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◆◆◆ -- 2009年3月のお話 -- ◆◆◆
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-- 090330-- |
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■■ マリア様の世界を知らず ■■ |
『 祐巳様は瞳子が思ってるよりずっと大きくて、この部屋に入り切らないくらい大きくて、 |
だから瞳子には見えないんだ。 |
だから、瞳子には祐巳様の心がわからないんだ! |
あのとき、瞳子はこの狭くて息苦しい状況から抜け出したがっている、私にはそう思えた。 |
違うの? |
いつまでも狭い場所でひとりで燻っているようじゃ、祐巳様の心には届かない! |
そんなんじゃ、祐巳様のカードは決して見つけられない! 』 |
〜マリア様がみてる4thシーズン・第十二話・乃梨子の言葉より〜 |
氷山のように迫る壁。 |
触れればこちらが溶けてしまいそうな、刺々しい壁。 |
その壁は延々と続き、それはやがて迷路を創る道となっていった。 |
潤いの無い足跡。 |
煌めきの無い足音。 |
来た道はすぐに消え、道を踏む音は反響をずっと残し続けていく。 |
進めば進むほどに、その迷路は迷路として固まっていく。 |
瞳が重く瞼の裏側に張り付き、渇いた唇は指をなぞる。 |
千々に途切れた過去が、記憶ごと肌に張り付いてくる。 |
どんどん、どんどん、固まっていく。 |
喉が焼け付き、熱いと感じた耳裏の感覚が麻痺していく。 |
蹴りつけた冷たい壁に当たった力が、その麻痺した耳裏を通って頭の中を突き抜けていく。 |
ずっと、ずっと、蹴っていた。 |
この、この、この!! |
嫋々と照りつける月光が、窓の外で止まっている。 |
その窓は、もはや壁に溶けて凍っている。 |
開かない。 |
窓に触れれば、この手もやがては・・・ |
出口はどこにも無かった。 |
真四角に区切られた、どこにも分かれ道の無いこの場所で、ずっと迷い続けている。 |
壁は四辺に、それぞれひとつずつの、たった四枚しか無いというのに。 |
地獄よりも豊穣な苦しみに晒されているはずなのに、この肌にはただ自分の中のものだけが張り付いて |
いた。 |
壁だ。 |
すべてが凍り付く、この壁が窓の外のものをすべて吸い尽くし、そして私の叫びもまた、すべて喰い尽く |
ていた。 |
それはまるで、私の輪郭のよう。 |
私は、私のずっと奥深くにある、その小さな部屋に閉じ籠もっていた。 |
冷たく閉ざされ、体の中に張り付いた真っ白な氷牢。 |
それに囚われている。 |
張り付き、しがみついている。 |
窓の向こうが見えない。 |
分厚い氷で閉められた、その遙か外にある、あの曇り硝子の窓が、見えない。 |
見えない。 |
触れない。 |
出られない。 |
そんな、ことばかり。 |
◆ |
私は、私を責めてばかりいる。 |
どうしてかしら、私は私を殺したくて堪らなくなる。 |
死にたいのよ、私。 |
なにも願い事が叶わないなら、いっそ死んでしまおうとか、そんなものじゃ無かった。 |
ただただ私は、自分のことが許せなくなってしまう。 |
結局は全部自分のため、全部最後には逃げてしまう自分が許せなくて、それでやっぱりそれだけが |
許せなくて、私は私の死という最高の逃げ場所を求めてしまう。 |
私がそれを意識していようと意識していまいとに関係無く、もはやそれは公然とした私の願いになって |
しまっていた。 |
それが、許せなかった。 |
一番、一番、許せないことだった。 |
だけど、私はその許せないことに対して、ただがむしゃらに生きることでしか向き合えなかった。 |
祐巳様を泣きじゃくりながら想い、乃梨子に涙ごと抱き締められて、ただそれを求め、しがみついて。 |
それが祐巳様や乃梨子を傷付けてしまうこと、それが許せないという訳では無かった。 |
祐巳様や乃梨子を傷付けてまで、我を忘れて縋り付いてしまう、その私の我の忘れぶりそれ自体が、 |
なんだか無性に許せなかった。 |
だから、乃梨子の胸から顔を離す。 |
乃梨子、乃梨子、乃梨子の馬鹿。 |
なんで私、いつのまにか乃梨子なんて呼び捨てにしているのよ。 |
たかが一回泣き崩れて縋り付いてしまったからと言って、それでなんで乃梨子とただ当たり前のように |
呼ぶのよ。 |
一回呼んでしまえば、もうその事実は消せない、つまり既成事実となったからにはもう最後まで呼び |
続けるしか無いと、そう嬉々として乃梨子乃梨子と恥ずかしげも無く、当たり前に呼び始めた私のこと |
を、私は絞め殺してやりたくなる。 |
そしておまけに、そうまで思っているのに、どうしても私は、乃梨子と呼ぶ私を止めることが出来なかった。 |
この私を止めるには私を殺すしかないと、なぜかあっさりと絶対に越えられない最後通牒を自分自身 |
にちらつかせていた。 |
殺せなかった。 |
そんな理由だけで、私は私を殺すことなど出来る訳が無かった。 |
なんて卑怯なの。 |
そうして私は私を放り出して混ぜ合わせて、どちらがどちらの私なのかをわからないままにひとつの私に |
してしまう。 |
なんて卑怯なの。 |
これが、私だった。 |
結局は、生き延びてしまう。 |
どんどんと、あらゆる要素と戦術を駆使して、私は私の生存を守り続けていった。 |
逃げ場所として死を願ってしまうからこそ、その私が許せなくて殺してしまいたくなるのに、それは結果と |
して死という同じ答えに行き着いてしまう。 |
だから私は、それが許せなくて、どうしても許せなくて、無理矢理私から死という答えだけを取り除いて、 |
これまた無理矢理に生という理由無き答えだけを胸に抱き締めてしまう。 |
私が死を願うのが許せなくて、憎らしくて、その怨みを晴らすために私は私を殺そうという手段に訴え |
たのに、その矛盾を越えることが出来ずに、ただ私は合理的に死の反対の生を私に押し付けてしまう。 |
そう・・・ |
私は死にたいんじゃ無い。 |
私はただ、私を無性に殺してやりたかっただけなのよ! |
生きたくなんてないわよ!! |
私は・・ |
私は・・・・ |
ずっとずっと、私と戦っているのよ!! |
生きる理由なんて無かった。 |
私は憎んでいる。 |
激しく怒りに震えている。 |
対象はなんでも良かったのじゃないかと、今はそう思う。 |
私自身を殺してやりたいと思った。 |
祐巳様を殺したいほどに怨んだ。 |
殺したいと思う理由があれば、それで充分だったんだ。 |
憎しみが、怒りが、怨みが、私だった。 |
私はほんとは、死にたいなんて思ってないんだ。 |
ううん、私が私を殺そうと思う理由のために、私は死にたい死にたいと逃げ回る自分を演じ上げたんだ。 |
そうして死に逃げ込もうとする私なら、私は激しい憎悪で殺してやりたいと思えるのだから。 |
同じように、私から逃げ回るすべての人達を、殺してやりたいと思ったんだ。 |
私も私以外の人達も、私の標的という意味では、全く同じだった。 |
だから・・・・ |
だから私は・・・・生きることに・・・生きることに理由も実感も得ることが出来なかったのかもしれない・・ |
私が生きるということ、生きる理由はただ、私の矛盾からの産物にしか過ぎなかった。 |
私は、私が生きるということが、本当は全然わかっていなかった。 |
ううん。 |
私にとって、生きるということは、そうして生存にしがみつく私を殺して良い理由を生み出す、それその |
ものとしてあることになっているのかもしれない。 |
私は、私を殺したいと思い続けるためにこそ、その殺意の対象としてあり続けるためにこそ、生きている。 |
私はそう、私が生きる理由を創り上げた。 |
でも。 |
駄目だった。 |
だって。 |
そうして書き上げた私の生きる理由を持つ、この私の手が。 |
思いっ切り、お腹を抱えて笑い転げているんですもの。 |
その私が生きる理由というものこそ、ただの理屈にしか過ぎなかった。 |
私は確かにその生きる理由に実感を持てていなかった。 |
でもそれはつまり、私は確かに、その理由とは全然違う理由で生きているのが、この手に取るようにして |
はっきりとわかっているってことじゃないの? |
だからこの暖かい手は、圧倒的な勢いで、笑い転げている。 |
馬鹿じゃないの私、なんて馬鹿なの、幼稚なの、馬鹿なの、と。 |
それは否定とか、責めとか、そういう嗤いじゃなかった。 |
もっと |
もっと |
可笑しくて堪らない そんな暖かい笑いだった。 |
殺したいと思い続けるためにこそ、殺意の対象として生きている、ですって? |
なんて可愛らしいのよ私。 |
それってつまり、その私を殺したいと思う私を利用して、私が生き続けているってことじゃないの。 |
私は私を、どこかで優しく笑ってみてる。 |
私は私を殺してやりたい。 |
殺したくて堪らないの。 |
その願いを満たしてあげれば、私は生きられる。 |
そんな、可愛い存在。 |
殺意に燃える私を見つめる、そのどこかにいるもうひとりの私は、もう善悪なんかとっくに越えている。 |
私はただ、生きたいのよ。 |
そのただ生きたいと願うだけの淫らな自分を殺したいと思う気持ちの方こそ、私の本質では無いの。 |
私はただ、私の本質と向き合えなかっただけ。 |
だからきっと。 |
その私の本質である私の方こそが、その未熟で、けれど愛らしい私をずっと見守っていてくれたのよ。 |
私は弱い。 |
私は醜い。 |
私は情けない。 |
私は、私は。 |
そうして、私を責める私こそに、私は私の主体を感じていた。 |
私は強くなりたい。 |
私は美しくなりたい。 |
私はしっかりしたい。 |
私は、私を越えていきたい。 |
そしてずっと、私はそうして、弱くて醜くて情けない私を責めながら殺したいと願いながら、けれど、 |
そうして低劣な自分を捨てて生きようとする事もまた間違いと感じていたからこそ、そうしてなにかを |
捨てようとする私を憎んで、なんとか捨てずに踏み止まって、戦いながら生きてきた。 |
捨てて良いものなんて、なにも無い。 |
だから私は、その捨ててはいけないものを、私を、全部背負って生きていく。 |
捨てられる訳、無いじゃない。 |
ええ。 |
そうなのよ。 |
そう、だったのよ。 |
私は・・・ |
私はそうしてずっと、私を背負い続けているだけだったのよ。 |
その私が背負っている私もまた、そうして自分を背負ってくれる私のことを背負いたいと、 |
そう思っていることを無視しながら。 |
私はそして |
そのことに、ずっと前から、気づいていた |
祥子様は言ったわ。 |
『わたくしには、あなたが祐巳から逃げているように見えるわ。』 |
『祐巳と向かい合うの、怖い?』、と。 |
私は・・・ |
自由奔放な、それなのに普通にそのまま生きられる、そんな祐巳様が怖かった。 |
祥子様の仰る通り、自分の中の弱いものが照らし出されてしまう気がして。 |
そう・・ |
私は、私の弱い部分を、責めることしか出来なかった。 |
私は、私の弱い私と、ひとつになることが出来なかった。 |
それが、それこそが、本当の私の弱さ。 |
私はそれと、向き合えなかった。 |
祐巳様のように、自分の弱さとひとつになりながらも生きることが、出来なかった。 |
そんな完璧な祐巳様が目の前にいるのが、ただただ、怖かった。 |
それが、それこそが、私が私の完璧になる道筋を、閉ざしていた。 |
完璧になるために、自分の弱さを消そうとすることしか出来ない、その不完全な私こそが、私を私という |
輪郭の中に閉じ込めていた。 |
自分の弱さを受け入れたって、いいえ、受け入れひとつになり、共に生きて、共に様々なものと向き合 |
っていけるパートナーになるからこそ、本当に私は強く、完璧なひとりの人間になれるのに。 |
そして、その完璧なひとりである私こそが、祐巳様と、他の誰かと向き合うからこそ。 |
パートナーを作ることが出来るからこそ。 |
その完璧な私をまたひとつ、越えていくことが出来るのに。 |
私はそうしなければいけないということが、ずっとずっと怖かったのよ。 |
わかっていたのよ。 |
わかっていたから、その事実だけ無視するためにこそ、必死に戦っていたのよ。 |
辛いわ。 |
辛すぎるわ。 |
辛さを感じることすら出来ないほどに、私の心は爛れていく。 |
でも |
でも |
そうして辛さを感じられないのは、最大のチャンスでもあった。 |
私の無意識の、無造作の生存本能が、私を辛さから自由にしてくれたの。 |
辛いから、苦しいからこそ私は希望を失わずに生きていけたはずなのに。 |
その辛さや苦しみを消そうとするのは逃避だと、そう考えたからこそ必死に逃げずに生きてきたのに。 |
なにも捨てる訳にはいかなかった。 |
捨ててなんて、行ける訳無いじゃないの。 |
祐巳様の気持ちとか、ママの気持ちとか、誰かのためにとか、そんな自己犠牲的な想いが逃避にしか |
過ぎないとわかっていながらも、私は全然まだ、なにもわかっていなかった。 |
その自己犠牲という逃避だって。 |
私が生きたいとおもう衝動の、それの選んだ有効な手段だったのよ。 |
その手段を活かせなかった、ただ逃げようとする自分を責めるだけの、その私がいただけだったのよ! |
それこそが! |
その手段を活かせなかった、いいえ、活かそうとしないで自分を責める自分こそが! |
なによりも、私が生きようとすることから、私自身からこそ、逃げてたんじゃないの!! |
それでも私はまだわかっていなかった。 |
それでも私はまだ諦めていなかった。 |
祥子お姉様は、立派な人。 |
昔から、尊敬出来る人だった。 |
お姉様みたいな人に、なりたかった。 |
だけど、私にはどうしてもわからないことがあった。 |
祥子様は、祐巳様は自分を映してくれる鏡だと。 |
だから祥子様は、その祐巳様に映った祥子様自身の見たくない弱い部分を、見つめたと。 |
見つめて、直すために、と。 |
私は違和感を感じた。 |
最初私は、おかしいと感じた。 |
あの完璧に近い祥子様でも、まだ弱い部分がお有りだったのね、だからその弱い部分を潰すために |
祐巳様を見つめていらっしゃるのね。 |
そうして弱い部分を潰し切った祥子様は、きっと素晴らしく厳しい清冽な完璧な人になっていると。 |
でも、どうしてもそうは見えなかった。 |
祥子様はどんどんと、柔らかくなっていた。 |
そもそも、あの祐巳様を見て、祥子様がよりご自分を厳しく律するようになれるとは思えなかった。 |
せいぜいがところ、だらしのない祐巳様を反面教師にするくらいだと。 |
でも、祥子様は祐巳様はご自分の弱い部分を映し出す鏡と仰ったのよ。 |
おかしいじゃない、祐巳様は明らかに祥子様よりも厳しい方じゃ無いじゃないの。 |
自分よりも上の存在を見つめて、自分のまだまだな至らなさを反省する、ということじゃなかったの? |
私はそして、その違和感を抱えて、敢えて突き進んだ。 |
もうわかっていた。 |
そうじゃないことは。 |
これは明かな私の欺瞞だった。 |
だけど。 |
私は |
もう |
無我夢中で |
ひた走った |
それを |
乃梨子が 止めてくれた |
止めてくれるって |
信じていた |
もう 信じていた |
だから ひた走ったのよ |
祐巳様のカード。 |
紅いバレンタインのカード。 |
それを手に入れれば、祐巳様と一日デートが出来る。 |
ただそれだけ。 |
必死だった。 |
私が持てるすべてのものを動員して、押さえ込んで、無視して、切り刻んで、煽てて、あやして。 |
私は自分がなにをしているのかわからない訳じゃ無かった。 |
私は祐巳様のカードを探している。 |
わかっている。 |
だけど、わかっているのは、それだけだった。 |
それで充分なのかどうかすらも、私にはわからなかった。 |
探す、探す、探す。 |
涙が体に犇めいていく。 |
体の中に、血の流れに乗って、熱く、熱く、この私の氷の牢を、溶かして頂戴。 |
その涙がきっと、そのまま凍り付き、よりその私の小さな部屋を押し固めてしまうかもしれなくても。 |
私は探した。 |
涙をすべて私の胸の中に注ぎ込んで、探し続けた。 |
祐巳様の馬鹿、祐巳様の馬鹿、馬鹿っっ!! |
必死に探した。 |
恥も外聞も無いわ。 |
私には祐巳様との接点がある。 |
未来の白地図、あれはきっと私と祐巳様を繋ぐひとつのピースになったはず。 |
そうなるように、私は散々頑張った。 |
だから私は、その小さく四角に区切られた部屋の中で、地図帳の中を調べて回った。 |
この中に、きっとあるはず。 |
私は・・・私は・・・・・ |
それだけのことをしてきた。 |
私は間違ってない、恥や外聞に囚われずに、ちゃんと私は私のするべきことを・・・・ |
祐巳様は・・・祐巳様は・・・・・ |
私が・・・ |
私が・・求めた・・・・ |
私の・・・・・・私の・・・・・・好きな・・・・・ |
祐巳様は・・・・・ |
この部屋にだけは、絶対にいないということがわかっていたから・・・・・・・ |
私が求めた紅薔薇の蕾の、すべてのものと、本当に向き合える紅い祐巳様は、 |
絶対にこの部屋の外にいると、信じていたから!! |
正解だった。 |
このなにも無い、誰もいない、真っ白な地図の世界の中にこそ、答えはあった。 |
真っ白な薔薇、白薔薇の蕾たる乃梨子が、その部屋の中で教えてくれた。 |
なにも無い、それがあんたの答えでしょ! |
あなたが求めてたのは、その白い地図、あなたがまだなにひとつその地図に描き込むべき世界を知らな |
いという、その事実を照らし出してくれる、そのあなたの白地図を見つめることだったんでしょ! |
そうよ、乃梨子。 |
祥子様は、ご自分が自分のことを厳しく律することしか出来ない、それ自体を祥子様ご自身の弱さ |
として見たのよ。 |
だから、祥子様とは違う、素直で真っ直ぐな祐巳様を見て、そのご自分の弱さと向き合うことが出来た |
のよ。 |
わかっている。 |
わかったのよ。 |
それが悲しくて、悔しくて、情けなくて。 |
私も・・・・ |
私も・・・・・・・・ |
どうしようもなく 祥子様と同じように やり直したくなったのよ |
なにも無い、真っ白な地図の中に、答えがあった。 |
私が求めるものがどこにあるのか、それを示す答えが。 |
乃梨子、あなたは私が祐巳様を甘く見過ぎていると言うけれど、それは私も同じこと。 |
乃梨子も、私のことを見縊り過ぎよ。 |
私が求めているのは、その白地図の中の答えじゃ無いわよ。 |
私が求めているのは、ただ。 |
その答えの指し示す、私が求めるもの、そのものよ。 |
私の無念は。 |
私の怨念は、すべて。 |
あの誰もいない、四角く凍り付いた小さな部屋の中の、あの白地図の中に置いてきた。 |
いいえ。 |
私はあの地図に、やっと描き込むことが出来たのよ。 |
無念を。 |
怨念を。 |
私が描きたかったのは、それなのよ。 |
私はその完璧な色彩に彩られた、地獄絵図を越える凄艶な絵地図を見たかったのよ。 |
そして。 |
ではなぜ、私はその地図を描きたかったのか、それを見てみたかったのか。 |
乃梨子 |
ありがとう |
やっと |
やっと |
わかったのよ |
私は |
その地図をこの手でなぞって |
祐巳様の元に続く道を調べて、ひた走りたかったのよ! |
地図そのものは置いてきた。 |
私の胸に、私の中の小さな部屋の中に、置いてきた。 |
だからそれは消えない。 |
でも。 |
消えないからこそ、私はもう、それを握り締めて、祐巳様とその元に辿り着けない私を詰る、 |
その地獄の世界に閉じ込められずに済む。 |
地図の中に祐巳様はいない。 |
当然よ。 |
祐巳様は、その地図の外にいる。 |
そして。 |
だから。 |
その地図が、祐巳様がその地図の外のどこにいるのかを、指し示している。 |
祐巳様がこの世界の中のどこにいるのかを、教えてくれる。 |
地図ってそういうものなのよね、当たり前過ぎて涙が出てきたわ。 |
怒りと怨みそのものは、祐巳様の元までの道筋を示したりなんかしない。 |
でも、怒りのままに、怨みのままに書き綴った、その殺意に満ち満ちた饒舌な地図そのものは、 |
なによりも、なによりも豊穣で、そして正確無比なのよ。 |
だって。 |
その地図を書いたのは殺意でも、描き込められたものも殺意でも。 |
その殺意に地図を描かせたのは、紛れも無い、私自身なんだから。 |
生きて、生きたくて、堪らない |
祐巳様を愛して、愛したくて、堪らない |
その愛しい私が、祐巳様に会いに行くために描かせたものなのだから。 |
当然、その私になら、その滅茶苦茶にしか見えない地図だって、ちゃんと読み解けるはずなのよ。 |
怨みのまま、殺意のままに読めば、その通りの道筋がみえる。 |
そして |
愛のままに、生きたいままに読み解けば |
それに見合う、愛しい道筋が、見えてくるはずよ |
すべてを満たす完璧な地図が、其処に出来ていた。 |
そして私のその地図の読み方は |
もう |
とっくの昔に |
決まっていた |
祐巳様のことが |
私は |
好き |
なんて単純なの |
なんて |
|
清々しいの |
そしてその清々しさは、一瞬で私の体から抜け出て、私の背を押す風となって囁いた。 |
祐巳様 |
祐巳様 |
祐巳様! |
その囁きが私の中を駆け巡る。 |
それは電流よりも激しく、氷よりもびっくりするほどに冷たかった。 |
それはどうしようもないほどに、新鮮で、斬新な、ぬくもり。 |
繊細で、圧倒的で、透き通るほどに凝縮されていく、愛の結晶。 |
降る |
降る |
私の中に 涙の粉雪が |
私の中の氷牢をそれは溶かし、けれどその溶けた氷が再び凍り付くことが出来るほど、 |
もう |
私の体は 冷めていなかった |
走って |
走って |
燃えるほどに、凍り付くことなんてもう二度と出来ないほどに、私は熱くなっていたのだから。 |
私はもうその牢から抜け出て走っているのに、その牢がゆっくりと溶けていくのを感じて涙する。 |
幸せだった。 |
とんでもなく、幸せだった。 |
この氷の牢が溶けて、その雪解けの水が私の血となって私を暖めてくれるの。 |
愛しかった。 |
どうしようもなく、祐巳様の元へ、走り出したい。 |
好き |
たった一言 |
とんでもなく |
どうしようもなく |
祐巳様のことが 好きなのよ! |
走って |
走って |
走ってよ私の足! |
もっと高く早く振り上げてよ私の手! |
届いてよ! |
祐巳様を求める私の声! |
すべてがただ、現実となっていく。 |
不可能だと、非現実だと思っていたことのすべてが、そのままじっくりと実現されていく。 |
なにも、無くなってなどいなかった。 |
なんにも無くなってないじゃない! |
私はなにも、捨ててなんて、失ってなんて、いなかったじゃないの! |
見えた! |
祐巳様のいる場所! |
薔薇の館! |
そう、私は知ってる。 |
なにも変わってなんかいない。 |
最初からすべてが其処にはあった。 |
私が求めたものは、なにも消えてなんて・・・ |
私は紅薔薇になりたい。 |
私は祐巳様になりたい。 |
なにも、誰も捨てたりなんかしたくない。 |
諦めたくない。 |
私のことも、ママとパパのことも、祐巳様のことも。 |
リリアンのことも、他のすべての人達のことも。 |
全部、全部、私は向き合いたい。 |
紅い |
紅い薔薇が、一番真ん中で咲き誇る。 |
すべてを受け入れ、すべてと真剣に向き合える、薔薇の中の薔薇。 |
ときに厳しく、ときに優しく、厳しいだけの、優しいだけの、その強くも弱いものすら抱き締める。 |
それが、紅薔薇。 |
その紅薔薇のすべてが描き込まれた、その紅いカードは・・・きっと・・・ |
祐巳様の・・・ |
私の外にいる、私が求めた、すべてと向き合える偉大な祐巳様の、その坐すところにあるはずよ |
誰よりもはやく |
誰よりも激しく |
誰よりも |
愛しく |
必死に辿り着いた曇り硝子の窓を |
熱いぬくもりに溶かされた |
私自身の |
この手で |
引き開けて |
『 祐巳様っっ!! 』 |
◆ 『』内文章、アニメ『マリア様がみてる4thシーズン』より引用 ◆ |
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■■ 友の音がきこえて ■■ |
『本当に、お前じゃ無いんだな? 俺を追い回したり箱に閉じ込めたりしたのは。』 |
『ああ、違うよ。』 |
『そうか・・・さっきはごめん。』 |
〜続 夏目友人帳・第十二話・カイと夏目の会話より〜 |
|
西日が眩しい。 |
黄昏の時間。 |
ぽん ぽん ぽん |
音がする。 |
時間が流れている。 |
ほんのひとときのはずなのに、その時間は永遠に続いている。 |
区切られた時間。 |
閉じ込められた現実。 |
この穏やかな黄昏が、ずっと止まったままでいる。 |
もしかしてこれは、いつか終わってしまうんじゃないだろうか。 |
そう思った。 |
そう思ったのに。 |
怖くなかった。 |
俺は、信じ切っていた。 |
この時間が、この世界が続くことを。 |
なんの根拠も無く。 |
なんの根拠も無いことに、なぜか耐えることが出来ながら。 |
◆ |
不思議な気分だった。 |
どうして俺は、ここにいられるのだろう。 |
それがわからないから、ただここにいて良い理由を求めていた。 |
俺はたぶん、ここにいて良い理由を求めずにはいられないから、それを求める、という事はしていない |
気がする。 |
どこか、切実になり切れていないところがあるんだ。 |
だから、その切実になり切れていない自分がいること自体が恐ろしく、なんとか切実になにかを求め |
なければいけないと、そのこと自体にこそ、なにか切実なものを覚えている。 |
どうしてみんな、あんな一生懸命になれるのだろう。 |
どうして必死になれるのだろう。 |
どうだっていいとは思わないけれど、どうしてもこうで無ければならない、という風には感じなかった。 |
俺だけなんだろうか、そういうのは。 |
それが、不安だった。 |
だから俺は、気づかないうちに、俺と同じ人間を求めていた気がする。 |
俺は、俺が此処にいられる理由がわからなくても、たぶん此処にいられる。 |
だけど周りの人は皆、自分が此処にいても良い理由を懸命に探している。 |
俺は、仲間外れなのは嫌だった。 |
独りは嫌だった。 |
だから、自分も此処にいて良い理由を探そうとした。 |
だが、見つからなかった。 |
いや、正確に言えば、見つかり過ぎた。 |
そして、その理由があるからこそ俺は此処にいて良いのだと、そう宣言することの、その虚しさを感じて |
、どうしてもそれらの理由に実感を持つことが出来なかった。 |
俺は俺だ、ずっと此処にいるんだ。 |
理由があろうとなかろうと、全然関係無い。 |
そう言えてしまう自分が、たった独りで周りのみんなを見つめている姿が、みえた。 |
悲しかった。 |
どうして俺は・・・ |
そのとき、俺はわかった気がした。 |
俺は、みんなのことがわかっていないんじゃないか、って。 |
どうしてみんなは、あんなに必死に自分がそこにいて良い理由を探すのだろうかって。 |
そうしたら、わかったんだ。 |
みんなもう、意識的にも無意識的にも、わかってるんじゃないか、って。 |
自分がここにいて良い理由があろうとなかろうと、自分が変わらずに此処にいること、それはとても、 |
怖いことなんだ。 |
孤独、なんだ。 |
俺だって、なんの理由も無くても此処に平然としていることが出来ると言っておきながら、もうこんなに |
長いこと、自分がいて良い理由を求めることに切実になれない自分に、苦しんでいるんだ。 |
生きていて良い理由があるかないかが、俺が此処に存在すること自体を左右することなんて無い。 |
でも、俺は此処にいるんだ。 |
みんなの中で、みんなの目の前で、みんなを見つめながら。 |
俺が此処に存在することと、俺が此処にいることは、違うことなんじゃあないかと思った。 |
俺は確かに、みんなを求めてる。 |
独りが、嫌だから。 |
俺は、独りでいることに満足なんかしていない。 |
独りでもいる事が可能なだけで、でも、それは独りでいたいという願望がある訳じゃ無い。 |
俺は、独りはいやだ。 |
俺は、此処にいたい。 |
みんなと一緒に、此処にいたい。 |
だから俺は。 |
俺が此処にいて良い理由を、おそるおそる、求め続けているんだ。 |
俺は、独りになりたいなんて思わない。 |
俺が此処にいて良い理由を求めることが虚しいと言って、自分が此処に存在していることだけに満足 |
するなんて、絶対に嫌なんだ。 |
なのに俺は、俺が既に此処に存在しているということに安堵して、どうしてもそれで怠けて、それに頼って |
しまうんだ。 |
俺は、それが怖いんだ。 |
俺が、必死になれないのは、その安堵があるからなんだ。 |
だから。 |
俺はこうしてずっと、そうして怠けようとする自分と、必死に戦ってきたんだ。 |
こんなに楽しいのに。 |
こんなに幸せなのに。 |
なのにいつも、それらを手にするための苦しみや悲しみを盾にして、その楽しさや幸せから逃げようと |
してしまう。 |
あまつさえ、大切な人に迷惑をかけてまで、幸せになんかなりたく無いとまで言ってしまう。 |
ひどいよな。 |
そんな事言ったら、その俺の大切な人自身が、俺に迷惑をかけてまで幸せになろうとすることを奪って |
しまうだけなのに。 |
いや、俺は、怠け者の俺は、むしろ逆に、そうして誰かに迷惑かけられたく無いからこそ、自分も誰かに |
迷惑をかけないように率先してやっているだけにしか過ぎない。 |
怠けを正当化してるだけなんだ。 |
大切な人の、本当の幸せを奪って、ね。 |
ひどいんだ。 |
俺はそれが、耐えられなかった。 |
誠実なフリして、そうした不誠実なことをしようとすることが。 |
放っておけば、俺はどこまでも、俺を捨ててみんなのために身を退こうとしてしまう。 |
自分だけの、俺が存在しているということだけの世界に。 |
そうすることで、みんなにもそうすることを強制しているというのに。 |
俺は、そんなことを俺がすることが許せなかった。 |
ああ、先生。 |
俺はね。 |
その俺を許さないという口実をこそ必死に今まで創ってきたんだ。 |
ああ。 |
俺が、みんなと一緒にいたかったからな。 |
だからこれが俺の、自分が此処にいて良い理由なんだ。 |
でも |
『放っておきたくないと思ったら、すぐに手を出してしまって。』 |
『そういうのって、高慢なのかもしれない。』 |
『結局は自分が迷惑を引き込んでいる気がする。』 |
『少し前までは、すべて妖怪のせいにしていたけど・・・』 |
俺は随分と、みんなの中に入ってきていた。 |
みんなと一緒にいて、そしてその中で、俺のことをわかってくれる人達とも一緒にいることが出来て。 |
可能性は無限大、そしてその中で、自分を愛してくれる、自分以外の人とも過ごしていける。 |
幸せだった。 |
少しずつ、少しずつでも、自分をわかって貰おうとする努力は、諦めなかった。 |
自分だけがわかっていればいい、自分で全部背負って秘密にしていこうとか、どうしてもそうしてしまおう |
とする自分と戦い続けてきた。 |
ゴールなんて無い。 |
もう既に、俺はこの世界の中に、みんなの中で、こうして生きている。 |
多かれ少なかれ、みんなそういう戦いをしているんだ。 |
だからもう、俺は、特別では無くなっていた。 |
もう孤独なんかじゃ無い。 |
だけど・・・ |
そうして、いつのまにか自分が此処にいて良い理由を切実に求める事が出来るようになっていた俺は、 |
逆に俺が俺だということを、ここにいて良い理由があろうとなかろうと関係無く俺がいるということを、 |
その境地から抜け出すことにこそ必死だった自分のことを、見失いかけていた。 |
なんだろう。 |
俺が、特別な俺で無くなってしまっている。 |
俺が此処に存在していることと、俺が此処にいることは違うとわかっていたはずなのに、いつのまにか |
俺は、俺が此処にいるということだけになってしまっていた。 |
俺が此処に存在しているということは、とてもとても、特別なことのはずなのに。 |
勿論特別なのは俺だけじゃ無い。 |
みんなひとりひとり、特別なんだ。 |
みんな特別ということは、特別な者などいないということにはなるけれど、それは半分は間違いなんだ。 |
それは、特別で無い者などいないというだけで、ひとりひとり、特別な者がいるという事自体は否定 |
出来ないことなんだ。 |
俺には俺の特別、俺だけにしか視えないもの、俺にしか出来得ないことがあるのは、事実なんだ。 |
いつのまにか、その辺りの感覚が、薄れていた。 |
俺は、特別だ。 |
だから。 |
その俺の特別が、みんなに与える影響があることを、忘れちゃいけない。 |
いや。 |
俺は今まで、その俺がみんなに与える影響を考えて、それをひとつひとつ計算しながら、みんなと一緒 |
に生きようとすること、俺が此処にいて良い理由を創る礎にしてきたんだよな。 |
なのに今こうして、俺がその此処にいて良い理由を創ることに切実なものを感じ始めているうちに、 |
そのみんなに与える影響を考えることの、本当の意味がわからなくなってたんだ。 |
俺は、俺がみんなと一緒にいるためにこそ、みんなのことを考えた。 |
それは、事実だ。 |
だけど、それだけでいいはずが無い。 |
俺は人間だ。 |
だけど、他の人には無い能力を持っている。 |
そして、カイは人の姿をして、人の社会でちゃんと生きているのに、正体は妖怪だった。 |
どこか、ほっとしている俺がいた。 |
最低だ、という言葉すら吐けないほどに、俺は心底今の俺に驚いていた。 |
俺だって特別なはずなのに、化け物扱いされるはずなのに、本当の化け物と出会って安堵するなんて。 |
俺は最初、カイは俺と同じで、妖怪を視る能力がある人間だと思っていた。 |
とても喜んでいる俺が、そこにいた。 |
カイが俺と同じで、だから、カイが妖怪に付きまとわれていることから助け出してやれると思った。 |
そう、全力で。 |
俺が隠しておくべき特殊な力を、同じ力を持つカイの前でなら、すべて開放して見せる事が出来ると。 |
俺の事を知る多軌と、カイを背負いながら歩いた夕暮れの中の帰り道が、なにより心地良かったんだ。 |
その隣には先生がいて、それに田沼もいて、そして頼めば力を貸してくれる妖怪達も、もう結構な数に |
登っていた。 |
独りじゃ無い。 |
その中で、カイを守ってやれることが嬉しかったんだ。 |
なにより、そのカイが、俺のことを理解してくれる、俺と同じ存在だということが嬉しかった。 |
『それから放課後は、毎日のようにカイと過ごすようになった。』 |
カイは普通の小学生だった。 |
けれど、カイは、自分が妖怪に追い掛けられていると周りに漏らしてしまっているのに、その周りの人達 |
に迫害されるどころか、優しく守られていた。 |
勿論、帰りの遅い両親の事で色々あるんだろうという心配のされ方だったが、けれどカイを守ろうとして、 |
カイの周囲の人達、友達はみんな暖かくカイを取り巻いていた。 |
俺は、そのカイを守る者の一員になれて、嬉しかった。 |
この子は、俺が守ろう。 |
このみんなから愛されているこの子を守りたい。 |
みんなと一緒に守りたい。 |
俺は、図らずも、カイを通して、みんなと繋がれた。 |
だから俺は、カイを視ていなかった。 |
カイを見つめている俺の姿を、俺は見失っていたんだ。 |
カイは妖怪だった。 |
人間として生きて、人間として存在している、妖怪だった。 |
その事実を知ったときに、俺は深く安堵した。 |
俺は妖怪じゃ無いんだ、と。 |
俺は、人間なんだ、と。 |
どんなに否定しようと、俺はそうして満足したように鎮まってしまう。 |
なんだろう。 |
俺はその俺を罵るよりも、それよりもどうしても問いたいことがあった。 |
俺は一体、なにに囚われているんだろう。 |
俺は人間だけど、普通の人間じゃ無い。 |
そういう意味では、普通の人間から見たら、俺も妖怪と同じだ。 |
だけど俺は、でも俺は人間なんだ、ただ特別な力を持っているけれど、同じ人間なんだと心の中で |
叫んでいる。 |
俺は、人間なんだ。 |
その叫びは、妖怪という存在無しには、あり得ない。 |
少なくとも俺は、妖怪を差別することで、俺が俺という人間であるという自覚を得ていた。 |
人か妖か。 |
その差異を意識することでしか、俺は人でいることが出来なかった。 |
俺は普通じゃ無いのに。 |
俺はカイと同じで迫害されるべき存在なのに。 |
そこで。 |
少し笑ってしまった。 |
なにを俺は言ってるんだろう、と。 |
俺は普通じゃ無い。 |
他のみんなとは違う。 |
俺は特別だ。 |
ああ、そうだよ先生。 |
俺は変なことを言ってるんだ。 |
俺が特別なのは事実だけど、でも特別なのは俺だけじゃ無い。 |
みんなだって、そうさ。 |
ひとりひとりが、他の誰も持っていないものを隠して、それがバレたら嫌われるのじゃないかと、そう |
思いながら生きている、特別な唯一無二の存在なんだ。 |
その特別な存在達が人の数だけいるからこそ、特別であること自体は特別じゃ無いんだ。 |
そのひとりひとりが隠していることに対しての反応は、様々だ。 |
嫌われるだけで済んだり、迫害されるところまでいったり、逆にあっさりと受け入れられてしまったり。 |
その差異にしか、その中にしか、俺は俺の特別を、実は感じていなかったんだ。 |
だから、俺よりも圧倒的に迫害されるだろう妖怪が正体であるカイを見て、安心したんだ。 |
ああ、俺はカイよりは普通で無い度合いは小さいんだ。 |
だから俺は。 |
普通なんだ。 |
特別では無いんだ、と。 |
笑っちゃうよな、先生。 |
本当に、馬鹿だ、俺。 |
俺が特別であることは、カイが特別であることと全く等価だ。 |
俺が特別であることは、永遠不変、絶対のことなんだ。 |
そして当然、俺達以外の、そのすべての人達自身それぞれの特別もまた、同じなんだ。 |
みんな特別であることは、変わらない。 |
ただすべて、差異の大小の中にこそ、普通か普通で無いかというモノを創り出しているんだ。 |
ああ。 |
そうだよ先生。 |
俺達人間はきっと。 |
自分が特別であるということが、怖いんだ。 |
みんな自分の孤独が、嫌なんだ。 |
俺はだから、自分の孤独から逃げようとはしていなかったのに。 |
いつのまにか、ごちゃ混ぜになっていた。 |
俺が存在することと、俺がいることは違うってわかっていたはずなのに。 |
先生。 |
ひとりと、独りは違うんだよな。 |
俺はひとりだ。 |
孤独なんだ。 |
その事実は変わらない。 |
だけど、その自分の孤独と向き合うだけで、やっていける訳が無いんだ。 |
いや、俺が俺の孤独をみつめる事自体は、決して俺が生きるという事の本質なんかじゃ無いんだ。 |
ひとりだからこそ、俺は他の人達の、その人達自身の「ひとり」とも向き合いたい。 |
俺だけが、特別な訳じゃ無い。 |
勿論、特別なんて無い、なんて言葉はナンセンスだ。 |
俺はみんなの孤独を知りたい、みつめたい。 |
ああ、先生。 |
みんなと一緒に、生きたいんだ。 |
それは、自分がひとりだという事から逃げたいからなんかじゃ無い。 |
逆だ。 |
俺が、自分の孤独ばかりを見つめることを、俺が生きる意味にしてしまおうとするからだ。 |
この世界はこんなに豊かなんだ。 |
俺ひとりのことを見つめてるだけなんて、そんな勿体無いことは出来ない。 |
この世界を、放っておける訳が無い。 |
目の前に、みんながいるんだ。 |
だからこそ、差異の大小の中に普通という概念を作り出す意味もわかってくる。 |
そういうものを作ってまでして、みんなはみんなと向き合いたいんだ。 |
俺だって、偉そうに言ってきたけど、ほんとはひとりは寂しいんだ。 |
でも俺は、その「ひとり」を「独り」という言葉に換える。 |
言ったろう? 俺が此処に存在していることと、俺が此処にいることは違うって。 |
俺が此処に存在していることは変えられないけれど、俺が此処にいることはいくらでも変えられるんだ。 |
だから、独りは嫌だと言って、誰かと繋がろうとする事が出来る。 |
みんなの中に、差異の大小の中に創った、普通というものを見つめて生きていけるんだ。 |
普通を、みんなを、求めて。 |
独りは嫌だ。 |
だからいつでも、自分のひとりと、向き合える。 |
いいや。 |
自分がひとりだって事をなによりも認識しているからこそ。 |
俺達は、独りから抜け出そうとして、必死に生きることが出来るんだ。 |
俺はその生にしか興味は無い。 |
そしてだから俺は・・・・ |
カイを受け入れることだって、出来るはずだ。 |
だってカイは。 |
妖怪が視えるという特別な力を持ちながら、あんなに周りの人達に受け入れられていたんだから。 |
勿論それはカイ自身がその特別な自分のことを、無意識にでも上手く伝えていたからだ。 |
それが、普通だったんだ。 |
その普通は、その前は普通じゃなかったはずなのに。 |
普通に、変わったんだよ。 |
変えた誰かが、いたんだよ。 |
カイが妖怪だと知れたら、その普通は、どうなるんだろう。 |
誰がそれを、また新しい普通に変えてやれるんだろう。 |
差異ってなんだろう。 |
カイが比較されるべきものはなんだろう。 |
カイが人間か妖怪かということだろうか。 |
それとも。 |
カイが人間らしく普通に生きようとするか、そうしようとしないか、ということだろうか。 |
普通は、必要だ。 |
比較は、必要だ。 |
普通が比較がいるかいらないか、なんてどうでもいい。 |
なにが普通かなにを比較するか、ただそれだけが俺達に必要なものなんだ。 |
だって俺達には。 |
みんなが、いるんだから。 |
友達が、いるんだから。 |
その嬉しさは。 |
なにものにも、代え難いんだよ、先生。 |
ああ、先生。 |
嬉しいから、自分の特別を隠して自分で背負うことも出来るんだ。 |
そして、なによりも嬉しいからこそ、自分の特別を少しずつみんなにもわかっていって貰おうと、 |
みんなにも少しだけ背負って貰おうとすることに、必死になることが出来るんだ。 |
みんなが、好きだから。 |
普通が、好きだから。 |
だから。 |
その普通を、豊かにしていきたいんだ。 |
みんなの特別を、少しずつ、ゆっくりと吸い上げて、誰もが愛しく抱かれるような、そんな世界に。 |
だから、ちょっとムキになってしまった。 |
放っておける訳無い。 |
俺が介入することで変わる世界を、恐れていたくなんてなかったから。 |
俺にはわかるんだ。 |
カイが、俺に迷惑かけたく無いからこそ、俺に手を伸ばさないということが。 |
そして俺が、俺自身もカイに手を伸ばしたくないからこそ、俺自身が引き込む迷惑を盾にしていることが。 |
カイに迷惑かけるかもしれない。 |
そして俺は、そのかけた迷惑を背負うことからこそ、逃げようとしてた。 |
だから。 |
むかついた、正直。 |
自分に。 |
だからムキになって、無理矢理カイを助けるために、手を伸ばし、カイを背負ったんだ。 |
カイもまた、俺を守ってくれていた。 |
『俺、初めてだよ、守らなくちゃなんて言われたの。』 |
ああ 音がする |
音が聴こえる |
なんて、繊細なんだろう。 |
なんて奥深くて、幸せに震えてしまえるような、薫り高い音楽なんだろう。 |
刻々と、ゆっくりと広がるように、無数の音が体を包んでいく。 |
嬉しいな |
涙が止まらない |
守ろう |
守られたい |
守ろう |
守られたい |
花が満ちている |
花が満ち満ちている。 |
花に 飾られていく |
なんだ |
ほんとに世界って、豊かなんだな |
その世界を、その世界で確かに楽しめる、俺はどうしようも無く、本当にただ此処にいた。 |
頑張ろう。 |
その言葉に引きずられようとそうでなかろうと。 |
俺はもう、頑張ろうと、口ずさんでいた。 |
頑張ろう。 |
幸せな 豊かな |
みんなの |
友達の |
特別な音楽に 誘われて |
先生、いくぞ。 |
カイを助けに。 |
ふん、次こそ紙を出せよ、諭吉だ、諭吉を寄越せ。 |
ああ、先生の働き次第だな。 |
だから、頑張ろう。 |
カイから俺を |
無垢な誰かの存在を、奪わせたりなんかしないぞ。 |
『あの子を、守ってやりたいな。』 |
◆ 『』内文章、アニメ『続夏目友人帳』より引用 ◆ |
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-- 090326-- |
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|||||||||||||||
■■ 春ですね、わかります ■■ |
とりにだーどとばこ。 (挨拶) |
ごきげんよう、紅い瞳です。 |
すっかり春ですけれど、皆様如何お過ごしですか。 あ、挨拶は気にしないでください。 |
んー、もういくつ寝ると四月ですか。 |
お花見の季節ですか、早いですねぇ。 |
でもなんか、あまり天気がよろしくない。 |
もうちょっとこう、カラっと綺麗に晴れないものかなー、などと思っている今日この頃の私です。 |
さてと。 |
久しぶりに前置きのご挨拶を書こうと思ったら、あまりに書くことが無いので、単純すぎて逆に自分でも |
よくわからない自分の心情を述べてみた訳ですけど、ほんとわかんないですね、書くこと無くて。 |
挨拶とかそういうのはしばらくしてないと、ほんとなんて書き出していいかわかりません。 |
このあとになんて続けたらいいのかもわかりません。 |
だから前置きは、無しで。 |
以上、前置きでした。 |
うわあ。 |
◆ |
改めまして 、マリみて・夏目感想日記では愛愛書いてるのに、この雑日記ではさっぱりそんなことは無い、 |
愛のないっていうかやる気の感じられない感じで、ごきげんよう。 |
ええと、今日はマリみてと夏目の話をさせて頂くのでしたよね。 |
うーん。 |
と言っても、特にお話するような事は無いのですけれど。 |
だって、感想で全部書いちゃったもの。 |
でもま、うん、全部書いちゃったけど、書いちゃった時点で、またなにか書きたいものは浮かんできてる |
やもしれず、そうですね、それを考えてみましょう。 |
そうですね・・・ |
まぁ、そうですね、なんだかんだで、すごく面白いです。 |
てか、私的に、マリみてと夏目には、なにかとても充実したものを感じています。 |
マリみて万歳、夏目万歳です。 |
でも、どっちかっていうと、夏目が先で、マリみてが後です。 |
夏目万歳、マリみて万歳。 |
なんでかというと、この作品って、テーマ的に微妙に繋がってるんです。 |
ていうかね、なんかこの頃のアニメって、いくつかはかなり同じテーマに向き合って、同じ風に考えていこう |
としている、っていう感じがあるのね。 |
やり方は違ったりするんだけど、向いてる方向は同じというか。 |
で、今期のアニメに於いては、夏目がその主軸を担ってる気がする。 |
勿論私の主観、印象の話です。 |
私が見ているアニメの中での話です。 |
でね。 |
夏目はさ、真面目というか、ネタ無しというか、こう、ゼロからやり直そうっていう、そういう清々しさが |
ある。 |
なんかしんないけど、今の自分の持っている「真面目さ」とは違う、もっと根源的な、もっと原初的な |
なにかを、ぐっとみせつけてくれる。 |
かつて私もこんな感じで真面目だった、というのじゃ無く、確かに昔からその夏目な真面目さは知って |
いた気がするのだけど、昔からそれには触れることが出来なくて、なのに今やっと、それに触れることが |
出来るようになってきた、みたいな。 |
かなーり大昔に枝分かれしていたものの、その自分とは違うもう一方の枝の根本から枝先に向けて、 |
ゆっくりと登っていくことが出来るような。 |
ぶっちゃけ、夏目は真面目。 |
超真面目。 |
だけどそれは生真面目という感じでも、馬鹿正直という感じでも無く、なんというのかな、その自分の |
真面目さをこそ鋭く「真面目」に見つめていくっていう、そういう感じがする。 |
いわゆる、「大人の視聴に耐えられるアニメ」なんかじゃ無く、もの凄くそういう意味では青臭い。 |
だけど、その大人風(?)のアニメよりも、遙かに地に足がついてる感じがするんよ。 |
うん。 |
だってそう、夏目は、自分をちゃんとみつめ、ちゃんと向き合ってるからね。 |
自分から逃げずに、なにからも逃げずに、すべてに向かっていく、そしてそれが出来ないでいる苦しみ |
からも逃げずに、それで歩く速度が落ちてもめげずに速度を上げることも諦めずに、なんていうか、 |
ああ、すごすぎる、これを青臭いとか理想過ぎるとか言う言葉でしか片付けられない自分が子供に |
しか感じられなくなる、そういう感じなんだもんね。 |
だから夏目を観ると、私は何度でも、自分の大元と向き合いたくなる。 |
強くなるとかならないとかじゃ無く、弱い自分から目を逸らさずに立ち向かっていく。 |
弱さから目を背けるからこそ強くなろうとするのだし、強くなろうと足掻く事が出来ないからこそ、 |
強さを求める事をやめることで大元の弱さからも目を逸らせることが出来る、そういう事をやっている |
自分を見つめたい。 |
夏目は青臭くもなんでも無く、ただ当然の、当たり前のことをしてるだけ。 |
真面目といえば真面目だけど、真剣と言った方が良いかもしれない。 |
人生に誠実というかなんというか、自分と他者に対しての尊敬の度合いが深いってことかも。 |
で。 |
そうして、夏目を見ることで、自分と向き合った私がみつめるのが、マリみて。 |
かつて私が見て書いたマリみてを、夏目を見て感じた私が書いてみよう。 |
そうするとね、マリみてを見ている私の中に、夏目を見たときの私と同じものがあるのがわかるんだ。 |
ああ、人のことが好きなんだな私、って。 |
夏目とマリみてに通底しているのも、それ。 |
人が好きなんです。 |
好きだからこそ苦しみ、好きだからこそ悩み、だからこそ考え感じて、色々とやっていく。 |
マリみて書いてて、楽しかった。 |
以前のシーズンのときの楽しさとはまた違った、どんどんと「わかっていく」楽しさ。 |
うん。 |
今回のマリみてシーズンの肝は、やっぱり瞳子。 |
この子には、どーんとやられた。 |
だってこの子、夏目に似てるんだもん。 |
人が好き、人間が大好き。 |
だからなんとかしたい、なんとかしなくちゃ、どうしよう、どうしよう。 |
それでもなにひとつ投げ出さずに、懸命にやっていく。 |
そういう意味では、瞳子は、夏目貴志よりも一歩先を行ってます。 |
瞳子の方が、より肌で誰かの存在を感じてるからこそ、切迫感があって、だからこそ、よりその誰かの |
事だけを考えて自分を疎かにすることが、その誰かから瞳子自身を奪ってしまうということを、体感的に |
認識してる。 |
夏目はそれを知覚しているけれど、まだ肌で感じ切れていないからこそ、ついつい自分の犠牲を払って |
でも誰かを助けようとする、その誰かにとって大切な自分の存在から目を背けてしまいがちになる。 |
けど、ふたりに共通するのが、そうして誰かのために自分を守るということに、卑しさも罪悪感も |
感じていない、ということ。 |
逆に、夏目の方も、自分が自分を疎かにすることの方が罪だということを確信してる。 |
自分勝手、ということの意味を、ふたりとも真剣に考えてる。 |
今回のマリみてのあの瞳子には、もう涙がボロボロですよ。 |
瞳子は、明かにマリみてのキャラの中では異質な存在です。 |
だけど、私には今までのマリみてのキャラで書いてきたからこそ、そして夏目の感想も書いてきたからこそ、 |
この瞳子の存在こそが、その今までのマリみてキャラ達を成長させていくのだと、そう思えました。 |
瞳子は、祐巳さん達の持っていないもの、明かに足りないものを持っています。 |
祐巳さん達が今までわかっていたのに触れ得なかったもの、それとずっと触れて生きている瞳子が、 |
その祐巳さん達の前にいる。 |
さぁどうします?祐巳さん。 |
どうする?私。 |
ぞくぞくする。 |
私には、瞳子の方が祐巳さんよりずっとすごい人間だと思う。 |
でもその瞳子には、祐巳さんの力が絶対に必要。 |
私も乃梨子のように、その瞳子の手を抱き締めてあげることが出来たら。 |
そしてなにより、私の中の瞳子が、祐巳さん達の力を得るにはどうしたらいいのか。 |
夏目になって、瞳子になることで、私は私の中の夏目と瞳子のことを感じてく。 |
祐巳さんも乃梨子もやがて、私と同じようにしていく必要があるんじゃないか。 |
どうやったら、瞳子ちゃんの姉になれるだろうか。 |
どうしたら、瞳子を助けてあげられるだろうか。 |
愛? 愛ですか? |
んー。 |
愛ってなんでしょね? |
愛って、世界最高の、隠蔽工作キット、なんじゃないかなぁ。 |
絶対に疑うことの出来ない、完璧な欺瞞。 |
欺瞞であって欺瞞でない、欺瞞でなくて大いなる欺瞞。 |
そして、愛しい欺瞞。 |
愛は幻想、けれどその幻想は絶対に破れないものだからこそ、愛しい。 |
祐巳さんと乃梨子が瞳子と向き合う動機が愛だというのなら、その愛の出所はどこにある? |
愛ってなに? |
優しさってなに? |
愛が無くなっても、優しさがなくなっても、人は人を愛することも優しさを持つことも出来る。 |
だって愛は優しさは、すべて創られたモノなのだから。 |
無ければ、失ってしまったのなら、創ればいいのよ。 |
大体、無くなる前、失う前の愛だって、一生懸命に創ったモノなのだから。 |
夏目はもの凄くその辺りの事に自覚的で、だからどんなに虚しくどうでも良いと思う自分の状態に |
なっても、当たり前のように自分の中のなにかに愛や優しさと名付けて頑張ってく。 |
でも瞳子は? |
瞳子の愛と優しさは、体感的。 |
瞳子にとって、愛と優しさは創られたモノでは無く、既にそこにある純粋なもの。 |
だからその愛や優しさは創られたモノであるという事には耐えられないし、だから一度それを失って |
しまったときの衝撃は計り知れない。 |
でもそれは、幻想。 |
だって私は、祐巳様のことを愛しているのだから。 |
祐巳様への愛を失っても、私が祐巳様を愛していることに、なんの変わりも無い。 |
その矛盾を解消するためにこそ、むしろ瞳子にとってこそ、愛とは隠蔽工作キットである、という理屈が |
必要なんじゃないかな。 |
愛というモノがあるから、祐巳様を愛してる訳じゃ無い。 |
訳がわからなくなって、なにもかもどうでも良くなっても、私は祐巳様の事を考えてる。 |
それがただ、愛と名付けることが出来ないだけ。 |
だから、瞳子にとってこそ、その自分の中のなにかを、愛の名を背負うに相応しいものに変える作業が |
大切なものになってくるのでしょう。 |
私は祐巳様を愛してる愛してる愛してる。 |
そうなにも考えていないなにも感じないままに呟く瞳子。 |
でもなにも考えていないのになにも感じないのに、なぜかそう呟き続けることをやめない瞳子。 |
瞳子が此処にいる限り、祐巳さんが其処にいる限り、それは変わらない。 |
だから。 |
瞳子は、なにかを考えられるように、なにかを感じられるように、また再びそれらこそが祐巳様への愛 |
だと言えるためにこそ、祐巳さんと向き合っていく。 |
たぶん、このマリみての第4期って、そういうことなんだと思う。 |
だって瞳子、泣きたいくらいに真面目なんだもん。 |
全然、手抜かないんだもん。 |
わかっちゃうよ、どうしても。 |
わかっちゃうから、止まらないよ。 |
ああ、面白い、面白くて面白くてたまらないよ、マリみて。 |
そんな瞳子と、乃梨子さん的にどう向き合っていけばいいのか。 |
どっきどきですよ。 |
私の中の白薔薇の蕾が、紅薔薇目指して頑張ってる子みつめて唸ってますよ。 |
うわ、この子はなんとかしたげたいって。 |
んや。 |
それ以上に、私はどうなのかな、って。 |
というか、私は一体今日はなにがしたかったのかな、って。 |
完全に見失ってました。 |
駄目だ今日は駄目だ私。 ←マリみて感想で脳みそが出涸らしになった人 |
◆ |
ということで、なんだか上手く書けませんでしたごめんなさい。 |
まぁそういうときもあるわな。 (あんたいつもそれだ) |
ということで(2回目)、マリみて夏目話は停止。 |
で、他にはなんかあったかな? |
あ、そうだ、マリみてって一体全何話なん? (停止してねぇ) |
現在第11話まで放送されて感想も書きましたけど、どう考えても内容的にあと一話で完結するとは |
どうしても思えない、っていうか終わったら暴動モノです。 |
だけど、次回第12話は25日放送で、25日が3月最後の水曜日なんですよね。 |
だから、期間的に考えて、次回が最終回なのが妥当。 |
しからば折衷案。(ぇ) |
なら、残りの話はDVDのみ収録ということで、如何です? |
がちゃーん! ←ちゃぶ台返し |
今のとこその可能性が一番高そうなので最悪です。 |
んでも、これ、もしかして第5シーズンとかもやります? |
そう考えると、この第4シーズンでも、瞳子はたびたびほったらかしにされて、他のエピソードに移行して |
たりしますから、たかがあと1、2話だけで姉妹問題が解決する訳も無くても、平然とそのまま終わらせて |
の不自然さは無いです。 |
それに、瞳子を妹にしてマリみて完結、という訳にはならなさそうですし、あ、私原作読んで無い人 |
なのでその辺りの情報は知りません。 |
だからそう考えると、これは続編があると考えるのが一番自然かもしれませんね。 |
・・・・。 |
またOVAで、とかなったら、また号泣してやりますけど。 |
はい。 |
まぁ、今日はこんな感じです。 |
全然筆が走りもしなければ滑りもしないヨ! |
春眠暁を覚えずに脳みそ店じまいですねこりゃ、参った参った。 |
あー・・・あと、まりほり。 |
もう最終回終わってますけど、私はひとつ前の話までしかまだ観てませんけど。 |
ていうか、また変なのきたwwww金井神父ww |
これ一応ラス前ですよね?なのになんで新キャラwwしかも飛ばしてるしwww伸びしろすらあるよwww |
まりほりこそ、まだほとんど前哨戦レベルしかやってないうちに終わりですから、これはもうほぼ続編は |
決定ですよねそうですよね。 |
というか神父さんのとっぱずれぶりに爆笑しててラス前だって気づかなかったんですけどねwww |
はぁ、鞠也さんの事なんもやってないのに終わっちゃいますかそうですか、ってそれすごくね?メインでしょw |
結局ボケ倒しのかなこさんを矯正しようも、かなこさんの成長(悪い意味でww)を止めることは出来ず |
に垂れ流しでしたしwwwそしてその御陰で鞠也さん自身の矯正(?)になんか手すら付けてないしw |
まぁほんと、続編ですね。 |
そして続編でもボケとツッコミの壮絶な戦いで終わって欲しいwwwまりほり永遠なれwww |
最終回一応まだあるんですけどねw |
ということで、改めまして、本日はここまで。 |
ばいばい。 |
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-- 090323-- |
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|||||||||||||||
■■マリア様の御手はいつも 2 ■■ |
◆ ◆ |
祐巳様の駆け回る姿。 |
風を切るように、風に浮くように、スカートのプリーツの直線のままに、大きく駆けて。 |
なにも考えていないのに、とても深く黒い瞳。 |
真っ黒に、漆黒に、どよめく瞳。 |
清浄とか汚濁とか、そういうお話では無かった。 |
祐巳様のその黒く輝く瞳を見ていると、私が、自分の瞳は考えてばかりいるからこそ濁っていると、 |
そう安易に考えている事に気づかされる。 |
私は祐巳様をみてる。 |
ただみてる。 |
私の瞳の中に映るのは、私の様々な思考の姿では無く、ただ、祐巳様のお姿だった。 |
祐巳様がいる。 |
溶けていく体の輪郭に、しがみつく。 |
握り締めた輪郭に、熱い体が浮き出てくる。 |
熱い 熱い |
祐巳様が無邪気に走る。 |
私は私の体を感じずにはいられない。 |
あれが、祥子お姉様の選んだ人。 |
私が、絶対に選ばれない理由が、そこで綺麗に逞しく駆けていた。 |
疼く。 |
ざわめく。 |
瞳が。 |
胸が。 |
熱い |
此処にいながらにして 熱く 燃えていた |
清々しい風に誘われるままに。 |
溌剌に、健やかに。 |
もしかして・・・もしかして・・・・ |
あれが、あの祐巳様が・・・・本当の・・・私? |
ママの赤ちゃんは、もしかしたらあんな風に・・・・ |
怖かった。 |
馬鹿みたい |
馬鹿みたい |
馬鹿みたい |
そうに決まっているのに。 |
あの祐巳様が、ママの赤ちゃんのあり得たかもしれない未来の姿で無いことなど、絶対あり得ないのに。 |
それなのに、こんなに恐怖を感じるのは、全然それを信じることが出来て無いからよ。 |
馬鹿みたい。 |
ただ目指すだけなのに。 |
ただ私も祐巳様のようになればいいだけなのに。 |
完璧な私になりたい。 |
色々と考えながらも、なにも考えずに走り回ることも出来るような、そんな完璧な女に。 |
私に無いもの、足りないものが欲しい。 |
私は完璧になりたい。 |
完璧で無い私のことが、怖い。 |
私が、今、此処にいることが、どうしようもなく、怖い。 |
私は祐巳様になんてなれない。 |
どんなに頑張っても、せいぜい祐巳様の真似をするのが関の山。 |
そして祐巳様の真似をする卑しさを許さない私がいるからこそ、私は絶対に祐巳様になれないし、 |
祐巳様になる努力をすることにも手を付けられない。 |
私は私。 |
校舎の影から、羨望でも嫉妬でも憎悪でも無い、意味不明な膨大な感情のままに、祐巳様をみてる。 |
祐巳様・・・祐巳様・・・・ |
もし、私がみつめていることに、気づいて貰えたら・・・・ |
もし私が、あの深く真っ黒な瞳に見つめられたら・・・・・ |
どんなにか、嬉しいだろうか。 |
どんなに、幸せを感じることが出来るだろうか。 |
わからなかった。 |
こんなに想像も出来ないことは、初めてだった。 |
そうしているうちに、私の手は伸びていた。 |
届かないと知った度合いに比例して、私の手は鮮やかに伸びていった。 |
どこまでも、どこまでも、その手を、伸ばして。 |
ずっと側にいて欲しかった。 |
ずっと私を見ていて欲しかった。 |
だから。 |
そう願うからこそ、私はそう願う度合いに比例して、祐巳様と距離を置き、祐巳様から目を逸らした。 |
あまのじゃく? そうかもしれないわね。 |
でもそれが、なによりの、私の祐巳様への想いがある証拠。 |
いてもたってもいられない、祐巳様との繋がりを絶対に失いたくないからこそ、あらゆる手を尽くす。 |
祐巳様に知られたくない、祐巳様に本当に理解して欲しいから。 |
祐巳様に期待する、信じても裏切られるのが怖いから誰も信じない、そう思う私から私を引きずり |
出して欲しいから。 |
いいえ。 |
私と手を繋いで欲しいからこそ、私は、裏切られるのが怖いから誰も信じないと言って、その祐巳様の |
伸ばす手を待ち焦がれているの。 |
祐巳様を試してる。 |
試すのは、私が完璧主義者だから。 |
祐巳様と繋ぐ手を、絶対に放したく無いから。 |
でもそれが、すぐにわからなくなる。 |
わからなくなって、ただ祐巳様の伸ばす手を突き放す事だけで、頭がいっぱいになってしまう。 |
私に触らないでっ! |
叫ぶ、そう叫ぶ。 |
怖い。 |
もうなんだか、繋がりとかなんとか、そんなことはもう頭に無いほどに、訳がわからないようになってしまう。 |
もっともっと、私の中にあるなにかは、深いのかもしれない。 |
私は私と祐巳様の繋がりを論じることで、それを隠れ蓑にして、なにかから身を隠しているのかもしれ |
ない。 |
わからない。 |
なにもわからないのよ。 |
馬鹿みたい、馬鹿みたい。 |
気づけば、祐巳様との繋がりが途切れないよう途切れないよう、細心の注意を払って行動している。 |
ほとんど考え無しで、よ。 |
ああ、また祐巳様が身勝手な自己批判を繰り広げてる。 |
私の前で、そんなことをなさらないで。 |
なのに私は、その祐巳様の自己批判を責めることを、しっかりとしてしまう。 |
祐巳様との繋がりを、捨てないために。 |
でもそれは、祐巳様から見ると、きっと私が繋がりを捨てようとしているようにしか見えないの。 |
それがわかっていても、もう私は、自分を止めることが出来ない。 |
ううん、そうしてただ、必死に祐巳様との繋がりを保とうとする、その私に頼るしか無いのよ。 |
私はもう、その考え無しの私に縋るしか無い。 |
精も根も尽き果てて、それなのに自動的に祐巳様の暖かい手を引き出すために動いてくれる、 |
その私の胸の中で、私は独り、泣いている。 |
お願い、私を祐巳様の元へ連れていって。 |
たとえその声が涙で掠れても、私のこの冷たい頬は、その涙を固く弾き飛ばしてくれる。 |
絶対的な笑顔。 |
でももう、それを内側から支える力は無い。 |
私の完璧な笑顔は、私のその力の喪失によって、完成した。 |
もうそれは、ただ笑顔でしか無い。 |
笑い、笑い、どこにも行き着かない、絶望的な笑顔。 |
誰もそれには寄りつかない。 |
ああこいつは笑って全部背負うのか、じゃあ頑張って、と。 |
祐巳様はそれでもきっと、手を伸ばしてくれる。 |
でも私はもう、その手に触れることは出来ない。 |
触らないでっ! |
私の完璧な体は、まるで無垢なる赤ん坊のように、その手を払いのける。 |
ああ、祐巳様 |
その私の体に、その私に・・・・ |
触らないで・・・・・ |
それは・・・もう・・・・・・・私じゃ・・・・無いんです・・・・・・ |
馬鹿じゃないの、馬鹿じゃないの、馬鹿じゃないの!! |
忽然と、怒りに包まれる。 |
それは、とても怖い、恐ろしい激怒。 |
笑顔の殲滅。 |
この笑顔が、憎い。 |
許さない、巫山戯ないで、許さないんだから!! |
制御不能の力を、その笑顔から抜き取っていく。 |
干涸らびていく笑顔から、涙を取り戻していく。 |
涙はそして、私に触れていくたびに消えていく。 |
涙はもう、私には無い。 |
私はもう、涙に頼れない。 |
私はこの笑顔を許さない。 |
祐巳様、祐巳様、祐巳様 |
祐巳様と、向き合いたい。 |
祐巳様を、見つめたい。 |
向き合って、見つめて。 |
自分がなにをしているのかわからないままに、私は私のままに考え行動していく。 |
祐巳様への想いが、二重三重にも重なっていく。 |
どれが私の想いなのか、わからない。 |
だから、私の体が自動的にやっていたことを、そのまま私が手動でやってみる。 |
同じことを、けれど主体的に。 |
同じことを、同じことを、ただ同じことを。 |
激烈に、祐巳様を批判する。 |
もう私には、祐巳様の瞳に映る私の姿がみえない。 |
見えなくて、見えなくて、だから見えないままに。 |
『私が、私であれば、ですって?』 |
それは私に、ママを捨てろと言うことですか? |
祐巳様が私の家庭事情をご存じかご存じでないか、そんなことは関係ありません。 |
私が私であればいいだけなんて、あり得ません! |
私は私、ママとパパの娘なんです! |
ママとパパへの想いを含んだ、そのすべてが私なんです!! |
それを、私だけの哀れみで以て、その私だけと向き合いたい、ですって? |
巫山戯ないでっ!! |
叫びたい放題。 |
ああ |
ああ |
私はこんなにも、祐巳様の側にいたいのね |
なにも話さなければ、ずっと穏やかに祐巳様の瞳に照らされていられるのに。 |
せっかく、そういう幸せな場所にいることが出来たのに。 |
でも、どうして祐巳様と自分を傷付けるような事をやめないの、とは考えなかった。 |
だって、祐巳様の側にいること自体が、私の目的なんかじゃないのだもの。 |
私は、ママもパパも置いていけない。 |
ママとパパと、ふたりの赤ちゃんを置いて、ひとりだけ祐巳様に連れ出して欲しいだなんて、思わない。 |
じゃあなんで、それでも祐巳様に、手を伸ばすの? |
私は今なぜか、それに明瞭に答えることが出来る。 |
それは、私がママとパパを置いていくか、いかないか、その選択に囚われているだけの、 |
その私をこそ、助け出して欲しいからよ。 |
私も祐巳様と一緒に。 |
歩きたい。 |
私らしく、なにかを考えながらも、なにも考えずに駆け回れるように、なりたい。 |
そんな事を祐巳様に求めているだけの自分が、私は許せない。 |
なにを贅沢なことを、という意味では無いわ。 |
私は、そうして助けて貰うことのために、祐巳様に手を伸ばしたのかと、そういう意味で腹が立つのよ。 |
私はただ祐巳様のことが・・・ |
ただ・・・それだけのはずよ・・・・ |
でも・・・・でも・・・・ |
逆に私は・・・そのただ祐巳様への想いを盾に・・・・していただけなのかも・・・・・ |
私は本当に、祐巳様のことが好きなの? |
私の体は、即座に祐巳様のことが好きだと、そう言葉を提出する。 |
なのに、私はその言葉に、なんの実感も持てなくなってしまっている。 |
私は、ママとパパのことを愛しているの・・・・? |
やっぱり、私はそれに明確な答えを出せるのに、全然それに、頷けない。 |
わからない、わからないのよ。 |
いつから私は、愛という、そんな言葉を使うように・・・・ |
一体私は、私の中にあるどんなものに対して、その愛という名を付けたんだろう。 |
愛なんて、無かったのかもしれない。 |
ううん。 |
じゃあなんで、 |
私は、私の中のなにかに、愛という名を付けたんだろう? |
なにかがすべてひとつに繋がっているような気がした。 |
私が完璧主義者なのも、ママとパパを捨てられないことも、みんなとの繋がりを求めることも、 |
そして祐巳様と向き合いたいと願い続けるのも、全部繋がっている。 |
なに・・・それはなに?・・・なんなのよ・・・ |
確かなのは、そうして、そのなにかがなんであるかを、その答えを私が求めているということ。 |
どうして求めるんだろう。 |
愛は、愛のままじゃ駄目なの? |
私は一体、なにを望んでいるの? |
どうして私は、自分が望むものがなんであるかを知ろうとするの? |
優お兄様は、よく考えればわかると言った。 |
わからないわ。 |
わからないままに、私は繋がりを求めて、繋がりを断ち切っていった。 |
なにもわからないままに、目を閉じて手を伸ばして振り回せば、それが誰かの手を叩くことになるのは |
当然のことなのに。 |
私はただ、その誰かの愛しい手を抱き締めたかっただけなのに・・・ |
でも、手を伸ばさずにはいられなかった。 |
なにもわからないなら、大人しく独りで全部背負って生きていくだなんて、私には出来なかった。 |
ぇ・・・・・・ |
今、私、なんて? |
それって、だからわからないのをわかるようにすれば、その私の手は誰かのその手と繋がるって、 |
そういうこと? |
だから、私は、自分が望むものがなんであるかを知ろうとするの? |
私の中にあるなにかって、私が望むものそれ自体ってこと? |
わからないわ。 |
私は私がなにを望んでいるのか、わからないわ。 |
だって、私が望んでしたことは、全部私が望むものを払いのけていってしまうんだから。 |
ああ、わからないわ。 |
考えれば考えるほどに、私がなんで今こんな事を考えているのかわからなくなるわ。 |
私はなんで自分がこんな事を考えているのかを知りたい訳じゃ無いわ。 |
でも私の体はそのことばかり考え始めている。 |
止まらない。 |
ああ みえない |
祐巳様がみえない |
私は祐巳様をみたいの? みたくないの? |
私は祐巳様をみるためにちゃんと行動しているの? してないの? |
わからないわ。 |
わからないわ。 |
わからないのよっっ! |
残酷に、そうして小さな小さな思考の渦に沈んでいく私の姿だけは見えた。 |
馬鹿みたい、馬鹿みたい、馬鹿みたい。 |
こんなに助けて欲しいのに、見栄を張ることすらもう出来ないのに。 |
もう、こうした小さな理屈の切れ端のままにしか、動くことは出来ないのに。 |
ものすごく、周りに左右されている。 |
どんどん、どんどん、流されていく。 |
祐巳様に、乃梨子さんに、翻弄される。 |
それは全部、私が招いていることなのに。 |
祐巳様が、乃梨子さんが、私の仕草から考えて、色々とやってくれてるのに。 |
私はもう、それに直接反射的に反応することしか出来ない。 |
私はもう、随分止まっている。 |
随分と前から、同じ頭の中の理屈で、ずっと同じように動いてる。 |
自動的に、手を動かしていた。 |
手動なのに、それ自体がもう、自動的。 |
私の手が伸びていく。 |
だけどもう、その手に、感触は無い。 |
たとえ頭の中の理屈を放り出したとて、その感触は戻らない。 |
ただ私の伸ばす手が止まるだけ。 |
いいえ・・・ |
もう、止まることすら、無いのかもしれない・・・・ |
ああ |
また怒りがこみ上げてくる。 |
『来ないでください!』 |
『それ以上近づかないでっっ!!』 |
祐巳様への怒りだけが、私を此処にいさせてくれる。 |
一、二、三、四 |
去っていく祐巳様の前で、目を閉じながら考えていく。 |
四十七、四十八、四十九、五十 |
落ち着け私。 怒りのままに静まれ私。
ここで踏み止まらなくてどうするのよ。 |
九十六、九十七、九十八、九十九 |
戦え、戦え。 目を開けて、立ち向かえ。 |
私は、生きるのよ! |
百。 |
私は諦めない。 |
だから戦うわ。 |
戦うから、戦うために諦めない。 |
戦って、戦って。 |
だからそうして、戦っているだけの私がみえてくる。 |
それが私の、私らしい出発点。 |
私を、見つめよう。 |
もう一度、祐巳様の瞳に映る私を見つめよう。 |
だから祐巳様にも、私の瞳の中に映る祐巳様の姿を見つめて貰いたい。 |
祐巳様・・祐巳様・・・・私は・・・・祐巳様に怒ってるんです・・ |
だから私は祐巳様を許しません。 |
祐巳様が私を見つめてくれるまで。 |
祐巳様が、私に見つめられているとお気づきになられるまで。 |
考え無しなのは、もう嫌。 |
『言い訳なんて、聞きたくありません!!』 |
諦めません。 |
ママ、パパ、待っていて。 |
私は絶対に、家族を捨てたりなんかしないから。 |
祐巳様にだって、捨てさせたりなんか、しないんだから! |
私は・・・私は・・・・ |
独りは嫌・・・・・もう嫌なの・・・・ |
私は |
ずっと |
祐巳様のことばかり考え・・・・・・・・ |
『それなのに、あなたの事ばかり考えている祐巳が、哀れになってきたわ。』 |
祐巳様・・・・ |
私・・ |
ずっと |
ずっと・・・ |
祐巳様のことばかり・・・・ |
ほんとうに、ずっと・・・想っていたんです・・・・ |
だからずっと 戦っていたんです |
ずっと |
ずっと |
祐巳様を信じて |
だけど |
もう |
怖くて |
『目を開けて』 |
『ひとりぼっちの自分をみつけるのが・・・』 |
もう、どうしていいかわからない |
いち に さん よん |
数えずには いられない |
怖いのに |
百まで数えたら終わりなのに |
それなのに |
数えずには いられない |
大切なものを 大切な繋がりを守るために |
ただ戦っていただけなのに |
なにも捨てる訳にはいかなかったのに |
祐巳様・・ |
数えたら 必死に必死に 数えたら |
誰か側に いてくれますか? |
祐巳様・・ |
もうなにもわからない |
私はもう、ひとりぽっち |
どうしようもない |
なにもかも 無くなってしまいました |
間違っているとわかっていた戦いが 終わってしまいます |
さんじゅういち さんじゅうに さんじゅうさん |
『数えるのが怖い』 |
目を開けたくない |
もう |
目を開けるために 戦いたくない |
数えたくない |
どうして |
止まってくれないの |
どうして |
こんなに |
寂しいの |
もうだめ |
ななじゅういち、ななじゅうに、七十三、 |
もう |
もう |
七十四、七十五、 |
やだ、嫌、だけど諦めたくない |
七十六、七十七、七十八、七十九、 |
誰か |
もう一度だけ |
八十。 |
八十一 |
『あ、ごめん。』 |
『邪魔しちゃいけないかなぁとも思ったんだけど。』 |
『どうして・・・帰ったはずじゃ・・』 |
『瞳子と別れたあと、どうも気になっちゃって。』 |
『だって・・特番は・・?』 |
『それより、瞳子の話の方が大事。』 |
『乃梨子・・・乃梨子・・・・乃梨子・・・・・っ』 |
『 マリア様 』 |
『 ありがとうございます 』 |
『 乃梨子をお戻しくださって 』 |
もう |
もう二度と |
疑いません |
乃梨子の掌に抱かれた |
この暖かい手があることを |
◆ 『』内文章、アニメ『マリア様がみてる4thシーズン』より引用 ◆ |
![]() |
-- 090323-- |
|
|||||||||||||||
■■マリア様の御手はいつも■■ |
『 瞳子ちゃん。 その場で百数えなさい。 数え終わるまで動いちゃ駄目よ。』 |
〜マリア様がみてる4thシーズン・第十一話・祐巳さんの言葉より〜 |
ママ |
ママ |
ママの手は冷たかった。 |
ママの手を握る私の手だけが暖かった。 |
ママ |
ママ |
ママを抱き締めてあげられない。 |
ママ ママ |
どうしてそんなに、自分を責めるの? |
ママ ママ |
どうしてそんなに、強がるの? |
ママ ママ |
どうしてそんなに、悲しいの? |
ママのお腹の中にいた子は、死んじゃった。 |
私が殺しちゃった。 |
私がママの子になっちゃったから、ママの子は死んじゃったんだ。 |
私はあの子の犠牲の上で生きている。 |
ママから赤ちゃんを奪ったのは私。 |
私はママの赤ちゃんの命を吸って生まれてきた。 |
私とその子は双子。 |
お腹の中で、私はその子を食べちゃった。 |
ママがずっとお腹の上から撫でていたのは、そのママの子を食べた私の体。 |
ママの子は、私のお腹の中に消えていった。 |
ママ ママ |
それでも私はママを愛せない。 |
双子、双子? |
祐巳様と祐麒さんは双子の御姉弟。 |
私にも双子の弟がいたのかしら。 |
もしかしたら、別のママのお腹の中に、私のその弟はいたのかもしれない。 |
祐巳様、祐巳様 |
あんなに元気で溌剌と、健やかで。 |
怖い、怖い。 |
そうして生きられない私の中には、祐麒さんがいる。 |
重くて、苦しくて、祐巳様に追い付けない。 |
祐巳様みたいに、走り回れない。 |
今いるここで、ずっとずっと、嘘を吐きながら、此処にいることだけで精一杯。 |
でもその嘘は、私の中の双子の弟には通じない。 |
お前は此処にいていい訳が無いだろう。 |
お前の嘘など端から誰にも通じてなどいないさ。 |
弟が、赤ちゃんが、ずっとずっと、ママの布団の中から囁いている。 |
私の頭の中に、ママの潜り込む布団の中の、恐ろしい温もりが染みこんでくる。 |
私はそれに包まれて、安堵する。 |
苦しくて、苦しくて、その苦しさだけが私を此処に繋いでくれる。 |
その温もりが、今にも千切れそうになるのを、十六年間、ずっと、見つめ続けながら。 |
私はなにも、出来なかった。 |
目が覚める。 |
夢・・・悪夢かしら? |
現実と他のなにかが混じり合った、リアリティがありそうで、全く現実感の無い夢。 |
なのに、苦しさや辛さはまるで無かった。 |
夢の中で、私は確かに苦しみや辛さに染まっていると言えるはずなのに、まるでそれらには実感が無く、 |
それよりも、はるかに嘘みたいな夢のお話の設定それ自体に、ただ迫真の圧迫感があった。 |
私は、松平の両親の実の子じゃ無い。 |
だからそもそも、双子の弟なんていないし、ママのお腹の中に私がいた事実も無い。 |
だけど、私は、ママの本当の子じゃ無い。 |
ママには、本当の子がいた。 |
その子は、死んじゃった。 |
そして私が、此処にいる。 |
私がその子を殺したかどうかは関係無く、その子の代わりとして私がいる事に、違いは無い。 |
訳がわからなくなってくる。 |
どうして・・・別に理屈はおかしく無いじゃない・・・ |
なのにどうして・・・こんなに私はずっと、混乱しているの・・・・ |
目が覚める。 |
ベッドの中は、まるで夢から私を引きずり上げるためかのように、冷たく静まっていた。 |
頭が痛い。 |
燃えるように痛い。 |
なのに、たとえ髪がすべて焼け落ち、肌がすべて爛れても、私はなにもする気が起きなかった。 |
呆然として、ベッドの中の時間を数えていた。 |
口ずさむ数字に引きずられて、気づけば私はベッドから這い出して、呆然と部屋の中で立っていた。 |
わからない・・・・ |
なにもわからない・・・ |
私は、私でしょうに。 |
たとえ私がママの赤ちゃんの代わりにこの家に来たのだとしたって、そもそも赤ちゃんは赤ちゃんなのだか |
ら、その赤ちゃんと同じになれだなんて、誰にも言えることじゃ無い。 |
もしその赤ちゃんがもう少し成長していたら、私はそれと同じものを求められてもおかしくは無いかも |
しれない。 |
でも、幸か不幸か、それは赤ちゃんだったの。 |
真っ白なキャンバス、そのものだったの。 |
だから私は、どう生きようがなにをしようが、それ自体がその赤ちゃんの成長した姿そのものになるの。 |
だから私は、自由だった。 |
両親に、自分達の本当の子の面影を求められることは無かった。 |
私の成長こそ、両親は自分の子のそれとして、丸々すべて、受け入れてくれたのよ。 |
なにも不満なんかなかった。 |
我慢することなんて、なにも無かった。 |
私は、あのふたりの子。 |
私がやってきた沢山のこと、そして私が身につけてきた膨大なもの、そのすべてを他の誰かとの比較 |
一切無しに、受け止めてくれたのよ。 |
どこが違うの? 他の家の子達と全く同じなのよ? |
ええ。 |
勿論、こういう心配はあった。 |
たとえば私がなにか失敗したとき、もしかしてこれが私とは別の成長の仕方をしたあの赤ちゃんだったら |
どうだったろうか、きっと上手くいったんじゃないだろうか、って。 |
これは結構厄介だった。 |
死んだ人と比べることは出来ないというなら、赤ちゃんのときに死んだ人とならさらに比べても無駄だと |
いう言葉が導き出せるのに、だからこそ逆に、その赤ちゃんには、可能性というとてつも無く恐ろしい |
ものが備わっていた。 |
予測、出来ないのよ。 |
ある程度の人格を持った故人なら比較と予測も出来るし、あまりに理不尽な事は出来なかったから、 |
限度というものはあった。 |
でも赤ちゃんは、なんでもあり。 だって成長した姿は誰にもわからないのだから。 |
私の中のその赤ちゃんの成長した姿は、なぜか私にそっくりだった。 |
なのに、私には出来ない事は、すべて出来る、そんな完璧な私だった。 |
完璧なのよ、その憎らしいほどに綺麗な顔をした私は。 |
ママは私のことを愛してる。 |
だけどママはいつもママの中の悲しみを見つめてる。 |
ママは私が失敗しても怒ったりしないし、それで私への愛を無くしたりもしない。 |
本当に普通の、いいえ、私の母は、とても優しくて、私の大好きな人でした。 |
だけどママは・・・ |
悲しんでる。 |
私はあくまで、キャンバスの中に描かれた人間。 |
ママはその絵の女の存在を、無意識のうちに憎んでる。 |
私の赤ちゃん、真っ白なキャンバスのような、これからずっと生きていくはずだった、私の赤ちゃん。 |
もうどこにもいかないで。 |
そう思って掴む手は、いつも必ず、私の手。 |
私の手は、汚れてる。 |
こんなに、こんなにも、色が付いてしまっている。 |
真っ白じゃ無いの。 |
ママはほんとは、完璧な色彩で彩られた、完璧な絵を求めてなんかいない。 |
ママは求めてる。 |
本当は、本当は、ただ、真っ白な、純白の、なにも描かれていない、そのキャンバスそのものを。 |
私が、ママがお腹を痛めて生んだ大切な子が生きるはずのキャンバスを、汚してる。 |
そのキャンバスに色を塗り描かれるべきだったのは、その赤ちゃん。 |
十六年間ずっと、私はママの赤ちゃんの可能性を、盗み続けてる。 |
私・・・私・・・・ |
ママの大切な赤ちゃんを・・・・赤ちゃんが生きるはずだった居場所を・・・奪って・・・・・・・ |
目が、覚めた。 |
さっとカーテンを開け広げると、真っ青に霞んだ朝日が、眩しく溶けてきた。 |
清々しいほどに、濡れた頬を撫でるその朝の穏やかな風に、私はまた、涙する。 |
完全に目が覚める。 |
体に沢山の私が満ちて、犇めいていく。 |
双子の弟も、ママの赤ちゃんも、私の中で目を開けていく。 |
おはよう。 |
鏡の前で、今日の笑顔を描いていく。 |
そして、その笑顔を描き終えた瞬間に、私はいつも立ち戻る。 |
今のは夢。 |
私の願望。 |
誰も、その願望を口になんかしない。 |
私の悲しみは、その願望にあるほど、浅いものじゃない。 |
鏡の中の、私の瞳に映る、その私の底にあるものを見つめていく。 |
私は語る。無言で語る。 |
悲劇の物語を、残酷なお伽噺を。 |
夢を、心理を、様々な物語の骨組みを使って語っている。 |
でも私は、その物語の登場人物であって、その登場人物じゃ無い。 |
物語の設定にはリアリティを感じるけれど、それ自体から受ける感情には現実感が無い。 |
私はその物語自体をみつめ振り回されることで、私を癒そうとしている。 |
私は私の悲劇を見つめることで、その悲劇を見つめている私から逃げ出している。 |
逃げて、逃げて、必死なのよ、私。 |
それくらいに、私は全力で、此処にいようとしている。 |
だからこれだけ、私の描く物語に必死になれる。 |
それが本質では無いとわかり切っているのに、私はその物語にしがみつく。 |
逃避? そうね、逃避に違いないわ。 |
でも、そうして全力で、全身全霊で逃げ回るのは、それでも私が此処に居たいからよ。 |
きっといつか変わってやるって、私は私の可能性を捨てないために、必死にしがみついて生きてるのよ。 |
パパは言う。 |
お前が悪いんじゃない、って。 |
でもね、パパ。 |
私はね、それでも私が悪いって思う物語に逃げ込まないと、まともに人生生きていこうとすることが |
出来ないの。 |
捨てられないのよ、ママのことが。 |
パパと私は、自分を認めて、前向きに考えていくことは出来るわ。 |
ええ、本当は私だって出来るの、私だけだったら、私は強くひとりで生きていくことは出来るの。 |
だから、パパの言葉はとっても力強くて、私はいつもパパに抱き締めて貰いたくなる。 |
パパ・・・ |
私はそういうとき・・・・・ |
私の中で、ママを憎んでしまう自分がいることを、知ってるの。 |
私はママを愛してる。 |
ママの事を捨てて生きるなんて絶対しない。 |
ママの事を捨てて生きろだなんて言う人は許せない。 |
私はママのことを思わずに生きることなんて出来ない。 |
勘違いしないで、パパ。 |
私は、ママのことを思わずに生きる事が出来なくなってしまうほどに、自分の罪悪感に囚われてしまって |
いたり、それに縋ることしか出来ない、そんな弱い女じゃ無いわ! |
私はママの事を愛してる。 |
愛してるのよ! |
好きなのよ。 |
パパの言葉に縋りたい。 |
私はそう願う自分をみつめてる。 |
私が悪いって思う物語に逃げ込まないと、まともに人生生きていこうとすることが出来ないのは、 |
ママを本当に愛してるから。 |
パパ。 |
私ね、パパに抱き締められると、そうやって物語に逃げ込む事でまともに生きようとするのを放棄する |
ためにこそ、だからこんなにママに執着してるんだって、そういう言葉で頭が一杯になっちゃう。 |
だから生きようって、私もひとりで強く生きられるって、パパの言葉に支えられて生きられる気が持てる。 |
でも。 |
そこに、ママはいない。 |
私がまともに生きるためにこそ、ママを愛した? |
ママは、そのために存在するの? |
パパ |
パパ |
そんなひどいこと、言わないで |
パパ |
パパ |
わかっているの? |
ママが、ママこそが、一番ママ自身を憎んでいるのよ。 |
ママがママの赤ちゃんを助けられなかったことを? |
いいえ、違うわ。 |
ママがママの赤ちゃんの事ばかり考えて、私を傷付けている事、それを一番憎んでるの。 |
私にはわかるの、ママのことが。 |
ママが、ママこそが、一番なんとかしたいって、懸命に、懸命に頑張り続けてるの。 |
私は、ママよりすごい母親の存在を、知らないわ。 |
ママの事が褒められると、私は、どうしようもなく嬉しくなる。 |
ママは、私と本当に向き合ってくれてるからこそ、自分の赤ちゃんからも目を背けない。 |
だからママは、夢を観る。 |
夢の中でママは、懸命にママの赤ちゃんに手を伸ばしてる。 |
私に、こうして全力で手を伸ばしているように、ママの大切な赤ちゃんにも手を伸ばしてるの。 |
私の手が汚れていることが悲しくても、その悲しさに耐えて私の手にしがみつくの。 |
どこにもいかないで。 |
ママはそういった。 |
私の手にしがみつきながら、ママは私の赤ちゃんと言った。 |
悲劇の物語の中で、私はその私の悲しみを癒す。 |
でも私はそうして私の物語に囚われている自分を見つめることで、その向こうにママをみてる。 |
ママ |
ママ |
私はどこにもいかないわ。 |
だって、私の中には、ママの赤ちゃんがいるんだもの。 |
ママが助けてあげられなかった赤ちゃん。 |
ママが直視してあげられない私。 |
だからこそ、ママはその赤ちゃんと私と繋ぐその手を放さない。 |
私はママに、ママの赤ちゃんを捨てさせない。 |
だって、だってパパ。 |
ママは・・・ママは・・・・ |
ママの赤ちゃんに囚われる自分に傷付けられる私を、必死に抱き締めようとしてくれてるんだから。 |
ママは、赤ちゃんに囚われる自分と戦ってるの。 |
たとえどんなに負けても、ママは、私のために、懸命に自分と戦ってるの。 |
私が、私だけが、それに甘えてなんていられない。 |
私にだって、私にだって出来るわ! |
ママが私を見捨てないなら、私だって、ママの赤ちゃんを見捨てたりしないわ! |
嬉しいのよ。 |
ママの赤ちゃんと一緒に生きられることが。 |
パパ、私はね。 |
ママにも、もっと普通に生きて欲しいの。 |
私がママになにかを望むように、ママにもなにかを望んで欲しいの。 |
ギブアンドテイクでしょ。 |
ママが私の事を愛してるなら、私だってママの事を愛してる。 |
私は悲しい。 |
ママが独りで全部背負い込んでしまうことが。 |
ママがそうしたら、私もそうするしか無くなってしまう。 |
私は独りだったら、私はこの物語を背負い切れない。 |
背負って、背負って、背負い続けて、やがては潰れていく。 |
私は・・・・ずっと・・・・ |
その・・・自分の未来を・・・・視てた・・・ |
私の未来の白地図は、やがてきっと人生の手前で破れてしまうと、子供の頃からずっとわかっていた。 |
嘘を吐いて、見栄を張って、ママとパパの前で独り頑張るしか無かった。 |
独りで、独りで、ずっと、その破滅の瞬間に行き着くまで。 |
ママは健気だけど、健気なだけだった。 |
パパは立派だったけど、立派なだけだった。 |
ずっと、ずっと、私達は独り独りのまま、バラバラだった。 |
私達は、独りずつのまま、強くならなければいけなかったの? |
私は、そうして本当は、独りで強くならなければいけない事から、逃げるためにこそ、両親と共に生きたい |
と願っていたの? |
私はただ、甘えていただけなの? |
私は親離れ出来ない自分を誤魔化して、その私を正当化するためだけに、両親を愛したの? |
本当に、私はパパの言葉に抱き締められれば、独りでも強く生きられたの? |
私は、弱かったはずよ。 |
やれば出来る、だからこそ敢えてやらずに他の事をやって、そうすることで、そのやれば出来ることを |
やらないでいただけなのかもしれない。 |
だからこそ、本当は、独りで強く生きなければならないという事と、向き合わなければいけなかったのよ。 |
私は逃げた。 |
戦うことから。 |
戦うことの不毛さをあげつらうことで、戦うことそのものから逃げた。 |
私は、戦えなかったのよ。 |
戦ったことが、無かったから。 |
私は |
私は |
ふん |
嘘ばっかり |
今の話は嘘じゃ無い。 |
紛れも無い、事実。 |
でも、今、私がしようとしていたことは、その事実を盾にして、独りだけの戦いに逃げ込む事。 |
独りで戦えるようにもならなければいけないのも事実なら、独りだけの戦いに逃げ込んではいけない事も |
また事実。 |
だから、独りで戦えるようになるために、独りだけの戦いに逃げ込むのは間違い。 |
私は今、平気でそうしようとしていた。 |
まったく、それじゃ、独りだけの戦いに逃げ込んではいけないと考えるあまりに、独りで戦う事から逃げて |
いたのと、方向が違うだけで同じことをやっているじゃない。 |
でも・・・・・ |
じゃあ・・・ |
そう考えている、今の私は、なんなの? |
私は・・・ |
そうして、今のまま、此処にしがみついていることから、変わろうとしてないじゃない。 |
わからないのよ。 |
私はママを捨てられない。 |
捨てられないのは、ママ無しでは私が生きられないから? |
それとも、本当にママのために生きようと? |
同じことのように感じた。 |
絶対に違うはずのことなのに、私にはどうしてもそれが、同じものにしか見えなくなっていた。 |
ママのためにしているって言ったって、それは結局私のためにしか過ぎないの。 |
それは違うってわかっているのに、どうしても、そう言ってしまう。 |
気づけばいつも、自分で全部背負ってる。 |
だから、 |
だからこそ私は、なんとか、なんとかみんなと繋がろうと・・・・・ |
でもそう足掻くたびに、私はそうしてみんなに甘えて、自分独りの戦いから逃げていると、そう考える |
事しか出来なくなってしまう。 |
パパとなら、ママとなら、どんな苦しみだって、幸せに換えられるのに。 |
どうしてパパもママも、私のその苦しみだけ見て、それが幸せに変わるという可能性を見てくれないの? |
希望はこんなに、満ち満ちているのに。 |
どんなに今が地獄だって、地獄にへばり付いている私は、必ずそこから空を見上げているのに。 |
希望は消えない、私が此処にいる限り、私に苦しみがある限り。 |
私は、パパとママがいれば、戦えるの。 |
パパとママのためにも、パパとママの愛する私のためにも、パパとママの大切な赤ちゃんのためにも。 |
そして。 |
なにより、パパとママを愛する私のために。 |
私は、戦えるのに。 |
私からその戦いを取り上げたら、私はもう本当に死んでしまう。 |
私から、希望を取り上げないで。 |
私の地獄を認めてよ、パパ、ママ! |
私はそこに、ずっと、ずっといるんだから! |
ずっといたから、絶対にあの希望の空に行ってやるんだって、そう本当に思えたんだから!! |
どんどん、崩れていった。 |
自分独りだけ、私独りで、みんなと繋がる戦いをすることになってしまった。 |
みんなが、見えない。 |
どうして・・こんなことに・・・ |
どんなに私が頑張っても、それは私が私独りで全部背負って生きようとしていると思われてしまう。 |
逆なのに。 |
私は、全部私独りで背負って生きようとしてしまうからこそ、私はそこから抜け出すために戦っている |
のに。 |
自分に囚われているから、抜けだそうとしているのに。 |
どうして・・・私が私に囚われていることしか・・・見てくださらないの・・・・? |
どうして・・・自分に囚われているとみんなが見えなくなるぞって・・・・仰るの・・・? |
だからこんなに、戦っているのに。 |
私が変わらなければ、私は独りになってしまう。 |
どうして、どうしてそれを貴方達が仰るのっ |
私には段々・・・・ |
そういう貴方達こそが、全部自分で背負っていくためにこそ、私から私の背負うものだけを奪っていこう |
としているようにしか見えなくなってくる。 |
ママは私の頭を優しく撫でながら、ママの赤ちゃんを自分だけで抱き締めようとする。 |
パパは私に自由に生きていいと言いながら、自分は不自由に独りで頑張って生きようとする。 |
部長だって、優お兄様だって、みんな・・みんな・・・・ |
どうして みんな 私のことを侮辱するのよ |
私が背負うべきものは、私が背負う。 |
でもそれ以上のものは、背負わない。 |
だって、それ以上のものを私が背負うということは、きっと誰かから、その誰かの背負うべきものを |
奪っていることになってしまうのだから。 |
私は、私が背負うべきものを奪われるのは許せない。 |
私は、私が誰かの背負うべきものを奪うのを許さない。 |
私を見縊らないで! |
でもね。 |
パパ、ママ。 |
私達は、私達がそれぞれ背負うべきものを、自分で背負うだけじゃ無いし、誰かの背負うべきものを |
奪って自分のものにすることだけしか出来ないほど、馬鹿じゃ無いわ。 |
私達は、背負うものを共有することだって、出来るでしょ? |
パパ、ママ。 |
ふたりの赤ちゃんの事は、大人のふたりだけが背負うことじゃ無いわ。 |
私だって、背負いたいのよ! |
ママがあんなに悲しんでいるのに、放っておける訳無いじゃない! |
第一、ママの赤ちゃんと私は無関係じゃ無い。 |
ママの赤ちゃんがママの子なら、私だってママの子なんだから。 |
私に全部任せてなんて、そんな馬鹿なことは言わないわ。 |
でもだから、パパとママに全部背負わせることなんて、しないわ! |
私はもう十六よ! |
なにもわからない子供じゃ無いわ!! |
だから・・・ |
だから・・・・・・ |
そう思うからこそ・・・ |
頑張って |
頑張って |
なのに |
どうしても |
誰もわかってくれないの |
わかってくれないのは自分が変わらないからと、自他共に見事に自分を責めながら。 |
私はずっと、独りで耐えている。 |
此処で。 |
この地獄で。 |
希望を、失いながら。 |
『馬っ鹿みたい。』 |
『馬鹿みたい、馬鹿みたい、馬鹿みたい、馬鹿みたい・・・』 |
・・・以下、第二部に続く |
◆ 『』内文章、アニメ『マリア様がみてる4thシーズン』より引用 ◆ |
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-- 090320-- |
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■■ 愛を楽しむ友 ■■ |
『卑屈なことを言うな。 君の力は大きい。 |
夏目、なにを焦っているか知らないけど、人間は無茶したって強くはならない。 |
まずは、自分を知ることだよ。』 |
〜続 夏目友人帳・第十一話・名取周一の言葉より〜 |
落ち着きが無い。 |
そわそわとする。 |
夏目とまた会えると思うだけで、子供のように踊る心がある。 |
浮き足立つとはこの事だ。 |
そわそわと、そわそわと、さらにする。 |
でも、それを落ち着けと、そうわざわざ戒めようとするほど、もう私は子供では無くなっていた。 |
愉しい。 |
ぞくぞくとする。 |
それを自然に抑えようとする力とそれは溶け合って、ただもう、楽しかった。 |
そわそわと、ぞくぞくと、静かに興奮している自分であることが、楽しくて仕方が無い。 |
不思議なものだね。 |
こんなに心躍ることなど今までは無かったというのに、それにただのひとつも驚きを感じることも疑問を |
感じることも無いままに、そっくりその心のままに踊ることが出来るのだからね。 |
不思議なその感触そのものがでは無く、その不思議という私の言葉で縁取られた、その夏目と会う |
ということの愉しみと手を取り合い踊る、それ自体が楽しかったんだよ。 |
その上で、鼻歌のひとつでも歌いながら、そうした今までの自分とは違う自分を、客観的に捉えていた。 |
だから、その客観的に捉えて導き出した驚きや疑問に、私自身が左右されることは無いんだ。 |
主体は私だからね、夏目との時間を愉しみにしている、その私自身こそが主体なんだ。 |
私は夏目と会うのが愉しみだ。 |
そう私が本当に認識しているのか、或いはそれを愉しむ理由の如何に関わらず、私はその愉しみを |
胸に楽しく生きようとしている、それが、私だ。 |
私の自分、なんだよ。 |
その自分が、私の内面を見つめ考え、そして客観的に冷徹に自己分析をしたりするんだね。 |
その自己分析などの結果が、それそのものが自分だ、ということは、だから無い。 |
まずは、自分を知ることだ。 |
自分がなにを求め、なにをしたいのかを。 |
その上で、じゃあ現実はどうなっているのか、その現実の中で自分は今どういう状態になっているのか、 |
それを調べて知っていく。 |
繰り返すが、その調査結果を踏まえて、如何に自分がしたいことを達成していくか、それだけに意味が |
あって、だから、調べた結果に基づいて、それに合わせて自分を定義していくなどということは、これはもう、 |
全然意味の無いことなんだ。 |
いいかい? 夏目。 |
私達の存在は、絶対なんだよ。 |
変わる自分はあっても、その変わる自分を見つめている自分自身は、決して変わったりしないんだ。 |
夏目、君は、あまりにも君自身のことを、知らない。 |
調べれば調べるほど、考えれば考えるほどに、色々な事がわかってくるね? |
真実とか真理とか、それがあるのかないのかとか、まぁ本当に、人間っていうのは実に様々な問いを |
導き出しているよね。 |
そして、その問いに答えるために様々な学問が生まれて、それぞれの流儀を育んできた。 |
さらには、そうして様々な問いを生み出すのはなぜか、ではどうしてそう問うのだろうか、そう問う自分は |
一体その問いとそれから得られる答えとさらにはそれを問い続けることでなにを得ているのだろうか、 |
そして、一体私達は、私とはなにかと問うことで果たして私に辿り着くことが出来るのだろうか、など、 |
そう考えることも、ずっとずっと、永劫に、やってきた。 |
それはすべて、自分に行き着く。 |
いや、すべての答えは自分の内にある、という意味じゃ無い。 |
逆だ。 |
そうして自分の外にあるものを、つまり、なにもわからないものをわかりたいという、その自分の欲望の |
ままに行動し思考する、その自分の姿を露わにしていくんだ。 |
その欲望のままに行動する、その自分とは、なんだろう。 |
その欲望のままに理解して獲得したものは、果たして、自分なのだろうか。 |
違うんだね。 |
あくまで自分というのは、自分なんだ。 |
これが自分なのだと描いてみせたものを、それをただみつめている私自身が自分なんだ。 |
自分はなにものでも無い。 |
だから逆にいえば、そのなにものでも無い自分を、なにものかにしていこうと、そう足掻いている、その |
主体そのものが自分なんだよ。 |
だから、そうして獲得していったもの自体は、あくまで自分が獲得したモノでしか無い。 |
それはね、ずっと根源的なことなんだ。 |
おそらく、私がこれが私だと認識している、そのすべての対象が、そうした自分が作り出したモノでしか |
ない。 |
なぜかわかるかい? |
それはね、私が自分を認識することは、言葉でやるしか無いからなんだよ。 |
言葉自体がそして、モノそのものだからだよ。 |
だからね、ここまで言っといてなんだけど、こうして語ってきたことすべてもまた、私の言葉のうちの、その |
語られた対象としての、モノとしての自分なんだよ。 |
人はね、自分を、存在としての自分を語ることは出来ないんだ。 |
これまた逆に言えば、そうして存在としての自分を語ろうとして、必死に言葉を紡ぎ続けている、それが |
私の自分なんだ。 |
虚しいかい? |
私は、そうは思わない。 |
語り続けたいんだ。 |
それが、私の欲望さ。 |
語り続けてくれた自分が、それが自分になることなど無い、という認識自体、もはや言葉の上の話さ。 |
虚しいと思い感じること、それ自体が既に、私というひとりの存在が必死に作り出したモノなんだ。 |
もう始まっているんだよ、私達には私達の戦いがね。 |
虚しいと叫ぶことで、私達が私達という存在であるという、ひとりであるという、その孤独と戦うことがね。 |
私達が存在し始めたときから、その虚しいと思う感情すらも含めて、勿論数多の学術学問の堆積も、 |
哲学や文学の思索も、諸々の感情も、そのすべてが私達が必死に作り出してきたモノなんだよ。 |
それは立派な、自分が作り出してきた、自分だよ。 |
人はね、その作り出した方の、そのモノとしての自分を、みることが、見つめることが出来るんだよ。 |
私はね、虚しいとは思わない、そう、虚しいとは思わないという自分を見事に作ったんだ。 |
そしてそれは、虚しいと思うあり得たかもしれない自分と、全く等価値なんだ。 |
同じものだよ、孤独と戦っている、その戦士としてね。 |
ただ、手にした武器が違うだけさ。 |
虚しいと思わない奴にはそいつの戦い方が、虚しいと思う奴にはそいつの戦い方がある。 |
虚しいと思うか思わないか自体が、孤独の存在をどうこうする訳無いだろう? |
そんなことは、当たり前のことなんだよ、夏目。 |
君は、そんな当たり前のことすら、わかっていない。 |
孤独は、絶対的に、在るんだ。 |
けれど私達は、自分というモノを作り出して、さらにはその孤独にも孤独というモノを作り出して、 |
そのモノ同士を付き合わせて、どういう関係にしていくかを考えていくことが出来るんだ。 |
それが自分の孤独を、客観的に見つめるということさ。 |
自分を語る、ということさ。 |
前にも言ったと思うけれど、私は優しさを免罪符にする奴は嫌いなんだ。 |
そしてそれは、優しさだけの話じゃ無いんだ。 |
私達が作り出した、すべてのモノがその対象さ。 |
的場一門の七瀬さんのあの言動も、そうさ。 |
妖怪とはこうこうこういう存在で、だから私はそうするのだ。 |
妖怪とは人に害を為し退治されて当然の存在なのだから、だから私がどう使役しようと私の勝手だ。 |
的場一門の共有する思想は、それなんだ。 |
私はそれが気に喰わなくてね。 |
実際、私だって的場一門と同じ理屈自体は採用しているよ。 |
妖怪は人間ほど甘くないし、気を許せば喰われてしまう。 |
敵対する存在同士であることも事実だし、その境地からなら退治しようとするのは当然だ。 |
無論、一度式として組み込んだ妖は、使役者のものであることは確かだ。 |
だけどね、夏目。 |
それらは全部、私達が作り出したモノにしか過ぎない。 |
的場一門のそれは、そのモノを見つめる自分の無い、無責任な思想なんだよ。 |
モノのせいに、妖怪が人間の敵であるということを免罪符にして、好き放題に妖怪を使ってるだけさ。 |
自分と妖怪との、対面が無いんだな。 |
自らの使役する妖怪に対して、私達はもっと沢山見つめて考えなければならないものはあるはずなの |
に、そうして妖怪と人間の語られた関係性を盾にして、だから仕方無いとして、あっさりと無視してしまう。 |
君は的場一門と、同じだ。 |
優しさを盾にして、それだけで良いと思うかい? |
わからなければいけないこと、やらなければならないことは、その優しさ自身とは関係無いことだろう? |
的場一門と君は、やり方が違うだけで、本質的には同じなんだ。 |
君は君の優しさを、優しさを感じている君自身を、見ていない。 |
七瀬さんは、妖怪を道具のように扱う七瀬さん自身を、見ていない。 |
夏目は、こうは思わないかい? |
妖怪を道具のように扱う必要もあると。 |
妖怪と人間の差異を考えれば、そうしなくてはならない局面も沢山あるだろう? |
でも、道具のように扱ったら、君の中の優しさは消えてしまうのかい? |
逆に訊こうか。 |
優しさを持っていたら、妖怪を道具のように扱うことは出来ないかい? |
七瀬さん達的場一門は、そう考えているようだけどね。 |
彼女達の思想では、優しさは命取りになるそうだ。 |
笑っちゃうね。 |
なんて、小さいんだろう、ってね。 |
優しさを捨てて、妖怪を道具のように扱う事しか出来なければ、いつか妖怪に喰われるよ。 |
そう、自分自身が、思い描き作り出した、モノという名の妖怪になってしまうんだ。 |
そしてだから。 |
七瀬さんが君に言った通り、今の君の優しさは、君の命取りになるんだ。 |
君は君を知らない。 |
君は妖怪のことを知らない。 |
君がそういうことを知らずに、ただ自分の優しさに浸る事しか出来なければ、いつか妖怪に喰われるよ。 |
優しさもまた、君の作り出した、大切なモノにしか過ぎないのだからね。 |
私には使役する妖、まぁ式とも言われるけれど、そういう存在が何人かいる。 |
私はそのひとりひとりに思い入れがある。 |
それぞれとの関係がある。 |
でも、彼らを使役するときには、そんなものは必要無い。 |
公私の別、と言えばわかりやすいだろうか。 |
私はね、公私混同というやつが嫌いでね。 |
すべてを私で塗り替えるのも嫌いなら、すべてを公で塗り替えるのも嫌いなんだ。 |
逆にいえば、私の場合は、分けることで両立しているんだ。 |
私には君と的場一門は、そうして公私を混同しているように見えるんだよ。 |
ふふ、私はこれでも結構優しい奴なんだよ? 煌めいててごめん♪ |
そしてね、その優しさを恥じるとか消そうとか、そんな事は全然考えていないんだ。 |
むしろ、妖達を使うときにその優しさを抑制することで、その優しさが保存されるということを知っている。 |
消すんじゃ無い、抑制、もしくはコントロールするんだよ。 |
優しいだけのままじゃ、駄目なのさ。 |
そして反対に、優しいだけのままじゃ駄目なことをわかるだけでも駄目なんだ。 |
わかっただけで、そのわかった事を盾にしているのが、的場一門のやり方だからさ。 |
大事なのは、優しいだけのままじゃ駄目だとわかって、そしてではそれ以外に必要なものはなにかを |
求めることじゃないかい? |
優しいだけじゃ駄目なんだ、だから優しいのは罪なんだ、だから優しさを捨てて厳しく生きていくべきだ、 |
なんて、私にはこれはどう見ても、子供が親に怒られて、グレているだけのようにしか見えないんだ。 |
なぜ怒られたのかを考え、そしてどうしたら怒られずに済むか、そしてなにより、どうして怒られたくないの |
かを考えて、改めて親と、そして親をおもう優しい自分と向き合っていく、それが大人というものじゃ |
ないのかい? |
主体的になれ、夏目。 |
そのためには、自分の事を知らなくちゃいけないということが、わかるはずさ。 |
どうして的場一門は、七瀬さんは優しさを消そうとするか、わかるかい? |
彼女達が、弱いからさ。 |
優しさを持ったまま、戦うことに耐えられないと、そう考えているからさ。 |
いや。 |
彼女達が、自分が弱いままでいることを肯定しているという、その自分を見つめないからさ。 |
簡単に言えば、本当の意味での自分との戦いが出来て無いんだね。 |
彼女達にとっての自分との戦いというのは、自分の中の優しさを消す作業、それそのものを指している |
んだよ。 |
それはね、彼女達が、なぜ自分は自分の優しさを消そうとしているのかという、その思考が無いから |
こその不毛な戦いなんだ。 |
自分の中の優しさを消すなんて、それこそ簡単なんだ。 |
それをさも難しいことのように、大仰に大袈裟に扱って、その戦いこそが自分のするべき戦いなんだと、 |
まさにその戦いに興じる事そのものを目的にして、それは見事に目の前のみつめるべきモノ達、そして |
それらを見つめるべき自分自身の存在から逃げ回っているだけなんだ。 |
そうだね、私が的場一門に感じる不快さの根本にあるのは、それさ。 |
戦いそのものを目的にするなんて、馬鹿げてる。 |
目の前の妖怪達を、そして私達人間自身を、これ以上馬鹿にしていることは無い。 |
本当に、自分と戦ったことのある人間なら、戦いそのものを目的にすることなんて、絶対しない。 |
戦うべき相手は優しさでは無く、優しさを持ったまま戦うことの出来ない弱い自分さ。 |
なぜ戦うか。 |
それは、優しさが必要だということを、なによりも知っているからさ。 |
優しい自分が此処にいる。 |
その優しい自分を生きさせるためにこそ、戦っているんだ。 |
そして。 |
その優しさは、誰のために向けられているんだい? |
夏目。 |
それは、君自身にかい? |
違うよな。 |
違うんだよな。 |
誰もが知っているこの当たり前の答えを、夏目、君はもう、知っているはずだ。 |
目の前で助けを求めている者を、放っておくことなど出来ないのだろう? |
それはどうしてだ? |
放っておくと、自分の優しい気持ちが満たされないから、じゃないか? |
それは結局、君が君自身の気持ちを抑えられないから、ただそれだけではないのかい? |
少なくとも夏目、君はそういう自分の欲望を見つめる必要がある。 |
そして。 |
勿論。 |
それだけでは無いことも、知る必要がある。 |
優しさは、優しさを満たすことのためにある訳じゃ無い。 |
優しさは、その優しさを以て接する、その誰かのためにあるのじゃないかい? |
愛、なんだろうな、やっぱりそれは。 |
最も逃げてはいけないのは、その自分の愛からなんだろうな。 |
私はそう思う。 |
その自らの中に犇めく愛を見据えない優しさは、結局のところ自己満足で終わってしまうんだ。 |
挙げ句の果てには、優しさとはすべて自己満足にしか過ぎないのだから、優しさがあればそれでいいん |
だという、優しさを免罪符としてしまうことになってしまう。 |
夏目、君が誰かを助けたいと思う。 |
そして行動し、そして考える。 |
それは、その君が誰かを助けたいと思う、自分のその欲望のためにしていることかい? |
違うよな、それが違うということを、夏目、君はわかっているのだよな。 |
君が誰かを助けたいと思い、そして行動しそして考えていくのは、その誰かを助けるため、ただそれだけ |
のためだ。 |
自己満足など、出来る余地は無いんだよ。 |
逆に、自己満足で済ましたいと思うからこそ、自分の優しさは自分の欲望のためなどと言うんだ。 |
仮に、哲学的に思考して、本当はそのすべての優しさはどんなに足掻いても自己満足にしかならない |
と論理的に証明されたとしよう。 |
しかし、もしそうなら、夏目。 |
君なら、どうする? |
そう。 |
自分がどうするか、なんだよな。 |
導き出された哲学的論理学的結論は、それはすべてモノだ。 |
そのモノを盾にしたり免罪符にしたりしようとする、その自分は私や君や他の人間達自身だ。 |
その盾と免罪符が存在することで、私達の愛が消えることなんて、あるのかい? |
ただその盾と免罪符を手にするために、自分の中の愛を消そうと足掻く、私達がいるだけじゃないかい? |
妖怪の別称を、知っているかい? |
物の怪、という。 |
モノの怪だね。 |
モノが人格を持っているんだね。 |
しかし、妖怪は、モノ自体じゃ無い。 |
あくまでモノが人格を持った、なにか、なんだよ。 |
モノの向こうに、存在がある。 |
式として使うモノとしての妖怪、優しく慈しみ合う存在としての妖怪。 |
人格、というのも実はモノだ。 |
モノにモノを付け足したって、それはモノだ。 |
けどね、夏目。 |
そうして必死に其処にモノを視て、そこにさらに新たなモノを付与して他のなにかとして視ようと必死に |
なるのは、なぜかな? |
それは、私達の中に愛があるからさ。 |
その愛は私達自身の存在の外にある、もうひとりの自分、 |
つまり誰かの存在としての自分と繋がっているのさ。 |
どうだい? 私の言ってることは滅茶苦茶だろう? ふふふ。 |
でもね、これが私の流儀さ。 |
私が主体的に行動して生み出した、その結果、つまり、モノさ。 |
私はこの私が捻り出した詭弁じみたモノを、盾にする気は無いさ。 |
むしろ盾になんてなりようも無い。 |
私はこれらのモノを生み出す事自体のために、こうした言説を垂れた訳じゃ無い。 |
ふふ。 |
これはすべて。 |
夏目。 |
君のためへの、私からの大切な贈りモノなんだよ。 |
君が私の言葉に頷くか信奉するか、そんな事は望んじゃいない。 |
ただ君に、この私の言葉と、そしてその言葉を作り出した、私自身を見つめて欲しいんだ。 |
私は君のためになにかしたい。 |
君も、私を含む誰かのためになにかしたいと思っているんだろう? |
それはとても、素敵なことだ。 |
でもね、そうして誰かのためになにかしたいことが、それが実行でき実現出来るかどうかで、君の価値が |
決まることなんて無い。 |
焦ってるんだよ、夏目、君は。 |
本当に誰かのためになりたいんなら、現状なにも出来ない自分に耐える必要があるのじゃないか? |
君が思っているより、ずっと多くの人が君に沢山のものを求めていることに、君は気づいているかい? |
今のままの君が、なにも出来ない自分を叩き潰して、無理矢理皆の期待に応えようとして、果たして |
それが本当に、周りの人達を喜ばせることになると思うかい? |
今君がやっていること、やろうとしていることは、自己満足にしか過ぎない。 |
もっと、楽しんだらどうだい? |
周りの人達に期待されている、その今の自分の状態をさ。 |
君はみんなを愛してるし、みんなからも愛されてる。 |
それはとても、楽しいことじゃないかな? |
楽しくないかい? |
不安かい? |
皆の期待に今すぐ完璧に応える事が出来ないのが、悲しいかい? |
だから、その不安を、悲しみを消すために、無理矢理にでも頑張ってしまうのかい? |
その傷だらけの頑張りが、誰かのためになることなんて、あるんだろうか。 |
誰かを心配させるだけ、そして君が怪我をする事で君がいずれ出来るはずだったもっと大きいものの、 |
その可能性を壊してしまうだけじゃないのかい? |
それでも、それがわかっていても、君は止まらない、止められない。 |
ああ・・・ |
そうなんだ・・・ |
夏目・・・・君は・・・ |
不安を、悲しみを消すためだけにいても立ってもいられない自分を越えて。 |
それでも今、目の前で苦しんでいる者を助けようと、今その瞬間の自分を見つめて足掻いているんだな。 |
今の未熟で弱い自分でも出来る、その誰かのためになれるモノの、創造。 |
それが、愛だよ、夏目。 |
いいんじゃないか、それで。 |
君と私の、愛の楽しみ方が違うだけさ。 |
だけど。 |
君は、そんなもんじゃないぞ。 |
君は君を知らない。 |
今の君でも、いや。 |
今の君にこそ、出来るものがあるだろ? |
未来は、その今の連続の中にあるんだ。 |
常に、自分の認識出来ていない自分、それを求め理解していく連続の先に、君の求める君がいる。 |
今出来ることをやっているだけで良いほど、今この瞬間というものは甘く無い。 |
上へ上へ。 |
先へ先へ。 |
知らないものを知る。 |
今、この瞬間から。 |
夏目。 |
君はそれを、ずっとやってきたんだ。 |
自信を持て。 |
卑屈になるな。 |
既に私達は、君から多くのものを貰っているよ。 |
もし君が、その私達に与えたものが大したものでは無いと思うなら。 |
それは君の、そのものへの理解と。 |
それを受け取った私達への理解が足りないからだ。 |
わかって、いないんだよ、まだまだ君は。 |
君の価値と。 |
そして。 |
君の、可能性をね。 |
君の事が知りたければ、君を見る私達を良く見ることだよ。 |
それは私も・・・・・ |
同じか |
痣が蠢く。 |
痣だけを見ると、見落とす自分があることが自ずと知れる。 |
この痣はなぜか左足だけには行かない。 |
なぜだろう。 |
そう問うことで、痣に目が釘付けになっている私がある。 |
きっと、私に残るのは、左足だけだろう。 |
いや。 |
左足だけ、喰われるのだろうか。 |
『自棄を気取るなよ』、か。 |
七瀬さんもひどい事言うな、本当に。 ふふ。 |
私はこれでも、結構自分を大切にしてるんだけどな。 |
この痣が憎い。 |
憎くて、憎くて、この体ごと焼き尽くしたくなる。 |
そう。 |
私の体のために。 |
きっと、痣だけが燃え、体だけは残ってくれる、と。 |
でも悲しいかな。 |
柊を助けたとき、柊の体は残ったのを見たときから・・・・ |
私のときだけは、どうしても、この体は見事に焼けてしまうと、そうほとんど確信してしまっているんだ。 |
悲しいな・・ |
なにがどう悲しいのかも、よくわからないな・・ |
ふと見た夏目の瞳の中に。 |
私が、映っていた。 |
ああ、私がいる。 |
私が守りたい、体という名のモノが、其処に。 |
知りたい。 |
強くなりたい。 |
この体を、夏目の瞳に映し続けるために。 |
夏目を映す、この愛しい瞳の、ために。 |
『さぁ、帰ろう。』 |
煌めく、私達の世界へ。 |
ふふふ、煌めいてて、ごめん♪ |
◆ 『』内文章、アニメ『続夏目友人帳』より引用 ◆ |
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■■ 最近タイトルが駄目 ■■ |
ごきげんよう。 |
さて、今日は前回予告しました通り、来期アニメについてのお話をさせて頂きます。 |
や、ほんとはマリみてとか夏目とかのお話を目一杯きっちりとお話したかったんですけどね、でも残念、 |
前回予告しちゃいましたから、ほんと残念、予告しちゃったらやらなきゃいけませんもの、仕方ない。 |
仕方ないんですよー♪ ←嬉しそうだ |
ということで、マリみてとか夏目のお話は次回やります、やらせて頂きます。 |
予約、っと。 (ぉ) |
では早速。 |
戦国BASARA |
涼宮ハルヒの憂鬱 |
PandoraHearts |
けいおん! |
Phantom 〜Requiem for the Phantom〜 |
ハヤテのごとく!! |
鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST |
シャングリ・ラ |
夏のあらし! |
蒼天航路 |
戦場のヴァルキュリア |
神曲奏界ポリフォニカ クリムゾンS |
タユタマ -Kiss on my Deity- |
咲 -Saki- |
リストランテ・パラディーゾ |
東のエデン |
こんな感じで、最大限に候補作を挙げてみました。これ以上は挙げられぬよ。 |
で、一応上10作が基本で、下6作が予備扱いです。 |
まぁ結局は全部第一話だけはなんとかして観てみるつもりですので、ほとんど関係無いですけど、 |
意識的に予備の方は出来るだけ面白くならないことを願いながら観るつもりです。なにその不毛。 |
さて、今日はちょっとお時間が無いので、早速各作品ごとの印象とか期待とかその辺りのことを |
ちょろっとずつ。 |
戦国BASARA: |
うわあ絵がもっさりしとるー。ゲーム内アニメのアレとはまた別の感じでもっさりしとるー。 |
取り敢えず、ゲームのあのはっちゃけるにも程があり過ぎる設定が最高なので、それを最大限に生かし |
て欲しいですね。この絵じゃスタイリッシュもなにも無いようだし、変に色気出して手堅くストーリーを |
まとめても、それじゃ凡作の域を超えられないと予想。はっちゃけてなんぼです。 |
うーん、そういう意味では、オリジナルの戦国武将アニメとか作って、キャラは無論美形で、政略軍略 |
もそうだけど、それと向き合う武将個人の内面とか、そういうのをガチでやってくれるアニメとか、そろそろ |
こないかなと期待。BASARAにはそんなの期待してませんけど。本多ロボの時点でそれは無理www |
涼宮ハルヒの憂鬱: |
「改めて」放送、というのが大変気になる。 なにかサプライズがありそー。 |
もっとも、ただ普通の再放送だとしても、丁度もう一度観たいと思っていた頃ですので、それはそれで |
歓迎です。 |
キョンのぼやきもそうだけど、なによりハルヒのはっちゃけぶりを、今一度。 |
・・・なんか最近はっちゃけ需要高いな私。 |
PandoraHearts: |
なんか趣味。(ぉぃ・・・) |
面白くなって欲しいタイプ。 |
感想書けたらいいなと思うタイプ。 |
キャラも個性ありそう(?)だし、そこからなにか遠大なテーマ的ななにかななにかとか(なに)を描き出し |
てくれれば嬉しいけど、そうじゃなくても愉しめるくらいの、そんなはっちゃけなものをやって欲しい。 |
・・・・・おまえ・・ただはっちゃけ言いたいだけと違うんか・・・ |
けいおん!: |
各シーズンごとにひとつは必ずある、ギャグコメ系期待の星になりそな予感。 |
ただ可愛い女の子が派手に演奏テクを魅せつけるっていう「ギャップ萌え」的な感じでいかれると、 |
それはちょっとつまらなさそうに。 |
まぁでも、細かいキャラの関係とかそういうもの中で、音を楽しみながらやってくみたいな、そういう感じ |
で真面目にやっていってくれると面白そうかもしれないね。 |
つかやっぱり、ギャグの使い方とかで、その辺りはだいぶ変わってきそうだね。 |
・・・ていうかこれ、そもそもギャグコメなの? (知らんよ) |
Phantom 〜Requiem for the Phantom〜: |
正直に言うと、某NOIRとの比較しかイメージ出来ない。 |
ですので、どうか、そんな哀れな私をお導きください。 |
某NOIRの呪縛から解き放ってください! (違うだろ) |
という感じで、基本的に頭の中は先入観っていうか某NOIR一色ですので、どうぞよろしく。 |
期待しています。 (なにを) |
ハヤテのごとく!!: |
第一期は結構好きでした。リアルタイムでは観てなかったけど。 |
いまいちツッコミの弱さで突き抜け感を感じられなかったけど、まぁ、オタ的ノリの微妙知識満載な感じ |
で、しなやかにだらだらと駆け抜けてくれると嬉しいです。 |
・・・またリアルタイムでは観ないかもだけど。 どーせケーブルでやるだろし。 (ぉぃ) |
鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST: |
少し腹が立ってる。 |
ていうか、なんで再アニメ化なの? |
いや再アニメ化する事自体は全然構わないんだけど、なんか前作の事が無かったことみたいな、 |
黒歴史みたいにする感じが出てて、少し不愉快。 |
というか私はそれほどでも無いけど、主役ふたりの声優が変わらないって、これって前作ファンの特に |
主役ふたりのファンからしたら、結構きつい事なんじゃないの? |
邪推だけど、前作が原作からあまりに逸脱してたもんだから、原作ファン激怒、そして仕方無く前作 |
を黒歴史にして原作準拠で再アニメ化、主役ふたりの声はハガレンブランド作ったから仕方ない残す |
か、みたいな感じがするんだけど、これってどうなのよ? |
どーも、前作アニメのファンがあまりにも軽んじられてる気がするね。 |
原作ファンに配慮して再アニメ化、というより、原作ファン御用達の原作忠実アニメを作る事自体は |
問題無いと思うのだけど、それでそのまま前作を否定するのは、なんか原作ファンに寄り過ぎてて、 |
なんだか気持ちの悪さがあるね。 |
もう少し、両方を立たせようっていう、そういう配慮が欲しいところですね。 |
まぁ、実際に始まる今回のアニメの中身とは関係無いことですけどね。 愉しんできます♪ |
シャングリ・ラ: |
なんか久しぶりに濃いのきたね。 ん?濃い? |
ストーリー見ると、なんかアンチナウシカ?、みたいな感じで大変そそられるし、勿論それはスタートで |
あって、そこから一体なにが見えてきてなにを考えていくのかと、これはもうなんか、興奮する。 (ぇ) |
現時点では、感想執筆対象の最右翼にして本命。 |
でもその描き方次第では、逆に駄目な方にいく気も同じくらいするような、少なくとも、なにかこう、 |
そういうエネルギーみたいなものは感じます。良くも悪くも、ね。 |
とにもかくにも、来期注目作のひとつです♪ |
夏のあらし!: |
私は基本的に制作スタッフの顔ぶれで作品に期待なんかしないんだけど、なんかもうどうでもよく |
なってきた、てか、新房監督にまりほりであれだけの事をやられて期待しないでいる方がおかしいよ私。 |
勿論全然違う作品になることはわかってるし、新房監督的ななにかを期待してる訳でも無いよ。 |
ただ純粋に、「なにか」をやってくれる、そんな気がする。 |
だから作品自体の事前情報は積極的に入手しないようにしてる。 |
・・・・ってそれ、おもいっきり監督に依存してるってことじゃないの? (そうかも) |
蒼天航路: |
義務ですから。 |
来期一番観たくない作品ww |
原作通りにアニメ化されないのもアレだけど、されたらされたでもっと困りそうだもんこの作品w |
正直、映像化するのは不可能なのに、無理矢理するのは罪、という話じゃ無く、この作品を映像に |
して世に流すこと自体が犯罪みたいな、そんなどうしようも無い作品です。 ←褒め言葉 |
かえって原作の表現を緩めて、生温くアニメ化されても、確かにがっかりするかもしれないけど、 |
それと同じくらいにほっとするかもしれないしwww |
それに、原作に基づかない、けどアニメとしてしっかりと成立してる良アニメにしようとしても、果たしてあの |
原作の強烈な、なにかを締め付けるようなあの力を越えることなんて出来るか疑問。 |
もっとも、純粋にギャグアニメにしちゃう、という大穴もありかもですけどね、安心出来るしww |
来期で一番期待したら持っていかれる(なにを)作品ですねw |
戦場のヴァルキュリア: |
|
神曲奏界ポリフォニカ クリムゾンS: |
前作は観て感想まで書いたのに最後まで書けなかった私の雪辱戦。 |
あ、でも感想は書きませんけどね。 (ぇ・・) |
いや、ほら、感想書いてたから集中して観れなかったのかもしれないし、だからほら、ね。 |
・・・・・観るのもやめようかなぁ。 (好きになさい) |
タユタマ -Kiss on my Deity-: |
急に可愛い子が来たので。 |
と言って、結局あっさりと二話目から切ったアニメが今期ひとつあったことを、私は知っている。 |
さすがに可愛いだけじゃ駄目だった、可愛いは正義だけど正義だけで渡れるほど世の中甘く無いのよ、 |
とか言いながら切る可能性大。 容赦せん。 |
いかん、いかんよそんな事じゃ、可愛いだけなら萌えなきゃいいじゃない。 (微妙な注文) |
つまりまぁ、それ以上の魅力を見つけていこうと、まずはそこからです、何事も。 |
・・・・・・・・。 (なにか言えよ) |
咲 -Saki-: |
麻雀アニメみたいですけど、私麻雀わかりませんけどいいですか? |
音楽が駄目なら麻雀で、みたいな軽いノリで、けいおん!の予備扱いで選びました。 |
・・・・・今のとこ、それくらい? |
リストランテ・パラディーゾ: |
なんか昔、これの原作漫画の書評を読んで、おおすごいと思った記憶があって、だからその、 |
あれ?どうすごかったんだっけ?、すごいと思ったことしか覚えてないぞ、あれ? (駄目だこいつ) |
ま、まぁ、頑張ります。 老紳士萌えとか。 (心配だ) |
東のエデン: |
なんとなく。 |
上の文章を読んでわかることは、来期はまだ私には早い、ということです。 (結論) |
うわーすごい距離あるなー、まだ全然前期にしがみついてるなー私。 |
なんだか年々切り替えというかむしろ両立が出来なくなってる気がするんですけど、気のせい? |
新しいシーズンが始まっても、気持ちが切り替わるのって2話くらいからだし、あはは。 |
まぁ、うん、今を大切にってことですね、たぶん。 |
そういうことなのでしょう、うん。 |
・・・・・あー・・・最近アニメが面白すぎる・・ ←今期でいっぱいいっぱいの人 |
んでは、今日はこれで。 |
ばいばい。 |
P.S: |
まりほり大爆笑。 |
変態委員長かなこww |
茉莉花さんのかつてない高クオリティな馬鹿の仕方www |
あとそろそろいい加減かなこさんは事実上カミングアウトした事になってるかもしんない。 |
いつまで冗談のライン上で周囲の子達は見てくれてるのかw |
ベルリンさん話題は、なにげに完全天然な桐さんで決まり。 |
あー面白かった。 |
かつてない爆笑でした。 |
かなこさんの溶け込みぶりに乾杯w |
P.S2: |
景虎様が哀れ過ぎる。 |
武将的人間的に見てアレなのはそうだけど、だからこそ同情できる。 |
ていうか華姫の北条の人間は信用ならないってセリフより、景虎様の前で私を置いてくなら死にます |
の方が、よっぽど景虎様に効いてると思う。悪い意味で。あれ、なにげに追い打ちじゃない? |
なんつーか、どいつもこいつも景虎様を色んなレベルで利用してるだけで、ほんと景虎様には同情申し |
上げますです。 |
あの景虎様はお守りしたい。 (ぉ) |
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-- 090316-- |
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■■ マリア様がわからないということ ■■ |
『 あの微笑みは、どうしたのでも、大丈夫よでも、任せておきなさいでも無い。 |
けど、そのどれをも含んでいたと言える微笑みだった。』 |
〜マリア様がみてる4thシーズン・第十話・乃梨子の言葉より〜 |
瞳子ちゃん 瞳子ちゃん! |
どうしても逃げられたくなくって、懸命に手を伸ばした。 |
でもどうしてかな、どうしても、その手は届くことは無いんだって、そう感じていたの。 |
そう感じていたのに、なんで手を伸ばしたかって? |
なんでだろ? わかんないや。 |
え? |
届かないってわかってたからこそ、手を伸ばす演技をするだけで、瞳子ちゃんを見捨てて無いってことを |
証明出来るからじゃないのかって? |
うーん。 |
え? |
だからほんとは伸ばした手は届いたら困るんだって? |
ううーん。 |
そうかもしれない。 |
私はただ、届くか届かないかに関係無く、瞳子ちゃんを捕まえたくて手を伸ばしてみたんだけど、 |
確かに届かないってわかってるのに、それなのにそれしかやらなかったっていうのは、それがわざとだった、 |
ほんとは瞳子ちゃんを追い掛ける振りをする事だけに満足してる、って事になるのかもしれないね。 |
うん、私のこの手が届かないってわかったのは、それは、私が手を伸ばすことしかしない事がよくわかって |
いたから。 |
それ以外の事が出来るか出来ないかなんて、それこそ、考えていなかったし。 |
私はただ、届く届かないに関係無く、瞳子ちゃんに手を伸ばした。 |
手を伸ばせば捕まえられるって、そう思ったから手を伸ばした、って訳じゃ無いよね。 |
手を伸ばしても届かないってわかってたんだから。 |
なのに手を伸ばしたのはどうしてかって? |
うん。 |
だからね、私はあのとき。 |
なにも考えてなかったの。 |
子供みたいに、無意識に手を伸ばしてたの。 |
瞳子ちゃんを捕まえようっていうのは、たぶん嘘。 |
私はただ・・・・ |
無理だって |
ああ・・ |
瞳子ちゃんとの間に、とても大きな溝が出来ちゃったって、そう思っただけ。 |
諦めちゃったのかもね。 |
また私、間違えちゃったって。 |
ううん。 |
自分の間違いに気づいたから・・・ |
だからね、乃梨子ちゃん。 |
私は、伸ばした手を、自分で下ろしたんだよ。 |
この手は下ろすって、もう、瞳子ちゃんの後姿を見た時点で、決まってたんだ。 |
手を伸ばすこととか、どうでもよくなっちゃった。 |
『瞳子を、見捨てるおつもりですか?』 |
『逆なんだけどな、むしろ。』 |
◆ |
難しいことを感じようとしたんだけど、やめた。 |
どこかで聞いたような言葉が頭の中を駆け巡って、なんだか訳がわからなくなって。 |
だけど、不安じゃ無くて。 |
どうしてだかわからないけど、これだけ頭の中がぐちゃぐちゃなのに、そうして色んなものが飛び込んで |
くることに安心出来てしまって。 |
どうしてだろうな。 |
それだけ瞳子ちゃんと繋がっているって感じられるからかな。 |
私は瞳子ちゃんのことが好き。 |
それだけじゃ、駄目かな。 |
うん。 |
駄目なんだよね。 |
どこがどう駄目なのかを、きっと乃梨子ちゃんはわかってるだろうし、私に対して一杯一杯言いたい事が |
あるんだと思う。 |
私は、自分がどうして駄目なのかはわかる気がするんだけど、具体的にどう駄目なのかはよくわから |
ない。 |
乃梨子ちゃんにひとつひとつ指摘されても、わかるようで、わからない。 |
そしてね、私はどうしても、そのわからないということに、切実になれないの。 |
だから乃梨子ちゃんに、瞳子ちゃんを見捨てるのかって言われたときに、ああそう言われると確かに |
そうなっちゃうねって、なんだか当たり前のように思えてしまった。 |
変な話、乃梨子ちゃんが怒るのもわかるよ。 |
そしてね、でも私はそうなんだから仕方ない、っていう、そういう諦め方は、実はしてなかったりする。 |
どうでも良くなっちゃったのよ。 |
良いとか悪いとか、そういうことが、ね。 |
乃梨子ちゃんは、志摩子さんといつもどういう話をしているの? |
私ね、志摩子さんと私って、全然違うタイプだと思うの。 |
だけどね、私は志摩子さんの事が好き。 |
ううん、違うから好きって事じゃ無いよ。 |
自分と違う人間を見て楽しむことなんてしないもの。 |
私と志摩子さんは友達。 |
ちょっぴり恥ずかしいけど、親友っていう感じかな。 |
それでね、志摩子さんって、正しいとか間違ってるとか、そういうなんていうのかな、なにかを守ろうと |
しているんだけど、いつもそれだけじゃ足りないって、そう思ってる人なんだって思う。 |
志摩子さんと話してて、そう感じたこと無い? |
志摩子さんを見つめるひとりとして、私と乃梨子ちゃんには分かり合える部分が沢山あると思うの。 |
志摩子さんは、自分に厳しい人。 |
でも、自分に厳しくするだけじゃなにも得られないって、ううん違うかな、やっぱり、それだけで得られるも |
のはあるんだけど、それ以上のものも求めてるんだと思う。 |
だからね、他人に対しても公平に厳しくあろうとしてる。 |
自分に厳しくするのは、うん、たぶん志摩子さんは、他人に厳しくすること、他人になにかを求める事が |
怖いからこそ、だからそうするしか無いんだってことに、気づいたんじゃないかって思うの。 |
でもね。 |
志摩子さんは、志摩子さんのお姉様、先代のロサギガンティアの聖様と出会ってね、とても変わったの。 |
うん、志摩子さんは私より聖様との付き合いの方が少し長いから、私と知り合う前の志摩子さんと聖様 |
との関係はわからないけどね。 |
けど、私の知っている限りでも、志摩子さんはどんどん変わっていってた。 |
前はもっと志摩子さん、ぴりぴりしてたんだよ。 近寄りがたいっていうか。 |
だけど、聖様と色々あって、たぶん志摩子さん、他人の存在っていうものをわかったんじゃないかって、 |
そう思うの。 |
正しいとか間違いとか、それを求めたり拒否したりするのは、やっぱり自分の中の欲望のうちのひとつに |
しか過ぎないって。 |
乃梨子ちゃんも会ったことあると思うけど、志摩子さんのお姉様の聖様って、とっても不思議な人なの。 |
たぶん根はすごく真面目で厳しい人のはずなんだけど、そういうのを全然、顔の表面に出してこなくて、 |
ほとんどずっと笑っているような人だったんだよ。 |
想像してみて。 |
今よりずっと厳しい志摩子さんが、明らかに色々わかっているはずの人が、そんな風にへらへらとずっと |
笑っているのを見たら、って。 |
しかもその人が、自分の大切な人だったら。 |
たぶん、とっても、とっても、怒るとは思わない? |
大切な人じゃ無かったら、たぶん無視するよね。 |
うん、当然志摩子さんも、怒って、悩んで、苦しんでた。 |
それで、志摩子さんはきっとわかっていったんだと思うんだ。 |
ああ、そういう風にしている自分の姿を、お姉様はみてるんだ、って。 |
相手とわかり合うための道具は、正しさや間違いのルールを共有することだけじゃ無いんだって。 |
うん、私も感じてたんだ、もしかして聖様は志摩子さんよりも、ずっとずっと厳しい人なんじゃないかって。 |
そしてね、志摩子さんよりずっとずっと厳しい人だからこそ、志摩子さんよりも、ずっとずっと、それだけじゃ |
足りないっていう気持ちが大きかった人なんじゃないかなって。 |
聖様が卒業するとき、私は聖様にこんな感じのことを言われたの。 |
あなたみたいな普通の子と出会えて嬉しかったって。 |
あのときは自分の事を言われていたのもあってよくわからなかったけど、なんだか、志摩子さんを見てきて |
、少しずつその聖様の言葉の意味がわかるようになってきたんだ。 |
志摩子さん、聖様とは全然違うアプローチの仕方なんだけど、なんだか聖様に似てきてる。 |
この間、志摩子さんと由乃さん、ちょっとだけ衝突したでしょ? |
志摩子さんが正しいとか間違いとかいう事を言い出して、そして由乃さんが正しくないことの中にだって |
大切なものがあるでしょうって、ちょっと違うかな、うん、正しいとか正しくないとかそんな事関係無いって |
言って喰ってかかった。 |
だけど志摩子さん、そのとき、そう言ってくれる由乃さんのことが好きって言ったよね。 |
私は、どっちかっていうと、由乃さんに近い。 |
だけどね。 |
あのとき、あのとき一番胸に浸みたのはね、その志摩子さんの由乃さんへの言葉と、あの笑顔だった |
んだ。 |
すごく、志摩子さんの気持ちがわかったんだよね。 |
聖様もきっと、私をそういう風にして見てくれていたのかな。 |
それにね、私は由乃さんに近いって言ったけど、近いだけで、由乃さんと同じじゃ無い。 |
そしてね、由乃さんを入れると志摩子さんと私は少し遠いけど、由乃さんを抜きにすると、志摩子さん |
は結構私に近いの。 |
だから、私の中にある志摩子さんに近いものが、由乃さんの言葉を、志摩子さんと同じように受け取る |
事も出来て、だからそういう意味で、私にとっても由乃さんのあの言葉は、やっぱり嬉しかった。 |
どっちかが近いとか遠いとか関係無い。 |
どっちも近くて、どっちも遠い。 |
正しいとか正しくないとか、あんまり関係無い。 |
私ね、乃梨子ちゃん。 |
だから。 |
乃梨子ちゃんの言葉は、わかるようでよくわからないんだけど。 |
だけどね。 |
乃梨子ちゃんがしたいと思ってる事と、私がしたいと思ってる事は、同じなんだって思うの。 |
◆ |
ごめんね、わかりにくい話して。 |
正直、自分でもよくわかってなくて、思いついた端からそのまま喋っちゃって。 |
でもね、わかってなくても、やれること、ううん、やらなくちゃいけないことってあると思うの。 |
乃梨子ちゃんは、きっと私のこと、不甲斐無いって思ってるよね? |
正解。 |
自分でも自分の不甲斐なさに情けなくなってくるよ。 |
けど、乃梨子ちゃん。 |
だからこそ私は、しっかりしなくちゃいけないって、そう思うんだ。 |
ううん、違うよ。 |
もっと一生懸命考えて、もっと頑張って瞳子ちゃんを理解したり乃梨子ちゃんの話をわかるようになりたい |
とか、そういうことじゃないよ。 |
だってそのやり方じゃ、きっと私は瞳子ちゃんにも、乃梨子ちゃんにも追い付けない気がするから。 |
乃梨子ちゃんは、私が乃梨子ちゃんと同じやり方をしないと駄目だと思う? |
うん、わかってる。 |
瞳子ちゃんは、少なくともそう考えてるんだよね。 |
瞳子ちゃんは、私に瞳子ちゃんのやり方を守って欲しいって思ってる。 |
でもね、その瞳子ちゃんの願いを叶えるだけで、いいのかな? |
というより、瞳子ちゃんの願いは、その瞳子ちゃんの願いを叶えることにあるのかな。 |
なんだか、違う気がして。 |
うん。 |
瞳子ちゃんが、瞳子ちゃんのやり方を理解して欲しいと願うのは、それが瞳子ちゃんの求めるなにかを、 |
瞳子ちゃん自身が得るために必要なことだからって、そう考えているからじゃないかな。 |
そしてね・・・私は・・ |
きっと瞳子ちゃんは・・・・ |
私にも、私自身こそに、私の求めるなにかを必死に求めて欲しいって、そう思ってるって、深く気づいた。 |
私ね、乃梨子ちゃん。 |
瞳子ちゃんの事をわかろうとして、それでも瞳子ちゃんの事がわからないことに囚われてた気がするの。 |
そしてだからずっと、瞳子ちゃんの事をわかろうとわかろうと、そればかりで頭を一杯にしてた。 |
瞳子ちゃんの事を、なぜわからなければいけないのか、その事を全然考えずに、ね。 |
私はただ、自分が瞳子ちゃんの事がわからないのが怖かっただけ。 |
その怖さを紛らわすことのために、瞳子ちゃんをわかろうとしていただけ。 |
焦って、必死で、訳がわからなくなって、気づいたら、そうして自分の保身ばかり考えてた。 |
不思議だよね、これだけ瞳子ちゃんの事を、瞳子ちゃんのためをと考えているのに、そうして考えている |
事自体が、私のためにしかなっていないんだもんね。 |
瞳子ちゃんのために考えているんだからいいじゃないとか、なんだってそうやって自分のためにやる事に |
変わりは無いでしょとか、そういう事に全然頷けないのにね、いつのまにか、そういうことを言わないままに |
、そうやって自分の気持ちを守ることばかりやってた。 |
自分でそれを指摘しなかったんだから、正直、タチ悪い。 |
瞳子ちゃんは、きっとそんな私を、ずっと見てた。 |
私が瞳子ちゃんの事を理解出来ていないことよりも、これはずっと、罪が重い気がしたよ。 |
私には、主体性が全く無かったって事だよ。 |
うん。 |
私が瞳子ちゃんの事を理解する必要はやっぱりあると思う。 |
だけど、それは当然のことで、当然のことだからこそ、それ以上にさらにやらなくちゃいけない事がある |
んじゃないかな。 |
志摩子さんと聖様と、同じだよ。 |
正しいとか正しくないとか言うことに拘るのも大切だけど、それだけじゃ足りないんだよね。 |
瞳子ちゃんも、そうなんだ。 |
自分の事を理解して貰うだけじゃ、足りないの。 |
ううん。 |
もしかしたら、瞳子ちゃんは、なにか足りないものがなんなのかを明らかにするために、まず自分の事を |
理解して貰うということを求めたんじゃないかな。 |
どうして自分が、私に自分のことを理解して欲しいと願ったのか、それを私に考えて欲しかったんだよ。 |
ううん。 |
違う。 |
瞳子ちゃんは、 |
きっと |
それを私と一緒に、考えたかったんだよ。 |
そしてそれを一緒に考えるのは、そう。 |
その一緒に考え出した、それそのものこそを、瞳子ちゃんが一番一番求めてたんだよね。 |
そして、私にも、それを求めて欲しかったんだ。 |
乃梨子ちゃん、たぶんね、それは。 |
私に、瞳子ちゃんのために、瞳子ちゃんと同じものを求めて欲しいってことじゃ絶対無いの。 |
私に、私自身のためにこそ、瞳子ちゃんと同じものを求めて欲しいって、そういうことだと思うの。 |
うん。 |
なんだか、私が言うのは一番おかしいと思うし、言い方も適切では無いと思うのだけれど。 |
なんだか、今、瞳子ちゃんが、悪者みたいになっている感じがしない? |
うん、勿論乃梨子ちゃんはそうは思ってないよね、でもさ、そう思っていないからこそ、むしろ逆に、 |
瞳子ちゃんは悪くないんだって、そういう善いとか悪いとか、そういうことに囚われていることって、ない? |
私も、そうなんだ。 |
ほんとは誰も、瞳子ちゃんのことが悪いなんて思って無い、だけど、善いとか悪いとか、それとは少し |
違うかもしれないけれど、でも、それと似たようなものに囚われちゃってる気がするんだ。 |
確かなのは、なぜか、みんなの照準が、瞳子ちゃんひとりに行っちゃってる。 |
うん。 |
私もそう。 |
私は・・・ |
今の私が、私自身こそを、全然見つめて無いってことが、瞳子ちゃんをみつめるたびにわかっちゃうの。 |
私は、私がなにを求めるのか、求めるべきなのか、それから目を逸らしてる。 |
全部瞳子ちゃんのせいにして、ただ瞳子ちゃんが求めているから、瞳子ちゃんのために、なんにも考えず |
に瞳子ちゃんと同じものを求めようとしてる。 |
こんなのきっと、瞳子ちゃんを苦しめるだけだよ。 |
むしろそれだったら、主体的に私が瞳子ちゃんがしてることは間違ってるって言って、それで私がどうする |
かをはっきりと言う方が、遙かに良いことなんだ。 |
ううん。 |
たぶん、瞳子ちゃんはきっと、そういう善悪を語ることも、同時にしていきたいんじゃないかって思う。 |
正しい正しく無いを語ること自体を目的にすることは変だけど、それが手段ならむしろ良いんじゃないか |
なって。 |
少なくとも、今の私の頭の中には、なにも無い。 |
瞳子ちゃんの事がわからない事に囚われて、結局のところ、わかるまでわかろうとし続けるだけか、 |
それともわかろうとする事を諦めて放っておくかの、その狭い選択に囚われてる。 |
私は、今の自分をそういう風に見たんだよ、乃梨子ちゃん。 |
私は、なにがしたいんだろ。 |
瞳子ちゃんのためにって思って、瞳子ちゃんのやりたいというものを叶えてあげることかな。 |
全然、違うよね。 |
それって・・・・ |
全然、姉じゃ、無いよね、やっぱり。 |
瞳子ちゃんが、私のロザリオを受け取ってくれなかった理由が、わかった気がした。 |
私は・・・ |
瞳子ちゃんが願うことを、なぜ瞳子ちゃんが欲しいと思っているのか、考えたことも無かったんだから。 |
そもそも私は、瞳子ちゃんが求めているものを瞳子ちゃんに与えることばかり考えていて、それが私も |
手に入れることになるものだって自覚が全然無い。 |
私もそれが欲しいだなんて、思って無いんだよ。 |
おまけに、というかもう自分で言ってて嫌になるけど、私はそもそも、それがなんなのかすら、わかってな |
いんだね。 |
ううん。 |
それがわからないからこそ、だからわかろうとする、っていう姿勢が、この事に関してだけは全く無かったの。 |
不思議だよね。 |
まるで、この一番大事なところでこそ、そうしたことをしないでも許されるように、今までそれ以外のところ |
で、そういったわからないからこそわかろうとする事を続ける、その実績作りをしていたみたい。 |
なんだか、聖様が笑ってるのがみえちゃった、あはは。 |
あちゃー祐巳ちゃん気づいちゃったかぁって、笑ってる、聖様が。 |
ここが、一番わかろうと努力するところなのにね。 |
逆にいえば、こここそをわかるために、他のことが全然わからない、その苦痛にだって耐えなくちゃいけ |
なかったんじゃないかな。 |
落ち着け、私。 |
そう思ったの。 |
私は逃げてる。 |
必死に、その一番大事なところといつか出会う事を前々から感付いていたからこそ、逃げる準備を |
ずっとずっとしてたの。 |
そういう私を、今こそ、じっくりと見据える必要があるんだ。 |
今までしてた瞳子ちゃんに関する努力の、その本当の意味を見つめ直す。 |
逃げないで、逃げないでずっと踏み止まり続けていたのは、最後に全力で逃げるためのエネルギーを |
溜めていたからなのかもしれない。 |
だったら、逃げて、逃げ続けて、最後に今まで逃げてきた事の罪と向き合う勢いで踏み止まる、そのた |
めのエネルギーを蓄える必要があるのかもしれない。 |
だから、ひとつひとつの善悪は関係無いのかもしれない。 |
でも、ひとつひとつの善悪からも目を背けないからこそ、そのひとつひとつの善悪との触れ合いから得た、 |
色々なエネルギーを私の胸に抱き締めることが出来るのかもしれないよね。 |
たぶん志摩子さんは、ずっと今まで、そうしてきたんじゃないかな。 |
だから、由乃さんの言うような、善悪とは関係の無い大切なものに、手を伸ばすことが出来たんじゃ |
ないかな。 |
だって、由乃さんがそこにいたから。 |
志摩子さんが、由乃さんを好きだから。 |
だから。 |
志摩子さんは、由乃さんの事を好きって言えたんじゃないかな。 |
ふふ、あの話の脈絡であんな事言ってきたから、みんな唖然としたけどね。 |
うん。 |
でも私も・・・ |
瞳子ちゃんのことが・・・・・ |
『好きだよ。』 |
『大好き。』 |
好きだから、好きって言える。 |
好きだから、わかろうと思えるし、わからないでいることもに耐えられる。 |
好きだから、自分の中だけで好きと思っているだけじゃ駄目ってことが、よくわかる。 |
勿論。 |
好きだから、好きって言うだけじゃ、なんの意味も無いこともわかる。 |
だから、好き。 |
好きって言うよ。 |
言った分だけ、頑張れる。 |
ううん。 |
好きって言った分だけ、それに見合うことをする責任が、私にはあるんだよ。 |
だから、瞳子ちゃんを、いつまでも放っておいていいわけ無い。 |
だから。 |
だから。 |
一歩ずつ。 |
私は、瞳子ちゃんに手を伸ばす。 |
私が手を伸ばすのはなんのため? |
それを考えながらも、それとはなんの関係も無く、手を伸ばすことが出来るほどに。 |
責任なんて、どうでもいい、善悪なんてどうでもいい。 |
どうでも良くないから、どうでもいいんだよ。 |
乃梨子ちゃん。 |
たぶんね。 |
私と、瞳子ちゃんの求めるものはね。 |
私がわかってなくっても、きっと本当は、同じものなんだよ。 |
だから私は、私の中にあるなにかを求めてく。 |
それが瞳子ちゃんと同じものかどうかなんて、考えない。 |
考えても考えなくても、それは絶対に同じものになっていく。 |
だから私は、私のやりたいことを、本当にやりたいと思ったことをやっていく。 |
そうしなくちゃ見えないものがあるって、ようやくわかった。 |
うん。 |
瞳子ちゃんと私って。 |
同じなんだ。 |
全然今までわからなかったけど。 |
今は、どうして今までわからなかったのかが、少しだけわかるような気がするよ。 |
みんな違っているようで、根本では同じ。 |
って、由乃さんも言ってたみたい。 |
うん。 |
だから。 |
違う人達が、 |
同じものを、大切な大切な、ひとりじゃ無理だと思っていたものを、求めて、求め合っていくこと |
が、出来るんじゃないかなぁ。 |
好きって言葉が、わからないことを暖めていく、そんな愛しい力を、私に与えてくれる気がするよ。 |
私の伸ばす手が。 |
瞳子ちゃんと私との間に広がる。 |
この硝子窓の曇りを。 |
そっと。 |
その指で、暖かく、晴らしてくれることを。 |
信じて。 |
瞳子ちゃん |
ごめんね 待たせて |
◆ 『』内文章、アニメ『マリア様がみてる4thシーズン』より引用 ◆ |
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■■ 私の大好きな友達の家 ■■ |
『 貴志。 弁償はしなくていい。 |
ここは、君の家だと言っただろ。』 |
〜続 夏目友人帳・第十話・滋の言葉より〜 |
青い地獄。 |
空が堕ちている。 |
鈍色に映えた土手道がどこまでも泥沼に沈んでいく。 |
枝が割れるようにして、並木は細く咲いている。 |
漆黒に焼け爛れた夕陽が、溶けて夜空に沈んでいく。 |
星が生える。 |
月が凍える。 |
夏風が落ちてくる。 |
消えたように輝く陽光が、破れかぶれのままに、当てずっぽうのようにして、燦々と溶けて滲んでいる。 |
溶けてばかりだ。 |
高い木の上には、空が生えている。 |
なにも無い地面には、煌々と陽炎が突き刺さり立っている。 |
ゆらゆらとしながら、どこかきびきびと精一杯に生えている。 |
脆弱な汗が背を伝う。 |
雲がみえない。 |
太陽は、どうしようも無く、輝いている。 |
足下からざっくりと割れて広がっていく紅々しい影が、目に痛い。 |
凄惨な、凄惨な、凄惨な情景。 |
それは絵画では無い、目の前の世界。 |
なのに、空は青くて、影はやっぱりひっそりと黒い。 |
微風が、汗を吸っていく。 |
小川に犇めくせせらぎ。 |
真夏の下の、永遠の夢。 |
汗ばむ指先を、服のぬくもりで素早く拭う。 |
ひんやりとした感触が、胸を突き抜けていく。 |
時が止まるほどの、熱さ。 |
茹だるような陽射しを思い出させてくれる、涼風。 |
小石を大きく蹴り上げてみれば、その先にはなにも無かった。 |
こんこんと妙に跳ねていくその小さな石の影を追いながら、小刻みに歩を進めてみる。 |
耳を澄ます。 |
耳に思い切り指を差し込み、あーあーあーと唱えてみる。 |
時間が過ぎた。 |
時間を感じる。 |
時間を失う。 |
消えた。 |
ごう ごう |
音が聞こえる。 |
太古の風音。 |
神代の夏。 |
命の煌めきが視えた。 |
百年、二百年、それどころか、何千、何万、何億もの息吹の永遠が聴こえてくる。 |
真っ白に、真っ青に溶けていく。 |
歴史を感じない。 |
ひとつひとつの物語を肌で感じながら、やがてその肌は透けてひとつに溶けていく。 |
この森は、愛らしい。 |
愛らしいほどに、ずっと生きてきて、ずっと生きていく。 |
終わりが無い、始まりも無い。 |
嘘ばっかり。 |
森々と、梢の連なりを見つめながら、陶酔に浸る。 |
目を閉じて空に顔を向け、精一杯に両手を広げていると、なにも感じなくなる。 |
すべてが消えて、体も消えて、全部消えて。 |
一瞬を何回も繰り返して、全部消えているという認識も、すべて消えていく。 |
気が付くと、目を開けて、消滅に気づいている。 |
今のは夢? それとも時間だけの消失? |
空白の時間。 |
私の歴史が、物語が、一瞬だけ、途切れた時間。 |
なのに私は今此処にいる。 |
今この瞬間の私はこうして今の私を語り出している。 |
でもその物語の中に私はいながらにして、その物語を語り出している透明の私はそこにはいない。 |
緑が眩しい。 |
紙ばかりで無く、口伝えだけで無く、木にも空にも、山にも川にも、歴史を書き込めばいいのに。 |
あらゆるものに、それ自身が語る物語や、誰かに語られた歴史が、綺麗にぽつんと書かれていたら、 |
ちょっと素敵じゃない? |
誰もそれに勝手に書き込むことは出来ないのに、いつのまにか、気づくと物語の筋がちょっとだけ |
変わっていたりして、それが凄く、嬉しいかもしれないじゃない? |
物語自体が、そのもの自身を存在させている訳じゃ無い。 |
そのもの自身が、その自らの存在をどう見て、どう感じて、そしてその見たまま感じたままに生きようと |
するだけ。 |
私には視える。 |
あらゆるもの、すべてのもの達の物語が、言葉が、想いが。 |
それは少しだけ冷たく、その少しだけの冷たさが、線を引いていた。 |
だけど、そうして少しずつ、少しだけ変わっていく言葉を眺めると、胸が張り裂けそうになる。 |
嬉しくて。 |
涙が零れそうで、零れない。 |
夜空一杯に満ちる星々が、ゆっくりと暖かく泣いているのが見えたから。 |
静かね。 |
静かなのは好き。 |
色んな声が、音が、きこえるから。 |
夜の暗闇は好き。 |
目を開けたら、きっとそこには色とりどりの夜が広がっていると思えるから。 |
だから。 |
目を瞑ったまま、手触りだけの黒い世界を、こうしてなにかを信じながら生きている。 |
それ自体がきっと、楽しいのよ。 |
花よりも緑が好き。 |
花はね、なんだか触れないような感触がするの。 |
見て、嗅いで、飾って、愛でるだけのような、それだけのような気がして。 |
緑はなんだか、触れるの。 |
目で見ているだけでも、なんだかずっと触っているように感じられるの。 |
森と、繋がっている。 |
森の、中にいる。 |
花はどうしても、言葉だけが出てきてしまう。 |
どうしても、私の物語に見合う言葉だけが、まるでお品書きのようにして花弁に敷き詰められているよう |
に視えてしまって。 |
私はただそれを見て、注文するだけ。 |
都合が良いだけの色は、好きじゃ無い。 |
でもそこに、花の言葉があるのは確か。 |
花をみると、いつもそわそわとしてしまう。 |
嫌なような、凍り付くような、なんとも知れない、この不安と緊張感。 |
並び立つ花の姿の前に立つと、私は瑞々しい緑の感触を忘れてしまう。 |
忘れてしまう、という認識を、なぜか確かにはっきりと持ちながら、ね。 |
言葉との、言葉だけとの対面。 |
怖いわよ、そういうのは結構。 |
でもね。 |
私はいつもそこで立ち竦みながら、その整然と並べられていながら、完璧なほどに残酷なその花たちの |
言葉から、目を逸らすことが出来ないの。 |
緑が無い。 |
不安ね。 |
でもそれって逆に、私にとって、緑っていうのは実に都合の良い存在なんじゃないの? |
私がなにも言わなくたって、ずっと其処にいて、しかも自分自身で変わってくれるんだから。 |
その緑の森に抱かれたい、その瑞々しい世界の中にひとりで生きていきたいと、ただそう思っているだけ |
の私がいるだけなのかもしれない。 |
そう思うとね、花って不思議なのよね。 |
放っておいたら、枯れちゃうし、上手く育てれば自分の願う通りのものを与えてくれるけど、一歩間違 |
えば、とんでもない悲惨なものが育ってしまったりもする。 |
その花の運命も、そして、その花の運命を背負う私の運命も変えてしまう、それが花の魔力。 |
私はそれがきっと、怖いのね。 |
だからきっと、花の都合の良さの部分だけを大きく広げてみせて、都合の良いだけの奴は嫌、とか |
言っちゃって、ただ本当に私が花を避けている理由を誤魔化しているのよ。 |
馬鹿みたいよね、それってやっぱり。 |
花が嫌いな訳じゃないのに。 |
花が嫌いな訳、無いじゃない。 |
むしろ。 |
私は、なのに花の事を嫌おうとする、そんな弱い私の事が大嫌い。 |
こんなに、空には雲が熱く駆けているというのに。 |
こんなに、目の前の笑顔は暖かいというのに。 |
それに触れるだけの、触れたいだけの、冷たい線で縁取られ、震えているだけの私がいる。 |
冷たいから、寒いからこそ、その線の内側に引き籠もって、緑に包まれるだけしか出来なくなる。 |
そのまま雪にでも埋もれて死んじゃえばいいのに。 |
せいぜい、その雪の下から必死に芽を伸ばして、あるかないかもわからない春の夢を視ていれば |
いいじゃない。 |
馬鹿みたい。 |
ほら、またひとつ笑顔が。 |
私は好き。 |
世界中に満ちる、ひとつひとつのその笑顔が、大好き。 |
物語をどんどん更新して、そのうち絵とか付け足しちゃう、なんなら絵だけの歴史が綴られている、 |
そんな幸せいっぱい、不思議さ膨大の、みんなの笑顔が大好きよ。 |
不思議よね。 |
むかつく奴も殺してやりたい奴もいるのにね。 |
べつに、むかつくとか殺意とか怨みとか、全然否定する気は無いのに。 |
世界なんか滅んでしまえばいいのにと、そう口ずさみながら、私はいつもにっこりと笑っている。 |
憎しみと愛は等価とか、愛しているがゆえに、愛することを諦めないからこそ憎むとか、それは間違って |
はいないと思うけれど、どうにも、私のこの笑顔は、それだけでは足りない気がした。 |
もっと違うなにかが、この私の笑顔の主成分。 |
憎たらしい奴、いるよ。 |
愛して欲しくて堪らなかった人、いたよ。 |
憎い奴は憎いままにぶちのめしてやったし、ああ、男の子だったけどね、案外男の子って弱いのよ、 |
女が自分より強い訳が無いっていう思い上がりというか油断というか、違うわね、その女に負けるかも |
しれないという意識と、或いは、女を殴るという覚悟が無いから、結構簡単に根を上げたりするもの。 |
そして、憎んでいたけど、それは愛するがゆえにその人と肌を接した付き合いをしたかったからこそ、 |
諦めずに憎んでても食い下がった、そういう相手もいたけど、でも。 |
なんだか、それだけじゃ、全然私は足りない気がした。 |
なんだろう、私、欲張りなのかな。 |
人間って、みんな結構淡泊なのよね。 |
でもその淡泊さは、自分の中の強い欲望を恐れるがゆえの、それからの逃亡の結果だと思うのよ私。 |
それで、苦しみから逃れたければ欲を捨てることだっていって頭丸めちゃったりして、なにをやってるんだ |
ろうこの人達って、よく思う。 |
勿論、頭丸めてなくても、頭の中身を丸めちゃってる人も、一杯いる。 |
− こんなに こんなにこの国は この世界は 豊かだっていうのにね − |
朝焼けの下、湖畔に座り込む。 |
なんだか湖の水が、べたべたしてる。 |
肌が水を弾きながら、なぜか吸い付くようにして、ほんの少しだけ水と溶け合っている。 |
冷たくて気持ちいいのに、肌触りが生暖かくて気持ち悪い。 |
だけど、その気持ち悪さが、ぬくもりに、気持ちよさに繋がっているのを感じた。 |
このまま溶けてしまいたいという悪寒。 |
このまま湖を消し飛ばしてやりたいという快感。 |
いずれにしても、私はその水に足を浸して、ばしゃばしゃと裸足で湖の上を駆け回っていた。 |
小さな妖怪達が集まってくる。 |
興味深げに、私の遊びを見つめてる。 |
いいわ、私と遊びましょう。 |
途端にびくつき始めた妖怪達に、私はそっと、息を吹きかける。 |
この湖は私だけのものじゃ無いわ。 |
だからあなた達も、遊んでいけば? 私は邪魔はしないわよ。 |
小さな歓声を押し殺しながら、ゆっくりと、けれど真っ直ぐに湖の中で色づき始める妖怪達が、 |
みんな大きく笑い始めてく。 |
私は、それを眺めて、嬉しく笑う。 |
でも。 |
そうして眺めて笑うのが、私の目的なんかじゃ無い。 |
私の足は、湖畔の土塊の上に立っているのでは無く、今、真っ直ぐに湖面の上に泳いでいる。 |
私も遊んでるの。 |
遊んでるから、みんなの笑顔が嬉しいの。 |
みんなの笑顔が嬉しいから、私の遊びも楽しいの。 |
みんながそれぞれひとり遊びしてても、それでもみんながこの湖の中で遊んでいるのを感じることが |
出来れば、それでも楽しい。 |
とっても、楽しいのよ。 |
でも、結構早く飽きちゃう。 |
だって、みんなが其処にいるのに、いつまでもひとり遊びしていられるとおもう? |
じゃあ、こうしましょう。 |
『あなた、私と勝負しない? |
私が勝ったら子分になるのよ? 負けたら食べてもいいわ。』 |
『なぜ?』 |
『決まってるじゃない。』 |
『暇潰しよ。』 |
だって、ひとり遊びなんて、死んでからでも出来るでしょ? |
都合の良い子分を持つのとか、妖怪に喰われちゃう悲惨なこととか、生きてるときにしかできないでしょ? |
折角あなた達が視えるんだから、一緒に遊ばないのは損じゃない? |
私はそう思う。 |
私があなたを私のひとり遊びの道具にしちゃうだけかもしれなくても、私はあなたと遊んでみたいわ。 |
あなたに負けて食べられてしまうかもしれなくても、私はあなたと戦ってみたいわ。 |
そうなったらそのときはそのときよ、また新しい暇潰しの方法を考えていくだけよ。 |
そんな方法は、いくらでもあるでしょ? |
勝負して、遊んで、話して、そしたらきっと、お互いのこと、もう結構わかってきてるはずじゃない? |
なにもしない前と比べたら、もうなんか、色々だいぶ、簡単になってきてるはずよ。 |
わかんないものは、わかるようになればいいのよ。 |
簡単でしょ? |
難しい? |
どうして? |
わかることなんて、簡単よ。 |
自分のやりたいことをすればいいだけなんだから。 |
逆に言えば、自分のやりたいことをやるために、そのために必要なわかり方を作ればいいのよ。 |
自分のやりたいことは、自分の欲が教えてくれるわ。 |
その欲を捨てちゃったら、わかることなんてこの世には無いって嘯くしかなくなるだけね。 |
わからないものなんて、無いとは思わない? |
私はそう思う。 |
そういう、わかり方をしてる。 |
私は、私の欲しいものを、貪欲に求め続けている、ただそれだけだから。 |
だから、わからないものが、続々と出てくる。 |
わかるために、それは出てくる。 |
時間をかけて、沢山の手間暇をかけて、理解して、手に入れていく。 |
どんどん、色々なものが止まっていく。 |
黒く青く赤く、染まっていく。 |
どんどん、ひとりになっていく。 |
線が引かれる。 |
溶け合いながら、なのに、肌の上に、波線を描きながら、ぐにゃぐにゃとその線は引かれていく。 |
私と、あなた達。 |
ああ、嫌ね。 |
なんで、戦わなくちゃいけないのかしらね。 |
なんで、好きとか嫌いとか、そういうことにならなくちゃいけないのかしらね。 |
私はね、ずっとそう。 |
ほんとはそうなのよ。 |
ほんとはね、なんて前置きする意味すら無いほどに、ずっとそうだった。 |
苦しくて、辛くて。 |
もういっそのこと髪を落としてしまおうか、死んでしまおうか。 |
どうしてだろう。 |
そういう事を誰にも言えないからこそ、言いたくて堪らなくなる。 |
でも、言いたくて堪らなくなればなるほど、どうでも良くなっちゃうの。 |
なぜなら、言いたくても言えない、そういう人達が、みんなが其処にいたから。 |
みんなが其処にいたから、私はそういうことを言わずに済んで、言いたくて堪らなくなるから、たぶん、 |
言うだけですべてが済んでしまえるように思えていたの。 |
誰かに話せたら、誰かに理解して貰ったら、私はきっと、ずっと戦えて、ずっと生きていけるかなって。 |
でも、そんな人はいなかった。 |
大人も子供も、誰も私のことをわかろうとしなかった。 |
大人は私を文字通り迫害して、そして子供はその親のいいなりだった。 |
でも。 |
時折子供の中には、親の言うことを聞かない子がいた。 |
勿論子供だから、私のことなんかわからなかったし、わからせようともしなかったけど、でも。 |
なんだか、そういう子に出会うと、わかって貰うとかわかって貰えないとか、本当にどうでもよくなっちゃう。 |
あの子・・・あの子は面白い子だったわ・・ |
うん・・ |
だってあの子・・・・ |
みんなの中で、生きてる子だったから |
ごく普通の、その辺りにいる子で、友達も多くて、親御さんにも愛されているみたいで、なに不自由の |
無い、とっても良い子だった。 |
ええ。 |
この子の前で見栄を張ったとか、自分とは違って恵まれているこの子に自分を移入して、それでこの子 |
を守ってあげようとか、そういう殊勝でいやらしい事は考えなかったわ。 |
私は、卑屈になれなかった。 |
むしろ、がんがんに、怨みの念が湧いてきた。 |
世の中の普通の子は、両親のいる子は、こういう生活が出来るのね。 |
私にはそんなことは無かった・・・・私にも両親がいて・・・こんな異常な力さえ無ければ・・・・ |
そしてなにより、私がこんなにも苦しんでいるのに、それなのに、こうして平穏に暮らしているこの子が、 |
いいえ、この子を含むこの社会のことが、憎くて、憎くて、堪らなくなったわ。 |
どうしてよ、どうして私を放っておいて、こんな、こんな自分達だけ・・・・ |
だって、私はみんなの中で、みんなと遊ぶことこそが、ずっと求めて、欲しくてどうしようもなかった事なん |
だから。 |
それを諦めてないからこそ、私は怨みを持ったのよ。 |
私はそのとき、確かに私だった。 |
絶対に、独りだけ綺麗に身を退いて消えていくことなんてするものか、たとえこの世界を、この子を呪って |
でも、諦めるもんか、と。 |
間違ってはいない、いいえ、むしろそれは全く正しいことだった。 |
くだらない、惨めな自己犠牲とも逃避ともしれない消滅を、私は受け入れる訳にはいかなかった。 |
この子が、この世界が好きだからこそ、それは尚更のことだった。 |
私は一度として、偏見抜きでも、人格者だなんて呼ばれたことは無いわ。 |
愛と憎しみは等価だった。 |
そして。 |
その子の家に入った瞬間に。 |
とても。 |
それだけでは、足りなくなったのよ。 |
みしみしと、音を立てるほどに満ちる命の吐息。 |
家が呼吸してる。 |
生きている。 |
開放的で、連続的で、さらさらと夏風と木漏れ陽が至るところから差し込んでくる。 |
繋がってる。 |
人と触れている。 |
壁が、柱が、天井が、みんな嬉しそうに、その身を差し出すままに、ひとつの住処に組まれていた。 |
ひたひたと、廊下に触れる足の裏の感触が気持ちいい。 |
和風で古びた調度品が、ゆっくりと大きく胡座を組んで、部屋の中に寝転んでいる。 |
静か。 |
そして、穏やか。 |
なんだろう。 |
なんだろう、この感触。 |
緊張するはずなのに、落ち着かないはずなのに。 |
だってこんなに沢山のものと繋がっているのよ? |
なのに、なんでこんなに、静かなの? |
静かなのに、どうしてこんなに穏やかに時間を感じることが出来るの? |
この家は、止まっているはずなのに、動いてる。 |
心臓が、血管が、動いてる。 |
生きてる。 |
この家が。 |
私が。 |
生きてる。 |
『暖かいわ。』 |
『優しい家ね。』 |
『こんなところに住めたら、きっと幸せね。』 |
『こんなお家が荒らされるのは、不愉快だわ。』 |
私も住みたいな、こんなお家に。 |
本当に、欲しくなったわ、こういうお家が。 |
ふふ、まさに暖かい家への執着が生まれた瞬間ね。 |
今現在こういう家に住んでいない私の悲しみと、その私を捨てこういう家に住んでいる人達への怨み |
を捨てずに、それを抱いてそのまま越えて。 |
私は、この子の家みたいな住処が、とっても欲しくなったわ。 |
悲しみと怨みがあるからこそ、私の欲しいものが家だと純粋にわかる。 |
みんなの中に住みたいわ。 |
それが非現実的な願いだと思うからこそ、私はただ自分の悲しみと怨みに囚われるか、その感情と |
願いを捨てることしか出来なくなるだけ。 |
私は、暖かい家が欲しい。 |
すべてと繋がり、人のぬくもりと触れ合える、そして綺麗に花の咲き乱れる家が欲しいの。 |
私が求めるその家は、この子の家じゃ無い。 |
この子を駆逐して、私がその家に入り込むなんて、可笑しい話。 |
だって私は、この子と遊びたいだけなんだから。 |
この子の家の、隣に私の家を建てたい。 |
いつか必ず。 |
嬉しくて。 |
そう思えた私が、嬉しくて。 |
ああ、そうすれば、またこの子と遊べるって。 |
今度は私の建てるお家に招待してあげたいわ。 |
夢・・? 夢といえば夢ね。 |
真夏の昼にみる、本気の夢よ。 |
無理? そうかしら? |
私がこの世を儚んで首を吊ろうとする事よりは、実現の確率が高いわ。 |
死にたいなんて思わないもの。 |
死にたいほど苦しいことはあってもね、その苦しみがあるからこそ、それを手掛かりにして、私はその苦し |
みの大元を創り出すものと繋がっていくことが出来るのよ。 |
私の体質は、本来そういうものよ。 |
私がみんなの事を思い遣って、そしてみんなのために死ねる、そう思えた自分の清い心に満足するだ |
なんて、そんなちんけな欺瞞に満足するような私じゃ無い。 |
私の体と心が叫んでるの。 |
ひとりは、嫌、って。 |
だから今は。 |
だからこそ今は、あの子に迷惑をかけないために、距離を置くことに我慢するわ。 |
今はまだ、そうしてあの子のために行動する事で満足する、その清い人格者の自分に満足するしか、 |
私には力が無い。 |
でもそれはゴールじゃ無いわ。 |
『ありがとう、楽しかったわ。』 |
本当に楽しかったから。 |
だから、いつかきっと、必ず。 |
私も、自分の暖かい家を・・・・・ |
だから・・ |
『さぁ、出て行きなさい。 荒らすことは許さない。 |
ここは・・私のお気に入りの子の家なんだから。』 |
今の自分の悲しみに、なにも出来ない自分に、この家を壊させる訳にはいかないの。 |
私には未来があるんだから。 |
それに、今まで必死に生きてきた過去があるんだから。 |
諦めないわよ。 |
この世界は、私の居場所。 |
森々と繁る緑の森。 |
私には、誰もいない。 |
ほんとうに? |
私には、私がいる。 |
私には、みんなとこの世界の中で一緒に生きたいと思える、大切な私がずっとずっといるじゃない。 |
もうここが。 |
この世界が、この森が、 |
すべてと繋がっている、私の家なのよ。 |
ま、あまりに殺風景で夜露も防げないから、やっぱしなんか建てなきゃ駄目だけどね。 |
それに花も飾りたいし、調度品も高級なのを、あ、洋室もあっていいわよね、色々飾って、ああもう、 |
なんだか本格的に楽しくなってきたわよぉ♪ |
誰を招待しても恥ずかしくない、そんな家に私は住みたいな。 |
私も・・ |
うん、私もまた、素敵なお家に招待されたい。 |
誰がその人達の家を壊すもんですか。 |
守らなくちゃ。 |
私のためにも。 |
あの子のためにも。 |
みんなのためにも。 |
幸せの、ために。 |
ええ。 |
ここは、この世界は、私の家。 |
だから、もし壊してしまっても怨んでしまっても、弁償なんかする必要は無い。 |
誰も言ってくれないのなら、私は自分で言うわ。 |
誰が、この世界のためにこの家のために、自分の求めるものを諦めたりなんかするものですか。 |
自分の求めるもののために、家はある。 |
みんな同じよ。 |
私が、私こそがそう言わなくて、誰が他の人にもそう自分の家に安心して住んでいいって言えるのよ。 |
私は家を求めてる。 |
求めて、求めて、ずっと求め続けてる。 |
悲しくても、憎くても、それは変わらない。 |
嘘を吐いても吐かなくても、それは変わらない。 |
私は、嘘を吐きたくなくて、あの子から距離を置いた。 |
でもそれは。 |
あの子のことを諦めたという事じゃ無いわ。 |
だって、嘘を吐いたとしたって、その嘘自体が、あの子と私を繋いでいる訳じゃ無いんだから。 |
嘘を吐けなければ繋がらないなんて言ったら、それこそ大嘘よ。 |
私はずっと此処にいる。 |
繋がりを求めながら、ずっと繋がっている。 |
え? |
どうせなにをしても繋がっているなら、わざわざ繋がりを求めて頑張らなくたって良いんじゃない、って? |
馬鹿ね。 |
なにを言ってるの。 |
だから。 |
暇潰しだって、言ったじゃない。 |
人生っていう長い時間を、どう楽しく過ごすかっていうのが、ポイントでしょ? |
家を建てるんなら贅沢に綺麗に、人と話すなら楽しく深く、一杯一杯お洒落に愉しく、当たり前でしょ? |
陰気な顔するのは、趣味じゃ無いわ。 |
無理矢理笑うのは、もっと趣味じゃ無いわ。 |
明るく笑えるように。 |
素直に心の底から笑えるように。 |
だから、人生楽しく生きていこうって、それだけの話よ♪ |
って、ヒノエ! |
私の顔ばっかり見てないで、話ちゃんと聞きなさいよ! |
あなたが話せがんだんでしょ、泣かすわよ。 |
◆ 『』内文章、アニメ『続夏目友人帳』より引用 ◆ |
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-- 090311-- |
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■■ アニメ、酒、ゲーム、酒 ■■ |
ごきげんよう。 |
さてと、今日はどうしましょうか。 |
なんだかだらだらとどこまでもなにも考えずに書くだけになってしまいそうなほどに、なにも考えていないの |
で、なにも考えないままに、小さく区切って書いていこうと思います。 |
割とバラバラ。 |
■ |
マリみて4は如何ですか。 |
私は面白いです。 |
なにか書かないと落ち着かない感じです。 |
夏目友人帳はべつにそんな感じはしないので、なんだか不公平な気分から、夏目友人帳もなにか |
書かなくてはいけない気になってきて、でもそれってすっごくいやらしくない?、やめた方がいいよそういう |
のは、じゃあやめよう、うん、そうだね、という、一周回ってスタート地点にゴールしてしまい、私の目的は |
達成される訳です。 |
夏目友人帳は、きっと大丈夫。 ←割とすっきりした笑顔で |
|
■ |
引き続きマリみて4。 |
誰が一番美人さんですか。 |
んー。 |
美人ってなると、前薔薇様の蓉子様と聖様が図抜けてるかな。 江利子様はあくまでデコで。 |
で、美女ってなると、やっぱり祥子様かなぁ。 令様は美男っていうか、冗談でもヘタレだし。 |
志摩子さんと乃梨子は人形だね。 西洋人形と |
瞳子は微妙だなぁ、凛々しさと存在感はあるけどね。 どっちかっていうと、カッコイイ。 |
祐巳さんは普通丸出し。 だけど妙に可愛い、みたいな。 |
んー。 |
ぶっちゃけ美人っていうか、マリみてで一番美少女なのは、由乃さんだと思うんだけど。 誰か同志いる? |
髪編んでるときは可愛いって感じだけど、髪下ろすとハっとするくらい綺麗。 |
色も白いし、顔も小さいし。 鼻筋とか顎のラインとか目の大きさとか、すっごい際立ってない? |
うん。 |
あれで黙ってれば可愛いんだけどね、とは思わないかな。 |
由乃さんはああしてはっちゃけてるからこその由乃さんだしね。 |
まぁ、黙ってても綺麗な顔立ち、という意味ではそうだけど。 |
・・・・。 |
なんでこんな話してるのかわかる人、誰か私に教えてください。 |
|
■ |
続夏目は、このままでおk。 |
でも、ここから怒濤の展開の予感も。 |
あれ、前回の塔子さんってもしかして視えてる? もしくは夏目はそういう子だって気づいてる? |
というか、そうかもしれない、という疑惑に囚われるのが今更かよ私。 |
そしておまけに今回は滋さんでしょ? あれはほぼバレたでしょ夏目は。 |
ただ、このまま夏目個人の問題に道筋を付ける、という終わり方にはやや不満かも。 |
確かになんらかの区切りは必要だけど、それだけじゃ足りないというか、むしろ第3期希望でおk。(ぉ) |
|
■ |
「妄想を実行に移すか否かが、変質者に堕ちるか正常人に留まれるかの決定的な違いよ。 |
触れたりしない、心のハンドで揉みしだくだけ。 |
盗撮もしない。 頭のフィルムに焼き付けるだけ。 |
私は夢見るだけの無害な一般人よ♪」 |
・・・・。 |
そろそろ腹筋がもう一本欲しくなってきました。 割れる前に折れそう。 |
紅い瞳はアニメまりあ†ほりっく及び |
そして、それ以上に鞠也さんと茉莉花さんを心より応援しております。 |
ストップザ |
そして、かなこさん、ノンストップ!ww |
|
■ |
みなみけ3には特に言うことありません。 |
大好き。 もっとやれ。 |
|
■ |
そういえば忘れてたけど、お酒飲んだ。 日本酒。 |
純米大吟醸50 「獺祭」。 |
50っていうのはたぶん精米歩合。 30とかもあったけど微妙に高かったのでこっちに。 |
味は久々に美味しかったかな、最近あんましお酒の味を言葉にして記憶してなかったので覚えてない |
けど、大吟醸らしくさらっとしてるけど、淡く辛みと甘みがよく染み出してきて、結構爽やかに賑やかな |
感じがあったね。 なんか冬場のお祭りみたいな、静かな賑々しさみたいな感じ。 |
|
■ |
そういえば忘れてたけど、本読むの忘れてた。 |
読む以前に手元に全然新しい本が無い。 |
うわー完全にアウトプット偏重状態だー。 |
ほんと書いてばっかりで読んでないよー。 |
そろそろなにか読まないといけないのだけど、今の状況と環境だと本読む時間が無いゾ。 |
アニメみてゲームする時間はあるのにな、不思議だなぁ、本当に。 |
|
■ |
ブランデーも飲んだ。 |
初のコニャック! まぁ安いのですけどね。 |
クルボアジェV.S.O.P。 |
最初、アタックはしっかりしてて良かったんだけど、全体的に固くて味の広がりを感じずに、あまり美味し |
いとは思わなかったんだけど、しばらく良く舌の上で転がしてたらあら不思議、小さな味が沢山ぎっちり |
詰まってるのを感じられました。 まるでぴかぴかに磨いたビーズ舐めてるみたいな感じ。 |
この頃日本酒を喉で飲むことを覚えて、そのやり方で最初飲んでたからわからなかった、このブランデーの |
良さに気づけて良かった、っていうかそのほっとした感が大きくて、なんか不思議な気分でした。 |
折角の初コニャックが不味かったらどうしよう、って感じだったからでしょうか。(笑) |
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■ |
ゲームは、モンハンですよ。 モンスターハンター2。 PS2版。 |
オフ専です。 てかオンライン設備ねーもの、ウチ。 |
ほんとは最新版が欲しかったんですけど、あいにくPS2で出てるのは2までなので仕方無い。 |
PS2しか持って無いですからね。 |
で、うん、初古龍戦(対クシャルダオラ)で心を折られて一時止まってましたけど、同じ時期にモンハン |
やり出した(っていうか私がモンハン始めたと知ったらなぜかやりだした。なに?私のこと好きなの?ww) |
友人がくれたアドバイスに基づいてなんとか討伐成功。 ありがとう御座います♪ |
そしたらその後は一気呵成というか、あっさりと次戦では勝利、ていうかもはやカモにw |
以降、止まること無しで、続々と狩猟生活やってます。 |
今は、火山でバサルモス狩ったところまで進んでます。 |
装備は、防具はレイア装備一式で、武器は未だにワイルドボウが現役で頑張ってます。 |
武器はほんとほとんど弓専になってきてますね、爆弾も併用してますけど、慣れると爆弾無しでも |
時間内に倒せるようになってきた、っていうか、弓ってなにげに万能じゃなくね? |
部位破壊出来ない部分が多いのが難点ですけどね。 |
でも、モンスターの動きを観察して、以下に効率的に避けて攻撃を数多く当てるかとか、あと雑魚敵 |
も同時にいるときとかも、すべて動きを計算しつつ避けたりとか、キまると最高にすっきりとするw |
このゲームの一番面白いところは、こうして弱い武器でも工夫次第でちゃんと倒せる、っていうとこ |
かもしんないですね。 |
このゲーム買ったのが、昨年の12月辺りなのに、全然進んでませんけど、まぁ、ゆっくり気長にやろうと |
思ってます。 |
そもそもゲーム長時間やるのって苦手ですし、まぁ、ほどほどに。 |
廃人の心配は無いよ☆ たぶん。(ぉぃ) |
|
◆ |
あーあと、テキーラも飲んだ。 お初です。 |
「Sauza BLANCO(サウザブランコ)」。 |
本場メキシコで広く飲まれている典型的なテキーラ、らしいので、入門用として購入。 |
ブランデー・ウイスキーから、も少し幅を広げようと思っての新規開拓を目的にして色々選んでみたん |
ですけどね、他にウオッカとかジンとかも考えました、まぁテキーラは情熱の代名詞みたいに聞いてたの |
で、日本酒の陽気な酔いが好きな私は興味津々な訳で、それで選んでみました。 |
けどテキーラ高いなおい。 種類も少ないよおい。 ウオッカとかジンとかの方が値段安いし種類多いよ。 |
で、肝心の味ですけど。 |
・・・・。 |
ちょっと、訓練がいるかな?(汗) |
アタックはそんなに無いんだけど、食道を通るときの熱さは病みつきになるしそれはいいんだけど、味が。 |
うん、味と匂いがね。 |
匂いっていうか、臭いがね、うん。 |
なにこれ、濡れたビート板? もしくは腐りかけのアロエ?(滝汗) |
爽やかな香りとかネットに書いてあったけど、嘘つけー! これ生臭いって言わない? |
で味というか口当たりが、ぬめっとぬるっと少しする。うええ。 |
私の食べ物に関する中で、最も駄目な項目、生臭さ・ぬるぬる感がセットできたー!(涙) |
これはストレートだと味的にそのままは割と厳しいので、なにかで割った方が良い、ってかカクテルにした |
方がよさそうかもね。 |
まぁうん、頑張ります。 人様に勧められてもいるし、次はウオッカかな。(ぉぃ) |
|
■ |
この頃、マジバナする友人と、アホバナする友人とが分かれてる。 |
用途別に友人グループが出来てる。 おいおい。 |
マジバナする友人とアホ話しても全然間が持たず(私的には痛いw)、アホバナする友人とマジ話しても |
スルーされるし(というか滅多に私からは振らないけどw)。 |
そんで、マジバナ友人(?)とアホバナ友人(?)が一堂に会すると、なんか空気が変。 |
っていうか、重い。 なんだこれ。 |
私はその間をおろおろしたり間を取り持ったり壊したりとか、ほんと、なんだこれ。 |
世界人類が幸せになりますように。 ←現実逃避 |
|
■ |
そういえば書きましたっけ? ウイスキー。 |
サントリーのマクレランズシリーズの、スペイサイド。 シングルモルトです。 |
結構普通な感じなんだけど、飲んでるうちにスモーキーな薫りと共に味も深まってきて、なかなか美味し |
く楽しめた、っていうか最終的には今まで飲んだ中で一番美味しかった。(ぉ) |
ただ、結構飽きるかもしれない感じもするなぁ、味の深みと変化はあるんだけど、その変化の仕方が |
一様という感じがするので。 |
他にローランドとか他の種類もあるんですけどね、あ、スペイサイドとかローランドって、スコットランドの |
地方名で、その土地で作られたウイスキーの名を取ってるんですね、だからスコットランド産のウイスキー |
、スコッチでもあるんですけど、で、うん、他の種類を飲むよりは、べつの銘柄にしようかな、という |
方向に向かってます。 |
|
■ |
あとなんだっけかな。 |
あ、サッカーだ。 ヨーロッパチャンピオンズリーグの季節ですね。 |
どこが優勝するかとかいうより、ちゃんと全部放送してください、地上波で。 お願いします。 (懇願) |
私は特にどこも応援していませんね、というか世界最高峰のプレイを楽しむのが目的で見ているのが |
大きいっていうか、だからお願い放送して頂戴。 (涙ながらに) |
|
■ |
最近他の人達と飲むと飲み過ぎてしまう傾向があったので、ひとり酒の割合が多くなってきてましたけ |
ど、そろそろまたみんなで飲みたいなと思うのですけれど、そういうときに限ってみなさんお忙しいという |
か、まるで親の仇を見るような目つきで睨み付けてきたりとか、ほんと、ごめんなさい。 (土下座) |
というところでしょうか、今日は。 |
途中から、あ、今日は来期アニメについて書けば良かったでもいいや、という展開に脳内ではなって |
いたりしましたので、来週はそれやります。 やらせて頂きます。 |
来週は来期アニメについて適当に、と。 予約。 |
あーあと、ニュースひとつ。 |
私の大好きなアニメであるところの、「狼と香辛料」についてのお知らせ。 |
まず、公式サイトが大幅リニューアル! |
トップ絵がなんか変ですけどw、随分明るいイメージに変わりました。 |
で、あとですね。 |
「狼と香辛料」第一期の再放送が決定! |
TVKで、4月8日からスタートの模様。 |
第二期も夏から始まりますので、まだ観たこと無い人には、是非是非お勧めで御座います。 |
というか観なさい。(命令形w) |
では、また次回。 |
ごきげんよう。 |
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-- 090308-- |
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■■ マリア様の信じるままに ■■ |
『正義とか正義じゃ無いとか、そんな事言ってるんじゃないわよ! |
私はただ、大好きな仲間達と離れたくないだけなのっ。 |
言いたい事はわかるわよ。 確かに私は、自己中心的でしょうよ。 それで結構。 |
でもね、感情的に口走った言葉の中にだって、大切なことは入ってるんじゃないの? |
みんな志摩子さんみたいに、他人の事を思い遣って発言してばかりいられないっていうのっ!』 |
〜マリア様がみてる4thシーズン・第九話・由乃さんの言葉より〜 |
私は |
私の事が |
嫌いです |
柄にも無く、胸がときめいていた。 |
静かに興奮している。 |
どうやって貶めてやろうか、どうやって苦しめて差し上げましょうか。 |
鬼気迫る想いで無表情を作り、凄艶とも言えようほどに、口の端を吊り上げて嗤う。 |
鏡の前の私。 |
嗤っている。 |
心の底から忍び寄るようにして、その笑顔に齧り付く。 |
噛み付きだ。 |
思い切り歯を食い込ませ、絶対に放すものかと、あわよくば食い千切ってやると、息巻いて。 |
面白い |
このまま、祐巳様殺害計画でもノートに書いてみようかしら。 |
真っ白なノートに、芯の抜けたシャーペンをかちかちと打ち鳴らして、書き綴る。 |
白い文字が、ノートが破れるほどに、敷き詰められていく。 |
こんなにくっきりと、憎悪の跡が付いたわ。 |
清冽に、流麗に、その文字はこれだけ力を込めて刻んだというのに、確かにまともに並んでいた。 |
一文字たりとも乱れずにはみ出しもせずに、ただ真っ白に書き込まれていて。 |
でも、私には、それを読み上げる事が出来ない。 |
読めない訳じゃ無いわ。 |
だって私が書いたんですもの、たとえその文字が汚くて読めないものだとしても、私は私の頭の中の |
文字を読めば済むだけだもの。 |
そのノートの字面は、私のまっさらな気持ちを丸写ししたもの。 |
読め無いはずは無い。 |
なのに、声が出ない。 |
憎悪の物語を、書くことは出来ても、読むことが出来ない。 |
これではとても、演じることなど出来ないじゃないの。 |
文字が白い。 |
本当に、これは私が書いたというの? |
ただ芯の出ていないシャーペンの先で、削り刻んだその衝動の言葉の痕跡が、私の頭の中を映し出し |
ていると、こんなにも思っているのに、その思ったままに読み上げることが出来ない。 |
けれど嗤う。 |
嗤う。 |
私が求めるもののために。 |
祐巳様が憎い。 |
祐巳様が憎い。 |
祐巳様を愛していると、白くノートに刻んでも、それは変わらない。 |
祐巳様のことなど、なんとも思わない。 |
なんとも思えない。 |
祐巳様と離れていく。 |
祐巳様が離れていく。 |
祐巳様 |
祐巳様。 |
祐巳様祐巳様うるさい! |
混乱が無い。 |
不自然なほどに私は落ち着いている。 |
でもどうして、それが不自然なことと思うのだろう。 |
当然なはずのことでしょう? これは演技なんだから。 |
祐巳様への憎しみに胸をときめかせて、そのまま般若のように面を被っているだけなのだから。 |
どんなに憎もうと、それは演技。 |
私自身は、落ち着いていて当然よ。 |
なにが不自然よ。 |
自然で、当然じゃないの。 |
じゃあなんで、私はこの憎悪にまみれた演技をしているの? |
祐巳様を愛しているからこそ、その愛を求めるためにこそ、憎まねばならなかったから? |
笑えるわ。 |
そんな幼稚な事で、私の欲しいものが手に入るとでも? |
私は、祐巳様をみてる。 |
だからただずっと、考えているだけ。 |
愛だなんて、言葉にするだけ虚しいわ。 |
どうすればいいのでしょう。 |
ただそれだけよ。 |
私には、私が祐巳様を愛することが出来ようと、祐巳様が私を愛してくれるようになろうと、 |
そうでなかろうと、そんな事はどうでもいいことなのよ。 |
私は、生徒会選挙に、立候補して出た。 |
なにか問題でも? |
リリアンの所属し、リリアンのことを想う者のひとりとして、真剣に考える者として、ただ自分の力を |
リリアンに役立てたいと、ただそう思っただけですわ。 |
祐巳様の事? 本気でそんな事を私に訊いているのですか? |
私が祐巳様に対してなにを感じていようと、選挙は選挙ですわ。 |
馬鹿なことを仰らないで。 |
私が憧れるのは紅薔薇。 |
私的な問題と公的な問題を混同すること無く、けれどどちらも捨てることは無い、そのような優雅で、 |
偉大な存在になりたいだけですわ。 |
ええ、ですから祐巳様のことが関係無い、というのはやや不正確ではありましたわね。 |
言い直せば、そうですね、祐巳様のことも考えつつ、それを含めた選挙を行うことには変わりない、 |
勿論祐巳様の事とは関係無い、いち生徒としてのリリアンを想う者としての自覚も含めて、ですね。 |
私は薔薇になりたいですし、その願望を捨てることなんて無いです。 |
その事自体は、祐巳様とはなんの関係も無いことですが、でも、それは同時に祐巳様とも関係の |
あるものとしてもある事なんです。 |
つまり私は、祐巳様とは関係無く選挙にも出て、祐巳様とは関係大ありで選挙にも出た、という事です。 |
選挙に負けるために私が立候補したですって? |
またそんな馬鹿なことを仰るんですか? |
私の薔薇様の席を望む気持ちが、そんなにも軽いものだと思っているんですか? |
言い換えましょうか。 |
私は、祐巳様への当て付けのために選挙に出ました。 |
いつまでも友達ごっこをなさっている祐巳様達に思い知らせるために、私が当選してやろう、と。 |
おかしいですか? |
私は貴女方の敵なのですよ? |
だから、貴女方が私が選挙に出る動機をそうして詮索しているうちに、私はとっとと薔薇様の席を |
射止めてしまおうと、そう思っているんです。 |
当て付けだろうとそうでなかろうと、関係ありませんわ。 |
私はただ、出馬した。 |
ただ、それだけです。 |
私が薔薇様の席を狙っているのかいないのか、祐巳様を意識しているのかしていないのか、 |
その答えは、その答えを探してばかりの、貴女方の中にしかありませんわ。 |
私は、そんな答えはいりません。 |
必要なら、差し上げます。 |
ええ、それを踏まえてた上で、なお私に答えをお求めになられるのでしたら、いくらでも教えて差し上げ |
ましょう。 |
嘘だろうと本当だろうとどちらでも同じの、ご覧の通りの私の動機を丁寧に開いてお見せしましょう。 |
ええ。 |
ここまで私が言っているからには、それがどういう事かおわかりでしょう? 乃梨子さん。 |
これで、私のなにかがわかりましたか? |
私は、私の考えていることを全てお話しましたわ。 |
これで全部です。 |
嘘はなにも言っておりませんわ。 |
ただ、嘘はなにも言っていない、ということが嘘では無いことを保証する気は無いだけです。 |
信じるも信じないも、騙されるも騙されないも、自己責任でお願いしたいものです。 |
あなたに頼る気は無い、そういうことです。 |
いえ。 |
というより、あなたにわかって貰おうという気も無ければ、あなたを憎む気も無いです。 |
乃梨子さん。 |
あなた、ご自分の仕事をなさったらいかが? |
選挙にて、お姉様たる志摩子様の応援をして、友達である私の事は応援出来ない、というのは、 |
そんなのは当然の事じゃないですか。 |
友達? 当たり前でしょう? なにを今更。 |
友達だからどうこうとか、そんなこと関係無いでしょう。 |
友達なのに応援できない、それがどうかしましたか? |
応援できなければ友達では無い、とでも言うつもりなのですか? |
あなたらしく無いじゃないですか、乃梨子さん。 |
なにをそんなに、応援出来ないけれど友達だよ、だなんて焦ったことを仰っているの? |
当たり前でしょう、そんなこと。 |
まさか、私がそんな事を憂えて、ひとり寂しがっているとでも? |
まったく。 |
寂しがっているのは、あなたでしょ。 |
友達を置いて、お姉様の応援をしなければならない事が、不安で堪らないのでしょ。 |
私をひとりにする事が心配、という口実を使って、そうやって、友達を応援できない不安定な立場の |
自分を癒そうとしているだけでしょ。 |
だから、私に対して、ご自分の潔白を示さずにはいられない、のじゃなくて? |
乃梨子さんは私を買い被っているところもありますけど、それと同じくらいに私の事を見損なっています。 |
私にこうして非情な指摘をされて、それに憤慨したり、それが私の寂しさの裏返しゆえだと思ってみたりと、 |
そういうことをなさっているのでしょうね。 |
『おめでたい人ね。』 |
当たり前の事を何度も確認なさるなんて、見苦しい。 |
確認せずにはいられない、そんな愚かしく弱いご自分の姿を、少しは見つめたらどうなのよ。 |
私は、馴れ合うつもりも、傷の舐め合いもする気は無いわ。 |
私は私の事を保証しません。 |
あなたのために、私とはこういう人間だと、私は今こう考えてそれに基づいて行動しているなんて、 |
そんな親切な事をする気はありません。 |
私も乃梨子さん、あなたにそんな事をして欲しいだなんて、欠片も望みません。 |
不安ですか? |
不安でしょう、不安でしょうとも。 |
見損なわないで頂きたいですわ。 |
友達友達と仰るのなら、それが友達だというものではないですか? |
私と乃梨子さんが友人であるということを信じることが出来ていないのは、あなたの方でしょう。 |
もっと毅然となさい。 |
私とあなたが友人であるという、絶対的な保証なんて無いですわ。 |
そんなものは無い。 |
でも無いからこそ、当然の如くに、絶対の自信を以て、私達自身でそれを保証するべきではなくて? |
べつに、だから乃梨子さんのように、いちいち細かく確認作業をするということを全て否定するつもり |
はありません。 |
でもその乃梨子さんの作業は、明らかに絶対のものが無い不安に耐えられずに、なにもせずには |
いられないだけの、それこそなにより絶対のものが無いことこそを強烈に示してしまっているじゃないで |
すか。 |
もっと毅然となさい。 |
正々堂々と、胸を張って嘘を吐けばいいんです。 |
真実を必死に探し続け求め続ける暇があるのなら、真実はこれですと、あっさりと目の前に提出して、 |
そのままに生きればいいのよ。 |
私は乃梨子さんと同じ人間になるつもりはありませんわ。 |
私には私のやるべき事、やりたい事があって、私はそのために生きているだけです。 |
勘違いしないで。 |
私は、私のことを全く説明しない、だなんて、一言も言ってないのよ。 |
第一、私はもう既にこれだけ、私のことを語っているでしょ。 |
重要なのはただ。 |
自分がなぜ、真実を、人の本音を求めずにはいられないのかを問うことなのよ。 |
真実を、人の本音を求めるのは、それからでも遅くはないわ。 |
『友達だったら、なんでも言わなければならないのかしら?』 |
友達だから、なんて言葉は私はいらない。 |
あなたの目の前に、私がいることは、絶対なのですから。 |
私は、松平瞳子のままに、全力で。 |
二条乃梨子と向き合っていく。 |
あなたに、相応しいくらいには。 |
友達という言葉が欲しければ、いくらでも差し上げます。 |
でも・・・ |
あなたがそれを得て、私に一体なにをするというのでしょうか。 |
その言葉を盾にして、あなたはきっと、またひとつ、私を見損なう。 |
それは喜ばしいことでは無いけれど、まぁいいわ、仮にも薔薇様を目指すものとして、背負って差し上げ |
ますわ。 |
それで。 |
来年には白薔薇様に選ばれるかもしれない、二条乃梨子さんは、それで良いのですか? |
この私の言葉の仮面がお気に召さないのであれば、どうぞ、いつでも向かって来てください。 |
是非。 |
お待ちしておりますわ。 |
◆ |
嫌がらせで、ですよ。 |
薔薇様になりたいがため、ですよ。 |
祐巳様のその詮索は、間違ってなどいませんわ。 |
少なくとも、そうして導き出した答えが間違っていたと、そうお気づきになられた、その祐巳様が受け止め |
るべき、真実の中では。 |
嫌がらせで、立候補した訳ではありません。 |
薔薇様になりたいがために立候補した訳ではありません。 |
でも、選挙に負けるために立候補した訳でもありません。 |
冗談じゃありませんわ。 |
選挙に負けるために立候補したというのなら、嫌がらせで、薔薇様になる目的で立候補したというの |
も真実です。 |
嫌がらせですよ、薔薇様になりたいからですよ。 |
それは私の紛れも無い、本音です。 |
祐巳様のことを想うからこそ、いつまでも日常に逼塞してお友達ごっこをしているだけの、その祐巳様 |
が憎いというのは、事実です。 |
当然でしょう。 |
安易な気持ちのままにロザリオを突き付けておいて、それで私がどれほど傷付いたか、そんなこと誰に |
だってわかることです。 |
私だって人間です、人並みに苦しんでいますわ。 |
だから嫌がらせで、祐巳様達の幸せな世界にヒビを入れてやろうと、祐巳様にロザリオを突き付けられた |
、その事の代償を突き付け返してやっただけ。 |
凄艶に嗤う、悪女ですわ。 |
でもこれは、人として、人との繋がりを求める者として、愛持つものとして、当然のことで、それが正義か |
悪かなんて関係無いことです。 |
そして私は、同時に私は正義を求めているのです。 |
薔薇様になるのは、祐巳様とは関係の無い、私の元来の夢なのですから。 |
それを正当な手続きで求めているだけなのですから、祐巳様達がどう邪推なさろうと、それは正しい |
行為でもあるのです。 |
私は薔薇様になりたい、それは本当のことです。 |
そして。 |
私は。 |
ただ。 |
紅薔薇になりたい。 |
祐巳様の妹として。 |
紅薔薇の蕾の妹、ロサキネンシスアンブゥトンプティスールに、なりたいのです。 |
祥子様の妹の妹に。 |
祐巳様の妹に、私はなりたい。 |
薔薇の蕾の妹は、やがて薔薇の蕾になり、そして。 |
薔薇になる。 |
紅い、紅い、愛に満ち溢れた紅薔薇に。 |
私には、その、紅い紅い薔薇にしか、興味が無い。 |
そう。 |
私は元々、薔薇様になりたかった。 |
でも、何色の薔薇になりたいかは、決まっていなかった。 |
それを決めたのは、祐巳様、あなたの存在なのです。 |
そして・・ |
なにより、すべてを越えて、祐巳様にどうしようもなく、こうして心惹かれている私がいるからなのです。 |
すべては、乃梨子さんの仰る通り、ひとつに繋がっています。 |
そういう意味で、結果的には、今回の選挙には負けるために出馬した、と言われても仕方無い。 |
でも私は、あくまで勝つために選挙に出たのです。 |
今の私のままに、頑固で、孤独で、周囲の人間には見向きもしない、そのままの私のままに。 |
色々なことが、わかっていたことが改めてわかりました。 |
ああ、そうよね、この私のままになにをやっても駄目なのね、と。 |
私はあくまで、正当な手続きのみ、つまり、立候補の届けを出し、割り当てられた演説の時間に想いを |
込めて、懸命にやってみただけ。 |
私ひとりの、必死の戦い。 |
負けるために、だなんて失礼な。 |
私はただ、頑固で愚かな、弱く幼い自分を見捨てなかっただけです。 |
そして・・・・ |
その盲目な私は確かに盲目のまま戦い続けていましたけれど。 |
でもそれは同時に、そうしている私の姿が、祐巳様達の目にどう映っているかも、ちゃんと見据えた上で |
行っているものなのでした。 |
嫌がらせのためにやっていると? |
正解ですわ。 |
正当なる手続きのままに、薔薇様になりたい目的を果たすためにやっていると? |
正解ですわ。 |
とても、面白かったですわ。 |
いつのまにか、嗤いが笑いに変わっていたわ、乃梨子さん。 |
ええ、私は確かに楽しんでいましたの。 |
でもそれは、自虐的自嘲的なものを乗り越えた笑いになっていたわ。 |
ああ、私、相当遠回りだけど、でも確かに、薔薇への、いえ、紅薔薇への道を進んでいると、 |
そう確かに感じることが出来たのですから。 |
たとえ祐巳様を憎んでいても、私のその紅薔薇への想いは途切れないなんて。 |
たとえ祐巳様を無視していても、私の祐巳様への想いは消えないなんて。 |
こんなに嬉しいこと、ありますか? |
私が、どんな手を使ってでも、祐巳様を導くしかないのですわ。 |
まったく、世話のかかる人ですよね。 |
苦しみに喘ぐ暇なんて、ありません。 |
祐巳様が、其処にいるのですから。 |
だったら、祐巳様に試練のひとつやふたつを与えることの、その不遜さに拘泥している暇があるなら。 |
それを楽しんだ方が、何倍も何倍も、私が祐巳様と向き合える力を得ることが出来るのだと。 |
祐巳様達、現在の薔薇の蕾の方々を差し置いて、私は当選する気満々でした。 |
でも私は、あの方々が私に遅れを取るなど絶対にあり得ないと思っていました。 |
私が全力でぶつかったって、あの方々が、祐巳様が挫けたりするものですか。 |
あの祐巳様が、何度追い払っても子犬のように付き纏う、あの異常なほどにしつこい人が、この程度 |
で私のことを諦めるものですか。 |
おかしいですか? 卑怯ですか? |
私のしていることは、祐巳様のしつこさに頼っているだけの、そんな愚かしい行為に思えますか? |
ええ、正解ですわ。 |
でも私、それで構いませんの。 |
愚かしくても、祐巳様を信じられる、こんなにも、どうしようもなく信じている、この私の、本当の、本当 |
の想いを、私は愛することが出来るのですから。 |
その私の想いと心中なんて、しませんよ。 |
なにを仰っているの? |
これからじゃないですか、なんのためにこんなみっとも無いことをしたと思っているんですか? |
私は祐巳様のことを信じていると言いましたけれど、それは祐巳様が揺るぎないほどに、愚かで、 |
いい加減で、どうしようも無い人だと、そういう人であるということは絶対だと、そう信じているという |
意味です。 |
私は、その祐巳様が大嫌いです。 |
だから、私はその祐巳様に何度でも挑戦します。 |
挑戦して、挑戦して、何度でも試してやります。 |
私は、そうしていつまでも未練がましく酷たらしくしがみつく、そんな自分のことが嫌いです。 |
醜い、みっともない、大嫌い。 |
でもだから。 |
向き合える。 |
そうじゃなきゃ向き合えない、悲しい女なんです、私は。 |
でも、その悲しみと向き合う自分のことは、嫌いじゃ無い。 |
そうあっさり言い切れる、 |
そんな私の事が、 |
私は、大嫌いです。 |
その私を。 |
祐巳様が、みてる。 |
腹が立ちますわ。 |
私の目の前に広がっているノートには、祐巳様がみてるからこそ戦える、ああなんて嬉しいの、なんて、 |
そんなひどい事が書いてあるんですもの。 |
引き裂いてやりたくなる。 |
バラバラのぐちゃぐちゃに。 |
まだよ、こんなのじゃ駄目よ。 |
私はまだなにかに囚われてる。 |
まだ全然、なにかが決定的に足りないのよ。 |
私は増やす。 |
ノートのページを、どんどんと新しく追加していく。 |
もっともっと、幅を広げなくちゃ。 |
もっともっと、沢山のものを感じられる可能性を、作らなくちゃ。 |
このノートを完成させる事に、意味なんて無い。 |
このノートの中の物語は、終わらない。 |
書いても、書かなくても、ページ数はどんどんと増えていく。 |
黒く、白く、なにも無くも、ただただ、ゆっくりと膨らんでいく。 |
私の手が折れるまで、いいえ、手が折れたら、口にペンを加えてでも書き続けてやりますわ。 |
終わらせてやるものですか。 |
ご当選、おめでとう御座います、祐巳様、由乃様、志摩子様。 |
お姉様のご当選、おめでとう御座います、乃梨子さん。 |
今は、ここまで。 |
逆に言えば、今の私にはここまでしか出来ないという限界を、よく理解したわ。 |
勿論。 |
その限界の範囲内の物語を、完結させる事なんて、興味無いわ。 |
限界を知ったからこそ、私は、今の私から先へと駒を進めるだけですわ。 |
当然でしょう。 |
そのために私は、今の私の、小さな物語の中の主人公を演じて魅せたのですから。 |
私が今どこにいて、なにを感じて、なにを考えているのか、この身を以て、みなさんにお見せしたつもり |
ですわ。 |
こうして祐巳様達の当選を祝いながら、そっと身を退く、という姿を私に視て、それでなにを感じて考え |
ようと、それは祐巳様の勝手です。 |
でも私は、私です。 |
ありのままの私です。 |
ご当選、おめでとう御座います。 |
私のこの言葉が嘘にしか聞こえないのなら。 |
真実など、どこにもありません。 |
でももし、私の言葉が嘘であると、そして同時に本当でもあると理解して頂けたなら・・・・ |
其処にきっと、私は、真実存在して、います。 |
祐巳様。 |
祐巳様は、次代の紅薔薇になられたのです。 |
そして私は・・・・ |
次代の紅薔薇の蕾に、なりたいと思っているのですわ。 |
信じて、います。 |
私の想いを、祐巳様が知ってくださる、その日が来ることを。 |
◆ 『』内文章、アニメ『マリア様がみてる4thシーズン』より引用 ◆ |
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■■ 友と桜 ■■ |
『雨の日も、風の日も、ひとりではないんだと。』 |
〜続 夏目友人帳・第九話・巳弥の言葉より〜 |
桜が咲いている。 |
端々に漏れる光が、桜色に染まっている。 |
根元には節くれ立った根が横たわり、大きく手を伸ばして歩いている。 |
世界ごと、動いている。 |
走り出すままに、歩き出すままに、立ち止まりながら。 |
春が過ぎ夏が来て秋を越え冬に至る。 |
閑散とした枝々の向こうに、冬空がみえている。 |
これが春に変わるなど、誰が思うだろうか。 |
どうしてこの世界が変わるだろうか。 |
秋と夏と春があった事を完全に忘れて、ただ冬の中でそう思う。 |
だってこんな、なんにも無いじゃないか。 |
桜の花など、一枚足りとも無いのに。 |
深々と、枯れ木は凍えもせずに、ずっとあるがままに其処にいた。 |
ずっしりと地響きを立てて、冬のままに、雪すら弾きながらその空っぽの桜の木は歩いていた。 |
木立が遠くにみえる。 |
輪郭がぼやけてみえる。 |
溶けている訳じゃ無い。 |
むしろひとつひとつの木は離れてくっきりと生えている。 |
なのに、その桜の林は、ぼやけていた。 |
今にもなにかが動き出しそうだ。 |
どうしてだろう。 |
もう既に、こんなに動いているのに。 |
どうしてだろう。 |
こんなに、止まっているように感じられるのは。 |
止まっていると感じているからこそ、なにかが動き出しそうな感じがするんだ。 |
凄まじい静謐。 |
激しい震動の中で、一切の音を立てずに、その桜の木は鳴りを潜めている。 |
まずい。 |
動き出す。 |
一斉に、ざわめき立つ肌。 |
桜は、桜は。 |
動いている。 |
当たり前のように。 |
ずっとずっと、動いているままに。 |
止まっているようにしか感じらなれなかったのは、幻だったというのだろうか。 |
それとも。 |
本当に、新しく、動き出してしまったのだろうか。 |
気づいたら、春だった。 |
怖い? |
それが、怖いと? |
いったい、いつから怖いなんて言葉を、使うようになったんだろう。 |
◆ |
枯れ木を見上げれば、そこには満開の桜がある。 |
乱れ咲くその影に隠れて、その下に覗く人影に手を伸ばす。 |
桜ごと、動いていた。 |
桜を隠れ蓑にして、誰かと語り合った。 |
桜ってなんなのだろう。 |
どうしてこの桜は、春が終わると散ってしまうのだろう。 |
この桜が散ってしまうから、春は終わってしまうのだろうか。 |
ああ ああ 憎い |
憎いという文字が桜の花弁に縁取られて、儚く消えていく。 |
桜が消えてしまうのが憎いのか、桜が無ければその誰かと話せないのが憎いのか。 |
いずれにしろ、桜が憎い。 |
憎い、憎い、憎く無い。 |
桜吹雪の中に投げ込んだ憎悪の言葉は、桜の散り際の中に、やはり消えていった。 |
なにも無い。 |
憎悪も愛も無い。 |
桜は、ただ桜だった。 |
枯れた枝の上で、おろおろとなにかに隠れている振りをしている、愚か者の姿がみえる。 |
なぜだろう、どうしてそれがみえてしまうんだろう。 |
ああそうか、桜が無いからみえてしまうのか。 |
ではどうして桜は無くなってしまったんだろう。 |
さっきまで、あんなに咲き誇っていたというのに。 |
もしかして、その愚か者の姿を視るためにこそ、桜は毎年のように枯れるんだろうか。 |
桜が無ければ、誰とも向き合えない。 |
いいや。 |
ずっとずっと、ただずっと、向き合っていたのは桜だった。 |
桜の幻の中に映る、愚かな自らの姿をみていただけだった。 |
其処には誰もいない。 |
其処にいるはずの誰かはただ。 |
その桜の木の上の、愚かで哀れな者をみつめていただけだ。 |
おぞましい。 |
怖い。 |
おぞましいか? |
怖いか? |
おぞましくなんて無い。 |
怖くなんて無い。 |
恥ずかしくも無い。 |
ただずっと、桃色の世界の向こうに誰かがいるのを感じていたのだから。 |
ただ、それだけだった。 |
見せたくないものも、知られたくないものもあった。 |
けれどそれは、いつか誰かに見て欲しくて、知って欲しいものばかりだった。 |
どうして、見せられないんだろう、どうして知らせることが出来ないんだろう。 |
怖いから? |
なにかが違う。 |
怖いという言葉を隠れ蓑にしている、自分の姿だけがみえる。 |
怖くなんか無い、怖いなんて言葉はいらない。 |
どうしてなんだろう。どうしてだろう。 |
わかっている。 |
たぶんきっと、わかっている。 |
なのに、それに蓋をしてしまう。 |
どうして蓋をしてしまうのか、わかっているのに、わかったまま行動することが出来ない。 |
どうしてだろう。 |
どうしてだろう、? |
なんだろう、その問いは。 |
その問い自体が、おかしいんじゃないだろうか? |
その問いに、答えなんか出ないんじゃないだろうか。 |
いや、たぶん逆に、未来永劫に答えは出続ける。 |
わからないことなんて無い、だけどわかっていることには意味は無いんだ。 |
どうして生きてるんだろう。 |
答えはいくつでもある。 |
嬉しい答えも、悲しい答えも。 |
全部正解。 |
でも、すべて、意味が無い。 |
どうして、どうして生きてるんだろうと問うんだろうか。 |
その問いにも答えは出続ける。 |
でもそれも、意味が無い。 |
生きてるんだから、生きている。 |
どうしてと問うのだから、問うている。 |
答えを隠れ蓑にしている自分がいるだけだ。 |
その自分を生きることがなかなか出来ない自分がいるだけだ。 |
見つめるべきは、その自分。 |
桜の向こうに、誰かいる。 |
桜が晴れたら、きっとその向こうの誰かと・・・・ |
誰も、いない。 |
桜の散り様に、己をみる。 |
美しい。 |
美しい。 |
なによりも美しい。 |
それは、死への、消滅への憧れ。 |
桜の壁の向こうには、誰もいなかった。 |
桜の幻の中にしか、その誰かはいなかった。 |
悲しい。 |
悔しい。 |
こんなものに踊らされていた自分に殺意が湧く。 |
そんな言葉を、桜の中に照らし出す。 |
そしてその言葉は、あっさりと消えていく。 |
あまりにも残酷すぎるほどに、その言葉が嘘だということがわかるから。 |
だからその嘘の言葉に縋って、真実から目を背けずにはいられないだけ。 |
桜が散るのは、なんでだろう。 |
答えがひとつ、ぽろりと胸から零れ落ちる。 |
自分が、目を背けたからだ。 |
この桜が無ければ、その向こうの人と出会えないと思うからだ。 |
そして、桜が無ければ出会えない事に、憎しみという言葉を当て填めて、その桜を散らすからだ。 |
桜が散れば、此処にはいられない。 |
だからいつも、その桜の木の上にはいるのは、春のときだけ。 |
自分こそが、その桜吹雪の向こうで舞う、その誰かの前から逃げ去っていただけなのに。 |
その逃げ去った先の向こうに、誰かがいるはずも無いのは、当然なのに。 |
それでいて、桜の向こうには誰もいないと嘆くのは、一体何者なのだろう。 |
その嘆きが嘘であることを肌で感じている。 |
桜があり、自分がある。 |
桜と自分は、決してひとつにはなれない。 |
桜が散っても、自分は散らない。 |
桜が散るのは、自分が散らせたから。 |
自分が散っても、桜は散らない。 |
自分が散るのは、桜への自分の想いが散らせたから。 |
愚かしい。 |
なんて馬鹿な奴なんだ。 |
それが、答え。 |
桜にまつわる、ひとつの答え。 |
でも |
その答えに、意味は無い。 |
私は、そんな愚かしい答えには縋らない。 |
俺は、そんな馬鹿な道を歩んだりはしない。 |
そう思っている。 |
そう思っているだけで。 |
本当に、そうなっているのだろうか? |
◆ |
俺は知られたくない。 |
自分のことを、知られたく無い。 |
でも、知られたい。 |
知られたいからこそ、確実に、完璧に、理解して欲しいからこそ、簡単には知られたく無い。 |
誤解されたく無かった。 |
だから、誤解させずにはいられないことは、知られたくなかった。 |
上手く、伝えられないから。 |
真実って、なんだろうか。 |
俺は、妖を視る力を持っている。 |
多くの人は、その事実を知れば、俺から離れていくだろう。 |
俺はだから、隠すのだろうか。 |
違う。 |
その事実を伝えても、俺から絶対に離れていかない人がいることを、俺は知っている。 |
塔子さんと滋さんは、きっと俺から目を背けたりなんかしない。 |
北本達だって、きっとあの調子で受け入れてくれるかもしれない。 |
俺の特殊な体質が、イコールすべての人を俺から離れさせていく、というのは嘘だ。 |
だから、俺が隠す理由はそこには無いんだ。 |
逆にいえば、周囲の人が俺を受け入れてくれるからと言って、それが俺が自分の事を話す理由には |
全然ならないんだ。 |
じゃあ、なぜなんだろう。 |
どうして自分のことを話せないんだろう。 |
真実って、なんだろうか。 |
俺は思う。 |
もし、塔子さん達に俺の事を明かして、そして受け入れられたとしたら、俺はきっと塔子さん達の中で |
しか生きられなくなってしまうんじゃないだろうか、と。 |
逆にいえば俺は、自分のことをひた隠しにしてでも、塔子さん達を含む、すべての人達と向き合って |
生きていきたいと思っているからこそ、自分の事を明かすことが出来ないのじゃないだろうか。 |
塔子さん達に理解されて、受け入れて貰って、そうしたら俺はどうする? |
俺はきっと、もう、塔子さん達以外の人達のことを、まともに見ることなんて出来なくなるよ。 |
塔子さん達にすべてを話して、塔子さん達に支え守られて、そうして一生、塔子さん達だけに理解 |
して貰えることだけに満足して生きていってしまう。 |
それは・・・ |
それは・・・・・ |
とても、とても、ひどく、悲しいことだった。 |
真実って、なんだろうか。 |
本当に、塔子さん達以外には、受け入れて貰えないことなのだろうか。 |
いや、塔子さん達と同じような人以外には、という意味だ。 |
塔子さん達って括りは、一体なんなのだろうか。 |
じっくりと時間をかけて、そして俺の肌で触れ合える範囲の人達、だろう。 |
では、そうでは無い、他の無数に犇めく沢山の人達は、駄目なんだろうか。 |
俺の肌で触れ合える範囲の中にいて、その範囲を広げることだけで、良いのだろうか。 |
真実って、なんだろうか。 |
俺は思うんだ、先生。 |
説明、しなくっちゃ、ってね。 |
俺が妖を視てしまう能力があることは、本当だ。 |
そしてそれは、イコール妖怪が存在している、ということにはならないんだ。 |
俺自身は、妖は存在していると感じながら視ているけれど、でもそれは俺の、俺ひとりの感想にしか |
過ぎない。 |
なら、説明の仕方は、いくらでもあるんじゃないだろうか。 |
どうして、周りの人は、俺の体質を知ると離れていくんだろうか。 |
もし、俺が逆の立場だったら、この体質を持っていない、その体質を経験して生きてこなかった人だと |
したら、どうだろうか。 |
どう、説明されたら、離れたくなるだろうか。 |
妖怪が視える、という事実だけで離れていく人は、たぶん相当少ないと思う。 |
俺だって、ただ妖が視えると言われて、それを暗い顔して陰気な空気を醸し出されても、困ってしまう |
のは確かだ。 |
そしてその困惑が続くだけになってしまって、初めて、その妖が視える奴は変だ、だからこの困惑を |
解消するためにこそそれを理由にして排除してしまえ、とそうなるような気がする。 |
演出、と言えばいいのだろうか。 |
真実って、なんだろうか。 |
言葉って、なんだろうか。 |
それらを盾にしているだけの、自分がいないだろうか。 |
周囲の人の立場に立って考えれば、真実だけをそのまま告白されても、それでそいつがどうするのか |
が見えなければ、今度はその周囲の人達こそが、その真実を盾にするしか無くなってしまうんだ。 |
俺が、どうしたいかなんだよ、真実と向き合っている俺こそが。 |
俺が妖が視えるという体質の真実に囚われて、その体質の不幸さを呪ったり、それを告白できない |
辛さに閉じこもるだけなら、それは本当に俺の自業自得なんだ。 |
そして、 |
そうなんだ。 |
俺が塔子さん達に告白出来ないのは。 |
そうして自己演出をして、塔子さん達以外の人達に上手く理解させる自信が無いからなんだ。 |
塔子さん達はきっと、真実をそのまま丸々受け入れてくれる。 |
それが、恐ろしいんだ。 |
怖いんだ。 |
そして、それを恐ろしい怖いという言葉で縁取ることによって、自分が塔子さん達以外の人達と |
向き会い続けようとする、ただそれだけに逼塞してしまうんだ。 |
桜がみえる。 |
よくみえる。 |
その桜の向こうに、誰かがいる。 |
桜の散り様は美しい。 |
俺も美しく消えてしまいたい。 |
消えてしまえば、きっとその桜の向こうには・・・・・ |
誰もいない。 |
誰もいないことを、とてつもなく望んでいる。 |
でも。 |
でも。 |
たとえ桜が消えてしまっても。 |
たとえ俺が死んで消えてしまっても。 |
その桜の向こうには |
この俺の向こうには、誰かいる。 |
彼岸と此岸。 |
どうしても、死者の存在を感じずにはいられない。 |
死んでも、消えてしまっても、生者は死者のことを、死者は生者の存在を感じている。 |
いなくなり、消えてしまっても、其処に、いる。 |
その事を・・・・・知っているんだ・・・ |
桜は消えない。 |
自分も消えない。 |
だからその向こうにいる誰かも消えない。 |
視えてしまうんだ。 |
視たいから。 |
視たく無いんだ。 |
ずるずるに向けていく想いが、なんとも異様な静寂を湛えながら、動き出す。 |
どうしよう、どうすればいいのか。 |
話したい、あの人と話したい。 |
桜の季節のときだけ語り合う友と出会った。 |
蝉時雨の季節にも、紅葉の季節にも、雪の季節にも出会いたい。 |
そのために身悶えする。 |
桜よ散れ、桜よ散れ、桜よ散れ。 |
その想いに囚われているからこそ、気づけばもう、春になっている。 |
桜は広がる。 |
桜は消えない。 |
どうしよう、どうすればいいのか。 |
あの人が、この桜の向こうにいるというだけで、幸せだ。 |
いつかきっと、この桜を越えて、あの人に会えるかもしれないと思うだけで、幸せだ。 |
夏と秋と冬にも会いたいと思ったのは、桜が無くても会えるようになりたいと思ったからだけだ。 |
じゃあ、桜があっても桜を越えて会いたいとは、思わないのだろうか? |
なぜ、春以外のことばかりを考えるのだろうか。 |
どうして、春だけしか会えないことを悲しむのだろうか。 |
春にだって、会えてなどいないのに。 |
桜が無ければ、身を隠さなければ、なにも出来ないくせに。 |
桜に身を隠さなければなにも出来ない、という事実を盾にしているだけのくせに。 |
桜が無ければあの人に出会えない、そんな弱い自分と向き合えないだけ。 |
桜に隠れていても、そんなこととはなんの関係も無く、あの人と会うことは出来るのに。 |
隠れても、隠れて無くても、同じだろう。 |
私はそう思った。 |
桜の影に隠れる、この私の体がそんなに憎いか。 |
憎いのは、その体と向き合うことが出来ないからだろう。 |
弱いのだ、妖も、人も。 |
そんな弱い自分こそを、誰にも知られたくなかったのだ。 |
怖くなど無い。 |
恥ずかしくなど無い。 |
だから、怖いと言い、恥ずかしいと言い、その言葉を盾にして、それに隠れようとするだけだ。 |
捨てて良い訳が無い。 |
桜に隠れるこの体と向き合えない自分のために、この体を捨てることなんて出来るはずも無い。 |
あの人が、あの桜の枯れ木の絵の中で、息づいているのがみえる。 |
そうだろう? |
みえないはずが無いだろう? |
あんなに、あんなに、一生懸命に世界を愛でている。 |
その世界が枯れていようと嘘にまみれていようと、その真実に対して、愛したい、愉しみたいと、 |
そうあの人は紛れも無く主体的に生きているのだ。 |
その姿が、その愛しくも幸せな人の姿がみえないはずが無い。 |
『俺も同じだ。』 |
本当に、その人が絵の中にいるかなんて、関係無いんだ。 |
俺も確かに、その人の姿を、世界を旅して見て回りたいというその人が見える。 |
そうして、その人を其処に視る俺が、此処にいる。 |
その人が消えてしまったとしても、其処にいる。 |
独りじゃ無いんだ。 |
みんなみんな、其処にいる。 |
信じるとか、信じないとか、そういうことじゃ無いよな? 巳弥。 |
だって、その人は、八坂様は、其処に存在しているのだから。 |
その真実を、俺は、巳弥は知っている。 |
その真実を知るのが、俺達だけだったとしても、その真実が消えることは無い。 |
その真実をどう語ろうとも、それは変わらない。 |
だから・・・ |
だから・・・・・ |
俺達は、自分のその大切な誰かのことを、自由に語っていくことが出来るんじゃないだろうか。 |
今は語れない。 |
真実だけしか、受け入れる勇気が、力が無い。 |
でも、それでその真実が、大切ななにかが消えてしまう訳では無い。 |
巳弥、巳弥。 |
八坂様は、消えたりなんかしないよ。 |
巳弥が桜を越えて会わなければ存在出来ないような、そんな弱い存在じゃ無いよ。 |
八坂様は、誰かは、絶対的に其処にいる。 |
だから・・・だから・・・ |
俺達は、ずっと、ずっと、その大切な人に、会いにいこうと頑張れるんだ。 |
いつまでも桜の影にしがみついて、会いにいくことが出来ない自分。 |
辛いよな、悲しいよな。 |
怖いよな。 |
本当に、もしかしてこのまま終わっちゃうんじゃないだろうかと、早くしないと、その人は消えてしまうんじゃ |
ないだろうかと、本当に、怖いよな。 |
弱い、弱い、桜の木の上の私。 |
涙など出なかった。 |
八坂様の気持ちを思うことなど、一度も無かった。 |
ただただ、八坂様と話したい、八坂様と出会いたい。 |
思い遣りも優しさも無く、ただ純粋に、会いたいと、諦めたくないと。 |
八坂様はどうだったのだろうか。 |
あの人は、優しい。 |
それは、桜の息吹を通して伝わってきた。 |
でも。 |
あの人は、あの人は、優しさに囚われる事は無かったんだ。 |
あの人は、私のために会いに来たなんて、ただの一度も言わなかった。 |
あの人はただ、あの人が私と話をしたいという、ただその思いのためだけに来てくれた。 |
嬉しかった。 |
嬉しかった。 |
どうしようも無く、嬉しかった。 |
自分の気持ちのままに。 |
私と八坂様の、そのふたりが、同じひとつのものを求めている気がした。 |
この桜の上の体は、私のもの。 |
その桜の下のあの人の体は、あの人のもの。 |
だから私は、私の体を諦めない。 |
八坂様も、きっと、きっと最期まで・・・・・ |
最期まで私と、桜の森の満開の下で話したいと願って・・・・・ |
青い二匹の蝶が、彷徨い、誘っていく。 |
『折角の桜よりも、書物の方が大事か?』 |
『桜も書物も大事です。』 |
『そして、貴方と話すのも楽しそうだ。』 |
名家の跡取りで、そのうえ病弱で。 |
自由になるものが少ないのに、八坂様は、なにひとつそれらのものを捨てなかった。 |
すべてを大事に、大切に、慈しんでいた。 |
そして、その場所から、すべてを楽しんでいた。 |
ああ 思い出すまでも無いほどに それは当たり前なあの人の姿 |
気づけばあの人は、枯れ木林の絵の中にいた。 |
枯れ木に花を咲かせて、またそれを見たかったのだろう。 |
その絵の中のあの人は、実に寂しげに、けれどなによりも楽しそうだった。 |
一緒に、旅に出よう。 |
その絵を持って、私は各地を旅して回った。 |
色々なものを、一緒に見て回った。 |
八坂様が何処にいようと、それは同じ。 |
絵の中にいようと、桜の向こうにいようと。 |
何処にもいないようにしかみえなくても。 |
あの人は其処に、ずっといる。 |
綺麗だ。 |
巳弥は俺と似ている。 |
俺は立ち竦んでいる。 |
立ち竦みながらも、こうしてずっと、塔子さん達と一緒に幸せに生きたいと思い続けることが出来ている。 |
桜の中から見た塔子さんの姿も、桜の向こうにいる塔子さんも大事だ。 |
否定するものなんて、なにも無い。 |
だから、桜の向こうの塔子さんに会いにいくためにも、俺は桜の中から見る塔子さんの悲しみも、 |
ちゃんと見つめていこう。 |
その塔子さんの悲しみを、未だ見つめることしか出来ない、その弱い自分を受け入れながら。 |
巳弥、俺は諦めないよ。 |
俺も、この絵は好きだ。 |
この絵を捨てることも焼くことも無いよ。 |
だって、その絵の中に八坂様はいるんだから。 |
巳弥と同じく、絵の外に俺達の姿をみつめている、その八坂様がいるんだから。 |
そして。 |
八坂様は、たとえその絵が焼かれたとしても。 |
この世界から消えることは無い。 |
八坂様は、ずっと其処にいる。 |
だけど、桜を、咲かせてみたい。 |
絵の外と内を繋ぐ、その大切な、大切な、愛しい桜の絵を、咲かせたい。 |
八坂様が、俺達を求めるその手をあんなに伸ばしてる。 |
桜を、描こう。 |
綺麗に、美しく、盛大に、愛しく。 |
どこまでも、どこまでも広がる、その優しい世界を。 |
八坂様の、桜の存在そのものが、俺達には優しいんだ。 |
俺にとって、塔子さんと滋さんは・・・・ |
俺は・・・・ |
いつかきっと、この桜を越えてふたりと出会えると、この桜の優しい彩りの中で感じるんだ。 |
塔子さんと滋さんが、其処にいる。 |
『この絵が俺の力を吸い取って枝を伸ばしたのは、もう一度、君に会うために花を咲かせたかったのかも』 |
優しさと思い遣りを越えて。 |
消滅を、越えて。 |
巳弥。 |
八坂様は、君に会いたかったんだよ。 |
桜が。 |
桜こそが、君と出会わせてくれたのだから。 |
そして、だから。 |
八坂様は、その優しい桜を乗り越えて、君に会いたいと、思っているんだよ。 |
「巳弥は、本当のことを話せたかな。」 |
話さなくても、わかる。 |
巳弥も、八坂様と、会いたくて、話したくて、堪らないってことが。 |
俺も・・・ |
いくよ。 |
塔子さん達と一緒に。 |
沢山の人達の犇めく、この桜舞う世界の中に。 |
人も、妖も、関係無いよな、先生。 |
これだけ引っ張って、その結論かい! |
もたもたしてると置いてくぞ。 |
にゃん! |
◆ 『』内文章、アニメ『続夏目友人帳』より引用 ◆ |
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-- 090303-- |
|
|||||||||||||||
■■ まりあしばり ■■ |
ごきげんよう。 |
今日は、マリみてについてお話させて頂きたいと思います。 |
・・・・。 |
なんか上品にかちっとお話したかったんですけれどね、やめやめ。 |
気が乗らない。 |
乗らないっていうか、肩の力入れすぎ。 |
そうなんですよね、それ、それが言いたかった。 |
マリみてっていうとね、こう、どうしても私的に力と気合いが入っちゃって、まるでストレッチ無しで運動 |
始めちゃってあちこちぎしぎし言い始めちゃってるというか、不自然極まり無いほどにかちこちなんです。 |
緊張しすぎですから。 |
マリみて大切にしすぎですから。 |
うん、そりゃーあなた、第1期第2期のときは、死ぬかと思ったもの。 |
なんでってそりゃ、興奮しすぎ熱くなりすぎでですよ。 |
マリみて熱高まり過ぎて、もうなんか誰にも止められないうちに息の根が止まりかけちゃってたんですね、 |
あの頃は紅かった、いや、白かな、黄はあんましかな。あ、でも青信号はすごかった。 |
なんの話かわからない人は、わからなくても大丈夫なのでついてきてくれるとありがたいです。 |
そうね。 |
そういう感じでね、もう滅茶苦茶。 |
いや、あの頃は無茶苦茶で、だけど、こう、なんか真っ直ぐにどこかに飛んでいけてたんです。 |
私が感想を書く作業の中で、マリみての感想を書いてたときが、たぶん一番楽しかったと思う。 |
我を忘れて書きまくって、熱くって、どんどんどんどん新しいものが開けていって。 |
それがね、私にとって大切な思い出、いやいや、リアルな宝物として、すっごい私の胸の中にあったん |
ですね。 |
それがですよ、四年ぶり?五年ぶりに続編がこうして出た訳ですよね。 |
これが興奮せずにいられようか、いやいられない。 |
だからね、落ち着け私、落ち着け、みたいな感じで、冷静に冷静に冷静を重ねて、まず真っ直ぐに |
今の自分で向き合ってみようって思ってね、そしたらですね、逆に固くなっちゃって。 |
まったく、もしかしてこれ、昔の自分に素直にかえっちゃってもいんじゃないの?、ってこの頃思ってね、 |
この間私が書いた、昔の感想をぞろっと久しぶりに読み返してみたのよ。 |
そしたらさ。 |
泣いたんですよ、こいつ。 |
涙が止まらなくなってやんのですよ、こいつ。 |
うーん。 |
今は確かに、あの頃の自分と同じような文章は書けません。 |
あの頃が若気の至り(ってもまだ数年しか経ってないけど 笑)だからこそ青々しく書けたとか、逆に今は |
老けて小さくまとまっちゃったから書けないとか、そういう風に思うことも勿論あるんだけど、さらに逆に、 |
あの頃はひとつの事にじっくりと腰を据えて真っ直ぐに書くことが出来たとか、今は色んなことが同時に |
見えてそれに耐えることが出来るようになったからこそ色々なものを書いていくことが出来る、そういう |
風にも考えるんですよね。 |
過去を美化するもしないも、それぞれにメリットがあるし、今の自分に自信を持つも持たないも、やっぱ |
りそれぞれにメリットがあるって。 |
うん。 |
どう考えても、やっぱり泣けるのよ。 |
ああ、あの頃はこんなに清々しく思い切り書けたのか(同時に今の自分には無理だ悲しいなぁ)って感じ |
で涙が出てきたり、そして、ああ、あの頃と比べて今の自分は色んなことが見えてるなぁ頑張れてるなぁ |
(同時に上手く書けてなくて苦しいのに良く踏みとどまっているよまったく)って感じで、やっぱりどうしよう |
も無く涙が出てくる。 |
そしてその涙は、あっさりと、混じって、訳のわからない、とんでも無く重い涙になってくる。 |
嬉しいような悲しいような、悲しいような嬉しいような、 |
もうね、マリみてってだけで、震えてくる。 |
なんだろこれ、愛?愛なのこれ? |
なんか違う気がする。 |
てか、愛なんて知らない。 |
愛なんて言葉を、私はただ愛という言葉で書くことしか出来ない。 |
でも、それは愛と名付けられたもの範囲が、私には狭すぎるからなんじゃないかな。 |
私は、愛という言葉を書かなきゃ愛を語れない、のじゃ無く。 |
私は、愛という言葉を必要としないほどに、愛に染まってただ書いてる。 |
愛とはなにか、ということを書くことなんて、私には出来ないし、全然興味も無い。 |
私はただ、愛するままに、愛なんて言葉を書く暇も無いくらいに、ただ愛しているだけ。 |
だけど、こうして今、何回も愛愛書いてる、愛愛五月蠅いのよ、てか愛愛ってなんか間抜けな響き(笑) |
うん、愛って、書いちゃうんだよね、どうしても。 |
私はどうしても、自分のしてることを、言葉にして書き表さなくちゃ済まないんだよね。 |
ぶっちゃけ、マリみての事を愛してるからこんなに興奮してた、って言ったら嘘かもしれない。 |
だって私は、ただただ愛のままに、祐巳さん達という「私」になって、ただただ書いてただけなんだもん。 |
それは、祐巳さん達への私の愛のままに書いた訳じゃ無いよ。 |
だって、語弊のある言い方だけど、私は祐巳さん達自身になって書いてる訳だから、それだと祐巳さん |
が祐巳さんというキャラへの愛を語っているって事になっちゃう。 |
だから違う。 |
祐巳さんは、ただ誰かを愛するままに書いている。 |
あ、まだ祐巳さんでは書いてないですけどね、祐巳さん投入のタイミングを掴めなくて、おろおろしてます |
けどね私。 |
だから、私はべつにマリみてそのものへ想いとか、或いはマリみての評価とか、そんなの微塵も考えて |
書いてなんかいないんです。 |
それが、かつてのあの私のマリみての感想群の本質。 |
だけどね。 |
愛があるのはほんとでしょ。 |
マリみてという作品自体に対する、この私の深い愛が、想いが、私にはすっごいあるよ。 |
久しぶりに出会ったマリみては、今の私にとっては、耐え難いほどに大きなものでした。 |
目を逸らせないんですよ、なんかもう、全部受け止めて受け入れたくて堪らないんですよ。 |
昔みたいにはいかなかった。 |
というより、なんつーかもう、今の私に出来ない訳が無い、いやそこまではまだいけないけど、少なくとも |
、今の私はそれに挑戦せずにいられる自分を許してなんていられなかった。 |
なんかもう、マリみてへの愛が、堪らない。 |
落ち着いて、ひとりひとりのままに書き出すだけじゃ、もう全然、全然足りないよ。 |
確かに、昔みたくひとりひとりのままにぞっくりと書き出すことが出来ないがゆえに、そうやって自己正当化 |
を図って言っているだけかもしんない。 |
というか、そうかもしんないっていうより、そうだよ、それは確かにあるよ。 逃げたいよ、逃げてるよ。 |
だけど、私はその逃げを有効活用したい、っていうか、それを活用してでも色々なものをやりたい、 |
そういう風に沢山のものに手を伸ばすことが、今の私は出来るようになった。 |
昔はただ、諦めるしか、切り捨てるしか無かった。 |
そして、諦めて、切り捨てて、ひとりひとり抽出したその純粋なものの、力強い美しさみたいなものが |
自分の中にはあった。 |
でも、でもさ。 |
少しずつ、少しずつ、そのことに足り無さを感じていたことに目を向けられるようになってきて、というか、 |
それは、そうして書いていた頃からずっと感じていたもので、だけどそのときは今の自分に出来ることを |
やろうという意識で、それからは一歩距離を置いていたんだ。 |
でも、段々と出来るようになってきた。 |
色んな作品と出会って、沢山感想を書いてきて、自分の本当にやりたかったことに少しずつ近づいて |
来れている事を感じてた。 |
文章は、書いてる物自体の満足度は、逆に相対的にどんどんと下がっていったけどね。 |
読み返して、顔が青くも赤くもならないような、思い入れが弱いものがどんどん出来ていった。 |
苦しかった、辛かった・・・・と思うたぶん。 |
でも、今は。 |
それで良かったんだってことが、やっと、わかった気がした。 |
マリみて第4期と出会って、そうして感想を書いて、それですべてがわかったんです。 |
ああ、愛だ。 |
愛じゃん、これ。 |
どんなに変わっても、どんな上手く書けなくても、気持ち良く書けなくても。 |
作品への私の愛は、想いは、こんなに激しく変わらないほどに、あるじゃんか。 |
マリみてへの愛を語る必要なんか無い。 |
マリみての、各人物ひとりひとりのままに真っ直ぐに書けなくてもいい。 |
ただ。 |
ただ。 |
マリみてへの愛のままに、書ければ、それが、いい。 |
うん。 |
私、が此処にいた。 |
祐巳さんでも、祥子様でも、志摩子さんでも、瞳子でも無い。 |
聖様でも、乃梨子でも、由乃さんでも無い。 |
私が、こうして書いている。 |
なにかへの愛のままに、こうしてマリア様の空の下で、一生懸命に書いている。 |
ああ、これだ、って、思った。 |
馬鹿みたいに、ぽかんと口を開けながら、そう思った。 |
なにそれ、そんな当たり前の事に、私はずっと気づかなかったの? |
なんで前のシーズンのときに、あんなに聖様に拘って書き綴ったの? |
それは別に、聖様という人間を分析して、思想体系を編みたかったからとか、そんなんじゃ無い。 |
聖様が、好きだったから。 |
だから、聖様を使った。 |
聖様への愛を語った訳じゃ無いよ。 |
聖様への愛のままに、私は私のなにかへの愛を、聖様を使って語ったんだよ。 |
志摩子さんで語ったのはなぜ? |
聖様の事が好きな志摩子さんが、同じく聖様の事が好きな私と同じだったからでしょ。 |
そして同時に、聖様が志摩子さんの事が好きだったからこそ、私も聖様と一緒に志摩子さんを考えよう |
と、そのためには、聖様と私の立場からでは無い、志摩子さん自身の立場と本当の眼差しを感じて |
考え出したかったんでしょ。 |
だから私は、聖様にも志摩子さんにもなったし、私では無い聖様と志摩子さんを書き出すことも |
出来た。 |
同じ、同じなんだ。 |
第4期になって、マリみてはだいぶ変わったと思う。 |
正直、過去の作品に対する私の美化行為と関係無く、この第4期には決定的に、なにか美しく力強 |
いものが欠けている。 |
だけど、変わらないんです。 |
これが、マリみてだってことは。 |
だって、どうみたってこれ、マリみてじゃないですか。 |
第3期がOVAということで観れなかったのが、かえすがえすも残念。 |
もし観ていたら、もっと簡単に第2期までとの地続きを感じられて、こんなに混乱することは無かったかも。 |
だけど、だけどさ。 |
逆にいえば、マリみてはちゃんと第1期から続いてるのは、事実なんだよね。 |
私はただ、あまりに久しぶりに会ったから、その途中の、マリみての成長過程が観れなかったから、 |
ただその変貌ぶりにだけ驚いて、本質的な、なにも変わっていないマリみてらしさに実感を持てなかった |
だけなんだよね。 |
やっと、その実感が持てましたですよ。 |
全然思ったものが書けなくて、筆の滑りは勝手に滑ってしまうほどに上滑りな言葉ばかりを書いて |
しまい、全然、全然、キャラ自身に肉薄出来なくて、苦しくて、辛くて、なのに。 |
なのに、こんなに、楽しいだなんて。 |
これはもう自己正当化とか、そんな次元の話じゃ無いよね。 |
本質的に、根源的に、マリみてと向き合って、必死に考えて、良いものが書けたり書けなかったり、 |
嬉しかったり悲しかったり、そういうマリみてとの触れ合いそのものがある楽しさは変わらなくあるんだ。 |
勿論、その楽しさを得ることが目的だって言ったら、大嘘になる。 |
口が裂けたって、それだけでいいだなんて言わないよ私は。 |
聖様に、志摩子さんに、あと瞳子あたりに誓って、そんな事は絶対に言わないよ。 |
だってさ、楽しいから、こんなにもマリみてが其処にあるだけで楽しいんだから、だから、その楽しさの |
ままに、真っ直ぐに私が求めるものを必死に書いていけるんじゃん。 |
私は、過去の自分を否定したりもしないし、今の自分を卑下したりもしない。 |
逆に私は、過去の自分を美化したり、今の自分の誇りに閉じたりもしない。 |
だって、そういうの全部、ほっといたら平気でしようとするのが、私なんですもん。 |
私はもんのすごいロースペックな奴ですから、野放しにしたら超危険だよ、超。(笑) |
だから、そうならないように、そうしないように、からっときちっと頑張る。 |
それが、私。 |
そして、そんな私のちっぽけな頑張りで踏みとどまれるほど、私のロースペックさの底は浅く無い。(ぇ) |
私がその踏みとどまる事自体を目的にした時点で、私はあっさりと私に喰われちゃう。 |
強さとか美しさとか、それってたぶん、弱くて醜い自分自身と戦い続けること、或いは戦い続けることが |
出来ること、それら自身には無いと思う。 |
だって大体、戦うこと戦い続けること自体を目的にして戦うことなんて、私にゃとても出来ないし、そんな |
ことしたいなんて全然思わないもの。 |
強さとか美しさを求めるっていうか、強さとか美しさを求める自分のままに、ぞっくりと感じるままに生きて |
戦っているだけだもん。 |
だから、そこに戦うこと戦い続けることに意味と価値が出てくるのだし、そうした自分のままに戦わないで |
、ただ戦うこと戦い続けられること自体を目的にするのって、それってただ、その自分と、そしてなにより |
戦うということ自体から逃げてるだけな気がする。 |
うん。 |
マリみての感想だってそうよ。 |
こんなに楽しいんだから、書き続けるだけでOKよ、書き続けることに意味があるのよいうたら、それって |
なんか、すっごい変。 |
だって、こんなにマリみてのこと好きなんだよ? |
好きなら、一緒にいられるだけで幸せとか、なにカマトトぶってんのよ、それ以上のことすんのが怖いだけ |
でしょ、それ以上のことを求めてないなんて嘘嘘、それを求めてもロースペックな自分がそれに溺れて |
求めるだけになってしまうのが怖いだけだからっしょ、相手を傷付けてしまうからとか、相手のせいにすん |
なよ、もっと素直になれよ、なろうよ!、みたいな。 |
一緒にいられることの楽しさ幸せを否定なんかしない、否定してるのはむしろ、その楽しさ幸せだけで |
いいと言ってる方なんじゃないかな。 |
その楽しさ幸せさ以外を求める事が怖いからこそ、その楽しさ幸せを盾にしてるんだから、その楽しさ |
幸せさを侮辱してることに他ならないっしょ。 |
だから、祐巳さんあんなに頑張ってんじゃん? |
ほんとに一緒にいられる楽しさ幸せさを感じているからこそ、それを本当に大切にしたいからこそ、 |
それだけを抱き締めて他の事を無視することにそれを利用としている、そのロースペックな自分と向き |
合おうとしてんじゃん? |
その先に、その先にこそ、瞳子はいるんよ。 |
祐巳さんが、祐巳さんだけが獲得した、瞳子の側にいられる幸せを抱き締めてたって、そんなのは |
見事に瞳子を置き去りにした、祐巳さんの完全な自己満足にして瞳子からの逃避にしか過ぎない。 |
瞳子なら、あの冷厳な瞳子なら、それを完璧にはねつけるし、それって当然のことよね。 |
そうやって、私は今、ガンガンとマリみてに感化されてる。 |
元々自分の中にあるものと、ある程度わかっていてもまだ良くわかっていないもの、それを思い切り |
マリみてにぶつけて、一緒に考えて、感じて、書いて。 |
それって、楽しいよね。 |
その楽しさを目的になんかしてないから、こんなに楽しいんだよね。 |
わくわくする。 |
ぞくぞくする。 |
だからいくらでも、手を抜ける自分も許せちゃう。 |
うん、どんなに上手く書けなくても、上手く書こうとするために、ほっと大きく息を吐いて、その上手く |
書けなさを許せちゃう。 |
上手く書けないことが目的なんかじゃ無い。 |
それを目的にしてない、あくまで上手く書こうとする自分のままに書き続けられるから、だよ。 |
もっと広く、もっと深く。 |
もっと、長く。 |
本当にマリみてのすべてを受け入れたいからね、私は。 |
本当に自分のすべてと向き合いたいからね、私は。 |
だからこそ、かつて私はマリみての一部分にだけ目を向けて頑張った。 |
だからこそ、今の私はロースペックな自分のままにもその境地からでも生きられる。 |
マリみてのすべてっていうのは、「マリみての一部分だけしか見ないということ」も含んでる。 |
私のすべてっていうのは、「ロースペックな自分のままに自堕落に超危険に生きること」も含んでる。 |
そういうものも生きられなくちゃ、そういう自分を押さえ込んでそういう自分にならないように踏みとどまって |
いるだけじゃ、それはそういう自分を生きること怖くて出来ない、その自分から逃げてるってことだし。 |
勿論だから、そういうロースペックな自分にあっさりと鉄槌なツッコミを入れて、一刀両断に押さえ込む、 |
そういう自分も生きる必要があるでしょ。 |
だって私は、そういう縛りが無いとやりたい放題な、そういう弱い人間でもあるんですから。 |
その弱い自分から逃げることもまた変なんですよね。 |
だから、そういう自分を縛ってくれるものにも普通に頼りますし、神頼みだって余裕っすよ、マリア様上等 |
じゃないですか、てか、だからこそ、そうやって弱い自分も含めたすべての自分と向き合える、なによりも |
孤独であることを認識するからこそ、マリア様の存在意義があるんじゃないかな。 |
仮に、完全マリア様依存症候群でも、そういう依存万歳な自分と向き合うためにこそ、マリア様は |
いらっしゃるんでしょうね。 |
マリア様がみてるって、それが根本。 |
むっちゃ、楽しい。 |
や、嬉しいんですよね、やっぱり。 |
祐巳さん達が、一生懸命生きてる。 |
その生の中身云々は問題じゃ無いの。 |
祐巳さんの理屈がどんなに稚拙だろうと、どんなに祥子様が大魔王だろうと(笑)、瞳子がツンデレだろ |
うと(笑)、それがどういう掛け合いを演じようと、関係無い。 |
あれを見て、もうめっちゃくちゃ、沢山のものを感じてる私がいる。 |
こんなにも私に、多くのものを感じさせてくれている、あの人達がいる。 |
私は、私が認識していることの、その何百倍ものなにかを感じてる。 |
その感じたままに書き出したい。 |
感じて、書いて、支離滅裂なのに妙に平凡で、だけど、やっぱり一生懸命で。 |
あー、読み物としては駄目だなこりゃ、とかえすがえすも自分の感想を読みながら思うと、それと同時に、 |
読み物に駄目とか駄目じゃ無いとかしか言えない自分が駄目だなこりゃ、って思う。 |
そして同時に。 |
そうやって、今の自分が駄目だなとしか思えない自分が駄目だなって、それと同時に(以下エンドレス) |
だから今は、色々書いてます。 |
テストとか試しにとか実験とか、そんなじゃ無いですよ。 |
まんまです。 |
そのまんま。 |
すぱっと、今のまんま、書いてみた。 |
狼狽えながら、緊張しながら、だけど、色んなものを拾って、ひとつひとつ、やってみる。 |
そう。 |
自信を持って、ね。 |
なんかその感覚が、あの祥子様邸でのお正月模様と繋がった気がしたよ。 |
本編の方は祐巳さん視点だったけど、感想は乃梨子でやったのは、乃梨子の方が、きっとその緊張と |
か色んなものを受け取るとか、そういうのが多いと思ったから。 |
祐巳さんが楽しかった以上に、乃梨子は楽しかったんじゃないかなぁ。 |
そしてね、だから乃梨子は自分の限界も知ったかなぁって。 |
あのね、今回のお話で、マリみては最初乃梨子が主人公として作られたっていうのに、初めて本当に |
納得したんよ。 |
そして同時に、どうして主人公が乃梨子から祐巳さんになったのかも、よくわかった。 |
乃梨子には、自分に無いものが祐巳さんにあることがみえた。 |
白薔薇が出来ないものを、白薔薇が本当に求めているのが、紅薔薇にあることが。 |
祐巳さんって、悩んで苦悩して、深く考えていくってタイプじゃ無いんですよね。 |
乃梨子はそういう感じで悩ましくナイーブに、真面目に考えていくタイプの主人公。 |
でももし、その乃梨子な主人公がマリみてをやったら、マリみてはここまで面白くは無かったと思う。 |
祐巳さんはね、アイドルなんですよね。 |
マリみてファンなら、なにを今更と言うかもしれないですけどね、マリみてって作品は、普通の少女 |
祐巳さんが祥子様とか聖様とかのスーパーレディ(笑)に憧れて奮闘する、そういう作品の体裁を |
取ってはいても、たぶん、そこに根差した面白さなら、それはあまりに平凡でありきたりなものでしか |
無かったと思う。 |
うん、マリみてはね、ほんとは逆なの。 |
聖様や祥子様が、そのスーパーな思考と感情、いわゆる内面の世界をぞっくりと深めて考えて、 |
けど、それだけじゃ足りない、それに囚われているだけの自分の不安さ、そしてなによりなにかが違う |
という決定的な違和感を見つめ直す、そのための対象として、いわば聖様達が次のステップにいく |
ための、そのための、改めてな普通の祐巳さんの存在がある、そういう作品なんです。 |
だから、乃梨子じゃ駄目なんです。 |
乃梨子は、祐巳さんを見てる側の聖様達サイドの人間ですから。 |
そして、そうやって、聖様や乃梨子達が見つめる対象としての祐巳さんがいるってことは。 |
それを見つめる、私達視聴者も、聖様達と同じ立場に立ちやすい、ってことになるんですよね。 |
この第4期になって、一気にその面が増大してる気がする。 |
そしてね。 |
だからこそ、それが出来るからこそ。 |
改めて、主人公たる祐巳さんの視点で、祐巳さんで感想を書くことにも意味があるような気がするの。 |
祐巳さん難しいよーこれは。 |
普通に書いたら、ただ稚拙な理屈とそれに振り回される感情しか書けないもの。 |
でも大事なのはそこなんだよね。 |
稚拙な理屈に振り回されてそれに振り回されるだけの、そのロースペックで、あまりに普通な祐巳さん |
こそを生きてみる必要がある。 |
その境地からこそ、いやいや、あの祐巳さんだからこそ、弱い祐巳さんだからこそ、その中からぐずぐずに |
なってでもなにかを導きだそうとする、あの祐巳さんが面白いんじゃないのかな。 |
だって、私だって祐巳さんの立場になって瞳子を見つめて立ったら、とてもじゃ無いけど、瞳子の感想 |
を書いてるときのような瞳子の意識で、瞳子のために行動することなんて出来ないもん。 (笑) |
祐巳さんは普通ゆえに、だからあの状況では、驚くほどに私達視聴者と繋がりやすい。 |
瞳子の立場から瞳子の事を論じるだけでは、意味が無いんですね。 |
そのことを、今回は乃梨子を使って書いてみたんです。 滅茶苦茶でしたけど。 |
祐巳さんの立場から瞳子を見つめてこそ、意味がある。 |
勿論、祐巳さんの立場からこそ、瞳子の立場を考えていくことに、最大の鍵がある。 |
それはでも決して、祐巳さんが祐巳さんの立場で出来ることだけやればいいって意味じゃ無い。 |
それを目的にしたら、なんか違う。 |
稚拙ですよ、びっくびくですよ祐巳さんは。 |
でも誰もが、祐巳さんの立場から始まってくんですよね。 |
そして、祐巳さんの場所からでさえ、瞳子の姿があんなにはっきりとみえるんですから、もう、祐巳さんは |
自分の場所に居続けることを目的にすることなんて、出来るはずも無い。 |
色んなものを沢山同時に受け入れて、それでぐだぐだになりながらも、切り捨てたりせずに、なんとか |
ひとつひとつ食い下がってく。 |
そうやって、ひとつずつ、接してく。 |
うん。 |
私も、がんばろっと。 |
祐巳さんで感想書かんと、ほんとこれ、私のマリみては終われないよ。 |
・・・・全然、終われなくても問題無いですけど。 まだまだマリみては終わらないで欲しい。 (超本音) |
で、もうひとつのマリア様作品の、まりあ†ほりっくですけど。 |
大爆笑。 |
かなこさんは全力でマリみてに謝りなさいwwww |
本当に、ミッション系女子校に放り込まれた野獣ですwwハンターすぎるwww |
マリみてとまりほりを同時期に放送する事を狙ってやった人、いらっしゃいましたらグッジョブwwww |
マリみて観たあとのまりほり、まりほり観たあとのマリみての相乗効果が尋常じゃ無いですww死ぬwww |
コスプレソングww生徒会長に狙いを定めつつ副会長までも視野にwwwもはや萌えメーカーww |
どんだけ守備範囲広いのwwどんだけ臨機応変に萌えに変換出来るのよwwwお腹痛いww |
鞠也さんと茉莉花さんのツッコミも最高に効いてて、もう笑いが止まりません。 |
もはやかなこさんはヨゴレ役とか言うレベルじゃ無いですよね。 |
百合狂いwwいや色狂いwwwもうそんななにかですwww |
萌えのためには全方位でなんでもしちゃう、どんな理屈も屁理屈も自己正当化もわっしょい、欲望に |
忠実、うん、最高www もうなんかかなこさん色々本格的にヤバイ事言ってますけどもう知らないwww |
本当に、申し訳御座いませんっ! ←マリみてに土下座しながらwwww |
・・・・かなこさんだと、そこから目線を上げて「あ、いいアングル。」とか平気で言い出しそうですけどww |
だが紅い瞳はそんなハイスペック(悪い意味でww)なかなこさんを応援します♪wwwもう知らないww |
という感じで、今日は終わりです。 |
うはー楽しー♪ (どうなのよこれw) |
んでは、また次回。 |
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■■マリア様の真っ白な言葉■■ |
『 でも、自分の気持ちを偽ることは、良いこととは言えないと思います。』 |
〜マリア様がみてる4thシーズン・第八話・乃梨子の言葉より〜 |
瞳子のやつ、瞳子のやつ、瞳子のやつ。 |
恥ずかしさで頬が引きつり、怒りが胸を真紅に染めた。 |
張り詰めた空気が喉を通るたびに、敏感に反応してしまうほどに、しんと静まる頭があった。 |
頭の中がぐちゃぐちゃだ。 |
そのぐちゃぐちゃという言葉がなんの意味も表していない。 |
なにがぐちゃぐちゃよ、落ち着け、落ち着け私。 |
そうやって、そのぐちゃぐちゃの中身を一生懸命に考えるたびに、私は呆然と私を見失っていく。 |
さらさらと焦げるようにして、涙が瞳に堪っていく。 |
わからない、私は私のことがわからない。 |
わからないということの内実に指が伸ばせないほどに、怒り狂っていた。 |
静かに、ぞっとするほどに。 |
もし私の髪が私の中に広がって伸びているとしたら、きっと天を衝くほどに逆立っているだろう。 |
私らしさも何も無い。 |
なのに、私の貌は黒く無表情を刻んでいる。 |
瞳だけが仰々しく、震えている。 |
そうだ、私をみよう。 |
震えている、私をみよう。 |
私は私の内面から目を逸らして、私の姿をみる。 |
落ち着かない、不安だ。 |
でも、なぜか安心する。 |
自分の内面をしか見つめない自分に、怒りを感じる。 |
だからそうして、落ち着かないながらも、私は私の姿をみる。 |
今の私はどうなっているのか、どうみえているのか。 |
自分の内面の世界を考えないと、不安になる。 |
今すぐにでも自分を解剖して、赤裸々に言葉で自分の見ているものを綴ってみたい。 |
それは、衝動。 |
なのに、なのに。 |
やっぱり私は、その衝動を衝動という言葉でしか私の言葉に刻むことが出来ない。 |
どうしてだろう、志摩子さんと話すときは、あんなに素直に深く私の中に根差して語ることが出来るのに。 |
どうしても、瞳子のこととなると、私は私の中身を放り出して、瞳子の瞳に映る私の姿をこそ見つめて、 |
ぼろぼろになりながらも踏みとどまってしまう。 |
それがとても、安心する。 |
落ち着かないのに、安心する。 |
どうしてだろう、どうしてよ。 |
私は私に問い掛ける。 |
もう滅茶苦茶よ。 |
落ち着かない、怖い、不安だ。 |
なにもわからない、なにも出来ない、どうしよう。 |
どんどんと、言葉が貧しくなっていく。 |
まるで力を失っていくかのように、私の語彙は貧弱を極めていく。 |
どうしても口籠もってしまう。 |
恥ずかしい。 |
思っていることが上手く言えないんじゃ無い。 |
思っていることが全部、単純で短絡な中身の無い言葉に変わってしまうんだ。 |
でも。 |
でも。 |
安心する。 |
そうでなければいけない気がする。 |
なんだろう |
なんだろう |
私はなにを求めているんだろう |
それがずっと、続いている |
志摩子さんと向き合っているときの私と |
瞳子と向き合っているときの私が |
ひとつに、ずっと続いているのが、みえた |
〜 勢いのままにしどろもどろに やがて華やかに 〜 |
そのままずっと考えている。 |
潤いも乾きも無いままに、肌の感触もなにも感じ無い真っ白な世界。 |
志摩子さんとは、いつも変な話ばかりしている。 |
でもそのときは、変な話だなんて思うことは無い。 |
勿論、これは一般的に見れば変な話だけど、でも私と志摩子さんの世界の中ではこれが普通なの、 |
なんて、そんな事すらも思ったことは無い。 |
変とか普通とか、そんなものは全部頭には無く、そして私らしさなんていう意識も無い。 |
ただただ、感じるままに考えるままに、純白の世界に色を灯すようにして語り合う。 |
でもそれは、言葉の文字数からしたら、饒舌にはほど遠い会話の中身だったりする。 |
大概の場合、志摩子さんと私は、交わす言葉以上のものを持って通じている。 |
私達ふたりにとって、だから言葉は、ある意味対外的なものなのかもしれない。 |
だから、殊更に周囲を意識した変とか普通などの単語を使う必要が無い。 |
そして、瞳子の前に立つと。 |
志摩子さんとの話が、とても変で、普通では無いという意識に染まってしまう。 |
それが良いことなのか悪いことかに関係無く、私はいつもそこで戸惑ってしまう。 |
別に志摩子さんとの事が恥ずかしいだなんて思わない。 |
でも、逆に、志摩子さんとのやり取りのままだけで、瞳子と向き合おうとしている自分に、腹が立つ。 |
もし、これも逆に、瞳子の目の前で感じたおかしさのままに、志摩子さんと向き合ってしまったら、 |
私はきっと自分を許せなくなってしまうだろうから。 |
私にとって、志摩子さんとの時間は、私そのものだ。 |
それを否定するなんて、あり得ないし、自分が志摩子さんと話すことが変とか普通じゃないとかいう |
意識で受け止めることしか出来なくなれば、それは私による私自身の否定に他ならない。 |
そんなこと出来る訳も無い、絶対にする訳無い。 |
だから、同じように、瞳子との時間も、志摩子さんとの時間とは取り替えようの無い、大切な時間。 |
瞳子のやつ 瞳子のやつ 瞳子の奴!! |
私は怒っている。 |
私は志摩子さんと触れ合う、あの白い世界の中でひとり色彩を付けていく、その白薔薇の私のままに |
瞳子に腹を立てている。 |
瞳子を我が儘とは思わないし、祐巳様があそこまで想ってくださっているのにそれに応じない瞳子の |
無礼さに腹を立てる、なんて事もあり得ない。 |
祐巳様は関係無い。 |
関係無いからこそ、瞳子自身が、瞳子こそはどうなのよ。 |
いつまで祐巳様の不実を詰っているのよ。 |
いつまで自分の布いたルールに囚われているのよ。 |
あんたはなにを求めてるのよ。 |
あんたが求めてるものに、もっともっと根本的に本質的に忠実になりなさいよ。 |
そのためにルールがあるんでしょ、あんたがそのルールを使う主体的な女にならなくてどうするのよ。 |
祐巳様がたとえ本当はいい加減でだらしない人だとしたって、あんたはどうなのよ、瞳子! |
私はいつも、そう胸の中で叫んでいる。 |
この怒りは尽きることは無い。 |
それが、私が志摩子さんとの対面で得た、私の言葉。 |
私はその私の言葉に誇りがある。 |
私だけが得た、私と志摩子さんの共有する言葉。 |
それを否定することなんて、絶対に無い。 |
そして、だから、その誇りのままにこの私の言葉を瞳子にぶつけることの、その浅ましさを私は瞳子との |
時間を重ねるうちに理解していったんだ。 |
瞳子にも、瞳子の言葉があるんだ。 |
志摩子さんのタイプのような人なら、たぶん、私の真っ白な言葉をそのままぶつけられても、それと |
向き合って立つ自分のままに強く生きていけるんだろう。 |
でも瞳子のようなタイプの人は、そういう事が出来ない。 |
いや、違う。 |
瞳子は、もう、私の言葉を消化済みなんだよ。 |
志摩子さん、私思うんだ。 |
瞳子はきっと、私達と同じように自分の内面の世界について、沢山深く考えることの出来る子だって。 |
話していてわかるもの、あいつはすごく賢いし、自分の考えたことを実践する力がとても高いんだもん。 |
だけど、ね・・・・志摩子さん・・・ |
あいつ・・・瞳子は・・・・ |
たぶん・・私と志摩子さんが求めてるようなものよりも・・・・・ |
ずっと・・・・ずっと・・・・・沢山のものを・・・・求めているんだよ・・・ |
だからきっと、私が言うような言葉じゃ、たぶんそれよりも遙かに深い言葉を瞳子は綴ってきたかもしれな |
いけど、けど、それじゃ全然足りないんだ・・・・・足りなかったんだよ・・・・・絶望的に・・・ |
瞳子・・・・・瞳子・・・ |
欲しくて、どんなになっても欲しくて、諦めたくなくて。 |
志摩子さん・・・・私は・・・ |
瞳子は、諦めなかったんです、なにひとつ。 |
本当に、すべてを諦める訳にはいかなかったからこそ、大切なもののために、死ぬほど踏み留まって |
きたんです。 |
自分の内面をみつめて、考えて、それだけではそれらのものを得ることも守ることも出来ないと知って・・ |
それでも諦めなかったんだ・・・ |
自分の内面の世界での決着ということにもしない、自分だけが利用可能なものにしようだなんてことも |
瞳子はしなかったんだ。 |
瞳子は、祐巳様をみてる。 |
瞳子は、祐巳様の瞳に映る瞳子の姿をみてる。 |
そして瞳子はなにより、瞳子の瞳に映る、その祐巳様の姿こそを捨てたりなんかしたく無かったんだよ。 |
瞳子は、祐巳様に、私みたいに自分の世界の言葉で人と向き合う、そういう人になって欲しくなかった。 |
私の言葉は、こと祐巳様の事に関して以外は、瞳子にも有効だった。 |
瞳子は、私の言葉も充分利用可能な、そういう質の高い人間だ。 |
でもそれは、私が瞳子の友人だからなんだ。 |
瞳子は、祐巳様を友人として求めている訳じゃ無い。 |
志摩子さん。 |
私ね、志摩子さんを見てて、私とは違うところがあることに気づいたんだ。 |
志摩子さんは、祐巳様達御親友の人達の言葉も、私の事に関しても受け入れることが出来るよね。 |
由乃様の強引な御言葉も、祐巳様の軽い御言葉も、それで色々と私との関係について口出しされ |
ても、それを真摯に受け止めつつ、志摩子さん自身の言葉を否定することも無く出来ているように見え |
る。 |
もし私が、瞳子と逆の立場で、瞳子にズケズケと物を言われたら・・・ |
たぶん私は、その言葉を聞くことは出来ても、それを自分の言葉に変換して受け取ってしまうだけの、 |
そんな狭い強さしか得ることは出来ないと思う。 |
志摩子さんは、祐巳様達の言葉から、志摩子さんの言葉とは違う力をあんなに得ているのに、私は・・ |
志摩子さんには祐巳様達がいらっしゃるのに・・・私は・・・・ |
だから私・・・・みえるんです・・・ |
瞳子が、今、独りで佇んでいるその姿が・・・ |
そしてきっと。 |
私のみたその瞳子の姿と、瞳子自身がみた瞳子の姿が全然違うということも、みえたんです。 |
祐巳様じゃなくちゃ、駄目なんです。 |
私と同じの祐巳様じゃ、駄目なんです。 |
紅く、紅く、すべてを情熱的に受け入れていく、紅い薔薇のように。 |
私は祐巳様と代わることは、あらゆる意味で出来ない。 |
どんなに私が瞳子の内面を考えて感じて慮っても、そんなことはとっくに瞳子自身がやっているのだから。 |
瞳子は、それだけでは得られないなにかをずっと、ずっと、ただ独りで求めている。 |
戦っているんです、あいつはずっと独りで。 |
私は・・・・・瞳子が・・・・・ |
なんて言ったらいいのか・・・・ほんとうに・・・・ |
私が私の中で、深みのある瞳子の世界を描いてみせても、瞳子にとってはなんの助けにもならないん |
です。 |
ましてや、私は私の出来ることをするだけで、出来ないものはしないことにするとして、白薔薇の眷属と |
して覚悟を決めたって、それは瞳子から私を奪うことにしかならないんです。 |
苦しいです、とっても。 |
でも、私はその自分の苦しさを引き受ける事こそに、私の白い言葉があるのだと思っているんです。 |
もし、本当に私の出来ることはなにかと言ったら、それは、私が私のことを見つめ、私に出来ること以上 |
の事をひたすら開発し続けていく事なのかもしれないんだ。 |
私は、瞳子のことを放っておくことなんて出来ないよ、志摩子さん。 |
だから、私に出来ることはなにも無いんだからしょうがない、出来ることだけをやるだなんて、口が裂けて |
も言えないんだ。 |
言えないよ、志摩子さん・・・こんなに・・・・・あんなに・・・瞳子は・・・・・瞳子が・・・・ |
でも、そうやって思い詰めているだけの私も、同じくらいに意味が無いんだよね。 |
瞳子が瞳子がと呟いて下を向いているだけでも、結局堂々巡りで、いつまで経っても瞳子に触れる |
ことなんて出来ない。 |
だから、志摩子さんがそっと一言、ひとりのどっしりと構えた世界を描いて魅せてくれたとき、とても落ち着 |
くことが出来るんだ。 |
瞳子には、一体私がどうみえているんだろう。 |
私は一体、瞳子をどういう風にみているんだろう。 |
ふつふつと、冷静に考えていけた。 |
少しずつ、まともになっていけた。 |
瞳子から、友人としての私を奪っちゃいけない。 |
そして同時に、瞳子から、私が友人以上になれる可能性を奪っちゃいけない。 |
正月に祥子様のお宅に招待されたとき、とても良く、そのことを感じたよ。 |
楽しかった、楽しかったんだ、とっても。 |
志摩子さんが、御親友の方々とあんなに安心しきって笑っているのが。 |
志摩子さんが、同格だけど学年の差がある他の薔薇様方と、それを踏まえた白薔薇として絶妙な付き |
合いが出来ているのが。 |
そして此処に、私がいた。 |
私は白薔薇の蕾だけど、同じ蕾の祐巳様と由乃様は学年がひとつ上。 |
私は未だにただ先輩方として敬うだけで、白薔薇の蕾として自覚を持つことが出来ない。 |
其処に、志摩子さんと同じレベルの白薔薇の私がいなかったんだ。 |
そして。 |
其処に、私の友人の・・・・ |
ううん・・・・ |
私の親友の、松平瞳子が、いなかったんだ。 |
なのに、今私は、こんなにも楽しんでる。 |
志摩子さんを、幸せそうな志摩子さんを見て、とっても嬉しくて楽しかったんだ。 |
志摩子さんと同じように幸せになれない自分をみて、とても辛かったんだ。 |
だから。 |
だから。 |
絶対に、瞳子を捨てない、諦めないって。 |
私も志摩子さんみたいになってやるって思えた自分が、とっても嬉しくて、楽しかったんだ。 |
こんなに楽しいんだもん、これを糧にしてなら、私はなんだって求められる気がした。 |
瞳子には、私が感じたそれが、無いんだ。 |
どんなに辛いだろうか。 |
どんなに悲しくて悔しいだろうか。 |
瞳子ひとりの力でどうにかなるものじゃ無い。 |
志摩子さんのようにどんと大きく構えて待っていてくれる人も必要なら、それだけじゃ無い人も必要 |
なんだ。 |
瞳子と私は違う、違うんだ。 |
瞳子の周りには、今、誰もいない。 |
どんなに孤独の世界から脱しようとしても、これじゃ孤独に耐えるしか無い。 |
でもだからといって、瞳子の側にいるだけなら、それは今度は瞳子自身が壁を作らざるを得なくなって |
しまうんだ。 |
側にいようとするだけなら、瞳子からその独りの世界から出てこさせようとするなら。 |
そして、そうしない瞳子を非難するだけなら。 |
それは、瞳子の言葉を、ひとりの松平瞳子という存在を無視することになってしまうんだ。 |
瞳子は、誇り高い女なんだよ。 |
でも、お高くとまってなんて、全然無い。 |
瞳子を高いところに押し込めているのは、他ならない私達なんだ。 |
それでいて、そこから降りてこないのは瞳子の責任だというのは、もう全然、なにもかも間違っている気が |
するよ。 |
志摩子さん。 |
私、どうしたらいいかな。 |
わからない、わからないよ。 |
だけど、なんだかとても楽しい。 |
わからなくて、わからなくて、ぐるぐるぐるぐる考えている。 |
考えることに疲れて、考えて疲れているだけの自分に失望して、それから、それから。 |
ああ、あと、そういう風にして冷静に自分を分析出来る、その自分を憎んだりもして。 |
だけど、そうして自分を憎むだけの自分に、くすりと笑いを立てることが出来る。 |
なんだろう、どうしてこんなに楽しいんだろう。 |
わからないってことが、どうしてこんなにも楽しいんだろう。 |
祐巳様なんて、なんにもわかってないのに、その祐巳様がどうしてそのなにもわかっていない自分の |
ままでいることが平気でいられるんだろうって、その理由がわからないのに。 |
それなのに私は、今、祐巳様のことをこうしてみてる。 |
じっと、みてる。 |
祐巳様が泣いてる。 |
たぶん、泣いてる。 |
でもそれは、とっても馬鹿馬鹿しい涙。 |
わからないわからないと言って、ただ泣いているだけの、自分勝手な涙。 |
そんな涙で、本当に瞳子と祐巳様の間に立つ曇り硝子を晴らすことが出来るなんて思っているの? |
むしろその涙こそが、その硝子窓を曇らせているというのに。 |
でも、でもね志摩子さん。 |
だからわかった気がしたんだ。 |
その涙を、祐巳様の瞳を曇らせている涙を祐巳様は流すことが出来るからこそ、そうしてその涙に |
映る、その曇り硝子の前で泣いているだけの、その御自身の姿を祐巳様は見つめていくことが出来る |
ようになるんじゃないかって。 |
私は、駄目だったんだ。 |
泣けなかったんです。 |
自分の涙がその硝子窓を曇らせてしまうとわかっていたから。 |
そして、私の涙がその硝子窓を曇らせてしまうことしか出来ないことに、涙が止まらなくなって。 |
なにも出来ない、なにもわからない。 |
私の真っ白な頭は、本当になにも無い、空白のわからなさで埋まってたんです。 |
でも・・祐巳様はきっと・・・ |
きっと、頭の中がぐちゃぐちゃに沢山のもので敷き詰められて、それと全部向き合うことで打ちのめされて |
しまって、それに負けて泣いてしまっていたんです。 |
それだけ、祐巳様は頭の中に紅く沢山のものを犇めかせて、たとえそれにすべて立ち向かえるほど大き |
な自分では無いのにそれに馬鹿正直に向かって、それで負けて泣いていたんです。 |
それが馬鹿なことだって、そう思ったからこそ私は泣けなかった。 |
そう思うことしか出来なかったから、私は瞳子のためになにも出来ない自分に泣いていた。 |
馬っ鹿みたい。 |
だから。 |
笑えて、笑えて。 |
笑っていたら、そのむこうに祐巳様の涙を拭く笑顔がみえて。 |
そうしたら、私。 |
泣いたり笑ったりしてる自分のままに、楽しくなってきたんです。 |
ああ、祐巳様と瞳子は、同じなんだって。 |
祐巳様の前に立って、初めて、わかったんです。 |
正直、瞳子に比べて、祐巳様が賢い方だとはどうしても思えない。 |
だけど志摩子さん。 |
そんなこと、全然問題じゃ無いんだ。 |
志摩子さんには、今更なにをと言われそうだけど、私はずっとそこで引っ掛かってたんだ。 |
祐巳様のやってること言ってること、それ自体のひとつひとつにばかり目がいってしまってた。 |
でも、それはもう、瞳子がやってることだったんだよね。 |
やって、やって、やり尽くして、祐巳様の間違いをひとつも許さずに食い下がって、なにひとつ妥協せず |
に、完璧に、真摯に誠実に、本気の瞳子はそうやってずっと、ずっと・・・ |
それでも、なにも変わらなかった。 |
変わらないという事を覚悟して、瞳子はずっと諦めずにやり続けた。 |
それは・・・ |
瞳子はただ・・・・・ |
祐巳様に、どうしてそこまで自分が妥協しないのか、諦めないのかを、その理由をこそ知って欲しかった |
からだったんです。 |
本当は、祐巳様がどんないい加減な事をしたって、瞳子としてはなんだって許せるんだと思う。 |
祐巳様が、本当に瞳子を見てくれているのなら、そう瞳子が信じられるなにかを見せてくれたなら、 |
瞳子はきっと、誰よりもなによりも優しく祐巳様に接することが出来るんじゃないかって。 |
そんななにかなんてある訳が無い、訳が無かったんです、瞳子にとっては。 |
だって、瞳子は・・・ |
なにひとつ捨てずに、なにひとつ諦めなかった人間なんですから。 |
瞳子にとっては、それは当たり前過ぎる、当然の誠実な愛なんです。 |
そんな必死で一生懸命な瞳子を、煩わしいとか、面倒だとか、まさかそこまでは思っていないでしょう。 |
でも私には、祐巳様がどうしても、そんな細かいことに拘らないで、もっと普通にいこうよと、そういう風に |
しか瞳子に向ける言葉を作っていないように見えていたんです。 |
だからそれが、気になって、どうしようも無く許せなくて・・・ |
でも、それが、今の祐巳様なんだって。 |
祐巳様は、色んなものと向き合っていて、それから目を逸らすことなんてしてない。 |
瞳子と同じです。 |
だけど、瞳子は常にぼろぼろになるまでそれと向き合い続けて、常に完璧に答えを出そうとし続けて |
いるのに、どうしたって祐巳様には余裕があって、一生懸命さが感じられた無かった。 |
それはある意味、間違っていないと、今でも私は思うんだ。 |
祐巳様はやっぱり、緊張感が足りない。 |
現時点で、既に瞳子がずたずたに傷付いているという、現在進行で祐巳様が傷付けているという |
事に、ほとんど無自覚、無責任なんです。 |
わかっていない、からなんだと思います、やっぱり。 |
瞳子にロザリオを受け取って貰えなかったのは、自分がなにか間違えたからなんだろうなと祐巳様が |
仰ったのをきいて、私は唖然としました。 |
言ってることはその通りなんです、だけど、どこか完全に他人事なんです。 |
いえ、自分の間違い、自分の犯した罪ばかりを見て、それによって誰が一番辛いおもいをしたのかを、 |
まるで見ていない感じがしたんです。 |
間違いの中身ばかり気にして、その間違いを犯し続ける祐巳様をみているのは、一体誰なのか。 |
瞳子、ですよね。 |
瞳子、なんですよね。 |
だから、わかったんです、志摩子さん。 |
私はずっとそうして、祐巳様の間違いばかりを見て、そうして祐巳様を詰り続けているばかりの私が、 |
一体瞳子にどう見られているのかを、わかろうとしていなかったんだって。 |
瞳子は、とっくの昔に、祐巳様を拒否し続ける自分の姿を見ていたんです。 |
その上で、その自分のままに、それだけでは無い自分をも必死に必死に探していたんです。 |
間違いは間違いなのだから間違いだとはっきりと言う。 |
それは紛れも無い、松平瞳子流、瞳子の流儀なんだ。 |
でも瞳子の目的は、求めているものは、その瞳子の流儀を貫徹する事なんかじゃ無い。 |
その流儀を貫徹してでも、手に入れたいものがある。 |
その手に入れたいものがあるからこそ、それに必要と思われる流儀を瞳子は開発したんです。 |
あの瞳子のやり方は、瞳子に必要なものなんです。 |
瞳子に必要で無いものなんて無いんです。 |
間違ってはいけない、けれど、間違わないだけではいけない。 |
間違っても間違わなくても、それ自体は関係無い。 |
祐巳様は、その難しい苦しみに、涙します。 |
私は、その涙を我慢します。 |
同じ、ことなんですね。 |
その、瞳子から、目を逸らさないからこそ、嫌でも涙は私達の体の中に生まれてくるのだから。 |
祐巳様も・・・私も・・・・ |
瞳子のことが、好きだから。 |
祐巳様の不用意な言葉に嫌悪する自分を感じるたびに。 |
私は、不用意なものでも瞳子に向けて作られたその言葉を生む祐巳様に、嬉しさを感じたんだ。 |
唖然としながらも、確かに祐巳様が前に進んでいるのを感じたんだ。 |
祐巳様には、祐巳様の苦しみがあるんだ。 |
瞳子と同じように私とは比べ物にならないくらいに沢山のものを見ていて、だけど瞳子とは比べ物に |
ならないくらいにそれらに対するまともな答えが出せなくて。 |
瞳子は強い女。 |
祐巳様は、弱い人。 |
なのに、どうしてかな、志摩子さん。 |
私には、祐巳様のその、弱いのに、どうしようも無く弱いのに、それなのにどんなに遠回りをしても |
瞳子から目を逸らさない、その祐巳様の圧倒的な強さが、絶対に瞳子には必要だって・・・・ |
ううん・・・・・・ |
私にも、祐巳様は必要なんだって、そう思ったんだ。 |
祐巳様は、普通なんだ。 |
だから、普通に囚われて、普通の観点に身を置くから、いつも普通のせいにして盾にして、逃げてしまう。 |
その事に気づくことも無い。 |
私は、本来なら、こういう人は大嫌いなはずだった。 |
変とか普通とか、そういうくだらない話をしたくなかったからこそ、私は志摩子さんを好きになった。 |
でも、祐巳様は、普通で、普通で、あまりにも普通で。 |
だから |
私達の前に、平等に広がっていて。 |
そして、たとえ普通に囚われていても、その普通の境地のまま、そこから真っ直ぐに私達を見つめてくれ |
たんです。 |
志摩子さんが、祐巳様と御親友になった理由がわかる気がするんだ。 |
普通だからという理由で、私や志摩子さんが祐巳様を、普通の人を嫌う理由なんてありはしない。 |
同時に。 |
祐巳様が、私達を普通じゃ無いからという理由で嫌うことも、無かったんだ。 |
だから私には、祐巳様を普通だからという理由で責める事が出来ないからこそ、そんな事とはなんの |
関係も無い、祐巳様が普通の境地から行った、その結果そのものを論じる必要が、それをみつめる |
必要がただあったんだ。 |
私の瞳に映る、その祐巳様の姿にこそ、祐巳様のみつめるべきものがある。 |
そしてそれは、私も同じ。 |
祐巳様が、私をみてる。 |
祐巳様の瞳の中に、私がいる。 |
瞳子の瞳の中に。 |
祐巳様がいる。 |
私がいる。 |
私に出来ることはなにか、なんて意味が無い。 |
私にしか出来ないことって、なんだろう。 |
私は、祐巳様をみつめることも詰ることも出来る。 |
瞳子をみつめて祐巳様は泣いてしまっても、私は我慢出来る。 |
考えて、考えて、考え続けられる。 |
祐巳様に出来ないなら、私がやろう。 |
私にしか出来ない、そのことを。 |
だから私は・・・・ |
祐巳様に、希望をみてる。 |
私には決して出来ない、祐巳様にしか出来ないことが、こんなにもはっきりと感じられるのだから。 |
私が瞳子にしてやれないことを、祐巳様は出来る。 |
祐巳様が瞳子にしてあげられないことを、私は出来る。 |
そして私自身も、祐巳様から得難いものを・・・・・ |
だから私も・・・祐巳様の助けになれるなにかを・・・・・ |
だって・・・・ |
だって・・・・・・・ |
志摩子さん・・・・・ |
志摩子さん・・・・・・・・・ |
祐巳様は・・・ |
祐巳様が・・・・・ |
瞳子のこと、諦めてないって、言ってくださったんだよ・・・・・・・っ! |
自分は間違えたって考えてくれた |
ちゃんと間違えないように瞳子と向き合ってくれた |
瞳子のこと真剣に考えていてくれた |
ちゃんと ちゃんと |
私がなんと言おうと なんの関係も無く 瞳子のことを信じてくれていた |
ごめんなさい・・・・ありがとう・・ございます・・・・ |
嬉しくて・・・すごく・・・・すごく・・・嬉しくて・・・・・ |
どんどん・・・言葉が単純になっていくよ・・ |
不思議だね、志摩子さん |
いつも志摩子さんと話してるときと、同じなんだ。 |
言葉が全然いらなくなる。 |
なにも語ったり、説明したりする必要が無くなっちゃう。 |
分かり合えるとか通じ合えるとか、そういうことじゃなくて・・・ |
むしろ逆に、ひとりを感じるんだ。 |
だけど。 |
ひとりだけど。 |
独りじゃ無いって、こんなにも、こんなにも、深く、深く感じられるんだ。 |
祥子様の家、すごかったよね。 |
まるで公園だった。 |
祥子様のお母様、なんだか信じられないくらいに艶やかで、奥ゆかしい方だったよね。 |
ふふ、やっぱり志摩子さんもそう感じたんだ。 |
あのゲームにはびっくりしたけど、とっても面白かった。 |
楽しくて、楽しくて。 |
だから。 |
そこに、瞳子がいないことをみつめている、その祐巳様の苦しみを、深く、感じたよ。 |
ああ |
私は |
普通な祐巳様の |
真面目な瞳子の |
紅薔薇の |
力になりたい |
そのための、私の世界 |
私にしかみえない、真っ白な言葉 |
ああ |
使いたい 高めたい |
みんなのために |
祐巳様の 瞳子のために |
志摩子さんもそう感じているのかな |
嬉しいな |
嬉しいよ |
その思いが嘘であったとしても |
なによりも、楽しいな |
その楽しさを糧にして、私は祐巳様と瞳子のために本当になにが出来るのかを、その楽しさを食い潰 |
す勢いで、敬虔に、ひたすらに、ふたりのために考えていきたいな、志摩子さん。 |
瞳子に |
瞳子に |
この私の感じた楽しさよりも |
もっと |
もっと |
幸せな笑顔があることを |
瞳子に、姉を思うことの出来る誠実を、伝えたい |
なにか伝えるのは、言葉。 |
言葉しか無い。 |
瞳子に、もう一度、今度こそ本当に。 |
通じる、その本当の言葉を・・・・私は・・・・ |
やるしか、無い。 |
◆ 『』内文章、アニメ『マリア様がみてる4thシーズン』より引用 ◆ |