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◆◆◆ -- 2008年9月のお話 -- ◆◆◆

 

-- 080925--                    

 

         

                                    ■■ 狼と狐 ■■

     
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

◆    ◆

 

我が家のお稲荷さま。

 
 これはねぇ・・・・最高ですよ。
 なんでだろ、なんでこんなに穏やかで幸せで、そして愉しくなっちゃうんだろ。
 自分の中にごろごろと渦巻いているなにかを、それを別に消すことに躍起にならなくても、そのままでも
 愉しく楽しくなれるような・・・
 無理が無いっていうか、流れる水のようにというか、自分を怖れないというか、歌うようにそのまんまで、
 なのに、しっくりと考えている。
 日本人万歳!
 唐突に、そう叫べてしまうくらいに、和っていうか東洋的っていうか、理屈とか理論とかに囚われない、
 そういうなんていうかな、全体的な包容力があるんですよねぇ。
 でも、だからって、空気読め的な、論理を切り捨てるということはさらさら無く、それもちゃんとそのまま
 胸に抱いてしっかり考えながら、そしてそのまま愉しくなっていく。
 苦しみも悲しみも、なにも捨てないし、否定もしない。
 しっかりと苦しみしっかりと悲しみ、けれど、それに囚われない。
 なぜなら、苦しんだり悲しんだりする自分を怖れないで、きっちりと向き合っているから。
 向き合っているからこそ、その向き合う相手としての苦しみや悲しみを消したりもしないし、その相手と
 向き合っている自分を相手と向き合うためにこそ、失うこともまた、無い。
 長く、ゆっくりとした長い時間をかけて、それをやっている。
 ものすごく長いスパンで、それをやっている。
 
 天狐空幻こと、クーちゃんは、すごいよ。
 別に、藪から棒に、なにもかも許したり赦したりしている訳じゃ無い。
 だけど常に、なにもかもを許したり赦せるようになるように考えている。
 今それが出来なければまた後で、それでも駄目ならまた時間を置いて。
 ゆるすために必要な論理は沢山あるし、それはひとつひとつ論理的に解決していかなくてはいけないし、
 自分のことを案じてくれる玉葉ことタマちゃんのことも、わかりすぎるほどわかるからこそ考えている。
 それは、でもそんなこと考えていてもどうにもならないよ、今が楽しければそれでいいじゃないか、
 という高上兄弟の罪な能天気ぶりとは違う。
 なにしろタマちゃんはクーちゃんの同胞であり、一心同体のようなものであり、実際高上家に理不尽に
 も封印された上、開放された今も扱き使われているという事実が、少なくとも自分と同体であるタマに
 は赦せないことであり、無論それは、クーちゃんとて同じことなのよね。
 というか、タマちゃんはクーちゃんの恨みそのものであり、タマがああして存在しているということは、クーの
 中にも恨みとその論理自体は必ず存在している、ということを同時に表してもいるんです。
 だからタマという恨みそのものを無視しての高上兄弟との生活は、実はあり得ない。
 クーちゃんが、タマちゃんを捨てて、そんな生活に生きる?
 そんなことは、クーちゃんはしない。
 
 天狐たるもの、そんなことは絶対にしない。
 
 クーは、玉葉と高上兄弟の間に生きています。
 そして常に、その両者をひとつのなにかにまとめられないかと腐心しています。
 どうやったら、自分の中の恨みを捨てずに抱いたまま、愉しく生きていけるか。
 クーはそもそも、復讐者たることを望みません。
 クーはそもそも、封印されなければ、世界を又にかけてのいたずら三昧の愉しい生活を送っていた。
 それが奪われたことの恨みを晴らすことがクーの目的では無く、またその愉しい生活を取り戻すことこそ
 がクーの絶対的な目標なんです。
 つまり、クーは全然諦めてないんですね。
 自分のかつての愉しい生活と時間が奪われ、拭い切れない恨みを抱いても、自分が此処に存在し、
 そして絶対にまた愉しく生きられるという自分を信じている。
 恨みを抱く自分を怖れていないんです。
 恨みを晴らす復讐に走らないのは、常に目の前に愉しめる「可能性」のある世界が広がっているから。
 恨みを捨てないのは、恨みそのものも愉しめる「可能性」があるから。
 だからクーにとっては、高上兄弟と出会い、兄弟に恨みを感じる自分を、それすらも愉しめるように
 なるにはどうかと、そう考えたのです。
 かつては恨みなど感じない愉しい世界に生きてきた、それで恨みのひとつやふたつ抱いたところでそれが
 変わろうか、いやいや、うんうん、やはり変わるのだろう、そう、恨みを得たことで、今までとは比較に
 ならないほどの愉しみを得ることが出来るのかもしれないのだから。
 今までずっとずっと独りで愉しんできた天狐空幻は、人間と出会ったのです。
 恨みが発生するのならば・・・・・そこには同じく、愛も生まれるのです。
 恨み無き世界に愛は生まれない、そのことは、ずっと独りで生きてきた空幻だからこそわかるのです。
 常に人と向き合い接し、様々な摩擦が生まれ、それはひとつひとつの小さな恨みとなって降り積もる。
 けれどだからこそ、そのひとつひとつの恨みがあることを自分なりに解消したり、あるいは打ち明けてその
 相手と共にそれを解決していったりすることが出来る。
 
 その目の前の人間達とこそ愉しく暮らしたいからこそ、日々人間と生きること自体で生じるストレスと
 しての「恨み」を晴らしたりただ背負い込んで我慢したりなど、クーちゃんはしない。
 
 そう、クーちゃんにとって最も大切なことは、愉しく生きるってこと。
 愉しく生きるためには、愉しまなくちゃいけない、愉しむためにはどうしたらいいかを懸命に考え続けなく
 てはいけない。
 だから。
 恨みも、愉しもう。
 徹底的に、愉しもう。
 恨みを晴らすだけでは駄目だ、恨みを忘れるだけじゃ駄目よ。
 だから、恨みには囚われないクーちゃんが此処にいる。
 言ってみれば、クーちゃんは恨みと愉しい生活の橋渡し役。
 言い換えれば、玉葉と高上兄弟の仲介役。
 恨みに囚われている玉葉とて、愉しく生きたいことには変わりない。
 クーちゃんの中の恨みが、それでも幸せを求めていることとそれは全く同じこと。
 クーちゃんはタマちゃんに、恨みを捨てろだなんて、玉葉自体を捨てろだなんて、言いません。
 でも。
 クーちゃんとタマちゃんは、一心同体。
 タマちゃんは、言いました。
 『おまえ、楽しいんだな。 ずっと独りだったから。 家族といるのが楽しいんだな。』
 クーちゃんは、言いました。
 『おまえも、家族なんだよ!』
 橋渡しどころか仲介どころか、クーちゃん=タマちゃんなのです。
 タマちゃんだって、天狐です。 お稲荷さまなんです。
 クーちゃんが出来て、タマちゃんが出来ないはずが無い。
 いいや、お前が出来ないんなら俺がなんとしてもお前を愉しませてやるさ。
 クーちゃんかっこいい!
 
 そうなんですよね。
 日々の小さな「恨み」を解消出来て。
 とてつも無く長いこと封印されていたという巨大な恨みが解消出来ない訳が無い。
 なぜってお前、俺達は一体何百年生きてきて、これからあと何千年生きると思ってるんだ?
 クーちゃんにとっては、「恨み」も恨みも同じこと。
 愉しく生きたいという絶大なおもいに縋り付く、その自分さえ怖れなければ、楽しけりゃなんでもいい。
 恨みは、文字通り、解いて消えるもの。
 解かなくちゃ駄目よ。 論理的に感情的に、ね。
 でも、それはすべて、幸せのため。
 だから、楽しけりゃなんでもいいって、初めて言えるよーな気がするよ。
 だから、恨みに囚われずに、恨みに染まりまた愉しく生きることも出来る。
 恨みを目の前の人間たちに示しながら、それを笑って自ら遊んでいく。
 楽にいこうぜ♪
 それはとても、私の心の一番深いところに響く感覚なのでした。
 
 

 改めまして、ごきげんよう、紅い瞳です。

 
 お彼岸ということで、おはぎを買って来て、供えたり食べたりしています。
 ぽくぽくまぐまぐと食べていると思い出すのは、「狼と香辛料」のホロです。
 ホロにおはぎなどあげたら、信じられぬとても信じられぬ、とかいって未知の東洋の文化の結晶(?)たる
 甘くてもちもちのお菓子を、それこそ信じられぬ勢いでぽくぽくまぐまぐと食べると思います。
 そして、喉に詰まらせる。 み・・水・・・
 ああ・・懐かしい・・・
 と言いながら、懐かしむだけでは飽きたらずに、「狼と香辛料」のアニメをまた観ています。
 あぁ、かっわんないなぁ・・・ホロは変わってない・・私も・・
 もう放送が終了して半年近く立っているのに、あまり印象が変わらない。
 でも、私はそのことに一抹の不安を感じながらも、むしろその不安を怖れている自分をみつめるのです。
 変わっていないのなら、変わるまで色んなものを観ようよ。
 逆にいえば、自分を取り巻く状況が変わった今、またあのときと同じ感覚でこの作品を観て感じて考え
 たら、一体どんな風になるだろうかって思うのです。
 そしたら、これなのですよ。
 「我が家のお稲荷さま。」の、最終回ですよ。
 わー。
 なんか、心が震えた。
 この作品は、物語的には全然抑揚の無い作品なのだけれど、すべての話をゆっくりゆったりと観ていく
 と、自分の中に「我が家のお稲荷さま。」に流れるなにかが澄み渡るようにして広がってきているのが
 わかるんです。
 最終回にて、それが全部心の表に噴き出してくる。
 ああ、そうだよねぇ、そうだよねぇ。
 
 「狼と香辛料」が月だとしたら、「我が家のお稲荷さま。」は太陽だよね。
 
 引き籠もったクーちゃんを引っ張り出したのが天ノ岩戸作戦って、絶妙だよ。
 私はさ、ホロが好き。大好き。
 「狼と香辛料」は、孤独な狼のホロが行商人のロレンスと旅をして、自分をみつめていく作品。
 手練手管大嘘小嘘となんだかんだと目一杯理屈を語って、「私」というものと向き合う「誰か」をみつめ、
 そして懸命に「自分」を生きようとする、なんだかんで真面目なお話なのよ。
 理屈論理というものをメインにして、饒舌に語り、「語り」という道具を使って生きていく。
 これは「我が家のお稲荷さま。」における恨みと同じね。
 ホロはタマちゃん的でもあるし、タマちゃんよりも徹底してる。
 徹底して自分を語り、その語りを徹底することによって、相手との言葉の掛け合いの果てにお互いの
 存在を認識し、だからこそなにが本当か嘘かでは無く、そうした他者との触れ合いそのものこそを重視
 する。
 それがホロであり、狼的な孤独との向き合い方、生き方なんですね。
 がむしゃらに、情熱的に、しかしひっそりと確実に、狡猾に徹底的に目の前の存在と向き合っていく。
 言い換えればそれは、言葉への絶対の信頼、及び言葉以外には頼るものの無い、絶対的なものの
 存在を認めない、虚無主義があるのです。
 言葉でしか繋がれない、それでも繋がりたいからこそ、それを虚しく思う暇があるのなら、その言葉を
 徹底的に使って繋がり倒してやる、それを愉しんでやる、そういうことなのです。
 それが、賢狼のホロのあり方なのです。
 
 じゃー、クーちゃんは?
 
 天狐のクーちゃんも、私は大好きです。
 「我が家のお稲荷さま。」は一転、言葉に頼らない、「間」の作品です。
 言語的に細かいことも難しいことも無く、そもそも論理を突き詰めるという発想が無い。
 端的に、ただただ本質を突く。
 語り語り喋り続けることでしか、その間にしか相手と繋がれることを感じられない、そのことに実は怯えて
 いる自分を見つめて、ふっと、敢えて饒舌に回る言葉を口の中にとどめておく。
 一瞬の静寂。
 そこには驚くほどに、色々なものが転がっています。
 それは、沈黙は金なりというつまらない美徳とはなんの関係も無いことです。
 むしろ、ホロのように饒舌に語り倒すことの意義を知るからこそ、それをさらに発展させるためにこそ、
 喋ることだけでは得られないなにかをも貪欲に求めているがゆえのことなのです。
 なにしろ、クーはホロと同じくらいに考え、そして頭の中では語り倒しているからです。
 ただクーは、語り喋るということに囚われていないだけで、語り喋ることを放棄してなどいませんし、必要
 とあらばいつでもクーは自在に言葉を操ることもするのでしょう。
 語るか黙すか、の選択では無い。
 クーは、その選択を超えているのです。
 クーはホロであり、ホロを含むクーであり、そしてホロを超克したホロなのです。
 ホロが怖れていたのは他でも無い、ホロ自身だったのです。
 ホロ自身が、自らの語りに囚われていること自体を愉しむことは出来ても、それ以外の自分を愉しむ
 ための努力が出来ない、そんな小さな自分を怖れていたのです。
 
 でもそれは、タマが囚われていたものと、全く同じ。
 ホロはただ、自分自身の「愉しめる」才能と可能性を知らないだけ。
 
 クーはいつでもその自分の才能と可能性と向き合っているからこそ、逆に自分を怖れない。
 ホロはいつでも自分を怖れているからこそ、逆に自分の才能と可能性の存在を知らない。
 それは決して、ホロ<クーということではありませんよね。
 ホロはあのホロのやり方を徹底してこそ、ホロにしか出来ないそして最もホロに適したホロ流の愉しい生
 活に気づき導き出すことが出来るのですから。 つーかはやく第二期をやりなさい第二期を。
 そして、クーはタマと接し、タマを愉しい生活へと導こうとするときに、限りなく小さな自分に降りていきま
 すし、ホロのように語りに囚われる一個の自分にも還らねば、タマと手を取り合って駆け上がることも
 出来無いのです。
 クーちゃんはタマちゃんを捨てるなんて、決してしないのですから。
 同時に誰もがホロ的情熱に熱中するのは当然ですし、そして誰もがホロからでしかクーのように
 愉しい生活へ至ることは出来ないのですから。
 ホロは決してホロを捨てませんし、目の前にロレンスがいるからこそ、ホロを超えていこうとする。
 狼のように狡猾に気高く。
 そして。
 狐のようにお気楽極楽に。
 お気楽極楽だからって、気高く生きられないと言ったら嘘になる。
 狡猾で気高いからって、気楽に生きられないと言ったら嘘になる。
 狼は狐に、狐は狼に。
 そして狼と狐は、それぞれ神様に。
 不思議な相似形。
 あ、あと、ふたりともケモミミだ。
 ケモミミ万歳。
 そう、それが言いたかった!
 
 
 うん。
 「狼と香辛料」になにかを感じたことがある人は、是非この「我が家のお稲荷さま。」を観てみてください。
 熱度も速度も全然違う作品ですけれど、必ず観たことでなにかが変わると思います。
 お稲荷さま万歳。
 ああもう、また私の中にすごいアニメ分が出来ちゃったじゃないか!  ←ほくほく顔
 
 
 
 
 
 
 ◆
 
 と、いう感じでした。
 いよいよ最終回ラッシュにつき、次回の雑日記以降でもガンガン終了した作品について語っていく
 ことになりますので、しばらくはアニメ話題ばっかりになる可能性もなきにしもあらずというか、今更じゃ
 無いのが玉に瑕。
 ええと、まぁ、結構時間かかりそうね。次回一回じゃ終わらなさそう。てかまだ1作品しか語ってないし。
 ということで、紅い瞳のアニメライフの系譜は途絶えないよ!とカッコつけたつもりで叫んでみたりして
 いるのならば、そうです、10月からのアニメを愉しめばいいじゃない、という、そういう幸せぶりなのです。
 観たいときにアニメが其処にある。
 くぅ〜、これは幸せですよ〜、楽しいですよ〜♪
 その豊かな感触の中で、現在アニメが始まるまでの時間を、じっとりたっぷりと愉しんでいる紅い瞳です。
 みなさん、アニメ楽しんでますか〜? ←どこぞの教祖様のような笑顔で
 
 はい。
 そんな感じで紅い瞳は楽しんでいるのか楽しがろうと必死になってるのか、既にわかんなくなっている
 くらいに盛り上がっていますから、正直に素直にその渦の中で楽しもうという次第で御座います。
 で、具体的に今日はどう盛り上がりましょうかと思案一考、沈思黙考、気づけばこれだけ考えている
 ことをぺらぺら喋っていながらいっこうに本題に入れない、そういうスパイラル。
 
 ええと、アニメね、アニメ。 ←ごそごそとなにかを探しながら
 
 そう、皆様はもう来期開始アニメの目星を付けていらっしゃいますか?
 この私めはと言いますと、目星を付けすぎて、訳がわからなくなっていたりします。
 全部で17作品を選出、ていうかこれもう選んでないですよね、ほとんど全部ですもん、どんだけ嬉しい
 のよこの人はもう、だって嬉しかったんだもんあんなに面白そうなものがあって、だったらほら幸せのお裾分
 けというかせっかくこれだけ感度上がってるんだからみんな楽しまなくちゃ損じゃない?、うるさい黙れ、
 はいごめんなさい。
 とにかく、まぁ、諸事情により、いくつかは削らなくてはいけないのです。だってうるさいって・・・(誰が)
 とはいえ、実際の選別はどうにもアニメを観てみなければ始まりませんから、根性で早送りでも良いので
 、取り敢えず目を付けた分は観ようと思っています。
 ちなみに私の初期選出(?)作は、9月12日付けの日記に書いてありますので、気になる方はどうぞ。
 
 
 で、切り捨て対象作品を論じるなどという寂しいことは、あまり声を大にして語ることでは無いですし、
 これだけ大豊作な気配が漂っている来期ならば、ここは是非注目作はどれかだとか、そういうことを
 大いにお話したいものですよね。
 
 私の一番の注目作品は、何度も申し上げて恐縮ですけれど、なんと言っても魍魎の匣なのです。
 原作を知っているからというのもありますし、逆にあの原作をどれだけアニメで滅茶苦茶にしてくれるか、
 勿論それは良い意味ででのお話ですけれど、そういうのを期待しているのです。
 超がつくほどの猟奇モノを、淡々と膨大な蘊蓄と論駁で妖怪という「概念」を使って解決していこうという
 そのスタンス、いえいえ、画期的試みをアニメで見られるなんて、これは同じ妖怪モノアニメを見ている
 私も含む方々にどんな影響を与えてくれるのか、その観点からもとても楽しみです。
 妖怪とはなにか。 きっとそれをひとつの「妖怪学」として提示してくれることでしょう。
 でも逆に言語的なものを排して映像的なものでそれを語ろうとしたらどうなるのか、それにこそ最も興味
 をこの作品の原作ファンとしては惹かれるものであったりします。
 
 私的に次に愉しみなのは、かんなぎです。
 お茶の間感覚伝奇ストーリーというのが、それで既に笑ってしまいます。
 ここしばらく、これだ!というギャグコメディモノが無かったので、その辺りぬるい感覚で笑える展開を
 披露して頂かれますと、私は喜んでお供仕りますですよ、という案配なのです。なに言ってますか。
 感覚的にはいけそうなので、むしろいける気で望みます。
 笑えなかったらあなたを殺して私も死ぬ
 他にコメディ系で期待できそうなのでは、今日の5の2ヒャッコというところでしょうか。
 
 ヴァンパイア騎士 Guilty地獄少女 三鼎はそれぞれ続編モノですので、前作と同じものを
 やるもそれを越えるも私的には期待値としては同じなので、そのまま頑張って欲しい作品です。
 特にヴァンパイアの方は前期で盛り上げるだけ盛り上げておいて、三ヶ月間のお預けをしてくれたのです
 から、責任は重大です。
 ていうかもう、吸血鬼・血・呪縛・主従という言葉に反応する人は私のところに来なさい。
 そして私と一緒にワインかブランデー飲みながら観ること。(未成年は葡萄ジュースあたりで)
 
 他には、チャットにてご推薦も頂いた、屍姫 赫とある魔術の禁書目録が、なんだかお勧め
 されたことによって、より興味対象として魅力が出てきました。
 お勧めしたということは、そちらも観るんですよね? 観なかったら恨むよ、ロキさん、風雅さん。(笑)
 屍姫には、情熱的に淡々と真面目になにかを突き詰めていく予感がしていますし、「ソウルイーター」の
 ように設定に囚われずにガンガン設定を活かす意志力を感じてみたいですね。
 とある魔術には、なんていうか、「魔術」を期待しています、魔術を。
 ただのボーイミーツガールの「物語」だけでは無い、なにかをこの作品には期待しています。
 それと同じくチャットにてガンビアさんにお勧めされたのだめカンタービレ 巴里編も新たに観ることに
 しました。
 久しぶりに「ぎゃぼー!」が聞きたくなりましたので。(笑)
 
 ラストは、未知数モノ(?)として、黒執事黒塚 -KUROZUKAを予定しています。
 基本的に、敢えて事前情報はあまり取り入れないことにして、とにかくそのまんま愉しませて貰おうと
 思っています。
 だって執事ですよ? 上げ膳据え膳が当然じゃないですか。 うむ、私を愉しませてみせよ!
 塚の方は、普通にアニメの事前情報が全然Upされていないので(公式サイトすら存在しない)、
 そのままいくしか無い訳で。
 まぁ、両方とも黒なので、期待しています。 (意味不明)
 
 
 
 よし、いける。 ←ガッツポーズはやめれ
 
 
 
 
 
 
 ◆
 
 恋姫無双感想です。 先週分。 最終回はまだ観てませんからねこれ。
 
 
 ・・・。
 えー、なんだかなぁ・・・ ←小石を蹴りながら
 劉備がチャラ男って・・・
 ウチの関羽をお前のような者にやる訳にはいかん!
 うん、それ以前に劉備が男っていうところからして、予想外でした。
 てっきり、今までのノリだったら女劉備(割とドジっ子気味)になんだか知らんけど王気を見込んで、
 それで世直しにまっすぐGo!かと思ってたんですけど・・・ってそれが一番落ち着きますよね? ね?
 ああ、あと話ずれますけど、なんで孔明だけ字(あざな)で劉備に自己紹介するんでしょ?
 関羽は関羽、張飛は張飛なのに、なんで諸葛亮は孔明なんでしょ?
 まぁ、それはいい。 問題は関羽さんですよ関羽さん!
 ちょっとそこの愛紗さん! なにやってんのさ!
 むしろ妹分の鈴々ちゃんの方がまともな反応してるっていうか、関羽があの劉備に仕える理由がなにひ
 とつ無いっていうか、普通に噂通り美人だって言われたからはい仕えますって、ちょっとそこの武人!
 ああ、あと話ずれますけど、冬虫夏草な馬超さんにウケた。 引っこ抜いた孔明さん乙。
 別の意味での下ネタがなにげに似合いすぎておっちょこちょいにもほどがあるで可笑しい翠さんですけど、
 うん可愛かった。
 まぁ、それはいい。 問題は関羽さんですよ関羽さん!
 別に劉備が男でもチャラ男でも、本質的にはどうでもいいんですけど、それならそれでもっとこう、
 この劉備じゃ無きゃ駄目っていう理由を示して欲しいというか、これじゃ張飛の抱いた違和感が、
 馬超の言うような「大好きなお姉ちゃんを取られた妹の気分」程度で済まされてて、納得いかない。
 劉備自身には全く個性が無く、誰に仕えようがそこで生きるのが関羽という武人なのだ、といういうの
 はわかるけれど、でも、じゃあ、今までのお話を使って築き描いてきた関羽雲長「愛紗」という「キャラ」
 は、ほんとにそういうタイプのキャラでしたでしょうか?
 
 なんかそれだと、自分探しして来たけど、結局そんなものは無く地に足つけていきましょうぜわっしょい、
 という、なんともつまらないステレオタイプなものになってしまいません?
 
 うん、それでも確かに良いといえば良いのですけどね。
 張飛翼徳「鈴々」が、なんだかんだで地元の子供達の親分に収まって、地に足付けて日常生活を
 生きていくというのは、その生活に至るためにことこそ関羽らの理想論があったのだというのは、至極この
 「恋姫無双」という作品の始まりと繋がっていて面白く、また強くまとまった印象を与えてはくれます。
 でも。
 なんか、物足りない。
 その目的だった生活を大いなるものにしたいなら、もっともっと、逆に関羽の理想論をも大きく描かなくて
 はいけないのじゃないかなぁ。
 これじゃあ、とっても、小さい気がする。
 なんていうかむしろ、彼女達は旅をし続けるべきじゃないかなぁ。
 前にプチ感想でやった「エル・カザド」のふたりみたいに、旅の中にこそ日常を感じていくというか、そして
 この「恋姫無双」という作品は紛れもなく三国志なんですから、どこか主家に仕えて大陸に雄飛すると
 いう意味での旅をするべきなんじゃないかなぁ。
 あ、旅=非定住って意味じゃ無いですからね。
 そういう意味で、あの劉備は無いでしょ。
 あれじゃなんていうか、劉備っていうどうでもいいお飾りを使って、ただ日々小さなお祭り騒ぎをしてる
 だけっていうか、いや、本質的には三国志(に限らず)の争いなんてそんなもんではあるんですけど、
 あれじゃあ最初の頃に魅せていた、関羽さんのハッタリの効いた啖呵に命が籠もらないと思うんです
 よねぇ。
 馬鹿をやるなら、もっと全霊でやってみなさいよ、っていうかさ。
 これで劉備軍が蜀となったとして、そうなると魏や呉の「熱さ」と比べると、それは格段に落ちる気が
 するんですよね。
 せっかくここまで熱く「理想論」に萌えて、もとい燃えてきたんですから、最後までやり遂げて欲しい気が
 して堪らない。
 これじゃあ、第二期なんて必要が無く、綺麗にまとまってしまうじゃ無いの。
 
 
 あれ? 
 でもこれ、やっぱり面白くない?
 
 
 いやだってさ、うん、「熱さ」に拘るのはいいし、歯ぎしりしながら悔しがる自分もそれはそれで引き受ける
 けどさ、でもさ、うん。
 これって、なんか確かに「蜀」っぽくない?
 なんていうか、私の中の三国志イメージ(小説や漫画だけですけど)では、蜀ってなんか家族的という
 か、しかもそれは呉の孫家を中心とした血族+その家臣という感じでは無い、誰もが劉備の元に受け
 入れられる疑似家族的な、言い換えれば劉備を大親分としたアウトローの大団円(?)的な集まり
 というか、色んなものから外れた人達や、結構外れてない常識人や、そういうのがみんな集まって
 わいわいやるというか、一応漢朝復興という大義はあるけど、それはよくもわるくも「気分的」な理想論
 であって、実際にたとえば魏の曹操のように天下国家万民を切り盛りする、というのが決定的に欠けて
 いるというか存在していないというか。
 なにより蜀というのが生活に根ざし、そしてその生活圏の中からアマチュア的にわいわいと天下国家を
 酒宴まじりで論じたりする。
 蜀はだから魏の冷静な熱さも無ければ、呉のような孫家燃えな熱さも無い。
 一応劉備萌えではあるけど、結構劉備なんてほっぽっといて、みんなそれぞれわいわいやってる。
 劉備の御大将が通りがかれば、お、大将、どうですよ一杯やっていきませんかい?みたいな。
 そういう意味では、「恋姫」の劉備がどうでもいい存在として描かれているのは、関羽や張飛達自身の
 それぞれのわいわいな楽しい生活を描くためには、逆に必要なものだと言えるからなのかもしれないです。
 よく考えたら、この作品の主人公は関羽なんですよね。
 ここでもし劉備がなんか魅力ある迫力ある人物だったら、関羽はその劉備を立てる「二番手」になって
 しまうんですよね。
 それは同時に二番手という「主人公」にはなりえず、終盤にぽっと出てきた一番手の劉備という真の
 「主人公」に帰属する、言い換えれば、劉備に出会うために旅をし、そして劉備に出会うことで関羽の
 その旅が「無意味」なものだったとして消去され、同時に関羽というキャラも消されてしまうのです。
 関羽は少なくとも、この作品に於ける劉備のお膳立て係では無いはずです。
 
 とはいえ。 (はやいなおい)
 関羽は同時に、この作品の中で既になんども一歩引いて「二番手」的な役割を演じています。
 張飛とか孔明とか黄忠がメインのときもあり、呉編のときなんか関羽さんはなにもしてませんでしたし(笑)
 そもそもこの作品はキャラ紹介編みたいなものですから、たとえ劉備がどどーんとでっかいキャラとして
 登場したとて、あっさりと席次を譲ることは出来、そしてそれで関羽さんの影が薄れる訳でも無い、
 というか影が薄れても全然問題無いみたいな(笑)、そういう自由のある作品でもあるんですよね。
 
 結論。
 劉備なんて、関係無い。 ←気分的にすっきり
 
 そして最終回ではどう転ぼうと、たぶん、大丈夫。
 なにしろ、趙雲さんがついに仮面を脱いだのですからー。
 これは、大変なことですよ。 (笑)
 
 
 
 
 
 
 はい、お疲れ様でした。 (パソの電源を切りながら)
 
 
 
 
 
 
 
 

 

-- 080922--                    

 

         

                               ■■ 雲上の友は降り ■■

     
 
 
 
 
 『まったく、これだから人の子は・・・』
 

                       〜夏目友人帳・第十一話・にゃんこ先生の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 『夏目の不良! ハゲ! 白アスパラ!』
 
 夏目の奴、許せん。
 ほとほと愛想が尽きたわ。
 お節介なくせに短気で、弱いくせに頑固で、なにより高貴な私を疑うなどもってのほか。
 私が海老を盗み食いするだろうという、そういう料簡が許せん。
 実際に私が食べているかどうかなど、関係無いのだ!
 CDだって、そんなところに置いている夏目が悪いのだ。
 まったく夏目の奴め、自分の理屈でばかり物を見おってからに。
 ふん、CDを踏んだのはわざとだわざと! そんなこともわからんのか、夏目のボケ! 朴念仁!
 
 『違う、私はあいつの先生だ!』
 
 夏目には色々と教えてやらなくてはならんのだ。
 私は妖怪なのだ。
 酒好きで海老好きで部屋の中を歩き回る猫だ。
 それがなんだ、あの態度は。
 少しはものを学ぶということを知らんのか、あいつは。
 もう頭来た。
 夏目がその気なら、こっちもその気だぞ。
 こんな家、出てってやる。
 夏目なんぞ、もう知ったことか!
 
 
 
 
 

『そして私は、穴に落ちた。』

 
 
 
 
 
 ええい、夏目め。
 いやいや、忌々しい。
 あの家から飛び出て、酒かっくらって、酔っぱらった上に雀を捕ろうとしたら、穴に落ちるなんぞ。
 最悪だな。
 しっかし、なんだこのガキは。
 私より先に穴に落ちていたというのに、随分余裕じゃないか。
 空から降ってきた猫と戯れる暇なぞ無かろうに。
 ほれみろ、私が穴から這い出ようとしたら、抱きついてきよった。
 ふん、ガキのくせに、ガキのくせに。
 
 恩知らずな妖怪どもにも腹が立つ。
 せっかく助けてやったというのに、ちょこっと飲み食いして歌いまくっただけで、私を追い出すだと?
 加齢臭だと?
 『成敗!』
 夏目の友人達と町で会った。
 私は夏目の先生であって友人では無い。
 もっとも、先生はさきほどやめてきたばかりだからな。
 もう夏目とは関係無い。
 関係無いが、苛立ちは紛れない。
 夏目の友人達を連れ回し、ちょっと飲み食いして、遊びまくった。
 別にこれくらい当然だろう。
 目一杯、私は私を見せつけてやりたかったんだろうな。
 ああ、腹が立つ。
 無性に腹が立つ。
 私は悪くない。
 絶対絶対、謝らんぞ。
 悔しかったら、殴りにでも来てみろ、夏目の阿呆!
 
 『反省しろ、未熟者め。 当分帰ってやるもんか。』
 
 ああもう、自由気儘にやってやる。
 夏目が謝りに来なけりゃ、いつまでだって好き放題だ。
 それが私だ。
 妖怪は自由なんだぞ。
 当たり前だ、この高貴なる斑はなにものにも縛られたりはしないのだ!
 にゃん!
 『はぁぁ〜、また夏目の友達でもからかうかなぁ・・』
 ふん、猿め。
 お前なんぞに友人帳を渡すか。
 夏目とは確かに縁を切ったが、私が友人帳を狙っていることには変わりは無い。
 それを猿め、お前が狙うということは、私の敵になるということと同じだ。
 そして私が友人帳を得るためにこそ、私は夏目の先生になったのだ。
 夏目が迎えに来るというのなら、先生として戻ってやってもいいのだ。
 『お前には関わりの無いことだ。』
 邪魔するなこのエテ公が。
 『夏目の阿呆はともかく、友人帳が他の妖に奪われるのは我慢ならんからな。』
 ふん、一度乗りかかった船だ、その船を最後まで夏目には操らせなくては気に喰わん。
 せっかくこの斑様が乗船してやったんだ、最後まで漕げ、夏目の無能め!
 そして結果的にあの猿から守ってやったんだ、感謝しろ夏目。
 いいか、勘違いするなよ。
 私が帰るのは、お前の側にいた方が友人帳を守りやすいからだ。
 お前が嫌がろうが朴念仁だろうが白アスパラだろうと関係無い、私はただ友人帳を守りにいくだけだ。
 わかったか、夏目! この青二才!
 『アホ言うな。』
 
 
 『そして私は、穴に落ちた。』
 
 
 『けっ! なにが夏目だ、なーにが友人帳だ!』
 『馬鹿にしよってからにぃ・・・・』
 『ん? るさーい! 見せもんじゃないぞこらぁーっ!!』
 
 
 
 『そして私は、穴に落ちた。』
 
 
 
 『にゃ!? にゃぁーー!!』
 
 それで、あのガキのところに落ちてきた訳だ。
 生意気にもこの人の子は、チョコなど常備しておった。なかなかやりおる。
 まぁそれを半分差し出すのは、私を引き留めた料金としては上等だろう。
 しっかしこのガキ、バカなんだか強いんだか・・・
 久しぶりの両親揃ってのピクニックの予定が潰れて、仕方なくひとりで来たら穴に落ちたくせに、
 『そしたら落ちちゃった☆』って、おまえ・・・
 ふん、ひとりなのは寂しいくせに、だから私を誘ったくせに。
 強がりおって。
 これだから人の子は。
 弱いくせに、なにも出来ないガキのくせに粋がりおって。
 一緒に飯を食べて、一緒に菓子を喰って、ひとりじゃ無かったら美味い・・・か・・
 ふん、私は別にどうでもいいわ。
 ええい、離せ、離さぬか。
 別にお前を置き去りになどもうせぬわ。
 見栄を張っているガキを、見捨ててなどいけるか。
 だから、私は雨に打たれたくらいでは死なぬわ。 
 ええい、落ち着け。
 むしろお前のその抱き締める力が私を殺すわ!
 泣くな、人の子。
 わかっておる、ひとりが嫌だからひとりでも頑張ったのだろ。
 でもそれと同時にしっかりと私を逃がさぬようにしっかりと抱き締めるのだろ。
 謝るな、謝るな。
 泣くな、五月蠅いわ。
 自分が引き留めなければ私は死ななくて済んだなんて、そんなことは無いわ。
 というか猫は雨に当たっても死なんわ、このボケが。
 そもそもこの斑様がそうそう簡単に死ぬものか。
 ふっ、ガキのくせして、必死に私を守ろうとなぞしおって。
 私を引き留めてしまった自分のことを責め、自分もびしょ濡れのくせに私を雨から守ろうとなぞ。
 そして、それでもその私を抱き締める手の力は弱まらず・・・・って死ぬ死ぬ、ギブギブ!
 あべこべだろうとなんだろうと、この子がこの子なりに必死になっている自体、私にとっては眩しいものだ。
 私は子供の純真さは嫌いだ。
 ついつい、相手に私流の付き合い方を求めている、私自身の姿に気づいてしまうからだ。
 弱いくせに、滅茶苦茶なくせに、私を守ろうとするその手が私を殺すことにも気づかないくせに。
 それなのに、どうして人の子は、誰かを守ろうとするのだろうか。
 大人から教えて貰ったことに縋り付き、それを使ってなんとか誰かを守れないだろうか、
 大事に持っていたチョコを使ってなんとか誰かと一緒にいられないだろうか?
 だから、嫌いなんだ、子供は。
 目の前の相手を見ずに、自分の知ってる方法論にだけ取り憑かれおって。
 たかだか私を引き留めるだけの事に、かけがえの無いものをあっさりと使いおって。
 腹が立つ。
 なぜ私を無視するか。
 なぜ自分を無視するか。
 
 
 なぜ私は、そうして誰彼とも無視してしまう、弱い子供を無視してしまうのか。
 腹が立つ。
 無性に、腹が立つ。
 この高貴なる妖斑様は、そんな狭量な小者では無いぞ!
 
 
 『人はなんと脆弱な生き物だ。 弱いものは嫌いなんだ。』
 『弱いくせして他人を気遣い、力も無いくせに必死に誰かを守ろうとする。』
 『この子も・・』
 
 『あいつも・・・』
 
 
 
 私は斑。
 この子を助け守ってやることなど造作も無い。
 私は先生だ。
 
 
 『な〜つめぇ〜っ!』
 
 『にゃんにゃん、にゃん!にゃ〜ん♪』
 
 
 
 『しょうがない。』
 
 私が、色々と教えてやらねばならんな。
 
 
 
 
 こら待て夏目。
 
 先生を置いていく奴があるか!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                              ◆ 『』内文章、アニメ『夏目友人帳』より引用 ◆
 
 

 

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                              ■■ 秋冷たし夏の果て ■■

     
 
 
 
 
 ごきげんよう、紅い瞳です。
 
 
 なんか台風が来てるみたいですねぇ、すっかり秋モードです。
 で、今日はなにを書くかというと、いつも通りです。
 適当に、なんか書きます。
 どっちかっていうと、ネタ消化気味に書きます。
 今のうちに書いておかないと、書く暇が無くなってしまいますからね。
 今日書けば、今日のネタが無いことは誤魔化せますからね。
 よし、それでいこう。
 
 さて、早速ですがお酒話題ー。
 日本酒がいいのが無かったので、ウイスキーとブランデーいきました。
 お財布と相談したところ、わるい、この間無理って言ったのありゃ嘘だ、嘘っていうか計算間違えた、
 余裕あったあったまだいける、という案配だったものでしたから、二本まとめて買ってしまいました。
 そんな、お高く無いものではありますけれども。 デッドラインは越えない、そんな買い物です。
 ということで、ちょいっと感想。
 
 
 
 フォアローゼズ:
 赤ラベルの方。バーボンウイスキー。薔薇。
 選んだ理由は薔薇に決まっています。
 そして味も香りも薔薇一色。
 薔薇の花と葉を溶いて練り込んだようなまろやかな舌触りと喉越し、そしてそれと一体化した吸い付くよ
 うな香り。
 うん、今まで飲んだウイスキーの中ではかなり毛並みが違うけれど、一番美味しかったですね。
 味の変化度は低いけど、この味自体が好みに合っていたというか、心身共に薔薇に包まれるイメージ
 でいくと結構いけます。まさにフォアローゼズ。恐れ入りました。
 ただ、これを他の人に飲ませたら、これは無い、の一蹴りでしたけれど、それもわからなくは無い感じで
 はありますね。
 この価格の割には方向性がきっかり決まっている分だけ美味しかった、という感じ。
 私は好きな、この一本は。
 同じ価格帯のジョニーウォーカーの赤は対照的に、可もなく不可も無く満遍無く味を取り揃えた平均
 タイプで、あれはあれで美味しかったけれど、また買うなら私は薔薇買いに決定ですね。
 
 サントリーブランデーV.S.O.P:
 フロスティじゃ無い方。ていうかフロスティは前に飲んだね。
 まず香りはほとんど無い。ええー、ブランデーでしょうに。
 とは言えブランデーはフロスティに続きこれでまだ人生二本目なので、まぁこんなものもあるのだろうね、
 と、人生まだ四本目のウイスキーのときには無かった殊勝さで納得。反省してますw
 で、肝心の味はというと、辛い。ええー、ブランデーでしょうに。(以下略)。
 最初微かに甘味はあるのだけれど、飲めば飲むほどに他を圧するほどの辛味が幅をきかせていて、
 飲みきったあとの香りは、なんか濃厚な乾燥したカレー粉の匂いがしました。
 ・・・・よく紅い瞳は表現が極端過ぎるていうか訳わかんないと言われますけれど、ほんとにそう感じたん
 だってば!
 ウイスキーには苦みとかそういう系を、ブランデーには甘さを求めていたのでちょっとがっかりしましたけれ
 ど、まぁこれはこれでいいんじゃない? なんかチーズとかと合いそうな気もするしいいんじゃない?
 という感じではありますけれど。
 
 
 と、いうお酒話に関連して。
 
 
 夏目貴志 (夏目友人帳) : 真面目
 シュタイン博士 (ソウルイーター) : ただのサディストな快楽主義者、その他
 黄忠 (恋姫無双) : 若ママ
 天狐空幻 (我が家のお稲荷さま。) : 愉しい人生家
 宮子 (ひだまり365) : 天然ぱわー
 乃木坂春香 (乃木坂春香の秘密) : オタク
 風花 (セキレイ) : 酔っぱらい
 乱崎凶華 (狂乱家族日記) : 神
 キュルケ・フォン・ツェルプスト (ゼロの使い魔3) : 愛の伝道師
 C.C. (コートギアスR2) : 魔女
 坂田銀時 (銀魂) : いい加減侍
 
 
 今観ているアニメの各作品ごとで、私が一番好きなキャラは誰? みたいな。
 
 選考基準は、あくまでその作品の中で「誰かひとり」を選ぶとしたら、です。
 つまり、上位三人までを選べとかの場合の一位とは違います。
 たとえば恋姫無双では、絶対に誰かひとりといった場合は、散々迷った上に黄忠を挙げたのですけれど、
 これが三人選べとなったら、一位:趙雲 二位:孫策 三位:関羽 となります。三位にすら入らないって・・
 まー、三人選んだ場合と同じ作品もありますけれど、その辺りはノータッチで。
 といいつつ、誰かひとりと限定された場合、主人公もしくは主役がまんま選ばれてるのもありますけれど、
 それはご愛敬だったりもします。 可愛げが無くてすみません。(矛盾しとる)
 どうでしょうか? 私が選びそうなキャラ、選びそうもないようなキャラがいましたでしょうか?
 自分的には妥当な選抜したつもりではあるのですけれどね。
 というか、趣味丸出しだなおい、おいおい。
 きゃー恥ずかしー穴があったら埋めちゃいたいくらい! (ん?)
 
 趣味といえば、お酒な。 そこに繋がるわけです。 無理矢理って言うな。
 酒飲みキャラは私大好きです。
 上に挙げた「セキレイ」の風花はもとより、「ホリック」の侑子さん、「狼と香辛料」のホロなどなど、
 その他にも「夏目友人帳」のゲストキャラはたびたびお酒持ってきてますよね。
 かわって「もやしもん」ではお酒自体が取り沙汰されていて、涎を垂らすを禁じ得ない私の頬を張り
 ながら観てました。
 だって、愉しいもの。 ていうか、人生愉しんでますもの。
 「我が家のお稲荷さま。」のクーちゃんは意外にお酒飲んでるシーン無いんですけど、あの人はもう
 お酒無しでも酔えるすごい人だものねぇ。 お酒なきゃ酔えないってのはある意味野暮ですよねぇ。
 だから逆にヤケ酒というか、管を巻いたり人生斜に構えるためにお酒を飲むキャラっていうのには、全然
 魅力を感じないのよね。
 アニメだと男キャラにそういうのが多いんだよねー、カッコつけてるだけとか逆にカッコ悪い。
 そういえば男キャラでそこそこ良い酒飲みさんは、私の知る限りでは「ブリーチ」の京楽隊長くらいかな。
 彼も微妙に愚痴入ってるけど逆にそれがちょっと可愛(以下削除)
 まーあれですよね、そういうステレオタイプというか、男はそういう風に酒を飲むイメージっていうので固定
 しちゃってて、真剣に「酒飲み」としてのキャラを描いて無いんでしょうねぇ。
 それはしょうがないっちゃしょうがないでしょうから、たとえばもうちょっと枯れた(ぉぃ)物腰柔らかいおじい
 ちゃんがしんみりとほんのりと美味しくお酒を飲むとか、そういう風のを観てみたいですねぇ。
 つーかあれだ、透き通るような美少年がお酒飲んではっちゃけとか、そういうのもなにげに良いかもしれ
 ないかも。
 今アニメでは圧倒的にお酒=女になってますから、そこらへん男の子を可愛らしく酔わせて描くとか、
 はい、そこで鼻血出した人はまず血を吹きなさい、はい、吹くじゃ無くて拭くですからね、それ以上興奮
 しちゃ駄目ですからね、はい。
 まぁ、自分で言っといてなんですけど、私は美少年よりももうちょっと年上の優雅で紳士的な人が、
 着流して色っぽく酒を月下でほろほろと飲むみたいな、そういう男の色気みたいな方がいいですねー。
 あーこれ、「陰明師」だなぁ。 あ、「陰明師」アニメ化したら絶対その辺絶対描いてネ☆
 男にとっての(男を見る女にとっても)男の酒っていうのは、「絵になる」ってこともひとつ大きな要素がある
 と思いますしね。
 なんかすごいことを平然と当たり前のように喋ってますけど、私は飲んでませんよ? 今は。
 
 うん、なにが言いたいかといいますとね。
 お酒に限らず、アニメっていうのはこうしたポイントごとに愉しんでみることも出来る、そういうものでもある
 ってことですね。
 単純にその作品の物語やテーマだけに囚われずに、自由にちょいちょいと摘み食い的に愉しむことは、
 たとえば萌えだけを取り出して愉しむことに通じることでもありますね。
 ていうかあれ?
 これってもしかして、酒飲み萌えっていうの? 酒属性?
 新ジャンル!
 ・・・。
 じゃ、それで。 (ツッコミ無しでお願いします)
 
 
 
 
 ◆
 
 
 突発的ツッコミ事項: 前回だかそれくらいのギアスにて
 
 自分はナイトオブワンを超えるナイトオブゼロです→プライド無き名だ=中二病杉だろそれ
 →ていうかお前もな=ナイトオブなんたら時点で既に
 
 ナイトオブいくつなのかも判明しないままに、初登場=退場の可哀想な人に、捧げます。
 あなたお名前なんでしたっけ? (ひどすぎ)
 
 
 
 ◆
 
 
 新作アニメ制作決定した、もしくはしている作品のお話。
 来期開始じゃないけれど、注目のアニメ。
 いまさらですけど。 遅くなりまして。
 
 鋼の錬金術師 TVアニメ新シリーズ始動:
 まさかの発表。
 でも話によると、アニメ版の続きでは無く、原作を忠実に再現したものに作り直すらしい。
 公式にはまだ書いてないので未確定ですけど、それは少し残念でした。
 原作バージョンなら原作読めばいいし、アニメ版はアニメでしか見れないし。
 個人的には、この作品に関してはあまり良いことでは無い気がします。
 作品の内容的にも、あれはオリジナル展開だからこそアニメ化した意味があり、原作は漫画で充分
 完結しているので、そもそも映像化を必要としないよう思います。
 
 TVアニメ「蒼天航路」制作スタート:
 驚天動地。
 面白すぎる。
 アニメ化決定というだけで、既に面白すぎる。 ありえない。 あはは、わはははは。
 ・・・大丈夫かな?
 いや、大丈夫じゃないだろう。 (色々な意味で)
 
 
 マリア様がみてる4thシーズン2009年1月より:
 関東・東海・関西エリアのU局及びAT-Xにて。
 ウチとこはTVKになるのかな。
 ・・・・。
 ・・・・・・・・。
 さ  ぁ  て 、 落  ち  着  こ  う  か 。 
 話    は    そ    れ    か    ら    だ  。
 
 
 
 
 ◆
 
 
 恋姫無双感想のお時間です。 先週分。
 
 別に尚香さんが残念な子だって訳じゃ無かったんですね。 (挨拶)
 呉編。
 というか、やっと関羽ご一行が呉に来た御陰で、孫尚香以外の呉の面々はつとーじょー。
 ・・・あと何話残ってるか知ってる? 遅すぎでしょ。
 って、あーあのOP・EDのピンクの残り二人は孫策・孫権さん姉妹でしたか。
 これでピンク三人が孫家三姉妹ということで決定。
 で、眼鏡は予想通り周瑜な訳ね。
 って、OP・EDに出てないけど、大喬・小喬姉妹+陸遜+甘寧さらには孫静まで登場。
 ・・・・・なにこの、終盤に来ての大量初登場は。 てか呉陣営だけ滅茶苦茶人多いんですけど。
 あ・・・そういえば張昭殿までいらっしゃる・・・・なぜかお爺ちゃんまんまだけどw
 そして大喬・小喬も同じく女の子のまんま。 あー、べつに性別反転は絶対では無いのね。
 そういえば馬騰さんも親父さんでしたし、あ、でも孫堅はおかーさまみたいですね。 基準がわからーん。
 で。
 キャラも多い分、萌えポイントも多し。
 てか、私的には孫策様がストライク。
 『まったく、頭が良すぎるというのも考えものね♪』
 『あとあの張飛って子も面白いわね。もしあれ以上大きくならないのなら、庭で飼いたいぐらい♪』
 私馬鹿ですけど馬鹿すぎるというのも考えものですけれど、お仕えしたいー、一生な。
 あー、周瑜さん嬉しいだろうなぁこれ、なんでもやっちゃうだろうなこれ、羨ましいなこの軍師。
 あと良かったら私も庭で飼ってやってください。
 笑わせることは出来なくても笑われることなら出来ます!
 覇気も優しさも賢さも美しさも兼ね備え、おまけに人としての魅力とお戯れまで全開の江東の小覇王。
 そしてその実は孫策様。ていうか孫策様。つまり、孫策様。
 やべーなに言ってんのかわかりすぎるくらいわかってきて、困ります。 (お前だけな)
 ていうか、萌えポイント多いとか言っといて、孫策様のことしか喋ってねー。
 ていうか孫策様のことなら三日三晩語れそうだから困るんだ、この人は。
 
 オーケイ、抑えよう。 どうどう。
 
 えと、他には張飛と孫尚香の不毛な胸勝負とか、陸遜さんの恥知らずな書痴だったり(性的な意味で)
 、孫権さんの姉様萌えっぷりだったり(ドジっ子気味)、大喬・小喬が双子で歌いまーすだったり、
 孫尚香が帰ってきたのが喜ばれることはしても怒られることは絶対無いわが次のターンでボコボコだった
 り、全員当主以外ヘソ出しルックな孫家だったり、尚香の弓がおもちゃだったり(でも当たる)、孔明が
 滅茶苦茶頑張ったり(弁舌で)、甘寧が怒りすぎて寄り目過ぎだったり、今思い出したけど甘寧さん
 はヘソ出しじゃなかったり、関羽さんは(無実なのも含めて)なにもやってなかったり、ヘンタイ仮面は遂に
 本編から閉め出されてたり(というか予告編でも扱いは散々)。
 趙雲さん・・・おいたわしや・・・(ぉぃ)
 うん、趙雲さん好きなんですけどねぇ、私は。
 完全にキャラ紹介編として本編が進んでそれで終わりそうなので、関羽さんいじりのエキスパートとして
 の趙雲さんに徹してしまうとそれが出来なくなるのは仕方無いっていうのはわかるんですけど、ちょっと
 これは勿体無い限り。
 いや華蝶仮面も悪くは無いっていうか爆笑なんですけれど、それは趙雲さん的にはオプションに過ぎ
 無いし、うーん勿体無いよねぇ。
 趙雲さんは関羽さんいじりを兼ねて、関羽さんを主軸とした世直し物語という、誰もが忘れかけている
 本筋を演じられるメイン級キャラですし、是非、そういった展開を第二期でやって欲しいです。
 てか、第二期は絶対に作りなさいよ、これ。 
 このキャラ紹介編で終わったら、ほんとゲームの宣伝扱いを免れないよ、これ。
 うん、そもそもこの作品はアニメとして抜群に面白いし潜在力もありますし、ふつーに商品的作品にもな
 ると思いますしね。
 第二期を作って、このキャラ紹介編を無駄にしないように、是非是非、お願い申し上げます。
 だってさぁ、関羽さんの世直し視点と、他の勢力の三国志的ぶつかり合いが混ざってひとつになったら、
 それこそ滅茶苦茶面白そうなものになりますじゃん?
 ラストの周瑜さんの振りからして、むしろやる気満々な気配すらありますよね。
 ましてやキャラ紹介として、これだけ世界観というか人物観を独自解釈で作り上げたんですから、
 それを使って新しい三国志をやっていくことは充分可能、いえいえ、むしろそれはやるべきことでしょう。
 世界中で親しまれている大古典にして大衆文化の中の栄えある作品である三国志を、この「恋姫無
 双」という「やり方」で、その文化としての巨大な「三国志」にまたひとつ還元するために。
 もっともっと、三国志は遊ばれ楽しまれていいと思う。
 それは別に、設定に忠実に原本を再現することとは反しないことだと思いますよ。
 
 この作品は、このキャラ紹介編としてだけでもなかなか愉しませてうーんと唸らせてくれたものでしたが、
 さらにこれを前振りとして、第二期を作ったとしたら、これはまさに大傑作として評価したい気持ちにさせ
 てくれるかもです。
 次回、なんだかいきなり劉備が登場するそーですけれど(ってもう放送しましたけど私はまだ見てない)、
 どーかどーか、その辺りで変なまとめ方をして終わらせたりはして欲しく無い、というのが全く正直なところ
 です。
 まーそうなったらそうなったで、なんとかなりますけどねー。
 それでもヘンタイ仮面なら、ヘンタイ仮面ならきっとなんとかしてくれる!
 ・・・・駄目な気がしてきた。 (某中華大陸の方を見つめながら)
 
 
 
 では、お終い。
 書きっぱなし上等。
 
 
 
 
 
 
 P.S:
 当魔術師の工房が、4万アクセスを記録しました。
 やったー、ぱちぱちぱち。 じゃー騒ごうお祭りだ、踊れ歌え飲め!
 地道にまったりとここまで来ましたけれど、来てくださっている方々、お付き合いしてくださっている方々、
 みなさまに御礼申し上げます。
 まだまだこれからもいくかんね!
 まったりとのんびりとだらだらと頭に来るくらいにゆっくり、と。
 
 これからも応援&お付き合いしてくださることをお願い申し上げます♪
 さて、次は5万を目指していきますか。
 
 
 
 

 

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                             ■■ 空に落ちる友は流れ ■■

     
 
 
 
 
 『にゃんこ先生は、ずっといたいと思える場所ってあったか?』
 『ふん、そんなもの私には一生必要無いさ。』
 『ふぅん、俺もね、先生。ずーっとそう思っていたんだけどなぁ。』
 

                       〜夏目友人帳・第十話・夏目とにゃんこ先生の会話より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 夏は、好きだ。
 暑くて、暑くて、それなのに涼しい。
 なんだろうな、それはやっぱり精神的なものなのだろうか。
 いや、なんだよ、精神的なものって。
 もっと具体的なことが俺の頭の中にはあるのに、この茹だるような涼風の下では、そうして澄まして
 いられる。
 にゃんこ先生がころころと転がりながら後ろを歩いている。
 なぜだろうな、ちょっと前までだったら、蹴り飛ばしてやりたいと思ったはずなのに。
 猫だか狸だかわからないような変な格好をして、人の言葉を話すどころか、腹が立つほどにしっかりと
 意見をしてくる。
 今目の前に転がっているそいつが妖怪だろうとなんだろうと、ついムキになって反論してしまう。
 にゃんこ先生が正体を顕して襲ってきたら、思いっきりぶん殴る。
 それは妖怪という異質なものとしてへの憎悪とかそういうものじゃ無く、にゃんこ先生というひとりのむかつく
 奴として、腹立たしいままにすることだ。
 なんでだろう、前はそんなことは無かったはずなのに。
 ただずっと、妖怪に襲われれば、逃げ回るだけだったはずなのに。
 不思議だ。
 
 なのに、その不思議さがあまり、気にならないんだよ、先生。
 
 ちぢれ雲が伸びている。
 秋まではまだ遠い、夏の真ん中。
 気が付くと、先生がいる。
 どこから手に入れてくるのかわからないけれど、魚とか酒とか、愉しんでいる。
 にゃんこ先生は、友達なんだろうか。
 実感は、あまり無い。
 友達という言葉はとても空疎で、それは思い浮かべたそらから消えていった。
 一体なにをやっているんだろうか。
 その問いもまた、軽かった。
 先生がそこにいる。
 ただ、それだけだった。
 
 
 
 ◆
 
 北本達と連んでいるとき、時間を忘れている。 
 忘れたいなにかがある訳でも、忘れていたい時間がある訳でも無かった。
 あいつらがそこにいて、あいつらとほどほどに馬鹿をやって、ひとりで寂しげに俯いて、それを悟られない
 ようにゆっくりと笑って。
 それが虚しいことだと思う心は、いつの間にか消えていた。
 それは、言葉だけの虚無だったんだろうな。
 なにかを慮っていたのか、なにかの筋を通していたのか知らないけれど、その虚しさそのものは、
 なんの魅力も思い入れも無いことだった。
 誰かのために、その虚しさをやっぱり感じていたんだろうか。
 心の底からすべて楽しい気持ちになれない、友達とじっくりと遊べない、その不誠実さになにを感じて
 いたんだろうか。
 北本達への罪悪感だろうか?
 いや違うな。
 お世話になってる塔子さん達の手前だから、もしくは罪悪感からだろうか?
 罪悪感って、なんだ?
 ただ北本達と楽しくやりたい、塔子さんと滋さんと優しく暮らしたい、それだけなんじゃ無いのか?
 
 にゃんこ先生が、不気味な笑顔をぶら下げて、さっきからこっちをちらちらとみている。
 
 気色悪い。 追っ払うか。
 そうだよな、それも違うんだよな。
 その罪悪感はただ、北本達や塔子さんに報いたいという自分の気持ちが満たされない、ただそこから
 出てきているものなんだ。
 それ以外の、なにものでも無い。
 だから、彼らとただ一緒にいるだけで充分、というのも嘘なんだ。
 彼らに報いたい、彼らにも楽しく優しい気分になって貰いたい、そうしてあげることが出来るはずなんだと
 自分を信じている、その事実は確かなんだ。
 だから、罪悪感は、必要なんだな。
 自分を責めることは愚かなことじゃ無い、けど、自分を責めることは目的じゃ無い。
 もどかしい。
 身が切られそうだ。
 その苦しみから逃れたいと考えてしまうことは、勿論ある。
 でもそれ以上に、もどかしいほどに、身を切られるほどに、大切な誰かのために、なにかのために行動し
 考えて、なんとかしたいと切実に思っているんだ。
 それを自覚するためにこそ、罪悪感がある。
 苦しみは、苦しみがあることを忘れないためにこそ、存在しているのだろう。
 
 苦しみから逃れたい、というのはだから、嘘だ。
 大いなる、勘違いだ。
 
 先生の馬鹿面を見ていると、ひとりだけシリアスな顔をしているのが馬鹿馬鹿しくなってくる。
 苦渋に満ちた顔をして、苦しみから逃げないように踏ん張っているだけなのが、阿呆らしく思える。
 どうなんだろうな、先生。
 それでも簡単に笑うことは出来無いんだ。
 それはただ、不器用なだけってことで済ましてもいいのだろうか。
 やっぱり、素直に笑えるようになるべきなんだろか。
 へ っ く し
 猫に見えなくもない変な生き物が、目の前で盛大にくしゃみをした。
 先生・・・わざわざ人の顔の前でするなよ・・・・蹴るぞ
 顔は笑わずとも、心の中でひとつ、波紋が広がっていく。
 思わず身震いがして、両肩を抱き締めて蹲りたくなってしまう。
 ぞくぞくするような、怖いような、寂しいような。
 そこに、楽しいとか嬉しいとか、そういう暢気な言葉がひとつも当てはまらないことが気にならない。
 ただ、体の中で震えている。
 夏の日差しが、じりじりと肌を冷やしていく。
 熱い、マグマのように、それは胸の水底を溶かしていく。
 この感覚。
 この感覚が、すべてなんだ。
 いつだって、震えてしまう。
 独りだけ、震えてしまう。
 
 それに、どうしようも無く、惹かれている。
 
 
 
 ◆
 
 もし、顔が崩れたら、どうしよう。
 もし、髪がすべて焼け焦げたら、どうだろう。
 なにも出来なくなったら、どうなるだろう。
 みんなの前に、それでもいられるだろうか。
 もし踏み留まるとしたら、一体それはどうしてだろうか。
 居たたまれなくなり、けれど必死にみんなの前から飛び出そうとする自分の足を殺す確率は高い。
 絶対に離れてはいけない、逃げてはいけないと必死に叫んで両足を切り刻むだろう。
 でもたぶん、その足を引きずり倒して、みんなのことを思いながら、脇目も振らずにみんなの前から
 姿を消そうとするだろう。 
 恥ずかしさや惨めさは耐えられるし、それは耐えなくてはいけないこととして捉えられる。
 でも、彼らに報いることの出来る自分を魅せられず、その自分でいられなくなってしまったとしたら、
 たぶん、その強引な自分の制止を振り切ることこそを、最もしなければならない事として捉えるだろう。
 ただいつまでも、彼らと一緒にいたかっただけなのに。
 一緒にいたからこそ、頑張れたのに。
 でももはや、一緒にいてもなにも出来なくなってしまったとしたら・・・
 一緒になんて、いられない・・・
 一緒にいることだけを目的にして居座るだなんて・・・できない・・・・
 手を伸ばすことが出来なくなったら、どうだろう。
 体が壊れてしまったら、精神が崩壊してしまったら、どうだろう。
 美しい退場の姿にすべての力を込めることなんて、本当に出来るのだろうか。
 そんなにみんなと一緒にいたいと思っているのに、消えることなど出来るのだろうか。
 無理、なのだろう。
 自ら消えることを選択することなど、あり得ないのだろう。
 この苦しみがある限り、その苦しみから逃げることなど出来ないように。
 
 じりじりと、寝汗は、絶えない。
 
 それは、地獄なんだろうか。
 みんなの前で、崩れゆく自らの姿を晒してしまうというのは。
 壊れていくのをひた隠しにし、そして隠し切れなくなる直前で身を隠そうと思ってしまうことは。
 それは、罪なんだろうか。
 現在進行の形で、自分が崩れていくのを感じる中で、一番考えていることはなんだろうか。
 ぞっくりと死にそうになるほどの絶望を胸の水底に湛えながら、震えながら、それとは全く別の場所で、
 なにかを考え続けてはいないだろうか。
 みんなと、一緒に、いたい。
 もしくは。
 みんなの前から、消え去りたい。
 そう必死に考えているうちには、決して絶望感に支配されることは無い。
 でもそれは、その絶望感から目を逸らしていることにも繋がるのかもしれない。
 必死になればなるほど、冷静に冷徹に静まり返るほどに、自分がわからなくなっていくのかもしれない。
 いつのまにか、にゃんこ先生はどこかへ行っていた。
 目を閉じる。
 なにも見えない。
 目を開ける。
 凄まじい世界が、見える。
 足は地面に食いつかれ、肌は風に食い破られる。
 体は熱を帯び、全身が砂漠のように爛れていく。
 顔形は変わり、髪も変色している。
 自分が男なのか女なのかも、もうわからない。
 小さな恐怖が、目先をかすめていった。
 それなのに、なぜこんなにも生きて動いているのだろう。
 果たして、体は、精神は、未だ存在しているのだろうか。
 響く自分の呟きだけが、外界を認識する術を与えている。
 声だけが、聞こえる。
 ただその声の広がるままに、その波紋の中だけに、生きている。
 その波紋が広がり切れば、あとは消えていくだけなのかもしれない。
 
 でも、それは嘘だ。
 
 その波紋を立てるのは、他ならぬこの声だ。
 水面に叫び、それで波が紋を描いて自分を導き出している。
 その波紋が消えることと、だから自分が消えることはイコールでは無い。
 波紋が起きないだけで、この声と水面が存在していることには変わり無い。
 生きていることには、変わり無い。
 嫋、嫋。
 水面に映える月影が揺れる。
 その下に佇む自らの姿に実感が持てない。
 それをも含んだ、自分を愉しんでやろうか。
 なにもかも出来なくなり、なにも感じ考えることも出来なくなり、それでも生きている自分のままに。
 全く新しい自分が見えた。
 波のまにまに水底へと沈んでいく快楽。
 無様に黒ずんだ肌を撫で、鬱蒼と手甲に口付けを重ねていく。
 悪鬼羅刹の如くにほくそ笑み、凄絶に、遡るようにして今までの自分を喰らい尽くしていく愉しみ。
 その果てにはきっと、今まで気づかなかった自分が見えてくるような気がした。
 叫ぶように声に縋り付き、囁くままに波紋に囚われていた誰かの姿。
 その一切の波風を湯水の如くに使い果たしたとて、自分が此処にいることには変わりない。
 いっそあの月影の水面に、火を放ってしまおうか。
 その燃え盛る絶火の断末魔を糧に、踊ってしまおうか。
 踏み留まる足の力を、そのまま最初のステップに換えてしまおうか。
 嗚呼・・・・先生がいてくれれば・・・・・
 月光を背にして、目の前で踊る必死な影を見つめていた。
 そして、その黒い影がやがて落ち着きを取り戻し、ゆっくりと艶やかに踊り出すのを感じていた。
 
 うたが、聞こえる。
 
 静かな静かな、喉を刮ぎ落とすような、うたが。
 削り、削り、透明になるほどまでに高められた、その白い宝石のような、こえ。
 その歌声は、紛れも無く、この体から響いていた。
 なにもかもが、透けていく。
 踊り狂う素面の黒い影の、見つめるその先が。
 その黒い瞳と、ひとつになっていく。
 同じ、なんだ・・・・先生・・・・・・そうなんだな・・・・
 かつての体の至福に還ることも、今の体の快楽に生きることも・・・・
 ずっと・・ずっと・・・生きていることには・・・・変わりない・・・・
 還るとか還らないとか・・・関係ないんだ・・・
 同じことの繰り返し、そして違うことへと至らずを得られない悲しみ。
 全部、全部、感じている。
 かつての自分を、哀れむ歌。
 なんとかそれを取り戻そうと、かつての必死だった自分へ還ろうと必死になる自分。
 なにも否定することなんて無い、なにも縋り付くものなんて無い。
 今でも確かに、遠くで、近くで、自分を励まし、助けようとする声が聞こえる。
 頑張れ、頑張れ、もう少しだ。
 それはとても強く、純真で、にも関わらず、哀しみをそれは帯びていて。
 今を生きようと足掻くことが、その声を張り上げることが、過去の自分を消してしまうだけのことを、
 それを伝えようとする、真摯な歌が、きこえる。
 先生が、妙に真面目面を下げて、こっちをみてる。
 満たされた杯を一杯目の前に置いて、その先にあるこの壊れた体を見つめている。
 
 笑った。
 今のこの、どうしようも無く崩れた体の、その凄まじさをこそ感じるために。
 愉しもう、愉しもう。
 この体のなにが壊れ、この崩壊がみんなにどう思われ、そして今、自分がどうなっているのかを、
 激しく、容赦無く、圧倒的に深く感じるために。
 還ろう。
 かつて、先へ先へと進もうと純真に信じられた、あの不動不変の月影の世界へ。
 
 
 それが、俺だったんだな、先生。
 
 
 
 
 
 ◆
 
 刺し抜かれるような、絶望。
 積み木を崩されるような、痛み。
 熱い。
 にも関わらず、その熱さを感じている俺の肌は、異様に冷たい。
 その激変した世界は魂を揺さぶり、無限の興味を引き起こす。
 踊り、踊り狂い、そして落ち着いてその世界での生活を修めてみたい。
 死までの道筋をすべて踏み潰し、死と同化させた自らの存在を愉しみたい。
 その欲望の果てにある、ただひとつの俺の存在を感じながら、滔々と深く広く、生きてみたい。
 
 その夢を、捨てる必要なんて、無いんじゃないのか?
 
 それが悪鬼の所業だとしても、それ自体は俺とはなんの関係も無い。
 俺はその悪業すらも愉しめる、ただそういう俺なだけなんだから。
 真面目面下げたからって、魂が美しくなる訳でも無いよな。
 馬鹿面下げたからって、魂が醜くなる訳でも無いんだよな。
 どんどんと崩れ果てていく自分を感じ、自らの築き上げてきたものがどうにもならぬうちに消えていくのを
 見つめていけば、どうしてもわかってしまう。
 糞真面目に生きれば幸せになれるだなんて、よく考えれば傲慢だ。
 懸命に脇目も振らずに真っ直ぐに正直に生きれば救われる、極楽にいけるというのは、確かにそうだ。
 自分を疑わなければ、自分を見つめる瞳を持たなければ、その思い込みのままに死んでいけるのだか
 ら、死んだあとにそういう世界にいけるのは確かなんだろうな。
 修行次第では、生きながらそういう世界に行けることも、やっぱりあるんだろうな。
 でも俺は、そんな世界に生きたいとも思わないし、そうして生きた自分を救ってくれる神様になんて、
 興味の欠片も無い。
 そんなものへの信心のために、俺は俺自身から逃げたりなんて、絶対にしたく無い。
 俺は、俺が好きだ。
 俺は、俺を殺してしまいたいほどに憎んでいる。
 俺は、俺を信じてなどいない。
 俺は、俺が俺と向き合うことを許してくれる、そんな神様をずっと信じてる。
 そしてその神様が、その誰かが、俺を救ってくれることは、絶対に無い。
 
 誰かが、ずっと、みてる。
 
 馬鹿面下げたからって、魂が美しくなる訳でも無いよな。
 真面目面下げたからって、魂が醜くなる訳でも無いんだよな。
 懸命になろうが巫山戯てようが、それがなにかを決めるって言ったら、嘘だ。
 馬鹿面下げてても、真面目面下げてても、仏になろうと鬼になろうとも、それでも自分の魂を生きられ
 無いというのなら、大嘘だ。
 どんな自分の姿にも、それぞれの生きる道はある。
 そしてそれは、どこかでひとつの俺の生き筋に繋がっているはずだ。
 仏の俺も俺であり。
 鬼の俺も俺であり。
 そしてその仏の俺と鬼の俺を超えた、どの俺とも繋がる俺はいる。
 仏の俺にも、鬼の俺にも、変わらぬ俺が確かにいる。
 それが俺の、不変の魂。
 それと向き合わずにはいられない。
 遙か彼方に、北本達が、塔子さん達がいるのがわかる。
 みんなの元へと至る道筋が、薄く月光に照らされながら続いている。
 俺にはそれが見える。
 それを無視しての生など、俺には無い。
 それに囚われてそれが見えなくなることなど、俺には出来ない。
 したくも、無い。
 俺が別人のように変わり果て、別人のように扱われても、俺はみんなへの道筋を踏み潰したりはしない。
 いや・・・俺が信じている神様はきっと、俺に踏み潰されるような弱い道筋なんか作ってはいないの
 かもしれないと思う。
 俺はその道筋を、だから踏み潰そうとして、悪鬼の俺になれるのかもしれないし、そしてその神様が
 救ってくれるなどとは全く思わないがゆえに、いつもその神様と、そして悪鬼の俺の所業を冷たく疑う
 ことが出来るんだ。
 だから俺は、いつもみんなの目が気になる。
 罪悪感は、無限大だ。
 俺ひとりがなにも関係無く自分の魂ばかりに生きていれば、それ自体がみんなの存在を無視している
 ことになるのだから。
 常に、みんなのことがだから、気になるんだ。
 いつも、みんなのためを考えているんだ。
 苦しくても、悲しくても、絶望しても、逃げたくても、盲目になりたくても、なにも感じたくなくても。
 俺は、みんなを感じ、そしてみんなのことを、知りたいって思えるんだ。
 
 俺は、俺の魂と向き合うことのために生きてるんじゃ無い。
 俺は、みんなと生きるためにこそ、自分の魂から逃げないだけなんだ。
 
 それが、俺の魂なんだ。
 その魂は、既に生きて、此処にいる。
 
 
 
 
 
 
 『俺は・・・・いつまで此処にいられるんだろう・・』
 
 
 
 
 
 
 
 ◆
 
 自覚していく。
 なにもかも。
 終わりも始まりも無い。
 残りの時間を伸ばすことに努め、最悪の悲しみを癒し、そして残りの時間を見つめていく。
 潮騒の如くに、時間が体内を駆け巡る。
 細切れの愉悦が、さらさらと砂の痛みと共に浸みてくる。
 小さな陶酔が、胸を広げていく。
 ざらざらと、頭の中が猫の舌で舐められていくような感触。
 くそっ・・・なんでこういうときに先生はいないんだよ・・・・っ
 痛みと同一化する。
 背に映える陽光を糊代にして、ゆっくりと痛みに溶け込んでいく。
 命がささやかに消費されていく予感。
 この快感に酔いしれたままに散るのも、悪く無い。
 なにものにも囚われず、この優しい夏空の下で、滾々と死の淵へと沈んでいくのもいい。
 でも・・・・最後に一花・・・・咲かせるのも・・・悪くない・・・
 いや、先生、それは花なんかじゃ無い。
 第一、今から咲かせるような花なんて、無いじゃないか。
 俺は、咲きっぱなしだった。
 ずっと、ずっと、萎れたり枯れかけたりしながら、それでも咲き続けた魂の花。
 迎える死のために、今までの生のために、わざわざ咲かせる花なんて、俺は持って無い。
 最後まで俺は、俺でいたい。
 ならば俺は、死とひとつになりたい。
 その死という俺の、花を、死に花を咲かせてみたい。
 どんな俺になっても、俺は歌い続けたいんだ。
 知っていたかい?  ずっと、ずっと、俺は俺のことが・・・・・・
 
 
 - どんなときにも諦めない
 - 這い上がり這い上がりそれなのに懸命に辺りを見回している
 - 這い上がった崖の上で今登ってきた崖の斜面をみつめている
 - 懸命に懸命に
 - 諦めない
 - 生きている
 - どんなにどんなに諦めてしまっていても
 
 
 
 大切な 大切な  みんなへの おもいを
 
 
 
 
 
 
 
 
 
吟醸に透ける月の空

華胥のまにまに翳す白い雲

水面に満つる神気は流れ流れ
光り果てる月の残滓は森羅に沈む
 
燦 燦
 
静かな闇は甘く疼き
声高な闇の端は踊り囃す
なにもかもを忘れている
語り出す言葉に私は無く
奏でる指先に想いも無い
震える声音が月光を結び
『叶うなら、もう一度弾きたいと思っていた。』

 
体がほどけていく
心がむすばれていく
夜気にてしっとりと濡れた瞼がひらく
なんの力も入らないただひとつの凝視
その瞳の先にはなにもない
瞳の先にあるのは
ただ
瞳だけ
無私
世界から消えた歌声だけが
此処に
響く
 
 
 

目を閉じるたびに世界は消え
 
 
目を開くたびに
 
世界はまた

 
 
目の前に 広がった
 
 
 
 
『ずっと、ずっとあの方のためにだけ弾いてきた・・』
 
 
『だから・・・・・』
 
 
『もし・・もう一度弾くことが叶うのなら・・』
 
『優しくて大切な友人のため、』
 
 
『あなたのために弾きたいと思っていた。』
 
 
 
 
『アカガネ・・・・聞いてくれますか?』
 
 
 
 
 
私の魂の歌を
 
いいえ
 
私の心を
 
聴いてくれますか?
 
 
あなたのために この曲を この夜を 捧げます
 

 

 
 
 

ただ  ずっと ・・・

 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 『遠くで音楽が聞こえた。』
 『聴いたことも無いような、美しい音。』
 
 『それでもその音は、僕の指から、空気を揺らして・・・』
 
 
 天壌に満ちる月の水面。
 その畔で、俺の魂は、嫋々と誰かの心のままに、揺れた。
 
 優しく映える、透明な波紋を描きながら。
 
 
 
 
 

『まるで』

 

『空へ落ちるように』

『アサギは、僕から剥がれていった。』

 
 

ああ・・・そうだな・・・

 
 
 

『深く深く、眠っただけだよ。』

 
 

また歌を弾ける、そのときまで。

 
 
 

『残されていった琴を弾いてみたけれど、もう、あんな美しい音は出なかった。』

 

『あの音は俺の指では無く、彼女の心が奏でたのだろう。』

 
 
 
 
 
 分かれ道。
 その途中で朝を迎えている。
 大きく流れた蒼空が、絶対的に開けていく。
 
 『またな、アサギ。』
 『またな、蛇の目さん。』
 アサギを、よろしくな。
 
 
 
 『どこ行ってたんだよ先生。 人が大変なときに。』
 
 『気が済んだか? お人好しめ。』
 
 
 
 
 ああ。
 
 
 
 済んだよ。
 
 
 
 
 とても、とても、いい朝になったよ、先生。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                              ◆ 『』内文章、アニメ『夏目友人帳』より引用 ◆
 
 
 

 

-- 080912--                    

 

         

                           ■■アニメソムリエ略してアニメ■■

     
 
 
 
 
 天高くヲタ萌ゆる秋。 (挨拶)
 
 
 残念ですが暑いです、略して残暑ともう二度と言わない紅い瞳です、ごきげんよう。
 もう扇風機片付けたものね! もう後にはひけないものね!
 もう色んな意味で後には引けないかもしれないこの人ですけれど、こんばんわ♪ (全力な笑顔で)
 
 
 
 
 ということで、秋です。 涼しいです。
 ひゃっほーい。
 喜び過ぎ、喜びすぎです。
 でもこんなに喜ぶ影には、きっとなにかが犠牲になったとか、そういうのがあるんだと思います。
 ああ夏・・・・来年の夏・・早く来ないかなぁ・・・・・ (察してやってください)
 
 さて、と。 (色々片づけながら)
 今日は10月から始まるアニメについてのお話をさせて頂きましょう。
 いやなんか、タイトルにアニメソムリエとか聞き慣れないっていうか聞き捨てならない言葉が書いて
 ありますけれど、ツッコミ入れてくれた人、ありがとうありがとう。
 普通に聞き捨ててくれた人というか普通に気づかなかった人、こんちくしょういらっしゃい。
 アニメソムリエ。
 ソムリエっていうと、なんかこう、蘊蓄を垂れて、その人に合うワインだかなんだかをお勧めするんじゃ
 ないのかなぁ、という漠然な感じです。 (それはお前の頭の中だ)
 でまぁ、単刀直入に言いますと、私はですね、それになりたいんです。 アニメソムリエ。
 ・・・・。
 どうツッコミ入れたり無視したりすればいいのかわからない人、まぁ、ちょっとお待ちを。
 私はそんな大それたことは出来ませんし、そういうことをやるために必要な努力をする気も無い
 のです。 私ほど不勉強でやる気の無い者も珍しいのです。 そこは誇っていい。 おーれぃ!
 
 (しばらくお待ちください)
 
 で、大体アニメの蘊蓄なんてわからないですし、ましてお客様に合うアニメがなんだかなど、わかるよしも
 無い。
 私は私の好きなアニメを好きなように語り、苦手なアニメも楽しもうとして取っ組み合い、そうして好きに
 なっていく過程を、ただ言葉という身を以てお見せしていくだけなのです。
 私はこんなにアニメを楽しんでる、このアニメを楽しむためにこんなことを考えている、ていうか楽しいなこれ
 、楽しすぎだろこれ、シェフを呼べ!!
 ただ、それだけなのです。
 そういう私を見て、他の方々がそのアニメに興味を持ってくださることこそ、そこに私のアニメソムリエとして
 の目的があるので御座います。 別に今思いついて理屈を繋げた訳じゃ無いんだからねっ。 たぶん。
 ですから、こちらの作品はあちらより優れている、ゆえにお勧めしますだの、この作品のこういった場所は
 評価に値するので観るべきですよだの、そういうことはアニメソムリエとしてはあまり望む行為では無い
 ので御座います。
 ただただ、楽しく、愉しく。
 その上で、色々と長々と思うままに論じたい。
 
 これをワインのソムリエに置き換えますと、大酒をかっ喰らい、散々酔っぱらった上に管を延々と巻き続け
 る、ということになります。
 
 
 私が、アニメだ! ←某「俺がガンダムだ!」の人風に
 
 
 じゃ、次はアニメマイスターを目指そう、うん。
 私が存在することに意味がある、的な。
 うん、間違ってないよ、間違ってないよ私。 ごめんなさい。
 
 
 
 
 ええと、おとなしく10月からのアニメの紹介、っていうか私の思い入れを書きますね。 書かせてください。
 
 
 
 
 
 ◆
 
 
 とらドラ    手乗り度:☆☆☆ (期待度 ★★)
 手乗りタイガー! 、というのが良いよというお勧めがあったというか、そのフレーズがいいねという私の
 あくなき共感性(妄想)の産物により生み出された期待感! しょっぱなからノリノリで壊れてますね!
 というか今のところはその一点で期待してます。とにかく手乗ればいい!(壊)
 
 伯爵と妖精:    伯爵度:☆☆ (期待度 ★★)
 特に選んだ理由は無いよ。
 というより、選ばない理由も無かったので。
 だって伯爵だぜ? 妖精だぜ? そりゃ選ぶさ。 (だそうです)
 
 ヒャッコ:    元気度:☆☆ (期待度 ★)
 元気良さそう・・・・(お前・・)
 いえ、元気なのは大好きです。良いことです!
 『虎子たちのペースにはまり、いつも散々な目に遭う係。』>キャラ紹介
 「係」ってところにきゅぴーんときた。なんかきた。
 
 黒執事:    黒度:☆☆☆ (期待度 ★★★★)
 だから黒ってなによ黒ってww執事黒っwwどういうことwwしwびwれwるww
 えー、話によると、別に腹黒という意味じゃ無く、オカルトらしいです。 ちっ。(ぉぃ)
 けども。
 『上質な執事アニメで、至高なるひとときをあなたに…』>イントロダクション
 オ ー ケ ー 、 乗  っ  た  り  ま  す 。 ←すっごいやる気出てきた人
 
 夜桜四重奏    ネーミング度:☆☆ (期待度 ★)
 四重奏はカルテットと読みます。 よざくらかるてっと。
 語呂・・・良いな・・・
 頑張ります。 (ぉぃ)
 
 CLANNAD 〜AFTER STORY〜:    義理度:☆☆☆☆ (期待度 ★)
 前期をばっちり観たので、義理で。
 だってぇ、観ないとなんか後味悪そうなんだもん〜、気になるもの〜。
 クラナドファンの人は、石を投げたら良いと思う。 (義理とか言ってる奴に)
 
 地獄少女 三鼎:    地獄少女度:☆☆☆☆☆ (期待度 ★★★★)
 うわ、公式サイトが変わった。 二期までは同じ感じだったのに。
 けれどいわずもがなの地獄少女。オリジナルアニメを渇望している人にはお勧めの一品。
 たぶんシーズン変わってもやることは、お嬢が「いっぺん、死んでみる?(cv:能登)」の一点張りで決定
 でしょうから、それを基点にして二期までのファンはその不動のマンネリズムを愉しむと共に、二期で魅せ
 た一期との違いを意識して、また三期としての今回もそのマンネリ瞬間までの道筋の変化を感じてみる
 のは面白いでしょう。 地獄で少女初心者には、やぱり能登かわいいよ能登で。(いやいやいやいや)
 
 屍姫 赫    中二病度:☆ (期待度 ★★★)
 そんな気がしないでも無いお年頃。>中二病
 で。
 屍と姫じゃぞ? 信じられぬ・・とても信じられぬ・・!
 という感じで盲目猪突にどっぷり進んでいるうちに、病気的なものは治ってると思う。
 どーでもええのよ、見た目なんて。 (と、タイトルに惹かれた人がこう言っています)
 
 とある魔術の禁書目録:    魔術度:☆ (期待度 ★)
 ま、魔術とか禁書とか、そういう言葉を私の前で使わないでくれる?
 困っちゃう・・でしょう・・・・(もじもじしながら  帰れ)
 
 ケメコデラックス:    デラックス度:☆☆☆☆☆ (期待度 ★)
 マツコデラックス。
 
 機動戦士ガンダムOO セカンドシーズン:   せっちゃん度:御飯三杯 (期待度 ★★★)
 まりないすまいーる。
 ええと、まぁ、いいんじゃないのかな? (なにが)
 この作品で、新たなガンダムっていうものの道筋を付けられたら、そりゃーアニメファン的には嬉しいこと
 だと思うのだもの。
 ガンダムオタクの方にはどうかわかりませんけれども。でも結構好きだという方もいらっしゃるようで。
 完全に先入観を放り出してお待ちしております。 どんとこい。さぁこい。はやくこい。 ←割と楽しみ
 
 今日の5の2:    みなみ度:☆ (期待度 ★★)
 みなみけと作者が同じ、ということしか知らない。
 そしてそれがすべてなのさ。
 たぶん。
 
 ヴァンパイア騎士 Guilty:    血液度:臨界点 (期待度 ★★★★★)
 ノットギルティ! (なにが)
 いいえ、有罪です、だって私の大事なものを盗んでいったのですもの。
 そんな、感じです。 (微笑)
 うだうだ言わず観ろ! そして肌に合った者は残りそれ以外は去れ!
 だが、再度来る者は拒まず、だ。 肌に合うまで何度でも観ろ! わかったか! よし!!
 ・・・だから落ち着けっての。
 
 黒塚 -KUROZUKA-:    ヅカ度:☆ (期待度 ★★★)
 ヅカじゃない、桂だ! ・・・・いえ、こっちの話でして、はい。
 アニマックスの最初のCMでやられたのね。
 和服黒髪美女、血。
 これで落ちない私では御座いません。 (胸を張りながら)
 けどね、アニマックスのCM第二弾で萎えた。
 なんか・・・御伽草子とかウルトラヴァイオレット臭がする・・
 なんか違うんだよね・・なんか・・・うーん
 と、私以上にわからないであろう他の方々に配慮して、期待度をひとつ下げてみました。 (なぜ)
 ちなみに原作者は夢枕獏。 ・・・陰明師もアニメ化しそうだね、この勢いは。
 
 魍魎の匣:    京極度:未知数 (期待度 計測不能)
 ・・・・。
 あの、私、京極ファンですけど。
 あ、この作品の原作者は京極夏彦っていう人なんです。詳しいことは各自で調べてください。
 でね、えっと。
 私、京極ファンやめます。
 一時的に。
 もう完全に、原作を忘れます。
 京極夏彦? はぁ誰それ?
 いきます。 ← 正座
 と、いう感じです。
 たぶん、事前情報とか無い方が良いと思います、京極初心者だろうと、たんに見知らぬアニメの事前
 情報を知ってから観たい人だろうと。
 京極ファンについては、うだうだ言ってるなら、置いて行きます。 私は行きます。
 もう一度、この作品に出会いに、行きます。
 そして、ショックを受けたいです。
 京極作品に初めて触れた人のショックは計り知れません。
 けれどそれを羨む暇があるなら、私はこのアニメ版魍魎の匣に初めて触れるショックを味わいたい。
 うん。
 もう既に、ショックは受けてるけどね。
 中禅寺敦子が、桑島法子だなんて。 想像を、絶した。 え、なに、一体なにをやってくれるの・・
 他の役の人は正直ほとんど知らないので実感無いけど(この不勉強)、これには驚いたよ。
 うん、でも、知らなきゃ良かった。 事前に知らない方が、本番でもっと驚けたのに。
 あ、あと柚木陽子が久川綾っていうのは、さすがにベタ過ぎなんじゃ。 加菜子役なら面白かったけど。
 うん。
 この文章を読んで知ってしまった人は、道連れです。 一緒に、いきましょう♪ (怖い微笑で)
 ・・・・おーい、京極ファンやめたんじゃなかったのかよー。
 
 ミチコとハッチン:    予備度:☆☆ (期待度 ★)
 なにかくると思ったのでやった。 今は反省している。
 でも少し期待している。
 
 
 
 
 お、多いよ・・・・
 え・・いくつよ・・・・いち、に、さん・・・・・・・じゅうろく・・・・・・16!?
 感度高すぎだよ、私。
 いくら気温が下がったからってやりすぎだよ、どんだけ調子乗ってんですか。
 いやそれ以前にどんだけ気温に人生左右されてんのよ。
 いやそれはいい。
 それはいいよ、問題はこの数でしょう。
 16てあなた、いつものシーズンの倍近くあるじゃないの。
 これほんと全部観る気? はっ、付き合ってらんないわ!
 あ、でもちょっと待って、わかりやすくまとめるから。
 
 ・とらドラ
 ・伯爵と妖精
 ・ヒャッコ
 ・黒執事
 ・夜桜四重奏
 ・CLANNAD〜AFTER STORY〜
 ・地獄少女 三鼎
 ・屍姫
 ・とある魔術の禁書目録
 ・ケメコデラックス
 ・機動戦士ガンダムOO セカンドシーズン
 ・今日の5の2
 ・ヴァンパイア騎士 Guilty
 ・黒塚 -KUROZUKA-
 ・魍魎の匣
 ・ミチコとハッチン
                                                    計:16作品
 
 
 実家に帰らせて頂きます。 (マテ)
 でもま、さすがにいくつかは削っていくことになるでしょうけれど、これだけ感度が良いと、ここで挙げなか
 った作品にもいつの間にか手を出したりしてそうで、イーブン、みたいな、いやなにがイーブンだよおい、
 なに落ち着いてんのさ、なにそんなにほくほく顔なのさーっ!
 
 
 *臨時ニュース/ 
 この文章を書いているうちに、新しく公式サイトがリニューアルされて、作品内容の判明したものが
 ありました。
 
 かんなぎ:    阿呆度:☆☆☆☆ (期待度 ★★★★)
 すべては公式サイトの、「おはなし」の項目を読んでみてください。
 私はもうあれだ。
 吹いた。
 
 
 これで17作品目、っと。
 
 
 大変だ。 (ざわざわ)
 
 
 
 
 
 ◆
 
 うん、来期は疲れるくらいに大豊作なんじゃないでしょうか。 ていうかかんなぎ吹いた、吹いたかんなぎ。
 なんかこう、アニメのこれからを感じさせるような、そんなぎっしり感がします。
 原作を考えると、魍魎の匣がぶっちぎりで注目株ですけれど、それはまだまだわかりません。
 感想に関しては、どれを書こうかかなり迷い中ー。
 出来れば魍魎の匣は書きたくないなぁ。原作知ってるし、じっくり観たいし。
 地獄少女ももうゆっくり観る側に回りたいしぃ、ヴァンパイア騎士は1期書いてなかったのを2期から
 書くっていうのがなんかノリ気にならないしぃ。
 そうなると、私的に書けそうなのは屍姫か黒塚かなんですけど、ハズレそうな気もするし・・・
 あとは・・・・・・・黒執事? ・・・すごいのが残っちゃったなぁ・・
 でも黒執事みたいなのを感想書けたら面白いなって思うのですけれどね、確かに。
 でもまぁ、こんだけ沢山あるんだから、きっとなんとかなるよねー。 ←死亡フラグが立ちました
 うん。
 きっと、こんなにアニメがあって、嬉しくてたまんないんだと思います。 たまんないのだ、この人は。
 
 
 む、無理はしちゃ駄目ですよ?
 
 
 
 
 
 ◆
 
 恋姫無双感想〜。 先週分〜。
 
 ・・・・。
 
 ヘ  ン  タ  イ  仮  面 。
 
 以上。
 
 
 追記:
 関羽一行vs曹操一行vs袁紹一行の湯煙争奪戦でした。(間違いでは無いでしょ)
 まー、特に見所は無かった、というかお休み回でした。
 そういえば、関羽・曹操ご一行がテーブルを囲んだとき、ロリの比率が異常なことに。
 関羽と夏侯惇以外全員ロリ。 ロリというか子供。  2対5。 なにこの引率プレイは。
 そんなところでした。
 あとはヘンタイが全部持っていきました。
 あの人はいったいどこに向かっているんでしょう。
 これだけ分岐点が明白な人は珍しいですよね。 (分岐点はメンマでした)
 
 以上。
 
 
 
 
 
 
 

 

-- 080909--                    

 

         

                                 ■■ 年上の友人 ■■

     
 
 
 
 
 『まぁ、個人の喜びなど、本人にしかわからないこともあるさ。』
 

                            〜夏目友人帳・第九話・にゃんこ先生の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ひとーつ、ふたーつ。
 みーっつ、よーっつ。
 なんで、日本では、四って嫌われるんだろう?
 死と通じるからって言うけれど、そんなのはただの語呂合わせじゃないか。
 僕は、四が好きだ。
 別に僕がみんなから嫌われてるから、とかじゃ無い。
 ただ、そういう嫌われてる四がちょっと気になる、その程度のことだ。
 四は別に悪くもなんとも無い。
 みんなだってそれはわかってるのに、わかってて、やってるんだ。
 ただの語呂合わせの駄洒落なのに、それなのに長くその語呂合わせにかこつけて、四を嫌ってきた。
 僕達には、そうやってなにかを嫌わなくてはいけないということがあるんだろうか。
 僕も、わからなくは無いよ。
 四は確かに死と音が繋がるし、それが駄洒落だろうとなんだろうと、そうやってなにかひとつの決め事を
 すると、なにかを得られた気がするのは確かだし、四を嫌った分だけ、死から離れることが出来た気が
 するもん。
 みんな、迷信深い訳でも無いくせに、むしろそういうものは馬鹿にするくせに、妙に拘ってる。
 僕には、妖怪が見えるんだ。
 なのに、みんなには見えないんだ。
 みんなほんとは、なにかにいつも怯えを感じて、不安になってる。
 だけど、迷信とか妖怪とかそういうのは非科学的とかなんとか言って否定しちゃってるから、その怯えと
 不安とちゃんと向き合うことが出来なくなっちゃってる。
 だから代わりに、四を嫌う。
 所詮それは駄洒落だし科学的じゃ無いけど、ようは気分だよ気分、とか友達は言ってた。
 怖いくせに、不安なくせに、怖いなら怖いって言えばいいのにさ。
 気分だけなものだから、本当にそれが駄洒落なだけということがわからなくなって、ほんとに四を心の底
 から嫌うことが出来てしまうんだ。
 そう、気分で、ただ気分的に手軽に簡単に、差別しちゃうんだ。
 
 それじゃ、四が可哀想だよ。おかしいよ。
 
 僕も、そうだった。
 みんなから、嫌われてた。
 僕が妖怪が見えるって何度も言っても、誰も信じてはくれないくせに、誰もが僕のことを気味悪がって
 遠巻きにしたんだ。
 親戚のあのいやなおじさんには、こう言われたことがある。
 お前はただ頭がちょっとおかしいだけなんだ、病院にいけば治るさ。
 妖怪なんていない、それは全部、ただ病気の影響でそういうのが見えるだけだ、と。
 そして、そのおじさんが、その心配そうな顔をさげたまま、真っ先に僕から離れていった。
 本当にただの病気だと思うんなら、なぜ離れていくの?
 病院にいけば治るんでしょ? 治せばいいだけなんでしょ?
 父さんも母さんも冷淡だった。
 どこか、完全に諦めている風だった。
 どうして? 僕はずっと妖怪を見て、妖怪から逃げ、妖怪に立ち向かい続けているのに。
 母さんはそれでも僕のことを気に掛けていた風だったけど、それは全部母さんの勝手な思い込み
 ばかりだった。
 そして、母さんは完全に自分の世界に入り込み、誰とも知らない僕の名前を呼びながら、病気で死ん
 でしまった。
 みんなは、僕が悪いものを呼び込んだせいだと言った。
 誰ひとり、妖怪のことなんか信じていないくせに?
 なに? その悪いものって。
 そして僕は、なんだか知らない大人達の、ほとんど暴走に近い差別を受けた。
 ひどいよ、あんまりだよ。 こんなことって無いよ。
 なにもかもを、全部僕のせいにして。
 全部、僕が呼び寄せた悪いものの仕業だって。
 僕の周りには、別段妖怪が集まっている訳じゃ無いし、時々妖怪が群がり集まっているのは他の人
 だったりする。
 妖怪だって悪さをする奴ばかりじゃ無いし、上手く付き合えば色々と助けてくれる面白い奴だっている。
 みんな、そういう妖怪が見えないのに、妖怪なんている訳無いって言ってるくせに、妖怪が見えると
 言う僕のことを怖れ、そしてなにかあるたびに僕のせいにする。
 
 僕は、四なのかもしれない。
 
 みんな、不安とか畏れとか、そういうものの捌け口が欲しいんだ。
 だけど、そのストレスを発散するのをなんのルールも無しにやっているんだ。
 好き放題やりたい放題、自分だけがすっきりすればなんでもいいって思ってるんだ。
 妖怪が見えてるなら、妖怪がいると仮定すれば、そんなことは出来ないはずなのに。
 妖怪を無視して、そんなこと出来るはず無いのに。
 妖怪なんているはず無い、そんなのは迷信だって言ってる人ほど、自分に抑えが効かないで、不安とか
 恐怖に振り回されて、ありえないような巫山戯たことを言ったりするんだ。
 どっちが迷信深いんだろう。
 みんな、おかしいんだ。
 どこかに絶対に、なにか得体の知れない悪いものが存在してるって思ってて、そしてそれは無条件に
 叩き潰していいと思ってるんだ。
 だから逆に妖怪なんていう血肉の籠もった存在を認めてしまえば、それとの向き合い方、ルールを守
 らなくちゃいけなくなるからこそ、そういったものを迷信だ非科学的だって言って否定して捨てちゃうんだ。
 
 妖怪は、其処にいるのに。
 僕も、此処にいるのに。
 なんでみんなは、それをそんなに無視して平気なんだろう。
 
 あるとき、手を怪我している妖怪と出会ったんだ。
 放っておけなかったよ。
 僕は母さんにして貰ったように、その妖怪に包帯を巻いてあげたんだ。
 その妖怪は僕の話を聞いてくれた。
 そして、お前はただの子供だ、お前は悪く無いと言ってくれたんだ。
 他の誰かにそう言われたのは、初めてだった。
 僕は悪くない。
 だけど・・・
 僕は、嫌われる・・・
 ううん・・・それはそうだけど・・・
 僕は、自分はそうならばどうすれば良いのか、ということをこのとき初めて考えたような気がする。
 僕には妖怪が見える。
 人智の及ばない、というより人間以外、つまり妖怪が引き起こす不幸というのは、結構沢山ある。
 だけど良く見ると、妖怪が悪さをするのは、人間が原因のためだったりすることもあるんだ。
 それは、見極める必要があるはずなんだ。
 そして当然、人間自身が起こす不幸というのは、さらに沢山ある。
 それを全部妖怪の、いや、なにか悪いもののせいにするのはおかしいし、逆にそれは人間自身の悪意
 に他ならないんだ。
 僕は、差別されてる。嫌われてるんだ。
 尊敬なんて、されない。
 だから僕は、尊敬されるような、人間になりたかった。
 僕には妖怪が見えるんだ。
 なにが本当に正しくて、なにが本当に悪いのかみつけることが出来るんだ。
 僕はそれを教えてあげられる。
 僕が、妖怪のことをみんなに教えてあげなくちゃいけないんだ。
 みんなが妖怪の姿が見えないんなら仕方が無い、それならせめて妖怪がいると仮定して考えさせ、
 その妖怪がどういう種類なのかを想像させ、そしてそれにどう対処するのが賢明なのかを自ら考え
 させられるようになれればいいんだ。
 見えないのは、わからないのはしょうがないんだ。
 だけど、見ようとすること、わかろうとすることは絶対に必要なんだ。
 そうしなくちゃ、妖怪は全部まとめて殺すか、全部まとめて許すかのどちらかにしかならなくなってしま
 うんだ。
 僕は此処にいる。
 妖怪にも、それは伝える必要がある。
 妖怪が見えるのは、僕だけなんだ。
 誰も助けてはくれない、誰も僕の存在を代わりに妖怪に伝えてなんてくれない。
 だから僕は僕の存在を守る。
 妖怪達に、好き放題させ無いために。
 僕は僕だ。
 嘗めたら、痛い目みるぞ!!
 だから僕は、祓い屋になった。
 みんなに理不尽なことをさせないために。
 
 
 
 
 
 
 ◆
 
 私はね、夏目くん。
 妖怪が憎い訳でも、人間を怨んでいる訳でも無いよ。
 だけど、私の中に憎しみや怨みの感情というものが無いって訳でも無いんだよ。
 私は結構、しつこい人間でね。
 表面的に、いやいや、かなり内面深くまで楽しいことばかり考えてあっさりと笑っているけれど、それで
 もそういった負の感情は、どっかりとあぐらをかいて体中に広がって座り込んでるんだ。
 君は、自分で自分のことを優しい人間だと思うかい?
 私はね、自分のことを優しい人間だと思ったことは無いんだよ。
 だけどね、とある妖怪にお前は優しい奴だって言われたとき、涙が出そうになるくらいに嬉しかったんだよ。
 それと同じでね、私は自分のことを冷酷な奴だとも思ったことは無いけれど、いざってときになると、
 もの凄く冷徹に行動するんだよ。
 そしてそのことを悔いたりすることも、無いんだ。
 誰かに下衆野郎と罵られても、笑って応えられるよ? 私は。
 別にそういうのが好きとかいう性癖がある訳じゃ無いことくらい、君にもわかるよな。
 必要に迫られて、冷徹に行動する訳でも無い。
 いざってときになるとそう行動すると言ったけれど、そのいざっていうときがどういう時のことを指すのかと
 いうのは、かなりいい加減なものだよ。
 私は、妖怪を殺すよ。
 私は祓い屋だからね。
 ふふ、怖い顔だね、夏目くん。
 『妖怪に苦しめられている君なら、わかるだろう?』
 うん。
 
 嘘だよ。
 
 わかってるさ、君にとってはそれがわかろうとわかるまいと関係無いってことくらい。
 すまない、試させて貰ったんだ。
 でも、優しさや冷酷さが、私達が妖怪にしろ人間にしろ、そいつらと向き合っていくための動機になら
 ないことくらいは、よくよくわかっているんじゃないのか?
 私達は、誰かに認めて貰うために行動したとしても、心の奥底ではわかっているはずさ。
 誰かに認めて貰うことだけで満足出来る訳など無い、とね。
 それがわからないとしたら、それは誰にも認めて貰えない現状に囚われているからさ。
 そして、自分もまた自分自身を認めてはいない。
 私は、祓い屋さ。
 祓い屋になることで、私は嫌われながらも、その私を嫌う皆の畏れの根源にあるものを解決し切れない
 人間からは、尊敬を得られるようになった。
 でも私は、その尊敬を得るために行動した、それこその動機をなかなか見つけられなかった。
 なぜ私は、みんなに認められたかったのか。
 どうして、理不尽なことをされたりさせたりするのが、あんなにも許せなかったのか、とね。
 私は今、俳優として、まぁ、かなり活躍している。
 『煌めいてて、ごめん。』
 憧れと羨望の眼差し、悪くない。
 けど、私にとってはこの俳優稼業はすべて、祓い屋の仕事のためにあるものなんだよ。
 なぜって、箔が付くだろう?
 拝み屋があの有名な俳優だとなれば、説得力も増すだろう。
 まぁ逆に疑われることもあるけどね、色々と。
 
 で、君は、なぜ君を生きているんだい?
 
 見たところ、随分と他人のことを気遣っているようだけれど、でもよくよく見ると、君のそれは、
 君自身が他人の目を気にしているという範疇から抜け出ていないような気がするね。
 君はさ。
 なんで他の人のことを気遣うんだい?
 君はもしかして、他人のために行動しているんじゃ無くて、自分の良心を満足させたいだけなんじゃない
 のか?
 そして、自分は良心的な人間だということを自ら証し、そしてその心優しい自分は無視されるべきで
 は無いし、またそれでも無視する人間ならば、こちらこそがそいつを無視して良いのだと、確信を得ようと
 しているだけなんじゃないのかい?
 私はね、夏目くん。
 わかるんだよ、そういうことが。
 ふふ、嫌なことを言っているだろう? 私は。 輝いていてごめんよ、ふふ。
 でも、自分が自分の優しさや暖かさのままに素直に無心に行動することが、実は理不尽な自分の
 根源的な欲望を満たすことを正当化してしまっていることがある、ということは知っているんだ。
 それは、どんなにその優しさや暖かさ自身をみつめていたってわかりはしないのさ。
 なぜって、その優しさや暖かさそのものは、紛れも無い本物だからさ。
 見つめるべきは、そういうったものに身を委ねようとしている、君自身の姿だとは思わないかい?
 優しければ、暖かければそれでいいと、言葉にならずとも、そう思ってはいないかい?
 或いは、そうは思っていないと言うのかい?
 だったら、なぜ君は他人を気遣うんだい?
 少なくとも、君が無心で自分の気持ちのままに動いているのは事実だろうさ。
 なんの目的も無く見返りも求めず、ましてや悪意などあるはずも無い。
 勿論、自己保身など。
 でも。
 
 そのとき君は、そうした無心な自分の姿を見つめる、当の相手の顔をちゃんと見ているのかい?
 君は、彼らの瞳の中に映る君のことを、なによりも深く考えているか?
 
 私はね、優しさを免罪符にしようとする奴は嫌いなんだ。
 大事なのは自分の気持ちでは無く、相手の気持ちであることなんて、当たり前なはずなのにな。
 夏目くん、君は子供だよ。
 良い意味で、まだ子供だよ。
 私は君が偽善者だとは、思わないんだ。
 いくつか試させて貰ったけれど、君は結構命懸けだ。
 無心に熱く染まる自分の心に飛び込みながら、それだけでは君が助けたいと思っている者のためには
 ならないということをよくわかっていて、だからそこからこそ飛び出し、奔り出そうとしている。
 けれど、なかなか上手く奔れない。
 そう、でも君はそういうところで、ちゃんと勝負している。
 他人の元へと奔り出そうという難事を、決して諦めずにいる。
 まったく、素晴らしいじゃないか。
 いや、巫山戯てるんじゃないよ、あはは。
 君は、他人のためにだったら悪者にもなれるっていうことさ。
 勿論、誰かのためにだったら悪者にもなれる自分、というものに酔ったりもしない。
 そして、悪者になることが本質では無い、ということもちゃんと考慮している。
 投げ出さないんだな、君は。
 自分の良心を満たすことなんて、端から興味無いんだよな、君は。
 妙にしたり顔で現実を騙り、それを盾に自らやりたい放題する厚顔無恥な奴らは元より、優しさを振り
 翳し自らがそうしているという認識すら持たずに弱者を笑顔で虐げる人でなしでも無い。
 
 
 『君は優しい子だよ。
  優しい、ただの子供だよ。
  だから、
 
  なにも恥じることは無いんだよ。』
 
 
 そう、恥じることは無い。
 恥じることに逃げては駄目なんだ。
 君はなにがしたい?
 誰かのために生きたい?
 それとも、誰かのために生きられる自分のために生きたい?
 それだけで安泰でいられるはずが無い。
 なにより、その誰かをおもう君の心自身が、それを許さないのだろう?
 だが、どうする?
 だから、優しさを捨てるかい?
 それとも、あくまで優しさに拘るかい?
 優しさも、冷たさも、消えたりなんかしない。
 私は妖怪を深く深く憎んでいるんだろうが、それと同程度に、妖怪を愛してもいるはずなんだ。
 私は妖怪を使役している。知ってるね?
 私は妖怪を憎んでいるし、祓う対象として認識しているが、けれどそれを公言したところで、
 私の妖怪達が私に使役されることを厭うたり、また私の言葉を否定したりはしない。
 祓うも使うも、愛するも憎むも、私にとっては同じなんだよ。
 彼らと向き合うとき、そんなものは関係無いし、そんなものは決して彼らと付き合っていくことの動機に
 などなりはしないと思うんだ。
 
 
 だから、君も其処にいるのじゃないか?
 だから、私も此処にいるのじゃないか?
 
 
 君が誰かを恨んだら、君は存在できないのかい?
 君は、自分の中の優しさでしか、自分の存在を感じられないのかい?
 恨みを捨てるのは簡単だ。
 けれど、恨みを捨てずに、それでも優しさをも捨てずにいくのは大変だ。
 君は、自分が優しいだけの人間になってしまったら、自分はどうなると考えるかい?
 私はね、こう思うんだ。
 もし君が恨みを捨てたなら、次に君が捨てるのは優しさだ、ってね。
 逃げている、だけなんじゃないか? それは。
 自分の存在を感じられないから、自分を求める戦いから逃げていることになるのだと、私は思う。
 君も、感じたことはあるだろう。
 恨みは、必要なのではないのか、と。
 恥じることは無い。
 争いを厭い、平和的解決のために妖怪達の理屈を理解しようという君の精神は見上げたものだが、
 それで肝心の君自身が彼らから受ける影響を無視して優しさだけに浸るなら、それは自分から逃げて
 いることになりはしないかい?
 妖怪にひどいことされて、怒るのは、いや、怒りや恨みの感情を抱くのは当然では無いのかい?
 それは、妖怪達の理屈を理解して彼らと共に生きようとする事とは、別のことだろう。
 どんな理屈であろうとも、その理屈の存在自体は君に多彩な影響を与えているんだよ。
 君は、それから逃げかけている自分を、少し、意識している。
 私達人間は妖怪を知ろうともしない馬鹿ばかりだが、妖怪だってそうなんだよ?
 『やつらはいつも理不尽で、迷惑な存在だな。』
 違うかい?
 それは、個々の妖怪の事情とは、関係の無いことだろう?
 少なくとも、人間にとっては、妖怪は紛れも無い天敵なんだよ。
 妖怪を憎み、嫌い、無視して祓ってしまえ。
 そう思うのは、当然なんだ。
 そう、だから。
 
 
 無論、その天敵同士が仲良く出来るかどうかは、また別の問題だ、ということさ。
 
 
 君は言ったね?
 たとえ妖怪の迷惑を被っても、妖怪を殺すような真似はしない、と。
 それでくるしわ寄せがあっても、殺すよりはマシだと。
 それはさ、逃げだろう。
 また嫌なことを言うと、私は試したんだ。
 君が、一体なにに囚われているのかというのを、自ずから気づくかどうか、と。
 君はね、妖怪を無視しているんだよ。
 妖怪と殺し合うくらいなら、自分だけ死んだ方がマシだ、と。
 君ね、夏目くん。
 相手と喧嘩しないで、どうして相手のことがわかるんだい?
 相手の理不尽さ、相手の迷惑さにどれだけ自分が怒っているか、そして無論自分の理不尽さ、
 迷惑に対して相手がどれほど怒っているかを知らずして、一体君はなにをしようとしているんだい?
 なにも絶対に殺せだなんて言わないさ。
 そして。
 絶対に殺すな、闘うな、とも私は言わないよ。
 それらはね、どちらもなにかに囚われているから、そう言ってしまうんだよ。
 相手を真実知ることから、相手と徹底的に向き合うことから、ただ逃げようとしているからこそ、
 絶対殺せ、絶対に殺すなという言葉に逃げ込んでしまうんだ。
 優しさというものが、相手の存在を消してしまう、その事実から目を背けていては、それは結局自分の
 ための優しさにしかならないのじゃないかな。
 『言ったろ? 君がこそこそする必要なんて無いって。』
 君がこそこそした分だけ、君の向かい側に立つ者達の姿も薄れてしまう。
 無論、君自身の姿もね。
 
 私は思うんだよ。
 自分が自分を認めなかったら、誰も自分のことなんて認めてはくれないって。
 自分の存在を主張して、自分の存在をはっきりさせて、そうすれば、そういったものをすべて投げ捨てて、
 なにかひとつの目的を共有しそれを達成しようとするだけの、恐ろしく愚かな者にもならないはず。
 君は、誰も馬鹿にしたり見下したりしたく無いのだろう?
 憎んだり恨んだり、殺したくも無いのだろう?
 じゃあ、馬鹿にしなくちゃ駄目じゃないのか?
 恨まなくちゃ、駄目じゃないのか?
 馬鹿にするということが、恨むということがどういうことかを知らずして、一体どうやってそういったことをせずに
 済むというのだい?
 恨みたくなければ、まず恨め。
 誰かを馬鹿にしなければ、自分が誰かを馬鹿にしているのかしていないのかがわからなくなるはずだ。
 そうすればたぶん、君ならわかるだろうさ。
 
 
 
 誰かを恨んでいても、馬鹿にしていても、その誰かを愛し、尊敬することは可能だということが。
 
 
 
 妖怪は浅ましく醜く、そして、なによりも賢明で、美しい。
 まぁ、その境地に達するまでは大変だったし、時間もかかったよ。
 でもさすがは私だよ、それでも出来たんだからね。
 煌めいていて、ごめん♪
 そう、それが私の誇りだし、自尊の心だね。
 そして、君の連れてきたあの珍妙な生きものに、この青二才がと言われたときは嬉しかったよ。
 説教くさいことばかり、同じ境遇だった君の前でこうして喋ってきた訳だけど、でもあの生きものからすれ
 ば、私なんて確かにまだまだガキなんだよな。
 嬉しかったよ。
 まだまだ私は、さらに素晴らしく輝いていくことが出来るってことなんだから、ふふふ。
 そして。
 昔の私と同じような君の目の前で、こうして笑顔で偉そうに語れる自分もまた、愛しく感じられる。
 大人になっていく、年を取る愉しみというのは、こういうことなんだなぁ、うんうん。
 うん。
 
 
 つまり、君ももう、大人だろ?
 十数年この境遇で生きてきたことを、恥じる必要なんて何処にも無い。
 むしろ誇るべきだよ。
 そして君は。
 いや、私もだが。
 私達は、永遠のただの子供なのさ。
 自分が築いてきた誇りを元手に、いつまでも新しく変わり続けることが出来る、そういう存在さ。
 
 
 妖怪も、人間と同じさ。
 人間と同じで馬鹿でどうしようも無い奴らで、考え無しに人間を襲ったりもする。
 優しさを振りまいて、笑顔で他人を蹂躙するような阿呆もいるさ。
 そして、人間のように自問し、人間と同じく自らの中の憎しみと愛を見つめ、人間と向き合おうとする。
 人間と妖怪は、分かり合うことなんて出来ない。
 だがそれと、分かり合おうと一生を賭けて互いに向き合い続けることは、別のことだろう?
 何年も、何年も、自分の呪縛と向き合い、それを通して目の前の誰かと触れ合っていく。
 自らの背負う重い枷を引きずり引きずり、たったこれだけのことも出来ないのかと、呻きながら生きていく。
 それは、一生モノさ。
 逆にいえば、一生涯というもの凄く長い時間をかけてやることが許されている、そういう生易しいものさ。
 今日が駄目なら明日、明日が駄目なら明後日、明後日が駄目なら一年後までに。
 一年そうしてやった分のなにかは、必ず自分のものになっているはずさ。
 
 それを知らない君では、無いのだろう? 
 
 なぁ?
 
 
 夏目。
 
 
 
 『君を見ていると、昔の自分を思い出して、なにかを伝えてやれるんじゃないかと・・』
 
 いや・・
 
 
 『ただ・・・話をしていたかったんだ・・』
 
 
 
 俺は・・君のような人間も、好きだ。
 俺と君は全然違う人間だし、意見も違う。
 妖怪達へのアプローチの仕方も違う。
 年も、違う。
 むしろ私は、君のような子供が大嫌いだ。
 
 『他人と分かり合うのは難しいことだよ。』
 『誰にとっても。』
 
 だから、好きなんだよ。
 理屈じゃ無い?
 違うよ。
 紛れも無い、理屈だよ。
 やだなぁ、これだけ散々語ったのが無駄じゃあ無いか。
 わからない、ということがあるのをわかるのも重要だ。
 そして同じくらい、わからないものもわかることが出来る可能性がある、というのをわかるも大切だ。
 私と君の間には、いやいや、巨大な狭間には、そういったものが広く深く渦巻いているんだろうね。
 だから、わかることそれ自体が重要では無いことがわかってくるのさ。
 わかるもわからないも関係無い。
 私達は、それぞれの目の前にいる。
 ただ、それだけなんだよな。
 『なにも、同じ意見で無ければならないということは無いだろう。』
 異なる意見を持とうと、異なる存在同士であろうと、私達が存在し、生きていることは確か。
 私はね、夏目。
 誰かと分かり合いたい、と思うよりはね。
 誰かと共に一緒に生きたいと、そして出来れば愉しく生きたいと、そう思っているんだよ。
 目の前に、自分のことをわかって貰えるかもしれない、そういう、紛れも無く今現在は確かに私のことを
 わかっていない誰かと、話がしたい。
 
 分かり合うことを目指しながら、そうして話すことが出来る相手の存在を愉しみながら。
 
 
 
 『困ったことがあったら、いつでも言ってくれ。』
 
 『私も、友人の力になりたいからな。』
 
 
 
 夏目。
 
 
 
 
 君は私の大切な、年下の友人だよ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 そうして、後ろも見ずに飄々と去っていく名取さんの後には、いくつもの黒い影が従って歩いていた。
 彼の先に拓けていく夏道が、ただ白い日差しの中へとゆっくりと続いていくのが、見えた。
 
 
 『そうだなぁ。』
 
 
 
 見上げた夏空が、青く、どこまでも広がっているような気がした。
 
 
 
 
 
 『そうだよなぁ。』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                              ◆ 『』内文章、アニメ『夏目友人帳』より引用 ◆
 
 
 
 

 

-- 080905--                    

 

         

                              ■■極めつけは、残暑。■■

     
 
 
 
 
 残暑。 (挨拶)
 
 
 あー、はい、そういうことですからね、もうね、ちゃっちゃと始めます。
 始めさせて頂きます。
 もうね、暑いとかいいから。
 挨拶とかご託とかいいから。
 始めます。
 私は始めますよ、書き始めますよ。
 とかいって実は本文から書き始めてて、へとへとになった今頃に後書き的にこの前書きを書いてますよ。
 もう疲れたんだよ。
 どんだけかかって書いたと思ってんのよ。
 もう忘れたよ! 何時に始めたか忘れたよ!
 書いては書き、書いては書き、もう嫌なのよ!
 もう嫌、もう絶対こんなの書かない、書きませんよ、書くものかぁ!
 
 
 と、言ってます。 (他人事)
 
 
 
 ええとその、感想です、感想。
 長すぎて死にそうなので、一気に読もうとか思っている人には、哀悼を捧げます。 (ぉぃ)
 んでは。
 
 
 
 
 
 ◆
 
 
 
 ソウルイーター:
 『人と接する恐怖か。・・・・・俺も怖いよ。』 byソウル
 これはすごい。
 楽しさと凄さの融合!
 アクションとギャグの張り切り具合のメリハリは適度に、さらにはお遊び(この作品を知っている人はなにを
 指しているのかはわかると思うけど 笑)も抜群に効いてて、そしてその中で目一杯「書かなくてはいけ
 ないこと」を書いている。
 これはなんていうか、ひとつの文学みたいな感じがします。
 書きたいなにかがあって、それを一生懸命に表現しようと足掻いているのでは無く、かつ適当に点と
 点を繋いでいっているだけのおざなり感などもとより無く、ただただ、必死に考え生きている。
 そしてその中から、どうしても考えずにはいられない、答えを出さずにはいられない、そういった切実な
 「問い」そのものを作中に於いて生み出し、そしてそのまま切実にそれを考えそれに答えようとする。
 見事、の一言だと思います。
 自分とは全く異なる人達と魂の「波長」を合わせることで、その人と余計な「しがらみ」を超えて触れ合う
 ことが出来、その触れ合いを元にして歩いていくことが出来る。
 その「しがらみ」というものは、実は正義とか倫理とかそういう一般的な「通念」であったり、或いはたんに
 それに逆らう意味でだけの「アンチ(狂気)」であったりして、自らの魂、そして他者の魂というのはそれらの
 いずれにも属してはいず、それはそれら「しがらみ」をすべて含みながらも、なおそれを超えたところに
 あるもの、ということを、そのしがらみたる「通念」と「狂気」にアタックし身を置いてみることのその足掻きの
 中からこそ導き出していく。
 いえ、むしろそれは、目の前にいる他者を目にした途端にどうでも良くなる足掻きであり、他者と接する
 ことの怖さはやがて、その他者とそれでもどうしても触れ合いたい、「触れ合わなければいけないこと」と
 いう自らの魂の波長によって、力強く、そして静かに緊張へと換わっていくのです。
 この人と、手を繋げたらどんなに楽しいだろう、というワクワクした冒険心へとそれは繋がっていく。
 少年漫画という「やり方」で丁寧に丁寧にこの作品を作り、そして徹底的に描き切ろうとしたことは特筆
 に、そして尊敬に値します。
 「やり方」に拘らずに真摯に深く「書かなくてはいけないこと」に従事するがゆえにこそ、自らの「やり方」に
 しっかりとした自信と確信を感じます。
 制作者の、自らと、そして他者の魂への愛を、とてもとても感じました。
 素晴らしい作品だと思います。 拍手! 大拍手! 目が乾くまで拍手!
 ・・・・まったく、いい年して泣くなよ、みっともない。 byシュタイン博士 (笑)
 
 
 
 夏目友人帳:
 これはいいですねぇ。
 なんだか、うっとりと涼みながら溶けてしまいそうな感じです。
 薄口であるのに、いつまでも喉の奥に残っていて、それを見つめていると、それはゆっくりと喉を下り、
 胸に降りて、そこでぱぁっと、月に照らされて光る夜花のような、そんな感触ありマス。
 主人公の夏目の成長物語として読むと、なんというか「成長」という概念が無意味に感じるほどに、
 この作品はじっとりと多岐に渡って広がっているのが見えてきます。
 夏目はただ、出会った者達の物語を通して、なにかを考え感じ変わっていきますけれど、でもそれは、
 水面に小石を投げ入れて出来た波紋のようなもので、その水を湛えた夏目自身は変わらないのです。
 妖怪達との出会いの変化が夏目を「成長」させること無く、ただそうして延々と夏目の水面に波風を
 立て続けていく。
 つまりそれは、変わり成長することよりも、そうして日々色々な者と出会い考え感じるという、そうして
 生きていること自体こそが大切であり面白い、ということなのでしょう。
 夏目は「成長」することでどこかに辿り着く訳でも無く、また還るべきところがある訳でも無く、ただ夏目
 はそうして生き続けている自分を、ただ生きようとし、そして生きていくのですね。
 逆に言えば、変化や成長も、その夏目の不思議な、そして長く続く波紋のひとつであり、それそのもの
 を目的として生きているのでは無い、ということ。
 夏目が出会う妖怪達は、そういう意味では様々な命題なりなんなりを抱え、そしてそれを懸命に解決
 しようとし、そしてそれを毎回見つめる夏目、というのがこの作品の構図です。
 だからこの作品は夏目と同じく、そうして毎回登場する妖怪の「成長物語」に触れ、それに一喜一憂
 し、そして一緒に考え感じ、そして同じく自らの抱える命題に挑んでもいくことが出来る、そういうことが
 出来るでしょう。
 けれど、この作品の肝はそれではありません。
 この作品は、もっとゆったりしています。
 夏目の眼差しに、姿に、それがなによりもよく顕れています。
 ひとつひとつの命題を、学校の宿題のようにして解きながら、しかしふぅとひとつ胸の奥まで繋がりそうな
 伸びをして、そして夏の青空を見つめる夏目の、その感覚。
 命題に囚われない、命題は命題にしか過ぎない、だからこそひとつひとつの命題が愛らしい。
 けれどその愛らしさに包まれる穏やかな夏の日差しの中の時間はそれだけであり、そしてすぐに、よし、
 と意気込んで鉢巻きを付け、そのまま懸命に切実に命題を解くことに勤しむことで、そのどこまでも広が
 る夏空の下の夏目の背は、大きく、そして暖かく見え感じるのです。
 うちのサイトでは現在この作品の感想を書いていますけれど、そこではまさに執筆者の私自身がその
 夏目と同じ立場に立って、よしと意気込んで懸命に妖怪達のおもいを描いています。
 この作品を観てみる際には、そうしたひとつの態度も試してみると面白いと思いますよ。
 
 
 
 恋姫無双:
 今一番私が観たいと思うアニメはこれだったりします。
 無人島にひとつだけアニメを持っていけるとしたら、これを持って行きます。
 無人島にナイフ以外になにかひとつだけ持っていけるとしたら、これを持っていくかもしれません。
 無人島にナイフとこのアニメのどっちを持っていくかと訊かれたら、訊いた人を苛立たせるくらいに悩む
 かもしれません。
 ていうか、無人島に行ってる暇があったら、このアニメを観てるわ!と一生懸命に叫ぶかもしれません。
 それほどのものです。
 というか、それほどハマる作品です。
 誰か止めて。
 どなたかにお勧めするのも勿体無いくらいに個人的に私的に孤独に、この作品を目一杯愉しんで
 いるのですよ。
 三国志の登場人物が萌えキャラ化ですよ?
 どんなバカをやってくれるのか、期待しない方がおかし・・とはいいませんけど期待してもおかしく
 無いでしょう?(トーンダウン)
 そしてその(個人的)期待を裏切らずに、抜群に新三国志をやってくれてます。
 まぁもうちょい三国志的というか世直しの原点に還ってもいい気がするのですけれど、現在の珍道中
 もそれはそれで面白いというか、ここまで面白くしたのなら、是非第二期でその辺り改めてやるのも
 乙なものじゃないの? と思います。
 もっとも、それはどうでもいいことです。
 だって充分愉しいもの。
 服とか武器のデザインも派手派手でカッコ良く、アクションは割と武張った感じで小さな重みがあって、
 話は話で人情話かと思いきやそうでは無く、むしろお互いのキャラの確認の連続でもの凄く潔かったり。
 大元の三国志のそれぞれのキャラを描く気なんて欠片も無いのですけれど、じゃあこの新しい関羽なり
 張飛なりのキャラとしてこれはどうよ?、と問われたら、堪らなくカッコ良く、また面白い訳で。
 なんだか面白いとか愉しいとしか言ってない気がするのですけれど、へっちゃらです。
 だって、どのキャラも平凡さも無ければ無理な個性も無く、なんというか、一度決めたコンセプトを忠実に
 活かして発展させていってて、毎回見るたびにキャラがキャラとして進化してるのが感じられて、実に
 面白くて愉しいのだもの。
 ああこの人はこういう人だったのか、という気づきでは無く、ああ、この人のキャラだとこういう場面には
 確かにこういう反応になるよね、そうそう、うんうん、このキャラならそうなるはずだよね、という風に、
 キャラの理屈を使ってそれをどんどん積み重ねていくことが出来るんですね。
 そしてその積み重ねたものを使って、さらにその状態のこのキャラならどうするか、というのを一緒に考え
 感じていくことが出来る。
 それが、この作品の最大の魅力といえば、最大の魅力でしょーか。
 意外性も無ければお約束も無い、だから結構、自由自在。
 元手はキャラの初期設定のみ。
 で、その初期設定って、実は大元の三国志のそれぞれの武将の形質なんですよね。
 だってこの作品のコンセプトはただひとつ。
 もし、三国志の武将が女の子だったら、なんですから。
 ちなみに舞台とかそういうの全部変えますけどー。
 関羽は青龍刀を持ってて義侠心が厚くて美しい黒い髭を持ってる豪傑。
 それが、関羽は青龍刀という名のついた派手な武器を持ってて困ってる人を見捨てられず厄介事に
 すぐ飛び込んだりする美しい黒髪の美少女へ。
 ね? (ねって・・・)
 恋姫無双、万歳。 (ひとりで言ってなさい)
 
 
 
 我が家のお稲荷さま。:
 傑作。今までに無いタイプ。
 そろそろ盛り上がってくるだろうとか、さぁ次こそなんかテーマ的ななんかが出てくるんだろなと思って
 いるうちにもう全体の半分を超えてしまい、やっとこれがこの作品のノリなんだということに気づかされる。
 そういやって軽く狐に化かされたような感覚から、まず始めてみよう、というお誘い付き。
 楽しけりゃなんでもいい、と新EDで歌っている通り、楽しけりゃなんでもいい、だけどそれは、なんでも
 楽しめる、という方が適切であったりします。
 なにより、主役のクーがそう。
 しっかり遊んで、さらに遊んで、てんで色々なことに気兼ね無し。
 そういう意味で、なにものにも囚われてはいないし、それはとても清々しい。
 逆にいうと、そういうときのクーちゃんは「囚われるべきでは無い」ものを暴きそれを軽快に遊び倒して
 しまうという事をしている。
 楽しみたいのに楽しめない、それが辛くてつい囚われてしまう、なら楽しみ方を教えてやろう!、
 それがいつもの行動のパターン。
 けれどそれはこういう意味でもあります。
 「向き合うべき」ものを見極め、それに対しては冷徹にかつなにものにも囚われず立ち向かっていく、
 ということ。
 クーは長いこと月読という神様に閉じこめられ、その事に関しては自分のいたずらが過ぎたのだから仕方
 が無い、なんていう囚われ方はして無く、のちに自分を閉じこめた月読と出会った際には、神の側の論
 理を押し通したがゆえに閉じこめられた自分を示し、自分と同じことをされそうになっていた鬼の王の
 ために、月読の絶対性をあっさりと否定してみせる。
 そして、閉じこめらた自分を管理している守り女に対しては、「封印されている者」としての論理をひけら
 かしてみせることはしても、その論理に拘るつもりは毛頭無いことは、クーの同胞たるタマがクーのことを
 おもい復讐を代行しようとすることをさらりと交わすことで明確に示している。
 それは決して、自分が悪いことをしたのだから閉じこめられて当然だ、それを怨む道理など無い、という
 月読の論理に従っているがゆえのことでは無いのですね。
 楽しけりゃ、なんでもいい。
 無論月読への復讐が一番楽しいというのなら、それでもいい。
 ただ、楽しむのは、なにかを楽しもうとして行動するのは他ならぬクー自身であり、それはつまり、
 なにが一番楽しいものになるかは、クーの行動如何にもかかっている、ということなのです。
 復讐の論理に囚われること以外になにもなければ、なにもしなければ、復讐が一番になってしまう
 だけ。
 だから、クーちゃんが軽快に豪快に遊べば遊ぶほどに、クーちゃんの楽しみが増えれば増えるほどに、
 クーちゃんはなにものにも囚われなくなり、そして。
 それは同時に、復讐の論理を否定したり捨てたりする無理な諦めを呼ばずにも済み、クーちゃんは
 いくらでもさらにその論理をも使って、月読達に喧嘩を売ったり売られたり、タマへの優しい視線を向けた
 りすることも出来るのでしょう。
 クーちゃんは色んな人を盲目にしてしまうものに風穴を空けて回る。
 それは、楽しいから。
 その楽しさに復讐心が含まれていることは否定せず、けれど復讐心からそれが出来ている訳でも無い
 と言う。
 復讐心をそこから除かないのは、復讐心をも楽しみ、そして復讐に駆られる人を楽しさに導くため。
 だからクーちゃんは復讐は否定しない。
 月読が誰かに怨まれても「当然」だとクーちゃんは言うのですから。
 タマは言います。
 復讐するのは「さびしい」から、そして「うれしい」から。
 復讐者の論理を理解されないでそれを否定されるからこそ寂しい、そしてその誰にも認められない論理
 を自分だけは認められそれを実行出来ることが心より嬉しい。
 ましてやそれが、誰かのためにだったら・・・
 ひどいことをされたこと自体の怨みよりも、それがひどいことだと誰にも認められないことこそが怨めしい。
 苦しみも怒りも悲しみも、その多くはそうして誰かとの関係の中にこそその最も強いものがある。
 そして、それはならば、誰かとの繋がり自体が重要であって、それは必ずしも怨みの論理の繋がりだけで
 なくてはいけないという法は無いのだ、ということをクーは気づくのです。
 この作品は、そういうことで満ち満ちています。
 クーの遊びっぷりに、クーの優しさに、クーの力強さが、そしてクーの論理がとても、あたたかい。
 そして他の人物達も、そのクーの手前で、それぞれの世界に風穴を空けて大事なものと繋がっていく。
 そして、風穴空けた世界そのものとも、あるいは月読の如き神様とも、実は繋がれる。
 これは、そういうお話です。
 一家に一匹守り神! by我が家のお稲荷さま。キャッチフレーズ
 クーも立派な、天狐空弦という神様のひとりなんですものね♪
 
 
 
 乃木坂春香の秘密:
 竜頭蛇尾気味。最初の勢いはどこへやら。
 というより、今はひと呼吸置いているだけなのかもしれませんけれどね。
 主人公とヒロインふたりの物語に徹して描けば充分面白いので、余計なことに手出しする必要無い
 んじゃないかなぁ、とそう思っていましたけれど。
 逆にそうしたふたりを主軸にした世界はどうなるのか、というひとつの挑戦になる可能性もあるんじゃ
 無いのかなぁ、と少し期待していたりもします。
 仮に主人公組の問題があれで完了したとするのなら、かえって同じような視点で以て他のキャラ達を
 描いていけば面白い。
 取り敢えず現在のように、最初の主人公ふたり組の話を元にして広げた設定をひとつひとつ消化して
 いくだけでも、最終的にはなんらかの感触を得られるような気もしています。
 なにげに続きが気になる作品になってきていますね。
 
 
 
 狂乱家族日記:
 これは、面白い。
 滅茶苦茶を、滅茶苦茶のままにしっぱなし。
 散々部屋の中を散らかして、暴れ回って、そしてふぅと一息ついて、なんか仕事をやり遂げた顔をする。
 いや部屋散らかしただけですから! なにそんな満足げな顔してんですか!、とツッコミを入れてる
 うちによし片付けるかぁと腕まくりしていそいそと片づけを始めちゃう。
 こちらのツッコミを完全に無視して。 そんな感じです。
 部屋は片づいても、なにかは滅茶苦茶のまま。 そんな感じです。
 でもそういう感じで、どんどんと独特(?)な空気が作られていって、それなりにまとめてぽいっと終わる。
 ボケっぱなしでなにげにツッコミ無しだったり、ツッコミづくしのマシンガンだったり、千差万別。
 ギャグモノといえばギャグモノですけれど、シリアスモノといえば間違いなくシリアスモノでもある。
 その両方が綺麗に融合されている、という訳では無く、ただ唐突にギャグだったりシリアスだったり、
 シリアス展開がいきなり始まればぐっと引き込まれ、気づいたらのギャグ展開に笑い転げたり、一話丸々
 シリアスでびっくりしたり、一話丸々どうしようも無くギャグだったり。
 そしてこの作品のキャラクターは、それぞれ個別の事情、というより背景と立場を持っています。
 そしてそのあまりにも違う立場と背景を持った(ライオンもクラゲも殺人兵器もいます)者達同士が、
 その背景と立場を持ち寄ったまま、しかし「取り敢えず」は隠して、ひとつの家族として集まってくる、
 そういうお話です。
 そして、この作品は、「家族」の物語では無く、家族をみつめる徹底した「個人」のお話でもある
 のです。
 たぶんこの作品には、明確な終わり、あるいはハッピーエンド的な大団円、というのは無いのです。
 つまり、解決すべきなにかがあり、それを解決した結果の象徴が「家族」というまとまりとして描かれる、
 ということは無いということなのです。
 おそらく最後の最後まで、延々と明かされ果てることの無い、個々人の事情と背景と立場の展開は
 続きます。
 けれど。
 ならば、狂乱せよ! と、主人公の凶華は言うんですよね。
 そういった個人の展開があることと、それに逼塞することは別の話。
 「家族」という祭りを遊べ! 愛を歌え! ・・っあ、愛!?なんだそんな小っ恥z(以下略)
 そういう、作品です。 
 遊べ! 笑え! 
 そしてその狂乱家族の遊びと笑いが、個人のなにかに影響を与えないことなど、決して無いのですね。
 
 
 
 セキレイ:
 なんでしょうか、この楽しさは。
 男の子ひとりに女の子が集まってキャーキャーやってるだけ、と言えば間違い無くそうなのですけれど、
 ではだからつまらないかと言えば、そうかなぁ?、と割とはっきりと疑問を持てます。
 つまらないかつまらなくないかでいえば、つまらなくないというより面白く、そして楽しい。
 ヘタレな男の子がヘタレにも出来ることだけをちゃんとやっているだけでモテモテ、と言えば間違い無く
 そうなのですけれど、ではこの作品の面白く楽しいところはそのモテモテなところなのかと言えば、
 そうかなぁ?、とこれまた割とはっきりと疑問が持てます。
 なんていうかね、分業してる。
 ひとりひとりが全部に対して責任を持って主体的に当たる、という意味での力強さを、同時に息苦しさ
 生きづらさとしても実は提出していて、そしてその息苦しさ生きづらさを廃そうという動きはみせずに、
 ただそれぞれがそれぞれの出来ることを持ち寄り、それで作られていく生活をこそ主体的に生きていく姿
 を描いているのですね。
 奇想天外というか普通に荒唐無稽な舞台設定なりなんなり、そういったものを現実に反するもの、
 つまり「ファンタジー」モノとして描くのでは無く、今直面している現実世界もまた、ひとつの「ファンタジー」
 であるということを示すための、そういうひとつの「リアル」モノとしてこの作品は作られてもいます。
 自分に出来ることだけをやっていく、というのは閉塞した状態を打破せねばならないときには致命的な
 ものになるとしても、では逆に、ではどうしてそれが致命的なものにしかならないのか、それはどうしてなの
 かを問うことをさせていく。
 そしてその問いを通して、すべてを自分で背負い主体的に生きる「ことしかできない」、そういう本当の
 自分と立ち向かっていくための過程をまた、女の子を使って描いてもいる。
 そしてその女の子達の中心点にいるのが、他ならぬ主人公の男の子であり、その男の子はヘタレ絶頂
 自分の出来ることをやるだけで精一杯の子で、当初はその男の子が全部背負って主体的に生きる
 ようになるための成長物語になるのかと思っていましたけれど、どうもそれは違うようです。
 むしろこの作品は、女の子の成長物語。
 たぶん男の子はあまり変わらないし、そう言う意味では今の自分を認めたいぐーたら男子の欲望の
 権化ではあるのかもしれませんけれど(笑)、それよりは、セキレイという目的を達成するためにこそ
 生まれてきた存在である女の子達が、それぞれの等身大の日常生活を生きるために足掻き、あるい
 は持って生まれた素直さのままに、それぞれの生き場所を築いていく様が、セキレイ間の序列に関係
 無くされているのが、とても活き活きとした楽しさを与えてくれているのです。
 そういう意味で、この作品は主人公の視点だけでは無く、セキレイの視点で見ることもお勧めしますし、
 そしてこの作品は、ヘタレを否定し強く生きることで頑張っている人達にこそ観て貰いたいです。
 あと、萌えとかお色気とか嫌いな人にも、敢えてお勧め。(笑)
 
 
 
 コードギアス R2:
 敢えて言おう、駄作であると。
 面白さはありますし、面白いと言うことにもやぶさかではありません。
 あの疾走感は良いですし、それは評価に値し、またその面白さの余韻に身を委ねるのも良いでしょう。
 けれど、その余韻の中に、一筋の苦みを差して味わうと、またひとつの美味しさがあるかと存じます。
 ですから、敢えて言おう、駄作であると。
 とにもかくにも、設定主義的過ぎなのです。
 散りばめた伏線を追いすぎているというよりも、むしろ伏線を回収するためにこそ伏線を置いている、
 つまり、伏線のための作品になっている。
 これほど馬鹿げたことは無いと思うのですけれど、けれどそうして伏線の点と点を結ぶことに集中する
 ことによって疾走感が生まれていて、それとしてのひとつの爽快さがあるのは認めざるを得ないですし、
 前述の通りにその面白さに浸るのも悪くは無いです。
 この作品は、そうして伏線を無数に張り巡らせ、それを贅沢にあっさりと「消化」し尽くしていくという
 その醍醐味こそが主であると言ってしまえば、確かにそうなのです。
 けれどそれは同時に、無限のツッコミを受けることにもなります。
 ほとんどの局面を、あらゆるものがギャグにしか見えないほどに短絡的にかつ表面表層的に描いて
 しまい、せっかく伏線を張って深みある雰囲気を出していたのをそれで踏みにじり、かえって伏線の
 意味を無くしてしまっているのです。
 伏線は、それを消化することを目的とした時点で、お終いです。
 それまでの興奮なり情熱なり、そういったものがすべてただの文字の羅列、設定の陳列になり、
 残される感覚的なものはただ、疾走感だけ。
 すべてを犠牲にしたその疾走感を味わう愉しみはありますし、それは何度でも言いますけれど、それは
 充分な美酒の旨味と言ってもいいでしょう。
 けれど、それでは主人公のルルーシュやスザク達の命題と混ぜ合わせたときに、消化不良を起こして
 しまうのです。
 第一期のときは第二期があるという前提で、ほとんどの伏線の回収を第二期に押し付けることで、
 ルルーシュとC2の命題にぞくりとするほどの熱度を与えて描き切り、終わりました。
 けれどあれはもはや完全に、「コードギアス」という作品が培ってきた果てのものでは無く、ただ最終回
 でのみ区切った、ルルーシュとC2の単独の叫びでしか無く、それこそそれ自体が回収すべき伏線の
 ひとつにしか過ぎなくなっていたのです。
 それは、もの凄い違和感です。
 そんな、それは謎ときみたいな感覚で描かれるものなの?
 第二期の終わりも見えてきた今、もの凄い勢いで設定の消化と伏線の回収に心血を注いだこの
 疾走感が、果たしてこの「コードギアス」という作品の、いえ、ルルーシュ達ひとりひとりの人間の魂の
 叫びを担うことが出来るのでしょうか?
 おそらくそこにあるのは、そういったものを犠牲にして、横目でうっとりとそういったものの鑑賞する、
 ひとときの愉しみだけでしょう。
 この作品は、あれだけ沢山のものを内包しながらも、それをすべて活かすことが出来なかった、という
 訳ではありません。
 この作品は、確信的にそういうものを踏みにじり、ただただ疾走感という陶酔のためだけに作られた、
 いわば犯罪的な作品と言えるでしょう。
 まぁつまり、それって、ある種の贅沢ではあるのですけどね。
 私はそのタイプの贅沢はあまり選択しませんけれど(私はあれこもこれもな人です 笑)、別に嫌いと
 いう訳ではありません。
 どのような真面目な悩みも苦しみも些事なること、所詮俗事よ(笑)、というのはつまり、真面目顔し
 なければ真面目なことが考えられないのならばそれは逆に嘘だろう、できないのならそれは結局は
 形に拘っているだけだ、という風にも持っていくことが出来るのですしね。
 伏線回収的な謎ときでは、内面的な命題と向き合えないというなら、そう言う者こそその向き合うべき
 ものと向き合っていない、ということを証すのです。
 その意味では、この作品は挑戦的な「エンターテインメント」ということにもなります。
 楽しけりゃいいのよ楽しめなきゃ嘘でしょ、楽しむのはあんた自身でしょ、ってことですね。(笑)
 
 
 
 ゼロの使い魔 三美姫の輪舞 :
 わかるような、わからないような。
 ちょっと設定を消化することで手一杯になっているというか、それに引きずられているというか。
 いまいち女の子の可愛さもちゃんと描かれて無いし、主人公のサイトはなんか亭主関白な理屈を
 堂々と振り回しててギャグにしかなってないというか、それが面白いといえば面白いのですけれどね。(笑)
 もうちょっと主人公のサイトとヒロインのルイズの恋話に集中すれば熱くて面白いのですけれど、他の
 女の子にちょっかいを出されてサイトがランダムでそれを突っぱねたりほいほいついていったり(笑)して、
 それにルイズがワンパターンな嫉妬を示すの連続ですもの、なかなかそれも難しいところ。
 文字通り、痴話喧嘩の構図だけをとっかえひっかえ描いているだけの状態。
 なかなか楽しみ方を開発出来ないでいるのですけれど、しかし逆に現在のこの状態だと、いくらでも
 新しい展開が可能、つまり現在は風呂敷を広げて広げて広げ続けている状態ですから、そのうち
 のひとつに絞って、がーっと一気に収束していくと面白いかもしれない、という予感はします。
 なんなら、サイト×ルイズの熱愛展開でも良いです、というかそれが一番面白そう。
 ですから、ただ広げた風呂敷を綺麗に畳むだけ、つまり設定を消化するだけに終始してしまうと、
 これは駄作と言わざるを得なくなるかもしれません。
 まぁ、設定消化すれば、キャラ萌えなら出来るかもしれませんけれどね。
 なにはともあれ、今後に期待です。 うわぁ月並み。(笑)
 
 
 
 ひだまりスケッチ365:
 正直、途中で止まってます。 最初の3、4話で。(笑)
 なんか良い作品だし面白いんだけど、なんか見ると自分のリズムが狂うというか、映像的情報量が
 多いので疲れるというか、そんなところなので、まぁ、お休み中です。(お休みって・・ 笑)
 
 
 
 
 
 
 疲れた。
 もう疲れた。
 
 
 
 
 
 
 
 ◆
 
 
 
 過労死へと一歩踏み出した人へ鞭打つ恋姫無双感想でも嬉しそうだこの人は、な巻。
 
 先週分です。
 やっぱり無理でした追いつくの。
 すみませんごめんなさい来週こそは無理でしょう、無理ですよ、ごめんなさい、そのうちにな。
 で。
 
 
 ・・・・・。
 
 こ ・ ・ 黄 忠 さ ん ・ ・ ・ ・  (鼻血)
 
 まずい、これは可愛い。
 エロ可愛いとかじゃ無い、可愛いです!
 あの必死さが可愛すぎ。
 なんか最初は、課長仮面、じゃなかった、趙雲さんみたく関羽さんをイジり倒す余裕人妻ぶりな人に
 なるのかなぁ思ったら、あれですよ。
 自分の娘を人質に取られて、仕方なく暗殺の依頼を受けるというごく普通の一般人の超絶弓の名手。
 いやここ笑うところじゃないですから、別に設定おかしくないですから、ちょっと(大変)弓の上手い普通の
 そこらへんの若いおかあさんなの!
 だって弓は出来ても長物の扱いは駄目なのだもの、おかあさんだもの、娘しか見えないもの、必死だ
 もの、どれだけ苦悩しても娘だもの、でもどんな理由があれ人を殺すなんて、でも、でも娘の璃々は
 娘は私のすべてなんです!
 関羽の訪問も当初余裕でかわしていたかとおもいきや、たったひとつの鎌駆けで動揺し、長物とって
 打ちかかるも関羽に取り押さえられ、そしてこの、切々とこうべを垂れての告白ですよ。
 それまで全部の表情がもうなんていうか、もう・・・・・ぎゃー・・・(なによ)
 そりゃー助けるよな、関羽さんよ。
 助けちゃうよね、関羽さん。
 孔明だって推理しちゃうし、鈴々だって張り切っちゃいますよ!
 あとなんか孫尚香とかいますけど、まぁそれはそれ。 いえお嬢様なりに頑張ってましたけど。
 そしてあの、黄忠さんの表情。
 『関羽さん・・・』 by命に代えても娘を助けるといった関羽さんにこの表情の黄忠さん
 ・・・。
 ・・・・・・。
 
 いえ、なにも言いませんよ? な、なんでもないわよ、こんなの!
 
 ・・・。
 で。
 まぁ、色々頑張って、色々突入して、色々助けて、色々還帰ってきて、色々肩車で、おかあさーん。
 あ、一応関羽さんかっこいー、と声援っぽいのは送っておきます。
 おかあさーん。
 璃々きたー、関羽さん連れてきたー。
 暗殺決行寸前。
 お、か、あ、さ、ん。 璃々はここだよー。
 万感のおもいで弓を下ろす黄忠さん。
 涙を湛えた瞳に力を込め、振り返った拳の勢いで、監視人を一閃!
 そして呼吸を乱してぺたりと座り込む若いおかーさん。
 これ、弓の神の曲張に喩えられた弓の名手黄忠、としても同時に見て頂きたいものです。
 そして一段落のちに、勘違い(張飛を関羽の娘と思う)から始まる黄忠×関羽。
 張飛のアシスト(!)もあって、黄忠さん、本領発揮間近? (違)
 
 
 
 『黄忠先生のカップリング講座〜。
  えーまず、曹操さんと関羽さんの場合は、金髪ドリル攻めのサイドポニテ受けとなります。
  リピートアフタミー♪』  by次回予告
 
 
 ♪ 金髪ドリル攻めのサイドポn・・・・・・・・・・・・・帰ってこれる・・かな? (無理でしょ)
 
 
 
 
 あかいひとみは、こうちゅうさんおやこをおうえんしています。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 P.S:
 騒ぐの忘れてた。
 みなみけ、第三期決定。
 OVAで、とこの時点で書いてなかっただけで、有頂天。
 瀬戸の花嫁、らき☆すた、とギャグモノ期待株での二連敗もなんのその! いける!
 いやOVA書いてないだけですから、まだ書いてないだけかもですから、落ち着け、でも諦めるな!
 暑くても、私はこんなにも元気です。
 よし。 (帰ってきなさい)
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

-- 080901--                    

 

         

                             ■■ 友は光りて恋をする ■■

     
 
 
 
 
 『たとえいつの日か、妖怪が目の前から姿を消しても、出会った思い出は決して消えることは無いだろう。
  それは決して・・・なにひとつ・・・』
 

                              〜夏目友人帳・第八話・夏目の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 埋もれる夏光の影。
 日向に浮かぶ水面に映えしその影が、遠くぼんやりとふたつある。
 見渡せば、小さな沼の上には、きらきらと薄く光が張りつめている。
 木陰から見つめたそれは、随分と遠い、闇の中の世界のようだった。
 ふわりと鳴る、彼の背中。
 薄く汗ばむシャツが、彼からぬくもりを消し去っている。
 私は、彼の影の中にいる。
 日差しは彼がすべて受け、私は彼に遮られ、護られて、この浅い影の中にいる。
 それなのに、水面には、しっかりとふたつの影が浮いている。
 彼はそれを、見るとも無しに、ぼうっと見つめている。
 私も共にそれを眺めても、常にその視界は朧に濡れてしまう。
 彼の背が、泣いている。
 それなのに、その涙はすべて、陽を浴び真っ白に焼けたシャツが吸い尽くしてしまっている。
 私はそれを、見るとも無しに、ぼうっと見つめてしまう。
 消えてしまいたい。
 あの憎らしい光に包まれた影を道連れにして。
 彼の背に触れる。
 指の一本一本を沿わせて、優しく愛おしくぬくもりを通していく。
 彼には、届かない。
 
 彼には、私の姿が見えていないのだ。
 かつては、見えていたのに。
 そして。
 今の彼には、見えない私の存在は、無きに等しいものとなりつつある。
 私は今。
 彼の思い出の影の中にある。
 私は一体。
 一体、どこに、いるのだろうか。
 
 
 
 
 ◆
 
 遠い遠い、星の闇の中の物語。
 かつて出会った場所で、いつまでも相手の姿を探し続けるふたり。
 初めて出会ったとき。
 彼は、妖を嫌っていた。
 私の姿を認めて、舌打ちをした。
 だが、私は彼のおもいを超えて、人間に興味があった。
 彼に妖の視ることの出来る特殊な力があることは、前から知っていた。
 だから私は彼に私を見て貰いたいと思い、けれどなかなかその勇気を出すことが出来なかった。
 しかしその彼へのおもいを隠し切ることは出来ずに、そのおもいは輝くばかりの光を染み出させ、
 彼を私の元に誘った。
 この光が、ああ、憎らしい。
 けれど、そう思うのと同時に、私はその光の裾を掴んで、彼の前に転び出ていた。
 彼は、妖怪は嫌いだと言った。
 私は、そんな彼を、影からずっと、ずっと、今まで見ていたのだ。
 私は、人間が嫌いでは無い。
 けれど、誰かの前に姿を晒すことや、話すことが恥ずかしい。
 嫌いでは無いのに、それなのに、手が届かない。
 手が、動かない。
 それならいっそ、人間を憎めば・・・
 深々とそんなときは、自分の体に光が満ちるのを感じていた。
 私はその光を、永久なる愛に換えた。
 この恥ずかしさに震える手は、同時に愛を渇望する奮えに突き動かされてもいた。
 誰かと話したい。
 あの人に、会いたい。
 それは無論、彼自身を私が愛していたからでは無い。
 そのとき彼は、ただ妖を視ることの出来る、人間のうちのひとりにしか過ぎなかった。
 私はただ、彼に会いたい、彼の前に自分の姿を晒したいと、そう思う自分を愛していただけだ。
 私はただ寂しかったのだ。
 だから、その孤独の静寂から抜け出そうとする自分を愛したのだ。
 寂しいのは嫌。
 それなのに、人に会うのは恥ずかしく、怖い、だからずっと影に隠れていようとする自分を肯定する
 ことは、なによりも簡単で、安楽なものだった。
 ただただだから、独り光を湛えて、闇の中の影に沈む私を、私はどうしても許せなかった。
 縷々と繋がる私の貧弱な言葉はそして、この身を内から照らす光にその魂を深く吸われていった。
 ただ彼の前に出よう、姿をみせよう。
 彼と話そう。
 その一心で、彼の前に転び出た。
 彼はそんな私を見て、寂しそうに、嫌な顔をした。
 『でも。』
 『次の日も、彼は来てくれた。』
 
 彼も、私と同じく、夜の闇に輝く光を、そのままには出来なかったのだ。
 
 怨みながら、憎みながら。
 彼は幼い頃からずっと、自分の特殊な体質と向き合ってきた。
 そして、その特殊な自分を迫害する人間達の間で生き続けた。
 でも。
 彼は、その自身の体質を、そして周囲の人間を怨み憎んでなどはいなかった。
 ただただ、怨まずには、憎まずにはいられない自分を怨み、憎んでいただけ。
 泣きながら、彼は毎日のように沼に通っていた。
 悔しくて、悲しくて、寂しくて。
 彼は、ずっと、ずっと、泣いていた。
 私はそれを、見てきた。
 そんな彼の姿を、その背に満ちる涙をずっと見続けていたのだ。
 彼は、自分を愛していた。
 彼は、人間を愛していた。
 特殊な体質を持った自分も、自分を迫害する人間達のことも。
 妖は、生まれながらにして、独りだ。
 けれど、人間は、彼は、独りでは無い。
 辛かったろう、苦しかったろう。
 逃げたかったろう。
 けれど、彼の瞳の奥には、深い深い光があり続けた。
 彼は、それさえ無ければ良いのに、とすら思ったことがあるのかもしれない。
 そうすれば逃げ切れるのだと、こんなに辛く苦しむことも無いのだろうと、考えたのかもしれない。
 誰も怨まずに済み、誰も憎まずに済み、静かに皆の影を見つめながら生きているだろうと。
 愛など持たなければ、求めなければ、この地獄から救われるだろうと。
 そして彼は・・・
 
 水面に映る月光の、そのあまりの美しさに見惚れ、自分を失っていることに気づいたのだ。
 そう。
 自分を失ってさえしまえば、この月夜のままに、生きられるのだと考えている、紛れも無い自分の
 その姿を見つけたゆえに。
 
 彼は私に言った。
 なぜ俺は、誰も怨みたく無いと、誰も憎みたく無いと思ったのだろうかと。
 それは紛れも無く、俺が怨み憎んでしまう人達のことを、かけがえなく愛しているからじゃないのかと。
 誰も怨んだり憎んだりしたく無いからこそ愛を捨てるというのは、ものすごい欺瞞ではないのかと。
 ただ愛することが上手くでき無いからこそ、その欺瞞に身を委ねているだけではないのかと。
 彼は言った。
 俺は、怖かったんだ。
 俺は、ただずっと、この胸の中に燦然と輝き続けるみんなへのおもいが恐ろしかったんだ。
 その光が俺を焼き尽くし、破滅へと導いてしまうのではないかと。
 そして俺はわかっていたんだ。
 俺は、自分の体質を背負うことが出来なかっただけなんだと。
 みんなと同じでいることでしか、俺は俺を生きることが出来なかったんだ。
 彼は一気に、そう語った。
 
 私は震え、そして、奮えた。
 彼の話に、では無い。
 そう語る彼の、存在に、奮えた。
 彼の暖かく震える肌と共に、震えたのだ。
 
 怖い。
 堪らなく、怖い。
 それは、触れていいのかどうかすらもわからない、恐ろしい人の子の肌のぬくもりだった。
 わからない、わからない、どうすればいいのか。
 けれど、彼の薄く滲む泣き顔を、こんなにも愛しく感じるのは、なぜ?
 どうしようも無く渦巻いて、ただただ、彼の前に立つ興奮の中だけで震えている私なはずなのに。
 彼から離れてはいけないという気持ちは、私の中の光を消してはいけないという気持ちと同じだった。
 私は、わからなかったのでは無かった。
 私はただ、知らなかっただけなのだ。
 彼の肌のぬくもり。
 彼の髪の手触り。
 彼の顔の輪郭の確かさ。
 彼の胸板の冷たさ。
 触れたことが無かった。
 だから私はただ、彼のためをおもい、彼に姿を見せる勇気を出せる自分を愛することしか出来なかった。
 だから、そんな私を憎まずにはいられない自分と、戦い続けることしか出来なかった。
 言葉、しか無かったのだ。
 彼はすっかりと自分の話をしたあとに、凄絶に笑った。
 その笑みは凄艶ですらあった。
 彼の手は、微かに震えている。
 それは、その震えを押さえ込もうとする力と、それでもその震えのままに伸ばそうとする力のぶつかり合い
 の結果だった。
 私は息を飲みながら、彼のその手を見守った。
 
 ふわり
 
 『こんな手触りなのか。』
 『気持ちいい。』
 
 恐ろしいぬくもりが、体の中を駆け巡った。
 彼に触れられた。
 そして私は、その彼のぬくもりを辿って。
 震えながら。
 彼の体に。
 触った。
 
 『本当だ。 気持ちいい・・』
 
 彼の中に染み入る私のぬくもりがじんわりと熱い。
 彼の汗ばんだ冷たい手が、私を包んでいく。
 互いの光に、手を伸ばした。
 いつのまにか、その光は無くなっていた。
 私たちがこそもう、輝いていた。
 初めてのことばかりだった。
 初めてのことをお互いに抱き締めていく、そのささやかな情熱の連続だった。
 私は、知っていったのだ。
 人間の、彼のぬくもりを。
 私は、知っていったのだ。
 私の中の光ははじめから、そのぬくもりへの愛があることをわかっていたということを。
 
 私は。
 彼という友を得たのだ。
 この世界に、共に生きる者の存在を。
 肌で、知ったのだ。
 わからないことなど、もう、無くなってしまっていた。
 私はもう、ただただ、知っていくだけだった。
 
 
 
 
 ◆
 
 黒く溜まる沼の畔。
 幾重にも閉じた時間の忘却。
 夕暮れの浸みた水面の情熱の残滓が、化石となって並べられている。
 ひとつひとつの輝きを凝視し、白く滲んだラベルの文字を読もうと目を細めている。
 けれどどうしても、その文字の意味がわからない。
 はっきりとでは無いが、どのような形な文字が刻まれているのかわかるのに、さらにはその文字を朗読
 することすら出来るのに、いっこうに、その言葉が見せるなにものかの姿を胸のなかに広げることが出来
 無い。
 彼の姿は、はっきりと伸びている。
 それなのに、そんな彼の頭の中にあるのは、その背筋を伸ばすことだけだった。
 懸命に、懸命に、沼の畔で自分に負けぬように独り戦う彼の背は、熱かった。
 あれほど読もうとしているのに・・・ただもう・・読むだけになってしまっている・・・・
 もしあの文字の意味がわかったとしたら・・・彼はもうただ・・・・
 彼は、私の姿を見失った。
 あれから一体、どれくらいの時間が経ったろうか。
 彼は、私と共に生きることが出来るようになったからこそ、私の姿が見えなくなったのだろうか。
 彼は妖が視えてしまう自らの特殊な体質を怨み、その自分の体質を怨む自分を憎み、それでも
 どうすることも出来ずにずっといたのに。
 そして私と出会い、ようやく生きられるようになったのに。
 自分の体質を怨み、その体質が消えて欲しいと願ったのは、誰もその自分と出会ってくれなかったから
 というだけのはずなのに。
 私と出会ったことで、もうその必要は無くなったはずなのに。
 それなのに、彼の体はそちらを選択した。
 自分の特殊な体質さえ無ければ、みんな誰もが自分と出会ってくれるという事実を。
 そして。
 自分だけにしか無い輝く笑顔を背負い、常にそれと向き合い続ける戦いからの逃避を。
 彼は、私と出会ったことで、私だけと生きれば良いという安心感を得てしまった。
 彼にとってのみんなが、私だけになってしまった。
 だから、妖を視るという体質が消えた。
 私が、見えなくなった。
 
 彼の背に浮き出たその言葉を、私はずっとずっと、読み上げていた。
 
 
 彼には、もう、私の姿は見えないのだ。
 
 
 
 いつの頃からか私は、彼のおもいを考えることをやめていた。
 私の姿が見えなくなって、絶叫し続ける彼の哀しみを癒そうと必死になることを止めていた。
 ただただ私は、彼を見つめ続けた。
 私は私の存在を主張することを、やめた。
 そしてさらにいつの頃からか、私は彼を見ることをやめた。
 私は、彼と同じく、ただ沼の光の中に沈む、ふたつの影を眺めていた。
 私の中に去来するのは、彼との思い出。
 触れ合い、語り合い、おもい合い・・・・
 私の隣には、呆然と座り込み続ける彼がいた。
 私は、独りでは無かった。
 それなのに、紛れも無く、ひとりだった。
 またあの暖かい光輝くふたりの日々に戻りたいと、切実に血を吐くおもいで唇を噛み続けることは、
 果てしなく、果てしなく、そんなことをしてもそれは戻らないという無意味な思考を蹴散らし続けた。
 だが。
 その昔日をおもう心は、沼を見つめる視線の中には、無かった。
 ただ沼を見つめ続けるだけの自分を責め苛む、私の焦りの中にしか、それは無かった。
 そしてその焦りは、どんどんと虚しく、擦り切れ、消えていくだけとなっていた。
 彼がそれでも私の隣にいることに、安堵していた訳では無い。
 もう彼との交歓を諦めていた訳では無い。
 ただ、それらとは違うなにかを、それらを無感動に踏みつけにして、私は見つめ続けていた。
 彼は見失った私に、俺の側にいてくれと言った。
 私も同じく、彼の側から離れることなどは、あり得なかった。
 私達は、繋がっていた訳では無い。
 私達は、これ以上無いというくらいに、初めから断絶した存在同士だった。
 私達は、孤独だった。
 それは、圧倒的だった。
 怖くて、恥ずかしくて、怖くて、恥ずかしくて、堪らなくて。
 それなのに、決して諦めることは無かった。
 それなのに、絶対に諦められなかった。
 独りは、いや。
 誰も受け入れてくれない、それは、私が、俺が、悪いから?
 私が、俺が、弱いから?
 だったら正しくなろう、強くなろう。
 そう思い続けた。
 そして、なにより。
 その正しくなろう、強くなろうと必死に頑張り続ける、その悪くて弱い自分を見捨てたりなどしなかった。
 私と彼は、自分のことを愛していた。
 憎み、憎み、そして、愛した。
 私は、彼がそうだったことを知っている。
 彼も、私がそうだったことを知っている。
 
 そのふたりは、出会ったのだ。
 
 そうだ、出会ったのだ。
 私達は、お互いが出会う前から、誰かと一緒に生きたいと願い続け、生きることにしがみついてきた。
 なぜ、彼が私の姿を見ることが出来なくなったのかなんて、どうでもいい。
 なぜ、私が彼に私の姿を見せることが出来なくなったのかなんて、どうでもいい。
 それでも彼は、私の姿を求めている。
 それでも私は、私の姿を彼に与えることを求めている。
 それは、私の姿が消える前から、変わることは無い。
 切実な、切実な、身を切るよりも激しい魂の叫び。
 あの頃に還りたいだなどと思わない。
 今のこの状態が現実。
 今いる此処が、私達の居場所。
 今までと、なにも変わらない。
 姿が見えなくなろうと、なんだろうと。
 私達が、誰かと出会おうと必死になることに、なにも、変わりなど無かった。
 どれだけ泣き叫ぼうと、どれだけ絶望しようと、どれだけ怨んでも憎んでも、愛しても。
 
 今、此処から、彼に会いたい。
 
 私達は、出会ったのだ。
 そのことを手放したりなどするものか。
 すがりつき、執着し、それでやっとの思いで手に入れたそれは、そうして執着した言葉で綴りあげたそれ
 への賛歌を遙かに超える、圧倒的ななにかを私達に与えてくれたのだ。
 私達は出会い、そして、出会う前に思い描いていたそれよりも、絶対的に変わった。
 私達は、その出会いから、始めることが出来た。
 出会い、抱き合い、泣きながら喜び合って。
 それもそこそこに、ふたりのその姿は、そこから充満として生きていった。
 それまでの、惨めで切実な自分を蔑むことも否定することも、それに感謝することも無かった。
 私達は、誰かとの出会いを求めて、懸命になれた自分を褒めたりしない。
 なぜなら。
 ふたりはもう、出会ったのだから。
 なによりも愛しい者に、出会ったのだから。
 その自分はすべて、愛しい彼のために捧げられ、捧げるためにこそ賞賛される自分へと昇華された。
 彼に私の姿を魅せるためにこそ、私は自分を強く正しく美しく磨いた。
 けれどそれは、彼を喜ばせるためというだけのものでは無かった。
 私はそうして誰かのために自分を磨ける自分への愛を超えて、そうして実際磨かれた自分の姿をこそ
 愛せるようになったのだ。
 私は、光り輝いた。
 燦然と、燦然と。
 輝いた。
 私の顔は、仮面は、これ以上の無いほどに、美しかった。
 だから。
 
 私はその仮面の隙間から覗く私を、彼に与えることが出来るようになった。
 
 私の仮面は、私の一部。
 彼が差してくれた花の髪飾りに、この白く輝く仮面はとても合った。
 彼から貰ったものと、彼のためのものを纏える幸せ。
 私は、その幸せに輝いた自分を抱きしめた。
 彼と私が生きている、この世界を無限に愛した。
 ひとつひとつのそよ風のぬくもりに髪は薄く濡れ、舞い落ちる雨の一滴一滴が叩く肌は熱く弾けて
 いった。
 時は止まり、また動き、まるで私達の鼓動のように合わせてふたりの世界は生きていった。
 それを。
 それを、誰が、忘れるものか。
 俯く彼。
 絶望の淵に額づく彼。
 私達は、独りじゃ無い。
 私の姿は、もう見えないけれど・・・・
 私はあなたを嫌いになることなんて・・・・
 
 
 
 『好き・・・・よ・・・・』
 
 『好きよ・・・好き・・・っっ・・・・・・・・好きよ。』
 
 
 どんなことがあったって。
 どんなになろうとも。
 あなたのことが、好きよ。
 絶対に、絶対に、嫌いになんてならないわ。
 たとえ怨み憎んでしまったとしても、たとえその憎しみに染まる自分との戦いに染まってしまったとしても、
 私は絶対に絶対に、あなたを求めて続けているわ。
 花飾りが朽ちても、仮面を無くしても、私は・・・・・私は・・・・・・・
 
 私達は、独りじゃ、無い。
 
 悲しみも、絶望も、涙も、無い。
 私達は、出会う。
 出会う者達の影を、求め続ける。
 
 
 
 『私は、蛍の妖。』
 『実体を、持たない。』
 
 『一度だけ、ただの虫の姿に戻れる。』
 
 
 あの人に、婚約者が出来た。
 あの人は、誰かに出会えた。
 良かった・・
 
 私は、蛍。
 『私がいなくても、もう、あの人は笑ってくれる。』
 
 私達は、誰かと出会いたい。
 そして、彼は私を愛してくれ、私は彼を愛した。
 そして彼は、また、誰かとの出会いの中に生きた。
 ならば・・私も・・・
 悲しく無いと言ったら、嘘になる。
 けれど、悲しさに染まりたいと言ったら、それも嘘になる。
 そして。
 悲しさを振り捨てたいと言ったら、それだけは他がどうであろうと、絶対に嘘だ。
 悲しいか悲しくないかなんて、関係無い。
 私達は、自分達の求めるものを求め続ける。
 だから私も・・・
 蛍に、還る。
 光り輝く私に、還りたい。
 会いたい。
 会いたい。
 
 
 彼に、会いたい。
 
 
 すべてを脱ぎ捨て、虫の蛍に還れば、私は一匹のただの蛍として、彼の目に留まることが出来る。
 けれどその私には、彼に捧ぐ美しい仮面も無ければ、彼から受け取れる花の髪飾りも無い。
 彼と、語り合うことも、共に遊ぶことも出来ない。
 彼に触れられても、そこにあるのは堅い虫の殻の手触りだけ。
 光。
 蛍のか細いばかりの光だけが、その私の持てる唯一のもの。
 そして、その光の中に還ってしまえばもう、脱ぎ捨てたものを取り戻すことは出来ない。
 でもそれでも行きたい、それでも彼に会いたい、と言ったらそれは間違いだ。
 
 そんなことは、関係無い。
 
 私はただ、彼に会いたいだけだ。
 それは、ずっとずっと、変わらないのだ。
 
 私は震えている。
 怖くて、恥ずかしくて、震えている。
 久しく、忘れていた。
 彼と共に見つめていた、沼の上のふたつの影と輝く光。
 それは、私が一番初め、彼に姿を見せる勇気を持てなくて隠れていた、あの草むらの中からみつめた、
 彼の後ろ姿と良く似ていた。
 いこう。
 彼に会いに。
 私の中の光を隠し切れずに、堪らないおもいのままに、それを押さえつけるままに、彼に会いにいこう。
 
 
 私は、蛍。
 誰かにこの溢れるばかりの小さな光を見て欲しいばかりに、妖となった。
 人の形を取り、見えるものだけに見える、小さな小さな愛しき自分。
 最後は此処に帰ってくる。
 光り輝く夜道の一筋とならんことを。
 かつて山神とその恋人の恋路を照らした功績により、人の形を取ることを許された蛍。
 嬉しさのあまりに、その人の形を磨いた蛍は、その輝く道から離れていった。
 それほど、嬉しかったのだ。
 自分も、恋を、出会いの物語を綴れるかもしれない可能性を得て。
 そして。
 その蛍は、出会った。
 その蛍は、恋をした。
 山神のように、人間を愛した。
 そうだったんだ・・・・
 
 
 あの恋路を照らした輝きのひとつひとつもまた、恋をしているのだと。
 だから私は、還ってきた。
 還ろう。
 蛍と、人間の出会いの場に。
 いこう。
 かつての山神と人間の困難な恋を照らした、あの夜空の下の光の中へ。
 私は蛍。
 彼は人間。
 私は人の形を取ることで、彼と触れ合うことが出来た。
 そして今、彼が私の姿を見失ったことで、ようやく、知った。
 私は、蛍として、彼に触れたことが無いと。
 恐ろしかった。
 怖かった。
 人の形を取っていたときのそれとは、比べものにならない。
 
 でも。
 それが、私。
 私は、彼に会いたい。
 彼が・・・・・・好き・・・・・!
 
 ならば、この恐怖はただ、脱ぎ捨てるだけのものにしか、過ぎなかったのだ。
 そうするための勇気にこそ、私は最大最高の、そして私のすべてを込めた。
 後戻りは出来ない。
 彼は蛍の姿の私を、勿論私として認識しない確率の方が遙かに高いだろう。
 認識したとして、彼が私をそれで嫌わない理由は無い。
 ただの煩わしい蛍として、片づけられてしまうかもしれない。
 私の声にならない声は通じないかもしれない。
 彼を信じる信じないの話では無い。
 彼との思い出の絆など、関係無い。
 
 
 これは、人間への、蛍の告白。
 全く異なる孤独な存在同士の、出会い。
 私は、蛍。
 そして、彼は、その蛍を見ることが出来、そして出会うことが出来る。
 すべては、そこから始まる。
 私は一匹の虫としての寿命を全うするまで、彼に会い続ける。
 人間と蛍の寿命の長さは違う。
 それを儚み悲しむなどあり得ない。
 そもそも私が妖のままだったならば、逆に寿命が尽きるのは人間の彼の方が遙かに早かったのだから。
 私は私、彼は彼。
 命の長さに、短いも長いも無い。
 ただ異なる者同士が、出会っただけ。
 同じで無ければ生きられないのならば、彼は私の姿を見失うだろう。
 それは、私のことを見ていないのと、同義であったのだから。
 そう・・・そして・・
 たとえ私達が異なる存在であろうとも、私達ふたりの影は、あの沼の上に浮かんでいた。
 彼が私の姿の中にこそ、自分と同じ人間という幻影を見ていたとしても、あの影は傲然と輝いている。
 あの沼の上の影は、私達の中で輝くあの光と果てしなく繋がっている。
 友人であろうと恋人であろうと飼い主とペットの関係であろうと。
 寿命の長さの違う、蛍と人間の出会いであろうとも。
 私は彼に、会い続ける。
 夜空を静かに染める、光の道の一筋となって。
 そして。
 その道を通って、彼に会いにいこう。
 
 
 私をみて!
 私は、蛍よ!
 
 そして。
 舞い降りた彼の指先は、堪らなく、熱かった。
 私の体はきっと、彼にとっては小さな光を放ち冷たかったろう。
 その冷たさを、彼は気持ちよく思ってくれただろうか。
 この蛍火を、美しいと思ってくれただろうか。
 そう思うと、私はより大きく、自分の体を冷たく彩り、そして美しく光り輝きたく思うのだ。
 そう。
 私は。
 美しい私になりたい。
 
 それが、私の思う美が人の形であるのならば、私は再びそれを求めよう。
 けれどそれは、偶然の一致だ。
 たまたま、私が美しさを感じたものが、人の形だっただけだ。
 いや。
 それは偶然ゆえに、根本的には人の形と全く同じという訳では無いのだ。
 美しいと思ったものを掻き集めたら、それは人の形に似ていただけなのだから。
 ならば、人の形に拘るのは、本末転倒だ。
 人の形から逸れようと、それは人の形自体を真似ている訳では無いのだから、当然だろう。
 だから。
 同じく私は、蛍の形も、それと同じくそれに拘るつもりは無い。
 私は蛍ではあるけれど、蛍になるつもりは無い。
 私は、美しい蛍になるつもりもまた、無いのだ。
 私は、私。
 蛍であろうと、人間であろうと、それは、変わらない。
 蛍であろうとすれば、人間であろうとすれば。
 きっと今度は、私こそがあの人の姿を見失ってしまうだろう。
 私は蛍。
 けれどそれは当たり前のこと。
 蛍の姿が嫌だからこそ、私はそれから逃げて、いつのまにか人間の姿自体を真似ていた。
 ただただ、私は、美を求めれば良かっただけなのに。
 愛しい人の側で、ただただだから、私はこれから、美しさを求めていく。
 美しさは、人間の姿そのものにも、蛍の姿そのものにも、無い。
 それはただただ。
 
 
 私の中の、この美しい光と共にある。
 
 
 彼とその愛する人の結婚式の輝きを見下ろしながら、私はそのふたりの姿を、とても愛しく。
 そして、綺麗だと、おもった。
 手を取り合うふたりの時間を照らす陽の光を、私はなによりも美しいとおもった。
 その陽の光を受けて、静かに朧に輝く月夜の下で、私もそして、綺麗に輝きたいと、思った。
 私を、みてください。
 私のこの愛しい光を。
 
 
 
 
 あなたに、みてほしいんです。
 
 
 
 
 
 ありがとう
 
 あなたに出会えて ほんとうに 良かった
 
 
 
 
 
 だから
 
 また
 
 
 
 
 
 
 会いに いきます
 
 
 
 綺麗になって
 
 
 
 
 
 
 
 あなたに。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                              ◆ 『』内文章、アニメ『夏目友人帳』より引用 ◆
 
 
 
 
 

 

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