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◆◆◆ -- 2012年5月のお話 -- ◆◆◆

 

-- 120531--                    

 

         

                                   ■■ 黒夜の羊 ■■

     
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ×××× ×
 
 りーりーと 遠くで咲く夜虫のいななきが肌を打つ
 たおやかに香る静寂に指を這わせ つぅと鳴く
 さらさらと衣擦れが涙を流し 笑っている
 夜露に映る静かな刻の流れに身を浸す
 ぼんやりと 陽炎のように息吹きを奏でる夜の奥へと
 ゆるやかに引かれていく髪先に 薄くのばした想いを馳せる
 
 誰もいないのね
 
 じとじとと、汗ばむような夜気に沈む
 どこまでも届けと指先に映える紅い血が、一体私の中にあるのだろうかと疑っている。
 乱れるままに、濡れるままに流れるこの髪の艶やかさにこそ、命の揺らぎを感じている。
 どくどく
 脈打つように咲き続けるこの黒髪に、ただ目を凝らしている。
 綺麗ね
 まるで他人事のように、ただその鮮やかな肌触りのうちに、その穂先を数えている。
 枝毛ひとつない、一本一本丁寧に墨で描き上げたような、憂い。
 透き通るように、一枚一枚繊細に貼り付けたような、白い肌。
 わたし、このからだ、好きよ。
 恍惚の手前でなにかが潮を引くようにして醒めていくのを感じながら、
 ただ鬱蒼として、そう私は呟きを重ねていく。
 
 これは 絵
 イメージ
 どうしても手に触れることの出来ない、私の魂が映し出されたもの。
 私の体は、もうほんとうは骨だけになっている。
 私のこの姿は、私のモノであって、私じゃない。
 それがなんだかどうしようもなく、悲しいようでいて、どこかひとつ、ぽかんと抜けている。
 さめざめと呪うように、愛しくこの姿を抱き締めている細い腕が、私の首を絞める事は決してない。
 わたし 死んじゃっているのだもの
 自殺しようなんて、そもそも思わない理由が、私が既に死んでいる事にあることは、けれど絶対に無い。
 だって、死にたいなんて、思わないもん!
 だって
 生きていないのだから
 それは理屈であって、同時に、それとはなんの関係も無いところで、私はあまりにも、そして、
 驚くほどに鮮やかに今のこの時間の中で息づいていた。
 この凍てつく夜の中で、ゆっくりと解けて、そして溶けていくのを待ちながら。
 真っ黒に塗り潰されているように見えながら、その実、触れてみるとこの夜というのは、
 塗り潰される対象としての、そんな固まった存在では無い。
 この夜には、なんにもない。
 夜なんて、無いのよ。
 ただ、あるものがあって、それがあまりにも犇めくほどにぎゅうぎゅうに敷き詰められている様が、
 それが全く塗り潰されてそれぞれの境が無いように見える、そんなひとつの夜という黒に見えるだけ。
 
  − わたしも そう
 
 
 爛れていく、腐っていく、そんな私の肌の行く末を感覚的に論じながら、
 けれどそんな描かれた悪夢に張り付かれる私の姿を、私はきっとただ、
 展覧会に飾られた地獄絵図を眺めるようにして、ふぅんと頷くだけのような気がする。
 私には、私の姿は見えない。
 私に見えるのは、私の見たい私の姿だけ。
 綺麗ね
 もし、私の姿が腐り落ちた醜い姿になるのだとしたら、それはそのように見たい私がいるというだけ。
 そんな私が、一体なにを恐れるっていうの?
 その醜い姿は、私の見たいモノであって、私の姿じゃない。
 私には、私の姿を見ることは出来ない。
 あっけらかんと、涙が出る。
 なにかしら? これ。
 ドンドン ドンドン
 胸を叩く音が、それが鼓動の響きであるようには感じられない。
 白く溶け落ちた蝋燭のように、灯りの残滓を思い出しながら、遠く、指を伸ばす。
 舞い上がる埃の端に縋って、それが降り積もって出来たなにかの中に、私はいる。
 ドンドン ドンドン
 どこかで 誰かが なにかを叩いている
 ぎっしりと敷き詰められたこの時間の中で、刻まれるようにして溶けていく私の想い。
 溶けて、流れて、咲いて、ああ、気持ちいい。
 ゆったりと浴衣を着崩すように、その脱げかけの醜くも美しい私の姿に、愛おしく溺れていく。
 一切藻掻くことも足掻くこともなく、ただのいちどもいきつぎすることもなく。
 ゆっくりと、夜の静寂に沈んでいく。
 
 
 
 
 
   ★
 
 
                          ☆
 
 
 
 
 
 
 
 うなりを上げる
 絶叫なのかもしれないそれは、空洞の中に反響する、風の音そのもの。
 どこかひとつ 清涼な 無音。
 不思議ね。
 わたし、きっととっても、いても立ってもいられないほどに、不安なはずなのに。
 どうして私だけこんな目に、なんて、そんな言葉を幾億も積み上げて咲き続けるような、
 そういう呪詛と怨念とあとなんだっけ?、みたいな、そんな感じになってもおかしくないはずなのに。
 どこかひとつ 落ち着いている。
 諦め?
 違うわね。
 私はきっと、なにも諦めていない。
 諦めていたのは・・・きっと、死ぬ前の、わたし
 そしてね、諦めていた自分のことをどうしても許せない私が、きっと私を呪っていたのよ。
 なにを・・諦めていたのかしらね・・・
 今の私は・・
 そうね
 諦めることから、手を離しているわ
 だから、そもそも呪う必要がもう無くなっているのかもしれない。
 
 
 不思議よね。
 私は死んで幽霊になってから、ずっとひとりぼっち。
 誰にも見られない、誰にも見つけて貰えない。
 不安で、寂しくて、どうしようもないはずなのに。
 そういう感情があるのはわかりながら、どこかひとつ、私からは離れていた。
 わたしは
 ひとり
 生前の私は・・きっとそのことを、受け入れられなかったのかもしれないわね
 私は、ひとりなんかじゃない、私だってみんなと一緒、なんで私だけ・・
 その辺りの記憶はどうしても思い出せないけれど、たぶんそんな感じのことはあったのかもしれない。
 私は、死んで。
 そして
 ひとりになった。
 そうしたらね、なんだかわたし、それをちゃんと、受け止められるようになったのよ。
 不思議よね、ほんとうに、不思議。
 私は、寂しいのよ。
 でもそれは、今の私と、生前の私のそれとでは、大きくなにかが違う気がしてる。
 
 
 
 轟々と雲を飛ばしながら吹き荒ぶ夜の空。
 黒い、早い、そんで涼しい!
 きらきらと静かに自己主張を響かせる器物達が、悠久の時を重ねていく。
 薄い月明かりに染め上げられた闇色の風が、ただ艶冶として足先を導いてくれる。
 ぽつぽつと降る雨のように、胸の淵から湧き出る、この暖かい気持ち。
 桜色に蕩けていく唇に乗せた言の葉が、ひとつひとつ丹念に目の前の黒に刻まれていく。
 ううん、刻まれていくのじゃなく、参加していくのかもしれない。
 ああ、今わたし、この世界に参加しているんだ
 ううん、それも違うのかも
 私も、世界なんだって。
 ここに、この私の存在ひとつ分に、世界の因子がある。
 夜の一部なのよ、わたし。
 いいわぁ。
 どうしてかしらね、わたし、ひとりになって初めてそのことを知った気がする。
 生前の私はきっと、沢山の人と一緒にいながら、逆にそのことがわからなくなっていた気がするのよ。
 ま、覚えてないんだけどね♪
 でも
 私は覚えてる。
 つい一瞬前に、私がこの夜を美しいって思ったことを。
 紫紺を裂いて生まれる蒼を鋳潰して広げた碧の夜気が、忽然と空を支えている。
 燃え盛るように砕け散った黒を縫い合わせて結んだ朱の水面が、陶然と月を映している。
 わたしには、そうみえる
 私が、そう見たいのね。
 私は、それが嬉しい。
 私の中に、そういう風に世界を見たいと思っているものがあるということが。
 すごくね
 
  うれしいのよ
 
 
 
 
  
 −   黒々と白銀を薄めていく月影の中に咲く いちまいの花のように
      匂い立つ月明かりに身を浸し 甘く背で風を抱きとめる
   
       みて
 
      夜がこんなにも 輝いているわ
                                             −
 
 
 それはしっとりと瑞々しさを孕みながら、それでいて雫のひとつもこぼさないほどに
   溢れるほどに 光に染まっている
 
 腕を広げて為すがままに 胸を開いてあるがままに
 じっとりと染み出すようにして、胸のうちのすべてが溶け合うようにして、空に昇っていく。
 光沢だけを取り出してさらに磨いたような水面には、ただ時間だけが流れている。
 千々に乱れ、溢れ、彷徨い、けれどどうしてかな。
 そんな私の心がね、気持ちがね、想いがね。
 こうして、夜の真っ黒な空に吸い込まれて、そこからひとつずつ色を浮かべていく様がね。
 なんだかどうしようもないほどに、嬉しいの。
 どきどきして、どこかはらはらもしながら、でもひとつ、ゆっくりとお空の星達を数えてる。
 綺麗ね
 わたしのぜんぶが、世界に映し出されてる。
 あの黒い空に浮かぶ、あまりにも複雑に溶け合った色たちには、よいもわるいもない。
 好きも嫌いもない。
 ああ、私、こういう空が見たかったのねって、
 初めてこの凄まじいほどに多様な色彩に浮かぶ空を目にしたときに、おもった。
 私が見たいモノを、私は選ぶことが出来ない。
 だから、この空に映し出されているものが、私によって決められて塗られているものでも無い。
 私がどうしようもないほどに渇望しているものがなんであるのかを、私には操作出来ない。
 だからね
 
 ああ
  これが
 この夜空に浮かんでいるものが、私の真実なんだっておもったの。
 
 
 人は信じたくないモノでも信じてしまう。
 逆に、信じたいモノでも信じられないことがある。
 私が今自分で感じているモノが、それがほんとうのほんとうに、
 私の胸の奥底で求めているモノであるとは限らない。
 私はきっと、その私の胸の奥にあるものを知りたかったのね。
 本当は欲しくはないものを、欲しいと思い込んで、がむしゃらに身を削るほどに求めてた。
 本当は欲しいのに、欲しくないと思い込んで、自分でも気付かない痩せ我慢に震えてた。
 それが、呪い。
 私は、森々として、その呪いを解くために、空を見上げ、夜に遊んでいたわ。
 ねぇ、わたしが欲しいものって、なに?
 そうやって、問い掛けた。
 問い掛けて、考えて、感じて。
 たくさん感じて、考えたのよ、わたし。
 ひとりで考えて、ひとりで感じて、いくつもの夜を越えてきた。
 すごかった。
 生前にはあり得ない体験だった、たぶん。
 いつも、いつも私の隣に、そして私の中にも、恐い誰か達がいたのよ、きっと。
 でも
 いまはひとり。
 一瞬のように、あっという間に、たくさんの夜を越えていける、体験。
 誰にも邪魔されない、ほんとうに私ひとりだけで、感じられる、考えられる、夜。
 
 わたしの ひとりを 見つけられる時間
 
 
 いっぱい、いっぱい。
 感じて、考えたのよ。
 そうしたら、わかっちゃった。
 ああ
 私が、わたしがほんとうに、ほんとうのほんとうに、そして絶対にどうしても欲しかったものがなにかって。
 
 
 
 
 
  だれかと   一緒に 
 
    この夜を
 
 
 
 私がこの夜の中に暖かく沈みながら感じたことを、考えたことを。
 いっぱいいっぱい、考えて、感じたことを。
 誰かに、話したい。
 聞いて貰いたい。
 私がみたこの世界を、一緒に観てほしい。
 私が遊ぶこの時間を、知ってほしい。
 わたしを
 ちゃんと
 みてほしい
 ふれてほしい
 
 聞かせて欲しいの
 あなたの わたしへの言葉を
 
 
   ・ ・ ・   貞一君が、私の存在に気付いてくれたから
 

 
 弾け飛ぶほどに情艶な炎が、胸の奥を焦がし尽くしていくのを、とても逞しく感じていた。
 そうよ、もっと、もっと燃え上がっちゃえ♪
 くるくると忙しく駆け回る子犬に、私の中が掻き回されていくかのようにして、私はどんどんと、
 真っ直ぐに瞳を狭めていく。
 貞一君、貞一君!
 夜の校舎の中を、彼の手を引き歩き回り、ここぞとばかりに深く笑って魅せる。
 ほんとうに楽しくて笑顔がこぼれて、そして彼にもっと私に興味を持って欲しくて、綺麗に笑う。
 素直な笑顔と演技の笑顔がまぜこぜになって、私の胸を焦がしていく。
 嘘も本当もそのまま盛り込んだ私の笑顔が、深々と目の前の世界に映し出されていく。
 幽霊は、眠らない。
 でも、添い寝はするの♪
 そうよね・・わたし・・もう人とは違う時間と世界を生きてきて、みんなに見て貰えなくて・・
 私はここにいるのに、私だって、見て貰いたいのに、一緒にいたいのに。
 でも、それは違った。
 私は、私だったのよ。
 わたしは、幽霊。
 死んでいない貞一君とは確かに違う存在だけど、でも自分を見て欲しい誰かに一緒にいて欲しいと、
 そう思う気持ちは同じよ。
 そしてね。
 それはなにも、私も貞一君と同じようにみんなに見られたいとか、みんなと同じように寝たい、
 っていうことじゃあないのよ。
 私には、私なりの見られ方、一緒にいる方法がある。
 貞一君に、私のことちゃんと考えて貰って見て貰えるのが、わたしは大好き♪
 わたしは貞一君の寝顔を見ながら、添い寝するのが大好き♪
 それが私のやり方。
 生き方。
 それで、いいんだ。
 
 寂しかったのよ、わたし。
 ずっとずっと、さびしかったんだから!
 わたしの、正直な気持ち。
 もう、そう言って、いいんだ。
 
 きらきらと瞳の内側を流れていく、ひんやりと心地良く冴えた涙を感じながら、
 ゆっくりと嗜むように、貞一君のまえで躍る私の姿を、噛み締めていく。
 きれい・・
 振り乱した黒髪を、駆け抜ける風で撫でるように梳る。
 そろりと、まるで内緒話を吹き込むように、私は確かなこの自分の指先を貞一君の胸元に届かせる。
 あったかい・・
 高鳴る胸を押さえる振りをして、私は艶やかな女を魅せる。
 貞一君の、視線を意識して。
 私の、見たいものを意識して。
 男の子に好かれる自分。
 私に好かれる自分。
 目の前の男の子の前で、手作りの可愛い演技を披露する私を、責める私なんてどこにもいない。
 たのしくて、たのしくて、しょーが、ないっ♪
 そのたのしいという気持ちが、私の演技を飛び越えて、貞一君の目の前に、すとんと着地する。
 着地、成っ功♪
 自分に嫌われないことが、こんなにも楽しいなんて。
 自分に嫌われないようにする事に必死な自分がいないことが、こんなにも軽やかだなんて。
 この軽やかな楽しさこそが、ひとつひとつの私の足取りに熱を込め、私を見つめる人に伸ばす指先が、
 確かな羅針盤を、貞一君の胸に描き込んでいく。
 そうね。
 きっと私は、貞一君に好かれなくなっても、そんな私のことを嫌ったりなんかしない。
 ただただきっと、大好きな貞一君の微笑みを思い浮かべて、ひとりで夜を見上げていられる。
 会いたいな
 だから さびしい
 貞一君に、ずっと会えなくて、わたしとってもさびしかったんだからっ!
 
 あなたがくれるもの みせてくれるもの きかせてくれるもの
 みんなわたしの大切な たからもの
 あなたがいなければ私は生きてはいけないだなんて、そんな事も言ってみる。
 ふふ、もう死んでるけどね♪
 あなたがいなくなっても、わたしが死んでも、わたしはこうして、今、ここにちゃんといる。
 私の中でひそめく、無数のなにかを感じながら、その胎動の中で、わたしはひとり、きちんと謳う。
 わたしのひとりを わたしのおもいを
 わたしの さびしさを
 ひとつの歌物語として、私は歌い上げる。
 それは私の物語なんだけど、でも私は物語じゃない。
 私は物語を語る、語り手。
 歌をうたう、歌い手。
 かなしい物語も、呪いの歌も、かなしいだけの、呪うだけの私じゃ決して書けないし、歌えない。
 そしてだから、私はその語り手として歌い手としての気持ちの中にこそ、生きていく。
 いまをいきていく。
 さびしいって、正直に叫んだら、なんだかとっても、すっきりしちゃった。
 私がさびしいって言えるようになったのは、きっと。
 寂しさが求めていたものを満たすことを、知ったから。
 ほんとうにわたしがずっと求めていたものと、出会ったから。
 
  貞一君と出会って
 
     一緒に過ごせる夜をみて
 
 
  だからわたし   さびしいって 言えるようになったんだよっ!
 
 
 
 上気していく頬の紅を止められない。
 冷え冷えとした興奮が体の震えを心地良く鎮めていく。
 鮮やかな瑠璃色に綴られた感情が、ひとつひとつ胸のなかに丁寧に収められていく。
 この感触が、とても・・とても・・
 愛おしい・・・?
 違うわ・・
 これは・・・・
 ほんとうに・・・・
 
   清々しい
 
 
 つんと、誇り高く鼻が鳴る。
 はためく髪を風任せにして、流れるままに、涙の情熱を感じていた。
 
 
 
 
 せっかく水着着たのに、なにも言ってくれないなんて!
 なによ、わたしをほっぽり出してみんなとばっかり!
 いくら夏休みだからって、少しは会いに来てくれたっていいじゃない!
 貞一君のバカ、バカバカ、バカっ!
 子犬のように目まぐるしく躍り回る私のその姿を、
 私はこんもりと積み上げた砂山を完成させたときのように感じている。
 ああ、私はこういう私の姿をみたかったのね。
 でも、それは違ったわ。
 だって、そんな私の姿はもう、どこにも見えなかったのだから。
 
 だって
 
 そのときわたしにみえていたのは
 
   そんな私にあたふたとする 貞一君の姿だけだったのだから
 
 
 
 
 もう ひとりじゃないんだ
 貞一君に迫る私の本気に、一番どぎまぎしていたのは私自身。
 まるで、私が私の本気そのものになってしまったかのような、感覚。
 その感覚に本能的に恐れを感じて、私は演技についとはしる。
 貞一君の胸を突き回し、悪戯して、私の体をこれみよがしに餌にして振り回して。
 私はただ、貞一君と触れ合いたいだけ。
 ぽっ ぽっ
 ミイラ取りがミイラになる勢いで、彼に触れた途端、振り回す方が、その回転の勢いに引き摺られて。
 貞一君と見つめ合い、手を重ねて。
 
 
 は
 は
 
 はずかしいっっ
 
 演技なんか一瞬たりとも出来なかった。
 一切の余裕も無く、濡れそぼるわたしの衝動のままに、突き動かされた。
 触って さわられて みつめあって
 わたしと貞一君の瞳の色が、ひとつに溶け合っていくのを止められない。
 止められないどころか、止めるということを完全に忘れていた。
 忘れていた、ということに気付いた瞬間に、目の前にひとりの男の子がいることに気がついて。
 恥ずかしさのあまりに、瞳を逸らして手を離した。
 無理、無理!
 というか、今わたし、なにを。
 でも
 嫌じゃなかった。
 恥ずかしかったけど、やっちゃったっておもったけど、けど。
 ああいうのも、悪くないなって、思った。
 おもったのよ、わたし。
 不思議ね。
 ただひとりであることが、楽しかったのにね。
 ただただ、他の人達のことを、眺めるだけで楽しかったのにね。
 私が見るばかりで、私は見られることの無い。
 見られることが無いから、好き放題に自由にいられた。
 楽しかったわ。
 でも。
 もう、きっと、充分なのね。
 ひとりの時間から、私はもう充分、力を貰ったわ。
 その力を使って、私は貞一君に会いにいきたい。
 貞一君との時間を、たのしみたい。
 たぶん、もう、ひとりとかひとりじゃないとか、関係無いのかもしれない。
 わたしの大好きな男の子。
 貞一君。
 彼がほんとうに映し出してくれたものは
 
 
  醜くも美しいこの世界のなかで
 
     わたしを生きることが出来るようになった
 
   そんな豊かな夜の姿だった
 
 
 
 
 
 
 『 いつ明けるとも 
           もしかしたら 二度と陽が昇ることはないとさえおもえる
 
                                            この素敵な時間 』
 
 
 
 
 
 
 
 
  『 ありがとう 貞一君 』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  あー♪  生きてて よかったぁ
 
 
 
   ・・いやもう死んでますから、夕子さん。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                        ◆ 『』内文章、アニメ「黄昏乙女×アムネジア」より引用 ◆
 
 
 
 
 
 
 

 

-- 120520--                    

 

         

                                  ■■ 雨に這う鬼 ■■

     
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ざぁ ざぁと、強突張りに降りしきる。
 匂い立つ冷気が、ひやりと指を伸ばすようにして、首筋を伝っていく。
 抱えた膝の、ほんのりとした固さが、石にでも変わってしまえばいいのに。
 固くて、重くて、すらりと彫り上げられた、一刻の彫像のように。
 膝に額をがしがしと打ち付けながら、子供のようだとひとりごちるその声が、どこまでも、どこまでも。
 消えずに、耳朶を打つ。
 やめろ やめろ うるさいっ
 その声すらも、耳にまとわりついて、離れない。
 鼻を突く 雨の匂い
 雨垂れが、しとしとと、その深みを増していく。
 降れば降るほどに、その雨は胸の奥底から湧いて出る。
 腐りかけの魔物が、腐り切るまえに、生者を取り殺そうとするかのように。
 腐れば腐るほどに、降り積もる雨の重みが、胸を押し潰す。
 やめてくれ もう
 膝を抱えながら、泣いている。
 どうしてなんだ
 どうしてなんだよ
 止まらない涙がやがて、この屋根の向こうに消えてしまうのかもしれない。
 ざぁざぁ
 どこまでも鳴り響く途切れないその叫びが、私の体から涙を吸い上げていく。
 泣けども 泣けども
 私はどうしても
 この雨を 止めることができなかった
 
 
 
 ・
 ・
 ・
 ・
 
 
 きもちわるい
 中途半端に伸びた髪の先が、首筋に当たることが、気になって仕方ない。
 切っても、切っても、すぐに伸びてくる、真っ黒な髪。
 いっそ丸坊主にでもしてみようかと、我ながら自嘲にすらならないことを、呟いては吹き消していた。
 あるときまで、私は自分で髪を切っていた。
 なんだか知らないが、この面倒な物体は、自分で始末しなければいけないものなのだと、
 そんな風に思っていた。
 私にとって髪というのは、私のものでありながら、私に押しつけられただけの、お荷物だった。
 髪なんて、いらないのに。
 ただみんな生やしているからという理由だけで、私はその髪を剃らずにそのまま生やしていた。
 首筋に当たり、鬱陶しくなれば、切る。
 ああ めんどうだ
 ばさり ばさり
 周囲の者は止めたが、私は意固地になって、髪を切り続けた。
 いらない
 髪なんて いらない
 ばさり ばさり
 怒りを込めて、切り捌く。
 無残に切り散らかされた頭を見て、周囲の者は、悲しんだ。
 わたしは
 なんだか 嫌だった
 でも それ以上に
 祖母が
 おばあちゃんが
 
 
 
 +
 
 祖母は物静かな人だった。
 優しい、というのとは違うのだと私は感じていた。
 祖母は、無口な人だった。
 祖母は、無駄を嫌う人だった。
 祖母は、愚かな人間を嫌う人だった。
 祖母は
 私が、好きだった。
 好きだった、のだとおもう。
 なにぶん、祖母は自分の気持ちというものをまるで言わなかったものだから、
 私は祖母が私に対してすることの意味を、特定することが出来なかった。
 祖母が私に昔話を聞かせてくれたのも、お菓子をくれたのも、お小遣いをくれたのも、
 学校の成績について話したときに、特に怒りも喜びもしなかった事も。
 私には、いったい祖母のどういう気持ちから、そういう事が私に対して行われていたのかが、
 わからなかった。
 好き、なんだろうな。
 好き、であって欲しいな。
 そう思いながら、私は望みを持ちながら祖母と接していた。
 それでなんの齟齬も起きていなかったし、なにも問題は起きていなかった。
 そして私は髪を切り落とし続ける人間になった。
 なにも、おかしいことなんて、なかった。
 
 切る
 切る
 殺害する
 祖母は髪の短いヒトだった。
 子供の頃は長かったのだそうだが、ある理由で髪を切り、それ以来伸ばすことはなかったのだと。
 そう、祖母は淡々と話していた。
 その理由というのは、教えてくれなかったし、私も訊かなかった。
 切る
 切る
 地獄に突き落とす
 はらはらと舞い落ちる髪の海の中で、私は一枚の写真をみつけた。
 ぞっとするほどに綺麗な黒髪を靡かせた、悪魔が映っていた。
 清楚
 いや、それは奥ゆかしさを昏黒に染まる制服の中に詰め、その輪郭を静かな佇まいで囲んだもの。
 鬼のような吐息が、うなじを責め上げる。
 この女の清楚さは、自分の奥ゆかしさをより引き立てるための、そんな生け贄としての軽薄さそのものだ。
 ああこいつは
 自分を飾っている
 自分の心までも、周到に綿密に、組み上げている。
 それは紛れもなく写真であるはずなのに、その女が映っているだけで、それは一枚の絵と化していた。
 あらゆるものが、その女の切れ長の目によって、造型を施され、そして操作されていた。
 黒曜石を磨き抜いたのちに、一撃で砕いたその破片を寄り合わせ、
 血で染めたようなその女の瞳の中には、凄まじいほどの情欲の炎が宿っていた。
 それを、黒い制服で、黒い髪で、黒い空気で、鮮やかに、そして静かに囲っていた。
 囲い、閉じ込め、そして。
 それを、必死で
 己の力で、支配しようとしていた。
 
  ああ
       こいつは嫌だ
 
 
 
 
 それは、祖母の姉だという。
 十五の歳に事故により死んだ、夕子という女なのだという。
 そう語る祖母の言葉は、白々しいほどに、淡いものだった。
 嫌だ
 嫌だ
 これは 見てはいけないものだ
 黒く、長い髪。
 黒い制服に包まれ着痩せの様相を見せびらかす、豊満な体。
 あくまで、清楚な風。
 こいつは嘘を吐いている!
 しかし私はその叫びを、口にすることが出来なかった。
 祖母は愚かな人間が嫌いだった。
 私がこの写真の女に投げかける、如何なる言葉も、その女には届かないばかりか、きっとそれは・・
 祖母にも届かないのだろうと、私は感じていた。
 なにせ、この女は、もう死んで、この世にはいないのだから。
 
 - 私の言うことは この女のあまりに緻密で厳密な詐術の前では 餓鬼の戯言以外のなにものでもない
 - 私の言うことは 記憶の中の姉に陰に陽に耽る祖母の前では 愚者の囀り以外のなにものでもない
 
 
 
 
 

 
 
男に
なりたかったわけじゃない
 
−女が嫌だっただけ−
 
 

大人に

なりたかったわけじゃない

 

−餓鬼が嫌だっただけ−

 
 

 
 
 

 
 
 

ざぁ

 

ざぁ

 
 

雨が降る

 
 
 

 
 

 
 
 
 
 
 ・
 
 祖母の姉。
 その名を、夕子という。
 漆黒の髪を嫌というほどに長く煌めかせ、嫌というほどに女らしい体のラインを誇る、女。
 いやらしい
 亡者のくせに
 夕子は、いや、あの写真の中の黒い悪魔は、嘘を吐いている。
 私はいつのまにか、その嘘を暴きたくて、仕方が無くなっていた。
 『ひんむいてやる』
 写真の中の女は、とても子供っぽく、悪戯心に満ち、やりたい放題、好き放題、
 自由奔放を絵に描いて額縁に入れて飾りたいほどの、そんな情欲に塗れている。
 にも関わらず、この女は、それを隠している。
 澄ました顔して、おしとやかぶりも鮮やかに、艶やかさすらも隠して、虫も殺さぬような清楚な顔で。
 笑ってすらも、いない。
 隠して、押し隠して、まるで、情欲塗れの自由な己を殺す事にすべてを捧げる、殉教者のようにして。
 この女は、ただその世界の中で佇んでいた。
 許せない。
 おまえは、悪魔だ。
 鬼だ
 亡者だ
 そう指を指して叫ぶ私にだけ、この女は、にやりと嗤う。
 私だけにしか見えていないのか?
 こいつ、今、嗤ったぞ!
 誰にもみえない
 誰にも、私の叫びは届かない
 狂おしいほどのもどかしさが、私を突き動かす。
 切る
 切る
 千切れ飛べ!
 
 
 
 
 
 
 
 
 ◆
 
 世の中に、床屋だとか美容院だとか、そういったものがあることを知っていながら、
 ずっとその存在を無視していた時代が、終わった。
 中学に入学するときに、なんだかわからないが、私は自分の髪を他人の手に委ねる事を決心した。
 切っ掛けはクラスメイトに誘われたから、という他愛もないものだった。
 それはべつに、私が無残な頭を晒していたことを哀れんでの誘いでは無く、たんにそのクラスメイトが、
 友人を紹介するとその美容院だかヘアサロンだかの割引券が貰えるという、ただそれだけのことだった。
 ただそれだけのことが、今まで私には、無かった、というだけのことだ。
 私がそのクラスメイトの誘いに乗ったのは、それが私の髪に対してなんの興味も持たない、
 たんなる損得の話だったからだ。
 嫌じゃなかった。
 そのクラスメイトにとっては、私の髪がどうであろうと、どうでもよかったのだから。
 なんだか、拍子抜けがした。
 いや、肩の荷が下りたような気がしていたのかもしれないな。
 ひどく、楽だった。
 そのクラスメイトは、私が迷いもせずに行くと言ったことに多少なりとも驚いたようだったが、
 しかし、喜んでいた。
 痛快だった
 私のいらない髪が、割引券と同等の価値を持ったのだ。
 怒りを込めて切り刻んでいた、そのお荷物の髪には、利用価値がある。
 初めて紹介された美容院に行き、すべてお任せして、家に帰ってきたとき、
 家族は私が髪を切り散らかさずに、ちゃんと整えたことを喜んだ。
 そして
 次の日、学校に行ったその瞬間。
 私の世界が、ひとつ変わった。
 
 
 どよめき
 それが、私に向けられたものと理解したあの瞬間の衝撃を、私は今もまだ忘れてはいない。
 
 
 カ ッ コ イ イ ?
 
 なんだ? それは。
 誰の、なんのことだ?
 かっこいい。
 私は、生まれて初めて、そう呼ばれた。
 いや、初めて、自分の容姿を褒められた。
 髪を短く切り揃えた、それを私以外の誰かにやって貰っただけなのに。
 髪なんか、私にとっては、ただの・・
 その後、伸びていく髪と背とともに、私の髪への興味は深まっていった。
 この髪は、やはり価値があるんだ。
 鏡の前に座り込んで、いつまでもイジリ回す。
 ショートカットのかっこよさを、もっと引き出すために。
 ピアスもした。
 そうか、私はかっこいいのか。
 こそばゆいような、恥ずかしいような、けれどそれは決して悪い気のしないものだった。
 馬鹿馬鹿しいと、それでも思いながら、しかしその後、私は自分で髪を切ることは無かった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 あの日
 夕陽に溶けるひとつの窓辺に 悪魔がいた
 
 髪の長い、恐ろしいほどに綺麗な、ひと。
 いつ 気付いた
 わたしは・・
 それは紛れもない、あの写真の中の女、祖母の姉、夕子だった。
 まるで紅い夕陽の薫りがそのまま形を顕したかのようにして、その黒い影は校舎の中で佇んでいた。
 憂いを秘めた、寂しげな眼差し。
 かつてない、怒りを感じた。
 不愉快だ
 今まで、まるでその存在に気付かなかった。
 そいつ、夕子は、あまりにも当然のようにして、そして忽然と私の目の前に顕れた。
 その瞬間から世界に存在したのか、それとも、もうずっと前から其処にいたのかは、わからない。
 わからないが、私には見えてしまったのだ。
 その女が、夕子が、ずっと其処に、いたのだということが。
 夕子は、あろうことか。
 堂々と、笑っていた。
 気色の悪いほどに、天真爛漫に、頭が痛くなるほどに、自由自在に。
 校舎の中を、悪戯して回っていた。
 なんだ、これは。
 夕子は、幽霊だ。
 私以外の誰にも見えていないらしい。
 それをよいことに、あいつはやりたい放題だ。
 大いに、笑っていやがる。
 巫山戯た悪戯を成功させるたびに手を打ち、しまいには、お腹を抱えて笑い転げ始めた。
  
 これが、夕子?
 
 これが、この学校に伝わる怪談の正体?
 
 
 私の目の前にいたそれは、あの写真の中の女が、十重二十重に囲い隠していたモノ、それだった。
 丸出しだった。
 ひんむくまでもないほどに、豪快にあっけらかんとして、夕子はその本性を晒していた。
 アホみたいに子供っぽく、馬鹿みたいに女子らしい、ひとりの人間。
 そのまんま、だった。
 他に言いようが無いほどに、その夕子は無防備だった。
 誰にも・・見られていないと・・思っているから?
 写真の中のあの女が嘘で塗り固めて自分を隠していたのは、誰かに見られていたから、なのか?
 でも、あのとき・・・あのとき写真の中のお前は・・私が見ているというのに・・・嗤って・・・・
 
 私だけ、だったから?
 
 私だったから、なのか!?
 
 
 胸を突く、凄まじい、吐息。
 まるで炎で炙られたようにして、喉が渇く。
 ふざけるな
 私は、夕子に嘗められているのか?
 もし、今、私には夕子の姿が見えるということが、夕子に気付かれたら。
 夕子はまた、私を嗤うのか?
 今度は、無防備な、本性のままに?
 嫌だ
 いやだ
 足下から頭の先まで、悪寒がする。
 取り憑かれる。
 いやだ いやだ
 おまえは おまえは・・・
 そ、そうだ夕子、おまえは、私が一番最初におまえに気付いたとき、寂しそうな顔をしていたじゃないか!
 あれは、写真の中のおまえが纏っていた、あの嘘臭い清楚そのものじゃないのか?
 おまえの本性は、あの邪悪な・・嗤いだろう!
 なぜおまえは、今、無邪気に笑いながらも、時折ふっと、そんな清楚じみた寂しさを見せるんだ!!
 それではまるで・・・・まるでおまえの本性こそが、寂しさと清楚さのようじゃないか!
 おまえの、おまえの本性は、あの無邪気さと、自由奔放さだろう!
 おまえは・・
 おまえは・・・・・・
 
 
 
 ×××
 
 その日から、夕子の姿は、本性を以てその色を塗り替えた。
 腐り落ちた、醜いその姿。
 そうだ、それがおまえの本性だろう。
 無邪気で、自由奔放で、嫌になるほど女らしくて、狡猾で、いやらしくて、好き放題のやりたい放題、
 そういう醜い、悪魔だ、鬼だ。
 亡者だ、幽霊なんだ!
 あっては、いけないんだ。
 いては、いけないんだ!
 長い髪の女なんて、女なんて・・・・
 疼く
 土気色に染まる夕子の肌が、散々バラバラと音を立てて軋んでいくのがみえた
 きえろ
 きえろ
 切る
 切る
 目の前にいるのは、私の髪を切る刃の切っ先にあるものと、同じものだった。
 くそ
 くそっ
 頭を抱えて座り込む。
 汗ばむ掌に触れる髪が、なぜだか無性に、憎らしい。
 けれどこの髪は、もう、切れない。
 いや、切ってはいけない。
 この髪は、もう、価値があるんだ。
 もう
 無駄なものじゃ、無いんだ。
 つい三日ほど前に切った髪。
 今回の出来は、今まででもトップクラス、これからずっと私はこれでいくと思わせてくれるほどのものだった。
 あの新しく入った美容師の人のセンスは、私と妙に合う。
 今度から指名する予定だ。
 そういう
 この髪を
 私は もう おろそかに 出来ない
 カッコイイ
 先日、私が入部することになった怪異調査部に所属する、小此木という奴にも、そう言われた。
 私の背だの足だのを、スレンダーだのなんだのと言って、妙に気に入ってくれた。
 わたしは・・・かっこいいんだ
 そう言われたこと自体は、恥ずかしくてどう対応していいかわからなかったが、でも私にとってそれは、
 その小此木の言葉は、とても大切なものだった。
 私は、これで、このスタイルでやっていっていいんだ。
 無駄じゃない。
 愚かじゃない。
 
 あんな あんな
 無駄に長い髪なんか
 あんな 馬鹿みたいにでかい胸なんか
 
 夕子の姿は、日に日に醜くなっていく。
 醜くて、憎くて、いやらしい。
 なのに、それなのに、私の飢えた瞳は、夕子のその姿の醜さをこそ、剥ぎ取っていってしまう。
 どうみても
 夕子は・・・
 綺麗だ
 私が憎めば憎むほど、夕子の姿は、醜いほどに美しく輝いていく。
 『私は・・・綺麗なんかじゃ・・』
 私は・・カッコイイ・・・んだろ?
 それで、いいじゃないか。
 私が見た、腐り切った夕子の姿は、私の恐怖がそう見せただけのことだった。
 その事を自覚した瞬間から、私がどれだけ夕子の姿を憎もうと、
 もうその夕子の肌が土気色になることはなかった。
 いや、あるいはこれは、醜い夕子の姿が腐りきり、そして腐り尽くしたのち、
 その腐った殻の中から、美しい夕子の姿が生まれた、ということなのかもしれない。
 いずれにせよ、私の目の前にいる夕子は、言語道断で・・
 美しかった
 綺麗だった。
 
  女 だった
 
 
 
 
 
 − −
 
  ああ いやだ
  女は いやだ
  長い髪なんて 切ってしまえばいい
  でかい胸など 削ぎ落としてしまえばいい
  女なんて 消えてなくなればいい
 
  どうしておまえは
  そんなに 綺麗なんだ
  どうして
  おまえのその姿を、私の瞳は映し出してしまうんだ
 
  嫌いなのに
  こわいのに
  やめろ
  やめてくれ
  おまえなんか
  おまえなんか
  もう死んでる
  いないんだ
  女なんて
  わたしは
 
 − −
 
 
 
    『 なんでこんなに 不愉快なんだ 』
 
 
 
 
 短い 髪
 薄い 胸
 それなのに
 瞳の色は おなじ
 
 
 
 
 一度だけ見たことのある、祖母の若い頃の写真
 
 そこに映っていた冷たい顔の少女は、私によく似ていた
 
 そして
 
 それ以上に
 
 − 夕子と瓜二つだった
 
 その姉と同じ顔の少女の髪は、深く抉るように切り落とされていた
 
 
 
 
 
 
 
 
 ◆
 
 
 小此木に押し切られて、おかしな格好をさせられた。
 長い黒髪、ネコ耳、メイド服。
 文化祭のクラスの出し物、メイド喫茶の店員をやらされた。
 冗談じゃないが、冗談にはしてくれなかった。
 押し切られるままに、教えられた通りに振る舞った。
 歓声
 
 かわいい?
 
 私は、言われるとしたら、カッコイイ、だったんじゃないのか?
 かわいいって・・・・かわいい・・のか?
 胸は薄いままだが、髪・・・・長いじゃないか・・
 私に似合うわけが・・・
 気付けば私は、可愛い女の子、として振る舞っていた。
 動けば動くほど、慣れれば慣れるほど、私はその自分の姿を受け入れていった。
 なんだ・・・
 私も・・・結構・・・・
 鏡に映った私の姿は、自分で言うのもなんだが、なかなかのものだった。
 可愛くて、綺麗だった。
 カッコイイと言う必要も言われる必要も無い、ただ無心に、女らしい私の姿がそこにいた。
 これは、私、なんだ。
 
 
 
 私の名は、庚霧江。
 私の祖母の姉の名は、庚夕子。
 私は、家族や親族以外からは、すべて庚さんと呼ばれていた。
 夕子と、同じ姓。
 同じ、なんだ。
 耳が遠くなりたいと、おもった。
 夕子の姿を学内で初めて見つけたときから、私は自分の姓が呼ばれることが嫌になった。
 写真に映る夕子を見つめていただけのときは、そんなことは感じなかったのに。
 夕子は昔からいつだって、庚夕子なのに。
 でも
 夕子が
 いるんだ
 幽霊だけど
 
 いるんだ  今   わたしの目の前に
 
 夕子の名は、以前からこの学園に伝わる怪談の中で語り継がれていた。
 夕子さん。
 それはあくまで怪談の主の夕子さんであって。
 私の血縁の、あの夕子では、無かった。
 祖母の姉の名が、夕子であることは以前から知っていた。
 だが、その名が怪談の主の名と同じであることは、ただの偶然だと思っていた。
 なにしろ、怪談の主の姿を見たことが無いのだから、同じ人物かどうかなど、わかるはずもない。
 それが
 見えた
 見えて しまったんだ
 紛れもない、写真の中の祖母の姉が、まさに目の前に幽霊として存在していたのだ。
 怪談の主夕子さんは、私の祖母の姉の、庚夕子。
 いる
 目の前に
 私が憎んだ・・
 そして
 綺麗だと
 思った その女が
 いる
 
 その女と同じ名で呼ばれたくはなかった。
 私は庚ではない、霧江だ!
 でも・・
 霧江・・か・・・
 なんだよ・・・・なんでこんな・・・・・女っぽい名前なんだよ・・・
 女、なんじゃないか・・
 私も夕子と同じ、女なんじゃないかっ!!
 綺麗なんかじゃ・・・わたしは・・・
 やめろ やめてくれ
 わたしは私で・・だけど・・・・女・・なのか・・・・
 小此木に、庚ではなく霧江と呼んで欲しいと頼んだとき、本当にそれで良いのかと、胸が疼いた。
 霧江の名が、女を、呼び起こす。
 庚の名が、夕子を、呼び起こす。
 私が憎み、私が恐れ、そして・・・
 私が憧れた女
 そして 夕子の姿が・・・
 
 逃げられない のだな
 
 
 黒くて長い髪の私が、鏡に映っている。
 この姿を私は、可愛いと、女らしいと、綺麗だとおもった。
 逃れ得ない、私のどうしようもない、ほんとうの気持ち。
 そして、情欲。
 その鏡に映った私の姿は、夕子によく似ていた。
 似ているだけで、そして、全く同じ、というわけでも無い。
 私が、可愛いと、女らしいと、綺麗だと思ったのは、いったい誰のことなんだ。
 私は、鏡に映った、夕子の姿にそう思ったのか?
 それとも・・・
 『ひどい顔・・・・』
 認めたくない
 夕子が、綺麗だなんて。
 私が憎いと思った、あの女らしい女の姿を、認めるなんて。
 私が・・わたしがそんな女の姿をして、ここにいるなんて。
 わたしは・・・・私は・・・女なんかじゃ・・・
 そうだ・・そうだ・・・私は、夕子のコスプレをしているだけなんだ
 可愛いのは、だからそうだ、夕子であって、私じゃない。
 私は、髪の長い黒髪の女なんかじゃ、無い!
 祖母を裏切ったりなんか、しない!!
 
 でも
 その夕子の姿を、綺麗だと思ったのだろ? わたしは
 
 思ってしまったんだ。
 ああそうだ、私は、夕子に憧れていたんだ!
 でも・・でもそれは・・・ほんとうは・・・・・・・・
 私が夕子に憧れて、夕子のことが好きで、夕子の姿をずっと眺めていたいと・・そういうことじゃなくて・・・
 
 
 
  私こそが、綺麗な女になりたかったからなんだ
 
 
 
 そのことが
 怖かったんだ
 私と同じく夕子の姿が見える新谷に、夕子そっくりのこの姿を見られても、夕子に見間違われなかった。
 私がどれだけ夕子の真似をしようと、私は夕子にはなれないし、夕子では無い。
 その事が、恐ろしいほどに、悔しかった。
 夕子は、あるがままに、好き放題に女らしさを謳歌している。
 私は、その夕子と同じようにはなれないのか?
 新谷、おまえはそう言うのか?
 私は女らしく生きてはいけないのか?
 可愛くなっちゃ、いけないのか?
 夕子にすら、私はなってはいけないのかっ?
 こんな格好をしているというのに、同じ苗字なのに!
 瞳も、髪も、顔も、全部、今の私と同じなのに。
 私だけは、駄目なのか?
 私だから、駄目なのか?
 夕子はよくて、どうして私は駄目なんだ?
 私だって、私だって、だけど、私は夕子が憎くて・・・悔しくて・・・許せなくて
 なんで・・
 なんでわたしは・・・・
 悔しいんだ・・・・
 なにが・・悔しかったんだ・・・
 なにを・・・・許せなかったんだ・・・・
 私の胸に降りしきる、この締め付けるように這いずるものは、一体なんなんだ。
 
 
 
 
 +
 
 私は祖母が嫌いだった。
 無口で、なにを考えているのかわからず、どう接していいのかわからなかった。
 わからないのがなぜか恐ろしくて、私はいつも祖母の心中を推し量っていた。
 推し量り、察して、勝手に解釈して、想像して。
 妄想、して。
 − 恐怖 −
 祖母は、なにも、言っていない。
 なんにも、私にはしていない。
 ただ、ただそれが、私は怖かっただけだった。
 私は、祖母がずっと女というモノを憎んでいるのだとばかり、思っていた。
 私のことが、嫌いなんだと思っていた。
 だから、自分の気持ちを話してくれないのだと思っていた。
 
  − だって あんなに 髪が
 
 私はそんな祖母のことが、嫌いで、好きだった。
 自分の気持ちを、話して欲しかったんだ。
 好きだったから。
 話して欲しいのに、話してくれないから、嫌いになった。
 話して欲しい、おばあちゃん、私はおばあちゃんの事が好きなの。
 それでも話してくれない祖母が嫌いだった。
 そしてそれはやがて形を変えて、大好きな祖母が自分の事を話してくれないのは、
 それは祖母に話させることの出来ない、私が悪いのだということになった。
 
 私は、私が大嫌いだった。
 
 だから
 自分を縛るルールを勝手に作りまくった。
 髪を切り落とし、男言葉を使い、強くあろうとした。
 そうすれば、いつかきっと、祖母は私に自分の話を出来るようになるのだと。
 祖母が、祖母の姉である夕子に、尋常ではない想いを抱いていることは感じていた。
 祖母の夕子に対する、あまりに淡泊すぎる反応は、どうしてもなにかの隠蔽を私に感じさせた。
 こいつが、おばあちゃんの敵か。
 夕子を否定することが、それ以来私のおばあちゃんへの忠誠の証となった。
 女は敵だ。
 髪の長い黒髪の女なんて、消えてしまえばいい。
 
 おばあちゃんは、ただの一言も、そんなことは言っていないのに。
 
 私はひとり、延々と夕子と戦い続けていた。
 私の瞳の中の夕子は、ざぁざぁと雨に這う鬼のように、私の胸の奥を喰い破り続けた。
 わたしは・・
 私は・・
 
 
 
 
 
 
 この顔が憎い
 夕子が憎い
 鏡に映る私の顔が憎い
 夕子は私の敵
 私は 私の敵
 夕子に憧れる私なんて、滅してしまえ
 女らしい女の私など
 もう
 死んでいる
 亡者なんだ
 幽霊なんだぞ!?
 そう
 そう・・・
 
  もう・・・私の女なんて・・・・・・・死んじゃったんだ・・・
 
   もう・・ もう・・・・・ 夕子の真似したって・・・・・わたしはもう・・・・・・
 
 それでも
 私の紅い瞳は、その飢えの炎をたぎらせる。
 
 可愛いことの、綺麗なことの、どこがいいんだ?
 カッコイイのじゃ駄目なのか? 
 可愛さなんて、綺麗さなんて、そんなの・・そんなの
 おばあちゃんに、嫌われちゃうんだぞっ!!
 
 幽霊の夕子に惚れている男、新谷貞一は
 あっさりと
 当たり前のようにして、こう言った。
 
 
 
 『あの、よくわかりませんけど。
  でも、人を好きになるのに、幽霊かどうかはあんまり関係ないんじゃないですか?』
 
 
 
 
 夕子に憧れ、女らしく綺麗になりたかった女 、庚霧江は。
 こうして、己を縛っていた鎖から解き放たれた。
 そして、その解き放たれたひとりの人間の背を、目の前の男は顔を赤くしながら、そっと一押しした。
 
  + 『そんなの・・霧江さんだって、女の子じゃないですか。』
 
 
 ああ
 もう
 ほんとうに
 
 腹が立つ
 
 自分に目一杯、腹が立つ!
 
 許せなかったのは、夕子じゃない。
 そして夕子に憧れる自分、でも無い。
 私が本当に、そして唯一許せなかったのは、ああ、そうだ。
 おばあちゃんのせいにして、女らしく生きたいという自分の気持ちを否定してしまった、その私自身こそだ。
 
 『私が怖いと思っていたもの、それは、自分を好きになれなかった、自分自身。』
 
 胸が高鳴った。
 私を、私の気持ちを守るのは、私なんじゃないか。
 私を女にするのは、他ならない、私自身じゃないか!
 カッコイイと呼ばれる私のことを、あっさり女扱いした男を背にして、私はひしと瞳を閉じた。
 ごう ごうと、閉じられた瞳の中で、紅い情欲の炎が、その熱度を上げているのを感じた。
 ああ
 そういうことだったんだ
 私は、女なんだ
 ああ
 
 『 知ってるよ! ばーか!』
 
 見つめて
 見上げるだけの存在だった、夕子。
 私は、夕子のように、自分こそが綺麗な女になりたかったんだ。
 いや、夕子を越えるほどに、私として、庚霧江として綺麗な女になりたかったんだ。
 それが、怖かっただけなんだよな、私。
 夕子のようになって、夕子を越えて美しくなりたいと思った、その自分の気持ち、そして、
 祖母達から引き継いだ、この紅い瞳の情欲に応えなければならないことが。
 怖かったんだ。
 怖くて、だから、そうして自分の気持ちと情欲に応えなければならない自分の事を、嫌ったんだ。
 ああ、そうだよ。
 私は、そういう自分であることが不安だったんだ。
 − ひとりが怖かったんだ
 だから、私がそうして自分の情欲に忠実に生きなければいけないという、その自分こそを鬼にしたんだ。
 自由奔放、好き放題のやりたい放題、そんないやらしい女は、鬼だ、悪魔だ、と。
 その私の言葉が、夕子の姿を具現化させた。
 だっておばあちゃんがそう思っているから。
 私は、祖母のせいにした。
 私が私の求める女にならないで良い理由を、祖母を使って正当化した。
 なにを考えているかわからない、怖いおばあちゃん。
 髪を切り落とし続ける、怖い鬼。
 私の中の女を殺し続けるその鬼への恐怖に、私はすっかり拘泥していたんだ。
 ざぁ ざぁ
 嘘を吐いている
 こいつは 嘘を吐いている。
 髪が降る
 その中を這う、紅い瞳をした黒い鬼が、にやりと嗤う。
 
 あなたが ほんとうに怖いものは なに?
 
 私は、鬼になりたかったんだ。
 
 だけど、鬼になるのは怖い。
 でも
 
 
  『 ほんとうはわかってるんだろ?     それでも、わたしは 』
 
 
 鬼でも
 
 幽霊でも
 
 亡者でも
 
 悪魔でも
 
 
  わたしは   私の女が   好きなんだろうっ!
 
 
 
  その私の気持ちを満たせない自分のことが、どうしようもなく、嫌で、怖かったんだ。
 
 
 
 
 おばあちゃんは、関係無い。
 いや、むしろ、私の、自分のことが嫌いだという気持ちが、
 私に自分の気持ちを伝えないおばあちゃんの姿を、目の前に映し出していただけだったのだろう。
 誰より自分の気持ちを伝えられなかったのは、私だった。
 ほんとうのおばあちゃん自身は、きっとずっと、私の隣にいたんだ。
 髪を切り散らし、自分の気持ちに素直に生きようとしない、そうやって自分を大切に出来ない、
 そんな孫娘のことを、どんなにか心配して見守っていてくれたことだろうか。
 
 そうか
 そうだよな
 
 
 私は、庚霧江。
 夕子が誰だろうと、なんだろうと、関係無い。
 もう、夕子の真似をするのはやめだ。
 もう必要無い。
 ああ そうだ
 私はもう、私の気持ちを否定したりしない。
 私は、私が好きだ。
 可愛くなりたいに決まってるじゃないか、綺麗になりたいに決まってるじゃないか!
 髪が短くたって、胸が薄くたって、そんなの関係無い、そのまんま綺麗になってやる!
 それで可愛くなれても、なれなくても。
 私は、わたしだ。
 可愛くても、醜くても、カッコ良くても、みっともなくても。
 髪を長くしたとしても。
 
 わたしは、その全部の私を、好きになりたい。
 
 
 
 小此木に、霧江と呼ばれて。
 私はそのことを、やっと、受け入れることが出来た。
 だから、可愛くなっても、いいんだよな。
 ああ
  ああ
 
 そうして、なにかが晴れやかに胸の中に広がっていくのを、感じていた。
 
  たのしいな
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                        ◆ 『』内文章、アニメ「黄昏乙女×アムネジア」より引用 ◆
 
 
 
 
 
 

 

-- 120509--                    

 

         

                           ■■ そのいつもの一歩ずつを ■■

     
 
 
 
 
 ごきげんよう、皆様の紅い瞳です。
 落雷だとか竜巻だとか、色々と荒れた天候の五月界隈でございますが、皆様如何お過ごしでしょうか?
 
 
 私はと言いますと、まぁうん、色々と上手い感じに回り始めておりまして、前向きにわざわざ向き直ら
 なくても自然にどっこいしょと腰を上げた勢いのまま、スタートダッシュを決めていたりしております。
 まぁ要するにあれだ。
 
 調子いい。
 
 なんといいますか、毎年四月五月というのは、基本季節の変わり目だったり環境の変化があったり、
 周りの人が変わっていく中で、自分だけが変わっていないという思いに囚われて、焦るやらコケるやら
 高笑ったり部屋の隅で蹲ったり笑ったり ←病気 、そんな感じのあらあらうふふな状態に陥りやすい
 お日頃、そしてお年頃だったりしたのですが。
 今年はなんぞ様子が違いますというか、んー、もうあんまり周りの人のことが気にならなくなってきたと
 言いますか、わたしはわたしじゃん、私のままでいていいんだよ、その私を生きるために、ああ、わたし、
 この世界にいたいなぁ、もっと生きていたいなぁと、まぁそんな感じのことをですね、五月晴れの下を
 流れる微風に誘われておもったりしていたのでございます。
 
 なんか 気持ちいい
 
 んー、だから無理に前向きにならなくていいし、逆に無理に前向きになろうとしたり、ヤバイ頑張り方
 とかしていたのは、わたしがわたしだって事を認められなくて、私というひとりの存在であることが出来な
 かったからこその、そんな弱音の顕れだったのかなぁって。
 ひとりは、怖いよ、嫌だよ。
 だから前向きになってみせたり頑張ってみせたり、そうして「みんなと同じだよ」っていうメッセージを、
 周りとそしてなにより私自身に発していたのかも。
 ひとりじゃ、いてもたってもいられない。
 他の人と比べて、評価されて、認められて、その中でしか生きられないと。
 
 そう 思い込んで
 
 変わろうと思わなきゃ、変われない、なんて。
 そんなの、嘘よ。
 嘘でした、全然。
 変わろうと思わなきゃと思うときの、その「変わる」ということは、みんなと同じようにならなくちゃいけない、
 みんなに評価されて認められなくちゃいけない、そういう何者かに「ならなくてはいけない」という、
 そうですね、一種の強烈凶悪な脅迫、そして強迫があったからだと私は感じたのね。
 なんでマイペースじゃいかんのん?
 どんなペースでだって、人は誰しも自然に変わっていくのに。
 その変化の仕方は人それぞれ、だからその自分自身の変化の速度を受け止めて感じていけば、
 人はとっても楽に、そしてなにより嬉しく成長していけるのに。
 
 ひとりが 怖いから
 
 だから、変化の速度をみんなに合わせずにはいられない。
 合わせられない自分を責めずにはいられない。
 ひたすら前を向こうとして、ひたすら頑張って。
 四月五月なんて、そういう意味では変化祭ですからね、新年度なんていうのは心機一転、変化成長
 の象徴ですから、それはもう、ヤバイ、これはやばい。
 毎年そんな感じで、私はこんがらがっちゃってた。
 変わらなくちゃ、変わらなくちゃって。
 
 
 
 でも。
 そういう生き方をするのをやめて少し経つけど。
 私はこの五月を、ひどく真っ当に生きている。
 それはみんなと同じという意味では無くて、わたしが私として、きちんと私の生き方を全う出来ている、
 そんな感じかな。
 なんだか、すごく清々しいし、ヘンな話だけど、改めてもう一度、大人になった気がする。
 なんかこう、見るもののどれもこれもが、キラキラするw
 前はそのキラキラしているモノ達に対して、私は距離を置いてある意味で傍観者、あるいは見上げて
 拝するだけの対象として抱き締めていただけというか。
 でもねぇ、最近、そのキラキラの中に私自身も入ってきたというか、あ、私もキラキラしてる ←ナルシー 、
 あ、私もここにいていいんだ、この世界で私として生きていいんだ、みたいな、そういう感じがね、
 ぱぁーっと胸の奥から花が咲くようにして満ちてきている。
 無性に、では無く。
 ほっそりと、適度に。
 しかし、断続的に。
 
 幸せを感じる
 
 べつに、他の人と比べてなにか優れた仕事をしたり、業績を残してるわけでもなし。
 その上、自己満足としての、なにか達成感を得るようなことが、特にあったわけでもなし。
 あー
 生きてるって、それだけでこんなにも楽しいんだ。
 うれしいこと、かなしいこと、くるしいこと、あったかいこと。
 みんな今、時間はかかったりすることはあっても、受け止められる。
 
 無理して笑ったり、必要以上に悲しんだり、そういうことをする自分は勿論まだちゃんといるけれども、
 でも、その自分を優しく、そして暖かく抱き留める、そんな大きな私がもうひとり、いる。
 いいよ、無理して笑っても、だってあなたは辛いときや苦しいときこそ、笑うことで前を向いて頑張って、
 そうして必死に生きてきたんだから。
 それも、あなた、あなたの力。
 いいよ、必要以上に悲しんでも、だってあなたはそうする事で、他人の過大な要求から、自分の身を
 守ってこれたんだから。
 愛してるよ あなたのことを
 たとえ世界中の人達があなたを見捨てても、私だけはあなたを見捨てないよ。
 そう言ってくれる、そのもうひとりの私は、私の最高の保護者にして守護者。
 そして、その大きな私は。
 かつて、私をみんなと同じようにしようとして、私を責め苛んだ、強烈なわたし。
 
 ああ わたし
 ひとりじゃ ないんだ
 
 私が私を責め苛んだのは、それは私を守るためだった。
 みんなと同じようにならなくては生きられないと思い込んでいたのだから、それは当然のことでした。
 でも、もう、いいんだよ。
 そうする必要は、無くなったんだよ。
 まだ無理して笑ってしまったり、必要以上に悲しんでしまうのもしょうがない、だってずっとそうやって
 生きてきたんだもの。
 逆に、そうする事を否定して、無理して笑うな必要以上に悲しむなということにしてしまったら、それ自体
 が今度は私への責めになってしまう。
 だから、両方。
 無理して笑わなくてももう大丈夫だよ、だからまだ無理して笑ってしまっても、それでもいいよ。
 必要以上に悲しまなくてももう大丈夫だよ、だからまだ必要以上に悲しんでしまっても、それでもいいよ。
 自分を、許す。
 責められる自分も、責める自分も。
 そのふたりの自分を許す、さらにもうひとりの私こそが。
 そのふたりの自分の有り様を、適切なときに、適度に引き出して、そして活かす選択を担う役。
 生きるための、バランス感覚、とでも言うのかな?
 そのバランス感覚を備えた私、すなわち自らの中に多様な自己を従えるわたしが、ああきっと、
 ひとりの人間として成長した姿なんだなぁって。
 おもう。
 感じる。
 
 変化を
 
 
 ひとりの人間として成立していく感覚。
 自分の中の私達が、そうして手を取り合ってひとつの私という生きる道を歩くことが出来ないと、
 きっと、自分の外の、そう、他の人達にこそ、その手を伸ばしてしまうのかもしれない。
 自分が一個の存在として統一出来ないからこそ、その足りない部分を他人に求めてしまう。
 だから、その他人の有り様によって、終始振り回されてしまう。
 ひとりでは、居ることも立つこともできない。
 寂しくて、寂しくて、死んでしまいそう。
 その他者の存在を、自らが自らとして成立するために必要不可欠なモノとしてしまったとき。
 悲劇は、起きる。
 世界はきっと、毒々しいほどの薔薇色になる。
 けばけばしく、恐ろしいほどに煌びやかで原色に縁取られた、凄まじく濃い世界。
 うん そう
 なにしろ
 そうして色塗らなければ、世界が本当は虚しいことを、隠すことが出来ないから。
 塗る。
 ド派手に隠すために。
 だから 笑う
 無理して
 だから 悲しむ
 必要以上に
 
 わたしがわたしとして、ちゃんとひとりで成立すれば、虚しさなんてない。
 虚しさが無くなれば、そんな笑顔と悲しみで世界を薔薇色に塗りたくる必要も、無い。
 
 
 
 うーん
 うん、ちょっと理屈っぽくなってしまったのは、ご愛敬、ということで。
 うーん
 そうね、うん。
 わたしがわたしとしてひとり成立できない、つまりぽっかりと自分の中に穴が空いている状態ね。
 それは自分を責めたり、自分に責められたりすることで、自分がバラバラになっちゃっているからこその
 事だと私は思うのね。
 それが虚しさの正体だと私は感じていますし、その虚しさを解消しようとして、他人を求めても、
 それってただの自分の代わりでしか無いし、その代わりではたぶん絶対自分の穴、つまり自分が座る
 べきその空席を埋めることは出来ないとも思っています。
 他人を使って出来るのは、せいぜいその席を薔薇色に塗りたくって飾り付けることだけね。
 それじゃあ、その席が空席であることの虚しさを満たすことは出来ない。
 自分の半身を誰かが埋めてくれたみたいな、そういうのってきっと、その空席に薔薇色の自分の姿を
 描き込んで、それで埋まったと思ってるだけだと私はおもう。
 
 まず、自分で、その席を埋めよう。
 私を満席にして、そうしたら、きっと。
 
 ほんとうの 他人に会える気がするの。
 
 私の中のその席に座る私は、薔薇色である必要なんか無い。
 煤けた色でも、どどめ色でも、みっともなくても、関係無い。
 それが私である、ということだけに唯一の意味がある。
 だからね、きっと。
 同時に、私達の外にいる、他の人達に対してもそう自然に感じられるような気がする。
 自分の中の席を、他人を使って薔薇色に塗ったり、或いは薔薇色の自分しかその席には座っては
 いけないと思っていると、やっぱり他人にも同じことを要求してしまうし、他人にとっての自分にも同じこと
 を求めてしまうんじゃないかなぁ。
 他人を「色」で評価してしまう、そして、自分自身も、ね。
 汚い色ならその人の存在を認めない、受け入れない、そして、自分自身も、ね。
 そして
 誰もいなくなる
 あるのは
 薔薇色のなにか、だけ。
 虚しい
 
 
 私はね、今、寂しい。
 わたしがわたしとして、ひとり成立して、自分のやりたいことも見つかって。
 逆に自分のやりたいことのためにこそ、私の中の私達は手を取り合うことで、ひとつに成立していける、
 というのがわかってきたし、同時に自分のやりたいことがわからなかったり、あるいはそれを他の誰かに
 やらせようとするときにこそ、私の中の私達は手を離して自分の席から離れ、他人にしがみついたり
 してその席を埋めようとしちゃうと感じる。
 私は、寂しい。
 それはね、きっと。
 もう
 
 そうして私の虚しさを隠すための、そんな寂しさじゃないんだとおもう。
 
 人恋しいというか、ちゃんと自分が自分として成立してる人と、駆け引き無しで付き合いたい、とか。
 この寂しさは、なんだか、ちょっと、嬉しい。
 寂しくても、いてもたってもいられる、そして、寂しい。
 寂しいんだ、わたし。
 
 ああ 
 よかったぁ
 
 なんか、嬉しかった。
 自分が次のステップに移ったのを感じた。
 ああ、これ、半端無い。
 こう、ぐいーんと、ぽかぽかっとくる、さびしさ。
 あったかい、胸がこう、ぽわーってなる。
 あ、これ
 幸せなんだ。
 虚しく、無いんだ。
 幸せだから
 虚しくないから 満たされているから
 だから
 人と 会いたくなるんだ
 もっと もっと この私の幸せを感じたいから
 私のこの気持ちを、誰かに話したいから。
 他の人に、なにかを求めては、いないんだね。
 この私の寂しさは、私の幸せと充足感そのものの、噴出。
 誰かに幸せにして欲しい、誰かに虚しさを満たして欲しいとおもうときの寂しさは、胸をぐっと締め付ける。
 まるで全身を蛇に締め付けられるような、体中カチコチに固まり、そしていてもたってもいられなくなる。
 その寂しさは、ひとりではいられない恐怖そのものの、顕現。
 わたし、さびしくて、さびしいんだ。
 
 嬉しいな
 
 私もまだまだ、ひとりではいられない寂しさはある。
 でもなんていうかな、その寂しさを余裕を持って見つめて、受け止められる。
 そして今私はなにに「寂しさ」を感じているのかを分析し、どうしてそうなるのかを考える。
 あ、今わたし、誰かにしがみついてるな、しがみついてるってことはきっと、自分のやるべきことが見えなく
 なって不安になってるんだな、じゃあ私のやるべきことって、あ、そうだ、それだ、思い出した、みたいなw
 その寂しさはそうして、私の忘れがちな目的を思い出させてくれるための、そんな私の大切なシグナル
 を送ってくれる役、すなわちそういう席に座ってくれるようになった。
 否定するものなんて、なにもない。
 ありがとう
 
 そうして思い出した私の目的、私のしたいことに一途に打ち込んでいくと、ああ、ほんとだ。
 他の人の顔が、みえてくる。
 けいおん。
 わたし、唯ちゃん大好きなんだけど。
 うん、たぶんね、唯ちゃんの笑顔に私はずっと救われていたんだと思う。
 言い方を変えるとね。
 私は、唯ちゃんの笑顔にしがみついてた。
 わたしを、その笑顔で幸せにしてください、って。
 唯ちゃんの心底幸せそうな笑顔を見てると、私もなんだか幸せな気持ちになってきて。
 でもそれはさ。
 私の、気持ちじゃないよね。
 その幸せな笑顔と気持ちは、唯ちゃんのものだから。
 私はただ、唯ちゃんが笑っていてくれることが、嬉しかっただけ。
 この子の笑顔を大切にして、守りたいと思っていただけ。
 じゃあ
 
 わたしは?
 わたしの笑顔と幸せは、誰が守るの?
 
 唯ちゃんがいなくなったら、きっと私は笑えないし、幸せも感じられなかったのかもしれない。
 私の中の席に、唯ちゃんを勝手に座らせようとして、唯ちゃんの笑顔を薔薇色に濃く飾り付けて
 描いただけ。
 そのための、執着。
 それは、他人を自分の代替物、すなわち「モノ」として扱う行為。
 私はきっと、そのことをただ、倫理的観念からのみ、恐れていたとおもう。
 「オタク」であることへの嫌悪。
 唯ちゃんはモノじゃない、唯ちゃんがどうしようとそれは私が口出しすべき事じゃ無い。
 そして、グッズを買うことへの、抵抗感。
 恥ずかしいと、心のどこかで感じてた。
 この愛をぶつけちゃいけない、だってこれは唯ちゃんをモノにしてるだけだもの、二次元キャラへの
 愛なんて気持ち悪い、所詮自己満足じゃん、云々。
 
 つまりそれは。
 そういう、自分の想い、そういう他人をモノとしてしがみつく愛を持つ私を、許せてないんだね。
 
 そういう恥ずかしいオタクの私を、自分の席に座らせることが出来なかったし、許せなかった。
 許せなかったから、出来なかった。
 寂しいんだよね、私。
 唯ちゃんにずっと幸せにして欲しかったんだよね。
 救って欲しかったんだよね。
 涙ながらに
 わたし
 幸せに なりたかったんだね
 
 だから
 その私の願いを 叶えてあげる
 
 他ならない わたしこそが
 
 自分を救うことが出来るのは、自分だけ。
 唯ちゃんも誰かに幸せにして貰ったわけじゃ無い。
 うん、唯ちゃんはね、本当は私にとっての、幸せのモデルなのよ。
 私が唯ちゃんと同化して唯ちゃんと同じ幸せになるのじゃ無くて、自分を幸せにすることが出来る、
 そんな素敵な女の子の生き方を模倣することで生き方を学んで、私自身こそが自分を幸せにして
 いくための、そんな。
 生き方の、モデル。
 だいすき
 うん
 わたし、唯ちゃんのこと大好き。
 オタク的に、愛してる、激しく薔薇色に愛してる。
 その私を、許すよ。
 いいよ、それでも、それも私だもん、わたしはわたしだよ。
 うん
 わたし、唯ちゃんのこと好き。
 わたしがわたしとしてひとり成立出来た私として、ああ、この子みたいな人と生きたいなって。
 その私を、勿論許すよ。
 うん、そうだよね、そうだよ、私はもっともっと楽しく幸せになりたいんだもん♪
 唯ちゃんだけじゃない、あずにゃんも、澪ちゃんも、むぎちゃんも、りっちゃんも、ひとりひとりの顔が
 はっきりと見えてくる。
 わたしの周りにいる人達の顔が、どんどんちゃんと見えてくる。
 この人と話したいなぁと思える人、この人とは一緒にいたくないなぁとおもえる人。
 ちゃんと、選べる。
 一緒にいたくないなぁとおもえる自分のことをちゃんと認めて、その上でしっかりと必要な付き合いを
 していける。
 この人と話したいなぁと思える自分の事を許して、その上できっちりとけじめをつけて付き合っていける。
 ああ
 もっと人と出会いたい
 もっと もっと お話したい
 その私の気持ちは、紛れもない、わたし自身の気持ち。
 その気持ちの迸りが、今、わたしの胸から溢れてる。
 
 さびしいなぁ
 
 さびしくて、さびしくて、幸せになってしまいそうだ♪
 
 
 その寂しさが、きっと今、わたしのけいおんへの想いにはあるのかもしれませんね。
 人と出会って、人と話したい、その気持ちを一切秘匿することなく認めた、その私の純真な欲望。
 だから私は、けいおんには拘っていないのよ、もう。
 この頃また新しい出会いがありましてね、その人の話も色々と聞かせて頂いたり、私も聞いて頂いたり、
 その話がためになるとかそういうモノでは全然無く、ただその人との交流がとても心地良く、そしてまた
 もっともっとその人も含めて沢山の人達と出会っていきたいと、おもう。
 二次元も三次元も関係無く、わたしはどしどしと、人々の中に入って生きていく。
 私はもう、その私の「寂しいという」気持ち、すなわち欲望を満たすことが出来るようになった。
 自分で積極的に、人との出会いを作ることが出来るようになった。
 今までは、狭い人間関係の中で、その関係を良くすることしか出来無かったのに。
 すごいね、人間って。
 人はほっといたって、勝手に自然に成長してく。
 私はただ、その自然な成長を妨げないように、頑張っただけ。
 けいおんとの出会いもね、これは恋と言ってもよいと思うんだけどw、わたしもよく見つけたなー、
 この広い世界の中でさw
 そして、よく捕まえたよ、うんうん。
 わたしが、けいおんが好きだっていう、この気持ちを。
 ありがとう
 だれにともなく
 
 ありがとう
 
 
 
 
 ↑
 
 部屋一面に、けいおんフェアの戦利品を広げて、ニヤニヤしながら
 
 
 
 
 
 
 ◆
 
 はい。
 最後のオチのためにここまで読んでくださった方々に、ありがとうww
 はー、この人はまったく、大丈夫なんでしょうか?w
 まーね、うん、自分が自分でいられない事の寂しさを埋めるためにグッズを買う、という自分も許したし、
 それと同時に人と出会いたい人と話したいという気持ちを自覚した上でけいおんを求める、というのが
 あるんだけど、これ、見た目的には同じにしか見えないんだけどねw
 つか、自分でも時々わかんなくなるしwwwwwやばいw今回のフェアは欲しいもの全部買ったwww
 誰か止めてwwwwww
 
 うんまぁ、つまり。
 どっちでもいいし、両方とも許可するってことで、いいんじゃないかな。
 
 お金無くなるだけだし。
 ・・・・・。
 どうしよう、今月まだ長いんだけどな。 (がんばってください)
 
 
 
 +
 
 けいおんフェアの話ですけどー。
 目的のクリアファイルは余裕でゲット出来たんですけどね、あと着ボイスもてきとーにゲット出来たんで
 すけどね。
 もうひとつの目的のメタルチャームストラップが手に入りませんでした。
 お店の人に訊いたところ、そもそも仕入れていないとか店舗によってまちまちだとか。
 で、ウチとこの地元のローソンはどこも入荷してないと。
 ・・・・。
 カッとなったので、思い切り他のグッズ買い漁った、今も反省していない。
 
 
 団扇とか買いましたねー、二枚ほど、これたぶん今回のフェアに便乗した無関係のグッズよねw
 可愛いから良しだけどもw
 あとはですねー、ミニファイルケースとかミニケース二個(ウチひとつは唯あずのショット!)とか、
 メタルチャームストラップが買えなかったので、それについてくる着ボイス目的でペンケース(唯ver.)とか、
 あーあと伊藤園とのコラボでおーいお茶についてるクリーナー巾着四種コンプとか、まぁほんと、
 色々とちょこまかと買い集めまして候。
 先月はかなり出費がかさんでいたし、今月もこれから色々あるのに、まったく、この子はまったく。
 もう、しょうがないですね、そんな経済観念マイナスのあなたにはこれが必要ですよね、はい、
 ちょきんばこです、これ買ってね、少しは我慢というものを覚えなさいね! ←ちょきんばこゲット
 
 とまぁ、そんな感じで私の中の欲望真っ盛りな子供さんと、自己管理を勧める教育者さんのおふたり
 ともが買い物カゴを埋めていって、気付けばあら不思議、お財布が軽くなりましたとさ。
 ・・・もうなんも出ねぇ。(ぉぃ)
 
 あ、あとぬいぐるみもゲットしたのよ。(ぉぃ)
 これはかなりのレアモノで、一店舗一個しかないとか、そもそも入荷してる店自体が少ないとか、
 既に伝説の域に入っている代物なのですが、みつけた。
 ちょ、これ、あずにゃん! あずにゃんがおる! ←興奮
 ほんとは唯ちゃんが欲しかったんだけど、でも以前に友人に誕生日プレゼントとして頂いた唯ちゃんの
 フィギュアと並べて唯あず!というのを演出したいなぁ、とか脳内でぐへへとよだれを垂らし始めたので、
 速攻でゲット。
 ・・・でもね、なんかね、これ・・・・・
 お か し い
 微妙に包装のビニールが古いし、確か今回のぬいぐるみってアイマスクみたいのつけてなかったっけ?
 でもこれ付いてないよね? その代わりに変な猫みたいなのが付いとる。
 
 ?
 
 で、家に帰ってきてネット調べたら。
 これ・・前回のフェアのだろwww紛らわしいわ!ww
 とまぁ、がっかりしつつも、いやべつに今回のフェアの物であることに拘る必要も無いんじゃないの?、
 と気を取り直したら気にならなくなったいうか、うん、ちょきんばこゲットした理由のひとつもそれだったり
 しますwwあれも前回のフェアの再登板(ていうか売れ残りw)
 
 そんな感じでした、今回のけいおんフェア。
 なんかもう、これ楽しいのか?wwなんかもう、色々ローソンとか回って探すのとか戦闘行為だったん
 ですけどwwどんだけ愛してんだww
 ま、つまり私の中にはそれだけエネルギーとしての愛はあるということでございまして、これ、使い方を
 間違えなければとても人生的に有意義なことになると、まぁ、そういうことなのでございますね。
 
 
 ・・・・・・。
 使い方、ねぇ・・・・・ 
 
 ↑
 部屋一面に広がる、けいおんフェアの戦利品を見て、ニヤニヤしながら
 
 
 
 
 
 ◆
 
 はい、そんな感じです、ぐだぐだです、はい。
 途中から明らかに息切れしてきて、自分でなにが書きたかったのかわかんなくなってきました。
 この人は、ほんとに駄目な子。
 
 ということで、ええと、急遽けいおんフェアにかこつけての私の現状報告などをさせて頂きましたが、
 今日の予定は本当は今期アニメの視聴リストを発表するのでした。
 なので、遅くなりましたが。
 今期アニメの視聴リストです。 決定版。
 
 
 
 月: ・ 君僕2 ・ ニャル子さん ・ 氷菓
 火: ・ ヨルムン
 水: ・ めだか
 木: ・ あっちこっち ・ 戦コレ ・ さんかれあ ・ つり球 ・ 坂道のアポロン
 金: ・ 夏色
 土: ・ アクセル ・ フェイト2
 日: ・ これゾン2 ・ 黄昏 ・ 咲阿知賀 ・ AKB ・ へうげもの
 
                              :全18作品 ()付きは前期以前よりの継続作
 
 
 エウレカ2は切りました。
 あっちこっちは結局切りきれず、まぁ、取り敢えず観られるところまで観ていこうかなと。
 
 という感じで、今回はここまで。
 今期アニメについてはもうちょいっと書きたかったんですけど、それは次回に回させて頂きます。
 けいおんばかりに構っているわけにはいきませんからね! いきませんのだ!
 ・・・。
 アニメ万歳。
 
 
 それでは、また。
 ごきげんよう。
 
 
 
 
 
 
 P.S:
 すっかり忘れてましたが、読書リストです。 完全にアニメの事以外頭になかった。
 
 ・京極夏彦 「豆腐小僧双六道中 おやすみ」
 ・同上 「オジいサン」
 ・松井今朝子 「吉原手引き草」
 ・南條竹則 「鬼仙」
 
 豆腐小僧は続編ですね、以前読んだ作品の。
 現在それと、吉原手引き草を同時読みしております。
 そろそろ、狼と香辛料のブックマーカーを使おうかどうか、思案しているところでございます。(いまごろ)
 
 
 
 
 
 
 
 

 

-- 120502--                    

 

         

                            ■■ 今期アニメいきます 5 ■■

     
 
 
 
 
 ごきげんよう。
 
 GW中ですが、とにかく書くだけ書き終わったので、速攻Up。
 視聴リスト決定版とか今期の展望とかは、まぁ次回。 あと、あと!
 
 ということで、本文だけ急いで書き上げて取り敢えずUpさせて頂きました。
 これで今期視聴予定作は全部書き終わりました!
 
 では。
 
 
 
 
 
 ◆
 
 
 坂道のアポロン: 可愛さ。
 昭和な時代のお話、のはずなのだけど、なんというかあまり古さを感じない。
 極めて漫画的な表現をリアルに落とし込んでいるからなのかなぁ、人間の一番根っこにあるその人の
 素直さみたいなものを、余計なデフォルメを使わないで、同時にその時代特有の表現なども使わず
 に描いたみたいな。
 
 よーわからんけど(ぉぃ)、この作品に出てくるキャラはなんだかとっても可愛らしい。
 それは見た目がとか仕草がとかじゃない、その心根というか、そういうものがね、可愛い。
 ある意味で、この作品のキャラって、「迷い」が無いような気がします。
 悩むんだけど、それは自分がどうしたいのかという自分の目的を果たすためにはどうしたらいいのか、
 という意味での悩みであって、だからその目的自体は割と鮮明だから、迷いを感じられない。
 だから可愛さの一番大きな部分を占めているのは、私にはその欺瞞の無さ、にあるように見える。
 考えて、思考して、思い悩んで、でも行動しているうちにどんどん感化されたり変化したり。
 そういう心理的な「アクション」の絶え間無さがこの作品の最大の魅力とも言えるのかもしれません。
 
 思考ゲームにはなってないし、なんらかのテーマの突き詰めがある訳でも無い、でもだからこそ、
 ひとりひとりの登場人物が、ひとつずつ鮮やかに変化していく様が面白く、そして、可愛らしく感じられる。
 清純とか純情とか、どうしてもそういうのって特別ななにかとして捉えてしまうけれど、そういうのって、
 ただ余計な悩みや欺瞞にしがみつかずに、ただ前を向いて歩くことで、自然にその様に顕れてくるような、
 特別でもなんでもないそのままの在り方、のようにも見えてくる。
 難しいようでいて、その実難しく考えている自分を自分こそが逆に特別視してしまっているだけ。
 清純、純情、純朴、そして。
 
 平凡。
 
 平凡というのは、特別ななにかが無い、という事だけど、その特別ななにかが無いという事がなぜか
 避けられ、それを低く見ることに平凡という言葉があって。
 でも、平凡というのは、特別ななにかが無い、すなわち自分も他人も特別視しない、そういう相対的
 な価値観から手を離し、自分の気持ちから始めること、すなわち純朴、純情、清純ということと
 イコールなんじゃないかなぁと、私は思ったり。
 人のことが好きという気持ち、それは特別でもなんでもない、私達が生きていることの中で日々
 生まれて来る、当たり前の感情のうちのひとつにしか過ぎ無い。
 そういう感覚が、この作品にはある。
 恋も喧嘩もジャズもみな、ひとつ繋がりに生きる世界。
 ひとつひとつ、自分の気持ちを、感情を生きている、その清々しさと、そうして生きている人達の姿に
 感じる可愛さが、うん、私は好きですねぇ、うんうん。
 
 
 
 氷菓: 動く動く。
 これはつまりあれだね、特に暴れたりしないハルヒの『ハルヒ』ですね。
 千反田かわいいよ千反田。
 好奇心一杯女子は好きです、私は好きです。
 んー、この可愛さは、坂道のアポロンとは違って、「大人しい子なんだけど、好奇心一杯で瞳とか
 キラキラさせて行動力もそれなりにある」というキャラ性そのものが長い黒髪靡かせて二本足で歩いて
 る、というところにありますね。
 記号化されたキャラというか、このキャラって、一見大人しそうなんだけど、見た目と違って好奇心一杯
 という感じでは無く、大人しくてかつ好奇心一杯という、そういう属性だよね?
 だからギャップ萌えとは違うし、大人しいままに、その大人しいという事そのものが好奇心と直接結び
 ついているというか、大人しい好奇心を切れ間無く輝かせている、という感じ?
 
 すごくこう、キャラというより、これはむしろこういう「役割」みたいな、RPGで話しかけたら同じセリフしか
 答え無い町の人Aみたいな(ぇ)、コンスタントにこの千反田えるというキャラは、常にその己の属性に
 則って行動しているし、喋っている。
 それがある意味、そうね、「美しい」と感じるのかな、私は。
 どっちかというと、造形美的な、或いは機能美的な美しさかな。
 きっとあの子、主人公がいないとこでも忠実に好奇心のままに動き回ってるんだろうなぁ、とか思うと、
 なんだかこうくすっと微笑んでしまえるような、そんなかわいさ。
 
 あ、いた、あいつだ。
 
 校舎内で千反田を見かけて、そして目が合ったら向こうから近づいてきて、もう彼女がなにを言うのか
 とか大体予想つくんだけど、で、そして案の定また仕入れた面白いネタの話を持ってきて、おもしろいな
 こいつ、みたいな。
 たぶんこれは、くるくると大人しく動き回る千反田えるの姿を見ることだけの面白さは無くて、あくまで
 向こうがこっちに話しかけてくるか、こっちから話しかけるかで成立する、そういうある意味でのゲーム的
 進行の中に面白さがあるんじゃないのかな、エンカウント的なw
 演出的には、まぁ無意味に大仰なところもあるけど、でも全体を通してその大仰なところも見てみると、
 なぜだか不思議な調和もあったりして、なかなか面白いし興味深い。
 肝心の主人公折木君はまだまだこれからのようですけれど、んー、今のとここの子はツッコミを入れない
 キョンみたいな感じかしら?w
 結構今期アニメの中では異質な存在なので、これからのたのしみのひとつに加えさせて頂きます。
 
 『わたし、気になります!』
 ・・・うあ、やっぱりかわいいなこれ。(それかい)
 
 
 
 AKB0048: 泣いた!
 や だ 、 な に こ れ 面 白 い 。
 やー・・まさかこの作品が、こんなに面白くなるとは正直1ミリも思ってませんでした。(ぉぃ)
 んー・・・なんかね、もうほんと私は変わらんねというか、まったくもう、アニメに下手な先入観持って
 臨むと火傷すんぞって何度言えばわかるのよ、サーセン、みたいなw
 そして同時に、先入観だろうと悪意だろうと(ちょw)、ほんとに面白いモノに出会ったら、んなもん全部
 放り出してマジ泣きする私もな、変わらんよな。(微笑w)
 そういう意味で、ちょっと自分が好きになったり溜息だったりと、まぁ色々と一瞬で私を掻き回してくれ
 やがりました。
 私はそもそもAKBほとんど知らないんだけど、この作品はもう、自分の大好きなものが社会的に禁止
 されてて、でも自分はその大好きなものへの好きを捨てずに、なんとかしてその好きなものへ辿り着こう
 と頑張る、ただただ、その自分の「好き」という気持ちのために生きる、そんな女の子の姿が燦然と
 描かれていて。
 これって、てらいとかけれん味も無いのよね、自分の大好きな音楽、歌に出会ったときの感動を、
 生々しくかつ瑞々しく描いてて、好きなもののために頑張って、戦って、考えて、悩んで、いい、いいよ!
 す ご く い い !!
 
 『 ドン、ドン。 胸のとこ、ドン、ドンって。
   音楽に合わせて、歌ってる。  音楽に合わせて、叫んでる! 』
 
 やべ、涙出てきたw
 
 なんつーかこの作品って、AKBというグループの宣伝とか美化とかそういうのじゃ無く、そもそもAKB的な
 やり方、在り方、或いは「成り上がり方」そのものを、ひとつのテーマに織り込んで見事に物語として
 昇華してる感じがするんよね、私は。
 だからこれは、AKBファン側に向けて発信している作品では無く、AKBという「夢の叶え方」そのもの
 に憧れる、あるいはそうして生き生きと自分の願いのままに生きたい人にこそ、向けられている作品
 なのなぁって。
 そりゃ、私、喰い付くでしょ? そりゃ釣られるでしょ? (ええあなたは喰い付きました釣られました)
 AKBのメンバー名がそれぞれ初代への尊敬の意味で襲名される設定で、だからAKBを目指す
 女の子は誰の名前を継ぎたいのかとかでウキウキで、やば、なんか燃えるw
 自分の夢を思い描き、憧れ、ひとつひとつ計画を立てて、そしてひとつひとつ、自分の気持ちに気付いて
 いく。
 主人公の子の父親は芸能を禁止する役人で、だからその子は色々辛いおもいして、でも諦めなくて、
 こっそり自分の願いを叶える日を思い描きながら、でも、それなのに。
 母親は、お父さんの気持ちもわかってあげて、とか言う。
 ・・。
 父親の気持ちがわかることも、わからないことも、そんな事は全然大事なことじゃないよね。
 父親の気持ちがわからなくて怒りをぶつけるだけの事も、父親の気持ちがわかって父親のために我慢
 する事も、それは全く同じこと。
 
 『じゃあ、私の気持ちはどうなるの!?』
 
 そのとーり!(ぉ)
 その子の人生は、その子のもの。
 その子が父親への怒りに囚われてなにも出来なくなることも、父親のために夢を諦めることも、それは
 全部その子の責任。
 怒ったって、諦めたって、その責任を誰かが取ってくれるわけじゃない。
 私が、わたしの夢を叶えなくって、誰がそれを叶えるの!?
 それを邪魔する親は、親なんかじゃ無い。
 母親はそれに気付き、娘を応援し、そして父もまた、最後に邪魔をするのを止めた。
 母も父も、社会的に禁止されている芸能に身を染める娘を心配して、愛しているからこそ、止めようと
 していた。
 危険ですしね、周りの人達とは外れた生活が待っているわけですからね。
 でも。
 選ぶのは、娘。
 その選択の責任を負うのも、娘自身。
 その選択と責任を、娘から取り上げてしまうことこそ、最も娘のためにはならない。
 旅立ち。
 その娘のためにこそ、親としての愛を正しく向け直す両親。
 いいですねぇ、この作品、第一話だけでもんのすごいことやってのけてやんのw
 最後にジェット機に乗り込むシーン。
 追いついて、手を伸ばして、そして友達三人で手を合わせて。
 やべ
 また泣きそwだからこういうの弱いんだってば私は!ww
 
 
 
 
 という感じで、以上です。
 終わったー!
 
 
 次回はんー、早ければ今週末、遅ければGW明けということで。
 では皆様、良いGWを。
 わたしもいろいろいそがしいので、うん、がんばります。
 盛り上がってきたーっ!(ぉw)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

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