〜アニメ『マリア様がみてる』第9話「紅いカード」感想 |
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■■マリア様とみてる■■ |
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『私は見ているのが、辛くなった・・・・』 |
〜第九話の美冬さんのセリフより〜 |
〜 『痛い? 先生の言いつけを守らないから、罰が当たったのよ』 〜 |
ただ見ているだけなんて、しても意味が無いことはわかっていた。 |
ずっとずっとわかっていた。 |
でもそうすることしかできなかったから、ずっとそうしていた。 |
そうすることの方が、もしかしたら正しい事なのじゃないかと思ったから。 |
それこそが、私には相応しい事なのじゃないかと、思っていたから、 |
私はその私に相応しい場所からずっと祥子さんを見ていた。 |
祥子さんがそれを望んでいるとしたら。 |
私は祥子さんを見つめるだけで充分で、 |
そして祥子さんに私が見つめられる事は、罰あたりなことなのかもしれない。 |
だから私は、祥子さんの些細で素晴らしい日常を見つめ続けにはおれなかった。 |
祥子さんから見えないところで、清く正しい自分の姿を演じることを願わない訳にはいかなかった。 |
そしてそれで、幸せだった。 |
それが、幸せだった。 |
意味など無くとも、幸せだった。 |
『ただ祥子さんを見られなくなるのが残念で仕方なかった』 |
私はまた、此処に戻ってきた。 |
祥子さんから遠くて近いこの場所に。 |
そして私は、此処から一歩踏み出そうとしていた。 |
私は、愚かだった。 |
してはいけないことを、してしまった。 |
罪深い私の空で、なにかが嗤っていた。 |
私は祥子さんには触れないのに、触ってしまった。 |
祥子さんと自分の距離が無くなっている事を夢見て、私は触れてはいけないものに触れてしまった。 |
そして、触れた瞬間、私はまた元の場所に戻されてしまった。 |
いいえ。 |
そこは今までの場所よりももっとずっと遠く、そして罪にまみれた最も祥子さんから遠いところだった。 |
私には、もうまともな場所は無くなっていた。 |
祥子さんと共に立てるその場所が。 |
私と祥子さんの距離はなにも変わらなかったが、その間には飛び越えられない壁が敷かれていた。 |
むしろその距離を強引に縮めようとして、その壁を建設してしまったのかもしれない。 |
いつか祥子さんの側に戻りに、そしていつか祥子さんと共に歩きたいと願ってはいられなくなった。 |
人はなかなか変われない。 |
私も、なにも変われない。 |
変われないからこそ、私は変えられてしまった。 |
自分で初めて踏みだしたその一歩が、すべてを汚してしまったから。 |
十年分の時の流れの使い方を間違えた私は、もはや祥子さんを遠くから見つめることしかできなくなった。 |
それは十年前と変わらないことだけれど、 |
十年前は見つめるだけから祥子さんの元へといける希望のきざはしもあった。 |
でも、今はその希望は潰えた。 |
自分で、潰した。 |
罪深い私を、祥子さんは許さない。 |
祥子さんが許さない私を、私も許すことはできない。 |
私は、だからそれが永遠に続く私の薄暗い視線を祥子さんに送り続ける生活に入った。 |
私は、そして暗い暗い幸せの生活へと、入った。 |
ただ見ているだけなんて、しても意味が無いことはわかっていた。 |
ずっとずっとわかっていた。 |
でもそうすることしかできなかったから、ずっとそうしていた。 |
そうすることがとても後ろめたいことだと、逃げられないくらいに強く強く胸に感じながら。 |
私は、それでも良かった。 |
それが、私には相応しいと思ったから。 |
十年前から、なにも変わらない。 |
変われないから、一番大切なものを無くしてしまった。 |
私に、また罰が当たった。 |
善くない事をして、罰が。 |
また深く考えもせずに、その一歩をむやみに踏みだしてしまったから。 |
やることなすこと罪にまみれ、あがけばあがくほど深みにはまる。 |
持っていてはいけないものを大事に胸に抱いて、そしてそれが一番悪いことだなんて。 |
私は取り上げられたはずのものを、勝手に取り返して胸の奥にしまい込もうとした。 |
私は悪いことをして、だから罰を受けて、そのことは当然なことなはずなのに反逆して。 |
よりにもよって、祥子さんに逆らうなんて・・・。 |
私は、私の反逆を、罪を許さない。 |
私も祥子さんの言いつけが正しいと思うから、だから懸命にそれを守ろうとして・・・ |
守ろうとしてだから祥子さんから離れてその姿を見ていたはずなのに、いつのまにか手にはあのカードが・・。 |
『愚かな私。 |
欲しいと思ったものが目の前にあったからって、深く考えもせずに・・・ |
今更ながら、自分のしたことの重大さを理解していた』 |
私は、どうしようもない。 |
どうしようも無いのに、いつもどうにかしてしまう。 |
どうにか、なってしまう。 |
『どうしてこんなことになってしまったのだろう。私はただ祥子さんに振り向いて欲しかっただけなのに』 |
それは、私がたぶん悪いから。 |
そしてそれは、たぶんなどという曖昧さを残したものだから、私は汚れていく。 |
汚れていく自分を慰めることなんて。 |
それは最も汚いことなのに、それでも私はついそうしてしまう。 |
ほんとうは、私は祥子さんを見つめることすらしてはいけないはずなんだ。 |
私が憧れた私の祥子さんは、こんな薄汚れた瞳で見てもいいものじゃない。 |
私が自分を慰めれば慰めるほど、 |
私の最も、それこそ絶対に失ってしまってはいけないものが消えてしまう。 |
私が私の罪をなんとも思わなくなるということは、祥子さんの事もどうでもよくなるということだから。 |
それでも、いえ、だからこそ私は祥子さんをその後ろめたい瞳で見つめ続けなければならなかった。 |
だから・・・私は・・・ただただ、涙が止まらない・・。 |
祥子さんを見つめることも許されず、自分を見つめることも許せずに・・。 |
全部自分が悪いはずなのに、でもどうしてもそれが理不尽にしか思えなくて。 |
どうしても自分が報われない哀れなお姫様になりたくて・・・・。 |
私のこの涙は、世界で一番罪な涙。 |
祥子さんがみたら、絶対にまた罰が当たると言うに決まっている涙。 |
自分で勝手に想いを寄せて、自分で勝手にそれが叶わぬ事の理不尽さを訴えて。 |
私の憧れた、そして私が愛したその祥子さんの正しい瞳。 |
その瞳が、私をいつもみている。 |
みつめて、みつめられて。 |
私は、なにかがおかしいことに気づいた。 |
それがなにかがわかる前に、私はなぜかすべてに納得していた。 |
そうか。これでいいのだ、と。 |
祐巳さんの後ろ姿を見ているうちに、私はわかるはずの無いものをわかっていた。 |
『掘り続けても、そこにカードは無い。 |
その結末を先延ばしにすればするほど、私自身が汚れていくようで・・・』 |
一番大事な物は、本当は自分の胸の中に無かった。 |
祥子さんは、私の中には居なかった。 |
私はその事実にまったく気づくことなく、ずっとずっと祥子さんを見つめ続けていた。 |
いったい、私はなにを見ていたというのだろう。 |
祥子さんは私の中に居ない。 |
居ないはずの祥子さんを追って、私は罪の世界を歩き続け汚れていった。 |
でも、その祥子さんは居なかった。 |
居なかったんだ。 |
このことが、とてもとても嬉しいことなのだということが、わかるだろうか? |
私が踏みだしたと思っていた一歩は、実は祥子さんに届いていなかった、ということ。 |
私は、汚れていなかったんだ。 |
祥子さんと再会を果たした日、私は祥子さんに近づく事に失敗し、 |
そして祥子さんと同じ場所に立つ資格を失い、またその場に立つ可能性すら失った。 |
でも、あの日お会いした祥子さんが祥子さんでは無かったとしたら。 |
事実は、そうだったのだ。 |
私は、祥子さんの事をなにも知らなかった。 |
少なくとも、幼い頃以外の祥子さんの事をまったく知らない。 |
じゃあ、あの日あそこに立っていた祥子さんが祥子さんであると、どうして言えよう。 |
私は、祥子さんを知らなかったのだ。 |
だから私は、祥子さんとの再会に失敗などしていない。 |
私の見知らぬ祥子さんとのあの再会に、意味など無かったんだ。 |
私は、今、初めて祥子さんを知ることができる場所に立った。 |
祥子さんを知らないのだ、という事に納得してだから初めて祥子さんを知ることが出来る権利を手にした。 |
私は、だからなにも失っていない。 |
汚れてなんていない。まだ祥子さんの瞳が求めることに応え続ける権利が私にはあるんだ。 |
私には祥子さんが居ないから、だから祥子さんを探しに行ける。 |
私の中に祥子さんが居たら、祥子さんを探すことなどできない、ということに気づいて。 |
私は、今、改めて祥子さんを見つめよう。 |
遠くからでも、近くからでもいい、私は祥子さんをずっとずっと見ていよう。 |
幼い頃と同じ希望に満ち溢れた、そして今度こそまっすぐに祥子さんを見れるこの瞳で。 |
私は、祥子さんを見つめ続けたい。 |
見つめ続けることが、この空の下で私が祥子さんと共に歩く道であると理解することができたから。 |
◆◆◆◆ |
私も髪切ってこようかな(ぇ) |
ごきげんよう、遅まきながら紅い瞳です。 |
第九話の感想でした。 |
今更こんなことを言うのはあれですけれど、 |
ラストの志摩子さんと聖様の素晴らしすぎるラブラブっぷりを書くことを |
必死に我慢して、敢えて涙を飲んで書いた感想、 |
であることをご承知おきください。 |
あと蓉子さんの頬を紅く染めて喜んでいる表情とか見て死にそうになったりとか、 |
とにかく後半部分にこれみよがしな罠が設置されていて、 |
あやうく美冬さんのお話がどこかに消し飛んでしまうところでした。 |
ということで、なにげにこの感想はサバイバル風味溢れた逞しいものですので、 |
どうかごお読みのほど、お願いできましたならば幸いです。 |
ちなみに、紅い瞳の中で美冬さんはニューフェイスとしてがっちり認知されました。 |
美冬さん、けっぱれー。 |
P.S : 次週のお話は聖様のお話だそうです。 |
感想書くまで生きていられる自信、まったくありません。 |
◆ 『』内文章、アニメ「マリア様がみてる」より引用 ◆ |
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