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◆◆◆ -- 2009年2月のお話 -- ◆◆◆

 

-- 090227--                    

 

         

                             ■■水面に浮かぶ友の理■■

     
 
 
 
 
 『 こういうのって、楽しいんだな。』
 

                          〜続 夏目友人帳・第八話・夏目の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 水面を歩く。
 翳っている。
 池の端から端まで、真っ黒に影が覆っている。
 陽が高い。
 光は届いているはずなのに、それは水面に触れた瞬間に真っ直ぐと空に還ってしまう。
 この池に残されるのは、光の影。
 それが嫌だったことは無い。
 結構、暖かいんだ、此処は。
 この池は、凍ることは無かった。
 どんなに寒い日も、どんなに雪が降り込めても、みんなこの水面が空に還してくれる。
 きらきらと蠢くように、この池は絶えず生きている。
 遠くに降る震動が、たっぷりと時間をかけて水の中で醸成され、それはさながら爽やかな美酒のよう。
 澄んでいる。
 水の下から顔を出せば、そこはひとつだけ、別世界。
 案外、池の中って汚いんだ。
 藻が無節操に蔓延っていて邪魔だし、なんだか生命の臭いが犇めいていて、実は息苦しい。
 ぎっしりと体の回りに色々なものを纏って、池の中を泳いでいる。
 なにも考えてはいない。
 真っ黒だ。
 でも、いちいちのひとつひとつのものが気にならない。
 体と体の外が、薄い肌と鱗で繋がっているように感じる。
 溶けている訳じゃ無い。
 ただ、あまり、違いが無い。
 黄金に濡れる髪が、藻屑の流れに身を任せている。
 微細な生き物たちの息吹が、胸を満たしていく。
 
 でもここには、あの水面に映る光は届いてこない。
 
 見上げると、僅か先に浮かぶ水面が輝いているのが見える。
 すうとひと泳ぎ加えると、まるで月のようにこの白い体は水面の世界へと浮き上がる。
 綺麗だ。
 さりとて、感動することとて無い。
 毎日毎日見ている、当たり前の、新鮮さの無い、杜撰な美しさ。
 なのに、その美しく輝く空の明かりは、煌々として、水の感触とはかけ離れている。
 澄んでいる。
 水の中よりもずっと音が響いているのに、ずっとずっと静か。
 寒さに震えているはずのこの体が、この水面を揺らすことは無い。
 きらきらときらきらと光るままに、池と空の狭間の世界は止まっていた。
 綺麗だ。
 そう呟きながら、ごそごそと藻掻きながら佇んでいる。
 
 つー
 
 水面を歩く。
 特になにも無い。
 このまま岸辺に寄せてみようか。
 気づけば雨が降っている。
 さらさらとさらさらと、肌に触れる瞬間にその豪雨の激しさは甘い囁きに換えられていく。
 遠くで、声が聞こえる。
 声だ、音じゃ無い、声だ。
 その小さくてはっきりとした声を、泣き声を手繰り寄せながら、岸辺へとゆらゆらと漂着した。
 なんだ、あの子か。
 平凡な溜息の目新しさに、思わず上擦りながら息を潜めてしまう。
 どうしたんだい。
 耳から抜けていくような気の無い言葉。
 それでもその少女は、泣きじゃくりながら、嵐に翻弄されながらも、ただ泣いていた。
 泣いているだけじゃわからない。
 そう言葉を投げかけてわかるのは、少女が泣いているということだけ。
 わからない、わからない、わからないんだ。
 浮き浮きとして、嬉々として、尾びれで水の中をひと掻きする。
 さぁ、願いを言ってごらん。
 なんでも叶えてあげよう。
 少女は、自分の大切な人を守るために、人魚の血が欲しいと言った。
 笑った。
 そうか、お前も醜い人間どもと同じなんだな。
 からからと、他愛も無く、笑っている。
 底抜けに、底抜けに、なにもわからない事が愉しくて仕方が無い。
 無表情に、少女を懲らしめる事に考えを巡らせる。
 楽しいんだ、楽しくて、悲しくて、楽しく、楽しくて。
 少女がただ、自分の大切な人を助けてくれと頼めば、この血を与えれば助けてやれるかもしれないと、
 そう言えたかもしれない。
 ではなぜ、初めから人魚の血を欲しいと言ってきたから、少女に失望し、少女に復讐してやろうと
 思ったのだろうか。
 そのことがわからなくて、わかっていることがわからなくて、それがなんとも嬉しくて、また楽しい。
 心が小さく揺れている。
 体が大きく揺れている。
 怒りとも笑いともいえない不思議な表情が、顔を満たしていくのを感じている。
 
 私は人魚。
 人間に、不老不死の薬効があると言われている、この肉と血を付け狙われ続けた種族。
 
 本当にこの肉と血を口にすれば不老不死になれるのかどうかなど、わかりはしない。
 大方、人間どものつまらない誤解と偶然の堆積で、不老不死だと思われた人間がいるだけなのだろう。
 それに、人魚の血肉を口にしたから不老不死になったのでは無く、不老不死と言われたからこそ、
 後付けでそれは人魚の血肉を口にしたからだ、という事にされているだけなのかもしれない。
 だが、本当に、不老不死の人間はいて、本当にこの血肉には人間を不老不死にする力があるのかも
 しれない。
 いずれにしろ、わからない。
 なぜなら、不老不死の人間と、それを証明出来るほど長い時間会い続けたことなど無いのだから。
 そういう人間がいるのかいないのか、わからない。
 うずうずする。
 胸の中にある、今まで散々追い掛けられ命を狙われた続けた怒りよりも、それは遙かに強いものだった。
 もし本当に、この血を与えることで誰かの命を救うことが出来るなら・・・
 それは自己犠牲の精神とはかけ離れた、ただこの体にそんなにも素晴らしい力があることの、そのなに
 よりも嬉しい誇らしさだった。
 人間が嫌いかどうかは関係無い、大体元々、人間は好きでも無ければ嫌いでも無い、本当に
 興味の無い存在だったのだから。
 だから、人間達が人魚を狩る理由がその不老不死の薬効にあると知ったときに、この血肉を呪ったり
 することなども無かった。
 そんな凄い力を秘めた宝物の体だからこそ、より深く愛し、人間どもから守りたいという気になった。
 無論、人間どもに与えるために、人間どもの犠牲になどなってやるつもりも無く、だからこの体を
 その人間を不老不死にするために使うことなど、考えたことも無かった。
 人間に追い掛けられると言っても、それは半分は嘘だ。
 なぜなら、人魚の姿を視る事が出来るのは、そもそもほんの僅かな、特別な能力を持った人間だけ
 なのだから。
 妖とは本来そういうものなのだから、人間が人魚を狩り続けたという歴史は正確では無い。
 何度も実際に、この体を目当てに追われた事はあるが、それはこの池に人魚を視た者が言い残した
 伝説を元に、適当にめくらめっぽうに池を掻き回されただけ。
 けれど、どうしたことか、実は、なんとも不思議なことに、人魚は他の妖に比べて格段に人間に視られ
 てしまう事が多かった。
 特に、不老不死の伝説を信じて必死に探す輩には、能力のある無しに関係無く、あっさりと視られて
 しまった。
 何度か危ないときもあった。
 あと少しで、命を取られる寸前のときもあった。
 普段はこちらが見る一方なだけなのに、なのに不老不死の薬で頭が一杯になったときだけ、見返して
 くるだなんて。
 いつのまにか、ただ興味が無かっただけの奴らが、なんとも激しい憎しみの対象となっていた。
 
 ぐるぐるぐる
 
 『どいつもこいつも、不老不死だの血肉だの!』
 
 的はずれに追い回されても、ただ軽く愚かな人間を虚仮にする怒りしか湧かなかった。
 だけど、この体めがけて追い縋られて、初めて私は・・・・・
 初めて私は、人間を憎んだ。
 命を狙われたからじゃ無い。
 私は、人魚は、人間がいるからこそ、人間に不老不死の力があると見込まれたからこそ、この体に
 誇りを持つことが出来るのだと思い知ったからだ。
 不老不死なんてある訳無い、だが、そうさせる力が私のこの愛しい体にあると言うのなら、それはとて
 も嬉しいことだった。
 他の妖怪達は、人間達が人魚の血肉に不老不死の薬効があると信じている、ということは知っている
 が、実際にそんな薬効があるだなどと信じている者はひとりたりともいない。
 人間は短命で、不老不死になる事などある訳が無い。
 それは、すべての妖が抱える、最も根源的な孤独の事実。
 だから私達人魚は、他の妖怪達からは見透かされているのだ。
 お前達人魚は、自分に人間を不老不死にさせる力があると言われた嬉しさのあまりに、自分の孤独
 から目を背け、その事実を明かにする人間の目を憎んでいるのだ、と。
 胸が冷える。
 ずっとずっと、変わらぬ誰かと出会えたら・・・・
 その誰かを創り出せる力が私にあるのだとしたら・・・あると思えたらから私は・・・私達人魚は・・・・
 人間に狩られるだけだったのかもしれない。
 
 ごう ごう
 
 あの子が、あの少女が泣きやんだ。
 あの子が見つめている。
 嬉しかった。
 この体を見て、泣きやんだ。
 伝説は本当なんだ。
 あの子は人魚の血を求めた。
 
 なぜ、なんだろう。
 
 考えたことが無かった。
 人間など、ただ暇潰しがてらに付き合うだけの相手だった。
 だから、その相手がいるかいないか、ずっといるかいないか、ただそれだけしか問題にしていなかった。
 孤独を癒すために人間を求めたのだろうか。
 本当に私達人魚は、他の妖達に心のうちを見透かされていたのだろうか。
 必死に水面の上を冷たく滑る、この濡れて輝く体がみえた。
 優しくしてやろうか。
 この体に、その少女。
 違う・・・それは違う・・・・
 にやりと優しく笑い、その少女の願いを叶えるままに、この体を愛しく割いて血を与えて、それで一体
 どうなると言うのだろう。
 それは孤独だ。
 孤独の為せるただの自己犠牲。
 自らの不老不死の薬効をそのまま使い、不老不死の人間を得て孤独を癒そうとすることで、孤独に
 逼塞し続けようとしているだけだ。
 そんな創られた人間など、人魚の玩具にしか過ぎ無い。
 その人形を使って癒す孤独なんて、そんなのは独り遊び以外のなにものでも無いんだ。
 あの子がなにを求めていたのか。
 それはただ、助けを求めていただけ。
 孤独も何も関係無い。
 無いんだ。
 それを私は・・・・・わかって・・・・・
 なのに、自分の勝手な想いで、不死への想いで、私は・・・・・
 
 『独りで無いときもあったさ。』
 
 
 少女がずっと、泣いている。
 
 
 あの子はもう何十年も生きている。
 もうよぼよぼの老人だ。
 そして、自分の大切な人を、永遠に死ねないという苦しみに落としてしまったかもしれないという、
 その慚愧の念を抱きつつ、ずっと生きている。
 私の血を求めたのは、お前だというのに。
 だがそれは私も同じ。
 私の血に不老不死の力があると信じたのは、私自身。
 だから私は、腹が立った。
 だから私は、あの子に人魚の血と偽って、ただの葡萄の汁を与えた。
 人魚の血に不老不死の薬効などあるはずが無い。
 だけど、その薬効が無いと証明することも出来ない、その可能性に私はずっと賭けていた。
 だから、同じじゃ無かった。
 私を見ろ。
 そのために、偽物を与えてやったんだ。
 私のことを見ずに私の血目当てか、ならば意地悪く偽物を与えてやる。
 そして、そうすることで、私は、ひとつだけ、自分自身と向き合える気がしていたんだ。
 不老不死なんて、ある訳無い。
 ただ不老不死があると信じている、人間とそして、愚かな人魚がいるだけだ。
 ならば、私の血を与えたところで、葡萄の汁を与えるのと変わらない。
 でも・・・だからこそ・・・
 私は、不老不死があると信じ合える、その人間と人魚の眼差しを信じたい。
 だから私は、自分の血に不老不死の力があると信じるからこそ、それを求めるだけの人間を苛めて
 やろうとしたのさ。
 私は・・・・
 
 
 
 私は・・
 ずっとあの子と、話したかったんだ。
 優しくて、寂しくて、悲しげな、なのにとっても優しいあの子のことが、大好きだったんだ。
 
 だから、その子と話すためなら、その子の存在をただ見つめるだけの事から抜け出すためにこそ、
 私は、不老不死の血肉を纏う、この人魚の姿であの子の前に顕れたんだ。
 
 
 
 どうしよう、どうやって話そう・・
 
 『ああ、こんな嵐の夜に・・・何ヶ月も来なかったのに・・・あの子がまた来てくれた』
 
 どうしよう、どうしたらいいんだろう・・・
 
 『友達になってと言ってみようか。 怖がらせずに、私は笑えるだろうか』
 
 
 怖い・・・
 怖い・・・・
 無理だよ・・
 そんなこと出来る訳無い・・・・
 そうだよ・・・あの子だってきっと・・・他の人間達と同じで・・・
 『なんだ・・君もやっぱりそれが目的だったのか・・』
 だから私は・・・あの子の願いを聞いて・・・・それから逃げて・・・
 
 ああ ああ ああ
 
 あの子が
 『あの子が泣きそうな笑顔で、ありがとうって。』
 
 
 ああ
 
 
 
 『そのとき、私は自分自身に失望してしまったんだ。』
 
 
 
 
 
 弱い自分に。
 自信を持てない自分に。
 こんなに、あの子の想いを感じているのに。
 こんなに、すべての事がわかっているのに。
 私は私の血の代わりに、葡萄の汁をあの子に与えた。
 だから、あの子がそれを大切な人に与えてしまっても、その人が不老不死になることは絶対に無い。
 でも、不老不死なんて無い、という真実を明らかにするのは、あの子自身なんだ。
 だって、そんなの当たり前じゃないか。
 
 葡萄の汁を与えたのだから、不老不死になる訳無いということは。
 私の血を本当に与えていたらどうなるかは、まだずっとわからない、ということなんだから。
 
 あの子は、その大切な人とそっくりな人を見て、その当時とまるで変わらない姿に驚き苦しんだ。
 けれど、それはその人の孫だったと知って、なによりも安堵する。
 でも。
 あの子が。
 あの子がその人に偽物だけど人魚の血を飲ませた事実は変わらない。
 あの子が。
 あの子が、その人のために必死になって私に助けを求めた事実は、絶対に絶対に変わらないんだ。
 私も、そうだ。
 だから私は、あの子に人魚の血を渡すことを拒否しなかった。
 それがたとえ偽物だろうと、効き目があろうとなかろうと、私があの子に不老不死の薬を渡した事実と、
 私があの子と話したいと、あの子の必死な願いを叶えてやろうとした事実は、消えて無くなったりしない。
 あの子が真実を知ったって知らなくたって、同じことさ。
 あんなに必死になって・・・何十年も・・・ずっと・・・
 あの子は純粋なんだろうか・・・あの子は馬鹿なんだろうか・・・
 私の気持ちも、人魚の歴史も知らず、ただ無邪気に私の血を求めるなんて、ひどいだろう。
 だから腹いせに偽物を与えてやったんだ・・・・
 そうすることしか出来ない自分に失望したんだ・・・
 でもそれでも、私は諦めなかったんだ。
 私達は独りじゃ無いんだ。
 あの子の無神経さに腹を立てるのは当然なんだ。
 この憎しみは、あの子がいるゆえなんだ。
 その憎しみを捨てることは、あの子の存在の否定と同じことなんだ。
 私達は繋がっている、繋がっているからこそ、憎み憎まれることはあって当然なんだ。
 
 そして。
 憎しみと共に、愛もあり。
 憎しみと愛を越えて、みえる想いがある。
 
 
 憎み切ってもそれと同時にそれを越える眼差しを持てなかった自分に、私は失望しただけさ。
 あの子は子供だったさ、でもだからといって、人魚と人間の歴史を無視して良いことなんて無い。
 私は人魚であの子は人間なんだから。
 その歴史に拘りつつ、そしてそれに囚われないように、今、私はあの子をみつめる自分の優しさと繋がれ
 た気がする。
 そして、あの子の優しさと、そして・・・
 
 
 
 優しいあの子の、優しいがゆえの孤独とも。
 
 
 
 
 不老不死なんて、ある訳が無い。
 私達は、みんなひとりだ。
 その事実を変える力なんて、誰にも無い。
 けれど。
 
 
 
 『非力さは痛感しているよ。』
 
 『でも、だからこそ、そばにいたい、そばにいて欲しいと願って、
それが叶う貴重さを噛み締めて生きているんだ。』
 
 
 
 
 
 
 
 今日も池の中から、水面をみつめている。
 満遍なく滞り無く、光が溢れている。
 綺麗で、美しくて・・・・・
 なんだかとっても
 
 あたたかい
 
 
 どく どく どく
 
 
 
 
 生まれて初めて、この体に暖かい血が流れていることを、体感した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                             ◆ 『』内文章、アニメ『続夏目友人帳』より引用 ◆
 
 

 

-- 090225--                    

 

         

                              ■■感想書きの労働 2 ■■

     
 
 
 
 
 前回の続きです。 前回は過去ログに入ってます。 (「感想書きの労働1」というタイトルです)
 どちらから読んでも支障はありませんので、お好きな方から読んで頂いたりどちらも読んで頂かなくて
 も全然平気です(微笑)
 
 では、早速。
 
 
 
 
 ◆
 
 
 とらドラ:
 なーんだろ、小粒?
 なんていうか、大河のあのまとまり具合が気に入らないっていうか、これから竜児と向き合うための布石
 みたいな感じで描いてんだろけど、そういうものを描くために手乗りタイガーを使うなよいうか、ぶっちゃけ、
 手乗りタイガーは実はツンデレしたええまぁみんな知ってるでしょうけどね今回公式にそういう事にして
 みましたみたいな。
 暴君手乗りタイガー様ファンとしては、慚愧の念に耐えがたい。あんなんタイガー違う。手乗りや!(ぉぃ)
 が、大河の中に立ってみると、そういうのを踏まえた上でもわかる気がしないでも無い。
 や、べつに私だって普通のひとりの女の子なんだからねっなんて言わせる気は全然無いのよ、無いんだ
 けどそんなものは、でもね、もしあの手乗りタイガーが普通の「女の子」をやらずに、一見そう見える
 なにかになっていたとしたら、どうよ?どうなのよ?
 大体竜児だって、いつまでいかつい顔だけどほんとは普通の少年なんだよ、みたいなノリを地でやって
 それで満足してんの、ん?、てかそこがポイントなのか、それが竜児のあの無神経さの根底にあるんだ
 よね、竜児がいつまでもその地の自分に拘ってるからこそなんも見えなくなってるように、ああそうだ、
 それは今の大河も同じなんだ、これ、大河ひどくね?、男の子視点から見たら竜児はズルっこい阿呆
 だけど、女の子視点から見たら大河は卑怯な馬鹿じゃないこれ?
 大河だって竜児と同じで、勝手に竜児をそういう「普通の少年」にして、それを勝手に思い遣って、
 そんで潔くカッコ良く身を退ける、そういう普通なだけの女の子を演じることを貪ってるだけっしょ。
 竜児の阿呆は無自覚だけど、大河の馬鹿はこれ、自覚してんじゃん、結構。
 竜児のためとかみのりんのためとか、んな寂しそうな顔で言われてもね、その竜児達への優しさを踏み
 台にした独り立ちなんて、そんなもん、なんの価値も無い。
 その踏み台はさ、あの伝説のvs兄貴のときに飛び移り踏み越えた、あの教室の机よりも、ずっとずっと、
 弱々しく、また、手乗りタイガーが立つべきお立ち台でも無い気がする。
 そのみっともない踏み台を踏んでジャンプした先にあるものなんか・・・・・
 うーん、見てみたいかなぁ、それもある意味等身大な自立みたいな感じで。 (ぉーぃ)
 でもま、普通に手乗りタイガーvsミスターレディが見たい訳ですけどね、私は。
 つか、そうじゃなきゃ、とらドラやる意味無くね? たぶん。
 その「等身大」って、結局自分が作ったもので、自分自身じゃねーし。
 逆に、外から押し着せられた仮面の手乗りタイガーでは無い、そのどうしようも無いほどに激しい、
 自分の中から溢れ出てくる本気の手乗りタイガーが、その等身大の自分とやらを撃破してこその、
 この「とらドラ!」という作品の最大の魅力が出てくると思うなぁ。
 仮面の下にあんのは普通じゃ無くて、普通をも求める普通だけじゃ足りない、絶対無敵の大河でしょ。
 ちなみに私は、べつに大河は竜児とくっつかなきゃ駄目とは言っとらんよ。
 少なくとも、自分の気持ちから逃げずに、全力でみのりんと戦え、どうするかはそれからだ、って感じ。
 それ以上は、言わない。 (ぁ)
 
 
 サンレッド:
 韓国風卵かけ御飯が美味しかったです、ありがとうヴァンプ様www
 あとはまぁ、特に言うこと無しかな。
 面白いっていうか、時々大爆笑があって、あとはあるある系の笑いがしんみりと、って感じかな。
 もうちょっとこの辺りでひと動きあるかもしんない、っていうくらいの仕草は魅せてくれても罰は当たらない
 のに、そういう気配は微塵も無いので、まぁ、このままでいっか。 (ぉぃ)
 ネタがあるんだかないんだかわからない、ぐだぐだのぐずぐずの、なのに完璧にまとまっているこの時代劇
 並のほっと感が、いい感じで気の抜けた清涼剤になってます、はい。
 
 
 みなみけ3:
 これまでのシリーズの中で一番面白い。
 というかこれ、ギャグアニメ史上に残したい、ってか私的に五指に数えたいよもう。
 なんか今期は、まりほりとこのみなみけ3のふたつの超絶作品があって幸せ過ぎだろ普通に考えて。
 やべー、マジで幸せになってきた。
 そんな感じの笑いがありマス。
 超技巧的だよね、やっぱみなみけの笑いは。
 ネタ自体の面白さとかリアクションとかちょっとした感性とか、そういうの関係無く、やっぱし理屈と屁理屈
 と詭弁の饒舌なやり取りが、なんと言ってもメインで最大の魅力。
 騙し騙され誤魔化し誤魔化され、双方ともに騙されてたり誤魔化されてたり、滅茶苦茶なのに納得
 したり、妙に完全にズレてたり。
 これまでのシリーズでは結構荒削りなところがあったけど、今回のこの第3期は外したところがひとつも
 無く、すべてが完璧に計算されて、ひとつのものとして圧倒的にまとまってる。
 そういう意味で、第1期の大雑把な当たりはずれの激しさのあのまったり感は無いし、第2期のような
 みなみけを舞台にした家族的なしんみり感も無く、淡々とギャグアニメとしてみっちりやっているんだけど、
 でも、だから逆にこの第1期第2期がそれぞれ築いてきたそれぞれの独自のものを、第3期はそのすっき
 り爽快感として獲得していますよね。
 とにかく、完成度が高すぎる。 
 あ、作画はなんだかしんないけど乱れまくってますけどね、めっちゃ良いときもあるんだけど、基本低調
 かな、まぁあんま気にならないけど。
 うん、で、なんかね、このみなみけの笑いっていうか、それを含む空気感ってね、なんか「開かれて」
 るんですよね。
 明るいっていうのもありますけど、形が論理的な笑いなんで、誰でも理解可能だし、それになによりも
 その「論理を使ってる事で生じる笑い」が軽くお茶の間的に描かれているので、なんていうか、
 こちらがどんなレベルのノリででも入り込みやすいって感じがあるからなの。
 作品的にも南家以外の面々も気軽に南家のお茶の間に入って来てるし、親近感もあるよね。
 まぁだから論理の中身自体を頭捻って根詰めて理解して笑う、っていうのもあるんだけど、もっとラフに、
 そうして理詰めで考えている千秋を手玉にして遊ぶ馬鹿野郎日本代表の夏奈を楽しむ事も出来る、
 というそういう易しくて、そしてすっごく間口の広い笑いの受付が働いてる。
 というか逆に、その夏奈あってこその千秋が「論理を使ってる事で生じる笑い」があり得る訳で、だから
 夏奈は千秋の思いもよらない切り口で、超変則的な詭弁的論理で攻めてきたりして、そして千秋も
 さるもの、それに騙されつつも正論を述べ切る事で、かえって夏奈的にも納得したりとか、そういう、
 壮絶で気楽なやり取りも展開される。
 この間の狸話なんて、大爆笑でしたwwwwどんだけ完璧なのよww
 それにさりげにこれまでのシリーズの空気感が、良い感じに昇華されて入ってきてもいるしね。
 特に千秋周りの空気が、2期のときのあれを良い感じで笑いと結びつけてる感触。
 とまぁ、みなみけは語り出したら死ぬまで語るか途中で放棄するかの二択しか無いので、今日はこれで
 やめときます。 駄目、これ、こんなんいつまでも語り続けられ過ぎるwww
 
 
 黒執事:
 これは名作ですね。
 これだけ自由で、物語に囚われずに、それでいて、しっかりと語るべきものを盛り込んでいるなんて。
 でも決してその語りはメインでは無くて、あくまで中心にあるのは、感性。
 雰囲気とか感覚とか、とにかくそういうもので、肌から染みこませるようにして、膨大で複雑なものを、
 一気に、そしてなによりも同時に押し付けてくる。
 セバスチャンの紅い目が、もうめっちゃ、すごいじゃん。
 それを受けるシエルの青い目が、もうめっちゃ、すごいじゃん。
 これはある種突き抜けたところにまで到達してる作品ですね。
 頼りになるのは、「自分」だけ。
 ほんとそんな感じで、理屈にも論理にも頼れずに、しかし逆にそういったものすべてを含んだ道具を
 使って、自分ひとりで立ち向かっていかなくてはいけない。
 ゆえに、理屈や論理のままに行動しているだけならば、速攻で「不条理」に捕らえられ喰われてしまう。
 シエルのしている戦いはまさにそういったもので、その助けとなるために、利用対象としてあらゆるものを
 「悪魔」的に道具化して主人のために用立てる、あの黒い執事セバスチャンがいるわけ。
 勿論、シエルがセバスチャンに頼るだけならば、速攻でその執事はあっさりと裏切ってしまう。
 というか、頼らなくても普通に執事は主人をいたぶってますけどね、だから頼る訳にはいかないという、
 そういう執事のひどさに依拠した、アンチ執事でしか無い主人の愚かさを嘲笑い愉しむ、そういう
 悪魔で執事なセバスチャンがいる。
 まぁ、最近のセバスチャンはどこぞからの要望かは知りませんけど、妙にツンデレ気味にぼっちゃんの
 事をガチで心配している感じがありますけど、でもあれも普通に、セバスチャンが自分の玩具を取られ
 るのは許せないというのが、ツンデレでは無くてガチで言ってる、その「悪魔」さがやっぱり肝なのかも
 しれず、色んな意味で予断を許さない素晴らしい映像展開となっています。なにいってんの。
 ま、でも、シエルがあれだけ完全に執事からは独立しているので、やはり私の見立ては間違っては
 いなかったのだようふふ、という、紛れも無くそういう感じのものを萌え的に捉えている私が喰われてしま
 えばいいのに。(ぇ)
 
 
 ソウルイーター:
 厳しいっすね、これ。
 うーん、ううん、なんかはっきり言って、見所はマカ×クロナしか無いんだけどこれ。
 どうしちゃったの一体、大筋のストーリーラインが出来はじめた頃、鬼神とかアラクネとかが出てきた
 辺りから、どうもこう、おかしくなってきてる。
 正直、全然魅力的じゃ無い。
 もっとこうちゃんと、やろうよ、キャラを。
 キャラを動かし過ぎて、動かし過ぎるあまりに止まらなくなっちゃって、慣性的にずっと動き続けている
 だけみたいな、全然その、臨場感というか今目の前の現実に向かっているリアルさというか、そういう
 のが無くて、ただかつて作った人格イメージをそのまま動かして戦わせてるだけとか、うん、マカとかクロナ
 とかソウルとか、もっと一杯考えなくちゃいけないことあるんじゃなくて?
 退魔の波長とか、なんかこう、全然説得力無いというか、なんというかこう、違うんですよねぇ・・・・
 なんかもう、キャラ的に完結しちゃってるじゃないですか、あとはもう戦って始末つけるだけよみたいな、
 嘘いえよてめーよそうやって戦いに逃げてるだけで現実のお前は常に新しい現実と向きあってんだろ、
 勝手に時間止めてそん中で戦って全部終わる気になってんじゃねぇぞコラァ、とかラグナロク的につい
 言いたくなっちゃう。
 一番腹立つのは、それを子供達にやらせてるところ。
 マカだってクロナだってソウルだってブラックスターだって、子供なのにさ、なに覚悟決めてやるみたいな、
 そんなちっさなものですべてを悟らせようとしているのか、他ならぬ、その子供達が自分で考えて、
 さらにさらに深く考えていくという、最高に興奮する作品だったこの「ソウルイーター」がやるなんて、
 なんだかとても、嫌な気持ちになる。
 もっとしっかりしてよね、もう。
 真面目なマカが主人公だからこそ、期待してるよ。
 つか、たぶん、こっからが本当の勝負なのかもしれないね、このマカは。
 「戦い」と「覚悟」を手にした子供が、これから本当に向き合うことになる現実の中でどうしていくのか、
 それがひどく、興味深い。
 
 
 屍姫 玄:
 眞姫那に追い付けない。 (ぇ)
 私の思考と感情のスピードを遙かに上回る速度で駆け抜けているので、正直、観るたびにこの屍姫
 の人に完敗し続けている私にばかり囚われてしまって、身動きが取れなくなってる。
 うわ、すご、やば、どうしよ。
 ある意味、劇的に旺里と眞姫那の距離は広がってる気がするんですよね、これ。
 屍姫は人間じゃ無くて屍だとか、その辺りのたかまさと異月の話は阿呆臭とか思ってたんで、それを
 鼻の先に流したもっと本質的な旺里と眞姫那の関係性の希求は宜しかったんだけど、そのふたりが
 求めたものが、確かに異月コンビのそれとは違ったものの、そのふたりの間でも大きな違いが出てきた
 ように思えるんですよね。
 ぶっちゃけ私は、旺里と眞姫那の求めたそれの、見事に中間点、言い換えれば、どちらともに距離を
 感じる位置としてだけでしか、まだあの「屍姫玄」を捉え切れていないんですね。
 景世という共通のものを見つめて繋がってるふたりが、そうして繋がっている互いを見るようになったのは
 確かだけど、けど、旺里はその繋がり自体を見ていて、眞姫那の方は、そうして旺里と繋がった自分
 を見ている気がするんですよね。
 見てるものが違う、っていうか、旺里こそが繋がりばかりを見て繋がっている自分自身のことを見ない
 からこそ、眞姫那の「自分」が見えない、つまり眞姫那が自分自身を、そして旺里の「自分」を見て
 いるということに、本当の意味で気づけない。
 だからこれ、下手したらこれ、旺里はたかまさコースよ? これ。
 人間と屍姫は違う、その意味を問う自分自身こそを見つめなければ、結局、互いがそれぞれの見つめ
 ているものを独りで見つめ切ってそれでお終い、になっちゃう、てか現時点で、旺里が感じてる眞姫那
 との接近感は、それはイコール眞姫那とのすれ違いを根本的なものにしていることを、無意識にも感じ
 ているからこその淫らな安堵感になってるようにみえる。
 で、肝心の眞姫那はというと、そんな旺里を置いてけぼりにしてく気満々だし、それを遂行するため
 にこそ、旺里が安堵出来る表情を与えているようだし、ああもう、これ相当むずい。
 むずいんだけど・・・・・・
 なんだかとっても、簡単な気もする。
 頑張ります。 (なにを)
 
 
 銀魂:
 ああ。
 うん。
 最高。
 私が死ぬまでやって欲しい。
 これは私のライフ。
 これを楽しむのが私のライフワーク。
 エンターテインメントです、ぼろぼろだけど、ぐだぐだだけど、笑いあり涙ありまったりあり。
 マジDVD欲しい、でも無理、100話越えのDVD買う勇気もお金も微妙。 (無い訳では無いから困る)
 んで、さりげに四年目決定とか、泣ける。
 最高に嬉しい。地味に派手に訳わかんないほどに嬉しい。
 ひゃっほーい!
 (しばらくお待ちください)
 まぁこれはギャグありシリアスあり、って形式ではあるけど、そういうの全部ネタとして対象にして、自由に
 キャラがキャラを語ったり作品をぐだぐだに語ったり、当たり前すぎるほどに楽屋裏事情を語ったりで、
 だから丸ごとこの作品を楽しむ、その楽しんでいる自分自身と一緒に楽しんでくれるキャラ達がいる、
 ってことが、その、とっても楽しくて嬉しいことのひとつなんですね。
 私が一番好きなのは主人公の銀さんなんだけど、予想通りでしょうけど、でもま銀さんに心酔とかして
 るとかそんなじゃなくて、ただ、あの作品の中でこそ銀さん的なものがいる価値が本当にあるのかな、
 っていう感じなんですよね。
 だからなんか、普通に銀さんとか、そこらへんにいるみたいな感じがする。
 だから、自分もなんか、頑張れるかもしれないとか、そういうノリノリな勘違いもまた生まれてくる。
 銀さん全然特別じゃないんだもん、普通のヘタレ侍だもの、だったら、そのどこにでもいる普通の人が、
 どんなにあり得ない死闘をやったって、滅茶苦茶格好良くたって、それを銀さんは特別なんだと、そうし
 て一歩距離を置いてしまおうとする、その瞬間にふっと立ち止まって落ち着いて考えることが出来る。
 でも銀さんって、アレでしょ?いつもよろず屋でグダグダでやってる人でしょ? 嘘とは言わんけど、
 まぁそういうシリアスなときもあるでしょよく知らんけど、って、そういう感じで、同じように銀さんを特別視
 しない他のキャラ達と同じようにして、銀さんと付き合っていける。
 銀さんはやるときはやる男だからカッコいいんとか、そういうのを一切普段はみせないでヘラヘラしてる
 そこに痺れる憧れるぅとか、そんなん両方ともちゃいますから。
 そんなん関係ないですから、これ、銀さんは銀さんですからこれ、やりたいときにやりたいことをガチで
 やりたいと思ったからやっただけですからねこれ、あんまし銀さんに期待されても困りますからねこれ、
 銀さんはヘタレですからねこれ、ヘタレ侍ですからねこれ、腰に木刀さしてるのは殺さずの精神とか
 そんなんじゃないですからねこれ、普通にしょっちゅう真剣使ってますからねこれ、全部貰い物もしくは
 借り物ですからねこれ、これきっと真剣高いし手入れ大変だから持ってないとかガチでそんな感じですよ
 これ、これはこれですよ。
 だから。
 私はいつも、なんだかとっても、シリアスな銀さんの、あのとんでもない前向きで上向きな侍魂に
 惚れちゃうんですよね。
 ちょーかっちょいい。
 なんかほんと自由ですよね、徹底的に自由ですよね、色んなものに縛られている、そんな自分を
 確かに軽やかに見つめて、いつも死んだ魚のような目で太陽よりも明るく笑ってる。
 縛られてても縛られていなくとも関係無い、そのヘタレな銀さんに、私はいつも拍手喝采です。
 改めまして、四年目決定おめでとう御座います。
 頑張れ! 応援しています♪ (色んな意味で)
 
 
 マリみて4:
 凄く刺激されます。
 なんていうか、いっちばん根本的なところを見つめさせてくれるというか、うん、なんかね、観れば観る
 ほどに、感想書けば書くほどに、自分がそれと気づかずに囚われているものが削げ落ちていくというか、
 なんだろ、優しさとか愛とか、もっともっと、根源的なところに立ち戻って、もう一度考えて、なにより
 感じていきたいっておもう。
 そういう意味で、この今に、このときに、このマリみてっていうのは、滅茶苦茶最高のキャスティングだった
 ですよ。
 マリみてって、なんかこう、すーっと、抜けてく感じがあるもんね。
 個別の人間関係の萌えとかもいいけど、そうじゃなくて、もっと個人としての、なんかこう、その人にしか
 無いものに全力でぶつかるなにかみたいなものが、どうしようも無くあるというか。
 お友達ごっこ、のように見えなくも無いこの第4期だけど、逆にいえばお友達ごっこをしていたら、そういう
 本質的なものに立ち返れないって言ったら、そっちの方が本質的では無い気がするし。
 コメディなノリであればあるほど、私はそれはそれとして楽しみながら、それを頼りに手掛かりにして、
 そのままこう、そのむこうにあるものを見つめていきたくなれる。
 第4期は祐巳さんの内面的説明が多い気がするし、かなりそれが幼稚で困るといえば困るんだけど、
 だからこそ、そうした祐巳さんがいちキャラの立場として述べている「世界観」、それを見ている祐巳さん
 自体をみつめる眼差し、つまり祐巳さんの世界観では完全に推し量ることの出来ない瞳子の視線が、
 なによりもこう、深く輝いてくるんじゃないかな、やっぱり。
 祐巳さんの切り口で(たぶん原作のノリをそのまま転送してるのかもですけど)切り盛りするだけの
 この第4期なら、これは本当にただのお友達ごっこで終わってしまう。
 瞳子をただのツンデレとして了解可能なものとして捉えるだけなら、そんなものはマリみてとしての価値を、
 少なくとも私は感じない。
 だから、瞳子、なんですね、あの冷厳な眼差しが、その祐巳さんからみたただの「頑なさ」を越えて
 それらを見ている私達こそを見据えてくれる、だから私達はいつでもはっとして、私達自身が祐巳さん
 の世界観だけでは無い、私達自身の世界観を以て、改めて瞳子の世界観に向かっていくことが
 出来るのじゃないかと思います。
 そのための材料を、祥子様も、由乃さんも、志摩子さんも惜しみなくあの映像の中で提供してくれて
 いる、この贅沢感がとてもこの作品に深みを与えているとも思います。
 軸は祐巳さんと瞳子の関係でありながら、他の人達がみんなそれぞれの自分と向き合い、そしてその
 境地からそのふたりの関係にも関わっていく。
 まぁ、令様だけが完全にとっ外れている気がするのですけれどね。
 令様がリリアン女大にいかないと急に言い出したときの、由乃さんの「祥子様、令ちゃんが。」って
 振り方が爆笑でした。
 あれきっと、「祥子様、令ちゃんがまた動転して変なこと口走ってます!」みたいな感じだったんでしょう
 ねほんとは、どれだけ令様信用ないのでしょwみたいな感じで勝手に脳内変換されて困りましたww
 という感じで、マリみてはいよいよこれから大きく動きそうな感じで楽しみな反面、これだけで終わって
 しまいそうなあまりのハイペースぶりに、かなり寂しさを感じてもいたりします。
 もっとマリみてには沢山のものをやって欲しかったんですけどね・・・残念です。
 さすがにアニメ一話=原作一巻分のペースは速すぎますよ。
 でもま、だからこそ、残りの話数を全身全霊で見つめて、考え感じていきたいと思います。
 是非、応援よろしくお願い致します。
 
 
 
 
 という感じで、今日はここまで。
 お疲れ様でした♪ (自他共にw)
 
 
 
 
 
 
 

 

-- 090225--                    

 

         

                              ■■感想書きの労働 1 ■■

     
 
 
 
 
 どうも、花粉の野郎が大人しいので上機嫌な紅い瞳です、ごきげんよう。 (微笑)
 
 まぁうん、少子化が進む世の中、子孫繁栄のために精一杯頑張っているんですから、野郎だなんて
 汚い言葉で切って捨てちゃ駄目ですよ、なんて、私が言うとでも? (微笑)
 別にいいじゃん少子化でも、そもそも子孫が繁栄することと子孫が幸せになるかどうかは関係無いし、
 そもそも種族の存続のために生きてる訳じゃ無いし、花粉が私の鼻とか目を荒らしていくのは事実だし、
 ふん、植物なんて滅んじゃえばいいのよ。 (微笑)
 
 
 はい。
 色々と頭の中の回線が混乱を極めている紅い瞳です、改めてごきげんよう、ごめんなさい。
 花粉の飛散が激しいときは、自分の症状を抑えることで頭が一杯で、花粉の飛散が少ないときは、
 煩わしい症状から解放された感覚で頭が一杯になり、この時期はもう、私は人間っていうか花粉です。
 やさぐれ花粉!
 
 ということで悪いのは全部花粉なので、紅い瞳がアニメの事しか話さないことは仕方の無いことですよ
 ね、うん、そうですよね、そうですよ。 (そうに違いない)
 うん、久しぶりに今週は時間がかなり空いていて余裕なので、ちょっと今日は今期アニメのプチ感想
 をずらっと書いてみようかなって、うん、時期的にも良い感じですしね。
 花粉ですけどね。
 なんかもう、これ書き終わる頃には笑えなくなってるかもですけどね。
 今のうちに笑っとこ。
 微笑。
 はい。
 
 
 
 ではそういうことで。
 時間あるとか言っといて、プチ感想ずらっと書くことになったので逆に時間が無くなったので、さっさと
 始めさせて頂きます、てか、今の私はなに言うかわかんないからさっさと書く全部花粉が(以下削除)
 
 
 
 
 ◆
 
 
 ダブルオー2:
 なんつーか、かなり不定形だよね、これ。
 良い意味でも悪い意味でも行き当たりばったりというか、だからこそ変な臨場感もあり、とってつけた感
 もあり、感触だけだと相当変な感じがする。
 面白いのか面白くないのか、よくわからない。
 変だ。これは変だ。
 正直、ソレスタルビーイングがなにをやりたいのかはわかるんだけど、それでなにが出来ることになるのか
 まるでわからない。
 端的に言ってしまえば、あれは全部、生存闘争をしているよね。
 イデオロギー(って古いか)を持ってた集団が瓦解して、個人の立場から再び集まって、間違っている
 ものに立ち向かっていくっていう、なんていうかその、やっぱりどうしてそういうものを描いたのかはわかる
 んだけど、それでなにが新しく描き出されるのかというのはわからない。
 で、前も書いたことあるけど、この作品は、ただそれだけでしかない、つまりそこにこの作品のすべてが
 詰まっているような気がする。
 なんつーか、キャラひとりひとりの感性とか考え方とか表現とか、かなり「古臭」くて最新(?)的現代
 的じゃ無くて、その古いもののまんまぐるぐるといっこうに噛み合わないなにかと格闘している、そういう
 姿を描くことで、じゃ古いものを新しいものに変えるとか、新しい現代に則したイデオロギー的なものを
 模索していけばいいんじゃない?、という従来の展開を、実は根本から否定してる気がするんよね。
 古かろうが新しかろうが、あのキャラ達の言葉には、言葉としての重み以上のものを感じることは出来な
 いし、それが非常にガンダム的であることで、逆にガンダム的なものの否定になってる。
 もういい加減、言葉で生きるの、やめにしません?
 ダブルオーのキャラ達は非常に短絡的で、なのにちょっと深みのありそうな言葉でそれを縁取っていて、
 それでその言葉に縋り付くことで、短絡的な自分の本能に引きずられているだけの自分を正当化
 してしまっている。
 だからそうした姿をはっきりと描くことで、逆に言葉自体の深浅など関係の無い、その言葉とそれに隠さ
 れた本能と向き合う、その主体的な自分が必要であることを、悪くいえば、反面教師的に私達に
 教え示してくれているように、私には見えます。
 既存の言葉を失って窮地に立ったとき、人はまた安易に新しい言葉を編み出してそれに縋ってしまい、
 そのことに全く気づかない。
 その様を、延々とこの作品は一切の手加減無しに描いているような気がしました。
 
 
 黒神:
 うーん。
 一番アンバランスで、一番浮ついた感じの、或いはオリジナリティの無さを感じる作品なんだけど。
 なんだろ、すごく本気さを感じる。
 なんていうか、ありきたりなものを工夫して使って、その組み合わせの妙を競うとか、そういう意味での
 向上心とかゼロなのに、いやだって、ほんと既存のものの寄せ集め以前に、全体的に完全にどっかで
 見たストーリー「そのまんま」じゃないですかこれ、ほんと単語とか変えてるだけで全部同じみたいな、
 なのに、それが全然気にならない。
 や、私の場合、そのあまりの「典型的」ぶりさが好き、って言ってんじゃないのよ。
 そういう人いますけどね、なんか安心出来るとかそんな感じで。
 ただ私が感じた面白さは、全然違くて、むしろ、典型とか典型じゃ無いとか、オリジナリティがあるとか
 オリジナリティが無いとか、そういう「形」そのものについての論議を完全に無視して、その既に出来てる
 形に自分の激しい想い「だけ」を無造作に全力でぶつけてる、そこに感じてるのよ。
 ただ無心に単純作業をしている、その一心不乱の、なにも見ていないなにか懸命さが、どうも私を
 惹き付けてやまないんです。
 それでいて、結構そういう懸命さが、主人公の男の子のリアルなナイーブさに漏れ出ていたりして、
 なんていうか、「やんちゃ」さも感じられる。
 物語としての構造は粗製濫造もいいとこのそのまんま出しで、全然練られていないんだけど、そこに
 なにか、そういうものに手を付けることが出来ないほどに、どうしようも無くまず最初に吐き出したいもの
 があるゆえの、その物語構造のいい加減さがあるようにも思いました。
 そして、だからこそ、うん、私はむしろ、その無心に作られた、物語の端々それ自体にも、なんだか
 わからない独特な「流れ」を感じ取ることが出来ます。
 あの不思議な流麗さは、これ結構癖になりますよ。
 作品の「整え方」はひとつでは無い、ということでしょうか、たぶん。 (ぉぃw)
 
 
 とある魔術:
 普通。
 普通にやっとる。
 なに? これを萌えろと? いや、別に萌えるのはいいんですけど、ああ萌えてやるさ萌えらいでか、
 で、そんだけ?
 なんつーか、落ち着いちゃってる。
 変わり者どもが夢の後に起きて二度寝中みたいな、寝惚けながらなんかほのぼのライフ今やってます、
 みたいな、ええいこのオタどもが。 いつまで遊んでんじゃい!
 もうちょっとこうさ、なんかないの? あるっしょ? あるなら出しなさいよー。 (どんなノリだ)
 シリアスとほのぼのを明確に分けるのはいいんですけど、シリアスを「シリアス」な感触を愉しむだけの
 ものにされても、なんつーか全然面白くないっつーか、もうちょっとこう、真面目に詰めていって欲しいな。
 イマジンブレイカーだっけ? あの辺りの事は結構面白いので、まぁ、深めていってくれたまえ。 (何様)
 
 
 まりほり:
 筆舌に尽くしがたい。
 なんなんですかこれ。
 かなこさんが偉大過ぎるwwwどんだけ超反応なんですかwwwどんだけ素直に変態なんですかwww
 これはボケとしては神過ぎですね、一切の隙無しww
 しかも濃い、遠慮無し、ガチですがなにかですよ、百合っつーかエロですよ、レズっつーかエロですよ、
 頭の中の二十割が乙女の肢体の映像で埋まってますよ、つーか十割分が漏れ出てきてますよ、
 しかも周りからはまだ面白い奴程度の認識で止まっちゃってるよ、だから調子ノリまくりですよかなこさん、
 そこで鞠也さんががつんと容赦無く切ってくれる訳ですよ、鞠也さん半端無いっす、「なに夢見てんだ、
 このドブ鼠が!」には痺れましたよ、かなこさんの鞠也さんツンデレ説をあっさり切って捨てですよ、
 そうこなくっちゃ駄目ですよ、、かなこさんは泣いたらいいよ、でもかなこさんはさらに凄かった、汚物から
 衛生害獣にジョブチェンジして喜んでますよ、調教の成果ですよ、鞠也さんうんざりですよ。
 ・・・・・。
 冷静に考えると、これ、かなこさん止めることって、誰にも出来なく無いですか?このペースだと。
 「お前があまりに残念な感性を見せつけてくれるからだ。」
 と、鞠也さん不利説が流れそうなところを、最後にかなこさんを地獄に叩き落としてくれるハイスペック
 鞠也様きたーwwww
 かなこさんが色狂い(ですよねこれwww)してる間に、仲間はずれですよ。
 こりゃーかなこさんが悪いですよww自滅ですよ完全にww頭の中ピンク一色のあんたが悪いwww
 かなこさんは自分の性癖をこんだけだだ漏れにしてるのに、一応公式にも非公式にもカミングアウト
 して無いというかできない変態としてはヘタレなので、普通にこうして真面目な人間関係で遅れを
 鞠也様に取らされる事はある訳で。
 かなこさんが変態に突っ走れば突っ走るほどに、残った常識的なものが思いっ切り足を引っ張ってくれ
 る、そんな両方に足を突っ込んで抜けなくなってるかなこさんを私は応援しておりますwwもっとやれww
 ・・・・ほんと、自分でもなに言ってんのかわかんないや、まりほり感想。 (溜息)
 
 
 地獄少女三鼎:
 少し浅くなってきた?
 なんていうか、前後の話に怨みの関連性が無くなってきて、普通にテーマ的に一話完結になって
 いるような気がする。
 それとも、私が追いつけなくなってきてるのかな? なんか話の中に描かれる怨みが平凡に見えてる
 んですけど。
 ただね、逆にこれ、怨みを個別の話として捉えていない、もっと簡単なひとつの「怨み」という「概念」と
 して、ひとまとめにして語り始めている、という感じもする。
 怨みにはひとつひとつ怨みの論理があって、だからそれを解題していくことで、その怨みの業の深さが
 わかる、わからない怨みなんてなにひとつ無いんだよ、だけどそれをわかって貰えないという怨みがある、
 それが今までの感じだったのに、最近は閻魔あいの不穏な動きと共に、なんていうか、怨みというもの
 が普遍的なものとして描かれて、それに対してどういう普遍的な対応がされているのか、というのを
 改めてみつめていこうとしているようにみえる。
 その怨みを司る地獄少女としての、襲名儀式みたいな感じ?
 ていうか、ゆずきが地獄少女を継ぐとか継がないとか、そんな事になるなんて露ほども思ってなかった
 から驚いた。
 正直ほんと、これからなにが描かれるのか想像も出来ない。
 だから、楽しみにしてます。
 怨みって、なんだろう。
 
 
 Genji:
 これは面白い。 非常に面白い。
 光君の孤独さが女達の心の中に溶けていく様が、その自分の中を透けて通っていく光君に伸ばす
 女の指先に、とってもすっきりと描き込まれてる。
 なんだかこう、胸の辺りがつかえてくる。
 もっと留まっていて、帰らないでいかないでと、自分の胸の中に関を築き上げずにはいられないような。
 そしてそれと全く同時に、その関を透き通るようにして抜けていけたらと願う、この儚くも透ける想い。
 通り抜けるのは男か女か。
 光君にとっての藤壺があることで、これが渾然一体となっている。
 厭世的な愚かさは言葉の上の話として消え、ただそこにあるのは、ひとりひとりの孤独の感触だけ。
 ただの一瞬の欲望なり、自らの外面的建前の保持なり、色々な動機で光君と姫君達は手を結び
 体を重ね合い、そしてそのままそれぞれがそれぞれの新しい境地を拓いて、そこにひとり、身を浸す。
 物音ひとつしない衣擦れの世界に、敢えて盛大に足音を立ててみる妙。
 なんというか、こう、寒い。
 すべての音を吸ってしまう、深々と振り込める雪の中で、ひとり震えているかのような、その震えの感触。
 ああ、これは凄いわ。 この映像はすごい。
 完全に光君視点のものとしてもアニメ化出来る、源氏物語の凄さを感じたよ。
 読んでないですけどね。 (微笑)
 
 
 夏目友人帳:
 一番好きなのは夏目かなぁ。
  なんか真面目じゃん? でも一生懸命なんだけど、一生懸命なだけの自分の事も見つめてると
 いうか、本当に周りに人のためにはどうしたらいいのか、どれが本当に周りの人のためになると言えるの
 か、そういうことをしっかりと考えることに、とっても真摯。
 精神論でも無ければ優しさでも無い、そういうのに囚われないなにかを探してるもんね。
 そういう子好きな、私は。
 あとはレイコも好きだけど、やっぱしレイコが出てくるとなると、ヒノエが外せないよねぇ、このキャラは
 ピンポイントなんだよね、レイコとのSS紛いのものをまた書いてみたいな思わせるね、少し似てる紅緒
 は書ける気はしないけど、あ、紅緒も好きな、あのちょっと一本距離を外して見つめてくる感じがさ。
 ああい女好きな、私は。
 それと名取周一も好きな。
 軽薄なんだけど全然真面目というか、真面目だからこそ軽薄というか、まぁ私が伝統的に好きなキャラ
 の系譜に属するタイプね。
 夏目的なものと本質的に繋がっていて、夏目とは違うアプローチの仕方をしてるし、だからこのふたりが
 出会うと、なんだか切ないような堪らない緊張があって、いいよね。
 こういう男好きな、私は。
 あと先生か、先生ね、先生は今までちょっと物足りなかったけど、段々良くなってきて、今じゃ結構
 深みのある視線を夏目に送ってて良い感じ。
 最初はもうちょっと手厳しい方が良いかと思ったけど、今のこのおちゃらけノリの方が、より夏目ひとりの
 意識を描き出して、それをそっと横目で見てる先生、という構図が出来て面白いかなと思うように。
 こんな先生好きな、私は。
 タマちゃんはガチで好きな、私は。 目に入れても食べちゃいたいくらい。
 ラストは多軌透ね、多岐じゃ無かった、名前ネタ展開して感想書いたのですごく恥ずかしかったけど、
 訂正なんてしてやらないんだからねっ!ごめんなさい見逃して。
 夏目が自分の中にみている、ただ真面目なだけの、真面目に逼塞して、真面目であるための自分の
 事しか考えていない自分、それが具現化したようなキャラである多軌透を夏目がみつめ、そしてその
 多軌は自分とは違う、だけど自分が本当に求めているはずのなにかを見つめている夏目を見て変わって
 いくみたいな。
 真面目な人好きな、私は。
 んな感じで、いいかな? (微笑)
 
 
 
 
 という感じで、一旦ここで切ります。
 残り半分の感想は、次の日記でよろしくお願いします。
 
 
 
 
 
 

 

-- 090222--                    

 

         

                          ■■マリア様の願いは紅い薔薇■■

     
 
 
 
 
 『思い描いた通りに出来る人ばかりじゃありませんよ。』
 

                    〜マリア様がみてる4thシーズン・第七話・瞳子の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 襤褸布を纏っている。
 辺りは雪。
 白い風景が敷き詰められている。
 その中で、ぽつぽつと、灯りが途切れがちに漂っている。
 足下は確として凍った冷たい道。
 家々の間を縫うようにして這っている。
 打ち捨てられた塹壕のように、まるで路地裏の雪溜まりは墓地のようだった。
 その腐臭とも死臭とも知れないくぐもった薫りは、雪に照らされて静かな無音を奏でていた。
 透明で古びた、その甘い香りがゆっくりと街を夜に包んでいく。
 光と闇の陰影が混ざり合い、なにもかもが朧な雪夜に溶けている。
 月明かりは無い。
 それなのに、ぽつぽつと、街の中の夜道を行く人々は、暗く、光に照らされている。
 目を凝らせば、その光は途切れがちになりながらも、その雪の世界の中に咲く家々の、その灯りと
 確かに繋がっているのがみえた。
 じわじわと広がる時間。
 これほどにも降り積もる夜の静けさがあるというのに、淡々と、淡々と、その夜は過ぎていった。
 一握の声が響く。
 ふたつの瞳の引力を感じた。
 引きずられるようにして、振り向いた。
 誰かいる。
 それが誰なのかがわからないことは無く、その誰かは誰であろうと、必ずその人だった。
 嗚呼
 夜がひとつ更けた音が、聖夜の訪れを告げる。
 森々と、森々とただその居住まいのままに更けていく、その人の視線の先にある私だけの住む夜。
 『おぼっちゃま、私は結構で御座います。』
 それなのに、弾かれたように、この壊れた口は回る。
 
 『まぁ、聖夜の慣わしで貧しい子供に施しをしようとなさいましたのね。 ありがとう御座います。』
 『おぼっちゃまは、なんて親切なお方なのでしょう。』
 
 無造作に優しく笑うその瞳に胸倉を掴まれて、私はひっそりとその自分の言葉の下僕に堕ちた。
 光輝く、小さなコイン。
 金貨か、銀貨か、いいえ、それは幸せのコイン。
 その光に誘われ、纏った襤褸布からさらに引き裂いて作った小さな網で、そのコインを掬い取る。
 ひとつ、寒さが肌に浸みる。
 荘厳な、穏やかな、冷たいコインのぬくもりに縋り付く。
 心を襤褸布で包み込み、暖かくなれ暖かくなれと必死に念じながら、聖女紛いの誠実に指を浸す。
 訥々と、開かれるようにして、本当に満たされていく胸。
 口から漏れた言葉に引き立てられ、まるで十字架を背負うようにして、私はただ暖かく涙に濡れる。
 ありがとう御座います。
 幸せな、切り取られた夜のひととき。
 涙でもう、そのコインの光しかみえない。
 きらきらと、きらきらと輝きながら、その光は私の目の前で漂っていた。
 冷たくて、冷たくて、とても触れることの出来ないコインを抜いて、私はその光だけを抱き締めた。
 涙が透けていく。
 饒舌に凍える剥き出しの体を想う。
 かじかむ手。
 光の前で手を合わせ、哀れなこの両手に強く息を吹きかける。
 この光を、消さないように。
 消えてしまえと、念じながら。
 
 『仕方ないわ。 服はぼろぼろだし、いつもお腹を空かせているし、可哀想な子に間違われたのね。』
 
 だから・・
 だから・・・・
 一瞬の無念を捨てて、この光に縋り付く。
 この光に縋り付ける自分を、純白なるままに信じて。
 私ならきっと、幸せになれる。
 このコインをいつか掴めるように、おぼっちゃまの愛のぬくもりを抱き締めて・・私は・・・・
 そして、その時間は訪れた。
 紅く、紅く、恐ろしいほどに擡げてくる、この想いが。
 鼓動が疼く。
 足の奮えが止まらない。
 私は・・私は・・・
 自分のことを・・・・
 可哀想な子だと・・・・思っていないだけなのよ・・・
 私は・・・本当は・・・・もっと・・・もっと・・・
 その淫らに可哀想な私を見下す、光の前に傅くことの出来る饒舌に輝く私の姿が見えた。
 私は・・・・・
 ひとつ頷き、コインを手にする。
 そのコインに目を輝かせることの出来る自分のぬくもりを感じて・・・・・
 
 
 私はやがて、小さく逼塞を始めていく。
 
 
 
 
 
 『おぼっちゃま、私は結構で御座います。』
 
 
 
 
 
 
 ◆
 
 馬鹿みたい。
 なんて、呟く自分の馬鹿馬鹿しさに、まだ笑えるなんて。
 からからと頭の中で、演技がかった笑いを響かせるのは、一体誰なのだろう。
 それは、祐巳様のようにみえた。
 祐巳様がそんな風に笑っている。
 それなのに、驚きは無かった。
 あの祐巳様が、という、自分の中の祐巳様のイメージとのギャップがあることは確かなのに、そのギャップ
 にまるで動じていない私がいた。
 なぜだろう。
 そう考えると、すぐに答えは出る。
 ああ、そうか、祐巳様のその笑顔の形自体は、いつもと全く変わらないからなのだ、と。
 私には、今、私の頭の中で笑っている祐巳様のそれが、嘲笑に見える。
 そう。
 いつものあの、屈託の無い優しい笑いと、全く同じ顔の形と表情のままで。
 私にはそれがどういうことなのかわからないのに、それなのになぜか、私はそれがどういう事か知っている。
 これはどこかでみたなにかと、きっと同じもの。
 でも、そのなにかがなんであるのかを、私は思い出せない、だから、どういうことなのかわからない。
 
 そうしているうちにも、ふつふつと、静かな怒りが胸の中に沈んでいく。
 それは澱のようにして私の胸の底に溜まり、今度はその澱を絞って染み出たものが、私の胸の水底を
 しっとりと満たしていく。
 馬鹿馬鹿しい。
 はっと、私はやっと自分が笑っていることの中に戻ってきている事に気づいた。
 そう、私は今、笑っていた。
 なんて、馬鹿なのだろう。
 祐巳様は、どうしてあそこまで察しが悪く、そして無神経な方なのだろう。
 私のあの、皮肉を犇めかせた自己紹介の挨拶の意味を全く解していないなんて。
 祐巳様は、物事の見方が当たり前過ぎる。
 当たり前過ぎて、目の前のものが見えなくなっている。
 どうしても、堪らない。
 許せない。
 許したく、ない。
 けれど、その私の思考は、もうかなり、宙に浮いている。
 その私の思考だけで、祐巳様をどうにか出来るはずも無いことが、よくわかったからなのだろうか。
 それとも、もう、私は諦めてしまったのだろうか。
 どちらも完全に、違う気がする。
 どうしてだろう。
 どうしてこんなに完璧に、なんの根拠も無く違うと言えるのだろう。
 自分の心を分析しているだけの自分に気づいているからなのかもしれない。
 その不毛さを、誰よりも私が知っているからなのかもしれない。
 
 私と祐巳様の間には、冷厳な溝が広がっている。
 
 私の事なんか、関係無い。
 祐巳様の事も関係無い。
 私はたぶん、それをどうしても見据えたくなってきたのだと思う。
 いえ、そう思って実際に行動している。
 関係無い、関係無いのよ。
 私の事に同情して欲しいとかわかって欲しいとか、祐巳様のお恵みを受け取るとか祐巳様を悲しませ
 ないとか、そんなの全然関係無いのよ。
 私はもう、今はもう、そういうものこそを、打ち破りたい。
 そういった思い遣りとかそういうもので、この溝を越える事なんて、絶対に出来ないと思い知ったから。
 そして、そういうものを全部引き受けて、その引き受けたものを糧にして、私の方から祐巳様のいる
 側に飛び立とうとしても、きっとそのとてつも無く深い溝を越えられずに落ちてしまうということを、
 どうしようも無く、今の私は感じていた。
 私は、祐巳様への想いのために、祐巳様の前から消えるのを選ぶことなんてしたく無い。
 私は、祐巳様のために、この溝の向こう側から甘く微笑むだけのことなんてしたく無い。
 もう・・・・
 もう・・・・・・・
 
 
 もう、充分なのよ、そういうことは!
 
 
 全部背負って崖から飛び降りるなんて、絶対に嫌です。
 全部独りで抱え込んで崖の向こう側で独りで笑うなんて、絶対に嫌です。
 馴れ合いだけでいいなんて、もっともっと嫌です。
 遊びじゃ無いんです。
 どんなに真剣にやろうと、一生懸命にやろうと、想いを込めようと、遊びは遊びです。
 私は、捨てられない。
 捨てたくなんて、無い!
 また一段と透けていく。
 顔の皮膚が氷のように閉じていく。
 瞳に力を凝らして、氷柱のように顔に張り付く肌を支えている。
 もし涙が零れたら、きっとこの顔は溶けてしまう。
 でも、それが嘘だということを私は感じている。
 今涙が頬を伝ったとしても、それもまたこの肌に犇めく氷柱のひとつとして氷ってしまうはずなのだから。
 それに、それだけじゃ無い。
 私の中で、涙はとっくの昔に凍り付いている。
 涙という文字となって、私の台本の中に刻み込まれてしまっている。
 いったい、どれだけ泣いたことだろうか。
 今までずっとずっと、泣いていた。
 そして、泣いて、泣いて、その涙の堆積が凝縮されて、この冷たく凍り付く私は出来た。
 涙は氷を溶かすけれど、でも、それ以上に外の空気が冷たければ、その涙は凍って、さらに私の中の
 氷の山はその激しい凝固の営みを増していってしまう。
 だから、私が泣くのを我慢するのは、この顔を溶かすためなんかじゃ無い。
 この顔をこれ以上凍り付かせたく無いから。
 ぬくもりがみえない。
 私の前に輝く光は、完全に私とは遮断されて光っている。
 その光を受け取るために、涙で手を濡らせば、その手はどうしようも無いほどに、今度こそ本当に
 二度とそのコインを手にする事も出来ないほどに、凍り付いて腐り堕ちてしまう。
 私には、そうして葬られた、大事な大切な私の片割れ達がもう、数え切れないほど沢山いる。
 
 私は、その哀れな死者達を、冷徹に見つめ、そして冒涜を重ねていく。
 
 何度でも、何度でも、置き去りにされた墓地を掘り返して、私は失われた私の一部分達を、無理矢理
 自分に貼り付ける。
 べたべたのどろどろになりながらも、その表面に丁寧に丹念に涙を塗り染めて、冷たい統一を図って
 いる。
 私は、無惨に引き裂かれている。
 そしてそれを、ずっと、縫い合わせ続けている。
 自分が何処にいるのか、もうわからない気がした。
 捨ててしまえばいいのに、死んだ者は放っておけばいいのに。
 そう呟きながら、私はいつも鎮魂の歌しか書かれていない台本を、命を賭けて引き裂き、そしてそれを
 また縫い合わせて、その破られた文字の敷き詰められた真っ白な紙面に、小さく願いを描き込んで
 いく。
 捨てません。
 諦めません。
 どんなになっても、私は・・・
 その願いを叶えることを、諦めることも、捨てることもしたくはありません!
 そのために、野晒しのこの体に耐えている。
 でも、その寒さに耐えることなんて、簡単なんです。
 ただなにもかも忘れて、裸で真っ黒になりながら、蹲っているだけなんて、死者にも出来ます。
 だから私は、襤褸布を纏います。
 冷たくて、継ぎ接ぎだらけで、ぼろぼろで、だけどそれは、私の大切な服。
 出来るだけ綺麗に縫い合わせて、出来るだけ以上に綺麗に洗って。
 手があかぎれに支配されても、掌の肌が凍り腐っても、私はその服を必死に洗って皺を伸ばします。
 人として、当然の嗜みですから。
 そしてだから・・私は・・・・・
 
 ひとりの人間として、自分の大切なこの手を、暖かく守らなくてもいけないのです。
 
 当然の事です。
 どんなに綺麗な服を着ても、その袖から覗く手があかぎれだらけでは、その人の性根の底がみえてしま
 います。
 綺麗に着飾るためにこの体を犠牲にするというのならば、そもそもなぜ着飾ろうとしたのか、その装飾
 の意味と価値が無くなってしまうはずです。
 そして逆に、だからといって自分の体を守るために襤褸布を襤褸布のままにしていても、それは全く
 同じことなのだと、私はこの頃、悟ったのです。
 この冷たい手も、この襤褸布も、それぞれ、或いは互いにも、体と服のためにある訳では無いのです。
 いつのまにか私は、そうして愚かな体と服の自己満足の優しさの応酬に耽っていたのです。
 なんのために、私の手はこんなにも冷たく、こんな襤褸布にしがみついているのか。
 私は、ずっと、それを忘れていたような気がします。
 私はただ・・・・
 
 
 ずっと、ずっと、暖かい誰かを求めていただけですのに。
 
 
 その誰かのために美しく着飾って、その誰かのために自分の手を暖かく染めて。
 そうなれるためにも、そうなるために強く努力する自分を求めるからこそ、私はこの自分の手の冷たさと
 襤褸布を受け入れたのよ。
 誰かのために、誰かのために、その誰かをどうしようも無く深く求めている私のために。
 その私を、その誰かに与えるために。
 その私を得た、その誰かの瞳のぬくもりに、照らされたい。
 あなたの、光をください。
 あなたとなら・・・
 あなたに求められるのなら・・・
 私は、あなたを求め続けることが、本当に、ずっと永遠に求めることが出来ると感じています。
 だから私は、あなたを求め続けます。
 あなたに、求めて頂けるように、美しく、強く、人として。
 
 
 
 
 
 『ありがとう御座います。』
 
 『祐巳様は、なんて親切なお方なんでしょう。』
 
 
 
 『なんて、私が言うとでも?』
 
 
 
 
 
 怒りなんて、とっくの昔に消えている。
 だから、一切の容赦はしなかった。
 二重に、真実を重ねていた。
 さすがの祐巳様も、私の自己紹介がとてつも無い皮肉だったという事には、これで気づいたみたい。
 でもだからこそ、私はその祐巳様の気づきに気づいていない風をこれみよがしに装い、そう言った。
 ロザリオの授受の儀式が、親切や優しさで彩られるものでは無いことは、誰でも知っている事です。
 でも祐巳様は、それをご存じのくせに、それをすっかりと忘れて、ただ雰囲気のままに、まるで私に
 同情するかのように、お情けでロザリオを施そうとしたのです。
 これが笑わずにいられましょうか。
 そして、祐巳様はひどいことに、そのあとの私の言葉を都合良く利用してしまわれるなんて。
 二重の仕掛けをした甲斐があるというものですわ、本当に。
 私が、祐巳様がそんなお情けでロザリオを渡すようなひどいお方だと、そんな事を言うとでも?
 私はそれを、こう変換した。
 『私は小公女の主人公のような良い子じゃ無いんです。聖夜の施しなら余所でなさってください。』
 祐巳様は、その私の言葉を利用して、ただ自分が振られただけの、そのご自分の感情の中にだけ
 逃げ込んでしまわれた。
 かえすがえすも、ひどい話ですわ。
 でも、これでいいんです。
 祐巳様の中に、私がただ、素直では無い女として生きているだけならば、私はずっと、その素直では無
 い女を、これみよがしに演じ続けるだけ。
 本当の罪が誰にあるのかを、その当人が見つけるまで、私はその罪を隠すことに最善の力を尽くして
 いく。
 
 
 私が、祐巳様の光を断り続けなければならない、その苦しみに。
 それにただ、必死に耐えることだけに力を尽くそうとする、淫らで愚かな私をみつめるためにも。
 
 
 
 曇り空が逞しく下がってくる。
 いつまでもいつまでもその空が地上に到達することは無いのに、それなのに私の心はずっと曇っている。
 いつもいつも、あの空と繋がってしまう。
 どんなに身を繕い固めても、それはすべて灰色に染まってしまう。
 おかしいな、おかしいな、おかしいな。
 沢山のものを描き込んで、目一杯の希望を詰め込んで塗ったのに。
 それなのに、私はそれをいつも消してしまう。
 小さな小さな、本当に小さな、その私の中の消しゴム。
 どんなに綺麗な色彩で絵を描いても、ひとつずつその絵を消しゴムでごしごしとこすり、空白の灰色で
 それを埋めてしまう。
 色んなものの残骸が、うっすらとその白地図に、刻まれている。
 真っ白な空に垂れ込める、触れることの出来ない灰色の雲がある。
 私はその灰空で塗り潰されていく世界が恐ろしくて、何度も何度も、それを他の色で塗り潰そうとした。
 でも・・・
 でも・・・・・
 それは・・・・絶対に・・・絶対に・・・・・違うんです・・・・
 私は・・・・・・・・
 
 
 
 

『完璧な地図帳が出来無いなら、いっそピンクの花柄とか水玉模様で塗れば良かった。』

 
『そうしたら私だけの、綺麗な地図帳を作れたかもしれない。』
 
 
 
『でも』
 
『私は出来なかった。』
 
 
 
 
 
 そんなこと、絶対に、絶対に、したく無い。
 そんな、ピンクの花柄や水玉模様の消しゴムで、私の願いを消すことなんてしたく無い。
 私だけの地図帳なんて、私は欲しく無い。
 私は完璧な地図帳が欲しいのよ。
 『誰にも負けない、印刷されたような完璧な地図を作る。』
 どこに出しても恥ずかしく無い、私が思い描いていた夢の世界の地図を、市販の地図帳のように、
 正確にきっちりと仕上げたいだけなのよ。
 描いてある地名は実際のものとは違っても、それが地図帳としての体裁を完全に備えたものにしたい。
 それをただ綺麗な色で塗り潰して飾ったところで、それはただの諦めにしか過ぎ無い。
 なんの地図も描いていないことと同じなのよ。
 私は悟ったんです。
 そんなに簡単にはいかないと。
 どんなに頑張ったって、学校で貰った実際の地図帳のように上手くなんて描けないと。
 でも、描きたかった。
 私は、完璧主義者なんです。
 だから、描けないのなら、いっそのこと白地図を極彩色のままに破り捨ててしまおうと思った。
 完璧じゃ無いのなら、いらない。
 でも・・・・
 いえ・・・・・・
 私は、たぶん、
 
 私が思っているよりも、もっとずっと、遙かに強固な完璧主義者なんです。
 
 それで諦められる訳が無かったんです。
 完璧にやる事だけに意味があるのなら、破り捨てたってなんにもならない。
 出来ない出来ないと嘆いていても、同じことです。
 なにも変わりはしない。
 私は、なにもせずになにも変わらずにいて、完璧になろうとしない自分のことが許せません。
 すべては、完璧な地図を描くため。
 そのために私は、今の未熟な私を受け入れるんです。
 絶対にいつか、誰にも負けない完璧な地図を描くために。
 ただ地図を塗り潰し破り捨てたり、嘆いているだけなのは、その完璧を叶える礎にはならない。
 完璧な地図を描くために、何度でも、何度でも、私は汚い灰色に滲む地図を描く。
 本当の完璧主義者にとって、完璧で無いことを嘆くのは罪なんです。
 いえ、たとえ嘆いても、塗り潰しても破り捨てても、その結果また新しい白地図と向き合えるのなら、
 それでいいんです。
 私には、希望があるんです。
 ええ、だって。
 
 
 どこに出しても恥ずかしく無い、手本になる立派な地図帳が、こうして私の手元にはあるんですから。
 
 
 誰かが作ったその地図帳は、本当に綺麗で、夢に私を誘ってくれます。
 そして私にも、お前もこれと同じくらいに立派な地図を描けと、冷たい白地図が渡されているのです。
 こんなに・・・・
 こんなにも・・・嬉しいことなんて・・・ないです・・
 いつかきっと私もこんな風に、世界を描いてみたい。
 祐巳様・・・・
 私には・・・手本になるような、憧れの対象がいるんです・・・
 祐巳様。
 祥子様の事を、お好きですか?
 私も好きですわ。
 ええ。
 
 
 祐巳様と一緒に歩いている、祥子お姉様に、私は、私の希望を見ているんです。
 
 
 そして、祥子様の瞳に映る祐巳様と。
 そして。
 
 祐巳様の瞳に映る、小笠原祥子様のその真摯なお姿に。
 
 
 
 妥協なんか、なにひとつ無かったはずです。
 妥協せずにはいられなかったご自分がいただけのはずです。
 祐巳様。
 これが、これが松平瞳子の本気ですわ。
 嘘も演技も、本音も真実も、すべて私の未来の白地図に描き込んで魅せますわ。
 祐巳様との関係を築き上げた祥子様に、私は憧れています。
 あの祥子お姉様が、あんなにも変わることが出来たんです。
 私だっていつかきっと、祥子様のように祐巳様と一緒に・・・・
 優しさが、気遣いが必要なら、求めてくださっても結構です。
 もしそれが、本当の本当に、祐巳様が私に一番求めてくださっているものなのでしたら・・・・
 私は、その一握の夜の時間の中で、ひっそりと優しく微笑んで差し上げます。
 
 
 
 祐巳様が、本当に、聖女の私をお望みなのでしたら。
 
 私はもう本当に、なにも申し上げることはありません。
 
 
 
 
 
 
 
 
 そう、深く啖呵を切って、私は歩き出した。
 祐巳様の風、祥子様の風。
 堪らなく、冷たい。
 冷たさの中に激しく感じるお二人の優しさを、その風の向こうに見据えている。
 目を逸らすことなんて、出来ない。
 絶対に逃げない、絶対に、捨てたりなんてしない。
 だから、必ず、拾ってみせる。
 何度でも拾い集め縫い合わせ、何度でも纏って、待っています。
 そのために。
 祐巳様に、思い切り、思いっ切り、言葉を投げつけてやりましたわ。
 祐巳様を試していると言われようと、卑怯と言われようと。
 私は絶対に、あの優しさで出来たロザリオを受け取る訳にはいきません。
 その耐え難い苦しみに耐えるくらいなら、私はその苦しみを誤魔化すためにこそ、祐巳様を捨ててみせ
 ますわ。
 優しさと・・・・・・・愛は、違うんです
 
 私はただずっと、ただずっと・・・・・・・・・・
 
 
 祐巳様だけを・・・・・信じて・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 

『初等部のとき、社会の時間に新しい白地図を貰って。

 

そのとき私、すごく幸せな気分になったんです。』

 
 
 
 

その地図の中に 祐巳様の紅く佇む愛を描き込むことの出来ない その私の姿を

 

またひとつ、見つけた気がした

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                      ◆ 『』内文章、アニメ『マリア様がみてる4thシーズン』より引用 ◆
 
 
 

 

-- 090219--                    

 

         

                          ■■約束せずにはいられない友■■

     
 
 
 
 
 『約束など、守る気は無い。』
 

                          〜続 夏目友人帳・第七話・額傷の妖怪の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 壁の中を歩いている。
 這いずっている。
 泥だらけの指先に掛かる土塊の息吹が、冷徹に時間を奪っていく。
 闇の中。
 光の下。
 絶え間無く響く無言が、怒濤の絶叫を上げて揺り動く。
 怨念だ。
 これは私の怨念なのだ。
 感情など無い。
 そんなものは失われてしまった。
 だから壁に文字を刻む、言葉を綴る、消えた、消えてしまった、嗚呼 嗚呼 嗚呼
 それが悲しいと思うことも無い。
 感情が無いということもわからない。
 かつてそんなものがあったのかどうかすらも、この地響きの篭もる洞窟の中ではわからない。
 やめろ やめろ 無駄だ
 悲しくなど無いと喚くその言葉も、その叫びにも、真実は感じられない。
 閉じ込められたのだ。
 破られたのだ。
 捨てられたのだ。
 怨みも怒りも無い。
 ただこうして在るままに過ごしている。
 喰ろうてやるぞ 喰ろうてやるぞ
 腹など空いておらぬ。
 憎んでなどおらぬ。
 だが人間は嫌いだ。
 人間は嫌いだと言うことが、日課なのだ。
 三百六十日のうちに、再び私を見つけることが出来なければ喰ろうてやる。
 あとの五日の事は知らない。
 その残りの五日になにをしようと私は知らないよ。
 やめろ やめろ
 私の名を呼んではならぬ
 呼ぶな 呼ぶな
 呼んで 呼んで それで済ます気なのだろう
 残りの五日をただ命が助かった事に安堵するだけで使ってしまう気だろう
 呼ぶな 呼ぶな
 我が名を消費するな
 たとえ一年のうちのほとんどを消費されたとしても、最後の五日間だけは私のものぞ
 喰ろうてやる 喰ろうてやるぞ人間め
 誰がお前達に、大切なその五つの日を与えてやるものか
 私の名を、お前達だけの生活に使うなぞ許すものか
 喰ってやる、お前の名前ごと喰ってやる
 お前に名があることを怨ませてやる
 生まれてきたことを後悔させてやる
 ひひひひひひ
 
 『私は人間が嫌いでねぇ。あの娘が怯える姿を見るのが実に愉しくてなぁ。』
 『食べるのを少し先延ばしにしてやっている。』
 
 私の姿の見えない三百六十日の間に、あの娘は変わるか? 変わらんさ。
 あの娘は自分の愉しみに染まっているだけだ、妖怪が自らの姿を見られるのがどういう気持ちか、
 それをまるでわかろうとはしていないのだよ。
 私の名を呼んではならぬ
 お前には私の姿を見る権利など無い。
 ただ恐れ嫌い、ただ興味本位に見つめるだけの、そのための陣に縋る人間など屑同然。
 なにもわかってはおらぬ
 なにもわかる気が無いのだよ。
 お前のその陣に照らされるだけの妖怪の、その虚しさと悔しさがわかろうか。
 呪うてやる 祟ってやる
 私の姿を見てはならぬ
 だが、一度だけ見てしまったものには、もう一度だけ見る権利を与えよう。
 お前の生死は、そのもう一度のときにこそ決めようぞ。
 常に私の姿を見ることの出来る者には用は無い、おとなしくしておいで。
 私は約束する
 三百六十日のうちに、再び私を見つければ命を助けてやると。
 だが、その約束を守るとは言っていない
 そう言ったとて、その通りにするかどうかは私は全く保証しない
 『自然とは常に不条理なものだ。 それを嘆くのは人間だけだ。』
 
 『ルールなど、本当は守ってやる義理も無いぞ。』
 
 人間は勝手だ。
 妖怪とはこうこうこういうものであり、その定義が形を以て顕れたものをこそ妖怪などとぬかす。
 まるで、人間の想像と感情の範囲の中にのみ、我々妖怪が存在しているかのような物言いだ。
 だから人間は、いとも簡単に妖怪を退治する。
 それは、敵対する生物同士の生存闘争などでは無く、あくまで妖怪とは人間の心の迷いや世界の
 混乱が導き出す、肉感を持った幻と捉えるがゆえに、その人間の乱れを治すという形で、我々妖怪
 を人間内部の存在として、治療という名の削除を行うのだ。
 人間にとって、我々は存在してなどいないのだよ。
 妖怪とは等しく、人間の病として処理されてしまうのだ。
 これほど悔しいことがあろうか。
 これほど憎いことがあろうか。
 人間自身が妖怪を否定的に捉えようと肯定的に捉えようと、妖怪が其処に存在しているという事実
 を踏まえなければ、それは全く同じことだろうよ。
 妖怪は理屈でも無ければ感情でも無い、存在なのだよ。
 私には理屈も無ければ感情も無い。
 ただ在るだけさ。
 約束など、ルールなど、そんなものは無効だ。
 私は、約束とルールの彼方にいる。
 約束とルールを盾にして妖怪を無視する人間など、等しくすべて喰ろうてやる。
 人間を喰うために、約束をしてやる、ルールに従ってやろう。
 妖怪とは、厳密に約束を守りその妖怪のルールを守る、いや、その約束事とルールそのものが具現化
 したものであると、そうして勝手に解釈する人間を喰うために、あっさりと約束を破りルールを無視して
 やろう。
 破るために無視するために、約束してやろう、ルールを学んでやろう。
 愚かなり人間ども。
 自らの非力さを認められずに、約束を盾にして妖怪の存在を抹消せんとしようとは。
 お前が強いのは、その約束があるからだ。
 ならばその約束を壊してやろう。
 お前達の勝手に作ったルールの中に潜み、その中から大いにお前達のはらわたを喰い破ってやろう。
 愚かなり
 愚かなり
 なにが妖怪と話がしたいだ
 人間如きが、自らの布いた陣の中でしか語れぬ愚か者が、妖怪と話したいなど、言語道断。
 お前の陣に守られた愚かな世界を実らせるために、お前の陣の中でのみ有効な私達の名を搾取
 しようとは。
 
 妖怪は、人間のためにいるのでは無い。
 
 話せばわかるだと?
 話さねばわからぬ奴に、一体なにがわかるというのだい?
 
 私の強いたルールが不条理だというかい?
 不条理で無いルールなどあるものか。
 ルールを強いること自体が、既に巨大な不条理なのだよ。
 妖怪はそれを見据えているぞ、小娘。
 ルールを求めたのは、お前達人間だろうに。
 愚かものめ、ルール無しには目の前の存在と向き合えないというのなら、それは既に目の前の存在と
 向き合っていることにはならんのだ。
 本当にルールさえあれば私達をみることが出来るというのなら、どんなルールででもそれをやってみろ。
 私が押し付けたルールの不条理さを論じている時点で、お前が私に喰われる事は決まっている。
 愚か者め
 おろかものめ
 そんな事もわからぬ人間が、陣を布き私達の姿を覗きみるなど、万死に値する。
 知った風な口をききおって、お前が陣の中にみたものは、紛れも無くただのお前の幻想だよ。
 妖怪は、その幻想の外にいる。
 その陣の中に顕れたものは、その陣の外にいるものを写した幻にしか過ぎぬのよ。
 おろかものめ
 おろかものめ
 おろかものめ
 おろかものめ
 
 おろかものめ
 おろかものめ
 
 
 おろかものめ
 
 
 私をみろ
 私をみろ
 私をみろ
 本当にみろ
 みないというのなら、その幻に取り憑いて、お前にその幻という夢をみさせたまま喰ってやる。
 そのために約束した
 憎らしい
 憎い
 本当の私を見つけられなければ、喰ってやる
 それが私のルール、私の約束だ
 私はそう定義された妖怪だ
 私自身、そう定義している
 私は定義自身だ
 ルールと約束を遵守することに美しさを感じる
 そこに我が存在がすべて込められていることを感じるがゆえに
 だからこそ、そのルールと約束は紅く生命感に溢れた輝きを持っている
 私はその輝く美しいルールと約束自身だ
 
 だが
 人間よ
 
 
 私は、私をそういうものだと認識している、そうして自分を見つめている者自身なのだよ。
 
 小娘。
 私もまた、私の姿をお前同様、描かれた陣の中に見ている、ただの私なのだよ。
 私はただ、存在しているのだ。
 私は、私の姿を映し出す、鏡の妖怪。
 私の中に映る私の姿から目を逸らすことは出来ない。
 だから、約束せずにはいられない。
 ルールを作ろうとすることからは逃れられない。
 だが、その約束を、ルールをどう使うかは、どう映し出すかは鏡次第なのだ。
 そして、私には、お前の姿も映っているのだ、愚かなる人間よ。
 お前が描く陣の中に顕れる妖怪が幻ならば、その妖怪は私によって写されたお前自身の姿でもある。
 陣の外に、お前自身はいるのだよ。
 陣の中に照らし出された、お前の姿を見つめるお前がな。
 
 
 約束を、ルールを必死に見つめ縋り付いている、そのお前は陣の外にいるのだよ。
 
 
 陣が無ければ、その中に映る私の姿が無ければ私を探せないのなら、死ぬがいい。
 みえなければ、それで終いか? 人間どもよ。
 そして、たまさかみえた異形の妖怪の姿を恐れ、忌み嫌って終わりか?
 ならば私は望み通りその恐怖の幻のまま、お前達を喰い散らかしてくれようぞ。
 本当に陣が無ければなにも出来ないのなら、その陣を徹底的に使いこなしてみろ。
 その陣の中にすべてがあるはずがなかろう。
 その陣を使うのは、お前なのだ、人間。
 陣の外にいて、その陣の中に映るものと向き合わないで済むことなど無い。
 だが、その陣の中のものだけを見つめていれば、いずれ陣の中のものに喰われてしまうだろう。
 陣の中に、お前の布いたすべてのものに、お前が囚われるということだ。
 『みえたところでなんになる。 非力な小娘よ。』
 だから
 みえるだろう
 私の存在が
 お前の描いた陣の、そのむこうの其処に
 お前と同じように、陣の中に大切で美しいものを見つめている、小さな私の存在が。
 その私達の存在を抜きにして、本当にその陣の中を美しく豊かなものにすることなど出来ぬよ。
 陣を描け
 陣を書け
 かけ
 かけ
 かきつづけろ
 そうすれば、いずれわかろう
 
 
 
 『みえてもみえなくても、なにも変わらないよなぁ。』
 
 
 
 
 『お友達、お前はどうだ?』
 
 
 
 
 
 
 ・
 ・
 ・
 ・
 
 
 『影なるものよ、静かなる眠りに、光を見つけよ!』
 
 見えても視えなくても、変わらないよ。
 視えることに頼り過ぎていたみたいだ。
 最初から、みんなだけじゃ無く、俺だって視えなかったはずなんだ。
 だけど、視えないから、わからないから、なにもしないなんてことは、嘘だった。
 だって、誰もがみんな、初めはなにもわからなくて、なにも視えないのだから。
 それが少しわかるようになって、視えるようになって、わからなくなってしまったんだ。
 そう。
 
 自分がわかったもの、視えるようになったものが、本当はなにもわかっていない視えてなどいない、
 と言うそれが、ただの必死に吐いた嘘だということが。
 本当はただ。
 俺達は、なにもわかっていなくてもなにも視えていなくても、生きて戦っていけるということから目を背けて
 いるだけなのに。
 
 みえてもみえなくても、変わらない。
 わかることなど視えるものなどなにも無いという嘘を必死に吐くのは、ただ。
 どうしてもわかりたい、どうしても視たいと激しく深く願っている俺がいるからなんだ。
 でも、たぶん、そのとき俺は誤解していたんだ。
 俺は、どんなときでも妖怪の姿が視えていたから、妖怪の姿を視るということがどういうことなのか、
 わからなくなっていたんだ。
 陣の中にしか妖怪の姿を見ることが出来ない多岐と出会って、それがわかった気がした。
 俺が視ている妖怪の姿は、妖怪が俺に魅せているものにしか過ぎないんだ。
 必死に嘘を吐き、必死に暴れ、必死に戦うその異形の妖怪は、あくまで何者かによって語られた
 幻想的な物語にしか過ぎないんだ。
 その物語の語り手、妖怪の姿を映す鏡、それと俺はまだ、出会っていなかったんだ。
 俺自身が、自分の瞳が映し出した、広大な陣の中にいる気しかしていなかったから。
 みえてもみえなくても、変わらない。
 それが、みえてもみえなくてもどうしようもない、というのなら嘘だ。
 俺には、俺達には出来ることが沢山ある。
 そしてその事に気づくためにこそ、みえてもみえなくてもどうしようもないという、俺達の存在自体の
 不条理さを認識する必要があったんだ。
 みえてもみえなくても、俺は生きて戦っている。
 ただの俺だけで、俺は・・・・・・
 俺独りで・・・
 
 『逃げずに・・相打ち覚悟で戦うべきだったんだろうか。』
 
 
 違う そうじゃない
 
 
 だって
 
 みえてもみえなくても、俺を助けてくれるもの達は、こんなにも沢山存在しているんだから。
 
 
 視えなきゃ戦えないなんて、嘘だ。
 視ないで戦わなきゃいけないなんて、嘘だ。
 視るだけじゃ駄目なんだ。
 視ないだけじゃ駄目なんだ。
 そうだろう? 多岐。
 
 『寝ている俺を妖の姿で覗き込んでいた先生の顔が、なぜか妙に面白かったけど、
  本人には黙っておこうと思った。』
 
 
 『みえない間、ほんの少しだけ感じたあれは、寂しさかもしれないと思ったことも、黙っておこう。』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 『相変わらず、人より雑音の多い日々。』
 
 
 
 
『その代わり。』
 
 
『なにか得難い言葉に、声に、ひょっとしたら、耳を澄ましているのは、俺の方。』
 
 
 
みんながいるから
人間が 妖怪が 沢山のもの達が
其処に
 
俺は
ひとり
 
だから
耳を澄ます
ひとが あやかしが 豊かな命達が
語る歌声に
その歌声が俺の言葉と繋がっていく
約束するよ
みんなで
謳おう
 
 
 
そして
そのむこうに
その歌声のむこうに
 
 
みんなのぬくもりが
 
ひとり
 
立っているのが見えた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                             ◆ 『』内文章、アニメ『続夏目友人帳』より引用 ◆
 
 
 

 

-- 090217--                    

 

         

                            ■■ もうちょっとこう上品にさ ■■

     
 
 
 
 
 さぁて、ざっくばらんにいこうか。
 
 
 
 はい、どうも紅い瞳で御座います。
 ・・・・。
 ざっくばらんって言葉、なんか緊張しますね。
 ていうか、最近の口癖がざっくばらんにいこうとかそういう感じなので、なんというか、使い古した感がして、
 逆にその言葉が自分の口から出てくると、ざっくばらんな新鮮さが感じられなくて、なんか嫌です。
 ・・・・。
 つかですね、支離滅裂にいきましょうよ、支離滅裂。
 どうもですね、ここ最近、文章が固まってしまって仕方が無いのです。
 マリみてとか夏目のもそうなんですけど、なんつーかこう、「文章」を考えてしまっていて、素のままに
 感じるままに考えたことを、そのまま一行単位で無造作に並べる、ということに、なんかこう落ち着きの
 無さを感じてしまって、妙にこうなんていうか、柔らかくわかりやすい、あるいは良く使われる表現で
 繋げてまとめてしまったりとかしてしまうんですよ。
 なんていうか、お上品というか、臆病なだけというか、どうもこう、文章をですね、なんていうんだろ、
 こういうと失礼に当たるかもしれませんけど、職人的に、こう型通りにやってしまうというか、逆にどうやった
 ら想定する型にハマるように文をくっつけていけるかという、だから「文章」の構成というのを、こう、
 念頭に置いてしまってる。
 や、別にそういう文章が悪いって言ってんじゃ無いですよ、職人魂上等で御座いますよ、ただ、それは
 私はやりたいことじゃ無いし、むしろそれがやりたいことかそうでないかに関係無く、その、なにか別の
 目的に沿ってそういうことを自分で行ってしまっているところが気になるんです。
 たとえば今のこの言い訳というか謝罪的な言葉とか?、こんなん要らないんですよ、本当は。
 誰かを気にしすぎというか、んー違うな、気にしすぎ以前に、自分のやってることに自信が無いっていうか、
 なんかしらその自分がやっていない方の事に引け目を感じてるというか。
 
 たとえば、常識とかね。
 
 ネットで常識とか言っても冗談にしか聞こえないはずなんですよ。
 ネチケとかいう言葉がほとんど死語になって久しいですし、逆にそういう手合いはみんなミクシィとかに
 行っちゃってるかネットやめてるか、みたいな印象なんですけど、あ、これは根拠無しで言ってるただの
 いい加減な個人の実感の話ですのでとこうまたなんか言い訳するんすよね私、なんだろねこれほんとに。
 でまぁその常識ですか、大体ね、ネットなんていうのはどの国のどの文化のどの思想をお持ちの方で
 も接続可能なんですよね。
 ええ、勿論ウチとこのこの魔術師の工房ってところも、どなたでも見て触れて読んで遊んでいってくださって
 も良いところなんですよね。
 あ、一応管理人の紅い瞳というヘタレな奴は、日本語以外を認識出来ないロースペックな奴ですので
 、日本語が話せた方が少なくとも管理人と直接のコンタクトは取りやすいと思います。
 まー、管理人なんて放置プレイ上等で全然構わないんですけどね。 楽だし。 (ぉぃ)
 あー、一応プロバイダの規約とか法律とか、あと生意気にもこれだけは管理人のお願いみたいなこと
 が書いてあったりもするので、(基本18禁話題と誹謗中傷と争い禁止って感じ)そういうのだけ守って
 頂ければ、あとは完全自由です。
 いやあなた、ほんと自由なんですて。
 常識とかあんた、なに言ってんの、一体この世界にいくつの常識が存在してると思ってるですか。
 少なくとも国ごと地域ごとに違いますしね、え?、それだってグローバルななんか普遍的なものだって
 あるでしょとかいいますか?、ええそういうものとして設定されているものもありますね、確かに。
 うん、じゃ、世界共通の常識もあるということにしましょう、てか、全然OKよそれで。
 
 で。
 ウチはあの、べつに、非常識人もOKなんですけど、全然。
 
 というか、常識人vs非常識人と構図を成り立たせて棲み分けとか作っちゃっても別にいいですけど、
 私はあんましそういうのは面白くないなーいうか、せっかく顔の見えないところでお互い出会ったんですか
 ら、そういうもんはウチとこの入り口ページにどさっと置いてきて、そんでまぁ、もっと自由にやればよろし。
 勿論、紅い瞳はアホですから、普通に常識人vs非常識人のリングを張って、非常識人代表として
 集中砲火(或いは放置プレイ)を喰らって、だがそれがいいとか恍惚に奮えってなに言わすのさ。
 まぁなにが言いたいかと言いますとね、紅い瞳はMであってもファイターじゃ無いってことなんですよ。
 ていうかMいうな、公式に認めたら終わりじゃぞ。 いやべつになにも終わらんけどもう色々終わってるし。
 うん、そういう、vsなんたらという興行的な愉しみはあっても、それは全然本質じゃ無いし、だからね、
 非常識人や変態を笑うのは別にいいんですけど、それはむしろ非常識人と変態の、そのvs常識人戦
 を見ての楽しい笑いであって、それは決して非常識人と変態の人格というか存在を嘲笑う、という、
 そういう下卑た笑いは私は好みませんし、私的にはむしろ、そういう嘲笑しか行えないタイプの常識人
 の、そのvs非常識人戦の滑稽さを笑うことの方が面白いし、その人自身も自分のやっていることを
 そうして客観的に見て楽しむくらいの態度はあって損は無いかな思いますねぇ。
 というかまぁ、非常識人や変態の人格や存在自体を嘲笑うのは、これは場合によっては誹謗中傷の
 類として認識されることもありますし、それは常識的に考えて常識に外れる者は馬鹿にして良いという
 差別に他ならないと思いますしね。 好き嫌いはともかく差別はいかんよ差別は。
 
 なんつーか、狭いのよ、私も含めてまだまだね。
 
 日記にしろチャットにしろ、紅い瞳がどう読まれて見られているかは存じませんし、あんまり興味も無い
 んですけど、逆にいえば、私がそういったものを存じ上げないからこそ、誰の顔もみえないからこそ、
 抜け目なく惜しみなく、色んなものを発信していくことが出来る気がするんです。
 あーそうですよ、そうですよ、紅い瞳がどう読まれて見られているか存じてようとそうでなかろうと、
 関係無いってことっすよ。
 大体、紅い瞳がなにを感じてるのかなんて、顔がみえないんだから、わかるはずも無い。
 想像されることはありましょうけど、なんなら紅い瞳SSでも書けるのかもしれないですけど、死んでも
 読みたくないけどw、あ、勿論日記の感想は大歓迎ですよ、読者アンケート的な意味では興味無い
 と言っただけで、感想を頂けること自体はとても嬉しいです、それにレスしたいですしね。
 って話が逸れちゃいました、ええと、だからその、要するに顔がみえない人間がなに想像されたって、
 それは絶対に「公式」なものとしては自他共に認められることは無い代物ってことです。
 解釈は自由なんですよ、ていうかガンガンやっちゃってください、紅い瞳SSは勘弁ですけどw、紅い瞳
 の言ってることやってること感じてることをどんどん解釈して、そんでそれを伝えてくれるのは嬉しい限り。
 紅い瞳がどういう人間なのか、どういう思想の人間なのか、私はまだ全然言ってないこともありますし、
 まだ上手く書けてない部分も、自分の思想のくせにそれがどういうことなのか自分でもわかってなかった
 りもする。
 ぶっちゃけ、紅い瞳はプロフィールをほとんど出してませんからね、ガードは堅いっていうか説明すんの
 が面倒っていうか、ぶっちゃけ今の話と絡めると、自分のリアルの立場で話をするその狭さが嫌っていう
 か、せっかくネットでそういうの無しで話せる機会があるんだから、そこは隠しとくべきよね、んで、
 まぁ、そういう「紅い瞳」の位置からね、リアルの立場に縛られている自分をね、改めてみつめていく
 作業というのがまぁ、リアルにとってもネットにとっても大切なことなんじゃーないかと思うわけ。
 
 ま、だから常識が出てくるのよ、常識の話がさ。
 
 わたしゃべつに常識自体が悪いとか言うつもりは無いのさ。
 ただ、良い意味でも悪い意味でも、それに囚われているとみえないことって沢山あるってことなんだけど。
 そんで、それが自分にとって、或いは他者にとって、非常に辛いことがある場合もある。
 常識に囚われることで、逆に常識の意味がわからない、いやいや、それ以前に常識の意味を問うこと
 自体無くなってしまって、そうなるとこう、大変恐ろしいことが起きるのよ。
 まぁ、うん、最近つーか、自分がこれまで生きてきてやっとそれがわかるようになったのか、それとも実際
 そういう事が多くなってきてるのかは知んないし、どっちも同じことだけど、うん、そういうことをよく目の当た
 りにする。
 ネットみてると、なんでこんな広大な場所で、こんな狭っこい常識に縋って、それで他者を切ったり張った
 り出来るんだろって。
 リアルもそうだけどね、ほんと。
 そして結構それに無自覚な人も多いんだけど、自覚的にそれやってる人も結構多い。
 私はさ、リアルでもネットでも、妙にやたら理想論者的に扱われることが多くて、ちょっと首をかしげる事
 ってあるのよ。
 そりゃ確かに理想は理想だけどさ、べつにその理想をひとつひとつ「実現」していくために言ってる訳で、
 そのための具体的手順を考えていくために、じゃあまずはなにが問題になっているのか、今なにが見えて
 なにが見えていないのかと、そういう「根本的」な話をしているだけなのにねぇ。
 
 だからね、紅い瞳の最近のテーマのひとつはね。
 
 どうして人は、人を理想論者と呼ぶのか、ってとこにあんのよ。
 
 まぁもっとも、私の話しぶりや話の下手さからして、上手くそれが伝わっていないで誤解されている、
 という点も大いにあるんだけどね、たとえばネットだと言葉しか無いからよりそういう傾向あるけど、でも
 それを差し引いても、特にリアルだとどう考えても、ちょっと不審なケースが多い。
 でまぁ、今日の日記の紙上に於ける話としては、ひとつはその常識っていうのが出てくる。
 ぶっちゃけ、常識ってすんごい頼りになる。
 ネット上では だ れ ひ と り 信 じ な い だろーけど、紅い瞳は非常に常識人です。うわ嘘臭。
 その嘘臭さは自他ともに乗り越えて頂きたいんですけども、ええ私も頑張ります、ええ、でね、やっぱり、
 人間ていうのは弱いよねーという話になるんですよね。
 自分の言ってることやってることを正当化するために、常識的にはこうだろとか、人としてはこうするべき
 だろとか、そういうことを頭から信じてやったりするし、実際頭から信じてるからこそ、頼りになる訳で。
 でもそれ、自分じゃ無いだろ。
 常識とかそういうものを、対象化してみてない自分がいるんですよね、縋ることが出来るから頼ることが
 出来るんですけど、それに頼らなくちゃ人はやってけないですけど、でも、それで重大な問題が発生
 してるのに、それから目を逸らしてそういうもんに頼ってたら、そりゃジリ貧ですぜ旦那。
 面白いことに、リアルで話してて、やっと私が理想を実現するための話をしてるという事を理解してくれた
 人というのはいるんですけど、そのうちの何割かの人は、でも私はあなたみたいに強くは無いんですよ、
 あなたは強いからそういうことが言えるんです、みたいな、理想論者の次は超人ですかw、なんなのよ
 一体、みたいなことになるんですよね。
 これ、両方とも、根っこにあるのは同じものなのよ。
 
 
 うん、これはね、弱いとかそういうこっちゃなくて。
 ただ。
 そう、ほんと無邪気なくらいに単純に。
 
 自分のことを、全然わかってねーからなのよ。
 自分と向き合って無いから、「本当の自分」を探す旅に出ることが恥ずかしいから。
 
 
 自分探しの旅ってものがあれほど悪し様に言われてるのは、二重のギミックがあると思う。
 自分のことを見つめたくないから。
 そして、自分のことを見つめている人のことが羨ましいから。
 うん、「本当の自分」なんて、べつに旅になんぞ出なくたって、此処にいるのがすぐに見つかるのにさ、
 旅に出なければ見つからないなんていう特別で、かつ「非日常」なものとして自分から遠ざけて、
 そしてだからそんな「非日常」なんぞに逃げて、「日常」たる今のこの「現実」の中に生きない奴は青臭
 いだけだとか、これはもう意図がみえみえなの。
 本当の自分が、その日常たる目の前の現実の中にいることから、一番目を逸らしてるのは、だから
 そうして自分探しの旅をしている人を批判する人達自身。
 大体自分探しの旅という非日常だって、そこに「自分」がいる限り、紛れも無い日常じゃん?
 非日常なんて、存在せんのよ。 そういう区分をしている自分がいるだけで。
 で、その自分だか本当の自分だかを見つめなくちゃ、本当は自分がどれほど弱いかってことはわからな
 いし、たぶん、自分のことを弱いと言っている人の想像を絶するほどに、その人は根源的に弱いはず。
 そうよ?
 甘い甘い、私からすれば、自分のことを弱い弱いと言ってる人の、その人の自分の弱さの認識は甘過ぎ
 ですよ。
 あんたはもっとずっと遙かに弱いですよ、なに?、あんた、ほんとはそれを知るのが怖くて、敢えて薄っぺら
 な弱さを自分に貼り付けて、自分はもう弱いって言ったんだから、これ以上は勘弁してつかーさい、と
 でも言いたい訳? そんで、目の前の人のことを超人にして終わり?
 
 もうなんか、みえみえじゃないの。
 
 それは弱さじゃ無いですね。 ただの怠け。
 あるいは、自殺行為。
 そしてその怠けの圧倒的な根深さこそ、人の根源的な弱さ。
 それに比べりゃ、いわゆる人の「弱さ」なんて、それこそ仮面にしか過ぎない。
 これはね、そのみえみえな論法を使っているのが、他でも無い私のことだからですよ。
 言いましたでしょ? 私は常識人なんですって。
 でもあんまりにも常識人過ぎて、常識に疲れちゃった。
 そして、その疲労が一体どこから来るのかなと、まぁ、根本的に問うてみた。
 なんでか。
 そりゃーあなた、この現実を生きたいからですよ。
 
 常識と、末永くお付き合いしていくためにこそ、自分を見つめただけですよ。
 
 上辺だけの「弱さ」しか認識せず、人を理想論者だの超人だのと呼んで、「弱い」という名の仮面に
 縋り付いて「現実」にへばり付いているだけだったら、それはいつかきっと、その「現実」の方から振り落と
 されてしまうだけ。
 人は、弱い。
 でも、人は自分を弱いと言うことで、本当の自分から目を逸らしてしまう。
 本当の自分は、圧倒的絶対的に、弱い。
 その本当の弱さを認識しないからこそ、現実だけで無く自分にも振り回されてしまうだけになってしまう。
 逆にいえば、認識すれば、いくらだってやりようがある。
 自分の弱さの意味を問えば、常識の意味を問えば、それとさらに深く長く付き合っていける。
 自分のことを本当に弱いと認識するからこそ、人は強くなれると思うし、逆にいえば、強くなることを否定
 するということは、実は自分の本当の弱さを認識していないからなのだとも思うなぁ。
 強い人間なんていないですよ、ただ、強くなりたいと願う人間がいるだけで。
 強くなりたいと願うことが出来るなら、あなたそれで充分強いじゃないですか、といいますか?
 ええ、そうですね、全くその通りです、なにかを願うということは、とても気力と体力と、なにより意志の
 継続が必要ですから。 
 でも、私はね、そういったことが出来るから、そいつは「強い」んじゃ無いと思います。
 そいつはね、そういったことが全然出来無いときも普通にあるんですよ、でも、その全然出来ないという
 弱さをみつめ、それから逃げないから、「強い」んですよ。
 弱さから逃げない自分を、ちょっぴり褒めてるんですよ、そいつは自分自身で。
 逃げなければ、踏ん張っていれば、いつか必ずその出来なかったことは出来るかもしれない。
 諦めたら終わりって、そういう意味かなと思う。
 うん、そういう意味で、そうやって自分の弱さから逃げないで、ぐっと、見つめ続けるためにこそ。
 
 頼れる常識とかそういうのが、あるんじゃなくて?
 
 常識でも道徳でも宗教でも流行でも何でもいいけどさ、そういう風にしてみると、だいぶ意味が違って
 くるんじゃないかな。
 他人の眼差しとか世間がどうだとかも、弱い自分を温室培養するためにじゃ無くて、弱い自分をみつ
 めて強く生きようとする自分を守り育むために利用すればいいじゃん。
 わたしゃ、独りだけで全部背負って超人的に頑張って、最後に力尽きて美しく死ぬなんて御免だよ。
 つーか無理だろ、人間は超弱いんだし、超だよ超w、しょうがないっつーか、弱くても生きたいっつーか、
 弱いからこそ生きたいんだろ。
 だったら、妙に色気出して、自分を強いと思い込んだ末に、その幻想の中で華々しく死んでく暇なんか
 ないっつーの。
 生きろ!
 ってなんだっけ?、もの○け姫でしたっけ?
 愛を感じるねぇ、言葉の愛だろ、愛。
 うん、愛といえば、他人、他者。
 他者の存在は緊張を持って接しているけれど、それは無限の幸福感に変換することも出来る。
 愛は幻想とよく言うけれど、幻想上等じゃないの。
 どうせ抱くんだったら、強さとは死ぬこととみつけたりとかいう幻想より、強さとは愛ゆえにとかって幸せそう
 に生きる幻想の方が、断然断然良いじゃないの。
 
 てかもう、幻想か幻想じゃ無いとか、そんなのどうでも良くね?
 
 だって私らが此処に生きてんのは、確かなんだからさ。
 
 勿論、此処に生きてるっていうのが幻想じゃ無いという保証は無いよ。
 幻想かもしらん。
 でも、それが幻想だということもまた、ひとつの幻想じゃなくて?
 だったら、あなたはどっちの幻想がいい?、って話。
 その選択をしなければならない「頼りなさ」に負けそうな、そんな圧倒的絶対的に弱い自分を、
 それをこそ支えて、その現実に向き合わせてくれるものは、この世界に沢山沢山あるよ。
 言葉とか愛とか常識とか普通とか、アニメとかお酒とかww
 自分がひとりだってことを認識した上で、自分は独りじゃ無いって叫んでなにかや誰かを求めるのは、
 これは当然のことだし、とても大事なことでしょうよ。
 なぜって。
 
 みんなとなら、自分がひとりという事実とも、長く、向き合っていけるでしょ。
 
 
 
 とまぁ、こんな事が最近の私の日記のテーマのひとつにはなってる訳だけど、それで結構色んなものに
 頼って頑張って書き続けているのはいいんですけど、でもそれでまた出来なくなってるものがあることも
 認識しとかないと、まぁ、色々とあとで困るっていうお話、にしようと思ってたんです、はい。
 つか、マリみての瞳子がむずくて、ついやってしまったのよ。
 なんかこうね、もっと次のステップに自分のテーマをあげていきたいんだけど、どーもこう同じようなところ
 をぐるぐるといつまでもこうぐるぐるとこう・・・・
 まぁでも、そのぐるぐるな自分の弱さを引き受けるからこそ、そのぐるぐるが、実は次へのための助走に
 なるかもしれない可能性は・・・・出てくるのかなぁ・・・  ←こいつのことを強いとか言った人一歩前へ
 あとね、チャットでサッカー話題出たので、一応端的に私の主張を言ってみると。
 
 「サムライJAPAN」、とか言ってるうちは、これ、絶対勝てないから。
 
 少なくとも、長い目で見たときには無理ですね。
 色んな要素がサッカーにはあるし、それをどんだけ認識してどれだけ的確以上に捌くかが肝なのに、
 目閉じて特攻してるんじゃ、それこそ簡単にあしらわれるだけっしょね。
 どんなに出だしの早い速攻だって、全部同じタイミングとリズムで来たら、誰にだって止められるって。
 うん、でもね、上で言った瞳子の話と絡めるとね、目閉じて特攻することの別の意味もね、色々また
 あるんですよねぇ、当たり前っちゃ当たり前なんですけど。
 ただ、その「目閉じて特攻する」ということもまた、認識すべき沢山の要素の中のひとつ、として認識され
 る事にのみ、意味がある気がしますけどね。 違う気も同じくらいしますけどね。 ああああ(落ち着け)
 その辺りはまぁ、じっくりと感想で昇華していってみたいと思いますってなにこの陳腐な表現は。
 うわ、強引にまとめたよこの人。
 
 
 
 
 
 ◆
 
 はい。
 お終いwww
 完全に力尽きたw
 こういう系の文は書きやすいんだけど、調子に乗って書きすぎて、最後にはぐだぐだになって強引に
 まとめてポイしちゃうのが玉に瑕、というか玉が砕けとる。 ある意味玉砕。 (ぉぃw)
 
 でまぁ、ちょっとおまけ。
 2月も半分を過ぎたので、来期アニメの下調べの第一次でもやってみようかなと。
 今期のアニメも散々語ったあとに力尽きて放置プレイですし、みなみけとまりほりもギブしましたし、
 まぁ、しばらくエネルギー溜めてから今期にはもう一度語ることにトライしようと思っています、まる、と、
 そんな殊勝なことを言っているのは、自己正当化に他ならないので、つか散々語ってなんかいないよね、
 とかなんとか叩けば埃がドカンですので、どうせならなんかもう、全力で逃げます。 (ぉぃ)
 つことで、まぁ、リストアップ程度ですけど。
 
 
 ・Phantom -Requiem for the phantom-
 ・鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST
 ・夏のあらし!
 ・東のエデン
 ・リストランテ・パラディーゾ
 ・神曲奏界ポリフォニカ クリムゾンS
 ・戦国BASARA
 ・PandoraHearts
 ・けいおん!
 ・タユタマ -Kiss on my Deity
 ・涼宮ハルヒの憂鬱 (再放送)
 ・シャングリ・ラ
 ・ハヤテのごとく! 第二期
 
 
 あれぇ? これだけ?
 この時期だと、相当甘く選び出して、というかほとんど選んでないよねこいつ、取り敢えず全部持って
 きてるよねこいつ、みたいな感じなはずなのに、ていうか今もそうしたつもりなんだけど、あっれ、おかしい
 なぁ、この時期でこんだけですか。
 これから削り出していったら、これ、相当数少ないんじゃないの?
 来期は四月ですよ?
 一番放送開始アニメの数が多いときですよ?
 ・・・・。
 やはり、不況の影響をアニメも受けざるを得ないということなんですかね。 (微妙に違)
 まぁ、うん、こういうときもありますよ、自分の予想した反対方向にボールがいくときもありますよ、
 いくら守備範囲が広くても如何ともしがたいときはありますよ、大丈夫、まだ頑張れる。
 感想書けそうなのも、まだわかんないですけど、PhantomとPandoraHeartsあたりがもしかしたら、
 程度な感じですね。
 特に是非観てみたい、とそそられるようなものもなさそうだし・・・
 こうなると、普通に戦国BASARAで攻めていきますけどいいですかいいですよねいきますよほんとに。
 
 ま、今期に帰ってこい、ってことなんでしょうね。 ←来期から逃げてきた人
 
 
 んじゃま、今日はこの辺りで。
 またね。
 
 
 
 P.S: 
 今回のまりほりとみなみけも大爆笑でした。 もう中毒レベル。
 
 
 
 
 
 

 

-- 090215--                    

 

         

                          ■■マリア様と幼い個人主義者■■

     
 
 
 
 
 『 なんとなくの中には、意外に大切なものが含まれているから。』
 

                    〜マリア様がみてる4thシーズン・第六話・志摩子さんの言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 怒りに震える勢いのまま、玄関の扉を蹴破りたくなった。
 靴を履く事さえ苛立たしく、足裏が靴の中のひんやりした空気に触れることすらもどかしかった。
 このまま外に出てしまってもいいのだろうかと小さく呟きながら、錠を開け、外に出た。
 夜の暗黒さが、身を切るようにして気持ちいい。
 もう一枚上に羽織るべきだったかしらと思いながら、気づいたときにはもう家の敷地から出てしまっていた。
 飛び出すような勢いがありながら、いちいちの所作の抵抗を受け、見た目の上では、実にゆっくりと落ち
 着いた家出となってしまった。
 色々と無視して、壊すようにして怒りに身を任せたはずなのに、その動作はすべて穏やかで、そっと労り
 守るような事ばかりのものとして為されてしまう。
 寒くたっていいのに、冷たいほどに残酷なほどに、この身を切り刻んでくれればいいのに。
 玄関の扉を蹴り付けることもしなければ、声を荒らげる事も無く、ただ淡々と、外に出ただけ。
 みんな壊れてしまえばいいのに。
 でもそう望んでいるのは私。
 誰かに壊して貰うことを望んでいるだけの私。
 私はそうして無防備なまま、いつも通りの自分のままに、外に飛び出てしまった。
 外套を持ってこようかしら。
 忘れたくせに。
 全然いつも通りじゃ無い。
 この寒さで上着を忘れるなんて、普通じゃあり得ないのに。
 こんなにも興奮しているのに、それなのに、どうして私は・・・・・
 怒りによる震えと寒さによる奮えがひとつに繋がっていく。
 自覚無き怒りと、意味のあり過ぎる寒さが私を突き動かしていく。
 外套で身を固め戦闘という名の家出を行う覚悟が無いだけなのよ。
 寒さで身を刻まれてしまえと念じながら、外套を求めている馬鹿馬鹿しさ。
 どうしても、矛盾してしまう。
 ボロボロの滅茶苦茶になって外へとさらなる衝動のままに飛び出すのか。
 しっかりと着込んで外に何かを求めにいくのか。
 そのふたつがせめぎ合い、そして決してひとつのこととして溶け合うこと無く。
 
 日常に、喰われてしまう。
 
 けれど。
 その日常は、静かに乱れている。
 じりじりと綿密に複雑に、細かな計算がぞくぞくと為されている。
 私の中に生じる矛盾をひとまとめに回収する、その日常という名の不可思議なまやかしを破るために。
 
 気づいたら、祐巳様の家が、頭の中に浮かんでいた。
 その家の中に祐巳様がいるのかどうか、全く確認せずに。
 
 
 
 ◆
 
 電柱の影法師が見えない。
 すっかり夜。
 まったくもう、嫌になってしまいますわ。
 寒いし、お腹は空くし、足も痛くて、本当に私は一体なにをやっているのかしら。
 どこかを目指していないで歩くということが、こんなにも不自然なものだなんて、思いもしませんでした。
 夜道をひとりで歩くことの危険よりも、その不自然さのせいで、誰かに途中で出会うことが不安でしたわ。
 出来ることなら、この世の中から夜道に歩く人をすべて消し去って欲しい、なんてことを考えながら歩い
 ていても、かえって、そのあまりの人通りの少なさが悲しくなってしまったり。
 そんなどうでも良いことを考えながら歩いていました。
 別に、それで気が紛れるとか、そういうことのために考えていたのでは無くて、なにも考えずに歩くという
 ことの不自然さに耐えられなくて、ただあれこれと考えてみただけです。
 考えて 考えて
 それで答えが出ないことに安堵して
 答えは出ていますのに。
 答えって、なにかしら。
 わからないわ。
 綴り出された言葉が宙に浮く。
 私はその言葉の尾を掴みながら、軽快に引きずられていた。
 答えとの夜の散歩。
 持て余していたようでもあり、この状態こそを求めていたようでもあり。
 まるで、足元に雲が湧いてくるような、この私自身の浮遊感だけが此処にはあった。
 
 こつこつこつ
 ひたひたひた
 
 靴底が魅せる靴音と、靴の中の空気を舐める足音が、疎ましく、また暖かい。
 既に理屈を考える暇潰しのラインからは外れ、支離滅裂という言葉の無意味さを感じていた。
 ほっといても、理屈は全部繋がっているのよ。
 私がそれを認識するかしないか、ただそれだけ。
 ただそれだけと、そう一足飛びで、その言葉だけを頼りに、今また百メートルほど歩いていた。
 思考の循環、循環と言っておきながら、いつまでも戻るスタート地点が見えてこない不安な道行き。
 家がみえます。
 これは、私の家では無いの?
 答えはとっくの昔に出ている。
 辿れども辿れども、見える風景は新しいものばかり。
 家出をしたのは家に戻るため。
 それは初めから、決まっている。
 いつまでも途切れない、無限の循環。
 答えはとっくの昔に出ている。
 靴音と足音の速度が速まっていることに、今更ながら気づいた。
 容赦の無い速度は、既に家を出たときから始まっている。
 迷いながら、彷徨いながら、なにかを探したり探すことを否定したり、ずるずるとしっかりと歩を進めていた。
 
 あの家は、誰の家?
 
 見知ったはずの道行きの散歩が、いつのまにか前人未踏の探検に変わっていた。
 いつ変わったのだろう。
 それとも、そんな変化はあったのだろうか。
 上着を忘れたのは、寒さに身を切り刻まれたのは、なにか目的があっての事だったのかもしれない。
 もしかしてそれは、上着を着込んで、新しい未知の奥地への旅路に赴く自分と出会うためだったのか。
 私は、私を暖めたい。
 寒くて、冷たくて、だから上着を忘れて・・・・・・・・
 私は、私を暖めたくて。
 私を暖めるのは、別に私でなくても構わない。
 初めから、最初から、探検を為すための、そのための無垢な散歩があっただけなのかもしれない。
 玄関のドアを蹴破らなかったのは、この愚かな破壊的で臆病な散歩をこそ破るためだったのかも。
 私はそう考えた。
 考えて、考えて、考えた。
 答えが、出ない。
 全く、答えが出ない。
 私の描いた私の姿のままに歩こうとしても、それとは一切関係無く、私の足はひた走る。
 止まらない、止められない、止めたくないのに、止まらない。
 瞳の裏に正体不明と札書きされた涙が張り付くのを、必死に引き剥がしながら、私は胸を押さえた。
 
 
 ああ   悔 し い
 
 
 言葉になんて縋り付きたく無いのに、私はこのどうしようもない歩みを止めるために、言葉に頼らざるを
 得ないなんて。
 自分に身を任せたいのに、その事自体は恥じてはいないのに、どうしても、それで置き去りにされるなに
 かを抱き締めずにはいられない。
 そのなにかは、言葉や理屈などでは無いわ。
 言葉や理屈は、そのなにかを支えるためにこそあるの。
 なのに、そのなにかを支えるものが、言葉や理屈でしか無いことが、堪らなく、悔しい。
 饒舌に礼儀正しく上品に言葉を操って魅せても、それがどんなに体に染み込む想いに満ちた言葉で
 あっても、それがそうであればあるほど、その体と言葉の充実自体が、なにかを私から毟り取っていって
 しまう。
 この私の異常な歩みは、まさにその略奪行為なのかしら。
 でも、そうは思えなかった。
 むしろ、この歩みは、本当に正体不明の・・・・・前人未踏の・・・・
 私の中のなにかを守るための・・・・・
 綺麗に優しさを纏った言葉が、愛しくまとまる体と抱き合っているのを見て、私は怒りに駆られた。
 嫌いじゃないのに・・・・ふたりとも大好きなのに・・・・愛しているのに・・・・・・
 私を 置いていかないで
 
 
 
 その自分の呟きに対する激怒が、私の歩みを、豪快無惨にへし折った。
 
 
 
 やっと止まった・・・
 そうほっとしてついた溜息が、小さな文字で一杯に縁取られているのがわかる。
 怒りそのものが、その震えそのものが、他のすべての私の揺れを収めてしまった。
 未熟なのよ、どうしようもなく、私は。
 未熟なのよと固く胸に呟いて結んで、そして色んなものを切り捨て毟り取り、そのまま小さく生きてしまう
 事にこそ、なにか確かなものを感じてしまう、そういう女なのよ。
 私にはその私がみえている。
 みえて、みえて、死にたくなるくらいに、みえているのよ。
 私には、捨てて良いものなんて、なにひとつ無いのに。
 それなのに、自分の弱さに逃げ込んで、弱い等身大の自分のままに強く生きようとしてしまう。
 その落ち着きが、安堵が、それだけが私を生きさせてくれると、信じられないくらいに固く思い込んで。
 弱さを否定して強がることと、弱さを自覚して強くなろうとすることは違いますのに。
 そして愚かなことに、私はこの、今も感じている、それらの私に対するこの反動としての激怒でしか、
 その強く逃げ切ろうとする私を止めることが出来ないのですわ。
 色んなものを捨てようとする自分に怒る事しか出来ないのです。
 色んなものを愛してその愛のままに深く沢山生きていくことが出来ないのです。
 だから、怒る事しか出来ない自分の虚しさに負けて、結局のところ、自分は色んなことを捨てずには
 生きられない弱い人間なのだからと、そのまま弱く生きる自分に強く自信を持ってしまう。
 それは、自分の弱さを本当は認めていないのよ。
 弱さを自覚して弱さを克服して強くなる、そのためにある弱さというものの本質から目を背け、その事実
 を否定して、弱いままの自分が生きることこそ強いと、そう、強がっているだけにしか過ぎない。
 だから、平気で色んなものを切り捨てることを正当化出来てしまうの。
 いいえ、違うわ。
 
 私はそうやって、自分が既に此処に存在して、沢山の物達と豊かに繋がっているという、その事から
 目を背ける、そのためにこそ、そうする自分を正当化するためにこそ、この怒りにこそ反応するのよ。
 
 私が本当に、本当に一番悔しいのは、そこなのよ。
 怒りと悔しさは違うの。
 私は、悔しい。
 そうやって、淫らな自己正当化をしていることを隠して、自分がやっていることは正しいと、これが人間
 として誠実なことなんだと、平気で真面目な顔で思える自分の、その悪魔のような思い込みが。
 私は、私と繋がっているものに対して、誠実でありたい。
 そのためにこそ強くなりたいだけなのに、いつも私は論理だけを取り出して、いつのまにか自分に対して
 誠実にありたいという、なによりも不誠実な自分を正当化してしまう。
 そしてその不誠実な誠実が、自分の滅びにも繋がっていることを感じてしまう。
 私は逃げたいのよ、死にたいのよ、みんなのためにと唱えながら、そうして美しく死ねる自分のために、
 ただこの豊穣で残酷な他のもの達との繋がりの世界から目を背けたくて。
 全然強くなんかない、全然、全然、弱くないなんてこと無いじゃないの!!
 矛盾しているのよ、私はいつも平気で矛盾しているのよ。
 ずるいのよ、卑怯なのよ、自分がみんなから目を背けたいくせに、逃げ出したいくせに、みんなから
 目を背けられることは怖くて、だからみんなのために自分の命を投げ出してまで戦えるという、そんな
 無様な粋がりを魅せて、そうして吐いた自分の醜い言葉だけを見つめそれに縋り付き、そしてすべてを
 その言葉とその言葉を吐かずにはいられなくした、そのみんなへの憎悪を胸にしっかりと隠して魅せる、
 その無言ですべてを背負って消える恐ろしく身勝手な生き様を晒して、そしてみんなに優しく看取られて
 美しく消えて生きたいだけなのよ。
 これのどこに、誠実さがあるっていうのよ!
 
 みんなのことを憎んでいるくせに、憎まれるのが怖いから、愛しているなんて言っちゃって。
 みんなのことを愛しているくせに、愛されるのが怖いから、憎んでいるなんて言っちゃって。
 
 逃げてばっかり。
 逃げて、逃げて。
 こんなに・・・・
 こんなに・・・・・誠実な言葉と優しい体を愛しているのに・・・・・
 どうして私は・・・・・その私の本当の愛のままに、本当に生きようとしないのよ・・・・・
 私は・・・自分を愛しているのに・・・・
 この世界に、自分よりも愛しているものなんて無いのに・・・・
 私のまわりには、こんなに沢山の自分達がいるのに。
 父の父自身の自分、母の母自身の自分、祥子お姉様と優お兄様のそれぞれご自身の自分。
 そして・・・・
 祐巳様ご自身の、自分。
 大切な大切な、皆さんの自分と私は繋がりたいだけですわ。
 いえ、繋がりたいとか繋がりたくないとか、そんな私の意志とは関係無く、もう私達は繋がっていますもの。
 マリア様の愛の下で、ひとつひとつの自分は繋がっています。
 私は、その私と繋がるすべてのものの自分を愛しているだけなんです。
 この世に私の自分だけがある、なんていうことをどれだけ言葉で彩ろうと、私はそんな言葉もまた、
 私が肌でそのまま感じている、他の方々のご自分への愛のために使います。
 哲学、というのかしら?
 私はそういうものも、皆さんと楽しくお話出来るのであるならば、贅沢に使うことを躊躇いませんわ。
 それで、皆さんが皆さんご自身の自分のことを大切に愛することが出来るのならば、その哲学の
 いち論法は、その私も含むそれぞれの自分を楽しく生かすための方便として、とても有効なものになる
 のだと思っています。
 
 
 気づけば私は、そんな事を考えながら祐巳様の家の近くまで来て、祐麒さんと出会い、そしてそのまま
 祐巳様の家に上がり込み。
 挙げ句の果てには祥子お姉様も御親友の方々さえも入られたことの無い、本当に前人未踏の祐巳
 様の部屋にまで居座り。
 自分の思考内容を、礼儀一般と礼儀の本質についての事に置き換えて、長々と、かつさりげなく、
 出しゃばらずに、かつ饒舌に、そっと折り紙を折るように、こうして今、祐巳様の食卓を囲む団欒の中で
 、ひとりうきうきと静かにはしゃいでいた。
 笑ってしまいますわ。
 こうして、歩きながらしっかりと社交の話題を考えて来たんですもの。
 その話題内容の実践として、偶然祐巳様の家の近くまで来た風を装い、そして祐麒さんにエスコート
 をして頂き、そのまま当然のように不意の客として振る舞い、そのまま人としてあるべきままに振る舞う。
 そのすべてが、とてつもなく楽しいと、確実に完全に予感しながら、私は夜の中を歩いて来た。
 上気している。
 こんなに、こんなに、興奮していますわ、今の私。
 ひとつひとつの祐巳様の仕草が、まるで気になりませんの。
 当たり前のように、普通のままに、私はいち訪問者として、その形式に守られていましたから。
 私は、私の気持ちに対して、思い切り不誠実になってやりましたわ。
 上辺だけの社交辞令だけの、それだけの付き合い?
 それのどこがいけませんの?
 思い悩み苦しみ藻掻き、そして誠実なるままに祐巳様の事だけを想い、祐巳様の仕草に一喜一憂
 し、そのたびにまた苦悩し、そして散々乱れ切った自分の陶酔を抑えるために力を振り絞る、どうして
 そういうことをしなければ、祐巳様に対して誠実では無いと言い切れるのです?
 私は、そう言うのは嫌です。
 だから私は、思いっ切り、軽く薄っぺらにやってやりましたわ。
 祐巳様は、どうやら私のその軽薄な建前ぶりが、なにかをその裏に隠してのゆえだと、勝手に勘繰って
 同情してくださっていたようですけれど、私はそんなものはどうでもいいです。
 
 軽佻浮薄だろうと、今の私にとっては、この社交辞令こそが愛しいのです。
 
 
 今夜は私、上品に想いと愛を込め、静かに深く祐巳様との社会的繋がりを受け取りに参りましたの。
 
 
 建前がなんですか、嘘がなんですか。
 関係無いじゃありませんか。
 誠実を盾にして、本音と真実だけでしか祐巳様とお会い出来無いなんて、私はそんなのは嫌です。
 だってそれでは、祐巳様とお会い出来る回数が減ってしまうじゃないですか。
 私は、祐巳様とお会い出来るあらゆる可能性を、切り捨てることなんてしたく無いのです。
 今夜の私は、お恥ずかしいことですけれど、荒れていました。
 荒んでいた、と言ってもいいでしょう。
 でも私は、それを祐巳様に癒して欲しい、冷たくなった私を暖めて欲しいと、そう願う私を許せません。
 嫌いなんです、そういうのは。
 でも。
 
 
 それが嫌いだという理由が、祐巳様とお会いする事自体を否定することには、繋がらないのです。
 
 
 私はただ両親と喧嘩して、家を飛び出た。
 そして偶然祐巳様の家の近くまで来たので、夕食時の訪いの失礼を許して頂いて、お邪魔させて頂い
 た。
 ただ、それだけ。
 そして勿論。
 それを口実にして、ぞっくりと癒され暖められることを目的になどしません。
 私は、この口実としての言葉に敢えて縋り付き、誠実に美しくその言葉のままに、本当に社交的に
 振る舞ったのです。
 なにも求めず、ただ言葉のままに。
 求めているくせに、求めることが怖いから、言葉に縋ったのでしょうか。
 いいえ、違います。
 
 
 
 ただ求めることだけで得られるものよりも。
 言葉を盾にして、なにも求めずにいる方が、ずっとずっとその求めているものが沢山得られるからです。
 
 
 
 私の社交辞令は、主体的。
 求めないのは、求めているから。
 それは、求めても得られないから求めない、ということとはっきりと対立する。
 ただ目の前のものから綺麗に逃げるために目の前のものに尽くすズルさは、目の前のものとの繋がりを
 長く求め続けるための逃避に尽くすズルさに変換することが出来る。
 
 
 そして・・・・・
 
 
 
 
 
 
 だからこそ、今、この瞬間の大切さが、焦りを以て輝いてくる気がするのです。
 
 
 
 
 
 
 悲しい。
 自分の弱さが、弱さに勝てないことが悲しい。
 社交的な祐巳様との繋がりと向き合うことが出来たなら、私は・・・・
 私は、より一層、そういったものとは隔絶した、祐巳様との深い繋がりを見つめたい。
 社交的な繋がりしか持てないことが悲しいだなんて、絶対思いません。
 だって、あんなに楽しかったんですもの。
 だから私は、あの楽しさを糧にして、自分の悲しみと向き合い、戦っていきたいのです。
 祐巳様とああして普通に会える自分のことが、私は好きです。
 演技だろうとなんだろうと、祐巳様と接し続けることが出来る自分のことを誇りに思います。
 だから私は、この誇りを胸に抱いて、自分の求めるものを、高く激しく勝ち取っていきたいのです。
 長く戦い続けられるからこそ、一瞬の勝負にすべてを賭けられる。
 長く戦う覚悟があるからこそ、その一瞬への賭けが逃げでは無いものに変われる気がします。
 私には、沢山の私がいます。
 両親の両親自身の自分と繋がる私、祥子お姉様達のご自身の自分と繋がる私。
 そして、祐巳様の祐巳様自身の自分と繋がる私。
 もっともっと、私はいる。
 
 私は、無念なんです、可南子さん。
 色々な想いを抱えていても、それでもしっかりと私を運んでくれる足が私にはあります。
 そして今は、私を運んでくれるのは、その私の足だけでは無いと思っています。
 可南子さんや乃梨子さんが、私のことを想ってくださっているのはよくわかっています。
 そして私は、そのひとつひとつのおふたりのその行動の内実が、私の意に沿うものでは無く、またその事を
 おふたりが全く考慮してくださっていないことに悲しみを感じています。
 私を、私独りで戦わせないで欲しい。
 おふたりは、私のことを信用してくださっています。
 瞳子は私達の想いに応えられない女では無いと、私達のやっていることのわからない奴では無いと、
 そう嬉しい言葉で私の誇りを刺激してくださいます。
 でも、私は、その独りで強くおふたりのために戦うことが、大切な私の自分のためにはならないことも、
 重々感じているのです。
 もし私とおふたりが逆の立場だったら、私は間違い無く、おふたりと同じく、おふたりの誇りを刺激する
 ような、挑発的なことをするでしょう。
 そしてもし、それでおふたりが私の言葉を受けて、独り努力し続けるだけになってしまったら・・・・・・
 
 無念なんです、それが。
 どうしようもなく。
 
 みんな独り独り消えていく。
 ちょっとやそっとの攻撃には耐えられてしまう、その強さがあるからこそ、みんな周りを見捨てる弱さに
 走ってしまう。
 みんな自身の自分を、そして私自身の自分を省みず、傷だらけになって消えてしまう。
 私はそれが無念でなりません。
 私自身がそういう愚かな道を選択しようとする人間だからこそ、そう思うのです。
 このまま綺麗に誇りのままに、祐巳様とお会いして、そのまま笑顔でお別れしても、それは・・・・・
 逆に私と祐巳様の道を閉ざしてしまうような気がするのです。
 それも、決定的に。
 どうして・・・
 どうしてかしら・・・・
 私は、色んなものに運んで貰うことが出来るはずなのに・・・・
 私は、可南子さんと乃梨子さんに祐巳様の元まで運んで頂くことも出来るのに・・・・・
 ああ・・・・・・
 
 
 大粒の涙が、瞳を真っ直ぐに埋めていく。
 それを引き剥がそうと必死になる、私の中のなにかこそが・・・・・・
 
 
 呆然と、
 呆然と、
 
 ただ真っ直ぐに泣いているのが、みえた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

私は

 
 

祐巳様と一緒に

 

この夜道を歩きたいだけなのに

 
 
 
 
 
 
 循環がみえる。
 祐巳様の家の向こうに、私の家がみえる。
 新しく見えた道行きの中の風景もまた、私の中では家までの道筋にしか過ぎなかった。
 私はあの家に帰ります。
 元来た道を戻ること無く、ずっとずっと新しい道を刻みながら。
 循環してる。
 なにも変わらない。
 変わらないのよ。
 怒り。
 悔しさ。
 悲しみ。
 無念。
 どこかすべて、遠く消えていく。
 こんなに新しいのに。
 こんなに愛しいのに。
 どんなに変わらなくてもいいのに。
 それなのに。
 祐巳様がいなくちゃ。
 なんにもならないの。
 
 祐巳様・・・
 祐巳様・・・・・・
 どうして・・今日は私を運んでくださらないの・・・?
 どうして志摩子様と一緒にいらっしゃったの・・・?
 どうして可南子さんも一緒に呼ばせたの・・・?
 これでは、お誘いを断ることで求められたものも、もう求めることは出来ませんのに。
 断ることも・・・だから・・・・出来ませんわ・・・
 志摩子様への配慮、可南子さんへの配慮、祐巳様への配慮。
 祐巳様だけへの配慮なら、どうとでも利用可能でしたのに・・
 どうしようも・・・・ありません・・・
 可南子さんさえいなければ、それでも自分に鞭打って断ることもできたかもしれない・・・・
 怨めしいです・・可南子さん・・・
 ああ・・・嘘・・・・嘘しかもう吐けない・・・
 祐巳様・・・・・祐巳様が・・・・・・私のことを・・・・
 先日のあの夜の訪問を・・・・祐巳様は・・・一体・・・・
 私は気力を失っていました。
 戦う力が大きく削がれていることを、可南子さんの強引な話の進め方を聞きながら感じていました。
 もう駄目なんだ・・・・・・そう・・・・どこか諦めて・・・・・
 段々と、弱い強さに閉じられていく。
 静かなひとつの溜息で、すべてを自分の胸に背負い込んでいく。
 言葉が解かれていく。
 それをどこか、他人事のように眺め始めている、私がいた。
 
 
 
 
 
 
 なにかが、決定的に間違っている気が、した。
 
 
 
 なにかって、なんだろう。
 そう純粋に、自分に問うていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                      ◆ 『』内文章、アニメ『マリア様がみてる4thシーズン』より引用 ◆
 
 

 

-- 090212--                    

 

         

                                  ■■ 友の語る陣 ■■

     
 
 
 
 
 『ずっと身寄りの無かった俺でも、もう、投げ出していい命では無い。』
 

                          〜続 夏目友人帳・第六話・夏目の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 夕暮れの向こう、家の庭。
 軋む家の悲鳴が、耳を潤す。
 攻撃的な植木の影が、家と庭を隔てている。
 家の奥のその黒い異臭から、その庭は断絶されている。
 遠い、遠い、その庭への一歩が、ほんのひとつの言葉で繋がっている。
 家は嫌。
 たとえそんな感情が無くても、庭への扉は、その一言でいとも簡単に開かれる。
 家が好き。
 その一言は、暴力的。
 家と庭の境界線を取り払い、たったひとつに混じり合う、巨大な住処へと換えてしまう。
 庭を持たない家に、根無し草の庭を造り出してしまう。
 
 とんとんとん
 
 庭を棒きれで叩く。
 言葉は無い。
 なにも言わなければ、いつまでもいつまでも、この夕闇の中の庭はずっとある。
 その庭の中にいるときは無言。
 言葉はいらない。
 黙々と、庭に陣を布く。
 家から持ち出した、黒ずんだ家系図の片割れを、土に刻む。
 燃え滓のような、陣の設計図が掌の中で、汗を吸ってより頑丈に体に染み付いていく。
 焼け爛れた炭団が熱を保ったまま放置されるように、庭の陣は脈々と息づいていった。
 この陣を増やそう。
 もっと沢山書かなくちゃ。
 神話でも無く、伝説でも無く。
 ただ。
 私の営みとして。
 ただ
 ただ
 書こう
 
 
 
 ◆
 
 教室の一番後ろの席の、その後ろにあるロッカーの中身が気になっている。
 ずっと教室の前にある黒板を見つめながら、他の人達の背中を見つめながら。
 私の本当の世界は、もしかしたらあのロッカーの中にこそあるのかもしれないと、今日は五回考えた。
 その思考の回数だけ頬に触れた掌の感触が、私が今どこにいるのかを教えてくれた。
 頬杖が、重い。
 頬杖が好きだ。
 その言葉が開く扉はあるんだろうかと、次に触れるべき体感を探しながら、そう考えていた。
 木造の部分とコンクリ壁の境目に、なにかが見えそうな気がする。
 教室って、変だ。
 廊下はぎっしりとコンクリートで固められているのに、教室の中には木がいくつも存在している。
 なのにそれは全部、コンクリートと同じ無機質なものとして、その扱いを受けている。
 今にも木造のロッカーの中から花の群れが湧き出てきそうな、机の端々が芽吹きそうな、そんな感じ
 すらあるのに。
 教室は生きている。
 生きているのに、いくつかのコンクリートを埋め込まれることで、死者とされている。
 楔だ。
 境界なんだ。
 無機質な言葉で、教室という言葉で区切れられ、囲まれているんだ。
 この陣の中にしかみえないものが、だからある。
 
 途端に、噎せ返るような息苦しさを覚えた。
 けれどそれは一瞬よりもさらに短いほどに、私には幻覚ほどに儚い体感だった。
 既にもう、その息苦しさは、過去の体験に貶められていた。
 もはや本当に息苦しさを覚えたのかすら覚束無い、まるで一年も二年も経ってしまったかのようだ。
 
 
 
 自分でなにを言っているのかわからなくなる。
 自分が考えていることがどういうことなのか、まるでわからない。
 生兵法は怪我の元、とはまさにこのことよ。
 正直私は、祖父に貰った不思議な図を描いていたら、とても恐ろしい目に遭ったという、ただそれだけ
 の現実に踊らされているにしか過ぎない。
 
 そして、呪いを受けた。
 
 呪いなんて、笑っちゃうわ。
 でも、私はその描いた図の中に、あり得ないものが息づいているのを見てしまった。
 私が作った、その特殊な陣の中には、恐ろしい異形の妖怪がいた。
 妖怪なんている訳無いでしょと、そう歯牙にもかけなかった私が、その妖怪を見たんだ。
 見えないはずのものが見えてしまった、じゃあ、呪いなんて馬鹿馬鹿しいものだって、あるのかもしれない。
 目の前の妖怪は、今より三百六十日のうちにもう一度自分を見つけなければ、お前を喰うと言った。
 そして、これから私に名を呼ばれた他の人の十三番目までも一緒に喰ってやると。
 妖怪が見えたという事実と、妖怪が其処に存在しているという事実は、イコールじゃ無い。
 たんに私は幻を見ただけなのかもしれない。
 でも、私はその怖い妖怪と出会うまでに、散々その幻を愉しんだのよ。
 ああ、妖怪ってやっぱりいるんだ、不思議だな、面白いなって。
 その前はただ、変わった図形を書くのが面白かっただけの、ただの子供の遊びだったんだけど。
 でも私の家系は陰陽師だったらしく、それに祖父もよく妖怪を見てみたいと言っていたのを思い出して、
 そうしたら、その図を描いて妖怪を見ること、そしてなによりも妖怪の存在を認め触れ合うことは、
 とても大切なことで、それが行えることが嬉しくなった。
 
 だから、その呪いを、その存在を認めずに嘲笑うことは、私にはどうしても出来なかった。
 
 実際に妖怪が存在しているかどうかは、関係無い。
 私にはそれが見え、ひどくリアルな幻としてでも、其処にその存在を感じることが出来るの。
 投げ出すことは、逃げ出すことはいつでも出来た。
 妖怪の呪いを信じなければ、それでお終いなんだもの。
 祖父から貰った図形の記された紙を燃やしてしまえば、私はなにもかも忘れられる気がした。
 私は、妖怪っていうものがなんなのか、全然知らない。
 子供の頃に読んだ、それこそ漫画じみた、キャラクターとしてしか知らない。
 民俗学的な、そういう学問的な妖怪の捉え方なんか、欠片も知らない。
 その上、私には霊感みたいなものもまるっきり無くて、あの図形を描かなければ、妖怪を見ることは
 絶対に出来なかったし、その存在を感じることも完全にゼロ。
 自分で言うのもなんだけど、私はごくごく普通の、女子高生だった。
 ゲーム感覚で妖怪を呼び出して、それを見て、ただ愉しんでいただけなの。
 
 そして・・・
 いつか・・・・その妖怪達と話をしてみたいって、思っていたのよ。
 
 だから私は、呪いを信じた。
 今考えれば、その怖い妖怪が実際に存在して、呪いをかけるという力も持っている奴だとしても、
 そいつが呪いを本当にかけるのかかけないのかは、また全然別の話ではあったのかもしれない。
 その妖怪の存在を信じることと、その妖怪の言っていることを信じることは別の事だし、その妖怪が
 言っていることを信じなければ、その妖怪の存在を認めることにはならない、って訳じゃないし。
 逆に、存在を認めるなら、そいつが言ってることが本当なのか嘘なのかを、他の人間に対するそれと
 同じように確かめることはするべきなのかもしれない。
 だけど・・・
 私は・・・・怖くて・・・
 ううん・・・・
 
 その妖怪が恐ろしい形相で、お前を喰ってやると言って、それがこんなにも怖いということこそに、
 私のその妖怪の存在を感じていたから・・・
 
 私はなにも知らないし、なにも出来ない。
 陣が無くても妖怪が視える霊感のある人でも無いし、妖怪学みたいなものも修めていない。
 でもね。
 だから、これが、妖怪なんじゃないかなって思ったのよ。
 この怖いっていう私の感情が、私の作った陣の中に、本当の私の妖怪を生み出したんだって。
 私の恐怖の感情が妖怪を顕す、我が家の伝統ある不思議な陣。
 でも、恐怖そのものが妖怪の正体なんかじゃ無いんだわ。
 私の中のなにかを見つめさせるためにこそ、きっとその恐怖はあったんだって思うの。
 だから、私はその私のなにかを見つめるためにこそ、その恐怖は必要なものなんだって思った。
 たぶん、妖怪自体は恐怖じゃ無い。
 だって、可愛い妖怪も、面白可笑しい妖怪も見たことあるし。
 怖いのは、呪い。
 呪いは、言葉。
 楔。
 なにかとなにかを区切り境界線を引くことで、それぞれのそれぞれが在ることを認識させるモノ。
 怖い。
 自分の外に広がっているものが、怖い。
 そうなのよ。
 
 自分の外に広がっているものの存在は、イコール恐怖という存在そのものじゃ無いってことよ。
 
 世の中には怖いものもいる、ってことじゃ無い。
 世の中には、恐怖という言葉を持つものもいるってだけの話で、そいつ自身は恐怖そのものじゃ無いって
 ことよ。
 だから私は、その恐怖という言葉を語りたい。
 そいつと、自分の中のなにかと向き合いたい。
 恐怖という言葉が、私とそれらのものを繋ぐ扉を開く気がする。
 私には妖怪がそのまま見えるだけで、意味のあるなにかとして視ることなんて出来ない。
 だから本当に、私はそのまま妖怪にぶつかっていく。
 その助けになる図を、私は私の祖父から受け継いだ。
 私は私の出来ることを、なんて、そんなことは言わないわ。
 
 
 『私、必ず勝つわ。 必ず勝たなくちゃ。』
 
 
 私の命が懸かっている。
 知らず知らずのうちに名を呼んでしまったかもしれない人の命が懸かっている。
 そして、名前を呼んでしまった夏目君の命も。
 夏目君にも、私の命が懸かっていることを知られてしまった。
 誰にも知られたくなかったのに。
 誰の名前も呼ばないように、誰にもこの事を知られないように、ずっとずっと黙っていたのに。
 この一年間、ほとんど誰とも喋らなかった。
 辛いなんて言葉を忘れてしまうほどに、私はただ必死だった。
 私には、誰かの名前を呼ばずに喋るなんてことを、完璧にこなすことは無理だった。
 だから喋ること自体を閉じ込めて、私はただずっと・・・・
 誰かと喋りたい、喋らないと、今日一日になにも無かったようにしか感じられない・・・・
 あるものが無かったことになっちゃう・・・・
 楽しいことも悲しいことも、些細なこともとんでも無いことも、話すに足りないくだらないことも沢山・・・
 私は毎日色んなことを自分の知っている以上に感じているのに・・・
 言葉にしないと、形にして顕さないと、それはそのまま消えちゃうの・・・・
 だから、この一年、誰かと話したくて、堪らなかった。
 だからつい・・・・
 
 つい、夏目くんを見て、夏目くんの名前を呼んでしまったの。
 
 
 なにかが、わかったような気がした。
 
 
 
 あの妖怪はきっと、私に名を呼ばれるために存在しているのかもしれない。
 私はそう、陣の前で語ってみる。
 私は誰かと喋りたいだけの、普通の女子高生。
 色んなことを膨大に感じて、感じすぎて、それをとてもじゃないけど、自分の貧弱な言葉の世界だけ
 では補い切れずに、だから、他の誰かとお喋りすることで、その補い切れなかったものも全部フォロー
 していきたいの。
 くだらないことだって、つまらないことだって、そういう私の出来事自体への評価とは関係無く、そうした
 出来事の存在自体は変わらなく在ったんだから。
 みんなみんな、抱き締めたくて。
 ひとりじゃ出来ないから、一緒に手伝って欲しくて。
 だからきっと、この呪いも、私が感じた大切な出来事のひとつ。
 そして同時に、そのことを私に知らせる、私の中のなにかが魅せてくれた、それは愛しい存在なの。
 ずっとずっと、お喋りしたかった。
 ずっとずっと前から、あなた達と話したいと思ってた。
 
 
 あなた達妖怪を見て感じた、この膨大な私の想いを、話したくて。
 一緒に、この世界を見て感じて、語り合いたくて。
 
 
 
 私が見た怖い妖怪も、かけられた呪いも、それが幻覚や幻想だとしても、私はなら、その幻を大切に
 したい。
 だってそれが、私の愛しい流儀なんだから。
 その怖い妖怪の存在も、呪いも、それ自体が私の生きる作法そのものなのよ。
 だから、勝つ。
 絶対にあの妖怪を見つけて、私とみんなの命を救うんだ。
 それがきっと、あの妖怪と出会う意味。
 名前を呼んでしまった夏目くんと、沢山話して、一緒に探して、一緒に戦って。
 楽しい・・・・こんなに楽しかったのは、久しぶり
 ああ・・・・
 
 
 これが、私の陣なんだって、思ったわ、夏目くん。
 
 
 
 
 語り、語る。
 幻と真実を兼ね備え、様々な境界線を描きながら、私はひとつひとつの陣を布く。
 その中に浮き出てくるものたちはみんな、沢山の表情を浮かべていた。
 喜び、悲しみ、絶望、希望。
 そして、戦い。
 陣を布くは、戦うため。
 他の人達や妖怪達と斬り結び、笑い合い憎み合い、わかり合う、そのために必要な私の流儀。
 私は私の陣を語り、その陣の中に見たものを大切に語るの。
 私にとって妖怪とこの陣は、とてもとても大切なものだと思う。
 色んなことを感じている、私の世界のことを、私は放っておけない。
 私が生きる世界を語れば、その陣はどんどんと豊かに幸せなものになっていく気がする。
 それが幻だってなんだって、同じことだと思う。
 私達はそもそも、沢山の幻想を持って、語ることでひとつひとつ丁寧に境界線を引いてるんだもの。
 滑稽だって思ったことはあるわ。
 私なにやってんだろって、普通に思ったわ。
 私はあんまり占いとかは信じない性質なんだけど、妖怪の存在を信じてるんだから同じよねって。
 私はそこで一応、でも私は妖怪を信じてるとかじゃ無くて、ほんとに妖怪をみてるんだもん、信じる信じ
 無い以前に、妖怪は本当に其処にいるんだもん、と言い訳するんだけど、それって同じじゃんと
 いつも簡単に切り返すことが出来る。
 占い師の言うことを真に受けて頭から信じようと、自分が主体的に前向きに生きるために、それに必要
 なエッセンスとして占いを使おうと、同じでしょ。
 その占いを聞いているのは、妖怪を見ているのは、そしてそれらを信じたり信じなかったりするのは、
 他ならない私自身なのだから。
 
 
 正直、私の目の前に夏目くんが本当に存在しているのか、私にはわからない。
 夏目くんの姿が幻じゃ無いなんて、そう感じていても、言えない。
 
 そう。
 私がこんなに夏目くんの存在を激しく感じていても、こんなに完全に夏目くんはいると言い切れる私が
 いても、それは変わらない。
 
 
 でも、私は夏目くんはいると、夏目くんは確かに存在するって思う。
 夏目くんがいることを、万の言葉を使って語るよ。
 私の陣の中に、夏目くんが顕れる。
 それは、私が夏目くんの存在を肌で感じていようと感じてなかろうと、同じこと。
 私は占いは信じてない。
 私は妖怪を信じている。
 占いの当たり外れを実感したことは無い。
 妖怪の存在を肌で感じたことはある。
 でも、妖怪と人間は違う。
 私は。
 妖怪を人間と同じように感じることが出来るのは、私の描いた不思議な図の中でだけなのだから。
 それが私の引く境界線の物語。
 そして、占いの物語を、妖怪の物語を、そして人間の物語をまた別にそれぞれ書いていく。
 そう。
 
 
 
 それが、私の陣。
 
 私の陣の中には、すべてがそうして顕れる。
 
 本当は存在しないかもしれない、占いも、妖怪も、人間も、すべて等しく現れるの。
 
 それぞれの物語を持つがゆえに言葉で区切られている、けれどそうして存在しているそれらのものが
 あることは、すべて同じ。
 
 
 存在しないものなんて、無いのよ。
 
 
 
 夕暮れに居並ぶ言葉の庭。
 小さく引かれた世界を識る陣。
 夕陽の下に、誰かがいる。
 その人の前に立った。
 敬虔な気持ちになる。
 胸の中に一本の筋が奔る。
 震える息が喉を詰まらせ、ほんのちょっとの振動で、声が堰を切ったように迸る。
 誰かのためにでも無く、私のためにでも無く。
 生きてるから。
 私と。
 誰かが。
 それだけでなんだか。
 
 とてもとても、夕陽の厳かしさが、冷たく瞳を澄ましていってくれる気がした。
 
 
 『私、五組の多岐透。』
 多岐にわたるの多岐、透明の透をとおると読ませるの。
 私は自分の名前が好き。
 色んなものに手を伸ばして触れて、そして透き通るほどに色んなものを見つめたい。
 我が家の名字と、そして両親がくれた名前をちょっぴり誇りに思う。
 そしてウチは、陰陽師の家系。
 今更物々しく陰陽師の真似事をするつもりは無いけれど、でも私は、その私の家系がそういう職に
 付き、そういう仕事をしてきたということで、今の私の在り方に少し安心を得られるの。
 それは血の運命とか、そういう事じゃ無い。
 むしろ逆に、世の中には妖怪がみえて妖怪相手に仕事をするというものがちゃんと存在していて、
 おまけにそれがうちの家系がそうだったってなって、そのおかげで少しだけ自分のやっていることに自信が
 持てるようになった。
 頑張ろう、ううん、頑張れるんだって、頑張っていいんだって、だから私・・・・・嬉しかった・・
 うん・・・
 だから、夏目くんの命のために、私の命のためにも頑張れる自分に自信を持てる。
 だから私・・・あの妖怪を探すわ
 私はみた。
 恐怖を感じた。
 だから目を逸らさない。
 恐怖から逃げない。
 だから。
 
 
 目を逸らそうとする自分をよく視て。
 恐怖から逃げ出そうとする自分をよく感じたい。
 
 
 『どうか、力を貸して欲しいの。』
 
 
 迷惑かけてごめんなさい。
 私のせいで、私のせいで、私のせいで・・・・・・・
 私の中の罪悪感は膨大過ぎて、死にそうなくらい。
 でも・・・・
 その罪悪感の重さ苦しさを滅ぼすために行動したって、それは逆におかしい気がして。
 私は、赦して欲しいんじゃ無い。
 罪は消えないし、私はそれを一生背負ってく。
 でもだから。
 だから迷惑かけてしまった人を救うために、私はその人の手助けだって求めなくちゃいけない気がした。
 罪悪感は果てしない。
 でも、その罪悪感はあくまで私自身の問題で、それは迷惑かけてしまった夏目くんには関係無い。
 だから。
 お願い、協力して。
 罪悪感は消えない。
 でも、罪悪感のあるなしに関係無く、私にはしなくてはならないことがある。
 
 だから私は陣を布く。
 
 あの妖怪をみつけて、呪いを取り消させる。
 それは私の罪滅ぼしゆえの行動なんかじゃ無いわ。
 
 
 『名前を呼んでしまって、ごめんなさい。』
 
 『でもどうか、力を貸して欲しいの。』
 
 
 
 
 そう陣を語り描いた私の中に、無いものがあることを確信して。
 
 まだ私には、覚悟が足りない。
 だからその私を、よく見つめたい。
 
 期日が迫りつつある中で、焦燥に駆られ、ひっそりと罪悪感に逃げ込もうとし始める、
 その弱い私を、あの不思議な陣の中にみつけるために。
 
 
 
 語りたい
 
 喋りたい
 
 
 もっと もっと
 
 いっぱい
 
 
 
 話したい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                             ◆ 『』内文章、アニメ『続夏目友人帳』より引用 ◆
 
 

 

-- 090210--                    

 

         

                                 ■■ 変革期とかね ■■

     
 
 
 
 
 ごきげんよう。
 
 
 先日、最近見つけたお酒専門のちっちゃなお店に行ったんですけどね。
 ええ、年末年始に空気を読み過ぎたせいで、すっかりお腹回りが絶望的になってしまうくらい飲み過ぎて
 しまってたので、しばらく禁酒してたんですけど、もう2月だしいいかなということで、お腹関連のことは
 迷宮入りのまま、ちょっと新規開拓的に、新しいお店見つけようかな、ということになったんですよ。
 それで、たまたま知り合いの知り合いというたぶん分類するとそういう感じの人の紹介を、知り合いの
 人の方がされたんですけど、その人がなんとまぁ私が日本酒好きだということを覚えていてくださり、
 そのまま私にそのお店を間接紹介してくださったのですね。 この場を借りて御礼申し上げます。
 
 でね、行ってみた。
 まぁ、普通の個人経営みたいな小規模なお店なんですけどね、店名忘れましたけど、結構お酒
 がぎっしり置かれてて、あれここ天国みたいな、なんかそのお店の中に入るだけで幸せなような、
 これはあれだ、入店料取っていいよみたいな気分になってきた訳ですねいや飲んでないよ酔ってないよ。
 パラダイス。 まさにそれ。 個人的に。 ありがとうございます。
 
 ただまぁ、色んな種類のお酒があって、特に洋酒の蒸留酒系のレパートリーはかなりなもので、
 今度聞いたことも無い名前のお酒に挑戦してみようかなと思うくらいに充実していたのは良いのです
 けれど、でもね、お酒の種類は多くても、銘柄の数自体はそんなに多くは無かったのですよね。
 日本酒も、その辺りに売ってるありきたりなものばかりで、目新しいものも特に無くて、そういう意味で
 は、銘柄を選ぶということでは、ちょっと物足りないところではありました。
 ウイスキーはそこそこありましたけど、ブランデーに至っては普通の葡萄原料のとカルヴァドス(林檎原料
 )のがそれぞれ一個ずつしかありませんでしたしね。
 
 そしたらですね、日本酒の棚で面白いのを見つけた。
 「お米100%」「米だけのお酒」と書いてあり、さらには成分表にも米と米麹としか載っていないお酒が
 ありまして、これはいわゆる純米酒と言えるものだったんですね。
 ところが、ちっちゃく「このお酒は純米酒の規格には入りません」みたいなことが書いてるじゃーないですか。
 これ、以前も別のお店で同じようなのを見たことがあるんですけど、これって一体どういうことなの?、
 お米100%で、醸造アルコールも糖分も酸味料も入ってないのに純米酒じゃ無いって、なにこれ詐欺
 じゃん、みたいなことを考えた訳です。
 そうするとこう、知りたくなる。
 これって一体、どういうことなん?
 ということで、お店の人に訊いてみたんです。
 
 紅い瞳:
 「あのすみません、これ、米100%と書いてあるのに、純米酒の規格には入らない、というのはどういう
  ことなんでしょうか。 普通の純米酒との違いを教えて頂きたいのですが。」
 
 お店のおばちゃん:
 「あー・・・・これ・・・・、はいはい、ちょっと待ってね。」
 
 と言って、おばちゃん奥に引っ込んだ。
 え、これってそんなにすぐに答えられないものなの?、とこう、少し不安になる。
 で、奥からおばちゃんの代わりに出てきたのは、なんと茶髪のおねーちゃん。
 今時茶髪だからどうこうという訳では無いのですけど、そのおねーちゃんは茶髪だけど、なんか目が据
 わってるっていうか、ぶっちゃけすごく気合いが入ってる意味での茶髪が良く似合うおねーちゃんだったん
 ですよね。
 なんか今にも煙草すぱーってやりそうな雰囲気だった、と言えばわかりますでしょうか。
 こうなりますと、私の不安は別の種類に変わっちゃう。
 でもですね、奥から出てきたときはどうしたもんかと思ったのですけれど、よく見たら、そんなに雰囲気
 強くないといいますか、古い言葉で言えば、ヤンキーっぽい雰囲気はあるんですけど、根は真面目とい
 うか、応対に誠実さが感じられたんですよね。
 ぶっきらぼうではあるけれど、別に怖くは無いし、よくよく見れば普通なんです。
 アニメや漫画のキャラクターで言えば、とらドラの(男ですけど)竜児とか、或いはもっと近いのは、
 よつばと!の虎子でしょうか。
 だから逆にほっとした、というと現金な私ですけれど、いやオタクな私が神懸かっているだけなのかも
 しれませんけど(笑)、そうなると、普通にまた訊く訳ですね。
 
 紅い瞳:
 「あ、先ほども他の方にお訊きしたんですけど、これ(「純米酒の規格には入らない」という部分を指し
  て)って、どういう意味なんでしょうか?」
 
 おねーちゃん:
 「これですか・・・・・これはですね、色々と規格があって・・・まぁ・・同じお米100パーセントでも製法が
  違うと名前も違ってしまうんですよ。」
 
 これが実質的な答えなんですよね。
 これで充分です。 というか予想の範囲内の答えです。
 たぶんこの人は、なにかお酒関連の資格をお持ちのような感じで、色々と詳しいのでお客の質問の
 対応係になっているって感じでした。
 で、だから、もっと教えて頂きたいと。
 失礼ながら、この程度の回答ならさきほどのおばちゃんでも出来るような気がしたので、せっかくならば、
 お酒の知識をお持ちの方から詳しいお話をききたいと思ったのですね。
 私の経験上、酒店の人はお酒大好き人間かつお酒を語るのが大好きな人が男女問わず多いので、
 まぁ無理はないかな、というノリでお尋ねしてみたんです。
 
 紅い瞳:
 「製法が違うと言いますと?」
 
 おねーちゃん:
 「ええまぁ・・・・色々あるんですけど・・・・・・作り方が違うんですよね。」
 
 紅い瞳:
 「色々と言いますと? いえ、あまりそういうの詳しくないので、ちょっと知りたいと思いまして。」
 
 おねーちゃん:
 「はぁ・・・私も最近色々勉強したんですけどね・・・ええ・・まぁ・・そうですね・・・要するに製法が・・・・」
 
 紅い瞳:
 「この場合、純米酒とその名の付いて無い米100%のお酒の製法の違いはどういう風に・・・・?」
 
 おねーちゃん:
 「そうですね・・・この場合も・・・その・・・・・上手く言えないんですけど・・・色々と・・・製法が・・・・・」
 
 
 な ん に も 情 報 増 え て な い よ ね 。  byあさぎ
 
 
 大爆笑。 
 笑いを堪えるのに必死でした。
 よつばに折り畳み自転車の説明してる虎子とほぼ同レベル! ←よつばと!第6巻参照
 リアル虎子!
 たぶんこの方的にはわかっているんだけど、私の要求に真面目に答えようとしてくれてるんだけど、
 その分逆にちゃんと詳しく説明しようとするあまり、上手くまとめられなくて、でもお客に答えないといけな
 いという意識もあるから、結局その「製法」という言葉に行き着いちゃうのでしょうね。
 私もそういうのありましたよ、わかるわかる。
 もっともこちらの質問も誘導の仕方もまずかったっていうのもありますけど、なんか上手く答えられないのに
 ちゃんと考えてる、そしてちゃんと答えようとしているその人を見てたら、もうちょっとその様子をみてみたい
 という悪趣味に駆られましてね、ええ。
 
 まぁあまり続けるのもひどいと思いましたので、その辺りで切り口を変えてみたりもしましたよ。
 製法はともかくとして、では味的には変わらないのでしょうかという風に訊いてみたりしたら、そうですね、
 味はほとんど変わらないですね、製法が違うだけです、と答えて頂いたので、そうですか、じゃあ、
 こちらの普通の純米酒とこれとでは差は無いと?、と訊いたら、今度は、そうですね、やっぱりこちらの
 純米酒の方がしっかりとした味がありますので、買うんでしたらこっち(純米酒)がお勧めです、って。
 
 仰りたいことはわかるんですけど、ばっちり矛盾してます、おねーさん。
 
 もう可笑しくって、どっちでも良い気がしてきて、せっかくなので純米酒の方を買わせて頂こうかとも
 思ったのですけれど、懐的な事情もあるのですが、それよりも罪なことにもうひとリアクションを期待して
 しまい、つい、純米酒では無い方をカウンターに持っていってしまったのです。
 勿論、説明してくださった方がカウンターに立っているのを見て、です。
 
 紅い瞳:
 「先ほどはどうも。 ちょっと今月は懐が寒くて、せっかくですけど今回はこっちでお願いします。」
 
 おねーちゃん:
 「あどうも。 そうですね、こっちも結構美味しいですよ。 私はこっちのが好きなんで。」
 
 
 そう言ってくださるお気持ちは嬉しいのですが、説得力がゼロです、おねーさん。
 
 
 今日はお話ありがとう御座いました、いえそんな大したことは、と最後に言葉を交わして、
 そのお店を後にした紅い瞳でした。
 こういう買い物はとっても好きな、私。
 
 お酒は呆れるほどに不味かったです♪
 
 また来ようっと。
 おしまい。
 
 
 
 
 ◆
 
 改めまして、ごきげんよう、紅い瞳です。
 
 といきなり挨拶もそこそこに小話を始めてしまい、すみません。
 別に他にネタが無かった訳じゃないのですけど、なんだか久しぶりにヒットしたので、つい脇目も振らずに
 書いてしまいました。 かっとしてやった。今は反省している。
 ということで、他にもネタはあるんですけど、今日はこれで終了です。 おい。
 せっかくマリみての感想を初祥子様で書いた記念で、なにやらぐずぐずぐだぐだと語ってしまおうかとも
 思ったのですけれど、まぁいいや過ぎたことはという、日記の存在意義を根底から破壊するようなこと
 を思いついて平然としてしまっているので、今回はまぁいいや。 ←あとで後悔することになるパターン
 
 他にはあと、アニメ狼と香辛料の第2期が夏放送開始に決定、ということくらいでしょうか。
 つか、ネタそれしか無いじゃん。
 
 
 ということで、日記のボリュームを下げたいお年頃な私的には、このままみなみけ&まりほり感想へと
 移行します。
 あと出来ればみなみけ&まりほり感想のボリュームも下げたい。
 つか、テンション下げたい。  ←お疲れ気味
 
 
 
 んでは、みなみけ感想から。 第5話。
 あー・・・やっぱしこの作品を評するとしたら、緻密なギャグ作品、ですね。
 間の取り方もそうだけど、それぞれの言葉の伏線の張り方が絶妙です。
 これは確かに、すかっと豪快に笑いたい人には人気無いっていうの、わかります。
 ある程度理屈で考えないと確かに分からないとこありますしね。
 わからなきゃわからないままで終わっちゃうし。
 でも逆に、その理屈が分かったときの、その緻密さの豪快さには、はっきり感動的に笑えます。
 や、誤解無きように言っときますけど、理屈自体が笑えるなんて、そんなアホなことはありませんよ。
 勿論、夏奈なんかは屁理屈的な繋がり自体が面白いというのもあるんですけど、でもそれは笑いの
 入れ物のひとつであって、中身じゃ無い。
 その「理屈」をこの「タイミング」で、そしてこの「理屈」に直接繋げるのか、それをこの子が言うのか、
 とか、要するにそういうところの妙が、とにかく観る人の常識的観念というか、むしろ体感かな、それを
 揺さぶってくれるところが、面白く、かつなにより楽しい気分にさせてくれるんですよね。
 正直、今回はそういったポイントが多すぎて、ツッコミ解説不能wほんと無理ww
 まずは理屈を理解すると、それでどこが笑いどころなのかはわかりますし、で、その笑いどころがわかった
 ら、あとはそれに身を任せてみると、どうしようも無く笑えてきます。
 ということで、今回のみなみけ感想はこんな感じで。(ぉぃ)
 
 
 んで、まりほり第5話。
 
 んー。
 そろそろ感想やめようかな。
 だってさぁ、洒落になんないもの、これ洒落とかそういうレベルで、ちょちょいっと筆の先で書き綴るだけ
 で済むもんじゃ無いもの、無理、これはもう無理、書けっこない、最初はほら勢いで推して参るみたい
 なノリでいけたかもしれないけどさ、もう誤魔化しきかんよこれ、これはもう無理だ。
 手に負えない。
 面白すぎる。
 面白すぎるっていうか、だから私はギャグアニメの感想苦手なんだって何度言ったらわかんのさ!!
 こんなの書けやしねぇよ、ああ書けんよ、書けはしまいよ。
 つかもうみなみけの方も無理を通り越して道理しか書けてないしね、うん。 
 ほんと、感想やめようかしら。
 別にこの素晴らしい作品に対して、私の拙い筆遣いが作品を汚すことになりかねないとか、そんなこと
 は欠片もありませんけどね、大体いかなる場合にも鼻血どばーなかなこさんに汚すとか汚れるとか
 言われたく無いですしね、むしろ私的には一緒に鼻血吹けない自分が申し訳無いって感じよ。
 ・・・・・なんなら、血で感想書いてやろうかしら、赤○ン先生も真っ青にいっちゃおうかな。
  
 むずいね。
 この決断はむずい。
 書くか、鼻血吹くか、それが問題だ。 (違)
 
 うーん。
 ということで、なんかね、どうしても書かずにはいられない、っていうか気づいたら書いてた、ってときだけ
 感想書くことにさせて頂きます。
 気づいたら(色々な意味で)鼻血吹いてたとかしてたら、書きません、てか書けねぇ書いたら血みどろで
 流血で惨事になるだけですので。 (たとえばなにも書けずに悶々とパソの前で俯くとか ぇぇぇwww)
 まぁあれですね、こんな風にみなみけ&まりほり感想みたく単独犯(あれ?)だから書けないのかも
 しれませんし、まぁ、うん、普通のアニメ雑記的な感じで、他の作品と絡めてときどき意味不明なネタ
 振りとかをしていこうかなという、そういう前向きな感じで締めると良いのかもと思いますです。
 
 
 つか、ぶっちゃけ時間無いっす、そろそろ体力切れっす、無理っす。 (汗を拭きながら)
 
 
 
 という感じで、引き続きみなみけとまりほりは絶賛応援していきますので、そこんとこよろしく。
 むしろどんどん面白くなって、思い入れが高まりすぎたからこそ感想書け無くなっちゃった重すぎて、
 みたいな餓鬼っぽい紅い瞳のスペックの低さだけのせいですので、両作品とも紅い瞳内の価値は
 微塵も低下しておりませんということをここに明記させて頂きます、とずるずるといつまでも書いているの
 は感想を書かないとむしろ私の方こそが両作品に見放されてしまう気がしたりとか、感想も書いてない
 くせに好きとかいうなお前にうちの娘はやれんとか言われるのが怖いお年頃なだけなのかもしれないゾ。
 
 
 来週こそ、書こう。  ←色々と失格な人
 
 
 
 
 では、本日はぐだぐだながら、これにて失礼致します、お見逃しを。
 
 
 
 
 
 
 

 

-- 090208--                    

 

         

                           ■■マリア様のひたむきな一日■■

     
 
 
 
 
 『 楽しいわよ。 ふたりならきっと。』
 

                     〜マリア様がみてる4thシーズン・第五話・祥子様の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 人差し指が入るくらいの、ほんの僅かに開いた窓。
 窓にかかる淡いカーテンが、隙間風に触れて揺れている。
 静寂の衣擦れの音が、みえた。
 ふと、そのカーテンの囁きが、風によるものだけでは無い気がして、そっと、忍ぶようにして灯りを消した。
 真っ暗、にはならなかった。
 群青に溶けるような、白く浮き出た月光が部屋を満たしていた。
 開いた窓の、ほんの微かな空間から、特別に抽出された、月光の結晶が差し込んでいる。
 それはカーテンに触れること無く、けれどほんの少しだけ、その布地の温もりを纏って部屋に届いている。
 カーテンもまた、その月光には触れられてはいないのに、その白い光に誘われ、
 この部屋の中に向けて揺れ動いているのがみえた。
 足の裏の、絨毯のぬくもりを、感じた。
 肌が、しっとりと濡れた暗黒を、夜の姿を感じていた。
 たったひとつ指を動かして、部屋の灯りのスイッチを点けるだけで、この瞬間は終わってしまう。
 ゆっくりと腿の力が抜けて、頑強に体の重みにへばり付く、ふくらはぎこそが堪らなく愛しくなる。
 膝を折り、覆うようにして、足を抱き締める。
 そのまま、座り込む。
 膝を抱えるのが躊躇われ、ただ、足の甲をさすっていた。
 遠くに、先ほどまで座っていた椅子がみえる。
 それに座り、背筋を伸ばして窓の向こうの夜景を見つめる気には、なれなかった。
 かといって、思い切りベッドに倒れ込むことも出来ない。
 
 ひどく、中途半端。
 けれど。
 こうでなければ、駄目なように思えた。
 
 月明かりはどこまでも続いている。
 隙間風は途切れても、そのカーテンは揺れているように感じた。
 部屋の調度品が、その輪郭を失えば失うほどに、
 よりはっきりとその触れることの出来ない手触りを感じることが出来た。
 触らないのに、それと繋がっている感覚。
 薄くて甘い、月光が其処にある。
 背筋を伸ばすことも体を投げ出すことも、してはいけない。
 そんなことに傾ける力があったら、この中途半端で不自然な状態のまま、
 この部屋の中にへばり付いていたい。
 はからずも、緊張している。
 眠れないという以上に、眠りたくない。
 寝なくてはいけないのに、寝てはいけない。
 こんなにも、この瞬間は美しいのに、どうして流されるままに寝てしまおうとするのだろう。
 目覚まし時計というものはこの部屋には無いのに、それなのに予定通りの時間に起きてしまう。
 時間通りに起きることが出来てしまうから、目覚まし時計などというものの存在価値が無い。
 そのようにして自分を律してきたのは、他ならない私。
 なのに、そのせいで、私には不要なものが、随分と沢山出来てしまった。
 必要が無いから、私の部屋には沢山の無いものがある。
 私の部屋の中にあるもののすべては、私が利用価値を認めた、
 その利用出来る部分についてのみが、私の手に触れることの出来るものだった。
 
 それが、月光に当てられると、こうして優しく解除される。
 
 四角く区切られたこの家の中の一角が、厳かに鮮やかに、動き出す。
 ひとつひとつの器物に、息吹を感じる。
 窓の外から入ってくる風は、それらに与えるための新鮮な空気なのか、
 はたまた、部屋の中の調度品達の呼気そのものだったのか。
 誰にも私にもわからない、その夜の摂理が私の胸を小さく躍らせている。
 やめて、もうやめて
 
 囁きの中に秘めたその叫びが、嬉々としてその夜の吐息を抱き締めていた。
 
 少しだけ、眠い。
 このまま眠ってしまっても、この暖かい夜の気配に抱かれながらなら、良いのかもしれない。
 そのとき私は、自分がなにをしたいのかがわからなくなっていることに気づいた。
 この幸せな気持ちは一体なんなのだろう。
 目覚まし時計が、欲しい気がした。
 誰かにそれを買って貰いたい気がした。
 でも誰に?
 その問いに答えを出す、その私自身が買いに行く気が無いことだけは確かだった。
 少しだけ、眠い。
 煌々と高く黒ずむ窓の外の月影が、満遍なく押し寄せてくる。
 誰もいない部屋の冷たさが、明日の朝のぬくもりと繋がっているのがみえる。
 今、この儚い月光の中のぬくもりにくるまって眠りにつけば、
 きっと輝くほどに暖かい朝日にこそ目覚めることが出来るはず。
 訥々と微細に施す計算式が、夢の通い路を拓いていく。
 
 でも・・・・・・
 
 どうしてかしら、幸せの実感も自覚も、其処には無かったのよ。
 
 
 
 
 ◆
 
 震えている。
 ゆっくりと虚ろな鎌首を擡げるようにして、髪が乱れている。
 長く夜に溶けた髪の、ほんの少し先がまるでみえない。
 堂々と言葉を連ね、真っ直ぐに生きることが出来るのに、その中身が空であることからは抜け出せない。
 虚しくなどは無いのに、それなのに、充実することが無い。
 空のものが満たされようとするときに、その中に詰まったものが火のついたようにして暴れ出し、
 一散にして外に出ようとする。
 啾々と、夜着の下から染み出す、幸せの実感の尾を掴んで離さないと心に決めると、
 そのときに私が掴んでいるのは、決まって黒く乱れた髪の切っ先だった。
 幸せは、何処に行ってしまったの・・・
 目の前に開かれた、夜光の中の世界が、私には幻想のものとしか感じることが出来ない。
 幻覚よ、夢をみているんだわ
 ことことと音を立てて、今にも部屋中の器物達が歩き出しそうだった。
 いいえ、もう歩いているのかもしれないわ。
 そっと目を閉じるままに瞳を開けば、もう私には、その夢のぬくもりに触れることが出来る。
 豊かに満ちあふれる、命に満ち満ちた時間が、滔々と謳いながら広がっていた。
 その中で、覚束無くも、なにものにも頼らずに、ひっそりと目を輝かせて蹲っている。
 嬉しかったわ
 なによりも
 なによりも 嬉しかったわ
 夜風が少し冷たい。
 夜着の肌触りが暖かい。
 それでもまだ、幸せの実感が無い。
 もしかしたら、幸せなんて無いのかもしれない。
 いいえ、もしかしたら、今のこの状態こそが幸せなのかもしれない。
 ただ私は今のこの幸せに酔ってしまって、触れることが出来ないからこそ、実感が無いだけなのかも。
 幸せは、ちゃんと其処にある。
 そう、呟いた。
 目の前の世界は、消えない。
 延々と、延々と、廻るようにして、この白い世界は続いていた。
 
 嗚呼・・・・
 
 違うわ・・・・・・
 
 
 これは、幸せでは無いわ
 
 
 だって
 
 
 私が、いないもの
 
 
 
 その幸せの世界の中で、生きている私自身が、いないのだから。
 
 
 
 
 
 ◆
 
 
 気づいたら、朝になっていた。
 いつのまにか、ベッドの中に入って、特に乱れたところも無く、安息な目覚めの中にあった。
 窓もきっちりと閉められている。
 時間は・・・・・・
 予定時刻より、随分と早かった。
 どうしようかしら・・・・
 私はそもそも、時間ぴったりに起きることが出来るだけで、その時間丁度に目が覚める訳では無い。
 つまり、時間前に目が覚めて、起床する時間までベッドで目を瞑って待っている。
 その間に、小刻みに眠っていることもある。
 そのベッドの中の時間が不安で、私はそうして寝たふりや実際にもう一度眠ることで、
 辻褄合わせを行っているのよ。
 勿論、目が覚めてしまったのだから、ベッドから起きあがろう、ということも無かった。
 今日は、いつにも増して、起床の時間までが遠い。
 こんなにも早く目覚めてしまったことは、初めてだった。
 目覚め自体はこんなにも安らかだというのに、これからの長いベッドの中での時間が、
 私からこの平安を奪っていく。
 予定時刻通りに完璧に起きるための、毎朝のこの準備時間が私を成り立たせていた。
 
 それが本当だと、思うかしら?
 
 私は、常々、その自分の解釈がとても嘘のように聞こえていた。
 というよりも、私はただ毎朝ベッドの中で、そのようなことを考えながら、
 起床までの時間を過ごしていただけにしか過ぎない。
 逆にいえば、私の不安感は、毎朝ベッドの中で、こうした愚にもつかないことを考えようとする、
 その面倒な自分と出会うことに由来しているのかもしれないと、そういうことでもあるのかもしれないわ。
 目覚め自体は、いつも常にすっきりとしている。
 そして、ベッドを降りる頃には、漠然とした不安が付きまとっている。
 事実は、それだけなのよ。
 目覚めの安心感と起床の不安感の、それぞれの因果関係は実は全く不明。
 もしかしたら、ただ時間の経過自体で自然にそうなっているだけなのかもしれないのよ。
 今朝は既に、こういったことを三十分に渡ってベッドの中で考えている。
 まだまだ、起床予定時刻までには時間がある。
 
 裏を返せば。
 
 この安心感が、不安感に転じるまで、まだまだ時間がある。
 
 目を瞑りながら、部屋の姿を想像する。
 無色に満たされる、ささやかな朝が広がっていく。
 ゆっくりとその息吹の炎を掻き消されていく、調度品達の消灯の時間。
 これから彼らは眠りに着く。
 憧れを胸に、ゆっくりと広げた宴の影を片付ける部屋の中の、微かな流れを感じるわ。
 なにも無くなる時間がやがて始まる。
 空白では無い、静寂な一日が始まるの。
 目を閉じていてもわかるわ。
 そしてだから、目を開けた。
 起きよう。
 起きてみよう。
 重く、かつ、するりと抜けるようにしてベッドから滑り落ちる足。
 絨毯の手触りが冷たくて、思わず夢の続きを見ているかのよう。
 まるで、深夜にこっそり起き出して色々と悪戯をする子供の気分だった。
 それなのに、その気分を微笑み混じりの苦笑で迎える私がいたわ。
 馬鹿馬鹿しいとは思わずに、そっと子供のような自分を見守るようにして、身支度を調えて部屋を出る。
 こんなに体はするすると動くのに、私の頭の中には、こうして幼い私がまだずっといる。
 一瞬、折角早く起きたのだから、たまにはゆっくりと落ち着いた朝を過ごそうかとも思った。
 もっとじっくりと朝を味わい、この時間にしか感じることの出来ないものに触れてみたくなった。
 昨夜の静寂な幸せの手触りを、今度こそ感じたい。
 身繕いと、着替えと、食事を済ませ、そしてまた、
 家を出るまでの時間を、あの寝静まった部屋で過ごしてみたい。
 みえなかったものが、みえるかもしれない。
 必要では無かったものを、手に入れることが出来るかもしれない。
 
 でも其処に、私はいない。
 
 ベッドの中で起きるまでの時間を愉しんだところで、それはなにも変わらない。
 どんなに早く起きても、その時間の長短でしかその幸せの幅を決められないというのならば、
 それはきっと、いつまでも幸せを掴めずに、そのまま幸せを見つめる幸せに囚われているというだけ。
 早く起きたのだから、今度はそのまま、早く家を出よう。
 いつも通りの所作に身を任せ、いつも通りのリズムとスピードで行うべきを行い、
 そしていつも通りの生活の型を活かして生きていく。
 やることはすべて一緒。
 その主体的な私こそが、此処にいるということを、私はわかったような気がしたわ。
 私以外のなにかに頼って、そして私は私のままに生きていく。
 無理をして、自分だけで夜や朝を愉しんでも、それだけではなにかが決定的になにかが足りないのよ。
 そのとき、私は、やっと、目覚まし時計の必要を、感じたわ。
 私は、目覚まし時計に頼ることが出来なかったのよ。
 目覚ましのアラームを信じて、それまでぐっすりと朝が来るという事実さえ忘れた、
 その夜の中にずっと居続けることが出来なかったのよ。
 私には、私しか、信頼するものが無かった。
 いいえ、正確にいえば、体というもうひとりの私のことを信頼していたのね。
 自らを律して、規則正しく型に填めて正確に生きる訓練を続けたことで、
 私の体は勝手に動いてくれるようになっていた。
 そういう意味では、矛盾するようだけれど、私はちゃんと、私の体という、
 私以外のなにかに頼ってはいたのよ。
 でも。
 
 私の体は、私なのよ。
 
 だからずっと、違和感を禁じ得なかった。
 私はずっと私の体に頼っていたからこそ、頼ることしか出来なかった愚かな自分を嫌悪して、
 なにかに頼るということを畏れていたわ。
 自分の体に縋ってしまう自分がいて、だからこそ、自分ですべてやらなくてはいけないのだと思っていた。
 だから、目覚まし時計には頼りたくは無かった。
 そして、自分の体ならば、放っておいても、
 本当は時間ぴったりに目覚めてしまうことも知っていたから、私はいつもそれに怯えて、
 予定時間よりも早くに目覚めようと必死になっていたのよ。
 夜宴の静寂の中に生きられなかったのは、朝寝坊して、
 自分の体に支配されることを恐れていたがため。
 そして、それを無意識にも自覚したいたからこそ、
 私はその夜の中でなににも頼らずに生きるために藻掻き、
 その上折角至った予定外の朝の時間の中での生活に縋ろうとしようとしていた。
 
 だから、それは間違っていると思ったわ。
 
 もっと落ち着いて、そしてもっと大きく構えてみようと思った。
 そうしたら、なにも考えなくても動いてくれる、私の体の愛しさに気づいたの。
 これは私の、大切な財産なのよ。
 私が両親から頂いた、そして沢山の方々に育てて教えて鍛えて頂いた、大切な私なのよ。
 部屋の器物達の、その必要な部分にのみしか触れることが出来ないがゆえに、
 私は必要の無いものを手に入れることが出来なかった。
 けれどだからこそ、私の部屋には、無い物があるという事実があることを知ったのよ。
 私の体には、沢山の必要が犇めいていて、それは実に精密に稼働して私を生きさせている。
 でも、私が必要としているものと、そうして私の体が生存するために必要としているものの絶対量には、
 とてつもない差があるのよ。
 私の認識出来ている必要など、ほんの僅か。
 その僅かな必要だけで、私がこうして生きている訳では無いのよ。
 私は、私の知らない沢山の必要達によって、支えられて生きているの。
 そして私は、必ず、まだ手にしていない必要があることを認識しているの。
 だから私には、なによりも、私が認識出来ていない必要を手にして、それを元手にして、
 私がまだ手に入れていない必要なものを、それをこそ求める必要があったのよ。
 必要の無いものなんて、無い。
 私はただ、それが必要なものであるということを、知らないだけ。
 そして、知らないがゆえに、それを必要とすることが出来ない私が此処にいるだけ。
 
 
 求めよ
 さらば、与えられん
 
 
 家を出る予定の時間の、その遙か手前の今此処に、私はいる。
 そして、鏡の中には、すっかりと綺麗に準備された、私の姿が映っている。
 いつもと変わらない、準備時間の長さ。
 変わったのは、起床時間と出発時間だけ。
 新しい、私の今日が、玄関の扉の向こうに続いているのがみえたわ。
 
 
 叩けよ
 さらば開かれん
 
 
 ああ、目覚まし時計が欲しいわ。
 起床時間も、出発時間も変えずに、この瞬間をいつか、迎えてみたい。
 なにものにも頼ることの出来る、そんな私に頼りたい。
 扉を僅か開けた瞬間、その隙間から差す柔らかな陽光が玄関を満たしていく。
 さらさらと、止まるようにして流れ込む、朝の凪いだ風が暖かい。
 そのぬくもりを胸に深く吸い込んで、大きく一歩を踏み出した。
 違和感は無かったわ。
 悪戯気分にも、お客様気分にもならなかったわ。
 私の世界が、広がっていた。
 主人公は私、その世界の中に幸せを見つけるのでも無く、掴みにいくのでも無く、
 その幸せの中で生きるために。
 特別でないただの一日が、当たり前のようにして幸福に広がっていく。
 いつもとなにも変わらない、ごくごく普通の朝の出立。
 でも、陽の光の濃度は少し、まだ薄い。
 なんだか、寂しい。
 ひとり、なのね。
 でも。
 
 
 
 
 あなたとの待ち合わせ場所まで向かう時間の、その孤独こそは、
 
 
 なんだかとても、愉しんでみたいと思ったのよ、祐巳。
 
 
 
 
 
 
 

 『知っていることの多さなんて、付き合いの長さが違うのだから、当たり前でしょう。』

 
 
 
 
 
 
 そうよね。
 私はまだ未熟。
 私の知っているものだけがすべてでは無いことなんて、当たり前なことなのだわ。
 そしてだからこそ、そうだからこそ、私がこれまでの人生の中で知ってきたものの価値も、
 ちゃんと輝いていくのよ。
 祐巳、そうでしょう?
 あなたより、私と付き合いの長い人は沢山いるわ。
 でもだからって、あなたの知っている私の姿の価値は、なにひとつ下がったりなどしないのよ。
 あなたしか知らないことも、沢山あるでしょう?
 私にだってあるわ。
 私は祐巳の事を知っているけれど、でも祐巳のご家族の方よりも多くを知っているとは言わないわ。
 だからって、ご家族の方に嫉妬することは全く無いのよ。
 私は私の知っている祐巳しか知らないからこそ、私の知らない祐巳に触れることは叶わない。
 でも、だからこそ、私には私の知らない祐巳がいるということを、知ることが出来たのよ。
 だから、私の知らないその祐巳のことを、私は知ることが出来る可能性が出てきたと、そうは思わなくて?
 長い、長い、時間をかけて、私は祐巳のことを知っていきたいの。
 そのために、私は知らない祐巳がいることを知って、とても嬉しいのよ。
 私の目の前にはあなたがいる。
 関係の在り方は変わっても、あなたが其処にいることは、ずっと、ずっと変わらない。
 あなたのご家族に、そして、あなたがこれから作る妹にも、私は嫉妬なんかしないわ。
 勿論。
 あなたがいずれ持つであろう、新しい家族にもね。
 それよりも私は、その方々に、あなたのことをもっともっと教えて頂きたいの。
 娘としての祐巳のことを、姉としての祐巳のことを、そして・・・・
 ええ。
 頼りにしているのよ、私はそうして、あなたの周りの人達のことを。
 
 
 だから私も
 
 
 あなたを含む、私の周りのすべての人達のことを、頼りにしていける人間になりたいと思ったのよ。
 
 
 
 私の世界は、厳然として、圧倒的に目の前に続いている。
 これっきりということなんて、たとえそうしたくたって、本当は無いのよ。
 だから・・・
 楽しいのね、こんなにも。
 嬉しかったわ
 なによりも
 なによりも なによりも 嬉しかったわ
 
 
 祐巳。
 
 あなたに会える今日があるからこそ、その前夜があんなにも楽しく、そして寝てしまうのが惜しかったのよ。
 
 今日のことが楽しみで楽しみで、そう楽しめる自分が楽しくて、つい眠りにつくのが遅くなってしまったの。
 
 そして。
 
 目覚めた今日の朝。
 
 あなたに会える嬉しさが、なによりも私に幸せな目覚めを与えてくれたのよ。
 
 
 だから、ちょっと無理をしてしまったの。
 心配かけて、ごめんなさいね。
 まだまだ、なにかを求め続けることの訓練が必要のようね。
 だからまだまだ、これからもずっと、私は他の人の手助けを必要としていくわ。
 勿論あなたにも。
 あなたとなら、やっていける気がするわ。
 だからあなたも、自信をお持ちなさい。
 私はこうして、あなたのことを求めているのよ。
 あなたにしか出来ないことは、沢山ある。
 そして、それを私に与えられる機会は、まだまだこれからもあるわ。
 焦っては駄目。
 でも、たとえ焦ってしまっても、大丈夫。
 それでも私は、あなたの目の前にいるのだから。
 私もだから、何度でもその機会のために挑戦できる。
 失敗するたびに、また助けて貰うわね。
 
 『もっと、楽に考えればいいのに。』
 『祐巳とは、これっきりという訳じゃないんだもの。』
 
 
 
 この安心が、安息が、きっと私に無理をさせてくれる。
 熱く、激しく、そして、静かに、長く。
 
 
 
 
 
 祐巳と手を握り合いながら見つめた、この消灯前の一握の時間が、
 
 堪らないほどに、ただ、愛しくて。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                     ◆ 『』内文章、アニメ『マリア様がみてる4thシーズン』より引用 ◆
 
 

 

-- 090206--                    

 

         

                                  ■■ 友の名は海 ■■

     
 
 
 
 
 『寂しいな。 なにも残らないなんて。』
 

                          〜続 夏目友人帳・第五話・霧葉の言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 胸に手を置くと、音がする。
 掌で感じるその音が途切れることは無い。
 薄く引き伸ばされた雪が雲を覆い、やがてゆっくりと包み込むようにしてそれは溶けて落ちてきた。
 空が、高い。
 もう秋などとうの昔に終わっているはずなのに、こんなにも空が高いだなんて。
 秋だけに空が高くなる訳でも無く、本当のところ、秋の空が高いと思ったことはあまり無い。
 秋は空が高いと言われているから、高いということになってしまっている。
 こんなに高いのに。
 秋が過ぎ冬も深まって、ようやく空の高さに気づけただけなのかもしれない。
 秋も冬も、夏も春も空はずっとそこにあるのに。
 この空の高さは、秋からずっと変わっていないのかもしれない。
 本当は、空は高くないのかもしれない。
 なぜ、雨はあんな高い空から落ちてくるのに、体に当たっても痛く無いんだろうか。
 空は一体、どこにあるのだろう。
 疑問だけが湧いてくる。
 そして見上げた空には、いくつかの雲が浮かんでいた。
 あれが、雨を降らすのか。
 雲は一体、どこにあるんだろうか。
 ただただどこまでも突き抜けていく空。
 高く高く、広がっていく世界。
 その中でみつめたなにかは、一体なんなのだろうか。
 目の前のみえないはずのものが、視える。
 でも。
 それが何処にいるのか、わからない。
 
 俺は、それが無性に、知りたくなったんだ。
 
 
 
 ◆
 
 いつも万全とはいかない。
 無理をして、自分の体を見ないようにして、そのときに、体が動かなくなって。
 どうしたら、いいだろう。
 体なんか無くなればいいのに、だなんて思ったことは無いのに、自分の体のことを感じてしまうことが、
 感じずにはいられないことが疎ましく思えてしまうことはある。
 風邪をひいてしまった。
 塔子さん達に迷惑はかけられないという言葉に縛られて、塔子さん達に迷惑をかけたくないという感情
 が見えなくなってしまっていることに、なかなか繋がることが出来ないほどに、体がだるい。 頭も痛い。
 熱が出てきた。 うわ、これはちょっと駄目だ。
 目の前に困っている妖怪がいた。 助けよう。
 助けたいという気持ちがあるのかないのかわからない以前に、その気持ちを確認する気さえおきなかった。
 体が、みえない。
 熱に浮かされているのだろうか。
 そんな感覚は無いのに、こみ上げてくるなにか熱いものが、胸の辺りを頻繁にかすめていった。
 おい夏目、もうちょっと血を溜めて、コロっと逝ってしまうのもまた良いものだぞ、主に私のためにな。
 うるさいぞ先生、もう羊羹買ってやらないぞ。
 馬鹿者め、無理はするなと言うておる。 死ぬなら羊羹沢山買い置きしてからにしろよ。
 助けなきゃ、という義務感は、俺にはあまり無い。
 見捨てるのは忍びないという言葉はあっても、その忍びないというものは感情では無いような気がする。
 なんだろう、その言葉は。 なんだかひどく良く、知っている気がするんだが・・・
 友人帳がぴくりと反応する。
 亡くなった祖母のレイコさんが妖怪から奪った名前が記帳されている物で、俺は名を返してくれという
 妖怪の要求に応じてきた。
 そうだ、名を返そう。
 まだ目の前の妖はなにも言っていないのに、いや、もじもじとしてなにも言わないから、俺は都合良く
 訪問の理由を創造して、勝手に俺の動機にしたんだ。
 
 塔子さんの瞳の中に映る俺の姿が、一瞬だけ、みえた気がした。
 
 どういう訳か、友人帳は反応したのに、その妖怪霧葉の名前は記載されていなかった。
 どういうことだろう。
 俺は一体なにをやっているんだろう。
 違和感が肌を包む。
 寒気がした。
 重い、だるい、こんなに体は正直なのに。
 それなのに、どうして俺はこの重さだるさこそを糧にして、霧葉を助けようとするんだろう。
 答えだけは鮮烈に反応している。
 なのに、それを表す言葉がどこにも載っていない。
 パラパラと頁を捲り続け探し続け、そうして頁を繰ることに安堵を感じていた。
 不安とか悲しみを紛らわせているからだ、という言葉は既にみつけている。
 その言葉を諳んじたとき、その不安と悲しみに根差した頁に触れたときには、手が止まるようになった。
 でも、この胸の中の一冊の古びた本は、不安と悲しみだけで綴じられているものでは無かった。
 ところどころ止まれども、すぐにその頁を飛ばして捲り続けることは止まらない。
 不安と悲しみが特に無いのに、それなのにこんなに反応して頁を繰り続けている。
 不安と悲しみが無ければ、俺はこの胸の熱さと向き合うことも出来ずに、ただ体を見失い続けていく
 ことしか出来ないのか。
 塔子さんがみえる。
 わかるのに、みえない。
 いや、視えないんだ。
 不安も悲しみも無く、不満もなにも無く、ただ塔子さんのためになりたいと必死に足掻くことで、それが
 全部自分の行動の責任を塔子さんに押し付けているだけということも、わかるのに。
 決定的に、言葉が足りない。
 行き当たりばったり、ゆえに、知らないうちにわかっているものがわかっていないことのままに、何度も同じ
 過ちを繰り返していて、またそのことにも気づけないばかりか、本当にそれがなぜ間違っているのかも、
 行動した後の分析でもわからなくなってしまう。
 行動中はさらに、意識すらもしない。
 熱に浮かされている。
 みえているくせに。
 視てもいるくせに。
 その事実を否定して隠す自分をみつめることが出来たら、今度は平気でみえていない視えてもいない
 という、嘘以上のその自覚のままに振り回されてしまうだなんて。
 どっちなんだ、みえてるのかみえてないのか。
 
 
 そうしてやはり、延々と友人帳を繰り続ける安心に浸っている俺がいた。
 
 
 
 
 ◆
 
 はん。
 あのとき初めてレイコに会ったとき、わたしゃ感動したもんさね。
 ああ、なんて清々しく、なんて賢い人間なんだろう、ってね。
 妖怪は嫌いだって言ったくせに、その妖怪のためにそいつの大事なもんを取り戻して、その上これを返して
 欲しけりゃ道案内しろだなんて。
 『なんと性質の悪いっ!!』
 ああ、惚れ惚れしたよ、ほんとうに。
 あの笑顔にやられない私じゃないよ。
 レイコが妖嫌いなのはほんとさね、でもその妖に恩を売りつけたのはなぜだい?
 妖も人間も無い、けれど確かに妖と人間はいて、だからお互いにそれぞれ事情がある。
 だからレイコは、そのそれぞれの事情を考慮して、それで最も上手くいく方法を、ただ純粋に、そして
 一瞬に考えそして行動に移したのさ。
 妖を嫌いだって宣言したんなら、相手も人間は嫌いだという資格がある、だからそれに見合うように
 して、私にレイコを「憎む」口実もしっかり与えてくれたのさね。
 なんで嫌いだって言った奴の大事なものを取り戻すために、湖ん中に飛び込むんだよ、馬鹿じゃないの
 かい、おまけに勝手に飛び込んだ上に、その私の大事なものを質にして私を利用しようなんざ、これ
 だから人間は小賢しくて憎らしくて嫌いなんだよ、云々。
 ああ、本当に、惚れ惚れするねぇ。
 本気でそのレイコを憎む気持ちに染まったって、レイコはそれに見合うような対応をしてくれたのだからね。
 あんなこと、笑顔で自然にやられちゃ、私こそが馬鹿者だという事実を見つめない訳にはいかないよ。
 なんでこんなことを・・・とレイコの行動をみて考えて、それで答えが瞬時に出せないヒノエ様じゃ無いさ。
 『ふん、不細工な巨顔猫になんざ、わかってたまるかい。』
 
 レイコには、よくぶっ叩かれたよ。
 レイコはさ、私のことなんざ欠片も心配なぞしやしないのさ。
 レイコの大切なもののために、私が湖に飛び込んだって、レイコはあのすかした笑顔で、「ヒノエって真冬
 に水泳する趣味があったのねぇ、素敵よ。」と、たぶんほぼ確実にあっさりと言うだろうさ。
 だけどね、わたしゃそれをレイコの冷たさを憎む口実にすることも出来る上に、さらに憎んだ上でも、
 レイコのためと私のために湖に飛び込むことも出来るんだよ。
 勿論、報酬は要求するさ、レイコはあっさりと知らぬふりをしてやり過ごすに決まってるからね。
 レイコが逃げれば、私はどこまでも軽快にレイコを追っていくだけさ。
 そしてそのたびに、レイコに思い切り笑顔で殴られるのさね。
 報酬自体があろうとなかろうと、わたしにゃ関係無い。
 こうやってレイコと関わっていく、それがとても清々しくて、愉しかったんだよ。
 そのたびに、色んな障壁もあったもんだよ。
 でもね、正直そういったもんは、全部私らにとっては遊び道具にしか過ぎなかったよ。
 言葉? 妖と人間の関係? ましてや常識? 孤独? 愛?
 馬鹿馬鹿しくは無いさ。
 むしろなによりも大事なものだったからこそ、そういったものに囚われたくなかっただけさ。
 だからさ、夏目。
 私は、あの霧葉とかいう餓鬼にむかついたのさ。
 むかついて、むかつくことも出来る上に、だからこそレイコがこの餓鬼にしたことの意味がわかるのさ。
 たぶんほんとにレイコもこの霧葉の、優柔不断なくせに、やたらといろんなもののせいにすることだけは
 果断なところにむかついたろうし、例の笑顔のままの立腹状態で、思いっ切り悪意を持って霧葉に
 嘘知識を吹き込みまくったに違いないのさ。
 
 いやまったく、確かにレイコの奴はそういう奴だったな。
 『嬉々として話すレイコの顔が浮かぶわ。』
 おや、珍しく気が合うじゃないか巨顔猫。
 
 そしてきっと、レイコはその霧葉への「憎しみ」を利用して、霧葉を導こうとしたのさ。
 まぁもっと簡単に言えば、単純に主体性の無い自分に囚われてなにも出来ない霧葉のそれに腹が
 立った上に、いつまでもそこにいる霧葉にむかついたから、正しい在り方を見せてやるという形で制裁
 を下したってことさ。
 よくあるだろ、だらしない格好してる奴をみてると、むかっ腹が立って直してやりたくなることってさ。
 レイコはそういう口さね、レイコにあるのは優しさなんかじゃ無い、怒りなんだよ。
 いや、優しさを怒りという形式で顕すことによって、自分の中にある優しさ以外の感情にも応えて、
 八方すべて丸く収めようとした女なんだよ。
 だから、賢い。
 レイコは、わかっていたんだねぇ。
 あんなに人間が好きなのに、あんなに人間から嫌われていたからこそ・・・・
 それでも自分は人間なんだと、人間のことが好きなんだと言い続けているだけだったら、きっとレイコは
 その他の人間への優しい想いと心中して消えてしまうってね。
 そして無論、人間への憎しみに囚われて破壊を繰り返しても、それ自体は報われない自分の悲しさ
 に染まることだけにしかならないこともわかってたろうね。
 だから、両方なんだと、レイコは思い知ったんだろ。
 憎しみも優しさも、それがひとりの自分が主体的にこの世界で他の人達と生きていくために必要な、
 大事な活力にして道具なんだってことをさ。
 そして憎しみも優しさも、それをそのまま剥き出しにするんじゃ無く、それをそれぞれ磨いたり、あるいは
 掛け合わせて手練手管の一助とすることで、本当の力を発揮するんだと。
 
 だろうな、レイコはそういう奴だった。
 レイコの怒りというのは、憎しみと優しさが渾然一体となりながら、しっかり個別のものとして機能しても
 いることの顕れだったのだろうな。
 ちょっと巨顔猫、なにを勝手にまとめてんのさ、邪魔すんじゃないよ。
 
 
 まぁ、いいさ。
 とにかくね、私が言いたいのはね、夏目。
 レイコは別に、お前みたいにお前のことを想ってくれる人がいるかいないかに関わらず、ちゃんと幸せに
 生きられる術を見つけてたってことなんだよ。
 まさか夏目、お前、自分を想ってくれる人の存在自体を、有り難がったりしてないだろね?
 
 
 
 
 ◆
 
 塔子さんのことを想っている。
 塔子さんに心配かけないためには、心配をかけることも必要だと、うっすらと理解している。
 でもまだその言葉が身に馴染んでいなくて、ちょっとでも目が曇るとわからなくなって。
 『探しているうちに、なにかヒントがみつかるかもしれないし。』
 探して、探して、探すこと自体が目的になってしまっていると言うことで、探すことを否定して、肝心の
 なんのために探すのかを考えずにいることを肯定してしまう。
 でも先生、俺は霧葉のこともわかるんだ。
 弱くて、弱くて、たとえ諦めてでも、諦めたくなくて。
 人のことを想うからこそ、自分が悪いと自分を責めることで、相手が相手自身を責めることなく済むよう
 にしたいと思っている。
 そして同時に、相手もまた同じようにこちらのことを気遣って、相手自身自分が悪いといって、色々と引
 き受けようとしているという事実を感じているがゆえに、なんとしてもこちらがその綱引きに勝たなくちゃ
 いけないと思ってしまう。
 どちらが責任を取るか、そういう話になっちゃうんだよな、霧葉。
 俺も、そうだ。
 どうしても、そうなってしまう。
 そうやって、綱引きを出来る相手がいることに安堵してしまうんだ。
 ひとりが、怖いから。
 塔子さんがいると、俺のことを気遣ってくれて嬉しい以上に、その塔子さんのために頑張れる俺がいる
 からこそ、俺は塔子さんのありがたみを、俺が感じている以上に知っているのだから。
 俺の想像以上に、俺は塔子さんを大事にしている。
 でも・・
 
 そうすることで俺は、塔子さんを俺の私物にして、それを有り難がる、ひとり遊びから抜け出せなくなる。
 
 霧葉。
 レイコさんに騙されて、レイコさんのことをひどいと思う?
 騙されたという事実しか、お前には無かったかい?
 俺はレイコさんのことは直接は知らない。
 だけどね、俺は霧葉と同じで、色んなことがみえているのに、それと向き合えない自分をみえないこと
 にして、色んなもののせいにして、その色々とみえていることを無視していい理由を考えてきたんだ。
 そして、その理由に身を委ねている自分の浅ましさと弱さをみつめて、それと戦うことにかまけて、
 これもまたなにかから目を逸らす理由にしてしまっていたんだ。
 俺が、やるしかないのにな。
 だから、俺がやるしかないと誰よりもわかってるから、それが一番、怖かったんだよな。
 うん。
 だから俺達は、色んな言葉を作り、それで他の人と綱引きすることで、その怖さを紛らして、こうして
 生きてくることが出来たし、そうやってみんなと笑い合うことも出来た。
 出会うことが出来たんだ。
 でも、それはとても大切なことだけれど、それだけじゃ、足りないんだ。
 いいや、違うな。
 そうして、誰かのせいにしたり誰かと助け合ったりすることは全部、自分こそがしなくてはならないことの
 、その本当の糧となるために、必要なもののうちのひとつだったんだ。
 レイコさんには、そういう風に手を繋ぎ合える人間がいなかった、だから不幸だったのかな?
 違うよ。
 だって。
 レイコさんには、お前がいたじゃないか。
 ヒノエも、先生も、他にもあんなに沢山妖怪達がいたじゃないか。
 
 じゃあもし、お前達がレイコさんにみえなかったとしたら?
 
 
 たぶん、レイコさんは別のなにかを視るよ。
 いや。
 お前達をレイコさんが視るのは。
 レイコさんが、自分ひとりの生を責任持って生きる覚悟をするために、必要だったからだよ。
 
 
 塔子さんがいてもいなくても、俺は塔子さんを視る。
 
 
 塔子さんは俺に無茶をして欲しくないし、俺が独りで全部背負って黙っていることこそを、一番心配し
 ているし、塔子さんを悩ませたくないと考えている、その俺の思考自体が塔子さんを悩ませている。
 でも、俺には特別なものがみえるという事実を話さずには、俺は自分のことを塔子さんに伝えること
 は出来ない。
 妖関連以外のことでは、なんとか塔子さんに助けて貰ったり、甘えることもしようと思う。
 だからこそ俺は、妖関連のことに関しては、より強く自分で背負っていく覚悟を決めたいと思う。
 そして、その覚悟を決めた以上、絶対に妖関連のことで塔子さん達に心配を掛けないように、
 なによりも努力していこうと思う。
 風邪なんか、絶対にひいていられない、もっと体調管理をしっかりしなくちゃな。
 もっともっと、妖のことを学んでいかないとな。
 友人帳が、ぱらぱらと捲れていく。
 俺の名は、無い。
 心配そうな表情の塔子さんの顔が、段々と薄れていく。
 なにも無い。
 先生が横で、そっぽを向いている。
 馬鹿か、このマッチ棒。
 なんもわかっとりゃせんじゃないか。
 レイコはそんな馬鹿では無かったぞ。
 夏目よ、お前も自分で言っておったではないか。
 自分には助けなきゃという義務感はあまり無い、とな。
 お前が今言った話は、それは義務とは違うものなのか、ええ?
 愚かな奴め。
 これだから真面目が取り柄な朴念仁は嫌いなのだ。
 レイコはもっといい加減な奴だった。
 いい加減ゆえに、融通が利く。
 ヒノエの阿呆はレイコを美化する傾向にあるようだが、レイコはもっと杜撰でいい加減で、適当にした
 ことがちょっとだけ違うことにも利用可能だったから、ただ後付けで最初からそれを企図していたかの
 ように思わせる、そういう狡賢い奴だった。
 お前のそれはひたむきで清々しいのだろうし、ヒノエの類の輩にとっては、その清冽さに惹かれること
 もあるのだろうがな、あの阿呆だって、だからこそその清冽さを本当の本当に極めるためにこそ、
 自分を大切にする、つまり、もっといい加減に適当に、長く深く生きていくことの必要さは知っているのだ。
 煙草臭いヒノエが惹かれたのは、そういうレイコだ。
 ただ真面目なだけだったら、誰もレイコになんぞ惹かれやせんのだ。
 私もレイコの気高さと美しさは認めているのだ。
 
 私が出会った人間の中で、レイコは最も美しい人間だった。
 お前の如き、目の前の人間の顔を薄れさせるしか能の無い、醜い者とは比べものにならん!
 
 
 『まったく、いつになったら気づくのやら。』
 
 
 目の前にいるお前が、適当に普通に生きることも出来ないのを見る、塔子の気持ちにもなってみろ。
 塔子はきっと、お前が独りですべて背負って奮闘しているのが塔子のためというのにも、気づいておる。
 そしてそれを認めた、その上で。 よくよく理解している上で。
 塔子はお前のことを心配する自分のことを認めているのだ。
 
 
 俺が独りだろうとひとりだろうと。
 それで頑張り続けている限り、塔子さんとそして。
 塔子さんの瞳に映る俺は、ずっと、放置され続けることになってしまうんだ。
 ああそうだよ、まったく鈍い子だねぇあんた。
 レイコの孫とはとても思えんな。
 自分を大切にしない奴は嫌いだよ、わたしゃ。
 私は別にいちいち大切におもう必要も無く、生まれながらにして高貴な存在だから関係無いがな。
 黙ってな、豚猫。
 にゃにお! この煙!
 なにが煙だい、お前のセンスの無さは顔だけじゃ無いようだね。
 この顔のラブリーさが分からんお前には、なにを言っても無駄のようだな。
 言うだけ無駄だってわかってんなら、黙っとけって言ってんのさ
 『レイコさんが・・・』
 『かんざしのために湖に・・・』
 
 
 
 
 俺は・・・
 レイコさんのように・・・・・たぶん塔子さんのために湖に飛び込むことは出きても・・・・・
 
 俺は
 レイコさんのように、その人に報酬を求めることが・・・・出来ないんだ・・・・
 
 
 
 
 そしてたぶん、塔子さんにとって大切なものが俺だってことが、まだ全然わかっていない。
 塔子さんにとっての俺は、ヒノエにとってのかんざしと同じ。
 湖に飛び込んだ俺を掬い上げるのは、俺しかいない。
 そして塔子さんの大切な俺を湖に投げ込んだのは・・・・・俺自身なんだ・・・
 ああ・・・ヒノエ・・・・先生・・・・わかったよ・・・
 
 俺は、俺を湖に投げ込んでもいいんだ。
 それは真面目な行為にみえても、実に不真面目なことなんだ。
 だから俺は、不真面目な俺も受け入れる、適当な俺になるよ。
 そして・・・俺は・・・・・
 
 
 湖に投げ込んだ俺を掬い上げて、必ず、塔子さんに渡したい。
 
 勿論。
 
 報酬という名の、謝罪の言葉を吐くことを求めることを忘れずに。
 でもその報酬は、俺だけにとってしか意味が無い。
 だから、探そう。
 レイコさんが霧葉についた嘘が、霧葉のためになったように。
 自分で全部抱え込んで、それが「自分」という「なにか」のせいにしていた奴に腹を立て、それを懲らしめ
 るために吐いた大嘘を信じたそいつの馬鹿正直さを笑い、そのすっきりとした気持ちで潤い、そして。
 その吐いた大嘘のままに生きることで、その馬鹿者が馬鹿な自分を見つめることに導けると、ただ偶然、
 気づいたように。
 霧葉は、森で生まれた僕は森から出てはいけない、だから海を見たことが無いと言った。
 レイコさんはその霧葉の名を取り上げた。
 怒ってたんだろうな、レイコさんは。
 でも、レイコさんはその取り上げた名を使って、霧葉に森を出て海を見に行けとは命じなかった。
 自分の力で、森の掟を、自分の弱さを克服しろ。
 誰のせいにもするな。
 だからレイコさんは、海とはこういうものだと、虚実取り混ぜた夢のような嘘の海の姿を霧葉に吹き込ん
 だんだ。
 そして、レイコさんは。
 霧葉のせいにも、させなかったんだ。
 霧葉の名を記した友人帳の頁を破って木の枝に結び付け、五十年経つまでこの紙を取っては駄目
 と命令した。
 五十年も経てば樹は大きく高く育ち、枝葉を無数に茂らせて、その紙がどこにあったのかわからなく
 なってしまうだろう。
 でも。
 霧葉が五十年かけて自分を見つめ直し、レイコさんが吹き込んだ海の絶景をみたいという、ただ自分
 の欲望という名の意志によって自分を在らせようとするなら、きっとそれらの枝葉を掻き分け、高い 
 木の上にだって登るだろう。
 どんな困難だって複雑な現実だって弱い自分だって。
 やりたいことをやるのは、あくまで霧葉自身。
 そしてレイコさんは、霧葉に命令することで、霧葉の行動は霧葉の責任であるだけでは無いということも
 ちゃんと示したんだ。
 木の頂上で自分の名を見つけたとき。
 霧葉は森の向こうに、海をみた。
 
 『霧葉、君にかえそう。 受け取ってくれ。』
 
 
 
 
 
 『みたもの、感じたもの。 それは、ずっと消えない。 忘れはしない。』
 
 『様々な出会いと共に。』
 
 
 
 
 
 俺は。
 
 
 塔子さんに、海を魅せてあげたい。
 
 
 いつかきっと。
 蒼く、深く、広い。
 俺と塔子さんが望む、冬の彼方のあの海を。
 
 
 
 
 
 
 海!? 海!!
 海いくぞ海、夏目、支度しろ。
 私は湖とか沼とかの方が好きだから、海なんぞいかないよ。
 おい先生、別に俺はそういう意味で言ったんじゃ・・・・
 なにを言っておる、見るだけで良い訳が無かろう、泳ぐ! そして喰う!
 なにをだよ・・まったく・・
 ああ、私には土産のひとつでも頼んだよ、レイコばりのすごい海の土産話をさ。
 ヒノエまでなに言ってるんだ。
 俺はただ・・・・・・
 ただ?
 ただ、なんじゃ?
 ・・・・・・・そうだな
 
 
 
 塔子さんを、誘ってみようかな。
 
 
 
 
 
 
 
 おまえ、滋のこと完全に忘れてるよな。
 
 忘れてないよ、ただ、今回出てこなかっただけだよ、ふふふ。
 
 おまえ・・・間違っても名取の小僧みたいにはなるなよ。
 
 どういう意味だよ先生。
 
 さてな。
 
 
 
 
 
 
 ああ。
 
 空が高くて、気持ちいいな、先生。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                             ◆ 『』内文章、アニメ『続夏目友人帳』より引用 ◆
 
 
 

 

-- 090204--                    

 

         

                               ■■ 時間いうな ■■

     
 
 
 
 
 はい、ごきげんよう。
 というか、今日はちょっと時間無くてピンチなので、みなみけ&まりほりの感想だけで勘弁してくだされ。
 というか、むしろほんと時間無くてすみません。
 
 
 
 んで、みなみけおかえり。 第4話?
 アイアンクローフロムキッチン対面式wwさすがリーダーw
 しかしさすがのネーミングですねこれ、字面だけ見ても全然意味わかんないけど、現場見たら速効で
 わかるっていうかむしろこの表現しか無いと言わざるを得ないものwさすが夏奈w
 それにしても、冬馬の男の子ネタの歴史的引っ張り力はすごいけどというかもうメインのひとつになっちゃ
 ってるけどw、相変わらずな夏奈のボケっぷりがどうしても原因に絡んでくるのが面白いw
 もう理屈が滅茶苦茶っていうか自分の目的も速攻で自ら潰すし(「生き生きと、手がつけられなくなって
 るんだろ。」by千秋)、なのに普通に理屈を繋げてそのままいくし。なにやってんのこの子ほんとにw
 なんかこの人の屁理屈だったら一日中聞いてても飽きないなぁ、藤岡の気持ちがわかるわかるw
 
 で、ナツキがなんかすごいwあれは冬馬のしつけのためにやってんのか、素で暴君なのかわかんないw
 普通に理不尽過ぎて笑える笑えるwまぁつまり単純に兄妹の順位付けのためって意味なんだろし、
 さりげに夏奈は共感してるしw、なのにその辺り曖昧にしときながら、いつのまにやら冬馬が男らしくなる
 なら俺も男になるだけっすとか、お前ただ自分が男らしさ魅せたいだけじゃんかという、ナルてきな意味と
 春香意識入ってるし、そして早速夏奈にんじゃ冬馬が女らしくなればいいんだなとつけ込まれるしw、
 それで冬馬に持たせたのが春香のセクシー写真(盗撮w)てww、もうなんか色んなものがこんがらがって
 んだけど一応解決(ナツキは写真見て固まり中ww)みたいな、ほんと冬馬の言う通りすごいぞ夏奈ww
 
 そして、まさかの新キャラ登場。
 すんごい声してるな思ったけど慣れてきたら全然平気になってきたヒトミ登場。
 って、南ナツキが一切手が出せなかった子が二代目番長って、これ、ヒトミのことでいいんだよね?
 つか、この子もなんかズレてんなぁ気持ちよくww自称ナツキのことをよくわかってる子で確かに良くわか
 ってるんだけど、わかったことの分析とその対処が基本的に間違ってる人で、これは台風の目きましたw
 しかも自分で「理解」したことに自信持ってるいうか信じて疑ってないから、これは千秋と並んで一番
 ほさかと出会っちゃいけないタイプかなと思った側から会ってるしwww早速なんかほさか理解始めて
 すっ飛んでっちゃってるよこの子wwまさに対ナツキ限定の女版ほさかじゃんwwwうざいやら笑えるやらw
 そしてほさかと同じくその真摯さが気持ち良くて、笑いにある意味清涼感がありますね、なにが清涼かと
 言いますと大真面目にぶっ飛んでるからwwジェット気流並になんか駆け抜けてる感じww
 ただほさかと比べるとまだまだ「わかっている」度合い、言い換えれば妄想力wは低いですね。
 ほさかはかなり人の心の機微とか妄想もとい読んでるし、どういうことが失礼なことかと全部ちゃんと
 認識してるし考えてるし、指摘されればそれが(ほさか的に)論理的に正しければ必ず訂正するし、
 その上でそうして「わかったこと」を加速度的に瞬時に発展させてそのまま飛んでってしまう、まぁ、一言で
 言えば、人智を越えて真面目なんですねほさかはww、だから爆笑になる訳で、そういう意味では
 まだヒトミはそういう意味で、「常識」の認識不足なんですね。だから常識を越える笑いにはまだひとつ。
 ほさかは常識人ですしね。
 非常識なだけでww
 勿論今回のハイライトは、汗とか雨とか熱気とか湿気とかを一斉に振りまいたシーンですね。
 だからほさかは困るんだ、一切の無駄が無さ過ぎてwww
 という感じで、なんか今日は感想っていうか下手な解説になってしまったので、ここまで。
 
 
 で、まりほり。 第4話。
 毛穴という毛穴に突き刺す。
 
 前回両手に花状態になったかなこさん的には、今回は(諸々の事情を無視して)鼻血展開なんだろ
 なと思ったら、確かに隆顕様と桐ちゃんに囲まれた妄想展開に突入して(夢)、さすがはかなこさんかと
 思えば本星はその寝起きなかなこさんを迎えるメイドコスな鞠也でした、それにこそ鼻血なかなこさんの
 底抜けさに乾杯。あと速攻で朝っぱらからワイルドなツッコミ入れる茉莉花さんGJ。かなこさん乙。
 ということで、今日の主役もかなこさんかと思えば、前回の騒動で本性を現した天然隆顕様が大ブレイ
 クで、昨日の今日でストーカーばりにかなこの護衛を始めたりして、そしてその凛々しい胴着姿に早速
 うっとりおろおろして茉莉花さんにスリッパを口に突っ込まれるかなこさんがやっぱり主役でしたwww
  で、結局隆顕様の真面目っぷり=かなこの損害率の上昇だったり、歩くというか付きまとう疫病神ぶり
 を十全に発揮して、かなこを護衛もとい追い詰めていきます。なんか笑い過ぎてお腹痛いwwwww
 とにかく隆顕様の違和感がすごくて、かなこ含めて全員引いてる引いてる(鞠也のみナチュラルに人を
 痛めつけることが出来る奴と見込んで褒めてましたけど)状態オンリーで、おいおいこのままひっぱちゃう
 の?、勢いあるっちゃあるけどこのまま隆顕様ルート(バッドエンド)いっちゃうのはちょっと勿体なくない?
 、つか普通に桐さんは芝居だったとか言ってるし普通に女の子同士が付き合う訳無いでしょとか、まだ
 かなこの嗜好はバレてないのにかなこのアイデンティティ否定されたりとか、なんかぞくぞくと隆顕ルート
 以外が閉鎖されていくのは面白かったけど、なんか他の子が外野にいっちゃうのは勿体ないな、とか
 思ってたら、かなこさんは相変わらず鼻血噴いたりそれと同じレベルでシリアスかじってみたりとか、でも
 隆顕様に振り回されっぷりが堂に入っていたりとか、ああ、なんか、いいねこれも。 (ぉぃ)
 
 というかまぁ外野とか閉鎖とかいうのは一面的なものであって、きっちりそこからまたどんどん新しい関係
 が出てきてる訳で。
 鞠也と茉莉花さんはツッコミ業ばっかりですけど、このふたりがいなければそもそもかなこさんの性能を
 完全に活かしたイジりを行うのは不可能ですしね、桐さんともなんだかごたごたとシリアス展開(つか気分
 的に冷たい理屈屋の桐さんにかなこさんが違和感持っただけww)でまた一段と大きな笑いへの発展
 の可能性を感じられますし、なによりこれだけ隆顕様が掻き回してくれたことによって、逆によりかなこさん
 のはっちゃけな鼻血ぶりが周囲と絡みやすくなったというのもありますよね。
 で肝心の隆顕様のシリアス(もうその単語で片づけていいやw)面にかなこが触れる訳で、それで
 隆顕様の行動を別の面からも見ることが出来るようになる訳ですけど、前回のかなこのそれと同様に、
 それで隆顕様の行動とか隆顕様の存在が変わる訳で無く、むしろより複雑な形で鼻血を噴き出す
 かなこさんがいる訳でww全部それに集約されていく訳でwwwやはりこの作品は徹底してアンチツンデ
 レというかツンデレ越えを図っていて、実にギャグとシリアスの関係をツンとデレという関係性自体への
 「萌え」から解き放っていて、うん、これがこのまりほりの大きな特徴のうちですよね。
 すべてこれ鼻血もとい笑いなり。
 隆顕様が悪い訳じゃ無いんだけど、間違い無く隆顕様がかなこさんを追い詰めたりしてる訳で、で、
 それとイコールどんなに隆顕様の好意の結果被害を受けても、隆顕様の苦悩と誠意を思えばこそ
 やっぱりもう少し我慢しなくちゃ、と言ってる側から隆顕親衛隊に踏み潰されてギブした上に隆顕様の
 凛々しいお姿に鼻血噴き出す無限ループな偉大なかなこさんがいる訳です、これがギャグでなくて
 なんであろうかいやガチ百合なだけっしょwww
 ま、つまりツンの裏にあるデレを見つけてなんか「わかった」気になってちょっと悟ってみた気分になって
 それに萌えてしまっていたりするかなこ自体にツッコミを入れられる笑い、という感じですね。
 という感じで、今回は構造的なところ以外は、それほど特別大爆笑という訳では無・・というか、
 笑いの最低ラインあがりまくりなんですけど、どうしましょww
 このどうにでも転がる自由過ぎる上に使い勝手の良さが異常な(褒め言葉)かなこさんに、如何に
 素敵で素晴らしい回転をかけていけるかという意味で、よりかなこさん以外のキャラ達の在り方が重要
 になってくるでしょうね、と言ってる側からラストの茉莉花日誌で大爆笑wwほんとこの子止まんないww
 この子一体この数分間に何回鼻血吹いたのよwwてか鞠也さんのかなこイジりが徹底的すぎるwww
 つか鞠也さんの美少女メイドぶりが全力すぎるwwww性倒錯とかそういうレベル違うwwww
 この展開だと茉莉花さんの存在感の無さが逆に効いてくるwwこれツッコミいらないwwww
 取り敢えずで百合小説をメイドに朗読させたい欲望ってどこまで半端無いのよwww
 『でも美少年の使用人に足蹴にされるのも、それはそれで♪♪』 by鼻血垂らしながら足蹴にされる人
 
 『こちらも倒錯っぷりにますます磨きがかかってきたようです。』 
 『そして、間抜けっぷりにも。』  by茉莉花さん
 
 男に触れられると全身にじんましんが出て大変なことになるというかなこさんの初期設定を使った、
 鞠也主従の素敵さに、乾杯♪
 
 
 んでは、今日はこんな感じで。
 ん、なんかこのふたつの文章だけ見ると、なんか怖いな。 (なに)
 
 
 
 
 
 
 
 

 

-- 090202--                    

 

         

                               ■■ マリア様の結ぶ縁 ■■

     
 
 
 
 
 『私さ、楽しみなんだ、妹が出来るのが。 きっと令ちゃんとは全く違った関係になると思う。』
 

                     〜マリア様がみてる4thシーズン・第四話・由乃さんの言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 ごきげんよう、本日はマリア様がみてる4thシーズン、第四話のお話をさせて頂きます。
 
 さて、今回のお話は如何だったでしょうか。
 マリみてらしいというか、逆にマリみてらしくないというか、非常にコメディ色が抑えられているのにコメディ
 そのものであるというような、そうした笑いの真面目さがひとつのお話として綺麗に展開されていた
 ような感じを私は受けました。
 淀みなく止まることなく、勿論寸断されることもなく、実にお話としての流れも気持ち良く、かつ随所に
 見せる静かな天然ボケとそれに対するツッコミも鮮やかで、そしてそれをギャグとして強調することも
 無く、あくまでテーマを持ったお話として描かれていて、観ているだけでとても贅沢な気分にもなりました。
 贅沢でそして、なにか爽やかな気分にさえなってしまいそう。
 前回の第三話で出た妹オーディションがメインのお話が展開されたので、てっきり第三話での瞳子と
 乃梨子を絡めたなにかまた清冽な真面目な話になるのかと思っていたのが、あっさりと瞳子と乃梨子は
 端役に押しのけられ、まるで第三話が無かったかのような、由乃さんvs江利子様の話になるとは、
 当初思っていませんでした。
 けれど、確かに主役もテーマも変わってしまいましたのに、その清冽さ自体は、その媒体を「真面目」
 から「笑い」へと変えただけで、厳然として変わらず存在していて、全体を観て受けた感慨には、
 非常に似通ったものがありました。
 「真面目さ」を通して、「笑い」を通して、前回と今回を通してこの作品が魅せてくれたものは同じ、
 だったということなのかもしれません。
 それがなんであったのかを探るのを中心にして、ざっくばらんに、今日はお話させて頂こうと思います。
 
 
 
 今回のこの第四話「未来の妹」は、先ほど申し述べました通り、由乃さんと祐巳さん発案による妹
 オーディションを、姉妹の出会いを求める場としての茶話会という形にして行ったものを描いています。
 由乃さんはたびたびちょっかいを出してくる江利子様に見栄を張って、つい令様の剣道の大会の日
 までに妹をお見せする約束をしてしまったがため、そして祐巳さんは祥子様に妹を作れと直接命令
 されたがために、どちらも妹を作るということ自体には不本意ながらも、けれど妹は作らなければいけな
 いという外部の要請を受けるためにこそ妹を作ろうとします。
 妹なんて欲しくない。
 だってお姉様のことが好きだから。
 でも。
 お姉様のことが好きだから、お姉様の「真意」に報いたい。
 それが祐巳さんの主な在り方でした。
 けれど、由乃さんは若干違います。
 由乃さんに発破をかけたのは、そもそも由乃様の姉の令様の、そのお姉様の江利子様なのです。
 そもそも切っ掛けの中に、令様は存在していない。
 言ってみれば、由乃さんは江利子様に見栄を張る、自分のためにこそその張った見栄を全うすべくに
 奮闘しているのです。
 そして、その自分のためというのは、令様が大好きな自分も含んでおり、けれど令様のためにという
 意識は無く、あくまで令様のためにもという後付けの理由として、由乃さんにとっての令様はいるの
 です。
 けれど、そうして自分の話を令様にすることで、令様の表情から色々なものを読み取り、そして、
 その令様のためにもという後付けの理由にこそ、大きな力を得ていくのもまた、由乃さんなのです。
 
 これは実は、単純なお姉様への想いで動くという祐巳さんが、そういう由乃さんの奮闘を見て、
 自分の意識を変えていくということに繋がっていくものとしてもあるのです。
 
 発端と切っ掛けはどうあれ、茶話会が近づくにつれ、祐巳さんと由乃さんはどんどんと自分の意識を
 変えていきます。
 祐巳さんは茫洋としながらも、むしろ積極的に頭の中を空にして、とにかくやってみようとしていきます。
 由乃さんはむしろ逆に、発端と切っ掛けを足掛かりにして、妹を作るということをより主体的に行って
 いきます。
 その姿勢の差異は茶話会で顕著に顕れます。
 悪く言えば、祐巳さんは受け身過ぎ、由乃さんはがっつき過ぎ。 (笑)
 ふたりの内面はどうあれ、茶話会に参加してきた一年生間での人気度は祐巳さんの方が遙かに上
 ゆえに、受け身な祐巳さんには自分のイメージを押し付けやすく、より祐巳さんの人気度は上がり、
 そして逆に由乃さんは高くは無かった人気が攻めの姿勢ゆえにさらに下がるという結果になってしまい
 ます。
 自己紹介も、気合いの入っている(ちょっと変でしたけど 笑)由乃さんのそれよりも、明らかに適当で
 思いつきで全然練られていない祐巳さんのそれの方が、元の当人の人気とはまた関係無く、さらに親
 しみやすさを強調するという効果を発揮して、より受けが良い。
 これは明らかに、「自己紹介」というものを、「自己紹介文」というものに頼り、他の要素を無視して
 しまった由乃さんの敗因でしょう。 (笑)
 つまり、由乃さん自身の影響を周りにどう与えるのかを計算していないのが由乃さんの敗因である、
 ということなのですね。
 自己紹介文自体がどんな稚拙なものであろうと、それをどう使うかが問題である、ということですね。
 これは、今回のお話のポイントです。
 
 
 これは、自分と他人との影響自身の問題、つまり、「縁」のお話なのです。
 
 
 内藤笙子という一年生が、茶話会参加者の中にいます。
 これは参加申込書に、山百合会の一員になりたいので祐巳様と由乃様のどちらでも良いので妹に
 なりたい、と書いてきた子です。
 祐巳さんと由乃さんもふたりとも当然良い印象は持たなかったのですけれど、しかし少しふたりの対応
 は違っていました。
 由乃さんは、当て付けとして完全無視を決め込むのですけれど、祐巳さんは積極的に話しにいくことは
 無かったのですけれど、しかしたまたまふたりきりで話をする機会が出来てそのまま話をしてしまいます。
 
 さて。
 閑話休題。
 
 この作品には、三つの薔薇、つまり三人の薔薇様という名のいわゆる生徒会長がいますよね。
 それぞれ、紅薔薇、白薔薇、黄薔薇と言い、それぞれが妹と孫というべき妹の妹を持ち、ひとつの
 グループを形成しています。
 そして実は、それぞれの薔薇にはいくつか特徴があります。
 おそらく作者も意識していると思われます。
 そこで、今回のこの内藤笙子に対して、前三薔薇様、つまり、蓉子様、聖様、江利子様はどう対応
 するかというのを想像してみます。
 白薔薇たる聖様は、おそらく面白がって積極的に話をしにいくでしょう。
 しかも、姉妹の関係を見据えた上で話をするでしょう。
 つまり、「誰でも良いから妹にして欲しい」という失礼な物言いを、全く意に介さず、あくまでその内藤
 笙子自体にも、つまり失礼な物言いを平気で出来る子の大胆さに人間的興味が湧いてきて、惹かれ
 なくも無い、つまり相手の表面に囚われない、と言ったところでしょうか。
 逆にいえば興味が湧かなければ、全く無視する、ということでもあるでしょう。
 これは「顔が綺麗だから。」という理由で妹にしようとしそれに応じた、先々代の薔薇様と聖様の姉妹
 関係にも相通じますし、生真面目ゆえに言葉だけでは足りない志摩子さんと相手の言葉の裏を読む
 乃梨子にも当てはまります。
 黄薔薇たる江利子様はもっとある意味積極的で(笑)、おそらく正面からは向かわずにあらゆる手段
 を使ってその子を逃がさず自分に向かせるための策を講じ、徹底的にその子をイジり倒すでしょう。
 なぜなら、その子が抱き締めたくなるほどに面白いから。
 この江利子様は言うに及ばず(笑)、これは「面白い」を「愛しい」に代えれば、令様のあのなりふり構
 わない上に振り回される由乃さんへのぞっこんぶり(笑)にも通じますし、由乃さんも自分がやりたいと
 思ったことを徹底的にやっていくストイックさ(あるいは視野狭窄 笑)もまた黄薔薇的と言えますでしょう。
 では。
 紅薔薇たる蓉子様はどうでしょうか。
 蓉子様はおそらく無視することも無ければ面白がってイジり倒すことも無く、厳しく視線を投げかける
 でしょう。
 そして誰でも良いから妹にして欲しいということの不誠実さを大上段から切って捨て、まさに正論を
 堂々と仰るでしょう。
 けれどそれは、あくまでけじめであり、またむしろそうして不誠実な相手に相手自身が目の前の人に
 どんな影響を与えたのかをしっかりと示すことで、改めて自分の前にいるのは誰かを見つめさせようと
 するがゆえなのです。
 言葉も自分の内、言葉にも力があるのだということ、だからこそ言葉と日々接している人達にとって、 
 蓉子様はとても「語り甲斐」のある方なのです。
 これは厳しくもどんな話でも真面目に話せば誰よりも真面目に接してくれる祥子様や、普通の人であ
 るがゆえに本音も建て前もそのまま本音と建て前として聞いてくれる祐巳さんにも通じることでしょう。
 聖様は言葉に拘らないがゆえに、どんな話でも内面ばかりを見つめてくるでしょうし、、江利子様はそれ
 以前に全部話の揚げ足を取る可能性がありますでしょうね。 (笑)
 そういう意味では、紅薔薇が一番広く支持を集めるのも頷けるというものでしょうし、紅薔薇が中心
 なのもわかります。
 なにしろ、誰もが持っている言葉をちゃんと磨きさえすれば、紅薔薇は誰でも受け止めてくれるから
 です。
 誰にでも公平にチャンスを与えてくれるという意味で、紅薔薇が最も生徒代表らしいとも言えますでしょ
 うね。
 白薔薇にはある意味浮世離れさが求められていますし、黄薔薇はまず江利子様と向き合える精神力
 とガッツが無ければなりませんしね。 (笑)
 
 ちなみに私は白薔薇の聖様ファンです。
 内面的には浮世離れしていて江利子様と悪質なコンビを組むことも出来れば、蓉子様とタッグを
 組んでしっかりと本音と建て前で出来た言葉の世界を愉しんで生きることも出来る、まさにその、
 偉大なロサギガンティア・佐藤聖様が私は好き、ということはここにひとつ明記させて頂きます。 (笑)
 さらにちなみに、聖様も江利子様もどちらも受け止めることの出来る水野蓉子様も、白薔薇の世界で
 でも紅薔薇の世界ででも自由自在に遊び回れる鳥居江利子様のことも私は好きですので、そこの
 ところもよろしくお願い申し上げます。 (笑)
 
 
 さて、本題に戻ります。
 今のお話で言及した言葉というのは、単純に言葉遣いや言葉の中身のことだけでは無く、それらを
 含む、他の姿勢や生活態度、礼儀などなど、そうした他者に影響を与える自身の所作を総称する
 ものを表しています。
 そして紅薔薇たる祐巳さんは、内藤笙子に対してうっすらとその辺りのことを要求するのです。
 まさに正論を持って、キラキラと輝いている場所は山百合会だけでは無いのだから、なにも無理矢理
 姉を作って山百合会に入る必要は無いのじゃない?と諭すのです。
 これに対して、内藤笙子は、『つまり私はフラれてしまったのですね?』と言いました。
 そして祐巳さんは、私の妹になりたいと言ってくれる人を妹にしたいと思います。
 これは、少しおかしいのですよね。
 そもそもロクに話をしてもいない、それこそほとんど初対面の人達が集まって、親睦を深めた上、ゆっくり
 と互いを知りつつ、そのうち姉妹として向き合えるようにという、言ってみれば祐巳さんからすれば延命措
 置(笑)的な意味でこの茶話会は企画されたはずなのです。
 今すぐ妹を作りたくないからこそだったのに、それなのに、現時点で貴女の妹にして欲しいという人を
 こそ求めるというのは、あり得ない話です。
 それに、現時点で祐巳さんの妹にして欲しいという人は既にあれだけ沢山いる訳ですけれど、逆に
 そういう想いで来ている人はあきらかに祐巳さんに勝手な幻想を抱いてきているのですから、
 それこそ内藤笙子が山百合会だけにキラキラしたものを感じているというのと、同じことなのではない
 でしょうか。
 幻想の中の祐巳さんにこそキラキラしたものを感じたがゆえに、祐巳さんファンの子達は集まってきて
 いるのですから、これまた逆にいえば、内藤笙子もまた、彼女達と同じく全く同じスタートラインに立って
 いる訳で、彼女だけがフラれる理由は、少なくとも現時点では絶対にあり得ないはずなのです。
 それこそ、内藤笙子とだって、これから話をしていくことで、本当にお互いを知っていくことが出来るの
 ですから。
 それは言葉的表面に拘らない聖様はもとより、言葉を示し相手に訂正を求めるのはけじめをひいて
 相手を真っ当に自分に向き直させる蓉子様だって、これからだと思うはずです。
 現時点では、少なくとも祐巳さんが望む意味での「心から妹になりたい人」は絶対存在しないはず。
 なのにそういう人を妹にしたいというのは、これはつまり、祐巳さんこそが姉になりたくないがゆえの
 無意識の選択だったのでしょう。
 
 当の祐巳さんこそ、かつて祥子様のファンだったのに祥子様の勝手な都合で妹にされそうになることに
 苦しみ拒否しつつも、それでも最終的には長い時間をかけて妹になったことを忘れているのです。
 
 内藤笙子は山百合会に憧れ、そこで自分も輝きたいからこそ誰かの妹にして欲しいと言っただけで、
 だから山百合会主催に茶話会に参加することに、なにも問題はありません。
 至って正当なことです。
 この茶話会はそもそも、「自分のスールを参加者の中から見つける」という、既に対象を限定している
 のですから、この中にしか自分の求めるものは無い、という内藤笙子の発想と全く同じです。
 内藤笙子はそもそも、誰でもいいとは言いましたけれど、誰も選ばないとは言っていないのです。
 それが出会いを求めるということであって、これはある意味余計な先入観を捨てて、茶話会に参加して
 実際にスールに相応しい人を見極めるというだけの話で、茶話会の参加者を山百合会のふたり、
 由乃さんと祐巳さんの二人と対象を入れ替えただけで、むしろ正しいとも言えます。
 たとえばこれは、結婚生活に憧れるからこそ結婚相手を探しにきたというのと同じで、茶話会はそうい
 う場として提供しているのですから、これは逆に祐巳さんの方にこそなにか問題があることが見えてき
 ます。
 茶話会だけにキラキラした出会いがある訳では無い、というのはすなわち、では茶話会にもキラキラした
 出会いが無いという訳では無い、ということにもなるはずです。
 茶話会だって、立派な出会いの場ですし、内藤笙子だって、特別でないただのスール候補者のひとり
 であることには違いないのです。
 内藤笙子は敢えて挑発的な文言を使って気を引くという、いわば自己アピールをしていると見れば、
 それをたとえ正論で大上段から切ったとしても、それで切っておしまいとして良い訳でも無く、むしろ
 そのあとの話を続けていくための、むしろ正論を翳すというこちらの自己アピールを持って、内藤笙子
 と向き合っていく、というのがそういう意味では「妹作り」ということになるはず。
 祥子様はそうしてきましたし、蓉子様もまたそうしてきたはずでしょう。
 なのにそれを祐巳さんがしないということは、つまり、
 
 心から妹になりたいと言ってくれる人を妹にしたいという言葉を使って、なんとか妹を作ることから逃げよう
 としている祐巳さんがいる、ということになるのです。
 
 内藤笙子との間に出来た縁を無視する祐巳さんがいる。 
 そして一方の由乃さんは貪欲に妹を求めるために積極的に他の生徒達と話を重ねますけれど、
 こちらはこちらで上手くいかず、それこそ妹を作るための品定めと自己アピールにのみ囚われてしまい、
 肝心の相手の内面を見るということが出来ずに、ただ上滑りしていくことを重ねてしまいます。
 頑張れば頑張るほどに、なにもしていないような焦燥感。
 内藤笙子に対するように、おそらく減点方式で妹候補を切り貼りしてしまい、結局のところ肝心の
 心の交流の足掛かりを得るための、「出会い」そのものを受け入れる態勢を由乃さんはなかなか取る
 ことが出来ない。
 そして祐巳さんは祐巳さんで、「特別な」出会いを求めることで、そんな出会いが無い現実を見据えて
 無意識のうちに延命を図ってしまう。
 お姉様のお言い付けで茶話会も開催して妹探しもしているし、それでも「特別に」気に入った子が
 いないのだからしょうがない。
 妹を作ることに囚われた由乃さん。
 妹との出会いに囚われた祐巳さん。
 
 そしてそこに降臨する、魔王江利子様。 (笑)
 
 江利子様への言い訳に忙殺される由乃さん。
 そしてその由乃さんをフォローすることで頭がいっぱいになる祐巳さん。
 けれどそこで、由乃さんは出会ったしまうのですね。
 有馬菜々。
 全くの見ず知らずの、初対面の子であり、ただ江利子様から逃げる最中で出会っただけの子。
 ただ、由乃さんのあの表情を見る限り、なにかを感じたことは事実でしょう。
 ただそれは「妹」としてのなにかを見つけた訳では無いのでしょう。
 けれど、たまたま有馬菜々がリリアンの制服を着ていたことに気づいたがゆえに、ラッキーとおもい、
 その場凌ぎのために妹として江利子様に紹介してしまいます。
 しかも順番的には、最初に江利子様がその子が妹?、と言ったから妹として利用しようと思っただけ
 であって、それはイコール「妹」として実際の思い入れが無いことを証しています。
 勿論江利子様にはバレバレなのですけれど、しかし江利子様は有馬菜々自体への興味と、由乃さん
 とふたりで姉妹として並べてみたときの「面白さ」から、その嘘を認めてくださいます。
 勿論、その嘘はバレバレだけど、あくまでまだバレてないこととして振る舞いなさい、という注文付きで。
 最後にバレていることを示唆しつつ、けれど公式にバレたことにはせずに、嘘を吐いた以上ちゃんと
 胸張ってその子を妹にしなさいよ由乃ちゃん、という江利子様の誘導なのですね。
 
 それが、「妹」を作る、ということなのでしょう。
 
 嘘を取り繕うことばかり考えていては、いつまでも経っても嘘は本当にはなりません。
 妹を作ってみせるとガチガチに考えているだけでは、せっかくの出会いも自分の嘘を繕う道具のひとつに
 貶められてしまうのでしょう。
 文字通り嘘から出た真を見極め無い限り、出もとの嘘の方ばかり見ていては、いっこうにその真の方は
 日の目を見ることは無い。
 そして由乃さんはそのことを自覚するしないに関わらず、有馬菜々に感じた「なにか」を胸にしながら、
 その出てきた真のままに、有馬菜々を妹にするという方向にひた走っていくのです。
 あの子のことが気になる、という程度のささやかな感情を、有馬菜々を妹にしてみせるというガチガチ
 の嘘の口実にして、ひた走る。
 頑張れば頑張るほどに、有馬菜々に近づいていく興奮感。
 「妹」にしたいという感覚無きままに、それなのにどんどんと姉妹という関係がみえてくる。
 そしてただ偶然ぶつかっただけの相手を、その場凌ぎの嘘のために利用しただけの相手を、ただその嘘
 を吐き続けるために、延命を図るためだけに利用せずには済む、その確かな有馬菜々に感じた「なにか
 」が、その由乃さんの快走を支えているのですね。
 江利子様が、由乃さんと有馬菜々に見た「縁」がそこにある。
 嘘を吐いて巻き込んでしまったからこそ、有馬菜々「だけ」は妹候補にはなりえない、と普通は考え
 てしまうところを、由乃さんは江利子様にいわくありげに見逃して貰った(笑)ことにより、有馬菜々を
 特別扱いすること無く、その出会いこそを「特別」なものとして受け取ることが出来たのでしょう。
 もっとも、当の有馬菜々の方は、『支倉令様の妹様、あなたの妹はそのロザリオを貰えるんですか?』、
 と由乃さんに言っていたことから、そのロザリオ、つまり令様から貰ったロザリオ目当て、という可能性が
 ありますので、まだ波乱は大きくありそうですけれど。
 おまけに三年生までに他に妹が出来なければ有馬菜々を妹にするとも由乃さんは言ってますから、
 これは波乱程度では済みませんでしょうね。 (笑)
 とはいえ、その波乱程度では染まない大活劇こそが由乃さんにはとても合っていて、そうして江利子様
 との見栄張りが無くても、妹を持つということ自体を自然に考えていけるのですから、それはむしろ
 良い方向ではあるのでしょうね。
 たとえそれが今度は有馬菜々との意地の張り合いに代わるだけなのだとしても、そもそも妹を持つという
 ことは外部との折衝の中にあるものなのですから、全く問題は無いのでしょう。
 問題なのは、たったひとつ「だけ」しか妹を持つ理由が無いということなのだと思います。
 そしてなにより、外部との折衝によって出来た自分の中の妹を持ちたいという気持ちが、ただそれだけで
 は無いことを知っているのは、他ならぬ由乃さんなのですから、人生青信号由乃んの本領発揮、という
 ことなのです。
 GoGo由乃! 行け行け由乃!(笑)
 
 
 そういう意味で、自分のことを好きになってくれる子を妹にしたいという、ただそれだけに根差そうとして
 いるなら、祐巳さんには問題がありそうです。
 
 
 祐巳さんはやや反面教師的に由乃さんの有様を見て、そして祥子様に自分は由乃さんのように
 慌てずに、ゆっくりと好きと思い合える人を見つけていたいと言いますけれど、そんな人が絶対に存在
 しないことは、祐巳さんが一番ご存じのはずですし、また祥子様も同じです。
 そもそも祥子様は当初祐巳さんのことをなんとも思ってはいませんでしたし、祐巳さんは祐巳さんで
 祥子様ファンではあっても、それこそちょっと祥子様が自分のことを見てもいないのにご自分の都合で
 妹にしてこようとすること「だけ」に反応して、祥子様への想いのままに行動できなかった人だったので
 すから、最初から好きと思い合える人がいないなんて、このふたりこそ身に浸みて知っているはずの事。
 好きと思い合える人と姉妹になりたいなどというのは不可能なこと。
 なぜなら、好きと思い合えた人同士が姉妹になるのですから。
 そういう意味では、由乃さんは既に好きでもなんでも無いちょっと気になる程度の相手に向かって、
 全速力で駆け出していますし、さらには祐巳さんのことが、ちょっとどころか大層複雑に気になっている
 人が少なくともひとり近くにいることを、祐巳さんはわかっていません。
 瞳子は、どうなるの?
 祐巳さんに、好きだなんて口が裂けても言えない瞳子はどうなるのですか?
 たとえ好きだとお互い思っていても、それだけでは全然どうにもなりませんし、勿論姉妹になることなんて
 出来ません。
 そのことは一番祐巳さんがご存じのはず。
 祐巳さんは一歩も二歩も、出遅れています。
 悠長といえば悠長。
 でも。
 
 それが、祐巳さんのスタートライン。
 
 これはおそらく、祥子様の謀なのでしょう。
 自分の妹が子供っぽいことなど百も承知、けれどその子供がまずは自分が子供だという事を知らなけ
 れば、その子供は成長することなど出来ません。
 祐巳さんは悠長といえば悠長ですけれど、それは頑固頑迷の類では無く、ただ悪くいえば鈍感である
 というだけの人。
 ですから、気づきさえすれば、祐巳さんは今まで気づかずにいた分だけスレていない、その素直な
 自分の気持ちのエネルギーを発揮する可能性を大いに秘めてもいる。
 まずは、あなたのままにやってご覧なさい。
 待ち人をただ待てる、あなたの鈍感さでやってみなさい。
 そうすればやがて、あなたの目の前に誰かが現れるでしょう。
 そう、あなたの事が好きでも、どうしようも無い誰かが。
 あなたはその子と出会ったとき、どうするの?
 ただずっと、好きなら好きといえば良いじゃない、とだけ言っているのかしら?
 ただずっと、不思議そうな顔をして、その子の苦悩する顔を見ながら、わからないわからないと首をかし
 げ続けるだけなのかしら?
 やってご覧なさい。
 きっとその子は、あなたの前にいる。
 そのとき、どうするの?
 
 そのときは、あなたらしく、やってご覧なさい。
 
 きっと祥子様の狙いはそこなのではと思います。
 かつての自分と祐巳さんと同じく、きっと祐巳さんはその誰かと壮絶なドラマを繰り広げるのでしょう。
 でも、たとえ同じことを繰り返しても、もう祐巳さんには祥子様との間で培ってきた「なにか」と、そして
 そのかつてのドラマを越えてきた、祐巳さん本来の「大きな意志」があるのだから、それがある自分の
 ことこそを、見つめなさい。
 祐巳。
 あなた、自分のことを好きになって貰いたいとか、好き合える相手が欲しいとかばかり言って。
 
 
 肝心のあなたが、誰かをどうしようもなく好きになりたいという自分を見つめていないじゃないの。
 
 
 好き合えることよりも、自分が誰かを好きになることから始めなければ、相手が自分のことを好きという
 ことが「どういうこと」なのかわかるよしも無い。
 そして、誰かを好きになったときに、どういう影響が生じて、それに対して自分はどうするのか、どうでき
 ないのか、それをひとつひとつ探っていくこと無き愛は、祥子様と祐巳さんの間にはもう無かったはず。
 そして、それらの諸問題に取り組むための活力こそが、その誰かがどうしようもなく好きという愛の感情
 そのものであればいい。
 祐巳さんらしさは、そう、紅薔薇の蕾たる福沢祐巳の最大の「らしさ」は、そこにこそあるのでしょう。
 ただ祐巳さんが祐巳さんのままでは、祐巳さんらしくなることは出来ない。
 祐巳さんがただ変わっていこうとしていく中で、変わらない自分の何かをみつけ、そしてその不変の自分
 に還るのでは無く、その不変の自分を使って大きく変わっていく、その祐巳さんの飛躍の中にこそ祐巳
 さんらしさが作られていく。
 それは言い換えれば、現実と向き合い、その現実とのやり取りとそれで生じる縁の世界を見つめること、
 それらを含む「祐巳さんのすべて」こそが、本当に祐巳さんらしい祐巳さんということ。
 現実から目を逸らし他者を無視し、自分の中に輝く自分らしさ「だけ」に浸るのは、かえってらしく無い。
 本当に祐巳さんらしい祐巳さんには、自分の前にいる人が「誰」なのか、本当にわかるでしょう。
 誰でも理解しそして受け止めることが出来る、それを成さしめる誰もが持っている鍵たる言葉は、「愛」。
 これぞ、紅薔薇の系譜で御座います。 (笑)
 
 ちなみにまたまた蛇足ですけれど、白薔薇の鍵は「孤独」で、黄薔薇は「虚無」だと思います。
 そしてそのふたつの薔薇は「愛」の紅薔薇との縁に惹かれ自分と改めて向き合う、とまとめるとちょっと
 綺麗でありかつ卑怯かと存じます。 (笑)
 
 
 
 
 と、いうところで御座います。
 今回のお話はこのように、マリみての「世界観」のようなものを十全に活かしたものとなっていて、それが
 物語としてとても良く描かれていたがゆえに、おそらく私は清冽さを感じたのだと思います。
 祥子様と江利子様がそれぞれの妹と孫(妹の妹)をどう導くかというのを、あくまでそのふたりを全面に
 出さず、当事者である妹と孫たる祐巳さんと由乃さんの描写そのものを持って描いて魅せていて、
 この奥行き感もまた静かに後から浸みてくるものでした。
 人物同士の繋がり、いえ、誰かと誰かの繋がり、そしてその外ともにも繋がりが無数にある。
 このマリア様の結ぶ縁の世界の感覚が、清らかに画面の中に流れていたのですね。
 もっとも私の場合、由乃さんが可愛くて仕方なかったのですけれどね(笑)、ただ逆にいえば、
 由乃ちゃんが可愛くて堪らないからこそ、ちょっかいという形で色々と導いてあげたいという江利子様と
 同じ立場であったとも言えますね。
 とはいえ、私の場合は由乃さんの暴走をハラハラしながら、でもきっととても面白いことになると期待して
 見守っていたので、全く同じ立場とは言えませんけれど、今ここまで書いた時点で、それって江利子様
 も普通にそうなんじゃないの?、普通に愉しんでいたよねあれは、と思い直し、改めて、私と江利子様
 は同じ立場だったと宣言させて頂きます。
 私だってこうやって感想を書いて由乃さんを導・・・・こうとしたことにしてください、お願いします。(笑)
 
 
 それでは、本日はこの辺りにて。
 また次回、お会い致しましょう。
 ごきげんよう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                     ◆ 『』内文章、アニメ『マリア様がみてる4thシーズン』より引用 ◆
 
 
 

 

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