~アニメ『マリア様がみてる』第5話「戦う乙女たち」感想

 

-- 040205 --                    

 

         
     

 

■■マリア様と戦うと云ふ事■■

     
 

 

 
 
 マリみて強化月間ということですので、いつもより1.2倍ほどがんばってみようと思います。
 ごきげんよう、紅い瞳です。
 
 早速第五話のお話にいってみましょう。
 このお話を見てみて、もちろん私は色々なことを想ったのですけれど、
 具体的にではその想ったことはどう書き表せることなのか、とか、
 そういうことはまだわかっていないので、その、書きながら考えていきます。
 それが私の本日の作法です。
 ちょこっと長くなりそうですけど、
 例の如く推敲はしません。
 紅い瞳は見栄っ張りですから (微笑)
 
 ◆◆◆◆
 
 強い弱いと、誰かが決める。
 決めてもそれは言葉だけの事。
 しかし其処に言葉がある限り、強さ弱さも確かにある。
 多くの意味が乱舞する事柄を、言葉という区分を与えて制限してみても、
 その言葉で顕わされた事が嘘になるわけじゃない。
 言えばそれが真実となる。
 嘘も真も、すべてが其処にあるという意味で、それは確かに在る。
 幻影も、それを感じているという意味で、在る。
 思い込みという名の真実も、その人の中に確かにある。
 真実は、無数にある。
 相反することも、矛盾すること同士も、なんであろうと真実。
 言葉にされた「部分」も、言葉にされることのなかった「部分」も、真実。
 そしてだから、真実は、無い。
 これはそういうお話。
 
 誰かを心配してしまう。
 心配だから、その人の側にずっと居たいと思う。
 ずっとその人の側にいると安心できる。
 嗚呼、私は此処にずっと居たい。
 貴方を護りたいから。
 護って助けて、そして・・・・いつまでもひとつでいたい。
 でもそれは、どういうことなのか考えたことはありますか?
 いいえ、ありません。考える必要無いもの。
 それで私は完結できていますから。
 そうですか、ではさようなら。
 私には私を護ってくれる人などいらないから。
 嘘。護って欲しいのはほんと。
 でも貴方が私とひとつになりたがっているのなら、護ってなんて欲しくない。
 もっと、私から離れて頂戴。
 そんな、だって私はただ貴方の事を心配して・・。
 そういうことではない。
 二人の言葉は同じ事実を捉えていながら、
 しかし違う作法でもってそれぞれが区分けされ、それぞれが異なる真実となっている。
 心配するのはいい。
 でも、その「貴方を心配する」ってどういう事?
 私とひとつになりたいんでしょ、貴方は。
 でも私は貴方とひとつにはなりたくない。私は貴方と並んで歩きたいのよ。
 私は貴方とひとつになることで、「貴方」を失う気にはならない。
 私にとってなにより大切な貴方だからこそ、貴方にはしっかりして欲しいのよ。
 だったらいいじゃない。私はちゃんとしっかりやってるし、試合にも絶対勝ってみせるんだから!
 そういうことではないの。
 貴方が凛々しく振る舞うのと、貴方が試合に勝とうとするのはそれは誰のため?
 それは貴方のために決まっているでしょう! 貴方を愛するから、貴方のために・・・
 ありがとう。でも、私はそれだったら貴方から離れるわ。
 なんでよっ?
 貴方が私のために生きようとするからよ。
 
 誰かに心配されてしまう。
 誰かに愛されてしまう。
 そして自分もその誰かを心配して愛している。
 ならば私は貴方から離れよう。
 それが私の抱擁の流儀なのだから。
 貴方が私に寄り添い、そして私とひとつになろうとするということは、
 それはつまりあまりにも一方的だとは思いません?
 貴方には、自分とひとつになりたいという相手としての私が居るけれど、
 でも貴方によって「貴方とひとつにされてしまった」私は、では誰とひとつになろうと思えば良いの?
 私が貴方とひとつになりたいと願ったこの気持ちは、永遠に満たされることはないじゃない。
 だって、私は既に貴方とひとつに「されて」しまっているのだから。
 ひとつになったという結果は平等でも、でもひとつになるまでの過程が不平等なのよ。
 それはちょっと悔しい。
 少なくとも、私から先に貴方へ仕掛けることはできないのだから。
 私はそういう心と体を持っているから、先手必勝は叶えたい夢で叶わない夢なのよ。
 それは嘘という名の真実。
 そう想ってはいるが、そうは想ってはいない。
 そんなことよりも、なによりも貴方とひとつになりたくない。
 それは勿論貴方が嫌いだからじゃなくて、貴方を愛しているから。
 だから例え私が先に仕掛ける事ができても、私は貴方とひとつにはならない。
 ひとつになることで、貴方を失いたくない。
 誰かとひとつになってしまえば、其処に彼我の境界は無くなる。
 世界の中に他者を失い、孤独となる。
 それは私にとっての、貴方の喪失ということ。
 私のためになにかをしてくれるということは、貴方はそれを貴方のためにしないということ。
 私のために生きるということは、貴方は貴方を生きないということ。
 私とひとつになるということは、貴方はこの世界から消えるということ。
 そんなの、耐えられる訳無いじゃない。
 私から、「貴方」を奪わないで。
 
 もっと自分のために生きて。
 私の事など顧みないくらいに強く生きて。
 私のために懸命に頑張ってくれるなんて、そんなの強さじゃない。
 貴方の真実の強さじゃない。
 辛いことに耐えるときに、私のことを思い浮かべて耐えるなんてそんなの駄目よ。
 それはただ私を盾にしているだけ。
 私なんか、置いていきなさい。
 世上、その物言いはその者の強さを指し示していると云い、
 またそういうものは多い。
 でも私は私が誰かにして欲しい事をただ純粋に願っているだけなのよ。
 貴方は貴方の事をただ想いながら、ひたすら貴方の道を歩いていって欲しいの。
 そして私は、そういう貴方を見つめながら、隣の道を一緒に歩いて生きたいのよ。
 この空の下に確かに貴方が歩いていることを、どうしようもなく感じるために。
 私は貴方の事をどうしようも無く愛しているから。
 貴方から、離れたくはないから。
 この空の下で共に在りたいから。
 私は、ひとりは嫌なの。
 嫌で嫌で仕方ないから、だからただずっとひとりにならないよう必死にそれを求めていただけよ。
 その必死さは強いとも言えるのだけれど、
 私はでもとても甘えているだけなのだし、そしてそれはとても弱い事であるのよ。
 そして貴方が私に寄せてくれる想いに、それが例え私の孤独感を募らせることになろうとも、
 その一方で確かに果てしない感謝もしているの。
 私にはだから、貴方とひとつになりたい願いも確かに在るの。
 貴方にはしっかりと自分の足で歩いて貰いたいと願うのはそれは私のためなのだけれど、
 でもその裏で純粋にそれが貴方のためでもあるのよ、という一方的な想いもあるの。
 体が弱くていつも寝ている私から本当に離れていって欲しい、と想うこともだからあったりもする。
 こんな私に付き合っていたら、そっちのほうが本当は貴方を駄目にするわ、って。
 その想いが、貴方に対する冒涜だということも勿論わかっている。
 貴方が私に求めてくれたものを、私が自分の手で消し去ってしまうことなどだから本当はできない。
 でもだからこそ、それと同じくらいに自分はこのまま消えてしまいたいとも思っている。
 だって、貴方が私に求めてくれたものを私が大事にしておくって、
 それってつまり私が貴方のために生きるってことでしょう?
 それは、今度は私が私の生を冒涜していることになる訳よね。
 もし私が貴方の立場だとしたら、それは絶対に駄目って言うわよね、もちろん。
 でもだからといって、じゃあ例えば貴方が私の前から消えるって言ったとしたら、
 その宣言に素直に頷けるかしら?
 いいえ、できないわね。
 きっと私のためを想って私のために消えるって言ったのだって思って、
 そんな一方的な事は駄目よ貴方は貴方のことだけ考えて、って感じで絶対に頷かない。
 
 それはね、でも、ほんたうは。
 
 たぶん、それが貴方が貴方のことだけを考えて出した答えだと、充分私が感じることができた物だとしても、
 私は頷けないことなのだと思う。
 ほんとうのところは、私は貴方がどう考えていようと、そして私がどう考えていようと関係ない。
 どうしようもなくただ貴方と共に在りたいと、ただそれだけを願っている。
 でもその願いは、とても怖くて。
 私はその願いの持つ意味がとても恐ろしくて、だから色々な盾でその恐怖を防いでいる。
 防がずにはいられないから、だから言葉を尽すのね。
 ううん、ほんたうはそれもあるってことなのだけれど。
 「そうなの? 由乃。」
 「そうよ、令ちゃん。
 私はそういう弱い人間よ。」
 「なに言ってるの。弱いのは私のほう。ただ強がってるだけなんだから、私は。
 由乃は私と離れていても、ちゃんと私を抱きしめてくれるじゃないか。」
 「私は、それは違うとはいえないわ。それもほんたうの事だと思うから。
 でも私はそうは想っていない、ということで、だからそれは本当のことじゃないわ。」
 「そんなこと言ったって、由乃は強いコなのは事実だし。」
 「ええ、事実よ。というより、むしろ真実ね。」
 「だったらいいじゃないか。」
 「でも私が弱いというのもまた真実だわ。
 そして令ちゃんは私のためを思うことで一生懸命になれる、ということでとても強い人よ。」
 「で、でも私は由乃の考え方からすれば、由乃を盾にしてるだけじゃないか。
 その盾が無くなっちゃったらなんにも出来ないんだから。」
 「令ちゃん、私の言ってることまだあんまりわかっていないみたいね。」
 「ええ!? なんでよ?」
 「令ちゃんは、私が令ちゃんはこういう事をしてるから令ちゃんは弱い人間だ、って言ったから、
 自分のことを弱いって言ってるの?」
 「・・・・・。」
 「少なくとも、令ちゃんは私の言ってるようなことを考えて一生懸命になれた訳では無いの。
 令ちゃんは私を盾にしてるって、意識なんかして無かったのでしょう?」
 「そうだね。そんなこと考えてもみなかった。」
 「そう。それでいいのよ。私が言った令ちゃんの『弱さ』というのは、
 ある意味でそれこそが仮面なのよ。その仮面を令ちゃんにかぶせることで、
 その弱さという物を存在させたのよ。そして存在すれば、それはそれだけで真実になる。
 そしてその真実が在ることは、令ちゃんの『強さ』の存在を消すことには全然ならないの。
 仮面をかぶっても、素顔は決して無くならないということよ。」
 「私は、確かに由乃の言ったような風な考えから自分を弱いだなんて思ってはいないのかもしれないけど、
 でも、だからといって自分が強いと思ったことも無いよ。
 私はただなにも考えずにひたすら一生懸命にやってきただけで、
 それは自分が弱いからそうしなきゃ駄目だと思うからしていたことなんだ。」
 「それを、『強い』と言ってなにが悪いの?」
 「え?」
 「私は、それを令ちゃんの強さだと思っているということで、それは令ちゃんの強さに違いないの。
 そしてその『強さ』は、令ちゃんの思っているその令ちゃんの『弱さ』の存在を否定することにはならない。
 令ちゃん。いい?
 私が言いたいのは、私が令ちゃんを弱い人だと言ってることを令ちゃんは受け入れる必要はないってこと。
 私は令ちゃんじゃないのだし、そして令ちゃんとひとつになりたくもない。
 だから私はほんとは弱い人間なの、と令ちゃんに告白したからって私に甘くすることなんて無いの。
 むしろ、それだけは絶対にして欲しくないのよ。
 令ちゃんだって、そうじゃないかしら?
 強い自分を演じて弱い本当の自分を隠しているのは、
 やっぱりそれは弱い自分を示したがっているのと同時に、
 その強い自分の仮面も見て欲しいからなのじゃないかしら?」
 「・・・うん、たぶんそうだと思う。」
 「だからね、令ちゃん。
 私は令ちゃんの事を強い人だと思い、令ちゃんも私の事を強い人だと思えば、それでいいの。
 「・・・・・うん・・。わかったような気がするよ、由乃。」
 
 
 
 
 
 
 私もわかってるから。
 令ちゃんがほんたうは弱い人だって事。
 そして令ちゃんが、私がほんたうは弱い人だって事をわかってるって事も。
 
 マリア様が、きょうも私達を見ていてくださいます。
 
 令ちゃん。
 私を妹にしてください。
 
 
 
 
 

 

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