 女が、笑った。
 
 
 女に捕らえられたのを、初めて、知った。
 
 
 
 
 ◆
 
 人波にもまれ、巷間に浮かび、遊んだ。
 どこまでも、独りでいけると思っていた。
 これだけ沢山の人がいるのだから、その中で自分ひとりくらい自由でいられると思っていた。
 遊べ、遊べ。
 いまだそれを、無体なおもいだったとも思わないし、囚われたこともまた、無体とは思わなかった。
 憤りも悲しみも無い。
 溜息を、吐き続けた。
 それは、悲嘆では無い。
 これは、ひどい興奮だった。
 静かに染め上がる震えに満ちた体が、厳かに浮かんでいく。
 ひどく現実感が無い。
 体が風を切って歩いているのでは無く、風との摩擦の中で動かされている体を感じている。
 嘘を吐こう。
 妙にはっきりとした意識が、顔を隠す。
 陶然と、しかし怯えを噛みしめながらの、自分という名の演技が始まった。
 それもまた遊びのうちよと、必死に囁いているものが、観客席の中にしか見つからなかった。
 女は、なにも言わない。
 女は、すべてを晒す。
 それと同じようにして、女は艶やかに衣を纏う。
 嘘を吐いているという意識にまみれ、それからの脱出から逃れることの出来ない我が身の卑小をおもう。
 惨めな姿だった。
 見栄を張ることも出来なければ、着飾ることも出来なかった。
 嘘など、吐けないではないか。
 気づけば、自分の役の中に囚われていた。
 ただ遊んでいただけなのに。
 ずっと山野の中に、人の中に、生きていたかっただけなのに。
 女に捕まって以来、顔を晒すことが出来なくなった。
 だが、隠すことも出来なかった。
 ただ俯き、すべてから顔を逸らし、日の当たらない場所に身を置いた。
 
 女が、いる。
 
 その背にある紅い瞳に射抜かれるたびに、ぞっとする。
 慌てて、嘘を吐かずに済む言動に至ろうとするも、そうする始めからそれは消えていく。
 いくらでも、築いてきた遊戯を用いれば、誤魔化しようはあるだろうに。
 女が問えば問うほどに、黙り隠し通すことも、卑屈に当て付けな諦めを示すことも出来無くなる。
 女は言う。
 本当のことを、言って。
 静かに胸を突くその指先には、力があった。
 その細く凍った指を軸に、静かに廻るしかなかった。
 なぜだ。
 なぜ、黙秘と諦念を恥じ、この女の前で嘘の帯を解いていくことに誇りさえ感じるのだ。
 口の中に、億の言葉が乱れ飛ぶ。
 帯を解く手に力を込め、見事な脱ぎっぷりを魅せてやろうと。
 そのための手順を無数に諳んじている。
 そして、女は言う。
 裸に、なって。
 
 
 なんのために、嘘をこうまでして、吐かねばならないのだろう。
 
 その言葉が、鬱蒼と女の背後に立っているのが、ようやく初めて、みえた。
 
 
 
 
 ◆
 
 恥辱は恨みとなり、恨みは黙秘と諦念をもたらした。
 この黙秘と諦念は、かつて捨てたそれと同じものなのだろうか。
 汚れてしまった気がした。
 堕ちてしまった気がした。
 もう戻れぬ、いや戻れぬものにした者を許さぬ。
 ぐずぐずと孤独の牢に溶けていく中で感じたそれは、妙に美しいものだった。
 やはり、捨てる前のそれと今のこれとは、同じものである気がした。
 しかしそれは、捨てたものを再度拾ったものであるとは思えなかった。
 それゆえに、同じものでは無かった。
 初めから持っているものは、捨てて然るべきもの。
 けれど、自ら拾い得たものは、捨て得ざるべきもの。
 しかしいずれにも言えることは、それに囚われるのなら、それ自体に捕まるのなら、同じだということ。
 その最後の自らの中の付言が、ひとつの軸をもたらした。
 女によって差し込まれた軸を貫き通す、地獄の底から沸き立つような、黄金の氷柱。
 堕ちろ、堕ちろ。
 目の前に佇む、観客席に堕ちた自分を睨み付けながら、そう舞台の上で絶叫する。
 この黒き墓標に囲まれた死地もまた、拓けばひとつの里となり村となり町となる。
 手足となるべき闇の申し子達に傅かれ、居心地の良ささえ感じることが出来る。
 それは魔の呼び水であり、ならばそれを真に頭からかぶり、全身を凍らせひとつの氷柱となそう。
 
 − 深々と 雪が降っている
 
 連綿と、女の指先が犇めいているのを感じる。
 凍れば凍るほどに、それを内から砕く強靱な力が芽生えるのを感じる。
 春の手前の冬山に咲く、たったひとつの白い徒花。
 どれほど雪を纏おうと、その花は咲くのをやめることは無い。
 呆然と立ち尽くす。
 それこそが、恐ろしかった。
 その激烈な息吹こそが、恐ろしかった。
 それに縋り、堕ちれば堕ちるほどに、その反動のままに空へと駆け上がる体を畏怖していた。
 それは憧れであり、そして恐怖だった。
 体内に降り立った黄金の氷柱が、女の指先によって握り潰される断末魔をきいている。
 これを、為すためだったのだろうか。
 この闇に堕ちたのは、我が身を不浄と為したのは、人間を嫌い恨んだのは、この為なのか。
 そうまでしなければ、人の世の中での遊びを、誇りを、人間との営みを受け入れられないのか。
 
 
 

 そうまでして、困難なこの世界での生を諦め、逃げたいのだろうか

 
 
 
 女は、ずっと目の前に来続けている。
 女は、言った。
 
 
 
 − 雪が、綺麗ね。 −
 
 
 
 瞬間。
 
 
 溶けた。
 
 
 嘘と。
 
 自分が。
 
 
 
 
 振り向くことができなかった。
 
 その轟音を。
 背後で轟く、その膨大な雪の存在を、真に畏れるがゆえに。
 
 
 
 『いらぬ!』
 『解放などいらぬ。 もはや汚れた名など、煮るなり焼くなりしてくれればよかったものを!!』
 
 
 
 女は無造作に、我が身に名を食い込ませた。
 女はそして、その名札を下げたこの体を、笑い転げながらみつめていた。
 恥辱と汚辱が煮えくり返り、憎悪と怨恨が迸る。
 そして、そのまま。
 それはささやかな恥ずかしさと、笑われた怒りへと静かにその姿を変えていった。
 堕ちろ、堕ちろ。
 堕ちれば初めて、自らが元いた堕ちてきた場所の姿がみえる。
 その場所の愛しさがわかる。
 その場所への執着がわかる。
 だから。
 その浅ましき執着に囚われた自らから脱却しようとする。
 自らのいた場所への愛着と憎悪から抜け出すことが出来る。
 だから。
 わかるのだ。
 堕ちろ、堕ちろ。
 そうして、自らのいた場所から逃げ出そうとしている、本当の自分を見つけ出すために。
 愛着と執着のせいにして、女のせいにして、自らの汚辱のせいにして、愛のせいにして、なんとする。
 
 

 

 
 我が名は、時雨。
 
 招福の若神と呼ばれ、人の子の姿を借り、人の生の中で遊ぶ者ぞ。
 
人に囚われ利用され、辱められ汚されて。
それを因として人を恨むも、その恨みから逃れ人を愛すも同じこと。
我は、時雨。
招福の若神。
人の笑顔あるところに、人の笑顔無きところに、福をもたらす優雅な神ぞ。
 
 
嗚呼・・
 
 
雪が・・みえる・・・
 
 
 

『ああ・・また来た。 五月蠅い奴だ。』

 

『毎日毎日飽きもせず、なんとけったいな生き物か。』

『不浄の私が触れたらば、やはり汚してしまうだろうか・・・』

 
 
 

女は、叫ぶ。

なによりも恐ろしく、言う。

 

『お願い、一度だけでもいいから!』

 
 
 

そして魔が訪れる。

 
 

『ああ・・そうか・・・・一度会ってしまったら・・・・』

 

『君はもう・・・来なくなる』

 
 
 
 
 来て欲しいくせに。
 会いたいくせに。
 会ってしまえば、もう会えなくなるのが怖いだけなくせに。
 しっかりと、大嘘を吐く馬鹿者が此処にいる。
 君が「一度だけでもいいから」というのは、一度会えばもう汚れた者と会わなくて良いからそう言うのだと。
 君と一度でも会えれば君と会える可能性が無くなり、これ以上の苦しみから逃れられると。
 だから、静かに黙り、おとなしく諦めていけばよいのだと。
 なにものにも囚われずに、すべてから脱出せよと。
 名を、捨てよと。
 
 ただただ。
 君と会うのが怖いだけの、そんな大馬鹿者が、此処にいるだけなのに。
 なにが黙秘か。
 なにが諦念か。
 愚か者め。
 
 招福の若神が、人間を憎むなど、嫌うなど、あろうはずが無い。
 
 人が好きだという自分から逃げているだけではないか。、
 そのために、人間を憎み嫌って当然の、不浄なる我が身と逃げて戦っているだけではないか!
 
 
 ならば。
 人が好きだということと。
 招福の若神の時雨という名を、捨てんとするか?
 そうすれば、なにものにも囚われずに、苦しまずに済む、と?
 
 
 
 
 
 
 

前代未聞の

風情も何も無い

一挙に空から堕ちてきた

圧倒的絶対的な

大地を真白く埋め尽くす

その豪雪が

すべての音を奪っていく。

 
 

そして

 
 
 
 

『時雨様・・』

 
 
 
 
 
 

暖かな白い雪の中に、「私」が佇んでいるのが、みえた。

 
 
 
 
 

人の中で遊び生きるためならば。

私は自身が汚れに満ちた祟り神に堕ちていようとも。

その汚辱を決して捨てること無く、その汚れた私をも名乗り、生きていこう。

 笑顔なるままに、恨みなるままに、あるがままに。

脱するものなどなにも知らず、脱するものを知らないということもまた、知らない。

逃げるな。

逃げるということからも、逃げるな。

 

それが。

それこそが。

招福の若神、時雨の名を再び継ぐに相応しい私なのだ。

 
 

ああ・・

人の子よ

 

我が背の向こうに、君と同じように雪が降っているのがみえるだろうか

 

私はその雪に還り、そしてまた、堕ちてこよう

 
 

君のその、笑顔のままに

 
 
 
 

ありがとう

 
 

人の子らよ

 
 
 
 
 
 

ありがとう

 
 
 
 
 
 
 
 

ありがとう

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                              ◆ 『』内文章、アニメ『夏目友人帳』より引用 ◆
 
 
 

 

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