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◆◆◆ -- 2009年7月のお話 -- ◆◆◆

 

-- 090728--                    

 

         

                               ■■ 何度でもいうよ ■■

     
 
 
 
 
 
 
 
 ・なんか一気に立て込んできてしまったので、今回は箇条書き日記。
 
 ・あ、ごきげんよう、紅い瞳です。
 
 ・というか、狼ファンというかもはや狼バカというかもはやただの狼オタクなオタクです。
 
 ・狼万歳。
 
 ・現在このオタクは、狼と香辛料についてなにか書いていられれば本望だそうです。
  私、この忙しさが終わったら、狼の感想書くんだぁ。 これはいい死亡フラグ。
 
 ・というか、忙しくても書くけど。 死ぬけど。 生きろ!
 
 ・狼万歳。
 
 ・だが某アニ○イトに、第二期開始を記念して狼グッズを探しにいったら、なにも無かった。
  商売する気あるのか! ←理不尽
 
 ・そういえば、第二期では第一期の音楽を多用しているけど、サントラは出るのやろか。
  出たら即買い。 出なかったら号泣。
 
 ・本当に、立派に狼オタクに成長致しました。 ごめんなさい。
 
 ・ていうか、ホロ万歳。
 
 ・なのに、ロレンスで書いた方がすらすら書けたという衝撃。
  というかホロですらすら書けなかったという絶望。
  ちょっとホロで修行してきます。
 
 ・狼万歳。

 

 ・狼二期開始を祝って、ブランデーを買おうとか言っといて、いざ開始になる直前に風邪ひいて、
  しばらくアルコール控えていて、そしてようやく買ってきて飲んだ結果を今更書くよ。
 
 ・ヘネシーVS: コニャック。チョコレートのような香りと細やかな味わいは良いのだけれど、もっと当たり
  の強さが欲しかった。不味くは無いんだけど、お、っと言わせるものが無い。
 
 ・ブラーソラージュ: カルヴァドス。カルヴァドスというのはリンゴ原料のブランデーの事。通常は葡萄。
  ちなみに上のコニャックというのは、まぁ、高級規格品って感じ。他にはアルマニャックなど。
  で。 ホロといえばリンゴ、リンゴのお酒と言えばカルヴァドスということで買ってきた。
  香りはカルヴァドスらしいリンゴの香りが濃くて良いのだけど、ちょっと濃すぎて鼻先が曲がりかけるギリギ
  リ。味は反対にあまり印象に残らないその濃さで押してくるので、まぁ、イマイチ。
 
 ・ゴールデンホース武蔵: ウイスキー。ついでに買っちゃった。
  ストレートだと、なんだかもやしを煮詰めた(?)ような感じで、しかもするすると飲めちゃうような感じ
  だったのが、ロックにした途端まろやかさと奥行きが出来て、舌と喉で感じるその味の溶ける感じが
  非凡な逸品。 今まで飲んだウイスキーの中で一番美味しい。うむ、いける、これはロックでこそじゃ。
 
 ・ついでのウイスキーの方が美味しくてどうする。 そりゃ飲むさ。

 

 ・本とか。
 
 ・岩井三四二「琉球は夢にて候」: 官職としては無い「琉球守」を名乗った戦国武将亀井茲矩
  の一代記。 武将としても人としても程ほどというか、評価されなくは無いんだけど評価されきられず
  、なんかほんと、いちサラリーマンが汗水たらしてそれなりに自分の目的を果たしていく感じなんだけど、
  全然サクセスストーリーというほどでは無く、この人を慕う人がいれば、それと同じ数だけ蔑む人も
  いるというか、それは好き嫌いがはっきり分かれられるという大人物ゆえの事では無く、ほどほどに敵
  も味方も作ってきただけというか、そしてそれを淡々と描くでも無し、割とそこそこ気合い入れて描いて
  いるのだけど、やってること出来たことはやっぱりそれなりでしかない、なのにそれを俯瞰的に溜息を
  つくでも無くそれで大往生という訳でも無く。 なんというか、「普段着」過ぎて逆に不思議な作品。
 
 ・鈴木輝一郎「巴御前」: なんていうか・・ノーコメント。 (ぉぃ)
  敢えていえば、巴御前についてはなにも描かれていないに等しいっていうか、これ、義仲にとっての
  ドラえもん状態っていうか、でまぁ、義仲の立場とかそういうのはなかなか新鮮で面白かったのだけれど
  、そのまま死んじゃっただけというか、なんというかこう、で、だから?、と問いたい感じな作品でした。
 
 ・高田崇史「毒草師」: 劣化版京極堂シリーズ。 劣化ぶりが尋常じゃーない。 (ぉぃ)
  タイトルに惹かれた私の悪趣味ぶりすらも叶えられない。・・・・・なんも言えねぇ。 (ぉ-ぃ)

 

 ・皆既日食とか。 勿論見に行ってません。 でもテレビ(録画)で見た。 感動した。
  あれは悪魔の仕業じゃ! (そっちかい)
 
 ・梅雨に逆戻り? 違う、梅雨は今年まだなにもやってなかった、やっと仕事し始めただけなの!
 
 ・怖い猫がいる。 最近通り道にいるのだけど、ただ座ってるだけなのだけど、なんだか滅茶苦茶威厳が
  あるのだけど。 なにかを待っている忠猫というよりは、なにかを待ち構えている狩人な目。
  ・・・・萌え。 (そうきたか)
 
 ・今週末は、モンハン3の発売日。 友人が買うそうなのですけれど、その買った足でそのままうちに
  来るそうです。 わざわざWii持って。 朝っぱらから。 というかたぶん私二日酔いで寝てる中。
  ええと、もう一度確認しますけど、なんでウチに来るの?
 
 ・ちなみに上で二日酔い言ったけど、いわゆる頭痛くて堪らんとか動けんとかそういう二日酔い方は
  経験したことが無いので、ホロの二日酔いっぷりに萌え憧れるのですけど、なんというか一応酔った
  状態で前夜寝てしまうと疲れが取れなくて次の日だるいとか、そういう感じでだらだら寝てる、という
  感じですせいぜい私は。 まぁそこまで飲んでないってだけなのかもですけど。

 

 ・ひとくちアニメモ。 まずは前期継続作、プラス銀魂から。
 
 ・シャングリラ: ミーコ、ミーコ! 
  あの美邦様はお守りせざるを得ない。
 
 ・蒼天航路: 五百で勝つ軍師はお前だ。
  あの曹操に無理難題を押し付けられる郭嘉には燃えざるを得ない。
 
 ・パンドラ: お嬢様と兎がここぞとばかりに頑張りすぎて、あやうく年上妹がかすむとこだった。
  ピエロもさりげに非常に頑張ってたし。 だがお前にエイダはやらん!>わかめ頭
 
 ・ファントム: すまねぇ、マジに私あんたの足引っ張ってばっかだな。
  リズィさんの足の引っ張りっぷりには共感せざるを得ない。
 
 ・ハルヒ: さっさとキョンがハルヒの耳元であいらびゅーと囁けばいいのに。
 
 ・ハガレン: リンが原作よりスカしてた、ランファンが原作より可愛かった。
  次はアームストロング少将か。 長いな・・・
 
 ・咲: 麻雀知識皆無のこの人を、ここまで楽しませてくれるこの作品って、滅茶苦茶すごいよね。
 
 ・銀魂: やっぱりもう少し、頑張りましょう。

 

 ・続いて今期発のひとくちアニメモ。
 
 ・青い花: ふみちゃんの中途半端だけどしっかりしがみつく状況への流されっぷりがいかす。
  なんか相手が優しくて調子の良い悪い男にでも、ほいほい派手でやばい服とか着せられそうで怖い。
 
 ・野球娘: タマちゃんと双子妹で取り敢えず萌え分は大丈夫。
  あとは任せた。>主人公とかメインの子とか
 
 ・化物語: 今更気付いたけど、この作品って戦場ヶ原様の暴言へのツッコミだけじゃ無いんだね。
  阿良々木君の絶大なるロースペックさへのツッコミも、かなり重要。 ていうか戦場ヶ原様がみてる。
 
 ・うみものがたり:  ある意味一番先が読めない。 みんな愛してる♪
 
 ・カナン: 迷ったら、とにかくアルファルドお姉様を選べば間違い無い。
 
 ・うみねこ: あんだけ名前と相関関係が覚えにくいキャラ作っといて、いきなり大量瞬殺とか。
  私の苦労を返せ! ←やっと全員覚えたとこだった人
 
 ・かなめも: 健気っ子の健気っぷりが一瞬で吹き飛ぶほどの、ロリコン以前に性犯罪者な人がひどい。
 
 ・狼二期: 私は、ホロが、大好きです。
  ホロに惹かれるロレンスが好きで、ホロのために頑張るロレンスが好きで、つまり私はホロが好き。
 
 ・何度でもいうよ。
 
 ・私はホロが好き。

 

 ・おあとがよろしいようで。
 
 ・ごきげんよう。
 
 
 
 
 
 

 

-- 090725--                    

 

         

                            ■■ 狼は尾の導くままに ■■

     
 
 
 
 
 『どうしよう・・・・わっちのかえる場所が、もうありんせん・・・・・・・どうしよう・・・・』
 

                                〜狼と香辛料U・第三話・ホロの言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 麦束しっぽのホロウ、かや
 目を開けたとき、鼻をくすぐる麦束の匂いがした。
 柔らかく溶けそうでいて、続け様に夜の静寂で耳を濡らしてくりゃる、その透き通る香りがあった。
 動かす力の途切れぬままに、そっと、身を擡げた。
 そのまま痺れ立ち上がる、滑らかな素肌の涼しさが、胸を輝かせる。
 それは、驚くほどに眩く、そして、信じられないほどに、手の届かない愛しさじゃった。
 月光。
 さりげなく零れた呟きが、喉を鳴らす。
 伸びよ、この掌よ指先よ、わっちの赴くままに、伸び果てよ。
 すらすらと奏でる胸騒ぎが。
 けれど柔らかく、抱き締められている。
 麦。
 麦じゃ、暖かいのう。
 足下を照らす、夜露の浸みるその麦束の色合いが、月明かりに解けて繋がっている。
 統べるままに倒れ込む、その青い闇の光の中で、恍惚となるわっちを引き留めたのは、わっちじゃった。
 待て。
 目の前の、この男はなんじゃ。
 そろりと、尾が動く。
 動いたあとに、その違和感に小さく驚いた。
 目の前の男の持っておらぬ、この気高き尻尾の存在を忘れておった。
 なぜか勝手に犇めくようにして、人の形をした小さな尻の先で、わっちの尾は揺れとった。
 わっちはそれを最初、まだわっちがこの人間の形に慣れておらぬがゆえのことじゃと思った。
 自分の思う通りでは無いどころか、思わぬ風に勝手に動き出した我が美しき尾の毛並みが、
 手前勝手に燦然と月明かりに輝くのは、ただ。
 わっちが、まだ、人の形になったばかりだからじゃ、と。
 人間のほっぺたというものに、なかなか慣れんかった。
 じゃが・・・・
 狼の姿のままに、そのまま残っているはずのこの尾に慣れぬとは、一体どういうことじゃ。
 わっちは、この美しくも、恐ろしい麦束の尾から離れられなくなった。
 
 くるくると回すように、手慣れた感のままに、しっぽを回す。
 演技に演技を重ね、そしてそのままなにもかも忘れてしまえと囁きながら。
 わっちゃあ本当に、この尾に違和感を覚えておるのかや?
 いやそれとも、わっちのこの尾は、人の体に見合う大きさに縮んだ事で、やはり今までの狼の体のとき
 とは違う感覚であるのは、当然のことであるのじゃろうか。
 わからぬままに、わっちはわっちを推し進めた。
 不思議じゃな。
 わっちはわっちの存在に疑問を感じること無く、大いに違和感を覚えながら生きておった。
 尾が、尾が、気になって仕方のうなる。
 わっちのこの麦束色の尾は、わっちの尾なのかや?
 わっちとは、なんじゃ。
 わっちは、なんじゃ。
 なんじゃ、なんじゃ、なんなのじゃ。
 静かに自らの存在を言祝ぐようにして、その問いがわっちの胸を、隙間だらけのまま適当に満たして
 いきおった。
 わっちのこの尾は、わっちのままではないのかや?
 わっちがわっちのままであるということは、どういうことなんじゃ?
 わっちの足下を覆うこの麦は、なぜにこんなにも暖かいのじゃ?
 こんなにも月夜の肌触りは冷たく暖かいというのに、どうしてこの尾ばかり気になるんじゃ?
 なぜじゃ、なぜじゃ、なぜじゃ!
 
 
 
 
 
 
 
 
 氷山のように、高さに抜ける白い山脈。
 ざわめきを轟かせ、静かに熱気を上げ続ける人の街。
 ひとつひとつつぶさに摘み、ころころと喉の先で転がし、とっくりと味わうままに。
 訥々と、言葉を重ねていく。
 めくるめく酔いのままに、回る口の階を駆け上がり、言霊が舌を巻いて逃げ回るほどに、饒舌の魂を
 洗練させて。
 深々と、豊穣の中に生きていく。
 のう、ぬしよ。
 頭を回転させるというのは、なんとも心地良いものよのう。
 純粋無垢に策略を巡らし、瞬間瞬間の相手の所作にすべてを見抜き、刹那のままに思い巡らし、
 策の重なりとその実行の中にこの身を煌めかせることの、その感慨はひとしおじゃ。
 愉しゅうて、愉しゅうて、わっちはぬし様の虜になってしまいそうでありんす。
 くく、ぬしのその懐の銀を、もっともっと使ってくりゃれ、わっちのために、の♪
 ぬしといると、実に愉しい。
 歌い踊り、わっちの明晰なる賢き脳漿を煌めかせ、よよよとしおらしく靡かせるこの身の蠢動が、
 わっちの大きな大きな、大きな大きな愉しみじゃった。
 
 その愉しみのむこうに、ぬしがいてくれたからじゃ・・・
 
 楽しかったんじゃ、誰かと一緒にこの世界を愉しめることが。
 ひとりの白銀の地より旅を重ね、ひとつひとつ年を重ねるままに、豊穣を求めて生きてきた。
 わっちは、独りは嫌じゃ。
 ひとりのままに閉じた世界など、御免じゃ。
 ああ、言葉が続かぬ、想いが尽きてしまいんす。
 語れば語るほど、どんどんとわっちは薄れていく。
 なんじゃ・・・なんじゃ・・・・・なんなんじゃ・・・・
 わからぬ。
 わからんのじゃ、ぬしよ。
 どうしてわっちは、ぬしに語りかけずにはおられんのじゃ。
 わっちはどうしてか、ぬしと出会ってから、わっちひとりの中で考えることが出来のうなった。
 思考が堆積せぬ、想いが滑らかに深まっていかぬ。
 尾が、ぴくりと動く。
 またじゃ、また勝手に・・・・
 そろりそろりと尾を撫でながら、おそるおそるわっちはこの体を抱き締める。
 
 
 わっちは、不安じゃった。
 陳腐な言葉しか刻めぬわっちの気後れを越えて、わっちはただわっちらしさを失っていくことに狼狽えて
 おった。
 まるで地に足がつかぬ。
 地に足を囚われたくなかったからこそ、あの白銀の大地から抜け出してきたというのに、いつのまにやら
 わっちの足は止まっておった。
 立ち止まり、そして、人の中で、人の喧噪の中で。
 わっちは、ひとりになってしまった。
 独りでは無いはずなのに、ただ段々と無防備なままにひとりに追い落とされてしまっていた。
 堪らない。
 壊れそうとか、破裂しそうとか、そういうものでは無い。
 ただただ、すべてがわっちの中にめり込むような、それが永劫続き、さらにはそれがどんどんと加速して
 いく感触に、呆然と震えておった。
 堪らない。
 堪らない、はずなのに、わっちの口は回り続き、ロレンスの前で遊ぶわっちは勝手に動き続けておった。
 堪らない、堪らないんじゃ、わっちは。
 静かに、静かに、狙っておった。
 狙うともなく、狙っておった。
 堪らないと泣き叫びながら、この重圧から身を守ってくれるものに飛びつくことを。
 ぬし、わっちを抱いてくりゃれ。
 わっちを抱きんす!
 足下には、ぷんぷんと強烈に麦の腐る臭いがした。
 
 
 

 

 

足下が腐り落ちる感覚

わっちは冷静じゃった
なによりも冷静じゃった
『こんなにも頭が巡っておるんじゃからな』
強靱に乱れ綴られる言葉が、泣き叫ぶ
言葉が
言葉が
いや
 
わっちが言葉を磨いて
ぬしに
わっちに
勝手に
突き立てていく
 
尾が止まる
微動だにせぬ
気付けば麦束尻尾は溶けて消えておった
麦か血か
もはやその選択すらありんせん
人か狼か
わっちはもはやそれを選ぶことすら出来んせん
どこじゃ
わっちの気高き美しい尻尾はどうしたんじゃ
紅い瞳の静まるままに、吹き荒れる重みの嵐は猛っていく
なんじゃ
なんじゃ
こんなに頭は回るのに
まだ頑張れるといえるのに
まだ生きられるといえるのに
 
そう言い続けることがまだ出来るのに、
まだ出来ると言っている自分だけが
ごそりと
消えとった
 
 
もう
 
ひとりは嫌じゃ
 
 
 
もう
 
もう
 
 
もう
 
 
 
 
 
 そのときわっちは、生きとった。
 死んだとばかり思っている、その自分を頭の片隅に追いやりながら。
 恥ずかしいとか情けないとかあり得ないとか、わっちの口車の荷台で寝そべるそのわっちの魂は、
 その死んだとばかり思っている自分に肩入れして、そのままそのわっちを頭の中の果てに連れ去って
 いきおった。
 残ったのは、わっちじゃった。
 尾の無い、ただのわっちじゃった。
 わっちはすべてを失ってしもうたのかや。
 じゃが、そのすべてを失ったわっちは死んだわっちである、と言うそのわっちはどこかに連れ去られてしまった。
 わっちが、残った。
 すべてを失ったわっちが、生きて此処におった。
 わっちは、わっちを破壊した。
 ロレンスに抱いて欲しいじゃと? 子が欲しいじゃと?
 その事自体よりも、それを口にするわっちのおぞましさは甚大じゃった。
 わっちを壊すには、至高の言葉じゃった。
 ロレンスに抱かれることで、ロレンスとの子が出来ることで孤独を回避出来るという、その思考そのもの
 よりも、そのままロレンスに抱いてくれと、子が欲しいだなどと、このわっちが言うことそのもの自体が、
 なによりも、破壊的に圧倒的に、破滅じゃった。
 そのとき確かに、そう思っておった。
 わっちは、ロレンスになにも求めてはおらんかった。
 わっちは闇の中で瞳を紅く滾らせながら、絶望的に叫んでおった。
 それは、ロレンスへの当て付けでも無ければ、駆け引きでもなかった。
 ここまで言わせたわっちを、そのままほうっておいてもよいのかや、さっさと追ってきんす、そんな願いの
 籠もった怨みですらなかった。
 わっちは、わっちを破壊する。
 最もおぞましい方法で、最も憎いやり方で。
 わっちはただただ、すべて壊したかったんじゃ。
 もういやじゃ
 
 
 わっちは・・・
 ほんとうに・・・・・・・ひとりは・・・・・いやなんじゃ・・・・・
 
 
 いつものやりくちで、いつも通りに口を回して、そしていつもの通りにロレンスの手がすっと伸びてくる。
 いつもとなにも変わらない、その作法のままに。
 壊してやる。
 もういやじゃ
 わっちは・・・
 わっちは・・・・・
 
 
 
 
 
 
 ・・・・・・
 
 わっちはの、ロレンス。
 あのとき確かに壊れとった。
 じゃがの、それは反省すべき材料とか、そういうものでは無いんじゃ。
 わっちはただ、わっちを破壊した。
 それだけじゃ。
 それだけの事の意味を、今わっちは、全身全霊、魂の導くままに感じているのでありんす。
 わっちはの、ロレンス。
 わっちの故郷の地、ヨイツの森が好きなんじゃ。
 たったひとり佇む白銀の地、そして同じように孤高の魂に濡れる、わっちの同胞達の気高き咆吼に満ち
 た、恐ろしくも、絶対に変わることの無い、我が安息の地じゃった。
 わっちのは、ロレンス。
 ぬしがいなくとも、人間がいなくとも、世界が滅びても、此処にあるんじゃ。
 嬉しかったんじゃ、生きて此処にあるということが。
 わっちゃあそれが、なにより嬉しい。
 じゃから。
 じゃからこそ、その嬉しさは絶対に変わらずにあると思えたからこそ、旅に出ることが出来たんじゃ。
 わっちゃあ、独りなのは嫌じゃった。
 此処にあることが出来るのはなによりの嬉しさじゃったが、此処にあるだけのことはなにより嫌じゃった。
 金色の麦穂が、揺れておる。
 わっちは、銀より金が好きじゃ。
 銀はわっちの中に満ちて輝いておる、じゃからその輝きのままに豊穣な金こそを求めていきたかったんじゃ。
 そのわっちの銀を元手にして、な。
 銀だけで倹しく生きよなんぞと、誰に言われても頷けぬ。
 そして、そのヨイツへの帰り道が、正確では無いが、判明した。
 ロレンスと旅をしてきて、もうわっちにとっては、その故郷への帰還が、金を捨て銀に換えるという、孤独
 への逃避、世界の豊穣からの逃亡としてのものでは無くなっていた。
 ロレンスと、ふたりでわっちの故郷の森へ帰る。
 わっちの故郷を見て欲しかったんじゃ。
 わっちが此処にあるということは、こんなにも素晴らしい白銀に満ちておることなのじゃ、と。
 そして今度は、ぬし、ぬし様よ、わっちをぬし様の故郷に連れていってくりゃれ。
 わっちらの旅は終わらない。
 終わらせないからこそ、わっちらの故郷がある。
 わっちの求めた金の麦穂が、わっちの足下を優しく暖めていて、それが冷たい銀の月明かりに繋がって
 いるのは、わっちが此処にあることと此処にいることがひとつに繋がっているからじゃった。
 
 
 なのに、わっちのこの尾は、わっちの思う通りに動かない。
 
 
 わっちの中で織り成す言葉が、それ自体が嘘の膜を被っておる。
 わっちゃあ、不安で堪らぬ。
 ロレンスがわっち独りで故郷へ帰れと言うことが、では無かったのじゃ、ほんとうは。
 わっちは・・・・
 わっちは・・・・・・勘違いを・・・・・・おそらく意図的に、しておった・・
 わっちは、ロレンスと共に歩けるか、それをロレンスが望んでくれるかどうかと、そういう事に不安を感じて
 いると思っとった。
 じゃが、そう思うたびに、わっちの正直なこの尻尾は、大袈裟にぴくりと動く。
 わっちは、一体なんなんじゃ。
 ヨイツの位置が判明したと聞いたとき・・・
 わっちは・・
 今まで通り、しおらしく独りで森に帰れる、やっと帰れるというその儚い笑顔を見せた。
 勿論、ロレンスの気を引くための自分を、必死に潔く淫らに隠すためじゃ。
 そして、ロレンスがふたりで帰ろうなと言ったときに、わっちゃあ、嬉しそうに微笑んで魅せた。
 嬉しかった。
 じゃが。
 じゃが。
 
 わっちの尾は、嬉しそうに、これみよがしに、揺れとった。
 
 不安じゃった。
 無尽蔵に揺れるこの尾が指し示すものが、なにより怖くて堪らんかった。
 わっちは・・・
 わっちは・・・・・・・・故郷に還りたくない
 
 
 わっちは・・・・・・・・・
 
 
 ひとりは・・・・・・嫌なんじゃ・・
 
 
 いつからじゃろうか。
 わっちが此処にあるということ、わっちがわっちというひとりであるということが、恐ろしゅうなってきた。
 わっちは、ホロじゃ。
 賢い狼の、偉大なホロじゃ。
 巨大な体躯を誇り、美しい毛並みに輝く、気高き賢狼のホロじゃ。
 なのに今、わっちは人の形をしておる。
 人の中に入り、人と交わり、人の世の豊穣の中に希望と踊りながら生きておる。
 不気味に、小さな人間の尻に生える、この尾が恐ろしい。
 この尾と耳は、人の間で生きるためには、決して見せられぬ物。
 いや。
 ロレンスにしか、見せられぬ。
 ロレンスとの間にしか、わっちはこの小娘の姿で生きる場所が無い。
 孤独じゃ。
 ひとりじゃ。
 人と出会うたのに、ロレンスと出会うたのに、ロレンスにしか、ロレンスの胸の中にしか白銀の地が無い
 んじゃ・・・・
 ああ・・・狂うとる・・・滅茶苦茶じゃ・・・・
 また、尾が風に靡く。
 その隙間風に、戦慄する。
 ああ・・・わっちの不安は・・・恐怖は・・・・そんなものじゃない・・・・・
 わっちの尾が、囁きながら絶叫する。
 お前のその尾はなんだ、お前のその尾は狼の尾ではないのか?
 なのにお前は、なぜその人間の体をしているのだ、なぜこの尾を小さく歪めているのだ、と。
 わっちの尾が叫ぶ。
 わっちの尾が叫ぶ。
 白銀に、孤高に、気高く、残酷に、手ぐすねひいて、わっちに襲い掛かる。
 ヨイツに、喰われる。
 あの漆黒の闇に、噛み砕かれる。
 ひとりは、嫌じゃ
 
 
 
 ひとりは嫌じゃ、その叫びと、わっちの良く回る頭の中の言葉がこうして一致したとき。
 
 わっちはそのひとつに繋がってしまったものを、激しく壊そうとしたんじゃよ。
 
 そして壊れたのは、それを壊そうとしたわっちじゃった。
 
 
 麦束の香りを焚きしめた舌先で、饒舌に考える。
 考えて、築いて、重ねて描き、ぐるぐると燃え盛る。
 わっちがぬしを求めてなんとする。
 ぬしに求められてなんとする。
 わっちゃあ、ほんとうにひとりになってしまった・・・
 『わっちゃあ、ぬしのなんじゃ?』
 疼く、頭の中にまで上り詰めていた銀が、鉛のように全身を穿ち固めていく。
 ヨイツの森に還っても、もう誰もおらんのじゃ。
 わっちと同じく、ひとりの存在のままに生きておる、そんなわっちの同胞は絶えたのじゃ。
 わっちは、ひとりになってしまいよった。
 
 
 のう、ぬしよ。
 
 
 ぬしも、いなくなってしまうのかや?
 
 
 
 ぬしも、わっちら孤独の狼を置いて、ぬしらだけで豊穣の世界の果てに行ってしまうのかや?
 
 
 
 
 
 
 
 

『いやじゃ・・・』

 
 
 

『もう、ひとりは・・・いやじゃ・・・』

 
 
 
 
 
 
 ヨイツにあり続ける事が奪われたわっちは、ぬしとの此処にい続けるしかないんじゃ!!
 
 わっちも人間になれば
 わっちがぬしと結ばれ子をなせば
 わっちが人間社会の一員となり、ぬしらの築いた此処にい続けることに囚われれば
 銀の倹しい生活に逼塞すれば
 
 わっちのひとりを諦めれば
 
 ぬしはわっちと、ずっと此処に、永劫に、あり続けてくれるのかや
 
 
 
 馬鹿じゃ・・・・あはは・・・・・は・・・
 わっちはもう、ひとりを独りという言葉に換えて、孤独の地から旅立つことが出来んようになっとった・・
 絶望じゃった。
 体感無き絶望じゃった。
 それは静かに体を染め、わっちから尾を奪っていった。
 わっちはわっちが此処にあることにしがみつくことすら、よう出来んようになった。
 ヨイツは滅びたと、その手紙には書いてあった。
 決定打じゃった。
 引き金になった。
 いや、狙い目じゃった。
 わっちは、わっちの不安の中で、ヨイツを憎んでおった。
 そのヨイツが滅んだと聞いて暴れ、ロレンスに体を委ねようとするのは、ヨイツに対してこその当て付け
 じゃった。
 いや・・・・
 ロレンスに抱いてくりゃれと言い放ったのは、ロレンスの胸の中の白銀に対しての当て付けじゃった。
 ひとりは嫌じゃ・・・・
 ひとりですらいられないのは、どうしようもなく嫌じゃ・・・・
 ロレンスの中の、わっちの中の銀を元手にして金を求めていくことなど、もう考えることすら出来なく
 なっておった。
 
 ひとりは嫌じゃと叫べたからこそ、今までずっと、白銀の中にひとり佇む安息の地から旅立ちを重ね続け
 ることが出来ていたのに・・
 全く同じようにひとりは嫌じゃと叫びながら・・今はもう、そのひとりの絶対的な安息すら届かんのじゃ。
 
 
 
 
 
 

 ひとりは いやじゃ

 
 

もう

 
 
 

生きていることすら

 
 
 

嫌じゃ

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ◆ ◆
 
 
 
 胸が潰れるようなおもいだった。
 目が乾いて、涙どころの話では無くなっていった。
 私はただ、呆然としていた。
 楽しさの中に溶けていた絶望が、すべて沸騰して、あっという間に凝固するままにして、楽しさを吹き消し
 てしまう。
 どこへ行ったんだろう、あの人生の楽しさは、どうしたんだろう、どうしてこんなに震えているんだろう。
 こうなることはわかっていた。
 わかっていたけれど、それはわかっていたというだけのことだった。
 いや、それがわかっているだけということすら、わかっていたのだ。
 だから、なんとかなると思っていた。
 そこに、希望と、頑張れる素地があった。
 「わからない」ということは、その闇の中に咲く花のなによりの肥やしとなった。
 それがますます、主体的な生と努力を私に与えてくれた。
 
 だが。
 根こそぎ、消えた。
 
 無惨にも、その希望の花が引き抜かれた跡を晒しながら。
 なにも初めから無かった訳じゃ無い。
 確かに其処に、その花は咲いていて、その花があったのも事実。
 そして。
 その花が根こそぎ引き抜かれてしまったという事実も、燦然と絶望に輝いていた。
 衝撃。
 
 
 今回のお話は、凄まじい。
 凄まじい、のひとことに尽きました。
 毎回話ごとにこの作品は良くなっていく、そういうレベルではもうありません。
 この作品は、この狼と香辛料という作品はもう、一話ごとに作品の存在する階層が、一段ずつ上がって
 しまう、そういうレベルに達しています。
 もはや加速度というレベルでは無く、果てしないジャンプ、もしくはワープです。
 私達は懸命に、そのジャンプしたワープした距離を詰めようとするのだけれど、もはやそうして詰めていく
 行為だけでは、全然追いつかないことを知る。
 
 私も、ジャンプしなければ、ワープしなければ。
 ホロを理解している暇は無く。
 ただホロと共に、自分の中のホロのままに生きていくしか無い。
 
 
 初めに言っておきましょう。
 ホロの苦しみとは、ずばりなにか。
 それは、ホロが自らが此処にあるということと、自らの故郷があるということを混同している事にあります。
 故郷が失われたということが、自分がただ絶対的に此処にあるということが失われるという事と、
 イコールだと感じられているところにあります。
 私は当初、実はホロと同じようにして考えていました。
 というより、ホロの故郷というものは、ホロが此処に存在してあるという事を、それそのものを抽象化した
 ものであるとして、読み解こうとしていたのです。
 でも、それだと実は、ホロの苦しみしか見えないのです。
 そのホロの苦しみしか無いとなると、それこそホロはロレンスと結ばれて、人間社会の一員としてただ
 生きて行けばよいだけの話になってしまいます。
 ハッピーエンドです。
 苦しみを癒し、苦しみに耐え、苦しみと向き合い、苦しみながら生きていく。
 
 それは苦しみに囚われているということ。
 そして今、ホロは苦しみに囚われています。
 そして。
 その苦しみからホロを救おうとすること、ホロがその苦しみから脱出しようとすること、それ自体がホロに
 苦しみという檻を与え、その中でのやりくりに逼塞させる事になってしまう。
 
 この作品の目指すものは、そういうものではありません。
 ホロにとっては、苦しみ自体はどうでも良いものなのです。
 その苦しみの先にある「なにか」、それに常にホロは晒されているのです。
 苦しみを癒すだけなら、苦しみと向き合うことを人生の主題とするなら、ホロはさっさとロレンスと結婚
 すれば良いのです。
 ロレンスの描いた夢の人生設計の伴侶として、その中でホロとしての生活も作っていけばよい。
 そして今、ホロは苦しみに喘いでいます。
 苦しくて、苦しくて、苦しくて。
 でも。
 ホロが死んでしまいそうなほどに追い詰められているのは、その苦しみ自体によってでは無い。
 
 その「苦しみ」に便乗して、なにもかもがホロから苦しみの向こうにある「なにか」を奪おうとしている、
 その事によって、ホロは極限まで追い詰められている。
 
 故郷の森、ヨイツの森が滅びたというのは、実はそのホロの「なにか」が奪われたということを、ホロ自身
 にこそ「抽象的に」感じさせたのです。
 その「なにか」とはつまり、ホロが此処に存在してあるということ、ホロというひとりそのものがあるということ、
 ホロの孤独そのものの事です。
 ホロが苦しむということ、それはロレンス達人間達とこの世界の豊穣をひとつひとつ愉しんでいくという
 こと、つまりホロが此処に「いる」ということです。
 ホロがヨイツの森、つまりホロが此処に「ある」ということから抜け出してきたのは、ホロが苦しみながらも
 ロレンス達との此処に「いる」ことを求めたからに他ならない。
 ただし、此処にあるということから抜け出すというのは、正確には、此処にある「だけ」の事から抜け出し
 たということです。
 此処にあることということ、つまり「ひとり」ということ自体から抜け出そうとするのなら、そもそもホロは
 ヨイツの森に帰りたいだなんて思わなかったはずです。
 最初第一期の初めの頃は、私はその辺りを誤認していて、変だなと思っていたんですけどね。 (笑)
 ホロはヨイツの森がずっと好きだったんですね。
 自分が此処に「ある」ということの歓びを、なによりも甘受していたのです。
 そもそも、ホロがホロというひとりで「ある」ことは絶対なのだから、ホロがどこに「いる」としても、絶対に
 消えてなくなることは無いのです。
 第一期では、その「いる」ことにつまづいて、一匹狼に戻ろうとした、つまり此処に「ある」だけになろうと
 してしまった、そのホロをロレンスが必死になって、自分の限界を超える、しかし実にロレンスらしい、
 まさに此処に「いる」を享受する商人らしい言葉で、引きずり戻したという感じでした。
 つまり、此処にあるホロにとっての、此処にいるホロの大切さ愛しさをこそ描いたのです。
 しかし第二期では、それと同じことを繰り返すつもりは、どうやら無いようです。
 というより、第一期を踏まえるからこそ、
 
 
 第二期では、ホロが此処に「ある」ということ、そのものを考えている。
 つまり、此処にいることが出来たホロにとって、その自分にとって一番重要で、一番恐ろしくも、
 向き合わねばならない、ホロが此処にあるということ、それ自体のことこそを描こうとしているのです。
 
 
 だから、此処にいるということの苦しみ自体からの救済、だなどということはやらない。
 いえ、むしろ今回のロレンスこそが、そうしてホロを苦しみから助けだそうという、その計算の元で為した、
 一期のときと同じ回路でホロに手を差し伸べたからこそ、ホロは絶対にその手には触れなかったのです。
 それに気付いて、どうしようも無く、少しずつ、しかしたとえようも無く深く顔を覆った、あのラストのロレンス
 の様の描写は、最高に見事だったと言わざるを得ません。
 そして、そのホロは、絶望の淵にいる。
 その絶望こそは、一体どこから来ているのか。
 ホロは故郷の森を奪われてしまいました。
 ホロは此処にあるということを奪われてしまいました。
 ひとりは、嫌じゃ。
 そう叫ぶことで、ホロはひとり「だけ」の故郷から抜け出してきました。
 けれど今、そのひとりの故郷は消えてしまいました。
 ひとりは、嫌じゃ。
 なんじゃなんじゃ、わっちを振り回しおって、わっちゃあひとりであり続けられる事を好きになれて、
 人間共とい続けることも出来るようになって、それでもわっちは自分のひとりと向き合って、悲喜こもごも
 のままに、それでもこれからわっちがもっともっと楽しく生きるために、わっちゃあひとりの森に帰ろうと・・・
 なのに、なんじゃ、なんじゃ! 勝手に消えよって!!
 
 『ひとりは、もう嫌じゃ!』
 
 そうなんですね。
 けれど、これはホロが見つめるべきものの一面の、ホロ自身による隠蔽でも、同時にある。
 ひとりは、嫌。
 元々、自分が存在するということ自体、嫌じゃったんじゃ。
 嫌じゃったからこそ、それが嫌では無いように、必死に喜べるために賢くなっていったんじゃ。
 もう嫌じゃ、もうわっちは此処に存在しとうない!!
 これが、これこそが、ホロがヨイツの森を失ったという事と、ホロが此処にあるということを、「わざと」混同
 したことの動機なのです。
 ヨイツの森、故郷の白銀の地が消えたとて、ホロが此処にあるということ、ホロの中の銀が消えるという
 事は無い。
 消えるというなら、それは幻想。
 自らが此処にあることが嫌じゃと絶叫したい、その願望によるものでしか無い。
 ホロが此処にあるということは、絶対に消えないのです。
 ヨイツの森が消えようが、世界が消し飛ぼうが、ホロは絶対不変に此処にある。
 死なない限り。
 じゃあ、死んでやる。
 わっちを殺しんす!
 わっちを壊しんす!
 
 根こそぎ
 
 ホロの闇に浮かぶ、あの紅い瞳。
 私にはそれが・・・・なにより・・・・なにより・・・・愛しい
 ホロはもう、生きるのを諦めるとか諦めないとか、そういう次元では無いのです。
 ホロは、紛れも無く、此処にあるということの中で、渦巻いています。
 殺してくれと、壊してくれと、抱いてくりゃれと、必死に、ぼろぼろに、なにも映らない、ただただ生きる
 ままに濡れる、その紅い瞳に揺れる世界の中で。
 ホロはその世界の中に、確かに今、「いる」。
 麦束尻尾が、ゆらゆらと、それでも揺れていてくれる、この恐ろしさと。
 もはやなんと言うことも出来ない、その愛おしさ。
 もうこの尻尾しか無いと、懸命に縋るように抱き締めながら、それしか無い世界に絶望しながら。
 
 ふと。
 
 どうしようもなく。
 
 
 此処に「私」があることを、ホロは鮮烈に、識ることになっていくのかもしれません。
 気高くも怠惰に揺れる、その優雅な狼の尾に導かれながら。
 
 
 
 ・・・・・。
 ああ、やっと涙出た。
 だけど、ちょろっとしか出ないの、あはは・・・・(泣笑)
 あ、そうか・・・これ、まだ私としては、泣く訳にはいかないのかな、無意識的にそう思ってるよ、きっと。
 だってこれ、まさにここからでしょう?
 もうなんていうか、前回こそ、まさにここからだと思って、そう、一体ロレンスがどんな手口を使ってホロを
 導いてくれるのかと期待してたんだけどさ、今回はそのホロが、もう、さ。
 ロレンス的には藪を突いたら狼が出てきたというか、いやそりゃ私的にもほんとそうだったから、衝撃以外
 のなにものでも無くて。
 やっぱりホロはすごかった、なんて言えない。
 やっぱりってなによやっぱりって、ホロのことなんもわかってなかった事にロレンスばりに気付いといて、
 やっぱりとか知ったかぶりしてんじゃないよ、私。
 ホロはすごかった、どうしようもなく、すごかったよ。
 ホロは一体、どこまで行ってくれるんでしょう、一体何回私の想像の斜め上を行ってくれる気なので
 しょう。
 このホロでこそ、私がホロで書くことに、最大以上の意味と価値と愛がある。
 藪を突いたら狼が出てきた、ほんとそうだよ、ていうかなにげにこの表現気に入った。(笑)
 だから、仕切直しも仕切直し、過去最大の仕切直しですよ。
 ラストのロレンスがもう、全身全霊で、その仕切直しに向かってますよ。
 こんどこそ、いや、もうそんな事すら考えない。
 というか。
 
 もうロレンスも私も、ロレンスと私の事なんか考えずに。
 ただただ、ホロの事を、ホロ自身のままに、もうひたすら考え、感じてるよ。
 だってそのホロは、私達の目の前の其処にいるだけじゃ無くて、私達の中の此処にもいるんだから。
 
 一体どうやったら、そのホロが、ホロが此処にあるという事の中で楽しく本当に生きていけるようになるか。
 そこですね、もう、ほんとうに、今は。
 
 
 
 

 

 私はさ、うん、ホロで書きたいよ。

 なによりも、なにより、楽しいホロを、ね。
 笑顔で、笑って、お酒飲んで、酔って、ほろほろに酔って、踊って、大きく歌って、ロレンス相手に手練
 手管を駆使して遊んで、じゃれたり、喧嘩したり、お金を稼いでたんまりと美味しいものを頬張って、
 食べ過ぎて飲み過ぎてベッドに倒れ込んで、二日酔いで伸びてみたり。
 そして勿論、ロレンスへの想いをちょこまかと出し入れして、ロレンスと旅を重ねていくホロが。
 私は、好き。
 それこそ、ロレンスに囚われる事無く、たっぷりとロレンスに抱かれるホロの愉しみを、私は感じたい。
 ホロがじっくりとこの世界を果てしなく楽しむ姿を、私の中の踊り出したい気持ちのままに、書いて
 みたい。
 ホロの笑顔こそが見たい。
 ホロこそを心底幸せに笑わせてあげたい。
 ホロが愉しむその様を、嬉しく見つめたい。
 だって私は、ホロが好き。
 というか、第一期のときは、そういうのところどころで書いてたもんね、楽しかったもんねぇ、ほんとうに。
 白銀の地より出でし狼が、幸せに楽しく深く笑っていくその姿は、嬉しくて、よかったねぇよかったねぇと、
 涙が止まらないほどに嬉しいんだもん。
 だから。
 もっと、もっと。
 もっと、もっと。
 大きく、深く、圧倒的に自分と世界を楽しめる、そんな偉大な賢狼のホロを、私は見てみたい。
 ホロのために、私のために、そしてホロのために。
 私はそのために、ホロで書いていきます。
 書いて、考えて、描いて、ホロに追いつき追い越せとばかりに、ホロの愉悦と苦しみと絶望のままに、
 この「狼と香辛料」という作品が、この世界の中で確かに生きているということの一助に。
 いいえ、そうじゃない。
 私や、そして多くのこの作品に魅せられた人達と共に、私は狼と香辛料という、紛れも無くこの世界の
 中に「いる」ものとして、主体的にそのひとつとなりたい。
 私達こそ、この世界に「いる」狼と香辛料そのものとして、私は感想を書いていきたい。
 支倉凍砂という人が、この世界に狼と香辛料を存在させてくれたのですから。
 原作者たるその人が投げた小石が描く波紋。
 私達、そしてアニメを作った人達がその波紋の中にさらに小石を投げ込み出来た、その複雑にして、
 膨大豊穣な小石と波の世界。
 それすべてがこそ、狼と香辛料。
 狼と香辛料という、「私」なのです。
 その「私」が確かに「ある」ことを肌で感じながら、狼と香辛料に関わるすべての人達、みんなでこの
 作品を、「私」を幸せにしていきましょうね。
 原作者やアニメ制作者に、御礼ばかり言ってる暇なんて無いっすよ。 (笑)
 勿論。
 御礼「ばかり」言ってる暇は無い、だけです。
 御礼も沢山沢山言った上で、嬉しくて泣きたくなるほどにありがとう御座いましたと言って、さぁ、じゃあ、
 原作者とアニメ制作者と一緒に、狼と香辛料を圧倒的に創っていきましょう♪
 
 
 
 と、いう感じです。 あんた書きすぎ長すぎ。(ごめんw)
 でも今回書かずしていつ書くのよ、と、まぁ次回も言ってそうですけれど(笑)、少なくとも今回は
 いてもたってもいられずに、書かずにはいられませんでした。
 というか、まだ全然書き足りません。反省という文字を知りません。 (ぉぃ)
 正直いうと、確かに本当に、なんというか、まだ私はホロの切実さに肉薄しているとは言えませんし、
 どうしても書いてて手が止まってしまうという瞬間が何度もありました。
 まだまだ、まだまだな私、まだホロの紅い瞳と溶け合ってる度合いが低い低い。
 もっと切実でどうしようもない、茹だるような凍り付くような、書く側から言葉が溶けていくような、
 そうしたものに手を染めていけたらなと思っています。
 もっとホロを、もっとホロに、もっとホロで、もっともっとホロを越えて。
 書いていきたいと思います。
 はい。
 今回のお話は、まぁ、後半の話が全部なのでしょうけれど、あれがあそこまで凄まじかったのは、無論、
 前半部分のお祭りやアマーティとのドラマ(笑)な戦いが描かれていたからこそのもの。
 薄々とホロの闇を感じつつも、私はこのままロレンスとのやりくりの中でホロは生き続けることが出来そう
 だなぁ、よかったなぁと、そういう状態になりかけていて、ずどん。
 今回、私が最も繋がったのは、紛れも無くラストの顔を覆ったロレンスでした、いやマジで。
 前半のホロとロレンスによる男と大人論議は非常に興味深かったですし、ホロさんの見解には非常に
 同意しましたし、ホロのげっぷは最萌えポイントでしたし(悪趣味w)、そうして優しく浮かれるホロの
 楽しみぶりが嬉しくて、私とロレンスは・・・・・・ああ(顔を覆って)
 マルクとのやりとりも、その後の祭りも、その明るさがあったからこその、その後の闇の圧倒的さがあり。
 けれど。
 うん。
 そうだよね。
 
 ホロが帰る場所はもう、その明るい世界の中にあることが、しかもそれはほんの一歩も無い目の前に
 あるって、どうしても感じられることにも、繋がってるんですよね。
 
 どのシーンを以てしても、それこそクオリティの高い作画と動きに満ち満ちていて、キャラ自身の仕草の
 意味づけも単純明快にして、実に深みのある爽やかさがありました。
 あの街の空に抜ける青空と、その下に広がる山脈の高さに、それが繋がっていましたし。
 もうなんか、駄目なところがひとつも無い。完璧で怖い。ていうかホロが可愛すぎて困る。 (笑)
 そして可愛い以前に、ヨイツの場所を聞いたときの相反する想いを同時に表現するそのホロと、
 ヨイツが滅んだと知ったときのホロのあの冷静な狂いっぷりの様が、もうなんか、鮮明ですごい。
 あそれと、前回予想した通りに、アマーティがホロの借金を肩代わりするとかほんとに言い出して吹いたw
 あれはマルクのところに話が来たって訳じゃ無くて、マルクですら知ってる大事になってたという感じな訳
 だったのね。
 あとクロエが追ってきたのかもとか適当に前回書いたら、今回では羊飼いの笛の音がして、もしかしたら
 羊飼い(ノーラ)が追ってきたのかもしれぬなとかホロさんが言って、微妙に吹いたw惜しいw
 なんか今、ストーリー的には私の予想力は高いみたいww
 いやというかむしろ、この作品ってストーリー自体は割と素直に進んでるのよね。
 だから逆に、その中で動くホロ達自身の意味が高まるって感じなのかな。
 
 
 それでは、今回はこの辺りにて。
 また次回、お会い致しましょう。
 今回はほんとに、重大でした。 腰痛w
 
 では。
 狼万歳!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                              ◆ 『』内文章、アニメ狼と香辛料U」より引用 ◆
 
 
 

 

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                               ■■ 夏ボケ症候群 ■■

     
 
 
 
 
 いよいよ夏ですけれど、皆様如何お過ごしでしょうか?
 ごきげんよう、紅い瞳です。
 
 ええまぁ、私はご機嫌ですよ、うんごきげん。
 なんだか夏とか、暑くて蒸し蒸ししてて、夏休みだとかアバンチュール(死語)だとか、ああもう、みたいな
 、うずうずと怨念と渦巻きと、それはもうなんだかアレなそわそわ感が、あれ?、なんか逆に気持ちいい
 よ?、みたいなそんな逆転現象というかもう戻れない感じとか、そういう風な感じにあっけらかんとして、
 かえって普通に楽しいみたいな、これを吹っ切れたとみるか壊れたとみるか、それともまたなにかよからぬ
 謀でも巡らしているのではないか、いやそれは無い、と、まぁ、うん。
 なんだかんだで、既に一杯一杯です。
 それが、気持ちいい。
 なんてか、夏ってそれだけで刺激的。
 だから、なんだろうかなぁ、やりたいことしたいこと一杯ありすぎて、それが出来ないと瞬時に欲求不満
 がベストコンディションを達成して王様だったりとか、私はその王様の下僕で御座います、とかなんとか
 言いながらも、なんだかいつのまにか、そのやりたいことしたいことを、「達成目標」としては捉えないよう
 になってくるというか、べつにそれは禁欲とか欲を捨てるとかそんなんちゃうねん、ただまぁなるがままという
 か、いや「なるがまま」なんていう意識自体も持たないかな、そうですねぇなんというか、うん、まぁ、その、
 目の前に映ったものをそのままやってみようというか、それが上手く出来たか出来ないかでは無くて、
 それをやりつつも同時に他の事にも手を出して、その手の落ち着かぬ間にさらにべつのものにも手を
 出して、みたいな感じで、もうひとつひとつ目標を達成していくとかそういう話では到底無くなり、なんか
 埋もれとる。
 
 色んなものに手を出して、それに埋もれて、えへへ、夏ってたのしーとか、言っちゃってる。
 
 それだけで楽しいというかね。
 一個一個地道に詰めてくとね、ロースペックさに定評のある紅い瞳さんではね、大した数はこなせない
 し、そうなるとこれ、そのこなした数で満足か不満足かが決まっちゃうの。
 んなこというたら、この人なんて怨みの塊になっちゃう。 だってなんも出来へんもん。
 でも、それは数に拘らないとか、参加することに意義があるとか、結果より努力した事が大事とか、
 そんなんとは全然違う。 むしろ逆。
 数に拘るからこそ、参加する事に意義があるとかいって逃げたくないからこそ、努力するのは結果が大事
 だからと思うからこそ、それらに囚われて、結局なにも出来ないままに全部諦めるとか、そういう状態
 にしないように、それだけでも楽しめるというか、そういうことを言う訳。
 やる気無いのは、やる気を出すため。
 やる気出ろ出ろ言うだけが、やる気出すことに繋がる訳じゃー無い。
 たぶん。
 でまぁ、ね、そういう感じになるとね、ぽっとなにかが抜けるというか、あれ?、普通に夏楽しくない?、
 なんか開放的っぽくない?、とかね、そんな感じでずかずかと周りのものとの接続感を求めて、私の中
 のなにかが大移動を始めたりする。
 そわそわ。
 鼻歌とか、ソロでやりだしちゃう。
 オープン。
 自分が開かれてく、っていうかド全開。
 そういうとき、言葉はいらなくなる、っていうか言葉の枠組みで詰めていくのを保留して、それはちょっと
 横に置いといて、まずは一献、みたいな、ぷはーっ美味い♪、とひとつ大きく息をついて、そのままじっくり
 とっくりと夏の宵に浸み入るままに楽しめちゃう。
 や、先日お祭り行ったんだけど。
 ひとりで。
 私お祭り大好きでね、そりゃまぁ大好きでね、だけどね、ひとりで行くのは好きじゃ無いので、誰かお供
 の者を探していたんだけどね、忙しい、暑い、祭り嫌い、ていうか私はあなたが嫌いです、とか割と深刻
 かつあとで一発背負い投げ決めてやるみたいな大人げない復讐心に駆られそうなね、そんな好待遇を
 受けたのですよね。
 じゃーいいよもう、いくのやめるよ。
 ていうか、ひとりでいきたくない。
 
 ・・・・・。
 ・・・・・・・・。
 
 指くわえて、涎垂らしかけながら、祭囃子を遠くで聞いているだけのこの情けなさ、祭り好きの方には
 わかりますでしょう。
 てことで、行ってきた、ひとりで思う様行ってきた。
 楽しいのか楽しくないのか、のせめぎ合い、の果てに、ずしんとくる愉しさを味わえたヨ。
 あーこりゃ、愉しいわ、ってかこれまた今度は誰かと一緒にこの愉しみを楽しみたいわ。
 そう思った。
 ひとりじゃやっぱりつまらなかったので、今度こそ誰かと一緒に行ってやる、って訳じゃー無かった。
 ひとりの愉しみは、案外誰かと行くときの愉しみと行けないときのつまらなさを横に置いとけば、結構
 普通に、いやいや、全然奇想天外に楽しめた。
 だけどね、それと同時に、じゃもう今度からひとりでもいいや、という感じにはならなくて、なんていうかな、
 そのひとりの愉しみっていうことよりもね、こうして楽しめる「お祭り」っていうものの幅の広さ深さ自体が
 ね、なんだか無性に嬉しくなってきてね、だから今度は誰かともこの嬉しさを享受したい、もしかして誰か
 とのふたりっきりでとか、うふふ、気持ち悪い、みたいなね、そういう期待というか幻想というかね、
 そういうのを丸々抱くことが出来たんですよね。
 うへぇ、夏ってば、丸々楽しいじゃんか。
 四季折々の、その季節にしか出来ないことを目標的に詰めて楽しみ苦しみながら、そうでは無いなる
 がままに色々愉しめて、そしてそういうもの全部丸々含めて出来る季節があるということそのものの中で
 楽しみながら。
 お酒を、ひとつ、くいっと飲む飲むっと♪
 うし、次は花火な、花火。
 次はどうやって騙くらかして誰かを連れてこうかな、っと。
 そう考えたりなにも考えなかったりしながら、窓の外から覗けてくる、その真っ青な月明かりが綺麗で。
 ちょいっと部屋の灯りを消して、窓をすっと開けて、というか開けられるものは頭の中も含めて全部開けて
 、そうするとこう、静かな夏の喧噪が、音を潜めながらも、確かに夜風に乗って漂ってくるのを、こう、
 うっすらと汗ばむ肌で感じるのが、これはもう最高に心地いい。
 これからもう少しすると、虫の音とかもっと来るし、星なんかもその瞬きを鮮やかにしてく感じになって
 くるよね。
 ざわざわ。
 夏がほんのり小さく、其処此処で、騒いでる。
 やべー、私夏好きだわ、夏好き宣言しちゃうよこれ。
 
 
 ・・・・。
 ボケっぱなしには気を付けましょう。
 
 
 
 
 ◆
 
 さてま。
 私がここまでボケ全開にした上にさらにその上からガソリンをぶちまけようとしているのは、大変危険です
 のでやめましょう、なのは、まぁ当たり前のお話ですが、この人が狼と香辛料で盛り上がりすぎている
 からです。
 正直、幸せ。
 幸せ警報発令中です。
 やー、これはほんと私が今一番出会いたかった作品ですよ。
 うん、第一期のときもそう言った記憶があるよ。
 この第二期も、おんなじだ。
 今一番出会いたかった作品ですよ。
 うごうごする。
 わからないとか、たわけとか、闇とか、見えざるものとか、そうだよね、なんかこう切実に私が向き合い、
 そしてなによりそこから新しく感じて考えていける事のままに生きてみたいというかね。
 ある意味、まぁ言い過ぎかもだけど、ちょっとした人生の転換期なのかも、今、私。
 感想でこの間初めてロレンスで書いてたら、あーなんか、私の中での普遍的根源的な問いを背負って
 るのがホロで、私の中での現実的具体的問いを背負っているのはロレンスなんじゃなーって、ちょっと
 そう感じたよ。
 ロレンス的に見てのホロの魅力が堪らない私のように、同時に今、ホロ的に見てのロレンスの魅力が
 堪らない私のこの中にこそ、私が今一番感じて向き合うべきものがあるのかなぁ、やっぱり。
 だって、ロレンスは人間なんだものね。
 その人間たるロレンスが、人外でありながら人間と同じひとりのホロを見つめたとき、どうするのか。
 言い換えれば、今までまともに扱われなかった無視され続けていた、けれど紛れも無い「人間」を、どう
 改めて自分達と同じ平面に回収していけばいいのか。
 いや、それ以前に、その自分と同じ平面が、今そのままでよいのか。
 ただ覚悟を決める事に囚われ、慎ましく等身大の世界に堅く逼塞する事で足りるのか。
 足りる事は、結局無かった。 それはずっと初めから感じてわかっていたことだった。
 ロレンス、そしてロレンス的な私達が見過ごし目を背けてきたものは、あまりに多い。
 そして、その無視の為した犠牲の上に成り立たせてきたものは、さらにはるかに多い。
 それを改めて考え詰めるロレンスに、移入出来無い私じゃー無い。
 
 ロレンスがホロと出会ったということは、一体どういうことなのか。
 
 そしてそれは同時に、ホロがロレンスと出会ったということはどういうことなのか、ということでもある。
 無視され阻害されてきたけれど、耳も尻尾も生えているけれど紛れも無い人の間で生きる者である
 ホロ的な人達にとって、ロレンスの存在というものはどういう風にして受け止められるのか。
 ぶっちゃけ、この世界の中にホロ的で無い人など存在しません。
 だって、この世界の中に全く同じ人間は存在しないのですから、そもそも最初はみんな誰もが、
 誰とも違う孤独の世界の住人だったのですから。
 いえ、今だって社会的に受け入れられているというだけの、あくまで互いの異質さの隠蔽を共有する
 中での、幻想としての「同質」しか無いのですから、本質的には皆誰でもホロなんですよね。
 だからホロで書くということは普遍的根源的なこと。
 あ、うん、だからね、わたしゃこの作品の感想を書く段に当たって、ロレンスとホロを男と女の関係のそれ
 として描く対象にはしなかったんですよね。
 男と女でもある、というだけで、男と女の話としてだけ書く気は無いというか。
 ロレンス的な既存既成の平面の中に生きていた者と、それから阻害されていつつも同じ平面に在りたい
 と願い続けるホロ的な者との出会い。
 そしてその出会いの中から生まれてくるものはなにか、それぞれがそこにどうやったら自らの求めるものを
 獲得していくことが出来るのか。
 
 そういう意味では。
 ロレンスの発する「わからない」という闇の感覚は、自らが無視し目を背けてきた「なにか」を見つめる
 ということに繋がる事だけでは無く、そこからどうやってその「なにか」との共存が果たせるようになるのか、
 それが「わからない」、けれど確かに其処に解決すべき希望という名の闇があるということでもあります。
 そしてまたそれは同時に。
 ホロにもまた、どうやったらこの自らの孤独から脱出出来るのか「わからない」という闇の感覚だけでは
 足りない、もっともっと本質的にわからない、圧倒的な「闇」があることが見えつつあるということにも
 繋がっています。
 そのホロの圧倒的な「闇」がなんであるのかは、私にもわからないからこそ、ホロで書くことの深い重圧
 感には興奮しますし、そしてだからこそ同時に、ホロで書くということ自体が、そのホロと向き合うロレンス
 の感覚と繋がっていることを私に感じさせてくれもするのですね。
 
 それはつまりさ。
 ロレンス的な私達の生活が、ホロ的な根源的な問いと、ひとつになれる可能性があるんじゃないか、
 っていう、そういう果てしないというか、とんでもない希望があると思うってことなんだよね。
 ロレンスがホロに惹かれるその最たるところのものは、まさにそこなんだと思うのよ。
 今以上の自分になりたい、いえ、今の自分に行き詰まりをなんとなく、もしくは実は切実に感じている
 からこそ、その原因を探りそれをこそ解決したいという、そういう勇気と根性と、そしてなによりそうしたい
 と思える自分にもう、自信が持てるようになってきたからこそ、それが必要になってくる。
 ほんとは俺の中にもホロが、いや、俺もまたひとりのホロというロレンスなんだよな。
 そういう意味でも、「現実」的具体的な私達的な立場としてのロレンスで、前回の感想はすっきりたっぷり
 書けたのでした。
 狼と香辛料という作品に於いては、普通に生きて、堅実に逞しく生きるという、その現実という名の「夢」
 を叶えることをロレンスにさせようとすることで、今私達が捉えている「現実」というものがどういうもので
 あるのかをも考えさせてくれています。
 現実っていうのは、無限なんだよ。
 それをこれが「現実」だとして限った瞬間に、それはただの「夢」になるんだ。
 俺達はただただもう、此処に存在するだけで、無限に、圧倒的に、すべてと繋がっているという、その
 どうしようもない現実に晒されているんだ。
 狼と香辛料という、架空の中世を舞台にしたあの世界の中では、誰も自らの描く「夢」を現実だなど
 と嘯いたりはしないのです。
 
 
 だって、其処に耳と尻尾が狼そのままな、賢狼のホロがいるのですから。
 
 
 えーと、一応まとまったかな、これ? (知らんよ)
 
 
 
 ◆
 
 次。
 今期アニメ視聴リスト、完成。
 決定版。
 
 月: (シャングリラ)
 火: (蒼天航路)
 水: 狼と香辛料U・青い花
 木: (銀魂)・(パンドラ)・(ファントム)・野球娘
 金: 化物語・うみものがたり・(ハルヒ)
 土: カナン・うみねこ
 日: (ハガレン)・(咲)・かなめも
 
                              :全16作品 ()付きは前期以前よりの継続作
 
 
 注目作の大一押しは、変わらず狼第二期。
 それを除いての評価作も、変わらず化物語とうみものがたり、そして青い花とカナン。
 まぁまだカナンは第三話見て無いので、上の四つの中では周回遅れですけど。
 語りたいのは、まぁ狼がぶっちぎりなんですけどねやっぱり、第三話になって化物語も語りたくなって
 きちゃったのよ。
 えーと、プチ感想でもやっちゃおうか、やっちゃいましょうか、でもやめとく。 (ぉ)
 やるといってやらなくなったときの残念感より、やらないと言っときながらあっさりやってたときの拍手感の
 方が私への期待感を鰻登りにさせた上に・・・・・そのまま滝壺に落ちてしまえ。 (もう落ちとる)
 
 
 で、その化物語の第三話の感想ですけど。 (やるんかい)
 あらあらこれはこれは、犬の死体が捨てられていると思ったら、なんだ阿良々木君じゃないの。 byひたぎ
 大爆笑。
 なによ、ただの挨拶じゃないの。 冗談よ。 by戦場ヶ原様
 大爆笑。
 挨拶だけど、この人は本気です。
 思わずの太字です。
 色々ひどすぎますww
 戦場ヶ原様の容赦のなさが、「ツンデレ」という称号を名乗ることで、逆により深まってきた感じで、
 これはもう予想外の面白さを魅せてくれてます、ってかほんと容赦ないw
 うーむ、よく考えたら、戦場ヶ原ひたぎって、ツンデレといえばなによりなツンデレですよね、や、阿良々木
 視点からデレを楽しむためのツンという構図のいやらしさがヤだったので、ツンデレ否定してみてたけど、
 これまた良く考えたら、戦場ヶ原的にツンを楽しむためにこそデレを認めるという構図にすれば、俄然
 ツンデレとしての威力は上がってくるんだよね。
 よーするにさ、ひたぎ的には阿良々木には興味津々な訳だしぶっちゃけ彼女になりたいのだけど、
 その彼女のなり方そのものがまずひたぎ的には重要なんだよね。
 つーか、恥ずかしいっていうか素で嫌だし、彼女にしてくれなんていうの。
 それが本音だし、でも彼女になりたいというのはほんとだしそれがデレだし、で、そのデレを上手く発動
 出来なくてもじもじしたり阿良々木的に無欲を装って逃げたりとか、そういう事はせずに。
 真っ向向き合って、暴言で、ぶちのめす。
 それは恥ずかしさのあまりに、ぶちのめして誤魔化す、というのとはちょっと違う。
 恥ずかしいは恥ずかしいのだけど、恥ずかしいからこそ、正直にさらけ出す。
 好きっていうのは恥ずかしくてとても言えないからこそ、敢えて堂々とはっきりと、好きと言う。
 当然、阿良々木が冗談というか次なる罵倒の布石としてその好きという言葉を受け取るだろうと、
 その計算を元にした、その堂々さなんだけど。
 ・・・私もその作法は良くやります。(ぇぇ)
 んで、ひたぎが童貞とか処女とか敢えていちいち口走るのも、まさにはったりだよね。
 だからこそ、その堂々なはったりさ自体をひたぎは結構愉しんでるし、その愉しみの中で自分の中の
 デレを少しずつ昇華していっているような感じがするし、そのデレを認めるからこそ、ツンの威力も増して
 いくというか。
 ていうか、ツンで行う阿良々木とのコミュニケーション自体が楽しいというか、まぁ虎視眈々と阿良々木
 を雌的に狙ってはいるけど。・・・・や違うか、コミュニケーションに逃げられるのもむかつくのか。
 うわ、これほんとツンデレじゃん。
 ま、これはつまり、恥ずかしさ自体は消えないというか、なんというか、「他者」の存在と影響力の大きさ
 に晒されて、それを無視しない中での世界を真摯に生きてるって感じだし、それは阿良々木も同じな
 気がするのよね。
 無欲さを装って逃げるということはつまり、それだけ意識しているということだし、ぶっちゃけ阿良々木も
 ひたぎとは付き合いたいのだけど、付き合う勇気が無い、だけどこうしてのらくらと戦場ヶ原様にいたぶら
 れるのは悪くない(ぉぃ)、というかそういうひたぎとの触れ合い自体は求めてるわけね。
 というかまぁ、ひたぎもひたぎで、その阿良々木の逃避的無欲さは、がっつかなさとして安心してコミュニ
 ケーション自体を取れるという意味で、好もしいものではあるのも事実だし、メインはそこでしょね。
 ひたぎの巫山戯たはったり的挑発行為は防衛的行動、安心の確保でもあるし。
 ある意味で狼と香辛料と同じだね、両方とも恋愛の向こうにあるものを見つめてるというか、狼は恋愛
 経験者で、化物語は恋愛非経験者で、という違う立ち位置からのアプローチからね。
 まぁ、戦場ヶ原ひたぎがそれで終わってしまうだけだと、面白くは無いのだけれど、でも、これ。
 面白いよ、これ。
 暴言とそれへのツッコミがこういう形として使われるなんて、それ自体はうん、「笑い」というものを久々に
 テーマの中に重厚に組み込んでいる作品になってるんだわ、これ。
 観てて笑いが止まらないものね、色々考えながらの、そう同時にね。
 それとさりげに阿良々木君のギリギリアウトっぷりも外せませんよね。 (笑)
 
 ・・・。
 って、あんまり思ってること書けてないな、まだまだはったり度が足りませんな、私。 (違)
 
 
 
 という辺りで、今日は終わりにしておきましょう。
 うん、お終い。
 ではまた、ごきげんよう。
 皆様に良い夏が訪れますように。
 
 
 
 
 

 

-- 090717--                    

 

         

                               ■■ 狼と銀色の闇 ■■

     
 
 
 
 
 『やはり、ひとりで行ってもしょうがない気がしての・・・そっちに連れていって貰えるなら銀貨は返しんす。』
 

                                〜狼と香辛料U・第二話・ホロの言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 銀色に輝いていた。
 それは、月明かりの下で、立ちながら、泣いていた。
 正直、俺は未だに銀貨の鈍い輝きを、美しいと感じたことは無い。
 今だって、懐を暖めている小さな円形達の重みを感じながらも、一向にそれを愛しいと想えた事は
 無かった。
 その、ひとつ分なにかが欠けた想いが、なぜだろうか。
 今、目の前で伸びやかに滑る銀の裸身の、そのあまりに刹那的な輝きに動じるこの胸のざわめきを、
 それこそ永遠に根絶やしにしてしまっていた。
 こいつは、異形だった。
 狼の正体を顕す以前に、その人の形をしながらあっさりと生やしている、その狼の耳と尾があるだけで、
 それは驚きと戦慄に値するはずのものだった。
 はずの、ものだったんだ。
 美しくは無い。
 それはただ、溢れるばかりに、輝くばかりに、俺の懐の中で愛しくあるべきはずの、その淫らな銀貨達
 の重みと繋がる、どうしようもない月光の香りだった。
 
 豊穣、という言葉を、どこか遠くで感じていた。
 実感が無い訳じゃ無い。
 金を貯め、家を買い、所帯を持って、出来る限りの贅沢と節約を重ねる、そしてなによりも発展と衰退
 を孕むおどろおどろしくも色鮮やかな生活を、夢見ていた。
 いや・・・俺は確かにその生活を計算していたんだ
 それが世上に流布する一人前の商人としての生き様であろうとなかろうと関係無く、ただ俺はその
 俺の描いた絵図面を、ひとつずつ細やかにしていくことが、好きだった。
 銀貨ひとつ分稼ぐたびに、その鈍い重みはどろりと深く溶け、絵図面を俺の夢に浸す色彩となっていく
 のを感じていた。
 俺の稼ぎが、俺の策動が、俺の動きひとつひとつが、丁寧に夢に換わっていくのが、生き甲斐だった。
 すっきり、するんだ、そういうのが。
 俺は、それで充分だった。
 その様を深めていくことに、俺のすべてを懸けることは、ただただそのままの事だった。
 
 俺は、銀貨が好きだ。
 商売が、好きだからだ。
 商売が好きなのは、俺の夢を実現してくれるからだ。
 俺は、俺の夢が好きだ。
 俺は、俺の夢のままに、生きて、生きたい。
 俺にとっての世界というのは、まさにその一点に尽きた。
 
 
 
 
 − その銀色の影の奥の、その紅い瞳が−
 
 嫣然と、笑った
 
 
 
 俺にはそのとき、なにが起きたのか、わからなかった。
 いや、なにも起きていなかったのかもしれない。
 それなのに俺は・・・・そのとき・・・どうしようもなく・・・感じてしまったんだ・・
 俺の、俺こその見えざる世界の、その存在の肌触りを・・・
 いや・・・
 むしろ、見えている世界を必死に支え、その背に込めた力の限りに、目の前の銀色の当然から目を
 逸らしている、その俺の存在を、広大無辺に感じたんだ。
 そのとき俺は、俺を感じた。
 金儲けがしたい。
 その純粋無辺の欲望を否定する、教会の論理に心触れる事は無い。
 俺はそのとき、その目の前の銀色の存在に、俺の胸の水底を確かに照らされていた。
 金儲けがしたい。
 もっともっと、俺のやりたいことをやりたい。
 その今まで通りの純粋無類の渇望は、果てしなく、その銀の中に犇めく紅の魂と繋がっていた。
 そうか・・・俺がこいつに惹かれるのは・・・・・
 
 俺とこいつの求めるものが、全く同じだからなんだ。
 
 稼ぐ論理と商売の手段の蓄積、人間関係の醸成、経験と体験の描く強固な螺旋。
 俺は、それらの価値をただ、夢の元に従属させることでしか獲得する事が出来なかった。
 貧相、だった、という事なのかもしれない。
 俺が俺として、商売人として得たものすべて、それ自体に価値などありはしない。
 そのことを、あっさりとその目の前の銀色、賢狼と嘯くホロが暴いてくれた。
 誇りと驕りの錯綜した、否定と反動と、もう、なにがなにやらわからなくなった果てに得た、行商人の
 クラフト・ロレンスとしての矜持の中でしか、いつのまにか生きられなくなっていた事を、ホロは嗤ってくれた。
 その、俺の小さな自信を、薄笑いを浮かべて、虫けらを摘むようにして受け止めてくれながら。
 まったく、いい根性してるよ、こいつは。
 俺自身が、俺が本当に抱くべき自信を探さずにはいられなくなってくるじゃないか。
 俺は、金儲けがしたい。
 でも、俺が此処にこうして存在していることと、それはイコールでは無いんだ。
 俺は、金儲けがしたいと思う俺のままに、それ以上の世界と触れている、その見えざる俺として、
 この世界のすべての豊穣を貪っていきたい。
 恬淡とした食彩へ圧倒的にかぶりつく、その目の前の強欲な狼に、見惚れていた。
 未だ鮮明な銀に、俺は魅せられている。
 行商人としてだろうとなんだろうと、それ以前にひとりの存在として抱くあらゆる欲望を、この神と呼ばれた
 ひとりの狼は、大らかに、深く鮮やかに認めてくれる。
 嬉しかったんだろうな・・・・俺はきっと・・・
 夢をただ実現するだけのものとして、ただ金を稼いでいく他人と社会を道連れにした、その独り遊びに
 興じている自分に、寂しさをどこかで感じ、そしてまたどこかでその寂しさを押さえつけ隠す事も商売人
 の心得のひとつとしている、その自分の虚しさに耐えるばかりになっていたのだろうな・・・
 
 
 俺はなにかを、随分と昔に、諦めていたんだろうな。
 
 
 その諦めた分だけ、俺は頑張って生きねばならないと、そうしようとしていた。
 自らに強いたであろう犠牲を無駄にしないためにもと、心の中で嘯きながら、俺はその犠牲を為した
 諦めを堂々と正当化していた。
 未だ変わらず、俺が諦めたときから、俺が生まれたときから、その遙か以前から、ずっとずっとこの目の前
 の世界の、その圧倒的な豊穣は存在しているというのに。
 俺は、自らを正当化してばかりいた。
 俺自身の弱さに身を委ねるために、そのためにこそひとつずつ諦めていったものに、無責任に価値を
 与えながら。
 放っておいても、俺がいなくても、大丈夫だよな。
 俺は・・
 俺はたぶん・・・・ずっと・・・
 そうして、俺が見捨ててきた世界の命達を置き去りにする事の中でしか、俺を生きられなかったんだ。
 俺は、金儲けがしたい。
 夢を実現するかどうかに関わらず、滅茶苦茶に、貪欲に、激しく、どこまでも無限に。
 自らの行き会った、すべての欲望の対象と手を取り合いながら、圧倒的に生きていきたい。
 今この瞬間の、刹那にどよめく、俺の存在のままに。
 其処に、銀色に輝く、ホロがいた。
 俺と同じものを見ている、そいつがいた。
 俺とホロの瞳が重なるとき、そこに俺達が此処にいるままに生きたいと願える、広大無辺にして純粋な
 豊穣に満ちた世界が拓けていく。
 その銀が、俺の夢に溶けているものと同じであることを、感じていく。
 
 
 
 
 

俺は

 
 
 

まだ これから

 
 
 

世界を識りたいという

 

その俺の果てしない欲情に

 
 

負けて逃げる、気がしないんだ

 
 
 
 
 
 
 ホロがいない。
 俺が目を閉じているからだ。
 ホロがみえない。
 なのに、ホロの姿が描き出す、鮮烈な世界のどよめきは、その広がりと深まりを止めることが無い。
 俺の心は、賢狼と出会ったときから、ずっとずっと震えていた。
 俺はもう、俺を諦めねばいけなかった頃の俺では、無くなっているのじゃないか?
 俺はもう、俺の見えざる世界と向き合う力を取り戻しているのじゃないか?
 このまま、なにもせずになにも考えずに、俺の夢の世界の現実に引き籠もる気にはなれなくなっていた。
 心震え、心躍る。
 負けてなどいられるか。
 ホロの話をきいた。
 ホロの伝説をきいた。
 伝説の中のホロは、まるでもう、ホロそのものに楽しげに愉快に、生きていた。
 不思議なものだ、俺の識らない世界の事を聞くたびに、それが俺の中のなにかとどうしようもなく
 繋がっているということを感じる事が出来るなんて。
 賢狼を名乗るホロという名の巨大な狼が、大活劇と和やかな物語を繰り広げる。
 伝説上の存在達がそして、俺の知らない者達がそして、俺の知らない楽しい魂のままに生きている。
 俺はその楽しさと嬉しさと、生きる歓びだけは、知っている。
 
 なぜなら。
 伝説上の存在としてのホロが、こうしてひとりの存在としても俺の目の前の其処にいるように。
 俺の描いた夢の実現者としての俺が、こうしてひとりの存在としても俺の中の此処にいるのだから。
 
 面白いよな、まったくあいつは。
 普通、俺の知っている伝説上の存在というのは、もっと厳かで神聖な感じがするもののはずなのに、
 ホロに関するそれらどの物語も、陽気でお気楽な、実に楽しげなものにしか聞こえないのだから。
 目の前にいるこいつを、そのままてらいなく、歌い踊るままに素直に書き綴ったようなその物語は、
 俺が今まで聞いてきた話の中で、一番暖かく、そして・・・・
 そして・・・なんだか・・・・・嬉しい悔しさを、俺に与えてくれるものだった
 くそっ、金の亡者になったとしても、こんなに世界を愉しむことは出来るんじゃないか、ってな。
 俺にはまだまだ、いや、それどころか、俺には初めから、俺の知らない世界の彩りが在り続けているんだ。
 俺は、そういう伝説や物語を聞くのが好きだった。
 けれど、いつからだろうか、それをただお伽噺として、現実の慰めとしてだけ聞くようになったのは。
 俺には識らない世界があり、俺の識らない世界を確かに生きている者達がいる。
 それだけの、ことだった。
 それだけの事が、たったそれだけの事が、俺が俺でいるというだけの事を維持するためには、重大な
 障害だったんだ。
 情けない。
 その情けないという一言を抹殺するためだけに、俺は俺として行商人としての俺の像を築いてきた。
 もし本当に、俺が聞いた伝説や物語のような世界があったら・・・
 その俺の呟きを、ただ世迷い言として綺麗に片付けていた、今までの俺のいやらしさを痛感する。
 俺が伝説や物語を好むのは、俺が現実から目を背けるためじゃ無い。
 俺が伝説や物語を好むのは、俺が築いた現実という俺の見るべき世界の隠蔽を、それを暴露しようと
 する、俺の強靱にしてなによりも根深い、俺の強い欲望があるからだ。
 俺は、強欲だった。
 俺の描いた夢を実現させる小さな現実で事足りるほど、俺の胸の水底は浅くは無かった。
 俺はその水底のさざめきから、逃げられるか?
 逃げられると、思うか?
 
 
 
 
 
 目の前の
 
 
 その銀色なるままに咽び泣く、ひとりの狼を置き去りにして、逃げ出せるか?
 
 
 
 
 
 
 俺の瞳の中でホロが躍動するたびに、俺の中の銀色に輝く商人魂が引きずり出されてくる。
 それこそ命懸けで、俺は壊れるほどに脳漿を掻き混ぜて、目の前に迫る命題を解いていく。
 ホロの涙の一滴一滴が、涙として顕れる前に、銀貨となってぽとりと凄艶に着地するのがみえる。
 つくづく、貨幣というのは人間の為した最も偉大な発明品だと感じるよ。
 俺達の尽きせぬ欲望に乾杯だ。
 ホロが、其処にいる。
 俺はそれから目を背けられない、いや、背ける自分をもう、許せない。
 ひとりのホロが、其処にいる。
 俺はホロのことを、なにも識らない。
 俺が俺の築いた限界の中にいようとする限り、その外にいるホロを識る事は一生出来無い。
 俺が俺の知る世界の中で、どれだけその文脈で人生を綴ろうとも、新たな、すぐ側にいる俺の見え
 ざる世界の豊穣に触れることは叶わない。
 伝説は、物語は、入り口への案内状にしか過ぎない。
 その案内状を有り難がって、それを読む愉しみ自体に興じているだけのうちには、決してその知らざる
 世界の魂に辿り着くことは出来無い。
 俺はなにも、識らない。
 俺はだから、俺の触れ得るモノを増やしていきたいんだ。
 そして俺は、ホロと出会った。
 いや。
 ホロに辿り着いたと言うべきか。
 ホロを通して、今此処にいる俺を感じた。
 行商人として、明晰に綴る俺自身の物語にぬくもりと有り難みを感じながらも、それらの事を感じて
 いる俺自体が、此処にいて、他のすべての触れ得る世界に向き合い、そして少しずつその中に
 確かに生きている俺を感じ始めてもいた。
 俺は、ホロの物語を知っている者の前で、俺も知る別のホロの物語を語って聞かせた。
 こんなに楽しいことは無い。
 なんだ、みんな知ってるんじゃないか。
 俺も、こうして知っているんじゃないか。
 俺達には、俺達の未だ触れていない、しかしその存在を知っている世界があることを。
 共に話を聞き、共に話をした者はこう言った。
 いつからだろうか、こうした話が作り話にしかみえなくなってしまったのは、と。
 それはきっと・・・・
 
 
 
 
 ホロがいる。
 怒りを覚える気さえ失うほどに、傲岸に俺を誘うその言動が、何度でも俺の目を曇らせる。
 どうしても俺には、そのホロの言葉の裏を勘繰る事がやめられない。
 それは未だに、ホロの正体を疑っている事と、どこかで繋がっている。
 あいつは本当に狼なのだろうか。
 もう既に、巨大な狼の姿を目の当たりにしているというのに、もはや疑う余地は無いというのに、俺は
 どこか腰が引けている。
 俺の優しさは、誠実さは、それの反動でしかない。
 どんなに強固な意志だろうと、それはその臆病な俺の上に成り立ったものでしかない。
 なのに、ホロは・・・・・それだけは、嗤ってくれないんだ
 気付いているのか気付いていないのか、いやあいつのことだ、気付いていないなどということは無いはず
 なんだが、しかしどうしても俺は、あいつもまた自分の見たくないものから目を逸らして、ほんとは気付いて
 ないんじゃないかと、そう都合良く解釈してしまう。
 そして、俺は・・・・・期待している・・・
 いつのまにか俺は・・・・あいつと見ていた同じものを・・・
 あいつもまた・・・俺と一緒に無視してくれるんじゃないか、と・・・
 最近、あいつとの間に溝が出来ている。
 そしてなにより、その溝で空けた距離を、うっすらと互いに認め合ってしまっている。
 このままでいいはずがない、でもこのままでいいと言える、そんな方策はないものか・・・・
 俺は、そう考えている自分に、近頃よく気付く。
 なにより、それを覆い隠すようにして、必死にホロのために、ホロの事を理解しようと懸命になっている、
 その無様な俺の姿を感じるたびに、その事がより鮮明に俺に顕れてくる。
 ホロが物語上の住人でもあることが、正直嬉しかった。
 そして、そのホロがこうしてひとりの狼として、確かに俺の前に生身のホロとしていることを感じることで、
 俺は俺の識らざる世界の入り口に、どうしようもなく辿り着き、そこで生きることになっていけた。
 俺は、静かに興奮を覚えていた。
 だが・・・・
 
 
 ホロにとって、俺は一体なんだろうと、その思考をまるでしていなかった俺の事が、不安になったんだ。
 
 
 俺は、ホロにとっての俺の価値を、知らない。
 そして同時に、今此処にいる俺にとってのホロの価値を、ひとつしか未だ知らないことに戦慄している。
 俺にとってホロは、俺に知らざる世界に至る可能性を与えてくれる、そういうだけの存在なのだろうか?
 ホロにとって俺は、自らの孤独を癒し、共に世界を旅して楽しむパートナー、であるだけなのだろうか?
 俺にはわからない。
 それがどうしても、わからない。
 あいつを抱き締めてやるその力には、その俺の不安がそのまま宿っている。
 いや、その不安があるからこそ、俺はホロのことを気遣い、そして理解しようとしている。
 俺はホロが欲しい訳じゃ無い。
 俺はホロを慰めたい訳じゃ無い。
 なんだろうか。
 まるで子供だ。
 どうホロに接していいかわからない、という言葉を綴るたびに、その綴りが間違っている事に気付くばかり。
 
 
 − ああ
 − 夢がみえる
 
 目を開けるばかりに見開いて、ホロがまた、俺の人生の中の世界に埋没しているのを、識った。
 それが少し嬉しく、けれど同時に、違和感を覚えた。
 ホロが必要か?
 俺にホロは必要か?
 ただ出会い、ただ別れるばかりの、ただそれだけの存在か?
 ホロが俺の知らないところで伝説を築いていた事の歓びと、今目の前にホロがいない事の苦しさに、
 全くその矛盾を感じることは無かった。
 俺がいなくても独りで祭りを楽しんでいてくれると信じられる嬉しさと、今目の前からホロが去るかもし
 れないというどうしようもなさに、全く違和感を感じることは無かった。
 矛盾していると考え、なにかを耐えている俺にこそ、違和を感じる。
 ええい、くそっ!
 
 
 
 
 

わからないなんてこと、ないじゃないか!

 
 
 
 
 
 ああ、付き合ってやるよ。
 お前のしつこくて頭の下がる、手練手管に、全部向き合ってやるよ!
 わからないなんてこと、無いんだからな。
 わからないなんて言ってる暇は無いんだから。
 時間は刻々と流れ、俺もお前も互いの前で生きている。
 お前の言葉の裏を勘繰ることすら出来なくても、それをお前が罵倒してくれなくても。
 俺は、お前を追い掛けてやる。
 どこまでも、いつまでも、ヨイツの森にまでだって行ってやる。
 ああ、そのために。
 
 そのために、銀があるんだろ? ホロ。
 
 
 この広大で、深遠で。
 そしてなにより豊穣に震える世界を埋め尽くす、その幸福と富の顕現したものとして、銀貨がちゃりんと
 音を立てて、お前の、俺の、この胸を満たす銀色の水底を震えさせてくれるんだ。
 お前といるだけで、俺は楽しい。
 物語の中で、物語を愉しみながら、共に夢を打ち立て、それを叶えるための手筈を遊び、そしてその
 すべてをあっさり投げ捨てて、踊り酔い、酒を酌み交わし歌う、俺達の当たり前の旅が、俺の幸せだ。
 いや。
 
 
 それが、俺が生きているってことだ。
 
 いつだって、この世界は、無限に広がっているんだな。
 まるで豊穣な月明かりに照らされて浮き上がる、銀色の闇のように、な。
 
 ああ、くそ。
 お前のことが気になって仕方が無い。
 勘違いするなよ? お前は俺の趣味じゃ無い。
 お前なら俺が嘘を言っていないということはわかるだろう?
 ふふん、お前を如何に騙すか、それを考えることが楽しいんだよ、俺は。
 俺とお前はパートナーだ。
 そのパートナーが、独りに堕ちようとしているのを黙ってみていられるほど、俺は毒されてはいないぞ。
 
 
 
 俺は、お前が好きだ、ホロ。
 
 
 なぜなら、お前といると儲かるからだ。
 
 
 
 お前なら俺が嘘を言っていないということはわか・・・っうわ、いやほんとそういう意味・・やめろ椅子はやめ
 
 
 
 
 
 
 
 ようやく
 
 俺は
 
 
 ホロを本気で怒らせたいと、そう思ったのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ◆ ◆
 
 新境地、到来。
 
 第一期での蓄積をすべて一気に爆発させたような、そのロレンスの大展開。
 これは、あまりにも期待が持ててしまうほどの、そのあまりなロレンスの大活躍。
 今までの話で、これほどロレンスが描かれた事はありませんでした。
 第二期に入ってから、この狼と香辛料という作品の屋台骨のひとつである、ひとりひとりのキャラの仕草に
 ちょっぴり意味を付け足す、というものが非常に増量して盛り込まれているのですが、それらの担い手の
 ひとりとしての、ロレンスの男としての魅力が、たっぷりとホロへの迷いに滲んで、大変素晴らしく描かれて
 いました。
 そういう意味では、今回はロレンスを含む、まさに男回でした。 (笑)
 アマーティのあのバレバレっぷりは、どうですか? (笑)
 ロレンスの鎌かけと誘導に引っ掛かりあっさり利用される、そのホロへの盲目っぷりが可愛すぎでしたし、
 そしてあの年頃の男はなにをするかわからないという言葉通り、そのロレンスに利用された盲目っぷりが
 どんどんとホロへの接近を許して、ロレンスは気が気では無くなったり。
 ほんとになんでもやりそうですもんね、あれは。 (笑)
 ホロの話だけで、アマーティの盛り上がりっぷりが充分想像出来てしまうのは見事の一言に尽きました。
 そして今回初登場のバトスもまた、教会に排斥された人達とも堂々と交流をするという、そのフランク
 さの中に見える意志の確かさが、あの手慣れた社交辞令(笑)の暖かみに良く表れていてとても気持ち
 良く、またそれを元にした自らが築いてきたモノすべてに対する、その驕り無き真摯な眼差しが清々しく
 、非常に好感の持てる人物を描き出していました。 あの人になら騙されてもいい。(ぉぃw)
 それと、ロレンスの古馴染みであるマルクの熱い恐妻家ぶり(笑)が、一気に彼の株を上げていましたし、
 ディアナの勢力圏への収められっぷり(笑)が魅力のバトスと、そして勿論ホロの蹂躙と搾取(笑)に喘ぐ
 我らがロレンスと合わせて、この作品に男の懐深い粘り強さという魅力が、より一層クローズアップされて
 きていて、狼と香辛料というものの幅を大きく広げていくことになりました。
 
 これはなんともいえない、嬉しさと、歓びですよ、まったくもう。 (溜息)
 
 いうなれば、ホロが、女達が独りで突っ走ってるだけの事にならなくて済みますものね。
 私はホロをツンデレ的に見つめることは、ホロの突っ走りを生暖かく見つめて、そして美味しいとこだけ
 持っていくという、非常に卑怯な感じがするので好きでは無いですし、またロレンスがそうしてただ
 ホロの事をやれやれしょうがない奴だと言って、甘く大きく構えぶって自らの許容範囲のうちに収めて
 いくだけの男なら、全く切り捨てますし、またそうだとしたらそれだけでこの狼と香辛料という作品の価値
 は半減してしまうと思います。
 ロレンスのように必死に考えて、懸命に振り回されて、己のすべてを尽くしても追い付けない、その
 自分の外にあるホロになんとしても辿り着こうとする、或いはマルクのように嫉妬の炎に燃える自分を
 肯定するために論理を使ったり、それこそアマーティのように完全に入れあげてのぼせ上がってしまう
 方が、男としての魅力、いえ、男としての価値は上なのじゃないか。
 男が自分の範囲内だけでそのでかい背中を魅せ付ける事と、自分の限界を超えていく事と、どちらが
 すごいことなのか。
 
 
 けれど、これは一面的な見地にしか過ぎません。
 
 
 現在のホロは、ある意味疲れています。
 というかぶっちゃけ、ロレンスに大きく構えて欲しいという、その女としての甘えがホロには滲み出てあり
 ます。
 ロレンスに頼りたい、いえ、ホロがなにもしなくても、絶対に其処にいてくれるロレンスが欲しい。
 それは、不甲斐無い亭主マルクの妻アデーレもまた、マルクの可愛げさを抱き締めながらも、同時に
 だからこそこの駄目亭主をもっと大きくしっかり者にさせたい、イコール頼れる男が欲しいというその願望
 とも繋がっています。
 ホロもアデーレも、基本的にはその男への甘えがあることを自覚していますし、そしてそれがなによりも、
 ホロとしてのアデーレとしての「自分」の喪失を招く、或いはホロというアデーレというひとりの存在として
 の自分が、それ以外の他者、特に男に晒されているという事実から目を背けることで、その他者を
 失う、「他者無き世界」に佇む孤独の自分しか無くなってしまうことをなによりも深く憂いているからこそ、
 その甘えが自らの命取りになることをよく知っています。
 そしてその甘えという自らの弱さを、「恋」というもので自己正当化しようとしてしまう、その自分を怖れる
 からこそ、ホロにしろアデーレにしろ、気を張って突っ走ろうとする。
 ゆえに、ロレンスが奮起して、どこまでもホロを追い掛けてきてくれるのは、ホロとしては大変に嬉しいこと
 でもある。
 でも。
 
 「恋」とは、そういうものでしか、無いのじゃろうか?
 
 ホロは、自分の甘えが、弱さとして切り捨てるものでしか無いということに、疑問を持ち始めています。
 その甘えがたとえ命取りになる猛毒だとしても、しかし、毒は使いようによっては薬になるのではないかや?
 猛毒ならば、それはなにより良薬になる可能性を秘めていると、そうは言えないじゃろうか?
 ホロは今おそらく、ツンデレでいうところのデレを、実行しています。
 そう、ロレンスに取り込まれ男の愉しみとされてしまうであろう、「毒」としてのデレを。
 けれどホロは、その「毒」を「薬」に換えようと模索しながら、あくまでそのデレを発動しているように見え
 るのです。
 ところが、ロレンスはホロにとって幸か不幸か、ホロのそれをデレとして捉えずに、ただただホロを真摯に
 追い掛け、懸命にホロの世界に至ろうとしているのです。
 これは、ホロとしては、困った状況なのです。
 ホロは敢えて、デレという危険分子を取り扱う覚悟を決めているのに、ロレンスはホロを「心配」して、
 ホロにデレを見込むこと無く、無様に情けなくも素晴らしく男としてホロに迫ろうとしています。
 それが、今のふたりのすれ違い。
 ロレンスには、ホロがみえていないのです。
 ホロにとってのロレンスの価値を、ロレンスはまだ一面しか見ていない。
 
 今回のロレンスは、そのロレンスの魅力は、ある意味でホロの諦めが生んだものともいえる。
 
 ホロにとって、ロレンスは可愛い男であるだけではいけないのです。
 ロレンスの駄目駄目さを罵って、頼り甲斐のある男に仕立てようとすること以前に、そうした駄目駄目
 だけど可愛げのある男、それ自体の「キャラ」を生暖かい目で自分の範囲内でだけその様に「萌える」。
 それで、妥協すべきなのじゃろうか・・・
 今回の私の感想はロレンスで書いたのですけれど、これは確かにロレンス的見地で、そのロレンスの
 覚悟として書き綴ったものですけれど、これは実は、ホロが見抜き見つけた、そしてホロが歯噛みしな
 がらも掴まずにはいられなかった、ロレンスの萌え的魅力そのものを描いたものでもあるのです。
 ホロにとっては、今回のこのロレンスは、最高に可愛いく嬉しいものです。
 このロレンスを抱き締めるだけで、ホロはお酒一本空けられるでしょう。 いや、ホロならもっとか。(笑)
 でも。
 

 

 − それだと、ホロはそうして、独りで酒を飲むしかなくなってしまう −


 
 
 ロレンスで書いていくたびに、私はそのホロの哀しみを感じていました。
 ロレンスの考えていることはなにひとつ間違っていないし、その考えそのものはまさにホロが望んでいた
 通りのもの。
 だけど、それだけじゃ。
 それだけなんじゃ、ぬしは。
 いや・・・・
 わっちも・・・・・ほんとうは・・・・・
 どうしたらいいのか・・・わからないんじゃ・・
 
 
 でも。
 そのわからないという、その闇の深さこそが。
 
 
 なによりも圧倒的な、銀の輝きをもたらしてくれるのです。
 
 
 そう。
 そのホロに対して、ロレンスがこそ、一体なにをやらかし遊ばすのか、それがもう。
 それがもう、ハチャメチャなほどに、期待出来てしまうのです。
 これだから、狼と香辛料は底知れない。 (笑)
 このホロの哀しみに閉じるでも無く、ロレンスが限界を知ったという負け犬の論理に縛られ終わるでも
 無い、その閉じと終わりを充分踏まえながらも、それをこそ頑丈な踏み台として、そこからこそ高く深く
 歩み出す、なによりそうとしかもう思わせてくれないような、この絶対的な強さが、この作品のやはり、
 最大最高、そして最深の魅力でしょう。
 これだけのホロとロレンスのずれっぷりを、ロレンスの「たわけ」さという魅力でしっかりと土台にして固めた
 のですから、ここからくる、あの第一期で散々魅せてくれた、ロレンス一世一代の閃きの凄さがもう、
 想像を絶するにあまりあります。
 次回がもう、楽しみで堪りません、ていうかもう待てへん。 (笑)
 
 ちなみに、今回ラストのあのロレンスは一体なにをマルクの弟子の小僧から聞いたのでしょうね?
 流れ的には、アマーティが、ホロがロレンスにしたという大借金を代わりに返す、とか息巻いて、ロレンスが
 すっ飛んでいった、というのが近いのでしょうけど・・・色々無理ありますね、それも。
 なぜそんな話がマルクのところに来たのか、それにそれはロレンスがあそこまで慌てて出ていく事なのか、
 というか急ぐ必要は無いですし。
 次回の布石なので気になりますね。 案外、クロエとかが押し掛けてきて、あれは駆けつけようとしたん
 じゃ無くて逃げてた、とかだったりしたら、素直に笑えます。 (笑)
 
 あ、それとすっかり忘れてましたけど。
 ディアナねーさん萌えww
 ストライクwww
 お前なら俺が嘘を言っていないことはわかるだろう? byロレンスwww
 あーいうヒトにわたしゃ弱い、弱すぎるw
 静かだけど寡黙では無く、優美なんだけどたおやかでは無く、きつい堅さはあるのだけれど融通はだいぶ
 効く。
 というか、戸棚から酒瓶をほっそりと出してきて、お話会だなんて、そこで陥ちたね。 (そこかw)
 それと。
 『俺は嫉妬の炎で燃え上がっちまうぜ!』 byマルク
 『そしたら私はその火で、アマーティさんに美味しいパイを焼いてやるよ。』 byアデーレ。
 ・・・・拍手ww
 
 
 と、いうところでしょうか。
 はー、たっぷり書いた、思う様書かせて頂きました。
 ああほんと、狼は良いですねぇ、書いてて実に気持ちいー♪
 ホロもホロとて、くるくるとまぁ、第一期にも増して誘惑な仕草の連続で、ほんとようやるというか、
 もっとやれというか(笑)、おまけにだいぶ色気付きになってきたというか、というか酔っぱらってお腹一杯
 で、ベッドに倒れ込むときの服を脱がして貰うっぷりが・・・・いやあの、最後の帽子の取られっぷりなん
 かエロすぎでしょw
 ま、狼はこの辺りを限界としていくのが、この作品の作風と色合いにぴったりですので、あざとくても、
 丸出しなのはやめといた方が得策でしょうね。 狼らしい艶っぽさで勝負しましょ。
 色々強調されても萎えるだけですし・・・・ってさっきからなに言ってんのなに言わせてんですか。 (笑)
 
 
 それでは、お名残惜しいですが、ってまだ第二話ですけど(笑)、今回の感想はここまで。
 第二話にして早くも波に乗ってきましたので、これからも遠慮無く油断無く、ガンガン頑張って書いて
 いきますね♪
 では、また次回、お会い致しましょう。
 狼万歳!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                              ◆ 『』内文章、アニメ狼と香辛料U」より引用 ◆
 

 

-- 090714--                    

 

         

                                ■■ 夏中に涼あり ■■

     
 
 
 
 
 ごきげんよう♪
 
 
 体調不良完全に治りました。完治、完治♪
 心配してくださった方々、ありがとう御座いました。
 てか、完治報告遅れてすみませんでした、いや狼で踊ってて忘れてましちゃってw
 今まで通り、これからもバリバリと飛ばしていきますので、どうぞ応援よろしくお願いします。
 応援っていうか、生暖かい眼差しでじっとり見つめてくださると嬉しいです。(ぇ)
 
 
 さて。
 狼です。
 狼と香辛料U。
 ・・・・。
 どうしよう、どうしよう、どうしよう。
 胸のざわめきが収まらないっていうか、おろおろ、狼狽えてます。
 だってさぁ、あれですよ?、期待はしてた、確かに死ぬほど期待してた。
 私の期待を裏切ったらあなたを殺して私も死ぬみたいな、悲愴な覚悟で頭一杯にしてた。
 そしたらさ、あれよ。
 ・・・・。
 べつの意味で、ほんとに死にたくなって、困った。
 いやほんと困った、死にたくない、てかこんなの観ちゃったら死ぬ訳にいかない。
 死にたくなるほどに、面白かった。
 生きてるのが辛いほどに、すごかった。
 息がつまるとか止まるとか、そんなレベルじゃ無かったもの。
 心が、停止した。
 震えて。
 凍えて。
 今私が此処にいることが恐ろしくてどうしようもないくらいに、この狼第二期の存在感は圧倒的でした。
 病み上がりの私への気付けが逆にトドメになってしまうような、そんな、溢れんばかりの狼。
 いやー・・・・あれだよもう、すごいよすごいや。
 ここまですごくなるなんて、夢にすら観てなかったもの。
 私が狼二期に期待していた想像妄想全部捨てたって追い付けないくらいの、完全に私の予想の
 斜め上を全力疾走してましたもん。
 あー駄目だ。
 冷静にこの作品の良さを表現することなんて出来ないよ。
 ただただ、心震えるばかり。
 うん、なんていうか、久しぶりにあれですね、私の懇切な説明で狼の良さをお伝えするより、私の
 震えっぷりを見せびらかす事で、私をこんなにさせた狼のすごさを感じて頂けたらと、そういう気持ちで
 御座いますよ。
 ひゃっほーい。
 心が小躍りして、体は尻尾降って庭駆け回っている状態です。
 もうあかん、このペースでいったら私死ぬ。
 というか、段々硬直してきた、心止まってきた。
 散々狼の魅力を語ってた奴が急に黙り込んだみたいな。
 他のアニメの良さを嬉々として語っていた奴が、狼の話になった途端喋らずに震えるだけになったみたい
 な。
 洒落になってない。
 冗談じゃない、こんな、こんなもの私の前に持ってくるなよ。
 
 素になっちゃうじゃないか。
 
 余裕、ゼロ。
 
 この間ね、あ、ちょと話変わるけど、アニメ「蟲師」久しぶりに観たのよ。
 蟲師は私が最高のアニメと言って憚らないスペシャルなアニメなのよ。
 色んなアニメを観てきて、初めて蟲師に出会ったときの衝撃は、計り知れない。
 圧倒的、私が全力を出しても届かないその限界点。
 奥が深いというより、奥が深いのか浅いのかすら認識できない忘我の状態。
 そういうアニメは他にもあったけど、蟲師はそれら他の作品のすべてのそれを全部合わせたよりも、
 その度合いが大きかった。
 最初に出会ったとき、死ぬかと思った。
 そして、またそれから色々なアニメを観て、そして蟲師を特別視しなくても済むほどに、私は沢山のアニメ
 のその「愉しみ方」を開発して、それぞれに見合う作品を獲得していった。
 狼と香辛料第一期もそのうちのひとつだった。 というよりその最たるものが狼だった。
 確かに蟲師は最高の作品ではあるけれど、狼と香辛料は一番好きな作品だ、と。
 そうして私は蟲師後、様々な「一番」の作品と出会っていった。
 そして、蟲師を久しぶりに観た。
 これまで観てきたアニメの、全存在を捨ててもいいと、素で思った。
 狼さえも捨てていいと。
 なんだこれ、なんだこれ、これ、私が価値を開発しなくても、蟲師は無条件で圧倒的じゃないか。
 蟲師の虜になった。
 蟲師の呪縛から逃れられなくなった。
 どこかにきっと、蟲師がある。
 他のアニメなんて、狼なんて、「私」がいなければなにもできないじゃないか。
 私は、蟲師に抱かれていた。
 常にどこかで、蟲師的な無条件な「圧倒的さ」を求め、そうでは無いものを無意識に切り捨てるよう
 になりかけていた。
 
 蟲師を信じたら、他のものが信じられなくなっていたんだよ。
 
 勿論それは、そこまではっきりしたものじゃなく、うっすらとしたもの。
 だけど、私の中にはそうしてなにか勝手に選別を行ってしまう自分に、身を委ねる空気の流れのような
 ものが出来つつあった。
 そうしたときに。
 狼と再会した。
 狼と香辛料第二期と出会った。
 
 ああ、なんて私、馬鹿なんだろう。
 
 嬉しかった。
 なによりも、なによりも、狼と出会った瞬間のそれは、嬉しさと歓びだった。
 なんだろう、なんだろう、どうしてこんなに嬉しいんだろう。
 なにも考えなくても、蟲師のように圧倒的無限の思考と感情の渦を予感出来るかどうかに関わらず、
 ただ、目の前に広がるものと出会えて、嬉しかった。
 それは。
 愛だったんだよ。
 狼と香辛料という作品とまた出会えた歓び、萌え、確かにそれもあるよね。
 だけどさ、それ以上にさ、私が嬉しかったのはさ。
 私が、どうしようもないくらいに、「無条件に私を虜にしてくれる」事とは関係無しに、私自身として
 目の前の作品に震えることが出来るようになっていたからさ。
 そのとき私は、怖いくらいに、私を感じたんだ。
 私のことを、私の存在を、私の思考手順を、私の感情経路を、想いを、愛を。
 感じたんだよ。
 色んな作品を観てきて、自分で新しく価値を開発して、沢山の「一番」といえる作品を獲得していって、
 それは蟲師と再会したことで、そうして私が手を加えなければそれらの作品は私を虜にはしてくれない、
 という感慨をもたらし、そして私の前からその影を一瞬薄くした。
 でもね、狼とこうして新しく再会して。
 うん。
 私はもうとっくの昔に、そうして私が作品に手を加えるという事自体、自動的に無条件に達成し、
 自分がそうしているという意識無しで圧倒的に目の前の作品と向き合うことが出来、そして蟲師と
 同じようにその作品にどうしようも無く抱かれることが出来ているじゃないかと、深く感じることが出来た
 んです。
 ああ、もう、これあったりまえのことじゃんか。
 蟲師だって無意識に私が手を加えてるし、私がなにがしかの価値観を作り見出すからこその、圧倒的
 な「私」の蟲師の深さだったんじゃないか。
 そりゃ、狼も同じじゃーないか。
 嬉しすぎた。
 好きすぎた。
 なにも考えずとも、なにを考えていても、じっとりと微笑みの満ちてくるこの胸の中に、確かに震える私
 はいた。
 私が此処にいるからこそ、目の前に貴方がいる。
 でも、貴方が目の前にいるからこそ、私は此処にいる。
 ああもう。
 楽しいなぁもう。
 
 私はまた、狼に恋をしました。
 
 なにが最高かとか、んなもん決まってる。
 私が恋したものが、全部最高なんすよ♪
 
 
 
 さて、どう落ち着かせようかの。  ←小躍りして庭駆け回り続けてる人をみつめながら
 
 
 
 
 
 ◆
 
 さて、狼話ですっかりやにさがって調子に乗りすぎてしまったので、粛々と手早く進めます。
 まずは、まだ書いてなかった今期開始アニメのプチ印象。
 ・・・・遅すぎますね、もう二話とかいっちゃってますもんね、遅すぎですね、ごめんなさい。 (土下座)
 
 CANAAN:
 アルファベット表記はめんどくさいので、以後カナンと呼称。
 2話まで視聴。
 で。
 うーん、ぞくぞくっと、ぞわぞわっとする。
 なんじゃこの生命の滲み出る感じのしなやかさは。
 んや、しなやかさ違う。
 なんだろ、ただもう、此処にいるという事自体の激しさというか煩わしさというか、画面の中に人ひとりが
 いるだけで映るだけで、なんでこんなに激しい感覚を呼び覚ますんだろ。
 生きてるとか生きてないとかじゃないし、想いとかリアルとかそういうワードもお呼びじゃ無い。
 むしろこの作品に語るべきテーマなんぞいらいないし、テーマを嘯く何者かがひとりひとり犇めいている
 というただその感触だけで、お酒を一本空けられる。
 やばいやばい、これは色気ありすぎますぜ、親分。
 本能剥き出しいうより、本能だだ漏れ。
 いや逆か、服着たまんまお風呂に入ってるような泳いでるような、ああもうどうでもいいやみたいな感じ
 なんだけど、開き直るよりはあまりにそのままなその感覚。
 異世界なり異界に入り込むような、その一線を越えるか越えないかの話では無い、ただいつもしている
 当たり前の事を「しなかったら」どうなるだろう、あ、もちその事に違和感感じるのも無しでよ、そしたら
 どうなるんだろそれを当たり前の事としていったらどうなるんだろ。
 それは、世界が変わるのでも無く自分が変わるのでも無く。
 ただ。
 他者を知ることとなる。
 愚かなる他者の賢さを。
 賢き他者の真なる賢さを。
 人は皆、自らの生存に於いて、最高の智者である。
 生きて此処にあるって事自体もう、最大最高の選択の成功を表してる。
 それ以外の「成功」など、些末な枝葉のものでしか無い。
 他者を貶め自らの賢さを感知するとき。
 その自らの賢さが些末な枝葉に依拠したものでしか無いと、改めて気付けたとき。
 人は己の闇を、そして己の「他者」を識る。
 その生きて此処にいるということの凄みを、豊穣にやっているこの作品はお見事です。
 というか欲情する
 
 懺 さよなら絶望先生:
 一話まで視聴。
 まず最初に正直にはっきりと言っておきますと、私はこの作品は好きじゃ無いです。
 というかね。
 揶揄とか嘲りとかそういうのが嫌いというか。
 それは人道的とか平和主義とかそういう見地からそう言う訳じゃ無くて。 いや平和は好きだけどさ。
 なんていうか、みみっちい。
 こういうのが好きな人には失礼な言い方だけど、揶揄とか嘲りとか、それ自体はほんとはべつにどうで
 もいいのだけど、それに依拠して他者を下に置いて自分を上に置く、という形での自己肯定の仕方が
 、なんというかすごく情けなさを感じちゃうのね。
 こうやって色んなことの間違いを指摘できる自分はすごいんだぜい、みたいな、そういうのが滲み出て
 いて、私としては不快指数が高いのよ。
 それが風刺的な単なる知的な問題の本質の指摘を愉しむ、ということならべつに愉しめない事も無い
 んだけど、そこで色気出して、というかそれがメインなんだろけど、それでなにかや誰かを蔑む事の方に
 主軸が置かれていく段になると、これはもう私の手に余る。
 まぁもっとも、それこそこの作品を観る人次第な気もしますけど。
 私自身の中にある蔑みの心に、なんだかんだで私自身が囚われてだけなのかもしれませんしね。
 うん、そういう意味では、この作品で笑えないという事自体、私にとっては不幸な事なのかも。
 ・・・・・もうちょっとだけ挑戦してみよう。(ぉ)
 
 うみねこのなく頃に:
 うーうーうるさい。
 一話まで視聴。
 ひぐらしひぐらし言ってて、いつまで経ってもその先入観が私の中から消えてくれないので、わかりました、
 もうわかりました、ひぐらしでいいです、これはひぐらしです、了解。
 そういうことになりましたらあら不思議、面白い。(ぉぃ)
 この危うさが堪らない。
 普通に話してたら、いきなり沸騰して、鬼の形相に。
 流れ的に興に乗ってくると、あっという間に惨劇の血雨が。
 血湧きつつ肉静まり、その不穏な空気の中でこそ育まれる、その狂気の笑顔が堪らなく、堪らない。
 ・・・・・いい感じに変態ですねぇ、私。 (今更)
 第一話のこの不穏な嵐の前の静けさが、否応無く興味を掻き立ててくれます。
 はー、ほんと私こういうの大好きな。
 ドロドロのぐちゃぐちゃの、心技体揃った(ぇぇ)泥沼惨劇に期待大です♪
 
 かなめも:
 観るつもりは無かったんだけど、HDDの録画予約を消し忘れて録画されてたので、まぁ一応。
 で、一話まで視聴。
 うん、まぁ、普通?(ぇ)
 主人公っ子の健気なふにゃふにゃ感が見所かな。
 あとはまぁ、家も家族もみんな失っちゃった女の子が、再び社会と人の間に回収され接続する瞬間の
 鮮やかな愛しさが清々しかったかな。 こういうのはいいねぇほんとに。
 お仕事モノ(?)のようでありながら、普通なこのふにゃふにゃだらだらな感覚が、良い感じに社会と
 労働と個人の問題を云々、という感じでまぁ、適当に萌えてりゃOKよ。 (あんまりな結論)
 
 GA:
 これは無い。
 ・・・いや久しぶりにきたね、この即切り感覚。
 好きとか嫌いとかそういうんじゃ無くて、マジでなにが面白いのか全くわかりませんでした。
 なので、この作品については折角ですので、素直にこのまま切らせて頂きます。
 敗北感感じ無いうちに、はやく、はやくーっ! ←駄目な人
 
 
 
 という感じ。
 で、今期の視聴リストを。まだ仮ですけど。
 
 
 
 月: (シャングリラ)
 火: (蒼天航路)
 水: 狼と香辛料U・青い花
 木: (銀魂)・(ファントム)・(パンドラ)・野球娘
 金: 化物語・うみものがたり・(ハルヒ)
 土: うみねこ・カナン・懺絶望先生
 日: (ハガレン)・(咲)・かなめも
 
                              :全17作品 ()付きは前期以前よりの継続作
 
 
 絶望先生はもうしばらく様子見というところで、他の作品はほぼ固定。
 これ以上減ることはあっても増えることは無いかな。
 
 で、今期はというと。
 ズバリ、狼。
 掛け値無しで、狼と香辛料Uがぶっち切りですね。
 続編作ということなので、どうせなら今期発の新作を今期一番としたいところなのだけれど、狼が圧倒
 的過ぎて無理無理。
 というかこれ、続編というより新生狼として充分過ぎる価値もあるので、今のところ、というか今後変わら
 ず狼が今期圧倒的一番と言えてしまいそうです。
 沸騰して観ても冷静に観ても、あまり評価は変わらないこの狼第二期の素晴らしさには、是非皆様
 にも浸って頂きたい。
 今期これを差し置いてお勧めする作品は、なにひとつ御座いません♪
 
 で、他の作品ですけれど。
 今期は、今期発のアニメが狼と切り予定の絶望先生を除くと、実は7作品しかないんですよね、
 私の視聴リスト中には。
 あんまり絞った意識は無かったんですけど、なんか普通に少ないね、今期は。
 現時点で、まぁ狼とまではいわないけど、それなりにビビっとどうしようも無く来させてくれるような作品は
 無し。
 まぁ敢えていえば今期は、やっぱり化物語うみものがたり、そしてカナン青い花、でしょうか。
 
 で、この中でひとつ頭抜けていたのが、化物語なのですけど・・・・・二話がコケたようなそうじゃないよな・・
 よくわからん。 (ぉ)
 戦場ヶ原様のアレをどう観るか、なんですけど、そもそもアレをどう観るかというところで止まってる、
 その私自体の観点でいいのかどうか、それがよくわからないというか。
 ぶっちゃけ、最初観たとき、あのアレは気持ち悪かった。
 ヒロインの戦場ヶ原的にも、主人公の阿良々木的にも。
 ツンドラがツンデレに「成り下がった」という意味でまず気持ち悪く、その「ツンデレ」を愉しむという主人公
 的感覚がまた気持ち悪く。
 で、今度は、ヒロイン的感覚で、信頼出来る人間と出会うために色々と「必死に」試して独りでどこまで
 も戦っていく、その哀しみと絶望感が、やっと出口を見つけ辿り着いたその「安堵」が、それがわかると
 同時に、それをあの戦場ヶ原というキャラでやってしまう事の気持ち悪さが一番気持ち悪くて。
 いやうん、いいんですよ? そのヒロインの感覚を憑き物落としとしての世界との再接続の重要さと
 結びつけるというのは、これはひとつアニメという媒体が為し得る、今最もニーズのあるものだと思うし。
 だけどさ・・・その重要さがわかればわかるほど、あの憑き物落としの見事さとその成功の嬉しさの表現
 が気持ちよければよいほど・・・・・・・・だったらもう一歩、先へ行ってよ、と。
 だって、あの戦場ヶ原様の暴言ぶりって、特級品よ?
 あの暴言の逸品ぶりは、おそらく私が出会ったすべてのキャラのそれの中で、一番のものだった。
 唖然としたものね、箸をぽとりと落としたものね、うわ、すご、平然と言い切ったよこの子、すご。
 あそこまで人を虚仮にして恬としていられる、その素の才能が恐ろしい。
 これは相手を罵倒し倒す快感では無く、無碍に圧倒的に罵倒される側の快感。
 自己内省そのものを鼻で笑い飛ばされるような、罵倒している者自体もその自らの暴言の言霊に
 よって、己が囚われているなにかから抜け出していく感覚。
 あの第二話に於ける演出には、ただ彼女の暴言の数々が、自らのなにかを隠蔽しているだけのもの
 として魅せる事にしか機能しない、ある意味で最悪の演出でした。
 意味を限定した上にそれを強調しちゃ、ただの謎解きの答え合わせにしかなりゃしない。
 戦場ヶ原ひたぎにとっては、あの一連の出来事は、大した問題では無い。
 戦場ヶ原ひたぎにとっては、あれらを含むすべてのものと向き合っている事、それ自体が大問題。
 自らの背負うべき「重み」を捨ててはいけなかったといって、その「重み」を背負い直した事で得られた、
 その「安堵」自体が、またひとつ新しく彼女の身を軽くした、つまり新たな「重み」を捨てた事にもなる。
 「重み」を捨てるという、自らの重さを失うという、最大の重圧とさえも向き合わねばならない、その
 戦場ヶ原ひたぎのすべてこそ、やっぱりあの暴言の価値のままに描いて欲しいなぁ。
 次回からはヒロイン交代(?)のようですけど、まぁその辺りひとつずつ作品のラインを上げていってくれ
 ると、まだまだこの作品には興味が持てるのですけどね、うん、素材と手並み自体は非常に見事なの
 で、あとはどれだけ上を深みを目指せるかですね、もっと狙ってけ狙ってけw
 
 青い花とカナンはあれでいいとして。(ぇ)
 うみものがたり。
 松本さんwww亀の存在が承認されとるww
 あー、この作品ほど魔法少女要素のいらない作品も珍しいw
 つか、この作品でヒロイン達を変身させようと思った人はいったいなにを考えてそうしたんやろ?ww
 普通に淡々とやり取りしてくだけで充分面白いし、この手口で色んなことを改めて考えて語っていけば、
 それだけで傑作になるのに・・・・・戦闘シーンが滅茶苦茶邪魔ww洒落にならないくらいに画面に
 ストップかけてるwww
 で、肝心のその物語の内容だけどさ、ヒロインの片割れ夏音が良い感じに語り出されてるなぁ。
 ある意味化物語のひたぎに通じてるんだけどさ、邪悪オーラは優しさの裏返しというか、んや違うな、
 わかりやすくいうと、優しさというのは絶対に無償では無くて、なにかを求めてのものであり、それが満たさ
 れないからこその、「怨み」として邪悪パワーがあるというか。
 だからさ、夏音さん的には、ほんとは夏音ちゃんは優しいんだよね、とかなんとか言われちゃうと、非常に
 辛いんだよね。
 なぜなら、ほんとは優しいんだから優しいことするのは「当たり前」なのだとして、結局なんだかんだで放って
 おかれてしまうから。 あんたはだいじょーぶ、みたいな。
 優しくないから、私優しくなんてないから、なんであんた良い方に解釈するの?
 夏音さん的には実はそれは良い方に解釈される事で、より不利な状況に追い落とされちゃう。
 ほんとは優しい子なんだよねとか見透かされたって、そんなもの、かえって追い詰められて、それを伝え
 るために邪悪オーラをさらに増加させて、なのにわかってるからちゃんとその邪悪の中には優しさあるって
 わかってるから、とかそう受け流されちゃ、これはもうほんと立つ瀬が無い。
 だから。
 夏音の 邪悪パワーは、うん、人との繋がりを求めるための、人として生きるためのパワーに他ならない。
 その人との繋がりという「なにか」を諦めないからこそ、夏音の邪悪パワーには生命力が溢れてる。
 それは他者の存在を信じているという事にも繋がるし、独りで生きることの愚かさを自覚している強さの
 顕れでもある。
 うん、だから。
 だから、邪悪パワーそのものに埋もれること自体は、決して本質じゃーないんだ。
 人との繋がりを求め続けること、他者を無視しないようにするために、捨てられないから、捨てられたく
 ないから、嫌われたくないから。
 あーもう!
 『やってやるよ!やな役引き受けますよ!友達欲しいですよっ!
  巫女でもなんでもやってやりますよ!』
 あの夏音さんのダッシュと叫びは、拍手喝采モノでした。
 マリンさんの無垢で無償で当たり前過ぎる優しさと、それ自体とはなんの関係も無く、夏音さんは
 夏音さんとしての「優しさ」の実現を果たせたのですよねぇ、うん、こりゃすごいわ。
 そしてそれはマリンさんを、他者の存在を無視しての孤独な優しさじゃー無い。
 マリンさんに抱きつかれて照れながらも微笑む夏音さんが、ちょっぴりカッコ良かったですもんね。
 これはまた一段と、面白くなって参りました。
 
 
 
 
 とまぁ、今日はこの辺りにしておきましょう。
 まだいくらでも語れそうですけどw
 それでは、また。
 ごきげんよう。
 
 
 
 

 

-- 090710--                    

 

         

                                 ■■ 狼とたわけ ■■

     
 
 
 
 
 『ぬしのように生真面目で抜けた男でなければ、わっちの相手は務まらんかったじゃろう。』
 

                          〜狼と香辛料U・第一話・賢狼ホロの言葉より〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                 ・

嘘じゃないんじゃな

 
                                               ・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 独り立つ青白の灯火
 遙か向こうで滑り落ちる月光の海
 溢れるばかりに満ち足りたその滑らかな手触りが夜を掠めていく
 見下ろした影の足下には、一握の時間が爪先を綴じ合わせながら待っていた
 深々と肌を染める冷気は指先で止まり、すべてのぬくもりが目の前に広がっている
 ぐるり
 目眩のままにひとつ、身を回す
 踵を翻して、大地の重みに抱きつかれて
 倒れ込むままに、空は燃え
 転がるままに、夢は流れ
 鮮やかに叫びを上げる生命の息吹
 夢の階が音を立てて目覚める紅い瞳を潤していく
 瀑布の行き先
 清流の、小川の、ささめきの、その果ての、終わり
 膨大な、広大な、雄大な、ああ、もう
 這い出して、抜け出して、飛び出して、止まらない
 微風が、止まらない
 髪を濡らす清水の堆積が、すべてを吹き飛ばす勢いで、すべてを描き出していく
 ぷかり
 密やかに降ろした足裏を突く、軽やかな水達の流れは清らかで明るくて
 ぷかり
 ぷかり
 止まらない
 流されるように引きずられるように、暁の夜を濡らす紅が青白く解けて
 
 立ち上がる
 
 透き通るように漆黒な
 
 この深い深い闇の、鮮烈な騒擾の中へ
 
 
 さぁ、さぁ、さぁ
 品定めも軽やかに、躊躇いもしめやかに、冷やかすままに滑らかにはっきりと歩き出す
 息を潜め、密やかに、想い新たに、新しく
 溶け往く風が、刻む歩幅のままに、鮮やかに激しく世界を紡いでいく
 青海の如くに犇めく天壌の尽きぬまにまに、 見上げてみよう
 満ちていく
 光の中に、闇が咲いていく
 流星果てぬ光の軌跡の連なりが、引き裂くままに闇を彫っていく
 滲み出る肉汁が美酒に変わるとき、囓り取った肉が醸し出したその酒は、世界に換わる
 豊かなれ
 滅びあれ
 流れ転び生きて成るままに、そのままに換わる世界の闇の深奥に咲く花を愛でながら
 瞬きのひとつを以て、たったひとつのまたたきのもと
 
 
 
踊ろう
 
 
高く
 
高く
 
 

歩をあげて

 
 

踊ろう

 
 
 
 見えざるものが綴られ、次々と世界の中へと顕れていく
 静寂なるままに、鮮やかなるままに、悠久の愛なるままに、歓声なるままに
 傅く優しさを引き連れて、間抜けな知恵を携えて
 踊ろう
 わっちと一緒に。
 この世界を踊りんす。
 
 まだ観ぬ世界の埋まる、この大地の上で
 まだ至らぬ世界の続く、この大空の下で
 いや
 人の中で
 いいや
 人の想いの中で、人の叫びの中で
 わっちの故郷のヨイツの森を埋めたあの白銀は。
 のう、ぬしよ。
 この紅い街にも、たっぷりと降っておるんじゃよ。
 
 
 
 
 
 
 ◆
 
 
 なにかと思えば、夢じゃった。
 たった一瞬の、儚い夢じゃった。
 それがいつまでも頭の中にある訳では無かったのじゃが、頭の中にずっとあるものが夢の中に顕れてきて
 いたような気はした。
 わっちは一体、なにを考えとるんじゃろ。
 正直、自分でもわからぬ。
 ロレンスと小作りなお遊びに興じている事自体には、なんの不満も無い。
 というより、ロレンスとこういうお遊びが出来る事が、満足じゃった。
 だのに、なんじゃろう、この違和感は。
 ぴくりと、ふと立ち止まって耳を峙てたくなる誘惑に駆られる。
 その誘惑とこまめに戦い、ロレンスと遊んでおるうちに、日が暮れてしもうた。
 楽しいのう。
 楽しいのう・・という呟き自体には不満は無いのじゃが・・・
 
 ロレンスとの遊びは愉しい。
 わっちとロレンスを男と女の関係に見立て遊び、時折差してくる本気のくすぐりを使って手札を増やし、
 そうして重ねた互いの信頼を指折り数える、その遊び。
 不満なぞ、無かった。
 男と女の関係なぞ、わっちは求めとらん。
 飽いたとは言わぬが、そもそも雄と雌の関係がそういうものでしか無い、というのが情けない。
 ロレンスの阿呆が本気になるとも思わぬが、しかし本気にならぬとかえって腹が立つ、という本気のくすぐり
 を互いにやり合うのは別に構わぬ。
 けれど、それはそれだけの話じゃ。
 わっちらの目的は、恋では無い。
 
 わっちらの目的は、共に旅をすることじゃ。
 
 わっちはただ、ぬしと一緒に旅がしたいんじゃ。
 いや、べつにそれは恋を否定しとる訳じゃないんじゃ。
 じゃが・・・ぬしは馬鹿がつくくらいに真面目な男じゃ・・
 ぬしがわっちと旅をするのは、わっちと旅をしたいからでは無く、わっちの男だからだとか夫だからだとか
 いう理由を本気で言いそうじゃ・・・
 それだけしか・・・言わなくなってしまいそうじゃ・・・・
 わっちは、わっちじゃ。
 ぬしも、ぬしじゃ。
 ぬし、わっちは冗談めかしていったが、ぬしが変わってきたというのは本当じゃ。
 以前のようにわっちの誘惑に狼狽え無くなったし、わっちの手練手管にもそう簡単に騙されなくなって
 きた上に、普通にやり返してこれるようになった。
 嬉しい、といえば、嬉しい。
 わっちがぬしに望んでおったのは、賢いお人好しとしてのぬしじゃったものな。
 じゃが・・・・
 不安なんじゃ・・・
 ぬしは・・
 
 
 ぬしは、わっちを、少し、無視し始めておらんか?
 
 
 少しずつ、ずれてきておった。
 ぬしは賢くもお人好しじゃもの、ちゃんとわっちのことを考えてくりゃる。
 そして近頃だいぶついてきたその知恵が、ぬしのその優しさの理の精度を上げておる。
 馬鹿な事は、滅多にしなくなった。
 じゃがの・・・
 じゃがの・・・・ぬし様よ・・・
 ぬしは・・・わっちのことを知らぬということを・・・・忘れとりゃせんか・・・・?
 
 わっちは・・・・ひとりは・・・・・嫌なんじゃ・・・・
 
 ぬしは弁えとる。
 じゃから、わっちの冗談とも本気とも知れぬように加工された手練手管を、見事に受け取ってその応酬
 に手を貸してくれ、決して自分を見失うような事はしなくなった。
 わっちは、嬉しい。
 けど・・・
 わっちゃあ・・・・それが悲しい・・・
 それでわっちが独りにされてしまう道を歩まねばならなくなってしまったら、わっちは本気になってでもぬし
 をわっちの手元に置いておきとうなる。
 それこそわっちの本意では無いのに・・・
 わっちの寂しさを紛らわすために、ロレンスをわっちのものにするなぞ・・・
 そんな事をするくらいなら・・・わっちは独りで・・・ヨイツへ・・・・
 
 
 
 
 ふと気付くと、暖炉の炎が、じろりと、ずっと、ずっと、わっちの影を見つめとることに、気付いた。
 
 
 
 わっちはの、ぬし様よ。
 ぬしにはたわけでいて欲しいのよ。
 とびきりに底抜けの、裸足で踊り出したくなるような、そんな太陽のような阿呆での。
 わっちはの、ぬし様よ。
 人も狼も、変わらねばいかんと思うのじゃよ。
 正確に言えば、いつでもどこでも変われるためのなにかを持っとらんといかぬと、そう思うのじゃよ。
 ぬし、最近、わっちの言葉の中でしか生きておらんじゃろ?
 そのことに、気付いておったか?
 少なくとも、わっちをわっちの言葉の範囲で、そしてそこから類推されるわっちの心中への察しの中でし
 か、ぬしはわっちと接する術を新たに作り出してはおらぬ。
 わっちはそれが、不安じゃ。
 ぬしよ、わっちを理解するだけになっとりゃせんか?
 わっちを思い遣ることだけになっとりゃせんか?
 その中での賢さに囚われとりゃせんか?
 今のぬしが得られる気付きの根拠は、すべてわっちの内にしかありんせん。
 ぬし。
 
 ぬしの理は、どうしたんじゃ?
 ぬしのたわけな、わっちが怒り心頭のまま飛んでいきたくなるような、その阿呆な理はどこにいった?
 
 わっちに罵倒されて、そしてはっと気付いたあとの、ぬし様の懸命に思考を巡らすその顔が、わっちは
 好きじゃった。
 そして、その顔のままに、ぽつぽつと捻り出されてくる、わっちの罵倒を遙か越える、想像もしなかった、
 全く新しいぬしらしい言葉を聞くたびに、わっちは深く安堵したんじゃ。
 わっちに張り倒される、底抜けに愚かな理ありきの、その新しき理じゃ。
 じゃのに・・・・最近のぬしは・・・なんぞ知らぬが・・・・無駄に賢うなった・・・
 わっちが罵倒出来る余地が無いんじゃ。
 だから逆に、わっちを越える、わっちを踊らせてくれる巨大な理をもたらしてもくれなくなった。
 わっちはただ無為に、ぬしはたわけじゃたわけなんじゃと呟くしかのうなる。
 まるで、我が儘狼じゃな。
 ふとわっちは、暖炉の炎にこの尾をくべてみとうなる。
 身を退きとうなる。
 わっちが独りで故郷に還る理屈はいくらでも作ることが瞬時に出来る。
 なにも考えずともあっさりとそれらの文字列をこの舌が綴ってくりゃる。
 するすると、つらつらと、心にも無い事に逃げ込む手筈を整えて、涙を堪えて眠りとうなる。
 なぜじゃろうのう・・・
 ロレンスがこんなに賢くなったというのに・・・それでもわっちは・・・こうして・・・
 わっちは、昼間観た夢を思い返していた。
 白銀の森で独り佇み、気付けば隣には同胞がいた。
 嬉しかったんじゃ。
 じゃから・・・じゃから・・・
 振り返ったそこには・・・・人間が・・・・ロレンスがいてくれると・・・・
 還ろうか。
 ヨイツの森に、還ろうか。
 あの夢の孤独の森の雪の下に、還ろうか。
 きっとこの雪の下には、世界のすべてが詰まっていると信じながら。
 その白い世界に抱かれて、死んでしまおうか・・・
 
 
 
 するすると、つるつると、嘘のように嘘が、零れていく。
 それは星辰の瞬く曇天の道を往くかのようじゃった。
 ありゃ?
 今のは夢かや?
 
 気付いたら、荷台の中じゃった。
 ロレンスが冗談で言った、新鮮な魚よりも良質の、素晴らしきわっちが今此処におる。
 もし、ロレンスと交わした遊びの言葉が、すべてほんとうじゃったら・・・
 わっちを大事にしてくりゃれ・・・
 解けていくように清楚に裂ける笑顔が、存在感を以て胸に響いてくる。
 とくとくと打つ拍動を鎮めるための力だけがただ荒ぶり、その透明な力は淫らに静かに溶けていく。
 むしゃむしゃ。
 かぶりついた食彩にさらに牙を突き立て、零れる酒の香りに故郷の闇を灯して遊ぶ。
 
 ありゃ?
 
 
 思い出す。
 これは、いつも通りの感覚ではなかったかや?
 遊んでおるうちに、愉しんでおるうちに、楽しみの内に控える孤独のひそめきがみえてくる。
 わっちはただ、楽しげにこう叫ぶ。
 くるくるとわっちへの理解と気遣いを働かせ閉じていく、その賢しらなたわけな雄の前で、こう叫ぶ。
 
 
 
 『雄は優しくするとすぐ図に乗りんす。
味をしめて繰り返しそんな科白を聞かされては堪らぬ。』
 
 
 

『たわけ!

雄は優しくてなんぼじゃ。』

 
 
 
 
 いつも通りの、理不尽な理を叫び上げ、その歌のままにぬしと踊る。
 わかっていることをわかり続けていくことが、なんだか、胸に浸みよる。
 お?なんじゃこの酒は。ヨイツの酒に似とるぞ。
 
 
 
 『たわけじゃ。たわけじゃ、たわけがおる。』
 
 『この、たわけめ!』
 
 
 
 
 
 
 そしてわっちはようやく、ロレンスの眼差しの存在を、暖炉の炎を越えて感じたんじゃ。
 
 
 
 
 
 ああ・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ◆ ◆
 
 全く違う、狼と香辛料が、其処に。
 ある意味でそれは半分正解で、半分は正解では無い。
 私はどきどきと胸高鳴らせ胸を押さえて、そしてごくりと息を飲むままにこの作品の始まりを迎えました。
 そうしたら・・・・
 息が、つけませんでした。
 これは・・・
 これは・・・・いよいよ、狼が、ホロが、人の中に入っていくみたいな感じじゃないか!
 OP、ご覧になりましたでしょうか?
 第一期のそれと、世界の広がりが、違いました。
 密度が、違いました。
 あれは、狼のそれで無く、人のそれでした。
 人の作り出したものの中へ、人の闇の中へ。
 あのホロが、ロレンスを引き連れて、やってくる。
 狼のそれでは無いという意味で、この第二期の始まりは第一期とは違います。
 けれど、それが誰でも無いホロであるという意味で、第一期と確かに繋がっています。
 ホロが遂に、本格的に他の人間達との関係の中に、そして人間が作り出した膨大で豊穣で、そして
 圧倒的に熱い世界へやってきた。 
 これが、興奮せずにはいられましょうか。
 
 あのOPは、それだけの破壊力を持っていました。
 そして本編も、第一期のホロのままに、しっかりと繋がったまま新しくまた一歩を踏み出していました。
 こんなに狼ファンとして、特にホロファンとして嬉しいことはありません。
 第一期の感想を書き続けてきた私としては、なによりも欲望を抱かずにはいられません。
 第一期で導き出した「ホロ」が、一体どうやってこの第二期を生きていくのか、どう私がそれを感想で
 描き作り出していくのか。
 それを考えたくて感じたくて堪らないという欲情に駆られて仕方無い。
 これは、なんとも言えないほどに完璧な、第二期のスタートです。
 確かに、ホロのデザインが微妙に変わっていたのは衝撃でしたけれど(微妙にちっさ丸い 笑)、でもそれ
 はそれで新しく成長していくだろうこれからのホロの新しい姿として、充分受け入れ可能なものでした。
 そしてどうやら、この第二期のホロ自身も、もう新しいテーマに至っているようですね。
 賢くなったロレンスになら、じゃあどうする?
 ホロにとっての「孤独」の在り方が、大きく変わっていこうとしています。
 そしてこれは同時に、いよいよロレンス自身も大きくクローズアップしてくる事にも繋がってきます。
 この第二期では、感想で出来ればロレンスでも書いてみたいと思っています。
 ロレンスでも書くことと、賢くなったホロがロレンスを見つめて考えることが、同じことにように思えましたので。
 
 ホロにとってロレンスとはなんなのか。
 そして、私にとってホロとはなんなのか。
 
 第一期の私の感想では、ロレンス的な私を見つめるためのホロ、ホロに導かれるロレンスが見つめるべき
 ホロ、というものも主体のひとつとして書いていました。
 勿論主体はそれだけでは無く、むしろホロ的な私が自分がホロとしてなにを抱えているのか、ホロが
 立ち向かわなければならない、真の「問題」としてのホロとはなにか、それを内省しつ続ける者としての
 ホロがメインではありましたけれど。
 この第二期では、改めてホロに導かれるロレンス的な私として、賢しらに閉じて固まりつつあるロレンス的
 私の強さを、ホロを守ろうとしていく事のうちに見直す事もやってみたいなと思っているのです。
 ロレンスが、今の賢さ強さのままホロを理解し気遣おうとしていくということが、一体どういう事なのか。
 一体。
 ホロは、ロレンスになにを求めているのか。
 第一話に於いては、その辺りのことが実に繊細に描かれていました。
 
 ホロはホロを見て欲しいのでは無く。
 ホロはホロと同じものを見て欲しいのではないか。
 
 ホロが見ているものは、ロレンスとの遊びの応酬自体でも無く、ロレンスの前から潔く去る事でも無い。
 勿論、孤独を癒す男と女の関係そのものにも無い。
 第二期は、この新しい孤独のホロから出発したようです。
 そしておそらく、この第二期のキーワードは、「たわけ」です。
 「わからない」という事の、新たな価値の気付き。
 ロレンスの阿呆が、したり顔で「確かな」ことを言うことの価値。
 それは、その一定の範囲内で落ち着き堅実さに固まってしまった、そのロレンスの阿呆面に、ホロの怒声
 が振りかけられ、そして。
 それで、はっと気付き、より柔軟な、そしてなによりも「確かな」ことによって隠されてしまった、「見えざる」
 ものが見えてくることで、飛躍的に物事をカバーする範囲が増大した、そのロレンスの全く新しい理、
 それこそに、その価値がある。
 ホロに散々男としての自分を虚仮にされて、その怒りに真摯に震えながらも、その怒りに囚われずに
 そこから得られるそれを踏まえた全く新しい見識にロレンスがどう至るか。
 
 
 そして、それを導き出すために。
 
 
 ホロは、どうやったらロレンスのその賢しらで「確かな」阿呆面を、たわけと一喝出来るか。
 
 
 一見賢くなったロレンスの言葉は、賢狼たるホロですら惑わすほど。
 されど、賢狼は賢狼。
 ひとつやふたつの納得で、それで狭く閉じてロレンスに収容されるホロなど、「ホロ」としてあり得ない。
 賢しらなロレンスの堅実さに、ホロはその瞳を覆われかけています。
 なぜか。
 それは、ホロがあの白銀の独りの地、孤独の安息への憧れを逞しくその胸に抱えているからです。
 だからいつでもホロは、その安息と繋がるために、ロレンスに抱き留めて貰うことをどうしようもなく狙って
 いるのです。
 それは、孤独への逃避。
 それとホロがどう向き合っていくのか、どうその全存在を使って考え感じていくのか、とても興味深い。
 この先、ロレンスへの執着を深めながら愉しみながら、ホロはなにを想いなにを苦しみ、なにと戦って
 いくのか、これは本当に胸のざわつきを止められないほどに、楽しみです。
 
 先へ。
 今より一歩、その先へ。
 
 
 
 以上、「狼と香辛料U」第一話の感想でした。
 ホロのデザインが少々変わった他に、全体的にホロのアクティブさには驚かされました。
 第一期は人間の体に慣れていないとかで、動きにぎこちなさがありましたけど、第二期ではこまめに
 しっかりと奔放なアクションを魅せてくれて、新しいホロの魅力が描き出されています。
 そしてロレンスの存在感と、そしてなにより期待感を抱かせてくれるその苦悩っぷりが実に良い味を出して
 いました。
 新キャラのアマーティもスムーズに溶け込んでいますし、はやくも第二期の狼世界はしっとりしっかりと
 広がり始めていて、なによりです。
 それに、OPとEDがもう、新しい狼と香辛料のテーマとして実に絶妙に歌われ描かれていて、なんだか
 この作品の充実っぷり、あるいはその盛り立てられぶりが、いち狼ファンとして大変嬉しく思います。
 ちなみに私の第一話に於けるホロの最萌えポイントは、舌出してのびてるその二日酔いぶりでした。
 容赦なく描きましたね、グッジョブ。(爆)
 ロレンスはやっぱり、ホロとの食事シーンでホロへのお世辞トークが上手く決まったときの、「ふっ。」と
 勝ち誇ったような顔の、あの間抜けっぷりでしょうか。 あれは見事に格好悪い。(笑)
 他の萌え所全部無くしても、このふたつだけで御飯三杯いけますぜ、あっしは。 (笑)
 
 
 それでは、今回はここまで。
 また次回お会い致しましょう。
 というより、これからどうぞひとつ、当「狼と香辛料U」感想をよろしくお願い致します。
 頑張って楽しく書いていきますので、応援してくださいね♪
 
 では。
 狼万歳。
 
 
 
 
 
 
 ・・・・とか冷静にこの感想書いてる間中、じっとドキドキが止まらなかったのは、ここだけの秘密。
 なんかもう、狼が始まって、嬉しくて嬉しくて堪らない私しかもういないんですけど。 (笑)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                              ◆ 『』内文章、アニメ狼と香辛料U」より引用 ◆
 
 
 

 

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                               ■■ 空気を読んで ■■

     
 
 
 
 
 ごきげんよう。
 
 実は現在不調です。
 風邪、なのですけれどいつもと違う方向にねじ切れたというか、ちょっと長引きそうな上に、疲労感が
 凄くて、あと他もなんかやばくて、長時間画面見ているともうあれです。
 ・・・・なんか出ます・・(逝くな)
 なので、今回は本来は、前期アニメの残り感想と、今期始まったアニメの視聴分の感想を書こうと
 思っていたのですけれど、全部は全然無理そうです、すみません。
 書ける範囲で、ちょこちょこ書き足しながらやらせて頂きますね。
 
 ということで、色々とお願いします。
 体調の方は快方に向かっていて、あとは静養するだけで大丈夫そうなので、ご安心を。
 心配してくださった方々、ありがとうございました。
 
 
 
 
 
 ◆
 
 
 夏のあらし!:
 なぜにコスプレ。 というかはじめちゃんだけ扱いが特にひどいww
 という訳で、私的にはなんだかんだで最終回が全部持っていきました。気持ち悪い。(良い意味で)
 全体的にそこはかとなく漂っている「大袈裟感」が、良くも悪くもこの作品のメインだった気がする。
 ギャグもシリアスも、テーマも演出も、とにかく如何に「魅せるか」では無く「見せつけるか」にあったような
 感じで、ちょっぴり喉越しは悪い気もした。
 好きな人は好き、という辺りが私的な味気ない評価でしょーか。(ぉぃ)
 で、私としては、好きでもなければ嫌いでも無い、という感じです。 早速矛盾してますね☆
 まぁそれは例えると、濃くて重いお酒で、好きな人はじっくり隅々まで味わうし、嫌いな人は口にちょっと
 含んでも飲む前に吐き出してしまうけど、私の場合は口に含んだ状態で大量の水を同時に注ぎ込ん
 で誤魔化して押し切って飲んじゃった、という感じ。
 ・・・・・・。
 全く感想になってませんね。
 正直言うと、第二期が決まった時点で感想は第二期に丸投げでいいよねいいんですとノリノリで
 ゴーサイン出しちゃったからなんですけどね、ごめんw
 ちなみに私は、あらしさん派かカヤさん派かでいえば、勿論あらしさん派です。
 だからなにかと言われても困りますけど。(ぇ) 
 
 
 タユタマ-Kiss on my Deity-:
 OP・EDの歌詞が久々に私の胸とリンクして。
 たぶんそこから全部始まった感じ?
 そしてチビましろで一気に加速してw、そのまま色々連れていってゴール、みたいな。
 結局ましろで始まりましろで終わった感じで、せっかくの他のキャラの魅力を全然魅せられずに勿体
 無かったですけど、でもま、あれはあれでいいでしょう圧倒的だったし(ぇ)。
 まぁ正直美冬と鵺の視点というのは是非観てみたかったところなのですけどね。
 ていうか、鵺の人間社会での楽しみっぷりが楽しすぎて、良く考えたらその辺りのところは鵺が全部
 持ってってた気もしますけどw
 締めるところはちゃんとましろだけど、それ以外は全部鵺が、みたいなw
 ・・・・。
 あれ?一体なに書こうとしてたんだっけ?私。
 確かキャラ萌え視点で書こうとしてたはずなんだけど、キャラ萌えで書こうとすると手が震えて書けない
 私がいますよ?
 ・・・・・わーい、脱ヲタだー! 
 今思うとその手の震えが今回の不調の兆候だったのかもですけどw、さらによく考えるとその前のタユタ
 マ感想で泣きすぎて疲れ果てたのが原因なのかもしれません、ていうか今も最終回観てたら涙が止ま
 らないんですけど、ていうかこんなん観せられて萌えとか言ってられるかーっ!
 ・・・。
 ごめんなさい。 (土下座 でもタユタマ最高!w)
 
 
 神曲奏界ポリフォニカクリムゾンS:
 『僕は今、この世界に生まれた事を誇りに思う。』
 と、言わせるために、フォロンとコーティがずっといちゃいちゃしてた作品でしたw
 まぁ嘘ではないですからねこの説明ww
 ただ、それがなんだか妙に最後まで清々しくて、なんだか知らない良い気分にさせてくれたですね。
 フォロンとコーティの、それぞれを悪く解釈し切ったあとで、残ったその残り滓のようなものが、全然普通に
 音色に合わせてゆっくりと揺れているのを観たときの静かな驚きというか。
 とにもかくにも、どう言えようとも言えてしまおうとも、それ以上にさりげない当たり前過ぎるふたりの素直
 な想いのままのその言動に、私こそもまた震えることが出来るのが、やっぱり嬉しく感じることが出来た
 だけで、この作品を面白かったというのに、うん、否定する要素はなにも無いね。
 
 
 
 
 ◆
 
 次。
 新しく始まったアニメの感想を。
 ・・・・結構観てるんですけど、3つしか感想書く体力無かったです、すみません。
 というか正直にいえば、今夜放送の狼と香辛料Uの感想書くための体力残しておこうと思って。
 ということで、どうぞ。
 
 
 化物語:
 史上初。
 放送開始1秒(作品内時間)で切ろうと思った作品www
 なぜにパンツwなぜにモロにそこから入るのw百年の(一応)期待してた恋も醒めるわwww
 だが。
 この作品のおそるべきは、そこからだった。
 というか。
 結論から言うと、今期現時点まで観た作品の中では、この作品が圧倒的。
 圧倒的で、ナンバー1。 いやパンツ違うパンツに反応違うから。
 いきなり口の中にカッターとホッチキスぶっこまれちゃね。
 あそこでもうびりっとなにかが裂けた音がした訳よ、ぶっちゃけ。
 一瞬で、速度が変わったよね、作品のさ。 あと私のテンションも勿論。
 ていうか、これ、いわれるまでツンデレとかツンドラとか思い浮かべる事すら出来ないくらいに、引き込ま
 れた。
 殺人級娘の中途半端にほんの僅かにぬくもりが塗られてる説明口調の怖さとか、一触即発ぶりとか、
 ていうか、主人公が速攻立ち直って修正して追い掛けて向き直るとか、委員長のわざとらしさを踏み台
 にして有り余るその接続の良さが、まさに驚き。
 そしてそれに対して、袖の下から全凶器(文房具)を開放して戦争しましょうとかいう殺人級娘。
 だけど主人公少年は元吸血鬼で傷の治りが早いんだけど、とか。
 むしろ彼らの中に引き込まれるために、他のすべての「無意味」な演出を捨てる事が出来るし、
 捨てる事こそにあの雑多な情報の羅列される演出が捨てられる事に価値が出てくる。
 なんだろ、これ、ちょっと失敗しただけで、とてもくどいようなうざいような展開のはずなのに、妙にリアリティ
 があるというか、「リアリティが無いのが当たり前」というか、実に演出が巧み。
 この作品を如何に活かすかに徹しているその風情がだから、きっと原作だと好き嫌い大きく分かれる
 だろうその後の怪しげな男の無駄なブラフの多い語り(私は同原作者の別作品を読んでまるで駄目で
 した)の、そのブラフの「味わい」では無く、それの持つ効力そのものと殺人級娘が相まって接続していく、
 そしてそれを主人公少年と共に見つめていくところにこそ、荘厳なまでの爽快感がありましたね。
 さっきから接続接続ってなに?
 それはね、「世界」とよ。
 うん、あの瞬間のあれはまさにアニメ「魍魎の匣」にやって欲しかった例の「憑き物落とし」の一過程です
 よ、つかこれくらいやって欲しかったな、ほんと。(涙)
 ブラフメインの戯言自体は好きでは無いけれど、それを使って少女の世界を組み直していくその作法は
 、実にあっさりだったけれど、逆にそのあっさりの手並みが壮絶なまでに見事でした。
 まぁまだこれからだけど。
 これは面白い。
 大々期待です、うん。 これはもう、うん、良い出会い来たゾ。 今期最重要注意作!
 『銅四十グラム、亜鉛二十五グラム、ニッケル十五グラム、照れ隠し五グラムに悪意九十七キロで、
  私の暴言は錬成されているわ。』
 『ほとんど悪意じゃねーかよ!』
 『ちなみに照れ隠しというのは嘘よ。』
 『一番抜いちゃいけない要素が抜けちゃったーっ!』
 あれだけ(シリアス的に)引き込まれている状態で、これだけ吹いたのは初めてだww大爆笑ww
 
 
 青い花:
 正直に言います。
 この青い花がナンバー1でした。
 化物語を観るまでは。
 いやほんとごめん、ほんと面白かったよ、面白くて今期は楽しみだねーって感じで、その旗頭にこの作品
 を任せようと思ってたんですけどね、続けて観た化物語があれじゃね、ごめん、30分だけの天下でした、
 ほんとにごめん! (ちなみに大本命とか本陣とかがあくまで狼と香辛料である事に変わりは無いですま
 だ観てないけど)。
 で、まぁ、この作品が面白かったという私の理由の半分くらいは、この作品が始まる前から皆さんにも
 理解して頂けていると思いますけど(ぇ)、この作品が始まって皆さんが見終わったあとで、残りの半分
 もそのまま理解して頂けると思います。 私が説明することなんてなにもないね!(ぇぇ)
 まぁ敢えて言えば。 こほん。
 あの主人公の根暗の方(ぉぃ)の、あの繊細か神経質かギリギリのところの感じが、そのまま作品全体
 の雰囲気に濃厚に広がっているところと、そしてなによりその雰囲気や根暗っ子のその繊細さをよく
 表現しようとしているつもりのその大袈裟ぶりが、限り無く神経質ぽっく見えるだけになりそうでも、それに
 全く動じること無く、この作品自体に流れる清冽ぶりが凄いんですね。うわ、わかりにく。
 もうちょいあの根暗っ子の機微の表現はさりげなくやっても良さそうなものを、結構しつこくこれみよがし
 にやってるものだから、私からするとあれは繊細という良い意味では無く神経質とか後ろ向きとかそういう
 風に見えるのだけど、でもあの作品の中でそれを観ると全然気にならないというか。
 ・・・・やっぱりうまく説明できませんね、もういいでしょこれで、もう充分説明したじゃない!
 ・・ほんと紅い瞳ちゃんはすぐ逃げるんだから。(根明っ子風に)
 
 
 野球娘。:
 面白いような面白くないような、面白いような面白くないような、ああもうめんどくさい、わからんでいい。
 まぁ敢えて言わせて頂きますと。 こほん。 (2回目)
 中途半端。 そしてその中途半端ぶりが絶妙の均衡点で成り立ってる。
 それがなんか、思いっ切り力を抜いて、なんか全く別の世界を飛ばしてくれるような、そんな感じ。
 大正の風俗とか感覚とかをリアルにやりたいのか、男女同権とかなんかその辺りの事とか、でもそういう
 のをある意味で、型どおりに填めてやっていく気は無いけど、型に填める気が無いだけでちゃんと
 やってきますしそれがむしろメインですけどなにか?(微笑)、みたいな感じもする。
 つか、あの女キャプテン(え?)の涙は、「形式」としては全くわからないんだけど(なんでだから野球なの?
 )、でも泣くこと自体はわかるし、泣くことの意味とその意味を伝えることでなにをやっていこうとしている
 のか、というのもぼんやり見えていたりもしますしね、ま、取り敢えず第二話も継続してみます。
 
 
 
 ・・・。
 ごめんなさい、いい加減過ぎて(汗)
 次回更新は、狼と香辛料が感想書けないほど面白く無いという自体にならない限り、狼と香辛料U
 の第一話感想を行います。
 ので、残りの今期開始アニメの感想はその次、早くても来週に・・・・時間空きすぎてごめんさい・・(涙)
 
 
 それでは、本日はこれにて、ごきげんよう。
 
 
 
 
 
 
 
 

 

-- 090703--                    

 

         

                                 ■■ いのちがけ ■■

     
 
 
 
 
 ◆
 
 アニメ「タユタマ」ラスト2話の感想、いきます。
 
 ・・・・。
 まずは順番でいきましょうか。
 
 第11話。
 共存ってなんじゃろな。
 ましろがアメリを論破(?)してたけど・・・・あれは一体なに?
 なんか、ましろがなにを見つめていたのか、私は盛大な勘違いをしていたのかもしれない。
 いやそれ以前に、アメリは一体なにがしたかったんだろほんとは。
 そこまで、戻る必要があった。
 なんだろう、なんなんだろう。
 どうして、喧嘩するんだろ。
 どうして、無視されると怒るんだろ。
 どうして、独りは嫌なんだろ。
 続々。 続々と出てくる。
 アメリとましろの、破裂しそうな、だけど細い細い切れそうで切れないその糸が、限界を超えても
 やっぱり切れないその感触が、ゆっくりと浸みてくる。
 すごかった。
 アメリの中にましろが、ましろの中にアメリが入ってくる。
 気付いたらふたりは向き合っていて。
 なんで喧嘩するんだろ。
 なんで私、こんなにまろまろに叫んでるんだろ。
 叫ばずにはいられない、どうしてまろまろの理屈のおかしいところを突こうとするんだろう、どうしてまろまろ
 を否定することでしか・・・・・自分の気持ちを満たせないんだろ
 ほんとにそれで、私の気持ちが満たされる保証なんて無いのに。
 私は私の気持ちを満たすためにここにいるはずじゃ無いのに、それなのに、そんな・・・
 まろまろが嫌いな訳じゃ無いのに、いつのまにか嫌いになってる・・・・
 まろまろが嫌いなのじゃ無く、まろまろがもたらしたものが全部嫌・・・・
 ましろは滾々と、「ましろがアメリにしたこと」をアメリの眼前に描き出していく。
 ましろは詭弁しか言って無い。
 アメリがその気になれば、いくらでも論破出来た。
 だけど、アメリはましろの理屈を否定するだけで、決して自分の論を展開しようとすることに、力を入れる
 ことが出来なかった。
 ぞくぞくするのよ、むかつくのよ、なによこいつ、なんでそんなに理屈ばっかり言うのよ!!
 なぜましろが理屈を展開するのか、わからないアメリでは無かったんです。
 アメリは間違ったことはしていない。
 だけど、それだけだったんですから。
 間違ったことはしていないけれど、正しいこともまたしていない。
 だから。
 間違ってる。
 理屈は合ってても、理屈しか頭の中に無い、言い訳でしか無いそればかりにしがみついている、
 その自分の姿しか無いと完全に気付いていたからこそ、アメリさんはましろさんの攻撃をその身で受けて
 しまう。
 がっぷり四つに組んで、ましろの詭弁的正論を、感情論でやり返す。
 それはすれ違っているようで、見事に噛み合っていた。
 ましろがなぜ理屈を展開するのか。
 それは、アメリがそのましろの理屈に理屈で打ち勝つためじゃ無い。
 それは。
 アメリが、そのましろの理屈にアメリの理屈をぶつけて、それだけで済まそうとしているから。
 ましろが正論をあからさまにぶつけてきたことで、アメリはそれに気付き、アメリはするすると自分を分解
 して、思いの丈を吐き出し、その吐き出したものそのもので考えていく。
 私・・・私が今までやってきたことってどういうことなんだろう・・・
 アメリは泣き声混じりでましろの理屈に噛み付く自分の感情に揺れながらも、そうしてましろの目の前
 に立っている、その二本の足は全くぶれない。
 
 『私は祐理さんの事が好きですけど、アメリさんの事も好きなんです。』
 
 ましろのその想い自体は、アメリがどうするかということとは直接的には関係無い。
 アメリが直接的に関係があるのは、祐理。
 でも、そのましろの言葉が、裕理を通して間接的に確かにアメリと繋がっている。
 
 『そんなの・・・・怖い・・・』
 
 アメリは真摯に震えます。
 祐理に好きだなんて言えない。
 恋敵の、自分の日常の邪魔をするましろを好きだなんて言えない。
 怖い、恥ずかしい、理屈的にあり得ない。
 でも。
 それは、感情的にあり得ないこと?
 私・・・・・・
 ずっと勘違いしてた。
 私、あんたの事、嫌いなんかじゃ無い。
 あんたが理屈ばっかり言うから、私は感情的にあんたのが事が嫌いなんだと思ってた。
 でも、逆だったのよ。
 私は、あんたの事を嫌いにならなければいけなかったのよ。
 理屈的に、嫌いって言ってたのよ、ほんとは。
 共存しなければいけないから、友達にならなきゃいけない?
 
 そんな、馬鹿なこと、無かったわ、まろまろ。
 
 私の感情の中にはたっぷり理屈が仕組まれてた。
 私の感情なんて、私が都合良く理屈で生み出してただけ。
 ほんとは、私の本当の感情は・・・そもそも・・・・
 しなければならないなんて考えずに、ただ・・・・
 すべての奴らと共に在りたいって感じてたのよ・・・
 それが無理だとか無茶だとか、そういう打算があってこその、まろまろを嫌う理屈としての感情が作り出さ
 れてきたのよ。
 馬鹿みたい。
 私・・・まろまろが徹底的にいやらしく、徹底的にあそこまであからさまに私に理屈をぶつけてきてくれ
 なかったら・・・・たぶんそのことを・・・・ずっと自覚できなかった・・・
 感情に、打算なんか無いんだよ、ほんとは。
 ましろの戦法は、鮮やかでした。
 なんて凄まじい。
 ましろの展開する正論にアメリを噛み付かせる事で、そのアメリの感情がそのましろの正論を論破する
 ために仕組まれた理屈で出来ているにしか過ぎ無いことを暴いたのです。
 
 『結局お前は諦めたんだろう!』
 
 祐理は応龍にそう言った。
 お前は保身に走っているだけだと、応龍を逆上せしめるようなことを口走る。
 ましろは延々と、そのことをアメリに知らしめたのです。
 アメリを責めることで、徹底的にアメリに保身させ、そうする事でアメリにアメリが保身に固執してる事を
 鮮烈に見せつける。
 あなたは本当にそれで、良いのですか?
 ましろの言葉のせいにして、現実のせいにして、祐理に自分の気持ちを伝えられない怯えのせいにして。
 それだと、あなたはきっと・・・・・・いつか独りになってしまいます
 
 アメリさん。
 あなたの本当の気持ちを、感情を、教えてください。
 
 私は、あなたと友達になりたいです。
 
 なにに囚われているのか、なにに惑わされているのか。
 実際になにかが出来るかどうかでは無く、そのなにかが出来るか出来ないかという選択に囚われ、
 惑わされている。
 やりたいことがやれないこと、それだけが問題。
 自分ひとりで、今すぐ出来るかどうかで、考えないで。
 大事なのは、自分がなにをやりたいか。
 そのやりたい事のために、他者がいる。
 誰かの手助けがあり、そして長い長い人の間で過ごす生という時間がある。
 アメリはそれに、気付くのです。
 アメリと裕理との問題は、あくまでアメリと裕理との問題なのだと。
 たとえましろを消したとしても、それは裕理に対する自分の問題が解決することなどあり得ない。
 でもそうするしか、そうするしかないじゃない!
 だから。
 そう叫んでしまうアメリのためにこそ。
 ましろがいる。
 友達がいる。
 共に在りたいと思える、いえ、必死に、一緒にこの世界の中で生きたいと思える、自分以外のすべての
 存在がある。
 それが、共存。
 共存とは理屈では無く、強烈な感情。
 ましろを恋敵として捉えて、それを排除しなければ祐理を手に入れることは出来ないと、合理的に
 考えてそれを実行したとしても。
 それで手に入れた祐理の価値が、本当にアメリにあるだろうか。
 そもそもアメリは、そういうモノとしての祐理が欲しかったのだろうか。
 そもそもアメリは。
 祐理と恋人同士に、なりたかったのだろうか?
 アメリは一度も、そんな事は言っていなかったのです。
 ただ祐理達と一緒に、平和に暮らしたいと、ただそう言っていた。
 
 
 「ただ」?
 ただそう言っていただけ?
 アメリさんが裕理さんと一緒にいたいというのは、「ただ」それだけなんていう程度の価値のものなのです
 か?
 
 
 アメリの欺瞞は。
 自分の気持ちに自信を持つことが出来なかったということを、正当化しようとしたこと。
 アメリのそれが祐理への恋かどうかは関係無い。
 なのにアメリは、それを「叶わないもの」としての恋として利用して、叶わないのだから自信を持てる訳
 無いじゃないと、そういう理屈に身を委ねることで、自らの感情・気持ちを自覚と自信を以て主体的
 にやろうとしなかった。
 アメリのましろ排斥のそれは、自分の祐理への想いに自信が無かったからこそ、その自分の想いの
 隠蔽のためにこそ行われていたものでした。
 だったら、ちゃんと言ってください。
 アメリさん、ほんとは祐理さんのことが好きなんでしょう?
 私も、好きです。
 祐理さんの事が好きな自分の事を信じています。
 裕理さんを愛している私が、今、此処にいます。
 今此処に私はいるから、私は絶対に諦めずに祐理さんに求愛します。
 アメリさんの本当の気持ち、伝えなくてもいいんですか?
 恋なんてどうだっていいんです。
 愛しているか愛していないか、それと恋人としての関係が成立するかしないかは関係無いです。
 伝えてください、アメリさんの気持ちを、祐理さんに。
 認めてください、アメリさんの気持ちを、アメリさん自身が。
 それが出来ないことの苦しみに負けないでください。
 それが出来ない事を当たり前として、愛を諦めたりなんてしないでください。
 向き合うべきは、戦うべきは、その自分の弱さなんです。
 その戦いの時間の中にこそ、私達は共に在るのです・・・
 独りは・・・もう嫌なんです・・・・
 そうしなければ・・・・・なにも始まりません・・・
 そうしなければ・・・・・・アメリさんは・・・・裕理さんと共に在ることが・・出来なくなってしまいます・・・
 
 ましろと手を取り合い降り立つアメリ。
 祐理にビンタ一発。
 そして、すべての想いを込めて口づけを。
 ありがとう、ごめんね。
 そして返す刀で応龍と口喧嘩に突入するアメリさん。
 応龍も強いが、アメリも負けてはいないっ!
 
 『あれもまた、共存のひとつなのでしょうか。』
 
 そうですね、ましろさん。
 その通りです。
 恋人というのは、共存の顕れ方のひとつにしか過ぎ無い。
 友達のように、親子のように、夫婦のように。
 『押し付けでは無い、想いを』ぶつけ合うことで共に在り続ける事、それ自体が本質。
 まずはその本質を感得するところからにしか、その他者への愛の存在意義は発生しない。
 
 
 そしてそれは。
 共存の顕れ方のひとつにしか過ぎない、それぞれそのひとつずつの内実に命を懸ける事と。
 本質的に。
 矛盾しない。
 いや、むしろ・・・・
 
 
 
 
 最終話。
 
 
 
 
 私は・・・
 寂しかった・・・
 だけど、それ以上に悔しかったんです・・・
 どうして、太転衣と人間というふたつのものがこの世界に在るのに、それぞれがそれぞれを無視して
 しまうのか。
 私は、太転衣を率いる神として、ただ太転衣の中で生きていれば良かったのでしょうか?
 キクラミ様がましろというひとりの女の子として人間界に降り立った、それがすべての始まりです。
 なぜ、キクラミ様は、ましろになったのでしょうか?
 いえ。
 そもそも、キクラミ様とましろは、どちらかひとつでしか無いものなのでしょうか?
 キクラミ様とましろは、ふたつでひとつ。
 ひとりでふたり。
 違うけど、同じなのです。
 ああ・・・
 ましろの想いが、透き通るように、キクラミ様の想いが熱く燃えるように、圧倒的に染み渡ってきます。
 なにがやりたかったのか、どうしても、どうしようもないくらいに求めていたのがなんなのか。
 ああ・・・・もう・・・
 涙が止まらなくて・・
 キクラミ様は神様として、確かに此処に在ります。
 此処に存在しているということ、それ自体がすべての本質です。
 なにも、ましろというひとつの化性に拘る 必要は無かったはずなのです。
 キクラミ様は神様で、永遠で、既に此処に在るだけで事足りる、絶対的存在なのです。
 でも・・・
 
 此処に在るだけで、それで良いのでしょうか?
 
 こんなに、目の前には沢山のものが、人がいるというのに。
 私は、神だからこそ、絶対だからこそ、人の中に、他者の中の世界に、苦しみながらもがきながらも、
 どうしようも無く求めてしまうことの意味を、もう一度考える必要があったのではないでしょうか。
 此処の在ることと、此処にいることは、違うのではないでしょうか・
 在ると同時に居る、けれどもしかして私は、在ることと居ることの区別がついていなかったのではない
 でしょうか?
 私には、「居る」ということが、無かったのではないでしょうか?
 寂しいから、ひとりが嫌だから、誰かを求めるというのはおかしいです。
 でも。
 だから、逆なのです。
 誰かを求めるという事自体の大切さを考えたからこそ、此処に在るキクラミの中に、此処に居ようとする
 ましろが生まれてきたのです。
 そのましろがひとりは嫌だと、愛する人とずっと一緒にいたいと、泣き叫びながら、言うのです。
 そのましろの懸命な声に、キクラミの私も、震えました。
 ああ・・・なんて・・・
 なんて・・・暖かいのでしょう
 
 なんのために、この世界に、太転衣と人間が。 
 そして。
 私と私以外の他者が存在しているのか、どうしようもなく、わかってしまうのです・・・
 
 
 『人と神、いや、ましろちゃんというひとりの女性の晴れ舞台じゃ、笑っておれい。』
 
 
 祐理のお父様は、そう言った。
 裕理。
 そう、その言葉を、祐理がようやく理解するのです。
 やっと出てきたよ、この作品のずっと隠された主人公が。
 ましろひとりにずっとやらせていた、その主体的行為を、やっと祐理しゃんが・・・
 ましろの共存思想は、理屈です。
 理想です。
 そしてそれを理想論として打ち砕く頑迷な力が、祐理に宿る力そのものです。
 アメリのそれも、他のすべての人間のそれも、すべてそのましろが示した、言葉としての正論としての、
 「共存論」を磔にして、ただ自らが此処に在るままだけの、自分が膨大な他者と接して「居る」という
 事を無視した、その根深すぎて底の見えない保身の成したモノ。
 そしてその保身のさらに罪深きは、「居る」ということの偽物をすらを作り出したということ。
 ましろの理想論を排撃することで線引きをした、その現実に即した「等身大」という名の「居る」という
 この偽物を抱き締めて、ぐっと独り潔く在るままに散っていく。
 それを、他の者にまで、押し付けていく。
 嫌だったんです・・・・悔しかったんです・・・・
 神として、ただあるがままにそういったことを見つめているだけのことが・・・・
 ましろは、なぜ共存を唱えたのか。
 なぜ、ましろは理想論を唱えたのか。
 アメリはそれを、もう知っています。
 祐、あんた気付くの遅すぎ。
 まったく、まろまろの苦労がやっと報われたわね。
 ましろは、勝手なことを言っていました。
 アメリから見れば泥棒猫、祐理から見ても押しかけ女房(しかも人外)です。
 ではなぜ、ましろがそうしたのか。
  
 なぜ、ましろがそうまでしなければ、ならなかったのか。
 
 アメリも祐理も、根本の根本を考えることが出来ました。
 ましろが言っていたことは、本当だったんだ。
 ましろはましろだけど、ましろだけじゃ無い。
 キクラミ様でもある。
 そして、だから、だから・・・
 そのキクラミ様こそ、なによりましろだったんだ。
 共存とは、なにか。
 キクラミ様は、ましろのままに、どうしようも無く、そのことを俺達に考えさせてくれたんだ!
 ましろは・・・
 ひとりの女の子です。
 その女の子が、たったひとりで人間社会に降り立ち、そして懸命にみんなと一緒に生きたいと、愛する
 人と十年でも二十年でも一緒に生きたいと、そう叫ぶ、それそのものこそ、キクラミ様の「共存論」の
 本質であり、そしてなによりもその「共存論」こそ、ましろの魂の叫びの大元にあるものなのです。
 理屈か感情か、じゃ無い。
 理屈であり感情であり、感情であり理屈なのです。
 それが理屈だから感情だからという理由で、それを排撃しようとしている私達がいる。
 共存論なんていう、理屈の鬼になる必要なんて無い。
 ただ一緒にいたいだけなんですなんて、痛いだけの叫びに拘る必要も無い。
 ただ一緒にいたいだけなんですと絶叫する、そのましろの魂は、キクラミ様という神様の理の内。
 
 
 
 力を失い、今にも消え果てんとするましろ。
 祐理はそのましろと結婚式を執り行う。
 祐理はその儀式の中で、その中で、自分だけの言葉でましろに語りかける。
 一緒にいたい。
 たとえ魂が消えても、千年万年、ましろを愛していると。
 何度でも生まれ変わり、何度でもましろと共に生きたい。
 ありがとうございます・・・祐理さん・・・・ありがとうございます・・・・
 そして、みんなが集まってくる・・・
 みんなに祝福されて、ああ、これで太転衣と人の共存の礎は・・・・
 その蒼冷めた想いの中で、力の抜けていくましろ。
 そして、その消えていく魂の薄れの中にこそ、ましろはやがて、うっとりと、ましろとしての魂と激しくひとつ
 に溶け合っていく。
 祐理の言葉。
 祐理の言葉は、キクラミ様がずっと求めて、そしてましろがそのキクラミ様のためにずっと求めてきたもの。
 
 だけど。
 だけど、今。
 
 今、私は、こうして皆さんに受け入れられて。
 祐理さんに愛されて。
 こうして暖かい月の光の中に抱かれている、そのなによりも私の私は。
 もう。
 もう・・・・・
 
 そうじゃないんです!!!
 
 私は!
 
 
 今、此処に、居るんです!!!!
 
 
 
 祐理は、ましろにあの世で来世で待っていてくれと言います。
 人間としての自分はどんなに頑張っても数十年しか生きられないから、ちょっとだけだよ待たせるのは、と。
 『僕の妻はましろ以外の誰でも無くて、たとえ死に別れても、魂が消えても僕の妻はましろだけで。』
 これ以上に、嬉しい言葉なんて無い。
 これで私は・・・・綺麗に・・・消えられる・・・・
 そう・・・
 そう・・・・・どうしようもなく、想えたからこそ・・・・・
 
 ありがとう、祐理さん。
 
 
 そして。
 
 
 ごめんなさい。
 
 
 
 『私、ましろは、祐理さんを夫として・・・・・・夫として・・・
 
 
 夫が祐理さんで、私が妻で、十年も二十年も、その先も祐理さんの隣にいて・・・
 
 ずっと一緒に、一緒に祐理さんと生きたい・・・
 
 祐理さんに出会えて、人と太転衣の橋渡しをして、それだけで充分幸せなはずなのに・・・・
 
 わかってるはずなのに・・・・
 
 
 生きたい・・・・まだ生きたい
 
 生きて生きて、もっと生きて、祐理さんと普通の人みたいにデートして、手を繋いで笑い合って
 一緒に過ごして・・・
 
 いやですこんなの、こんな、始まったばかりなのに・・・・こんな・・・こんなの・・・・・・・』
 
 
 
 ああ・・・涙が消えない・・・
 
 ましろの覚悟がなによりも胸を締め付ける。
 苦しみから逃げず、悲しみから目を逸らさず。
 祐理の大切な大事な幸せで愛しすぎる言葉に抱かれて、だからこそ、それを自らの安らかな死のため
 に使うことを絶対に選ばず、ただただ、その言葉をくれた祐理を求めるままの生のままに、苦しい死に
 至ることを恐れずに。
 ましろは、最後の最期の瞬間まで、祐理の優しさに、真っ向から向き合うのです。
 そして。
 そのましろの「見苦しさ」によって、祐理の中から、この作品の最も核となるものが引きずり出されてくる。
 祐理の、私達人間の、その「優しさ」の底に渦巻くものが。
 
 『大丈夫、全部僕が受け止めるから。』と言う祐理のその言葉はただ。
 『本当か・・・? 受け止めるって言ったって、なにも出来ない僕がなにを・・』という裕理の本音の隠蔽
 のためでしか無い。
 
 その祐理の、人間の「等身大さ」そのものに拘りそれを盾とする結果として、優しい看取りの言葉が
 生まれてくる。
 では。
 その人間の「等身大さ」から漏れた者は、どうするのか?
 その祐理の「こんな力」の犠牲になる者達は、どうなってしまうのか?
 
 
 『ざけんじゃねぇよっっ!!!!』
 
 『てめぇ、俺相手にあんだけ好きに力を使っといて、キクラミにはなにも出来ねぇのかよ!!』
 
 
 ああ・・・応龍さん・・
 
 
 
 
 

 『俺達はなんのために生まれてきた! なぜ今この世に目覚めた!

 

てめぇだってそうだ!

 

なんのために此処に居る! 全部意味があるはずだろうが!!』

 
 
 
 
 
 なんのために生まれてきたのかその意味を問う事になんの意味がある、なんて言ってる自分はなんなの
 か少しは考えやがれっ!!
 なんのために自分がそう考えるのか、その問いこそが本質。
 応龍さんのその言葉は、なによりも聞きたい言葉でした。
 やっと・・・・やっとこういう事を言える作品が出てきたんですねぇ・・・
 そう。
 祐理は永遠に何度生まれ変わってもましろを愛する事が出来るという、その此処に在る自分の永遠
 に浸ることで、今この短いひとりの男の子として生きている、その此処に居る自分の刹那から目を
 逸らしている。
 それに応龍は叫ぶんです!
 てめぇら人間はそうやって自分勝手に、てめぇが目の前のものから目を逸らすためだけに、自分の大切
 なものだけを守って、それ以外を排除してんじゃねぇか!
 だから人間と太転衣は相容れねぇって言ってんだ!!
 そう、応龍もましろと同じで、論を先にぶつけることで、祐理に本質を導き出させようとしてたんですね。
 なぜ応龍は人間と太転衣は共存出来ないと唱えたのか、それはいつまで経っても人間が人間の事
 しか見つめようとしないから。
 それをしつこく言い続けたのは、応龍が人間に見つめて欲しかったから。
 応龍もまた、共存を深く願っていたのです。
 そして、共存とはどちらかがどちらかを受け入れるというものでは無い。
 応龍はツンデレではありません。祐理がツンデレ的に受け入れようとするのなら、ぶん殴っていい。
 悪いのは、祐理であり、人間なのですから。
 その反省が無ければ、そんな上辺の受け入れは一瞬で底を見ることになる。
 馴れ合いじゃ、駄目なんだ。
 ざけんじゃねぇよ、てめぇ!
 てめぇがその保身の心のままに力を使えるんなら、その保身の心を抑えて俺達と真に向き合うことに
 その力を使いやがれ!!
 
 それでわからない、祐理しゃんじゃありません。
 
 そして。
 
 
 祐理しゃんがわからない訳が無いことをなによりも感じているがゆえに。
 
 
 
 
 
 
 

『私は、祐理さんとひとつになるために生まれてきました。』

 
 
 
 
 
 
 
 この言葉無しには、生きられない。
 いえ。
 生きているからこそ。
 この言葉がある。
 至高の言葉です。
 ひとりの女の子ましろとして、神様たるキクラミ様として、これほど完璧な言葉はありません。
 震えて、止まらなくて、震えて。
 涙でぼろぼろ。
 ましろは、祐理とひとつになるために生まれてきたのです。
 そう、ましろは言えたのです。
 それは。
 ましろの覚悟を越えて、それと全く同じ言葉を言える祐理が其処に居たからこそのことなのです。
 ああ・・・・よかった・・・・
 ほんとうに・・・よかった・・
 ましろの悲しみと苦しみが、圧倒的に体に響き渡り、壮絶なその体感の中で・・・
 それは幸せですら無い、生まれてきたことの驚きと、そして。
 此処にこうしてみんなと、祐理さんと居られることの歓びが。
 圧倒的に、それが失われる、今この瞬間にこそ。
 ましろと、キクラミ様と、そして私を。
 その私達が求めたものを最期を越えて求め続けられる、その此処に在るということを。
 それを深く自覚し。
 そして・・・
 もう・・・もう・・・・・
 しょうがないことなんて、なにも無い。
 私とあなたが、此処と其処にいる限り。
 キクラミ様の願いの、この作品のテーマが、すべてましろの言葉に収束していきます。
 涙が止まりません。
 感動ですら無い、この感触。
 今までにあったかどうかすらも定かでは無い、圧倒的なこの、充足感。
 なんだろう、やっと、やっと言ってくれたよ・・アニメが・・・
 嬉しくて・・・
 
 思わず、泣き崩れてしまいました
 
 
 
 
 この作品が懸命にやっていたことのすべてが、やっと、やっと、魂の奥底まで染み渡っていきました。
 やっと、やっと、本当にわかりました。
 共存って、そういうことかぁ。
 命を賭けるのじゃなく、命を懸けて。
 死では無く、生を。
 生きるために、生きるって、こういうことなのかなぁ、きっと。
 刹那と永遠って、同じで違う、違くて同じなんだろうなぁ。
 そしてなによりも、私達が生きることってさぁ・・・うん。
 
 
 『でもこれは永遠の別れじゃ無い。 永遠の別れにしちゃ駄目なんだ。
 
 彼女の、ましろの願い、生きとし生けるものの共存。
 みんなが手を取り合って生きていける世界。
 それは誰かの犠牲の下にあってはならないもの。
 
 ましろも一緒じゃなきゃ駄目なんだ。』
 
 
 この祐理しゃんの言葉に集約される。
 そう。
 犠牲無き世界などあり得ない、すべてのものが手を取り合って生きていける世界など、共存など
 あり得ないと、そう考える自分を真摯に見つめる存在が此処にはある。
 その生を懸命に生きる、その祐理が此処にいる。
 どうしてだろう、どうして僕はそう考えてしまうんだろう。
 ほんとに大事なことって、なんだろう。
 ましろの涙が。
 ましろの笑顔が。
 
 
 その答えを、あっさりと教えてくれたんだ。
 
 
 
 
 
 
 もうなんか、涙で顔も頭の中もぐじゃぐじゃなので、全然ロクに説明出来ていませんけれど、お話する
 ことは出来たようなので、私は満足じゃ〜にゃはは♪
 あー、すっきりした。
 こんだけ心と魂が震えてんのに、吐き出さない訳にはいかないもんね。
 なんかもう、わたしゃこの作品を愛することも惚れることも遠ざけることも出来そうにないね。
 私の中に、一瞬で消えて溶けちゃった。
 もう取れない、もう無くならない、観ちゃったもの、感じちゃったもの、泣いちゃったもの、その時点でもう、
 私はこの作品から、ましろのあの涙と笑顔から逃げられない。
 もう私の中のどこにも見つからない、水に溶けちゃったようなものだもの、不器用な私にはもうそれ抽出
 して取り除くことなんて出来ないからね。
 ああもう。
 ああもう。
 
 あーもう。
 
 
 どうすりゃいーんじゃろ。
 
 
 私がこの作品を捕まえたのか、この作品に私が捕まったのか、もう訳わかんない。
 ひとつになっちゃった。
 しかも、完璧に。
 今この瞬間の、此処にいる私の中で、こんな完全に溶けたものは無いよ。
 ただただ。
 ただ、ただ、呆気にとられてる。
 呆然。
 自失。
 泣いて、涙出て、涙出て、泣いて。
 泣き疲れて、その疲労感と、この文章を書き終える私の疲労感がひとつになって。
 ああもう、どっと、疲れてきた。
 気持ち良くなんか無い。
 気持ち悪くすら無い。
 
 
 
 すべてが完全に、そして完璧に、保留されました。
 
 色んなことが、様々なことが、すべての事が。
 
 優しく、ゆっくりと。
 
 そして、たぶん。
 
 それは、対象不明の、ただ此処にある愛のままに。
 
 保留されました。
 
 
 
 
 きっと。
 
 誰かを愛するままに生きたいと想う、此処にいる私のために。
 
 
 
 
 
 
 
 
 タユタマ、万歳。
 
 
 
 
 
 
 もう、もう、たまりません。
 
 
 
 
 ごめんなさい。
 
 
 だけど。
 
 なにより、ありがとうございます。
 
 
 
 
 
 
 
 

がんばります。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 もっかい泣いてこよっと。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 P.S:
 次回の雑日記でも、ちょこっとタユタマ感想やります。 それで今度こそ終わり。
 よく考えたら、他の作品のプチ感想はやってたけど、タユタマのはやってなかったですものね、それを
 やります。
 主にキャラ萌え視点で。 (ぇー)
 
 あーあと、調子乗ってて忘れてたけど。
 この作品を世に送り出してくださった方々に、最大級を越える感謝の言葉を贈ります。
 なんというか、この作品をこういう形で出したのって、相当勇気が必要だったかと思います。
 これみよがしなシリアスじゃ無く、普通の萌えアニメ的にプラスエッセンスでちょっとシリアスってみました、
 という体裁で、こういうテーマをやるなんて。
 当然、それなりの評価を受ける覚悟はあったかと、珍しく私としては作り手側のことを慮りました。
 でも、観る人はちゃんと観ていたと思います。
 私も、観てました。
 というかむしろ、こういう作品の体裁であることこそに、これだけのどうしようもない圧倒的な感慨が
 発生し得、また恋と共存という難しいテーマの融合を成せる境地があった訳で、改めて、というか、
 なによりもその制作スタッフの慧眼には目を見張るおもいです。
 すごいよ、ほんと。 こういう作品こそ、歴史に新たなその名を刻むべき。
 
 そして、そのすごい作品で得た感慨をはちゃめちゃに吐き付けたような、拙いっていうかアレな私の
 感想文を読んでくださった方々に、涙でぼろぼろの顔をさらにしわくちゃにして感謝申し上げます。
 あ、ありがどうごじゃいまちた。 ←顔洗えよ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                     ◆ 『』内文章、アニメ「タユタマ -Kiss on my Deity-」より引用 ◆
 
 
 

 

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