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◆◆◆ -- 2012年6月のお話 -- ◆◆◆

 

-- 120628--                    

 

         

                                 ■■ イン ザ ブルー ■■

     
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 −
 
 
 
 紫子は、私の妹。
 とろとろに溶けたチョコレートのように、甘いウェーブを湛えた髪がチャーミング。
 おどおどして、頼りなくて、ちっとも前向きになれない、心配性。
 べつに我が儘ってわけじゃないんだけど、目の前の1メートルくらいの範囲しか見えてないのじゃないかと
 思えるくらいに、言うこと考えることが偏っている。
 いつも私に、くっついてくる。
 どうしよう、どうしよっかな。
 私の裾を掴んで、指をくわえてじっと私の顔を見つめてる、それが可愛いって思ったこともあったなぁ。
 だから、私が頑張って、この子を守ってあげなくちゃってね、なんだかちょっと気合いを入れたこともあった。
 どうしよう、どうしよっかな。
 どうするのかを決めたのは、いつの頃だったかしら、もう覚えてないわ。
 
 しっかり、なさい。
 
 あのときの紫子の、世界が終わったかのような顔は、今も時々思い出す。
 ちょっと、笑ってしまう。
 あなたは大丈夫よ、まだ慣れていないだけ、ずっとお姉ちゃんの後にくっついてきてたから、ひとりじゃ
 駄目だって思うのは当然よ。
 だから、今からひとりで、やってご覧なさい。
 あなたには、出来るわ、きっと。
 私が、見ていてあげるから。
 あのときから、紫子は、私の裾から手を離して、ひとりで歩き出した。
 でも、あの子は私から離れても、私の顔を見るその眼差しを外すことは無かった。
 ああ また見てる
 私の顔を見上げるように、世界で一番大切なもののようにして、じっと遠くから見つめている。
 伏し目がちに、俯きながら、それでもしゃんと顔を上げて、私の目を真っ直ぐに見つめてくる。
 いやになっちゃう、とはでも、私は思えなかったのよね。
 あの子、私から手を離しただけでも大したものだもの、それに、なんだかんだで結構ひとりで頑張って、
 少しずつ成長していって、今じゃ色々と学んだようで、頼りに出来るところもあったりするし。
 あの子は、あの子なりに頑張ってる、少なくとも、私の裾からは手を離して、ひとりの女性として、
 ちゃんと歩いてる、だから嫌だなんて思っちゃ・・・
 
 でも
 ずっと みてる
 
 私のことばかり  みている
 
 
 小さかった妹が、立派にひとりの女性となっていく、その一歩一歩が、どんどんと私に向かってきている
 ような、そんな錯覚を覚える。
 あの子は・・・
 紫子は、もしかして、私の裾を今度こそ絶対に離さないためにこそ、こうして日々、頑張っているのじゃ
 ないかしら・・
 偏っていた言動も、ときには私よりも開明的になってきていたりするし、狭かった視野も、随分と開けて
 いるのを話していて感じるし、それはある意味私には無い、知性の柱があることを感じさせるものでも
 あった。
 でも。
 その開けた言動と、広い視野の中心には、いつも私がいる。
 まるで、その世界の中心にいる私に認めて貰うためにこそ、その広い世界を作りだしたかのように。
 紫子は、いつのまにか、とても理知的な子になっていた。
 私なんかよりも、ずっとしっかりした子になっていた。
 あの子の薄い紫紺を帯びた瞳が、凜と輝いているのがみえる。
 ううん、あの子はしっかりしているのじゃない、たぶん、芯が強い子になったのよ。
 
 あの子は わたしをみてる
 
 それはほんとうは、ずっとずっと、子供の頃から変わっていない。
 紫子は、芯の強さを持ちながら、それでいて、その芯の持つ欲望を満たすためにこそ、未だに私の前
 では不安げな、内気な様を晒すこともたびたびあった。
 しょうのない子ね、まったく。
 私は妹の強さと逞しさを知りながら、けれど同時にそうやって妹をつい可愛がってしまう。
 負けてしまう、妹の誘惑に。
 甘やかさずにはいられない、面倒をみずにはいられない、庇ってあげずにはいられない。
 紫子は、私なんかより、本当はずっと、逞しい子なのに。
 わたしは・・・
 
 
 
 
 
  − − − 
 
 おねえちゃんなんだ
 
 わたし、この子のお姉ちゃんなんだ
 
 こそばゆいような、気恥ずかしいような、なんだかもぞもぞするような、この感触。
 なにかを背負っているような、それを背負う誇らしさが自分のすべてを満たしてくれるような。
 どこまでもどこまでも、自分を立ち上がらせてくれるような。
 私の上に広がる、真っ青なあの空を、さらに高く、広く、押して伸ばしていくかのような。
 
 とどかないわ
 
 私はとても馬鹿な子供だった。
 頭が悪くて、なにをするにしても考えるにしても、いちいち何度も反復しないと出来なく理解できない。
 そして、出来ても、理解出来ても、そのときにはもう、周りの子達は先に進んでしまっている。
 待って 待ってよ、ねぇみんな 待ってよ!
 ひとりぽっちになってしまった私は、その暗闇の中で、賢くなるために勉強するでも無く、訓練するでも
 無く、ただただ、みんなの背中に手を伸ばし続けているだけだった。
 伸ばして、伸ばして、その手の、その指先で、色々なものを描き出して。
 こんな馬鹿で鈍臭いわたしが、みんなのためになにか出来ないかな。
 どうしたら、なにも出来ない私が、みんなに褒めて貰えるかな。
 わたし、お姉ちゃんなんだ。
 お姉ちゃんなんだよね。
 
 
 紫子の前で、私は綺麗に振る舞い続けた。
 みんなのためになにが出来るか、どうしたらみんなが幸せになれるのか。
 それを語るときの私の熱情を妹にみせつけることで、私はずっと踵を高く上げて、爪先で歩いていた。
 それは、ひょこひょことした不格好なスマートさ。
 紫子がみてる。
 なにを、みているの?
 心配そうな顔。
 やめなさい、そんな目で私を見るのは。
 私は大丈夫、それよりもみんなを、みんなを助けなくちゃ!
 村に疫病が蔓延して、ひどい事になってる。
 みんなで助け合わなくちゃいけないのよ。
 あなたも、協力して?
 そうして私は、私の目に映る、幼子の妹に甘いドロップをあげようとする。
 
 
 
  『もう、子供ではありません!!』
 
 
 
 
 子供なのは・・・・どっちなのだろう・・
 沈んだ瞳、深い憂いを湛えた表情。
 そして、凜とした力強い意志の籠もった言葉。
 弱々しくて、ふわふわと頼りない可愛さに包まれて、寂しそうな瞳に濡れる、私の妹、紫子。
 その寂しさの中に一陣の光がみえる。
 やめて
 やめなさい
 紫子が全身で、私をみつめている。
 みないで
 私の胸の奥底まで潜り込み、その奥にひそめく私の空洞を暴き立てる。
 あの子が心配しているのは・・・一体、なに?
 紫子の重い言葉が、私の上擦った言葉を喰い破る。
 みんなのために、みんなのために。
 その呪文を唱え続ける私は、一体何者なんだろう。
 子供のまま子供として成長する事無く、ただ大人の振りをして、大人の振りを続ける子供のままで。
 上辺だけ。
 妹がみてる
 姉の綺麗な上辺では無く、その中身の空洞をこそ、紫子はずっとずっと、見つめている。
 紫子は
 私の空洞の中で震えている、私のなにかのことを、ずっと、ずっと、ただ案じていた。
 いや やめなさい みないでっ
 私は、それに耐えることが、出来なかった。
 
 
 不安に怯える妹の頭を撫でるその手で、私は妹の頬を張る。
 しっかり、なさい!
 それはもう、まるで悲鳴のような、ヒステリー。
 きぃきぃと囀るその叫びに美しい造型を与えて、聞き惚れる。
 びくびくおどおどしている紫子の姿を、愛しいとおもうのはなぜかしら。
 でも同時に、その女の子を抱き締める力が、やがてその子を絞め殺す力に変わっていくのを感じている。
 しっかりなさい。
 その言葉を、一体何度、ひとりぽっちに取り残された、幼い私に言い続けてきたのかしら。
 びくびくしては駄目、おどおどしては駄目、自分の事だけを考えては駄目、逃げては駄目。
 そうして分厚く磨き上げた私の姿が、私を綺麗に引き摺っていく。
 ずるずる ずる  ずるずる
 その音だけが、汚らしさをまき散らす。
 その音を掻き消すために、私は妹の頬を張る。
 紫子は悲しげに、しかし、真っ直ぐに私の瞳をみつめている。
 びくびくして おどおどして 縮こまって泣いている 幼い女の子が わたしを
 みないで
 すがりつかないで
 その小さな視線を打ち消すために、私は声を張り上げ、そして力を込めて目を見開く。
 白面の鬼
 ごとごとと、私の空っぽの胸の中で、なにかが転がっている。
 
 
 
   『 だいじょうぶ    わたしは死なないから 』
 
 
 
 
 
 +
 
 よいことをすれば きっとしあわせになれるの
 ただしいことをすれば きっとだれかがだきしめてくれるの
 
 きよくただしくうつくしく
  そうすれば だれもわたしをみすてたりしない
 
   きっとだれも  わたしにひどいことなんて しない
 
 
 
 
 
 +
 
 べつに、私は正義の味方になりたいわけじゃない。
 正しいからしてるだけとか、そんな無味乾燥な、義務とかそういうつもりでやっているわけでも無い。
 アサちゃん。
 ご家族をすべて疫病で亡くした女の子。
 アサちゃん自身も、寝込んでいる。
 ほっとけなかった。
 なんとかしてあげたかった。
 
  − そばにいてあげたかった
 
 可哀想とか哀れとか、そんな同情でもない、ただ私は、この子を抱き締めたくなって。
 なんでだろう・・・私は、小さい子供が不幸でいるのを・・・許せないのよ・・・
 それを許すもののすべてを、私は許せないのよ。
 アサちゃん・・・・
 じわりと、目蓋の内側で、涙が流れてく。
 ひとりぽっちの小さな女の子をほうっておくなんて、絶対に、絶対に出来ない!
 アサちゃんは、私が来ると良い顔をしないの。
 私にも疫病が移ってしまうからといって、いつも私を追い返そうとする。
 寂しそうな、寂しくて死にそうな目を、してるのに。
 アサちゃんは本当はただの風邪なのに、自分は疫病だって固く信じ込んでて、ご家族みたいに死ぬって
 そう思い込んでて。
 ひとりなのが、怖くて仕方無いのよね、ご家族と一緒に死にたかったなんて事も、もしかしたら思って
 いたのかもしれない。
 でも、子供は、アサちゃんは・・・・とっても・・・とっても、眩しいくらいに正直で・・・・・
 死にたくない
 死にたくないのよ、この子。
 私にも、死んで欲しくないのよ。
 自分のせいで私が死ぬことが怖いのかしら?
 いいえ、そうじゃないのよね・・・この子は・・・・
 ほんとうに、ひとりぽっちが、怖いのね・・・・
 大丈夫よ、私は死なないから、だいじょうぶ。
 ずっと一緒に、いてあげるから。
 私は、アサちゃんの健気さと、それでも魅せるその正直さへの想いで、胸がいっぱいになった気がした。
 
 この子を守ってあげなくちゃ。
 ひとりぽっちが怖いから・・・だから・・・・私のことを追い返そうとしたこの子を・・・
 そうやって・・・私のことを想って身を退けば・・・・・・
 いつか・・・誰かが救ってくれるって・・・そばにいてくれるって・・・
 私は、この子を救ってあげなくちゃいけない。
 生きたいのよね、死にたくないのよね。
 ひとりぽっちは、怖いのよね。
 私が、一緒にいてあげる、あなたを私が守ってあげる。
 てらてらと、真っ直ぐに伸びる黒髪が、頭の天辺から垂れ下がっている。
 丁寧に手入れを施して、妹に羨ましがれて、少し嬉しかった長い髪。
 なぜだか今、その髪に、櫛を通したくなった。
 
 
 
 
 救わなくちゃ、この子を
 なんとかしなくちゃ、この村を
 
 みんなのために みんなを守らなくちゃ!
 
 アサちゃんを助けなくちゃ!
 そして
 
 紫子が みてる
 
 どうして邪魔をするの?
 私の事は放っておいて頂戴って言ったでしょ?
 それとも、あなたは私無しではまだちゃんとひとりでは歩けないの?
 しっかりなさい!
 私がいなくても、あなたはあなたを生きなさい!
 どうしてわからないの?
 どうしてそんな目で、私をみつめるの?
 
 
 村の大人達が、あろうことか疫病を止めるために人柱を立てようと計画しているのを、私は知った。
 この科学の時代に、なんてことを・・
 散々私は大人の愚かさを数え上げて、そうして拳を振り上げた。
 そんなんじゃ、この村を救うことなんて出来ないわよ!
 紫子がみてる
 村の大人達の計画をこの身を張って阻止しようとする私を、妹は止めようとする。
 
 『 いけません! そんな事をして姉様になにかあったら! 』

 

 一直線に私の胸の奥に、手を伸ばすその妹の言葉に、私はのけぞるようにして悲鳴を上げる。
 
 『 構わないわ! 私だけ助かろうなんて思わないわ! 』

 

 妹は、いきなり私の頬を張った。
 
   『いくら姉様でも、それだけは許せません! ご自分を大切にしてください!!』
 
 
  − まるで 私が人柱に選ばれたかのように 紫子は −
 
 
 その刹那、頭に血が上ったのを感じた。
 許せない、許せない、許せないっっっ!!
 巫山戯ないで、嘗めないで!
 私だけ助かろうなんて、あり得ないわ!
 必死の思いで、逆上した私の平手を振り上げる。
 
 
 
 『見損なわないでっ!
 
   助け合わなきゃいけないときに、ひとりだけ逃げるなんて出来ない!!』
 
 
 
 
 そう・・・ひとりだけ・・・
 
   ひとり・・・なんて・・・・・・絶対
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

                    『 どうして・・

 
                                   わからないの 』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ++++ +
 
 
 
 
 紫子の
 ふわふわと甘くウェーブする髪に頬摺りを重ねて
 儚げなようでいて、細いのに、しっかりと、その髪に包まれた小さな頭を支える首筋。
 小さく小さく、内側に凝縮されていくような、今にも弾け飛びそうな、一度弾けたら露と消えてしまい
 そうな、その放散のぎりぎり一歩手前で、その肌の輪郭を保っているような。
 びりびりとした張り詰めた緊張感さえ内側に詰め込んで、あくまで外に漏れ出すのは不安と、
 寂しさだけ。
 
 この子は、一体なにを耐えているのかしら。
 
 ふわりと抱き締めてあげると、妹は僅かに一瞬の緊張をみせる。
 でも、まるで意を決したかのようにして、私に身を預けていく。
 夕子姉様・・
 いつからだろう、紫子が、私に甘えなくなったのは。
 紫子はただ、正直に自分の気持ちを言い、その気持ちを満たすために自分で行動するだけだった。
 寂しければ、私に会いにきて、寂しさが満たされれば、自分から綺麗に離れていく。
 私がわざわざ察してあげるまでも無く、紫子は自分で自分の世話が出来るようになっていた。
 ひとりでなんでも出来るわけじゃないのに、むしろ出来ないことなんていくらもあるのに・・・
 それなのに、この妹の姿は、私にはとても、眩しいものだった。
 眩しくて、思わず抱き締めて・・・
 そのまま、この世界から消し去ってしまいたいくらい・・・・・
 
 私の胸に抱かれながら
 
   そうして 紫子は  わたしを
 
 
 抱き締めずにいられない。
 甘えてるのは、わたし。
 紫子はそれを察し、私のために、自分の儚い体を抱き締めさせてくれる。
 紫子が、私を背負ってる。
 でも
 紫子が、私を抱き締めたことは、一度も無い。
 その代わりに
 妹は
 わたしを みる
 初めは、遠慮がちに。
 みてもいいのだろうかと、幾重もの逡巡が感じられた、あの眼差し。
 おずおずと、おどおどと、でも、しっかりと私を抱き締めるために、手を伸ばすように。
 紫子は、わたしをみつめる。
 どうしようもないほどに、想いが伝わってくる。
 
 辛い
 それが、すごく辛いのよ。
 逃げ出したいほどに、叫びだしたいくらいに。
 妹に抱き締められたくなんてない、妹に心配なんかされたくない。
 でも
 でも ほんとうは わたしは・・・
 
 
 
 
 
  誰かに 抱き締めてほしかった
 
   だれかに しんぱいしてもらいたかった
 
 
 
 
  − 誰かに   守って貰いたかった。 −
 
 
 
 
 
 みないで
 わたしをみないで
 みつめられるだけなんて いや
 抱き締められるのなんて いや
 紫子の瞳に、光が灯る。
 はっきりと顔をあげ、毅然として、私の顔を包むようにしてみつめる。
 なんて、堂々とした姿なの。
 でも、妹をそんな風に頑張らせてしまったのは・・・・・わたし
 私の事を妹に背負わせてしまった。
 妹を背負おうとすればするほど、私は逆に妹に背負われていく。
 妹を背負おうとする私の行為自体が、妹によって重く背負われていく。
 だから、私は、私こそが、紫子から手を離し、紫子から逃げた。
 そして代わりに、みんなのことを、アサちゃんのことを背負おうと・・・・・
 
 そんな私を 紫子は   みてる
 
 
 
 
 
 おねえちゃんね
 あなたのことが、心配だったのよ。
 びくびく、おどおどして、いつまでも私の裾を掴んで離さない、泣き虫で、弱虫で。
 あなたを守ってあげたかった、というよりも、ほんとうは、あなたにしっかりして欲しかったのよ。
 あなたの、幸せのために。
 だから、あなたに厳しくした。
 びくびくしちゃ駄目、おどおどしちゃ駄目、いつまでもお姉ちゃんにくっついてちゃ駄目。
 泣いちゃ駄目、弱虫じゃ駄目。
 しっかり、なさい。
 私は、紫子を愛していた。
 大好きだった。
 なにこの可愛い子、可愛すぎて食べちゃいたいくらい。
 その気持ちは、今も変わらない。
 でも、その気持ちだけじゃいられなかったのよ。
 姉として、妹を導かなくては。
 でも
 ほんとうは
 
  ただ ただ  ほんとうは
 
   守ってあげたかっただけなの
 
 
 紫子を守ってあげたかった。
 守られる、妹の姿がみたかった。
 びくびくおどおどした、小さな女の子を、愛して守ってあげたい。
 可愛くて、可愛くて、どうしようもないくらいに、あなたはそのままでいいのよと、言ってあげたくて。
 あなたはひとりじゃない、ひとりぽっちじゃない、あなたのそばに私はいるよ。
 言ってあげたい。
 聞かせてあげたい。
 わたしは
 お姉ちゃんなのよ
 私は、あなたに、そう言ってあげられる。
 わたしは、あなたを守り、あなたを慈しみ、育て、そしてそばにいてあげられる存在なのよ。
 
 
 
   しっかり    しなくちゃ
 
 
 寂しさに負けないように、不安を恐れないように。
 私が、強くならなくちゃ、誰が守るっていうの。
 私はそうして、ひたすら頑張り続けた。
 厳しく、厳しく、ひたすら・・・
 ひたすら・・・自分を・・
 強くなって、強くなって、私は・・・・・
 誰を・・・・守りたかったのかしら・・・
 どうして私は・・・私に厳しくしながら、紫子にまで厳しくしたのかしら。
 紫子を、ただ守りたかっただけなのに。
 守られる、小さな女の子の姿を見たかっただけなのに。
 守られたかったのは・・・・・・・
 
 
 紫子を厳しく育てれば、いつかきっと紫子こそが・・・
 じゃあ・・・私がわたしに厳しくしたのは・・・・・
 鬼のように、ううん、もう、神様みたいに力強く、正しく、美しく。
 そんな絶対に折れない、絶対に私を見捨てない、そして。
 絶対に死なない誰かを、私はずっとただ・・・求めて・・・・・
 
 その
 絶対的な私が、守りたかったのは
 
  いったい    
                だれ  
 
 
 
 守られたかったのは
 
 
 
      いったい
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 −−−−−−−−
 
 ねぇ、紫子。
 どうしてあなたは、そんなに逞しいの?
 どうしてあなたは、みんなの事を考えずに、自分の事を考えることが出来るの?
 どうして、そんなに強いの?
 あんなに、弱くて、おどおどして、内気で、臆病で、いつもびくびくしていたあなたが。
 今だってそうじゃない、なんだかんだで私にくっついて、私に慰められて、守って貰って・・
 それなのに、どうしてあなたは、あなたの言葉はそんなにも力強いの?
 
 
 − 青い光 −
 
 
 黒く溶け落ちたように、澱のように溜まったその闇の中で、私は問い続けた。
 答えだけは、最初からわかっていた。
 どうしようもなく・・・・・わかっていた
 
 おどおどしていたからよ。
 びくびくしていたからよ。
 弱いからよ。
 びくびくおどおどして、弱くて、ひとりぽっちが心細くて。
 でも。
 紫子は、逃げなかった。
 ううん、逃げられなかったのかもしれない。
 徹底的におどおどして、徹底的にびくびくして、徹底的に弱いままにそれでもひとりぼっちに耐えて。
 だからあの子は、紫子は、その自分の弱さと共に生きることを、学んだのよ。
 
 
  −  わたしは  それが  できなかった
 
 
 ひとりぽっちに耐えられずに、私はひたすら自分から目を背け、みんなの背を追った。
 走って、走って、走り続けて・・・
 紫子は・・・妹は・・そんな私の、姉の姿を、ずっと見てきたんだわ
 見てきたから、ずっと見つめてきたから・・・逃げられなかった・・・いえ
 逃げるわけには、いかなかったのよ、妹は。
 あの子は、自分から逃げなかったのよ。
 自分を受け止めることが出来るようになったのよ。
 だから・・・・
 だから・・・・・
 本当に、本当の意味で、紫子は他人の・・・私のことも大切に出来るように・・・・
 それは・・自分のことを大切に出来ない私が、人に与えた優しさの意味を考えれば・・・・
 あまりにも・・あまりにも・・・それは・・・・
 
 
 
 ああ・・
 そっか・・・・
 
 あの子をひとりぽっちにしたのは・・・・
 
  わたし・・・なんだっけ・・・
 
 それなのに・・・・
 
 
 
 
 
 ごめんね・・・・
 
    ごめんね・・・・・・・こんな・・・・なさけないおねえちゃんで・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 +   +      +        +     +            +
 
 
  漆黒に幾重にも塗り込められたルビーのように
  細い体をたおやかに折り畳んで、真っ直ぐに座っている
  凜と咲く花のように、瑞々しさを湛えた瞳を開けて
 
  繊細で、細かいところにとてもよく気がつく
  細やかで、か弱くて、か弱いほどに、どこをどう優しく包んであげればよいのかを心得ていて
  自分の弱さを抱き締めてあげられる、だから人の弱さも痛みもよく見える
  自分で自分を愛することが出来ているからこそ、自分を愛するために人を愛することをしない
  だから、人のために人を愛することができる
  芯が強い
  人の気持ちを繊細に感じることが出来ながら、それでいて自らが揺らぐこともない
  紫子は誰よりも、紫子自身に愛されている
  紫子に愛された紫子は、だから他の人のことを愛することが出来る
  ふわふわとした頼りない胸の内がわに、甘く結び込まれた豊かな魂が咲いている。
 
   
   妹の背丈は わたしと変わらなくなっていた
 
 
   ああ
 
    わたしは
            わたしは
 
                             この子に
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                                              だ き し め て ・・
 
 
 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 
 
 
なんで
 
 
 
 
 
 

                                      なんで   わたしは

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
わたしは
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 どうして   こんなことに
 
 
 足が折れてる。
 血が沢山流れてる。
 たぶん、折れた骨が肉を突き破ってる。
 痛い。
 嘘みたいに、痛い。
 信じられないくらいに、痛い。
 本当に、信じられない。
 どうして
 どうして
 だから
 だから
 目を瞑る。
 信じる
 信じるしかないの。
 
 私が死ねば、アサちゃんや紫子は助かるのよ。
 
 そうよ、そのために私はこんな目に遭っているのよ。
 痛くて、苦しくて、怖くて、でも、でも、それは、それは全部。
 あの子達のために。
 ぶるぶるとすさまじい勢いで震え続ける両手を合わせることも出来ないまま、私はひとり必死に唱えて
 いる。
 あの子達のために、みんなのために。
 
 村の大人達は、人柱を選別するための銅人としてアサちゃんを選出した。
 アサちゃんを救いに向かった私に、アサちゃんは助けを求めて叫んだ。
 夕子おねえちゃん!、と。
 それが銅人が人柱を選んだこととみなされ、私は人柱として生きたまま閉じ込められた。
 アサちゃんの代わりに、私は死ぬのよ。
 アサちゃんのために、アサちゃんのために、ひたすらアサちゃんのために。
 こんなことしたって誰かが助かる訳でも村が助かる訳でも無いのにという声が、私の胸の奥で響き渡る。
 
 
 
 − では、誰かが村がそれで助かるのなら、姉様は本当に死ぬのですか
 
  紫子が、泣いている
 
 
 私はその涙を受け止められずに、ただひたすら祈り続ける。
 がたがたと震え続ける両の手を力づくでねじ伏せ、合わせて祈る。
 私はこの身を捧げます、だから、だからアサちゃんを、紫子をお救いください。
 そして
 どうか、こうして身を捧げるわたしを・・・・・私のことを・・・・・・・・・・・
 
 
   けたたましい   嗤い声が響く
 
 
 
 なんで笑うのよ!!!!!

 

 私はこんなに、こんなに一生懸命に、命を投げ打ってまでも、みんなのために頑張ったのよ!
 
 それなのに、どうして私がこんな目に遭うのよ!
 
 もう終わらせてよ!
 
 もういいでしょ、充分でしょ?
 
 もう殺しなさいよ!!

 

   なんで私を生んだのよ!!!!!
 
 
 
 
 
 まるで人を殺すようにして、両の手をきつく綴じ合わせる。
 冷えていく背筋と足の感触から、力を振り絞って目を背ける。
 ぜったいに ぜったいに  ぜったいに
 わたしは
 すくわれる
 わたしはしなない
 だって
 だってわたしは
 こんなにもみんなのために
 
 バラバラになにかが溶けていく。
 次第に祈りの声が聞こえなくなっていく。
 声を張り上げようとしても、喉がつかえてこれ以上大きな声を上げられない。
 その事に気付きたくなくて、黙り込む。
 祈りは胸のうちに、きっと神様はそれをみていてくれる・・
 身も心も、ぜんぶ、ぜんぶ
                     なげだして
 
 
 
 
 
 
 闇の先に、祠がみえた。
 そうよ、わたし、人柱にされたのだもの、そうよここは神前なのよ、一番の特等席じゃない、
 私の献身ぶりを神様が一番見てくれる場所じゃない、ねぇ神様、みて、みてわたしを
 綺麗でしょ? みんなのためにここまで頑張ってきたのよ、わたしが死ねばみんな助かるのよね、
 わたしがんばったのよ、痛いけど、苦しいけど、なんだかもう足の感覚が無いけど、でも神様、わたしは
 わたしは、いっしょうけんめい、みんなのためにがんばったのよ。
 褒めてよ、かみさま
 わたしを
 わたしを
 わたしをみてよ
 
 わたしにすてきなわたしをもっともっとみせてよ!!
 
 
 
 
 
 
 鏡に、ボロボロに歪んだ、ひとりの人間の顔が映っていた。
 ・・・・・・・・・誰?
 誰・・・・・誰・・・・・・・・・・・・だれなのよいったいっっっっっっ!?!?
 どうしようもないほどになにかが真っ赤に染まっていく。
 どろどろのグチャグチャに、破れて折れて、絶叫が響く。
 止まっていた、ずっとずっと止まっていた時間が、止まったまま崩壊していくのを感じた。
 どくどくどくどくどくどくどどどどどどどどど
 やめて やめて やめて やめてやめてやめてやめてやめてーっっっっっっっっっっっ
  ぐさぐさにひび割れた唇 −
  べったりと血で腐った頬 −
  ただ一点のみしか映さない壊れた瞳 −
 だれ
 だれよこれ
 それがわからないまま、呻いた。
 どくどくと破れるようにして、体中の痛みが消えていく。
 やめて、待って、待ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
 こんなに恐ろしい怪我に犯されているというのに、なにもすがるものが無いなんて
 痛みが消えて、その代わりに、その痛みにしがみついていた、どうしようもない衝動だけが、取り残される。
 
 こわい
 
 体の内側から刃物を突き付けられたような感覚。
 突き付けられ、そして斬り付けられながら、滅茶苦茶にされているということだけはわかるのに。
 痛くない
 痛みが無いの
 どうして  どうしてっっっっっっ
 こわい
 こわい
 守られなくちゃいけないのに 救われなくちゃいけないのに
 どんどん血が流れて、体も動かなくなっていくのに
 やめて   どうしてよ     痛みが無くちゃなにも出来ないじゃないっっっっっっっっっっっっっっっっっっ
 呆然と、自分が切り刻まれていくのを、みつめている。
 目の前で、大切なモノが、壊れていく。
 ここにいるのに。
 守らなくちゃいけないのに
 
 祠に灯された炎が、ひとつ消える。
 痛みが戻らないまま、胸の中のなにかが殺されていく。
 またひとつ、灯りが消える。
 たすけてっっっっっっっ
 だれかたすけてぇっっっ
 どうしよう、痛みがないの、じぶんがどこをどう怪我してるのかもわからないのっっ
 でも血が流れて、足が動かなくて、顔がひどいことになってて!!
 わからないのよ!!!
 たすけなさいよ!!!
 痛いはずなのよ!! 苦しいはずなのよ!!
 痛いのよ! 苦しいのよ!!!
 でもわたしにはわからないのよっっっっっ!!!!
 
 灯りがきえる
 
 待ってっっっっっっっっ
 わたしはがんばったじゃない!
 あなた達のためにがんばったじゃない、そのために私はこんな怪我したのよ!!!
 あなた達が責任取りなさいよ!! もうなんにもわかんないのよ! あなた達がどうにかしてよっっっ!
 私はあなた達を救うのよ!? いいの? 私が死んでもいいの!?
 あなた達は私を殺していいの? 私はあなた達のために人柱になったのよ?!
 ねぇ、ねぇってば!
 このままじゃわたし、死んじゃうよっっっっっ!!
 お医者様を呼んで!!
 
 
 灯りがきえる
 
 
 ねぇ、ねぇ、ねぇ!!!
 お願いよ、お願いします、ごめんなさい、私の頑張りが足りなかったのね
 もっと、もっとみんなのために頑張るから、もっともっと、わたし、我慢するから!!!!!!!!!
 
 
 
 
 
 
 
 
  どこか遠くで  
              小さな音がする
 
 
 
 
 誰かが 泣いている
 誰かが 嗤っている
 誰かが 叫んでいる
 
 
 どうして こんなことに
 どうして 私は
 頑張ったのに 必死に 必死に 頑張ったのに
 みんなのために アサちゃんのために   紫子のために
 みんなを守るために、自分に厳しく、希望を諦めずに、前を向いて歩き続けて
 ねぇ あとどれくらい 前に進めばいいの?
 わたしもう、こんなにボロボロなのよ?
 痛くて、苦しくて、でもみんな我慢して、あなた達に捧げたのに。
 まだ、足りないの?
 わたし、怠けてる?
 甘えてる?
 そうなのね・・・そうよね・・・・私しか・・私しかいないもんね・・・
 私がみんなを守らなくちゃ、誰がこの村を守・・・・
 
 灯りがきえる
 
 ねぇみてよ、わたしを
 血塗れよ
 真っ赤よ
 どうしよう
 どうしよう
 わたしの・・わたしのたいせつな・・・
 ねぇ、助けないの?
 わたしを、誰も助けないの?
 お願いよ
 たすけてよ
 なんでもするから
 死ぬまであなた達に尽くすから
 だからたすけて
 ねぇきいてる? きこえてるんでしょ? わたしの叫びも、わたしの痛みも、わたしの血の流れる音も
 私の祈りも、私の犠牲も、ぜんぶ、全部。
 きこえてるんでしょ?
 
 
 
 
   灯りが きえた
 
 
 
 
 
 
 
 
 もう
 
    ゆるして
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
                                    − 随分と 勝手なことを言うのね
 
 
 
 
 
 
 一抹の静寂を幾重にも折り重ねながら、その闇の中に沈んでいく。
 真っ逆様に落ちるように座り込みながら、上も下もわからない中で、ただ顔をあげる。
 見上げた先には、いちまいいちまい剥がれ落ちていく、私の時間の欠片が紅く揺れていた。
 
 遠く、遠くどこまでも
 その紅い時間の欠片は、ただの一度も咲くことの無いまま凍り付き、溶けていく。
 青い、刹那の結晶。
 ひらひらと、それは美しくもだらしなく、私の目の前で消えていく。
 
 『どうして・・わたし、悪くないのに・・・なにもしてないのに・・・・』
 
 ううん・・わかってる・・・わかってた・・・
 私が、なんの罪も犯していないからこそ、私は人柱にされたのよ。
 だって、神様が一番求めているのは、一番清く正しく美しい人間なんだから。
 誇らしいことよね、私が人柱に選ばれたって事は、私が一番清く正しくて美しかったって認めて貰えた
 ってことになるんだから。
 嬉しいわ、ありがとう。
 ありがとう
 ありがとう
 だから
 死ぬのね わたし
 よかった
 
 
                                      − 責任取りなさいよ
 
                                       
 
 私はただ私を守りたかっただけなのに。
 だから、だから・・・私はみんなのために・・・・
 みんなに守って貰おうとして、だからみんなのために・・・・
 私の頑張り自体が、じゃあ、私を死に追い込んだっていうの?
 私が清く正しく振る舞ったから、私は死ななくちゃいけないの?
 そんなこと・・・・・そんなこと・・・・・・・あり得ない!!!!!
 
 そうよ、あり得ないわ、あり得ないのよ、そんなこと。
 あんなに頑張った私が報われないなんて、救われないなんて、絶対にあってはいけないことなのよ。
 そう・・・・そうか・・・・私は悪くないんだから・・・私は正しいのよ・・
 ということは、他に誰か悪い人がいるのよ、わたしをこんな目に遭わせた人がいるのよ、それは誰?
 
 
                                       − 笑わせるわね
 
 
 
 あの子か。
 
 アサちゃん・・・アサ・・・・っっっ!
 あの子が、あいつが私を人柱に選んだのよ!!
 あいつが私を選ばなければ、私はこんな目には遭わなかったのに!
 私はあの子に優しくしてあげたのにっっっっ!
 
 ああ・・
 でも・・・違うわ・・・それは違うわ・・
 だって、アサちゃんは、私を一番清く正しく美しい人だって、選んでくれたのだから。
 アサちゃんは悪くない、アサちゃんを怨んじゃ駄目・・・
 
 
                                         − でもあなたは死ぬ
 
 
 そうよ、アサちゃんは悪くないのよ、怨んじゃいけないのよ。
 私は清く正しく美しく、この世界で一番の笑顔のままに死んでいかなければいけないの。
 私は選ばれたのよ、人柱に。
 みんなのために、喜んで死ねるのよ。
 そのために、頑張ってきたんじゃないわたし、ずっとずっと昔から、私はみんなのために・・・・
 誰も怨んだりしない、誰も憎んだりしない。
 びくびくしては駄目、おどおどしては駄目。
 しっかり、しなくちゃ。
 
 
 
 
 
 

小さな
 

紫子が

 

みてる

 
 
 
 
 
 
 
 子猫のように可愛らしい 私の妹
 私の手にすがりついて 不安そうな瞳を上目遣いで私に向ける
 だいじょうぶよ おねえちゃんがついてるから
 あなたは わたしがまもってあげるから
 なんて愛らしいの
 いつまでもずっと この子を抱き締めてあげたい
 大切な 大切な 小さな女の子
 この子に しっかりしてほしかった
 だって そうしなくちゃ
 そうしなくちゃ
 みんなに
 置いていかれてしまうもの
 みんなと同じにならなくちゃ あなたはひとりぽっちになってしまうもの
 だからわたしが あなたを あなたを厳しく躾けて みんなに置いていかれないように
 ひとりぽっちにならないように
 頑張らせた
 ボロボロになるまで
 この世界で一番 きよくただしくうつくしい おんなのひとに するために
 そうすれば
 あなたは誰にも捨てられない
 あなたはみんなに愛して貰える
 私なら あなたをそういう人にしてあげられる
 私はそうして あなたを守ってあげられる
 さぁ 私と一緒に祈りましょう
 みんなの 幸せを
 みんなの ために
 たとえこのからだがきえてなくなってしまっても
 ちまみれのちだらけになってしまっても
 そうすれば
 あなたは
 あなたは
 きっと  すくわれるのに
 
 
   どうして     わかってくれないの
 
 
 
 
 
 
 一陣の青い光が皎々と
 降り積もる
 
  揺らめく紫子の瞳に    幼いだれかの姿が映り込む
 
 
 
 あなたは
 
    だれ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 『 さ む い よ 』
 
   『 お な か す い た よ 』

 
   『  こ わ い よ 』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                                                  −よくも
 
 
 
 
 
                                         −よくも 殺してくれたわね
 
 
                                −痛くて 苦しくて どうしようもなくて
                                −ずっと ずっと ずっと そうだった
                          −ずっと ただただ あるがままに 生きたかっただけなのに
 
                          −よくも 私を傷付けたわね
 
                          −よくも 私を無視し続けたわね
 
                         −ただ守って欲しかっただけなのに
                       −ただただ あなたにずっと一緒にいて欲しかっただけなのに
                       −あなたにだけは 見捨てられたくなかっただけなのに
                      −それなら ひとりぽっちにも耐えられたのに
 
                     −ひとりでも ちゃんと自分のために頑張れたのに
 
                 −あなたは私を置いて みんなの側に行ってしまった
               −私のためと言って 私を傷付け無視し続けた
           −やめてって 何度も何度も言ったのに
       −あなたはその振り上げる掌を止めることは無かった
      −痛いよ 怖いよ
     −寂しいよ
 
     −どうして みんなから守ってくれなかったの?
     −どうして 私は私のままでいいって言ってくれなかったの?
    −どうして 私を愛してくれなかったの?
   −あなたは私を置いて ひとり行ってしまった
  −私と一緒にいると あなたもみんなに嫌われてしまうから?
 −だから 私を
 
 
 
 切り捨てたの?
 
 
 私を、犠牲にしたの?
 
 
 人柱に、なったの?
 
 
 
  − 許 せ な い わ ね 。 −
 
 
 
 
 『 ううん・・違う、それは私じゃ無い・・・
   私は、怒ったりしない・・悪いのは私じゃ無い・・・他のだれか・・・
     私は、憎んだりしない。 』
 
 
 
 
 ええ
 その通りよ。
 
 『そう。』
 『憎んだのは、私。』
 
 あなたに憎む資格なんて無い。
 あなたに怒る権利なんて無い。
 そう
 悪いのは、私じゃ無い。
 
 
 『憎い』
 『憎い』
 
 『憎い!!』
 
 
 『 私を生け贄に生き延びようとしたものが憎い! 』
 
 『 私を殺したものが憎い! 』
 
 
 
 
 
 
 
 

『 私を切り捨てた あなたが 憎い 』

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
     あなたは  だぁれ?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 最期に胸に届いた光は、私への憎悪に満ちた、深い私の呪詛だった。
     
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ごめんね・・・・
 
    ごめんね・・・・・・・・・・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
      もう
 
         ゆるして
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                        ◆ 『』内文章、アニメ「黄昏乙女×アムネジア」より引用 ◆
 
 
 

 

-- 120613--                    

 

         

                              ■■ 恍惚のアムネジア ■■

     
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 月を
 じっと、見ている。
 ずっと、ずっと、どこまでも自分のあどけなさを試すかのようにして、睨み付けている。
 いったいどこまで許されるのだろうかと不安に思いながらも、
 それでいて絶対に離すものかと、心に決めている。
 
 ゆっくりと時間が流れていく中に、髪を浸して泳いでいる。
 いつまでも、どこまでも、流れるままに、私の秒速のために生きている。
 絶え間ないほどに、それは私を揺らす私の決意の顕れと、そして。
 不安の、正体そのものだった。
 
 わたし、ここにいていいのかしら
 いていいんだ、私はここにいていいのよと、すべての力を振り絞ってこの体を抱き締めているそれが、
 他ならない私自身であることの、よろこびと、そして。
 さびしさ。
 どうして、こんなに必死に叫ばなければいけないの?
 それは、私がほんとうは、ここにいてはいけないんだと、そうなにより思っているからじゃないの?
 私は、私を責めている。
 ここにいてはいけない、それなのにどうしておまえはここにいるんだ
 責めている
 消えなさい
 私は自分を責める声の消去を願いながら、同時に私の存在そのものが消え去ることを願っている。
 わたしが消えたら、私は許して貰えるかしら?
 誰に許しを請うているのかもわからないのに、どうしても私を消そうとし、消えたいと思う私の願いは、
 ずっと消えないまま、私を揺るがしている。
 
 
 
 月の満ち欠けに倣うように、胸の奥の潮騒が乱れている。
 消えたくない、という私の願いは、どこにいったの?
 それを探し続けていながら、でも、同時に、消えたくないという願いそのものに、
 なにかおかしいと感じている。
 どうして、消えたくないなんて、わざわざおもうのかしら?
 消えたくないと思うのは、消えたいという強いおもいが既に存在しているからなのじゃない?
 私は、消えたくないのじゃなくて、消えたいというおもいをこそ、消してしまいたいんじゃないの?
 私は、私が消えたいという思いを消すことが出来ないでいた。
 だから
 誰かに、消して貰いたいと
 
 
 
 お気楽に
 極楽に
 そうあり続けなさい
 笑え
 笑うのよ
 笑い続けなさい
 命懸けで笑い続ける。
 たのしくて、うれしくて、それでなにかが満たされ続けていく、その快楽の中で、私は。
 微笑んでいた。
 笑っても、笑っても、笑い尽くせない。
 
 こわくて
 
 たのしいのは、本当。
 嬉しいのも、事実。
 だけど、それだけじゃ無いのも、確実。
 際限の無いほどに笑い続けて、すべての笑顔を描き切ったとさえ思える、その瞬間に。
 私は恐怖のどん底に突き落とされる。
 だから
 私は、笑いをセーブする。
 笑い尽くす手前で、恍惚の手前で、私は一歩、後ずさる。
 もう一回。
 初めから。
 その無限のループを切れ間無く繰り返すことで、私は恐怖の底に至ること無く、浮かび続けていた。
 言葉
 私は語る
 私を語る
 たのしさを
 うれしさを
 ひとつひとつのたのしさとうれしさを噛み締め続けていくことで、いつでもどこでも、私の側には、
 たのしさとうれしさが広がっていた。
 たのしさとうれしさに囲まれている、安堵。
 平静。
 落ち着くわ。
 手の届く範囲に、安心がある。
 大好き。
 離さないわ、絶対に。
 大好き。
 あなたといると、私はずっとここにいられるの。
 
 
 
 
 
 
 −−−−
 
 
 目が回るほどの、孤独。
 その誇らしさに酔いながら、でもどうしても、私を押さえられない。
 どうして どうしてなのよ
 貞一君が、私から離れていくなんて、やっぱり絶対に考えられない。
 そうよ
 そう思っているからこそ、私は、たとえ貞一君がいなくなっても、きっとひとりでもやっていけるって・・
 そう言わなければ、叫ばなければ、ほんとうに・・わたしは・・・
 
 − こわい
 
 喉元を迫り上がってくる、冷気。
 押し潰されたように拉げていく、丸い肩。
 伸び伸びと、溌剌と、大きく息を吸いながら、深く深く、吐いていく。
 私は震えながら、その私の見たい私の姿を見つめている。
 視線で射殺す勢いで、舐め回すように、ただ。
 呆然と、私は私でいる。
 笑うことをやめても、それでも私はきっとここにいる。
 そうね、たぶんそれは本当で、私が私を消したいと願おうと願わなかろうと、それとは関係無く、
 私はここに居続けることは可能なんだとおもう。
 でも・・
 それが・・・不安なのかもしれない
 私はきっと、ここに居続けるのだろうけど、でも、それ自体が本当は怖いのかもしれない。
 このままで、いいの?
 このまま終わって、いいの?
 なにかを激しく求めている。
 なにを・・・なにを、求めているの?
 
 
 
 
 誰も
 私の存在を否定しない
 誰も ほんとうは
 私のことを消そうとなんて していない
 本当は、そのことこそが、一番一番、怖いんじゃないの?
 私は、消えられない。
 消えちゃ、いけない。
 消えないのが、怖い。
 ここに、いなくちゃいけないのよ。
 だからあべこべに、私の中に、私を消し去ろうとする悪魔の声を作り出して、それから逃げようとする、
 そして戦い続ける、そんな可憐で勇敢な少女を演じ続けているだけなのかもしれない。
 消えたくない、生きたいと、そう叫ぶその少女こそが、本当は自分を消そうとする殺そうとする、
 そんな悪魔の私以上に、私を消そうと殺そうとしているのかもしれない。
 ここにいることが、こわくて
 生きていることが、不安で
 だから私は、戦い続けて笑っているの
 私の中に響いている、ほんとうに恐ろしい言葉は
 ここにいろ
 生きろ
 まさに
 それだったのよ
 
 
   気付いたとき
 
     私は  大好きな 貞一君を 階段から突き落としていた
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ◆
 
 
 貞一君を、好きになった。
 好きで、好きで、堪らなくて。
 貞一君が好きな私のことが、大好きで。
 ああ わたし ここにいていいんだって
 安心感
 あったかかった
 まるで、誰かに抱き締めて貰っているみたいで
 すごくね、気持ち良かった
 ずっと ずっとこうしていられたら
 
 どうしたら ずっとここにいられるのかしら
 
 気付けば私は、貞一君に夢中になっていた。
 熱くて、燃えるように、私のすべてが消えてしまったかのような肌触り。
 もうなにもみえない
 貞一君しかみえない。
 目の前の貞一君しか。
 睨み付けるように、ただただ、貞一君の胸にぶら下がり続けた。
 そう これでいいのよ
 もうなにもみえない
 みたくない
 ここにいなくちゃいけないとか、ここにいてはいけないとか、関係ない。
 不安
 どこまでも、ついてくる。
 私はここにいていいのよ、だって貞一君が私を見てくれるんだもん!
 ううん、もう関係ないわ、もう誰に許可を得る必要が無いもの、貞一君がいれば、私はもう、
 ちゃんと自分でここにいていいって言えるんだから。
 私はちゃんとこうしてここにいて、ちゃんとこうして、生きているわ!!
 ぐるぐると叫び続ける。
 でも
 でも
 
 こわい
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 貞一君が、笑っている。
 貞一君が、微笑んでいる。
 貞一君が、生きている。
 貞一君が、そこにいる。
 
 どうして
 どうして・・
 
 滅茶苦茶にしてやりたい。
 八つ裂きにして、焼き尽くして、投げ捨ててしまいたい。
 貞一君に映る私の姿が、恐ろしいほどに私の殺意を育てていく。
 貞一君にしがみつく、私。
 貞一君なしではここにいられない、私。
 貞一君なしでもここにいられると叫ぶ、私。
 貞一君から離れてもやっていけると笑う、私。
 ぜんぶ
 ぜんぶ
 みえてしまう。
 逃げ続ける、わたし。
 戦い続ける、わたし。
 貞一君、だいすきっ!
 
 嫉妬
 
 嫉妬って、なに?
 貞一君が他の子と仲良くするのが嫌なのは、どうして?
 他の子が貞一君と仲良くするのが嫌なのは、どうして?
 あのときに感じた、私の胸のざわめきは、いったい、なに?
 どきどきと、まるで心臓を喰い破るかのようにして、拍動が猛り狂う。
 首筋が、千切れそう。
 体中の動脈が、破れそう。
 嫉妬を感じること自体が、こわい。
 滅茶苦茶にされるように、八つ裂きにされるように、焼き尽くされるように。
 投げ捨てられるように。
 こわい。
 
 
  どぎまぎと、上辺だけ穏やかに飾られた純情が、まるで産声を上げる子羊のような憎らしさを下げて
  私を見下ろしている。
  哀れむような、蔑むような、いてもたってもいられないような、今すぐ殺して欲しいと思うような、そんな
  羞恥心が怒りと溶け合って、私の瞳の奥にめり込んでくる。
  
 貞一君の首筋にかじりついて、ゆっくりとときめいていく朝の煌めきが、肌の上を滑り抜けていくのを
 どうしても感じてしまう。
 しゅうしゅうと蒸気を上げるようにして消えていくなにかの残滓に手を伸ばすことなく、ただすべてが終わって
 しまったかのように、力無く冷徹な眼差しでそれを見送る、わたし。
 
 
     今までの貞一君との時間が、まるで盗まれた走馬燈の灯りのようにして、眼前に広がっていく。
     その終わりを止めることが出来ないどころか、それを止めようとする私さえ、そこにはいない。
     いつもと同じように貞一君と過ごしていく時間のすべてが、ただひたすら私を糾弾する。
 
  その私を糾弾する者は、実在しない。
  そもそも実在しない者としてすら、存在しない。
  いるのはただ、貞一君の横で、いつもと同じように笑っているわたしだけ。
  私が笑おうと笑うまいと、貞一君はそこにいる。
  貞一君の横にも・・・
 
 
         ねぇ やめてよ
 
  どうして?
 
 
    だって   なにも感じないのだもの
 
 
   いいじゃない  それで
 
 
    こわいのよ
 
 
      なにも感じない自分を   否定しようとする 私が
 
 
 
     なにも感じない自分を否定するために   なにかを感じようとする 私が
 
 
   また 逃げるの?
 
 
    いいえ 嫌なだけよ
 
 
 わたしは
 
 
 
     なにかを感じるわたしが  こわいのよ
 
 
 
   どうして?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 + + + +
 
 
 びくびくと、過ごしている。
 明けることの無いかもしれない夜のひとつひとつに、なにかを感じてしまうことが、怖い。
 どうしてこんなに夜は、真っ黒なのよ。
 まるで意図的に、なにかを隠すかのようにして、黒く塗り潰されている。
 嫌
 もう やめて
 どうして、そんなに自己主張するのよ。
 知らないわよ、あなた達なんて!
 
 
 
 忘れよう。
 知らなかったことにしよう。
 私に見えているのは、黒という色だけ。
 それは初めから黒に塗られていた、黒として成立しているものだったのよ。
 なにかを隠すために塗られた色じゃないわ。
 貞一君?
 誰? それ。
 知らないわ。
 わたしは、わたしを放棄する。
 ただもう、ただもう、私は、真っ直ぐに立っているだけ。
 あなたにはなにも望まない、なにも求めない、なにも映さない。
 あなたの好きにして頂戴。
 
 『あなたは、だぁれ?』
 
 私はあなたのこと知らないし、あなたは私のことを知っているみたいだけれど、でも私は、
 あなたの中の私のことを知らないの。
 ごめんなさいね。
 
 
 遠くで、男の子の声がする。
 その近くで、女の子の声がする。
 たのしそうに、笑っている。
 不思議ね。
 ずっと昔から、私にはこういう声ばかりしか聞こえなかったはずなのに。
 そのふたりの姿を眺めている。
 なにも感じない。
 なにも感じないという言葉すら、浮かんではこない。
 なにも感じない
 なにもない
 ない
 ない
 嬉しいわ
 なにも ないのね よかった
 小さく溜息を吐くと、そこには見たことのない風が吹き溜まっていた。
 なに? これ。
 どんなに近づいても、その男の子の声は、遠いまま。
 背中合わせに座ってみても、その子のぬくもりは、透き通っていた。
 よかった
 ほっとするほどの小さな安堵が、背に負う影に溜まっていく。
 ゆっくりと解けるように凍り付いていく肩を抱いて、私はただずっと立っていた。
 見つめるだけ。
 見つめ続けるだけ。
 そうね
 そうなのよね
 
 
 
 動く
 私の体は、動く。
 まるで組み込まれたプログラム通りのように、私はボールを投げつける。
 目の前の男の子の投げたボールにそれは当たり、からころと音を立てて転がった。
 なにも感じない
 なにも感じない
 だけど
 体は 動く
 私の体は、もう骨だけのはずなのに。
 私のこの姿は、ただ私が見たい姿であっただけなのに。
 その私の見たい体は、なぜか、ボールを投げる。
 どうして?
 夢を見たような気分。
 喉から手が出るほどに、欲しかったもの。
 なんだろう
 この気持ち
 ゆっくりと溶け合うようにして、私を満たしていくものがある。
 あの子達には、私の姿が見えない。
 どうして?
 一体何度、そう自分に問うたか知れない。
 なんで、どうして、どうしてなのよ。
 ひたすらそれの繰り返し。
 もう
 体が覚えてる。
 わたしは・・わたしは・・・・・
 
 
 
 『夕子さんっっ!! いるんでしょ!?』
 
 
 
 恐ろしい声が響く。
 けれどその恐怖に魅入られたかのようにして、私は声を上げる。
 わたしは ここにいるわよ
 ねぇ
 わたしね
 ずっと ずっと ここにいたのよ
 ずっと、ずっとね、求め続けていたのよ。
 雨の日も風の日も、もう消えてしまいたいと思った日も、全部。
 ひとつひとつ、一瞬たりとも漏らさずに、私の目は、鼻は、耳は、肌は、感じてた。
 なにもかもを感じて、感じとって、たとえそれを私が受け止めることが出来なくて、
 逃げ出してしまったとしても。
 私の体はね、全部、全部、その記憶と肌触りを残しておいてくれたの。
 わたしの、ために。
 いつか私がそれを全部、受け止める日がくることを、信じて。
 歩いて、あるいて、感じて、どこまでも、いつまでも。
 なにひとつ、全部、わたしは・・わたしは・・・・・
 
 胸の奥を切り裂く焦燥感。
 切実に研ぎ澄まされていく紅い瞳。
 私の見たいものが、延々と目の前に映し出されていく。
 大好きな人との時間のために、歩く、走る。
 一生懸命に、自分の想いを伝えようとして、足掻く。
 勇気を振り絞って、自分のしたいことのために、その一歩一歩を踏み出していく。
 何度振り出しに戻っても、何度でも何度でも、諦めずに、進んでいく。
 それは振り出しのようでいて、実はもうきっと、螺旋階段のようにして、前に進み続けている。
 よどみなく、絶え間なく、何度も同じことを繰り返すしているようにしか感じられなくても、
 時の流れは確実に、私の秒速と溶け合い、まっすぐに進んでいる。
 私がどう語ろうと、どう述べようと、その言葉で作られた私の記憶の世界がどんなに拉げようと、
 私のこの胸の奥から湧き出でる、どうしようもないほどのなにかは、何度でも、私の世界を塗り替える。
 塗り替えて、塗り替えて、塗り替えて。
 それは
 絶対に、圧倒的に  わたしの見たい わたしの求めている 世界
 私が忘れようと、私が忘れたと述べようとも、それでもその世界は燦然と目の前に広がっていく。
 ぼろぼろになった涙が、肌の内側を駆け巡る。
 ねぇ 教えてよ
 あなた、わたしのこと、知ってるんでしょ?
 目の前の男の子の姿に、問い掛ける。
 愛おしいほどに、頬摺りを重ねたいほどに、無力な私の無表情は、固まっていく。
 無駄な抵抗を、目一杯尽くして、私はすべての力を振り絞り、目の前の男の子の姿にすがりつく。
 
 ねぇ 言ってよ
 私の 求めているものを
 
 滅茶苦茶にされてもいい。
 八つ裂きにされても、焼き尽くされても、投げ捨てられてもいい。
 殺されてもいい、消されてもいい。
 ここにいなければいけないのでもいい、生きなくてはいけないのでも、いい。
 歩いて、歩いて、進んで、もう、止められない。
 私が傷付けた足を引きずりながら、不格好に力強く走る男の子の手に引かれて、
 私はただもう、ただもう。
 甘えていく。
 ああ なんて なんて  なんて
 目の前の男の子の姿に映る、私の姿は、たとえようもないほどに、真っ赤に輝いていた。
 私の求めるもの
 私の欲しいもの
 わたしの 見たいもの
 あなたは、それを映し出してくれるの
 
 舞い落ちる 記憶の欠片
  溶け落ちる 涙の断片
 
  届いていく
 
   わたしの願いが  わたしのせかいへ
 
 
 知りたかった
 
    わたしのこと
 
 
 
 私は
 
   わたしのことを
 
 
 
 
    知らなかったのよ
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 

『あなたは、 だぁれ?』

 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 『 僕は、貞一。 新谷貞一です。
 
   夕子さんと一緒に過ごした、新谷貞一です。
 
   僕は、怪異調査部が楽しかったんです、夕子さんの過去を調べるのが。
 
   僕は夕子さんの事が知りたかった。
 
   でも、本当に知りたかったのは、夕子さん自身のことだったんです。 』
  

 
 『 どうして? 』
 
 
 
 
  『 それは・・・・それは、夕子さんが好きだからです! 』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 どんな私だって、それが私だというだけで、私は好き。
 愛してる。
 自分の綺麗なとこしか愛せない私だって、すぐに逃げ出す私だって、全部、全部。
 ここにこうして、生きている。
 どうしようもないほどに、その私の自覚が、目の前の男の子の姿に映っている。
 こわくて、不安で、記憶を無くして、それなのに、こうして私は・・・
 胸が、高鳴る。
 私の体は、私のこの姿は、覚えてる。
 たったのひとつも忘れること無く、私の言葉に惑わされることなく、とてつもなく私の胸の奥で咲いている。
 
 私は、貞一君自身のことが好きだと、言ったことがあるかしら?
 無いわ、ただの一度も。
 私は、貞一君のことを知りたいと、どこまでも深く全部知りたいと、思ったことがあるかしら?
 無いわ、見事に完全に、無いわ。
 貞一君のことを好きというたびに、私はなにかを見失っていた。
 貞一君に映し出される私の姿には、なにかが欠けていた。
 知らないんじゃないわ。
 覚えていない、と思っているだけ。
 忘れたい、と思っているだけ。
 私は、私自身のことを、きっとどこかで覚えているわ。
 きっと きっとどこかで
 その記憶を受け止められない私でも、ここにいていい。
 だって
 だって
 
  目の前に映し出された、私の姿が、言ったじゃない
 
   知りたいって
 
    私自身のことを   知りたいって
 
 
 
 その私の姿は、私の見たい私の姿。
 私が、ほんとうに求めているもの。
 私は、きっとずっと、それを信じていたのね。
 いつかきっと、私が、私のすべてを受け止めることが出来るようになる日が来ることを。
 私が、それでも
 それでもこうして
 
   笑うことが   出来る日がくることを
 
 
 
 貞一君の笑顔が、私は大好き。
 貞一君が笑うと、胸が高鳴るの。
 ざわざわして、どきどきして、なんだかこわくて、でも。
 そのこわさの奥底に、とてもとても小さいけれど、微かな光を感じるの。
 ああ
 きっと
 それが、わたしなんだって
 その私はきっと
 泣いたり、怒ったりもするんだ。
 会いたいな。
 そんな私に、会いたいな。
 貞一君の瞳に映る、その私の姿がどんなものであっても、私はもう気にしない。
 だって
 私の目には、確かに貞一君の姿が見えているんだもん。
 その貞一君の姿こそ、私の見たい、本当の私の姿。
 その私になるために、私はこのまま前に、進んでいきたい。
 私を、知っていきたい。
 どうなるかわからないけれど、また記憶を無くしてしまうかもしれないけれど。
 でも、それは逆戻りだということでは、決してない。
 記憶を無くしても、それでも私は前に進み続ける。
 だって、記憶を無くすことで、きっと本当は、その記憶と向き合う自分に出会えるのだから。
 貞一君のことを忘れなかったら、私は貞一君を思い出すことは無かった。
 本当は望んではいないかもしれない貞一君の姿を勝手に描き出して、そればっかり求めていた。
 でも、その貞一君の姿を失って、初めて私は、自分の中にある、本当の貞一君の姿を目の前に
 映し出すことが出来た。
 
  貞一君が、初めて自分で私のこと、好きだって言ったんだから!
 
 私が言わせたわけでもなんでもないのよ。
 当たり前のように、でも一生懸命に、好きだって言ったの。
 ああ
 もう
 止められない
 私は、貞一君のこと、だーいすきっ♪
 私は、貞一君自身のこと、知りたいっ!
 その私のおもいが、今、目の前の貞一君の姿に映ってる。
 なにより、忘れたはずの好きという気持ちが、それまでよりもはるかに輝いて、そこに広がっていた。
 うれしい・・
 嬉しくて嬉しくて、ただもう、ありのままに貞一君と世界を感じていた。
 
 − 私が 消えていた
 
 
 
 
 これからしたいことを目一杯思い浮かべながら、わたしはただ、貞一君の胸に甘く抱き締められていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 とおく  遠く
 
 どこかずっと とおくに
 
 
 胸の奥に吸い寄せられるようにして、どこからともなく風が集まってくる。
 渦巻くその清涼な風の吹きだまりのなかに、なにかが、誰かがひそめくようにして、座り込んでいる。
 それは
 みたことのない
 けれど
 とても大切ななにかの 肌触り
 どうして、私は笑うんだろう。
 どうして、私はいつも毎日、前向きになんでも楽しもうとして頑張るんだろう。
 たのしくて、うれしくて、そんなお気楽な幸せを感じているのは、なぜなんだろう。
 
 きっとそれには
 意味がある
 
 
 
 
 ・・・・ ・
 
 私ね、貞一君。
 わたしは、本当は、私じゃない気がするの。
 私が笑うのは、それは本当は、本当に笑えるようになりたいから。
 本当に笑えるようになる、誰かのことを・・・・・・とても・・・愛しているから・・
 笑って、たのしくて、幸せで、そのためになら、嫌なことも辛いことも全部捨てて、逃げ出して。
 そうまでして、私は純粋に、その笑顔と楽しさと幸福そのものが、この世界にはあるんだって。
 私は、私の中の誰かは、それを受け取っていいんだって。
 そう、言いたかったんだとおもうの。
 笑っている、この、私がね、そう思っているのよ、きっと。
 
 私は、その誰かのためにこそ、こんなにも、こんなにも、真剣に頑張っているんだとおもう
 
 貞一君に、好きって言われて。
 嬉しかった。
 こうして、笑顔で頑張り、楽しく振る舞い続けることで、その姿を刻み続けることで、
 なにかが変わっていくことを信じ続けていた、私がね、好きって言って貰えたような気がして。
 少しだけ、報われた気がした。
 そして・・
 その好きって言葉を、私は、私の胸の奥に仕舞われている、小さな誰かにこそ、贈りたいの。
 だって私は、その誰かのためにこそ、今までずっと、ここに存在し続けてきたんだから。
 好きで、好きで、だいすきで、どうしてもその誰かを、その子を、笑顔に、幸せにしてあげたくて。
 救って、あげたくて。
 私が、なんとかしなくちゃって。
 ずっと、信じてた、のだとおもう。
 その、私の中の誰かが、幸せになれる日が、来るって。
 
 
  その 私の中の  
 
    深く傷付けられ、痛めつけられ、そして愛されなかった小さなわたしが
 
      この世界の中で生きられるようになると、信じて
 
 
 
 笑って、笑い続けて、色んなものを忘れて、貞一君に好きって言わせてまで。
 私は、その私のことが・・・
 好き
 私だけは、あなたのことを見捨てない、愛してる、あなたが幸せになれることを信じてる。
 みて
 私を
 わたし、こんなに楽しく生きられるのよ?
 たのしくて、うれしくて、毎日のひとつひとつが、大切なぬくもりを私に与えてくれて。
 それが・・
 それが・・・・あなたが、怨みと憎しみの中で、ほんとうに、ほんとうに、ずっと求めているもの・・・
 私の存在理由は、きっとその事を、愛するあなたに伝えるためにあるのよ。
 
 
 そう考えたらね、なんだか、すっきりしたわ。
 私の中に、ほんとうにその小さな私がいるのかどうかなんて、わからないわ。
 でも、そんな気がするってだけで、なんだか色々と納得がいくのよ。
 ねぇ、貞一君、気付いてる?
 今日わたしね、初めて怒ったのよ。
 初めて泣いたのよ。
 貞一君に裸を見られて、あんなに恥ずかしかったのは、初めてよ。
 ねぇ、ねぇ、貞一君、なんでなのかしらね?
 貞一君に抱き締められて、こんなにも暖かいの。
 涙が、止まらないの。
 わたしきっと、怒ってはいけなかったのね。
 泣いてはいけなかったのね。
 恥ずかしがってはいられない、なにかがあったのね。
 そうして禁止されていた私の中のなにかが、貞一君に抱き締められて・・・
 
   ほっと
 
      大きく  甘い溜息を吐いたのを   感じたわ
 
 
 
 もう、怒っても、いいんだ。
 泣いても、いいんだ。
 恥ずかしいって言っても、いいんだ。
 それでも抱き締めてくれる人がいる。
 ここにいていいって思える私がいる。
 ううん、笑顔で私のために頑張り、私のことを好きと言った、そういう貞一君の姿をこそ、
 私は真似することで、学ぶことで、私自身に対しても同じように頑張り、好きと言える私になれた。
 貞一君は、まさに私のモデルなのよ。
 もしかしたら、貞一君も、いつも貞一君のことを好きだ大好きだと楽しそうに言っている、
 ほかならない私の姿をモデルとしていたのかもしれないわね。
 そうだとしたら・・なんだかとても・・・嬉しいわね
 笑い続けてきた甲斐があったのね、頑張り続けてきた意味があったのよね。
 私のために、そして貞一君のために、なれたのだから。
 みんなひとつに繋がっていく。
 ああ 素敵ね
 どこまでも
 遠く
 いつまでも
 ここに
 
  ああ    なんて言ったら   いいの
 
 
 
 貞一君と過ごした、ひとつひとつの時間の記憶が、まざまざと私の胸を満たしていく。
 私が忘れても、私の中の私は、絶対にそれを忘れない。
 何度でも、何度でも、その記憶は蘇り、私の胸を満たしていく。
 そして・・
 たのしさとうれしさを受け取り続け、歩き続けてきた私のこの笑顔の軌跡も、決して消えたりしない。
 ううん
 この道のり自体が、私そのもの。
 私自身。
 私の記憶は、絶対に消えないわたしの姿を、この世界の中に永遠に映し出し続けていく。
 たとえこれから私がどんな風になったとしても。
 
 紅い空の舞い散る、あの光の中でぬくもりに包まれたことは
 
   永遠に 変わらない
 
 
 
 
 何度忘れても
 私はその記憶の記録を取り出して、おもいだす。
 なにを思い出し、なにを思い出さないまま仕舞っておくか。
 ただそれだけが、ここにはある。
 なにを思い出し、なにを思い出さないまま仕舞っておくか、それ自体がもう、ひとつの物語。
 その物語を、本当に書くことが出来るのは・・・
 
 きっと
     私のなかにいる  たったひとりのわたしだけ
 
 
 それなら、こうして笑い続ける私は、物語のお気楽な登場人物をやり続けるわ。
 見ててね。
 そして、信じてね。
 その物語の登場人物の数は、きっと少しずつ、増えていくのだということを。
 私にいるのは、私だけじゃない。
 怨念と憎悪そのものの私も、きっといるはずよ。
 私はたぶん、その鬼のような私から逃げ回るだろうけれど。
 私も、あなたを信じるわ。
 あなたが、素敵な物語を書いてくれることを。
 愛も憎しみも、祈りも怨念も、そのすべての刻まれた、あなたの姿を。
 私自身の想いの、すべてを。
 わたしは、見たいわ。
 
 
 
  私が 貞一君と共に生きられる その世界を
 
 
 
 
 
   わたしも
 
 
 
          あなたに             
 

 
                                               忘れられたくない
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                        ◆ 『』内文章、アニメ「黄昏乙女×アムネジア」より引用 ◆
 
 
 
 
 
 

 

-- 120606--                    

 

         

                                   ■■ 書くぜよ。 ■■

     
 
 
 
 
 ごきげんよう、紅い瞳です。
 
 
 
 さてと。
 ここのところ、こっそりとアニメ「黄昏乙女×アムネジア」のSSのようなものを書いていたりするのですが、
 なかなか楽しいです。
 わたし的には書きたいことは書けているのだけれど、書きたいようにはまだ書けていない、と
 言いますか、もうちょっとこう、あとちょっとこうなにか出てこないの?私、みたいな感じではあるのですが、
 とにかくまず書いてそれをひとつの文章として成立させて提出する、という行為そのものが、
 なんだか楽しいように思われます。
 
 頭のなかであーだこーだ書く前に論評を始めちゃうと、結局実際に書くことによって培われるものは
 無いんだよねぇ、勇気いるけど、恥ずかしいけど、自分では駄目駄目だと思っていても、それでも
 書いてみる。
 それを積み重ねていくことでしか得られないものがあるんだよねぇ、あるんだよね?(疑問形)、
 という感じで、おっかなびっくり、おそるおそる色々なことに挑戦しながら書いていたりするのです。
 
 以前にまどマギSS書いてたときにも言ったかもしれませんけれど、今書ける最高のモノを書き続ける
 しかないのよね、というか。
 現時点で書ける最高のモノが、私の中の評価基準では合格点に達しないものだとしても、
 それでもまず書く、書く書く、書く。
 そうして書き上げたものが、それがひとつひとつのスタート地点になっていく感触があります。
 だから最近あんまり、自分の作品の「出来」というのは考えないというか、下手すると自己採点すら
 しないときもあるというか、そういう思考的なものを使わないで、ただ書いて書いて書き続けるという、
 そういう「体験」的なもので自然に私の中に文章魂(?)みたいなものが育っていって、それを私は
 描写し続けていければいいなと、そういう風に考えていたりします。
 
 まぁ要するに、書いて書いて書きまくれということですな。
 さっきからそれしか言っておりませんが。
 
 
 でまぁ、それが楽しいというか、心地良いというか。
 なんかこう、自分のなかのなにかがゆっくりと育っていく感触がいいと言いますか。
 その感触を、ひとつひとつの執筆体験をこそ楽しんでいきたいなと思っているのですな。
 結果より経過というか、んー、なんかそれだと語弊があるかもしれないけど、実際書き上げたモノを
 ニヤニヤしたり顔色が赤くなったり青くなったりしながら読むのも好きですしね←マゾプレイ、ただそれは
 それとして、ただ単純に自分の持てる力を画面にぶつける爽快感と、書いているうちに時折感じる、
 以前には無かった自分の筆の滑りの良さだとか表現力だとか、あるいはテーマ的に色々と自分の中で
 深まったり前に進んだりしているなぁという、そういう実感こそ得られることが、間違いなく私がこうして
 サイトを通して文章を書き続けていられる理由なのかなとは思っているのです。
 まぁ下手ですけどね。
 下手でも、いいさ。
 そりゃ上手くもなりたいけど、でも私の場合目的じゃない、いや、「まだ」目的になっていないのかも
 しれませんね。
 これからそうやって美文麗文名文を目的にして書くようになりたいと思うようになるかもしれませんし、
 そういう目的意識や楽しみ方の変化も含めて、わたしはそうしてすべての執筆体験を存分に味わって
 いるし、それがものを書くと言う事の醍醐味なのだと、この頃私は感じています。
 
 なんていうか、最近おもうのよね。
 なにかを極めたいと思ったら、極力手を抜くことが大事だって。
 手を抜くというか、適度に適当に、対象と末長く付き合っていくことを前提に考えていけば、
 恒常的な真面目さとか必死さというのは、必ずしもそのミッションを達成し深めていく事には繋がらない、
 というか。
 完璧を求めない、逆に自分の不完全な部分をひとつひとつ受け入れて、それを楽しんでいくこと自体
 が、たぶんその不完全な部分をも含んだ、より高次のモノへと自分を連れていってくれるような気がする。
 完璧なんてーのは、ある意味で瞬間的刹那的な、今自分が見ているそれだけのものでしかない、
 それを小さな枠組みで評価するものでしかない。
 
 肯定する。
 
 あー文章書くのめんどくさい、まぁいいか今日はこんなもんで、もうちょっと工夫出来そうだけどいいや。
 そういうそのときの自分の状態も含めての執筆体験そのものを、全肯定する。
 そういう不真面目でいい加減でズボラなそのときの自分に出来る、その最高のモノをゆっくりと安全に
 書き続けていけばいい。
 更新頻度はだいぶ下がったし、SSやら感想やらを拘って書き上げる義務感とかもほとんど無くなったし、
 べつに書きたいときに書けばいいや、いやマジで、そのやり方でしばらくやってきていたら、なんだかこう、
 ごく自然な形で、文章を書くことが楽しく感じられるようになってきてる。
 他人の評価は欠片も気にならなくなってきたし、感想頂けるだけで充分だし、だからこう、より自分の
 ままに文章を書くという事の意味と価値が、私の中で深まってきている。
 
 なんのために、私は文章を書くのだろうね?
 
 きっと私は、文章を書くことで、なにかを為そうとしたり得ようとしていたんだろうね、今までは。
 私の中の満たされないなにかを埋めるべく、その手段として、文章を書くということを使ってた。
 結構、苦しかった気がする。
 苦しいのに、根性で書いて、その苦行をやり遂げた達成感のようなものに酔いしれていた気がする。
 今は、そういうことはほとんどない。
 サボりまくり以前に、サボるという意識が無い。
 これが、常態だし、これでいいんだという自己納得感。
 ある意味足るを知る状態のような、まぁそういうことも言ってみる。
 
 べつの言い方をすると。
 文章を書くということを、自分のものにすることが出来るようになった、ということ。
 
 
 だいぶ自分の言いたい事がなんだったのかわからなくなってきましたが、その辺りは相変わらずですな、
 でもまぁ、つまり、この頃SS書いててたのしいな☆ということが伝わってくれればよいのかなと思う所存。
 ・・・・もうちょっとこう、自分の言いたいことを手短にまとめる能力が欲しいというのも本音、ガチ本音
 
 
 
 
 ◆
 
 えーと、あとはそうですね、そろそろ来期アニメについてもチェックしておきましょうか。
 さて、なにがあるのやら。
 いっきますよ。
 
 
 ■TARI TARI
 :ぷに可愛いのを、おひとつ頂きましょう。
 
 ■人類は衰退しました
 :タイトル的になにかやってくれそう、なにかおやりなさい。(命令形)
 
 ■ゆるゆり♪♪
 :よっしゃー! いっくぞぉーっ!  ←第一期終了時からずっと言っております
 
 ■もやしもん リターンズ
 :第一期が超絶尻切れトンボだったので、よろしくお願いします。
 
 ■夏雪ランデブー
 : 未 知 数 。
 
 ■恋と選挙とチョコレート
 :女の子が可愛いので。
 
 ■この中に1人、妹がいる!
 :前から思ってたけど、最近のラノベのタイトルはフリーダムだな。
 
 ■じょしらく!
 :よし、のった!
 
 ■カンピオーネ!
 :色々気合い入ってるネ、その意気やよし。
 
 ■DOG DAYS'
 :閣下と姫様。
 
 ■織田信奈の野望
 :武将萌えキャラ化作品って、割とハズレが少ないことに今気がつきました。 (主観)
 
 ■えびてん -公立海老栖川高校天悶部-
 :わかった、見届けよう。 >ハイテンション「覚悟完了」部活コメディ
 
 ■ソードアート・オンライン
 :こういうのは、割と嫌いじゃない、こともある。
 
 ■境界線上のホライゾンU
 :だって、ときみつさんが面白いっていうから。
 
 ■アルカナ・ファミリア -La storia della Arcana Famiglia-
 :なんぞかっこいい。
 
 ■だから僕は、Hができない。
 :色々フリーだな。
 
 ■薄桜鬼 黎明録
 :え? あとなにやるの?
 
 ■ココロコネクト
 : キ タ コ レ 。
 
 
 
 
 
 という感じですか。
 私的にはゆるゆりの第二期が断然期待大ですね、ドッグデイズの二期がそれに続く形。
 新作では、んー、ココロコネクトとかTARITARI辺りになるでしょうか。
 全体的には、小粒な感じがしますね、こう、どどんと迫力のある印象を感じさせる作品は無さそう。
 
 
 
 んでは、今回はこの辺りで。
 ごきげんよう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

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